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特開2023-120533ターゲット供給システム、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120533
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ターゲット供給システム、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230823BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023467
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】岩本 文男
(72)【発明者】
【氏名】植田 篤
(72)【発明者】
【氏名】薮 隆之
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197AA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB10
4C092AB12
4C092AB19
4C092AC09
4C092BD18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶融タンクの内部の液体ターゲット物質の表面温度が低下しても、溶融タンクの内部のガス圧の低下が抑制される。
【解決手段】ターゲット供給システム261は、固体ターゲット物質27aを収容可能なロードロック室C2と、ロードロック室C2に接続された固体ターゲット供給管42と、外部から供給されたガス圧を調節する圧力調節器62と、圧力調節器62に接続されたガス圧供給管と、固体ターゲット供給管及びガス圧供給管の両方に接続され、ロードロック室C2から固体ターゲット供給管を介して供給される固体ターゲット物質27aを溶融させて液体ターゲット物質27aを生成する溶融タンクC3と、圧力調節器62からガス圧供給管を介して溶融タンクに供給されるガス圧によって液体ターゲット物質27を吐出するノズル72と、溶融タンクに固体ターゲット物質を供給する際に溶融タンクに連通してガス圧を供給するバッファタンク64と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ターゲット物質を収容可能なロードロック室と、
前記ロードロック室に接続された固体ターゲット供給管と、
外部から供給されたガス圧を調節する圧力調節器と、
前記圧力調節器に接続されたガス圧供給管と、
前記固体ターゲット供給管及び前記ガス圧供給管の両方に接続され、前記ロードロック室から前記固体ターゲット供給管を介して供給される前記固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成する溶融タンクと、
前記圧力調節器から前記ガス圧供給管を介して前記溶融タンクに供給されるガス圧によって前記液体ターゲット物質を吐出するノズルと、
前記溶融タンクに前記固体ターゲット物質を供給する際に前記溶融タンクに連通してガス圧を供給するバッファタンクと、
を備える、ターゲット供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記バッファタンクは、前記ノズルが前記液体ターゲット物質を吐出するときの前記溶融タンクの内部のガスよりも、温度の低いガスを収容する、
ターゲット供給システム。
【請求項3】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記圧力調節器は、大気圧よりも高いガス圧を前記溶融タンクに供給し、
前記バッファタンクは、大気圧よりも高圧のガスを収容する、
ターゲット供給システム。
【請求項4】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記圧力調節器は、前記外部から前記圧力調節器に供給されたガス圧よりも低いガス圧を前記溶融タンクに供給し、
前記バッファタンクは、前記外部から前記圧力調節器に供給されたガス圧よりも低圧のガスを収容する、
ターゲット供給システム。
【請求項5】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記バッファタンクは、前記溶融タンクよりも容積が大きい、
ターゲット供給システム。
【請求項6】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記バッファタンクの容積は、1.4リットル以上14リットル以下の範囲内である、
ターゲット供給システム。
【請求項7】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記バッファタンクは、前記ガス圧供給管を介して前記溶融タンクに連通する、
ターゲット供給システム。
【請求項8】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記バッファタンクは、前記固体ターゲット供給管を介して前記溶融タンクに連通する、
ターゲット供給システム。
【請求項9】
請求項8に記載のターゲット供給システムであって、
前記固体ターゲット供給管に固体ターゲット供給バルブが配置され、
前記バッファタンクから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路は、前記固体ターゲット供給管のうちの前記固体ターゲット供給バルブから前記溶融タンクへ向かう前記固体ターゲット物質の供給経路において前記固体ターゲット供給管に合流する、
ターゲット供給システム。
【請求項10】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記ガス圧供給管は、分岐部と、前記分岐部から前記溶融タンクへ向けてガス圧を供給する第1の配管と、前記分岐部から前記ロードロック室へ向けてガス圧を供給する第2の配管と、前記圧力調節器と前記分岐部との間の共通配管と、を含み、
前記第1及び第2の配管にそれぞれ第1及び第2のガス圧供給バルブが配置され、
前記バッファタンクから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路は、前記第1の配管のうちの前記第1のガス圧供給バルブから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路において前記第1の配管に合流する、
ターゲット供給システム。
【請求項11】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記バッファタンクから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路は、前記ガス圧供給管に合流し、
前記ガス圧供給管のうちの前記バッファタンクからのガス圧の供給経路との合流位置から前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路に第3のガス圧供給バルブが配置された、
ターゲット供給システム。
【請求項12】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記ガス圧供給管は、分岐部と、前記分岐部から前記溶融タンクへ向けてガス圧を供給する第1の配管と、前記分岐部から前記ロードロック室へ向けてガス圧を供給する第2の配管と、前記圧力調節器と前記分岐部との間の共通配管と、を含み、
前記第1及び第2の配管にそれぞれ第1及び第2のガス圧供給バルブが配置され、
前記バッファタンクから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路は、前記第1の配管のうちの前記第1のガス圧供給バルブから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路において前記第1の配管に合流し、
前記第1の配管のうちの前記バッファタンクからのガス圧の供給経路との合流位置から前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路に第3のガス圧供給バルブが配置された、
ターゲット供給システム。
【請求項13】
請求項12に記載のターゲット供給システムであって、
前記固体ターゲット物質を計量して前記ロードロック室に供給する計量器をさらに備え、
前記第1の配管のうちの前記第3のガス圧供給バルブから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路に第1の継手が配置され、
前記第2の配管のうちの前記第2のガス圧供給バルブから前記ロードロック室へ向かうガス圧の供給経路に第2の継手が配置され、
前記計量器から前記ロードロック室へ向かう前記固体ターゲット物質の供給経路に第3の継手が配置された、
ターゲット供給システム。
【請求項14】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記ガス圧供給管は、分岐部と、前記分岐部から前記溶融タンクへ向けてガス圧を供給する第1の配管と、前記分岐部から前記ロードロック室へ向けてガス圧を供給する第2の配管と、前記圧力調節器と前記分岐部との間の共通配管と、を含み、
前記第1及び第2の配管にそれぞれ第1及び第2のガス圧供給バルブが配置され、
前記バッファタンクから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路は、
前記第1の配管のうちの前記分岐部と前記第1のガス圧供給バルブとの間、
前記第2の配管のうちの前記分岐部と前記第2のガス圧供給バルブとの間、及び
前記共通配管
のうちのいずれかにおいて前記ガス圧供給管に合流する、
ターゲット供給システム。
【請求項15】
請求項14に記載のターゲット供給システムであって、
前記固体ターゲット物質を計量して前記ロードロック室に供給する計量器をさらに備え、
前記第1の配管のうちの前記第1のガス圧供給バルブから前記溶融タンクへ向かうガス圧の供給経路に第1の継手が配置され、
