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特開2023-119800液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119800
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230822BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022874
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 公人
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 大樹
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EA11
2C056EB58
2C056EC72
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】乾燥不良による画像品質の低下を防止しながら、生産性を維持することができる液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】本発明は、記録媒体に対して液体を吐出して第1画像を印字するノズルを有する第1ヘッドと、前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられかつ前記記録媒体に対して液体を吐出して第2画像を印字する複数のノズルを有し、前記搬送方向において前記第1ヘッドよりも下流側に設けられる第2ヘッドと、前記第1画像上に前記第2画像を印字する多層印字を行う場合に、前記第2ヘッドにおいて、前記搬送方向の上流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量を、前記搬送方向の下流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量より低減する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して液体を吐出して第1画像を印字するノズルを有する第1ヘッドと、
前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられかつ前記記録媒体に対して液体を吐出して第2画像を印字する複数のノズルを有し、前記搬送方向において前記第1ヘッドよりも下流側に設けられる第2ヘッドと、
前記第1画像上に前記第2画像を印字する多層印字を行う場合に、前記第2ヘッドにおいて、前記搬送方向の上流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量を、前記搬送方向の下流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量より低減する制御部と、
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1ヘッドは、前記搬送方向に沿って設けられかつ前記記録媒体に対して液体を吐出する複数のノズルを有し、
前記制御部は、さらに、前記多層印字を行う場合に、前記第1ヘッドにおいて、前記搬送方向の下流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量を、前記搬送方向の上流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量より低減する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記多層印字を行う場合、前記第2ヘッドが有するノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量を、前記搬送方向の上流側から下流側に向かうに従って増加させる、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記多層印字を行う場合、前記第1ヘッドが有するノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量を、前記搬送方向の上流側から下流側に向かうに従って低減させる、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
ノズルを有する第1ヘッドと、記録媒体の搬送方向に沿って設けられる複数のノズルを有しかつ前記搬送方向において前記第1ヘッドよりも下流側に設けられる第2ヘッドと、を備える液体吐出装置で実行される液体吐出方法であって、
前記第1ヘッドが有するノズルから前記記録媒体に対して液体を吐出して第1画像を印字する工程と、
前記第2ヘッドが有するノズルから前記記録媒体に対して液体を吐出して第2画像を印字する工程と、
前記第1画像上に前記第2画像を印字する多層印字を行う場合に、前記第2ヘッドにおいて、前記搬送方向の上流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量を、前記搬送方向の下流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量より低減する工程と、
を含む液体吐出方法。
【請求項6】
記録媒体に対して液体を吐出して第1画像を印字するノズルを有する第1ヘッドと、前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられかつ前記記録媒体に対して液体を吐出して第2画像を印字する複数のノズルを有し、前記搬送方向において前記第1ヘッドよりも下流側に設けられる第2ヘッドと、を有する液体吐出装置を制御するコンピュータを、
前記第1画像上に前記第2画像を印字する多層印字を行う場合に、前記第2ヘッドにおいて、前記搬送方向の上流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量を、前記搬送方向の下流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量より低減する制御部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置において、第1印字で特色(白色等)を背景色として印字し、その上に第2印字でカラー画像を重ねて印字する技術が開発されている。この技術によれば、印刷基材によらず発色性を高める印字が可能となる。また、逆に、液体吐出装置において、透明基材に第1印字でカラー画像を印字し、その上に第2印字で特色(白色等)を印字することでウィンドウフィルム等に使用する多層印字技術が開発されている。
