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特開2023-119520抗アレルギー剤及びアレルギー抑制用食品組成物
<図1>
  • 特開-抗アレルギー剤及びアレルギー抑制用食品組成物 図1
  • 特開-抗アレルギー剤及びアレルギー抑制用食品組成物 図2
  • 特開-抗アレルギー剤及びアレルギー抑制用食品組成物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119520
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】抗アレルギー剤及びアレルギー抑制用食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20230821BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20230821BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/194
A61P37/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022487
(22)【出願日】2022-02-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】西 甲介
(72)【発明者】
【氏名】石田 萌子
(72)【発明者】
【氏名】菊▲崎▼ 泰枝
(72)【発明者】
【氏名】小原 理加
(72)【発明者】
【氏名】池田 剛
(72)【発明者】
【氏名】恩田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】吉野 七海
【テーマコード(参考)】
4B018
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD08
4B018MD09
4B018ME07
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA36
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZB13
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、新規な抗アレルギー剤を提供することである。
【解決手段】前記課題は、本発明のリンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む、抗アレルギー剤によって解決することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む、抗アレルギー剤。
【請求項2】
I型アレルギーに対する抗アレルギー剤である、請求項1に記載の抗アレルギー剤。
【請求項3】
脱顆粒を抑制する、請求項1又は2に記載の抗アレルギー剤。
【請求項4】
リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含むアレルギー症状の抑制用食品組成物。
【請求項5】
前記アレルギー症状がI型アレルギー症状である、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記アレルギー症状の抑制が脱顆粒の抑制である、請求項4又は5に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルギー剤及びアレルギー抑制用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、I型アレルギーは、リンパ球の一種であるB細胞が産生するIgEが原因となり、発症する。花粉症の場合、花粉をアレルゲン(抗原)として認識し、特異的に結合するIgEが体内で産生されるとIgEはIgE受容体(FcεRI)を介して好塩基球やマスト細胞表面に結合する。そして、アレルゲンである花粉が体内に侵入すると、IgEと結合し、これが刺激となって好塩基球やマスト細胞の細胞内にシグナルが伝達され、ヒスタミンなどのアレルギー症状を引き起こす物質を保持している顆粒が細胞から放出される。この現象を脱顆粒と呼ぶ。脱顆粒により細胞外に放出されたヒスタミンが粘膜を刺激し、アレルギー症状が発症する。従って、アレルギー症状を予防又は治療するためには、好塩基球やマスト細胞による顆粒の放出を抑制することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-26395号公報
【特許文献2】特開2019-127455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1には、フレスト酸を含む抗I型アレルギー剤が記載されている。また、特許文献2には、p-クマル酸を含む抗アレルギー剤が記載されている。しかしながら、新たな抗アレルギー剤の開発が期待されている。
本発明の目的は、新規な抗アレルギー剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、新規な抗アレルギー剤について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、従来抗アレルギー作用が知られてないかったリンゴ酸が抗アレルギー作用を有することを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む、抗アレルギー剤、
[2]I型アレルギーに対する抗アレルギー剤である、[1]に記載の抗アレルギー剤、