前記第2の配管のうちの前記第2のガス圧供給バルブから前記ロードロック室へ向かうガス圧の供給経路に第2の継手が配置され、
前記計量器から前記ロードロック室へ向かう前記固体ターゲット物質の供給経路に第3の継手が配置された、
ターゲット供給システム。
【請求項16】
請求項1に記載のターゲット供給システムであって、
前記溶融タンクの内部の前記液体ターゲット物質の液面を検出するセンサと、
前記固体ターゲット物質を計量して前記ロードロック室に供給する計量器と、
前記センサの出力に基づいて、前記固体ターゲット物質を前記ロードロック室に供給するように前記計量器を制御するプロセッサと、
をさらに備える、ターゲット供給システム。
【請求項17】
請求項16に記載のターゲット供給システムであって、
前記プロセッサは、前記センサの出力に基づいて、前記溶融タンクの内部の前記液体ターゲット物質の0.33%以上、3.3%以下の質量の前記固体ターゲット物質を前記ロードロック室に供給するように前記計量器を制御する、
ターゲット供給システム。
【請求項18】
請求項1に記載のターゲット供給システムと、
前記ターゲット供給システムから出力されて所定領域に到達したターゲットにパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、
前記所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、
を備える極端紫外光生成装置。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
固体ターゲット物質を収容可能なロードロック室と、
前記ロードロック室に接続された固体ターゲット供給管と、
外部から供給されたガス圧を調節する圧力調節器と、
前記圧力調節器に接続されたガス圧供給管と、
前記固体ターゲット供給管及び前記ガス圧供給管の両方に接続され、前記ロードロック室から前記固体ターゲット供給管を介して供給される前記固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成する溶融タンクと、
前記圧力調節器から前記ガス圧供給管を介して前記溶融タンクに供給されるガス圧によって前記液体ターゲット物質を吐出するノズルと、
前記溶融タンクに前記固体ターゲット物質を供給する際に前記溶融タンクに連通してガス圧を供給するバッファタンクと、
を備えるターゲット供給システムと、
前記ターゲット供給システムから出力されて所定領域に到達したターゲットにパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、
前記所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、
を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、
極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
固体ターゲット物質を収容可能なロードロック室と、
前記ロードロック室に接続された固体ターゲット供給管と、
外部から供給されたガス圧を調節する圧力調節器と、
前記圧力調節器に接続されたガス圧供給管と、
前記固体ターゲット供給管及び前記ガス圧供給管の両方に接続され、前記ロードロック室から前記固体ターゲット供給管を介して供給される前記固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成する溶融タンクと、
前記圧力調節器から前記ガス圧供給管を介して前記溶融タンクに供給されるガス圧によって前記液体ターゲット物質を吐出するノズルと、
前記溶融タンクに前記固体ターゲット物質を供給する際に前記溶融タンクに連通してガス圧を供給するバッファタンクと、
を備えるターゲット供給システムと、
前記ターゲット供給システムから出力されて所定領域に到達したターゲットにパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、
前記所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、
を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ターゲット供給システム、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するEUV光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflection optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にパルスレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0364927号明細書
【特許文献2】特開2010-123405号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0377986号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るターゲット供給システムは、固体ターゲット物質を収容可能なロードロック室と、ロードロック室に接続された固体ターゲット供給管と、外部から供給されたガス圧を調節する圧力調節器と、圧力調節器に接続されたガス圧供給管と、固体ターゲット供給管及びガス圧供給管の両方に接続され、ロードロック室から固体ターゲット供給管を介して供給される固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成する溶融タンクと、圧力調節器からガス圧供給管を介して溶融タンクに供給されるガス圧によって液体ターゲット物質を吐出するノズルと、溶融タンクに固体ターゲット物質を供給する際に溶融タンクに連通してガス圧を供給するバッファタンクと、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、固体ターゲット物質を収容可能なロードロック室と、ロードロック室に接続された固体ターゲット供給管と、外部から供給されたガス圧を調節する圧力調節器と、圧力調節器に接続されたガス圧供給管と、固体ターゲット供給管及びガス圧供給管の両方に接続され、ロードロック室から固体ターゲット供給管を介して供給される固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成する溶融タンクと、圧力調節器からガス圧供給管を介して溶融タンクに供給されるガス圧によって液体ターゲット物質を吐出するノズルと、溶融タンクに固体ターゲット物質を供給する際に溶融タンクに連通してガス圧を供給するバッファタンクと、を備えるターゲット供給システムと、ターゲット供給システムから出力されて所定領域に到達したターゲットにパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、固体ターゲット物質を収容可能なロードロック室と、ロードロック室に接続された固体ターゲット供給管と、外部から供給されたガス圧を調節する圧力調節器と、圧力調節器に接続されたガス圧供給管と、固体ターゲット供給管及びガス圧供給管の両方に接続され、ロードロック室から固体ターゲット供給管を介して供給される固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成する溶融タンクと、圧力調節器からガス圧供給管を介して溶融タンクに供給されるガス圧によって液体ターゲット物質を吐出するノズルと、溶融タンクに固体ターゲット物質を供給する際に溶融タンクに連通してガス圧を供給するバッファタンクと、を備えるターゲット供給システムと、ターゲット供給システムから出力されて所定領域に到達したターゲットにパルスレーザ光を照射するレーザ装置と、所定領域に生成されたプラズマから放出される極端紫外光を集光するEUV集光ミラーと、を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、比較例に係るターゲット供給システムの構成を概略的に示す。
図3図3は、比較例に係るターゲット供給システムの動作手順を示す。
図4図4は、固体ターゲット物質をロードロック室から溶融タンクに供給したときの溶融タンクの内部のガス圧の変化を示すグラフである。
図5図5は、溶融タンクにおいて図4に示されるガス圧の変化が生じたときのターゲットの速度の変化を示すグラフである。
図6図6は、第1の実施形態に係るターゲット供給システムの構成を概略的に示す。
図7図7は、第1の実施形態に係るターゲット供給システムの動作手順を示す。
図8図8は、溶融タンクの内部に固体ターゲット物質を供給した後の熱の移動に伴う温度変化を説明するグラフである。
図9図9は、割合ΔMsn/Msnに応じた温度降下を示すグラフである。
図10図10は、溶融タンクの内部のガスが温度降下する前及び後の各々における溶融タンク及びバッファタンクの各々の内部のガス圧、体積、モル数、及び温度の一覧を示す。
図11図11は、割合ΔMsn/Msnに応じたバッファタンクの容積を示すグラフである。
図12図12は、第2の実施形態に係るターゲット供給システムの構成を概略的に示す。
図13図13は、第3の実施形態に係るターゲット供給システムの構成を概略的に示す。
図14図14は、第4の実施形態に係るターゲット供給システムの構成を概略的に示す。
図15図15は、調整機構及び固体ターゲット供給バルブの構成を示し、それらの動作を図16との組み合わせで示す。
図16図16は、調整機構及び固体ターゲット供給バルブの構成を示し、それらの動作を図15との組み合わせで示す。
図17図17は、第4の実施形態に係るターゲット供給システムの動作手順を示す。
図18図18は、各実施形態において用いられる圧力調節器の構成を概略的に示す。
図19図19は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
図20図20は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例
