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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121648
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】光電変換素子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/10 20230101AFI20230824BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20230824BHJP
【FI】
H01L31/04 124
H01L31/04 112Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025102
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】古宮 良一
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151EA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた光電変換効率を実現し易い光電変換素子モジュールを提供する。
【解決手段】導電膜5と第一電荷輸送層6と発電層7と少なくともカーボンナノ繊維体からなる多孔質膜を有する第二電荷輸送層9とをこの順に有する複数の光電変換素子3と、光電変換素子を直列接続する導電性微粒子の接続部と、を有し、導電膜、第一電荷輸送層、発電層及び多孔質膜がそれぞれ、互いに分離して設けられ、各々の相互接続される2つの光電変換素子において、一方の光電変換素子における導電膜が第一電荷輸送層、発電層及び多孔質膜よりも他方の光電変換素子の側に延びる導電膜延長部を有し、他方の光電変換素子における多孔質膜が導電膜、第一電荷輸送層及び発電層よりも一方の光電変換素子の側に延びる多孔質膜延長部を有し、導電膜延長部と多孔質膜延長部が接続部を介して接続される、光電変換素子モジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが導電膜と第一電荷輸送層と発電層と少なくともカーボンナノ繊維体からなる多孔質膜を有する第二電荷輸送層とをこの順に有する複数の光電変換素子と、前記複数の光電変換素子に含まれる2つ以上の光電変換素子を直列接続する、導電性微粒子を含む1つ以上の接続部と、を有し、
前記2つ以上の光電変換素子において各々の相互接続される2つの前記光電変換素子の間で、前記導電膜、前記第一電荷輸送層、前記発電層及び前記多孔質膜がそれぞれ、互いに分離して設けられ、
前記各々の相互接続される2つの光電変換素子において、
一方の前記光電変換素子における前記導電膜が前記第一電荷輸送層、前記発電層及び前記多孔質膜よりも他方の前記光電変換素子の側に延びる導電膜延長部を有し、
他方の前記光電変換素子における前記多孔質膜が前記導電膜、前記第一電荷輸送層及び前記発電層よりも前記一方の光電変換素子の側に延びる多孔質膜延長部を有し、
前記導電膜延長部と前記多孔質膜延長部が前記接続部を介して接続される、光電変換素子モジュール。
【請求項2】
前記複数の光電変換素子において、前記多孔質膜が多孔質自立シートである、請求項1に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項3】
前記複数の光電変換素子において、前記多孔質自立シートの膜厚が20μm以上である、請求項2に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項4】
前記各々の相互接続される2つの光電変換素子において、前記一方の光電変換素子の前記導電膜延長部と前記他方の光電変換素子の前記導電膜、前記第一電荷輸送層及び前記発電層との間隔が、前記導電性微粒子の平均粒径よりも大きい、請求項1~3の何れか1項に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項5】
前記各々の相互接続される2つの光電変換素子において、前記他方の光電変換素子において前記発電層が前記導電膜における前記一方の光電変換素子の側の端部を覆う、請求項1~4の何れか1項に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項6】
各々の前記接続部において、前記導電性微粒子が炭素材料、金属及び金属酸化物の少なくともいずれかを含む、請求項1~5の何れか1項に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項7】
各々の前記接続部が少なくとも前記導電性微粒子と樹脂からなる、請求項1~6の何れか1項に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項8】
前記複数の光電変換素子において、前記発電層がペロブスカイト化合物を含む、請求項1~7の何れか1項に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項9】
前記複数の光電変換素子の前記導電膜、前記第一電荷輸送層及び前記発電層と、前記1つ以上の接続部を形成するための部材とからなる構造体を形成する第1工程と、
前記構造体に、少なくともカーボンナノ繊維体からなる多孔質膜体を積層し、その後に、前記多孔質膜体の一部を除去することで、前記複数の光電変換素子における前記多孔質膜を形成する第2工程と、を有する、請求項1~8の何れか1項に記載の光電変換素子モジュールを製造する方法。
【請求項10】
前記第1工程が、少なくとも導電膜体を形成した後に少なくとも前記導電膜体の一部を除去することで、前記複数の光電変換素子の少なくとも前記導電膜を形成する除去工程を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記除去工程において、前記導電膜体と第一電荷輸送層体と発電層体を形成した後に、前記導電膜体、前記第一電荷輸送層体及び前記発電層体の一部を除去することで、前記複数の光電変換素子の前記導電膜、前記第一電荷輸送層及び前記発電層を形成する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
導電膜と第一電荷輸送層と発電層と第二電荷輸送層とをこの順に有する光電変換素子(例えば特許文献1参照)や、複数の光電変換素子を有する光電変換素子モジュール(例えば特許文献2~3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6339037号公報
【特許文献2】特許第6030176号公報
【特許文献3】特許第6646471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の光電変換素子モジュールには、光電変換効率において改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、優れた光電変換効率を実現し易い光電変換素子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光電変換素子モジュールは、それぞれが導電膜と第一電荷輸送層と発電層と少なくともカーボンナノ繊維体からなる多孔質膜を有する第二電荷輸送層とをこの順に有する複数の光電変換素子と、前記複数の光電変換素子に含まれる2つ以上の光電変換素子を直列接続する導電性微粒子を含む1つ以上の接続部と、を有し、前記2つ以上の光電変換素子において各々の相互接続される2つの前記光電変換素子の間で、前記導電膜、前記第一電荷輸送層、前記発電層及び前記多孔質膜がそれぞれ、互いに分離して設けられ、前記各々の相互接続される2つの光電変換素子において、一方の前記光電変換素子における前記導電膜が前記第一電荷輸送層、前記発電層及び前記多孔質膜よりも他方の前記光電変換素子の側に延びる導電膜延長部を有し、他方の前記光電変換素子における前記多孔質膜が前記導電膜、前記第一電荷輸送層及び前記発電層よりも前記一方の光電変換素子の側に延びる多孔質膜延長部を有し、前記導電膜延長部と前記多孔質膜延長部が前記接続部を介して接続される、光電変換素子モジュールである。このような構成によれば、2つ以上の光電変換素子の発電層の間隔に対応する接続部の幅を容易に狭く設定できるため、優れた光電変換効率を容易に実現できる。
