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特開2023-121218電極製造装置、電気化学素子製造装置、積層セパレータ製造装置、液体付与装置、電極製造方法、電気化学素子製造方法、積層セパレータ製造方法、および液体付与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121218
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】電極製造装置、電気化学素子製造装置、積層セパレータ製造装置、液体付与装置、電極製造方法、電気化学素子製造方法、積層セパレータ製造方法、および液体付与方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20230824BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20230824BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20230824BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230824BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230824BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20230824BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M50/403 F
H01M50/449
H01G13/00 381
H01G11/86
H01G11/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024421
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】大村 裕二
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078BB31
5E078CA12
5E082AB09
5H021BB12
5H021BB19
5H021CC02
5H021CC04
5H021HH10
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA28
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】薄膜に付与される液体組成物の位置がずれることを低減する。
【解決手段】電極製造装置1は、搬送されるウェブW上にインクを付与するインクジェット部220と、ウェブWをインクジェット部220と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送部210と、を備える。一例として、ウェブWは電極基体W10により構成され、インクジェット部220が電極基体W10上にインクを付与して活物質層20を形成する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される電極素子に液体組成物を付与して機能層を形成する付与部と、
前記電極素子を、前記付与部と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送部と、を備え、
前記電極素子は薄膜である電極製造装置。
【請求項2】
前記電極素子を搬送する搬送方向において、前記吸引搬送部よりも上流側および下流側で前記電極素子または前記電極素子に前記機能層が形成された電極を搬送する他の搬送部を備え、
前記他の搬送部および前記吸引搬送部は、張力を付与して前記電極素子または前記電極を搬送する請求項1記載の電極製造装置。
【請求項3】
前記他の搬送部は、前記付与部に対向する前記電極素子または前記電極を前記吸引搬送部に押し付ける方向に、前記付与部に対向する面に対して、前記上流側または前記下流側における面が傾斜するように、前記電極素子または前記電極を搬送する請求項2記載の電極製造装置。
【請求項4】
前記他の搬送部は、前記下流側で前記電極を略水平に搬送する請求項2または3記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記付与部は、前記薄膜における前記吸引搬送部上に位置する部分に前記液体組成物を付与する請求項1~4の何れか記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記吸引搬送部は、負圧により前記電極素子を吸引する請求項1~5の何れか記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記電極素子は電極基体を含み、
前記機能層は電極合材層を含む
請求項1~6の何れか記載の電極製造装置。
【請求項8】
前記電極素子は、電極基体と、電極基体上に設けられた電極合材層と、を含み、
前記機能層は絶縁層である
請求項1~6の何れか記載の電極製造装置。
【請求項9】
前記電極素子は、前記電極基体上に前記電極合材層が積層される部分と、前記電極基体上に前記電極合材層が積層されない部分を含む請求項8記載の電極製造装置。
【請求項10】
前記電極素子は、前記付与部に対向する面と反対の面において、前記基体上に前記電極合材層が積層される部分と、前記基体上に前記電極合材層が積層されない部分を含む請求項8または9に記載の電極製造装置。
【請求項11】
前記電極素子は、偏伸,偏厚,偏密度のうち少なくとも一つの特性を有する請求項1~10の何れか記載の電極製造装置。
【請求項12】
前記吸引搬送部が前記電極素子を搬送する搬送速度を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づき、前記付与部による前記電極素子に対する前記液体組成物を付与するタイミングを制御する制御部と、を備えた請求項1~11の何れか記載の電極製造装置。
【請求項13】
請求項1~12の何れか記載の電極製造装置を有する電気化学素子製造装置。
【請求項14】
搬送される電極素子に液体組成物を付与して機能層を形成する付与部と、
前記電極素子を、前記付与部と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送部と、を備え、
前記電極素子は薄膜のセパレータである積層セパレータ製造装置。