2.1 構成
2.1.1 リザーバタンクC1
2.1.2 ロードロック室C2
2.1.3 溶融タンクC3
2.1.4 各種配管
2.2 動作
2.3 比較例の課題
3.ガス圧供給管L0にバッファタンク64が接続されたターゲット供給システム261
3.1 構成
3.2 動作
3.3 溶融タンクC3の内部のガスの温度降下ΔT
3.4 温度降下ΔTによるガス圧降下ΔP
3.5 作用
4.溶融タンクC3を取り外し可能なターゲット供給システム262
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用
5.バッファタンク64の配置のバリエーション
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用
6.溶融タンクC3の液面を検出するターゲット供給システム264
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用
7.その他
7.1 圧力調節器62
7.2 EUV光利用装置6
7.3 補足
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
図1に、LPP式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザ装置3とともに用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給システム26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給システム26は、ターゲット物質を含むターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0012】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置される。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0013】
EUV光生成装置1は、EUV光生成プロセッサ5、ターゲットセンサ4等を含む。EUV光生成プロセッサ5は、制御プログラムが記憶されたメモリ501と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)502と、を含む処理装置である。EUV光生成プロセッサ5は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。
【0014】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部とEUV光利用装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。EUV光利用装置6の例については、図19及び図20を参照しながら後述する。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、パルスレーザ光32の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。
【0016】
1.2 動作
図1を参照して、EUV光生成システム11の動作を説明する。レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、レーザ光路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてターゲット27に照射される。
【0017】
ターゲット供給システム26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光は、EUV集光ミラー23によって他の波長域の光に比べて高い反射率で反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、EUV光利用装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0018】
EUV光生成プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。EUV光生成プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、EUV光生成プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、EUV光生成プロセッサ5は、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例
2.1 構成
図2は、比較例に係るターゲット供給システム26の構成を概略的に示す。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。図2に示されるように、比較例に係るターゲット供給システム26は、リザーバタンクC1と、ロードロック室C2と、溶融タンクC3と、ターゲット供給プロセッサ60と、固体ターゲット供給管41及び42と、計量器61と、圧力調節器62と、排気ポンプ63と、を含む。
【0020】
ターゲット供給プロセッサ60は、制御プログラムが記憶されたメモリ601と、制御プログラムを実行するCPU602と、を含む処理装置である。ターゲット供給プロセッサ60は本開示におけるプロセッサに相当する。ターゲット供給プロセッサ60は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。
【0021】
2.1.1 リザーバタンクC1
リザーバタンクC1は、スズなどの固体ターゲット物質27aを収容する容器である。固体ターゲット物質27aは、例えば、互いにほぼ同じ大きさの球形の粒であってもよい。あるいは、球形以外の形状の粒であってもよい。リザーバタンクC1の内部の温度はターゲット物質の融点より低い温度である。リザーバタンクC1の内部のガス圧は、大気圧と同程度である。
【0022】
計量器61はリザーバタンクC1の下端に配置されている。リザーバタンクC1は、計量器61を介して固体ターゲット供給管41に接続され、固体ターゲット供給管41はロードロック室C2に接続されている。固体ターゲット供給管41には固体ターゲット供給バルブVT1が配置されている。
【0023】
計量器61は、通常時は固体ターゲット物質27aの固体ターゲット供給管41への供給を止めている。
計量器61は、リザーバタンクC1から供給される固体ターゲット物質27aを計量しながらロードロック室C2へ向けて通過させることができる。固体ターゲット物質27aの計量は、固体ターゲット物質27aの粒の数を数えることを含む。計量された固体ターゲット物質27aは重力によって移動し、固体ターゲット供給管41及び固体ターゲット供給バルブVT1を通過してロードロック室C2に移動する。計量器61は、予め決められた量の固体ターゲット物質27aを通過させたら、固体ターゲット物質27aの通過を止める。
【0024】
2.1.2 ロードロック室C2
ロードロック室C2は、リザーバタンクC1から供給される固体ターゲット物質27aを収容可能に構成された容器である。ロードロック室C2の内部の温度はターゲット物質の融点より低い温度である。ロードロック室C2は、第2の配管L2を介して共通配管L3に接続され、共通配管L3を介して圧力調節器62に接続されている。圧力調節器62については後述する。
【0025】
ロードロック室C2は、固体ターゲット供給管42に接続され、固体ターゲット供給管42は溶融タンクC3に接続されている。固体ターゲット供給管42には固体ターゲット供給バルブVT2が配置されている。固体ターゲット供給バルブVT2は通常時には閉められており、溶融タンクC3の内部のガスがロードロック室C2に向けて流れることを抑制する。固体ターゲット供給バルブVT2は、ロードロック室C2から溶融タンクC3へ固体ターゲット物質27aを供給するために一時的に開けられる。
【0026】
2.1.3 溶融タンクC3
溶融タンクC3は、ロードロック室C2から固体ターゲット供給管42を介して供給されるターゲット物質を収容する容器である。溶融タンクC3は、固体ターゲット供給管42に接続され、固体ターゲット供給管42の一部を介して第1の配管L1に接続されている。溶融タンクC3は、さらに、第1の配管L1を介して共通配管L3に接続され、共通配管L3を介して圧力調節器62に接続されている。圧力調節器62はターゲット供給システム26の外部のガスボンベG1に接続されている。ガスボンベG1は、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの高圧の希ガスを加圧ガスとして収容している。圧力調節器62は、ガスボンベG1から供給されたガス圧を調節して溶融タンクC3に供給する。ターゲット供給プロセッサ60が圧力調節器62を制御することにより、溶融タンクC3の内部のガス圧が所定のガス圧に調節される。所定のガス圧は、ガスボンベG1から供給されたガス圧より低く、大気圧より高いガス圧である。
【0027】
溶融タンクC3には、ヒーター71及びノズル72が配置されている。
ヒーター71は、図示しない電源に接続されており、溶融タンクC3の内部をターゲット物質の融点より高い所定温度にまで加熱する。溶融タンクC3に配置された図示しない温度センサの出力に基づいて電源が制御されることにより、溶融タンクC3の内部の温度が制御される。これにより、溶融タンクC3において固体ターゲット物質27aが溶融されて液体ターゲット物質が生成される。
【0028】
ノズル72は、溶融タンクC3の重力方向における下端部に配置されている。ノズル72の先端は、チャンバ2(図1参照)の内部に開口している。溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質は、圧力調節器62から供給されるガス圧とチャンバ2の内部のガス圧との差によって、ノズル72の先端の開口から吐出される。図示しないピエゾ素子によってノズル72に振動を与えると、ノズル72から吐出されたジェット状の液体ターゲット物質が液滴状に分離され、ターゲット27となる。
