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特開2023-119943栽培環境調査方法及び栽培環境調査プログラム、並びに栽培管理方法及び栽培管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119943
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】栽培環境調査方法及び栽培環境調査プログラム、並びに栽培管理方法及び栽培管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230822BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023089
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】中野 有加
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康也
(72)【発明者】
【氏名】小林 有一
(72)【発明者】
【氏名】飯嶋 渡
(72)【発明者】
【氏名】東出 忠桐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文生
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】圃場内において作物の生育が順調でなく、栽培環境の調査を行う必要のある地点を決定する。
【解決手段】生体調査部102は、圃場内で生育する各キャベツに対して時期をずらして実施した2回の生体調査の結果(画像を用いた投影葉面積の算出結果)に基づいて、各キャベツの投影葉面積の増加量(測定値)を算出する。また、比較部106は、各キャベツの栽培地点の栽培環境データに基づいて推定される各キャベツの投影葉面積の増加量(目標値)と、各キャベツの投影葉面積の増加量(測定値)と、を比較し、対応策決定部108は、比較結果に基づいて、各キャベツの生育が順調か否かを判定する。そして、対応策決定部108は、判定の結果に基づいて、各キャベツの栽培環境を調査するか否かを決定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内の所定地点で生育している特定作物に対して時期をずらして実施した2回の生体調査の結果に基づいて、前記特定作物の生育速度を示す値を算出して、測定値とし、
前記所定地点の栽培環境データに基づいて推定される前記特定作物の生育速度を示す値を目標値とし、前記測定値と、前記目標値とを比較することで、前記特定作物の生育が順調か否かを判定し、
前記判定の結果に基づいて、前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査するか否かを決定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする栽培環境調査方法。
【請求項2】
前記目標値は、前記特定作物に対して時期をずらして実施した前記2回の生体調査のうちの1回目の生体調査の情報と、前記2回の生体調査の間の期間の前記所定地点の栽培環境データと、から推定される前記作物の生育速度を示す値である、ことを特徴とする請求項1に記載の栽培環境調査方法。
【請求項3】
前記特定作物の生育を予測するための生育モデルに、前記1回目の生体調査の情報と、前記2回の生体調査の間の期間の前記所定地点の栽培環境データと、を投入することで、2回目の生体調査において得られると予想される結果を取得し、予想される結果と前記1回目の生体調査の情報とに基づく前記作物の生育速度を示す値を、前記目標値とすることを特徴とする請求項2に記載の栽培環境調査方法。
【請求項4】
前記生体調査は、前記特定作物を撮影した画像を用いた調査であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の栽培環境調査方法。
【請求項5】
前記生体調査は、投影葉面積、高さ、体積のいずれかの調査であることを特徴とする請求項4に記載の栽培環境調査方法。
【請求項6】
前記栽培環境の調査は、土壌水分量及び肥料成分濃度の少なくとも一方の調査であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の栽培環境調査方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の栽培環境調査方法を用いて、前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査するか否かを決定し、
前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査すると決定された場合に、前記所定地点の栽培環境の調査結果と、前記特定作物に対して時期をずらして実施した前記2回の生体調査のうちの2回目の生体調査の時期と、に基づいて、前記所定地点又は前記所定地点の近傍に対して実行すべき処理内容を決定し、
前記実行すべき処理内容を表示する、又は前記実行すべき処理内容を処理装置に対して通知する、
処理をコンピュータが実行する栽培管理方法。
【請求項8】
前記実行すべき処理内容は、灌漑、施肥、防除のいずれかであることを特徴とする請求項7に記載の栽培管理方法。
【請求項9】
圃場内の所定地点で生育している特定作物に対して時期をずらして実施した2回の生体調査の結果に基づいて、前記特定作物の生育速度を示す値を算出して、測定値とし、
前記所定地点の栽培環境データに基づいて推定される前記特定作物の生育速度を示す値を目標値とし、前記測定値と、前記目標値とを比較することで、前記特定作物の生育が順調か否かを判定し、
前記判定の結果に基づいて、前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査するか否かを決定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする栽培環境調査プログラム。
【請求項10】
圃場内の所定地点で生育している特定作物に対して時期をずらして実施した2回の生体調査の結果に基づいて、前記特定作物の生育速度を示す値を算出して、測定値とし、
