(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121003
(43)【公開日】2023-08-30
(54)【発明の名称】リンス液、基板の処理方法、及び半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024190
(22)【出願日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸久
(72)【発明者】
【氏名】大川 夏実
(72)【発明者】
【氏名】藤村 悟史
(72)【発明者】
【氏名】原口 高之
(72)【発明者】
【氏名】脇屋 和正
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157BC04
5F157BC18
5F157BF54
5F157BF59
5F157CB02
5F157CB13
5F157CB15
5F157CB26
5F157DA21
5F157DB33
(57)【要約】
【課題】パターン倒壊の抑制効果が高いリンス液、並びに前記リンス液を用いた基板の処理方法、及び半導体素子の製造方法の提供。
【解決手段】水酸基及びフッ素原子を有さない、動的粘度が1.05×106m2/s以下である有機溶剤(S1)を含有する、凸部を有する基板をリンスするためのリンス液。また、凸部を有する基板の前記凸部を有する表面に、請求項1~5のいずれか一項に記載のリンス液を接触させる工程(A)と、前記凸部を有する表面から前記リンス液を除去する工程(B)と、を含む、凸部を有する基板の処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基及びフッ素原子を有さない、動的粘度が1.05×106m2/s以下である有機溶剤(S1)を含有する、凸部を有する基板をリンスするためのリンス液。
【請求項2】
前記有機溶剤(S1)が、下記一般式(S1-1)で表される化合物である、請求項1に記載のリンス液。
【化1】
[式中、R
1は、炭素原子数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を表し;n1は、2又は3を表す。]
【請求項3】
下記一般式(S1-1)で表される化合物を含有する、凸部を有する基板をリンスするためのリンス液。
【化2】
[式中、R
1は、炭素原子数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を表し;n1は、2又は3を表す。]
【請求項4】
前記一般式(S1-1)で表される化合物が、ジメトキシエタン、ジメトキシプロパン、及びトリメトキシプロパンからなる群より選択される、請求項2又は3に記載のリンス液。
【請求項5】
前記基板を乾燥する前のリンスに用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のリンス液。
【請求項6】
凸部を有する基板の前記凸部を有する表面に、請求項1~5のいずれか一項に記載のリンス液を接触させる工程(A)と、
前記凸部を有する表面から前記リンス液を除去する工程(B)と、
を含む、凸部を有する基板の処理方法。
【請求項7】
前記工程(B)が前記基板を乾燥させる工程である、請求項6に記載の凸部を有する基板の処理方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の凸部を有する基板の処理方法により、凸部を有する基板を処理する工程を含む、半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンス液、基板の処理方法、及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に半導体基板のパターンの微細化が進んでいる。半導体基板のパターンの微細化に伴い、半導体基板のパターンのアスペクト比は高くなる傾向にある。
【0003】
一方、半導体製造プロセスでは、ドライエッチング後の残さやパーティクル等の混入により製造歩留まりの低下が引き起こされる。そのため、基板に残留した残さや基板に付着したパーティクル等を除去するために、洗浄液による基板に対する薬液処理が行われる。薬液処理後には、基板に純水を供給して薬液を除去する純水等によるリンス処理、および基板を高速に回転して基板上の液体を除去する乾燥処理がさらに行われる。リンス処理で用いられるリンス液は純水に限定されず、他の溶媒が用いられる場合もある。リンス処理および乾燥処理を順に行うと基板の乾燥によりリンス液(純水に限定されない)は除去される。しかし、基板上に微細なパターンが形成されている場合、基板の乾燥の際に、基板表面のパターンにおいて、パターン内に残留したリンス液の毛細管力によりパターン倒壊が発生することがある。
パターン倒壊の発生を抑制する方法として、具体的には、薬液処理に続いての純水によるリンス処理の実行後、基板に2-プロパノール(IPA)を供給し水よりも表面張力の低いIPAを振り切って乾燥するIPAを適用した方法(IPA法);及び純水によるリンス処理の実行後に、加温した基板にIPAを供給するか、加温したIPAを基板に供給して、IPAにより基板上のリンス液を置換する方法(ホットIPA法)が挙げられる(特許文献1)。ホットIPA法の一例としては、例えば、以下の手順が挙げられる。リンス処理後に、基板上面にIPAを供給してリンス液を置換し、基板上にIPAの液膜を形成する。次いで、基板を加熱してIPAの液膜と基板上面との間にIPAの蒸気膜を形成することにより、IPAの液膜を基板上面から浮上させた後、当該液膜を基板上から除去する。IPAの液膜を基板上から除去する際には、液膜の中心部に窒素ガスを吹き付けて液膜を部分的に除去することにより小径の乾燥領域を形成する。基板を回転させつつ中心部にさらに窒素ガスを吹き付けることにより、当該乾燥領域を拡大させて基板上面の全体に拡げる。これにより、パターン倒壊を抑制しつつ基板の上面を乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アスペクト比が高いパターンを有する基板の洗浄においては、従来のIPA法、及びホットIPA法では、パターンの倒壊を十分に抑制できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パターン倒壊の抑制効果が高いリンス液、並びに前記リンス液を用いた基板の処理方法、及び半導体素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0008】
本発明の第1の態様は、水酸基及びフッ素原子を有さない、動的粘度が1.05×106m2/s以下である有機溶剤(S1)を含有する、凸部を有する基板をリンスするためのリンス液である。
【0009】
本発明の第2の態様は、下記一般式(S1-1)で表される化合物を含有する、凸部を有する基板をリンスするためのリンス液である。
【0010】
【化1】
[式中、R
1は、炭素原子数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を表し;n1は、2又は3を表す。]
【0011】
本発明の第3の態様は、凸部を有する基板の前記凸部を有する表面に、前記第1の態様又は第2の態様にかかるリンス液を接触させる工程(A)と、前記凸部を有する表面から前記リンス液を除去する工程(B)と、を含む、凸部を有する基板の処理方法である。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記第3の態様にかかる基板の処理方法により、凸部を有する基板を処理する工程を含む、半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パターン倒壊の抑制効果が高いリンス液、並びに前記リンス液を用いた基板の処理方法、及び半導体素子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】基板の処理方法の一例を示すフロー図である。
【
