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  • 特開-有機EL表示装置及び電子機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011953
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】有機EL表示装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20230118BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230118BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20230118BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20230118BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230118BHJP
   G09F 9/302 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
H05B33/12 C
H05B33/14 B
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/22 D
G09F9/30 365
G09F9/302 C
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019203195
(22)【出願日】2019-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田崎 聡美
(72)【発明者】
【氏名】増田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕基
(72)【発明者】
【氏名】岸野 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 和樹
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB08
3K107CC04
3K107CC45
3K107DD51
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD67
3K107DD68
3K107DD71
3K107FF13
3K107FF15
5C094AA44
5C094BA27
5C094CA24
5C094DA13
5C094EA04
5C094JA08
5C094JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プロセスコストを大幅に上昇させることなく、画素としての有機EL素子の性能を向上させることのできる有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】陽極3及び陰極4を有し青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rと、を有する有機EL表示装置1において、青色有機EL素子10Bは、第一の発光層51を有し、緑色有機EL素子10Gは、第二の発光層52を有し、赤色有機EL素子10Rは、第三の発光層53を有し、有機EL素子10B,10G,10Rは、共通層としての第四の発光層54を有し、第四の発光層54は、発光層51,52,53のそれぞれと直接接しており、第一の発光層51は、特定のピレン化合物を含有し、第四の発光層54は、特定のアントラセン化合物を含有する有機EL表示装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL表示装置であって、
互いに対向して配置された陽極及び陰極を有し
画素としての青色有機EL素子、画素としての緑色有機EL素子及び画素としての赤色有機EL素子と、を有し、
前記青色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第一の発光層を有し、
前記緑色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第二の発光層を有し、
前記赤色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第三の発光層を有し、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子は、当該青色有機EL素子、当該緑色有機EL素子及び当該赤色有機EL素子に亘って共通して設けられた第四の発光層を有し、
前記第四の発光層は、前記第一の発光層、前記第二の発光層及び前記第三の発光層と、前記陰極と、の間に配置され、
前記第四の発光層は、前記第一の発光層、前記第二の発光層及び前記第三の発光層のそれぞれと直接接しており、
前記第一の発光層は、下記一般式(1)で表される第一の化合物を含有し、
前記第一の化合物は、下記一般式(11)で表される基を少なくとも1つ有し、
前記第四の発光層は、下記一般式(2)で表される第二の化合物を含有する、
有機EL表示装置。
【化1】

(前記一般式(1)において、
101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(11)で表される基であり、
ただし、R101~R110の少なくとも1つは、前記一般式(11)で表される基であり、
前記一般式(11)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar101は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mxは、0、1、2、3、4又は5であり、
101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar101が2以上存在する場合、2以上のAr101は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(11)中の*は、前記一般式(1)中のピレン環との結合位置を示す。)
【化2】

(前記一般式(2)において、
201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
(前記一般式(1)で表される第一の化合物及び前記一般式(2)で表される第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示装置において、
前記青色有機EL素子は、前記陽極と前記第一の発光層との間に配置され、かつ、前記第一の発光層と直接接した第一の正孔輸送層を有し、
前記緑色有機EL素子は、前記陽極と前記第二の発光層との間に配置され、かつ、前記第二の発光層と直接接した第二の正孔輸送層を有し、
前記赤色有機EL素子は、前記陽極と前記第三の発光層との間に配置され、かつ、前記第三の発光層と直接接した第三の正孔輸送層を有する、
有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の有機EL表示装置において、
前記第一の発光層は、蛍光発光性の第三の化合物を含有する、
有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の有機EL表示装置において、
前記第三の化合物は、主ピーク波長が430nm以上480nm以下の蛍光発光を示す化合物である、
有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記第四の発光層は、蛍光発光性の第四の化合物を含有する、
有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の有機EL表示装置において、
前記第四の化合物は、主ピーク波長が430nm以上480nm以下の蛍光発光を示す化合物である、
有機EL表示装置。
【請求項7】
請求項2に記載の有機EL表示装置において、
前記第一の正孔輸送層の膜厚DHT1、前記第二の正孔輸送層の膜厚DHT2及び前記第三の正孔輸送層の膜厚DHT3は、下記数式(数1)の関係を満たす、
有機EL表示装置。
HT1<DHT2<DHT3…(数1)
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記第一の発光層、前記第二の発光層、前記第三の発光層、前記第一の正孔輸送層、前記第二の正孔輸送層及び前記第三の正孔輸送層以外の層は、前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子に亘って共通して設けられている、
有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記第四の発光層の膜厚DEM4は、前記第一の発光層の膜厚DEM1よりも大きい、
有機EL表示装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記第四の発光層の膜厚DEM4と、前記第一の発光層の膜厚DEM1とが、下記数式(数2)の関係を満たす、
有機EL表示装置。
5≦DEM4-DEM1≦28…(数2)
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記第四の発光層の膜厚DEM4は、12.5nm以上30nm以下である、
有機EL表示装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記第一の発光層の膜厚DEM1は、2nm以上12.5nm以下である、
有機EL表示装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の有機EL表示装置において、
前記第二の発光層は、燐光発光性の第五の化合物を含有し、
前記第三の発光層は、燐光発光性の第六の化合物を含有する、
有機EL表示装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の有機EL表示装置を搭載した電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という場合がある。)は、陽極及び陰極の間に発光層を挟んだ構造を有する。陽極から発光層に正孔が注入され、陰極から発光層に電子が注入される。発光層で正孔と電子とが再結合することによって、有機EL素子は、発光する。
【0003】
有機EL素子の性能向上を図るため、有機EL素子に用いる化合物について様々な検討がなされている。有機EL素子の性能としては、例えば、輝度、発光波長、色度、発光効率、駆動電圧、及び寿命が挙げられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ホスト材料としてのピレン誘導体を含有する陽極側の発光層と、ホスト材料としてのアントラセン誘導体を含有する陰極側の発光層と、を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子が記載されている。
【0005】
有機EL表示装置は、有機EL素子を画素として含む。画素としての有機EL素子は、発光色に応じた色で発光可能な発光層を有する。
【0006】
例えば、特許文献2には、赤色発光層を有する第1サブピクセル、緑色発光層を有する第2サブピクセル、青色発光層を有する第3サブピクセルを備えた有機発光ディスプレイが記載されている。特許文献2に係る有機発光ディスプレイにおいては、第3サブピクセルの青色発光層は、第1サブピクセル及び第2サブピクセルにも共通して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-161218号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/155515号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、プロセスコストを大幅に上昇させることなく、画素としての有機EL素子の性能を向上させることのできる有機EL表示装置を提供することを目的とする。また、本発明は、当該有機EL表示装置を搭載した電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、有機EL表示装置であって、
互いに対向して配置された陽極及び陰極を有し
画素としての青色有機EL素子、画素としての緑色有機EL素子及び画素としての赤色有機EL素子と、を有し、
前記青色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第一の発光層を有し、
前記緑色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第二の発光層を有し、
前記赤色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第三の発光層を有し、
前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子は、当該青色有機EL素子、当該緑色有機EL素子及び当該赤色有機EL素子に亘って共通して設けられた第四の発光層を有し、
前記第四の発光層は、前記第一の発光層、前記第二の発光層及び前記第三の発光層と、前記陰極と、の間に配置され、
前記第四の発光層は、前記第一の発光層、前記第二の発光層及び前記第三の発光層のそれぞれと直接接しており、
前記第一の発光層は、下記一般式(1)で表される第一の化合物を含有し、
前記第一の化合物は、下記一般式(11)で表される基を少なくとも1つ有し、
前記第四の発光層は、下記一般式(2)で表される第二の化合物を含有する、
有機EL表示装置が提供される。
【0010】
【化1】
【0011】
(前記一般式(1)において、
101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(11)で表される基であり、
ただし、R101~R110の少なくとも1つは、前記一般式(11)で表される基であり、
前記一般式(11)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar101は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mxは、0、1、2、3、4又は5であり、
101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar101が2以上存在する場合、2以上のAr101は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(11)中の*は、前記一般式(1)中のピレン環との結合位置を示す。)
【0012】
【化2】
【0013】
(前記一般式(2)において、
201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0014】
(前記一般式(1)で表される第一の化合物及び前記一般式(2)で表される第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0015】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る有機EL表示装置を搭載した電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、プロセスコストを大幅に上昇させることなく、画素としての有機EL素子の性能を向上させることのできる有機EL表示装置を提供できる。また、本発明の一態様によれば、当該有機EL表示装置を搭載した電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第一実施形態〕
[有機EL表示装置]
【0019】
本実施形態に係る有機EL表示装置は、互いに対向して配置された陽極及び陰極を有し画素としての青色有機EL素子、画素としての緑色有機EL素子及び画素としての赤色有機EL素子と、を有する。前記青色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第一の発光層を有し、前記緑色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第二の発光層を有し、前記赤色有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に配置された第三の発光層を有する。前記青色有機EL素子、前記緑色有機EL素子及び前記赤色有機EL素子は、当該青色有機EL素子、当該緑色有機EL素子及び当該赤色有機EL素子に亘って共通して設けられた第四の発光層を有する。
