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特開2023-119902マルチ電子ビーム描画装置及びマルチ電子ビーム描画方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119902
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】マルチ電子ビーム描画装置及びマルチ電子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20230822BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20230822BHJP
   H01J 37/06 20060101ALI20230822BHJP
   H01J 37/073 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H01L21/30 541W
H01L21/30 541T
H01J37/147 C
H01J37/06 Z
H01J37/073
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023025
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 光太
【テーマコード(参考)】
5C101
5F056
【Fターム(参考)】
5C101DD05
5C101DD38
5C101EE03
5C101EE23
5C101EE68
5C101EE69
5F056AA07
5F056CB05
5F056CB31
5F056CB40
5F056CD06
5F056FA02
(57)【要約】
【目的】マルチ電子ビーム描画において、電子ビームを形成する光電面の各領域の受光量の領域間の差を低減可能な装置を提供する。
【構成】本発明の一態様のマルチ電子ビーム描画装置は、複数の光源を有し、複数の第1の光を発生するアレイ光源201と、複数のレンズを有し、複数の第1の光の各第1の光が、複数のレンズのうちそれぞれ一部の複数のレンズを照明し、複数のレンズのうち少なくとも一部のレンズが、複数の第1の光のうち2以上の第1の光の照射を受けることによって、複数の第1の光を複数の第2の光に分割するマルチレンズアレイ212と、表面から複数の第2の光を入射し、裏面からマルチ光電子ビームを放出する光電面218と、マルチ光電子ビームの各ビームのビームON/OFFを個別に切り替える個別ブランキング制御を行うブランキングアパーチャアレイ機構204と、マルチ光電子ビームで試料を照射する電子光学系(電子レンズ207)と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源を有し、複数の第1の光を発生するアレイ光源と、
複数のレンズを有し、前記複数の第1の光の各第1の光が、前記複数のレンズのうちそれぞれ一部の複数のレンズを照明し、前記複数のレンズのうち少なくとも一部のレンズが、前記複数の第1の光のうち2以上の第1の光の照射を受けることによって、前記複数の第1の光を複数の第2の光に分割するマルチレンズアレイと、
表面から前記複数の第2の光を入射し、裏面からマルチ光電子ビームを放出する光電面と、
前記マルチ光電子ビームの各ビームのビームON/OFFを個別に切り替える個別ブランキング制御を行うブランキングアパーチャアレイ機構と、
マルチ光電子ビームで試料を照射する電子光学系と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記複数のレンズは、複数のサイズのレンズを含むことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記マルチレンズアレイを第1のマルチレンズアレイとして、
前記アレイ光源と前記第1のマルチレンズアレイとの間に、少なくとも第2のマルチレンズアレイをさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ電子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記第1のマルチレンズアレイと前記第2のマルチレンズアレイとは、配列されるレンズのピッチが異なることを特徴とする請求項3記載のマルチ電子ビーム描画装置。
【請求項5】
前記マルチ光電子ビームのショット毎に、第1の光の発生/停止の切り替えタイミングと各ビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとを連動させる制御回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のマルチ電子ビーム描画装置。
【請求項6】
複数の光源を有するアレイ光源から複数の第1の光を発生する工程と、
複数のレンズを有するマルチレンズアレイを用いて、前記複数の第1の光の各第1の光が、前記複数のレンズのうちそれぞれ一部の複数のレンズを照明し、前記複数のレンズのうち少なくとも一部のレンズが、前記複数の第1の光のうち2以上の第1の光の照射を受けることによって、前記複数の第1の光を複数の第2の光に分割する工程と、
光電面の表面から前記複数の第2の光を入射し、前記光電面の裏面から前記マルチ光電子ビームを放出する工程と、
ブランキングアパーチャアレイ機構を用いて、マルチ光電子ビームの各ビームのビームON/OFFを個別に切り替える個別ブランキング制御を行う工程と、
マルチ光電子ビームを用いて、試料にパターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、マルチ電子ビーム描画装置及びマルチ電子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、マスクブランクスへ電子線を使ってマスクパターンを描画することが行われている。
【0003】
例えば、マルチ電子ビームを使った描画装置がある。1本の電子ビームで描画する場合に比べて、マルチ電子ビームを用いることで一度に多くのビームを照射できるのでスループットを大幅に向上させることができる。かかるマルチ電子ビーム方式の描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームを複数の穴を持った成形アパーチャアレイ基板に通してマルチビームを形成し、各々、ブランキング制御され、制限アパーチャによって遮蔽されなかった各ビームが光学系で縮小され、マスク像が縮小されて、偏向器で偏向され試料上の所望の位置へと照射される。
【0004】
ここで、マルチ電子ビームの形成技術として、光電面の表面全体をレーザービームで照射して、光電面の裏面の複数の領域から電子を放出することでマルチ電子ビームを形成する手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003-511855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知にはなっていないが、光電面から放出されるマルチ電子ビームを描画装置に利用することが検討されている。光電面から放出されるマルチ電子ビームを描画装置に利用する場合においても、他の電子放出源を用いる場合と同様、描画処理のスループットを向上させることが求められる。そのためには、高い強度で光電面を照明することが求められる。よって、1つの光源からの1本の光だけではなく、複数の光源からの複数の光で光電面を照明することが検討されている。
【0007】
形成されるマルチ電子ビームの強度分布を均一に制御するためには、電子ビームを形成する光電面の各領域において照明光が照射される受光量を均一にすることが求められる。一方、各光源からの光には強度分布が存在する。一般的には中央部の強度が周辺部の強度よりも高くなる。よって、電子ビームを形成する各領域の受光量を均一にするためには、理想的には、光源の数と電子ビームの数とが1:1になるように光源を配置することが望まれる。
【0008】
しかしながら、配置スペースの問題或いは/及び個々の光源の発熱による影響の問題等からマルチ電子ビームの数と同数の光源を配置することは難しい場合がある。
【0009】
本発明の一態様は、マルチ電子ビーム描画において、電子ビームを形成する光電面の各領域の受光量の均一性を向上させることが可能な装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム描画装置は、
複数の光源を有し、複数の第1の光を発生するアレイ光源と、
複数のレンズを有し、複数の第1の光の各第1の光が、複数のレンズのうちそれぞれ一部の複数のレンズを照明し、複数のレンズのうち少なくとも一部のレンズが、複数の第1の光のうち2以上の第1の光の照射を受けることによって、複数の第1の光を複数の第2の光に分割するマルチレンズアレイと、
表面から複数の第2の光を入射し、裏面からマルチ光電子ビームを放出する光電面と、
マルチ光電子ビームの各ビームのビームON/OFFを個別に切り替える個別ブランキング制御を行うブランキングアパーチャアレイ機構と、
マルチ光電子ビームで試料を照射する電子光学系と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、複数のレンズは、複数のサイズのレンズを含むと好適である。
【0012】
また、マルチレンズアレイを第1のマルチレンズアレイとして、
アレイ光源と第1のマルチレンズアレイとの間に、少なくとも1枚の第2のマルチレンズアレイをさらに備えると好適である。
【0013】
また、第1のマルチレンズアレイと第2のマルチレンズアレイとは、配列されるレンズのピッチが異なると好適である。
【0014】
また、マルチ光電子ビームのショット毎に、励起光の発生/停止の切り替えタイミングと各ビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとを連動させる制御回路をさらに備えると好適である。