【0007】
ここで、本発明の光電変換素子モジュールは、前記複数の光電変換素子において、前記多孔質膜が多孔質自立シートであることが好ましい。このような構成によれば、接続部の形状安定性を高めることで、幅の狭い接続部をより容易に実現できる。
【0008】
なお、本発明において、「多孔質自立シート」とは、複数の細孔が形成されたシートであって、支持体がなくともシートとしての形状を保つシートを指す。本発明で用いる多孔質自立シートは、当該多孔質自立シートを所定の溶媒又は溶液に浸漬し、引き上げた後、当該多孔質自立シートを被貼付体に貼り付ける際にも、シートの破れなどが生じず、シートとしての形状が維持される。また、本発明で用いる多孔質自立シートは、例えば、ペロブスカイト化合物に対して貧溶媒となるクロロベンゼンなどをシート上に滴下したり、シートの貼り付けに用いる治具などを用いて取り扱うような場合でも、シートの破れや変形が生じることがない。そして、本発明で用いる多孔質自立シートは、例えば、膜厚が1μm~200μm、光電変換素子の形成に必要なサイズにおいて、支持体なしでシートとしての形状を保つことが好ましい。
【0009】
また、本発明の光電変換素子モジュールは、前記複数の光電変換素子において、前記多孔質自立シートの膜厚が20μm以上であることが好ましい。このような構成によれば、接続部の形状安定性を高めることで、幅の狭い接続部をより容易に実現できる。
【0010】
また、本発明の光電変換素子モジュールは、前記各々の相互接続される2つの光電変換素子において、前記一方の光電変換素子の前記導電膜延長部と前記他方の光電変換素子の前記導電膜、前記第一電荷輸送層及び前記発電層との間隔が、前記導電性微粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。このような構成によれば、一方の光電変換素子の導電膜延長部と他方の光電変換素子の導電膜、第一電荷輸送層及び発電層との間で導電性微粒子を介した短絡の発生を抑制できるため、優れた光電変換効率をより容易に実現できる。
【0011】
ここで、導電性微粒子の「平均粒径」とは、市販されている導電性微粒子のカタログ値、或いはデジタルマイクロスコープの観察画像より求めた値を指す。
【0012】
また、本発明の光電変換素子モジュールは、前記各々の相互接続される2つの光電変換素子において、前記他方の光電変換素子において前記発電層が前記導電膜における前記一方の光電変換素子の側の端部を覆うことが好ましい。このような構成によれば、他方の光電変換素子において多孔質膜と導電膜との間で導電性微粒子を介した短絡の発生を抑制できるため、優れた光電変換効率をより容易に実現できる。
【0013】
また、本発明の光電変換素子モジュールは、各々の前記接続部において、前記導電性微粒子が炭素材料、金属及び金属酸化物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。このような構成によれば、幅の狭い接続部をより容易に実現できる。
【0014】
また、本発明の光電変換素子モジュールは、各々の前記接続部が少なくとも前記導電性微粒子と樹脂からなることが好ましい。このような構成によれば、幅の狭い接続部をより容易に実現できる。
【0015】
また、本発明の光電変換素子モジュールは、前記複数の光電変換素子において、前記発電層がペロブスカイト化合物を含むことが好ましい。このような構成によれば、優れた光電変換効率をより容易に実現できる。
【0016】
さらに、本発明の光電変換素子モジュールは、前記複数の光電変換素子の前記導電膜、前記第一電荷輸送層及び前記発電層と、前記1つ以上の接続部を形成するための部材とからなる構造体を形成する第1工程と、前記構造体に、少なくともカーボンナノ繊維体からなる多孔質膜体を積層し、その後に、前記多孔質膜体の一部を除去することで、前記複数の光電変換素子における前記多孔質膜を形成する第2工程と、を有する、方法によって製造することが好ましい。このような構成によれば、接続部を精度良く、効率的に形成できるため、幅の狭い接続部をより容易に実現できる。
【0017】
また、本発明の光電変換素子モジュールの製造方法は、前記第1工程が、少なくとも導電膜体を形成した後に少なくとも前記導電膜体の一部を除去することで、前記複数の光電変換素子の少なくとも前記導電膜を形成する除去工程を有することが好ましい。このような構成によれば、幅の狭い接続部をより容易に実現できる。
【0018】
また、本発明の光電変換素子モジュールの製造方法は、前記除去工程において、前記導電膜体と第一電荷輸送層体と発電層体を形成した後に、前記導電膜体、前記第一電荷輸送層体及び前記発電層体の一部を除去することで、前記複数の光電変換素子の前記導電膜、前記第一電荷輸送層及び前記発電層を形成することが好ましい。このような構成によれば、各々の相互接続される2つの光電変換素子において、他方の光電変換素子の発電層、第一電荷輸送層及び導電膜における一方の光電変換素子の側の端部を容易に揃えて形成することができるため、他方の光電変換素子において多孔質膜と導電膜との間で導電性微粒子を介した短絡の発生を抑制でき、しかも幅の狭い接続部をより容易に実現できる。なお、導電膜延長部を形成する必要があるため、この時の第一電荷輸送層体と発電層体はパターン化することが好ましいが、除去工程の前後いずれかで第一電荷輸送層体と発電層体を部分的に除去して導電膜延長部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた光電変換効率を実現し易い光電変換素子モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る光電変換素子モジュールを有する光電変換モジュールの断面図である。
図2図1のA部拡大図である。
図3】第2光電変換素子において多孔質膜と導電膜との間で導電性微粒子を介した短絡が発生する構造を示す断面図である。
図4図1に示す光電変換モジュールの変形例を示す断面図である。
図5A図1に示す光電変換モジュールを製造するための第1工程の途中の状態を示す断面図である。
図5B】第1工程終了時の状態を示す断面図である。
図5C】第2工程の途中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の光電変換素子モジュールは、特に限定されることなく、例えば、ペロブスカイト太陽電池モジュールとしての光電変換モジュールを構成することができる。以下、本発明の光電変換素子モジュールの一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(光電変換モジュール2)
