(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120308
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】画像処理方法、画像処理装置、及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
A61B3/10 300
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097994
(22)【出願日】2023-06-14
(62)【分割の表示】P 2021522602の分割
【原出願日】2019-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣川 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 泰士
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼底赤道部や眼底周辺部の領域が撮影されたモンタージュ画像により、患者の被検眼をより正確に診断する画像処理方法を提供する。
【解決手段】画像処理方法は、被検眼を第1方向に向けた状態で撮影した第1方向眼底画像と、被検眼を第1方向と異なる第2方向に向けた状態で撮影した第2方向眼底画像とを取得することと、第1方向眼底画像と第2方向眼底画像とを合成することにより、被検眼の眼底周辺部の解析を行うための合成画像を生成することと、合成画像を出力することと、を含む。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の視線を第1方向に向けた状態で撮影した第1方向眼底画像と、前記被検眼を前記第1方向と異なる第2方向に向けた状態で撮影した第2方向眼底画像と、を取得することと、
前記第1方向眼底画像および前記第2方向眼底画像の一方の眼底画像を変換し変換画像を生成することと、
前記変換画像と、前記第1方向眼底画像および前記第2方向眼底画像の他方の眼底画像と、を合成し、合成画像を生成することと、
前記合成画像を出力することと、
を含み、
前記変換画像を生成することでは、
前記被検眼の眼底上の少なくとも4つの特徴点を、前記第1方向眼底画像と前記第2方向眼底画像とからそれぞれ抽出することと、
前記一方の眼底画像を射影変換し、前記他方の眼底画像上の前記4つの特徴点の位置と前記一方の眼底画像上の前記4つの特徴点の位置とを一致させた前記変換画像を生成することと、を含み、
前記合成画像を生成することでは、
前記変換画像における、前記変換画像と前記他方の眼底画像とが重畳する第1領域に対して第1の重みづけを行うことと、
前記他方の眼底画像における、前記変換画像と前記他方の眼底画像とが重畳する第2領域に対して第2の重みづけを行うことと、
前記第1の重みづけを行ことと、前記第2の重みづけを行うことと、に基づいて、前記変換画像と前記他方の眼底画像とを合成することと、を含む、
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法、画像処理装置、及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2009/0136100号には、パノラマ眼底画像合成装置及び方法が開示されており、眼底周辺部の構造を解析するために好適な画像合成方法が望まれている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の技術の第1の態様の画像処理方法は、被検眼を第1方向に向けた状態で撮影した第1方向眼底画像と、前記被検眼を前記第1方向と異なる第2方向に向けた状態で撮影した第2方向眼底画像と、を取得することと、前記第1方向眼底画像と前記第2方向眼底画像とを合成することにより、前記被検眼の眼底周辺部の解析を行うための合成画像を生成することと、前記合成画像を出力することと、を含む。
【0004】
本開示の技術の第2の態様の画像処理装置は、被検眼を第1方向に向けた状態撮影した第1方向眼底画像と、前記被検眼を前記第1方向と異なる第2方向に向けた状態で撮影した第2方向眼底画像と、を取得する取得部と、前記第1方向眼底画像と前記第2方向眼底画像とを合成することにより、前記被検眼の眼底周辺部の解析を行うための合成画像を生成する生成部と、前記合成画像を出力する出力部と、を備える。
【0005】
本開示の技術の第3の態様の画像処理プログラムは、コンピュータを、被検眼を第1方向に向けた状態で撮影した第1方向眼底画像と、前記被検眼を前記第1方向と異なる第2方向に向けた状態で撮影した第2方向眼底画像と、を取得する取得部、前記第1方向眼底画像と前記第2方向眼底画像とを合成することにより、前記被検眼の眼底周辺部の解析を行うための合成画像を生成する生成部、及び前記合成画像を出力する出力部として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】眼科装置110の全体構成を示す概略構成図である。
【
図3A】眼科装置110による被検眼12の眼底の撮影範囲を示す第1の図である。
【
図3B】眼科装置110による被検眼12の眼底の撮影範囲を示す第2の図であり、当該撮影により得られた眼底の画像である。
【
図3C】眼科装置110による被検眼12の眼底の撮影範囲を示す第3の図である。
【
図4】眼科装置110のCPU22の機能のブロック図である。
【
図5】眼科装置110のCPU22が実行する被検眼12の眼底の撮影処理を示すフローチャートである。
【
図6A】眼科システム100を基準として被検眼12の光軸が斜め上方向に向いた場合の瞳孔及び眼球中心を通る上下方向に平行な面における眼底の撮影範囲(U1からD1)を示した図である。
【
図6B】眼科システム100を基準として被検眼12の光軸が斜め下方向に向いた場合の瞳孔及び眼球中心を通る上下方向に平行な面における眼底の撮影範囲(U2からD2)を示した図である。
【
図7A】
図5のステップ304の上方視撮影により得られたUWF上方視眼底画像GUを示す図である。
【
図7B】
図5のステップ308の下方視撮影により得られたUWF下方視眼底画像GDを示す図である。
【
図8】サーバ140の電気系の構成のブロック図である。
【