【0015】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム描画方法は、
複数の光源を有するアレイ光源から複数の第1の光を発生する工程と、
複数のレンズを有するマルチレンズアレイを用いて、複数の第1の光の各第1の光が、複数のレンズのうちそれぞれ一部の複数のレンズを照明し、複数のレンズのうち少なくとも一部のレンズが、複数の第1の光のうち2以上の第1の光の照射を受けることによって、複数の第1の光を複数の第2の光に分割する工程と、
光電面の表面から複数の第2の光を入射し、光電面の裏面からマルチ光電子ビームを放出する工程と、
ブランキングアパーチャアレイ機構を用いて、マルチ光電子ビームの各ビームのビームON/OFFを個別に切り替える個別ブランキング制御を行う工程と、
マルチ光電子ビームを用いて、試料にパターンを描画する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、マルチビーム描画において、電子ビームを形成する光電面の各領域の受光量の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図2】実施の形態1におけるマルチレンズアレイを照明する複数の励起光の照射位置の一例を示す図である。
図3】実施の形態1における励起光の強度分布の一例を示す図である。
図4】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図5】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。
図6】実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
図7】実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
図8】実施の形態1におけるマルチビームの描画方法の一例を説明するための図である。
図9】実施の形態1における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの一例を示すタイムチャート図である。
図10】実施の形態1の変形例1における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの一例を示すタイムチャート図である。
図11】実施の形態1の変形例1における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの他の一例を示すタイムチャート図である。
図12】実施の形態1の変形例2における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの他の一例を示すタイムチャート図である。
図13】実施の形態1の変形例3における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの他の一例を示すタイムチャート図である。
図14】実施の形態2におけるマルチレンズアレイを照明する複数の励起光の照射位置の一例を示す図である。
図15】実施の形態3におけるマルチレンズアレイを照明する複数の励起光の照射位置の一例を示す図である。
図16】実施の形態3におけるサイズ小の個別レンズの配置例を示す上面図である。
図17】実施の形態3におけるサイズ小の個別レンズに入射する光のヒストグラムの一例を示す図である。
図18】実施の形態3の比較例におけるサイズ小の個別レンズの他の配置例を示す上面図である。
図19】実施の形態3の比較例におけるサイズ小の個別レンズに入射する光のヒストグラムの他の一例を示す図である。
図20】実施の形態3におけるサイズ大の個別レンズの他の配置例を示す上面図である。
図21】実施の形態3におけるサイズ大の個別レンズに入射する光のヒストグラムの他の一例を示す図である。
図22】実施の形態3の変形例におけるマルチレンズアレイを照明する複数の励起光の照射位置の一例を示す図である。
図23】実施の形態4における描画装置の構成を示す概念図である。
図24】実施の形態4における複数の励起光のスポット径の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。図1において、描画装置100は、描画機構150と制御回路160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画機構150では、図示しない電子鏡筒(マルチ電子ビームカラム)内に、アレイ光源201、照明レンズ202、光電子放出機構210、マルチアノード電極220、成形アパーチャアレイ基板203、ブランキングアパーチャアレイ機構204、電子レンズ205、制限アパーチャ基板206、電子レンズ207(対物レンズ)、及び対物偏向器208がこの順で配置される。図示しない電子鏡筒下に配置される図示しない描画室内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるレジストが塗布されたマスクブランクス等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、光電子放出機構210よりも下流側の電子鏡筒内及び描画室内は図示しない真空ポンプにより真空引きされ、大気圧よりも低い圧力に制御される。
【0019】
アレイ光源201は、複数の光源11を有する。各光源11は励起光を発生する。よって、アレイ光源201は、複数の励起光を発生する。図1の例では、x方向に2つの光源11が配置される場合を示している。y方向に並ぶ光源の図示は省略している。光源11の数はこれに限るものではない。後述するマルチ光電子ビームの数よりも少ない数の複数の光源11がアレイ状に配列されることによってアレイ光源201が構成される。各光源11として、例えば、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード、また水銀ランプを用いることができる。
【0020】
光電子放出機構210では、ガラス基板214上にマルチレンズアレイ212が配置され、ガラス基板214の裏面側に遮光マスクとなるマルチ遮光膜216及び光電面218(光電子放出体の一例)が配置される。ガラス基板214とマルチレンズアレイ212は一体として形成されても良い。
【0021】
制御回路160は、アレイ駆動回路112とブランキングアパーチャアレイ(BAA)駆動回路113と全体制御回路161を有している。アレイ駆動回路112とブランキングアパーチャアレイ(BAA)駆動回路113と全体制御回路161は、図示しないバスで互いに接続される。
【0022】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0023】
次に、描画機構150の動作について説明する。描画装置100全体を制御する全体制御回路161による制御のもと、アレイ駆動回路112は、アレイ光源201を駆動する。アレイ光源201は、複数の励起光200(第1の光)を発生する。各励起光200は、連続光またはパルス光を含む。アレイ光源201は、複数の励起光200として、複数の紫外光を発生する。例えば、波長が190~400nm程度の紫外光または可視光、例えば波長266nmのレーザー光を用いると好適である。
【0024】
アレイ光源201から発生された複数の励起光200は、照明レンズ202により屈折させられ、マルチレンズアレイ212を照明する。照明レンズ202は省略しても良い。マルチレンズアレイ212は、複数の励起光200をさらに多くの複数の光(第2の光)に分割する。マルチレンズアレイ212は、複数の個別レンズを有し、複数の励起光の各励起光が、複数の個別レンズのうちそれぞれ一部の複数の個別レンズを照明し、複数の個別レンズのうち少なくとも一部の個別レンズが、複数の励起光のうち2以上の励起光が照射されることによって、複数の励起光200をさらに多くの複数の光(第2の光)に分割する。具体的には、マルチレンズアレイ212は、マルチ電子ビーム20と同数またはそれ以上の数の個別レンズがアレイ配置されたレンズアレイにより構成される。例えば、512×512のレンズにより構成される。マルチレンズアレイ212は、分割された複数の光をそれぞれ集光し、各光の焦点位置を光電面218の表面の高さ位置に合わせる。マルチレンズアレイ212により集光することで、各光の実効的な輝度を高めることができる。
【0025】
マルチ遮光膜216には、分割され、集光された複数の光(マルチ光)の各光の照射スポットの領域が露出されるように複数の開口部が形成される。尚、マルチ遮光膜216は省略しても良いが、マルチ遮光膜216により、マルチレンズアレイ212により集光されずにガラス基板214を通過した光、或いは/及び散乱光を開口部以外の部分で遮光できる。マルチ遮光膜216として、例えば、クロム(Cr)膜を用いると好適である。
【0026】
マルチ遮光膜216を通過した各光は光電面218の表面に入射する。光電面218は、表面から複数の光を入射し、裏面からマルチ光電子ビーム20を放出する。x,y方向に、例えば、512×512本のアレイ配列された光電子ビームが放出される。具体的には、光電面218は、表面から複数の光を入射し、入射位置に対応する裏面の各位置からそれぞれ光電子を放出する。光電面218は、例えば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)等の白金系材料を主材料とする膜により構成されると好適である。さらに、例えばPtの主膜の裏面側(図1の下流側)に例えば炭素(C)系材料がコーティングされると好適である。また、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)等のアルカリ金属を含む膜でも良い。光電面218の材料の仕事関数より大きなエネルギーの光子で光電面218表面が照射されると、光電面218は、裏面から光電子を放射する。検査装置100で使用する十分な電流密度のマルチ光電子ビーム20を得るために、光電面218表面に、例えば、0.1~100000W/cm程度(10~10W/m程度)の光が入射されると好適である。