【請求項15】
搬送される薄膜に液体組成物を付与する付与部と、
前記薄膜を、前記付与部と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送部と、を備えた液体付与装置。
【請求項16】
前記薄膜はフィルムまたは箔であり、
前記薄膜を搬送する搬送方向において、前記吸引搬送部よりも上流側および下流側で前記薄膜を搬送する他の搬送部を備え、
前記他の搬送部および前記吸引搬送部は、張力を付与して前記薄膜を搬送する請求項15記載の液体付与装置。
【請求項17】
搬送される電極素子に付与部により液体組成物を付与して機能層を形成する付与工程と、
前記電極素子を、前記付与部と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送工程と、
を含み、前記電極素子は薄膜である電極製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の電極製造方法を含む電気化学素子製造方法。
【請求項19】
搬送される電極素子に液体組成物を付与して機能層を形成する付与工程と、
前記電極素子を、前記付与部と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送工程と、
を含み、前記電極素子は薄膜のセパレータである積層セパレータ製造方法。
【請求項20】
搬送される薄膜に付与部により液体組成物を付与する付与工程と、
前記薄膜を、前記付与部と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送工程と、を含む液体付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極製造装置、電気化学素子製造装置、積層セパレータ製造装置、液体付与装置、電極製造方法、電気化学素子製造方法、積層セパレータ製造方法、および液体付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リチウム複合酸化物粒子を含む正極活物質層を備えた正極板と、負極活物質粒子を含む負極活物質層を備えた負極板と、前記正極活物質層または前記負極活物質層のうち少なくともいずれかの表面に設けられた多孔質絶縁層と、前記正負極板間に介在するセパレータとを少なくとも備えたリチウムイオン二次電池の製造方法であって、少なくとも無機酸化物フィラーと樹脂バインダーと溶剤とを混合してスラリー化する工程と、前記正極活物質層または前記負極活物質層のうち少なくともいずれかの表面に前記スラリーをインクジェット印刷によってパターン塗布する工程と、を有するリチウムイオン二次電池の製造方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、帯状の電極材料の基材の薄箔化、ひいては電極材料のロールプレス速度の高速化に対応できる電極材料の皺発生防止機構を備えるロールプレス設備を提供する電極材料のロールプレス設備が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005‐174792号公報
【特許文献2】特開2012‐129147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薄膜に付与される液体組成物の位置がずれるのを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る電極製造装置は、搬送される電極素子に液体組成物を付与して機能層を形成する付与部と、電極素子を付与部と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送部と、を備え、電極素子は薄膜である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1によれば、薄膜に付与される液体組成物の位置がずれるのを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る電極製造装置の全体構成図である。
図2】本実施形態に係る吸引搬送部の斜視図である。
図3】本実施形態に係る印刷部の制御の説明図である。
図4】本実施形態に係る電極素子の断面図である。
図5図4(b)に示した実施例2に係るウェブWの説明図である。
図6】比較例の説明図である。
図7】本実施形態に係るウェブWを搬送する説明図である。
図8】第2の比較例の説明図である。
図9】第2の比較例の他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る電極製造装置の全体構成図である。電極製造装置1は、薄膜の電極素子の表面に液体組成物を付与して機能層を形成することにより、一次電池、二次電池、又はキャパシタ等の電気化学素子に含まれる電極を製造する装置であり、液体付与装置の一例であり、電気化学素子製造装置に含まれる電極製造装置の一例でもある。なお、電極素子および薄膜、機能層の詳細については後述する。
【0010】
電極製造装置1は、巻出部100、印刷部200、乾燥部300、巻取部400を備える。
【0011】
巻出部100は、薄膜の一例であるウェブWが巻かれた状態で回転可能な巻出ロール110と、巻出ロール110から巻出されたウェブWを印刷部200へ搬送するガイドローラ101A、101Bを備える。
【0012】
印刷部200は、巻出部100から送り出されるウェブWを吸引して搬送する吸引搬送部210と、吸引搬送部210により搬送されるウェブWの表面に液体組成物の一例であるインクを吐出するインクジェット部220を備える。
【0013】
乾燥部300は、印刷部200から送り出されるウェブW表面のインクを乾燥させる乾燥炉310と、乾燥炉310から送り出されるウェブWを搬送するガイドローラ101Cを備える。乾燥炉310は、ウェブW表面のインクを加熱してインク中の残溶媒を乾燥させたり、インクの硬化を促進したりする機能を有する。
【0014】
巻取部400は、乾燥部300から送り出されるウェブWを搬送するガイドローラ101D、101Eと、ガイドローラ101Eから送り出されるウェブWを巻き取る巻取ロール410を備える。
【0015】
インクジェット部220は、付与部の一例であり、ウェブWの表面にインクを吐出するインクジェットヘッド222を複数備えたインクジェットMd221を、ウェブWの搬送方向に沿って複数備える。
【0016】