前記所定地点の栽培環境データに基づいて推定される前記特定作物の生育速度を示す値を目標値とし、前記測定値と、前記目標値とを比較することで、前記特定作物の生育が順調か否かを判定し、
前記判定の結果に基づいて、前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査するか否かを決定し、
前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査すると決定された場合に、前記所定地点の栽培環境の調査結果と、前記特定作物に対して時期をずらして実施した前記2回の生体調査のうちの2回目の生体調査の時期と、に基づいて、前記所定地点又は前記所定地点の近傍に対して実行すべき処理内容を決定し、
前記実行すべき処理内容を表示する、又は前記実行すべき処理内容を処理装置に対して通知する、
処理をコンピュータが実行する栽培管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培環境調査方法及び栽培環境調査プログラム、並びに栽培管理方法及び栽培管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、農作物の生産者と実需者との契約取引が増加しており、生産者には契約に合わせた安定的な出荷を行うことが要求されている。このため、生産者には、適切な栽培管理が求められる。
【0003】
適切な栽培管理のためには、作物の状態や圃場の状態を把握し、それらが適切な状態となるように管理する必要がある。作物の状態を把握する方法としては、圃場の上方から撮影した画像を用いる方法が知られている(例えば特許文献1等参照)。また、圃場の状態を把握する方法としては、圃場の複数の地点の水分量や電気伝導率等を取得し、分析する方法が知られている(例えば特許文献2等参照)。
【0004】
また、圃場全体の画像を解析することにより対象物の生育状況を検出し、検出した生育状況、圃場の現在の環境情報、過去の環境情報に基づいて、将来の生育状況を予測する技術が知られている(例えば特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-151228号公報
【特許文献2】特開2020-61984号公報
【特許文献3】国際公開第2019/106733
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画像を用いて作物の状態を把握できたとしても、生育不良の原因を特定できるとは限らない。また、圃場の複数地点の水分量や電気伝導率を取得して分析する場合、分析するデータの数が多くなったり、複数のデータを統計処理等しなければならず、分析に時間を要するおそれがある。また、特許文献3の技術を利用した場合、圃場全体における生育状況は予測できるが、圃場内の局所的な栽培環境の調査には利用することができない。
【0007】
1つの側面では、本発明は、圃場内において作物の生育が順調でなく、栽培環境の調査を行う必要のある地点を決定することが可能な栽培環境調査方法及び栽培環境調査プログラム、並びに適切な栽培管理が可能な栽培管理方法及び栽培管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る栽培環境調査方法は、圃場内の所定地点で生育している特定作物に対して時期をずらして実施した2回の生体調査の結果に基づいて、前記特定作物の生育速度を示す値を算出して、測定値とし、前記所定地点の栽培環境データに基づいて推定される前記特定作物の生育速度を示す値を目標値とし、前記測定値と、前記目標値とを比較することで、前記特定作物の生育が順調か否かを判定し、前記判定の結果に基づいて、前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査するか否かを決定する、処理をコンピュータが実行する栽培環境調査方法である。
【0009】
第2の態様に係る栽培管理方法は、第1の態様の栽培環境調査方法を用いて、前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査するか否かを決定し、前記所定地点又は前記所定地点の近傍の栽培環境を調査すると決定された場合に、前記所定地点の栽培環境の調査結果と、前記特定作物に対して時期をずらして実施した前記2回の生体調査のうちの2回目の生体調査の時期と、に基づいて、前記所定地点又は前記特定作物に対して実行すべき処理内容を決定し、前記実行すべき処理内容を表示する、又は前記実行すべき処理内容を処理装置に対して通知する、処理をコンピュータが実行する栽培管理方法である。
【発明の効果】
【0010】
栽培環境調査方法及び栽培環境調査プログラムによれば、圃場内において作物の生育が順調でなく、栽培環境の調査を行う必要のある地点を決定することができる。また、栽培管理方法及び栽培管理プログラムによれば、適切な栽培管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】生育初期におけるキャベツの投影葉面積の増加量と、収穫時におけるキャベツの球重と、の関係を調査した結果を示すグラフである。
図2】一実施形態に係る農業システムの構成を概略的に示す図である。
図3図1のサーバのハードウェア構成を示す図である。
図4図1のサーバの機能ブロック図である。
図5図5(a)は調査結果テーブル(定植から2週間後)を示す図であり、図5(b)は目標値テーブル(定植から2週間後)を示す図である。
図6】生育モデルの一例を示す図である。
図7】比較部の処理を説明するための図である。
図8】サーバの処理を示すフローチャート(その1)である。
図9】サーバの処理を示すフローチャート(その2)である。
図10】土壌の肥料成分濃度と、生育初期の投影葉面積増加量及び収穫時の球重と、の関係を示す図である。
