(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119761
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】顔料組成物、樹脂組成物、及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20230822BHJP
C08K 5/3417 20060101ALI20230822BHJP
C09B 47/04 20060101ALI20230822BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K5/3417
C09B47/04
C09B67/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022789
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽田 悠葵
(72)【発明者】
【氏名】森光 太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL011
4J002CL031
4J002EG030
4J002EU156
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD080
4J002FD090
4J002FD096
4J002FD170
4J002FD200
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、ナイロン6やナイロン66樹脂着色用として、射出成型時における高温(例えば260-300℃)においても退色および成型前後での色相変化が生じにくい、塩素化金属フタロシアニンを含む顔料組成物を提供することにある。
【解決手段】 本発明のナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色用顔料組成物は、平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料を含有する。前記金属フタロシアニン顔料における中心金属が銅であることが好ましい。本発明の樹脂組成物は、平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料と、平均分子量10000から25000のナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料を含有する、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色用顔料組成物。
【請求項2】
前記金属フタロシアニン顔料における中心金属が銅である請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項3】
平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料と、平均分子量10000から25000のナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂を含む、樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂組成物を用いて成型された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色用顔料組成物、これを含む樹脂組成物、及びこの樹脂組成物の成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック(特にエンジニアプラスチック)着色用の顔料市場では高耐熱性かつ高安定性を有する顔料が求められている。現状、このような顔料としては、フタロシアニン顔料やキナクリドン顔料などが使用されている。なかでもプラスチック着色用フタロシアニン顔料としては、下記特許文献1-4が挙げられる。
【0003】
特許文献1-4には、ハロゲン化金属フタロシアニン顔料における塩素などのハロゲン置換基数を特定の範囲にすることが記載されている。また、着色する樹脂として高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性アイオノマー樹脂等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-131612号公報
【特許文献2】特開2015-183071号公報
【特許文献3】特開2016-023222号公報
【特許文献4】特開平2-91159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、検討の結果、これらの特許文献1-4に記載のハロゲン化金属フタロシアニン顔料および着色する樹脂のうち、塩素数が一定以上の塩素化金属フタロシアニン顔料と、ナイロン6及びナイロン66樹脂との特定の組み合わせにおいて、射出成型時における高温でのフタロシアニン顔料の退色および成型前後での色相変化が顕著に生じることが分かった(本願比較例1及び2参照)。この退色および成型前後での色相変化は、驚くべきことに樹脂をナイロン6及びナイロン66樹脂以外の樹脂(例えば、ポリプロピレン)に変えたときは発生しないことが分かった(本願比較例4及び5参照)。
【0006】
ナイロン6やナイロン66は、エンジニアプラスチックとして、繊維、自動車部品、電気・電子機器、各種成形品など広く使用されており、産業界において重要な樹脂である。本発明は、ナイロン6やナイロン66樹脂着色用として、射出成型時における高温(例えば260-300℃)においても退色および成型前後での色相変化が生じにくい、塩素化金属フタロシアニンを含む顔料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、成型時の退色および色相変化の主原因がナイロン樹脂と塩素化金属フタロシアニン顔料との化学反応による顔料構造変化であると予想し、反応に寄与することが考えられる塩素置換基数についてさらに検討を行った。その結果、塩素数が4未満の塩素化金属フタロシアニン顔料と、ナイロン6及びナイロン66樹脂との特定の組み合わせにおいては、射出成型時における高温での退色および成型前後での色相変化がほとんど生じないことが分かった。
【0008】
本発明の想定されるメカニズムは下記のとおりである。
