(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120716
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】画像形成装置、及びそのトナー固着防止方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
G03G15/08 340
G03G15/08 360
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023722
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】長澤 昂平
(72)【発明者】
【氏名】根本 栄治
(72)【発明者】
【氏名】駒井 邦敬
(72)【発明者】
【氏名】志田 春夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 憲和
(72)【発明者】
【氏名】添田 良久
【テーマコード(参考)】
2H077
【Fターム(参考)】
2H077AA01
2H077AA25
2H077AB02
2H077AB13
2H077AC02
2H077CA03
2H077DA18
2H077DA57
2H077GA02
2H077GA13
(57)【要約】
【課題】トナーを用いて画像を形成する画像形成装置において、トナーの固着を防止する構成を簡素化する。
【解決手段】トナー容器72とトナー像形成部42との間に配置されるトナー搬送路83Sと、トナー搬送モータ86によって回転され、トナー搬送路83Sに沿ってトナーGを搬送する搬送スクリュー85と、トナー搬送モータ86を制御する制御部と、を備え、搬送スクリュー85は、正方向PRに回転されるとトナーGを下流側に搬送し、逆方向NRに回転されるとトナーGを上流側に搬送し、制御部は、トナー搬送モータ86を駆動して搬送スクリュー85の回転方向を正方向PR、又は逆方向NRに切り替えて固着防止動作を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー収容手段と現像手段との間に配置されるトナー搬送路と、
駆動モータによって回転され、前記トナー搬送路に沿って前記トナーを搬送する搬送部材と、
前記駆動モータを制御する制御手段と、を備え、
前記搬送部材は、正方向に回転されると前記トナーを前記現像手段側に搬送し、逆方向に回転されると前記トナーを前記トナー収容手段側に搬送し、
前記制御手段は、前記駆動モータを駆動して前記搬送部材の回転方向を前記正方向、又は前記逆方向に切り替えて固着防止動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記駆動モータの停止時間を取得する構成を有し、取得した前記停止時間が判定基準時間以上であった場合に前記固着防止動作を実行させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
第1動作モードの設定期間中に前記駆動モータを駆動し、前記第1動作モードよりも消費電力が低い第2動作モードの設定期間中には前記駆動モータを駆動しない第1制御手段と、
前記第2動作モードの設定期間中に前記固着防止動作を実行させるか否かを判定し、前記固着防止動作を実行させると判定した場合には前記第1制御手段に前記駆動モータを駆動させる第2制御手段と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記固着防止動作の実行を通知する通知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー搬送路の冷却動作を行う冷却手段と、
画像形成装置の内部温度を測定する温度測定手段と、を備え、
前記制御手段は、前記内部温度が判定基準温度以上であった場合に、前記冷却手段に前記冷却動作を実行させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置の内部温度を測定する温度測定手段を備え、
前記制御手段は、前記内部温度に基づいて前記固着防止動作の実行間隔を決定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記固着防止動作における前記搬送部材の前記正方向への回転時間、及び前記逆方向への回転時間を、前記トナー搬送路の前記トナーを前記現像手段に供給するために必要な前記搬送部材の回転時間よりも短い時間にすることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記固着防止動作の開始時において前記搬送部材を前記逆方向に回転させることを特徴とする請求1乃至7の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
トナー収容手段と現像手段との間に配置されるトナー搬送路と、駆動モータによって回転され、前記トナー搬送路に沿って前記トナーを搬送する搬送部材と、を備えた画像形成装置のトナー固着防止方法であって、
前記搬送部材は、正方向に回転されると前記トナーを前記現像手段側に搬送し、逆方向に回転されると前記トナーを前記トナー収容手段側に搬送し、
前記駆動モータを駆動して前記搬送部材の回転方向を前記正方向、又は前記逆方向に切り替えて固着防止動作を実行することを特徴とする画像形成装置のトナー固着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及びそのトナー固着防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機等の電子写真方式を採用した画像形成装置では、トナーを用いて記録媒体上に画像を形成する。トナーが長期間に亘って放置されると、トナーがトナーの搬送路に固着する恐れがある。トナーが搬送路に固着してしまうとトナーの円滑な搬送が損なわれてしまうことから、トナーの搬送路への固着を防止する構成が知られている。
例えば、特許文献1には、画像形成ユニットの近傍に温度センサを設置し、温度センサの検知温度が規定温度以上であった場合にトナーカートリッジの内部で撹拌部材を回転させてトナーを撹拌する構成の画像形成装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載された画像形成装置では、トナーカートリッジの内部に専用の撹拌部材を設けていることから構成が複雑になってしまうという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、トナーの固着を防止する構成を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、トナー収容手段と現像手段との間に配置されるトナー搬送路と、駆動モータによって回転され、前記トナー搬送路に沿って前記トナーを搬送する搬送部材と、前記駆動モータを制御する制御手段と、を備え、前記搬送部材は、正方向に回転されると前記トナーを前記現像手段側に搬送し、逆方向に回転されると前記トナーを前記トナー収容手段側に搬送し、前記制御手段は、前記駆動モータを駆動して前記搬送部材の回転方向を前記正方向、又は前記逆方向に切り替えて固着防止動作を実行することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、トナーの固着を防止する構成の簡素化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す略図である。