前記第四の発光層は、前記第一の発光層、前記第二の発光層及び前記第三の発光層と、前記陰極と、の間に配置され、前記第四の発光層は、前記第一の発光層、前記第二の発光層及び前記第三の発光層のそれぞれと直接接している。
前記第一の発光層は、下記一般式(1)で表される第一の化合物を含有し、前記第一の化合物は、下記一般式(11)で表される基を少なくとも1つ有する。
前記第四の発光層は、下記一般式(2)で表される第二の化合物を含有する。
【0020】
第1実施形態に係る有機EL表示装置の一例の構成について図1を参照して説明する。
図1には、一実施形態に係る有機EL表示装置1が記載されている。
有機EL表示装置1は、基板2によって支持された電極及び有機層を有する。
有機EL表示装置1は、互いに対向して配置された陽極3及び陰極4を有する。
有機EL表示装置1は、画素としての青色有機EL素子10B、画素としての緑色有機EL素子10G及び画素としての赤色有機EL素子10Rと、を有する。
なお、図1は、有機EL表示装置1の概略図であって、有機EL表示装置1のサイズや各層の厚み等を限定するものではない。例えば、図1において第一の発光層、第二の発光層、第三の発光層は同じ厚みで表現されているが、実際の有機EL表示装置においてこれらの3つの層の厚みが同じであることを限定するものではない。
【0021】
一実施形態において、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのいずれも、陽極3、正孔注入層6、正孔輸送帯域7、発光帯域5、電子輸送層8、電子注入層9及び陰極4を有する。本明細書において、正孔注入層6、正孔輸送帯域7、発光帯域5、電子輸送層8及び電子注入層9をまとめて有機層と称する場合がある。
【0022】
一実施形態において、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのいずれも、陽極3、正孔注入層6、正孔輸送帯域7、発光帯域5、電子輸送層8、電子注入層9及び陰極4をこの順で有する。
一実施形態においては、画素としての青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rが基板2の上に並列に配置されている。
【0023】
一実施形態において、有機EL表示装置1は、青色画素としての青色有機EL素子10B、緑色画素としての緑色有機EL素子10G及び赤色画素としての赤色有機EL素子10Rを有する。一実施形態において、各画素には独立してそれぞれ電圧がかかる。有機EL表示装置1において、青色画素、緑色画素及び赤色画素を選択的に発光させることができる。一実施形態に係る有機EL表示装置1は、青色画素、緑色画素及び赤色画素を1つずつ含む単位を、複数、有してもよい。この場合、当該青色画素、緑色画素及び赤色画素からなる単位が、複数、基板上に繰り返し配列されていてもよい。また、一単位中にそれぞれの画素が、複数、含まれていてもよく、例えば、青色画素が1つ、緑色画素が1つ、赤色画素が2つである構成を一単位としてもよい。なお、本実施形態に係る有機EL表示装置は、青色画素、緑色画素及び赤色画素以外の他の色で発光する画素を有してもよい。
【0024】
(青色有機EL素子)
一実施形態において、青色有機EL素子10Bは、陽極3、正孔注入層6、正孔輸送帯域7、第一の発光層51、第四の発光層54、電子輸送層8、電子注入層9及び陰極4をこの順に備える。
一実施形態において、青色有機EL素子10Bは、発光帯域5中に第一の発光層51及び第四の発光層54を有する。なお、青色有機EL素子10Bは、図1に示した層と異なる他の層を含んでいてもよい。
【0025】
一実施形態において、青色有機EL素子10Bは、陽極3と第一の発光層51との間に配置された第一の正孔輸送層71を有する。
一実施形態において、第一の正孔輸送層71は、第一の発光層と直接接していることが好ましい。
一実施形態において、青色有機EL素子10Bは、第四の正孔輸送層74を有する。この場合、青色有機EL素子10Bにおける正孔輸送帯域7は、第一の正孔輸送層71及び第四の正孔輸送層74を含んで構成される。
【0026】
(第一の発光層)
第一の発光層51は、第四の発光層54と直接接している。また、第一の発光層51は、第一の正孔輸送層71と直接接している。
【0027】
一実施形態において、第一の発光層51の膜厚DEM1は、2nm以上12.5nm以下であることが好ましい。
第一の発光層51の膜厚DEM1は、2nm以上10nm以下であることがより好ましく、3nm以上7nm以下であることがさらに好ましい。
【0028】
(層又は帯域の膜厚の測定方法)
有機EL素子が含む各層又は帯域の膜厚は、以下のように測定できる。
測定対象となる層又は帯域を有する有機EL素子の中心部を、測定対象の層又は帯域の形成面に対して垂直方向(つまり有機層の厚さ方向)に切断し、その中心部の切断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、膜厚を測定する。
例えば、第一の発光層51の膜厚を測定する場合、測定対象となる層を有する青色有機EL素子10Bの中心部を、第一の正孔輸送層の形成面に対して垂直方向(つまり第一の正孔輸送層の厚さ方向)に切断し、その中心部の切断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、膜厚を測定する。青色有機EL素子10Bの中心部は、図1中、符号CLで示し、緑色有機EL素子10Gの中心部は、図1中、符号CLで示し、赤色有機EL素子10Rの中心部は、図1中、符号CLで示す。
なお、有機EL素子の中心部とは、各画素において、有機EL素子を電極側から投影した形状の中心部を意味し、例えば、投影形状が矩形状である場合には矩形の対角線の交点を意味する。
本明細書において、厚さとは、目的とする帯域又は層がそれぞれ複数層で構成される場合、複数の層の厚さの和を意味する。
【0029】
第一の発光層は、下記一般式(1)で表される第一の化合物を第一のホスト材料として含有する。前記第一の化合物は、下記一般式(11)で表される基を少なくとも1つ有する。
【0030】
本明細書において、「ホスト材料」とは、例えば、「層の50質量%以上」含まれる材料である。したがって、例えば、第一の発光層は、下記一般式(1)で表される第一の化合物を、第一の発光層の全質量の50質量%以上、含有する。また、例えば、「ホスト材料」は、層の60質量%以上、層の70質量%以上、層の80質量%以上、層の90質量%以上、又は層の95質量%以上含まれていてもよい。
【0031】
一実施形態において、第一の発光層は、蛍光発光性の第三の化合物をさらに含有することが好ましい。本明細書において、「蛍光性の化合物」は、遅延蛍光性を示さない化合物である。よって、蛍光発光性の第三の化合物は、遅延蛍光性を示さない化合物である。
【0032】
一実施形態において、第三の化合物は、主ピーク波長が430nm以上480nm以下の蛍光発光を示す化合物であることが好ましい。
【0033】
一実施形態において、第一の発光層が第一の化合物及び第三の化合物を含む場合、第一の化合物は、ホスト材料(マトリックス材料と称する場合もある。)であることが好ましく、第三の化合物は、ドーパント材料(ゲスト材料、エミッター、又は発光材料と称する場合もある。)であることが好ましい。
【0034】
一実施形態において、第一の発光層は、ドーパント材料としての燐光発光性材料を含まないことが好ましい。
また、一実施形態において、第一の発光層は、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。ここで、重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
また、一実施形態において、第一の発光層は、金属錯体を含まないことも好ましい。
【0035】
第一の発光層に用いることができる青色で蛍光発光する化合物として、例えば、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体及びトリアリールアミン誘導体等を使用できる。
本明細書において、青色の発光とは、発光スペクトルの主ピーク波長が430nm以上、500nm以下の範囲内である発光をいう。
【0036】
・第一の化合物
第一の化合物は、下記一般式(1)で表される化合物である。第一の化合物は、下記一般式(11)で表される基を少なくとも1つ有する。
【0037】
【化3】
【0038】
前記一般式(1)において、
101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(11)で表される基であり、
ただし、R101~R110の少なくとも1つは、前記一般式(11)で表される基であり、
前記一般式(11)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar101は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mxは、0、1、2、3、4又は5であり、
101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar101が2以上存在する場合、2以上のAr101は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(11)中の*は、前記一般式(1)中のピレン環との結合位置を示す。
【0039】
前記一般式(1)で表される第一の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。
【0040】
一実施形態において、Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0041】
一実施形態において、Ar101は、
置換もしくは無置換のフェニル基、
置換もしくは無置換のナフチル基、
置換もしくは無置換のビフェニル基、
置換もしくは無置換のターフェニル基、
置換もしくは無置換のピレニル基、
置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は
置換もしくは無置換のフルオレニル基であることが好ましい。
【0042】
一実施形態において、前記第一の化合物は、下記一般式(101)で表されることが好ましい。
【0043】
【化4】
【0044】
(前記一般式(101)において、
101~R120は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
ただし、R101~R110のうち1つがL101との結合位置を示し、R111~R120のうち1つがL101との結合位置を示し、
101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
mxは、0、1、2、3、4又は5であり、
101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0045】
一実施形態において、L101は、単結合、又は置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であることが好ましい。
【0046】
一実施形態において、R101~R110のうち2つ以上が、前記一般式(11)で表される基であることが好ましい。
【0047】
一実施形態において、R101~R110のうち2つ以上が、前記一般式(11)で表される基であり、かつ、Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0048】
一実施形態において、
Ar101は、置換もしくは無置換のピレニル基ではなく、
101は、置換もしくは無置換のピレニレン基ではなく、
前記一般式(11)で表される基ではないR101~R110としての置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基は、置換もしくは無置換のピレニル基ではないことが好ましい。
【0049】
一実施形態において、前記一般式(11)で表される基ではないR101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であることが好ましい。
【0050】
一実施形態において、前記一般式(11)で表される基ではないR101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基であることが好ましい。
【0051】
一実施形態において、前記一般式(11)で表される基ではないR101~R110は、水素原子であることが好ましい。
【0052】
第一の化合物において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基であることが好ましい。
【0053】
(第一の化合物の製造方法)
第一の化合物は、公知の方法により製造できる。また、第一の化合物は、公知の方法に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応及び原料を用いることによっても、製造できる。
【0054】
(第一の化合物の具体例)
第一の化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物挙げられる。ただし、本発明は、これら第一の化合物の具体例に限定されない。
【0055】
【化5】
【0056】
(第四の発光層)
第四の発光層54は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って共通して設けられた層である。本明細書においては、複数の素子に亘って共通して設けられている層を共通層と称する場合がある。本明細書においては、複数の素子に亘って共通して設けられている帯域を共通帯域と称する場合がある。
【0057】
一実施形態において、共通層としての第四の発光層54は、第一の発光層51、第二の発光層52及び第三の発光層53と電子輸送層8との間に配置されている。
一実施形態において、共通層としての第四の発光層54は、第一の発光層51、第二の発光層52及び第三の発光層53と直接接している。
【0058】
青色有機EL素子10Bにおいては、第一の発光層51と第四の発光層54とが積層している。前記一般式(1)で表される第一の化合物を含有する第一の発光層51と、下記一般式(2)で表される第二の化合物を含有する第四の発光層54とを積層させることで、青色有機EL素子10Bの有機EL素子としての性能が向上する。
一実施形態において、第四の発光層54は、第一の発光層51に積層することで青色有機EL素子10Bの性能を向上させつつ、青色有機EL素子10Bだけでなく緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rにも亘って共通層として設けられる。
【0059】
第四の発光層54は、共通層であり、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚である。第四の発光層54が共通層であるため、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれの第四の発光層54を、マスク等を入れ替えずに作製できる。その結果、有機EL表示装置1の生産性が向上する。
【0060】
一実施形態において、第四の発光層54は、下記一般式(2)で表される第二の化合物を第二のホスト材料として含有することが好ましい。したがって、例えば、第四の発光層54は、下記一般式(2)で表される第二の化合物を、第四の発光層54の全質量の50質量%以上、含有する。
【0061】
一実施形態において、第四の発光層は、蛍光発光性の第四の化合物をさらに含有することが好ましい。
【0062】
一実施形態において、第四の化合物は、主ピーク波長が430nm以上480nm以下の蛍光発光を示す化合物であることが好ましい。
【0063】
化合物の主ピーク波長の測定方法は、次の通りである。測定対象となる化合物の10-6mol/L以上10-5mol/L以下のトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の発光スペクトル(縦軸:発光強度、横軸:波長とする。)を測定する。発光スペクトルは、株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光光度計(装置名:F-7000)により測定できる。なお、発光スペクトル測定装置は、ここで用いた装置に限定されない。
発光スペクトルにおいて、発光強度が最大となる発光スペクトルのピーク波長を発光主ピーク波長とする。なお、本明細書において、主ピーク波長を蛍光発光主ピーク波長(FL-peak)と称する場合がある。
【0064】
一実施形態において、第四の発光層54が第二の化合物及び第四の化合物を含む場合、第二の化合物は、ホスト材料(マトリックス材料と称する場合もある。)であることが好ましく、第四の化合物は、ドーパント材料(ゲスト材料、エミッター、又は発光材料と称する場合もある。)であることが好ましい。
