(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121404
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】摩耗管理システム及び摩耗管理方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20230824BHJP
E21D 9/087 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
E21D9/06 302Z
E21D9/087 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024743
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 類
(72)【発明者】
【氏名】大前 慶恵
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC02
2D054BA03
2D054GA17
2D054GA60
2D054GA81
2D054GA92
(57)【要約】
【課題】トンネル掘削機のカッタヘッドに設けられている掘削具に係る摩耗管理の運用性及び信頼性を高めることである。
【解決手段】
トンネル掘削機に設けた掘削具の摩耗状態を管理する摩耗管理システムであって、前記トンネル掘削機による地山掘削に伴って発生する掘削土砂を監視する土砂監視装置と、前記掘削具の摩耗量に応じて、前記掘削土砂に向けて色素を放出する色素放出機構と、を備え、前記土砂監視装置は、発生する前記掘削土砂を連続的に撮像し、該掘削土砂の画像データを取得する撮像手段と、前記画像データごとに輝度値の特徴量を取得する色素検知手段と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削機に設けた掘削具の摩耗状態を管理する摩耗管理システムであって、
前記トンネル掘削機による地山掘削に伴って発生する掘削土砂を監視する土砂監視装置と、
前記掘削具の摩耗量に応じて、前記掘削土砂に向けて色素を放出する色素放出機構と、を備え、
前記土砂監視装置は、
発生する前記掘削土砂を連続的に撮像し、該掘削土砂の画像データを取得する撮像手段と、
取得した前記画像データごとに輝度値の特徴量を取得する色素検知手段と、
を備えることを特徴とする摩耗管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の摩耗管理システムにおいて、
前記色素に、発光材料を用いるとともに、
前記色素検知手段に、前記画像データの二値化処理を行って二値化画像を取得するとともに、取得した二値化画像から輝度値の特徴量を算出する画像処理部を備えることを特徴とする摩耗管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の摩耗管理システムにおいて、
前記色素検知手段に、
あらかじめ設定した輝度値の特徴量に係る判定閾値と前記画像データから取得した輝度値の特徴量とに基づいて、前記画像データで捉えた前記掘削土砂に混入する前記色素の有無を判定する色素判定部と、
該色素判定部で色素有りと判定した場合に、警報を出力する警報出力部と、
を備えることを特徴とする摩耗管理システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の摩耗管理システムであって、
前記色素放出機構が、複数の色素放出部を備え、
複数の該色素放出部は、前記掘削具の内部であって該掘削具の先端から深さ位置をずらして設けられていることを特徴とする摩耗管理システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の摩耗管理システムを用いた掘削具の摩耗管理方法であって、
前記トンネル掘削機による地山掘削に伴って発生する掘削土砂を、前記撮像手段にて連続的に撮像し、前記掘削土砂を捉えた画像データを取得する工程と、
前記画像データごとに、輝度値の特徴量を取得する工程と、
を備えることを特徴とする掘削具の摩耗管理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の掘削具の摩耗管理方法において、
前記色素に、緑色発光もしくは赤色発光の発光材料を採用するとともに、
前記画像データごとに取得する輝度値の特徴量を、
前記画像データの各画素から前記色素に採用した色に対応する成分の画素値を抽出して二値化処理を行ったのち、取得した二値化画像を用いて算出することを特徴とする掘削具の摩耗管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機のカッタヘッドに設けられている掘削具の摩耗状態を管理する摩耗管理システム及び掘削具の摩耗管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トンネル工事では、シールド掘進機やTBMなどのトンネル掘削機を用いる場合が多い。トンネル掘削機の先端には、超硬合金を埋め込んだカッタビットが装備されたカッタヘッドが設けられており、このカッタヘッドを回転させながらカッタビットで地山を切削し、掘削していく。ところが、カッタビットは摩耗することから、施工管理とともに摩耗管理が必要となる。