【0029】
2.1.4 各種配管
第1の配管L1、第2の配管L2、及び共通配管L3が、ガス圧供給管L0を構成する。第1の配管L1は分岐部SPと固体ターゲット供給管42への接続部CPとの間の配管であり、第2の配管L2は分岐部SPとロードロック室C2との間の配管であり、共通配管L3は圧力調節器62と分岐部SPとの間の配管である。接続部CPは、固体ターゲット供給管42のうちの固体ターゲット供給バルブVT2と溶融タンクC3との間に位置する。
第1の配管L1には、第1のガス圧供給バルブV1が配置されている。第1の配管L1は、分岐部SPから溶融タンクC3へ向けてガス圧を供給する。第2の配管L2には、第2のガス圧供給バルブV2が配置されている。第2の配管L2は、分岐部SPからロードロック室C2へ向けてガス圧を供給する。
【0030】
ここでは第1の配管L1が固体ターゲット供給管42の一部を介して溶融タンクC3に接続される場合について説明したが、第1の配管L1は、固体ターゲット供給管42を介さずに、溶融タンクC3に直接接続されてもよい。
【0031】
第2の配管L2のうちのロードロック室C2と第2のガス圧供給バルブV2との間の位置に、パージガス供給のための配管L5と排気のための配管L8とが接続されている。
配管L5はターゲット供給システム26の外部のガスボンベG2に接続されている。ガスボンベG2は、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの希ガスをパージガスとして収容している。ガスボンベG2のガス圧は、ガスボンベG1のガス圧より低くてもよく、圧力調節器62によって調整されたガス圧よりさらに低くてもよい。ガスボンベG2のガス圧は、大気圧よりもわずかに高いガス圧でよい。あるいは、図示しない圧力調節器が配管L5に配置され、ガスボンベG2から供給されるパージガスのガス圧が、圧力調節器62によって調整されたガス圧より低く大気圧より高い圧力に調整されてもよい。配管L5にはバルブV5が配置されている。
配管L8は、配管L6と配管L7とに分岐している。配管L6には、バルブV6と排気ポンプ63とが配置されている。配管L7には、バルブV7が配置されている。排気ポンプ63は、ロードロック室C2の内部のガスを強制的に排気してロードロック室C2の内部のガス圧を大気圧より低くできるように構成されている。
【0032】
2.2 動作
図3は、比較例に係るターゲット供給システム26の動作手順を示す。以下のようにして、リザーバタンクC1の内部の固体ターゲット物質27aがロードロック室C2を介して溶融タンクC3に供給される。
【0033】
S11において、固体ターゲット供給バルブVT1及びVT2、第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2、及びバルブV5~V7がすべて閉められた状態から動作がスタートする。ヒーター71が、溶融タンクC3の内部をターゲット物質の融点より高い所定温度にまで加熱する。
S12において、ターゲット供給プロセッサ60は、第1のガス圧供給バルブV1を開ける。これにより、圧力調節器62によって調整されたガス圧が溶融タンクC3に供給され、溶融タンクC3の内部が高圧に調整される。また、ターゲット供給システム26がターゲット27の供給を開始し、液体ターゲット物質の消費が開始される。
S14において、ターゲット供給プロセッサ60は、一定時間が経過して液体ターゲット物質の消費が進むまで待機し、一定時間が経過したら次に進む。
【0034】
S21において、ターゲット供給プロセッサ60は、固体ターゲット供給バルブVT1を開ける。
S22において、ターゲット供給プロセッサ60は、予め決められた量の固体ターゲット物質27aを計量するように計量器61を制御する。計量器61は、固体ターゲット物質27aを1粒ずつカウントしながら通過させ、予め決められた量の固体ターゲット物質27aが通過したら、固体ターゲット物質27aの通過を止める。これにより、固体ターゲット物質27aがロードロック室C2に供給される。
S23において、ターゲット供給プロセッサ60は、固体ターゲット供給バルブVT1を閉める。このように、固体ターゲット供給バルブVT1は、計量器61が固体ターゲット物質27aを通過させる前に開けられ、予め決められた量の固体ターゲット物質27aが固体ターゲット供給バルブVT1を通過したら閉められる。
【0035】
S31において、ターゲット供給プロセッサ60は、排気ポンプ63を起動し、その後、バルブV6を開ける。
S32において、ターゲット供給プロセッサ60は、バルブV6を閉め、その後、排気ポンプ63を停止させる。ロードロック室C2の内部のガスは、これにより外部に排気される。
S33において、ターゲット供給プロセッサ60は、バルブV5を開け、その後、バルブV5を閉める。これにより、パージガスがガスボンベG2からロードロック室C2の内部に供給される。
S31~S33の処理は1回だけ行われてもよいし、複数回繰り返すことによりロードロック室C2の内部のパージガスの純度を高めてもよい。
【0036】
S41において、ターゲット供給プロセッサ60は、第1のガス圧供給バルブV1を閉める。これにより、S42において第2のガス圧供給バルブV2を開けたときに溶融タンクC3の内部のガス圧が急激に変動することが抑制される。
第1のガス圧供給バルブV1を閉めると、溶融タンクC3の内部のガス圧はわずかずつ減少する。これは、液体ターゲット物質がノズル72から吐出され、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の体積が減少するのに伴って、溶融タンクC3の内部のガスの体積が増加するからである。但し、第1のガス圧供給バルブV1を閉めた後、S43において第1のガス圧供給バルブV1を開けるまでの時間が短ければ、溶融タンクC3の内部のガス圧が大きく変動することは抑制される。
【0037】
S42において、ターゲット供給プロセッサ60は、第2のガス圧供給バルブV2を開ける。これにより、圧力調節器62によって調整されたガス圧がロードロック室C2に供給され、ロードロック室C2の内部が高圧に調整される。ロードロック室C2の内部を高圧に調整することで、S43において第1のガス圧供給バルブV1を開けたときに溶融タンクC3の内部のガス圧が急激に変動することが抑制される。
【0038】
S43において、ターゲット供給プロセッサ60は、第1のガス圧供給バルブV1を開ける。第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2が開いた状態とすることにより、ロードロック室C2の内部のガス圧と、溶融タンクC3の内部のガス圧とがほぼ同程度となる。
【0039】
S51において、ターゲット供給プロセッサ60は、固体ターゲット供給バルブVT2を開ける。このとき、ロードロック室C2の内部の固体ターゲット物質27aがすべて溶融タンクC3の内部に供給される。S43により、ロードロック室C2の内部のガス圧と、溶融タンクC3の内部のガス圧とがほぼ同程度となっているため、固体ターゲット供給バルブVT2を開けたときの溶融タンクC3の内部のガス圧変動は小さくて済む。溶融タンクC3に供給された固体ターゲット物質27aは溶融し、すでに溶融タンクC3に収容され溶融していた液体ターゲット物質と混ざり合う。ヒーター71によって、溶融タンクC3の内部の温度の低下が抑制される。
S53において、ターゲット供給プロセッサ60は、固体ターゲット供給バルブVT2を閉める。
【0040】
S61において、ターゲット供給プロセッサ60は、第2のガス圧供給バルブV2を閉める。これにより、S62においてバルブV7を開けたときに溶融タンクC3の内部のガス圧が急激に変動することが抑制される。
S62において、ターゲット供給プロセッサ60は、バルブV7を開ける。これにより、ロードロック室C2の内部のガスがターゲット供給システム26の外部に放出され、ロードロック室C2の内部のガス圧は大気圧と同程度となる。
S63において、ターゲット供給プロセッサ60は、バルブV7を閉める。
S64において、ターゲット供給プロセッサ60は、S14の処理に戻る。
【0041】
比較例によれば、ほぼ大気圧であるリザーバタンクC1の内部に収容されている固体ターゲット物質27aを、高圧の溶融タンクC3の内部に供給できる。溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質が消費されても、溶融タンクC3を交換せずに固体ターゲット物質27aを補給できるので、EUV光生成装置1の停止時間を低減することができる。
【0042】
2.3 比較例の課題
図4は、固体ターゲット物質27aをロードロック室C2から溶融タンクC3に供給したときの溶融タンクC3の内部のガス圧Pの変化を示すグラフである。
S43により、ロードロック室C2の内部のガス圧と、溶融タンクC3の内部のガス圧とをほぼ同程度としているので、S51において固体ターゲット供給バルブVT2を開けたときの溶融タンクC3の内部のガス圧変動は小さい。しかしながら、溶融タンクC3に供給された固体ターゲット物質27aが溶融することで、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の表面温度が低下し得る。この温度変化により、溶融タンクC3の内部のガス圧Pが変動し得る。ガス圧Pは圧力調節器62の制御によって所望の圧力に戻されるが、ガス圧Pが安定するまで時間を要することがある。
【0043】
図5は、溶融タンクC3において図4に示されるガス圧Pの変化が生じたときのターゲット27の速度Vの変化を示すグラフである。液体ターゲット物質は、溶融タンクC3の内部とチャンバ2の内部との圧力差によってノズル72から出力されるので、溶融タンクC3の内部のガス圧Pの変動に応じて、ターゲット27の速度Vも変動する。ターゲット27の速度Vが変動すると、パルスレーザ光33(図1参照)がターゲット27に照射されるときのターゲット27の位置が変動するため、プラズマの発生量及び発生位置が変動し得る。これにより、EUV光のパルスエネルギーや強度分布などの特性が変動し、EUV光の品質の安定性が損なわれる場合がある。
【0044】