【0027】
光電面218から放出されたマルチ光電子ビーム20は、相対的に正の電位が印可され、マルチレンズアレイ212の照射スポットと同じピッチで配置された開口部を有するマルチアノード電極220により引き出されることで加速し、成形アパーチャアレイ基板203に向かって進む。
【0028】
図2は、実施の形態1におけるマルチレンズアレイを照明する複数の励起光50の照射位置の一例を示す図である。
図3は、実施の形態1における励起光50の強度分布の一例を示す図である。図2の例では、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうち、例えば7×5個の個別レンズ14を示している。複数の個別レンズ14は、アレイ状に配列される。図3に示すように、各励起光50には、強度分布12が存在する。図3に示すように、中心部での強度が高く、周辺に向かうほどに強度が低くなる。図3では、強度分布のうち、例えば、強度の最大値から最小値を差し引いた値の1/2の位置でのビーム幅(半値幅)をスポット径φDとする場合を示している。図2の例では、マルチレンズアレイ212の入射面でのスポット径φDの各励起光50を示している。図2の例では、複数の励起光50が正方格子状にアレイ配列される場合を示している。例えば、アレイ光源201の各光源を正方格子状にアレイ配置することで達成できる。
【0029】
アレイ光源201からの複数の励起光50の各励起光50が、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうちそれぞれ一部の複数の個別レンズ14を照明する。また、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうち少なくとも一部の個別レンズ14が、2以上の励起光50の照射を受ける。図2の例において、複数の励起光50は、例えば、個別レンズ14同士間の配置ピッチの2倍のピッチPでマルチレンズアレイ212を照明する。各励起光50は、例えば3×3個の個別レンズ14の中心の個別レンズ14を中心として複数の個別レンズ14を照明する。図2の例では、各励起光50のスポット径内に、例えば、中心の個別レンズ14(レンズ1)全体と、中心の個別レンズ14のx方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ2)全体と、y方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ2)全体とが含まれ、中心の個別レンズ14の斜め方向の4つの個別レンズ14(レンズ3)のそれぞれ一部が含まれる場合を示している。各励起光50の照射位置中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)には、最大強度の光が照射されるので、中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量は大きい。これに対して、周囲の個別レンズ14に照射される励起光の強度は中心に比べて低くなる。よって、周囲の個別レンズ14が1つの励起光の受光量は小さい。
【0030】
そのため、実施の形態1では、周囲の個別レンズ14を2以上の励起光50で照明する。図2の例では、中心の個別レンズ14(レンズ1)のx方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ2)と、y方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ2)とが、それぞれ2つの励起光の照射を重複して受ける。中心の個別レンズ14(レンズ1)の斜め方向の4つの個別レンズ14(レンズ3)が、それぞれ4つの励起光の照射を重複して受ける。x方向とy方向の両隣の4つの個別レンズ14(レンズ2)は、照度小の励起光で全体が照明される。よって、照度小の2つの励起光によって照明されることにより、中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量と略同一にできる、或いは中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量に近づけることができる。斜め方向の4つの個別レンズ14(レンズ3)は、各励起光50のスポット径に一部が含まれる程度なので、4つの励起光の照射を受けることにより、中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量と略同一にできる、或いは中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量に近づけることができる。
【0031】
よって、中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)と周辺に位置する個別レンズ14(レンズ2)(レンズ3)の受光量を略均一にできる。
【0032】
図4は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板203の構成を示す概念図である。図4において、成形アパーチャアレイ基板203には、x,y方向に、p列×q列(p,q≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。図4では、例えば、x,y方向に512×512列の穴22が形成される。複数の穴22は、光電面218から放出されたマルチ光電子ビーム20の軌道上に合わせて形成される。光電面218から放出される各光電子ビームは、均一な形状及びサイズで放出されるわけではない。例えば、発散する方向に広がってしまう場合がある。そこで、成形アパーチャアレイ基板203により各光電子ビームの形状及びサイズを成形する。図4において、各穴22は、共に同じ形状の矩形で形成される。或いは、同じ直径の円形であっても構わない。成形アパーチャアレイ基板203は、描画に使用するマルチ光電子ビーム20を形成する。具体的には、これらの複数の穴22を放出されたマルチ光電子ビームの一部がそれぞれ通過することで、マルチ光電子ビーム20を所望の形状及びサイズに成形する。一方、光電面218から放出される各光電子ビームの発散が小さい場合には、成形アパーチャアレイ基板203を省略することも可能である。
【0033】
図5は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。ブランキングアパーチャアレイ機構204は、図5に示すように、支持台33上にシリコン等からなる半導体基板31が配置される。基板31の中央部は、例えば裏面側から薄く削られ、薄い膜厚hのメンブレン領域330(第1の領域)に加工されている。メンブレン領域330を取り囲む周囲は、厚い膜厚Hの外周領域332(第2の領域)となる。メンブレン領域330の上面と外周領域332の上面とは、同じ高さ位置、或いは、実質的に高さ位置になるように形成される。基板31は、外周領域332の裏面で支持台33上に保持される。支持台33の中央部は開口しており、メンブレン領域330の位置は、支持台33の開口した領域に位置している。
【0034】
メンブレン領域330には、図4に示した成形アパーチャアレイ基板203の各穴22に対応する位置にマルチ光電子ビーム20のそれぞれのビームの通過用の通過孔25(開口部)が開口される。言い換えれば、基板31のメンブレン領域330には、電子線を用いたマルチ光電子ビーム20のそれぞれ対応するビームが通過する複数の通過孔25がアレイ状に形成される。そして、基板31のメンブレン領域330上であって、複数の通過孔25のうち対応する通過孔25を挟んで対向する位置に2つの電極を有する複数の電極対がそれぞれ配置される。具体的には、メンブレン領域330上に、図5に示すように、各通過孔25の近傍位置に該当する通過孔25を挟んでブランキング偏向用の制御電極24と対向電極26の組(ブランカー:ブランキング偏向器)がそれぞれ配置される。また、基板31内部であってメンブレン領域330上の各通過孔25の近傍には、各通過孔25用の制御電極24に偏向電圧を印加するロジック回路41が配置される。各ビーム用の対向電極26は、グランド接続される。
【0035】
また、各ロジック回路41は、制御信号用のnビット(例えば10ビット)のパラレル配線が接続される。各ロジック回路41は、制御信号用のnビットのパラレル配線の他、クロック信号線、読み込み(read)信号、ショット(shot)信号および電源用の配線等が接続される。マルチビームを構成するそれぞれのビーム毎に、制御電極24と対向電極26とロジック回路41とによる個別ブランキング制御機構が構成される。また、メンブレン領域330にアレイ状に形成された複数のロジック回路41は、例えば、同じ行或いは同じ列によってグループ化され、グループ内のロジック回路41群は、直列に接続される。そして、グループ毎に配置されたパッド43からの信号がグループ内のロジック回路41に伝達される。具体的には、各ロジック回路41内に、図示しないシフトレジスタが配置され、例えば、p×q本のマルチビームのうち例えば同じ行のビームのロジック回路41内のシフトレジスタが直列に接続される。そして、例えば、p×q本のマルチビームの同じ行のビームの制御信号がシリーズで送信され、例えば、p回のクロック信号によって各ビームの制御信号が対応するロジック回路41に格納される。
【0036】
ロジック回路41内には、図示しないアンプ(スイッチング回路の一例)が配置される。アンプには正の電位(Vdd:ブランキング電位:第1の電位)(例えば、5V)(第1の電位)とグランド電位(GND:第2の電位)に接続される。アンプの出力線(OUT)は制御電極24に接続される。一方、対向電極26は、グランド電位が印加される。そして、ブランキング電位とグランド電位とが切り替え可能に印加される複数の制御電極24が、基板31上であって、複数の通過孔25のそれぞれ対応する通過孔25を挟んで複数の対向電極26のそれぞれ対応する対向電極26と対向する位置に配置される。