図2】基板の処理方法の一例を示すフロー図である。
【
図3】基板の処理方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(リンス液)
本発明の第1の態様にかかるリンス液は、水酸基及びフッ素原子を有さない、動的粘度が1.05×106m2/s以下である有機溶剤(S1)を含有する。
本発明の第2の態様にかかるリンス液は、後述の一般式(S1-1)で表される化合物を含有する。一般式(S1-1)で表される化合物は、通常、有機溶剤(S1)に該当するが、有機溶剤(S1)に該当しないものも包含し得る。
上記態様にかかるリンス液は、凸部を有する基板をリンスするために用いられる。
【0016】
<有機溶剤(S1)>
有機溶剤(S1)は、水酸基及びフッ素原子を有さない有機溶剤であって、動的粘度が1.05×106m2/s以下である有機溶剤である。
後述する実施例で示すように、IPAよりもパターン倒壊効果の高いリンス液を探索したところ、動的粘度が1.05×106m2/s以下である有機溶剤を用いることにより、IPAよりもパターン倒壊が抑制されることが見出された。動的粘度が1.05×106m2/s以下であると、基板上でリンス液が均一に拡がりやすい。これが、パターン倒壊の抑制に寄与している可能性が考えられる。
有機溶剤(S1)の動的粘度の下限値は、特に限定されないが、例えば、1.0×104m2/s以上が挙げられる。有機溶剤(S1)の動的粘度は、例えば、1.0×104m2/s以上、5.0×104m2/s以上、1.0×105m2/s以上、5.0×105m2/s以上、6.0×105m2/s以上、7.0×105m2/s以上、6.0×105m2/s以上、又は9.0×105m2/s以上であってもよい。
【0017】
有機溶剤の動的粘度は、下記式(1)により算出することができる。
動的粘度(m2/s)=粘度(cp)/密度(g/ml) ・・・(1)
【0018】
粘度は、25℃における粘度である。粘度は、実測値であってもよく、理論値であってもよい。実測値を用いる場合、25℃における粘度を粘度計で測定してもよい。理論値を用いる場合、HSPiP等のソフトウェアを用いて算出した推算値でもよい。
密度は、25℃における密度である。密度は、実測値であってもよく、理論値であってもよい。実測値を用いる場合、25℃における密度を密度計で測定してもよい。理論値を用いる場合、HSPiP等のソフトウェアを用いて算出した推算値でもよい。
【0019】
有機溶剤(S1)は、水酸基及びフッ素原子を有さないという特徴を有する。水酸基を有さないことで、分子間の水素結合が強くなりすぎず、表面張力が低くなる傾向がある。また、フッ素を含む有機溶剤は、オゾン破壊係数及び地球温暖化係数が高く、環境への負荷が大きい。有機溶剤(S1)は、フッ素原子を有さないため、環境に対する負荷が低くなり得る。
【0020】
有機溶剤(S1)は、沸点における蒸発潜熱が40KJ/mol以下であってもよい。沸点における蒸発潜熱は、20~40KJ/molが好ましく、25~40KJ/molがより好ましい。沸点における蒸発潜熱は、Joback法により算出することができる。
有機溶剤(S1)は、25℃における蒸発潜熱が43KJ/mol以下であってもよい。25℃における蒸発潜熱は、20~43KJ/molが好ましく、25~43KJ/molがより好ましい。
有機溶剤(S1)は、60℃における蒸発潜熱が45KJ/mol以下であってもよい。25℃における蒸発潜熱は、20~45KJ/molが好ましく、25~45KJ/molがより好ましい。
25℃及び60℃における蒸発潜熱は、Watson式により算出することができる。
有機溶剤(S1)の蒸発潜熱が上記好ましい上限値以下であると、有機溶剤(S1)の揮発時に空気中の水分が凝集しにくい。そのため、ウオーターマークに起因するディフェクトが基板上に残りにくくなり、結果としてリンス乾燥後の基板上のディフェクトを低減することができる。
【0021】
有機溶剤(S1)は、二酸化炭素(CO2)のハンセン溶解度パラメータと近い値のハンセン溶解度パラメータを有してもよい。有機溶剤(S1)のハンセン溶解度パラメータが、二酸化炭素のハンセン溶解度パラメータと近い値であると、有機溶剤(S1)と二酸化炭素との相溶性が高くなる。CO2との相溶性が高いと、超臨界CO2を用いて超臨界乾燥を行う場合に超臨界CO2により有機溶剤(S1)が置換されやすくなる。
【0022】
ハンセン溶解度パラメータは、例えば、Charles M.Hansenによる「Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook」,CRC Press(2007)及びAllan F.M.Barton(1999)編集の「The CRC Handbook and Solubility Parameters and Cohesion Parameters,」(1999)において、Charles Hansenにより説明されている溶解度パラメータ及び凝集特性に基づいた、所定のパラメータから算出できる。ハンセン溶解度パラメータの算出には、例えば、HSPiP等のソフトウェアを用いることができる。
【0023】
ハンセン溶解度パラメータは、数値定数として理論的に計算され、溶剤材料が特定の溶質を溶解させる能力を予測するのに有用なツールである。
ハンセン溶解度パラメータは、実験的に及び理論的に誘導された下記3つのハンセン溶解度パラメータ(即ち、δD、δP及びδH)を組み合わせることにより、材料の全体的な強度及び選択性の尺度とすることができる。ハンセン溶解度パラメータの単位は、MPa0.5又は(J/cc)0.5で付与される。
δD:分子間の分散力に由来するエネルギー。
δP:分子間の極性力に由来するエネルギー。
δH:分子間の水素結合力に由来するエネルギー。
【0024】
有機溶剤(S1)と、二酸化炭素との相溶性は、ハンセン溶解度パラメータ間の相互作用間距離(Ra)を指標としてもよい。
ハンセン溶解度パラメータ(δD、δP、δH)を、ハンセン空間としても既知の3次元内の点に関する座標としてプロットする。
この3次元空間(ハンセン空間)内で、2種の分子がより接近する程、互いに溶解する可能性がより高くなることを示す。ハンセン空間内で、2種の分子(分子(1)及び(2))が近接しているか否かを評価するためには、ハンセン溶解度パラメータ間の相互作用間距離(Ra)を求める。Raは、以下の式により計算される。
【0025】
(Ra)2=4(δd2-δd1)2+(δp2-δp1)2+(δh2-δh1)2
[上記式において、
δd1、δp1、及びδh1は、それぞれ、分子(1)のδD、δP、及びδHを示す。
δd2、δp2、及びδh2は、それぞれ、分子(2)のδD、δP、及びδHを示す。]
【0026】
有機溶剤(S1)のδDとしては、例えば、13~17が挙げられ、14~16が好ましい。
有機溶剤(S1)のδPとしては、例えば、3~8が挙げられ、4~7が好ましい。
有機溶剤(S1)のδHとしては、例えば、2~8が挙げられ、3~7が好ましい。
【0027】
有機溶剤(S1)は、エーテル系溶剤が好ましい。有機溶剤(S1)の具体例としては、下記一般式(S1-1)で表される化合物が挙げられる。本態様にかかるリンス液は、下記一般式(S1-1)で表される化合物を含有することにより、パターン倒壊抑制効果に優れる。また、リンス液は、下記式(S1-1)で表される化合物を含有することで、ウォーターマークディフェクトを低減できる。下記式(S1-1)で表される化合物は、CO2との相溶性が高く、超臨界乾燥プロセス用の有機溶剤としても好適に用いることができる。
【0028】
【化2】
[式中、R
1は、炭素原子数1~3の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基を表し;n1は、2又は3を表す。]
【0029】
有機溶剤(S1)は、薬液処理後に水リンスした場合、水リンス液を置換できることが必要である。この場合、水への溶解性が必要であるため、前記一般式(S1-1)中のR1は炭素原子1~3となる。
【0030】