図1図2は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子モジュール1を有する光電変換モジュール2の構成を示している。光電変換素子モジュール1は、複数の光電変換素子3と、1つ以上の接続部4を有している。複数の光電変換素子3は、それぞれが、導電膜5と、第一電荷輸送層6と、発電層7と、少なくともカーボンナノ繊維体からなる多孔質膜8を有する第二電荷輸送層9と、をこの順に有する。1つ以上の接続部4は導電性微粒子10を含み、複数の光電変換素子3に含まれる2つ以上の光電変換素子3を直列接続する。光電変換モジュール2は、図1に示すように、光電変換素子モジュール1と、透光性基板11と、1つ以上の取り出し電極12と、1つ以上の取り出し接続部13と、を有することが好ましい。
【0023】
1つ以上の接続部4によって直列接続される2つ以上の光電変換素子3において、各々の相互接続される2つの光電変換素子3の間で、導電膜5、第一電荷輸送層6、発電層7及び多孔質膜8はそれぞれ、互いに分離して設けられる。
【0024】
また、上記の各々の相互接続される2つの光電変換素子3において、(i)一方の光電変換素子3(以下、第1光電変換素子3aともいう)における導電膜5が第一電荷輸送層6、発電層7及び多孔質膜8よりも他方の光電変換素子3(以下、第2光電変換素子3bともいう)の側に延びる導電膜延長部14を有し、(ii)第2光電変換素子3bにおける多孔質膜8が導電膜5、第一電荷輸送層6及び発電層7よりも第1光電変換素子3aの側に延びる多孔質膜延長部15を有し、(iii)導電膜延長部14と多孔質膜延長部15が接続部4を介して接続される。
【0025】
このような構成によれば、2つ以上の光電変換素子3の発電層7の間隔に対応する接続部4の幅(図1における左右方向の幅)を容易に狭く設定できるため、優れた光電変換効率を容易に実現できる。
【0026】
複数の光電変換素子3において、多孔質膜8は多孔質自立シートであることが好ましい。このような構成によれば、接続部4の形状安定性を高めることで、幅の狭い接続部4をより容易に実現できる。
【0027】
複数の光電変換素子3において、多孔質自立シートの膜厚は20μm以上であることが好ましい。このような構成によれば、接続部4の形状安定性を高めることで、幅の狭い接続部4をより容易に実現できる。
【0028】
図2に示すように、第1光電変換素子3aの導電膜延長部14と第2光電変換素子3bの導電膜5、第一電荷輸送層6及び発電層7との間隔Wが、導電性微粒子10の平均粒径Dよりも大きいことが好ましい。このような構成によれば、第1光電変換素子3aの導電膜延長部14と第2光電変換素子3bの導電膜5、第一電荷輸送層6及び発電層7との間で導電性微粒子10を介した短絡の発生を抑制できるため、優れた光電変換効率をより容易に実現できる。
【0029】
図3に示すように、第2光電変換素子3bにおいて導電膜5における第1光電変換素子3aの側の端部が発電層7よりも第1光電変換素子3aの側に突出している場合には、第2光電変換素子3bにおいて多孔質膜8と導電膜5との間で導電性微粒子10を介した短絡が発生し、光電変換効率を低下させてしまう虞がある。
【0030】
したがって、このような短絡の発生を抑制するために、図2に示すように、第2光電変換素子3bにおいて発電層7が導電膜5における第1光電変換素子3aの側の端部を覆う構成とすることが好ましい。また、このような構成に代えて、図4に示すように、第2光電変換素子3bの発電層7、第一電荷輸送層6及び導電膜5における第1光電変換素子3aの側の端部が揃う構成とすることによっても同様に短絡抑制効果を得ることができる。
【0031】
各々の接続部4において、導電性微粒子10は炭素材料、金属及び金属酸化物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。このような構成によれば、幅の狭い接続部4をより容易に実現できる。
【0032】
各々の接続部4は、少なくとも導電性微粒子10と接着材16としての樹脂からなることが好ましい。このような構成によれば、幅の狭い接続部4をより容易に実現できる。各々の接続部4を構成する樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0033】
複数の光電変換素子3において、発電層7はペロブスカイト化合物を含むことが好ましい。このような構成によれば、優れた光電変換効率をより容易に実現できる。
【0034】
取り出し電極12は、特に限定されないが、複数の光電変換素子3の導電膜5と同様の構成とすることができる。取り出し接続部13は、特に限定されないが、接続部4と同様の構成とすることができる。
【0035】
光電変換素子モジュール1を製造する方法は、特に限定されないが、次に述べる第1工程と第2工程を有することが好ましい。第1工程は、図5A図5Bに示すように、複数の光電変換素子3の導電膜5、第一電荷輸送層6及び発電層7と、1つ以上の接続部4を形成するための部材(以下、接続材17ともいう)とからなる構造体18を形成する工程である。第2工程は、図5Cに示すように、構造体18に、少なくともカーボンナノ繊維体からなる多孔質膜体19を積層し、その後に、多孔質膜体19の一部を除去することで、図1に示すように、複数の光電変換素子3における多孔質膜8を形成する工程である。このような製造方法によれば、接続部4を精度良く形成できるため、幅の狭い接続部4をより容易に実現できる。
【0036】
第1工程において、構造体18は、透光性基板11上に形成することができる。透光性基板11上には、構造体18の形成の前又は後或いは構造体18の形成と同時に、取り出し電極12と、取り出し接続部13を形成するための部材(以下、取り出し接続材20ともいう)とを形成することができる。
【0037】
第1工程は、少なくとも導電膜体を形成した後に少なくとも導電膜体の一部を除去することで、複数の光電変換素子3の少なくとも導電膜5を形成する除去工程を有することが好ましい。このような構成によれば、幅の狭い接続部4をより容易に実現できる。
【0038】
除去工程及び第2工程で材料を除去する方法は特に限定されず、例えば、レーザーや刃物などによるスクライブや、エッチングなどを利用することができる。
【0039】
除去工程においては、導電膜体と第一電荷輸送層体と発電層体を形成した後に、導電膜体、第一電荷輸送層体及び発電層体の一部を除去することで、複数の光電変換素子3の導電膜5、第一電荷輸送層6及び発電層7を形成することが好ましい。このような構成によれば、図4に示すように、第2光電変換素子3bの発電層7、第一電荷輸送層6及び導電膜5における第1光電変換素子3aの側の端部を容易に揃えて形成することができるため、第2光電変換素子3bにおいて多孔質膜8と導電膜5との間で導電性微粒子10を介した短絡の発生を抑制でき、しかも幅の狭い接続部4をより容易に実現できる。
【0040】
除去工程において、導電膜体を形成した後に導電膜体の一部を除去することで、複数の光電変換素子3の導電膜5を形成し、除去工程の後に、複数の光電変換素子3の第一電荷輸送層6及び発電層7を形成してもよい。その際は、第2光電変換素子3bにおいて発電層7が導電膜5における第1光電変換素子3aの側の端部を覆うように、第2光電変換素子3bの発電層7を形成することが好ましい。
【0041】
なお、導電膜5、第一電荷輸送層6、発電層7及び第二電荷輸送層9はそれぞれ、同一又は異なる材料からなる複数層で構成してもよい。各々の複数の光電変換素子3は、本発明の効果を損なわない範囲で、導電膜5、第一電荷輸送層6、発電層7及び第二電荷輸送層9以外の更なる層を有していてもよい。また、光電変換素子モジュール1は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した部材以外の更なる部材を有していてもよい。第1工程と第2工程は、上述した工程以外の工程を有していてもよい。
