(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120690
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】粉体量測定装置、粉体量測定方法、粉体供給装置、溶射装置、基板研磨装置および3次元プリンタ
(51)【国際特許分類】
B05B 7/14 20060101AFI20230823BHJP
C23C 4/134 20160101ALI20230823BHJP
B65G 27/10 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
B05B7/14
C23C4/134
B65G27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023673
(22)【出願日】2022-02-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】内藤 儀彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢也
【テーマコード(参考)】
3F037
4F033
4K031
【Fターム(参考)】
3F037BA01
4F033QA01
4F033QB05
4F033QG06
4F033QG13
4F033QG47
4F033QH02
4F033QH10
4F033QH11
4F033QK01X
4F033QK05
4F033QK15X
4F033QK18
4K031AB02
4K031DA04
4K031EA07
(57)【要約】
【課題】供給される粉体量を測定可能な粉体量測定装置および粉体量測定方法を提供すること、供給される粉体量を制御可能な粉体供給装置、ならびに、そのような粉体供給装置を有する溶射装置、基板研磨装置および3次元プリンタを提供すること。
【解決手段】粉体供給源から供給される導電性の粉体の帯電量を調整する帯電量調整部と、帯電量が調整された粉体の帯電量であって、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量に対応する帯電量を測定する帯電量測定部と、を備える粉体量測定装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体供給源から供給される導電性の粉体の帯電量を調整する帯電量調整部と、
帯電量が調整された粉体の帯電量であって、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量に対応する帯電量を測定する帯電量測定部と、を備える粉体量測定装置。
【請求項2】
前記帯電量調整部は、前記粉体の帯電量が所定範囲に収まるよう、前記粉体の帯電量を調整する、請求項1に記載の粉体量測定装置。
【請求項3】
前記所定範囲は、前記帯電量測定部による測定可能範囲に対応する、請求項2に記載の粉体量測定装置。
【請求項4】
前記帯電量調整部は、金属部材を有し、
粉体が前記金属部材に触れることによって粉体の帯電量が減少する、請求項1乃至3のいずれかに記載の粉体量測定装置。
【請求項5】
前記帯電量調整部は、可変抵抗素子および可変容量素子を有し、
前記金属部材は、前記可変抵抗素子を介して接地され、かつ、前記可変容量素子を介して接地される、請求項4に記載の粉体量測定装置。
【請求項6】
前記可変抵抗素子の抵抗値および前記可変容量素子の容量値は、前記粉体に応じて定められる、請求項5に記載の粉体量測定装置。
【請求項7】
導電性の粉体を供給する粉体供給源と、
前記粉体供給源から供給される粉体の帯電量を調整する帯電量調整部と、
帯電量が調整された粉体の帯電量を測定する帯電量測定部と、
前記帯電量測定部からの出力に基づいて、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量を制御する制御部と、を備える粉体供給装置。
【請求項8】
前記帯電量測定部からの出力は、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量に対応する、請求項7に記載の粉体供給装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記帯電量測定部からの出力に基づいて、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量が一定となるよう制御する、請求項7または8に記載の粉体供給装置。