前記一般式(S1-1)で表される化合物は、ジメトキシエタン、ジメトキシプロパン、及びトリメトキシプロパンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含むことが好ましい。
前記一般式(S1-1)で表される化合物の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン(下記式(S1-1-1)で表される化合物)、2,2-ジメトキシプロパン(下記式(S1-1-2)で表される化合物)、1,1,1-トリメトキシプロパン(下記式(S1-1-3)で表される化合物)、1,2,3-トリメトキシプロパン(下記式(S1-1-4)で表される化合物)、1,1,3-トリメトキシプロパン(下記式(S1-1-5)で表される化合物)が挙げられる。
【0031】
【0032】
有機溶剤(S1)又は前記式(S1-1)で表される化合物(以下、まとめて「(S1)成分」ともいう)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のリンス液における(S1)成分の含有量は、リンス液の全質量に対し、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。本実施形態のリンス液における(S1)成分の含有量は、リンス液の全質量に対し、100質量%であってもよい。本実施形態のリンス液における(S1)成分の含有量としては、リンス液の全質量に対し、30~100質量%、50~100質量%、60~100質量、70~100質量%、及び80~100質量%等が挙げられる。(S1)成分の含有量が上記の好ましい範囲内であると、パターン倒壊抑制効果がより向上する。
【0033】
<任意成分>
本実施形態のリンス液は、(S1)成分に加えて、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、有機溶剤(S1)以外の有機溶剤(以下、「有機溶剤(S2)」ともいう)が挙げられる。
【0034】
有機溶剤(S2)としては、例えば、動的粘度が1.05×106m2/s超である有機溶剤、水酸基を含む有機溶剤、フッ素原子を含む有機溶剤等が挙げられる。動的粘度が1.05×106m2/s超である有機溶剤としては、例えば、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アルコール系溶剤等のプロトン性極性溶剤;エステル系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、ニトリル系溶剤等の非プロトン性極性溶剤;及び炭化水素系溶剤等が挙げられる。水酸基を含む有機溶剤としては、例えば、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アルコール系溶剤等のプロトン性極性溶剤が挙げられる。フッ素原子を含む有機溶剤としては、例えば、前記で挙げた有機溶剤の1以上の水素原子がフッ素原子で置換された有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤(S2)としては、例えば、アルコール系溶剤が挙げられる。アルコール系溶剤の具体例としては、例えば、2-プロパノールが挙げられる。
【0035】
有機溶剤(S2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のリンス液における有機溶剤(S2)の含有量としては、リンス液の全質量に対し、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。本実施形態のリンス液における有機溶剤(S2)の含有量としては、リンス液の全質量に対し、0~70質量%、0~60質量%、0~50質量%、0~40質量%、0~30質量%、0~20質量%、及び0~10質量%が挙げられる。
有機溶剤(S2)に対する(S1)成分の割合(質量比)としては、[(S1)成分/有機溶剤(S2)]=20/80~100/0、30/70~100/0、40/60~100/0、50/50~100/0、60/40~100/0、70/30~100/0、80/20~100/0、及び90/10~100/0が挙げられる。
有機溶剤(S2)の含有量が上記の好ましい範囲内であると、パターン倒壊抑制効果がより向上する。有機溶剤(S2)に対する(S1)成分の割合(質量比)が上記好ましい範囲内であると、パターン倒壊抑制効果がより向上する。
【0036】
有機溶剤(S2)以外の任意成分としては、例えば、金属キレート剤(アミノカルボン酸系キレート剤、ホスホン酸系キレート剤、アセチレンアルコール等)、pH調整剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
本実施形態のリンス液は、有機溶剤(S2)を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、動的粘度が1.05×106m2/s超である有機溶剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、及びアルコール系溶剤からなる群より選択される1種以上を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、プロトン性極性溶剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、エステル系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤、及びニトリル系溶剤からなる群より選択される1種以上を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、非プロトン性極性溶剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、フッ素を含む有機溶剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、炭化水素系溶剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、2-プロパノールを含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、前記一般式(S1-1)で表される化合物以外の有機溶剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、界面活性剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、金属キレート剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、pH調整剤を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、水を含有しなくてもよい。本実施形態のリンス液は、撥水化剤を含有しなくてもよい。
【0038】
<不純物等>
本実施形態のリンス液には、例えば、Fe原子、Cr原子、Ni原子、Zn原子、Ca原子、又はPb原子等の金属原子を含む金属不純物が含まれていてもよい。本実施形態のリンス液における前記金属原子の合計含有量は、リンス液の全質量に対し、好ましくは100質量ppt以下である。金属原子の合計含有量の下限値は、低いほど好ましいが、例えば、0.001質量ppt以上が挙げられる。金属原子の合計含有量は、例えば、0.001質量ppt~100質量pptが挙げられる。金属原子の合計含有量を前記好ましい上限値以下とすることで、リンス液の欠陥抑制性や残渣抑制性が向上する。金属原子の合計含有量を前記好ましい下限値以上とすることで、金属原子が系中に遊離して存在しにくくなり、リンス対象物全体の製造歩留まりに悪影響を与えにくくなると考えられる。
金属不純物の含有量は、例えば、フィルタリング等の精製処理により調整することができる。フィルタリング等の精製処理は、リンス液を調製する前に、原料の一部又は全部に対して行ってもよく、リンス液の調製後に行ってもよい。
【0039】