第四の化合物と、第三の化合物とは、互いに同一の構造であるか又は異なる構造である。
【0065】
一実施形態において、第四の発光層54は、ドーパント材料としての燐光発光性材料を含まないことが好ましい。
また、一実施形態において、第四の発光層54は、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。ここで、重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
また、一実施形態において、第四の発光層54は、金属錯体を含まないことも好ましい。
【0066】
第四の発光層に用いることができる青色で蛍光発光する化合物として、例えば、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体及びトリアリールアミン誘導体等を使用できる。
【0067】
一実施形態において、第四の発光層54の膜厚DEM4は、第一の発光層51の膜厚DEM1よりも大きいことが好ましい。
【0068】
一実施形態において、第四の発光層54の膜厚DEM4と、第一の発光層51の膜厚DEM1とが、下記数式(数2)の関係を満たすことが好ましい。
5≦DEM4-DEM1≦28…(数2)
【0069】
一実施形態において、第四の発光層54の膜厚DEM4は、12.5nm以上30nm以下であることが好ましい。
第四の発光層54の膜厚DEM4は、15nm以上25nm以下であることがより好ましく、15nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。
【0070】
・第二の化合物
本実施形態に係る一般式(2)で表される第二の化合物について説明する。
【0071】
【化6】
【0072】
(前記一般式(2)において、
201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0073】
(本実施形態に係る第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0074】
一実施形態において、
201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0075】
一実施形態において、Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
フェニル基、
ナフチル基、
フェナントリル基、
ビフェニル基、
ターフェニル基、
ジフェニルフルオレニル基、
ジメチルフルオレニル基、
ベンゾジフェニルフルオレニル基、
ベンゾジメチルフルオレニル基、
ジベンゾフラニル基、
ジベンゾチエニル基、
ナフトベンゾフラニル基、又は
ナフトベンゾチエニル基であることが好ましい。
【0076】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される第二の化合物中、前記一般式(21)で表される基ではないR201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基であることが好ましい。
【0077】
一実施形態において、L101は、
単結合、又は
無置換の環形成炭素数6~22のアリーレン基であり、
Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~22のアリール基であることが好ましい。
【0078】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される第二の化合物中、R201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基であることが好ましい。
【0079】
一実施形態において、前記一般式(2)で表される第二の化合物中、R201~R208は、水素原子であることが好ましい。
【0080】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0081】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0082】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0083】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0084】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のm-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0085】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のo-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0086】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0087】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0088】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換の1,4-ナフタレンジイル基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0089】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2)中のL202が無置換のm-フェニレン基であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0090】
一実施形態において、第二の化合物は、下記一般式(2X)で表される化合物であることも好ましい。
【0091】
【化7】
【0092】
(前記一般式(2X)において、
201並びにR203~R208は、それぞれ独立に、前記一般式(2)におけるR201並びにR203~R208と同義であり、
201、L202、Ar201及びAr202は、それぞれ、前記一般式(2)におけるL201、L202、Ar201及びAr202と同義であり、
203は、前記一般式(2)におけるL201と同義であり、
201、L202及びL203は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar203は、前記一般式(2)におけるAr201と同義であり、
Ar201、Ar202及びAr203は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0093】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0094】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0095】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が単結合であり、Ar202が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0096】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0097】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のm-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0098】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のo-フェニレン基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0099】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0100】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のp-フェニレン基であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0101】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換の1,4-ナフタレンジイル基であり、Ar202が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0102】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL202が無置換のm-フェニレン基であり、Ar202が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0103】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が単結合であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0104】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が単結合であり、Ar201が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0105】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が単結合であり、Ar201が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0106】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のp-フェニレン基であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0107】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のm-フェニレン基であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0108】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のo-フェニレン基であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0109】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のp-フェニレン基であり、Ar201が無置換の1-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0110】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のp-フェニレン基であり、Ar201が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0111】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換の1,4-ナフタレンジイル基であり、Ar201が無置換のフェニル基である化合物であることも好ましい。
【0112】
一実施形態において、第二の化合物は、前記一般式(2X)中のL201が無置換のm-フェニレン基であり、Ar201が無置換の2-ナフチル基である化合物であることも好ましい。
【0113】
前記第二の化合物において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基であることが好ましい。
【0114】
(第二の化合物の製造方法)
第二の化合物は、公知の方法により製造できる。また、第二の化合物は、公知の方法に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応及び原料を用いることによっても、製造できる。
【0115】
(第二の化合物の具体例)
第二の化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物挙げられる。ただし、本発明は、これら第二の化合物の具体例に限定されない。
【0116】
【化8】
【0117】
【化9】
【0118】
(緑色有機EL素子)
一実施形態において、緑色有機EL素子10Gは、陽極3、正孔注入層6、正孔輸送帯域7、第二の発光層52、第四の発光層54、電子輸送層8、電子注入層9及び陰極4をこの順に備える。
一実施形態において、緑色有機EL素子10Gは、発光帯域5中に第二の発光層52及び第四の発光層54を有する。
なお、緑色有機EL素子10Gは、図1に示した層と異なる他の層を含んでいてもよい。
【0119】
一実施形態において、緑色有機EL素子10Gは、陽極3と第二の発光層52との間に配置された第二の正孔輸送層72を有する。
【0120】
一実施形態において、緑色有機EL素子10Gにおける正孔輸送帯域7は、第二の正孔輸送層72及び第四の正孔輸送層74を含む。
【0121】
(第二の発光層)
一実施形態において、第二の発光層52は、第四の発光層54と直接接している。また、第二の発光層52は、第二の正孔輸送層72と直接接している。
【0122】
一実施形態において、第二の発光層52は、第二のホスト材料を含有していることが好ましい。
【0123】
本明細書において、「ホスト材料」とは、例えば、「層の50質量%以上」含まれる材料である。したがって、例えば、第二の発光層52は、第二のホスト材料を、第二の発光層52の全質量の50質量%以上、含有する。
【0124】
一実施形態において、第二の発光層52が第二のホスト材料(マトリックス材料と称する場合もある。)と、ドーパント材料(ゲスト材料、エミッター、又は発光材料と称する場合もある。)としての発光性の化合物とを含有することが好ましい。
【0125】
一実施形態において、第二の発光層52は、ドーパント材料として、蛍光を発光する蛍光発光性の化合物及び燐光を発光する燐光発光性の化合物の少なくともいずれかを用いることができる。蛍光性化合物は、一重項励起状態から発光可能な化合物であり、燐光発光性の化合物は、三重項励起状態から発光可能な化合物である。
一実施形態において、第二の発光層52に用いることができる緑色で蛍光発光する化合物として、例えば、芳香族アミン誘導体等を使用できる。第二の発光層52に用いることができる緑色で燐光発光する化合物として、例えば、イリジウム錯体等が使用される。
本明細書において、緑色の発光とは、発光スペクトルの主ピーク波長が500nm以上、560nm以下の範囲内である発光をいう。
【0126】
一実施形態において、第二の発光層52は、燐光発光性の第五の化合物を含有していることが好ましい。
【0127】
(赤色有機EL素子)
一実施形態において、赤色有機EL素子10Rは、陽極3、正孔注入層6、正孔輸送帯域7、第三の発光層53、第四の発光層54、電子輸送層8、電子注入層9及び陰極4をこの順に備える。
一実施形態において、赤色有機EL素子10Rは、発光帯域5中に第三の発光層53及び第四の発光層54を有する。
なお、赤色有機EL素子10Rは、図1に示した層と異なる他の層を含んでいてもよい。
【0128】
一実施形態において、赤色有機EL素子10Rは、陽極3と第三の発光層53との間に配置された第三の正孔輸送層73を有する。
【0129】
一実施形態において、赤色有機EL素子10Rにおける正孔輸送帯域7は、第三の正孔輸送層73及び第四の正孔輸送層74を含む。
【0130】
(第三の発光層)
一実施形態において、第三の発光層53は、第四の発光層54と直接接している。第三の正孔輸送層73は、第三の発光層53と直接接している。
【0131】
一実施形態において、第三の発光層53は、第三のホスト材料を含有していることが好ましい。
【0132】
本明細書において、「ホスト材料」とは、例えば、「層の50質量%以上」含まれる材料である。したがって、例えば、第三の発光層は、第三のホスト材料を、第三の発光層の全質量の50質量%以上、含有する。
【0133】
一実施形態において、第三の発光層53が第三のホスト材料(マトリックス材料と称する場合もある。)と、ドーパント材料(ゲスト材料、エミッター、又は発光材料と称する場合もある。)としての発光性の化合物とを含有することが好ましい。
【0134】
第三の発光層53は、ドーパント材料として、蛍光を発光する蛍光発光性の化合物及び燐光を発光する燐光発光性の化合物の少なくともいずれかを用いることができる。蛍光性化合物は、一重項励起状態から発光可能な化合物であり、燐光発光性の化合物は、三重項励起状態から発光可能な化合物である。
第三の発光層53に用いることができる赤色で蛍光発光する化合物として、例えば、テトラセン誘導体及びジアミン誘導体等を使用できる。第三の発光層53に用いることができる赤色で燐光発光する化合物として、例えば、イリジウム錯体、白金錯体、テルビウム錯体及びユーロピウム錯体等の金属錯体を使用できる。