[3]脱顆粒を抑制する、[1]又は[2]に記載の抗アレルギー剤、
[4]リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含むアレルギー症状の抑制用食品組成物、
[5]前記アレルギー症状がI型アレルギー症状である、[4]に記載の食品組成物、及び
[6]前記アレルギー症状の抑制が脱顆粒の抑制である、[4]又は[5]に記載の食品組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新規な抗アレルギー剤を提供することができる。また、本発明はアレルギー症状の抑制用食品組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】抗原刺激による脱顆粒に対するDL-リンゴ酸の抑制効果を示したグラフである。
図2】抗原刺激による脱顆粒に対するL-リンゴ酸の抑制効果を示したグラフである。
図3】抗原刺激による脱顆粒に対するD-リンゴ酸の抑制効果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]抗アレルギー剤
本発明の抗アレルギー剤は、リンゴ酸又はその塩を有効成分として含む。本発明の抗アレルギー剤は、好ましくはI型アレルギーに対する抗アレルギー剤であり、I型アレルギー症状を抑制する作用を有する組成物であってよい。すなわち、花粉症、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、又は気管支喘息等のI型アレルギーによる症状を緩和、治療、又は予防することができる。また、I型アレルギー症状を抑制する作用とは、I型アレルギー反応のメカニズムにおける、肥満細胞又は好塩基球の脱顆粒を抑制する作用であってよい。従って、本発明の抗アレルギー剤は、肥満細胞又は好塩基球の脱顆粒抑制剤であってもよい。
すなわち、本発明の抗アレルギー剤は、少なくとも肥満細胞又は好塩基球の脱顆粒を抑制することができる。従って、本発明の抗アレルギー剤によれば、I型アレルギーの症状を効果的に抑制することができる。
【0009】
(リンゴ酸)
本発明の有効成分であるリンゴ酸は、下記式(1):
【化1】
で表されるヒドロキシ酸の一種であり、オキシコハク酸又は2-ヒドロキシブタン二酸(2-hydroxybutanedioic acid)とも称される。L-リンゴ酸は、下記式(2):
【化2】
で表される化合物であり、D-リンゴ酸は、下記式(3):
【化3】
で表される化合物である。L-リンゴ酸及びD-リンゴ酸のいずれも、本発明の抗アレルギー剤の有効成分として効果を有する。また、L-リンゴ酸及びD-リンゴ酸が混合したDL-リンゴ酸を有効成分として用いてもよい。
【0010】
リンゴ酸の塩としては、無機塩基又は有機塩基等との塩、あるいは酸との塩であって、医薬又は食品として許容される塩であれば限定されない。具体的な無機塩基又は有機塩基等との塩としては、無機塩基、有機塩基、又は金属アルコキシドとの塩が挙げられる。リンゴ酸と無機塩基、有機塩基、又は金属アルコキシドとの混合により生成しうる。
塩を形成しうる無機塩基としては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、又はカリウム等)の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩、又は水素化物;アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、又はバリウム)の水酸化物、又は水素化物等が挙げられる。塩を形成しうる有機塩基としては、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピリジン、又はコリジン等が挙げられる。また、金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、カリウムtert-ブトキシド、又はマグネシウムメトキシド等が挙げられる。β-アラニンの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、又はそれらの組み合わせが好ましい。
また、具体的な酸との塩としては、無機酸、又は有機酸との塩が挙げられる。塩を形成しうる無機酸としては、塩酸が挙げられる。
【0011】
《アレルギー》
本発明の抗アレルギー剤が対象とするアレルギーは、特に限定されるものではないが、I型アレルギーが挙げられる。I型アレルギーとしては、例えばアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、動物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アナフィラキシーショック、又はアレルギー性胃腸炎が挙げられる。本発明の抗アレルギー剤は、アレルギー疾患を発症した又は発症する可能性がある対象に対して、アレルギー疾患の発症を予防するか、又は発症したアレルギー疾患を緩和若しくは治療する効果を有する。
【0012】