図11図11(a)は調査結果テーブル(定植から3週間後)を示す図であり、図11(b)は目標値テーブル(定植から3週間後)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態に係る農業システムについて、図1図11に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の農業システムは、作物が栽培されている圃場において作物の栽培環境を監視し、作物が適切な環境において栽培されるように圃場を管理するためのシステムである。本実施形態において対象となる作物は、1株1収穫物となる作物であり、例えば、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ブロッコリー、大根、人参、ネギ等である。葉が展開あるいは伸長し、生育経過を観察しやすい作物であれば、対象にすることができる。また、コマツナ、 ホウレンソウ等、収穫時点で地上数cm程度の位置で刈り取り、切り株から新たに株を再生させて繰り返し収穫する再生栽培可能な作物も対象にすることができる。なお、本実施形態では、作物がキャベツである場合を例に説明する。
【0014】
図1には、生育初期(例えば、定植後1週間~2週間)におけるキャベツの投影葉面積の増加量と、収穫時におけるキャベツの球重と、の関係を調査した結果を示すグラフである。キャベツの投影葉面積の増加量は、キャベツを上方(所定高さ)から時期をずらして2回(定植から1週間後、定植から2週間後)撮影した画像それぞれから得られる投影葉面積(cm2/plant)の差分を意味する。なお、画像から投影葉面積を算出する際には、例えば、画像処理(例えば画素の二値化処理)によりキャベツの個体を識別し、キャベツの個体の範囲に含まれる画素数を面積に換算して、投影葉面積とする方法が知られている。
【0015】
図1に示すように、生育初期における投影葉面積の増加量が小さい個体は、収穫時における球重が小さくなり、生育初期における投影葉面積の増加量が大きい個体は、収穫時における球重が大きくなることがわかる。図1の場合、生育初期における投影葉面積の増加量をx、収穫時における球重をyとすると、1次関数(y=4.08x+372.98)にて近似することができる。この1次関数の決定係数(R2)は、0.56であり、相関が高いといえる。したがって、キャベツを栽培する際には、生育初期における投影葉面積の増加量が適切な値となるように栽培環境を管理すれば、収穫時の球重も適切な値にすることができると考えられる。本実施形態では、このような考えの下、生育初期において各作物の栽培環境を適切な状態に管理する。
【0016】
図2には、本実施形態に係る農業システム100の構成が概略的に示されている。
【0017】
図2に示すように、農業システム100は、サーバ10と、環境データ提供装置20と、ドローン30と、カメラ32と、センシングロボット40と、処理装置としての資材散布装置50と、利用者端末60と、を備える。農業システム100が備える各構成は、インターネットなどのネットワーク80に接続されている。
【0018】
サーバ10は、環境データ提供装置20、ドローン30、カメラ32、センシングロボット40からデータを収集し、圃場内の各地点で栽培されている各キャベツの生育が順調であるかを判定し、順調でない場合には、その原因を特定する。また、サーバ10は、資材散布装置50を制御し、順調でないキャベツに対する処置(対応策)を実行する。サーバ10のハードウェア構成や機能、処理内容の詳細については後述する。
【0019】
環境データ提供装置20は、圃場の過去の環境データをサーバ10に提供する装置である。環境データ提供装置20は、圃場に設置された環境センサにおいて得られた環境データをサーバ10に送信する装置であってもよいし、メッシュ環境データを提供する気象庁のサーバ等であってもよい。
【0020】
ドローン30は、マルチコプタとも呼ばれる無人航空機である。ドローン30は、サーバ10の指示に基づいて圃場を飛行する。また、ドローン30には、カメラ32が設けられている。カメラ32は、ドローン30が圃場を飛行している間に、サーバ10からの指示に応じて、圃場で栽培されているキャベツそれぞれを上方から撮影する。ドローン30の位置は、ドローン30が有するRTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite System)装置により逐次検出されているため、サーバ10は、当該位置に応じてカメラ32に撮影指示を送信することで、各キャベツを所定位置、所定高さから撮影することができる。
【0021】
センシングロボット40は、圃場内を移動可能なロボットであり、土壌水分量(以下、「土壌水分」という)及び肥料成分濃度(EC)を検出可能なセンサを有している。センシングロボット40は、サーバ10からの指示に応じて、生育が順調でないキャベツ近傍の土壌において、土壌水分と肥料成分濃度を計測する。なお、ECはElectrical Conductivityの略で、電気伝導率のことであり、電気の流れやすさを意味する。土壌中に存在している水溶性塩類の濃度と正の相関関係がある。通常、ナトリウムの多い塩性アルカリ土壌を除き、ECは土壌中の水溶性肥料成分の濃度、畑地では特に硝酸態窒素の濃度との比例関係が強いので、土壌中の肥料成分濃度を推定する指標としてしばしば利用される。
【0022】
資材散布装置50は、圃場内を移動可能なロボットであり、サーバ10からの指示に応じて、生育が順調でないキャベツに対し局所的な処置を実行する。資材散布装置50は、例えば、局所的に水を散布する局所灌漑、局所的に肥料を与える局所施肥、局所的に病害虫を駆除する局所防除、を実行する。
【0023】
利用者端末60は、作業者が、サーバ10の処理内容を確認したり、ドローン30、センシングロボット40、資材散布装置50の位置や稼働状況などを確認したりするための情報処理装置である。利用者端末60は、PC(Personal Computer)やスマートフォンなどの端末である。
【0024】
(サーバ10について)