本明細書において、赤色の発光とは、発光スペクトルの主ピーク波長が600nm以上、660nm以下の範囲内である発光をいう。
【0135】
第二の発光層52又は第三の発光層53に含まれるホスト材料としては、例えば、上述した発光性の高い物質(ドーパント材料)を発光層中に分散させさせるための化合物であることが好ましい。ホスト材料としては、発光性の高い物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
ホスト材料としては、例えば、下記(1)~(4)の化合物を使用できる。
(1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、若しくは亜鉛錯体等の金属錯体、
(2)オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、若しくはフェナントロリン誘導体等の複素環化合物、
(3)カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、若しくはクリセン誘導体等の縮合芳香族化合物、
(4)トリアリールアミン誘導体、若しくは縮合多環芳香族アミン誘導体等の芳香族アミン化合物
【0136】
一実施形態において、第三の発光層53は、燐光発光性の第六の化合物を含有していることが好ましい。
【0137】
一実施形態に係る有機EL表示装置1の構成についてさらに説明する。以下、符号の記載は省略することがある。
【0138】
(陽極)
一実施形態において、陽極3は、陰極4に対して対向して配置されている。
一実施形態において、陽極3は、通常、非共通層である。一実施形態において、例えば、陽極3が非共通層である場合、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれにおける陽極は、互いに物理的に切り分けられた状態である。
一実施形態において、基板2上に形成される陽極3には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0139】
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1質量%以上10質量%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。また、例えば、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5質量%以上5質量%以下、酸化亜鉛を0.1質量%以上1質量%以下含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0140】
一実施形態において、陽極3上に形成される有機層のうち、陽極3に接して形成される正孔注入層6は、陽極3の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて形成されるため、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)を用いることができる。
【0141】
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0142】
(陰極)
一実施形態において、陰極4は、陽極3に対して対向して配置されている。
一実施形態において、陰極4は、共通層であっても、非共通層であってもよい。
一実施形態において、陰極4は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って共通して設けられた共通層であることが好ましい。
一実施形態において、陰極4は、電子注入層9と直接接している。
一実施形態において、陰極4は、共通層である場合、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚である。陰極4が共通層である場合、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれの陰極4を、マスク等を入れ替えずに作製できる。その結果、有機EL表示装置1の生産性が向上する。
【0143】
一実施形態において、陰極4には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0144】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極4を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0145】
なお、一実施形態において、電子注入層9を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0146】
(正孔注入層)
一実施形態において、正孔注入層6は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って共通して設けられていることが好ましい。
一実施形態において、正孔注入層6は、第四の正孔輸送層74と陽極3との間に配置されている。
一実施形態において、正孔注入層6は、第四の正孔輸送層74に直接接している。
一実施形態において、正孔注入層6は、共通層である場合、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚である。正孔注入層6が共通層であるため、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれの正孔注入層6を、マスク等を入れ替えずに作製できる。その結果、有機EL表示装置1の生産性が向上する。
【0147】
正孔注入層6は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。
【0148】
また、正孔注入性の高い物質としては、低分子の有機化合物である4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等やジピラジノ[2,3-f:20,30-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)も挙げられる。
【0149】
また、正孔注入性の高い物質としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることもできる。
【0150】
(正孔輸送帯域)
一実施形態において、発光帯域5と陽極3との間に正孔輸送帯域7を有する。
一実施形態において、正孔輸送帯域7は、第一の正孔輸送層71、第二の正孔輸送層72、第三の正孔輸送層73及び第四の正孔輸送層74を含み得る。
【0151】
一実施形態において、第一の正孔輸送層71は、青色有機EL素子10Bに含まれ、第二の正孔輸送層72は、緑色有機EL素子10Gに含まれ、第三の正孔輸送層73は、赤色有機EL素子10Rに含まれる。一実施形態において、第一の正孔輸送層71、第二の正孔輸送層72及び第三の正孔輸送層73は、非共通層である。
【0152】
一実施形態において、第四の正孔輸送層74は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って共通して設けられていることが好ましい。
一実施形態において、共通層としての第四の正孔輸送層74は、第一の正孔輸送層71、第二の正孔輸送層72及び第三の正孔輸送層73と正孔注入層6との間に配置されている。
一実施形態において、共通層としての第四の正孔輸送層74は、第一の正孔輸送層71、第二の正孔輸送層72及び第三の正孔輸送層73に直接接している。
一実施形態において、第四の正孔輸送層74は、共通層であり、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚である。第四の正孔輸送層74が共通層であるため、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれの第四の正孔輸送層74を、マスク等を入れ替えずに作製できる。その結果、有機EL表示装置1の生産性が向上する。
【0153】
一実施形態において、第一の正孔輸送層71の膜厚DHT1、第二の正孔輸送層72の膜厚DHT2及び第三の正孔輸送層73の膜厚DHT3は、下記数式(数1)の関係を満たすことが好ましい。
HT1<DHT2<DHT3…(数1)
【0154】
(正孔輸送層)
一実施形態において、正孔輸送層(第一の正孔輸送層71、第二の正孔輸送層72、第三の正孔輸送層73及び第四の正孔輸送層74)は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送層には、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体等を使用する事ができる。具体的には、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BAFLP)、4,4’-ビス[N-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm/(V・s)以上の正孔移動度を有する物質である。
【0155】
正孔輸送層には、CBP、9-[4-(N-カルバゾリル)]フェニル-10-フェニルアントラセン(CzPA)、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(PCzPA)のようなカルバゾール誘導体や、t-BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0156】
但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0157】
(電子輸送層)
一実施形態において、発光帯域5と陰極4との間に電子輸送層8を有する。
一実施形態において、電子輸送層8は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って共通して設けられている。
一実施形態において、電子輸送層8は、第四の発光層54と電子注入層9との間に配置されている。
一実施形態において、電子輸送層8は、第四の発光層54と直接接している。電子輸送層8は、電子注入層9と直接接している。
一実施形態において、電子輸送層8は、共通層であり、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚である。電子輸送層8が共通層であるため、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれの電子輸送層8を、マスク等を入れ替えずに作製できる。その結果、有機EL表示装置1の生産性が向上する。
【0158】
一実施形態において、電子輸送層8は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。具体的には低分子の有機化合物として、Alq、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(ptert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。本実施態様において、電子輸送層には、例えば、アジン化合物又はベンゾイミダゾール化合物を好適に用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm/(V・s)以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。また、電子輸送層は、単層で構成されていてもよいし、上記物質からなる層が二層以上積層されて構成されていてもよい。
【0159】
また、電子輸送層には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)などを用いることができる。
【0160】
(電子注入層)
一実施形態において、電子注入層9は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って共通して設けられている。
一実施形態において、電子注入層9は、電子輸送層8と陰極4との間に配置されている。
一実施形態において、電子注入層9は、電子輸送層8に直接接している。
一実施形態において、電子注入層9は、共通層であり、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って同じ膜厚である。電子注入層9が共通層であるため、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rのそれぞれの電子注入層9を、マスク等を入れ替えずに作製できる。その結果、有機EL表示装置1の生産性が向上する。
【0161】
電子注入層9は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極からの電子注入をより効率良く行うことができる。
【0162】
あるいは、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0163】
一実施形態において、第一の発光層51、第二の発光層52、第三の発光層53、第一の正孔輸送層71、第二の正孔輸送層72及び第三の正孔輸送層73以外の層は、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って共通して設けられていることが好ましい。有機EL表示装置1における非共通層の数を少なくすることで、製造効率が向上する。
【0164】
<有機EL表示装置の製造方法>
一実施形態に係る有機EL表示装置1の製造方法について説明する。
まず、基板2上に陽極3を形成する。
次に、共通層としての正孔注入層6を陽極3の上に亘って形成する。青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rの正孔注入層6は、同じ材料、かつ、同じ膜厚で形成される。
次に、共通層としての第四の正孔輸送層74を正孔注入層6の上に亘って形成する。青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rの第四の正孔輸送層74は、同じ材料、かつ、同じ膜厚で形成される。
【0165】
次に、第四の正孔輸送層74の上であって、青色有機EL素子10Bの陽極3に対応する領域に、所定の成膜用マスク(青色有機EL素子用マスク)を用いて、所定膜厚で第一の正孔輸送層71を形成する。第一の正孔輸送層71の形成に続けて、第一の正孔輸送層71の上に第一の発光層51を形成する。
次に、第四の正孔輸送層74の上であって、緑色有機EL素子10Gの陽極3に対応する領域に、所定の成膜用マスク(緑色有機EL素子用マスク)を用いて、所定膜厚で第二の正孔輸送層72を形成する。第二の正孔輸送層72の形成に続けて、第二の正孔輸送層72の上に第二の発光層52を形成する。
次に、第四の正孔輸送層74の上であって、赤色有機EL素子10Rの陽極3に対応する領域に、所定の成膜用マスク(赤色有機EL素子用マスク)を用いて、所定膜厚で第三の正孔輸送層73を形成する。第三の正孔輸送層73の形成に続けて、第三の正孔輸送層73の上に第三の発光層53を形成する。
第一の正孔輸送層71、第二の正孔輸送層72及び第三の正孔輸送層73は、互いに異なる材料で形成される。
第一の発光層51、第二の発光層52及び第三の発光層53は、互いに異なる材料で形成される。
なお、第四の正孔輸送層74の形成の次に、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rの非共通層を形成する順番は、特に限定されない。
例えば、第四の正孔輸送層74を形成した後、緑色有機EL素子10Gの第二の正孔輸送層72及び第二の発光層52を形成し、その後、赤色有機EL素子10Rの第三の正孔輸送層73及び第三の発光層53を形成し、その後、青色有機EL素子10Bの第一の正孔輸送層71及び第一の発光層51を形成する、という順番でもよい。
また、例えば、第四の正孔輸送層74を形成した後、赤色有機EL素子10Rの第三の正孔輸送層73及び第三の発光層53を形成し、その後、緑色有機EL素子10Gの第二の正孔輸送層72及び第二の発光層52を形成し、その後、青色有機EL素子10Bの第一の正孔輸送層71及び第一の発光層51を形成する、という順番でもよい。
【0166】
第一の発光層51、第二の発光層52及び第三の発光層53の形成の後、共通層としての第四の発光層54を第一の発光層51、第二の発光層52及び第三の発光層53の上に亘って形成する。第四の発光層54は、同じ材料、かつ、同じ膜厚で形成する。
【0167】
次に、共通層としての電子輸送層8を第一の発光層51、第二の発光層52及び第三の発光層53の上に亘って形成する。青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rの第四の正孔輸送層74は、同じ材料、かつ、同じ膜厚で形成する。
