(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023120883
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】情報取得システムおよび情報取得方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20230823BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
E02F9/26 B
G01C15/00 104D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024001
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 隆之
(72)【発明者】
【氏名】篠田 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 光
(72)【発明者】
【氏名】茨木 創一
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】作業機械に関する情報を、簡便な作業でより正確に取得する。
【解決手段】情報取得システムは、油圧ショベル100と、ターゲット部40と、位置計測部50と、情報取得部60とを備えている。油圧ショベル100は、旋回体3と、旋回体3に対して相対移動可能な作業機2とを有している。ターゲット部40は、作業機2に取り付けられている。位置計測部50は、作業機2の旋回体3に対する相対移動に伴って移動するターゲット部40の位置を、離散的に複数回計測する。情報取得部60は、ターゲット部40の位置の計測結果から、油圧ショベル100に関する情報を取得する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、前記ベース部に対して相対移動可能な可動部とを有する、作業機械と、
前記可動部に取り付けられたターゲット部と、
前記可動部の前記ベース部に対する相対移動に伴って移動する前記ターゲット部の位置を、離散的に複数回計測する位置計測部と、
前記位置の計測結果から前記作業機械に関する情報を取得する情報取得部と、を備える、情報取得システム。
【請求項2】
前記位置計測部は、前記可動部が前記ベース部に対して静止しているときに、前記ターゲット部の前記位置を計測する、請求項1に記載の情報取得システム。
【請求項3】
前記可動部は、複数のリンク部材が関節を介して接続されたリンク機構を有し、
前記位置計測部は、前記複数のリンク部材が互いの相対位置を維持したまま前記ベース部に対して相対移動することに伴って移動する前記ターゲット部の前記位置を計測する、請求項1または請求項2に記載の情報取得システム。
【請求項4】
前記可動部は、前記ベース部に対して相対回転可能である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の情報取得システム。
【請求項5】
前記ターゲット部は円弧上を移動する、請求項4に記載の情報取得システム。
【請求項6】
前記情報は、前記ベース部に対する前記可動部の相対回転の中心の位置である、請求項4または請求項5に記載の情報取得システム。
【請求項7】
前記情報は、前記中心位置と前記ターゲット部との距離である、請求項6に記載の情報取得システム。
【請求項8】
前記可動部は、複数のリンク部材が関節を介して接続されたリンク機構を有し、
前記情報は、前記中心位置と前記関節との距離である、請求項6または請求項7に記載の情報取得システム。
【請求項9】
前記情報は、複数の前記関節間の距離である、請求項8に記載の情報取得システム。
【請求項10】
前記位置計測部が前記ターゲット部の前記位置を1回目に計測したときから2回目に計測したときまでの前記可動部の相対回転の角度を検出する角度検出部をさらに備え、
前記情報取得部は、前記位置の計測結果と前記角度の検出結果とから前記情報を取得する、請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の情報取得システム。
【請求項11】
前記ターゲット部は、前記可動部の一箇所に取り付けられている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の情報取得システム。
【請求項12】
ベース部と、前記ベース部に対して相対移動可能な可動部とを有し、前記可動部にターゲット部が取り付けられる作業機械に関する情報を取得する情報取得方法であって、
前記可動部を前記ベース部に対して相対移動させることと、
前記可動部の前記ベース部に対する相対移動に伴って移動する前記ターゲット部の位置を、離散的に複数回計測することと、
前記位置の計測結果から前記情報を取得することと、を備える、情報取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械に関する情報を取得するための情報取得システムおよび情報取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化施工とは、建設土木事業における施工において、情報通信技術(ICT)の活用により、高効率かつ高精度な施工を実現するものである。情報化施工技術の一例として、トータルステーションまたはGNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)などの位置計測装置を用いて作業機械の位置を取得し、施工箇所の設計データと現況地形データとの差分に関する情報を作業機械の運転席モニタへ提供する、マシンガイダンス技術が提案されている。
【0003】
作業機械の一つに油圧ショベルがある。油圧ショベルは、ブーム、アーム、及びバケットから構成される作業機を備えてよい。ブーム、アーム、及びバケットは、順にピンにより回動可能に支持されてよい。マシンガイダンス技術を用いた施工に関し、非特許文献1には、ICT油圧ショベルのアーム寸法など各可動部のピン間の寸法およびバケット寸法を測定することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】国土交通省近畿地方整備局近畿技術事務所「マシンガイダンス技術(バックホウ編)の手引書」、2014年3月、p.29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トータルステーションなどを用いて作業機械における作業機の各ピンの位置をそれぞれ測定した結果からピン間の寸法を算出するには、各ピンの位置に計測ターゲットを取り付ける必要がある。この計測ターゲットの取付作業が煩雑な上、各ピンに手作業で計測ターゲットを取り付けるため取付精度が担保されていない。