図9】サーバ140のCPU262の機能のブロック図である。
【
図10】サーバ140のCPU262が実行するモンタージュ画像作成処理を示すフローチャートである。
【
図11】
図10のステップ324の画像間の位置合わせ処理を示すフローチャートである。
【
図12A】UWF上方視眼底画像GUに線分LGUが設定された様子を示す図である。
【
図12B】UWF下方視眼底画像GDに線分LGDが設定された様子を示す図である。
【
図13】モンタージュ画像GMの生成を説明するための図である。
【
図14】ビューワ150のディスプレイ256の表示画面400の第1の表示態様を示す図である。
【
図15】ビューワ150のディスプレイ256の表示画面400の第2の表示態様を示す図である。
【
図16】ビューワ150のディスプレイ256の表示画面400の第3の表示態様を示す図である。
【
図17】ビューワ150のディスプレイ256の表示画面400の第4の表示態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0008】
図1を参照して、眼科システム100の構成を説明する。
図1に示すように、眼科システム100は、眼科装置110と、眼軸長測定器120と、サーバ装置(以下、「サーバ」という)140と、表示装置(以下、「ビューワ」という)150と、を備えている。眼科装置110は、眼底画像を取得する。眼軸長測定器120は、患者の眼軸長を測定する。サーバ140は、眼科装置110によって複数の患者の眼底が撮影されることにより得られた複数の眼底画像及び眼軸長を、患者のIDに対応して記憶する。ビューワ150は、サーバ140により取得した眼底画像や解析結果を表示する。
サーバ140は、本開示の技術の「画像処理装置」の一例である。
【0009】
眼科装置110、眼軸長測定器120、サーバ140、ビューワ150は、ネットワーク130を介して、相互に接続されている。
【0010】
なお、他の眼科機器(視野測定、眼圧測定などの検査機器)やAI(Artificial Intelligence)を用いた画像解析を行う診断支援装置がネットワーク130を介して、眼科装置110、眼軸長測定器120、サーバ140、及びビューワ150に接続されていてもよい。
【0011】
次に、
図2を参照して、眼科装置110の構成を説明する。
図2に示すように、眼科装置110は、制御ユニット20、表示/操作ユニット30、及びSLOユニット40を備える。被検眼12の後眼部(眼底)を撮影する。さらに、眼底のOCTデータを取得する図示せぬOCTユニットを備えていてもよい。ここで、「SLO」とは、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope)である。「OCT」とは、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)である。
【0012】
制御ユニット20は、CPU22、メモリ24、及び通信インターフェース(I/F)26等を有するコンピュータを備えている。表示/操作ユニット30は、撮影されて得られた画像を表示したり、撮影の指示を含む各種指示を受け付けたりするグラフィックユーザインターフェースであり、ディスプレイ32及び入力/指示デバイス34を備えている。
CPU22が撮影処理プログラムを実行することで、
図4に示すように、SLO制御機部180(固視灯制御部1802、SLO光源制御部1804、スキャナ制御部1806を含む)、画像処理部182、表示制御部184、および処理部186として、CPU22が機能する。
【0013】
メモリ24には、後述する被検眼12の眼底の撮影処理の撮影処理プログラムが記憶されている。
【0014】
SLOユニット40は、G光(緑色光:波長530nm)の光源42、R光(赤色光:波長650nm)の光源44、IR光(赤外線(近赤外光):波長800nm)の光源46を備えている。光源42、44、46は、制御ユニット20により命令されて、各光を発する。なお、光源42、44、46としては、LED光源や、レーザ光源を用いることができる。なお、以下には、レーザ光源を用いた例を説明する。
【0015】
SLOユニット40は、光源42、44、46からの光を、反射又は透過して1つの光路に導く光学系50、52、54、56を備えている。光学系50、56は、ミラーであり、光学系52、54は、ビームスプリッタであり、具体的には、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等である。
【0016】
G光は、光学系50、54で反射し、R光は、光学系52、54を透過し、IR光は、光学系52、56で反射して、それぞれ1つの光路に導かれる。
【0017】
SLOユニット40は、光源42、44、46からの光を、被検眼12の後眼部(眼底)に渡って、2次元状に走査する広角光学系80を備えている。SLOユニット40は、被検眼12の後眼部(眼底)からの光の内、G光を反射し且つG光以外を透過するビームスプリッタ58を備えている。SLOユニット40は、ビームスプリッタ58を透過した光の内、R光を反射し且つR光以外を透過するビームスプリッタ60を備えている。SLOユニット40は、ビームスプリッタ60を透過した光の内、IR光を反射するビームスプリッタ62を備えている。ビームスプリッタ58、60、62として、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
【0018】
SLOユニット40は、ビームスプリッタ58により反射したG光を検出するG光検出素子72、ビームスプリッタ60により反射したR光を検出するR光検出素子74、及びビームスプリッタ62により反射したIR光を検出するIR光検出素子76を備えている。光検出素子72、74、76として、例えば、APD(avalanche photodiode:アバランシェ・フォトダイオード)が挙げられる。
また、SLOユニット40は、制御ユニット20により制御され、上固視灯92U及び下固視灯92D(さらに図示せぬ中央固視灯を含む)を点灯させる固視標制御装置90を備えている。中央固視灯、上固視灯92U及び下固視灯92Dの何れかを点灯させることにより被検眼12の向き(視線方向)を変えることができる。
【0019】