【0042】
次に、光電変換素子3を構成する各構成部材について、より具体的に説明する。
【0043】
<透光性基板11>
透光性基板11は、光電変換モジュール2の基体を構成する。透光性基板11としては、特に限定されず、例えば、ガラス又は合成樹脂からなる基板、合成樹脂からなるフィルムなどが挙げられる。
【0044】
透光性基板11を構成するガラスとしては、例えば、ソーダガラスなどの無機質製のガラスが挙げられる。
【0045】
また、透光性基板11を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂などが挙げられる。中でも、薄く、軽く、かつフレキシブルな光電変換素子3が得られる観点からは、合成樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
【0046】
透光性基板11の厚さは特に限定されず、基板としての形状を維持できる厚さであればよい。透光性基板11の厚さは、例えば、0.1mm以上10mm以下とすることができる。
【0047】
<導電膜5>
導電膜5は、透光性基板11の表面上に設けられる導電性の膜であり、透光性を有する。導電膜5は例えば金属酸化物で構成することができる。
【0048】
導電膜5を構成する金属酸化物としては、例えば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウム(In23)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム/酸化亜鉛(IZO)、酸化ガリウム/酸化亜鉛(GZO)などが挙げられる。
【0049】
導電膜5の膜厚は、透光性基板11に対し所望の導電性を付与し得る膜厚であれば特に限定されず、例えば1nm以上1μm以下とすることができる。
【0050】
<第一電荷輸送層6>
第一電荷輸送層6は、電荷輸送層として機能する層であり、好ましくは、n型半導体から構成される。第一電荷輸送層6は、下地層及び多孔質半導体層の2つの層から構成することが好ましいが、第一電荷輸送層6は、n型半導体から構成される1つの層であってもよい。
【0051】
<<下地層>>
下地層は、導電膜5と多孔質半導体層との間に任意に設けられる層である。下地層を設けることで、導電膜5が多孔質半導体層に直接接触することが防止される。これにより、起電力の損失が防止されるため、光電変換素子3の光電変換効率を向上させることができる。
【0052】
下地層は、例えば、n型半導体から構成されるものであれば、多孔質膜8であってもよく、非多孔質の緻密膜であってもよいが、透光性基板11や導電膜5が多孔質半導体層と接触するのを十分に防ぐ観点からは、下地層は、非多孔質の緻密膜であることが好ましい。なお、下地層の厚さは特に限定されず、例えば、1nm以上500nm以下とすることができる。また、下地層は、任意に、n型半導体以外の絶縁体材料を、下地層のn型半導体としての性質を損なわない割合で含んでいてもよい。
【0053】
<<多孔質半導体層>>
多孔質半導体層は、多孔質状の層である。第一電荷輸送層6が多孔質半導体層を含むことで、光電変換素子3の光電変換効率を向上させることができる。
【0054】
多孔質半導体層の厚さは、特に限定されないが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、通常500nm以下、好ましくは100nm以下である。多孔質半導体層は、1つの層から形成されていてもよく、複数の層から形成されていてもよい。
【0055】
<発電層7>
発電層7は、光を吸収することにより起電力を発生させる材料から構成される層であり、好ましくは、ペロブスカイト化合物を含む層であり、より好ましくは、ペロブスカイト化合物からなる層(ペロブスカイト層)である。
【0056】
ここで、発電層7を構成するペロブスカイト化合物としては、特に限定されず、公知のペロブスカイト化合物を用いることができる。具体的には、ペロブスカイト化合物として、例えば、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、(CH3(CH2CHCH3NH32PbI4[n=5~8]、(C6524NH32PbBr4などを用いることができる。
【0057】
発電層7の厚さは、特に限定されないが、好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下である。発電層7の厚さを100nm以上とすることで、発電層7の起電力を高めることができる。
【0058】
また発電層7は、第一電荷輸送層6上に多孔質絶縁層を形成し、その内部にペロブスカイト化合物を形成させたものを用いることもできる。この時の多孔質絶縁層の膜厚は特に限定されないが、500nm以上、5μm以下であることが好ましい。また多孔質絶縁層の材料としては、酸化ジルコニアなどを用いることができる。
【0059】
<第二電荷輸送層9>
第二電荷輸送層9は、少なくともカーボンナノ繊維体からなる多孔質膜8を有する層である。ここで、第二電荷輸送層9に含まれるカーボンナノ繊維体は、特に限定されないが、カーボンナノチューブ(以下、CNTともいう)を含むことが好ましく、第二電荷輸送層9に含まれるCNTは、単層CNTを含むことが好ましい。このような構成によれば、光電変換モジュール2の光電変換効率を高めることができる。
【0060】
多孔質膜8は多孔質自立シートであることが好ましく、より好ましくは、第二電荷輸送層9は多孔質自立シートからなる層である。このような構成によれば、第二電荷輸送層9の形状安定性を向上し、光電変換素子3の大面積化を容易に実現することができる。
【0061】
多孔質自立シートは、少なくとも単層CNTを含むことを必要とし、好ましくは、単層CNTからなるシートであり、より好ましくはバッキーペーパーからなるシートである。少なくとも単層CNTを含む多孔質自立シートを用いることで、第二電荷輸送層9に対し、優れたホール輸送層としての機能と、集電電極としての機能とを付与することができる。
【0062】
<<多孔質自立シート>>
そして、多孔質自立シートに含まれる単層CNTは、以下の性状を有する単層CNTを含むことが好ましい。
【0063】
-(3σ/Av)-
多孔質自立シートに含まれる単層CNTは、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が、0.20超であることが好ましく、0.25超であることがより好ましく、0.50超であることが更に好ましく、0.60未満であることが好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満であれば、多孔質自立シートに含まれる単層CNTの量が少量であっても、第二電荷輸送層9に対し、十分なホール輸送層としての機能と、集電電極としての機能とを付与することができる。
【0064】
なお、「単層カーボンナノチューブの平均直径(Av)」及び「単層カーボンナノチューブの直径の標準偏差(σ:標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した単層カーボンナノチューブ100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、単層カーボンナノチューブの平均直径(Av)及び標準偏差(σ)は、単層カーボンナノチューブの製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた単層カーボンナノチューブを複数種類組み合わせることより調整してもよい。