本実施形態のリンス液には、例えば、有機物由来の不純物(有機不純物)が含まれていてもよい。本実施形態のリンス液における前記有機不純物の合計含有量は、好ましくは、5000質量ppm以下である。有機不純物の含有量の下限は、低いほど好ましいが、例えば0.1質量ppm以上が挙げられる。有機不純物の合計含有量としては、例えば、0.1質量ppm~5000質量ppmが挙げられる。
【0040】
本実施形態のリンス液には、例えば、光散乱式液中粒子計数器によって計数されるようなサイズの被計数体が含まれていてもよい。被計数体のサイズは、例えば、0.04μm以上である。本実施形態のリンス液における被計数体の数は、例えば、リンス液1mLあたり1,000個以下であり、下限値は例えば1個以上である。
【0041】
前記有機不純物及び/又は被計数体は、リンス液に添加されてもよく、リンス液の製造工程において不可避的にリンス液に混入されるものであってもよい。リンス液の製造工程において不可避的に混入される場合としては、例えば、有機不純物が、リンス液の製造に用いる原料(例えば、有機溶剤)に含まれる場合、及び、リンス液の製造工程で外部環境から混入する(例えば、コンタミネーション)場合等が挙げられるが、上記に制限されない。被計数体をリンス液に添加する場合、リンス対象物の表面粗さ等を考慮して特定のサイズごとに存在比を調整してもよい。
【0042】
本実施形態のリンス液に用いる有機溶剤(有機溶剤(S1)、前記一般式(S1-1)で表される化合物、任意に有機溶剤(S2))は、公知の方法で精製されてもよい。有機溶剤の精製方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。有機溶剤の精製方法としては、例えば、蒸留精製が挙げられる。有機溶剤は、金属不純物、有機不純物等を低減するために、フィルター濾過、イオン交換樹脂等による処理が行われてもよい。金属不純物を低減するためには、例えば、キレートフィルター濾過、イオン交換樹脂による処理等を行うことができる。粒子状不純物を除去するためには、例えば、ポリエチレン製フィルター、ポリプロピレン製フィルター、ポリテトラフルオロエチレン製フィルター、ナイロン製フィルター、ポリイミド製フィルター、ポリアミドイミド製フィルター、又はポリアミド製フィルター等を用いることができる。
有機溶剤の純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.9%以上がさらに好ましい。
【0043】
<保存容器>
本実施形態のリンス液の保存方法は、特に限定されず、保存容器も従来公知のものを使用できる。リンス液の安定性が確保されるように、容器に保存する際の容器内の空隙率、及び/又は空隙部分を充填するガス種は適宜設定すればよい。例えば、保存容器内の空隙率としては、0.01~30体積%程度が挙げられる。
【0044】
<基板>
本実施形態のリンス液は、凸部を有する基板をリンスするために用いられる。
基板は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。基板は、集積回路装置、光学装置、マイクロマシン、及び機械精密装置等を製造するために用いられる任意の基板であってよい。
基板としては、例えば、ケイ素(Si)基板、窒化ケイ素(SiN)基板、シリコン酸化膜(Ox)基板、炭化ケイ素(SiC)基板、タングステン(W)基板、炭化タングステン(WC)基板、コバルト(Co)基板、窒化チタン(TiN)基板、窒化タンタル(TaN)基板、ゲルマニウム(Ge)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)基板、アルミニウム(Al)基板、ニッケル(Ni)基板、チタン(Ti)基板、ルテニウム(Ru)基板、銅(Cu)基板等が挙げられる。
ケイ素(Si)基板を例にとって説明すると、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が表面に形成されたものであってもよく、前記酸化ケイ素膜にパターンが形成されたものであってもよい。
【0045】
本実施形態のリンス液が適用される基板は、表面に凸部が形成されている。基板が有する凸部は、ライン形状であってもよく、ピラー形状であってもよい。凸部がピラー形状である場合、ピラーの形状は特に限定されない。ピラーの形状としては、例えば、円柱形状、多角柱形状(四角柱形状など)等が挙げられる。
【0046】
基板が有する凸部の数は、特に限定されない。凸部の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。凸部が2個以上ある場合、凸部の間に凹部が存在するため、凹凸パターンともいう。基板は、好ましくは、凹凸パターンを有する。
図5に、凹凸パターンの一例を示す。
図5に示す凹凸パターン20は、複数の凸部21と複数の凹部22とにより構成される。凹凸パターン20は、基板10の表面に形成されている。
【0047】
基板が有する凸部(凹凸パターン)のアスペクト比は、4以上が好ましく、6以上がより好ましく、8以上がさらに好ましく、10以上が特に好ましい。凸部のアスペクト比は、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、又は18以上であってもよい。凸部(凹凸パターン)のアスペクト比の上限値は、特に限定されないが、例えば、30以下、25以下、又は20以下が挙げられる。凸部(凹凸パターン)のアスペクト比の範囲は、例えば、4~30、6~25、8~25、10~25、15~25、又は15~20であってもよい。本実施形態のリンス液は、パターン倒れの抑制効果が高いため、アスペクト比の高い凸部を有する基板に好適に用いることができる。
【0048】
凸部のサイズは特に限定されない。凸部がピラー形状である場合、ピラーの直径としては、例えば、10~50nm、15~30nm、及び15~25nmが挙げられる。
凸部がライン形状である場合、ライン幅としては、例えば、50nm以下、32nm以下、及び22nm以下が挙げられる。基板は、ラインアンドスペースパターン(LSパターン)を有してもよい。LSパターンのライン幅及びライン間寸法としては、例えば、50nm以下、32nm以下、及び22nm以下が挙げられる。ライン幅及びライン間寸法の範囲としては、例えば、10~50nm、15~32nm、及び15~22nmが挙げられる。
本実施形態のリンス液は、パターン倒れの抑制効果が高いため、微細なパターンを有する基板に好適に用いることができる。
【0049】
基板が有する凸部は、無機層の表面に形成されてもよく、有機層の表面に形成されてもよい。基板は、好ましくは、無機層に形成される無機パターン、又は有機層に形成される有機パターンを有する。
【0050】
無機パターンとしては、例えば、フォトレジスト法により基板に存在する無機層の表面にエッチングマスクを作製し、その後、エッチング処理することにより形成された無機パターンが挙げられる。無機層としては、基板自体のほか、基板を構成する元素の酸化物からなる層、基板の表面に形成した窒化珪素、窒化チタン、タングステン等の無機物からなる層等が挙げられる。無機層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの製造過程において形成される無機層が挙げられる。
【0051】
有機パターンとしては、フォトレジスト等を用いてフォトリソグラフィ一法により基板上に形成された樹脂パターン等が挙げられる。有機パターンは、例えば、基板上にフォトレジスト膜である有機層を形成し、この有機層に対してフォトマスクを通して露光し、現像することによって形成することができる。有機層としては、基板自体の表面のほか、基板の表面に設けられた積層膜の表面等に設けられた有機層であってもよい。有機層としては、特に限定されないが、半導体デバイスの作成過程において、エッチング、マスクを形成するために設けられた有機物の膜が挙げられる。
【0052】
本実施形態のリンス液は、基板を乾燥する前のリンスに用いられる。
図1~3は、それぞれ、本実施形態のリンス液が適用される基板の処理方法の例を示す。