広角光学系80は、光源42、44、46からの光を、X方向に走査するポリゴンミラーで構成されたX方向走査装置82、Y方向に走査するガルバノミラーで構成されたY方向走査装置84、走査された光を、超広角(UWF:Ultra WideField)で照射できる楕円鏡などの凹面鏡や複数のレンズからなるレンズ系で構成された光学系86を備えている。 X方向走査装置82及びY方向走査装置84の各走査装置はMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーを用いてもよい。また、X方向とY方向でそれぞれスキャナを設けることなく1つのMEMSミラーで2次元走査を行うようにしてもよい。なお、眼科装置110が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」とし、被検眼12の前眼部の瞳孔の中心と眼球の中心とを結ぶ方向を「Z方向」とする。従って、X方向、Y方向、およびZ方向は互いに垂直である。
【0020】
広角光学系80により、眼底の視野角(FOV:Field of View)を超広角な角度とし、被検眼12の眼底の後極部から赤道部を超える領域を撮影することができる。
【0021】
図3Aを用いて赤道部178の説明をする。眼球(被検眼12)は、直径約 24mm の眼球中心170とした球状の構造物である。その前極175と後極176を連ねる直線を眼球軸172と言い、眼球軸172に直交する平面が眼球表面と交わる線を緯線といい、緯線長が最大のものが赤道174である。赤道174の位置に相当する網膜や脈絡膜の部分を赤道部178とする。赤道部178は眼底周辺部の一部である。
眼科装置110は、被検眼12の眼球中心170を基準位置として内部照射角が200°の領域を撮影することができる。なお、200°の内部照射角は、被検眼12の眼球の瞳孔を基準とした外部照射角では167°である。つまり、広角光学系80は外部照射角167°の画角で瞳からレーザ光を照射させ、内部照射角で200°の眼底領域を撮影する。
【0022】
図3Bには、内部照射角が200°で走査できる眼科装置110で撮影されて得られたSLO画像179が示されている。
図3Bに示すように、赤道部178は内部照射角で180°に相当し、SLO画像179においては点線178aで示された個所が赤道部178に相当する。このように、眼科装置110は、後極176を含む後極部から赤道部178を超えた眼底周辺領域を一括で(一回の撮影で、あるいは、一回のスキャンで)撮影することができる。つまり、眼科装置110は、眼底中心部から眼底周辺部までを一括で撮影することができる。
【0023】
図3Cは、眼球における脈絡膜12Mと渦静脈(Vortex Vein)12V1、V2との位置関係を示す図である。
図3Cにおいて、網目状の模様は脈絡膜12Mの脈絡膜血管を示している。脈絡膜血管は脈絡膜全体に血液をめぐらせる。そして、被検眼12に複数(通常4つから6つ)存在する渦静脈から眼球の外へ血液が流れる。
図3Cでは眼球の片側に存在する上側渦静脈V1と下側渦静脈V2が示されている。渦静脈は、赤道部178の近傍に存在する場合が多い。そのため、被検眼12に存在する渦静脈及び渦静脈周辺の脈絡膜血管を撮影するには、上述した内部照射角が200°で眼底周辺部を広範囲に走査できる眼科装置110を用いて行われる。
【0024】
被検眼12の眼を、内部照射角が200°で走査できる眼科装置110で撮影して得られたSLO眼底画像をUWF眼底画像と称する。
【0025】
このような広角光学系を備えた眼科装置110の構成としては、国際出願PCT/EP2017/075852に記載された構成を用いてもよい。2017年10月10日に国際出願された国際出願PCT/EP2017/075852(国際公開WO2018/069346)の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0026】
眼科装置110によって上方視/下方視によるUWF眼底画像の撮影について説明する。
まず、入力/指示デバイス34を介して、患者ID、患者名などの患者属性情報、撮影する被検眼が右眼か左眼かの情報などが眼科装置110に入力される。診察歴のある患者であれば、患者IDを入力してサーバ140に記録されている患者属性情報を読み出す。
次に、眼科装置110は、中央固視灯を点灯させて眼底の広範囲を撮影する通常撮影モードと、眼底周辺部の構造(例えば、渦静脈及び渦静脈周辺の脈絡膜血管など)を解析するためのモンタージュ画像撮影モードを選択させるメニュー画面をディスプレイ32に表示する。ディスプレイ32に表示されたメニュー画面から、ユーザが入力/指示デバイス34を介してモードを選択できる。
【0027】
ユーザがモンタージュ画像撮影モードを選択すると、眼科装置110のCPU22が撮影処理プログラムを実行することで、
図5のフローチャートに示された撮影処理が実現される。
【0028】
ユーザがモンタージュ画像撮影モードを選択すると、SLO制御部180は、アライメントやフォーカス調整を行う。
そして、
図5のステップ302で、固視灯制御部1802は、患者の視線を斜め上方向に向けるために、固視標制御装置90を制御して上固視灯92Uを点灯させる。これにより、
図6Aに示すように、患者の視線が斜め上方向、即ち、眼球中心から上固視灯92Uに向かう方向に向けられる。上固視灯92Uを点灯させるだけでなく、眼科装置110のオペレータが「上を向いてください」など患者の視線を斜め上方向にする指示を出すことで、被検眼の視線を斜め上方向に向いた状態にしてもよい。
斜め上方向は、本開示の技術の「第1方向」の一例である。
【0029】
ステップ304で、患者の視線が斜め上方向に向けられている上方視の状態で、眼底を撮影する。具体的には、SLO光源制御部1804は、G光の光源42及びR光の光源44からG光及びR光を発生させる。スキャナ制御部1806は、X方向走査装置82及びY方向走査装置84を制御する。X方向及びY方向に走査されたG光及びR光は被検眼の眼底で反射する。
【0030】