【0037】
アンプの入力(IN)にL電位が印加される状態では、アンプの出力(OUT)は正電位(Vdd)となり、対向電極26のグランド電位との電位差による電界により対応ビームを偏向し、制限アパーチャ基板206で遮蔽することでビームOFFになるように制御する。一方、アンプの入力(IN)にH電位が印加される状態(アクティブ状態)では、アンプの出力(OUT)はグランド電位となり、対向電極26のグランド電位との電位差が無くなり対応ビームを偏向しないので制限アパーチャ基板206を通過することでビームONになるように制御する。
【0038】
ブランキングアパーチャアレイ機構204は、マルチ光電子ビーム20の各ビームを偏向することにより各ビームのビームON/OFFを個別に切り替える個別ブランキング制御を行う。個別ブランキング制御では、各通過孔を通過する電子ビーム20は、それぞれ独立に対となる2つの制御電極24と対向電極26に印加される電圧によって偏向され、かかる偏向によってブランキング制御される。具体的には、制御電極24と対向電極26の組は、それぞれ対応するスイッチング回路となるアンプによって切り替えられる電位によってマルチ光電子ビーム20の対応ビームをそれぞれ個別にブランキング偏向する。このように、複数のブランカーが、成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチ光電子ビーム20のうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0039】
ブランキングアパーチャアレイ機構204を通過したマルチ光電子ビーム20は、電子レンズ205によって、縮小され、クロスオーバー位置付近に配置される制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、マルチ光電子ビーム20のうち、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向された電子ビームは、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される(ビームはOFF)。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向されなかった電子ビームは、図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する(ビームはON)。かかる個別ブランキング制御機構のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、各ビームのON/OFFが制御される。このように、制限アパーチャ基板206は、そして、ビーム毎に、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットのビームが形成される。試料101は、電子光学系によって、ビームONに制御されたマルチ光電子ビーム20で照射される。具体的には、制限アパーチャ基板206を通過したマルチ光電子ビーム20は、電子レンズ207(対物レンズ)により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、対物偏向器208によって、ビームONに制御されたマルチ光電子ビーム20全体が同方向に一括して偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。一度に照射されるマルチ光電子ビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。尚、電子レンズ205および電子レンズ207は、静電レンズと電磁レンズのいずれであっても良い。
【0040】
図6は、実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。図6に示すように、試料101の描画領域30は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置に一回のマルチ光電子ビーム20のショットで照射可能な照射領域34が位置するように調整し、描画が開始される。第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は例えば等速で連続移動させる。第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を-y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域32の右端、或いはさらに右側の位置に照射領域34が相対的にy方向に位置するように調整し、今度は、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、-x方向に向かって同様に描画を行う。第3番目のストライプ領域32では、x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域32では、-x方向に向かって描画するといったように、交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。但し、かかる交互に向きを変えながら描画する場合に限らず、各ストライプ領域32を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で成形アパーチャアレイ基板203に形成された複数の穴22と同数の複数のショットパターンが一度に形成される。また、描画する場合には多重描画しても好適である。多重描画を行う場合には、位置をずらさずに同じストライプ領域32を多重描画する場合の他、位置をずらしながら各パスのストライプ領域32を設定して多重描画する場合がある。
【0041】
図7は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。図7において、ストライプ領域32には、例えば、試料101面上におけるマルチ光電子ビーム20のビーム間ピッチで格子状に配列される複数の制御グリッド27(設計グリッド)が設定される。例えば、10nm程度の配列ピッチにすると好適である。かかる複数の制御グリッド27が、マルチ光電子ビーム20の設計上の照射位置となる。制御グリッド27の配列ピッチはビームサイズに限定されるものではなく、ビームサイズとは関係なく対物偏向器208の偏向位置として制御可能な任意の大きさで構成されるものでも構わない。そして、各制御グリッド27を中心とした、制御グリッド27の配列ピッチと同サイズでメッシュ状に仮想分割された複数の画素36が設定される。各画素36は、マルチ光電子ビーム20の1つのビームあたりの照射単位領域となる。図7の例では、試料101の描画領域が、例えばy方向に、1回のマルチ光電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34(描画フィールド)のサイズと実質同じ幅サイズで複数のストライプ領域32に分割された場合を示している。照射領域34のx方向サイズは、マルチ光電子ビーム20のx方向(第1の方向)のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じた値で定義できる。照射領域34のy方向サイズは、マルチ光電子ビーム20のy方向(第2の方向)のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じた値で定義できる。なお、ストライプ領域32の幅は、これに限るものではない。照射領域34のn倍(nは1以上の整数)のサイズであると好適である。図7の例では、例えば512×512列のマルチ光電子ビーム20の図示を8×8列のマルチ光電子ビームに省略して示している。そして、照射領域34内に、1回のマルチ光電子ビーム20のショットで照射可能な複数の画素28(ビームの描画位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う画素28間のピッチが設計上のマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。図7の例では、ビーム間ピッチで囲まれる領域で1つのサブ照射領域29を構成する。図7の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素で構成される場合を示している。
【0042】
図8は、実施の形態1におけるマルチビームの描画方法の一例を説明するための図である。図8では、各ビームで描画するサブ照射領域29の一部を示している。図8の例では、例えば、XYステージ105が8ビームピッチ分の距離を移動する間に4つの画素を描画(露光)する場合を示している。各ショットにおいて、各画素は、0から最大照射時間Ttrまでの間で制御された所望の照射時間のビーム照射を受ける。t=0からt=4Ttrまでの時間でかかる4つの画素を描画(露光)する。かかる4つの画素を描画(露光)する間、照射領域34がXYステージ105の移動によって試料101との相対位置がずれないように、対物偏向器208によってマルチ光電子ビーム20全体を一括偏向することによって、照射領域34をXYステージ105の移動に追従させる。言い換えれば、トラッキング制御が行われる。図8の例では、XYステージ105上の試料101が8ビームピッチ分の距離を連続移動する間に4つの画素を描画(露光)することで1回のトラッキングサイクルを実施する場合を示している。4つの画素へビームを照射した後、トラッキング制御用のビーム偏向をリセットすることによって、トラッキング位置をトラッキング制御が開始されたトラッキング開始位置に戻す。図8の例では、時刻t=4Ttrになった時点で、注目サブ照射領域29のトランキングを解除して、x方向に8ビームピッチ分ずれた注目サブ照射領域29にビームを振り戻す。なお、図8の例では、座標(1,3)のビーム(1)について説明したが、その他の座標のビームについてもそれぞれの対応するサブ照射領域29に対して同様に描画が行われる。
【0043】