【0003】
このような中、例えば特許文献1では、作業者に摩耗限界を報知することの可能な掘削装置用ディスクカッタが開示されている。具体的には、超硬チップを頂部外周に植設した台金の所定カ所に、着色剤を埋設しておく。これにより、埋設箇所まで台金がすり減ると、着色剤が飛散して掘削ずりを着色するため、作業者に摩耗限界を報知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法によれば、作業員はトンネル掘削機内に取り込まれた掘削ずりの色を確認することで、カッタヘッドに近づくことなく安全に、超硬チップが摩耗限界を超えたことを検知できる。
【0006】
しかし、作業員の視認による色の確認は個人差があり、判断基準が曖昧になりやすい。また、掘削土砂の色合いによっては、混入する着色剤を見逃す可能性があるなど、摩耗検知の信頼性に課題がある。さらには、工事期間中、連続的に発生する掘削土砂を、作業員が常時監視することは困難であり、摩耗管理の運用性にも課題を生じていた。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、トンネル掘削機のカッタヘッドに設けられている掘削具に係る摩耗管理の運用性及び信頼性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明の摩耗管理システムは、トンネル掘削機に設けた掘削具の摩耗状態を管理する摩耗管理システムであって、前記トンネル掘削機による地山掘削に伴って発生する掘削土砂を監視する土砂監視装置と、前記掘削具の摩耗量に応じて、前記掘削土砂に向けて色素を放出する色素放出機構と、を備え、前記土砂監視装置は、発生する前記掘削土砂を連続的に撮像し、該掘削土砂の画像データを取得する撮像手段と、取得した前記画像データごとに輝度値の特徴量を取得する色素検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の摩耗管理システムは、前記色素に、発光材料を用いるとともに、前記色素検知手段に、前記画像データの二値化処理を行って二値化画像を取得するとともに、取得した二値化画像の輝度値の特徴量を算出する画像処理部を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の摩耗管理システムは、前記色素検知手段に、あらかじめ設定した輝度値の特徴量に係る判定閾値と前記画像データから取得した輝度値の特徴量とに基づいて、前記画像データで捉えた前記掘削土砂に混入する前記色素の有無を判定する色素判定部と、該色素判定部で色素有りと判定した場合に、警報を出力する警報出力部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の摩耗管理システムは、前記色素放出機構が、複数の色素放出部を備え、複数の該色素放出部は、前記掘削具の内部であって該掘削具の先端から深さ位置をずらして設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の掘削具の摩耗管理方法は、本発明の摩耗管理システムを用いた掘削具の摩耗管理方法であって、前記トンネル掘削機による地山掘削に伴って発生する掘削土砂を、前記撮像手段にて連続的に撮像し、前記掘削土砂を捉えた画像データを取得する工程と、前記画像データごとに、輝度値の特徴量を取得する工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の掘削具の摩耗管理方法は、前記色素に、緑色発光もしくは赤色発光の発光材料を採用するとともに、前記画像データごとに取得する輝度値の特徴量を、前記画像データの各画素から前記色素に採用した色に対応する成分の画素値を抽出して二値化処理を行ったのち、取得した二値化画像を用いて算出することを特徴とする。
【0014】
本発明の摩耗管理システム及び掘削具の摩耗管理方法によれば、土砂監視装置を利用して、トンネル掘削機による地山掘削に伴って発生する掘削土砂を常時モニタリングできる。また、輝度値の特徴量に係る時系列データを取得し、その変動を捉えて色素放出機構から色素が放出されたことを検知できる。これにより、作業者は、掘削土砂に常時注意を払うことなく、輝度値の特徴量に係る時系列データに変動が生じた場合に、掘削土砂を目視で確認すればよい。また、目視確認で色素の有無を検知する際には、輝度値の特徴量に係る時系列データを検知の支援情報として利用できる。これにより、掘削土砂に混入する色素の有無を検知することで掘削具の摩耗状態を管理する摩耗管理の、信頼性及び運用性を高めることが可能となる。
【0015】
また、画像データの二値化処理を行って二値化画像を取得するとともに、取得した二値化画像の輝度値の特徴量を算出すると、画像データで捉えた掘削土砂に混入する色素の量が少ない場合にも、この色素を含む画素を強調し、輝度値の特徴量に反映させることができる。
【0016】