I型アレルギー反応には、抗原特異的なIgE抗体とIgE特異的な高親和性IgE受容体FcεRIを有する肥満細胞及び好塩基球とが関与している。FcεRIを介して肥満細胞又は好塩基球の表面に結合しているIgEが抗原によって架橋されると、FcεRIが活性化されることでその下流へとシグナルが伝達され、ヒスタミン、ロイコトリエンC4、PAF、又は好酸球走化因子などの細胞内顆粒内容物が放出される。この現象を脱顆粒と呼ぶ。脱顆粒が生じた各組織において平滑筋収縮、血管透過性亢進、又は腺分泌亢進などが起こり、アレルギー症状が出現する。脱顆粒には、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇もまた関与している。本発明の抗アレルギー剤は、肥満細胞及び/又は好塩基球の抗原刺激による脱顆粒を抑制することができる。特に、本発明の抗アレルギー剤は、肥満細胞又は好塩基球から、ヒスタミン、ロイコトリエン等の化学伝達物質を含む顆粒が細胞外へ放出されること(脱顆粒)を抑制する作用(脱顆粒抑制作用)を有する。そのため、本実施態様の抗アレルギー剤によれば、I型アレルギー反応による症状を効果的に抑制、治療又は予防することができる。
【0013】
本発明の抗アレルギー剤の投与剤型としては、特には限定がなく、経口剤及び非経口剤を挙げることができるが、経口剤が好ましい。前記経口剤は、例えば、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、及び丸剤等の固形状又は粉末状製剤、並びに懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、及びエキス剤等の液状製剤を挙げることができる。非経口剤としては、例えば、注射剤を挙げることができる。
【0014】
本発明の抗アレルギー剤は、リンゴ酸のみから成るものでもよく、またリンゴ酸を含むものでもよい。本発明の抗アレルギー剤が、リンゴ酸を含むものである場合、他の添加剤を含むことができる。
【0015】
本発明の抗アレルギー剤が経口剤である場合、他の添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、又は懸濁化剤を挙げることができ、具体的には、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどであることができる。
【0016】
本発明の抗アレルギー剤が非経口剤である場合、他の添加剤としては、生理食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若しくは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しくは塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤などを挙げることができる。
【0017】
本発明の抗アレルギー剤は、リンゴ酸を、90重量%以上、50重量%以上、10重量%以上、又は1重量%以上含むことができる。
【0018】
本発明の抗アレルギー剤の投与量又は摂取量は、製剤形態、並びに使用する対象の年齢、性別、体重及びアレルギー症状の程度などに応じて適宜調整することができるが、当該抗アレルギー剤を投与又は摂取することで、アレルギー疾患の発症を予防するか、又は発症したアレルギー疾患を緩和若しくは治療することができる量であることが好ましい。具体的には、リンゴ酸の添加量として、0.01~1000mg/kg体重/日、好ましくは、0.1~750mg/kg体重/日、より好ましくは1~500mg/kg体重/日、さらに好ましくは5~400mg/kg体重/日、さらに好ましくは10~300mg/kg体重/日、さらに好ましくは15~200mg/kg体重/日、又は最も好ましくは20~150mg/kg体重/日であることができる。もちろん、上記の投与法は一例であり、他の投与法であってもよい。ヒトへの抗アレルギー剤の投与方法、投与量、投与期間、及び投与間隔等は、管理された臨床治験によって決定されることが望ましい。
【0019】
本発明の抗アレルギー剤は、ヒトに対して投与することができるが、投与対象はヒト以外の動物であってもよく、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、モルモット、及びリス等のペット;牛及び豚等の家畜;マウス、ラット等の実験動物;並びに、動物園等で飼育されている動物等が挙げられる。
【0020】
本発明の抗アレルギー剤は、アレルギー予防又は治療用医薬組成物であることができる。前記医薬組成物には、医薬品及び医薬部外品が含まれる。医薬品としては、例えば、生薬製剤及び漢方製剤などを挙げることができる。医薬部外品としては、例えば、栄養ドリンク及び生薬含有保健薬などを挙げることができる。
【0021】
本発明の抗アレルギー剤が脱顆粒抑制作用を有しているか否かは、例えば、ラット好塩基球性白血病細胞(RBL-2H3細胞)等の、細胞表面に結合したIgEが抗原により架橋されることで、ヒスタミン等を含む顆粒球を細胞外へ放出する細胞を用いて実施することができる。このような細胞を抗原で刺激したときに、抗アレルギー剤を添加しなかった検体に比べて抗アレルギー剤を添加した検体の脱顆粒がどの程度抑制されたかを算出することによって確認することができる。
【0022】
本発明のアレルギー剤は、前記リンゴ酸以外のアレルギーに効果を有する成分を含有することができる。アレルギーに効果を有する成分としては、マルトトリオース、アデノシン、(3-メチル-6-ヒドロキシイソクマリン8-O-β-D-グルコシド(好ましくは、(3S)-3-メチル-6-ヒドロキシイソクマリン8-O-β-D-グルコシド)、7,8-ジヒドロ-8-β-D-グルコピラノシルオキシ-4-メトキシ-7-メチル-5H-フロ[2,3-g][2]ベンゾピラン-5-オン(好ましくは、(7S,8R)-7,8-ジヒドロ-8-β-D-グルコピラノシルオキシ-4-メトキシ-7-メチル-5H-フロ[2,3-g][2]ベンゾピラン-5-オン)、2-O-トランス-カフェオイルヒドロキシクエン酸、又は2-O-トランス-カフェオイルヒドロキシクエン酸6´-O-メチルエステルが挙げられる。
【0023】