【
図3】トナー像形成部の構成を説明する断面図である。
【
図6】トナー容器から排出されたトナーのトナー像形成部への供給を説明する略図である。
【
図7】トナー搬送路においてトナーの固着が開始された状態を説明する略図である。
【
図8】トナー搬送路においてトナーの凝集が進行した状態を説明する略図である。
【
図9】固着防止動作の開始時における状態を説明する略図である。
【
図10】固着防止動作においてトナーをトナー像形成部側に搬送する状態を説明する略図である。
【
図11】固着防止動作においてトナーをトナー容器側に搬送する状態を説明する略図である。
【
図12】通常モードにおける固着防止処理のフローチャートである。
【
図13】省電力モードにおける固着防止動作の実行間隔設定処理のフローチャートである。
【
図14】システム制御部による固着防止処理のフローチャートである。
【
図15】エンジン制御部による固着防止処理のフローチャートである。
【
図16】システム制御部による搬送路冷却処理のフローチャートである。
【
図17】エンジン制御部による搬送路冷却処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<画像形成装置1の概略>
本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。最初に、画像形成装置1の概略について説明をする。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す略図、
図2はトナー供給部80の構成を示す略図である。
【0008】
図1に示す画像形成装置1は、用紙P等の記録媒体の表面に画像を形成する画像形成部40を備えている。
図2に示すように、画像形成部40は、トナー容器72(トナー収容手段)とトナー像形成部42(現像手段)との間にトナー搬送路83Sを備えている。トナー搬送路83Sには、トナー搬送モータ86(駆動モータ)によって軸中心に回転され、トナー搬送路83Sに沿ってトナーを搬送する搬送スクリュー85(搬送部材)が設けられている。搬送スクリュー85は、トナー搬送路83S内のトナーをトナー像形成部42へ供給する際にも使用され、正方向PRに回転されることによりトナーを矢印FFで示す下流側(トナー像形成部42側)に搬送し、逆方向NRに回転されることによりトナーを矢印BCで示す上流側(トナー容器72側)に搬送する。
トナー搬送モータ86は、
図4に示す制御部100(制御手段)によって動作が制御される。制御部100は、トナーの固着防止動作を実行すると判定した場合にトナー搬送モータ86を駆動し、搬送スクリュー85の回転方向を正方向PR、又は逆方向NRに切り替える固着防止動作を実行する。
【0009】
トナー搬送路83S内のトナーは、搬送スクリュー85が正方向PRに回転されると下流側に搬送され、搬送スクリュー85が逆方向NRに回転されると上流側に搬送される。従って、トナーは、搬送スクリュー85の回転方向の切り替えに伴って搬送方向が切り替えられる。トナーの搬送方向が切り替えられることによってトナーの凝集が抑制され、トナーのトナー搬送路83Sへの固着が防止される。
この画像形成装置1では、トナー搬送路83S内のトナーをトナー像形成部42へ供給するための搬送スクリュー85によってトナーの固着防止動作が実行されるため、トナーの固着を防止する構成の簡素化が図れる。
【0010】
<画像形成装置1の詳細>
次に、画像形成装置1を詳細に説明する。
図1に例示するように、画像形成装置1は、原稿台11に載置された原稿を読取り機構12によって読み取り画像データを生成するスキャナ部10と、画像が形成される用紙P(シート状の記録媒体)を積層して収容し、且つ収容した用紙Pを一枚ずつ分離して供給する給紙部20と、給紙部20から供給された用紙Pを搬送する用紙搬送部30と、用紙搬送部30が搬送した用紙Pに対して画像データに基づく画像を形成する画像形成部40と、機内温度を検知する温度センサ51(温度測定手段、環境情報検知手段)と、機内湿度を検知する湿度センサ52(湿度測定手段、環境情報検知手段)と、外気を機内に流入させて機内温度(特に、トナー搬送路83Sの温度)を低下させる冷却ファン53(冷却手段,
図2を参照)と、各種の表示を行うと共に使用者による操作を受け付ける操作部60と、を備えている。
【0011】
操作部60は、
図4に例示するように、各種の表示を行う表示部61と、使用者による入力操作を受け付ける入力部62と、を備えている。表示部61は例えば液晶パネルであり、入力部62は例えばタッチパネルや操作ボタンである。
【0012】
給紙部20は、装置内の下部に収納されており、複数枚の用紙Pを積層した状態(用紙束の状態)で収容する給紙カセット21と、給紙モータによって駆動され、用紙束の最上部に位置する用紙Pを一枚ずつ繰り出す給紙ローラ22と、を備えている。
用紙搬送部30は、用紙Pの搬送経路上に間隔を空けて複数配置され、搬送モータによって駆動される搬送ローラ31と、用紙Pの搬送経路FPの終端部に配置され、排紙モータによって駆動される排紙ローラ32A,32B、32Cと、排紙ローラ32A,32B、32Cによって搬送経路FPの外に排出された用紙Pが積層状態で保持されるスタック部33A,33B,33Cと、を備えている。
【0013】
画像形成部40は、トナー容器72を着脱自在に収容するトナー容器収容部41と、トナー像を形成するトナー像形成部42と、
図3に示すように、レーザ光Lをトナー像形成部42の感光体ドラム91に照射して静電潜像を形成する露光部43と、トナー像形成部42が形成したトナー像が転写され、当該トナー像を用紙搬送部30が搬送する用紙Pに転写する中間転写ベルト44と、用紙Pに転写されたトナー像を当該用紙Pに定着させる定着部45と、を備えている。
【0014】
トナー容器72は、
図2に例示するように、一端が開放され、他端が塞がれた円筒形状の容器本体72aと、容器本体72aの開放端(一端)に設けられたトナーの排出口72bとを備えており、
図1に例示すように、トナーの色毎に設けられている。
本実施形態では、イエロー(Y)のトナーを収容したトナー容器72Y、シアン(C)のトナーを収容したトナー容器72C、マゼンタ(M)のトナーを収容したトナー容器72M、及びブラックのトナーを収容したトナー容器72Kが用意されている。従って、トナー容器収容部41は、各トナー容器72Y、72M、72C、72Kを個別に着脱自在に収容する。また、トナー容器収容部41は、各トナー容器72Y、72M、72C、72Kを軸中心に回転自在(矢印R方向に回転自在)に保持する構成を備えている。