【請求項10】
前記粉体供給源は、
前記粉体を収容したボールと、
前記ボールを振動させる振動子と、を有し、
前記制御部は、前記振動子の振動量を制御する、請求項7乃至9のいずれかに記載の粉体供給装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかに記載の粉体供給装置と、
第1空洞が設けられており、前記粉体供給装置からの粉体が前記第1空洞を通過する第1電極と、
第2空洞が設けられており、前記第1電極からの粉体が前記第2空洞を通過する第2電極と、を備え、
前記第1電極と前記第2電極との間に生じるプラズマにより粉体を溶射することによってターゲット上に成膜を行う溶射装置。
【請求項12】
請求項7乃至10のいずれかに記載の粉体供給装置と、
液体供給装置と、
前記粉体供給装置からの粉体と、前記液体供給装置からの液体と、を混合してスラリーを生成するスラリー混合機と、
研磨テーブルと、
生成されたスラリーを前記研磨テーブルに供給するノズルと、
研磨対象の基板を保持して回転させる基板保持部と、を備える基板研磨装置。
【請求項13】
請求項7乃至10のいずれかに記載の粉体供給装置と、
前記粉体供給装置からの粉体にレーザ光を照射するレーザ装置と、を備える3次元プリンタ。
【請求項14】
粉体供給源から供給される粉体の帯電量を調整するステップと、
帯電量が調整された粉体の帯電量であって、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量に対応する帯電量を測定するステップと、を含む粉体量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体量測定装置、粉体量測定方法、粉体供給装置、溶射装置、基板研磨装置および3次元プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉溶射装置は、銅などの金属粉体を液体化し、基板に膜を形成するものである。単位時間当たりに液体化する金属粉体の量がばらつくと、形成される膜に凹凸が生じてしまう。そのため、金属粉体の量をリアルタイムにその場で(すなわちin-situで)測定し、制御することが望まれる。なお、粉体量の測定および制御の必要性は金属粉溶射装置に限られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、供給される粉体量を測定可能な粉体量測定装置および粉体量測定方法を提供すること、供給される粉体量を制御可能な粉体供給装置、ならびに、そのような粉体供給装置を有する溶射装置、基板研磨装置および3次元プリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
粉体供給源から供給される導電性の粉体の帯電量を調整する帯電量調整部と、
帯電量が調整された粉体の帯電量であって、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量に対応する帯電量を測定する帯電量測定部と、を備える粉体量測定装置が提供される。
【0006】
前記帯電量調整部は、前記粉体の帯電量が所定範囲に収まるよう、前記粉体の帯電量を調整してもよい。
【0007】
前記所定範囲は、前記帯電量測定部による測定可能範囲に対応してもよい。
【0008】
前記帯電量調整部は、金属部材を有し、
粉体が前記金属部材に触れることによって粉体の帯電量が減少してもよい。
【0009】
前記帯電量調整部は、可変抵抗素子および可変容量素子を有し、
前記金属部材は、前記可変抵抗素子を介して接地され、かつ、前記可変容量素子を介して接地されてもよい。
【0010】
前記可変抵抗素子の抵抗値および前記可変容量素子の容量値は、前記粉体に応じて定められてもよい。
【0011】
本発明の一態様によれば、導電性の粉体を供給する粉体供給源と、
前記粉体供給源から供給される粉体の帯電量を調整する帯電量調整部と、
帯電量が調整された粉体の帯電量を測定する帯電量測定部と、
前記帯電量測定部からの出力に基づいて、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量を制御する制御部と、を備える粉体供給装置が提供される。