[2]アレルギー症状の抑制用食品組成物
本明細書において、食品組成物とは、リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む。本発明の食品組成物は、アレルギー症状の抑制用食品組成物として使用できる。食品組成物としては、食品又は飲料が挙げられる。
【0024】
食品としては、具体的には、サラダなどの生鮮調理品;ステーキ、ピザ、ハンバーグなどの加熱調理品;野菜炒めなどの炒め調理品;トマト、ピーマン、セロリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、及びアスパラガスなどの野菜及びこれら野菜を加工した調理品;牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類及びこれらの肉類を加工した調理品;サケ、マグロ、タイ、ヒラメ、マス、タコ、イカなどの魚介類及びこれらの魚介類を加工した調理品;クッキー、パン、ビスケット、乾パン、ケーキ、煎餅、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム類、チューインガム、クラッカー、チップス、チョコレート及び飴等の菓子類;うどん、パスタ、及びそば等の麺類;かまぼこ、ハム、及び魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品;チーズ、クリーム、及びバターなどの乳製品;みそ、しょう油、ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、スープの素、麺つゆ、カレー粉、みりん、ルウ等の調味料類;豆腐などの大豆食品;ふりかけ、佃煮、シリアル等の農水産加工品;リンゴ又はブドウなどのフルーツ;並びにこんにゃくなどを挙げることができる。
【0025】
飲料としては、例えば、コーヒー飲料;ココア飲料;野菜から得られる野菜ジュース;グレープフルーツジュース、オレンジジュース、ブドウジュース、リンゴジュース、及びレモンジュース等の果汁飲料;緑茶、紅茶、煎茶、及びウーロン茶等の茶飲料;ビール、ワイン(赤ワイン、白ワイン、又はスパークリングワインなど)、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、及びリキュール類等のアルコール飲料;乳飲料;豆乳飲料;流動食;並びにスポーツ飲料などを挙げることができる。
【0026】
食品又は飲料には、動物に対する飼料及び飲料が含まれる。対象となる動物は、例えば、ヒトなどの霊長類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウス等が挙げられる。
【0027】
これらの食品又は飲料には、所望により、酸化防止剤、香料、酸味料、着色料、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、香辛料、pH調整剤、安定剤、植物油、動物油、糖及び糖アルコール類、ビタミン、有機酸、果汁エキス類、野菜エキス類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品添加物及び食品素材を単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。これらの食品素材及び食品添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜決定することができる。
【0028】
これらの食品又は飲料は、例えば、レトルト及びオートクレーブなどの加熱加圧滅菌、バッチ式殺菌、プレート殺菌、通電加熱殺菌、マイクロ波加熱殺菌、並びに、インジェクション及びインフュージョンなどのスチーム殺菌などの一般的な殺菌処理を行うことができる。
【0029】
食品及び飲料には、機能性食品(飲料)及び健康食品(飲料)が含まれる。本明細書において「健康食品(飲料)」とは、健康に何らかの効果を与えるか、あるいは、効果を期待することができる食品又は飲料を意味し、「機能性食品(飲料)」とは、前記「健康食品(飲料)」の中でも、生体調節機能(すなわち、アレルギー症状の発症の予防、又はアレルギー症状の緩和若しくは治療の機能)を充分に発現することができるように設計及び加工された食品又は飲料を意味する。機能性食品及び健康食品は、顆粒状、固形状、液状、カプセル状、ゲル状、又は錠剤状であることができる。
前記食品又は飲料に、リンゴ酸を添加して、本発明の食品組成物とすることができる。
【0030】
《作用》
本発明の抗アレルギー剤及びアレルギー症状の抑制用食品組成物が、I型アレルギーの症状を抑制できるメカニズムは、詳細に解析されたわけではないが、以下のように推定することができる。
I型アレルギーの原因となる抗原は、花粉症、及び食物など多様なものが存在する。しかし、I型アレルギーの発症メカニズムは、FcεRIを介して肥満細胞又は好塩基球の表面に結合しているIgEが抗原によって架橋されると、FcεRIが活性化されることでその下流へとシグナルが伝達され、ヒスタミン、ロイコトリエンC4、PAF、又は好酸球走化因子などの細胞内顆粒内容物が放出されるものである。すなわち、原因となる抗原は異なるが、肥満細胞又は好塩基球の脱顆粒により症状が引き起こされるものである。本発明のアレルギー剤は、I型アレルギーに共通する症状の発生に係る肥満細胞及び好塩基球からの脱顆粒を抑制するものである。従って、I型アレルギーの原因である抗原が異なっていても、脱顆粒を抑えることで、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましん、食物アレルギー、動物アレルギー、アレルギー性結膜炎、アナフィラキシーショック、又はアレルギー性胃腸炎などのI型アレルギーの症状を抑えることができると推定される。