各トナー容器72Y、72M、72C、72Kとトナー像形成部42との間には、各トナー容器72Y、72M、72C、72Kに貯留されたトナーを収容部とトナー像形成部42に供給するためのトナー供給部80(80Y、80M、80C、80K)が設けられている。なお、トナー供給部80については後述する。
【0015】
トナー像形成部42は、トナーの色毎に設けられている。本実施形態では、イエロー(Y)のトナー像を形成するトナー像形成部42Y、シアン(C)のトナー像を形成するトナー像形成部42C、マゼンタ(M)のトナー像を形成するトナー像形成部42M、及びブラックのトナー像を形成するトナー像形成部42Kが用意されている。なお、各トナー像形成部42Y、42M、42C、42Kの構成は共通であるため、トナー像形成部42として纏めて説明する。
図3はトナー像形成部42の構成を説明する断面図である。
図3に示すように、トナー像形成部42は、静電潜像を担持する感光体ドラム91と、感光体ドラム91の表面を一様に帯電させる帯電器92と、感光体ドラム91の表面に形成された静電潜像に対してトナー供給部80から供給されたトナーを付着させることによりトナー像を形成する現像器93と、感光体ドラム91に残存した未転写トナーを回収するクリーニング部94と、を備えている。
【0016】
感光体ドラム91は円筒形状のドラム本体91aの外周面に像担持体91bを形成したものであり、軸中心に回転(
図3中の矢印91R方向に回転)される。
帯電器92は、感光体ドラム91の外表面上の位置であって、露光部43からのレーザ光Lの照射位置よりも回転方向の手前に設けられている。従って、レーザ光Lは、帯電器92によって一様に帯電された像担持体91bの表面に照射される。レーザ光Lの照射によって、感光体ドラム91の外表面(像担持体91b)には静電潜像が形成される。
【0017】
現像器93は、感光体ドラム91に対向する現像ローラ93aと、現像ローラ93aに対向するドクターブレード93bと、トナー貯留部93c、93dと、トナー貯留部93c、93dの内部に配設された2つの搬送スクリュー93eと、を備えている。現像ローラ93aは、内部に固設されたマグネットや、マグネットの周囲を回転するスリーブ等によって構成される。
【0018】
上流側に位置するトナー貯留部93cが備える上面開口には、トナー供給部80の落下路形成部84が連通されている。従って、トナー供給部80から供給されたトナーGは、トナー貯留部93cに一旦貯留された後、搬送スクリュー93eによって下流側に位置するトナー貯留部93dに搬送される。トナー貯留部93dに搬送されたトナーは、現像ローラ93aの表面に担持される。ドクターブレード93bは、余剰なトナーGを掻き取ることにより、適正量のトナーGを現像ローラ93aの表面に担持させる。
現像ローラ93aの表面に担持されたトナーGは、静電潜像が形成された感光体ドラム91に転写される。転写されたトナーにより、感光体ドラム91の外表面にはトナー像が形成される。
【0019】
感光体ドラム91の外表面上の位置であって、現像ローラ93aよりも回転方向の奥側には、中間転写ベルト44を間に挟んで1次転写バイアスローラ46が配置されている。感光体ドラム91の外表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト44に達すると、1次転写バイアスローラ46の位置で中間転写ベルト44の表面に1次転写される。
図1に示すように、中間転写ベルト44に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラ対47の位置で用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pは、定着部45に搬送され、定着部45が備える定着ベルト及び加圧ローラによって熱と圧力とが加えられる。その結果、トナー像は、用紙Pに定着されてカラー画像になる。
カラー画像が形成された用紙Pは、搬送経路FPに沿って移動し、スタック部33A,33B,33Cに排出され、順次スタックされる。
【0020】
<トナー供給部80の詳細>
図2に示すように、トナー供給部80は、トナー容器72の排出口72bに連通された案内路81Sを形成する案内路形成部81と、案内路形成部81の下流端に連通されたサブホッパー82と、サブホッパー82に連通され、トナー搬送路83Sを形成する筒状の搬送路形成部83と、搬送路形成部83の下流端から連続して形成され、トナーを落下させる落下路84Sを形成する筒状の落下路形成部84と、サブホッパー82の内部空間82S、及び搬送路形成部83の内部に回転自在に配置された搬送スクリュー85と、搬送スクリュー85を回転させるトナー搬送モータ86と、を備えている。
【0021】
案内路形成部81は、例えば樹脂製の筒体によって作製されており、案内路形成部81の内部空間がトナーの案内路81Sである。トナー容器72の排出口72bは、案内路形成部81の上流部分に連通されており、且つ案内路81Sは下方向に延びている。従って、排出口72bから排出されたトナーは、案内路81Sに沿って流下してサブホッパー82の内部空間82Sに流入する。サブホッパー82は、上面の開口に案内路形成部81の下流端が連通されており、側面の開口に搬送路形成部83の上流端が連通されている。
搬送スクリュー85は、サブホッパー82の内部空間82Sから搬送路形成部83の内部空間(トナー搬送路83S)に亘って配置されており、正方向PRに回転されるとトナーを矢印FFで示す下流側に搬送し、逆方向NRに回転されるとトナーを矢印BCで示す上流側に搬送する。
【0022】
搬送スクリュー85は、トナー搬送モータ86に接続された回転軸85aと、回転軸85aと一体に設けられた螺旋羽根85bとを備えている。本実施形態において、トナー搬送路83Sは円形断面であり、螺旋羽根85bは、トナー搬送路83Sの直径と略同一(詳しくは、トナー搬送路83Sの直径よりもクリアランスの分だけ僅かに小径)であるが、トナー搬送路83S内のトナーを搬送できればこの構成に限定されない。
トナー搬送モータ86は、回転方向が正方向PRと逆方向NRとに切り替え可能な構成を有し、後述する制御部100(エンジン制御部110)によって動作が制御される。本実施形態では、トナー搬送モータ86の正方向PRの回転によって搬送スクリュー85も正方向PRに回転し、トナー搬送モータ86の逆方向NRの回転によって搬送スクリュー85も逆方向NRに回転する。
冷却ファン53は、外気を画像形成装置1の内部に導くことにより、案内路81Sの過度な温度上昇を抑制する。
図2の例では、冷却ファン53を搬送路形成部83の近傍に描いているが、冷却ファン53の位置は搬送路形成部83の近傍に限定されるものではない。冷却ファン53は、搬送路形成部83に外気を導くことができる位置に設けられていればよい。落下路形成部84は、搬送路形成部83の下流端とトナー貯留部93cとの間を連通する。