通常、フタロシアニン顔料では分子全体にπ電子共役系が広がって平面構造をとり、耐熱性を有しており、さらに着色樹脂がナイロン樹脂である場合、ナイロン樹脂のアミド結合とフタロシアニン顔料の相互作用が生じて構造安定化していると考えられる。そのため、上述のようなフタロシアニン顔料の退色および成型前後での色相変化は生じにくいと考えられる。しかし、塩素化金属フタロシアニン顔料の場合、電子吸引基である塩素原子が存在し、電子が構造末端の塩素原子に引き付けられるため分子全体のπ電子共役系が弱くなる。その結果、フタロシアニン顔料とナイロン樹脂のアミド結合との相互作用も弱くなり、塩素化金属フタロシアニン顔料の構造不安定でフリーな状態となることにより耐熱性が下がる傾向となる。また、塩素化金属フタロシアニン顔料の塩素原子とナイロン樹脂のアミド基が化学反応を起こすことで退色や色相変化の原因となり得る。このメカニズムにおいて塩素化金属フタロシアニン顔料の置換塩素原子数が4以上となると、結果として退色、色相変化などの耐熱性低下が顕著になると考えられる。
さらに、一般的に使用されるナイロン樹脂の中でもナイロン6及びナイロン6,6は、ポリマー構造中のアミド結合の割合が相対的に高く、上記メカニズムにおけるアミド結合とフタロシアニン顔料の相互作用の影響が大きいと考えられる。なお、ナイロン以外の樹脂(例えば、ポリプロピレン)では、上記メカニズムによる退色、色相変化などの耐熱性低下は生じないと考えられる。
【0009】
即ち本発明は、
『項1. 平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料を含有する、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色用顔料組成物。
項2. 前記金属フタロシアニン顔料における中心金属が銅である項1に記載の顔料組成物。
項3. 平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料と、平均分子量10000から25000のナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂を含む、樹脂組成物。
項4. 項3に記載の樹脂組成物を用いて成型された成形品。』
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の顔料組成物は、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色に用いたとき射出成型時の高温(例えば260~300℃)における退色や色相変化が小さく、耐熱性に優れる。また、本発明の樹脂組成物も同様に耐熱性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
<顔料組成物>
本発明の顔料組成物は、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色用であり、平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料を含有する。当該金属フタロシアニン顔料における平均塩素置換基数は、好ましくは0~3、より好ましくは0~2、さらに好ましくは0~1である。平均塩素置換基数が上記範囲であることで、射出成型時の高温における退色や色相変化が小さく、耐熱性に優れる。当該金属フタロシアニン顔料では、塩素以外の置換基(例えば、フッ素、臭素)を有していてもよい。
【0013】
上記金属フタロシアニン顔料における中心金属は、例えば銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)が挙げられるが、なかでも銅であることが好ましい。中心金属が銅である銅フタロシアニン顔料は、プラスチック着色の分野では広く使われており、本発明おいて特に耐熱性に優れる効果を奏することが分かっている。また、銅フタロシアニンは、α型、β型、ε型等、様々な結晶形を取り得るが、耐熱性の観点から、α型またはβ型であることが好ましく、β型であることがより好ましい。
【0014】
上記金属フタロシアニン顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6などの青色顔料が挙げられる。なかでも本発明においては、C.I.ピグメントブルー15:1、同15:3、同15:4などの銅フタロシアニン顔料が好ましい。本発明において上記金属フタロシアニン顔料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
銅フタロシアニン顔料は、無水フタル酸、尿素および銅化合物を出発原料とする尿素法、フタロジニトリルと銅化合物とから合成するフタロジニトリル法などで合成することができ、本発明では合成した銅フタロシアニン顔料を用いてもよい。また、銅フタロシアニン顔料としては、市販品である、例えばFASTOGEN(登録商標) BLUEシリーズ(DIC株式会社製)、SUNFAST(登録商標) BLUEシリーズ(Sun Chemical社製)を用いてもよい。
【0016】
本発明の顔料組成物では、本発明の効果を損なわない範囲で、上記金属フタロシアニン顔料以外の金属フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントグリーン7、同36など)やその他の顔料(スレン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ顔料などの有機顔料、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料など)を含んでもよい。
【0017】
本発明の顔料組成物は、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色用であるが、これらのナイロンの平均分子量は10000~25000が好ましく、12000~18000がより好ましい。平均分子量10000未満では顔料と樹脂の相溶性が高いため、高耐熱性を確保できず、平均分子量25000を超えると顔料と樹脂の相溶性が低いために色むら等を引き起こしてしまうことがある。当該平均分子量は、数平均分子量のことであり、ポリスチレンを標準物質としてGPC分析により測定することができる。
【0018】