【0006】
本開示では、情報化施工のための作業機械に関する情報を、簡便な作業でより正確に取得できる、情報取得システムおよび情報取得方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従うと、情報取得システムが提案される。情報取得システムは、作業機械と、ターゲット部と、位置計測部と、情報取得部とを備えている。作業機械は、ベース部と、ベース部に対して相対移動可能な可動部とを有している。ターゲット部は、可動部に取り付けられている。位置計測部は、可動部のベース部に対する相対移動に伴って移動するターゲット部の位置を、離散的に複数回計測する。情報取得部は、ターゲット部の位置の計測結果から、作業機械に関する情報を取得する。
【0008】
本開示に従うと、作業機械に関する情報を取得する情報取得方法が提案される。作業機械は、ベース部と、ベース部に対して相対移動可能な可動部とを有している。作業機械の可動部に、ターゲット部が取り付けられる。情報取得方法は、以下の処理を備えている。第1の処理は、可動部をベース部に対して相対移動させることである。第2の処理は、可動部のベース部に対する相対移動に伴って移動するターゲット部の位置を、離散的に複数回計測することである。第3の処理は、ターゲット部の位置の計測結果から、作業機械に関する情報を取得することである。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る情報取得システムおよび情報取得方法によれば、作業機械に関する情報を、簡便な作業でより正確に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態に基づく情報取得システムの概略構成を示す模式図である。
【
図3】情報取得システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】油圧ショベルに関する情報を取得する処理の流れを示すフロー図である。
【
図5】バケット寸法の導出時のバケットの動作を示す側面模式図である。
【
図6】アーム寸法の導出時のアームの動作を示す側面模式図である。
【
図7】ブーム寸法の導出時のブームの動作を示す側面模式図である。
【
図8】第2実施形態におけるバケット寸法の導出時のバケットの動作を示す側面模式図である。
【
図9】第2実施形態におけるバケット寸法の導出を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に基づく情報取得システムおよび情報取得方法によって情報が取得される作業機械の一例としての、油圧ショベル100の外観図である。実施形態においては、作業機械として、油圧ショベル100を例に挙げて説明する。
【0013】
図1に示されるように、油圧ショベル100は、本体1と、油圧により作動する作業機2とを有している。本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。
【0014】
油圧ショベル100の動作時には、走行体5、より具体的には履帯5Crが、地面に接触している。走行体5は、履帯5Crの回転により地面を走行可能である。なお、走行体5が履帯5Crの代わりに車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0015】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、走行体5に対して相対移動可能である。旋回体3は、旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能に、走行体5に搭載されている。旋回体3は、走行体5上に、旋回サークル部を介して取り付けられている。旋回サークル部は、平面視した本体1の略中央部に配置されている。旋回サークル部は、円環状の概略形状を有しており、内周面に旋回用の内歯を有している。この内歯と噛み合うピニオンが、図示しない旋回モータに装着されている。旋回モータから駆動力が伝達されて旋回サークル部が回転することにより、旋回体3が走行体5に対して相対回転可能とされている。なお、旋回モータは油圧モータであってもよいし電動モータであってもよい。
【0016】
旋回体3は、キャブ4を有している。油圧ショベル100の乗員(オペレータ)は、このキャブ4に搭乗して、油圧ショベル100を操縦する。キャブ4には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられている。オペレータは、キャブ4内において油圧ショベル100を操作可能である。オペレータは、キャブ4内において、作業機2の操作が可能であり、走行体5に対する旋回体3の旋回操作が可能であり、また走行体5による油圧ショベル100の走行操作が可能である。油圧ショベル100は、本開示ではキャブ4内から操作されるが、油圧ショベル100から離れた場所から無線により遠隔操作されてもよい。
【0017】
実施形態においては、キャブ4内の運転席4Sに着座したオペレータを基準として、油圧ショベル100の旋回体3における各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの前後方向をいう。運転席4Sに着座したオペレータに正対する方向が前方向であり、運転席4Sに着座したオペレータの背後方向が後方向である。左右方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの左右方向をいう。運転席4Sに着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの上下方向をいう。運転席4Sに着座したオペレータの足元側が下側、頭上側が上側である。
【0018】
前後方向において、旋回体3から作業機2が突き出している側が前方向であり、前方向と反対方向が後方向である。前方向を視て左右方向の右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0019】