【0023】
以上の構成を備えたトナー供給部80は、トナー搬送モータ86によって搬送スクリュー85を正方向PRに回転させることにより、トナー容器72に貯留されたトナーをトナー像形成部42(現像器93)に供給する。また、トナー搬送モータ86によって搬送スクリュー85を逆方向NRに回転させることにより、トナー搬送路83S内のトナーを上流側BCに搬送することもできる。
【0024】
<画像形成装置1のハードウェア構成>
次に、画像形成装置1のハードウェア構成について説明する。
図4は、画像形成装置1のハードウェア構成図である。
図4に示すように、制御部100は、操作部60(入力部62)からの入力情報、温度センサ51からの温度の検知情報、及び湿度センサ52からの湿度の検知情報に基づいて、スキャナ部10、給紙部20、用紙搬送部30、画像形成部40、及び冷却ファン53の動作を制御する。
制御部100は、操作部60、温度センサ51、及び湿度センサ52と電気的に接続され、且つネットワークNWを介して外部の端末装置200に対して通知を実行可能なシステム制御部120(第2制御手段)と、スキャナ部10、給紙部20、用紙搬送部30、画像形成部40、及び冷却ファン53と電気的に接続され、且つ各部の動作を制御するエンジン制御部110(第1制御手段)と、を備えている。
【0025】
エンジン制御部110は、画像形成動作を実行可能な通常モード(第1動作モード)が設定されている期間中において、スキャナ部10、給紙部20、用紙搬送部30、画像形成部40、及び冷却ファン53を制御する。また、エンジン制御部110は、待機モードやスリープモード等の通常モードよりも消費電力の少ない省電力モード(第2動作モード)において、スキャナ部10、給紙部20、用紙搬送部30、画像形成部40、及び冷却ファン53の制御を行わない。
システム制御部120は、通常モードの設定期間中、及び省電力モードの設定期間中のそれぞれにおいて、操作部60からの入力情報や各センサ51,52からの検知情報を受け付ける。また、システム制御部120は、省電力モードから通常モードに動作モードを移行させること、及び省電力モードが設定されている期間においてエンジン制御部110を起動させることができる。
【0026】
エンジン制御部110は、エンジン制御部110の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)111と、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のコンピュータプログラムを格納するROM(Read Only Memory)112と、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU111が情報を処理する際の作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)113と、システム制御部120との通信を行うインタフェース(I/F)114と、を備えている。
同様に、システム制御部120も、CPU121と、ROM122と、RAM123と、I/F124と、を備えている。なお、各CPU111,121は、RTC(real-time clock)機能、すなわち計時機能を有している。
【0027】
<制御部100の機能ブロック>
図5は、制御部100の機能ブロック図である。
図5に示す機能ブロックは、エンジン制御部110、及びシステム制御部120のCPU111,121がROM112,122に記憶されたプログラムをRAM113,123に展開して実行することにより実現される。
エンジン制御部110は、スキャナ部10を制御して画像の読み取りを行う読取制御部110Aと、画像形成部40を制御して用紙P(記録媒体)に画像を形成させる画像形成制御部110Bと、給紙部20、及び用紙搬送部30を制御して用紙Pの供給、搬送、及び排出を行わせる給排紙制御部110Cと、トナー搬送モータ86の駆動を制御してトナー搬送路83S内のトナーの固着防止動作を行わせる固着防止制御部110Dと、冷却ファン53を駆動して機内温度を下げる冷却制御部110Eと、を備えている。
システム制御部120は、操作部60(入力部62)からの入力情報を取得する入力情報取得部120Aと、表示部61や端末装置200に対して情報の通知を制御する通知制御部120Bと、ネットワークNWとの間の通信を制御する通信制御部120Cと、画像形成装置1における使用履歴(最後に画像形成を行った時刻等)を取得する使用履歴取得部120Dと、温度センサ51や湿度センサ52からの検知信号に基づく機内温度や機内湿度を測定時間の情報と組にして環境情報(温度情報、湿度情報)としてRAM123に記憶させる環境情報取得部120Eと、トナー搬送路83S内のトナーの固着防止動作を実行するか否かを判定する固着判定部120Fと、を備えている。
【0028】
<トナー供給部80の動作>
次に、トナー供給部80の動作について説明する。
図6はトナー容器72(排出口72b)から排出されたトナーGのトナー像形成部42への供給を説明する略図、
図7はトナー搬送路83SにおいてトナーG’の固着が開始された状態を説明する略図、
図8はトナー搬送路83SにおいてトナーG’の凝集が進行した状態を説明する略図、
図9は固着防止動作の開始時における状態を説明する略図、
図10は固着防止動作においてトナーGをトナー像形成部42側に搬送する状態を説明する略図、
図11は固着防止動作においてトナーGをトナー容器72側に搬送する状態を説明する略図である。
【0029】
図6に符号Rで示すように、トナー容器収容部41がトナー容器72を軸中心に回転させることにより、トナー容器72の排出口72bからはトナーGが排出される。トナー容器72から排出されたトナーGは、案内路81Sを流下してサブホッパー82の内部空間82Sに到達する。サブホッパー82内のトナーGは、搬送スクリュー85の正方向PRへの回転によってトナー搬送路83Sを下流側に搬送される。本実施形態において、搬送スクリュー85は規定の一定速度で回転する。トナーGは、トナー搬送路83Sの下流端に達すると、落下路84Sを落下してトナー像形成部42(現像器93)に流入する。
図7に示すように、画像形成装置1が一定期間に亘って放置されると、一部のトナーG’がトナー搬送路83Sに固着する場合がある。
図8に示すように、トナー搬送路83Sに固着したトナーG’にはトナー搬送路83S内の他のトナーGが凝集し易いため、トナー搬送路83内におけるトナーGの搬送に伴ってトナーG’は次第に成長する。
【0030】
固着したトナーG’が過度に成長してしまうと、トナー搬送モータ86に駆動信号を供給しても搬送スクリュー85が回転できなくなることから、トナー搬送モータ86が損傷してしまう恐れがある。そこで、制御部100は、トナー固着判定条件を充足している場合にはトナーGが固着する恐れがあるとして、固着防止動作を実行する。