さらに、画像データで捉えた掘削土砂に混入する色素の有無を判定する色素判定部を備えることで、作業員が掘削土砂を目視確認する場合と比較して、安定した精度で色素の有無を判別できる。また、色素判定部で「色素あり」と判定した場合に、警報を報知する警報出力部を備えことで、作業員は、警報の報知を受けたのちに、最終確認作業として掘削土砂を目視確認すればよく、摩耗管理の運用性をより一層高めることができる。加えて、トンネル掘削機のオペレーターや工事事務所の作業員などに対して迅速に掘削具の摩耗状況を伝達でき、摩耗管理の効率化を図ることが可能となる。
【0017】
また、複数の色素放出部を、掘削具の先端から深さ位置をずらして設けると、掘削具の摩耗状態を段階的に把握することも可能となる。
【0018】
さらに、色素に緑色発光もしくは赤色発光する発光材料を採用し、画像データの各画素から抽出した画素値のRGB成分のうち、G成分もしくはR成分を採用して二値化処理を行うと、掘削土砂の色合いやトンネルT内の照明など撮像環境の影響を最小限に抑えつつ、色素の有無を高い精度で検知できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、掘削具の摩耗量に応じて色素を放出する色素放出機構から、掘削土砂に向けて色素が放出されたことを土砂監視装置を用いて検知できるため、掘削具の摩耗管理に高い信頼性及び運用性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態における摩耗管理システムを示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるトンネル掘削機のカッタヘッド、及び色素放出機構(色素供給部をカッタビットに設けた場合)を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるトンネル坑内及び発進立坑を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における色素放生出機構(色素供給部をカッタスポークに設けた場合)を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態における摩耗管理システムを構成する色素検知手段の構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における掘削具に係る摩耗管理の流れを示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態における掘削土砂を連続的に捉えた画像データから取得した輝度値平均(RGB成分のうちのR成分)を時系列にプロットしたグラフである。
【
図8】本発明の実施の形態における掘削土砂を連続的に捉えた画像データから取得した輝度値平均(RGB成分のうちのG成分)を時系列にプロットしたグラフである。
【
図9】本発明の実施の形態における色素放出機構の他の事例(カッタビット内の2カ所に色素放出部を設けた場合)を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態における色素放出機構の他の事例(色素放出部の位置が異なる2種類のカッタビットを採用する場合)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の摩耗管理システムおよび掘削具の摩耗管理方法の詳細を、
図1~
図10を参照しつつ、以下に説明する。
【0022】
摩耗管理システムの詳細を説明するに先立ち、トンネル掘削機、及びトンネル掘削機の地山掘削により発生する掘削土砂を搬出するベルトコンベヤについて、その概略を説明する。トンネル掘削機は、シールド掘進機やTBMなどいずれでもよいが、本実施の形態では、スポーク型のカッタヘッドを備えるシールド掘進機を事例に挙げ、概略を説明する。
【0023】
≪≪シールド掘進機10≫≫
シールド掘進機10は、
図1で示すように、カッタ駆動部11と、背面にカッタ駆動部11を備えるとともに前面が切羽Aに対向するカッタヘッド12と、カッタヘッド12の背面側に位置するシールド本体13とを備える。カッタヘッド12には、カッタビット(掘削具)14が装着され、シールド本体13には、掘削土砂Sを貯留するチャンバー15と、チャンバー15内の掘削土砂Sを排出するスクリュコンベヤ16と、を備えている。
【0024】
カッタヘッド12は、切羽A側から見て
図2(a)で示すように、円形状に形成されているとともに、中心軸から放射状に延びる複数のカッタスポーク121を有する。カッタスポーク121には、切羽Aと対向する面に、金属製の掘削具であるカッタビット14が複数装着されている。カッタビット14は、
図2(b)で示すように、母材141の先端141B側に複数のチップ142が固定され、基端141Aはカッタスポーク121に対して、溶接もしくは着脱可能な態様で装着される。
【0025】
カッタビット14のチップ142は、切羽Aを掘削する機能を有し、その硬度は母材141の硬度より高い。このような構成を有するカッタビット14は、トンネル軸線方向の断面が、
図1で示すように、切羽Aに向かうにつれて薄肉となるよう楔形に形成されている。これにより、カッタヘッド12が切羽Aに押し当てられた状態で、カッタ駆動部11を介して中心軸周りに回転することで、地山を掘削していく。