吸引搬送部210は、空気を吸引するブロア216と、ダクト215を介してブロア216と連通する吸引チャンバー214と、ウェブWをインクジェット部220と反対方向に吸引して搬送するベルト213と、ベルト213を巻きつけて駆動するベルト駆動ローラ211と、ベルト213を張架して連れ回るベルト従動ローラ212と、を備える。
【0017】
ベルト213はベルト駆動ローラ211の回転により循環搬送されるため、ベルト213に吸引されているウェブWは、ベルト213が回転する速度とほぼ同速度で搬送される。
【0018】
なお、電極製造装置1は、インクジェットヘッド222から吐出されるインクの成分によっては、印刷部200と乾燥部300の間に、紫外線によりウェブW表面のインク層を樹脂層に硬化させる硬化部を備えても良い。このようなインクとしては例えばモノマーといった重合性化合物を成分として有するものが挙げられる。
【0019】
図2は、本実施形態に係る吸引搬送部の斜視図である。
【0020】
ベルト213は、全周に多数の微小な吸引孔213Aを有しており、ブロア216が空気を吸引して吸引チャンバー214に負圧が生じると、吸引孔213Aから吸引される空気によりベルト213表面に吸引力が発生し、ウェブWはベルト213表面に吸引される。
【0021】
図3は、本実施形態に係る制御部の説明図である。
【0022】
印刷部200は、制御部500と、インクジェットヘッド222を駆動するヘッド駆動部510と、ベルト駆動ローラ211を駆動するローラ駆動部520と、ブロア216を駆動するブロア駆動部530と、ベルト従動ローラ212の回転速度を検出するエンコーダ550と、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部560と、を備える。
【0023】
制御部500は、エンコーダ550が検出したベルト従動ローラ212の回転速度、すなわちウェブWを搬送する搬送速度に基づき、ローラ駆動部520を制御してベルト駆動ローラ211の回転速度を制御するとともに、ヘッド駆動部510を制御してインクジェットヘッド222からインクを吐出するタイミングを制御する。
【0024】
また、制御部500は、操作部560により入力されたウェブWの種類を示す入力情報に基づき、ブロア駆動部530を制御してブロア216の吸引量を制御する。
【0025】
図4は、本実施形態に係る電極の断面図である。
【0026】
電極素子は、電気化学素子において充放電機能や絶縁機能を有する素子である。このとき電極素子は1つの機能層からなるものであってもよく、複数の機能層を有するものであってもよい。機能層としては、例えば集電体などにより形成される導電層や、活物質などにより形成される容量発現層、無機粒子膜や樹脂膜、固体電解質などにより形成される絶縁層などが挙げられる。
【0027】
図4(a)は、実施例1に係る電極の断面図であり、ウェブWとして搬送される電極素子としての電極基体W10の表面に、機能層としての活物質層20が形成された電極を示す。活物質層20は、電極合材層の一例である。
【0028】
電極基体W10の一方の面W10aにおいて、電極基体W10は、露出部W10mを除いて、活物質層20により被覆される。露出部W10mは、一方の面W10aの法線方向から視た平面視で活物質層20の外周部20pの外側に沿って配置されており、環状に配置されていてもよい。電極基体W10及び活物質層20の形状は一例であり、図4(a)の形状には限定されない。
【0029】
電極基体W10の厚さは例えば5μmから20μm程度であり、活物質層20の厚さは例えば数10μmから100μm程度である。
【0030】
電極基体W10は導電性を有する基体であれば、特に制限はなく、一般に蓄電デバイスである2次電池、キャパシター、なかでもリチウムイオン2次電池に好適に用いることができる、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔および、それらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシターに用いられる穴あき電極基体などが用いられる。
【0031】
また、燃料電池のような発電デバイスで用いられるカーボンペーパー繊維状の電極を不織または織状で平面にしたものや上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものも使用できる。
【0032】
更に、太陽光デバイスの場合、上記電極に加えてガラスやプラスチックスなどの平面基体上に、インジウム・チタン系の酸化物や亜鉛酸化物のような、透明な半導体薄膜を形成したものや、導電性電極膜を薄く蒸着したものを用いることができる。
【0033】
活物質としては、電気化学素子に適用することが可能な正極活物質又は負極活物質を用いることができる。
【0034】
正極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はないが、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
【0035】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される一種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物が挙げられる。
【0036】
リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が挙げられる。
【0037】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、結晶構造中にXO4四面体(X=P、S、As、Mo、W、Si等)を有するポリアニオン系化合物も用いることができる。 これらの中でも、サイクル特性の点で、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数、電気化学素子の入出力特性の点で、リン酸バナジウムリチウムが特に好ましい。
【0038】
なお、ポリアニオン系化合物は、電子伝導性の点で、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0039】
負極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はないが、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
【0040】
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。