ナイロン6(PA6)は、カプロラクタム(炭素数6)の開環重合によって合成してもよいが、市販品として、例えば、UBEナイロン(宇部興産株式会社製)、タナジン(登録商標)TN200、TN500など(高安株式会社製)、グラマイド(登録商標)T-802など(東洋紡株式会社製)、アミラン(登録商標)CM1017、CM1007、CM1026など(東レ株式会社製)、ユニチカナイロン6(ユニチカ株式会社製)が使用できる。また、ナイロン66(PA66)は、ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)とアジピン酸(炭素数6)の縮重合によって合成してもよいが、市販品として、例えば、レオナ(登録商標)1300Sなど(旭化成株式会社製)、タナジン(登録商標)TN720、TN710など(高安株式会社製)、グラマイド(登録商標)T-662など(東洋紡株式会社製)、アミラン(登録商標)CM3007、CM3001-Nなど(東レ株式会社製)が使用できる。
【0019】
以下、本発明において、ナイロン(ポリアミド樹脂)としてナイロン6およびナイロン6,6に着目した理由を詳細に述べる。
一般的にナイロンには、以下の種類が存在する(それぞれの単量体とその構成炭素数を示す)。
ナイロン6:ε-カプロラクタム(炭素数6)
ナイロン11:ウンデカンラクタム(炭素数11)
ナイロン12:ラウリルラクタム(炭素数12)
ナイロン6,6 :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)+ アジピン酸(炭素数6)
ナイロン6,10 :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)+ セバシン酸(炭素数10)
ナイロン6T :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)
ナイロン6I :ヘキサメチレンジアミン(炭素数6)+ イソフタル酸 (Isophthalic acid)
ナイロン9T :ノナンジアミン(炭素数9)+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)
ナイロンM5T :メチルペンタジアミン(Methyl基+炭素数5)+ テレフタル酸 (Terephthalic acid)
本発明では、上述したメカニズムのとおり、ポリマー構造中のアミド結合の割合が相対的に高い方が好ましいため、構成炭素数が少なく、フタル酸などのアミド結合以外の芳香族構造を含まない方が好ましい。よって、本発明では、脂肪族ポリアミド、なかでも構成炭素数が5又は6のナイロンが好適である。このような理由より本発明の顔料組成物では、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色用としている。
【0020】
本発明の顔料組成物は、顔料以外に顔料分散剤を含むことが好ましい。このような顔料分散剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム等の金属石けん、ステアリン酸アマイド、エチレンビスアマイド等の脂肪酸アミド、エステル系ワックス、ポリエチレンワックス、シランカップリング剤等が挙げられる。なかでもステアリン酸マグネシウムを含むことが好ましい。顔料100質量部に対する顔料分散剤の量は、例えば50~500質量部、好ましくは100~400質量部である。
【0021】
本発明の顔料組成物における樹脂着色の方法としては、マスターバッチ、ドライカラー、ペーストカラー(リキッドマスターバッチ)などいずれの方法であってもよい。
【0022】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料と、平均分子量10000から25000のナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂を含む。当該金属フタロシアニン顔料は、上記本発明の顔料組成物で述べたとおりであり、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂も上記本発明の顔料組成物で述べたとおりである。また、本発明の樹脂組成物は、上記本発明の顔料組成物で述べた顔料分散剤を含んでいてもよい。
【0023】
ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂100質量部に対する、金属フタロシアニン顔料を含む顔料の割合は、例えば0.001~1質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。また、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂100質量部に対する、顔料に顔料分散剤を加えた場合の本発明の顔料組成物の割合は、例えば0.002~1質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。
【0024】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で上記ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、ナイロン6及びナイロン6,6以外のポリアミド樹脂、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレン等をモノマー成分として用いたホモポリマーやコポリマー、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、熱可塑性アイオノマー樹脂などが挙げられる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、上述の金属フタロシアニン顔料、それ以外の顔料および顔料分散剤、ナイロン6および/またはナイロン6,6、それ以外の樹脂の他に、滑剤、可塑剤、フィラー、耐候安定剤、各種添加剤等を含んでいてもよい。
【0026】
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤いずれであってもよく、パラフィンワックス、合成ポリエチレン、流動パラフィンなどの炭化水素系化合物、ステアリン酸、ベヘニン酸、12ヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコールなどの脂肪酸・高級アルコール系化合物、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド系化合物、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ブチルステアレートなどのエステル系化合物が挙げられる。
【0027】
