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特開2023-121438パーティクル検知方法、コンピュータ記憶媒体及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121438
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】パーティクル検知方法、コンピュータ記憶媒体及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20230824BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20230824BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230824BHJP
【FI】
H01L21/30 564D
H01L21/30 569C
B05C11/08
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
H01L21/304 646
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024791
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】東 龍之介
【テーマコード(参考)】
4F042
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
4F042AA07
4F042AB00
4F042DH09
4F042EB05
4F042EB09
4F042EB13
4F042EB18
5F146JA02
5F146JA10
5F146JA16
5F146JA27
5F146LA04
5F146LA05
5F146LA08
5F146LA19
5F157AA91
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB22
5F157BB39
5F157BB44
5F157CD24
5F157CE03
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF46
5F157DC21
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】処理容器内のパーティクルの検知精度を向上させる。
【解決手段】基板処理装置の処理容器内のパーティクルを検知するパーティクル検知方法であって、前記処理容器内に設けられたサンプリング位置でサンプリングされた雰囲気を帯電させ、帯電させた雰囲気の電流値を測定する工程と、前記電流値及び前記電流値の測定時間のデータをフーリエ変換して周波数解析を行う工程と、前記周波数解析の結果に基づいて前記雰囲気中のパーティクルの有無を判定する工程と、を備え、前記電流値を測定する工程では、前記基板処理装置において、前記処理容器内に設けられた吐出部からの液の吐出及び吐出停止を一定の周期で繰り返すレシピが実行される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置の処理容器内のパーティクルを検知するパーティクル検知方法であって、
前記処理容器内に設けられたサンプリング位置でサンプリングされた雰囲気を帯電させ、帯電させた雰囲気の電流値を測定する工程と、
前記電流値及び前記電流値の測定時間のデータをフーリエ変換して周波数解析を行う工程と、
前記周波数解析の結果に基づいて前記雰囲気中のパーティクルの有無を判定する工程と、を備え、
前記電流値を測定する工程では、前記基板処理装置において、前記処理容器内に設けられた吐出部からの液の吐出及び吐出停止を一定の周期で繰り返すレシピが実行される、パーティクル検知方法。
【請求項2】
前記周波数解析を行う工程において、
前記電流値及び前記電流値の測定時間のデータを、
前記液の吐出中におけるデータと、前記液の吐出停止中におけるデータと、に分けて、
各々のデータをフーリエ変換する、請求項1に記載のパーティクル検知方法。
【請求項3】
前記パーティクルの有無を判定する工程において、
前記レシピに含まれる前記基板処理装置の動作の周期から周波数を換算し、
換算された周波数と、前記周波数解析におけるピーク周波数とを比較する、請求項1に記載のパーティクル検知方法。
【請求項4】
前記レシピは、前記液の吐出及び吐出停止以外の前記基板処理装置の動作も含み、
前記基板処理装置における各動作は、互いに異なる周期で実行される、請求項3に記載のパーティクル検知方法。
【請求項5】
前記電流値を測定する工程において、