【0041】
炭素材料以外の負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0042】
また、電気化学素子のエネルギー密度の点から、負極活物質として、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0043】
分散媒としては、活物質を分散させることが可能であれば、特に制限はないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサノン、酢酸エステル、メシチレン、2-n-ブトキシメタノール、2-ジメチルエタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、乳酸エステル、テトラメチルウレア、アニソール、ジブチルエーテル、1,2-ジエトキシエタン等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0044】
図4(b)は、実施例2に係る電極の断面図であり、ウェブWとして搬送される電極素子としての、電極基体W10と活物質層W20との積層体における活物質層W20の表面に、インクを吐出することにより機能層としての絶縁層30が形成された電極を示す。活物質層W20は、電極合材層の一例である。
【0045】
電極基体W10の一方の面W10aにおいて、活物質層W20は絶縁層30により露出すること無く全体を被覆され、電極基体W10は、露出部W10nを除いて、絶縁層30により被覆される。露出部W10nは、一方の面W10aの法線方向から視た平面視で絶縁層30の外周部30pの外側に沿って、配置されており、環状に配置されていてもよい。電極基体W10、活物質層W20および絶縁層30の形状は一例であり、図4(b)の形状には限定されない。
【0046】
また、電極基体W10と活物質層W20を含む電極素子としてのウェブWは、活物質層W20の密度を上げるためにプレス加工された後に搬送される場合がある。
【0047】
電極基体W10の厚さは例えば5μmから20μm程度であり、活物質層W20の厚さは例えば数10μmから100μm程度であり、絶縁層30の厚さは例えば0.5μmから20μm程度、好ましくは1~7μm程度である。
【0048】
電極基体W10は導電性を有する基体であれば、特に制限はなく、一般に蓄電デバイスである2次電池、キャパシター、なかでもリチウムイオン2次電池に好適に用いることができる、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔および、それらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシターに用いられる穴あき電極基体などが用いられる。
【0049】
また、燃料電池のような発電デバイスで用いられるカーボンペーパー繊維状の電極を不織または織状で平面にしたものや上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものも使用できる。
【0050】
更に、太陽光デバイスの場合、上記電極に加えてガラスやプラスチックスなどの平面基体上に、インジウム・チタン系の酸化物や亜鉛酸化物のような、透明な半導体薄膜を形成したものや、導電性電極膜を薄く蒸着したものを用いることができる。
【0051】
また、活物質層W20は、活物質を含む。活物質としては、電気化学素子に適用することが可能な正極活物質又は負極活物質を用いることができる。
【0052】
正極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はないが、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
【0053】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される一種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物が挙げられる。
【0054】
リチウム含有遷移金属化合物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が挙げられる。
【0055】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、結晶構造中にXO4四面体(X=P、S、As、Mo、W、Si等)を有するポリアニオン系化合物も用いることができる。 これらの中でも、サイクル特性の点で、リン酸鉄リチウム、リン酸バナジウムリチウム等のリチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、リチウム拡散係数、電気化学素子の入出力特性の点で、リン酸バナジウムリチウムが特に好ましい。
【0056】
なお、ポリアニオン系化合物は、電子伝導性の点で、炭素材料等の導電助剤により表面が被覆されて複合化されていることが好ましい。
【0057】
負極活物質としては、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能であれば、特に制限はないが、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
【0058】
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。
【0059】
炭素材料以外の負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0060】
また、電気化学素子のエネルギー密度の点から、負極活物質として、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0061】
分散媒としては、活物質を分散させることが可能であれば、特に制限はないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、シクロヘキサノン、酢酸エステル、メシチレン、2-n-ブトキシメタノール、2-ジメチルエタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、乳酸エステル、テトラメチルウレア、アニソール、ジブチルエーテル、1,2-ジエトキシエタン等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0062】