【0012】
前記帯電量測定部からの出力は、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量に対応してもよい。
【0013】
前記制御部は、前記帯電量測定部からの出力に基づいて、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量が一定となるよう制御してもよい。
【0014】
前記粉体供給源は、
前記粉体を収容したボールと、
前記ボールを振動させる振動子と、を有し、
前記制御部は、前記振動子の振動量を制御してもよい。
【0015】
本発明の一態様によれば、請求項7乃至10のいずれかに記載の粉体供給装置と、
第1空洞が設けられており、前記粉体供給装置からの粉体が前記第1空洞を通過する第1電極と、
第2空洞が設けられており、前記第1電極からの粉体が前記第2空洞を通過する第2電極と、を備え、
前記第1電極と前記第2電極との間に生じるプラズマにより粉体を溶射することによってターゲット上に成膜を行う溶射装置が提供される。
【0016】
本発明の一態様によれば、請求項7乃至10のいずれかに記載の粉体供給装置と、
液体供給装置と、
前記粉体供給装置からの粉体と、前記液体供給装置からの液体と、を混合してスラリーを生成するスラリー混合機と、
研磨テーブルと、
生成されたスラリーを前記研磨テーブルに供給するノズルと、
研磨対象の基板を保持して回転させる基板保持部と、を備える基板研磨装置が提供される。
【0017】
本発明の一態様によれば、請求項7乃至10のいずれかに記載の粉体供給装置と、
前記粉体供給装置からの粉体にレーザ光を照射するレーザ装置と、を備える3次元プリンタが提供される。
【0018】
本発明の一態様によれば、粉体供給源から供給される粉体の帯電量を調整するステップと、
帯電量が調整された粉体の帯電量であって、前記粉体供給源から供給される単位時間当たりの粉体量に対応する帯電量を測定するステップと、を含む粉体量測定方法。
が提供される。
【発明の効果】
【0019】
供給される粉体量を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る粉体量測定装置2を有する粉体供給装置100の概略構成図。
【
図2】センサ出力と粉体量との関係を模式的に示す図。
【
図4】第3実施形態に係る基板研磨装置の概略構成図。
【
図5】第4実施形態に係る3次元プリンタの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る粉体量測定装置2を有する粉体供給装置100の概略構成図である。粉体供給装置100は、粉体供給源1と、粉体量測定装置2と、制御部3とを備えている。この粉体供給装置100によれば、単位時間当たりに供給される粉体量を粉体量測定装置2によってin-situで測定できる。また、測定結果に基づき、供給される単位当たりの粉体量が所望の一定値となるよう、制御部3によって制御できる。
【0023】
粉体供給源1は粉体を供給する。本実施形態では、粉体の帯電量に基づいて粉体量を測定するため、供給される粉体は帯電可能な導電性の粉体(例えば銅粉)であるとする。粉体供給源1の具体的な構成例として、粉体供給源1は、ボール11と、仕切り板12と、振動子13と、ロート14と、筐体15と、粉体搬送ガス供給源16とを有する。
【0024】
ボール11は粉体を収容する。ボール11の底面には開口が形成されており、この開口に仕切り板12が配置される。振動子13は制御部3からの制御に応じて振動する。この振動がボール11に伝わることにより、ボール11内の粉体が開口からロート14に落下する。ロート14はボール11の開口からの粉体を粉体量測定装置2に導く。筐体15は、ボール11、仕切り板12、振動子13およびロート14を収容する。粉体搬送ガス供給源16は、粉体が円滑に流れるよう、気流用チューブを介して窒素ガスなどの粉体搬送ガスを筐体15内に供給する。
【0025】
ここで、仕切り板12は制御部3による制御に応じて可動であり、仕切り板12の位置によって粉体供給源1から単位時間当たりに供給される粉体量(以下、特に断らない限り、単に「粉体量」といった場合には単位時間当たりに供給される粉体量を意味することとする。)を調整できる。また、振動子13の振動量は制御部3による制御に応じて可変であり、振動量が大きいほど供給される粉体量が多くなる。