トナー固着判定条件には、トナー搬送モータ86の停止時間を使用することができる。たとえば、制御部100(使用履歴取得部120D、固着判定部120F)は、トナー搬送モータ86の停止時間を取得し、トナー搬送モータ86の停止時間が判定基準時間以上であった場合にトナー固着判定条件を充足していると判定する。
【0031】
図9に示すように、固着防止動作では、最初に制御部100がトナー搬送モータ86を駆動し、搬送スクリュー85を逆方向NRに回転させる。このとき、トナー容器72の回転は停止させ、トナー容器72からトナーGが排出されないようにする。また、制御部100は、固着防止動作の実行期間中に亘って冷却ファン53を駆動し、機内に流入した外気FLによって機内温度を低下させる。これにより、搬送路内のトナーGが溶融され難くなり、トナーGの固着が抑制される。
【0032】
搬送スクリュー85の逆回転に伴い、トナー搬送路83S内のトナーGが上流側(トナー容器72側)に移動する。固着防止動作の最初にトナー搬送路83S内のトナーGを上流側に移動させると、トナー搬送路83S内に固着したトナーG’をさらに成長させてしまう不都合が抑制される。
搬送スクリュー85の逆回転時間は、トナー搬送路83Sに排出されたトナーGをトナー像形成部42に供給するために必要な回転時間(トナーGの供給動作時間)よりも短い時間に定められる。搬送スクリュー85の逆回転時間をトナーGの供給動作時間よりも短い時間に定めることにより、固着防止動作の実行に伴ってトナー搬送路83Sの上流側部分やサブホッパー82の内部空間82SにトナーGが溜まりすぎてしまう不都合を抑制できる。
【0033】
図10に示すように、制御部100は、搬送スクリュー85の逆回転を終えた後、トナー搬送モータ86を駆動して搬送スクリュー85を正方向PRに回転させる。搬送スクリュー85の正回転に伴い、トナー搬送路83S内のトナーGが下流側(トナー像形成部42側)に移動する。搬送スクリュー85の正回転時間もまたトナーGの供給動作時間よりも短い時間に定められる。これにより、固着防止動作の実行に伴ってトナー搬送路83Sの下流側部分にトナーGが溜まりすぎてしまう不都合を抑制できる。
以降は、搬送スクリュー85の逆回転(
図11を参照)と正回転(
図10を参照)とが、固着防止動作の終了条件が成立するまで繰り返し実行される。搬送スクリュー85の逆回転と正回転とが繰り返されることにより、固着したトナーG’は搬送スクリュー85の螺旋羽根85bによって削られ、個々のトナー粒子にほぐされる。その結果、トナー搬送路83SにおけるトナーGの固着が防止され、搬送スクリュー85の破損が予防できる。
固着防止動作の終了条件は適宜に定めることができる。例えば、終了条件は、搬送スクリュー85の逆回転と正回転の繰り返し回数に定めることができる。また、終了条件を、固着防止動作の実行時間に定めてもよい。
【0034】
また、制御部100(通知制御部120B)は、固着防止動作の実行に伴い、表示部61に固着防止動作が実行された旨を通知し、予め登録された通知先(端末装置200,
図4を参照)があれば、当該通知先に固着防止動作が実行された旨を通知する。これにより、通知を受けた者は、清掃やメンテナンスといった対応が行える。
【0035】
<通常モードにおける固着防止処理>
以下、制御部100によって実行される固着防止処理について説明する。最初に、通常モード(画像形成動作を実行可能な動作モード)における固着防止処理について説明する。
図12は通常モードにおける固着防止処理のフローチャートである。この固着防止処理は、エンジン制御部110、及びシステム制御部120のCPU111,121がROM112,122に記憶されたプログラムをRAM113,123に展開して実行することにより実現される。
制御部100(使用履歴取得部120D)は、トナー搬送モータ86の最後の動作が終了してからの経過時間を停止時間として取得する(S1)。トナー搬送モータ86の停止時間は、例えばシステム制御部120のCPU121のRTC機能に基づいて取得されるが、エンジン制御部110のCPU111のRTC機能に基づいて取得してもよい。
【0036】
制御部100(固着判定部120F)は、トナー固着判定条件を充足しているか否かを判定する(S2)。例えば、制御部100は、ステップS1で取得したトナー搬送モータ86の停止時間が判定基準時間以上であった場合にトナー固着判定条件を充足していると判定する(S2,Yes)。一方、制御部100は、トナー搬送モータ86の停止時間が判定基準時間未満であった場合にトナー固着判定条件を充足していないと判定する(S2,No)。
制御部100は、トナー固着判定条件を充足していないと判定した場合には、現周期の処理を終了して次周期の処理に移行する。従って、上述したステップS1の処理では、トナー搬送モータ86の停止時間が定期的に取得される。
【0037】
制御部100(固着防止制御部110D)は、トナー固着判定条件を充足していると判定した後、トナー固着防止動作を実行させる(S3)。前述したように、制御部100は、トナー固着防止動作の開始時に、搬送スクリュー85を逆方向NRに回転させ、その後、搬送スクリュー85を逆方向NRに回転させる。その後、制御部100は、搬送スクリュー85の回転方向を正方向PR、又は逆方向NRに切り替える。このトナー固着防止動作を実行することにより、トナー搬送路83SにトナーGが固着してしまう不都合が抑制される。
制御部100は、トナー固着防止動作の実行中に亘ってトナー固着防止動作の終了条件が成立したか否かを判定する(S4)。前述したように、終了条件は、搬送スクリュー85の逆回転と正回転の繰り返し回数や固着防止動作の実行時間等、適宜に定めることができる。制御部100は、終了条件が成立していない場合(S4,No)にはトナー固着防止動作を継続し(S3)、終了条件が成立した場合(S4,Yes)にはトナー固着防止動作を終了させる(S5)。
【0038】
<省電力モードにおける固着防止処理>
次に、省電力モード(待機モードやスリープモード等)における固着防止処理について説明する。
図13は省電力モードにおける固着防止動作の実行間隔設定処理のフローチャート、
図14はシステム制御部120による固着防止処理のフローチャート、
図15はエンジン制御部110による固着防止処理のフローチャート、
図16はシステム制御部120による搬送路冷却処理のフローチャート、
図17はエンジン制御部110による搬送路冷却処理のフローチャートである。これらの各処理は、エンジン制御部110、及びシステム制御部120のCPU111,121がROM112,122に記憶されたプログラムをRAM113,123に展開して実行することにより実現される。
省電力モードにおいて、システム制御部120(固着判定部120F)は、トナーGの固着防止動作の実行間隔を設定し、固着防止動作の実行タイミングが到来したら省電力モードを解除させ、エンジン制御部110を起動して固着防止動作を実行させる。エンジン制御部110は、固着防止動作を実行し、その後、省電力モードに移行する。
【0039】