また、絶縁層30を形成するためのインクの成分は絶縁層として無機層を形成する場合は無機粒子と分散媒と、を含み、絶縁層として樹脂層を形成する場合は重合性化合物と溶媒とを含む。
【0063】
<無機層形成用液体組成物>
無機粒子としては、絶縁性無機粒子であることが好ましく、例えば、金属酸化物、金属窒化物、その他の金属化合物を材料とする粒子が挙げられる。
【0064】
金属酸化物としては、例えば、Al2O3、TiO2、BaTiO3、ZrO2等が挙げられる。
【0065】
金属窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が挙げられる。その他の金属化合物としては、例えば、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト等の鉱物資源由来物質又はそれらの人造物等が挙げられる。
【0066】
上記以外の絶縁性無機粒子を構成する材料としては、ガラスセラミックが挙げられる。ガラスセラミックとしては、例えば、ZnO-MgO-Al2O3-SiO2系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラスセラミック、BaO-Al2O3-SiO2系セラミック、Al2O3-CaO-SiO2-MgO-B2O3系セラミック等を用いた非ガラス系セラミックが挙げられる。
【0067】
絶縁性無機粒子は、イオン伝導性を有する元素を含むことが好ましい。イオン伝導性を有する元素としては、例えば、ケイ素元素、アルミニウム元素、ジルコニウム元素等が挙げられる。これらのイオン伝導性を有する元素は、単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0068】
絶縁性無機粒子は、Al2O3(アルミナ)粒子であることが好ましい。 絶縁性無機粒子としては、アルミナの中でも、融点が高く、熱的に安定なα-アルミナを用いるのが好ましい。
【0069】
分散媒は、水又は非水系分散媒を意味する。非水系分散媒としては、例えば、スチレン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール(IPA)、n-ブタノール、イソブタノール、ter-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、ジアセトンアルコール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0070】
なお、分散媒は単独で使用することもできるが、複数の分散媒を組み合わせて使用することもできる。
【0071】
<樹脂層形成用液体組成物>
重合性化合物は、重合することにより樹脂を形成し、液体組成物中において重合した場合に多孔質樹脂を形成する。
【0072】
重合性化合物により形成される樹脂は、活性エネルギー線の付与等(例えば、光の照射や熱を加えること等)で形成される網目状の構造体を有する樹脂であることが好ましく、例えば、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂、及びエン-チオール反応により形成される樹脂が好ましい。
【0073】
また、反応性の高いラジカル重合を利用して構造体を形成することが容易な点から、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物により形成される樹脂であるアクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂や、ビニル基を有する重合性化合物により形成される樹脂であるビニルエステル樹脂が生産性の観点からより好ましい。
【0074】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、重合性化合の組み合わせとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、柔軟性付与のため、ウレタンアクリレート樹脂を主成分として他の樹脂を混合することが好ましい。なお、本願ではアクリロイル基またはメタクリロイル基を有する重合性化合物を、(メタ)アクリロイル基を有する重合性化合物と称する。
【0075】
なお、活性エネルギー線としては、液体組成物中の重合性化合物の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中でも紫外線であることが好ましい。なお、特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。
【0076】
溶媒(以降の記載において「ポロジェン」とも称する)は、重合性化合物と相溶する液体である。また、溶媒は、液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。液体組成物中に溶媒が含まれることで、重合性化合物は、液体組成物中において重合した場合に多孔質樹脂を形成する。
【0077】
また、光または熱によってラジカル又は酸を発生する化合物(後述する重合開始剤)を溶解可能であることが好ましい。溶媒は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、本実施形態において、溶媒は重合性を有さない。
【0078】
ポロジェンの1種単独としての沸点または2種以上を併用した場合の沸点は、常圧において、50℃以上250℃以下であることが好ましく、70℃以上200℃以下であることがより好ましい。
【0079】
沸点が50℃以上であることにより、室温付近におけるポロジェンの気化が抑制されて液体組成物の取扱が容易になり、液体組成物中におけるポロジェンの含有量の制御が容易になる。
【0080】
また、沸点が250℃以下であることにより、重合後のポロジェンを乾燥させる工程における時間が短縮されて、多孔質樹脂の生産性が向上する。
【0081】
また、多孔質樹脂の内部に残存するポロジェンの量を抑制することができるので、多孔質樹脂を物質間の分離を行う物質分離層や反応場としての反応層などの機能層として利用する場合に品質が向上する。
【0082】
また、ポロジェンの1種単独としての沸点または2種以上を併用した場合の沸点は、常圧において、120℃以上であることが好ましい。
【0083】
ポロジェンとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコール類、γブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類、NNジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。また、テトラデカン酸メチル、デカン酸メチル、ミリスチン酸メチル、テトラデカン等の比較的分子量の大きな液体も挙げることができる。
【0084】
また、アセトン、2-エチルヘキサノール、1-ブロモナフタレン等の液体も挙げることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、上記の例示された液体であれば常にポロジェンに該当するわけではない。
【0086】
本実施形態におけるポロジェンとは、上記の通り、重合性化合物と相溶する液体であって、且つ液体組成物中において重合性化合物が重合していく過程で重合物(樹脂)と相溶しなくなる(相分離を生じる)液体である。
【0087】
言い換えると、ある液体がポロジェンに該当するか否かは、重合性化合物および重合物(重合性化合物が重合することにより形成される樹脂)との関係で決まる。
【0088】
また、本実施形態の液体組成物は、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればいいため、液体組成物作製時の材料選択の幅が広がり、液体組成物の設計が容易になる。
【0089】
液体組成物作製時の材料選択の幅が広がることで、多孔質構造の形成以外の観点で液体組成物に求められる特性がある場合に、対応の幅が広がる。
【0090】
例えば、液体組成物をインクジェット方式で吐出する場合、多孔質形成以外の観点として、吐出安定性等を有する液体組成物であることが求められるが、材料選択の幅が広いため、液体組成物の設計が容易になる。
【0091】
なお、本実施形態の液体組成物は、上記の通り、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有するポロジェンを少なくとも1種類含有していればいいため、重合性化合物との間で上記の特定の関係を有さない液体(ポロジェンではない液体)を追加的に含有していてもよい。
【0092】
近年、電気化学素子の低コスト・高容量化のために電極の薄膜化が進んでおり、図4(a)に示した実施例1、および図4(b)に示した実施例2の何れにおいても、集電体やセパレータといった薄膜の電極素子にシワが発生しやすくなっている。
【0093】
ここで、本実施形態における薄膜は、素材や厚みを限定するものではなく、搬送中にシワが生じる可能性がある薄さの膜を対象とする。特に、張力をかけながら搬送した場合、局所的な張力が不均一になることに起因して、搬送中にシワの位置が変化するような薄さの膜を対象とする。
【0094】
具体的には、薄膜は、「膜(メンブレン)」に限らず、セパレータとして用いられるような「フィルム」、「フイルム」と呼称されているものや、集電体として用いられるような「箔」と呼称されているものであってもよく、搬送中にシワが生じる可能性がある薄さであれば複数の層が積層された積層体であってもよい。
【0095】
なお、プリンター等において使用される一般的な紙は、坪量が大きく、張力をかけながら搬送した場合に、局所的な張力が不均一になることに起因して搬送中にシワの位置が変化することは無いため、本実施形態における薄膜には該当しない。
【0096】
そのために、様々な電極素子のシワ対策がなされているが、本出願人は、薄膜の表面にインクジェットによりインクを吐出して層を形成する場合、搬送される薄膜のシワに起因して、薄膜上に付与されるインクの位置がずれて所望の層が形成されないという課題を見出した。
【0097】
すなわち、薄膜のシワは、薄膜が凹凸している状態であり、搬送される薄膜の凸部にインクジェットにより吐出されたインクが着弾すると、凸部よりも搬送方向の上流側に位置する本来の着弾位置にインクが着弾しないことを見出した。
【0098】
特に薄膜である集電体上に機能層としての電極合材層を形成するためにインクを着弾させる場合、本来の着弾位置にインクが着弾しないと、形成された電極合材層にムラが生じ、電気化学素子としたときの充放電特性に影響を与えることや、更に電極合材層上に機能層としての絶縁層を形成しようとした場合、電極合材層の厚みの違いにより、絶縁層で電極合材層が被覆されないような意図しない露出領域が生じ、品質に影響を与える点で懸念があった。
【0099】
また、集電体上に電極合材層が積層された構成の薄膜である電極素子に機能層としての絶縁層を形成するためにインクを着弾させる場合、本来の着弾位置にインクが着弾しないと、全演奏で電極合材層が被覆されないような意図しない露出領域が生じ、品質に影響を与える点で懸念があった。
【0100】
本実施形態は、以上の課題に鑑みて、搬送される薄膜のシワに起因して、薄膜上に付与される液体組成物の位置がずれるのを低減することを目的とする。特に電極の製造において、本実施形態は、搬送される薄膜である電極素子のシワに起因して、薄膜上に付与される液体組成物の位置がずれるのを低減し、充放電特性および品質に優れた電極及び電気化学素子の製造方法の提供を目的とする。
【0101】
図5は、図4(b)に示した実施例2に係るウェブWの説明図である。
【0102】
図5(a)は、実施例2に係るウェブWの上面図であり、矢印は、ウェブWの搬送方向を示す。
【0103】
搬送方向に直交する方向において、電極基体W10の中央部では活物質層W20が積層されており、電極基体W10の両端部では活物質層W20が積層されていない。
【0104】
図5(b)は、実施例2に係るウェブWの断面図であり、電極基体W10の表面に活物質層W20が積層されているだけでなく、電極基体W10の裏面にも活物質層W21が積層されている。
【0105】
図5(c)は、実施例2に係るウェブWの他の例の上面図であり、搬送方向に直交する方向において、電極基体W10の中央部から一端側まで活物質層W20が積層されており、電極基体W10の他端部では活物質層W20が積層されていない。
【0106】
図5(d)は、実施例2に係るウェブWの他の例の上面図であり、搬送方向に直交する方向において、複数の活物質層W20a,W20bが、間欠的に間隔を空けて電極基体W10上に積層されており、電極基体W10の両端部および中央部では活物質層W20が積層されていない。
【0107】
図5(e)は、実施例2に係るウェブWのさらに他の例の上面図であり、搬送方向において、複数の活物質層W20c,W20d,W20eが、間欠的に間隔を空けて電極基体W10上に積層されている。
【0108】