【0168】
次に、共通層としての電子注入層9を電子輸送層8の上に形成する。青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rの電子注入層9は、同じ材料、かつ、同じ膜厚で形成する。
【0169】
次に、電子注入層9の上に共通層としての陰極4を形成する。青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rの陰極4は、同じ材料、かつ、同じ膜厚で形成する。
以上のようにして、図1に示す有機EL表示装置1を製造する。
【0170】
本明細書に記載の有機EL表示装置が有する有機EL素子の各層の形成方法としては、上記で特に言及した以外には制限されないが、乾式成膜法又は湿式成膜法等の公知の方法を採用することができる。乾式成膜法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法、及びイオンプレーティング法等が挙げられる。湿式成膜法としては、例えば、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法及びインクジェット法等が挙げられる。
【0171】
(膜厚)
本実施形態の有機EL素子の各有機層の膜厚は、上記で特に言及した場合を除いて限定されない。一般に、膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、膜厚が厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常、有機EL素子の各有機層の膜厚は、数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0172】
本実施形態によれば、プロセスコストを大幅に上昇させることなく、画素としての有機EL素子の性能を向上させることのできる有機EL表示装置を提供できる。
青色画素、緑色画素及び赤色画素を備える従来の有機EL表示装置においては、青色画素としての青色有機EL素子、緑色画素としての緑色有機EL素子、赤色画素としての赤色有機EL素子は、それぞれ、非共通層としての正孔輸送層及び発光層を備える。本実施形態に係る有機EL表示装置1のように、第一の正孔輸送層71及び第一の発光層51の上に、さらに、青色画素用の非共通層としての発光層を形成するには、従来の有機EL表示装置ではプロセスコストが大幅に上昇する。具体的には、有機層を真空蒸着法で形成する場合には、非共通層を、3層、続けて成膜できるようにするため、プロセスコストが大幅に上昇する。
一方、本実施形態に係る有機EL表示装置1によれば、第一の発光層51の上にさらに積層される第四の発光層54は、青色有機EL素子10Bだけのための非共通層ではなく、青色有機EL素子10B、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rに亘って形成される共通層である。そのため、本実施形態に係る有機EL表示装置1は、発光効率が高く、プロセスコストを大幅に上昇させることなく、製造できる。第四の発光層54は、前記一般式(2)で表される第二の化合物を含有しており、この第四の発光層54を共通層として緑色有機EL素子10Gの第二の発光層52及び赤色有機EL素子10Rの第三の発光層53の上に形成しても、第二の発光層52及び第三の発光層53は、発光可能であり、緑色有機EL素子10G及び赤色有機EL素子10Rは、第四の発光層54を共通層として配置しない場合と、同等の性能を示す。
【0173】
〔第二実施形態〕
(電子機器)
一実施形態に係る電子機器は、上述の実施形態のいずれかの有機EL表示装置を搭載している。電子機器としては、例えば、表示装置及び発光装置等が挙げられる。表示装置としては、例えば、表示部品(例えば、有機ELパネルモジュール等)、テレビ、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。発光装置としては、例えば、照明及び車両用灯具等が挙げられる。
【0174】
[定義]
本明細書において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、及び三重水素(tritium)を包含する。
【0175】
本明細書において、化学構造式中、「R」等の記号や重水素原子を表す「D」が明示されていない結合可能位置には、水素原子、即ち、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子が結合しているものとする。
【0176】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジン環は環形成炭素数5であり、フラン環は環形成炭素数4である。また、例えば、9,9-ジフェニルフルオレニル基の環形成炭素数は13であり、9,9’-スピロビフルオレニル基の環形成炭素数は25である。
また、ベンゼン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ベンゼン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているベンゼン環の環形成炭素数は、6である。また、ナフタレン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ナフタレン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているナフタレン環の環形成炭素数は、10である。
【0177】
本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば、単環、縮合環、及び環集合)の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6であり、キナゾリン環の環形成原子数は10であり、フラン環の環形成原子数は5である。例えば、ピリジン環に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子の数は、ピリジン環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているピリジン環の環形成原子数は、6である。また、例えば、キナゾリン環の炭素原子に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子については、キナゾリン環の環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているキナゾリン環の環形成原子数は10である。
【0178】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX~YYのZZ基」という表現における「炭素数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0179】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX~YYのZZ基」という表現における「原子数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表し、置換されている場合の置換基の原子数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0180】
本明細書において、無置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「無置換のZZ基」である場合を表し、置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「置換のZZ基」である場合を表す。
本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「無置換」とは、ZZ基における水素原子が置換基と置き換わっていないことを意味する。「無置換のZZ基」における水素原子は、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子である。
また、本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「置換」とは、ZZ基における1つ以上の水素原子が、置換基と置き換わっていることを意味する。「AA基で置換されたBB基」という場合における「置換」も同様に、BB基における1つ以上の水素原子が、AA基と置き換わっていることを意味する。
【0181】
「本明細書に記載の置換基」
以下、本明細書に記載の置換基について説明する。
【0182】
本明細書に記載の「無置換のアリール基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルケニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルキニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のシクロアルキル基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、3~50であり、好ましくは3~20、より好ましくは3~6である。
本明細書に記載の「無置換のアリーレン基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の2価の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキレン基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
【0183】
・「置換もしくは無置換のアリール基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」の具体例(具体例群G1)としては、以下の無置換のアリール基(具体例群G1A)及び置換のアリール基(具体例群G1B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「無置換のアリール基」である場合を指し、置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「置換のアリール基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アリール基」という場合は、「無置換のアリール基」と「置換のアリール基」の両方を含む。
「置換のアリール基」は、「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアリール基」としては、例えば、下記具体例群G1Aの「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの置換のアリール基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアリール基」の例、及び「置換のアリール基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアリール基」には、下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」におけるアリール基自体の炭素原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0184】
・無置換のアリール基(具体例群G1A):
フェニル基、
p-ビフェニル基、
m-ビフェニル基、
o-ビフェニル基、
p-ターフェニル-4-イル基、
p-ターフェニル-3-イル基、
p-ターフェニル-2-イル基、
m-ターフェニル-4-イル基、
m-ターフェニル-3-イル基、
m-ターフェニル-2-イル基、
o-ターフェニル-4-イル基、
o-ターフェニル-3-イル基、
o-ターフェニル-2-イル基、
1-ナフチル基、
2-ナフチル基、
アントリル基、
ベンゾアントリル基、
フェナントリル基、
ベンゾフェナントリル基、
フェナレニル基、
ピレニル基、
クリセニル基、
ベンゾクリセニル基、
トリフェニレニル基、
ベンゾトリフェニレニル基、
テトラセニル基、
ペンタセニル基、
フルオレニル基、
9,9’-スピロビフルオレニル基、
ベンゾフルオレニル基、
ジベンゾフルオレニル基、
フルオランテニル基、
ベンゾフルオランテニル基、
ペリレニル基、及び
下記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価のアリール基。
【0185】
【化10】
【0186】
【化11】
【0187】
・置換のアリール基(具体例群G1B):
o-トリル基、
m-トリル基、
p-トリル基、
パラ-キシリル基、
メタ-キシリル基、
オルト-キシリル基、
パラ-イソプロピルフェニル基、
メタ-イソプロピルフェニル基、
オルト-イソプロピルフェニル基、
パラ-t-ブチルフェニル基、
メタ-t-ブチルフェニル基、
オルト-t-ブチルフェニル基、
3,4,5-トリメチルフェニル基、
9,9-ジメチルフルオレニル基、
9,9-ジフェニルフルオレニル基
9,9-ビス(4-メチルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-イソプロピルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-t-ブチルフェニル)フルオレニル基、
シアノフェニル基、
トリフェニルシリルフェニル基、
トリメチルシリルフェニル基、
フェニルナフチル基、
ナフチルフェニル基、及び
前記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から誘導される1価の基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基。
【0188】
・「置換もしくは無置換の複素環基」
本明細書に記載の「複素環基」は、環形成原子にヘテロ原子を少なくとも1つ含む環状の基である。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、及びホウ素原子が挙げられる。
本明細書に記載の「複素環基」は、単環の基であるか、又は縮合環の基である。
本明細書に記載の「複素環基」は、芳香族複素環基であるか、又は非芳香族複素環基である。
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」の具体例(具体例群G2)としては、以下の無置換の複素環基(具体例群G2A)、及び置換の複素環基(具体例群G2B)等が挙げられる。(ここで、無置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「無置換の複素環基」である場合を指し、置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「置換の複素環基」である場合を指す。)本明細書において、単に「複素環基」という場合は、「無置換の複素環基」と「置換の複素環基」の両方を含む。
「置換の複素環基」は、「無置換の複素環基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換の複素環基」の具体例は、下記具体例群G2Aの「無置換の複素環基」の水素原子が置き換わった基、及び下記具体例群G2Bの置換の複素環基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換の複素環基」の例や「置換の複素環基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換の複素環基」には、具体例群G2Bの「置換の複素環基」における複素環基自体の環形成原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G2Bの「置換の複素環基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0189】
具体例群G2Aは、例えば、以下の窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1)、酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2)、硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4)を含む。
【0190】
具体例群G2Bは、例えば、以下の窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1)、酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2)、硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4)を含む。