まず、システム制御部120による固着防止動作の実行間隔設定処理について説明する。この実行間隔設定処理において、温度T1℃は温度T2℃、及び温度T3℃よりも低く、温度T2は温度T3℃よりも低い。そして、実行間隔Xh1は実行間隔Xh2、及び実行間隔Xh3よりも長く、実行間隔Xh2は実行間隔Xh3よりも長い。
図13に示すように、システム制御部120(固着判定部120F)は、固着防止動作の実行間隔の更新タイミングが到来したか否かを判定する(S11)。更新タイミングは予め定められており、ROM122、又はRAM123に記憶されている。システム制御部120は、更新タイミングが到来していない場合には(S11,No)、現周期の処理を終了して次周期の処理に移行する。従って、上述したステップS11の処理では、更新タイミングが到来したか否かが定期的に判定される。
【0040】
システム制御部120は、更新タイミングが到来したと判定した場合には(S11,Yes)、温度センサ51からの検知信号に基づいて機内温度を取得する(S12)。続いて、システム制御部120は、取得した機内温度が温度T1℃以下であるか否かを判定し(S13)、温度T1℃以下であった場合には(S13,Yes)、固着防止動作の実行間隔を最も長いX1hに設定し(S14)、現周期の処理を終了する。
システム制御部120は、取得した機内温度が温度T1℃以下でなかった場合には(S13,No)、機内温度が温度T2℃以下であるか否かを判定する(S15)。システム制御部120は、機内温度が温度T2℃以下であった場合には(S15,Yes)、固着防止動作の実行間隔を2番目に長いX2hに設定し(S16)、現周期の処理を終了する。
システム制御部120は、取得した機内温度が温度T2℃以下でなかった場合には(S15,No)、固着防止動作の実行間隔を最も短いX3hに設定し(S17)、現周期の処理を終了する。
【0041】
以上の実行間隔設定処理を行うことにより、固着防止動作の実行間隔が適正化される。例えば、機内温度が高いほどに、固着防止動作の実行間隔が短く設定される。
【0042】
次に、固着防止処理について説明する。先に、システム制御部120の固着防止処理について説明する。
図14に示すように、システム制御部120は、省電力モードが設定されているか否かを判定し(S21)、省電力モードが設定されていないと判定した場合には(S21,No)、この処理を終了して他の処理を実行する。そして、システム制御部120は、次周期の開始タイミングにおいて、ステップS21の処理を実行する。
システム制御部120(使用履歴取得部120D)は、省電力モードが設定されていると判定した場合に(S21,Yes)、トナー搬送モータ86の最後の動作が終了してからの経過時間を停止時間として取得する(S22)。システム制御部120(固着判定部120F)は、固着防止動作の実行タイミングが到来したか否かを判定する(S23)。例えば、システム制御部120は、ステップS22で取得したトナー搬送モータ86の停止時間と上述した実行間隔設定処理で設定された実行間隔とに基づいて、固着防止動作の実行タイミングが到来したか否かを判定する。
【0043】
システム制御部120は、固着防止動作の実行タイミングが到来していないと判定した場合には(S23,No)、現周期の処理を終了する。システム制御部120は、固着防止動作の実行タイミングが到来したと判定した場合には(S23,Yes)、エンジン制御部110を起動し(S24)、その後、省電力モードが解除されたタイミング(通常モードに移行したタイミング)で固着防止動作の実行命令をエンジン制御部110に送信する(S25)。
次に、システム制御部120(通知制御部120B)は、トナー搬送路83SにおいてトナーGの固着が懸念される旨の通知する通知処理を行う(S26)。通知処理は、例えば操作部60(表示部61)にメッセージを表示させる処理や、外部の端末装置200に対してメッセージを送信する処理であるが、トナーGの固着が懸念される旨を通知できれば他の処理であってもよい。
次に、システム制御部120は、エンジン制御部110からの動作完了情報を待ち受け(S27)、動作完了情報を受信した場合に(S27,Yes)、一連の処理を終了する。
【0044】
次に、エンジン制御部110の固着防止処理について説明する。この固着防止処理は、システム制御部120によるエンジン制御部110の起動処理(S24)に伴って開始される。
図15に示すように、エンジン制御部110は、省電力モードを解除して通常モードを設定し(S31)、システム制御部120からの固着防止動作の実行命令を待ち受ける(S32)。なお、本実施形態では、エンジン制御部110が通常モードを設定しているが、システム制御部120が通常モードを設定してもよい。
エンジン制御部110は、固着防止動作の実行命令を受信すると(S32,Yes)、冷却ファン53によるトナー搬送路83Sの冷却を実行させ(S33)、且つ搬送スクリュー85を回転駆動してトナーGの固着防止動作を実行させる(S34)。
【0045】
エンジン制御部110は、固着防止動作の終了条件が成立したか否かを判定し(S35)、終了条件が成立していないと判定した場合には(S35,No)、トナー搬送路83Sの冷却動作(S33)と固着防止動作(S34)とを継続させ、終了条件が成立したと判定した場合には(S35,Yes)、トナー搬送路83Sの冷却動作と固着防止動作とを終了させる(S36)。
続いてエンジン制御部110は、動作完了報告をシステム制御部120に送信し(S37)、省電力モードに移行させて(S38)、一連の処理を終了する。
【0046】
以上の固着防止処理を行うことにより、省電力モードが設定されていても、固着防止動作を実行することができる。
【0047】
<省電力モードにおける搬送路冷却処理>
次に、搬送路冷却処理について説明する。搬送路冷却処理は、機内温度を定期的に取得し、機内温度が規定温度以上であったときに冷却ファン53を駆動し、トナー搬送路83Sを冷却する処理である。
先に、システム制御部120の搬送路冷却処理について説明する。
図16に示すように、システム制御部120は、省電力モードが設定されているか否かを判定し(S41)、省電力モードが設定されていないと判定した場合には(S41,No)、この処理を終了して他の処理を実行する。そして、システム制御部120は、次周期の開始タイミングにおいて、ステップS41の処理を実行する。
システム制御部120は、省電力モードが設定されていると判定した場合には(S41,Yes)、機内温度の取得タイミングが到来したか否かを判定する(S42)。取得タイミングは予め定められており、ROM122、又はRAM123に記憶されている。システム制御部120は、取得タイミングが到来していないと判定した場合には(S42,No)、現周期の処理を終了する。
【0048】
システム制御部120は、取得タイミングが到来したと判定した場合に(S42,Yes)、温度センサ51からの検知信号に基づいて機内温度を取得し(S43)、取得した機内温度が規定温度以上であるか否かを判定する(S44)。ステップS44の処理における規定温度は、トナー搬送路83Sの冷却を実行するか否かを判定するための温度であり、ROM122、又はRAM123に記憶されている。システム制御部120は、機内温度が規定温度未満であった場合には(S44,No)、現周期の処理を終了する。