【0026】
チャンバー15は、シールド掘進機10の地山掘削により連続的に発生する掘削土砂Sが取り込まれる空間であり、カッタヘッド12と、シールド本体13の前方側(切羽A側)に位置する筒状外郭であるフード部131と、隔壁132とにより仕切られている。隔壁132にはスクリュコンベヤ16が接続されており、このスクリュコンベヤ16によりチャンバー15に取り込まれた掘削土砂Sは、トンネルT内に排出される。
【0027】
≪≪ベルトコンベヤ20≫≫
ベルトコンベヤ20は、
図1及び
図3で示すように、スクリュコンベヤ16によりトンネルT内に排出された掘削土砂Sを、発進立坑Hに向けて搬送する設備であり、テール部21がスクリュコンベヤ16の排出口近傍に配置されている。また、ベルトコンベヤ20のヘッド部22は、発進立坑Hの近傍に配置されている。これにより、スクリュコンベヤ16からベルトコンベヤ20に投下された掘削土砂Sは、発進立坑H近傍まで搬送されたのち、ずり鋼車30に積み込まれて、発進立坑Hを経由して、例えば地上に設けた土砂ピットPに貯留される。
【0028】
≪≪摩耗管理システム40≫≫
摩耗管理システム40は、上記のシールド掘進機10でトンネル施工を進行させつつ、カッタビット14の摩耗状態を管理するシステムであり、
図1で示すように、色素放出機構50と土砂監視装置60とを備える。
【0029】
≪色素放出機構50≫
色素放出機構50は、
図1で示すように、カッタビット14の内部に設けられた色素放出部51を有し、カッタビット14が摩耗してこの色素放出部51が露出した際、色素Cを放出して、掘削土砂Sに混入させる。このような機能を有していれば、その構成はいずれでもよい。
【0030】
例えば、
図2(b)では、カッタビット14に設けた色素放出部51と、同じくカッタビット14に設けたピストン型の色素供給部52と、色素供給部52と色素放出部51とを接続する流路53と、を備える色素放出機構50を例示している。ピストン型の色素供給部52は、シールド掘進機1による掘削外径が小さく、色素含有流体F(C)の搭載量が少量でよい場合に適している。
【0031】
また、
図4(a)及び(b)では、カッタビット14に設けた色素放出部51と、カッタスポーク121に設けたアキュムレータ型の色素供給部54と、色素供給部54と色素放出部51とを接続する供給管55と、を備える色素放出機構50を例示している。アキュムレータ型の色素供給部54は、シールド掘進機1による掘削外径が大きく、色素含有流体F(C)の搭載量が大量に必要となる場合に適している。
【0032】
これらの色素放出機構50については概略を後述するが、いずれも色素放出部51が、
図2(b)で示すように、カッタビット14を構成する母材141の内部であって、先端141Bから検知したい摩耗量に応じた長さ(摩耗検知量L1)だけ後退した深さ位置に、設けられている。また、色素含有流体F(C)は、色素供給部52、54に供給されている。色素含有流体F(C)は、ペンキのように色素Cで着色した液体でもよいし、粉体状の色素Cを含有する気体などでもよく、いずれの流体をも採用することができる。なお、
図2(b)及び
図4(a)及び(b)で例示した色素放出機構50の詳細は、特願2021-017404号に譲る。
【0033】
≪色素C≫
色素含有流体F(C)に含有されている色素Cは、掘削土砂Sと混じった際に識別しやすいものであればいずれを採用してもよいが、紫外線や可視光など外部からの光のエネルギーを吸収し、エネルギーの異なる光を放出する発光材料が好ましい。摩耗管理システム40は、赤・緑・青だけでなく様々な色の発光材料に対して対応可能である。
【0034】
≪≪土砂監視装置60≫≫
土砂監視装置60は、
図1で示すように、撮像手段61と色素検知手段62とを備える。撮像手段61は、シールド掘進機10による地山掘削に伴って発生する掘削土砂Sを連続的に撮像し、掘削土砂Sを捉えた画像データを取得する。また、色素検知手段62は、撮像手段61で取得した画像データ各々の輝度値の特徴量を時系列で取得する。また、取得した輝度値の特徴量に基づいて、画像データで捉えた掘削土砂Sに混入する色素Cの有無を判定する。さらには、「色素あり」と判定した場合に、警報を報知する。なお、輝度値の特徴量は、いずれの統計量を採用してもよいが、本実施の形態では平均に着目し、輝度値平均を採用する場合を事例に挙げる。
【0035】
≪≪撮像手段61≫≫
撮像手段61は、
図1で示すように、カメラ611と照明設備612と支持架台613とにより構成されている。カメラ611は、3バンドの波長情報を獲得するいわゆるデジタルカメラ(RGBカメラ)を使用しているが、通常のいずれのカメラでも採用可能である。このカメラ611は、撮像範囲をベルトコンベヤ20上(コンベヤベルト)の任意の位置に設定した状態で据え付けられている。照明設備612は、色素Cに発光材料を用いているためUVライトを採用し、カメラ611の撮像範囲を照射するよう、据え付けられている。
【0036】