図1に示す基板の処理方法では、薬液処理工程(S101)において薬液(剥離液、洗浄液、エッチング液等)による基板の処理が行われ、水リンス工程(S102)において水リンス液による基板のリンスが行われ、リンス工程(S103)において本実施形態のリンス液による基板のリンスが行われ、乾燥工程(S104)において基板の乾燥が行われる。前述のように、本実施形態のリンス液は、乾燥工程(S104)の直前のリンス工程(S103)に用いられる。
図2に示す基板の処理方法では、薬液処理工程(S201)において薬液による基板の処理が行われ、水リンス工程(S202)において水リンス液による基板のリンスが行われ、溶剤処理工程(S203)において溶剤による基板の処理が行われ、撥水処理工程(S204)において撥水化剤による基板の撥水処理が行われ、リンス工程(S205)において本実施形態のリンス液による基板のリンスが行われ、乾燥工程(S206)において基板の乾燥が行われる。前述のように、本実施形態のリンス液は、乾燥工程(S206)の直前のリンス工程(S205)に用いられる。
図3に示す基板の処理方法では、薬液処理工程(S301)において薬液による基板の処理が行われ、水リンス工程(S302)において水リンス液による基板のリンスが行われ、リンス工程(S303)において本実施形態のリンス液による基板のリンスが行われ、乾燥工程(S304)において基板の超臨界乾燥が行われる。前述のように、本実施形態のリンス液は、超臨界乾燥工程(S304)の直前のリンス工程(S203)に用いられる。
【0053】
凹凸パターンを有する基板の乾燥の際には、パターン内に残留したリンス液の毛細管力によりパターン倒壊が発生することがある。特に、基板がアスペクト比の高いパターンを有する場合、パターン倒壊が発生しやすい。しかしながら、本実施形態のリンス液を用いて基板を乾燥する前のリンスを行うことにより、乾燥時のパターン倒壊を抑制することができる。
【0054】
本実施形態のリンス液は、動的粘度が1.05×106m2/s以下であり、且つ水酸基及びフッ素原子を有さない有機溶剤(S1)を含有することで、あるいは、前記一般式(S1-1)で表される化合物を含有することで、基板表面で、均等な液膜を形成できると考えられる。これにより、基板の乾燥の際に、パターンの凹部に略均等に残留したリンス液が均等に除去されていくことで、パターン倒壊が抑制されると推測される。
また、有機溶剤(S1)又は前記一般式(S1-1)で表される化合物はフッ素原子を有さないため、環境負荷の低い基板の処理方法を実現することができる。
【0055】
(基板の処理方法)
本発明の第3の態様にかかる基板の処理方法は、凸部を有する基板の前記凸部を有する表面に、第1の態様又は第2の態様にかかるリンス液を接触させる工程(A)と、前記凸部を有する表面から前記リンス液を除去する工程(B)と、を含む。本態様にかかる基板の処理方法は、凸部を有する基板に適用される。
【0056】
<工程(A)>
工程(A)は、凸部を有する基板の前記凸部を有する表面に、第1の態様又は第2の態様にかかるリンス液を接触させる工程である。
「凸部を有する基板」は、上記「(リンス液)」の項で説明したものと同様である。
工程(A)では、基板の凸部を有する表面に、リンス液を接触させる。リンス液を基板の表面に接触させる方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。かかる方法としては、例えば、スピンコート法、浸漬法(ディップ法)、スプレー法、液盛り法(パドル法)等が挙げられる。
【0057】
スピンコート法は、スピンコーター等を用いて基板を回転させながら、基板にリンス液を供給する方法である。リンス液の供給方法としては、基板にリンス液を噴霧する方法、基板にリンス液を滴下する方法等が挙げられる。
浸漬法(ディップ法)は、リンス液に基板を浸漬させる方法である。
スプレー法は、基板を所定の方向に搬送しながら、その搬送空間にリンス液を噴射する方法である。
液盛り法(パドル法)は、表面張力によってリンス液盛り上げて基板上に留置し、一定時間静止する方法である。
【0058】
リンス液の基板表面への接触方法としては、スピンコート法が好ましい。スピンコート法におけるスピンの回転速度としては、例えば、100~5000rpm、500~3000rpm、及び800~2000rpmが挙げられる。
【0059】
工程(A)を行う温度は、特に限定されない。温度としては、例えば、15~50℃が挙げられる。リンス液と基板との接触時間としては、例えば、10秒~10分、20秒~5分、30~250秒、及び60~200秒が挙げられる。
【0060】
基板の表面にリンス液の液膜を形成後、基板を加熱してもよい。加熱により、液膜と基板上面との間にリンス液の蒸気膜が形成される。加熱温度としては、例えば、50~70℃が挙げられる。加熱は、加熱プレート等を用いて行うことができる。
【0061】
<工程(B)>
工程(B)は、凸部を有する基板の表面からリンス液を除去する工程である。
基板の表面からリンス液を完全に除去することにより、基板を乾燥することができる。したがって、工程(B)は、基板を乾燥する工程であってもよい。
【0062】
基板の表面からのリンス液の除去は、公知の方法で行うことができる。基板の表面からリンス液を除去する方法としては、例えば、スピン乾燥、窒素ブロー乾燥、及び超臨界乾燥等が挙げられる。
スピン乾燥は、基板を回転することにより、遠心力で基板の表面からリンス液を振り切って除去する方法ある。
窒素ブロー乾燥は、基板の表面に窒素ガスをブローして、基板の表面からリンス液を除去する方法である。
超臨界乾燥は、基板の表面に超臨界流体を接触させて、基板の表面からリンス液を除去する方法である。
【0063】
<任意工程>
本実施形態の方法は、上記工程(A)及び工程(B)に加えて、任意工程を含んでいてもよい。任意工程としては、例えば、薬液処理工程、水リンス工程、撥水処理工程、及び溶剤処理工程等が挙げられる。
【0064】
≪薬液処理工程≫
薬液処理工程は、所望の薬液で基板を処理する工程である。薬液は、基板の種類及び処理の種類に応じて、適宜選択することができる。薬液としては、例えば、レジスト又は接着剤等の剥離液、洗浄液、エッチング液等が挙げられるが、これらに限定されない。剥離液、洗浄液、及びエッチング液等の薬液は、基板に付着するパーティクルの除去、ドライエッチング後の残さ除去等の効果を有する。
【0065】
薬液処理は、通常、基板の凸部を有する表面(例えば、凹凸パターンを有する表面)に対して行われる。薬液処理は、基板の凸部を有する表面に、薬液を接触させることにより行うことができる。薬液を基板の表面に接触させる方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。薬液を基板と接触させる方法としては、例えば、上記工程(A)で挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
【0066】
薬液処理工程としては、例えば、洗浄液による洗浄工程が挙げられる。洗浄工程における洗浄方法は、洗浄対象となる基板の種類等に応じて適宜選択することができる。洗浄方法は、基板の洗浄方法として公知の方法を特に制限なく用いることができる。
洗浄方法としては、例えば、公知のRCA洗浄法に準じた洗浄方法が挙げられる。RCR洗浄法では、まず、基板を過酸化水素と水酸化アンモニウムとのSC-1溶液に浸漬して、基板から微粒子及び有機物を除去する。次いで、基板をフッ酸水溶液に浸漬して、基板表面の自然酸化膜を除去する。その後、基板を、過酸化水素と希塩酸とのSC-2溶液の酸性溶液に浸漬して、SC-1溶液で不溶のアルカリイオンや金属不純物を除去する。
【0067】
≪水リンス工程≫
水リンス工程は、水リンス液で基板をリンスする工程である。水リンス工程は、通常、薬液処理工程の後、基板表面に付着している薬液を除去するために行われる。この場合、基板表面に付着している薬液は、水リンス液で置換されて除去される。
【0068】