以下に説明する幾つかの実施形態においては、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の表面温度が低下しても、溶融タンクC3の内部のガス圧Pの低下が抑制されるように構成されている。
【0045】
3.ガス圧供給管L0にバッファタンク64が接続されたターゲット供給システム261
3.1 構成
図6は、第1の実施形態に係るターゲット供給システム261の構成を概略的に示す。ターゲット供給システム261は、比較例の構成に加えて、バッファタンク64を含む。バッファタンク64の内部のガスの組成は、ガスボンベG1に収容されたガスの組成と同じでよい。
【0046】
バッファタンク64は、ガス圧供給管L0を介して溶融タンクC3に連通する。バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、第1の配管L1のうちの第1のガス圧供給バルブV1から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路において第1の配管L1に合流する。バッファタンク64を第1の配管L1につなぐ配管に、バルブV4が配置されている。
【0047】
バッファタンク64は、固体ターゲット供給管42を介して溶融タンクC3に連通する。バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、固体ターゲット供給管42のうちの固体ターゲット供給バルブVT2から溶融タンクC3へ向かう固体ターゲット物質27aの供給経路において固体ターゲット供給管42に合流する。従って、固体ターゲット供給バルブVT2が閉まっているとき、すなわちロードロック室C2から溶融タンクC3に固体ターゲット物質27aが供給されていないときでも、溶融タンクC3の内部のガス圧変動が抑制される。
【0048】
バッファタンク64は、溶融タンクC3の内部でターゲット物質が加熱されてノズル72が液体ターゲット物質を吐出するときの溶融タンクC3の内部のガスよりも、温度の低いガスを収容する。バッファタンク64の内部のガス温度は常温でよい。
バッファタンク64は、大気圧よりも高圧であって、ガスボンベG1から圧力調節器62に供給されるガス圧よりも低圧のガスを収容する。バッファタンク64の内部のガス圧は、圧力調節器62によって調整されたガス圧と同等である。
【0049】
3.2 動作
図7は、第1の実施形態に係るターゲット供給システム261の動作手順を示す。
S11aにおいて、固体ターゲット供給バルブVT1及びVT2、第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2、及びバルブV5~V7がすべて閉められている他、バルブV4も閉められている状態から動作がスタートする。
【0050】
S12において第1のガス圧供給バルブV1が開けられた後、S13aにおいて、ターゲット供給プロセッサ60は、溶融タンクC3の内部が目標ガス圧になったらバルブV4を開ける。これにより、バッファタンク64が溶融タンクC3に連通する。従って、バッファタンク64は、S51において溶融タンクC3に固体ターゲット物質27aが供給される際にも、溶融タンクC3に連通している。これによれば、固体ターゲット物質27aを溶融タンクC3に供給したことにより溶融タンクC3の内部のガスの温度が低下したとしても、バッファタンク64から溶融タンクC3へ迅速にガスが供給されるので溶融タンクC3の内部のガス圧の変化が抑制される。なお、バルブV4は常に開けておいてもよく、バルブV4が省略されてもよい。S14~S64における動作は比較例と同様である。
【0051】
3.3 溶融タンクC3の内部のガスの温度降下ΔT
溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給したことによる溶融タンクC3の内部のガスの温度降下ΔTは、以下のように計算できる。ここでは1次近似として、定常状態の場合の計算例を示す。すなわち、溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給した後、固体ターゲット物質27aがすべて溶融し、溶融タンクC3の内部に存在する液体ターゲット物質とガスとがすべて同じ温度になった場合の温度降下をΔTとする。但し、ガスの比熱は考慮しないものとする。
【0052】
図8は、溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給した後の熱の移動に伴う温度変化を説明するグラフである。
溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給する前に溶融タンクC3の内部に存在した液体ターゲット物質は、図8に太い実線で示されるように、固体ターゲット物質27aに熱を奪われて温度Ttから温度Tt-ΔTに達する。
一方、溶融タンクC3の内部に供給された固体ターゲット物質27aは、図8に破線で示されるように、液体ターゲット物質から熱を受け取り、温度Trから加熱されて融点Tmに達し、溶融された後、温度Tt-ΔTに達する。
【0053】
溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給する前に溶融タンクC3の内部に存在した液体ターゲット物質が、固体ターゲット物質27aに奪われる熱量Qoutは以下の通りである。
Qout=ΔT・Msn・Cm ・・・(a1)
ここで、Msnは、溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給する前に溶融タンクC3の内部に存在した液体ターゲット物質の質量である。
Cmは、液体ターゲット物質の比熱であり、比熱Cmとしては、例えば、液体スズの比熱0.243J/gが用いられる。
【0054】
溶融タンクC3の内部に供給された固体ターゲット物質27aが受け取る熱量Qinは、以下の熱量Qin~Qinの合計である。
【0055】
Qin:溶融タンクC3の内部に供給された固体ターゲット物質27aが融点Tmに達するまでに受け取る熱量
Qin=(Tm-Tr)・ΔMsn・Cs ・・・(a2)
ターゲット物質の融点Tmとしては、例えば、スズの融点505.13Kが用いられる。
溶融タンクC3の内部に供給される前の固体ターゲット物質27aの温度Trとしては、例えば、室温293.2Kが用いられる。
ΔMsnは、溶融タンクC3の内部に供給された固体ターゲット物質27aの質量である。
Csは、溶融タンクC3の内部に供給された固体ターゲット物質27aの比熱であり、比熱Csとしては、例えば、固体スズの比熱0.226J/gが用いられる。
【0056】
Qin:溶融タンクC3の内部に供給された固体ターゲット物質27aが融点Tmに達してから溶融するまでに受け取る熱量
Qin=Hm・ΔMsn ・・・(a3)
ここで、Hmはターゲット物質の融解熱であり、融解熱Hmとしては、例えば、固体スズの融解熱59.6J/gが用いられる。
【0057】
Qin:溶融タンクC3の内部に供給された固体ターゲット物質27aが溶融してから定常状態に達するまでに受け取る熱量
Qin=(Tt-ΔT-Tm)・ΔMsn・Cm ・・・(a4)
溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給する前の液体ターゲット物質の温度Ttは、例えば、533.9Kと仮定される。温度Ttから温度降下ΔTを減算することで、溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給した後、定常状態に達したときの液体ターゲット物質の温度が得られ、さらに融点Tmを減算することで、固体ターゲット物質27aが溶融してから定常状態に達するまでの温度変化が得られる。
【0058】
熱量保存の法則から、QoutとQinは等しいので、式(a1)~(a4)により以下の式(a5)が成立する。
ΔT・Msn・Cm=(Tm-Tr)・ΔMsn・Cs+Hm・ΔMsn+(Tt-ΔT-Tm)・ΔMsn・Cm ・・・(a5)
【0059】
式(a5)を整理すると、温度降下ΔTは以下の式(a6)で求められる。
ΔT=ΔMsn・{(Tm-Tr)・Cs+Hm+(Tt-Tm)・Cm}/{(Msn+ΔMsn)・Cm} ・・・(a6)
MsnがΔMsnより十分大きいとすると、温度降下ΔTは以下の式(a7)のように近似できる。
ΔT≒{(Tm-Tr)・Cs/Cm+Hm/Cm+(Tt-Tm)}・ΔMsn/Msn ・・・(a7)
【0060】
式(a7)に含まれる{(Tm-Tr)・Cs/Cm+Hm/Cm+(Tt-Tm)}は定数である。そこで、温度降下ΔTは、溶融タンクC3の内部に固体ターゲット物質27aを供給する前に溶融タンクC3の内部に存在した液体ターゲット物質の質量Msnに対する溶融タンクC3の内部に供給された固体ターゲット物質27aの質量ΔMsnの割合ΔMsn/Msnに略比例することになる。
【0061】
図9は、割合ΔMsn/Msnに応じた温度降下ΔTを示すグラフである。式(a6)に含まれるパラメータを具体的数値に置き換え、割合ΔMsn/Msnを0%から3.3%の範囲で変更して温度降下ΔTをプロットすると、図9に示されるグラフが得られる。このグラフの近似式は以下の通りである。
ΔT=4.7618×(ΔMsn/Msn)×100
【0062】
3.4 温度降下ΔTによるガス圧降下ΔP
溶融タンクC3の内部の温度降下ΔTによる溶融タンクC3及びバッファタンク64の内部のガス圧降下ΔPは、以下のように計算できる。ここでは1次近似として、定常状態の場合の計算例を示す。すなわち、溶融タンクC3及びバッファタンク64の内部が同じガス圧Pになった場合のガス圧降下をΔPとする。但し、溶融タンクC3の内部の温度が低下しても、バッファタンク64の内部のガスの温度は変化しないものとし、固体ターゲット物質27aの温度Trと同じとする。
【0063】
図10に、溶融タンクC3の内部のガスが温度降下する前及び後の各々における溶融タンクC3及びバッファタンク64の各々の内部のガス圧、体積、モル数、及び温度の一覧を示す。
【0064】
溶融タンクC3の内部のガスが温度降下する前の溶融タンクC3の内部のガスの状態方程式は、以下の通りである。