カメラ611の撮像範囲は、ベルトコンベヤ20上の掘削土砂Sを捉えることのできる位置であればいずれでもよいが、ベルトコンベヤ20のテール部21近傍であって、スクリュコンベヤ16の排出口より下流側に設定するとよい。すると、シールド掘進機10の地山掘削により発生して間もない掘削土砂Sを撮像できる。したがって、カッタビット14の摩耗が摩耗検知量L1を超えた場合に、初期の段階で掘削土砂Sに混入する色素Cを検出できる。これにより、カッタビット14の摩耗が進行することに起因してカッタヘッド12やシールド本体13が損傷する、といった現象を回避することも可能となる。
【0037】
支持架台613は、ベルトコンベヤ20を跨ぐように設置され、上記のカメラ611と照明設備612とを支持する架台である。その形状は何ら限定されるものではなく、また、トンネルT内にこれらを支持可能な装備がある場合には、支持架台613を省略してもよい。
【0038】
≪色素検知手段62≫≫
色素検知手段62は、
図5で示すように、入力部621、演算処理部622、及び出力部623を備える装置であればいずれでもよく、パソコンやノートPC、タブレット端末などを採用することができる。
【0039】
入力部621は、カメラ611と無線または有線で接続され、カメラ611で撮像した画像データなどの情報を受信する。図示を省略するが、キーボードやマウス、スキャナなどの入力装置と接続し、これらに入力された情報を受信する構成としてもよい。
【0040】
出力部623は、データ出力部6231と警報出力部6232とを備える。データ出力部6231は、入力部621を介して取得した画像データや、演算処理部622で処理した処理データなどの情報を、表示装置624に出力する。また、警報出力部6232は、後述する演算処理部622の色素判定部6222が、画像データで捉えた掘削土砂Sに「色素あり」、と判定した場合に、警報情報を表示装置624に出力する。
【0041】
表示装置624は、出力部623と無線または有線で接続されたディスプレイやプリンタ、シールド掘進機1のモニター画面など、いずれでもよい。また、警報出力部6232から出力する警報情報は、表示装置624に出力するだけでなく、スピーカーなど音声で報知可能な出力装置に出力する構成としてもよい。
【0042】
さらに、作業員が携帯する携帯端末や工事事務所に設置されている管理用パソコンなどの端末装置625と色素検知手段62とを、通信ネットワークを介して相互にデータ送信可能としてもよい。こうすると、この端末装置625から入力部621を介して色素検知手段62に情報を入力する、もしくは色素検知手段62から出力部623を介して情報を端末装置625に出力できる。なお。通信ネットワークとしては、インターネット、専用通信回線等いずれにより構築されるものであってもよい。
【0043】
演算処理部622は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶部を備え、色素検知手段62の動作を制御する。このような演算処理部622は、少なくとも画像処理部6221と、色素判定部6222とを備える。
【0044】
画像処理部6221は、カメラ611で撮像した画像データの二値化処理を行って、二値化画像を取得する。このように、二値化処理を行うと、画像データで捉えた掘削土砂Sに混入する色素Cの量が少ない場合にも、二値化画像上でこの色素Cを含む画素を強調させることができる。二値化処理は、画像データの各画素から、色素Cに対応する成分の画素値を抽出し、二値化処理を実施する。
【0045】
つまり、色素Cに緑色発光の発光材料を採用する場合には、各画素から画素値のRGB成分のうちのG成分を抽出し、これを二値化処理して二値化画像を取得する。このとき、二値化処理には閾値の設定が必要となる。その設定手法は、画像処理の分野で採用されている様々な手法(例えば、モード法、P-タイル法、判別分析法など)の中から、最適な手法を適宜選択すればよい。
【0046】
また、画像処理部6221は、二値化処理をして色素Cを含む画素を強調した二値化画像の輝度値平均を算出する。二値化画像の輝度値平均は、全画素数における白画像の割合となり、白画像は、色素Cを捉えた可能性のある画素である。このような手順で取得する輝度値平均を、カメラ611の撮像範囲を通過する掘削土砂Sを連続的に撮像して取得した複数の画像データごとに算出する。すると、
図7及び
図8で示すような輝度値平均の時系列データを取得できる。詳細は、後述する掘削具の摩耗管理方法で説明する。
【0047】
色素判定部6222は、画像処理部6221で算定した輝度値平均と、あらかじめ設定した輝度値平均の判定閾値とに基づいて、画像データで捉えた前記掘削土砂Sに混入する色素Cの有無を判定する。具体的には、輝度値平均とあらかじめ設定した判定閾値とを比較し、輝度値平均が判定閾値を超えた場合に、画像データで捉えた掘削土砂Sに「色素あり」、と判定する。判定閾値の決定方法は、掘削具の摩耗管理方法と併せて説明する。
【0048】
≪≪掘削具の摩耗管理方法≫≫
上記の摩耗管理システム100を用いて、カッタビット4の摩耗状態を検知する手順を、
図5で示す色素検知手段62の構成図、及び
図6の摩耗管理の流れを参照しつつ、以下に説明する。
【0049】
≪≪色素の搭載:STEP1≫≫
まず、シールド掘進機1による掘削外径を考慮して色素含有流体F(C)の搭載量を決定する。また、色素含有流体F(C)の搭載量に応じて、シールド掘進機10に設ける色素放出機構50の構造を、適宜選択する。前述したように、搭載量が少量の場合には、