図3には、サーバ10のハードウェア構成の一例が示されている。サーバ10は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)190、ROM(Read Only Memory)192、RAM(Random Access Memory)194、ストレージ(HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive))196、ネットワークインタフェース197、表示部193、入力部195、及び可搬型記憶媒体用ドライブ199等を備えている。表示部193は液晶ディスプレイ等を含み、入力部195は、キーボードやマウス、タッチパネル等を含む。これらサーバ10の構成各部は、バス198に接続されている。サーバ10では、ROM192あるいはHDD196に格納されているプログラム(栽培環境調査プログラムを含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ199が可搬型記憶媒体191から読み取ったプログラムをCPU190が実行することにより、図4に示す各部の機能が実現される。なお、図4の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0025】
図4は、サーバ10の機能ブロック図である。図4に示すように、サーバ10は、CPU190がプログラムを実行することにより、生体調査部102、生育予測部104、比較部106、対応策決定部108、情報取得部110、指示部112、として機能する。
【0026】
生体調査部102は、圃場内で栽培されているキャベツそれぞれに対して時期をずらして2回の生体調査を行った結果に基づいて、キャベツの生育速度を示す値を算出する。具体的には、生体調査部102は、圃場にキャベツを定植した後の第1のタイミングにおいてカメラ32により撮影された各キャベツの画像から、各キャベツの投影葉面積(第1面積)を算出し、撮影位置と対応付けて調査結果テーブル120に格納する。なお、生体調査部102は、カメラ32の画角に1つのキャベツが入る状態で撮影を行う、又は画角に複数のキャベツが入る状態で撮影を行い、撮影された画像をキャベツ1つずつの範囲に分割するものとする。なお、画像から得られる投影葉面積の単位は(pixels/plant)であるが、これを投影葉面積の単位(cm2/株)にするには、種々の方法を用いることができる。例えば、所定の式を用いることで、投影葉面積(pixcels/株)、撮影高さ(cm)、カメラ32が有する画像センサの大きさ(cm)、焦点距離(cm)、画像サイズ(pixels)などから、投影葉面積(pixcels/株)を投影葉面積(cm2/株)に換算することができる。
【0027】
また、生体調査部102は、定植後の第2のタイミングにおいてカメラ32により撮影された各キャベツの画像から、各キャベツの投影葉面積(第2面積)を算出し、撮影位置と対応付けて調査結果テーブル120に格納する。図5には、調査結果テーブル120の一例が示されている。図5に示すように、調査結果テーブル120には、「位置」と対応付けて、「撮影日」と「投影葉面積」が格納される。なお、本実施形態では、画像から投影葉面積(第1面積)を算出する処理と、画像から投影葉面積(第2面積)を算出する処理と、が生体調査に相当する。
【0028】
更に、生体調査部102は、第2のタイミングにおいて得られた各キャベツの投影葉面積(第2面積)から第1のタイミングにおいて得られた各キャベツの投影葉面積(第1面積)を差し引くことで、投影葉面積の増加量(測定値)を算出し、調査結果テーブル120(「増加量(測定値)」の列)に格納する。例えば、調査結果テーブル120のNo.0001のキャベツの場合、生体調査部102は、第2のタイミングにおいて得られた第2面積α21から第1のタイミングにおいて得られた第1面積α11を差し引いた値(α21-α11)を増加量(測定値)とする。なお、本実施形態では、投影葉面積の増加量(測定値)が、キャベツの生育速度を示す値に相当する。
【0029】
図4に戻り、生育予測部104は、上述した第1のタイミングと第2のタイミングの間の圃場の環境データ(日平均気温、日積算日射量)を環境データ提供装置20から取得し、取得した環境データと、第1のタイミングにおいて得られた各キャベツの投影葉面積(第1面積)と、を用いて、第2のタイミングにおける各キャベツの投影葉面積(第2面積)を推定する。
【0030】
ここで、生育予測部104は、図6に示すようなキャベツの生育を予測するための生育モデルを用いて、第2面積を推定する。なお、投影葉面積(cm2/株)の初期値は、生体調査部102が算出した第1面積とする。生育予測部104は、投影葉面積(cm2/株)、日積算日射量(MJ/m2)、及び植栽密度(株/m2)に基づいて、日積算受光量(MJ/株)を算出する(S21)。
【0031】
次いで、生育予測部104は、算出した日積算受光量(MJ/株)から、将来の日々の日乾物生産量(g/株)を算出する(S22)。この日乾物生産量の算出においては、日射利用効率(g/MJ)を用いる。
【0032】
次いで、生育予測部104は、前日までの乾物重(第1のタイミングにおける乾物重は第1面積から算出する)に、ステップS22で算出した日乾物生産量(g/株)を加算することで、株の乾物重(g/株)を算出する(S23)。
【0033】
次いで、生育予測部104は、株の乾物重(g/株)と乾物分配率(%)とを用いて、外葉乾物重(g/株)と葉球乾物重(g/株)とを算出する(S24)。また、生育予測部104は、外葉乾物重(g/株)と外葉乾物率(%)とに基づいて外葉新鮮重(g/株)を算出する(S25)。更に、生育予測部104は、葉球乾物重(g/株)と葉球乾物率(%)とに基づいて葉球新鮮重(g/株)を算出する(S26)。
【0034】
次いで、生育予測部104は、外葉新鮮重(g/株)と葉球新鮮重(g/株)との和を株の新鮮重(g/株)として求める(S27)。更に、生育予測部104は、投影葉面積/新鮮重の比に対して株の新鮮重(g/株)を掛けることにより投影葉面積(cm2/株)を更新する(S28)。生育予測部104は、このような処理を、第1のタイミングと第2のタイミングの間の環境データを用いて繰り返すことで、第2のタイミングにおける投影葉面積を推定する。
【0035】
生育予測部104は、処理に用いた投影葉面積(第1面積)と、推定した投影葉面積(第2面積)を目標値テーブル122に格納する。なお、目標値テーブル122は、図5(b)に示すように、調査結果テーブル120とほぼ同様のテーブル構造を有するが、調査結果テーブル120の「増加量(測定値)」の行に代えて、「増加量(目標値)」の行を有している。
【0036】