旋回体3は、エンジンが収容されるエンジンルーム9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有している。エンジンルーム9には、駆動力を発生するエンジン、エンジンの発生する駆動力を受けて油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプなどが配置されている。
【0020】
旋回体3において、エンジンルーム9の前方に手すり19が設けられている。手すり19には、アンテナ21が設けられている。アンテナ21は、たとえばGNSS用のアンテナである。アンテナ21は、左右方向に互いに離れるように旋回体3に設けられた第1アンテナ21Aおよび第2アンテナ21Bを有している。
【0021】
作業機2は、旋回体3に搭載されており、旋回体3によって支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。ブーム6は、旋回体3に回転可能に連結されている。アーム7は、ブーム6に回転可能に連結されている。バケット8は、アーム7に回転可能に連結されている。バケット8は、複数の刃を有している。バケット8の先端部を、刃先8aと称する。
【0022】
なお、バケット8は、刃を有していなくてもよい。バケット8の先端部は、ストレート形状の鋼板で形成されていてもよい。
【0023】
ブーム6の基端部は、ブームフートピン13(以下、ブームピンという)を介して旋回体3に連結されている。アーム7の基端部は、アーム連結ピン14(以下、アームピンという)を介してブーム6の先端部に連結されている。バケット8は、バケット連結ピン15(以下、バケットピンという)を介してアーム7の先端部に連結されている。ブームピン13、アームピン14およびバケットピン15は、略左右方向に延びている。
【0024】
ブーム6は、旋回体3に対して相対移動可能である。ブーム6は、ブームピン13を中心に、旋回体3に対して相対回転可能である。アーム7は、ブーム6に対して相対移動可能である。アーム7は、アームピン14を中心に、ブーム6に対して相対回転可能である。バケット8は、アーム7に対して相対移動可能である。バケット8は、バケットピン15を中心に、アーム7に対して相対回転可能である。
【0025】
アーム7およびバケット8は、バケット8がアーム7に対して相対回転しない状態で、一体的にブーム6に対して相対移動可能、具体的には相対回転可能である。ブーム6、アーム7およびバケット8は、バケット8がアーム7に対して相対回転せず、かつアーム7がブーム6に対して相対回転しない状態で、一体的に旋回体3に対して相対移動可能、具体的には相対回転可能である。
【0026】
作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有している。ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、およびバケットシリンダ12のそれぞれは、作動油によって駆動される油圧シリンダである。
【0027】
作業機2は、複数のリンク部材が関節を介して接続されたリンク機構を構成している。ブーム6、アーム7およびバケット8は、それぞれリンク部材を構成している。ブームピン13は、旋回体3とブーム6とを接続する関節に相当する。アームピン14は、ブーム6とアーム7とを接続する関節に相当する。バケットピン15は、アーム7とバケット8とを接続する関節に相当する。
【0028】
バケットシリンダ12は、アーム7に取り付けられている。バケットシリンダ12が伸縮することにより、アーム7に対してバケット8が回転する。作業機2は、バケットリンクを有している。バケットリンクは、バケットシリンダ12とバケット8とを連結している。
【0029】
油圧ショベル100には、コントローラ26が搭載されている。コントローラ26は、油圧ショベル100の動作を制御する。
【0030】
図2は、実施形態に基づく情報取得システムの概略構成を示す模式図である。油圧ショベル100には、ターゲット部40が取り付けられている。ターゲット部40は、油圧ショベル100の一箇所に取り付けられている。ターゲット部40は、作業機2の一箇所に取り付けられている。
図2に示される例では、バケット8の刃先8aに、ターゲット部40が取り付けられている。
【0031】
情報取得システムは、位置計測部50を備えている。位置計測部50は、ターゲット部40の位置を計測する。位置計測部50は、バケット8の移動に伴って移動するターゲット部40の位置を、離散的に複数回計測する。位置計測部50は、異なる位置にあるターゲット部40を、少なくとも2回計測する。位置計測部50は、たとえばレーザトラッカであり、この場合、ターゲット部40は、ターゲットリフレクタである。
【0032】
レーザトラッカは、ターゲットリフレクタに向かってレーザ光Lを照射する。ターゲットリフレクタは、レーザ光Lが照射されると、照射された方向と同じ方向に光を反射する。その反射光は、レーザトラッカに戻ることになる。レーザトラッカは、ターゲットリフレクタからレーザ光Lが戻ってきた時間より、レーザトラッカとターゲットリフレクタとの距離を求めることができる。またレーザトラッカは、レーザ光Lを照射した方向を自身で把握している。レーザトラッカは、自身の三次元位置と、レーザ光Lを照射した方向と、ターゲットリフレクタまでの距離とから、ターゲット部40(ターゲットリフレクタ)の三次元位置を求めることができる。
【0033】
位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置を取得できる非接触式の測定機であればよく、レーザトラッカに限られない。たとえば位置計測部50は、トータルステーションであってもよい。またたとえば位置計測部50は、ステレオカメラに代表される撮像装置であってもよく、この場合、ターゲット部40は、撮像画像中におけるターゲット部40の位置の認識を容易にするためのマーカであってもよい。またたとえば位置計測部50は、任意の角度計と距離計との組み合わせによって実現されてもよい。
【0034】
情報取得システムは、情報取得部60を備えている。情報取得部60は、たとえば油圧ショベル100の外部に設けられている。情報取得部60は、無線または有線の通信手段を介して、位置計測部50と通信可能とされている。情報取得部60は、CPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリ、タイマなどを含んで構成されるコンピュータである。