【0026】
このように、粉体供給源1は供給される粉体量を制御可能である。しかし、ボール11内に収容される粉体は10kg程度であるのに対し、供給される粉体量は毎分1g程度であるので、粉体量の厳密な制御は難しい。
【0027】
そこで、本実施形態では、粉体量を測定するための粉体量測定装置2が設けられる。この粉体量測定装置2は粉体供給源1からの粉体の帯電量を測定することによって粉体量を把握する。
【0028】
粉体量測定装置2は、帯電量測定部21として、粉体誘導路211、その少なくとも一部が金属部材(不図示)から構成される金属チューブ212、および、センサ213を有する。
【0029】
粉体誘導路211は粉体供給源1からの粉体を金属チューブ212に導く。粉体誘導路211の表面および粉体誘導路211と金属チューブ212との接続部(材)の表面は、例えばテフロン、塩ビ、ビニールその他一般的な絶縁性化学物質である。粉体が粉体誘導路211を流れる際、粉体と粉体誘導路211の表面との接触摩擦によって粉体は帯電する。
【0030】
金属チューブ212は、上端が粉体誘導路211に接続され、下端から供給対象へ粉体を供給する。また、金属チューブ212の金属部材にセンサ213が電気的に接続される。
【0031】
センサ213は金属チューブ212を流れる粉体の帯電量(粉体に帯電した電荷量)を電気信号に変換して出力する。具体的には、センサ213は、粉体が金属チューブ212の金属部材に接触したときに粉体に帯電した電荷を検知し、帯電量に対応した値の電気信号を制御部3に出力する。よって、センサ213の出力(以下、単に「センサ出力」という。)は粉体の帯電量に対応している。そして、粉体の供給量が多いほど帯電量も大きくなるから、粉体の帯電量は粉体量と対応している。
【0032】
このように、センサ出力と粉体の帯電量が対応しており、粉体の帯電量と粉体量が対応しているから、センサ出力は粉体量と対応している。
【0033】
図2は、センサ出力と粉体量との関係を模式的に示す図である。図示のように、粉体量とセンサ出力はほぼ比例する。このような関係を事前に較正直線として取得しておくことで、制御部3はセンサ出力に基づいて粉体量を把握できる。
【0034】
ここで、粉体の種類によって比例定数が異なる。例えば、粉体Bより粉体Aの方が高密度である場合、粉体量が共通であっても粉体Bの方が帯電しやすい。よって、粉体量は共通であっても、粉体Bに対するセンサ出力の方が大きくなる。
【0035】
そして、粉体の種類によってはセンサ213が検知可能な電荷を超えることがある(
図2の粉体C)。詳細には、供給量として想定されるのが1~6gであるのに対し、供給量が3gでセンサ出力が検知可能な最大値を超えている。この場合、粉体量が3g以上である場合に、センサ出力から粉体量を正確に把握できない。
【0036】
そこで、本実施形態では、
図1の粉体量測定装置2はセンサ213が接続される金属チューブ212と粉体供給源1との間に設けられた帯電量調整部22を有する。
【0037】
帯電量調整部22は粉体供給源1からの粉体の帯電量を調整する。そして、帯電量が調整された粉体の帯電量を帯電量測定部21のセンサ213が測定する。この粉体の帯電量が粉体量と対応している。
【0038】
ここで、帯電量調整部22は粉体の帯電量を減らすものであるが、どの程度減らすかを可変調整する。より具体的には、帯電量調整部22は、想定される供給量の範囲において、粉体の帯電量が所定範囲に収まるよう粉体の帯電量を調整する。この所定範囲とは、帯電量測定部21のセンサ213による測定(検知)可能範囲に対応する。詳細には、帯電量調整部22は、粉体の帯電量がセンサ213による検知可能な電荷を超えないよう、粉体の帯電量を減らす。
【0039】
以下、帯電量調整部22の具体的な構成例を述べる。
【0040】
帯電量調整部22は、その少なくとも一部が金属部材(不図示)から構成される金属チューブ221と、感度調整部222とを有する。
【0041】
金属チューブ221は粉体供給源1からの粉体を帯電量測定部21の粉体誘導路211に導く。帯電量が調整された粉体が粉体誘導路211にて再度帯電する。
【0042】