【0003】
また、これらの技術において、生産性を維持しつつ第1印字により印字される画像の乾燥度合いによって発生する画像障害を抑制する技術が考えられている。例えば、特許文献1には、白画像の上にカラー画像を形成する際に乾燥不良による画像品質の低下を抑制することを目的として、白画像を印字する際にヘッドの上流より下流のインクの吐出量を少なくする技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1印字により印字される画像を乾燥させるために、第2印字までの待機時間を設ける方法、および印字に使用するノズルを制限して空スキャン領域を設ける方法では、待機時間による生産性の低下、ノズル制限による生産性の低下、印字スキャン数を制限することによる画像品質の低下が発生する。また、特許文献1記載の技術では、白画像の印字に使用するノズルを制限することによって画像品質が低下する。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、乾燥不良による画像品質の低下を防止しながら、生産性を維持することができる液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、記録媒体に対して液体を吐出して第1画像を印字するノズルを有する第1ヘッドと、前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられかつ前記記録媒体に対して液体を吐出して第2画像を印字する複数のノズルを有し、前記搬送方向において前記第1ヘッドよりも下流側に設けられる第2ヘッドと、前記第1画像上に前記第2画像を印字する多層印字を行う場合に、前記第2ヘッドにおいて、前記搬送方向の上流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量を、前記搬送方向の下流側のノズルによる前記記録媒体に対する液体の付着量より低減する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乾燥不良による画像品質の低下を防止しながら、生産性を維持することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施の形態にかかる液体吐出装置を適用した画像形成装置の構成の概略を示す図である。
図2図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置の制御ブロックの一例を示す図である。
図3図3は、本実施の形態にかかる画像形成装置が備えるヒータユニットの構成の概略を示す図である。
図4図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置によるインク付着量の制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置における多層印字の一例を説明するための図である。
図6図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。
図7図7は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。
図8図8は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。
図9図9は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。
図10図10は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。
図11図11は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。
図12図12は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、液体吐出装置、液体吐出方法、およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態にかかる液体吐出装置を適用した画像形成装置の構成の概略を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる画像形成装置100は、広幅シリアル型インクジェット記録装置であるとする。
【0011】
画像形成装置100は、図1に示すように、装置本体100aの左右に側板21A,21Bを備える。側板21A,21Bは、ガイド部材であるメインガイドロッド31を横架する。また、画像形成装置100は、サブ板金ガイド32を備える。メインガイドロッド31およびサブ板金ガイド32は、キャリッジ121を摺動自在に保持する。キャリッジ121は、主走査モータによって回転駆動されるタイミングベルトを介して、矢印Aの方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。また、キャリッジ121は、用紙等の媒体P(記録媒体の一例)の端部(用紙端部)を検知する光学センサ37を搭載する。
【0012】
キャリッジ121は、装着されたインクカートリッジ10に応じて、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、オレンジ(O)、グリーン(G)、クリア(Cl)等の各色のインク滴(液体の一例)を吐出する液体吐出ヘッド(ヘッドの一例)122a,122b,122cを備える。以下、液体吐出ヘッド122a,122b,122cを区別しない場合には、液体吐出ヘッド122と言う。
【0013】
液体吐出ヘッド122は、複数のノズルからなるノズル列を副走査方向(媒体Pの搬送方向)に配列する。すなわち、液体吐出ヘッド122は、副走査方向に沿って設けられかつ媒体Pに対してインク滴を吐出して画像を印字する複数のノズルを有する。ここで、副走査方向(矢印Bの方向)は、キャリッジ主走査方向(矢印Aの方向)と直交する方向である。液体吐出ヘッド122は、ノズルからのインク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。
【0014】