Pt・Vbh=n1・R・Tt ・・・(b1)
ここで、Ptは、圧力調節器62の目標ガス圧である。
Vbhは、溶融タンクC3の内部のガスの体積である。溶融タンクC3の内部のガスの体積Vbhは、溶融タンクC3全体の容積から溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の体積を減算したものに相当する。
n1は、溶融タンクC3の内部のガスが温度降下する前の溶融タンクC3の内部のガスのモル数である。
Rは、気体定数である。
【0065】
溶融タンクC3の内部のガスが温度降下する前のバッファタンク64の内部のガスの状態方程式は、以下の通りである。
Pt・Vbr=n2・R・Tr ・・・(b2)
ここで、Vbrは、バッファタンク64の容積である。
n2は、溶融タンクC3の内部のガスが温度降下する前のバッファタンク64の内部のガスのモル数である。
【0066】
式(b1)及び(b2)から、溶融タンクC3の内部のガスのモル数n1とバッファタンク64の内部のガスのモル数n2との合計モル数nは以下の式(b3)で与えられる。
n=Pt・Vbh/(R・Tt)+Pt・Vbr/(R・Tr) ・・・(b3)
【0067】
溶融タンクC3の内部のガスが温度降下した後の溶融タンクC3の内部のガスの状態方程式は、以下の通りである。
P・Vbh=n10・R・(Tt-ΔT) ・・・(b4)
ここで、n10は、溶融タンクC3の内部のガスが温度降下した後の溶融タンクC3の内部のガスのモル数である。
【0068】
溶融タンクC3の内部のガスが温度降下した後のバッファタンク64の内部のガスの状態方程式は、以下の通りである。
P・Vbr=n20・R・Tr ・・・(b5)
n20は、溶融タンクC3の内部のガスが温度降下した後のバッファタンク64の内部のガスのモル数である。
【0069】
式(b4)及び(b5)から、溶融タンクC3の内部のガスのモル数n10とバッファタンク64の内部のガスのモル数n20との合計モル数nは以下の式(b6)で与えられる。
n=P・Vbh/{R・(Tt-ΔT)}+P・Vbr/(R・Tr) ・・・(b6)
合計モル数nは、溶融タンクC3の内部のガスが温度降下する前及び後で同一とする。
【0070】
式(b3)及び(b6)から、温度降下した後の溶融タンクC3及びバッファタンク64の内部のガス圧Pは、以下の式(b7)の通りとなる。
P={Pt・Vbh/(R・Tt)+Pt・Vbr/(R・Tr)}/[Vbh/{R・(Tt-ΔT)}+Vbr/(R・Tr)] ・・・(b7)
【0071】
温度降下ΔTによるガス圧降下ΔPは、圧力調節器62の目標ガス圧Ptから式(b7)のガス圧Pを減算して以下の式(b8)のように求められる。
ΔP=Pt-{Pt・Vbh/(R・Tt)+Pt・Vbr/(R・Tr)}/[Vbh/{R・(Tt-ΔT)}+Vbr/(R・Tr)] ・・・(b8)
【0072】
そこで、ガス圧降下ΔPの許容値を設定し、ガス圧降下ΔPを許容値以下とするバッファタンク64の容積Vbrを計算することができる。式(b8)から、ガス圧降下ΔPを許容値以下とするバッファタンク64の容積Vbrは、溶融タンクC3の内部の温度降下ΔTに依存する。図9から、温度降下ΔTは割合ΔMsn/Msnに依存するので、ガス圧降下ΔPを許容値以下とするバッファタンク64の容積Vbrは割合ΔMsn/Msnに依存する。
【0073】
図11は、割合ΔMsn/Msnに応じたバッファタンク64の容積Vbrを示すグラフである。ガス圧降下ΔPを許容値以下とするバッファタンク64の容積Vbrは、以下の式で与えられる。
Vbr=4.2084×(ΔMsn/Msn)×100
【0074】
ここで、割合ΔMsn/Msnの好ましい範囲を0.33%以上、3.3%以下とすると、バッファタンク64の容積Vbrは、1.4リットル以上、14リットル以下が好ましい。また、バッファタンク64の容積Vbrは、溶融タンクC3の容積よりも大きいことが好ましい。割合ΔMsn/Msnの好ましい範囲を0.33%以上、3.3%以下とした理由は以下の通りである。割合ΔMsn/Msnが0.33%未満であると、頻繁に固体ターゲット物質27aを供給する必要があるため、固体ターゲット供給バルブVT2の寿命が短くなり得る。割合ΔMsn/Msnが3.3%より高いと、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の温度降下ΔTが大きくなるので、ターゲット27を構成する液滴の生成が不安定となり得る。
【0075】
3.5 作用
(1)第1の実施形態によれば、ターゲット供給システム261は、ロードロック室C2と、固体ターゲット供給管42と、圧力調節器62と、ガス圧供給管L0と、溶融タンクC3と、ノズル72と、バッファタンク64と、を含む。ロードロック室C2は、固体ターゲット物質27aを収容可能に構成されている。固体ターゲット供給管42は、ロードロック室C2に接続されている。圧力調節器62は、外部から供給されたガス圧を調節する。ガス圧供給管L0は、圧力調節器62に接続されている。溶融タンクC3は、固体ターゲット供給管42及びガス圧供給管L0の両方に接続され、ロードロック室C2から固体ターゲット供給管42を介して供給される固体ターゲット物質27aを溶融させて液体ターゲット物質を生成する。ノズル72は、圧力調節器62からガス圧供給管L0を介して溶融タンクC3に供給されるガス圧によって液体ターゲット物質を吐出する。バッファタンク64は、溶融タンクC3に固体ターゲット物質27aを供給する際に溶融タンクC3に連通してガス圧を供給する。
これによれば、溶融タンクC3に固体ターゲット物質27aが供給されたときに溶融タンクC3の内部のガスの温度が低下しても、溶融タンクC3に連通するバッファタンク64の内部のガスが溶融タンクC3に迅速に供給される。これにより、溶融タンクC3の内部のガス圧変動が抑制され得る。溶融タンクC3の内部のガス圧変動が抑制されることで、ターゲット27の速度Vが安定化し得る。
【0076】
(2)第1の実施形態によれば、バッファタンク64は、ノズル72が液体ターゲット物質を吐出するときの溶融タンクC3の内部のガスよりも、温度の低いガスを収容する。
これによれば、バッファタンク64は溶融タンクC3の温度まで加熱される必要がないので、エネルギーの消費が抑制され得る。
【0077】
(3)第1の実施形態によれば、圧力調節器62は、大気圧よりも高いガス圧を溶融タンクC3に供給する。また、バッファタンク64は、大気圧よりも高圧のガスを収容する。
これによれば、溶融タンクC3及びバッファタンク64の両方が大気圧よりも高圧のガスを収容するので、これらが連通することで溶融タンクC3の内部のガス圧変動が抑制され得る。
【0078】
(4)第1の実施形態によれば、圧力調節器62は、外部から圧力調節器62に供給されたガス圧よりも低いガス圧を溶融タンクC3に供給する。また、バッファタンク64は、外部から圧力調節器62に供給されたガス圧よりも低圧のガスを収容する。
これによれば、溶融タンクC3及びバッファタンク64の両方が外部から圧力調節器62に供給されたガス圧よりも低圧のガスを収容するので、これらが連通することで溶融タンクC3の内部のガス圧変動が抑制され得る。
【0079】
(5)第1の実施形態によれば、バッファタンク64は、溶融タンクC3よりも容積が大きい。
これによれば、溶融タンクC3のガス圧変動が十分に抑制され得る。
【0080】
(6)第1の実施形態によれば、バッファタンク64の容積は、1.4リットル以上14リットル以下の範囲内である。
これによれば、溶融タンクC3のガス圧変動が許容範囲内となり得る。
【0081】
(7)第1の実施形態によれば、バッファタンク64は、ガス圧供給管L0を介して溶融タンクC3に連通する。
これによれば、溶融タンクC3と圧力調節器62との接続を切り離すことと、溶融タンクC3とバッファタンク64との接続を切り離すことは、ガス圧供給管L0を途中で切り離すことで実現できる。従って、溶融タンクC3をメンテナンスするための工数を軽減し得る。
なお、本開示において、バッファタンク64は、固体ターゲット供給管42を介して溶融タンクC3に連通する場合に限定されない。例えば、ガス圧供給管L0が固体ターゲット供給管42を介さずに、直接、溶融タンクC3に接続されることで、バッファタンク64が溶融タンクC3に連通するようにしてもよい。
【0082】
(8)第1の実施形態によれば、バッファタンク64は、固体ターゲット供給管42を介して溶融タンクC3に連通する。
これによれば、固体ターゲット供給管42において断熱処理をすれば、溶融タンクC3とバッファタンク64との接続における別途の断熱処理は不要となり得る。従って、断熱のための構成を簡略化し得る。
なお、本開示において、バッファタンク64は、ガス圧供給管L0を介して溶融タンクC3に連通する場合に限定されない。例えば、バッファタンク64がガス圧供給管L0を介さずに、直接、固体ターゲット供給管42に接続されることで、バッファタンク64が溶融タンクC3に連通するようにしてもよい。
また、本開示において、バッファタンク64は、ガス圧供給管L0及び固体ターゲット供給管42のいずれをも介さずに、直接、溶融タンクC3に連通するようにしてもよい。
【0083】
(9)第1の実施形態によれば、固体ターゲット供給管42に固体ターゲット供給バルブVT2が配置されている。また、バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、固体ターゲット供給管42のうちの固体ターゲット供給バルブVT2から溶融タンクC3へ向かう固体ターゲット物質27aの供給経路において固体ターゲット供給管42に合流する。
これによれば、固体ターゲット物質27aを供給せず、固体ターゲット供給バルブVT2を閉じている状態でも、バッファタンク64と溶融タンクC3とを連通し、溶融タンクC3の内部のガス圧変動を抑制し得る。
【0084】