【0035】
情報取得部60は、ターゲット部40の位置を離散的に複数回計測した計測結果から、油圧ショベル100に関する情報を取得する。情報取得部60により取得される油圧ショベル100に関する情報は、たとえば、油圧ショベル100の作業機2の寸法を含む。油圧ショベル100に関する情報は、三次元空間における油圧ショベル100の所定部位の位置座標情報、2つの所定部位間の距離情報などであってよい。三次元空間の座標系は、ITRF(International Terrestrial Reference Frame)座標系であってよい。
【0036】
図3は、情報取得システムの機能的構成を示すブロック図である。ターゲット部40は、油圧ショベル100のうち、作業機2(ブーム6、アーム7、バケット8)のいずれかの一箇所に取り付けられる。位置計測部50は、ブーム6、アーム7またはバケット8に取り付けられたターゲット部40の、三次元位置を計測する。
【0037】
情報取得部60は、入力部61と、回転半径演算部65と、ベクトル処理部66と、出力部67とを備えている。
【0038】
図4は、油圧ショベル100に関する情報を取得する処理の流れを示すフロー図である。
図3に示される情報取得部60の各機能ブロックの機能と、各機能ブロックによって実現される、油圧ショベル100に関する情報を取得する処理との詳細について、以下に説明する。以下の処理によって取得される油圧ショベル100に関する情報は、情報化施工を実施するに当たり、バケット8の刃先8aの位置を正確に導出して、作業機2の位置の演算の精度を向上するために必要なパラメータである。
図4に示す、油圧ショベル100に関する情報を取得する処理は、油圧ショベル100のキャブ4に搭乗しているオペレータが、所定の操作レバー(図示省略)を操作し作業機2のバケット8、アーム7、ブーム6を動作させることで実現する。なお、油圧ショベル100が遠隔操作することができる場合は、オペレータは油圧ショベル100のキャブ4に搭乗せず、油圧ショベル100から離れた場所から作業機2のバケット8、アーム7、ブーム6を動作させる。
【0039】
ステップS1において、回転半径演算部65は、作業機2のバケット8のみを動作させるときの、バケット8の刃先8aの位置Pbkを計測する。
【0040】
図5は、バケット8の寸法を導出するときのバケット8の動作を示す側面模式図である。なお、
図5および後述する
図6~8では、各油圧シリンダ10,11,12、各油圧シリンダ10,11,12をブーム6、アーム7またはバケット8に接続するためのブラケット、バケット8とアーム7とを接続するリンクは、図示を省略している。ターゲット部40は、バケット8の刃先8aの位置に取り付けられる。この状態で、バケットピン15を中心として、アーム7に対してバケット8が相対回転する。このとき、ブーム6およびアーム7は静止したままとされる。ブーム6、アーム7およびバケット8のうち、バケット8のみを移動させる。ここでは、本体1とブーム6とアーム7とをベース部とし、バケット8を可動部として回動させる。
【0041】
バケット8は、アーム7に対して相対移動し、ブーム6に対して相対移動する。アーム7は、ブーム6に対して相対移動しない。ブーム6は、旋回体3に対して相対移動しない。バケットピン15を介して接続されたアーム7およびバケット8のみが、互いに相対移動する。
図5に示されるように、バケット8はダンプ方向(バケット8が車体から離れる方向。
図5においてはバケットピン15まわりの反時計回り方向)に移動してもよい。
【0042】
バケット8のアーム7に対する相対回転に伴って、ターゲット部40は軌跡TBkに沿って移動する。ターゲット部40は、バケットピン15を中心とする円弧上を移動する。バケットピン15は、アーム7に対するバケット8の回転の中心位置をなす。移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が、離散的に複数回(2回以上)計測する。位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置である複数の位置Pbk1,Pbk2,Pbk3を、時間間隔を空けて計測する。
【0043】
位置計測部50が位置Pbk1,Pbk2,Pbk3を計測するとき、バケット8はアーム7に対して静止している。位置計測部50が、位置Pbk1の三次元位置を取得する。その後、バケット8をバケットピン15を回転中心として相対回転移動させ、バケット8の刃先8aのターゲット部40を位置Pbk2に移動させて、バケット8を停止する。その状態で、位置計測部50が、位置Pbk2の三次元位置を取得する。その後、バケット8をバケットピン15を回転中心として相対回転移動させ、バケット8の刃先8aのターゲット部40を位置Pbk3に移動させて、バケット8を停止する。その状態で、位置計測部50が、位置Pbk3の三次元位置を取得する。
【0044】
位置計測部50は、ターゲット部40が位置Pbk1から位置Pbk2へ移動している間は、ターゲット部40の位置を計測しない。位置計測部50は、ターゲット部40が位置Pbk2から位置Pbk3へ移動している間は、ターゲット部40の位置を計測しない。
【0045】
位置計測部50は、ターゲット部40の複数の三次元位置を取得する。位置計測部50は、取得したターゲット部40の三次元位置情報(位置信号)を、情報取得部60の入力部61に出力する。
【0046】
ステップS2において、回転半径演算部65は、ステップS1で得られたターゲット部40の位置の複数の計測結果から、最小二乗法により、バケットピン15の座標と、バケットピン15とターゲット部40の取り付けられたバケット8の刃先8aとの間の距離とを演算する。回転半径演算部65は、バケットピン15を中心とする円弧上を移動するターゲット部40の三次元位置である位置Pbk1,Pbk2,Pbk3から、仮決めした円弧の中心までの半径誤差を最小化するように計算し、計算された中心をバケットピン15の座標とする。回転半径演算部65は、ターゲット部40の回転半径を、バケットピン15とバケット8の刃先8aとの間の距離とする。
【0047】
バケットピン15を中心として回転移動するターゲット部40の三次元位置から最小二乗法によって回転中心の座標と回転半径とを導出する方法については、たとえば、下記のWebサイトで解説されている。