水リンス工程は、基板の凸部を有する表面(例えば、凹凸パターンを有する表面)に、水リンス液を接触させることにより行うことができる。水リンス液を基板の表面に接触させる方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。水リンス液を基板と接触させる方法としては、例えば、上記工程(A)で挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
【0069】
水リンスを行う温度は、特に限定されない。温度としては、例えば、15~80℃が挙げられる。基板と水リンス液との接触時間としては、例えば、10秒~10分、20秒~5分、30~250秒、及び50~200秒が挙げられる。
【0070】
水リンス工程に用いる水リンス液は、水を含む。水リンス液に用いる水としては、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などの浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水を用いることがより好ましい。水は、不可避的に混入する微量成分を含んでいてもよい。
水リンス液における水の含有量としては、水リンス液の全質量に対し、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。水リンス液における水の含有量は、100質量%であってもよい。すなわち、水リンス液は、水であってもよい。
【0071】
水リンス液は、水に加えて、任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤等の公知の添加剤、及び有機溶剤等が挙げられる。
前記有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、含ハロゲン溶剤、スルホキシド系溶剤、アルコール系溶剤、多価アルコールの誘導体、含窒素化合物溶剤等が挙げられる。前記有機溶剤は、水溶性有機溶剤が好ましい。
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0072】
フッ素系界面活性剤として、具体例には、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれもDIC社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0073】
シリコーン系界面活性剤として、具体例には、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0074】
≪撥水処理工程≫
撥水処理工程は、基板の撥水処理を行う工程である。基板の撥水処理を行うことにより、基板の表面が撥水化されて、基板表面に対する水分の残留が抑制される。
【0075】
撥水処理工程は、基板の凸部を有する表面(例えば、凹凸パターンを有する表面)に、撥水化剤を接触させることにより行うことができる。撥水化剤を基板の表面に接触させる方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。撥水化剤を基板と接触させる方法としては、例えば、上記工程(A)で挙げた方法、及び基板の表面に撥水化剤の蒸気を接触させる方法等が挙げられる。
【0076】
撥水化剤は、特に限定されず、基板の材質に応じて、撥水処理に一般的に用いられるものを適宜選択して使用することができる。撥水化剤としては、例えば、シリル化剤を含有するものが挙げられる。
【0077】
シリル化剤としては、特に限定されず、公知のシリル化剤を特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば下記一般式(1)~(3)のいずれかで表されるシリル化剤を用いることができる。なお、下記一般式(1)~(3)において、アルキル基は炭素数1~5であり、シクロアルキル基は炭素数5~10であり、アルコキシ基は炭素数1~5であり、ヘテロシクロアルキル基は炭素数5~10である。
【0078】
【化4】
[式(1)中、R
1は水素原子、又は飽和若しくは不飽和アルキル基を示し、R
2は飽和若しくは不飽和アルキル基、飽和若しくは不飽和シクロアルキル基、又は飽和若しくは不飽和ヘテロシクロアルキル基を示す。R
1及びR
2は互いに結合して窒素原子を有する飽和又は不飽和ヘテロシクロアルキル基を形成してもよい。]
【0079】
【化5】
[式(2)中、R
3は水素原子、メチル基、トリメチルシリル基、又はジメチルシリル基を示し、R
4,R
5はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はビニル基を示す。]
【0080】
【化6】
[式(3)中、XはO、CHR
7、CHOR
7、CR
7R
7、又はNR
8を示し、R
6,R
7はそれぞれ独立に水素原子、飽和若しくは不飽和アルキル基、飽和若しくは不飽和シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、トリアルキルシロキシ基、アルコキシ基、フェニル基、フェネチル基、又はアセチル基を示し、R
8は水素原子、アルキル基、又はトリアルキルシリル基を示す。]
【0081】
上記式(1)で表されるシリル化剤としては、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N,N-ジエチルアミノトリメチルシラン、t-ブチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、トリメチルシリルアセタミド、トリメチルシリルピペリジン、トリメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルモルホリン、3-トリメチルシリル-2-オキサゾリジノン、トリメチルシリルピラゾール、トリメチルシリルピロリジン、2-トリメチルシリル-1,2,3-トリアゾール、1-トリメチルシリル-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。
【0082】
上記式(2)で表されるシリル化剤としては、ヘキサメチルジシラザン、N-メチルヘキサメチルジシラザン、1,2-ジ-N-オクチルテトラメチルジシラザン、1,2-ジビニルテトラメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、トリス(ジメチルシリル)アミン等が挙げられる。
【0083】
上記式(3)で表されるシリル化剤としては、トリメチルシリルアセテート、トリメチルシリルプロピオネート、トリメチルシリルブチレート、トリメチルシリルオキシ-3-ペンテン-2-オン等が挙げられる。
【0084】
前記シリル化剤は、適切な溶剤に溶解して用いることができる。シリル化剤の溶剤は、特に限定されず、シリル化剤を溶解でき、且つパターンに対するダメージの少ないものを適宜選択して用いることができる。
シリル化剤の溶剤の具体例としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2-ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン等のスルホン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアミド類;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-プロピル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン等のラクタム類;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル類;ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルグリコール等のジアルキルグリコールエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン等のテルペン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)など];等が挙げられる。