【0065】
-単層CNTの平均直径(Av)-
単層CNTの平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。単層CNTの平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、単層CNTの凝集を抑制して、第二電荷輸送層9中での単層CNTの分散性を高めることができる。また、単層CNTの平均直径(Av)が15nm以下であれば、第二電荷輸送層9は、集電電極としての機能を十分に発揮することができる。
【0066】
-t-プロット-
単層CNTは、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。かかる単層CNTとしては、単層CNTの開口処理が施されていないものがより好ましい。吸着等曲線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示す単層CNTを使用すれば、強度に優れる第二電荷輸送層9が得られる。
【0067】
なお、単層CNTのt-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが更に好ましい。
【0068】
単層CNTの吸着等温線の測定、t-プロットの作成、及び、t-プロットの解析は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
【0069】
上述した性状を有する単層CNTは、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物及びキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)よりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。
【0070】
中でも、膜厚の大きい多孔質自立シートが容易に得られる観点からは、単層CNTとして、スーパーグロース法を用いて得られた単層CNTを用いることが好ましい。
【0071】
さらに、多孔質自立シートは、当該多孔質自立シートの内部に、上述した発電層7を構成する材料(例えばペロブスカイト化合物)、又は、発電層7を構成する材料の一部(例えばペロブスカイト化合物を構成する材料)を含むことが好ましい。より詳細には、多孔質自立シートは、当該多孔質自立シートの複数の細孔内部に、発電層7を構成する材料(例えばペロブスカイト化合物)、又は、発電層7を構成する材料の一部(例えばペロブスカイト化合物を構成する材料)を含むことが好ましい。
【0072】
多孔質自立シート中に含まれる単層CNTの割合は、特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。
【0073】
また、多孔質自立シート中に任意で含まれ得る単層CNT以外の材料としては、例えば、p型半導体としての有機材料や無機材料、単層CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体が挙げられる。
【0074】
ここで、多孔質自立シート中に含まれ得る有機材料としては、例えば、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(spiro-MeOTAD)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリトリアリルアミン(PTAA)などが挙げられる。
【0075】
また、多孔質自立シートに含まれ得る無機材料としては、例えば、CuI、CuSCN、CuO、Cu2Oなどが挙げられる。
【0076】
多孔質自立シートの膜厚は通常、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、200μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。多孔質自立シートの膜厚が20μm以上200μm以下であれば、第二電荷輸送層9は、より優れた集電電極としての機能を発揮することができる。
【0077】
<<多孔質自立シートの製造方法>>
多孔質自立シートの製造方法は、特に限定されず、例えば、少なくとも単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とを含む繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去して、多孔質自立シートを成膜する工程(成膜工程)を含む方法を採用することができる。さらに、多孔質自立シートの製造方法は、任意に、成膜工程の前に、少なくとも単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とを含む粗分散液を分散処理して前記繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製する工程(分散液調製工程)を含んでいてもよい。
【0078】
-分散液調製工程-
分散液調製工程では、少なくとも単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体と、分散剤と、溶媒とを含む粗分散液を、特に限定されないが、詳しくは後述するキャビテーション効果又は解砕効果が得られる分散処理に供し、単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を分散させて繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製することが好ましい。このように、キャビテーション効果又は解砕効果が得られる分散処理を行うことで、単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散した繊維状炭素ナノ構造体分散液が得られる。そして、単層CNTが良好に分散した繊維状炭素ナノ構造体を用いて多孔質自立シートを作製すれば、単層CNTを均一に分散させて、導電性、熱伝導性及び機械的特性などの特性に優れる多孔質自立シートを得ることができる。なお、多孔質自立シートの製造に用いる繊維状炭素ナノ構造体分散液は、上記以外の公知の分散処理を用いて単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に分散させることにより調製してもよい。
【0079】
繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製に用いる繊維状炭素ナノ構造体は、少なくとも単層CNTを含むものであればよく、例えば、単層CNTと、単層CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体(例えば、多層CNTなど)との混合物であってもよい。
【0080】
ここで、繊維状炭素ナノ構造体分散液は、単層CNTと単層CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との含有割合を、例えば、質量比(単層CNT/単層CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体)で50/50~75/25とすることができる。
【0081】
=分散剤=
繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製に用いる分散剤は、少なくとも単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を分散可能であり、繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製に用いる溶媒に溶解可能であれば、特に限定されない。このような分散剤として、例えば、界面活性剤、合成高分子又は天然高分子を用いることができる。
【0082】
界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0083】
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-ビニルアルコール-酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0084】
さらに、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩又は誘導体が挙げられる。誘導体とはエステルやエーテルなどの従来公知の化合物を意味する。
【0085】
これらの分散剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。中でも、単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の分散性に優れることから、分散剤としては、界面活性剤が好ましく、デオキシコール酸ナトリウムなどがより好ましい。
【0086】
=溶媒=
繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0087】
そして、分散液調製工程では、例えば以下に示すキャビテーション効果又は解砕効果が得られる分散処理を行うことが好ましい。
【0088】
~キャビテーション効果が得られる分散処理~
キャビテーション効果が得られる分散処理は、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂することによる衝撃波を利用した分散方法である。この分散方法を用いることにより、単層CNTを良好に分散させることができる。
【0089】
ここで、キャビテーション効果が得られる分散処理の具体例としては、超音波による分散処理、ジェットミルによる分散処理及び高せん断撹拌による分散処理が挙げられる。これらの分散処理は一つのみを行ってもよく、複数の分散処理を組み合わせて行ってもよい。より具体的には、例えば超音波ホモジナイザー、ジェットミル及び高せん断撹拌装置が好適に用いられる。これらの装置は従来公知のものを使用すればよい。
【0090】
単層CNTの分散に超音波ホモジナイザーを用いる場合には、粗分散液に対し、超音波ホモジナイザーにより超音波を照射すればよい。照射する時間は、単層CNTの量などにより適宜設定すればよく、例えば、3分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、また、5時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。また、例えば、出力は20W以上500W以下が好ましく、100W以上500W以下がより好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
【0091】
また、ジェットミルを用いる場合、処理回数は、単層CNTの量などにより適宜設定すればよく、例えば、2回以上が好ましく、5回以上がより好ましく、100回以下が好ましく、50回以下がより好ましい。また、例えば、圧力は20MPa以上250MPa以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
【0092】
さらに、高せん断撹拌を用いる場合には、粗分散液に対し、高せん断撹拌装置により撹拌およびせん断を加えればよい。旋回速度は速ければ速いほどよい。例えば、運転時間(機械が回転動作をしている時間)は3分以上4時間以下が好ましく、周速は5m/秒以上50m/秒以下が好ましく、温度は15℃以上50℃以下が好ましい。
【0093】
なお、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理は、50℃以下の温度で行なうことがより好ましい。溶媒の揮発による濃度変化が抑制されるからである。
【0094】
~解砕効果が得られる分散処理~
解砕効果が得られる分散処理は、単層CNTを溶媒中に均一に分散できることはもちろん、上記したキャビテーション効果が得られる分散処理に比べ、気泡が消滅する際の衝撃波による単層CNTの損傷を抑制することができる点で一層有利である。
【0095】
この解砕効果が得られる分散処理では、粗分散液にせん断力を与えて単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の凝集体を解砕・分散させ、さらに粗分散液に背圧を負荷し、また必要に応じ、粗分散液を冷却することで、気泡の発生を抑制しつつ、単層CNTを溶媒中に均一に分散させることができる。
【0096】
なお、粗分散液に背圧を負荷する場合、粗分散液に負荷した背圧は、大気圧まで一気に降圧させてもよいが、多段階で降圧することが好ましい。
【0097】
-成膜工程-
成膜工程では、上述した繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去して、多孔質自立シートを成膜する。具体的には、成膜工程では、例えば下記(A)および(B)のいずれかの方法を用いて、繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去し、多孔質自立シートを成膜する。
(A)繊維状炭素ナノ構造体分散液を成膜基材上に塗布した後、塗布した繊維状炭素ナノ構造体分散液を乾燥させる方法。
(B)多孔質の成膜基材を用いて繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過し、得られたろ過物を乾燥させる方法。
【0098】
[成膜基材]
ここで、成膜基材としては、特に限定されることなく、既知の基材を用いることができる。
【0099】
具体的には、上記方法(A)において繊維状炭素ナノ構造体分散液を塗布する成膜基材としては、樹脂基材、ガラス基材などを挙げることができる。ここで、樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどよりなる基材を挙げることができる。また、ガラス基材としては、通常のソーダガラスよりなる基材を挙げることができる。
【0100】
また、上記方法(B)において繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過する成膜基材としては、ろ紙や、セルロース、ニトロセルロース、アルミナ等よりなる多孔質シートを挙げることができる。
【0101】
[塗布]
上記方法(A)において繊維状炭素ナノ構造体分散液を成膜基材上に塗布する方法としては、公知の塗布方法を採用できる。具体的には、塗布方法としては、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法などを用いることができる。
【0102】
[ろ過]
上記方法(B)において成膜基材を用いて繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過する方法としては、公知のろ過方法を採用できる。具体的には、ろ過方法としては、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過などを用いることができる。