感度調整部222は可変抵抗素子Rおよび可変容量素子Cを有する。可変抵抗素子Rの一端は金属チューブ221の金属部材に電気的に接続され、他端は接地される。可変容量素子Cの一端は金属チューブ221の金属部材に電気的に接続され、他端は(必要に応じて別の可変抵抗素子(不図示)を介して)接地される。
【0043】
粉体が金属チューブ221の金属部材に触れることによって、粉体に帯電した電荷の一部が可変抵抗素子Rあるいは可変容量素子Cを介して接地へ流れ、消失する(すなわち、帯電量が減少する)。可変抵抗素子Rの抵抗値が小さいほど帯電した電荷の直流成分の消失量が大きい。また、可変容量素子Cの容量値が大きいほど帯電した電荷の交流成分の消失量が大きい。このように、可変抵抗素子Rの抵抗値および可変容量素子Cの容量値を調整することによって、帯電量を可変調整できる。
【0044】
例えば、
図2に示す粉体Cは帯電量が大きく、センサ出力が検知可能な最大値を超えている。よって、帯電量調整部22は粉体Cの帯電量を大きく減らす必要がある。そこで、可変抵抗素子Rの抵抗値を小さくし(感度を最大限下げるには帯電量調整部22を短絡させる)、可変容量素子Cの容量値を大きくする。これにより、センサ213の感度を下げることができる(
図2の破線参照)。また、積極的に電位を印可して粉体の帯電量をコントロールすることができる。可変抵抗素子Rや可変容量素子Cの接続では最大値を超えた感度を調整しきれない場合には、帯電量調整部22にプラスの電位を与え帯電量調整部22に接触した粉体から積極的に電荷を除去し感度を下げる。また、粉体の感度が足りない場合には帯電量調整部22にマイナスの電位を与え、帯電量調整部22に接触した粉体に積極的に電荷を与え、感度を上げることもできる。
【0045】
一方、
図2に示す粉体Aは帯電量が小さい。よって、帯電量調整部22は粉体Aの帯電量をあまり減らす必要がない。そこで、可変抵抗素子Rの抵抗値を大きくし、可変容量素子Cの容量値を小さくする。これにより、センサ213の感度を上げることができる。
【0046】
このように、供給する粉体(の種類)に応じて、適切な可変抵抗素子Rの抵抗値および可変容量素子Cの容量値を予め定めておけばよい。そして、供給する粉体(の種類)に応じて、ユーザまたは制御部3が可変抵抗素子Rの抵抗値および可変容量素子Cの容量値を設定する。
【0047】
なお、金属チューブ221を鉛直方向ではなく斜めに設置することで、粉体が金属チューブ221に触れる確率が高くなる。よって、金属チューブ221の設置角度によって帯電量を調整することもできる。また、金属チューブ221における粉体が接触し得る部分の面積が大きいほど(例えば、金属チューブ221が長いほど)、粉体が金属チューブ221に触れる確率が高くなる。よって、金属チューブ221の面積によって帯電量を調整することもできる。
【0048】
このように、粉体量測定装置2が帯電量調整部22および帯電量測定部21を有することで、粉体供給装置100は粉体量をリアルタイムに計測できる。
【0049】
そして、粉体供給装置100は制御部3を備えている。制御部3は、センサ出力から粉体量を把握し、粉体量に基づいて粉体供給源1から供給される粉体量を制御する。具体的には、制御部3はセンサ出力から把握される粉体量が所望の一定値となるよう粉体供給源1からの粉体量を制御する。
【0050】
なお、上述したように粉体量とセンサ出力は対応していることから、制御部3はセンサ出力に基づいて粉体供給源1から供給される粉体量を制御するとも言える。具体的には、制御部3はセンサ出力が所望の一定値となるよう粉体供給源1からの粉体量を制御するとも言える。
【0051】
粉体量制御の具体例として、制御部3は粉体供給源1における振動子13の振動量を制御する。より具体的には、粉体量が所望の値より大きいことをセンサ出力が示す場合、制御部3は振動子13の振動量が小さくなるよう制御する。一方、粉体量が所望の値より小さいことをセンサ出力が示す場合、制御部3は振動子13の振動量が大きくなるよう制御する。制御部3による制御はフィードバック制御でもよいしフィードフォワード制御でもよい。
【0052】
また、粉体量が大きいほど、粉体搬送ガス供給源16からのガス供給量を多くするのが望ましい。そのため、制御部3は粉体量の制御に応じてガス供給量を制御してもよい。
【0053】
このように、第1実施形態では、粉体供給装置100に粉体量測定装置2を設ける。そのため、粉体の供給量をリアルタイムで測定できる。
【0054】