【0048】
”最小二乗法による球の推定”、[令和2年10月27日検索]、インターネット<URL:https://qiita.com/yujikaneko/items/955b4474772802b055bc>
ステップS3において、ベクトル処理部66は、バケットピン15と、バケット8の刃先8aとの間のベクトルVbを生成する。
図5に示されるように、ベクトルVbは、作業機2を側方から見た場合に、バケットピン15を始点としバケット8の刃先8aを終点とするベクトルである。
【0049】
ステップS4において、回転半径演算部65は、作業機2のアーム7を動作させるときの、バケット8の刃先8aの位置Paを計測する。
【0050】
図6は、アーム7の寸法を導出するときのアーム7の動作を示す側面模式図である。ターゲット部40は、バケット8の刃先8aの位置に取り付けられる。この状態で、アームピン14を中心として、ブーム6に対してアーム7およびバケット8が回転する。このとき、ブーム6は静止したままとされる。ブーム6、アーム7およびバケット8のうち、アーム7およびバケット8を移動させる。ここでは、本体1とブーム6とをベース部とし、アーム7とバケット8とを可動部として回動させる。
【0051】
アーム7は、ブーム6に対して相対移動する。バケット8は、アーム7と共に、ブーム6に対して相対移動する。バケット8は、アーム7に対して相対移動しない。ブーム6は、旋回体3に対して相対移動しない。アーム7に対するバケット8の相対位置は一定のままとされる。アームピン14を介して接続されたブーム6およびアーム7のみが、互いに相対移動する。可動部は、アーム7とバケット8とがバケットピン15を介して接続されたリンク機構を有している。アーム7とバケット8とは、互いの相対位置を維持したまま、アームピン14を中心として、ブーム6および旋回体3に対して相対回転する。
【0052】
図6に示されるように、アーム7はダンプ方向(アーム7が車体から離れる方向。
図6においてはアームピン14まわりの反時計回り方向)に移動してもよい。このとき、バケットシリンダ12が、伸び側または縮み側のいずれか一方のストロークエンドに位置していてもよい。
【0053】
ブーム6に対するアーム7およびバケット8の相対回転に伴って、ターゲット部40は軌跡TAに沿って移動する。ターゲット部40は、アームピン14を中心とする円弧上を移動する。アームピン14は、ブーム6に対するバケット8の回転の中心位置をなす。移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が、離散的に複数回(2回以上)計測する。位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置である複数の位置Pa1,Pa2,Pa3を、時間間隔を空けて計測する。
【0054】
位置計測部50が位置Pa1,Pa2,Pa3を計測するとき、アーム7はブーム6に対して静止している。位置計測部50が、位置Pa1の三次元位置を取得する。その後、アーム7をアームピン14を回転中心として相対回転移動させ、バケット8の刃先8aのターゲット部40を位置Pa2に移動させて、アーム7を停止する。その状態で、位置計測部50が、位置Pa2の三次元位置を取得する。その後、アーム7をアームピン14を回転中心として相対回転移動させ、バケット8の刃先8aのターゲット部40を位置Pa3に移動させて、アーム7を停止する。その状態で、位置計測部50が、位置Pa3の三次元位置を取得する。
【0055】
位置計測部50は、ターゲット部40が位置Pa1から位置Pa2へ移動している間は、ターゲット部40の位置を計測しない。位置計測部50は、ターゲット部40が位置Pa2から位置Pa3へ移動している間は、ターゲット部40の位置を計測しない。
【0056】
位置計測部50は、ターゲット部40の複数の三次元位置を取得する。位置計測部50は、取得したターゲット部40の三次元位置情報(位置信号)を、情報取得部60の入力部61に出力する。
【0057】
ステップS5において、回転半径演算部65は、ステップS4で得られたターゲット部40の位置の複数の計測結果から、最小二乗法により、アームピン14の座標と、アームピン14とターゲット部40の取り付けられたバケット8の刃先8aとの間の距離とを演算する。この演算は、ステップS2における回転中心の座標と回転半径との導出と同様に、行うことができる。
【0058】
ステップS6において、ベクトル処理部66は、アームピン14と、バケット8の刃先8aとの間のベクトルVa1を生成する。
図6に示されるように、ベクトルVa1は、作業機2を側方から見た場合に、アームピン14を始点としバケット8の刃先8aを終点とするベクトルである。
【0059】
ステップS7において、ベクトル処理部66は、ステップS6で生成されたベクトルVa1から、ステップS3で生成されたベクトルVbを引いた差であるベクトルVaを生成する。
図6に示されるように、ベクトルVaは、作業機2を側方から見た場合に、アームピン14を始点としバケットピン15を終点とするベクトルである。
【0060】
ステップS8において、回転半径演算部65は、作業機2のブーム6を動作させるときの、バケット8の刃先8aの位置Pbを計測する。
【0061】
図7は、ブーム6の寸法を導出するときのブーム6の動作を示す側面模式図である。ターゲット部40は、バケット8の刃先8aの位置に取り付けられる。この状態で、ブームピン13を中心として、旋回体3に対してブーム6、アーム7およびバケット8が回転する。ここでは、本体1をベース部とし、ブーム6とアーム7とバケット8とを可動部として回動させる。
【0062】
ブーム6は、旋回体3に対して相対移動する。アーム7およびバケット8は、ブーム6と共に、旋回体3に対して相対移動する。アーム7は、ブーム6に対して相対移動しない。バケット8は、アーム7に対して相対移動しない。アーム7に対するバケット8の相対位置は一定のままとされる。かつ、ブーム6に対するアーム7の相対位置は一定のままとされる。ブームピン13を介して接続された旋回体3およびブーム6のみが、互いに相対移動する。可動部は、アーム7とバケット8とがバケットピン15を介して接続され、ブーム6とアーム7とがアームピン14を介して接続された、リンク機構を有している。ブーム6とアーム7とバケット8とは、互いの相対位置を維持したまま、ブームピン13を中心として、旋回体3に対して相対回転する。