液体吐出ヘッド122a,122b,122cは、それぞれ副走査方向にずらされて設置される。すなわち、液体吐出ヘッド122b(第2ヘッドの一例)は、副走査方向において液体吐出ヘッド122c(第1ヘッドの一例)よりも下流側に設けられる。また、液体吐出ヘッド122a(第2ヘッドの一例)は、副走査方向において液体吐出ヘッド122b(第1ヘッドの一例)よりも下流側に設けられる。キャリッジ121は、液体吐出ヘッド122に対応して各色のインクを供給するため、サブタンクを搭載する。
【0015】
画像形成装置100は、各色のインクカートリッジ10y,10c,10m,10kを着脱自在に装着するカートリッジ装填部1を備える。以下の説明では、インクカートリッジ10y,10c,10m,10kを区別しない場合には、インクカートリッジ10と言う。インクカートリッジ10のインクは、供給ポンプユニットによって各色の供給チューブ36を介してキャリッジ121のサブタンクに補充供給される。なお、インクカートリッジ10は、白色のインクカートリッジを含んでいてもよい。
【0016】
画像形成装置100は、キャリッジ121の主走査方向の一方側の非印字領域に、維持回復機構81を備える。維持回復機構81は、液体吐出ヘッド122のノズルの状態を維持および回復する。維持回復機構81は、液体吐出ヘッド122の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下、キャップという)82a,82b,82cと、ノズル面をワイピングするための払拭ユニット83などを備えている。以下の説明では、キャップ82a,82b,82cを区別しない場合には、キャップ82と言う。また、液体吐出ヘッド122の維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための交換可能な廃液タンクが設けられている。
【0017】
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置の制御ブロックの一例を示す図である。本実施の形態にかかる画像形成装置100は、図2に示すように、画像処理部200、およびプリンタ本体300を有する。画像処理部200は、媒体Pに印字する入力画像をプリンタ本体300で印字可能なドットデータに変換し、変換されたドットデータをプリンタ本体300に入力する。
【0018】
例えば、画像処理部200は、入力画像に対して、解像度変換処理、色変換テーブルを用いた色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理等の各種の画像処理を実行する。その後、画像処理部200は、当該画像処理を実行した入力画像を各色のドットデータに変換して、プリンタ本体300に入力する。
【0019】
具体的には、画像処理部200(制御部の一例)は、第1画像上に第2画像を印字する多層印字を行う場合に、当該第2画像を印字する液体吐出ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の上流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量を、媒体Pの搬送方向の下流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量より低減する。これにより、背景画像等の第1画像が媒体Pに印字された後、第1画像の印字に用いたインクの乾燥度合いが高くなってから、カラー画像等の第2画像の印字に用いるノズル数を増えていくので、第1画像に対する第2画像のドットの埋没を抑制できる。その結果、乾燥不良による画像品質の低下を防止しながら、生産性を維持することができる。
【0020】
ここで、第1画像は、液体吐出ヘッド122a,122b,122cのうち媒体Pの搬送方向において上流側に設けられる液体吐出ヘッド(以下、上流側ヘッドという)122のノズルによって印字される画像である。また、ここで、第2画像は、液体吐出ヘッド122a,122b,122cのうち媒体Pの搬送方向において上流側ヘッド122よりも下流側に設けられる液体吐出ヘッド(以下、下流側ヘッドという)のノズルによって印字される画像である。
【0021】
また、画像処理部200は、多層印字を行う場合に、上流側ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の下流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量を、媒体Pの搬送方向の上流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量より低減しても良い。
【0022】
また、画像処理部200は、多層印字を行う場合、下流側ヘッド122が有するノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量を、媒体Pの搬送方向の上流側から下流側に向かうに従って増加させても良い。さらに、画像処理部200は、多層印字を行う場合、上流側ヘッド122が有するノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量を、媒体Pの搬送方向の上流側から下流側に向かうに従って低減させても良い。
【0023】
ドットデータが入力されたプリンタ本体300では、ドットデータに基づき、コントローラ部301が各種印字ユニットを制御し駆動させることで、媒体Pに対する画像の印字を行う。本実施の形態にかかる画像形成装置100では、ドットデータに基づき、液体吐出ヘッド122の使用ノズル数、各スキャンでのインク滴の付着量(インク付着量)を決定し、決定したインク付着量等の各種条件に応じて各ユニットの制御変更をコントローラ部301にて実施する。
【0024】
本実施の形態では、プリンタ本体300は、コントローラ部301、I/F302、給紙ユニット303、搬送ユニット304、排紙ユニット305、ヒータユニット306、インク供給ユニット307、キャリッジ121、液体吐出ヘッド122等を有する。
【0025】
I/F302は、画像処理部200からプリンタ本体300に入力画像を入力する。給紙ユニット303は、画像形成装置100内に媒体Pを給紙する。搬送ユニット304は、画像形成装置100内に給紙された媒体Pを搬送する。排紙ユニット305は、入力画像が印字された媒体Pを排紙する。ヒータユニット306は、媒体Pに付着したインク滴を乾燥させる。インク供給ユニット307は、インクカートリッジ10から液体吐出ヘッド122にインクを供給する。