緑色に相当する波長のG光は網膜で反射するので、網膜の構造情報を含んでいる。被検眼12から反射されたG光はG光検出素子72により検出される。画像処理部182は、G光検出素子72からの信号からUWF上方視眼底画像Gの画像データを生成する。同様に、被検眼12から反射されたR光がR光検出素子74により検出される。赤色レーザ光(R光)は網膜より深い脈絡膜で反射するので、脈絡膜の構造情報を含んでいる。画像処理部182は、R光検出素子74からの信号からUWF上方視眼底画像Rの画像データを生成する。画像処理部182は、UWF上方視眼底画像とUWF上方視眼底画像Rとを所定の混合比で合成したUWF上方視眼底画像RGの画像データを生成する。
なお、UWF上方視眼底画像G、UWF上方視眼底画像R及びUWF上方視眼底画像RGを区別しないときは、UWF上方視眼底画像と称する。
UWF上方視眼底画像は、本開示の技術の「第1方向眼底画像」の一例である。
【0031】
ところで、眼科システム100の光軸に被検眼12の光軸が一致した状態で、眼底を撮影して得られる、被検眼12の眼底のUWF正面視眼底画像には、
図6Aに示すY-Z平面における眼底の上位置U0と下位置D0との間の領域が撮影される。
【0032】
上方視の状態で眼底を撮影して得られた各上方視眼底画像には、
図6Aに示すように、患者の視線が斜め上方向に向けられるので、上位置U0よりも上側の上側位置U1と下側位置D1との間の領域の画像が存在する。よって、各上方視眼底画像には、正面視画像にはない領域MU01の画像が存在する。
図7Aは右眼のUWF上方視眼底画像を示す。UWF上方視眼底画像GUには、眼球上側の赤道部付近に存在する鼻側(紙面右)の渦静脈12V1と耳側(紙面左)の渦静脈12V3がUWF上側眼底画像GUの上側に位置する。さらに、眼底中心部に存在する視神経乳頭ONHおよび黄斑MがUWF上側眼底画像GUの下側に位置している。
【0033】
ステップ306で、固視灯制御部1802は、患者の視線を斜め下方向に向けるために、固視標制御装置90を制御して下固視灯92Dを点灯させる。これにより、
図6Bに示すように、患者の視線が斜め下方向、即ち、眼球中心から下固視灯92Dに向かう方向に向けられる。上固視灯92Dを点灯させるだけでなく、眼科装置110のオペレータが「下を向いてください」など患者の視線を斜め下方向にする指示を出すことで、被検眼の視線を斜め下方向に向いた状態にしてもよい。
斜め下方向は、本開示の技術の「第2方向」の一例である。
【0034】
ステップ308で、患者の視線が斜め下方向に向けられている下方視の状態で、眼底を撮影する。ステップ304と同様に、SLO光源制御部1804は、G光の光源42及びR光の光源44からG光及びR光を発生させ、スキャナ制御部1806は、X方向走査装置82及びY方向走査装置84を制御して、G光及びR光を、X方向及びY方向に走査する。ステップ304と同様に、画像処理部182は、UWF下方視眼底画像G、UWF下方視眼底画像RおよびUWF下方視眼底画像RGの画像データを生成する。
なお、UWF下方視眼底画像G、UWF下方視眼底画像R及びUWF下方視眼底画像RGを区別しないときは、UWF下方視眼底画像と称する。
UWF下方視眼底画像は、本開示の技術の「第2方向眼底画像」の一例である。
【0035】
下方視の状態で眼底を撮影して得られた各下方視眼底画像には、
図6Bに示すように、患者の視線が斜め下方向に向けられるので、下位置D0よりも下側の下側位置D2と上側位置U2との間の領域の画像が存在する。よって、下方視眼底画像にはUWF正面視眼底画像にはない領域MD02の画像が存在する。
図7Bは右眼のUWF下方視眼底画像GDを示す。UWF下方視眼底画像GDには、眼球上側の赤道部付近に存在する鼻側(紙面右)の渦静脈12V2と耳側(紙面左)の渦静脈12V4がUWF下側眼底画像GDの下側に位置する。さらに、眼底中心部に存在する視神経乳頭ONHおよび黄斑MがUWF下側眼底画像GDの上側に位置している。
【0036】
ステップ310で、処理部186は、通信インターフェース(I/F)26を介して、UWF上方視眼底画像と、UWF下方視眼底画像との各画像データをサーバ140に送信する。処理部186は、画像データをサーバ140に送信する際、患者ID、患者属性情報(患者名、年齢、各眼底画像が右眼か左眼からの情報、視力および撮影日時など)もサーバ140に送信する。
【0037】
サーバ140は、受信した上記画像データ、患者ID、患者属性情報を関連付けて後述する記憶装置254に記憶する。
【0038】
なお、表示制御部184は、UWF上方視眼底画像と、UWF下方視眼底画像とを、ディスプレイ32に表示してもよい。
【0039】
また、ユーザが眼底の広範囲を正面視で撮影する通常撮影モードを選択した場合、SLO制御部180は、アライメントやフォーカス調整を行う。そして、固視灯制御部1802は、固視標制御装置90を制御して中央固視灯を点灯させる。これにより患者の視線は正面に固定され、
図3BのようなUWF正面視眼底画像が撮影される。
UWF正面視眼底画像を取得した場合には、ステップ310で、処理部186は、UWF正面視眼底画像の画像データも、上記と同様に送信する。
なお、UWF上方視眼底画像及びUWF下方視眼底画像と同様に、UWF正面視眼底画像として、UWF正面視眼底画像G、UWF正面視眼底画像R、及びUWF正面視眼底画像RGが生成される。
【0040】
眼底周辺部の構造(例えば、渦静脈及び渦静脈周辺の脈絡膜血管など)を解析するためには、赤道部の周辺や、赤道部を前眼部方向に超える眼底領域を撮像することが求められる。正面視による広画角の撮影では、被検者の瞼、まつ毛や眼科装置110の筐体などが写り込み眼底周辺部が撮影できていない場合がある。この場合、渦静脈や渦静脈周辺の脈絡膜血管を撮影できず、眼底周辺部あるいは赤道部周辺の渦静脈をすべて含む画像を取得することができない。
【0041】
そこで、本実施の形態は、患者の視線が上方に向いた状態で、UWF上方視眼底画像GUを取得し、患者の視線が下方に向いた状態で、UWF下方視眼底画像GDを取得する。そして、双方の画像を合成することにより、UWF正面視眼底画像1枚よりも広い領域が確実に撮影されたモンタージュ画像を生成できる。このモンタージュ画像を用いることにより、渦静脈と渦静脈周辺の脈絡膜血管が含まれることから被検者の瞼、まつ毛や眼科装置110の筐体などが写り込みの影響を除去したモンタージュ画像を得ることができる。このモンタージュ画像は、眼底周辺部の病変や異常領域、あるいは渦静脈や渦静脈周辺の脈絡膜血管の検出に好適である。
【0042】
以下、モンタージュ画像をサーバ140で生成する場合について説明する。
【0043】