【0063】
図7に示されるように、ブーム6はブーム上げ方向(
図7においてはブームピン13まわりの反時計回り方向)に移動してもよい。このとき、バケットシリンダ12が、伸び側または縮み側のいずれか一方のストロークエンドに位置していてもよい。アームシリンダ11が、伸び側または縮み側のいずれか一方のストロークエンドに位置していてもよい。
【0064】
旋回体3に対するブーム6、アーム7およびバケット8の相対回転に伴って、ターゲット部40は、軌跡TBに沿って移動する。ターゲット部40は、ブームピン13を中心とする円弧上を移動する。ブームピン13は、旋回体3に対するバケット8の回転の中心位置をなす。移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が、離散的に複数回(2回以上)計測する。位置計測部50は、ターゲット部40の三次元位置である複数の位置Pb1,Pb2,Pb3を、時間間隔を空けて計測する。
【0065】
位置計測部50が位置Pb1,Pb2,Pb3を計測するとき、ブーム6は旋回体3に対して静止している。位置計測部50が、位置Pb1の三次元位置を取得する。その後、ブーム6をブームピン13を回転中心として相対回転移動させ、バケット8の刃先8aのターゲット部40を位置Pb2に移動させて、ブーム6を停止する。その状態で、位置計測部50が、位置Pb2の三次元位置を取得する。その後、ブーム6をブームピン13を回転中心として相対回転移動させ、バケット8の刃先8aのターゲット部40を位置Pb3に移動させて、ブーム6を停止する。その状態で、位置計測部50が、位置Pb3の三次元位置を取得する。
【0066】
位置計測部50は、ターゲット部40が位置Pb1から位置Pb2へ移動している間は、ターゲット部40の位置を計測しない。位置計測部50は、ターゲット部40が位置Pb2から位置Pb3へ移動している間は、ターゲット部40の位置を計測しない。
【0067】
位置計測部50は、ターゲット部40の複数の三次元位置を取得する。位置計測部50は、取得したターゲット部40の三次元位置情報(位置信号)を、情報取得部60の入力部61に出力する。
【0068】
ステップS9において、回転半径演算部65は、ステップS8で得られたターゲット部40の位置の複数の計測結果から、最小二乗法により、ブームピン13の座標と、ブームピン13とターゲット部40の取り付けられたバケット8の刃先8aとの間の距離とを演算する。この演算は、ステップS2における回転中心の座標と回転半径との導出と同様に、行うことができる。
【0069】
ステップS10において、ベクトル処理部66は、ブームピン13と、バケット8の刃先8aとの間のベクトルVs1を生成する。
図7に示されるように、ベクトルVs1は、作業機2を側方から見た場合に、ブームピン13を始点としバケット8の刃先8aを終点とするベクトルである。
【0070】
ステップS11において、ベクトル処理部66は、ステップS10で生成されたベクトルVs1から、ステップS3で生成されたベクトルVbとステップS7で生成されたベクトルVaとを引いた差であるベクトルVsを生成する。
図7に示されるように、ベクトルVsは、作業機2を側方から見た場合に、ブームピン13を始点としアームピン14を始点とするベクトルである。
【0071】
ステップS12において、ベクトル処理部66は、ベクトルVbの大きさを求め、これをバケット8の刃先8aとバケットピン15との間の距離、すなわちバケット8の寸法とする。ベクトル処理部66は、ベクトルVaの大きさを求め、これをアームピン14とバケットピン15との間の距離、すなわちアーム7の寸法とする。ベクトル処理部66は、ベクトルVsの大きさを求め、これをブームピン13とアームピン14との間の距離、すなわちブーム6の寸法とする。
【0072】
出力部67は、求められたブーム6、アーム7、およびバケット8の寸法の情報(寸法信号)を、油圧ショベル100に搭載されたコントローラ26に出力する。
【0073】
このようにして、油圧ショベル100に関する情報を取得する一連の処理を終了する(
図4のEND)。
【0074】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0075】
図2に示されるように、位置計測部50は、ターゲット部40の位置を計測する。ターゲット部40はたとえば、
図5~7に示されるようにバケット8の刃先8aに取り付けられており、バケット8のアーム7に対する相対移動に伴って移動したり(
図5)、アーム7のブーム6に対する相対移動に伴って移動したり(
図6)、ブーム6の旋回体3に対する相対移動に伴って移動したりする(
図7)。
【0076】
位置計測部50は、移動するターゲット部40の位置を、複数回、たとえば少なくとも2回、離散的に計測する。
図3,4に示されるように、情報取得部60は、ターゲット部40の位置の計測結果から、最小二乗法の手法を用いて、油圧ショベル100の作業機2の寸法などの、油圧ショベル100に関する情報を取得する。作業機2の寸法を算出するために各ピンの位置に計測ターゲットを取り付けて各ピンの位置を直接計測しなくてもよいため、短時間の簡便な作業で、油圧ショベル100の作業機2の寸法の情報を正確に得ることができる。この情報に基づいて、バケット8の刃先8aの位置を正確に導出することができるので、情報化施工における作業機2の位置の演算の精度を向上することができる。
【0077】
図5に示されるように、位置計測部50は、バケット8がアーム7に対して静止しているときに、ターゲット部40の位置Pbk1,Pbk2,Pbk3を計測する。
図6に示されるように、位置計測部50は、アーム7がブーム6に対して静止しているときに、ターゲット部40の位置Pa1,Pa2,Pa3を計測する。
図7に示されるように、位置計測部50は、ブーム6が旋回体3に対して静止しているときに、ターゲット部40の位置Pb1,Pb2,Pb3を計測する。静止しているターゲット部40の位置を計測するので、ターゲット部40の位置の計測精度を向上でき、作業機2の寸法の情報をより正確に得ることができる。位置計測部50を、ターゲット部40を自動追尾可能な仕様とする必要がないので、安価な情報取得システムを実現することができる。
【0078】