【0026】
コントローラ部301は、CPU(Central Processing Unit)301a、およびメモリ301bを有する。メモリ301bは、ROM(Read Only Memory)301cおよびRAM(Random Access Memory)301dを有する。ROM301cは、各種のプログラムを記憶する。RAM301dは、CPU301aによって各種のプログラムを実行する際の作業領域として用いられる。
【0027】
CPU301aは、画像形成装置100全体の動作を制御する。具体的には、CPU301aは、RAM301dを作業領域として、メモリ301bに記憶される各種のプログラムを実行するプロセッサの一例である。
【0028】
図3は、本実施の形態にかかる画像形成装置が備えるヒータユニットの構成の概略を示す図である。図3に示す例では、簡単のために、液体吐出ヘッド122として、2つの液体吐出ヘッド122a,122bを示し、液体吐出ヘッド122cに関しては記載を省略している。
【0029】
図3に示すように、ヒータユニット306が有するヒータ120は、プリヒータ120a、プリントヒータ120b、プリントヒータ120c、ポストヒータ120d、および乾燥ヒータ120eを有する。これらの各ヒータ120には、温度制御のために、例えば、サーミスタ等の温度センサが設けられている。
【0030】
プリヒータ120aは、液体塗布面の形成に適した温度に媒体Pを予熱する装置である。例えば、プリヒータ120a(上位マージン+2℃、下位マージン0℃)は、アルミ箔コードヒータである。プリヒータ120aは、搬送ガイド板130の裏面に貼られる。プリヒータ120aは、搬送ガイド板130自体を暖めることにより媒体Pを暖める。予熱された媒体Pは、搬送ローラ123aおよび搬送ローラ123bによって液体吐出ヘッド122が配置された画像形成部50へと送られる。
【0031】
画像形成部50では、媒体Pをプリントヒータ120b、プリントヒータ120cによって保温しつつ、そこに液体吐出ヘッド122からインク等の液体が吐出されて液体塗布面が形成される。暖められた空気は蒸気とともに上昇するが、その滞留によって画像形成装置100の上部が過剰に温度上昇することを防ぐために、ファン119によって空気の対流を促す。
【0032】
プリントヒータ120bおよびプリントヒータ120cは、媒体Pに液体塗布面を形成するとき、媒体Pを保温する装置である。例えば、プリントヒータ120bおよびプリントヒータ120c(上位マージン+0.5℃、下位マージン-0.5℃)は、アルミ材であるプラテン131の中に埋め込まれたコードヒータである。プリントヒータ306bおよびプリントヒータ306cは、プラテン131自体を暖めることで媒体Pを暖める。
【0033】
ポストヒータ120dおよび乾燥ヒータ120eは、インク等の液体を乾燥させ定着させるために、液体塗布面が形成された媒体Pを暖める装置である。例えば、ポストヒータ120d(上位マージン+2℃、下位マージン0℃)は、アルミ箔コードヒータである。ポストヒータ120dは、搬送ガイド板132の裏面に貼られる。ポストヒータ120dは、搬送ガイド板132自体を暖めることで媒体Pを暖める。また、例えば、乾燥ヒータ120e(上位マージン+0.5℃、下位マージン-0.5℃)は、IRヒータである。乾燥ヒータ120eは、媒体Pの液体塗布面にIRの輻射を放射して乾燥させる。乾燥ヒータ120eは、ファンを備えて媒体Pの液体塗布面に熱風を送るように構成されていてもよい。
【0034】
図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置によるインク付着量の制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。画像処理部200は、印字動作が開始されると(ステップS401)、外部装置から、媒体Pに印字する入力画像の画像データを読み込む(ステップS402)。次いで、画像処理部200は、読み込んだ画像データの多層印字を行うか否かを判断する(ステップS403)。
【0035】
読み込んだ画像データの多層印字を行わない場合(ステップS403:No)、画像処理部200は、画像データを各色のドットデータに変換し(ステップS404)、当該ドットデータをプリンタ本体300に入力する(ステップS405)。その後、プリンタ本体300は、入力された画像データの印字を実施する(ステップS406)。
【0036】
一方、読み込んだ画像データの多層印字を行う場合(ステップS403:Yes)、画像処理部200は、上流側ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の下流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量を、媒体Pの搬送方向の上流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量より減少させる(ステップS407)。さらに、画像処理部200は、下流側ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の下流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量を、媒体Pの搬送方向の上流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量より増加させる(ステップS407)。その後、画像データの多層印字を行わない場合と同様に、ステップS404~S406に示す処理に進む。
【0037】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置における多層印字の一例を説明するための図である。例えば、多層印字を行わない通常の印字の場合には、印刷基材(媒体Pの一例)にカラー画像を印字するが、多層印時の場合には、印刷基材の上に背景画像(白画像等)を印字し、その上にカラー画像を印字する。この場合、背景画像が乾く前にカラー画像が印字されてしまい、狙いの画像品質が得られない可能性がある。
【0038】