図5(f)は、図5(e)に示したウェブWの断面図であり、電極基体W10の裏面にも複数の活物質層W21c,W21d,W21eが、間欠的に間隔を空けて積層されている。
【0109】
以上のように、ウェブWが、電極基体W10と活物質層W20の積層体により構成される場合、電極基体W10と活物質層W20の間の伸び、密度の違いや、活物質層W20が積層された部分と活物質層W20が積層されない部分の厚みの違いに起因して、シワが発生することがあった。また、ウェブWに張力をかけた場合も、上記各種違いに起因して、やはりシワが発生することがあった。
【0110】
本実施形態は、以上の課題に鑑みて、搬送される積層体のシワに起因して、薄膜上に付与される液体組成物の位置がずれるのを低減することも目的とする。
【0111】
図6は、比較例の説明図である。
【0112】
図6(a)は、ウェブWの搬送方向に沿って、インクジェットヘッドを複数配置したインクジェット部220を示す。
【0113】
この場合、複数のガイドローラ101でウェブWを支持し、隣り合うガイドローラ101間のパス経路上にインクジェットヘッドを配置する。
【0114】
図6(b)は、図6(a)で説明した隣り合うガイドローラ101間のパス経路を示す図である。
【0115】
この場合、図4および図5で説明した実施例1及び実施例2の何れであったとしても、ウェブWにシワが生じて、ウェブW上に付与されるインクの位置が搬送方向にずれていた。
【0116】
ここで、ウェブWに張力をかけてシワを伸ばすことが考えられるが、薄膜のウェブWに対して均一に張力をかけるのは困難であり、張力のばらつきに起因して却ってシワが生じていた。
【0117】
図6(c)および図6(d)は、実施例2に係るウェブWを搬送した場合の、ガイドローラ101間のパス経路を示す図である。
【0118】
図6(c)および図6(d)は、電極基体W10の裏面に間欠的に積層された活物質層W20が、ガイドローラ101を乗り越えるたびに、インクジェットヘッドとウェブWの間のギャップGが変動し(G1→G2)、ウェブWにシワが発生したのと同様に、ウェブW上に付与されるインクの位置が搬送方向にずれていた。
【0119】
また、電極基体W10と活物質層W20を含むウェブWが、活物質層W20の密度を上げるためにプレス加工された場合にも、プレス加工に伴う偏伸,偏厚,偏密度に起因してシワが発生したり、ウェブWの厚みにバラツキが生じることに起因して、図6(c)および図6(d)に示したようなギャップGの変動が生じたりしていた。
【0120】
図7は、本実施形態に係るウェブWを搬送する説明図である。
【0121】
図7(a)に示すように、ベルト213がウェブWをインクジェット部220と反対方向に吸引しながら搬送するため、搬送されるウェブWのシワに起因して、インクジェット部220によりウェブW上に付与されるインクの位置が、搬送方向にずれることを低減できる。
【0122】
また、ベルト213は、負圧により空気Aを吸引することによりウェブWを吸引するため、ウェブWとベルト213の間の空気層に起因するウェブWのシワも低減することができる。
【0123】
図7(b)は、実施例2に係るウェブWを搬送した場合の説明図である。
【0124】
この場合でも、ベルト213が、インクジェット部220に対向する電極基体W10の裏面に間欠的に積層された活物質層W21を、インクジェット部220と反対方向に吸引しながら搬送するため、図6(c)および図6(d)で示したようなギャップGの変動を低減して、インクジェット部220によりウェブW上に付与されるインクの位置が、搬送方向にずれることを低減できる。
【0125】
また、電極基体W10と活物質層W20を含むウェブWが、プレス加工されて偏伸,偏厚,偏密度が生じた場合でも、シワの発生を低減するとともに、図7(b)と同様に、ギャップGの変動を低減することができる。
【0126】
図8は、第2の比較例の説明図である。
【0127】
図8(a)に示す第2の比較例は、ウェブWを巻きつけローラ600に巻きつけながら搬送し、巻きつけローラ600により搬送されるウェブWの表面に、複数のインクジェットヘッド222からインクを吐出する。
【0128】
この比較例2でも、ウェブWのシワを低減することはできるが、インクジェットヘッドの数を多くすることが困難であるため、生産性が劣る。
【0129】
図8(b)は、インクジェットヘッド222の説明図である。インクジェットヘッド222を傾斜させた場合、複数の吐出面222A、222Bの間で高さ違いHが生じ、この高さ違いHに起因する水頭差により、吐出面222Aに合わせたインク圧力にすると吐出面222Bでインク漏れが生じ、吐出面222Bに合わせたインク圧力にすると吐出面222Aでインクの不吐出が生じていた。
【0130】
すなわち、インクジェットヘッド222の傾斜の制限により、インクジェットヘッド222の数も制限され、生産性の向上が困難である。
【0131】
図9は、第2の比較例の他の説明図である。
【0132】
図9は、図8で説明した巻きつけローラ600に比べて、大径の巻きつけローラ610を用いた例である。
【0133】
この場合、インクジェットヘッド222の数を増やしても、図8に比べて、インクジェットヘッド222の傾斜は緩やかであるため、図8に比べて生産性は向上するが、巻きつけローラ610で占用されるスペースの殆どがデッドスペースであり、生産設備のスペースの確保が困難であった。
【0134】
すなわち、本実施形態は、比較例2に比べて省スペースかつ生産性が高く、インクの位置の精度が高い電極製造装置1を提供することができる。
【0135】
本実施形態に係る電極製造装置1は、必要に応じて、その後段に電極製造装置により得られた電気化学素子とするための電気化学素子形成部を備えることで電気化学素子製造装置としてもよい。
【0136】
●まとめ●
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る電極製造装置1は、搬送されるウェブWにインクを付与して機能層を形成するインクジェット部220と、ウェブWを、インクジェット部220と反対方向に吸引しながら搬送する吸引搬送部210と、を備える。インクジェット部220は、ウェブWにおける吸引搬送部210上に位置する部分にインクを付与することが好ましい。
【0137】
ここで、電極製造装置1は、液体付与装置の一例であり、ウェブWは薄膜の一例である。また、インクは液体組成物の一例であり、インクジェット部220は付与部の一例である。また、液体付与装置の一例として、薄膜がセパレータであり、付与部により当該セパレータ上に機能層が形成された積層セパレータを製造する積層セパレータ製造装置であってもよい。