図6に示されるように、アーム7とバケット8とが互いの相対位置を維持したままブーム6に対して相対移動することによって移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が計測する。アーム7をブーム6に対して相対移動させるときに、バケット8がアーム7に対して相対移動することによる外乱の影響を低減でき、アーム7の寸法をより正確に取得することができる。
図7に示されるように、ブーム6とアーム7とバケット8とが互いの相対位置を維持したまま旋回体3に対して相対移動することによって移動するターゲット部40の位置を、位置計測部50が計測する。ブーム6を旋回体3に対して相対移動させるときに、アーム7およびバケット8がブーム6に対して相対移動することによる外乱の影響を低減でき、ブーム6の寸法をより正確に取得することができる。
【0079】
図7に示されるように、ブーム6は、旋回体3に対して相対回転可能である。
図6に示されるように、アーム7は、ブーム6に対して相対回転可能である。
図5に示されるように、バケット8は、アーム7に対して相対回転可能である。バケット8のような回転する機械部品にターゲット部40を取り付けて、円弧上を移動するターゲット部40の位置を計測することができる。このターゲット部40の位置の計測結果から、油圧ショベル100に関する情報を取得することができる。
【0080】
図4および
図5~7に示されるように、情報取得部60は、回転する機械部品の回転の中心位置を取得する。情報取得部60は、取得された回転の中心位置の情報から、機械部品の寸法を求めることができる。
【0081】
図4,5に示されるように、バケット8はアーム7に対して相対回転し、バケット8の回転の中心位置がバケットピン15の位置である。情報取得部60は、バケットピン15とターゲット部40との距離を取得する。情報取得部60は、取得された距離の情報から、バケット8の寸法を求めることができる。
【0082】
図1に示されるように、アーム7は、アームピン14を介してブーム6に接続されている。作業機2は、ブーム6とアーム7とがアームピン14を介して接続され、アーム7とバケット8とがバケットピン15を介して接続された、リンク機構を有している。
図4,7に示されるように、情報取得部60は、旋回体3に対して回転するブーム6の回転の中心位置であるブームピン13と、ブーム6とアーム7とを接続するアームピン14との距離を取得する。情報取得部60は、取得された距離の情報から、ブーム6の寸法を求めることができる。
【0083】
図4,6に示されるように、情報取得部60は、ブーム6とアーム7とを接続するアームピン14と、アーム7とバケット8とを接続するバケットピン15との距離を取得する。情報取得部60は、取得された距離の情報から、アーム7の寸法を求めることができる。
【0084】
図2,5~7に示されるように、ターゲット部40は、作業機2の一箇所に取り付けられている。油圧ショベル100に関する情報を取得するために複数のターゲットリフレクタを取り付けたり、ターゲットリフレクタを付け替えたりする必要がなくなる。作業を簡略化して作業工数を低減でき、かつ、取得する情報の精度を向上することができる。
【0085】
図4に示されるように、油圧ショベル100に関する情報を取得する情報取得方法は、たとえば、バケット8をアーム7に対して相対移動させ、このバケット8の移動に伴って移動するターゲット部40の位置を離散的に複数回計測するステップS1と、ターゲット部40の位置の計測結果から、バケットピン15の座標と、バケットピン15とバケット8の刃先8aとの間の距離とを取得するステップS2とを備えている。
【0086】
短時間の簡便な作業で、油圧ショベル100に関する情報をより正確に得ることができ、これらの情報に基づいて、バケット8の刃先8aの位置を正確に導出することができるので、情報化施工における作業機2の位置の演算の精度を向上することができる。
【0087】
上記の説明では、可動部がベース部に対して静止しているときに位置計測部50がターゲット部40の位置を計測する例を述べたが、これに限られるものではない。位置計測部50は、可動部がベース部に対して移動しているとき、たとえばバケット8がアーム7に対して低速で相対回転しているときに、時間間隔をあけて、ターゲット部40の位置を複数回(2回以上)計測してもよい。つまり、この場合もターゲット部40の位置を離散的に計測することになる。この場合の位置計測部50は、移動するターゲット部40を自動追尾する機能を備えるものが好ましく、レーザトラッカまたは自動追尾型トータルステーションを好適に適用することができる。
【0088】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態におけるバケット寸法の導出時のバケットの動作を示す側面模式図である。第2実施形態の油圧ショベル100は、第1実施形態で説明した構成に加えて、車体IMU(Inertial Measurement Unit)31、ブームIMU32、アームIMU33をさらに備えている。
【0089】
車体IMU31は、旋回体3に取り付けられている。車体IMU31は、前後方向、左右方向および上下方向における旋回体3の加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりの旋回体3の角速度とを計測する。ブームIMU32は、ブーム6に取り付けられている。アームIMU33は、アーム7に取り付けられている。ブームIMU32、アームIMU33のそれぞれは、前後方向、左右方向および上下方向におけるブーム6、アーム7の加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりのブーム6、アーム7の角速度とを計測する。
【0090】
ブームIMU32の検出結果から、旋回体3に対するブーム6の角度が算出される。アームIMU33の検出結果から、ブーム6に対するアーム7の角度が検出される。
図8には図示しないバケットシリンダ12には、シリンダストロークセンサが取り付けられている。シリンダストロークセンサは、バケットシリンダ12におけるシリンダに対するシリンダロッドの変位量を検出する。シリンダストロークセンサの検出結果から、アーム7に対するバケット8の角度が算出される。ブームIMU32、アームIMU33およびバケットシリンダ12に取り付けられたシリンダストロークセンサは、可動部の相対回転の角度を検出する角度検出部を構成している。
【0091】