【実施例0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
《実施例1》
本実施例では、DL-リンゴ酸を用いて脱顆粒試験を行った。
DL-リンゴ酸は蒸留水に溶解し、pHを7.0に調整したものをサンプルとして用いた。ラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞を、4×10細胞/ウェルの細胞濃度で96穴培養プレートに播種し、ジニトロフェニル(DNP)特異的IgEを含む5%FBS-DMEM培地中で20時間感作した。Tyrode緩衝液で細胞を2回洗浄した後、各濃度のDL-リンゴ酸を含むTyrode緩衝液を120μL/ウェルで添加して37℃で10分間培養した。10分後、抗原であるDNP-HSAを添加して37℃で30分間培養することで脱顆粒を誘導した後、上清を回収した。
【0033】
抗原刺激によって放出される顆粒中に含まれるβ-ヘキソサミニダーゼの放出量を指標として、DL-リンゴ酸の脱顆粒抑制効果を評価した。具体的には、上清を回収した後、細胞を0.1%のTriton X-100を含むTyrode緩衝液130μL中で、氷上で5秒間超音波処理し細胞を溶解した。上記で回収した上清と上記で得られた細胞溶解物の両方を、新しい96穴マイクロプレートの各ウェルに50μLずつ移し、37℃で5分間インキュベートした。その後、0.1Mのクエン酸塩緩衝液(pH4.5)に溶解した3.3mM 4-ニトロフェニル2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(基質液)100μLを各ウェルに添加し、さらに37℃で25分間インキュベートした。酵素反応は、2Mのグリシン緩衝液(pH10.4)を100μL添加することで停止した。反応液の吸光度を、マイクロプレートリーダー(iMarkマイクロプレートリーダー、Bio-Rad社)を使用して、波長415nmで測定した。脱顆粒の指標としてβ-ヘキソサミニダーゼ放出率(%)を、下式に従って算出した。

β-ヘキソサミニダーゼ放出率(%)=[(A上清-A上清のブランク)/{(A上清-A上清のブランク)+(A細胞溶解物-A細胞溶解物のブランク)}]×100

A:各ウェルの波長415nmでの吸光度

図1に示すように、DL-リンゴ酸は、濃度依存的にRBL-2H3細胞の脱顆粒を抑制した。
【0034】
《実施例2》
本実施例では、L-リンゴ酸を用いて、脱顆粒試験を行った。DL-リンゴ酸に代えて、L-リンゴ酸を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。図2に示すように、L-リンゴ酸は濃度依存的にRBL-2H3細胞の脱顆粒を抑制した。
【0035】
《実施例3》
本実施例では、D-リンゴ酸を用いて、脱顆粒試験を行った。DL-リンゴ酸に代えて、D-リンゴ酸を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。図3に示すように、D-リンゴ酸は濃度依存的にRBL-2H3細胞の脱顆粒を抑制した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の抗アレルギー剤は、花粉症、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、又は気管支喘息等のI型アレルギーによる症状を緩和、治療、又は予防することができる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む、抗I型アレルギー剤(但し、マッシュルーム抽出物、塩酸メクリジン、又は塩酸ジフェンヒドラミンを含むものを除く)
【請求項2】
リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む、脱顆粒抑制剤
【請求項3】
リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含むI型アレルギー症状の抑制用食品組成物。
【請求項4】
リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む脱顆粒抑食品組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明者は、新規な抗アレルギー剤について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、従来抗アレルギー作用が知られていなかったリンゴ酸が抗アレルギー作用を有することを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む、抗アレルギー剤、
[2]I型アレルギーに対する抗アレルギー剤である、[1]に記載の抗アレルギー剤、
[3]脱顆粒を抑制する、[1]又は[2]に記載の抗アレルギー剤、
[4]リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含むアレルギー症状の抑制用食品組成物、
[5]前記アレルギー症状がI型アレルギー症状である、[4]に記載の食品組成物、及び
[6]前記アレルギー症状の抑制が脱顆粒の抑制である、[4]又は[5]に記載の食品組成物、
に関する。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む、脱顆粒抑制剤。
【請求項2】
リンゴ酸、又はその塩を有効成分として含む、脱顆粒抑制用食品組成物。