前記レシピに含まれる前記基板処理装置の動作に応じて、前記サンプリング位置を、予め設定された、前記パーティクルの発生が予測される位置に移動させる、請求項1~4のいずれか一項に記載のパーティクル検知方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のパーティクル検知方法を基板処理装置によって実行させるように、当該基板処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムを記憶した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【請求項7】
基板処理装置であって、
基板の処理が行われる処理容器と、
前記基板に処理液を吐出する吐出部と、
前記処理容器内のパーティクルを検知するパーティクル検知部と、
制御部と、を備え、
前記パーティクル検知部は、
前記処理容器内の雰囲気をサンプリングするサンプリング部と、
サンプリングされた雰囲気を帯電させ、帯電させた雰囲気の電流値を測定する電流測定部と、を有し、
前記制御部は、
サンプリング位置でサンプリングされた雰囲気を帯電させ、帯電させた雰囲気の電流値を測定する工程と、
前記電流値及び前記電流値の測定時間のデータをフーリエ変換して周波数解析を行う工程と、
前記周波数解析の結果に基づいて前記雰囲気中のパーティクルの有無を判定する工程と、を実行するように構成され、かつ、
前記電流値を測定する工程では、前記吐出部からの液の吐出及び吐出停止を一定の周期で繰り返すレシピを実行するように構成されている、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パーティクル検知方法、コンピュータ記憶媒体及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板にレジスト膜を形成し、当該基板を露光装置に搬送し、その後、当該露光装置で液浸露光された基板に対し現像処理を行う、塗布、現像装置が開示されている。この塗布、現像装置は、レジスト膜を含む塗布膜形成後、液浸露光前に基板を液処理する露光前処理モジュールを含む処理モジュールが設けられた処理ブロックと、液浸露光後、現像処理前に基板を液処理する露光後処理モジュールと、露光装置に基板を搬入出する第1搬入出モジュールとが設けられ、且つ、処理ブロックと露光装置とを幅方向に連結する中継ブロックと、を備えている。
【0003】
特許文献2には、サンプリング気体が導入され、内部を凝縮性蒸気雰囲気とした飽和部と、飽和部を通過したサンプリング気体が導入され、内部を飽和度1以上の過飽和蒸気雰囲気とし、飽和部を通過したサンプリング気体に含まれるパーティクルを核として蒸気分子を凝縮させてパーティクルを核とする凝縮核を凝縮成長させる凝縮部と、凝縮部から排気され、凝縮核を含んだサンプリング気体からパーティクルの数を計数するパーティクル計数部と、を備えた、凝縮核計数器が開示されている。この凝縮核計数器は、飽和部の内部、および凝縮部の内部がそれぞれ円筒空間であり、サンプリング気体を円筒空間の接線方向に沿って飽和部に導入し、飽和部の内部から凝縮部の内部にかけて、サンプリング気体を円筒空間の周方向に沿ってトルネード状に回転させながら、凝縮部から円筒空間の接線方向に沿って排気する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-057546号公報
【特許文献2】特開2016-003879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示にかかる技術は、処理容器内のパーティクルの検知精度を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、基板処理装置の処理容器内のパーティクルを検知するパーティクル検知方法であって、前記処理容器内に設けられたサンプリング位置でサンプリングされた雰囲気を帯電させ、帯電させた雰囲気の電流値を測定する工程と、前記電流値及び前記電流値の測定時間のデータをフーリエ変換して周波数解析を行う工程と、前記周波数解析の結果に基づいて前記雰囲気中のパーティクルの有無を判定する工程と、を備え、前記電流値を測定する工程では、前記基板処理装置において、前記処理容器内に設けられた吐出部からの液の吐出及び吐出停止を一定の周期で繰り返すレシピが実行される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、処理容器内のパーティクルの検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2】本実施形態にかかるレジスト塗布装置の構成の概略を示す横断面図である。
図3】パーティクル検知試験におけるサンプリング位置を説明するための説明図である。
図4】サンプリングされた雰囲気を用いて測定された電流値を示すグラフである。
図5】測定された電流値を用いて推定されたパーティクルの個数濃度を示すグラフである。
図6】測定された電流値と時間のデータをフーリエ変換したグラフである。
図7】他の実施形態にかかるパーティクル検知方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