【0138】
これにより、搬送されるウェブWのシワに起因して、インクジェット部220によりウェブW上に付与されるインクの位置が、搬送方向にずれることを低減できるため、ウェブW上に付与されたインクの位置の精度が向上する。特に本実施形態を電極の製造に適用させた場合、充放電特性または品質に優れる電極を製造することができる。
【0139】
具体的に、ウェブWが電極基体W10により構成され、インクジェット部220が電極基体W10上にインクを付与して活物質層20を形成する場合は、電極基体W10上に活物質層20を精度よく形成することができる。ここで、活物質層20は、電極合材層の一例である。
【0140】
吸引搬送部210が備えるベルト213は、負圧によりウェブWを吸引することにより、ウェブWとベルト213の間の空気層に起因するウェブWのシワも低減できるため、ウェブW上に付与されたインクの位置の精度がさらに向上する。
【0141】
ウェブWは、電極基体W10と電極基体W10に積層された活物質層W20を含む。電極基体W10は基体の一例であり、電極基体W10および活物質層W20は積層体の一例である。
【0142】
本実施形態では、電極基体W10と活物質層W20の間での伸びの違い,厚みの違い,密度の違いがあっても、これらの違いに起因するウェブWのシワを低減できるため、ウェブW上に付与されたインクの位置の精度が向上する。
【0143】
具体的には、電極基体W10と活物質層W20を含む電極上にインクを付与して絶縁層30を形成する場合、電極上に絶縁層30を精度よく形成することができる。
【0144】
ウェブWは、電極基体W10に活物質層W20が積層される部分と、電極基体W10に活物質層W20が積層されない部分を含む。
【0145】
本実施形態では、電極基体W10に活物質層W20が積層される部分と、電極基体W10に活物質層W20が積層されない部分の間での伸びの違い,厚みの違い,密度の違いに起因するウェブWのシワを低減できるため、ウェブW上に付与されたインクの位置の精度が向上する。
【0146】
また、インクジェット部220に対向する面と反対の面において、電極基体W10に活物質層W20が積層される部分と、電極基体W10に活物質層W20が積層されない部分を含む場合でも、積層される部分と積層されない部分の段差に起因するインクジェット部220とウェブWのギャップ変動を低減することができる。これにより、ギャップ変動に伴い、ウェブW上に付与されるインクの位置が搬送方向にずれることを低減できる。
【0147】
電極製造装置1は、ウェブWが、プレス加工されたりして、偏伸,偏厚,偏密度のうち少なくとも一つの特性を有していても、これらの特性に起因するウェブWのシワを低減できるため、ウェブW上に付与されたインクの位置の精度が向上する。
【0148】
また、偏厚に起因するインクジェット部220とウェブWのギャップ変動を低減することができるため、ギャップ変動に伴い、ウェブW上に付与されるインクの位置が搬送方向にずれることを低減できる。
【0149】
電極製造装置1は、ウェブWを搬送する搬送方向において、ベルト213よりも上流側および下流側でウェブWを搬送する他の搬送部の一例である複数のガイドローラ101A~101Eを備え、複数のガイドローラ101A~101Eおよび吸引搬送部210は、張力を付与してウェブWを搬送する。
【0150】
この場合、ウェブWにおける局所的な張力が不均一になることがあるが、本実施形態では、ウェブWを吸引しながら搬送する吸引搬送部210を備えるため、搬送中にウェブWのシワの位置が不規則に変化することが低減する。
【0151】
また、吸引搬送部210を備えずに張力を付与してウェブWを搬送する場合、張力が低いとウェブWの撓みによりシワが発生し、張力が強すぎるとウェブWにおける局所的な張力が不均一になってシワが発生し、何れにしてもシワが発生する。
【0152】
これに対して、本実施形態では、ウェブWを吸引しながら搬送する吸引搬送部210を備えるため、少なくとも、インクジェット部220によりインクを付与される部分では、ウェブWのシワが低減する。
【0153】
換言すると、ウェブWを搬送する方向における吸引搬送部210の上流側でウェブWにシワが発生したとしても、少なくとも、吸引搬送部210が搬送する部分では、ウェブWのシワが低減されているため、吸引搬送部210は、ウェブWの搬送経路中で、シワを低減する補正機能を有している。これは、ウェブWが、シワが発生しやすいフィルムや箔等の薄膜で構成される場合に、特に顕著である。
【0154】
また、ガイドローラ101B、101Cは、インクジェット部220に対向するウェブWをベルト213に押し付ける方向に、インクジェット部220に対向する面に対して、上流側または下流側における面が傾斜するように、ウェブWを搬送する。
【0155】
これにより、ウェブWがベルト213に対して大きく浮かび上がることが低減されるため、ベルト213の吸引力によりウェブWのシワを低減させる効率が向上する。
【0156】
ガイドローラ101は、下流側でウェブWを略水平に搬送することが好ましい。また、電極製造装置1は、ベルト213がウェブWを搬送する搬送速度を検出する検出部の一例であるエンコーダ550と、エンコーダ550による検出結果に基づき、インクジェット部220によるウェブWに対するインクを付与するタイミングを制御する制御部500と、を備えることが好ましい。
【符号の説明】
【0157】
1 電極製造装置(液体付与装置の一例)
100 巻出部
110 巻出ロール
101A~101E ガイドローラ(他の搬送部の一例)
W ウェブ(薄膜の一例)
200 印刷部
210 吸引搬送部
211 ベルト駆動ローラ
212 ベルト従動ローラ
213 ベルト
214 吸引チャンバー
215 ダクト
216 ブロワ
220 インクジェット部(付与部の一例)
221 インクジェットMd
222 インクジェットヘッド
222A、222B 吐出面
300 乾燥部
310:乾燥炉
400:巻取部
410:巻取ロール
500 制御部
510 ヘッド駆動部
520 ローラ駆動部
530 ブロア駆動部
550 エンコーダ
560 操作部
600、610 巻きつけローラ
W10 電極基体
W20 活物質層(電極合材層の一例)
W21 裏面に形成された活物質層
20 活物質層(電極合材層の一例)
30 絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9