(10)第1の実施形態によれば、ガス圧供給管L0は、分岐部SPと、分岐部SPから溶融タンクC3へ向けてガス圧を供給する第1の配管L1と、分岐部SPからロードロック室C2へ向けてガス圧を供給する第2の配管L2と、圧力調節器62と分岐部SPとの間の共通配管L3と、を含む。また、第1及び第2の配管L1及びL2にそれぞれ第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2が配置される。バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、第1の配管L1のうちの第1のガス圧供給バルブV1から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路において、第1の配管L1に合流する。
これによれば、ロードロック室C2の内部を高圧に調整するために第1のガス圧供給バルブV1を閉めている状態でも(図7のS41~S43参照)、バッファタンク64と溶融タンクC3とを連通し、溶融タンクC3の内部のガス圧変動を抑制し得る。
その他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0085】
4.溶融タンクC3を取り外し可能なターゲット供給システム262
4.1 構成
図12は、第2の実施形態に係るターゲット供給システム262の構成を概略的に示す。ターゲット供給システム262は、第1の実施形態に係るターゲット供給システム261の構成に加えて、第3のガス圧供給バルブV3を含む。
【0086】
第1の実施形態と同様に、ガス圧供給管L0は、第1の配管L1、第2の配管L2、及び共通配管L3を含む。第1の配管L1には、第1のガス圧供給バルブV1が配置され、第2の配管L2には、第2のガス圧供給バルブV2が配置されている。また、バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、第1の配管L1のうちの第1のガス圧供給バルブV1から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路において第1の配管L1に合流している。
第2の実施形態において、第3のガス圧供給バルブV3は、第1の配管L1のうちのバッファタンク64からのガス圧の供給経路との合流位置から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路に配置されている。
【0087】
ターゲット供給システム262は、さらに、第1~第3の継手J1~J3を含む。
第1の継手J1は、第1の配管L1のうちの第3のガス圧供給バルブV3から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路に配置されている。第1の継手J1は、第1の配管L1の途中での切り離し及び結合を可能にしている。
第2の継手J2は、第2の配管L2のうちの第2のガス圧供給バルブV2からロードロック室C2へ向かうガス圧の供給経路に配置されている。第2の継手J2は、第2の配管L2の途中での切り離し及び結合を可能にしている。
第3の継手J3は、固体ターゲット供給管41のうちの計量器61から固体ターゲット供給バルブVT1へ向かう固体ターゲット物質27aの供給経路に配置されている。第3の継手J3は、固体ターゲット供給管41の途中での切り離し及び結合を可能にしている。
【0088】
4.2 動作
第1~第3の継手J1~J3によりそれぞれの配管を切り離すことで、溶融タンクC3及びロードロック室C2をまとめて取り外すことができる。このとき、第3のガス圧供給バルブV3を閉めておくことで、バッファタンク64の内部のガス圧を維持することができる。具体的な手順は以下の通りである。
【0089】
(a)ヒーター71の電源を止める。
(b)固体ターゲット供給バルブVT1、第2及び第3のガス圧供給バルブV2及びV3、バルブV5及びV6が閉められている状態で、固体ターゲット供給バルブVT2を開け、バルブV7を開ける。これによりロードロック室C2及び溶融タンクC3の内部が大気圧となる。
(c)第1~第3の継手J1~J3を緩める。
(d)溶融タンクC3及びロードロック室C2をまとめて取り外す。
【0090】
4.3 作用
(11)第2の実施形態によれば、バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、ガス圧供給管L0に合流する。また、ガス圧供給管L0のうちのバッファタンク64からのガス圧の供給経路との合流位置から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路に、第3のガス圧供給バルブV3が配置されている。
これによれば、第3のガス圧供給バルブV3を閉めておくことで、バッファタンク64の内部のガス圧を維持したまま溶融タンクC3を取り外しできる。従って、新しい溶融タンクC3を取り付けた後、バッファタンク64の内部へのガスの再充填が不要となり得る。
【0091】
(12)第2の実施形態によれば、ガス圧供給管L0は、分岐部SPと、分岐部SPから溶融タンクC3へ向けてガス圧を供給する第1の配管L1と、分岐部SPからロードロック室C2へ向けてガス圧を供給する第2の配管L2と、圧力調節器62と分岐部SPとの間の共通配管L3と、を含む。また、第1及び第2の配管L1及びL2にそれぞれ第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2が配置される。バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、第1の配管L1のうちの第1のガス圧供給バルブV1から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路において第1の配管L1に合流する。第1の配管L1のうちのバッファタンク64からのガス圧の供給経路との合流位置から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路に、第3のガス圧供給バルブV3が配置されている。
これによれば、ロードロック室C2の内部を高圧に調整するために第1のガス圧供給バルブV1を閉めている状態でも(図7のS41~S43参照)、バッファタンク64と溶融タンクC3とを連通し、溶融タンクC3の内部のガス圧変動を抑制し得る。
さらに、第3のガス圧供給バルブV3を閉めておくことで、バッファタンク64の内部のガス圧を維持したまま溶融タンクC3を取り外しできる。
【0092】
(13)第2の実施形態によれば、ターゲット供給システム262は、固体ターゲット物質27aを計量してロードロック室C2に供給する計量器61を備える。また、第1の配管L1のうちの第3のガス圧供給バルブV3から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路に第1の継手J1が配置される。第2の配管L2のうちの第2のガス圧供給バルブV2からロードロック室C2へ向かうガス圧の供給経路に第2の継手J2が配置される。計量器61からロードロック室C2へ向かう固体ターゲット物質27aの供給経路に第3の継手J3が配置される。
これによれば、溶融タンクC3とロードロック室C2とを一体として、ターゲット供給システム262から取り外しできる。
その他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0093】
5.バッファタンク64の配置のバリエーション
5.1 構成
図13は、第3の実施形態に係るターゲット供給システム263の構成を概略的に示す。ターゲット供給システム263は、バッファタンク64の配置の点で第1の実施形態に係るターゲット供給システム261と異なる。
【0094】
第1の実施形態と同様に、ガス圧供給管L0は、第1の配管L1、第2の配管L2、及び共通配管L3を含む。第1の配管L1には、第1のガス圧供給バルブV1が配置され、第2の配管L2には、第2のガス圧供給バルブV2が配置されている。
【0095】
第3の実施形態において、バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、次の(a)~(c)のいずれかにおいてガス圧供給管L0に合流する。
(a)第1の配管L1のうちの分岐部SPと第1のガス圧供給バルブV1との間
(b)第2の配管L2のうちの分岐部SPと第2のガス圧供給バルブV2との間
(c)共通配管L3
【0096】
ターゲット供給システム263は、さらに、第1~第3の継手J1~J3を含む。第1~第3の継手J1~J3については、第2の実施形態において説明したものと同様である。
【0097】
5.2 動作
第1~第3の継手J1~J3によりそれぞれの配管を切り離すことで、溶融タンクC3及びロードロック室C2をまとめて取り外すことができる。このとき、第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2を閉めておくことで、バッファタンク64の内部のガス圧を維持することができる。
【0098】
5.3 作用
(14)第3の実施形態によれば、ガス圧供給管L0は、分岐部SPと、分岐部SPから溶融タンクC3へ向けてガス圧を供給する第1の配管L1と、分岐部SPからロードロック室C2へ向けてガス圧を供給する第2の配管L2と、圧力調節器62と分岐部SPとの間の共通配管L3と、を含む。また、第1及び第2の配管L1及びL2にそれぞれ第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2が配置されている。バッファタンク64から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路は、以下のうちのいずれかにおいてガス圧供給管L0に合流する。
(a)第1の配管L1のうちの分岐部SPと第1のガス圧供給バルブV1との間
(b)第2の配管L2のうちの分岐部SPと第2のガス圧供給バルブV2との間
(c)共通配管L3
これによれば、溶融タンクC3から離れて余裕のあるスペースに、バッファタンク64を配置できる。
さらに、第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2を閉めておくことで、バッファタンク64の内部のガス圧を維持したまま溶融タンクC3を取り外しできる。
【0099】