更に、生育予測部104は、推定した第2のタイミングの投影葉面積(第2面積)から第1のタイミングの投影葉面積(第1面積)を差し引くことで、投影葉面積の増加量(目標値)を算出し、目標値テーブル122に格納する。例えば、目標値テーブル122のNo.0001のキャベツの場合、生育予測部104は、推定された第2面積α21’から第1のタイミングにおいて得られた第1面積α11を差し引いた値(α21’-α11)を増加量の目標値とする。この増加量の目標値は、第1タイミングから第2タイミングまで適切な栽培環境でキャベツが栽培された場合に期待できる投影葉面積の増加量であるといえる。したがって、生体調査部102が算出した画像から得られる投影葉面積の増加量が、生育予測部104が算出した目標値に達していない場合には、何らかの原因で生育が順調とはなっていないといえる。
【0037】
比較部106は、圃場内の各キャベツについて、生体調査部102が算出した投影葉面積の増加量(測定値)と、生育予測部104が算出した投影葉面積の増加量(目標値)とを比較する。比較部106は、比較結果を対応策決定部108に送信する。
【0038】
図7には、2つのキャベツ(個体1、個体2)の投影葉面積の推移が実線にて示されている。個体1は、定植後1週間目において投影葉面積が60cm2であり、定植後2週間目において投影葉面積が160cm2であった(図7の●印参照)。また、個体1に関し、定植から1週間後に得られた投影葉面積(60cm2)と、1週間目から2週間目の間の環境データを生育モデル(図6)に投入して推定した投影葉面積の推移は、個体1の実線とほぼ同様となり、定植後2週間目における投影葉面積の推定値が160cm2であった。この場合、投影葉面積の増加量(測定値)は、160-60=100cm2となり、投影葉面積の増加量(目標値)も160-60=100cm2となるため、投影葉面積の増加量は、増加量(測定値)=増加量(目標値)となる。
【0039】
一方、個体2は、定植後1週間目において投影葉面積が90cm2であり、定植後2週間目において投影葉面積が180cm2であった(図7の▲印参照)。また、個体2に関し、定植から1週間後に得られた投影葉面積(90cm2)と、1週間目から2週間目の間の環境データを生育モデル(図6)に投入して推定した投影葉面積の推移は、図7において破線で示すようになり、定植後2週間目における投影葉面積の推定値が230cm2であった。この場合、投影葉面積の増加量(測定値)は、180-90=90cm2となり、投影葉面積の増加量(目標値)は、230-90=140cm2となるため、投影葉面積の増加量は、増加量(測定値)<増加量(目標値)となる。
【0040】
対応策決定部108は、情報取得部110を介して、各種情報を取得し、生育が順調でないキャベツに対して実施すべき対応策を決定する。
【0041】
例えば、対応策決定部108は、生育が順調でないキャベツが栽培されている地点又はその近傍の土壌の土壌水分や肥料成分濃度を必要とする場合、これらの計測を行うことを決定する。この場合、対応策決定部108は、情報取得部110に対して、当該キャベツの位置情報を送信して、土壌水分や肥料成分濃度の情報を要求する。
【0042】
また、例えば、対応策決定部108は、生育が順調でないキャベツの近接撮影画像を必要とする場合、近接画像を撮影することを決定する。この場合、対応策決定部108は、情報取得部110に対して、当該キャベツの位置情報を送信して、近接撮影画像を要求する。なお、生育が順調でないキャベツの近接撮影画像は、当該キャベツが栽培されている地点の近接撮影画像であるともいえる。
【0043】
更に、対応策決定部108は、情報取得部110から通知された情報や取得した近接撮影画像に基づいて、生育が順調でないキャベツやその近傍の土壌に対して局所灌漑、局所施肥、局所防除のいずれの対応策を実施すべきかを決定し、決定した結果を指示部112に通知する。また、対応策決定部108は、情報取得部110から通知された情報や画像から、生育が順調でないキャベツに対して実行すべき処置が無い場合には、位置テーブル124に当該キャベツの位置情報を格納する。
【0044】
情報取得部110は、対応策決定部108から土壌水分や肥料成分濃度の情報が要求された場合には、センシングロボット40を制御して、生育が順調でないキャベツ近傍の土壌水分や肥料成分濃度の測定データを取得し、対応策決定部108に通知する。また、情報取得部110は、対応策決定部108から生育が順調でないキャベツの近接撮影画像が要求された場合には、ドローン30及びカメラ32を制御して、生育が順調でないキャベツの近接撮影画像を取得し、対応策決定部108に通知する。
【0045】
指示部112は、対応策決定部108から、生育が順調でないキャベツに対する局所灌漑、局所施肥、局所防除のいずれかの対応策を実施する旨の通知があった場合に、資材散布装置50を制御し、通知された対応策を実行する。
【0046】
(サーバ10の処理について)
次に、サーバ10の処理について、図8図9のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。なお、図8図9の処理は、作業者が利用者端末60から入力した定植日を基準として1週間経過した後に実行される。
【0047】
まず、ステップS200では、生体調査部102が、ドローン30及びカメラ32を制御し、圃場全体の撮影を実行させる。これにより、生体調査部102は、各キャベツを撮影した画像と、各画像の撮影位置の情報とを取得する。
【0048】
次いで、ステップS202では、生体調査部102が、キャベツそれぞれの位置と投影葉面積(第1面積)を調査結果テーブル120に記録する。生体調査部102は、取得した各キャベツを撮影した画像を画像処理することにより、各キャベツの投影葉面積(第1面積)を算出する。そして、生体調査部102は、算出した各キャベツの投影葉面積(第1面積)を各キャベツの位置情報と紐付けて、調査結果テーブル120に記録する。
【0049】
次いで、ステップS204では、生体調査部102が、所定時間経過するまで待機する。例えば、生体調査部102は、1週間が経過するまで、すなわち、定植日から2週間経過するまで待機する。その後は、ステップS206に移行する。
【0050】