また、粉体量測定装置2は、帯電量調整部22が粉体供給源1から供給される粉体の帯電量を調整した上で、帯電量測定部21が粉体の帯電量を測定する。そのため、粉体の帯電量が帯電量測定部21におけるセンサ213の測定可能範囲内に収まった状態でセンサ213が粉体の帯電量を測定でき、粉体の供給量を精度よく測定できる。
【0055】
そして、精度よく粉体の供給量を測定できることから、制御部3は精度よく粉体の供給量が一定になるよう制御できる。
【0056】
(第2実施形態)
次に述べる第2実施形態は、第1実施形態で述べた粉体供給装置100を溶射装置に適用するものである。より具体的には、粉体供給装置100から供給される導電性粉体をターゲット上に成膜する溶射装置に適用する。
【0057】
図3は、第2実施形態に係る溶射装置の概略構成図である。この溶射装置は、粉体供給装置100と、溶射ノズル30と、プラズマ発生支援ガス供給部40と、チャンバ50と、ホルダ60と、圧力調整用ガス供給部70と、排気用ポンプ80と、冷却風供給部90とを備え、チャンバ50内のホルダ60上に保持されたターゲットTに成膜を行う。
【0058】
粉体供給装置100は、その金属チューブ212(
図1)から粉体誘導路20に導電性粉体を供給する。この導電性粉体に由来する材料がターゲットT上に成膜される。一例として、導電性粉体は銅粉であり、ターゲットT上に銅薄膜が形成される。第1実施形態で述べたように、この粉体供給装置100は粉体の供給量を精度よく一定に保つことができる。
【0059】
溶射ノズル30は溶射ガンとも呼ばれ、導電性粉体を溶融してターゲットTに吹き付ける(溶射する)。溶射ノズル30は、筐体31と、カソード32と、アノード33とを有する。
【0060】
筐体31はカソード32およびアノード33を収容している。そして、粉体供給装置100からカソード32へ粉体を導く粉体誘導路20が筐体31の上面を貫通している。また、筐体31の下面には開口が設けられ、ホルダ60と対向している。
【0061】
カソード32は粉体供給装置100の下流側(下方)に配置される。カソード32は内部に空洞が形成されており、粉体供給装置100からの導電性粉体が粉体誘導路20を介して空洞を通過する。
【0062】
アノード33はカソード32の下流側(下方)においてカソード32から離間して配置される。アノード33は内部に空洞が形成されている。この空洞は、カソード32の空洞の下方に位置し、かつ、筐体31の下面の開口の上方に位置する。そして、カソード32からの導電性粉体がアノード33における空洞の内側を通過する。
【0063】
プラズマ発生支援ガス供給部40は使用目的に必要なプラズマを生成するガスであってArガス、ArとH2の混合ガス、Heガス、Xeガス、Neガス、N2ガスなどのプラズマ発生支援ガスを溶射ノズル30の筐体31内に供給する。
【0064】
チャンバ50は溶射ノズル30の下方に配置される。チャンバ50の上面には開口が設けられ、溶射ノズル30における筐体31の下面の開口に位置合わせされている。この開口の下方に、ターゲットTを保持するホルダ60が配置される。ホルダ60はXYスライダ61(ステージ)上に載置され、XYスライダ61はホルダ60を水平面内で移動させることができる。また、ホルダ60には熱電対62が設けられ、熱電対62によりXYスライダ61の温度(直接的、間接的にステージ上のサンプルの温度)を測定し、当該サンプルを熱によって破損させない様予め設定した温度になった場合、プラズマ溶射をいったん中断するためのコントロール信号として用いる。
【0065】
チャンバ50は溶融した導電性粉体をターゲットTに溶射する際の溶射環境を適切に制御すべく、圧力調整用ガス供給部70、排気用ポンプ80および冷却風供給部90が接続される。圧力調整用ガス供給部70はサンプルの酸化を防ぐための不活性気体であるArガス、Heガス、Neガス、N2ガスなどの圧力調整用ガスをチャンバ50内に供給し、チャンバ50内の圧力を一定値(例えば、300Torr)に維持する。排気用ポンプ80はチャンバ50内を真空引きする。冷却風供給部90は冷却風をチャンバ50内に配置された冷却プレート51に供給する。
【0066】