なお、各サブ照射領域29の右から1番目の画素列の描画は終了しているので、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず偏向器209は、各サブ照射領域29の右から2番目の画素の最下段の制御グリッド27にそれぞれ対応するビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。かかる動作を繰り返すことで、各サブ照射領域29の全画素へのビーム照射が終了する。ストライプ領域32の描画中、かかる動作を繰り返すことで、図6に示す照射領域34a~34oといった具合に順次照射領域34の位置が移動していき、当該ストライプ領域の描画を行っていく。図8の例では、サブ照射領域29が4×4画素の領域で構成される場合を示したがこれに限るものではない。サブ照射領域29がn×n画素の領域で構成される場合、1回のトラッキング動作で、照射位置をシフトしながらn制御グリッド(n画素)が描画される。n回のトラッキング動作でそれぞれ異なるビームによってn画素ずつ描画されることにより、1つのn×n画素の領域内のすべての画素が描画される。
【0044】
ここで、マルチビーム描画では、各ビームから照射されるドーズ量を照射時間によって制御している。そして、各ビームの照射時間はブランキングアパーチャアレイ機構204によって制御される。しかしながら、ブランキングアパーチャアレイ機構204によりビームOFFに制御した場合でも制限アパーチャ206で完全な遮蔽ができず、漏れビームが発生してしまう場合がある。漏れビームが発生すると試料101上のレジストを感光させてしまうため、描画精度に影響を与えてしまうといった問題があった。そのため、漏れビームを抑制或いは低減することが望まれる。また、従来、電子ビーム源として使用していた例えば熱カソード型電子銃では、熱電子からなるビームの放出を描画処理中にON/OFFすることは困難である。そのため、ブランキングアパーチャアレイ機構204によりビームOFFに制御した場合でも電子銃から電子ビームが放出されている限り、漏れビームが発生し続けてしまう。そこで、実施の形態1では、電子銃の代わりに、ON/OFFの高速応答が可能なアレイ光源201と、励起光の入射によって光電子を放出する光電面218とを使用する。
【0045】
そして、制御回路160は、マルチ光電子ビーム20のショット毎に、励起光の発生/停止の切り替えタイミングと各ビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとを連動させる。具体的には、図1に示すように、アレイ光源201を駆動するアレイ駆動回路112と、ブランキングアパーチャアレイ機構204を制御するBAA駆動回路113との間を連動させる制御回路160を構成する、アレイ駆動回路112とBAA駆動回路113と全体制御回路161とのうちの少なくとも1つの制御回路がアレイ駆動回路112とBAA駆動回路113とを連動させるように制御する。例えば、全体制御回路161がアレイ駆動回路112とBAA駆動回路113とを連動するように制御する。或いは、アレイ駆動回路112が、自身とBAA駆動回路113とを連動するように制御してもよい。或いは、BAA駆動回路113が、自身とアレイ駆動回路112とを連動するように制御してもよい。アレイ駆動回路112とBAA駆動回路113と全体制御回路161のいずれかに同期用のクロック信号を発生する発振器を含む同期回路を搭載すればよい。具体的な制御内容を以下に説明する。
【0046】
図9は、実施の形態1における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの一例を示すタイムチャート図である。図9では、励起光の発生/停止を示すON/OFFのタイミングチャートと、ブランキングアパーチャアレイ機構204のあるビームの個別ブランキング制御を行う際のON/OFF駆動のタイミングチャートと、個別ブランキング制御に伴うビームのON/OFFのタイミングチャートと、を示している。図9の例では、マルチ光電子ビーム20のk番目のショットと、マルチ光電子ビーム20のk+1番目のショットと、を示している。
【0047】
図9において、制御回路160は、マルチ光電子ビーム20のショット毎に、励起光200を停止(OFF)の状態から発生(ON)の状態に切り替えた時点以降に、ビームONに制御する予定の各ビームをビームOFFの状態からビームONの状態に切り替えるように制御する。そして、制御回路160は、すべてのビームがビームOFFの状態になった時点以降に励起光200を発生の状態から停止の状態に切り替えるように制御する。マルチ光電子ビーム20のショットサイクルでは、上述したように、予め設定された最大照射時間Ttr以内の任意の照射時間がビーム毎に設定される。
【0048】
そこで、アレイ光源201は、ショットサイクル開始タイミングで各励起光200の発生を開始する。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204内の各ビームの個別ブランキング制御機構は、ショットサイクル開始タイミング以降に、ビームONに制御する予定の各ビームをビームOFFの状態からビームONの状態に切り替える。各ビームの個別ブランキング制御機構は、個別に設定された照射時間が経過した後に、ビームONの状態からビームOFFの状態に切り替える。よって、各ビームは、個別ブランキング制御機構の動作に合わせて、ビームOFFの状態からビームONの状態に切り替わり、個別に設定された照射時間が経過した後に、ビームONの状態からビームOFFの状態に切り替わる。そして、アレイ光源201は、ショットサイクル開始タイミングから最大照射時間Ttr以上の所定の時間が経過した後に、各励起光200の発生を停止する。かかる動作により、マルチ光電子ビーム20のうち、いずれかのビームに漏れビームが生じる場合でも、励起光200を停止している間については、 そもそも光電子の発生が生じないので、漏れビームを生じさせないようにできる。例えば、励起光200のON/OFFが1:1であれば、常時ONの場合に比べて漏れビームを50%以下にできる。
【0049】
図10は、実施の形態1の変形例1における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの一例を示すタイムチャート図である。図10では、図9と同様、励起光の発生/停止を示すON/OFFのタイミングチャートと、ブランキングアパーチャアレイ機構204のあるビームの個別ブランキング制御を行う際のON/OFF駆動のタイミングチャートと、個別ブランキング制御に伴うビームのON/OFFのタイミングチャートと、を示している。図10の例では、マルチ光電子ビーム20のk番目のショットと、マルチ光電子ビーム20のk+1番目のショットと、を示している。
【0050】
図10において、制御回路160は、マルチ光電子ビーム20のショット毎に、各励起光200を停止の状態から所定の回数の励起光200のパルスを発生させ、各励起光200のパルスの発生開始前、各励起光200のパルスの発生と同時、若しくは各励起光200のパルスの発生開始後であってパルス間のパルスOFFのタイミングでビームONに制御する予定の各ビームをビームOFFの状態からビームONの状態に切り替えるように制御する。そして、制御回路160は、ビームONに制御された各ビームをそれぞれ必要なドーズ量に対応するパルス数のパルス発生後にビームONの状態からビームOFFの状態に切り替えるようにブランキングアパーチャアレイ機構204を制御する。各励起光200のパルスは、例えば、所定のタイミング及び所定のピッチで発生させる。パルスの時間幅及びピッチは、個別ビームが照射時間を制御可能に設定される。最大照射時間Ttrが例えば1023階調で定義される場合、1パルスの発生時間は、例えば、1階調分の時間で定義される。かかる場合、 ブランキングアパーチャアレイ機構204内の各ビームの個別ブランキング制御機構は、ショットサイクル開始タイミングで、ビームONに制御する予定の各ビームをビームOFFの状態からビームONの状態に切り替える。一方、アレイ光源201は、ショットサイクル開始タイミング以降に、各励起光200の発生を開始する。各ビームの個別ブランキング制御機構は、個別に設定された照射時間に相当するパルス数のパルス発生後にビームONの状態からビームOFFの状態に切り替える。アレイ光源201は、最大照射時間Ttr以上の照射時間に相当するパルス数のパルス発生後に停止する。
【0051】
但し、これに限るものではなく、励起光200のパルス幅及びピッチは可変に設定しても構わない。
【0052】
図11は、実施の形態1の変形例1における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの他の一例を示すタイムチャート図である。図11の例おいて、最大照射時間Ttrが例えば8階調で定義される場合、例えば、1階調分の時間で1パルス、及び7階調分がそれぞれの時間幅で1倍、2倍、4倍のパルスを発生させる。尚、0諧調分は励起光が停止している適当なタイミングでも良いし、時間幅が0倍のパルスとして制御しても良い。かかる場合、ブランキングアパーチャアレイ機構204内の各ビームの個別ブランキング制御機構は、励起光200のパルスが発生している期間中に、励起光200のパルスの発生開始後であってパルス間のパルスOFFのタイミングでビームOFFの状態からビームONの状態に切り替えるように制御する。そして、各ビームの個別ブランキング制御機構は、それぞれ必要なドーズ量に対応するパルス数のパルスだけを取り込んだタイミングで、ビームONの状態からビームOFFの状態に切り替えるように制御する。図11の例では、各ショットでパルスを組み合わせ、3および7階調分の照射時間のビームについて、ON/OFFの切り替えタイミングを示している。
【0053】
図12は、実施の形態1の変形例2における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの他の一例を示すタイムチャート図である。図12の例では、図9に示した制御内容のうち、ビームOFFへの切り替えタイミングを励起光200の停止タイミングに合わせる場合を示している。