【0191】
・窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1):
ピロリル基、
イミダゾリル基、
ピラゾリル基、
トリアゾリル基、
テトラゾリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ピリジル基、
ピリダジニル基、
ピリミジニル基、
ピラジニル基、
トリアジニル基、
インドリル基、
イソインドリル基、
インドリジニル基、
キノリジニル基、
キノリル基、
イソキノリル基、
シンノリル基、
フタラジニル基、
キナゾリニル基、
キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、
インダゾリル基、
フェナントロリニル基、
フェナントリジニル基、
アクリジニル基、
フェナジニル基、
カルバゾリル基、
ベンゾカルバゾリル基、
モルホリノ基、
フェノキサジニル基、
フェノチアジニル基、
アザカルバゾリル基、及びジアザカルバゾリル基。
【0192】
・酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2):
フリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
キサンテニル基、
ベンゾフラニル基、
イソベンゾフラニル基、
ジベンゾフラニル基、
ナフトベンゾフラニル基、
ベンゾオキサゾリル基、
ベンゾイソキサゾリル基、
フェノキサジニル基、
モルホリノ基、
ジナフトフラニル基、
アザジベンゾフラニル基、
ジアザジベンゾフラニル基、
アザナフトベンゾフラニル基、及び
ジアザナフトベンゾフラニル基。
【0193】
・硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3):
チエニル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ベンゾチオフェニル基(ベンゾチエニル基)、
イソベンゾチオフェニル基(イソベンゾチエニル基)、
ジベンゾチオフェニル基(ジベンゾチエニル基)、
ナフトベンゾチオフェニル基(ナフトベンゾチエニル基)、
ベンゾチアゾリル基、
ベンゾイソチアゾリル基、
フェノチアジニル基、
ジナフトチオフェニル基(ジナフトチエニル基)、
アザジベンゾチオフェニル基(アザジベンゾチエニル基)、
ジアザジベンゾチオフェニル基(ジアザジベンゾチエニル基)、
アザナフトベンゾチオフェニル基(アザナフトベンゾチエニル基)、及び
ジアザナフトベンゾチオフェニル基(ジアザナフトベンゾチエニル基)。
【0194】
・下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4):
【0195】
【化12】
【0196】
【化13】
【0197】
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NH、又はCHである。ただし、X及びYのうち少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又はNHである。
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、X及びYの少なくともいずれかがNH、又はCHである場合、前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基には、これらNH、又はCHから1つの水素原子を除いて得られる1価の基が含まれる。
【0198】
・窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1):
(9-フェニル)カルバゾリル基、
(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、
(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、
(9-ナフチル)カルバゾリル基、
ジフェニルカルバゾール-9-イル基、
フェニルカルバゾール-9-イル基、
メチルベンゾイミダゾリル基、
エチルベンゾイミダゾリル基、
フェニルトリアジニル基、
ビフェニリルトリアジニル基、
ジフェニルトリアジニル基、
フェニルキナゾリニル基、及び
ビフェニリルキナゾリニル基。
【0199】
・酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2):
フェニルジベンゾフラニル基、
メチルジベンゾフラニル基、
t-ブチルジベンゾフラニル基、及び
スピロ[9H-キサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0200】
・硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3):
フェニルジベンゾチオフェニル基、
メチルジベンゾチオフェニル基、
t-ブチルジベンゾチオフェニル基、及び
スピロ[9H-チオキサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0201】
・前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4):
【0202】
前記「1価の複素環基の1つ以上の水素原子」とは、該1価の複素環基の環形成炭素原子に結合している水素原子、XA及びYAの少なくともいずれかがNHである場合の窒素原子に結合している水素原子、及びXA及びYAの一方がCH2である場合のメチレン基の水素原子から選ばれる1つ以上の水素原子を意味する。
【0203】
・「置換もしくは無置換のアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」の具体例(具体例群G3)としては、以下の無置換のアルキル基(具体例群G3A)及び置換のアルキル基(具体例群G3B)が挙げられる。(ここで、無置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「無置換のアルキル基」である場合を指し、置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「置換のアルキル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキル基」という場合は、「無置換のアルキル基」と「置換のアルキル基」の両方を含む。
「置換のアルキル基」は、「無置換のアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキル基」(具体例群G3A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のアルキル基(具体例群G3B)の例等が挙げられる。本明細書において、「無置換のアルキル基」におけるアルキル基は、鎖状のアルキル基を意味する。そのため、「無置換のアルキル基」は、直鎖である「無置換のアルキル基」、及び分岐状である「無置換のアルキル基」が含まれる。尚、ここに列挙した「無置換のアルキル基」の例や「置換のアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルキル基」には、具体例群G3Bの「置換のアルキル基」におけるアルキル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G3Bの「置換のアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0204】
・無置換のアルキル基(具体例群G3A):
メチル基、
エチル基、
n-プロピル基、
イソプロピル基、
n-ブチル基、
イソブチル基、
s-ブチル基、及び
t-ブチル基。
【0205】
・置換のアルキル基(具体例群G3B):
ヘプタフルオロプロピル基(異性体を含む)、
ペンタフルオロエチル基、
2,2,2-トリフルオロエチル基、及び
トリフルオロメチル基。
【0206】
・「置換もしくは無置換のアルケニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルケニル基」の具体例(具体例群G4)としては、以下の無置換のアルケニル基(具体例群G4A)、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルケニル基とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「無置換のアルケニル基」である場合を指し、「置換のアルケニル基」とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「置換のアルケニル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アルケニル基」という場合は、「無置換のアルケニル基」と「置換のアルケニル基」の両方を含む。
「置換のアルケニル基」は、「無置換のアルケニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルケニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルケニル基」(具体例群G4A)が置換基を有する基、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアルケニル基」の例や「置換のアルケニル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルケニル基」には、具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」におけるアルケニル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0207】
・無置換のアルケニル基(具体例群G4A):
ビニル基、
アリル基、
1-ブテニル基、
2-ブテニル基、及び
3-ブテニル基。
【0208】
・置換のアルケニル基(具体例群G4B):
1,3-ブタンジエニル基、
1-メチルビニル基、
1-メチルアリル基、
1,1-ジメチルアリル基、
2-メチルアリル基、及び
1,2-ジメチルアリル基。
【0209】
・「置換もしくは無置換のアルキニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキニル基」の具体例(具体例群G5)としては、以下の無置換のアルキニル基(具体例群G5A)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルキニル基とは、「置換もしくは無置換のアルキニル基」が「無置換のアルキニル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキニル基」という場合は、「無置換のアルキニル基」と「置換のアルキニル基」の両方を含む。
「置換のアルキニル基」は、「無置換のアルキニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキニル基」(具体例群G5A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基等が挙げられる。
【0210】
・無置換のアルキニル基(具体例群G5A):
エチニル基
【0211】
・「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」の具体例(具体例群G6)としては、以下の無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A)、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)等が挙げられる。(ここで、無置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「無置換のシクロアルキル基」である場合を指し、置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「置換のシクロアルキル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「シクロアルキル基」という場合は、「無置換のシクロアルキル基」と「置換のシクロアルキル基」の両方を含む。
「置換のシクロアルキル基」は、「無置換のシクロアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のシクロアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のシクロアルキル基」(具体例群G6A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のシクロアルキル基」の例や「置換のシクロアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のシクロアルキル基」には、具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」におけるシクロアルキル基自体の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0212】
・無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A):
シクロプロピル基、
シクロブチル基、
シクロペンチル基、
シクロヘキシル基、
1-アダマンチル基、
2-アダマンチル基、
1-ノルボルニル基、及び
2-ノルボルニル基。
【0213】
・置換のシクロアルキル基(具体例群G6B):
4-メチルシクロヘキシル基。
【0214】
・「-Si(R901)(R902)(R903)で表される基」
本明細書に記載の-Si(R901)(R902)(R903)で表される基の具体例(具体例群G7)としては、
-Si(G1)(G1)(G1)、
-Si(G1)(G2)(G2)、
-Si(G1)(G1)(G2)、
-Si(G2)(G2)(G2)、
-Si(G3)(G3)(G3)、及び
-Si(G6)(G6)(G6)
が挙げられる。ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-Si(G1)(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G1)(G2)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G2)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G6)(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0215】
・「-O-(R904)で表される基」
本明細書に記載の-O-(R904)で表される基の具体例(具体例群G8)としては、
-O(G1)、
-O(G2)、
-O(G3)、及び
-O(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0216】
・「-S-(R905)で表される基」
本明細書に記載の-S-(R905)で表される基の具体例(具体例群G9)としては、
-S(G1)、
-S(G2)、
-S(G3)、及び
-S(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0217】
・「-N(R906)(R907)で表される基」
本明細書に記載の-N(R906)(R907)で表される基の具体例(具体例群G10)としては、
-N(G1)(G1)、
-N(G2)(G2)、
-N(G1)(G2)、
-N(G3)(G3)、及び
-N(G6)(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-N(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0218】
・「ハロゲン原子」
本明細書に記載の「ハロゲン原子」の具体例(具体例群G11)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0219】