ステップS206に移行すると、生体調査部102は、ステップS200と同様、ドローン30及びカメラ32を制御し、圃場全体の撮影を実行させる。これにより、生体調査部102は、各キャベツを撮影した画像と、各画像の撮影位置の情報とを取得する。
【0051】
次いで、ステップS208では、生体調査部102が、キャベツそれぞれの位置と投影葉面積(第2面積)を調査結果テーブル120に記録する。生体調査部102は、取得した各キャベツを撮影した画像を画像処理することにより、各キャベツの投影葉面積(第2面積)を算出する。そして、生体調査部102は、算出した各キャベツの投影葉面積(第2面積)を各キャベツの位置情報と紐付けて、調査結果テーブル120に記録する。
【0052】
次いで、ステップS210では、生体調査部102が、キャベツそれぞれの投影葉面積の増加量(測定値)を算出する。図5(a)に示す調査結果テーブル120に格納されたNo.0001のキャベツであれば、生体調査部102は、投影葉面積(第2面積)α21から投影葉面積(第1面積)α11を差し引いた値(α21-α11)を投影葉面積の増加量(測定値)とする。また、No.0002のキャベツであれば、生体調査部102は、投影葉面積(第2面積)α22から投影葉面積(第1面積)α12を差し引いた値(α22-α12)を投影葉面積の増加量(測定値)とする。
【0053】
次いで、ステップS212では、生育予測部104が、キャベツそれぞれの第1面積と、所定時間の間(定植後1週間から2週間の間)の環境データと、を生育モデル(図6)に投入して、定植後2週間経過した時点におけるキャベツそれぞれの投影葉面積(第2面積)を推定する。そして、生育予測部104は、キャベツそれぞれについて、推定した第2面積から第1面積を差し引くことにより、キャベツそれぞれの投影葉面積の増加量(目標値)を推定し、目標値テーブル122に格納する。図5(b)に示す目標値テーブル122に格納されたNo.0001のキャベツであれば、生育予測部104は、推定された投影葉面積(第2面積)α21’から投影葉面積(第1面積)α11を差し引いた値(α21’-α11)を投影葉面積の増加量(目標値)とする。また、No.0002のキャベツであれば、生育予測部104は、推定された投影葉面積(第2面積)α22’から投影葉面積(第1面積)α12を差し引いた値(α22’-α12)を投影葉面積の増加量(目標値)とする。その後は、図9のステップS220に移行する。
【0054】
ステップS220に移行すると、比較部106が、圃場内の1つの作物(キャベツ)を特定する。例えば、比較部106は、調査結果テーブル120及び目標値テーブル122のNo.=0001のキャベツを特定するものとする。なお、本ステップS220で特定された作物(キャベツ)を以下においては「特定作物(特定キャベツ)」と呼ぶものとする。
【0055】
次いで、ステップS222では、比較部106が、特定キャベツの投影葉面積の増加量(測定値)と、投影葉面積の増加量(目標値)を比較する。
【0056】
次いで、ステップS224では、対応策決定部108が、比較部106の比較の結果、増加量(測定値)が増加量(目標値)よりも小さかった(増加量(測定値)<増加量(目標値))か否かを判断する。このステップS224の判断が否定された場合、すなわち、増加量(測定値)が増加量(目標値)以上であった場合には、特定キャベツに対して何もする必要がないため、ステップS248に移行する。一方、ステップS224の判断が肯定された場合には、ステップS226に移行する。
【0057】
ステップS226に移行すると、対応策決定部108は、生育初期か否かを判断する。なお、キャベツの場合、生育初期は、例えば定植後3週間以内とすることができる。このステップS226の判断が肯定されると、ステップS228に移行する。
【0058】
ステップS228に移行すると、対応策決定部108は、情報取得部110を介して、特定キャベツを栽培している地点又は当該地点の近傍の土壌水分、肥料成分濃度を計測するよう、センシングロボット40に指示を出す。情報取得部110は、センシングロボット40から送信されてくる土壌水分及び肥料成分濃度の計測結果を対応策決定部108に通知する。なお、特定キャベツを栽培している地点の近傍とは、特定キャベツの生育に対して土壌水分や肥料成分濃度の影響がある範囲を意味する。具体的には、特定キャベツに対して土壌水分や肥料成分濃度の影響がある範囲は、生育初期であれば、隣接するキャベツとの間の部分(株間や条間にあたる部分)とすることができる。
【0059】
次いで、ステップS230では、対応策決定部108が、土壌水分は基準値を下回っているか否かを判断する。このステップS230の判断が肯定された場合(土壌水分<基準値)には、ステップS232に移行し、対応策決定部108は、環境データ提供装置20や、気象庁のサーバから将来の天気予報(例えば、10日間天気予報)を取得し、近日中に土壌水分が基準値を上回る状況になるかどうかを判断する。例えば、対応策決定部108は、将来の10日間に予め定めた量の降雨予報があるかどうかを判断する。このステップS232の判断が否定された場合、すなわち、近日中に土壌水分が基準値を上回る状況にならないと予測される場合には、ステップS234に移行し、対応策決定部108は、指示部112に対して、特定キャベツの位置情報とともに、局所灌漑を行う旨を通知する。指示部112は、資材散布装置50に指示を出し、特定キャベツの近傍に、局所灌漑を実行する。その後は、ステップS248に移行する。
【0060】
一方、ステップS232の判断が肯定された場合、すなわち、近日中に土壌水分が基準値を上回る状況になると予測される場合には、ステップS236に移行する。また、ステップS230の判断が否定された場合、すなわち、土壌水分が基準値以上である場合にも、ステップS236に移行する。
【0061】
ステップS236に移行すると、対応策決定部108が、肥料成分濃度は基準値を下回っているか否かを判断する。
【0062】