半導体デバイス等の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、基板としての半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)の上に所定のレジストパターンを形成するために一連の処理が行われる。この一連の処理には、例えば、ウェハ上にレジスト液を供給してレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を露光する露光処理、露光されたレジスト膜に現像液を供給して現像する現像処理等が含まれる。
【0010】
レジスト液や現像液等の処理液は、処理液供給源から吐出ノズルに供給され、吐出ノズルを介してウェハに向けて吐出される。一方、ウェハに処理液が吐出されない間は、処理液を所定の排液場所に吐出する、いわゆるダミーディスペンスが行われることがある。また、ウェハ表面の洗浄のために、吐出ノズルから純水などの洗浄液が吐出されることもある。
【0011】
ところで、上記のように吐出ノズルから液体が吐出される際には、その液体がミスト状に飛散し、ミスト状の液体がパーティクルとして処理容器内に浮遊する場合がある。処理容器内のパーティクルは、レジストパターンの形成に悪影響を及ぼすことから、所望のレジストパターンを形成するためには、処理容器内のパーティクルの個数やサイズを厳格に管理する必要がある。特に近年は、半導体素子の微細化によって、パーティクルサイズに対する要求が厳しくなっており、処理容器内の雰囲気中の微小なパーティクルの有無を精度良く検知することが望まれる。
【0012】
塗布、現像装置などのウェハの処理を行う装置においては、従来から測定器を用いた処理容器内のパーティクルの有無の測定が行われている。しかしながら、パーティクルの測定においては、パーティクルの個数が少ないほど、あるいはパーティクルサイズが小さいほど、測定器のノイズの影響を受けやすく、検知精度の観点では改善の余地がある。
【0013】
そこで、本開示にかかる技術は、処理容器内のパーティクルの検知精度を向上させる。
【0014】
以下、本実施形態にかかる基板処理装置及びパーティクル検知方法について、図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<レジスト塗布装置>
図1及び図2を用いて、本実施形態にかかる基板処理装置としてのレジスト塗布装置について説明する。図1及び図2はそれぞれ、レジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面図及び横断面図である。
【0016】
レジスト塗布装置1は、図1に示すように、内部を閉鎖可能な処理容器10を有している。処理容器10の側面には、基板としてのウェハWの搬入出口(図示せず)が形成され、搬入出口には、開閉シャッタ(図示せず)が設けられている。
【0017】
処理容器10内の中央部には、ウェハWを保持して回転させる回転保持部としてのスピンチャック20が設けられている。スピンチャック20は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック20上に吸着保持できる。
【0018】
スピンチャック20は、例えばモータ等を備えたチャック駆動機構21を有し、そのチャック駆動機構21により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動機構21には、シリンダ等の昇降駆動源が設けられており、スピンチャック20は上下動可能である。
【0019】
スピンチャック20の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止めて回収するカップ30が設けられている。カップ30の下面には、回収した液体を排出する排出管31と、カップ30内の雰囲気を排気する排気管32が接続されている。
【0020】
図2に示すように、カップ30のX方向正方向(図2の上方向)側には、Y方向(図2の左右方向)に沿って延伸するレール40が形成されている。レール40は、例えばカップ30のY方向負方向(図2の左方向)側の外方からY方向正方向(図2の右方向)側の外方まで形成されている。レール40には、アーム41が取り付けられている。
【0021】
アーム41には、処理液としてのレジスト液を吐出する、吐出部としての吐出ノズル42が支持されている。アーム41は、ノズル駆動部43によって昇降自在であり、吐出ノズル42の高さを調節できる。また、アーム41は、ノズル駆動部43により、レール40上を移動自在に構成されている。これにより、吐出ノズル42は、カップ30のY方向正方向側の外方に設置された待機部としてのダミーディスペンスポート44と、カップ30内のウェハWの中心部上方との間を移動できる。また、吐出ノズル42は、ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できるように構成されている。この吐出ノズル42は、図1に示すようにレジスト液を供給する液供給装置100に接続されている。
【0022】