図2(b)で示すような、ピストン型の色素供給部52をカッタビット14に設ける色素放出機構50を採用し、必要量の色素含有流体F(C)を搭載する。一方、搭載量が多量に必要となる場合には、
図4(a)及び(b)で示すような、アキュムレータ型の色素供給部54をカッタスポーク121に設ける色素放出機構50を採用し、必要量の色素を搭載する。
【0050】
≪≪搭載量が少量の場合≫≫
色素放出機構50は、
図2(b)で示すように、色素放出部51と、色素供給部52と、これらを接続する流路53とを備える。流路53は、色素放出部51と接続する側の流路径を小径とし、色素供給部52と接続する側の流路径を大径に形成している。また、流路53は、外気と連通する連通部531が2カ所に設けられているともに、連通部531を塞ぐことの可能なプラグ532、533が母材141に着脱可能に設けられている。
【0051】
色素供給部52は、母材141内で流路53と直交するようにして並列配置された2つの中空部521と、中空部521中に配置されたピストン522を備える。中空部521はそれぞれ、ピストン522を境界として色素含有流体F(C)の貯蔵部521Aと加圧部521Bに区分され、貯蔵部521Aが流路53と連通している。
【0052】
加圧部521Bは、コイルバネ523が収納される空間であり、コイルバネ523を挿入するための開口が形成されている。この開口はネジ524により開閉自在となっており、開口を介して加圧部521Bにコイルバネ523を挿入したのち、ネジ524を母材141に取り付て開口を塞ぐ。すると、コイルバネ523は、一端部がネジ524と当接し、他端部がピストン522と当接する態様となる。
【0053】
これにより、コイルバネ523は、自身の復元力を用いてピストン522を付勢することに伴って、貯蔵部521Aに貯蔵された色素含有流体F(C)を加圧する。なお、
図2(b)では、図面上方のコイルバネ523は伸長した状態を示し、図面下方のコイルバネ523は収縮した状態を示している。
【0054】
上記の構成を有する色素供給部52に設けた貯蔵部521Aに色素含有流体F(C)を搭載する手順は、次のとおりである。まず、流路53と外気との連通部531を塞ぐプラグ532、533を母材141から取り外す。また、加圧部521Bから、ネジ524及びコイルバネ523を取り外す。次に、中空部521にピストン522を挿入した状態で、貯蔵部521A及び流路53を色素含有流体F(C)で満たす。
【0055】
その後、プラグ532、533を母材141に取り付け、流路53及び連通部531を密閉する。こののち、加圧部521Bにコイルバネ523を挿入し、ネジ524を母材141に装着する。これにより、コイルバネ523が、ネジ524とピストン522との間で収縮した状態で保持され、貯蔵部521Aに貯蔵された色素含有流体F(C)は、コイルバネ523によって加圧された状態で搭載される。
【0056】
≪≪搭載量が大量の場合≫≫
色素放出機構50は、
図4(a)で示すように、色素放出部51と、色素供給部54と、これらを接続する供給管55とを備える。色素供給部54は、供給管55との接続部541Aを有する筐体541と、伸縮可能な袋状部材を有する加圧部542とを有する。加圧部542の内部には、圧縮ガスGが充填される。また、加圧部542の外方には、筐体541の内周面に規定される貯蔵部543を有する。
【0057】
したがって、貯蔵部543に必要量の色素含有流体F(C)を注入する。すると、注入された色素含有流体F(C)は、加圧部542によって加圧された状態で搭載されることとなる。したがって、カッタビット14の摩耗が進行し、色素放出部51が露出すると、加圧部542は圧力にしたがって拡大し、色素含有流体F(C)は筐体541の外部へ排出される。こののち、色素含有流体F(C)は供給管55を介してカッタビット14へ供給されて、色素放出部51から放出されることとなる。
【0058】
≪≪地山の掘削開始:STEP2≫≫
色素含有流体F(C)の搭載作業と同時に、もしくはこれと前後して
図1で示すように、カメラ611を所定の位置に配置し、撮像範囲をベルトコンベヤ20で搬送される掘削土砂Sが通過するように据え付ける。また、照明設備612を所定の位置に設置し、カメラ611の撮像範囲を照射する。こののち、シールド掘進機10の運転を開始し、地山を掘削する。
【0059】
≪≪判定閾値の設定:STEP3≫≫
シールド掘進機10の運転を開始すると、
図1で示すように、掘削土砂Sがチャンバー15及びスクリュコンベヤ16を介してトンネルT内に取り込まれる。この掘削土砂Sを、カッタビット14の摩耗が生じていない初期掘削の段階で採取し、採取した掘削土砂Sを用いて、上述した色素判定部6222で色素Cの有無を判定する際に用いる判定閾値を設定する。
【0060】
まず、採取した掘削土砂Sに色素放出機構50に搭載した色素含有流体F(C)もしくはこれに含まれている色素Cを混入し、試料を作成する。次に、掘削土砂Sのみと、試料とをそれぞれ撮像し、画像データを取得する。取得した画像データ各々から色素検知手段62にて輝度値平均を算出する。試料を撮像した画像データから取得した輝度値平均と、掘削土砂Sのみを撮像した画像データから取得した輝度値平均とを比較し、色素Cの有無を判定するにあたり最適な輝度値平均を判定閾値に設定する。