【0103】
[乾燥]
上記方法(A)において成膜基材上に塗布した繊維状炭素ナノ構造体分散液または上記方法(B)において得られたろ過物を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法を採用できる。乾燥方法としては、熱風乾燥法、真空乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法などが挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、通常、室温~200℃、乾燥時間は、特に限定されないが、通常、0.1~150分である。
【0104】
<多孔質自立シートの後処理>
ここで、上述のようにして成膜した多孔質自立シートは、通常、単層CNTや、単層CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体、分散剤などの繊維状炭素ナノ構造体分散液に含まれていた成分を、繊維状炭素ナノ構造体分散液と同様の比率で含有している。そこで、多孔質自立シートの製造方法では、任意に、成膜工程において成膜した多孔質自立シートを洗浄して多孔質自立シートから分散剤を除去してもよい。多孔質自立シートから分散剤を除去すれば、多孔質自立シートの導電性などの特性を更に高めることができる。
【0105】
なお、多孔質自立シートの洗浄は、分散剤を溶解可能な溶媒と接触させ、多孔質自立シート中の分散剤を溶媒中に溶出させることにより行なうことができる。そして、多孔質自立シート中の分散剤を溶解可能な溶媒としては、特に限定されることなく、繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒として使用し得る前述した溶媒、好ましくは繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒と同じものを使用することができる。また、多孔質自立シートと溶媒との接触は、多孔質自立シートの溶媒中へ浸漬、または、溶媒の多孔質自立シートへの塗布により行なうことができる。さらに、洗浄後の多孔質自立シートは、既知の方法を用いて乾燥させることができる。
【0106】
また、多孔質自立シートを製造するにあたっては、任意に、成膜工程において成膜した多孔質自立シートをプレス加工して密度を更に高めるなど、空隙の調整を必要に応じて実施してもよい。単層CNTの損傷、又は、破壊による特性低下を抑制する観点からは、プレス加工する際のプレス圧力は3MPa未満であることが好ましく、プレス加工を行なわないことがより好ましい。
【0107】
次に、光電変換素子モジュール1を製造するための第1工程と第2工程について、より具体的に説明する。
【0108】
<第1工程>
<<導電膜5の形成>>
透光性基板11上に複数の光電変換素子3の導電膜5を形成する。導電膜5の形成方法は、特に限定されず、例えば、スパッタ法、蒸着法などの公知の方法を採用することができる。導電膜体を複数の光電変換素子3の導電膜5に対応した領域のみにマスクなどを用いて形成することで、直接、複数の光電変換素子3の導電膜5を形成してもよいし、導電膜体を複数の光電変換素子3の導電膜5に対応した領域を含む領域全体に形成した後、その一部を除去することで複数の光電変換素子3の導電膜5を形成してもよい。導電膜体上に第一電荷輸送層体と発電層体を形成した後に、不要部分を一括して除去することで、複数の光電変換素子3の導電膜5、第一電荷輸送層6及び発電層7を形成してもよい。
【0109】
<<第一電荷輸送層6の形成>>
さらに、導電膜5上に第一電荷輸送層6を形成する。第一電荷輸送層6は、例えば、導電膜5上に下地層を形成し、次いで多孔質半導体層を形成することで得られる。
【0110】
〔下地層の形成〕
下地層の形成方法は特に限定されず、例えば、n型半導体を形成する材料を含む溶液を導電膜5に吹き付けることによって形成することができる。
【0111】
ここで、微粒子の吹き付け方法としては、例えば、スプレー熱分解法、エアロゾルデポジション法、静電スプレー法、コールドスプレー法などが挙げられる。
【0112】
〔多孔質半導体層の形成〕
多孔質半導体層の形成方法は、特に限定されず、例えば、n型半導体の前駆体を含む溶液を下地層の上にスピンコート法などにより塗布し、乾燥することで形成することができる。
【0113】
ここで、n型半導体の前駆体としては、例えば、四塩化チタン(TiCl4)、ペルオキソチタン酸(PTA)、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド(TTIP)などのチタンアルコキシド;亜鉛アルコキシド、アルコキシシラン、ジルコニウムアルコキシド、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトナート)などの金属アルコキシド;などが挙げられる。
【0114】
また、n型半導体の前駆体を含む溶液に用いられる溶媒としては、特に限定されず、例えば、エタノールなどのアルコール溶液を用いることができる。
【0115】
さらに、下地層上に塗布した溶液を乾燥する際の温度及び時間は、特に限定されず、用いるn型前駆体の種類や溶媒の種類などによって適宜調整すればよい。
【0116】
<<発電層7の形成>>
それから、第一電荷輸送層6上に発電層7を形成する。発電層7の形成方法は、真空蒸着法や塗布法などがあるが、特に限定されず、例えば、ペロブスカイト化合物の前駆体を含む前駆体含有溶液を、第一電荷輸送層6の上に塗布し、焼成することで形成することができる。ここで、ペロブスカイト化合物の前駆体としては、例えば、ヨウ化鉛(PbI2)、ヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I)などが挙げられる。また、前駆体含有溶液中に含まれる溶媒としては、特に限定されず、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを用いることができる。これらの溶液を塗布した後、貧溶媒を用いてペロブスカイト化合物の析出を促進させることも可能である。本明細書において貧溶媒とは、作製工程において、ペロブスカイト化合物が実質的に変化しない溶媒をいう。作製工程において、ペロブスカイト化合物が目視観察で膜の濁りなど外観的な変質が見られなければ実質的に変化しないということができる。
【0117】
ここで、前駆体含有溶液中のペロブスカイト化合物の前駆体の濃度は、ペロブスカイト化合物を構成する材料の溶解度などにより適宜適当な濃度とすればよく、例えば、0.5M~1.5M程度とすることができる。
【0118】
また、前駆体含有溶液を第一電荷輸送層6上に塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレー法、バーコート法などの公知の塗布方法を採用することができる。
【0119】
<<接続材17の配置>>
接続部4に対応する位置に未硬化の状態の接続材17を配置する。その際、取り出し接続部13に対応する位置に未硬化の状態の取り出し接続材20を配置することができる。
【0120】
<第2工程>
第2工程では、予め準備しておいた多孔質膜体19を構造体18に積層しつつ、予め形成しておいた接続材17を介して多孔質膜体19と導電膜延長部14とを電気的に接続し、この状態で接続材17を硬化させる。その際、予め形成しておいた取り出し接続材20を介して多孔質膜体19と取り出し電極12とを電気的に接続し、この状態で取り出し接続材20を硬化させることができる。そして、多孔質膜体19の不要部分を除去することで、複数の光電変換素子3の多孔質膜8を形成する。