ダミーディスペンスポート44は、吐出ノズル42から吐出されるレジスト液の排液、いわゆるダミーディスペンスを行うための容器である。ダミーディスペンスは、ウェハWの搬入出を行う場合などのウェハWにレジスト液を吐出しないタイミングで定期的に実施される。ダミーディスペンスを行う際には、ダミーディスペンスポート44の内部にレジスト液が吐出され、吐出されたレジスト液は、排液管(図示せず)を介して排出される。
【0023】
図1及び図2に示すように、レジスト塗布装置1は、処理容器10内の雰囲気中のパーティクルを検知するパーティクル検知部としての検知器50を備えている。検知器50は、処理容器10内の雰囲気をサンプリングするサンプリング部としてのチューブ51と、サンプリングされた雰囲気の電流値を測定する電流測定部としての検知器本体52を有する。
【0024】
チューブ51は、一端部が検知器本体52に接続され、他端部は、ダミーディスペンスポート44が有する側壁のうちのカップ30側に対向する側壁の外面に配置されている。処理容器10内のパーティクルの検知を行う際には、このチューブ51の上端から、処理容器10内の雰囲気を検知器本体52に導入し、当該雰囲気内のパーティクルの有無を検知する。すなわち、チューブ51の上端でサンプリングした雰囲気のパーティクルを検知することから、本明細書では、チューブ51の上端をサンプリング位置Pと記載する。
【0025】
検知器本体52は、チューブ51内の雰囲気を吸入可能な構成を有している。また、検知器本体52は、吸入した雰囲気を例えばコロナ放電により帯電させ、帯電させた雰囲気の電流値を測定可能な構成を有している。なお、検知器本体52は、パーティクルを含む雰囲気(エアロゾル)の電流値を測定できる構成であれば特に限定されず、例えば公知の検知器の構成を適用することもできる。また、検知器本体52は、処理容器10の外部に配置されることに限定されず、検知器本体52が正常に機能することが担保されるようであれば、処理容器10の内部に配置されてもよい。
【0026】
レジスト塗布装置1は、制御部Mで制御される。制御部Mは、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、レジスト塗布装置1における各種処理や後述するパーティクル検知処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部Mにインストールされたものであってもよい。記憶媒体Hは、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
【0027】
次に、レジスト塗布装置1における処理容器10内のパーティクル検知方法について説明する。
【0028】
本実施形態においては、サンプリング位置Pがダミーディスペンスポート44の側壁外面に位置しているため、ダミーディスペンス時に発生するパーティクルが検知し易くなる。
【0029】
具体的な検知方法としては、まずチューブ51から処理容器10内の雰囲気をサンプリングし、検知器本体52において、サンプリングした雰囲気を帯電させて、帯電させた雰囲気の電流値を測定する。
【0030】
次に、測定された電流値と、その電流値の測定時間のデータをフーリエ変換して周波数解析を行う。そして、周波数解析の結果に現れるピークの有無に基づいて、サンプリングした雰囲気中のパーティクルの有無、すなわち、サンプリング位置Pにおけるパーティクルの発生の有無を判定する。
【0031】
以下、本発明者によって行われたパーティクル検知試験の結果を用いて、パーティクル検知方法について更に詳細に説明する。
【0032】
図3は、パーティクル検知試験におけるサンプリング位置Pを説明するための説明図である。この試験は、ダミーディスペンスポート44に対するチューブ51の設置高さを変更することで、サンプリング位置Pが異なる3条件で実施された。条件Aのサンプリング位置Pは、ダミーディスペンスポート44の上面と同一の高さである。条件Bのサンプリング位置Pは、ダミーディスペンスポート44の上面から2mm低い高さである。条件Cのサンプリング位置Pは、ダミーディスペンスポート44の上面から4mm低い高さである。
【0033】
図4は、条件A~Cの各サンプリング位置Pでサンプリングされた雰囲気を用いて測定された電流値を示すグラフである。各グラフの縦軸は、電流値であり、横軸は、電流値の測定時間である。なお、この試験においては、検知器本体52として、Testo SE & Co. KGaA製のtesto DiSCmini ナノパーティクルカウンターが使用された。
【0034】
図4中に記載された「吐出無し」とは、吐出ノズル42からダミーディスペンスポート44にレジスト液を吐出していない状態を示し、「吐出有り」とは、吐出ノズル42からダミーディスペンスポート44にレジスト液を吐出している状態を示す。パーティクル検知試験では、レジスト塗布装置1において、「吐出無し」の状態と「吐出有り」の状態を一定の周期で繰り返すレシピが実行された。
【0035】