図10には、土壌の肥料成分濃度(EC)と、生育初期の投影葉面積増加量及び収穫時の球重と、の関係が示されている。なお、各キャベツは、土壌水分が十分である栽培環境で栽培されたものである。図10に示すように、無施肥の場合(肥料成分濃度が低い場合)には、生育初期の投影葉面積増加量が小さくなり、結果的に、収穫時の球重も小さくなることが分かる。また、施肥を行い、土壌の肥料成分濃度が十分であったとしても、生育初期の投影葉面積増加量及び収穫時の球重が小さくなる場合がある。これは、病害虫など、肥料不足以外が原因であると考えられる。本実施形態では、図10の関係性を参考に、対応策決定部108は、肥料不足と判断される場合(ステップS236の判断が肯定される場合)に、施肥を行う必要があると判定し、肥料不足でないと判断される場合(ステップS236の判断が否定される場合)に肥料以外の原因を検証する必要があると判定する。
【0063】
すなわち、ステップS236の判断が肯定された場合(肥料成分濃度<基準値)には、ステップS238に移行し、対応策決定部108は、指示部112に対して、特定キャベツの位置情報とともに、局所施肥を行う旨を通知する。指示部112は、資材散布装置50に指示を出し、特定キャベツの近傍に、局所施肥を実行する。その後は、ステップS248に移行する。
【0064】
これに対し、ステップS236の判断が否定された場合(土壌水分、肥料成分濃度に問題がない場合)には、ステップS240に移行する。なお、ステップS226の判断が否定された場合、すなわち生育初期でなく、土壌水分や肥料成分濃度を変更しても生育に影響が出ない時期である場合にも、ステップS240に移行する。
【0065】
ステップS240に移行すると、対応策決定部108は、情報取得部110に対し、特定キャベツの位置情報とともに、近接撮影を行う旨を指示する。情報取得部110は、ドローン30及びカメラ32を制御して、特定キャベツの近接撮影を実行する。対応策決定部108は、近接撮影された画像を取得すると、当該画像を画像処理することで、病害虫の有無を確認する。
【0066】
次いで、ステップS242では、対応策決定部108は、病害虫を検出したか否かを判断する。このステップS242の判断が肯定された場合には、ステップS244に移行し、対応策決定部108は、指示部112に対して、特定キャベツの位置情報とともに、局所防除を行う旨を通知する。指示部112は、資材散布装置50に指示を出し、特定キャベツの近傍に、局所防除を実行する。その後は、ステップS248に移行する。
【0067】
一方、ステップS242の判断が否定された場合には、ステップS246に移行し、対応策決定部108は、特定キャベツの位置情報を位置テーブル124に記録する。位置テーブル124に記録されたキャベツは、生育が順調でないが実行すべき処置が無いキャベツを意味する。その後は、ステップS248に移行する。
【0068】
ステップS248に移行すると、対応策決定部108は、圃場内の全てのキャベツを特定したか否かを判断する。このステップS248の判断が否定された場合には、ステップS220に戻り、次のキャベツを特定した後、ステップS222以降の処理を繰り返し実行する。一方、圃場内の全てのキャベツを特定したため、ステップS248の判断が肯定された場合には、図8のステップS204に戻る。
【0069】
ステップS204においては、所定時間(例えば1週間)が経過するまで待機する。例えば1週間が経過し、定植から3週間後となると、ステップS206に移行する。なお、この段階では、定植から2週間後に調査結果テーブル120に記録された投影葉面積を投影葉面積(第1面積)と扱うものとする。また、目標値テーブル122の定植から2週間後に推定された投影葉面積(第2面積)(α21’、α22’)を、調査結果テーブル120に格納されている投影葉面積(第2面積)(α21、α22)で書き換えるものとする(図11(b)参照)。
【0070】
その後は、収穫までの期間、ステップS204以降の処理を繰り返し実行する。これにより、圃場内のキャベツに対して、局所的な対応策を適切に施すことが可能となる。例えば、定植から3週間後においては、図11(a)に示すように、調査結果テーブル120には、新たに投影葉面積として、α31、α32、…が格納される。また、投影葉面積の増加量(測定値)として、(α31-α21)、(α32-α22)が格納される。また、図11(b)に示すように、目標値テーブル122には、新たに投影葉面積として、α31’、α32’、…が格納される。また、投影葉面積の増加量(測定値)として、(α31’-α21)、(α32’-α22)が格納される。したがって、図9のステップS220以降の処理においては、図11(a)、図11(b)の各テーブルを用いた処理が実行されることになる。
【0071】
なお、位置テーブル124には、原因不明で生育が順調でないキャベツの位置情報が格納されている。したがって、ステップS204に戻った後は、位置テーブル124に記録されている情報に基づく処理を実行してもよい。例えば、位置テーブル124に記録されている位置に存在するキャベツのみに対して、ステップS204以降の処理を行うこととしてもよい。また、例えば、位置テーブル124に記録されている位置に存在するキャベツに対して優先的にステップS204以降の処理を行うこととしてもよい。また、例えば、位置テーブル124に記録されている位置に存在するキャベツの情報を、利用者端末60に対して通知してもよい。これにより、作業者は、原因不明で生育が順調でないキャベツを目視により確認することができる。
【0072】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、生体調査部102は、圃場内で生育する各キャベツに対して時期をずらして実施した2回の生体調査の結果(画像を用いた投影葉面積の算出結果)に基づいて、各キャベツの投影葉面積の増加量(測定値)を算出する(S210)。また、比較部106は、各キャベツの投影葉面積の増加量(測定値)と、投影葉面積の増加量(目標値)を比較し(S222)、対応策決定部108は、比較結果に基づいて、各キャベツの生育が順調か否かを判定する(S224)。そして、対応策決定部108は、判定の結果に基づいて、各キャベツの栽培環境を調査するか否かを決定する(S228、S240)。これにより、本実施形態では、生育が順調でないキャベツの栽培環境を局所的に調査することが可能となる。したがって、圃場全体を調査しなくてもよいため、調査に要する時間を短縮することができる。また、対応策決定部108は、収穫時に球重と相関のある生育初期の投影葉面積の増加量(測定値)と、投影葉面積の増加量(目標値)を比較して生育が順調か否かを判断するため、生育初期において、キャベツの生育が順調か否かを精度よく判断することが可能である。