【0054】
図12において、制御回路160は、マルチ光電子ビーム20のショット毎に、励起光200を停止の状態から発生の状態に切り替えて、所定の期間、励起光200を発生し、励起光200が発生している状態でビームONに制御する予定の各ビームをビームOFFの状態からビームONの状態に切り替えるように制御する。そして、制御回路160は、ビームONに制御された各ビームをビームONの状態からビームOFFの状態に切り替えるタイミングに同期して、励起光200を発生の状態から停止の状態に切り替えるように制御する。具体的には、ブランキングアパーチャアレイ機構204内の各ビームの個別ブランキング制御機構は、励起光200の停止タイミングから個別に設定された照射時間の開始タイミングを逆算して、得られた開始タイミングでビームONに制御する予定の各ビームをビームOFFの状態からビームONの状態に切り替える。一方、アレイ光源201は、各ビームの中で最初の開始タイミングと同時または、その前に設定されたショットサイクル開始タイミングで励起光200の発生を開始する。そして、アレイ光源201は、ショットサイクル開始タイミングから所定の時間が経過した後に、励起光200の発生を停止する。各ビームの個別ブランキング制御機構は、励起光200の停止タイミングに合わせて、ビームONの状態からビームOFFの状態に切り替える。よって、各ビームは、個別ブランキング制御機構の動作に合わせて、励起光200の停止タイミングでビームOFFになる。ブランキング偏向によりビームOFFにする場合、ビームの立ち下がりに時間がかかる場合がある。アレイ光源201では、レーザー発振器により励起光200のON/OFFの切り替え応答性が個別ブランキング制御機構よりも高い。そのため、励起光200の停止タイミングとビームOFFのタイミングとを同期させることで、かかるビームの立ち下がり期間中の漏れビームをカットできる。
【0055】
図13は、実施の形態1の変形例3における励起光の発生/停止の切り替えタイミングとあるビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとの他の一例を示すタイムチャート図である。図13の例では、図9に示した制御内容のうち、ビームONへの切り替えタイミング(照射開始タイミング)を励起光200の発生タイミングに合わせる場合を示している。
【0056】
図13において、制御回路160は、マルチ光電子ビーム20のショット毎に、励起光200を停止の状態から発生の状態に切り替えるタイミングに同期して、ビームONに制御する予定の各ビームをビームOFFの状態からビームONの状態に切り替えるように制御する。そして、制御回路160は、励起光200を発生の状態から停止の状態に切り替えるまでに、ビームONに制御された各ビームをビームONの状態からビームOFFの状態に切り替えるように制御する。具体的には、ブランキングアパーチャアレイ機構204内の各ビームの個別ブランキング制御機構は、ショットサイクル開始タイミングでビームONに制御する予定の各ビームをビームOFFの状態からビームONの状態に切り替える。ブランキング偏向によりビームONにする場合、ビームの立ち上がりに時間がかかる場合がある。アレイ光源201では、レーザー発振器により励起光200のON/OFFの切り替え応答性が個別ブランキング制御機構よりも高い。そのため、アレイ光源201は、ショットサイクル開始タイミングからビームの立ち上がり時間経過時点のタイミングに合わせて励起光200の発生を開始する。よって、各ビームは、励起光200の発生開始タイミングでビームONの状態になる。そして、各ビームの個別ブランキング制御機構は、個別に設定された照射時間が経過した後に、ビームONの状態からビームOFFの状態に切り替える。アレイ光源201は、ショットサイクル開始タイミングから最大照射時間Ttr以上の所定の時間が経過した後に、励起光200の発生を停止する。励起光200の発生開始タイミングとビームONのタイミングとを同期させることで、かかるビームの立ち上がり期間中の漏れビームをカットできる。また、立ち上がり期間中のドーズをカットできるので、ドーズ量の精度を上げることができる。
【0057】
以上のように、実施の形態1では、マルチ光電子ビーム20のショット毎に、励起光200の発生/停止の切り替えタイミングと各ビームのビームON/OFFの切り替えタイミングとを連動させながら、ブランキングアパーチャアレイ機構204を用いて、マルチ光電子ビーム20の各ビームを偏向することにより各ビームのビームON/OFFを個別に切り替える個別ブランキング制御を行う。
【0058】
そして、描画機構150は、ビームONに制御されたマルチ光電子ビームを用いて、試料101にパターンを描画する。
【0059】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチビーム描画において、電子ビームを形成する光電面218の各領域(各電子放出位置)の受光量における領域(電子放出位置)間の受光量の差を低減、すなわち均一性を向上できる。
【0060】
実施の形態2.
実施の形態1では、アレイ光源201からの複数の励起光50がマルチレンズアレイ212の入射面において、正方格子状に配列された構成について説明したがこれに限るものではない。描画装置100の構成は、図1と同様である。
【0061】
図14は、実施の形態2におけるマルチレンズアレイを照明する複数の励起光の照射位置の一例を示す図である。図14の例では、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうち、例えば7×5個の個別レンズ14を示している。複数の個別レンズ14は、アレイ状に配列される。図14の例では、複数の励起光50が千鳥格子状にアレイ配列される場合を示している。例えば、アレイ光源201の各光源を千鳥格子状にアレイ配置することで達成できる。言い換えれば、y方向に隣接する段では、励起光50の中心位置がx方向に距離dだけずれてピッチPで配列される。距離dは、例えば、個別レンズ14の配列ピッチにすると好適である。さらに言い換えれば、励起光50の中心位置がx方向にピッチPで配列される段と、励起光50の中心位置がx方向に1つの個別レンズ14分ずれてピッチPで配列される段と、がy方向に交互に配列される。このように、位置をずらしながら複数の励起光50でマルチレンズアレイ212を照明しても好適である。
【0062】
図14の例では、図2と同様、アレイ光源201からの各励起光50が、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうちそれぞれ一部の複数の個別レンズ14を照明する。また、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうち少なくとも一部の個別レンズ14が、2以上の励起光50の照射を受ける。
【0063】
図14の例において、複数の励起光50は、例えば、個別レンズ14同士間の配置ピッチdの2倍のピッチPでマルチレンズアレイ212を照明する。各励起光50は、例えば3×3個の個別レンズ14の中心の個別レンズ14を中心として複数の個別レンズ14を照明する。図14の例では、各励起光50のスポット径内に、例えば、中心の個別レンズ14(レンズ1)全体と、中心の個別レンズ14のx方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ2)全体と、y方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ3)全体とが含まれ、中心の個別レンズ14の斜め方向の4つの個別レンズ14(レンズ3)のそれぞれ一部が含まれる場合を示している。図3に示すように、各励起光50の照射位置中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)には、最大強度の光が照射されるので、中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量は大きい。これに対して、周囲の個別レンズ14に照射される励起光の強度は中心に比べて低くなる。よって、周囲の個別レンズ14が1つの励起光から受ける照度は小さい。
【0064】
実施の形態2では、周囲の個別レンズ14を2以上の励起光50で照明する。図14の例では、中心の個別レンズ14(レンズ1)のx方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ2)が2つの励起光の照射を重複して受ける。y方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ3)と、斜め方向の4つの個別レンズ14(レンズ3)が、それぞれ3つの励起光の照射を重複して受ける。x方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ2)は、照度小の励起光で全体が照明される。よって、照度小の2つの励起光によって照明されることにより、中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量と略同一の照度にできる、或いは中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量に近づけることができる。y方向の両隣の2つの個別レンズ14(レンズ3)と斜め方向の4つの個別レンズ14(レンズ3)は、各励起光50のスポット径に一部が含まれる程度なので、3つの励起光の照射を受けることにより、中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量と略同一の照度にできる、或いは中心に位置する個別レンズ14(レンズ1)の受光量に近づけることができる。図14の例では、図2の例とは重なり方が異なるが、図14の例においても、各個別レンズ14の受光量の差を低減できる。
【0065】
その他の内容は、実施の形態1と同様である。
【0066】
実施の形態3.