図8を参照して、サーバ140の構成を説明する。
図8に示すように、サーバ140は、コンピュータ本体252を備えている。コンピュータ本体252は、CPU262、RAM266、ROM264、入出力(I/O)ポート268を有する。入出力(I/O)ポート268には、記憶装置254、ディスプレイ256、マウス255M、キーボード255K、および通信インターフェース(I/F)258が接続されている。記憶装置254は、例えば、不揮発メモリで構成される。入出力(I/O)ポート268は、通信インターフェース(I/F)258を介して、ネットワーク130に接続されている。従って、サーバ140は、眼科装置110、眼軸長測定器120、およびビューワ150と通信することができる。記憶装置254には、後述するモンタージュ画像作成処理プログラムが記憶されている。なお、モンタージュ画像作成処理プログラムを、ROM264に記憶してもよい。
モンタージュ画像作成処理プログラムは、本開示の技術の「画像処理プログラム」の一例である。
【0044】
サーバ140のCPU262がモンタージュ画像作成処理プログラムを実行することで、
図9に示すように、画像取得部1410、画像処理部1420(位置合わせ部1421、二値化処理部1422、合成画像生成部1424、渦静脈解析部1425を含む)、表示制御部1430、および出力部1440として、CPU262が機能する。
画像取得部1410は、本開示の技術の「取得部」の一例である。画像処理部1420は、本開示の技術の「生成部」の一例である。出力部1440は、本開示の技術の「出力部」の一例である。
【0045】
次に、
図10を用いて、サーバ140のCPU262によるモンタージュ画像作成処理を詳細に説明する。サーバ140のCPU262がモンタージュ画像作成処理プログラムを実行することで、
図10のフローチャートに示されたモンタージュ画像作成処理が実現される。
モンタージュ画像作成処理は、本開示の技術の「画像処理方法」の一例である。
【0046】
ユーザ(例えば、眼科医)が、ビューワ150に、患者の被検眼12の診断のため、被検眼12の眼底画像(モンタージュ画像)の表示を、図示しないモンタージュ画像表示ボタンをオンすることにより、指示する。このとき、オペレータは、患者IDを、ビューワ150に入力する。ビューワ150は、患者IDとともに、モンタージュ画像作成指示データを、サーバ140に出力する。モンタージュ画像作成指示データ及び患者IDを受信したサーバ140は、モンタージュ画像作成処理プログラムを実行する。
なお、モンタージュ画像作成処理プログラムは、眼科装置110で撮影されたUWF上方視眼底画像とUWF下方視眼底画像がサーバ140に送信された時点で実行されるようにしてもよい。
【0047】
図10のフローチャートの、ステップ320で、画像取得部1410は、UWF上方視眼底画像とUWF下方視眼底画像を、記憶装置254から取得する。ステップ322で、二値化処理部1422は、UWF上方視眼底画像とUWF下方視眼底画像に対して血管を強調する処理を施す。そして、所定の閾値で二値化する二値化処理を実行する。二値化処理により、眼底の血管が白く強調される。
【0048】
ステップ324で、位置合わせ部1421は、UWF上方視眼底画像とUWF下方視眼底画像の位置合わせを行う。ステップ324の位置合わせ処理について、
図11のフローチャートを用いて説明する。ここでは、UWF上方視眼底画像を基準としてUWF下方視眼底画像を変換する場合(つまり、UWF上方視眼底画像は変換しないで、UWF下方視眼底画像のみを変換する場合)を例に取り説明する。
【0049】
図11のステップ340で、位置合わせ部1421は、UWF上方視眼底画像GUから画像処理により特徴点群1を抽出する。特徴点群1は、眼底画像における複数の特徴点であり、
図7Aに示すように、視神経乳頭ONHU、黄斑MUや網膜血管の分岐点VBUである。なお、脈絡膜血管の分岐点も特徴点として抽出するようにしてもよい。位置合わせ部1421は、網膜の構造情報を含んでいるUWF上方視眼底画像Gと、脈絡膜の構造情報をも含んでいるUWF上方視眼底画像Rとから、UWF上方視眼底画像Rから網膜の構造情報を除去することにより脈絡膜のみの構造情報を抽出する。位置合わせ部1421は、UWF上方視眼底画像Gから網膜血管の分岐点を抽出し、脈絡膜のみの構造情報から脈絡膜血管の分岐点を抽出する。 特徴点は、視神経乳頭ONHU領域の最大輝度の画素、黄斑MU領域の最小輝度の画素、網膜血管や脈絡膜血管の分岐点に位置する画素であり、それらの画素の座標が特徴点データとして抽出される、また、網膜血管や脈絡膜血管の分岐点だけでなく、特徴的な血管走行パターンを含む領域を抽出し、該パターンを含む領域の中心点を特徴点としてもよい。
なお、網膜血管や脈絡膜血管の端点、屈曲点あるいは蛇行点を特徴点として抽出するようにしてもよい。
また特徴点は、特徴点検出を行うアルゴリズムであるSIFT(Scale Intevariant Feature Transform)やSURF(Speed Upped Robust Feature)などを用いて行うことができる。
【0050】
ここで、位置合わせを高精度で行うために、抽出される特徴点の数は4つ以上が好ましい。UWF上方視眼底画像GUには、視神経乳頭と黄斑は被検眼に1つだけしか存在しない。よって、網膜血管や脈絡膜血管の分岐点VBUを2か所以上抽出することにより、UWF上方視眼底画像GUから特徴点を4つ以上抽出することができる。
【0051】
眼底中心部に存在する視神経乳頭、黄斑、網膜血管や脈絡膜血管は、UWF上方視眼底画像GUとUWF下方視眼底画像GDの双方に撮影されているため位置合わせ用の特徴点の選択対象として好適である。すなわち、特徴点はUWF上方視眼底画像GUとUWF下方視眼底画像GDとの共通領域である眼底中心部から選択するのが良い。
そこで、ステップ340で、位置合わせ部1421は、眼底中心部であるUWF上方視眼底画像GUの中心より下側の領域を対象として、画像処理により特徴点群1を抽出する。
【0052】
眼底周辺部に存在しているUWF上方視眼底画像GUに存在する渦静脈12V1と12V3は特徴点として選択対象から除外される。眼底周辺部はUWF上方視眼底画像GUとUWF下方視眼底画像GDとの共通領域ではないため、眼底周辺部の構造物は特徴点の選択対象から除外される。