・「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がフッ素原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子で置き換わった基(パーフルオロ基)も含む。「無置換のフルオロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のフルオロアルキル基」は、「フルオロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のフルオロアルキル基」には、「置換のフルオロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のフルオロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のフルオロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がフッ素原子と置き換わった基の例等が挙げられる。
【0220】
・「置換もしくは無置換のハロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のハロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がハロゲン原子で置き換わった基も含む。「無置換のハロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のハロアルキル基」は、「ハロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のハロアルキル基」には、「置換のハロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のハロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のハロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がハロゲン原子と置き換わった基の例等が挙げられる。ハロアルキル基をハロゲン化アルキル基と称する場合がある。
【0221】
・「置換もしくは無置換のアルコキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルコキシ基」の具体例としては、-O(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルコキシ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0222】
・「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」の具体例としては、-S(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルキルチオ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0223】
・「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」の具体例としては、-O(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールオキシ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0224】
・「置換もしくは無置換のアリールチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールチオ基」の具体例としては、-S(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールチオ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0225】
・「置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基」
本明細書に記載の「トリアルキルシリル基」の具体例としては、-Si(G3)(G3)(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。「トリアルキルシリル基」の各アルキル基の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~6である。
【0226】
・「置換もしくは無置換のアラルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、-(G3)-(G1)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」であり、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。従って、「アラルキル基」は、「アルキル基」の水素原子が置換基としての「アリール基」と置き換わった基であり、「置換のアルキル基」の一態様である。「無置換のアラルキル基」は、「無置換のアリール基」が置換した「無置換のアルキル基」であり、「無置換のアラルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、7~50であり、好ましくは7~30であり、より好ましくは7~18である。
「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、α-ナフチルメチル基、1-α-ナフチルエチル基、2-α-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルイソプロピル基、2-α-ナフチルイソプロピル基、β-ナフチルメチル基、1-β-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-β-ナフチルイソプロピル基、及び2-β-ナフチルイソプロピル基等が挙げられる。
【0227】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリール基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはフェニル基、p-ビフェニル基、m-ビフェニル基、o-ビフェニル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-ターフェニル-4-イル基、o-ターフェニル-3-イル基、o-ターフェニル-2-イル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9’-スピロビフルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、及び9,9-ジフェニルフルオレニル基等である。
【0228】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントロリニル基、カルバゾリル基(1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、又は9-カルバゾリル基)、ベンゾカルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ナフトベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、ジアザジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフトベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ジアザジベンゾチオフェニル基、(9-フェニル)カルバゾリル基((9-フェニル)カルバゾール-1-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-2-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-3-イル基、又は(9-フェニル)カルバゾール-4-イル基)、(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、ジフェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルトリアジニル基、ビフェニリルトリアジニル基、ジフェニルトリアジニル基、フェニルジベンゾフラニル基、及びフェニルジベンゾチオフェニル基等である。
【0229】
本明細書において、カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0230】
【化14】
【0231】
本明細書において、(9-フェニル)カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0232】
【化15】
【0233】
前記一般式(TEMP-Cz1)~(TEMP-Cz9)中、*は、結合位置を表す。
【0234】
本明細書において、ジベンゾフラニル基、及びジベンゾチオフェニル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0235】
【化16】
【0236】
前記一般式(TEMP-34)~(TEMP-41)中、*は、結合位置を表す。
【0237】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアルキル基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等である。
【0238】
・「置換もしくは無置換のアリーレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリーレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアリーレン基」の具体例(具体例群G12)としては、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0239】
・「置換もしくは無置換の2価の複素環基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の2価の複素環基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換の2価の複素環基」の具体例(具体例群G13)としては、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0240】
・「置換もしくは無置換のアルキレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアルキレン基」の具体例(具体例群G14)としては、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0241】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリーレン基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-42)~(TEMP-67)のいずれかの基である。
【0242】
【化17】
【0243】
【化18】
【0244】
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、*は、結合位置を表す。
【0245】
【化19】
【0246】
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、Q~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
式Q及びQ10は、単結合を介して互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、*は、結合位置を表す。
【0247】
【化20】
【0248】
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、*は、結合位置を表す。
【0249】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の2価の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-69)~(TEMP-102)のいずれかの基である。
【0250】
【化21】
【0251】
【化22】
【0252】
【化23】
【0253】
前記一般式(TEMP-69)~(TEMP-82)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0254】
【化24】
【0255】
【化25】
【0256】
【化26】
【0257】
【化27】
【0258】
前記一般式(TEMP-83)~(TEMP-102)中、Q~Qは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0259】
以上が、「本明細書に記載の置換基」についての説明である。
【0260】
・「結合して環を形成する場合」
本明細書において、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は互いに結合せず」という場合は、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合しない」場合と、を意味する。
本明細書における、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(以下、これらの場合をまとめて「結合して環を形成する場合」と称する場合がある。)について、以下、説明する。母骨格がアントラセン環である下記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物の場合を例として説明する。
【0261】
【化28】
【0262】
例えば、R921~R930のうちの「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、環を形成する」場合において、1組となる隣接する2つからなる組とは、R921とR922との組、R922とR923との組、R923とR924との組、R924とR930との組、R930とR925との組、R925とR926との組、R926とR927との組、R927とR928との組、R928とR929との組、並びにR929とR921との組である。
【0263】
上記「1組以上」とは、上記隣接する2つ以上からなる組の2組以上が同時に環を形成してもよいことを意味する。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、同時にR925とR926とが互いに結合して環Qを形成した場合は、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-104)で表される。
【0264】
【化29】
【0265】
「隣接する2つ以上からなる組」が環を形成する場合とは、前述の例のように隣接する「2つ」からなる組が結合する場合だけではなく、隣接する「3つ以上」からなる組が結合する場合も含む。例えば、R921とR922とが互いに結合して環Qを形成し、かつ、R922とR923とが互いに結合して環Qを形成し、互いに隣接する3つ(R921、R922及びR923)からなる組が互いに結合して環を形成して、アントラセン母骨格に縮合する場合を意味し、この場合、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-105)で表される。下記一般式(TEMP-105)において、環Q及び環Qは、R922を共有する。
【0266】
【化30】
【0267】
形成される「単環」、又は「縮合環」は、形成された環のみの構造として、飽和の環であっても不飽和の環であってもよい。「隣接する2つからなる組の1組」が「単環」、又は「縮合環」を形成する場合であっても、当該「単環」、又は「縮合環」は、飽和の環、又は不飽和の環を形成することができる。例えば、前記一般式(TEMP-104)において形成された環Q及び環Qは、それぞれ、「単環」又は「縮合環」である。また、前記一般式(TEMP-105)において形成された環Q、及び環Qは、「縮合環」である。前記一般式(TEMP-105)の環Qと環Qとは、環Qと環Qとが縮合することによって縮合環となっている。前記一般式(TMEP-104)の環Qがベンゼン環であれば、環Qは、単環である。前記一般式(TMEP-104)の環Qがナフタレン環であれば、環Qは、縮合環である。
【0268】
「不飽和の環」とは、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を意味する。「飽和の環」とは、脂肪族炭化水素環、又は非芳香族複素環を意味する。
芳香族炭化水素環の具体例としては、具体例群G1において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
芳香族複素環の具体例としては、具体例群G2において具体例として挙げられた芳香族複素環基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