そこで、本実施の形態にかかる画像形成装置100では、画像処理部200は、上述したように、下流側ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の上流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量を、媒体Pの搬送方向の下流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量より低減する。これにより、背景画像等の第1画像が媒体Pに印字された後、第1画像の印字に用いたインクの乾燥度合いが高くなってから、カラー画像等の第2画像の印字に用いるノズル数を増えていくので、第1画像に対する第2画像のドットの埋没を抑制できる。その結果、乾燥不良による画像品質の低下を防止しながら、生産性を維持することができる。
【0039】
図6および図7は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。図7において、縦軸は、第2画像のドット径を表し、横軸は、第1画像の乾燥時間を表す。図6および図7に示すように、背景画像(背景色)の乾燥度合いにより、当該背景画像上に印字されるカラー画像(カラーインク)のドットの広がりが変化する。具体的には、背景画像の乾燥度合いが低い場合は、カラー画像のドットは、背景画像に埋没して、そのドット径が小さくなる。一方、背景画像の乾燥度合いが高く背景画像が乾燥してくると、カラー画像のドットは、背景画像への埋没がなくなり、そのドット径が大きくなる。
【0040】
さらに、カラー画像の各色で背景画像へのドットの埋没度合いが異なるため、背景画像の同じ乾燥時間でも、各色のドット径は同じにならない。そのため、本実施の形態では、画像処理部200は、カラー画像の色毎に、下流側ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の上流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量を、媒体Pの搬送方向の下流側のノズルによる媒体Pに対するインクのインク付着量より低減する量(以下、低減量という)を変化させることも可能である。例えば、画像処理部200は、カラー画像がブラック(Bk)のドットとシアン(Cy)のドットを含む場合、乾燥し難いブラックの低減量を、シアンの低減量より多くする。
【0041】
図8~12は、本実施の形態にかかる画像形成装置におけるインク付着量の制御処理の一例を説明するための図である。ここでは、上流側ヘッド122を白画像を印字するヘッド、下流側ヘッド122をカラー画像(Bk、Cy、Ma、Ye)を印字するヘッドとして説明する。上流側ヘッド122および下流側ヘッド122の色構成に関しては、逆でも良い。また、以下の説明では、上流側ヘッド122および下流側ヘッド122のそれぞれが有するノズルの領域のうち、符号801で示す領域を、インクを吐出する使用ノズル領域とし、符号802で示す領域を、インクを吐出しない不使用ノズル領域とする。
【0042】
例えば、図8に示すように、使用ノズル領域を削減せずに、すなわち、不使用ノズル領域を設けず、ノズルの使用数も変更しない場合、白画像の印字とカラー画像の印字が連続で実施されるため、白画像の乾燥時間が十分に取れないため、乾燥不良が発生する可能性が高い。
【0043】
一方、図9に示すように、上流側ヘッド122および下流側ヘッド122の両方において使用ノズル領域を削減して乾燥時間を稼ぐ場合、使用ノズル領域が削減されるため、12スキャンで画像の印字を完了する必要があるため、画像品質が低下する可能性がある。また、図10に示すように、使用ノズル領域数を削減しつつ、印字スキャン数を維持する場合、使用ノズル領域を削減した分、空スキャンを入れる必要があるため生産性が減少する。
【0044】
そこで、本実施の形態では、図11に示すように、画像処理部200は、使用ノズル領域を削除せず、上流側ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の下流に向かうにつれて1スキャン当たりのインク付着量を減らし、下流側ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の下流に向けてインク付着量を増やす。これにより、スキャン数を維持して画像品質の低下を防止しながら、乾燥にも有利になる印字を実施する。
【0045】
または、本実施の形態では、図12に示すように、画像処理部200は、下流側ヘッド122において、媒体Pの搬送方向の上流側のインク付着量を減らす。一方、画像処理部200は、画像品質に大きな影響がない白画像を印字する場合、上流側ヘッド122の使用ノズル領域を削減する。これにより、乾燥に有利な印字を行い、画像品質が求められる下流側ヘッド122での印字部分はスキャン数が多くかつ乾燥に有利なようにインク付着量を変更して印字する。
【0046】
このように、本実施の形態にかかる画像形成装置100によれば、背景画像等の第1画像が媒体Pに印字された後、第1画像の印字に用いたインクの乾燥度合いが高くなってから、カラー画像等の第2画像の印字に用いるノズル数を増えていくので、第1画像に対する第2画像のドットの埋没を抑制できる。その結果、乾燥不良による画像品質の低下を防止しながら、生産性を維持することができる。
【0047】
なお、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0048】
さらに、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0049】
本実施の形態の画像形成装置100で実行されるプログラムは、上述した各部(画像処理部200)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサの一例)が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、画像処理部200が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0050】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置100を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100 画像形成装置
121 キャリッジ
122 液体吐出ヘッド
200 画像処理部
300 プリンタ本体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2021-66064号公報
図1
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