【0053】
ステップ342で、位置合わせ部1421は、特徴点群1に対応する特徴点群2をUWF下方視眼底画像GDから抽出する。特徴点群2は、
図7Bに示すように、視神経乳頭ONHDと黄斑MD、そして、網膜血管の分岐点VBDである。同一眼であるので、視神経乳頭ONHDは視神経乳頭ONHUに対応し、黄斑MDは黄斑MUに対応している。分岐点VBDは血管の分岐点VBUに対応しており、分岐点VBUの分岐パターンと同一の分岐パターンを持つ分岐個所が画像認識処理などにより抽出される。
【0054】
ステップ344で、位置合わせ部1421は、特徴点群1と特徴点群2を用いて、UWF下方視眼底画像GDを幾何変換する射影変換行列を生成する。この射影変換行列は、UWF下方視眼底画像GDをUWF上方視眼底画像GUに対応させるための行列である。 少なくとも4個の特徴点により射影変換行列が定まる。
ステップ346で、生成された射影変換行列を用いてUWF下方視眼底画像GD(
図7B参照)を変換し、変換後のUWF下方視眼底画像GDC(
図12B参照)を得る。射影変換行列を用いた変換後では、特徴点群1と特徴点群2は同一位置に来ており、位置合わせ処理が実行されたこととなる。この変換によりUWF下方視眼底画像GDに比べてUWF下方視眼底画像GDCが大きくなっている(面積が増大している)。
上述では、UWF下方視眼底画像GDをUWF上方視眼底画像GUに対応させるための射影変換行列を生成し、UWF下方視眼底画像GDを変換した。この逆で、UWF上方視眼底画像GUをUWF下方視眼底画像GDに対応させるための射影変換行列を生成し、UWF上方視眼底画像GUを変換するようにしてもよい。
これで画像間の位置合わせ処理である
図10のステップ324が完了し、モンタージュ画像作成処理はステップ326に進む。
【0055】
図10のステップ326で、合成画像生成部1424は、UWF上方視眼底画像GU及び変換後のUWF下方視眼底画像GDCを合成し、モンタージュ画像GMを生成する。
まず、
図12Aに示すように、UWF上方視眼底画像GUに視神経乳頭ONHUと黄斑MUとを通る線分LGUを設定する。同様に、
図12Bに示すように、変換後のUWF下方視眼底画像GDCに視神経乳頭ONHDと黄斑MDとを通る線分LGDを設定する。
【0056】
次に、合成画像生成部1424は、UWF上方視眼底画像GUとUWF下方視眼底画像GDCとが重複する領域の重み付け処理を行う。
図13に示すように、合成画像生成部1424は、UWF上方視眼底画像GUの線分LGUよりも上側領域である上側のUWF上方視眼底画像GUx領域の重みを「1」とする。合成画像生成部1424は、線分LGUよりも上側領域の重みを「0」とする。そして、合成画像生成部1424は、変換後のUWF下方視眼底画像の線分LGDよりも下側領域である下側のUWF下方視眼底画像GDCxの重みを「1」とし、線分LGDよりも上側領域出の重みを「0」する。
【0057】
合成画像生成部1424は、UWF上方視眼底画像GUとUWF下方視眼底画像GDCに対して、このような重み付け処理を行うことにより、UWF上方視眼底画像GUxとUWF下方視眼底画像GDCxとが合成されたモンタージュ画像GMを生成する。
図13に示されるように、線分LGは視神経乳頭ONHDと黄斑Mを結ぶ線分であり、線分LGより上側がUWF上方視眼底画像GUxであり、線分LGより下側がUWF下方視眼底画像GDCxである。モンタージュ画像は、本開示の技術の「合成画像」の一例である。
【0058】
なお、UWF上方視眼底画像GUとUWF下方視眼底画像GDCの重複部分に関する重み付けは、上述の例に限らず、UWF上方視眼底画像GUとUWF下方視眼底画像GDCの混合割合をさまざまな値に設定することができる。
【0059】
このように、UWF上方視眼底画像GUとUWF下方視眼底画像GDCの位置合わせを行い合成をする。この合成による、眼底の血管が不連続でなく、眼底周辺部または眼底赤道部に位置する渦静脈や渦静脈周辺の脈絡膜血管を解析、あるいは異常部や病変部などの解析のための眼底画像を得ることができる。
【0060】
次にステップ328で、渦静脈解析部1425は、モンタージュ画像GMを用いて渦静脈の位置や渦静脈付近の血管の血管径を解析する。解析によって得られた渦静脈情報としては、渦静脈の個数、渦静脈の位置、渦静脈につながる血管の本数、渦静脈周囲の血管の血管径などに関する情報が含まれる。
【0061】
ステップ330で、表示制御部1430は、モンタージュ画像とともに、患者IDに対応した患者属性情報(患者名、年齢、各眼底画像が右眼か左眼からの情報、視力および撮影日時など)を反映させた、後述する表示画面400を生成する。
ステップ332で、出力部1440は、モンタージュ画像GMと渦静脈解析により得られた渦静脈解析情報とを、サーバ140の記億装置254に出力する。モンタージュ画像GMと渦静脈解析により得られた渦静脈解析情報とがサーバ140の記億装置254に記憶される。
ステップ332では更に、出力部1440は、表示画面400に対応する画像データをビューワ150へ出力する。
なお、表示制御部1430は、ディスプレイ256にモンタージュ画像GMを表示するように出力してもよい。
【0062】
図10、
図11のフローチャートでは、UWF上方視眼底画像を基準としてUWF下方視眼底画像を変換する場合を説明したが、これに限らず、UWF下方視眼底画像を基準としてUWF上方視眼底画像を変換するようにしてもよい。
また、二値化画像を用いてモンタージュ画像生成したが、二値化前のカラーのUWF上方視眼底画像RGとUWF下方視眼底画像RGを用いてモンタージュ画像を生成することも、同様の手法で可能である。この場合は、モンタージュ合成処理のあとモンタージュ画像の二値化処理がなされる。
【0063】
以下、モンタージュ画像を用いたグラフィックユーザインターフェース(GUI)について説明する。
上記のように
図10のステップ332では、サーバ140は、表示画面400に対応する画像データをビューワ150に出力する。
サーバ140から出力された画像データを受信したビューワ150は、図示せぬディスプレイ(モニター)に、表示画面400を表示する。
表示画面400は、
図14に示すように、情報表示領域402と、画像表示領域404(404A)とを有する。なお、