今回の試験では、10秒間の「吐出無し」の状態の後に5秒間の「吐出有り」の状態とする動作を1周期の動作とし、この1周期の動作を30周期繰り返した。図4では、30周期分の電流値の測定結果は図示されていないが、実際に行われた試験では、30周期分の電流値の測定結果が得られている。
【0036】
なお、1周期あたりのレジスト液の吐出時間及び吐出停止時間は、検知器50やレジスト塗布装置1の構成に応じて適宜設定されるものである。また、レジスト液の吐出及び吐出停止の動作を繰り返す回数についても特に限定されず、検知器50やレジスト塗布装置1の構成に応じて適宜変更されるものである。
【0037】
図5は、電流の測定値を用いて推定されたパーティクルの個数濃度を示すグラフである。なお、この図5に示すグラフは、検知器が備える変換ソフトを用い、電流の測定値からパーティクル個数濃度を出力した結果である。サンプリングされた雰囲気中のパーティクルの個数濃度(個/cm3)は、電流値と相関があり、例えば帯電したパーティクル個数が多いほど、雰囲気全体としての帯電量が増大し、電流の測定値も増大する。この相関関係を利用することによって、図5のように、サンプリングされた雰囲気の電流値からパーティクルの個数濃度を推定することができる。
【0038】
しかし、微小なパーティクル(例えば100nm未満)は、帯電量が小さいために、検知器(パーティクルカウンタ)のノイズの影響を受けやすく、パーティクルの存在が検知されているか判然としない場合がある。詳述すると、電流の測定値がゼロでない場合には、パーティクルの存在が電流値として表れているか、検知器のノイズが電流値として表れているか判然としない場合がある。すなわち、電流の測定値からパーティクル個数濃度を推定する方法では、測定器のノイズの影響を除外できず、パーティクルの検知精度の観点では懸念がある。
【0039】
一方、本実施形態にかかるパーティクル検知方法では、電流の測定値と、測定時間のデータをフーリエ変換して周波数解析を行う。図6は、電流値と測定時間のデータをフーリエ変換したグラフである。なお、このフーリエ変換処理は、検知器本体52から出力された電流測定値を用いて制御部Mで行われてもよいし、検知器本体52の制御部(図示せず)にフーリエ変換処理機能を実装し、検知器本体52でフーリエ変換処理が行われてもよい。
【0040】
図6の矢印で示すように、測定された電流値のデータをフーリエ変換することによって、特定の周波数にピークがあることが確認される。このピークは、その特定の周波数において電流値が高いことを示していて、その特定の周波数に対応するレジスト塗布装置1の動作が行われるタイミングでパーティクルが発生したことを示す。
【0041】
図6によれば、条件A~Cのいずれの条件においても「吐出無し」に対応する周波数帯ではピークが現れず、「吐出有り」に対応する周波数帯でピークが現れている。すなわち、いずれの条件においても、吐出ノズル42からレジスト液を吐出していない間は、パーティクルが発生していない一方、レジスト液を吐出している間ではパーティクルが発生することがわかる。
【0042】
また、図5に示したパーティクル個数濃度の推定結果では、条件Aにおける2周期目の「吐出無し」の状態でパーティクル個数濃度が相対的に高い時間があるが、図6に示した周波数解析の結果によれば、条件Aの「吐出無し」の状態ではピークが現れていない。すなわち、周波数解析の結果によれば、条件Aの「吐出無し」の状態では、パーティクルは検知されない。このため、図5における条件Aの2周期目のパーティクル個数濃度が相対的に高い時間は、検知器のノイズなどの影響を受けて、パーティクルが発生したことが誤検知された結果であると考えられる。
【0043】
以上のように、本実施形態にかかるパーティクル検知方法によれば、従前の方法ではパーティクルの有無が判然としない場合であっても、周波数解析の結果に基づいてパーティクルの有無を判定することによって、パーティクルの検知精度を向上させることができる。
【0044】
なお、図6では、レジスト液の吐出中における電流値のデータと、レジスト液の吐出停止中における電流値のデータと、をそれぞれフーリエ変換しているが、各データを分割せずに1つのデータと取り扱ってフーリエ変換してもよい。ただし、図6のようにレジスト液の吐出中における電流値のデータと、レジスト液の吐出停止中における電流値のデータと、をそれぞれフーリエ変換することによって、いずれの動作でパーティクルが発生したか原因が特定し易くなる。
【0045】
また、上記のパーティクル検知方法によれば、レジスト液の吐出及び吐出停止の動作が行われる周期を周波数に換算し、換算された周波数と、周波数解析におけるピーク周波数(ピークに対応する周波数)とを比較することで、パーティクルの発生タイミングを特定できる。すなわち、パーティクルが発生する原因となったレジスト塗布装置1の動作と、パーティクルの発生タイミングを確認できることから、パーティクルを抑えるためのより適切な対処法を検討し易くなる。例えば図6に示す結果では、ダミーディスペンスの開始直後にパーティクルが発生する傾向を確認できるため、ダミーディスペンスの開始直後のレジスト液の吐出速度を抑え、その後、徐々に吐出速度を増加させるなどの対処法が検討され得る。