このような溶射装置において、溶射ノズル30の筐体31内にプラズマ発生支援ガスが供給された状態で、カソード32およびアノード33に高電位差が生じるよう電圧が印加される。これにより、カソード32とアノード33との間にアーク放電が生じる。アーク放電に起因してカソード32とアノード33との間にプラズマが生じ、その熱によって粉体供給装置100からの導電性粉体が溶融(液状化)する。溶融した導電性粉体(液体粉)がターゲットT上に吹き付けられ、成膜される。
【0067】
第1実施形態で述べた粉体供給装置100を用いることで、粉体供給量を一定に保つことができ、膜厚を一定にできる。
【0068】
(第3実施形態)
次に述べる第3実施形態は、第1実施形態で述べた粉体供給装置100を化学的研磨装置(Chemical Mechanical Polisher)などの基板研磨装置に適用するものである。より具体的には、粉体供給装置100から供給される導電性粉体を用いてスラリーを生成し、生成されたスラリーで基板を研磨する基板研磨装置に適用する。
【0069】
図4は、第3実施形態に係る基板研磨装置の概略構成図である。この基板研磨装置は、粉体供給装置100と、液体供給装置101と、スラリー混合機制御装置102と、スラリー混合機103と、研磨テーブル104と、ノズル105と、基板保持部106とを備えている。
【0070】
粉体供給装置100はセリアなどのスラリーの素となる粉体を供給する。液体供給装置101は純水などの液体を供給する。スラリー混合機制御装置102は、粉体供給装置100の制御部3(
図1)を制御して粉体供給量を制御したり、液体供給装置101からの液体供給量を制御したりする。スラリー混合機103は、粉体供給装置100からの粉体および液体供給装置101からの液体を受けてこれらを混合し、スラリーを生成する。
【0071】
研磨テーブル104は、その表面に研磨パッド104aが設けられており、下方に延びる支持軸(不図示)が回転されることによって回転する。ノズル105はスラリー混合機103によって生成されたスラリーを研磨パッド104a上に供給する。基板保持部106は、その下部に基板を保持し、上方に延びる支持軸106aが回転することによって基板を回転する。また、支持軸106aが下降することによって保持された基板が研磨パッド104aに接触する(押し付けられる)。
【0072】
スラリーが供給された研磨パッド104a上に、基板保持部106が保持した基板を接触させることによって基板が研磨される。
【0073】
(第4実施形態)
次に述べる第4実施形態は、第1実施形態で述べた粉体供給装置100を3次元プリンタに適用するものである。
【0074】
図5は、第4実施形態に係る3次元プリンタの概略構成図である。この3次元プリンタは、粉体供給装置100と、レーザ装置110と、XYステージ111と、Zステージ112とを備えている。
【0075】
粉体供給装置100は金属材料であるSUS630,SUS316L,SKD61(H13スチール)などを供給する。レーザ装置110は与えられた3次元モデルに基づいて粉体供給装置100から供給される金属材料にレーザ光を照射する。
【0076】
XYステージ111は水平面内で移動するステージである。Zステージ112はXYステージを鉛直方向に移動させる。XYステージ111およびZステージ112は3次元モデルに基づいて移動が制御される。
【0077】
このような構成により、金属材料製であり、3次元モデルに応じた形状の3次元オブジェクトが形成される。
【0078】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0079】
100 粉体供給装置
1 粉体供給源
11 ボール
12 仕切り板
13 振動子
14 ロート
15 筐体
16 粉体搬送ガス供給源
2 粉体量測定装置
21 帯電量測定部
211 粉体誘導路
212 金属チューブ
213 センサ
22 帯電量調整部
221 金属チューブ
222 感度調整部
R 可変抵抗素子
C 可変容量素子
3 制御部
20 粉体誘導路
30 溶射ノズル
31 筐体
32 カソード
33 アノード
40 プラズマ発生支援ガス供給部
50 チャンバ
51 冷却プレート
60 ホルダ
61 XYスライダ
62 熱電対
70 圧力調整用ガス供給部
80 排気用ポンプ
90 冷却風供給部
101 液体供給装置
102 スラリー混合機制御部
103 スラリー混合機
104 研磨テーブル
104a 研磨パッド
105 ノズル
106 基板保持部
106a 支持軸
110 レーザ装置
111 XYステージ
112 Zステージ