【0085】
撥水化剤におけるシリル化剤の濃度としては、撥水化剤の全質量に対し、0.1~50質量%が挙げられ、0.5~30質量%が好ましく、1.0~20質量%がより好ましい。シリル化剤の濃度を前記範囲内とすることにより、シリル化剤の塗布性を確保することができ、且つ基板の表面に対する撥水化効果を得られやすい。
【0086】
撥水処理を行う温度は、特に限定されない。温度としては、例えば、15~50℃が挙げられる。基板と撥水化剤との接触時間としては、例えば、10秒~10分、20秒~5分、30~250秒、及び50~200秒が挙げられる。
【0087】
<溶剤処理工程>
溶剤処理工程は、溶剤で基板を処理する工程である。溶剤処理工程は、例えば、撥水処理工程の前に、基板の表面に付着している水リンス液を除去するために行われる。この場合、基板表面に付着している水リンス液は、溶剤で置換されて除去される。
【0088】
溶剤処理工程は、基板の凸部を有する表面(例えば、凹凸パターンを有する表面)に、溶剤を接触させることにより行うことができる。溶剤を基板の表面に接触させる方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。溶剤を基板と接触させる方法としては、例えば、上記工程(A)で挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
【0089】
溶剤処理を行う温度は、特に限定されない。温度としては、例えば、15~80℃が挙げられる。基板と溶剤との接触時間としては、例えば、10秒~10分、20秒~5分、30~250秒、及び50~200秒が挙げられる。
【0090】
溶剤処理工程に用いる溶剤は、基板の種類及び/又は撥水化剤の種類に応じて、適宜選択することができる。溶剤としては、例えば、上記有機溶剤(S2)が挙げられる。溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤が挙げられる。アルコール系溶剤の具体例としては、例えば、2-プロパノールが挙げられる。
【0091】
<処理例(1)>
図1は、本実施形態の基板の処理方法を適用した基板の処理例(1)を示すフロー図である。処理例(1)では、薬液処理工程(S101)、水リンス工程(S102)、リンス工程(S103)、及び乾燥工程(S104)の順で基板の処理が実施されている。処理例(1)において、リンス工程(S103)が上記工程(A)に該当し、乾燥工程(S104)が上記工程(B)に該当する。
図1に示す各工程の間には、他の処理が行われてもよく、行われなくてもよい。
図1に示す各工程間では、他の処理が行われないことが好ましい。
図1に示す各工程の間で、基板の凸部を有する表面は、乾燥させないことが好ましい。すなわち、前工程における処理液が付着した基板に対し、後工程の処理液を接触させて、基板に付着している前工程の処理液を、後工程の処理液で置換することが好ましい。
例えば、処理例(1)は次のように行うことができる。薬液処理工程(S101)において薬液で基板が処理される。水リンス工程(S102)において、水リンス液が基板に供給され、基板に残留する薬液が水リンス液で置換される。リンス工程(S103)において、リンス液が基板に供給され、基板に残留する水リンス液がリンス液で置換される。乾燥工程(S104)において、基板に残留するリンス液が除去され、基板が乾燥される。
【0092】
<処理例(2)>
図2は、本実施形態の基板の処理方法を適用した基板の処理例(2)を示すフロー図である。処理例(2)では、薬液処理工程(S201)、水リンス工程(S202),溶剤処理工程(S203)、撥水処理工程(S204)、リンス工程(S205)、及び乾燥工程(S206)の順で基板の処理が実施されている。処理例(2)において、リンス工程(S205)が上記工程(A)に該当し、乾燥工程(S206)が上記工程(B)に該当する。
図2に示す各工程の間には、他の処理が行われてもよく、行われなくてもよい。
図2に示す各工程間では、他の処理が行われないことが好ましい。
図2に示す各工程の間で、基板の凸部を有する表面は、乾燥させないことが好ましい。すなわち、前工程における処理液が付着した基板に対し、後工程の処理液を接触させて、基板に付着している前工程の処理液を、後工程の処理液で置換することが好ましい。
例えば、処理例(2)は次のように行うことができる。薬液処理工程(S201)において薬液で基板が処理される。水リンス工程(S202)において、水リンス液が基板に供給され、基板に残留する薬液が水リンス液で置換される。溶剤処理工程(S203)において、溶剤が基板に供給され、基板に残留する水リンス液が溶剤で置換される。撥水処理工程(S204)において、撥水化剤が基板に供給され、基板に残留する溶剤が撥水化剤で置換される。リンス工程(S205)において、リンス液が基板に供給され、基板に残留する撥水化剤がリンス液で置換される。乾燥工程(S206)において、基板に残留するリンス液が除去され、基板が乾燥される。
【0093】
<処理例(3)>
図3は、本実施形態の基板の処理方法を適用した基板の処理例(3)を示すフロー図である。処理例(3)では、薬液処理工程(S301)、水リンス工程(S302)、リンス工程(S303)、及び超臨界乾燥工程(S304)の順で基板の処理が実施されている。処理例(3)において、リンス工程(S303)が上記工程(A)に該当し、超臨界乾燥工程(S304)が上記工程(B)に該当する。
図3に示す各工程の間には、他の処理が行われてもよく、行われなくてもよい。
図3に示す各工程間では、他の処理が行われないことが好ましい。
図3に示す各工程の間で、基板の凸部を有する表面は、乾燥させないことが好ましい。すなわち、前工程における処理液が付着した基板に対し、後工程の処理液を接触させて、基板に付着している前工程の処理液を、後工程の処理液で置換することが好ましい。
例えば、処理例(3)は次のように行うことができる。薬液処理工程(S301)において薬液で基板が処理される。水リンス工程(S302)において、水リンス液が基板に供給され、基板に残留する薬液が水リンス液で置換される。リンス工程(S303)において、リンス液が基板に供給され、基板に残留する水リンス液がリンス液で置換される。超臨界乾燥工程(S304)において、基板に残留するリンス液が除去され、基板が乾燥される。
【0094】
≪超臨界乾燥工程(S304)≫
図4は、超臨界乾燥の一例を示すフロー図である。超臨界乾燥は、超臨界状態に加温及び加圧可能なチャンバー内で行うことができる。チャンバーとしては、例えば、ステンレス鋼で形成された所定の耐圧性が確保された高圧容器が挙げられる。
【0095】
超臨界流体接触工程(S401):
超臨界流体接触工程は、基板の凸部を有する表面(例えば、凹凸パターンを有する表面)に、超臨界流体を接触させる工程である。超臨界流体とは、超臨界状態にある物質である。超臨界状態とは、臨界点以上の温度及び圧力下においた物質の状態である。超臨界流体は、気体の拡散性と、液体の溶解性とを併せ持つ。
超臨界流体として用いる処理流体としては、例えば、二酸化炭素、ハイドロフルオロエーテル(HFE)等が挙げられる。
【0096】
超臨界流体を基板に接触させる方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、チャンバーに基板を入れて、液体状態の処理流体をチャンバー内に供給し、液体状態の処理流体を基板の凸部を有する表面に接触させる。これにより、基板の表面に付着するリンス液が、処理流体に溶解する。次いで、チャンバー内が処理流体の臨界点以上の温度及び圧力となるように、チャンバー内を昇温及び加圧して、処理流体を超臨界流体とする。これにより、基板の表面(基板の表面に付着するリンス液)に、超臨界流体を接触させることができる。
処理流体が二酸化炭素である場合、液体状態の処理流体として液化二酸化炭素を用いることができる、液化二酸化炭素を超臨界流体とする条件としては、例えば、温度35℃、圧力7.5MPaが挙げられる。
【0097】