上述した各実施の形態では、同一サイズの複数の個別レンズ14によりマルチレンズアレイ212が構成される場合を説明したが、これに限るものではない。実施の形態3では、異なるサイズの複数の個別レンズ14によりマルチレンズアレイ212が構成される場合を説明する。描画装置100の構成は、図1と同様である。
【0067】
図15は、実施の形態3におけるマルチレンズアレイを照明する複数の励起光の照射位置の一例を示す図である。図15の例では、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうち、例えば7×5個の個別レンズ14を示している。複数の個別レンズ14は、アレイ状に配列される。複数の個別レンズ14は、複数のサイズの個別レンズ14-1,14-2を含む。図15の例では、例えば、大小2種のサイズの複数の個別レンズ14-1,14-2を用いる場合を示している。図15の例では、マルチレンズアレイ212上面において、複数の励起光50が正方格子状にアレイ配列される場合を示している。かかる場合に、励起光50の中心部分で照射される個別レンズには、サイズ小の個別レンズ14-1が用いられる。励起光50の周辺部分で照射される個別レンズには、サイズ大の個別レンズ14-2が用いられる。
【0068】
図15の例では、図2と同様、アレイ光源201からの複数の励起光50の各励起光50が、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうちそれぞれ一部の複数の個別レンズ14-1,14-2を照明する。また、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうちサイズ大の各個別レンズ14-2が、2以上の励起光50の照射を受ける。
【0069】
図15の例において、複数の励起光50は、例えば、個別レンズ14同士間の配置ピッチdの2倍のピッチPでマルチレンズアレイ212を照明する。各励起光50は、例えば3×3個の個別レンズ14の中心の個別レンズ14を中心として複数の個別レンズ14を照明する。図15の例では、各励起光50のスポット径内に、例えば、中心の個別レンズ14-1全体と、中心の個別レンズ14-1の周囲の8つの個別レンズ14-2のそれぞれ一部が含まれる場合を示している。
【0070】
図15の例では、中心の個別レンズ14-1(レンズ1)のx方向とy方向の両隣の4つの個別レンズ14-2(レンズ2)が2つの励起光の照射を受ける。斜め方向の4つの個別レンズ14-3(レンズ3)が、それぞれ4つの励起光の照射を受ける。
【0071】
各励起光50の照射位置中心に位置する個別レンズ14-1には、図3に示すように最大強度の光が照射されるので、レンズサイズを小さくすることで、入射する光束の数を制限できる。その結果、中心に位置する個別レンズ14-1の受光量を小さくできる。これに対して、周囲の個別レンズ14-2に照射される励起光の強度は中心に比べて低くなる。よって、周囲の個別レンズ14が1つの励起光からの受光量は小さい。そのため、レンズサイズを大きくすることで、入射する光束の数を増やすことができる。また、複数の励起光50から光束が入射する。x方向とy方向の両隣の4つの個別レンズ14-2(レンズ2)に比べて、斜め方向の4つの個別レンズ14-2(レンズ3)は、1つの励起光あたりの照射面積が小さい。よって、x方向とy方向の両隣の4つの個別レンズ14-2(レンズ2)に比べて、斜め方向の4つの個別レンズ14-2(レンズ3)を照射する励起光の数を増やすことで照度の調整ができる。その結果、各個別レンズ14の照度のばらつきを低減できる。
【0072】
図16は、励起光50がマルチレンズアレイ212を照射する際の照度の分布であり、実施の形態3におけるサイズ小の個別レンズの配置例を示す上面図である。
図17は、実施の形態3におけるサイズ小の個別レンズに入射する光のヒストグラムの一例を示す図である。図16の例では、サイズ小の個別レンズ14-1を励起光50のスポット中央に配置する場合を示す。かかる場合に、図17に示すように、狭い範囲の強度の光束が数多く入射していることがわかる。かかる場合の個別レンズ14-1の受光量(レンズ集光強度)はヒストグラムの積算値は27(単位はA.U.)であった。
【0073】
図18は、励起光50がマルチレンズアレイ212を照射する際の照度の分布であり、実施の形態3の比較例におけるサイズ小の個別レンズの他の配置例を示す上面図である。
図19は、実施の形態3の比較例におけるサイズ小の個別レンズに入射する光のヒストグラムの他の一例を示す図である。図18の例では、サイズ小の個別レンズ14-1を2つの励起光50のスポット間に配置する場合を示す。かかる場合に、図19に示すように、図17の場合と比べて入射する光の強度帯の幅は大きく変化しないが、図17の場合よりも低い強度帯が低い方にシフトしていることがわかる。かかる場合の個別レンズ14-1の受光量(レンズ集光強度)は10(単位はA.U.)であった。
【0074】
図20は、励起光50がマルチレンズアレイ212を照射する際の照度の分布であり、実施の形態3におけるサイズ大の個別レンズの他の配置例を示す上面図である。
図21は、実施の形態3におけるサイズ大の個別レンズに入射する光のヒストグラムの他の一例を示す図である。図20の例では、サイズ大の個別レンズ14-2を2つの励起光50のスポット間に配置する場合を示す。かかる場合に、図21に示すように、図17の場合よりも低い強度帯が低い方にシフトしていることがわかるが、図17の場合と比べて入射する光の強度帯の幅は大きくなる。よって、低い強度の光束を数多く入射していることがわかる。そして、かかる場合の個別レンズ14-2の受光量(レンズ集光強度)は28(単位はA.U.)であった。よって、図16及び図17に示した、サイズ小の個別レンズ14-1を励起光50のスポット中央に配置する場合と同等の受光量を得ることができることがわかる。
【0075】
以上の結果でも示すように、励起光50のスポット中央にサイズ小の個別レンズ14-1を配置し、各励起光50のスポット間にサイズ大の個別レンズ14-2を配置することで、各個別レンズ14の照度のばらつきを低減できる。
【0076】
上述した例では、2種のレンズサイズの組み合わせによりマルチレンズアレイ212を構成する場合を説明したがこれに限るものではない。
【0077】
図22は、実施の形態3の変形例におけるマルチレンズアレイを照明する複数の励起光の照射位置の一例を示す図である。図22の例では、マルチレンズアレイ212を構成する複数の個別レンズ14のうち、例えば7×5個の個別レンズ14を示している。複数の個別レンズ14は、アレイ状に配列される。複数の個別レンズ14は、複数のサイズの個別レンズ14-1,14-2,14-3を含む。図22の例では、例えば、大中小の3種のサイズの複数の個別レンズ14-1,14-2,14-3を用いる場合を示している。図22の例では、マルチレンズアレイ212上面において、複数の励起光50が正方格子状にアレイ配列される場合を示している。かかる場合に、励起光50の中心部分で照射される個別レンズには、サイズ小の個別レンズ14-1が用いられる。中心の個別レンズ14-1のx方向とy方向の両隣の4つの個別レンズには、サイズ中の個別レンズ14-2が用いられる。中心の個別レンズ14-1の斜め方向の4つの個別レンズには、サイズ大の個別レンズ14-3が用いられる。
【0078】
図22の例では、中心の個別レンズ14-1(レンズ1)のx方向とy方向の両隣のサイズ中の4つの個別レンズ14-2(レンズ2)が2つの励起光の照射を受ける。斜め方向のサイズ大の4つの個別レンズ14-3(レンズ3)が、それぞれ4つの励起光の照射を受ける。斜め方向の4つの個別レンズ14-3(レンズ3)では、入射する各励起光の照度が小さい。そのため、x方向とy方向の両隣の4つの個別レンズ14-2(レンズ2)よりも、サイズ大の個別レンズ14-3を用いることで、受光量を上げることができる。逆に、x方向とy方向の両隣の4つの個別レンズ14-2(レンズ2)では、入射する各励起光の照度が斜め方向の4つの個別レンズ14-3(レンズ3)よりも大きい。そのため、斜め方向の4つの個別レンズ14-3(レンズ3)よりも、サイズが小さいサイズ中の個別レンズ14-2を用いることで、受光量を下げることができる。個別レンズの配置位置と励起光のスポット位置との関係に応じて、2種のレンズサイズを用いる場合よりもさらに細かな受光量の調整ができる。
【0079】
上述した例では、複数の励起光50が正方格子状にアレイ配列される場合を示しているが、図14に示した場合と同様、複数の励起光50が千鳥格子状にアレイ配列される場合であっても好適である。
【0080】
その他の内容は、実施の形態1と同様である。
【0081】
実施の形態4.