図14には、画像表示領域404の第1の表示態様の画像表示領域404Aが示されている。情報表示領域402には、患者ID表示領域412、患者名表示領域414、年令表示領域416、右眼/左眼表示領域418、眼軸長表示領域420、視力表示領域422、及び撮影日時表示領域424を有する。ビューワ150は、受信した情報に基づいて、患者ID表示領域412から撮影日時表示領域424の各表示領域に各々の情報を表示する。
【0064】
情報表示領域402には、画像選択アイコン430と表示切替アイコン440とが設けられている。
【0065】
画像表示領域404Aは、モンタージュ画像表示領域450と、関連画像表示領域460とを有する。画像選択アイコン430がオンされると、プルダウンメニューが表示される。画像選択アイコン430がオンされて表示されるプルダウンメニューは、関連画像表示領域460に表示する関連画像を選択するためのメニューを有する。例えば、プルダウンメニューには、既に取得されている被検眼12の眼底の蛍光画像(たとえば、IA画像 Indocyanine green angiographyによる画像)の動画や、IA画像の静止画、UWF正面視眼底画像などが選択候補として表示される。
図14には、モンタージュ画像表示領域450にはモンタージュ画像GMが表示され、関連画像表示領域460には、IA画像の動画GAが表示されている様子が示されている。
また、線分LGは、モンタージュ画像GMの視神経乳頭ONHと黄斑Mを結ぶ線分である。関連画像表示領域460に表示されるIA画像の動画GAは、動画GAの視神経乳頭と黄斑が線分LG上になるように位置合わせされて表示される。
線分LGはユーザにより、表示する/しないを選択可能としてもよい。
【0066】
さらに、モンタージュ画像及び関連画像には、渦静脈を示すマークを、渦静脈に対応する位置に表示するようにしてもよい。
【0067】
例えば、
図14に示すように、モンタージュ画像GMにおいて、渦静脈12V1、12V2、12V3、12V4の位置を検出し、モンタージュ画像GMにおいて、検出した位置に渦静脈を示すマークを表示するようにしてもよい。
また、渦静脈解析情報(渦静脈の個数、渦静脈の位置、渦静脈につながる血管の本数、渦静脈周囲の血管の血管径など)を、表示画面400に表示させるようにしてもよい。
【0068】
表示切替アイコン440がオンされると、プルダウンメニューが表示される。プルダウンメニューは、画像表示領域404に表示する画像のメニューを有する。具体的には、モンタージュ画像とIA画像とを並列に表示するメニュー、モンタージュ画像とIA画像とを各々を分割し合成して表示するメニュー、モンタージュ画像とモンタージュ画像を、3次元モデルを用いて3次元モデルに投影した3次元画像とを並列に表示するメニューを有する。
図14には、モンタージュ画像とIA画像とを並列に表示するメニューが選択された場合の様子が示されている。
【0069】
一方、
図15には、表示切替アイコン440のプルダウンメニューのうち、モンタージュ画像とIA画像とを分割し合成して表示するメニューが選択された場合の様子が示されている。
図15に示すように、画像表示領域404Bには、分割ラインLKを基準に、分割ラインLKよりも上側にIA画像(動画又は静止画)GAが表示され、分割ラインLKよりも下側にモンタージュ画像GMが表示される。分割ラインLKは、アイコンIを上下に移動することにより、IA画像GAとモンタージュ画像GMとの表示される領域が変更される。例えば、アイコンIが上側に移動すると、分割ラインLKが上側に移動し、IA画像GAの内、上側に移動した分割ラインLKから上側の部分のみが表示され、モンタージュ画像GMの、分割ラインLKの元の位置と分割ラインLKの現在の位置との間の部分も表示される。
【0070】
また、
図16には、表示切替アイコン440のプルダウンメニューにおいて、モンタージュ画像と3次元画像とを並列に表示するメニューが選択された場合の様子が示されている。
図16に示すように、画像表示領域404Cには、モンタージュ画像表示領域450と、モンタージュ画像を、眼球の3次元モデルに投影した3次元画像を表示する3次元画像表示領域470とを有する。なお、モンタージュ画像を被検眼の3次元モデルに投影する前に、眼球の3次元モデルを、サーバ140から受信した患者の眼軸長のデータに基づいて補正してもよい。
なお、表示切替アイコン440のプルダウンメニューに全てを表示するメニューを追加し、1つの画面に、
図14から
図16の画像表示領域404Aから404Cの2つ以上を同時又は順に連続して表示するようにしてもよい。
【0071】
3次元モデルには、二値化後のモンタージュ画像GMに代えて、二値化前のUWF上方視眼底画像とUWF下方視眼底画像を合成したモンタージュ画像を表示するようにしてもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施形態では、UWF上方視眼底画像とUWF下方視眼底画像とを合成してモンタージュ画像を生成するので、眼科医は、眼底赤道部や眼底周辺部の領域が撮影されたモンタージュ画像により、患者の被検眼をより正確に診断することができる。特に、瞼、まつ毛、装置の映り込みなどが無いモンタージュ画像を生成することができる。よって、眼科医は、上下の各渦静脈の状態を把握できる。さらに、眼底赤道部や眼底周辺部の病変があるか否かの診断を行うことができる。さらに、眼底赤道部や眼底周辺部の病変だけでなく、眼底中心部の病変の予兆も上下の各渦静脈の状態から推定することもできる。
【0073】
次に、種々の変形例を説明する。
【0074】
(第1の変形例)
上記実施の形態では、モンタージュ画像作成処理をサーバ140のCPU262が実行するようにしているが、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、眼科装置110のCPU22が実行したり、ビューワ150のCPUが実行したり、更には、ネットワーク130に接続された他のコンピュータのCPUが実行したりしてもよい。
【0075】
(第2の変形例)
上記実施の形態では、UWF上方視眼底画像及びUWF下方視眼底画像は、次のように取得されている。即ち、上固視灯92Uが点灯され、患者の視線が上方に向いた状態で、被検眼12のUWF上方視眼底画像GUが取得され、下固視灯92Dが点灯され、患者の視線が下方に向いた状態で、被検眼12UWF下方視眼底画像GDが取得される。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、SLOユニット40を、被検眼12の瞳孔中心を中心に、上下方向に回動可能に構成する。