【0061】
判定閾値の決定にあたっては、撮像条件(周囲の明るさなど)を考慮するなどして、最適な判定閾値を決定すると良い。また、決定した判定閾値は、入力部621を介して色素検知手段62に入力し、演算処理部622に格納しておく。
【0062】
≪≪輝度値平均の取得及び時系列データを作成:STEP4≫≫
STEP3の判定閾値の設定作業と並行して、もしくはこれと前後して、シールド掘進機10の地山掘削により発生し、カメラ611の撮像範囲を通過する掘削土砂Sを、連続的に撮像して掘削土砂Sを捉えた画像データを取得する。また、画像データを取得するごとに、これを色素検知手段62に送信する。
【0063】
入力部621を介して画像データが色素検知手段62に入力されると、演算処理部622は画像処理部6221の指令を受けて、画像データの各画素から画素値のRGB成分を抽出する。次に、抽出したRGB成分のうち、色素含有流体F(C)に含まれている色素Cに応じて、G成分(グリーン成分)もしくはR成分(レッド成分)を抽出し、二値化処理を行う。こののち、二値化処理により作成された二値化画像の輝度値平均を算出する。
【0064】
上記のカメラ611で撮像範囲を通過する掘削土砂Sを連続的に撮像する工程と、撮像して取得した画像データごとに、色素検知手段62にて輝度値平均を算出する工程を繰り返し、輝度値平均を蓄積して時系列データを作成する。時系列データは、演算処理部622の記憶領域に格納してもよいし、輝度値平均が算出されることに、表示装置624に出力してもよい。
【0065】
表示装置624に出力する方法はいずれでもよいが、例えば、
図7では、縦軸に輝度値平均を取るとともに横軸に時間を取ったグラフに、輝度値平均を逐次プロットする事例を示している。
【0066】
≪≪輝度値平均の時系列データの事例≫≫
図7(a)は、カメラ611の撮像範囲を通過する掘削土砂Sに、色素Cが混入されていない状態の時系列データを示すグラフである。一方、
図7(b)は、カメラ611の撮像範囲を通過する掘削土砂Sに、色素Cが混入した状態の時系列データを示すグラフである。つまり、
図4(b)で示すように、カッタビット14の摩耗が進行して色素放出部51が露出し、色素含有流体F(C)が放出されたのちの状態である。なお、色素Cには、赤色発光する発光材料を採用している。
【0067】
図7(a)のグラフを見ると、輝度値平均の時系列データは、その推移に大きな変化が認められず、輝度値平均2.0近傍でベースラインとなる振動が安定して生じていることがわかる。一方、
図7(b)のグラフを見ると、ところどころで、輝度値平均に大きな反応を生じている様子がわかる。
【0068】
これは、輝度値平均が突出した時点の画像データで捉えた掘削土砂Sに、色素Cが混じっていることを示している。掘削土砂Sを目視確認したところ、色素Cが混入していることを確認した。また、ベースラインの部分も、
図7(a)と比較して細かな振動が生じており、これらも色素の有無による変動を捉えているものと想定できる。
【0069】
≪色素の有無の判別:STEP5≫
画像処理部6221において画像データの輝度値平均が算定されると、演算処理部622は色素判定部6222の指令を受けて、輝度値平均に基づいて色素Cの有無を判定する。
【0070】
具体的には、画像データごとに算出される輝度値平均とSTEP2で決定した判定閾値とを比較し、輝度値平均の数値が判定閾値より高い場合に、「色素あり」と判定する。例えば
図7(b)では判定閾値を輝度値平均2.0に設定している。これにより、輝度値平均2.0を超える輝度値平均が算定された画像データに撮像された掘削土砂Sには、混入する「色素あり」と判定する。
【0071】
≪摩耗量の把握:STEP6≫
色素判定部6222において「色素あり」と判定した場合、演算処理部622は警報出力部6232を介して表示装置624に、警告メッセージを発報する。
【0072】
作業員は、表示装置624で警告メッセージを受信したのち、ベルトコンベヤ上の掘削土砂Sやずり鋼車30に積み込まれた掘削土砂Sを目視し、色素Cの有無を確認する。色素Cを確認し、カッタビット14の摩耗量が摩耗検知量L1に到達したものと判断できる場合には、シールド掘進機10の掘削作業を一時中断し、カッタビット14を交換するなど適宜対応すればよい。
【0073】
本発明によれば、作業員は、警報の報知を受けたのちに、最終確認作業として掘削土砂Sを目視確認すればよい。したがって、掘削土砂Sに常時注意を払う手間を省略でき、摩耗管理の運用性を高めることができる。また、シールド掘進機10のオペレーターや工事事務所の作業員などに対して迅速に、カッタビット14の摩耗状況を伝達でき、摩耗管理の効率化を図ることが可能となる。
【0074】
さらに、色素Cの有無を色素判定部6222で判定することで、作業員が掘削土砂を目視確認する場合と比較して、安定した精度で色素Cの有無を判別できる。加えて、作業員は、警報の報知を受ける前であっても、輝度値平均の時系列データを支援情報として利用し、例えば、色素Cが大量に放出される予兆、つまり、カッタビット14の摩耗量が摩耗検知量L1に到達する予兆を捉えることもできる。