システム制御部120は、機内温度が規定温度以上であった場合には(S44,Yes)、エンジン制御部110を起動し(S45)、その後、省電力モードが解除されたタイミング(通常モードに移行したタイミング)で搬送路冷却動作の実行命令をエンジン制御部110に送信する(S46)。
次に、システム制御部120は、エンジン制御部110からの動作完了情報を待ち受け(S47)、動作完了情報を受信した場合に(S47,Yes)、一連の処理を終了する。
【0049】
次に、エンジン制御部110の搬送路冷却処理について説明する。この固着防止処理は、システム制御部120によるエンジン制御部110の起動処理(S45)に伴って開始される。
図17に示すように、エンジン制御部110は、省電力モードを解除して通常モードを設定し(S51)、システム制御部120からの搬送路冷却動作の実行命令を待ち受ける(S52)。なお、本実施形態では、エンジン制御部110が通常モードを設定しているが、システム制御部120が通常モードを設定してもよい。
エンジン制御部110は、搬送路冷却動作の実行命令を受信すると(S52,Yes)、冷却ファン53によるトナー搬送路83Sの冷却を実行させる(S53)。
【0050】
エンジン制御部110は、搬送路冷却動作の終了条件が成立したか否かを判定する(S54)。終了条件は適宜に定めることができるが、例えば予め定められた期間に亘って冷却ファン53を駆動させた場合や、機内温度が上述した規定温度未満まで低下した場合が挙げられる。
エンジン制御部110は、終了条件が成立していないと判定した場合には(S54,No)、トナー搬送路83Sの冷却動作(S53)を継続させ、終了条件が成立したと判定した場合には(S54,Yes)、トナー搬送路83Sの冷却動作を終了させる(S55)。
続いてエンジン制御部110は、動作完了報告をシステム制御部120に送信し(S56)、省電力モードに移行させて(S57)、一連の処理を終了する。
【0051】
以上の搬送路冷却処理を行うことにより、省電力モードが設定されていても、トナー搬送路83Sが適宜に冷却されてトナーGの固着を抑制することができる。
【0052】
<変形例について>
前述した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によっても実現することが可能である。ここで、「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含む。
【0053】
前述の実施形態において、制御部100(固着判定部120F)は、トナー搬送モータ86の停止時間が判定基準時間以上であった場合(S2,Yes)や、固着防止動作の実行タイミングが到来した場合(S23,Yes)に、固着防止動作を実行させると判定していたが、これらの構成に限定されない。
【0054】
例えば、制御部100(固着判定部120F)は、トナー搬送モータ86に供給する駆動信号(電流値やパルス幅)に基づいて搬送スクリュー85の回転トルクを検知し、回転トルクが規定値以上であった場合に固着防止動作を実行すると判定してもよい。
同様に、制御部100(固着判定部120F)は、搬送スクリュー85の回転速度をエンコーダ等によって検知し、搬送スクリュー85の回転速度とトナー搬送モータ86に供給する駆動信号とに基づき、固着防止動作の実行要否を判定してもよい。
例えば、検知された搬送スクリュー85の回転速度と駆動信号に対応する設計上の回転速度とを比較し、検知された回転速度が設計上の回転速度と同程度であれば固着防止動作は実行不要と判定し、過度に遅ければ(例えば、判定基準速度未満であれば)固着防止動作を実行すると判定してもよい。
【0055】
また、前述の実施形態において、システム制御部120(固着判定部120F)は、機内温度に基づいて固着防止動作の実行間隔を設定していたが、この構成に限定されない。例えば、システム制御部120(固着判定部120F)は、機内温度と機内湿度の組(即ち環境情報)とトナー搬送モータ86の停止時間とに基づいて、固着防止動作の実行間隔を設定してもよい。
【0056】
前述の実施形態において、省電力モードとして待機モードとスリープモードとを例示したが、省電力モードはこれらの動作モードに限定されない。省電力モードは、画像形成動作を実行可能な通常モードよりも電力消費が少なく、且つエンジン制御部110によってトナー搬送モータ86が駆動されない動作モードであればよい。
【0057】
前述の実施形態において、搬送部材として搬送スクリュー85を例示したが、搬送部材は搬送スクリュー85に限定されない。例えば、螺旋羽根85bに代えて、複数枚の羽根部材を備えたプロペラを用いてもよい。
【0058】
前述の実施形態において、トナー収容手段としてトナー容器72を例示したが、トナー収容手段はトナー容器72に限定されない。収容したトナーGをトナー搬送路83Sに排出できる構成を備えていればよい。
【0059】
前述の実施形態において、画像が形成される記録媒体として用紙Pを例示したが、記録媒体は用紙Pに限定されない。例えば、はがき、封筒、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、及びOHPフィルム等の各種シートであってもよい。
【0060】
[本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ]
<第一の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1は、トナー容器72(トナー収容手段)とトナー像形成部42(現像手段)との間に配置されるトナー搬送路83Sと、トナー搬送モータ86(駆動モータ)によって回転され、トナー搬送路83Sに沿ってトナーGを搬送する搬送スクリュー85(搬送部材)と、トナー搬送モータ86を制御する制御部100(制御手段)と、を備え、搬送スクリュー85は、正方向PRに回転されるとトナーGを下流側(トナー像形成部42側)に搬送し、逆方向NRに回転されるとトナーGを上流側(トナー容器72側)に搬送し、制御部100は、トナー搬送モータ86を駆動して搬送スクリュー85の回転方向を正方向PR、又は逆方向NRに切り替えて固着防止動作を実行することを特徴とする。
本態様に係る画像形成装置1によれば、トナー搬送路83S内のトナーGをトナー像形成部42へ供給するための搬送スクリュー85によってトナーGの固着防止動作が実行されるため、トナーGの固着を防止する構成の簡素化が図れる。
【0061】
<第二の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1において、制御部100は、トナー搬送モータ86の停止時間を取得する構成を有し(使用履歴取得部120D)、取得した停止時間が判定基準時間以上であった場合に(S2,Yes)、固着防止動作を実行させることを特徴とする。