上記可塑剤としては、エポキシ化大豆油(ESBO)、エポキシ化アマニ油(ELSO)等のエポキシ化植物油、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステル類、二塩基酸(アジピン酸、セバチン酸、フタル酸など)とグリコール類(1,2-プロパンジオール、ブタンジオールなど)のポリエステル等のポリエステル系化合物が挙げられる。
【0028】
上記フィラーとしては、求められる物性に応じて適当なものを添加することができ、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、MOS、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー等が挙げられる。
【0029】
上記耐候安定剤としては、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系化合物などの紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤(HALS)等の光安定剤、フェノール系(ヒンダートフェノール系など)、リン系(ホスファイト系など)、イオウ系(チオエーテル系など)等の酸化防止剤、重金属不活化剤、キレート剤等が挙げられる。
【0030】
上記各種添加剤としては、イントメッセント系、リン酸エステル系、ハロゲン系、無機系などの難燃剤、リン酸エステル金属塩系、ソルビトール系などの核剤、タルク、炭酸カルシウムなどの充填剤、相溶化剤(反応型、非反応型)、リン酸エステル金属塩系、ソルビトール系などの透明化剤、非イオン系、アニオン系、カチオン系などの帯電防止剤等が挙げられる。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、平均塩素置換基数が4個未満である金属フタロシアニン顔料とナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂を含むため、本発明の顔料組成物と同様に射出成型時の高温における退色や色相変化が小さく、耐熱性に優れる。本発明の樹脂組成物における樹脂着色の方法としては、マスターバッチ、ドライカラー、ペーストカラー(リキッドマスターバッチ)などいずれの方法であってもよい。
【0032】
<成形品>
本発明の成形品は、上述の本発明の樹脂組成物を用いて成型された着色ナイロン6またはナイロン6,6品である。成型方法としては、射出成型、ブロー成型、インフレーション成型、押出し成型、エンゲル成型、真空成型等いずれであってもよいが、射出成型が好ましい。射出成型では、一般的なナイロン6及びナイロン6,6成型の条件でよく、樹脂温度(シリンダー温度)は、例えば260~300℃である。
【0033】
本発明の成形品は、用途は問わず、自動車・車両部品(エンジンルーム内部品、吸気系部品、燃料系部品など)、電気・電子機器(産業用機器のコネクター、スイッチ、ハウジングなど)、フィルム、シート、パイプ、板、丸棒、チューブなど加工用の射出・押出成形品、日用雑貨、容器、玩具、建築資材、スポーツ用具等である。
【実施例0034】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
[実施例1]
まず、DIC社製 FASTOGEN BLUE 5050GE(C.I.ピグメントブルー15:1)1gと堺化学工業社製ステアリン酸マグネシウム1gをよく混合して2gのドライカラーを作製した。次に、ナイロン樹脂(ナイロン6,製品名:UBE NYLON 1013NW8、メーカー:宇部興産株式会社)1000gに作製したドライカラーを加え、よく混合して着色ペレットを得た。そして、この着色ペレットを射出成型機(日精樹脂工業社製;型番:PNX60III-5A)に投入し、280℃の滞留時間0分と10分で成形を実施した。
【0036】
[実施例2]
DIC社製 FASTOGEN BLUE GR-6LK(C.I.ピグメントブルー15:3)に変えた以外は実施例1と同様の方法で成形を実施した。
【0037】
[実施例3]
SUN社製 SUNFAST BLUE 15:4 249-3450(C.I.ピグメントブルー15:4)に変えた以外は実施例1と同様の方法で成形を実施した。
【0038】
[実施例4]
SUN社製 SUNFAST BLUE 15:1 248-4816(C.I.ピグメントブルー15:1)に変えた以外は実施例1と同様の方法で成形を実施した。
【0039】
[比較例1]
SUN社製 SUNFAST GREEN 36 264-7036(C.I.ピグメントグリーン36)に変えた以外は実施例1と同様の方法で成形を実施した。
【0040】
[比較例2]
SUN社製 SUNFAST GREEN 7 264-7405(C.I.ピグメントグリーン7)に変えた以外は実施例1と同様の方法で成形を実施した。
【0041】
[比較例3]
ポリプロピレン樹脂(製品名:ノバテックPP MA3、メーカー:日本ポリプロ株式会社)1000gにDIC社製 FASTOGEN BLUE 5050GE(C.I.ピグメントブルー15:1)1gと堺化学工業社製ステアリン酸マグネシウム1gを事前に混合したドライカラーを2g加え、よく混合した。これを射出成型機(日精樹脂工業社製)に投入し、280℃の滞留時間0分と10分で成形を実施した。
【0042】
[比較例4]
SUN社製 SUNFAST GREEN 36 264-7036(C.I.ピグメントグリーン36)に変えた以外は比較例3と同様の方法で成形を実施した。
【0043】
[比較例5]
SUN社製 SUNFAST GREEN 7 264-7405(C.I.ピグメントグリーン7)に変えた以外は比較例3と同様の方法で成形を実施した。
【0044】
[耐熱性評価]
280℃滞留時間0分と10分の条件で成形した2つの成型板を測色した。滞留時間0分の成型板の測色値を基準として滞留時間10分の成型板の測色値とのdE*値を算出した。なお、dE*値が小さい顔料ほど高耐熱性および高安定性を有する。
【0045】
【0046】
上記表1のとおり、実施例1-4の塩素数が4未満である金属フタロシアニン顔料をナイロン6に用いたときは、塩素数が4以上である比較例1-2よりもdE/nylonの値が小さく、高耐熱性および高安定性となることが分かった。一方、比較例3の塩素数が4未満である金属フタロシアニン顔料をポリプロピレン樹脂(PP)に用いたときは、塩素数が4である比較例4よりもdE/PPの値が大きく、低耐熱性および低安定性となることが分かった。つまり、本発明の顔料組成物は、ナイロン6および/またはナイロン6,6樹脂着色用として有用であることが分かった。