【0076】
上方画像を取得する際、SLOユニット40を、被検眼12の瞳孔中心を中心に、下側に回動させる。この状態で、SLOユニット40が、下側から上側に向けて、被検眼12の瞳孔を介して眼底の画像を取得する。この場合、更に、上固視灯92Uを点灯させ、患者の視線を上方に向かせるようにしてもよい。
【0077】
下方画像を取得する際、SLOユニット40を、被検眼12の瞳孔中心を中心に、上側に回動させる。この状態で、SLOユニット40が、上側から下側に向けて、被検眼12の瞳孔を介して眼底の画像を取得する。この場合、更に、下固視灯92Dを点灯させ、患者の視線を下方に向かせるようにしてもよい。
【0078】
更に、患者の視線を上下方向に向かせたり、SLOユニット40を、被検眼12の瞳孔中心を中心に、上下方向に回動させたりすることに限定されない。
【0079】
例えば、右斜め上、左斜め上、右斜め下、左斜め下側に、被検眼12の視線を導く各固視灯を設け、各視線の状態で眼底画像を取得し、これらを合成してモンタージュ画像を生成するようにしてもよい。
【0080】
更に、SLOユニット40を、被検眼12の瞳孔中心を中心に、右斜め上、左斜め上、右斜め下、左斜め下側から、被検眼12の瞳孔を介して眼底を撮影できるように、回動可能に構成する。SLOユニット40が各方向から眼底を撮影することにより、各方向にUWF眼底画像を取得し、これらを合成してモンタージュ画像を生成するようにしてもよい。この場合、更に、右斜め上、左斜め上、右斜め下、左斜め下側に配置された各固視灯を点灯させ、被検眼12の視線を各方向に導くようにしてもよい。
【0081】
(第3の変形例)
サーバ140で生成されたモンタージュ画像を、渦静脈の可視化だけでなく、眼底周辺部(眼底赤道部)の網膜の構造解析、血管解析、あるいは異常領域(病変部)を検出する処理を行うようにしてもよい。また、生成されたモンタージュ画像を用いて、糖尿病網膜症、加齢性黄斑変性など眼底中心部に生じる病変(あるいは発病する可能性)を推定するようにしてもよい。モンタージュ画像の眼底周辺部(眼底赤道部)の画像情報を加味することにより、眼底中心部の画像を用いた画像解析より、眼底周辺部の情報も考慮されて病変の推定を行うことができる。
また、構造解析や血管解析、あるいは病変の推定などの解析はAI(Artificial Intelligence)で解析するようにしてもよい。
眼底周辺部(眼底赤道部)の網膜の構造解析、血管解析、あるいは異常領域(病変部)を検出する処理は、渦静脈解析部1425がその機能を担ってもよいし、別の図示せぬ画像解析部によって処理されるようにしてもよい。
【0082】
(第4の変形例)
上記実施の形態では、モンタージュ画像作成処理をサーバ140のCPU262が実行し、位置合わせ処理を自動で行っている。モンタージュ画像作成処理をビューワ150で行う場合は、UWF上方視眼底画像の特徴点群1の抽出と、UWF下方視眼底画像の特徴点群2の抽出とを、ユーザが手動で行うようにしてもよい。
具体的には、
図11のステップ340、342に代えて、以下の処理が実行される。
サーバ140からビューワ150に、UWF上方視眼底画像GU及びUWF下方視眼底画像GDの各画像データを送信する。
【0083】
上記各画像データを受信したビューワ150は、UWF上方視眼底画像GU及びUWF下方視眼底画像GDの各々において黄斑MU、MDと視神経乳頭ONHU、ONHDとを検出する。ビューワ150は、
図17に示すように、UWF上方視眼底画像GUにおける黄斑MUと視神経乳頭ONHUとを結ぶ線分と、UWF下方視眼底画像GDにおける黄斑MDと視神経乳頭ONHDとを結ぶ線分が、線分LGMとして一致するように、UWF上方視眼底画像GU及びUWF下方視眼底画像GDの位置を合わせ且つ並列に表示する。ビューワ150は、線分LGMから上側及び下側に、所定距離離間した位置に、線分LGMと平行な特徴点抽出領域の上限LU及び特徴点抽出領域の下限LDを設定する。
【0084】
ユーザは、上限LUと下限LDとの間のUWF上方視眼底画像GUから特徴点群1を設定する。そしてユーザは特徴点群1に対応する特徴点群2を、上限LUと下限LDとの間のUWF下方視眼底画像GDから抽出する。ビューワ150は、特徴点群1及び特徴点群2の位置の各データをサーバ140に送信する。特徴点群1及び特徴点群2の位置の各データを受信したサーバ140の位置合わせ部1421は、ステップ344(
図11)で、受信した特徴点群1と特徴点群2を用いて上記射影変換行列を作成する。
【0085】
(その他の変形例)
以上説明したモンタージュ画像生成処理、モンタージュ画像表示処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
また、眼科装置110は被検眼12の眼球中心170を基準位置として内部照射角が200°の領域(被検眼12の眼球の瞳孔を基準とした外部照射角では167°)を撮影する機能を持つが、この画角に限らない。内部照射角が200度以上(外部照射角が167度以上180度以下)であってもよい。
さらに、内部照射角が200度未満(外部照射角が167度未満)のスペックであってもよい。例えば、内部照射角が約180度(外部照射角が約140度)、内部照射角が約156度(外部照射角が約120度)、内部照射角が約144度(外部照射角が約110度)などの画角でも良い。数値は一例であり、渦静脈などが存在する眼底周辺部と眼底中心部を一括で撮影できる画角であれば良い。
【0086】
以上説明した各例では、コンピュータを利用したソフトウェア構成により処理が実現される場合を例示したが、本開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、コンピュータを利用したソフトウェア構成に代えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア構成のみによって、処理が実行されるようにしてもよい。処理のうちの一部の処理がソフトウェア構成により実行され、残りの処理がハードウェア構成によって実行されるようにしてもよい。