(S1)成分として、処理流体と相溶性が高い有機溶剤を用いることにより、リンス液の処理流体に対する溶解性が向上する。そのため、後述のリンス液除去工程において、リンス液を良好に除去することができる。処理流体との相溶性は、例えば、ハンセン溶解度パラメータの類似性により判断することができる。例えば、処理流体として二酸化炭素を用いる場合、(S1)成分として、二酸化炭素と類似したハンセン溶解度パラメータを有する有機溶剤を用いることが好ましい。
【0098】
超臨界流体除去工程(S402):
超臨界流体除去工程は、基板の凸部を有する表面(例えば、凹凸パターンを有する表面)から、超臨界流体を除去する工程である。基板の表面から超臨界流体を除去することにより、超臨界流体に溶解したリンス液も共に除去される。
【0099】
基板の表面から超臨界流体を除去する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。超臨界流体を除去する方法としては、例えば、チャンバー内を脱圧しながら、チャンバー内から超臨界流体を排出する方法が挙げられる。
【0100】
本実施形態の方法は、上記処理例(1)~(3)に限定されず、上記工程(A)及び工程(B)を含む限り、任意の工程を任意の順序で採用することができる。
【0101】
本実施形態の基板の処理方法では、第1の態様又は第2の態様にかかるリンス液を用いて工程(A)を行う。これにより、工程(B)で、リンス液を基板の表面から除去する際に、パターン倒れを抑制することができる。そのため、本実施形態の基板の処理方法は、パターン倒れが生じやすいアスペクト比の高い凹凸パターンを有する基板に、好適に適用することができる。
【0102】
(半導体素子の製造方法)
本発明の第4の態様にかかる半導体素子の製造方法は、前記第3の態様にかかる凸部を有する基板の処理方法により、凸部を有する基板を処理する工程を含む。
【0103】
<基板を処理する工程>
基板を処理する工程は、上記「(基板の処理方法)」の項で説明した方法と同様に行うことができる。
【0104】
<任意工程>
本実施形態の半導体素子の製造方法は、上記基板を処理する工程に加えて、任意工程を含んでいてもよい。任意工程は、特に限定されず、半導体素子を製造する際に行われる公知の工程が挙げられる。かかる工程としては、例えば、キャパシタ形成、チャネル形成、High-K/メタルゲート形成、金属配線、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁層、強磁性層、及び非磁性層等の各構造の形成工程(層形成、上記エッチング処理以外のエッチング、化学機械研磨、変成等)、レジスト膜形成工程、露光工程、現像工程、熱処理工程、洗浄工程、検査工程等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの他の工程は、必要に応じ、上記基板を処理する工程の前又は後に、適宜行うことができる。
【0105】
本実施形態の半導体の製造方法では、第3態様にかかる基板の処理方法により、基板を処理するため、当該処理におけるパターン倒れを抑制することができる。そのため、半導体素子の製造を効率よく行うことができる。
【実施例0106】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0107】
<有機溶剤の選択>
2-プロパノール(IPA)よりもパターン倒壊抑制効果の高いリンス液を作製するため、各種有機溶剤の物性値を比較した。物性値のうち、動的粘度に着目し、2-プロパノールよりも動的粘度の低い有機溶剤を選択した。選択した有機溶剤の各種物性値を表1~3に示す。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
表1~3に示す物性値は以下の値を示した。
沸点及び融点は、実測値を示した。但し、1,1,1-トリメトキシプロパン、1,2,3-トリメトキシプロパン、及び1,1,3-トリメトキシプロパンについては、HSPiPによる推算値を示した。
表面張力は、HSPiPによる推算値を示した。
密度は密度計(DA-650、遠藤科学株式会社)による実測値を示した。但し、1,1,1-トリメトキシプロパン、1,2,3-トリメトキシプロパン、及び1,1,3-トリメトキシプロパンについては、HSPiPによる推算値を示した。
粘度は、粘度計(VMC-252、株式会社離合社)による実測値を示した。但し、1,1,1-トリメトキシプロパン、1,2,3-トリメトキシプロパン、及び1,1,3-トリメトキシプロパンについては、HSPiPによる推算値を示した。
動的粘度は、下記式による計算値を示した。
動的粘度(m2/s)=粘度(cp)/密度(g/ml)
臨界温度は、Joback法による物性推算値を示した。
沸点における蒸発潜熱は、Joback法による推算値と、Scifinderに記載の文献値を示した。
25℃及び60℃の蒸発潜熱は、Watson式による推算値を示した。
ハンセン溶解度パラメータは、HSPiPによる推算値を示した。
【0112】
<リンス液の調製>
(実施例1~4、比較例1)
表4に示す各例のリンス液を調製した。表4中、[ ]内の数値はリンス液の全質量に対する質量%を示す。
【0113】
【0114】
<基板の処理方法(1)>
基板には、ピラーが100nmの間隔で設けられたパターンを有する12インチのシリコンウェーハを用いた。ピラーのアスペクト比は、18.5であり、ピラーの直径は20nmであった。2cm×1cmのウェハー片を作製し、順に以下の処理を行った。各薬液での処理の間で、ウェハー片が乾燥しないようにした。
1.希フッ酸(DHF;HF:水=1:100)に30秒間浸漬。
2.超純水(UPW)に60秒間浸漬。
3.各例のリンス液に60秒間浸漬。
4.窒素ブロー乾燥。
【0115】
<パターン倒れの評価(1)>
走査型電子顕微鏡S-9220(加速電圧800V、日立ハイテクノロジー社製)によるトップダウン観察を行った。各例のリンス液で処理した各ウェハー片につき、それぞれ3枚のSEM写真を取得し、倒れているピラーの数をカウントした。ピラーの倒壊は、チップの中心から縁端まで様々であるため、本質的に同じ中心縁端距離から得られた構造における倒壊ピラー数をカウントした。結果を「倒壊ピラー数」として表5に示した。倒壊ピラー数が少ないほど倒壊防止効果に優れていることを示す。
【0116】
【0117】
表5の結果から、実施例1~4では、比較例1と比較して、倒壊ピラー数が顕著に低下した。
【0118】
<リンス液の調製>
(実施例5~9、比較例2)
表6に示す各例のリンス液を調製した。表6中、[ ]内の数値はリンス液の全質量に対する質量%を示す。
【0119】
【0120】
<基板の処理方法(2)>
基板には、ピラーが100nmの間隔で設けられたパターンを有するシリコンウェーハを用いた。ピラーのアスペクト比は、18.5であり、ピラーの直径は20nmであった。
基板をスピンしながら(回転数1000rpm、室温(20℃)、1分間)、パターンを有する表面に、下記の薬液を順に供給し、基板表面を処理した。
1.希フッ酸(DHF;HF:水=1:100)により30秒間処理。
2.超純水(UPW)により60秒間処理。
3.各例のリンス液により75℃で60秒間処理。
4.窒素ブロー乾燥。
【0121】
<パターン倒れの評価(2)>
走査型電子顕微鏡S-9220(加速電圧800V、日立ハイテクノロジー社製)によるトップダウン観察を行った。各例のリンス液で処理した各ウェハーにつき、それぞれ3枚のSEM写真を取得し、倒れているピラーの数をカウントした。ピラーの倒壊は、チップの中心から縁端まで様々であるため、本質的に同じ中心縁端距離から得られた構造における倒壊ピラー数をカウントした。結果を「倒壊ピラー数」として表6に示した。倒壊ピラー数が少ないほど倒壊防止効果に優れていることを示す。
【0122】
【0123】
表7の結果から、実施例5~9では、比較例2と比較して、倒壊ピラー数が顕著に低下した。実施例の中では、IPAを含まないリンス液を用いた方が(実施例5~7)、IPAを含むリンス液を用いたものよりも(実施例8~9)、倒壊ピラー数が少ない傾向であった。