【0046】
さらに、サンプリングされた雰囲気の電流値を測定する工程で実行されるレジスト塗布装置1のレシピには、ダミーディスペンスポート44へのレジスト液の吐出及び吐出停止以外の動作が含まれてもよい。そのような動作としては、例えばプリウェット工程におけるウェハWに対する有機溶剤(例えばシンナー)の吐出及び吐出停止や、レジスト塗布工程におけるウェハWに対するレジスト液の吐出及び吐出停止、スピンチャック20の回転及び回転停止、吐出ノズル42の上昇または下降などの動作がある。これらの動作が、同時ではなく、互いに異なる周期で実行されることによって、周波数解析結果に現れたピーク周波数に対応するレジスト塗布装置1の動作を特定することができ、パーティクルを抑えるためのより適切な対処法を検討し易くなる。具体的な対処法としては、例えば吐出ノズルからの液の吐出速度や吐出高さ、スピンチャックの回転速度の調節などの対処法が検討され得る。
【0047】
以上の例では、サンプリング位置Pがダミーディスペンスポート44の側壁外面に位置していたが、サンプリング位置Pは、処理容器10内に位置していれば特に限定されず、例えばカップ30の側壁外面に位置してもよい。サンプリング位置Pが側壁外面に位置する場合には、カップ30内のウェハWに向けた液の吐出動作に起因するパーティクルの発生を検知し易くなる。
【0048】
また例えば、図7に示すように、レジスト塗布装置1に、チューブ51を移動させる機構を設け、レジスト塗布装置1におけるレシピの実行中にサンプリング位置Pを移動させてもよい。このような構成のレジスト塗布装置1において、パーティクルの発生が予測される位置を予め設定しておけば、レシピに従って実行されるレジスト塗布装置1の動作に応じ、サンプリング位置Pを予め設定された位置に移動させることができる。
【0049】
具体的には、例えば、ウェハWに対するレジスト液の吐出を行う際には、サンプリング位置Pをカップ30に接近させ、ダミーディスペンスを行う際には、サンプリング位置Pをダミーディスペンスポート44に接近させることができる。そのようなサンプリング位置Pの移動が周期的に行われることで、周波数解析におけるピーク周波数との比較から、パーティクルが発生したときのサンプリング位置Pを特定できる。そして、特定されたサンプリング位置Pから、パーティクルの発生原因となったレジスト塗布装置1の動作を特定できるため、パーティクルを抑えるためのより適切な対処法を検討し易くなる。
【0050】
なお、以上の例では、検知器50がレジスト塗布装置1に常設され、製品用のウェハWに対する一連の処理が行われる間のパーティクルの発生を検知しているが、検知器50は、レジスト塗布装置に対して一時的に設置されるものあってもよい。例えば、検知器50は、レジスト塗布装置の開発、製造段階において、パーティクルの発生有無を試験するために設置されてもよい。その場合、例えばパーティクル検知試験において、ダミーディスペンス時にパーティクルが発生することが判明した場合には、ダミーディスペンスポート44の形状の再検討や、吐出条件の再検討を行うことができる。そして、レジスト塗布装置が完成した後に、検知器50が取り外される。
【0051】
また例えば、処理容器内雰囲気の排気量を増加させながら、パーティクル検知試験を実施した際には、排気量が、いずれかの値に到達したときにパーティクルが発生する場合がある。その場合には、パーティクルが発生したときの排気量を上限値として処理条件を設定すれば、製品用のウェハWに対する一連の処理を行う際にパーティクルの発生を抑えることができる。すなわち、以上で説明したパーティクル検知方法を利用すれば、レジスト塗布装置における、より適切な処理条件を見出すことも可能となる。
【0052】
以上、本実施形態にかかるパーティクル検知方法について説明した。なお、以上の例では、基板処理装置としてレジスト塗布装置を例示したが、例えば基板処理装置は、露光されたレジスト膜に現像液を供給して現像する現像装置であってもよい。また、以上の例では、吐出部としての吐出ノズル42からレジスト液を吐出したが、吐出部から吐出する液体は、ウェハWに対して行う所望の処理に応じて、現像液やウェハを洗浄する洗浄液(例えば純水)などの液体であってもよい。いずれの液体が吐出される場合であっても、吐出部から液体が吐出された際には、液体がミスト状に飛散し、パーティクルとして浮遊する場合があるため、前述のパーティクル検知方法を適用できる。
【0053】
また、本開示にかかる基板処理装置は、半導体ウェハ以外の処理対象基板、例えばFPD(フラットパネルディスプレイ)基板の処理装置にも適用できる
【0054】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 レジスト塗布装置
10 処理容器
42 吐出ノズル
50 検知器
51 チューブ
52 検知器本体
H 記憶媒体
M 制御部
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7