【0073】
また、本実施形態では、生育予測部104は、生体調査において得られた投影葉面積の値と、2回の生体調査の間の環境データとを生育モデルに投入し、推定される投影葉面積を用いて投影葉面積の増加量(目標値)を決定する。これにより、投影葉面積の増加量(目標値)をキャベツの個体ごとに精度よく決定することができる。
【0074】
また、本実施形態では、2回の生体調査において、キャベツを上方から撮影した画像を用いることとした。これにより、キャベツの投影葉面積を簡易かつ精度よく求めることができる。ただし、これに限らず、投影葉面積は、作業者が採寸した結果に基づいて算出することとしてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、キャベツの生育が順調でない場合に、土壌水分及び肥料成分濃度を計測する(S228)。これにより、生育が順調でない原因が土壌水分にあるのか、肥料成分濃度にあるのか、それ以外であるのかを確認することができる。なお、ステップS228においては、土壌水分と、肥料成分濃度のいずれか一方のみを計測することとしてもよい。この場合、図9のステップS230,232,234、及び、ステップS236,238のいずれかを省略すればよい。
【0076】
また、本実施形態では、対応策決定部108は、土壌水分及び肥料成分濃度の計測結果、及び/又は近接撮影画像に基づいて、キャベツの生育が順調でない原因を特定して、キャベツに対して行うべき処置(対応策)を決定する。これにより、生育が順調でないキャベツに対して局所的かつ適切な処置を施すことができる。
【0077】
また、本実施形態では、指示部112が、対応策決定部108が決定した対応策を実行するよう、資材散布装置50に指示を出す。これにより、キャベツの生育を改善させるための、適切な栽培管理を行うことができる。
【0078】
なお、上記実施形態では、生育予測部104は、図8のステップS212において、生育モデルに1回目の生体調査において得られた投影葉面積の値を投影葉面積の初期値として投入する場合について説明したが、これに限られるものではない。投影葉面積の初期値としては、予め定められた値(生育初期における一般的な投影葉面積の大きさ)を投入することとしてもよい。
【0079】
なお、上記実施形態では、2回の生体調査(画像を用いた投影葉面積の算出)を定植から1週間後と、定植から2週間後において実施する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、2回の生体調査の実施間隔は、2~6日程度であってもよい。また、1回目の生体調査は定植後1週間よりも前であってもよいし、定植後1週間よりも後であってもよい。
【0080】
なお、上記実施形態では、作物の生育速度を示す指標値として、投影葉面積の増加量を算出することとしたが、これに限られるものではない。作物の生育速度を示す指標値としては、投影葉面積の増加速度を用いることもできる。投影葉面積の増加速度は、投影葉面積増加量を日数で除した値とすることができる。また、作物の生育速度を示す指標値は、作物の高さの増加量や増加速度、作物の体積の増加量や増加速度であってもよい。作物の高さを測定する方法としては、視差画像を用いた距離画像(ステレオカメラで撮影した画像)を用いる方法や、ToF(Time of Flight)センサを用いて作物との距離を測定する方法などがある。また、作物の体積を測定する方法としては、複数画像から三次元モデルを作成し、体積を測定する方法や、レーザーを用いて作物の体積を三次元測定する方法などがある。
【0081】
なお、上記実施形態では、ドローン30及びカメラ32、センシングロボット40、資材散布装置50を用いることで、栽培環境の管理が自動的に行われる場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、ドローン30及びカメラ32、センシングロボット40、資材散布装置50が行う作業を、作業者が行うこととしてもよい。例えば、図8のステップS200、S206では、生体調査部102は、圃場全体を撮影するタイミングが到来したことを利用者端末60に通知(表示)するようにしてもよい。この場合、作業者は、ドローン30を操作して、圃場全体を撮影したり、圃場内を歩きながらカメラを用いて圃場全体を撮影すればよい。また、例えば、図9のステップS228、S240では、対応策決定部108は、土壌水分及び肥料成分濃度を計測すべき位置の情報や、近接撮影すべき位置の情報を利用者端末60に通知(表示)することとしてもよい。この場合、作業者は、圃場内を歩きながら、通知された位置において、センサを用いて土壌水分及び肥料成分濃度を計測したり、カメラを用いて近接画像を撮影するようにすればよい。また、例えば、図9のステップS234、S238、S244では、指示部112は、局所灌漑、局所施肥、局所防除を行うべき位置の情報を利用者端末60に通知(表示)することとしてもよい。この場合、作業者は、圃場内を歩きながら通知された位置に対して、局所灌漑、局所施肥、局所防除を実施するようにすればよい。
【0082】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0083】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。また、販売だけでなく、有料のネットワーク上のサービスとして提供することもできる。
【0084】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0085】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 サーバ
20 環境データ提供装置
30 ドローン
32 カメラ
40 センシングロボット
50 資材散布装置(処理装置)
60 利用者端末
102 生体調査部
104 生育予測部
106 比較部
108 対応策決定部
110 情報取得部
112 指示部
120 調査結果テーブル
122 目標値テーブル
124 位置テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11