上述した各実施の形態では、アレイ光源201からの複数の励起光全体を同じ照明レンズに入射する場合を説明したが、これに限るものではない。実施の形態4では、照明レンズにマルチレンズアレイを用いる構成について説明する。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1~3のいずれか1つと同様である。
【0082】
図23は、実施の形態4における描画装置の構成を示す概念図である。図23において、照明レンズ202の代わりに照明マルチレンズアレイ230が配置された点以外は、図1と同様である。よって、アレイ光源201とマルチレンズアレイ212(第1のマルチレンズアレイ)との間に、照明マルチレンズアレイ230(第2のマルチレンズアレイ)が配置される。
【0083】
アレイ光源201からの複数の励起光全体を同じ照明レンズ202に入射する構成では、照明レンズ202の中心部を通る励起光と周辺部を通る励起光との間で、マルチレンズアレイ212に入射する励起光50の角度が異なるため、マルチレンズアレイ212上の照度にムラが生じ得る。できるだけ均一な複数の励起光がマルチレンズアレイ212を照射するためには、各励起光がレンズのできるだけ同じ角度で通過することが望ましい。そのためには、励起光毎に、個別レンズを通過させることが望ましい。
【0084】
そこで、実施の形態4では、励起光毎に、個別レンズを配置した照明マルチレンズアレイ230を用いる。照明マルチレンズアレイ230を構成する複数の照明個別レンズ13は、アレイ光源201を構成する複数の光源11の数と同数であっても良く、また多くても少なくても良い。光源11の数と照明個別レンズ13が同一の場合、対となる光源11の中心と照明個別レンズ13の中心とを結ぶ線が、かかる光源から出力される励起光の軌道中心と一致するようにかかる個別レンズが配置される。照明マルチレンズアレイ230を構成する複数の個別レンズは互いに重ならないように配置される。
【0085】
かかる構成により、マルチレンズアレイ212上に照射される複数の励起光50のムラを解消或いは低減できる。よって、複数の励起光50の状態を均一に近づけることができる。
【0086】
図24は、実施の形態4における複数の励起光のスポット径の一例を示す図である。アレイ光源201から発生された複数の励起光200は、広がりながら所定のスポット径で照明マルチレンズアレイ230を照明する。図24の例では、照明マルチレンズアレイ230上でスポット径の複数の励起光50を示している。複数の励起光52は、照明マルチレンズアレイ230の各照明個別レンズ13により屈折させられ、マルチレンズアレイ212を照明する。図24の例では、マルチレンズアレイ212上でスポット径の複数の励起光50を示している。図24の例では、複数の励起光52は、例えば、照明マルチレンズアレイ230の各個別レンズにより屈折させられながらもさらに広がりながらマルチレンズアレイ212を照明する場合を示している。マルチレンズアレイ212上での複数の励起光50の照明状態は、例えば、図2の例で示したようにマルチレンズアレイ212上の各個別レンズ14を照明することになる。よって、マルチレンズアレイ212(第1のマルチレンズアレイ)と照明マルチレンズアレイ230(第2のマルチレンズアレイ)とは、配列される個別レンズのピッチが異なる。マルチレンズアレイ212の複数の個別レンズ14の配置ピッチdに対して、照明マルチレンズアレイ230では、複数の照明個別レンズ13が配置ピッチdより大きい配置ピッチpで配置される。
【0087】
上述した例では、複数の励起光50が正方格子状にアレイ配列される場合を示しているが、図14に示した場合と同様、複数の励起光50が千鳥格子状にアレイ配列される場合であっても好適である。かかる場合には、アレイ光源201を構成する複数の光源11も千鳥格子状に配列されると共に、照明マルチレンズアレイ230を構成する複数の個別レンズも同様に千鳥格子状に配列される。
【0088】
また、上述した例では、第2のマルチレンズアレイとして1枚の照明マルチレンズアレイ230によってマルチレンズアレイ212を照明しているが、さらに照明マルチレンズアレイを追加し、複数の照明マルチレンズアレイを備えても良い。
【0089】
その他の内容は、実施の形態1と同様である。
【0090】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0091】
また、上述した例では、各ロジック回路41の制御用に10ビットの制御信号が入力される場合を示したが、ビット数は、適宜設定すればよい。例えば、2ビット、或いは3ビット~9ビットの制御信号を用いてもよい。なお、11ビット以上の制御信号を用いてもよい。
【0092】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0093】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム描画装置及びマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0094】
11 光源
12 強度分布
13 照明個別レンズ
14 個別レンズ
20 マルチ光電子ビーム
22 穴
24 制御電極
25 通過孔
26 対向電極
27 制御グリッド
28 画素
29 サブ照射領域
30 描画領域
32 ストライプ領域
31 基板
33 支持台
34 照射領域
36 画素
41 制御回路
50,52 励起光
100 描画装置
101 試料
112 アレイ駆動回路
113 BAA駆動回路
150 描画機構
160 制御回路
161 全体制御回路
200 励起光
201 アレイ光源
202 照明レンズ
220 マルチアノード電極
203 成形アパーチャアレイ基板
204 ブランキングアパーチャアレイ機構
205 電子レンズ
206 制限アパーチャ基板
207 電子レンズ
208 対物偏向器
210 光電子放出機構
212 マルチレンズアレイ
214 ガラス基板
216 マルチ遮光膜
218 光電面
230 照明マルチレンズアレイ
330 メンブレン領域
332 外周領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24