本態様に係る画像形成装置1によれば、トナー搬送モータ86の停止時間に基づいてトナーGがトナー搬送路83Sへの固着してしまう不都合を防止できる。
【0062】
<第三の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1において、制御部100は、画像形成動作を実行可能な通常モード(第1動作モード)の設定期間中にトナー搬送モータ86を駆動し、通常モードよりも消費電力が低い省電力モード(第2動作モード)の設定期間中にはトナー搬送モータ86を駆動しないエンジン制御部110(第1制御手段)と、省電力モードの設定期間中に固着防止動作を実行させるか否かを判定し(S23)、固着防止動作を実行させると判定した場合にはエンジン制御部110にトナー搬送モータ86を駆動させるシステム制御部120(S24-S25,第2制御手段)と、を備えたことを特徴とする。
本態様に係る画像形成装置1によれば、省電力モードにおいても固着防止動作を実行することができる。
【0063】
<第四の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1において、固着防止動作の実行を通知する通知制御部120B(通知手段)を備えたことを特徴とする。
本態様に係る画像形成装置1によれば、固着防止動作の実行を通知することができる。
【0064】
<第五の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1において、トナー搬送路83Sの冷却動作を行う冷却ファン53(冷却手段)と、画像形成装置1の機内温度(内部温度)を測定する温度センサ51(温度測定手段)と、を備え、制御部100は、機内温度が判定基準温度以上であった場合に、冷却ファン53に冷却動作を実行させる(S46,S53)ことを特徴とする。
本態様に係る画像形成装置1によれば、トナー搬送路83Sが適宜に冷却されるため、トナーGの固着を抑制することができる。
【0065】
<第六の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1において、画像形成装置1の機内温度(内部温度)を測定する温度センサ51(温度測定手段)を備え、制御部100(システム制御部120,固着制御部100)は、機内温度に基づいて固着防止動作の実行間隔を決定することを特徴とする。
本態様に係る画像形成装置1によれば、固着防止動作の実行間隔を適正化できる。
【0066】
<第七の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1において、制御部100(エンジン制御部110,固着防止制御部110D)は、固着防止動作における搬送スクリュー85の正方向PRへの回転時間、及び逆方向NRへの回転時間を、トナー搬送路83SのトナーGをトナー像形成部42に供給するために必要な搬送スクリュー85の回転時間よりも短い時間にすることを特徴とする。
本態様に係る画像形成装置1によれば、固着防止動作の実行に伴ってトナー搬送路83Sの一部分にトナーGが溜まりすぎてしまう不都合を抑制できる。
【0067】
<第八の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1において、制御部100(エンジン制御部110,固着防止制御部110D)は、固着防止動作の開始時において搬送スクリュー85を逆方向NRに回転させることを特徴とする。
本態様に係る画像形成装置1によれば、トナー搬送路83S内に固着したトナーG’をさらに成長させてしまう不都合を抑制できる。
【0068】
<第九の実施態様>
本態様に係る画像形成装置1のトナー固着防止方法は、トナー容器72(トナー収容手段)とトナー像形成部42(現像手段)との間に配置されるトナー搬送路83Sと、トナー搬送モータ86によって回転され、トナー搬送路83Sに沿ってトナーGを搬送する搬送スクリュー85(搬送部材)と、を備えた画像形成装置1のトナー固着防止方法であって、搬送スクリュー85は、正方向PRに回転されるとトナーGを下流側(トナー像形成部42側)に搬送し、逆方向NRに回転されるとトナーG上流側(トナー容器72側)に搬送し、トナー搬送モータ86を駆動して搬送スクリュー85の回転方向を正方向PR、又は逆方向NRに切り替えて固着防止動作を実行することを特徴とする。
本態様に係るトナー固着防止方法によれば、トナー搬送路83S内のトナーGをトナー像形成部42へ供給するための搬送スクリュー85によってトナーGの固着防止動作が実行されるため、トナーGの固着を防止する構成の簡素化が図れる。
【符号の説明】
【0069】
1…画像形成装置,10…スキャナ部,11…原稿台,12…読取り機構,20…給紙部,21…給紙カセット,22…給紙ローラ,30…用紙搬送部,31…搬送ローラ,32A,32B、32C…排紙ローラ,33A,33B,33C…スタック部,40…画像形成部,41…トナー容器収容部,42(42Y、42C、42M、42K)…トナー像形成部(現像手段),43…露光部,44…中間転写ベルト,45…定着部,46…1次転写バイアスローラ,47…2次転写ローラ対,51…温度センサ(温度測定手段),52…湿度センサ,53…冷却ファン(冷却手段),60…操作部,61…表示部,62…入力部,71…トナー容器収容部,72(72Y、72M、72C、72K)…トナー容器(トナー収容手段),72a…容器本体,72b…排出口,80…トナー供給部,81…案内路形成部,81S…案内路,82…サブホッパー,82S…サブホッパーの内部空間,83…搬送路形成部,83S…トナー搬送路,84…落下路形成部,84S…落下路,85…搬送スクリュー(搬送部材),85a…回転軸,85b…螺旋羽根,86…トナー搬送モータ(駆動モータ),91…感光体ドラム,91a…ドラム本体,91b…像担持体,92…帯電器,93…現像器,93a…現像ローラ,93b…ドクターブレード,93c、93d…トナー貯留部,93e…搬送スクリュー,94…クリーニング部,100…制御部(制御手段),110…エンジン制御部(第1制御手段),110A…読取制御部,110B…画像形成制御部,110C…給排紙制御部,110D…固着防止制御部,110E…冷却制御部,111…CPU,112…ROM,113…ROM,114…インタフェース(I/F),120…システム制御部(第2制御手段),120A…入力情報取得部,120B…通知制御部,120C…通信制御部,120D…使用履歴取得部,120E…環境情報取得部,120F…固着判定部,121…CPU,122…ROM,123…ROM,124…インタフェース(I/F),200…端末装置,G、G’…トナー,FL…外気,P…用紙,PR…搬送スクリューの正方向の回転方向,NR…搬送スクリューの逆方向の回転方向,FP…用紙の搬送経路,L…レーザ光,NW…ネットワーク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】