【0075】
本発明の摩耗管理システム及び掘削具の摩耗管理方法は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0076】
≪≪色素Cに緑色発光の発光材料を採用した場合≫≫
例えば、本実施の形態では、色素Cに赤色発光する発光材料を採用したが、緑色発光する発光材料を採用してもよい。
図8に、色素Cとして緑色発光する発光材料を採用する場合の輝度値平均の時系列データを示す。
【0077】
図8(a)は、カメラ611の撮像範囲を通過する掘削土砂Sに、色素Cが混入されていない場合の事例である。一方、
図8(b)は、カメラ611の撮像範囲を通過する掘削土砂Sに、色素Cが混入されている場合の事例である。
図8(b)では判定閾値を輝度値平均2.5に設定している。
【0078】
図8(a)のグラフを見ると、輝度値平均1.0近傍でベースラインとなる振動が安定して生じていることがわかる。一方、
図8(b)のグラフを見ると、赤色発光する発光材料を採用した
図7と同様に、輝度値範囲に大きな反応を生じる時点がある様子がわかる。掘削土砂Sを目視確認したところ、緑色発光の発光材料が混入していることを確認した。また、ベースラインの部分も、
図8(a)と比較して細かな振動が生じており、これらも色素の有無による変動を捉えているものと想定できる。
【0079】
このように、色素Cに緑色発光もしくは赤色発光する発光材料を採用し、画像データの各画素から抽出した画素値のRGB成分のうち、G成分もしくはR成分を採用して二値化処理を行うと、掘削土砂Sの色合いやトンネルT内の照明など撮像環境の影響を最小限に抑えつつ、色素Cの有無を高い精度で検知できる。
【0080】
≪≪段階的にカッタビットの摩耗状態を管理する方法≫≫
また、本実施の形態では、カッタビット14の摩耗量が摩耗検知量L1に到達した場合に、色素Cを放出して摩耗を検知する場合を事例に挙げた。しかし、これに限定するものではなく、カッタビット14の摩耗状態を段階的に検知し、管理する構成としてもよい。
【0081】
例えば、
図9(a)で示すように、色素放出機構50には、色素放出部51と色素供給部54とこれらを連結する供給管55の組み合わせが2組設けられている。
【0082】
このうち、一方の色素放出部51は、カッタビット14の内部であって先端141Bから摩耗検知量L1だけ後退した深さ位置に、また、他方の色素放出部51は、先端141Bから摩耗検知量L2だけ後退した深さ位置に設けられている。そして、各々に接続されている色素供給部54には、それぞれ色合いの異なる色素C1、C2を含有した色素含有流体F(C1)、F(C2)が搭載されている。
【0083】
これにより、カッタビット14が摩耗検知量L1、摩耗検知量L2と摩耗するごとに、放出される色素C1、C2を土砂監視装置60で検知し、摩耗が進行する様子を段階的に管理することができる。
【0084】
また、
図10(a)及び(b)で示すように、先端141Bから摩耗検知量L1だけ後退した深さ位置に色素放出部51を設けたカッタビット14と、先端141Bから摩耗検知量L1だけ後退した深さ位置に色素放出部51を設けたカッタビット14の、2種類を準備する。そして、
図10(b)で示すように、これらをカッタヘッド12に設ける構成としてもよい。
【0085】
なお、
図9及び
図10では、カッタビット14の摩耗状態を、摩耗検知量L1、摩耗検知量L2の2段階で管理する場合を事例に挙げたが、その数量は2段階に限定されるものではない。また、複数の色素放出部51から放出する色素Cは、同一の材料を採用してもよいが、作業者が表示装置624で警告メッセージを受信したのち、掘削土砂Sを目視で確認することを考慮すると、異なる色素Cを採用することが好ましい。
【符号の説明】
【0086】
10 シールド掘進機(トンネル掘削機)
11 カッタ駆動部
12 カッタヘッド
121 カッタスポーク
13 シールド本体
131 フード部
132 隔壁
14 カッタビット(掘削具)
141 母材
141A 基端
141B 先端
142 チップ
15 チャンバー
16 スクリュコンベヤ
20 ベルトコンベヤ
21 テール部
22 ヘッド部
30 ずり鋼車
40 摩耗管理システム
50 色素放出機構
51 色素放出部
52 色素供給部(ピストン型)
521 中空部
521A 貯蔵部
521B 加圧部
522 ピストン
523 コイルバネ
524 ネジ
53 流路
531 連通部
532 プラグ
533 プラグ
54 色素供給部(アキュムレータ型)
541 筐体
541A 接続部
542 加圧部
543 貯蔵部
55 供給管
60 土砂監視装置
61 撮像手段
611 カメラ
612 照明設備
613 支持架台
62 色素検知手段
621 入力部
622 演算処理部
6221 画像処理部
6222 色素判定部
623 出力部
6231 データ出力部
6232 警報出力部
624 表示装置
625 端末装置
H 発進立坑
T トンネル
P 土砂ピット
G 圧縮ガス
A 切羽
F(C) 色素含有流体
F(C1) 色素含有流体
F(C2) 色素含有流体
C 色素
C1 色素
C2 色素