角度検出部は、上述した例のほか、バケットリンクに取り付けられたIMU、ブームシリンダ10およびアームシリンダ11に取り付けられたシリンダストロークセンサ、ブームピン13、アームピン14またはバケットピン15に取り付けられたポテンショメータまたはロータリーエンコーダ、などの他の任意のセンサを含んでもよい。角度検出部の検出結果は、情報取得部60の入力部61(
図3)に入力される。
【0092】
図9は、第2実施形態におけるバケット寸法の導出を示す模式図である。第2実施形態では、位置計測部50によるターゲット部40の位置の計測結果と、角度検出部による角度の検出結果とから、油圧ショベル100に関する情報を取得する。
図9では、
図8に示されるアーム7に対してバケット8が相対回転するときの計測の結果から、バケット8の寸法、すなわちバケット8の刃先8aとバケットピン15との間の距離を取得する例について説明する。
【0093】
図9には、仮想三角形が図示されている。仮想三角形の1つの頂点は、バケットピン15である。仮想三角形の他の1つの頂点は、位置Pbk1である。位置Pbk1は、バケットピン15を回転中心としてバケット8が回転移動する前の、ターゲット部40の位置である。仮想三角形の残りの1つの頂点は、位置Pbk3である。位置Pbk3は、バケットピン15を回転中心としてバケット8が回転移動した後の、ターゲット部40の位置である。仮想三角形の一辺は、バケットピン15と位置Pbk1との間の距離であり、長さaを有している。仮想三角形の他の一辺は、バケットピン15と位置Pbk3との間の距離であり、長さbを有している。仮想三角形の残りの一辺は、位置Pbk1と位置Pbk3との間の距離であり、長さcを有している。
【0094】
バケット8はバケットピン15を中心に回転するので、長さaと長さbとは等しい。
図9に示される仮想三角形は、二等辺三角形である。仮想三角形は、長さcの底辺と、長さLbkの一対の斜辺とを有している。角度θbkは、二等辺三角形の頂角である。角度θbkは、上述した通り、バケットシリンダ12のシリンダストロークセンサ、バケットリンクに取り付けられたIMU、バケットピン15に取り付けられたポテンショメータまたはロータリーエンコーダなどにより、検出することができる。長さLbkは、バケット8の刃先8aとバケットピン15との間の距離である。
【0095】
位置計測部50は、位置Pbk1の三次元位置と、位置Pbk3の三次元位置とを計測する。計測された位置Pbk1,Pbk3の三次元位置より、長さcを演算することができる。
【0096】
ここで、
図9に示される仮想三角形について、余弦定理より、以下の式(1)が成立する。
【0097】
【0098】
上記の通り、a=b=Lbkであるので、代入して整理すると、長さLbkを求める以下の式(2)が得られる。
【0099】
【0100】
したがって、離散的に計測された2点のターゲット部40の位置の計測結果と、ターゲット部40の位置を1回目に計測したときから2回目に計測したときまでのアーム7に対するバケット8の相対回転の角度の検出結果とから、バケット8の刃先8aとバケットピン15との間の距離、すなわちバケット8の寸法を取得することができる。2つのターゲット部40の位置Pbk1,Pbk3の三次元位置と、バケット8の寸法とから、バケットピン15の三次元位置を取得することができる。
【0101】
同様に、アームピン14を回転中心としてアーム7をブーム6に対して相対回転させ、そのときの2点のターゲット部40の位置と移動するアーム7のなす角度とから、アームピン14とバケット8の刃先8aとの間の距離を求めることができる。第1実施形態で説明したベクトル計算を用いて、アーム7の寸法を取得することができる。ブームピン13を回転中心としてブーム6を旋回体3に対して相対回転させ、そのときの2点のターゲット部40の位置と移動するブーム6のなす角度とから、ブームピン13とバケット8の刃先8aとの間の距離を求めることができる。第1実施形態で説明したベクトル計算を用いて、ブーム6の寸法を取得することができる。
【0102】
上記の第1実施形態の説明では、回転中心の座標と回転半径とをパラメータとして、回転移動するターゲット部40の三次元位置から最小二乗法によってパラメータを導出した。第2実施形態で示した角度検出部を油圧ショベル100が備える場合には、角度検出部のオフセット量もパラメータに加えることができる。回転移動するターゲット部40の三次元位置から、最小二乗法によって、回転中心の座標、回転半径、および角度検出部のオフセット値を含むパラメータを、同時に求めることができる。
【0103】
角度検出部の計測精度を向上するには、作業機2が静止しているときに角度を検出するのが望ましい。たとえば、作業機2を10秒以上静止させた後に角度を検出することで、作業機2の振動の影響を低減でき、角度を精度よく検出することができる。他方、作業機2を静止させる時間中は作業が停止しており作業効率が低下するので、作業機2を静止させる時間は、たとえば60秒以下、好ましくは30秒以下であってもよい。
【0104】
上記の実施形態の説明では、作業機械の一例として油圧ショベル100を挙げているが、油圧ショベル100に限らず、ローディングショベル、機械式のロープショベル、エンジンを動力源とするが旋回モータを電動モータにしたハイブリッドショベル、エンジンの代わりに蓄電池の電力または外部給電を動力源とする電動ショベル、バケットクレーンなどの他の種類の作業機械にも適用可能である。
【0105】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 本体、2 作業機、3 旋回体、5 走行体、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、8a 刃先、10 ブームシリンダ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、13 ブームフートピン、14 アーム連結ピン、15 バケット連結ピン、26 コントローラ、31 車体IMU、32 ブームIMU、33 アームIMU、40 ターゲット部、50 位置計測部、60 情報取得部、61 入力部、65 回転半径演算部、66 ベクトル処理部、67 出力部、100 油圧ショベル、L レーザ光、Pa1~Pa3,Pb1~Pb3,Pbk1~Pbk3 位置、RX 旋回軸、Va,Va1,Vb,Vs,Vs1 ベクトル。