脂肪族炭化水素環の具体例としては、具体例群G6において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
「環を形成する」とは、母骨格の複数の原子のみ、あるいは母骨格の複数の原子とさらに1以上の任意の元素で環を形成することを意味する。例えば、前記一般式(TEMP-104)に示す、R921とR922とが互いに結合して形成された環Qは、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、1以上の任意の元素とで形成する環を意味する。具体例としては、R921とR922とで環Qを形成する場合において、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922とが結合するアントラセン骨格の炭素原子と、4つの炭素原子とで単環の不飽和の環を形成する場合、R921とR922とで形成する環は、ベンゼン環である。
【0269】
ここで、「任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である。任意の元素において(例えば、炭素元素、又は窒素元素の場合)、環を形成しない結合は、水素原子等で終端されてもよいし、後述する「任意の置換基」で置換されてもよい。炭素元素以外の任意の元素を含む場合、形成される環は複素環である。
単環または縮合環を構成する「1以上の任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは2個以上15個以下であり、より好ましくは3個以上12個以下であり、さらに好ましくは3個以上5個以下である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」、及び「縮合環」のうち、好ましくは「単環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「飽和の環」、及び「不飽和の環」のうち、好ましくは「不飽和の環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」は、好ましくはベンゼン環である。
本明細書に別途記載のない限り、「不飽和の環」は、好ましくはベンゼン環である。
「隣接する2つ以上からなる組の1組以上」が、「互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、又は「互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、母骨格の複数の原子と、1個以上15個以下の炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とからなる置換もしくは無置換の「不飽和の環」を形成する。
【0270】
上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
上記の「飽和の環」、又は「不飽和の環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
以上が、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(「結合して環を形成する場合」)についての説明である。
【0271】
・「置換もしくは無置換の」という場合の置換基
本明細書における一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基(本明細書において、「任意の置換基」と呼ぶことがある。)は、例えば、
無置換の炭素数1~50のアルキル基、
無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
無置換の環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基等であり、
ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。
901が2個以上存在する場合、2個以上のR901は、互いに同一であるか、又は異なり、
902が2個以上存在する場合、2個以上のR902は、互いに同一であるか、又は異なり、
903が2個以上存在する場合、2個以上のR903は、互いに同一であるか、又は異なり、
904が2個以上存在する場合、2個以上のR904は、互いに同一であるか、又は異なり、
905が2個以上存在する場合、2個以上のR905は、互いに同一であるか、又は異なり、
906が2個以上存在する場合、2個以上のR906は、互いに同一であるか、又は異なり、
907が2個以上存在する場合、2個以上のR907は、互いに同一であるか又は異なる。
【0272】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~50のアルキル基、
環形成炭素数6~50のアリール基、及び
環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0273】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~18のアルキル基、
環形成炭素数6~18のアリール基、及び
環形成原子数5~18の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0274】
上記任意の置換基の各基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基の具体例である。
【0275】
本明細書において別途記載のない限り、隣接する任意の置換基同士で、「飽和の環」、又は「不飽和の環」を形成してもよく、好ましくは、置換もしくは無置換の飽和の5員環、置換もしくは無置換の飽和の6員環、置換もしくは無置換の不飽和の5員環、又は置換もしくは無置換の不飽和の6員環を形成し、より好ましくは、ベンゼン環を形成する。
本明細書において別途記載のない限り、任意の置換基は、さらに置換基を有してもよい。任意の置換基がさらに有する置換基としては、上記任意の置換基と同様である。
【0276】
本明細書において、「AA~BB」を用いて表される数値範囲は、「AA~BB」の前に記載される数値AAを下限値とし、「AA~BB」の後に記載される数値BBを上限値として含む範囲を意味する。
【0277】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良などは、本発明に含まれる。
【0278】
本発明の実施における具体的な構造及び形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造でもよい。
【実施例0279】
<化合物>
実施例1並びに比較例1~2に係る有機EL素子の製造に用いた一般式(1)で表される化合物の構造を以下に示す。
【0280】
【化31】
【0281】
実施例1並びに比較例1~2に係る有機EL素子の製造に用いた一般式(2)で表される化合物の構造を以下に示す。
【0282】
【化32】
【0283】
実施例1並びに比較例1~2に係る有機EL素子の製造に用いた、他の化合物の構造を以下に示す。
【0284】
【化33】
【0285】
【化34】
【0286】
【化35】
【0287】
【化36】
【0288】
【化37】
【0289】
【化38】
【0290】
【化39】
【0291】
<有機EL表示装置の作製>
有機EL表示装置を以下のように作製し、評価した。
【0292】
(実施例1)
・青色画素としての青色有機EL素子の作製
25mm×75mm×1.1mm厚のITO(Indium Tin Oxide)透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。ITO透明電極の膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして、化合物HT1及び化合物pdopeを共蒸着し、膜厚10nmの正孔注入層を形成した。この正孔注入層中の化合物HT1の割合を97質量%とし、化合物pdopeの割合を3質量%とした。
正孔注入層の成膜に続けて化合物HT1を蒸着し、膜厚80nmの第四の正孔輸送層を成膜した。
第四の正孔輸送層の成膜に続けて化合物BHTを蒸着し、膜厚10nmの第一の正孔輸送層を成膜した。
第一の正孔輸送層上に化合物BH1(ホスト材料)及び化合物BD(ドーパント材料)を、化合物BDの割合が4質量%となるように共蒸着し、膜厚5nmの第一の発光層を成膜した。
第一の発光層上に化合物BH2(ホスト材料)及び化合物BD(ドーパント材料)を、化合物BDの割合が4質量%となるように共蒸着し、膜厚20nmの第四の発光層を成膜した。
第四の発光層上に化合物ET1を蒸着し、膜厚5nmの第一の電子輸送層(正孔障壁層ともいう)(HBL)を形成した。
第一の電子輸送層上に化合物ET2及び化合物Liqを共蒸着し、膜厚25nmの第二の電子輸送層(ET)を形成した。この第二の電子輸送層の化合物ET2の割合を70質量%とし、化合物Liqの割合を30質量%とした。なお、Liqは、(8-キノリノラト)リチウム((8-Quinolinolato)lithium)の略称である。
第二の電子輸送層上にYb(イッテルビウム)を蒸着して膜厚1nmの電子注入層を形成した。
電子注入層上に金属Alを蒸着して膜厚80nmの陰極を形成した。
実施例1の青色有機EL素子の構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130)/HT1:pdope(10,97%:3%)/HT1(80)/BHT(10)/BH1:BD(5,96%:4%)/BH2:BD(20,96%:4%)/ET1(5)/ET2:Liq(25,70%:30%)/Yb(1)/Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。
同じく括弧内において、パーセント表示された数字(97%:3%)は、正孔注入層における化合物HT1及び化合物pdopeの割合(質量%)を示し、パーセント表示された数字(96%:4%)は、第一の発光層又は第二の発光層におけるホスト材料(化合物BH1又はBH2)及びドーパント材料(化合物BD)の割合(質量%)を示し、パーセント表示された数字(70%:30%)は、第二の電子輸送層における化合物ET2及び化合物Liqの割合(質量%)を示す。以下、同様の表記とする。
【0293】
・緑色画素としての緑色有機EL素子の作製
実施例1に係る緑色有機EL素子の作製においては、ガラス基板上のITO膜、正孔注入層、第四の正孔輸送層、第四の発光層、第一の電子輸送層、第二の電子輸送層、電子注入層及び陰極は、実施例1に係る有機EL表示装置における共通層であるため、青色有機EL素子と同様にして作製した。
非共通層としての第二の正孔輸送層及び第二の発光層は、次のようにして作製した。
第四の正孔輸送層の上に化合物GHTを蒸着し、膜厚35nmの第二の正孔輸送層を成膜した。
第二の正孔輸送層上に化合物ePGH(ホスト材料)、化合物hPGH及び化合物PGD(ドーパント材料)を共蒸着し、膜厚40nmの第二の発光層を成膜した。第二の発光層中、化合物ePGHの割合が47.5質量%、化合物hPGHの割合が47.5質量%、化合物PGDの割合が5質量%となるように、共蒸着した。
第二の発光層の上に、共通層としての第四の発光層を形成した。
実施例1の緑色有機EL素子の構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130)/HT1:pdope(10,97%:3%)/HT1(80)/GHT(35)/ePGH:hPGH:PGD(40,47.5%:47.5%:5%)/BH2:BD(20,96%:4%)/ET1(5)/ET2:Liq(25,70%:30%)/Yb(1)/Al(80)
【0294】
・赤色画素としての赤色有機EL素子の作製
実施例1に係る赤色有機EL素子の作製においては、ガラス基板上のITO膜、正孔注入層、第四の正孔輸送層、第四の発光層、第一の電子輸送層、第二の電子輸送層、電子注入層及び陰極は、実施例1に係る有機EL表示装置における共通層であるため、青色有機EL素子と同様にして作製した。
非共通層としての第三の正孔輸送層及び第三の発光層は、次のようにして作製した。
第四の正孔輸送層の上に化合物RHTを蒸着し、膜厚70nmの第三の正孔輸送層を成膜した。
第三の正孔輸送層上に化合物PRH(ホスト材料)、化合物PRD(ドーパント材料)を共蒸着し、膜厚40nmの第三の発光層を成膜した。第三の発光層中、化合物PRHの割合が98質量%、化合物PRDの割合が2質量%となるように、共蒸着した。
第三の発光層の上に、共通層としての第四の発光層を形成した。
実施例1の赤色有機EL素子の構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130)/HT1:pdope(10,97%:3%)/HT1(80)/RHT(70)/PRH:PRD(40,98%:2%)/BH2:BD(20,96%:4%)/ET1(5)/ET2:Liq(25,70%:30%)/Yb(1)/Al(80)
【0295】
(比較例1)
比較例1に係る有機EL表示装置は、次のようにして作製した。
比較例1に係る青色有機EL素子においては、第一の正孔輸送層の上に第一の発光層を形成せずに第四の発光層を直接形成し、第四の発光層の膜厚を25nmに変更したこと以外、実施例1と同様に作製した。
比較例1に係る緑色有機EL素子においては、共通層としての第四の発光層を形成せずに、第二の発光層の上に第一の電子輸送層を形成したこと以外、実施例1と同様に作製した。
比較例1に係る赤色有機EL素子においては、共通層としての第四の発光層を形成せずに、第三の発光層の上に第一の電子輸送層を形成したこと以外、実施例1と同様に作製した。
【0296】
(比較例2)
比較例2に係る有機EL表示装置は、次のようにして作製した。
比較例2に係る青色有機EL素子においては、第一の発光層の上に第四の発光層を、共通層としてではなく、非共通層として形成したこと以外、実施例1と同様にして作製した。
比較例2に係る緑色有機EL素子においては、共通層としての第四の発光層を形成せずに、第二の発光層の上に第一の電子輸送層を形成したこと以外、実施例1と同様に作製した。
比較例2に係る赤色有機EL素子においては、共通層としての第四の発光層を形成せずに、第三の発光層の上に第一の電子輸送層を形成したこと以外、実施例1と同様に作製した。
【0297】
<有機EL素子の評価>
実施例1並びに比較例1~2で作製した有機EL表示装置におけるそれぞれの有機EL素子について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0298】
・駆動電圧
電流密度が100mA/cmとなるように陽極と陰極との間に通電したときの電圧(単位:V)を計測した。
【0299】
・外部量子効率(EQE)
電流密度が10mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定し外部量子効率EQE(単位:%)を算出した。
【0300】
・寿命(LT90)
得られた有機EL素子に、電流密度が50mA/cmとなるように電圧を印加し、初期輝度に対して輝度が90%となるまでの時間(LT90(単位:時間))を測定した。
【0301】
【表1】
【0302】
表1に示すように、実施例1に係る有機EL表示装置によれば、共通層として第四の発光層を緑色有機EL素子及び赤色有機EL素子に形成したにもかかわらず、緑色有機EL素子及び赤色有機EL素子は、比較例1及び比較例2と同等の性能を示した。
さらに、実施例1に係る有機EL表示装置の青色有機EL素子においては、第一の発光層と第四の発光層とを積層させたことで、第一の発光層を有さない比較例1に係る有機EL表示装置の青色有機EL素子に比べて、駆動電圧が低下し、発光効率が向上し、寿命も長くなった。
なお、比較例2に係る有機EL表示装置の青色有機EL素子についても、比較例1に対して性能が向上した。しかしながら、比較例2においては、第四の発光層を共通層としてではなく、非共通層として形成しているため、青色画素の形成のために3つの非共通層を続けて成膜する必要があり、実施例1に対して比較例2のプロセスコストが大幅に上昇する。この点において、実施例1に係る有機EL表示装置は、比較例2に対して大きく優位である。
実施例1に係る有機EL表示装置によれば、高い発光効率で発光する有機EL表示装置を、プロセスコストを大幅に上昇させることなく製造できる。
【符号の説明】
【0303】
1 :有機EL表示装置
2 :基板
3 :陽極
4 :陰極
5 :発光帯域
6 :正孔注入層
7 :正孔輸送帯域
8 :電子輸送層
9 :正孔注入層
9 :電子注入層
10B :青色有機EL素子
10G :緑色有機EL素子
10R :赤色有機EL素子
51 :第一の発光層
52 :第二の発光層
53 :第三の発光層
54 :第四の発光層
71 :第一の正孔輸送層
72 :第二の正孔輸送層
73 :第三の正孔輸送層
74 :第四の正孔輸送層
図1