(15)第3の実施形態によれば、ターゲット供給システム263は、固体ターゲット物質27aを計量してロードロック室C2に供給する計量器61を備える。また、第1の配管L1のうちの第1のガス圧供給バルブV1から溶融タンクC3へ向かうガス圧の供給経路に第1の継手J1が配置される。第2の配管L2のうちの第2のガス圧供給バルブV2からロードロック室C2へ向かうガス圧の供給経路に第2の継手J2が配置される。計量器61からロードロック室C2へ向かう固体ターゲット物質27aの供給経路に第3の継手J3が配置される。
これによれば、溶融タンクC3とロードロック室C2とを一体として、ターゲット供給システム263から取り外しできる。
その他の点については、第3の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0100】
6.溶融タンクC3の液面を検出するターゲット供給システム264
6.1 構成
図14は、第4の実施形態に係るターゲット供給システム264の構成を概略的に示す。ターゲット供給システム264は、センサ73を含む。センサ73は、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の液面位置を検出する。溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の液面位置が閾値未満になったことをセンサ73が検出した場合に、固体ターゲット物質27aの供給が行われる。
【0101】
ターゲット供給システム264は、ロードロック室C2に供給された固体ターゲット物質27aが固体ターゲット供給バルブVT2に到達することを抑制する調整機構66をさらに含む。
【0102】
図15及び図16の各々は、調整機構66及び固体ターゲット供給バルブVT2の構成を示し、それらの動作を図15及び図16の組み合わせで示す。
調整機構66は、受け板66aと、アクチュエータ66bと、を含む。受け板66aは、ロードロック室C2の下端付近に位置する。アクチュエータ66bは、受け板66aを移動させることにより、図15に示される第1の状態と、図16に示される第2の状態とに、調整機構66を切り替えられるように構成されている。
【0103】
第1の状態において、受け板66aは、ロードロック室C2から固体ターゲット供給管42への接続部分を塞ぐように配置される。これにより、固体ターゲット物質27aが固体ターゲット供給バルブVT2に向けて移動することが抑制される。
第2の状態において、受け板66aは、ロードロック室C2から固体ターゲット供給管42への接続部分から離れた位置に配置される。これにより、固体ターゲット物質27aが固体ターゲット供給バルブVT2に向けて移動することが許容される。
調整機構66は、通常は第1の状態とされ、固体ターゲット物質27aを固体ターゲット供給バルブVT2に向けて移動させるときに、一時的に第2の状態とされる。
【0104】
固体ターゲット供給バルブVT2は、例えば、ボール部V2aとボディ部V2bとを含むボールバルブで構成される。ボール部V2aがボディ部V2bの内部で矢印Rの向きに回転することにより、図15に示される閉状態と、図16に示される開状態とに切り替えられる。
【0105】
6.2 動作
図17は、第4の実施形態に係るターゲット供給システム264の動作手順を示す。
S11bにおいて、固体ターゲット供給バルブVT1及びVT2、第1及び第2のガス圧供給バルブV1及びV2、及びバルブV4~V7がすべて閉められている他、調整機構66が第1の状態にセットされている状態から動作がスタートする。
【0106】
S12において第1のガス圧供給バルブV1が開けられ、S13aにおいてバルブV4が開けられた後、S14bにおいて、溶融タンクC3の内部の液面が所定位置より低くなったことをセンサ73が検出したら、ターゲット供給プロセッサ60はS21に進んで固体ターゲット物質27aの供給を開始させる。
【0107】
S21~S43において、固体ターゲット物質27aを計量してロードロック室C2に供給し、ロードロック室C2の内部を高圧に調整する点は第1の実施形態と同様である。但し、ターゲット供給プロセッサ60は、センサ73の出力に基づいて、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の0.33%以上、3.3%以下の質量の固体ターゲット物質27aをロードロック室C2に供給するように計量器61を制御する。
【0108】
S51において固体ターゲット供給バルブVT2が開状態とされたとき、調整機構66は第1の状態(図15参照)にセットされているので、固体ターゲット物質27aはロードロック室C2の内部に留まったままとなる。
【0109】
S52bにおいて、ターゲット供給プロセッサ60は、調整機構66を第2の状態(図16参照)とする。これにより、固体ターゲット物質27aはロードロック室C2から固体ターゲット供給管42及び固体ターゲット供給バルブVT2を介して溶融タンクC3に供給される。固体ターゲット供給バルブVT2が開状態とされた後で調整機構66が第2の状態とされるので、固体ターゲット供給バルブVT2の損傷が抑制される。
【0110】
S53において、固体ターゲット供給バルブVT2が閉状態とされた後、S54bにおいて、ターゲット供給プロセッサ60は調整機構66を第1の状態とする。従って、S64bにおいてS14bに戻った後、再び固体ターゲット物質27aをロードロック室C2に供給するときも、固体ターゲット物質27aはロードロック室C2の内部にとどまる。なお、S61~S63は比較例と同様である。
【0111】
6.3 作用
(16)第4の実施形態によれば、ターゲット供給システム264は、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の液面を検出するセンサ73と、固体ターゲット物質27aを計量してロードロック室C2に供給する計量器61と、を備える。また、ターゲット供給システム264は、センサ73の出力に基づいて、固体ターゲット物質27aをロードロック室C2に供給するように計量器61を制御するターゲット供給プロセッサ60を備える。
これによれば、固体ターゲット物質27aの供給タイミング又は供給量を適切に制御し得る。
【0112】
(17)第4の実施形態によれば、ターゲット供給プロセッサ60は、センサ73の出力に基づいて、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の0.33%以上、3.3%以下の質量の固体ターゲット物質27aをロードロック室C2に供給するように計量器61を制御する。
これによれば、0.33%以上とすることで、固体ターゲット供給バルブVT2の使用頻度を低減して固体ターゲット供給バルブVT2の劣化を抑制し得る。3.3%以下とすることで、溶融タンクC3の内部の液体ターゲット物質の温度降下ΔTを抑制し、ターゲット27を構成する液滴の生成を安定化し得る。
その他の点については、第4の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0113】
7.その他
7.1 圧力調節器62
図18は、各実施形態において用いられる圧力調節器62の構成を概略的に示す。圧力調節器62は、圧力制御プロセッサ620と、バルブVa及びVbと、圧力計Pと、を含む。
【0114】
圧力制御プロセッサ620は、制御プログラムが記憶されたメモリ621と、制御プログラムを実行するCPU622と、を含む処理装置である。圧力制御プロセッサ620は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。
【0115】
ガスボンベG1と図示しない排気装置との間の配管にバルブVa及びVbが配置され、バルブVa及びVbの間に共通配管L3が接続されている。共通配管L3に圧力計Pが配置されている。
【0116】
バルブVa及びVbの両方を開けるとガスボンベG1から排気装置へガスが漏れていくが、バルブVaの開度とバルブVbの開度との関係に応じて共通配管L3に供給されるガス圧が変化する。圧力計Pによって検出されたガス圧に基づいて圧力制御プロセッサ620がバルブVa及びVbを制御することにより、共通配管L3に供給されるガス圧を調整することができる。
【0117】
7.2 EUV光利用装置6
図19は、EUV光生成システム11に接続された露光装置6aの構成を概略的に示す。
図19において、EUV光利用装置6(図1参照)としての露光装置6aは、マスク照射部608とワークピース照射部609とを含む。マスク照射部608は、EUV光生成システム11から入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部609は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0118】
図20は、EUV光生成システム11に接続された検査装置6bの構成を概略的に示す。
図20において、EUV光利用装置6(図1参照)としての検査装置6bは、照明光学系603と検出光学系606とを含む。照明光学系603は、EUV光生成システム11から入射したEUV光を反射して、マスクステージ604に配置されたマスク605を照射する。ここでいうマスク605はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系606は、照明されたマスク605からのEUV光を反射して検出器607の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器607はマスク605の画像を取得する。検出器607は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク605の画像により、マスク605の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0119】
7.3 補足
上述の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0120】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図20