【実施例0121】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0122】
サンプル1~4の光電変換モジュールを10個ずつ製作し、短絡数と光電変換効率の評価を行った。
【0123】
<光電変換効率>
光源として、疑似太陽照射装置(WXS-90S-L2、AM1.5GMM、ワコム電創社製)を用いた。光源は、1sun[AM1.5G、100mW/cm2(JIS C8912のクラスA)]に調整した。作製した光電変換モジュールをソースメータ(6244型直流電圧・電流源、ADC社製)に接続し、以下の電流電圧特性の測定を行った。
【0124】
1sunの光照射下、バイアス電圧を直列数に応じて測定範囲を選択し、電圧で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化させた後、0.5秒後から0.6秒後までの値を積算することで行った。
【0125】
上記の電流電圧特性の測定結果より、短絡したものを省いた光電変換効率(%)の平均値を算出した。
【0126】
<短絡数>
短絡数は、製作した10個の光電変換モジュールのうち、第2光電変換素子での短絡があったものの数である。光電変換効率(%)の評価において、電圧が著しく低いもの(他の光電変換モジュールの開放電圧の半分以下)を短絡があったものとした。
【0127】
(サンプル1)
<導電膜が形成された透光性基板の作製>
ガラス基板の表面に、導電膜としてのフッ素ドープスズ(FTO)膜(膜厚:600nm)が製膜された導電性ガラス基板(Sigma-Aldrich社製、厚さ:2.2mm)を用い、エッチング処理によりFTO膜の一部を除去した。これにより、導電膜(FTO膜)が2つに分割された透光性基板(以下、「透明導電性基板」という。)を得た。
【0128】
<第一電荷輸送層の形成>
透明導電性基板の導電膜(FTO膜)の表面に、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトナート)をイソプロパノールに溶解してなる溶液(Sigma-Aldrich社製)をスプレー熱分解法により吹き付けた。このとき、短冊状のガラス板を設置することで、所定の場所に下地層を形成した。これにより、二酸化チタンからなる下地層(TiO緻密層、厚さ30nm)を形成した。次に、酸化チタンペースト(Sigma-Aldrich社製)をエタノールで希釈した溶液を調製し、得られた溶液を下地層の表面にスピンコート法により塗布し、120℃で10分間ホットプレート上で乾燥して、平面視で下地層からはみ出た塗布膜をふき取った後、温度450℃で30分間熱処理することで、二酸化チタン(TiO)からなる多孔質半導体層(TiO多孔質層、厚さ120nm、TiO微粒子の平均粒子径:20nm)を形成し、第一電荷輸送層を得た。
【0129】
<発電層の形成>
ペロブスカイト化合物の前駆体を含む溶液(1)として、濃度1.0Mのヨウ化鉛(PbI)および濃度1.0Mのヨウ化メチルアンモニウム(CHNHI)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調製した。得られた溶液(1)を、クロロベンゼンを滴下しながらスピンコート法により第一電荷輸送層の表面に塗布し、次いで、温度100℃で10分間焼成することで、発電層としてのペロブスカイト層(厚さ450nm)を形成した。その後、発電層となる部分からはみ出したペロブスカイト層を除去することで、発電層形成基板を得た。この時、発電層は、第2光電変換素子において発電層が導電膜における第1光電変換素子の側の端部を覆うように形成した。
【0130】
<炭素材料を含む多孔質膜(CNT膜)の作製>
以下の手順に従い、炭素材料として単層CNTを含む多孔質膜(CNT膜)を作製した。
【0131】
分散剤を含む溶媒としてのデオキシコール酸ナトリウム(DOC)2質量%水溶液500mLに、単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体として単層CNT(SGCNT)(日本ゼオン社製、製品名「ZEONANO SG101」、平均直径(Av):3.5nm、G/D比:2.1、未開口処理でt-プロットは上に凸)を1.0g加え、分散剤としてDOCを含有する粗分散液を得た。この粗分散液を、分散時に背圧を負荷する多段圧力制御装置(多段降圧器)を有する高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、製品名「BERYU SYSTEM PRO」)に充填し、100MPaの圧力で粗分散液の分散処理を行った。具体的には、背圧を負荷しつつ、粗分散液にせん断力を与えて単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を分散させ、単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た。なお、分散処理は、高圧ホモジナイザーから流出した分散液を再び高圧ホモジナイザーに返送しつつ、10分間実施した。
【0132】
200mLのビーカーに、作製した単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体分散液を50g加え、蒸留水を50g加えて2倍に希釈したものを作製し、メンブレンフィルターを備えた減圧ろ過装置を用いて0.09MPaの条件下においてろ過を実施した。ろ過終了後、イソプロピルアルコール及び水のそれぞれを減圧ろ過装置に通過させることで、メンブレンフィルター上に形成されたCNT膜を洗浄し、その後15分間空気を通過させた。次いで、作製したCNT膜/メンブレンフィルターをエタノールに浸漬し、CNT膜をメンブレンフィルターから剥離することにより、炭素材料を含む多孔質膜としてのCNT膜(A)を得た。
【0133】
得られたCNT膜(A)は、メンブレンフィルターと同等の大きさであり、優れた成膜性を有し、且つ、フィルターから剥離しても膜の状態を維持しており、優れた自立性を有していた。なお、接触式段差計による膜厚から求める体積と重量により、得られたCNT膜(A)の膜密度を測定した結果、密度は0.85g/cmであった。また、上述の方法に従って測定したところ、炭素材料を含む多孔質膜としてのCNT膜(A)は、厚み方向に加圧されていない状態での膜厚が20μmであった。
【0134】
<接続材の形成>
接着材料であるアクリル系樹脂としての「TB3035B」(スリーボンド社製)に対して、導電性微粒子として積水化学工業製「ミクロパールAU」(表面に金メッキが施されてなる導電性微粒子、代表形状:真球状、体積平均粒子径:10μm)を、13.5質量%になるように添加して、自転公転ミキサーにより均一に混合して形成した接続材を所定部分に配置した。
【0135】
<第二電荷輸送層の形成>
所定の大きさにカットしたCNT膜(A)をトルエンに10秒間浸漬後、トルエンからCNT膜(A)を引き上げて、クロロベンゼンを含浸させたCNT膜(B)を得た。そして、温度100℃のホットプレート上で加熱した上述の発電層形成基板上の発電層に、CNT膜(B)を積層し、得られた積層体をCNT膜(B)側から厚み方向に0.05Paの圧力でプレス(加熱プレス)し、所定部分を除去することで、第二電荷輸送層を形成した。この時に接続部の幅は、0.3mmであった。
【0136】
<外装材の形成>
その後、光電変換素子を外部から封止するための外装材としてのガラス板を透光性基板に接着することで光電変換モジュールを形成した。その際、導電膜において取り出し電極を構成す部分が外部にはみ出すように接着材(スリーボンド社製 TB3035B)を塗布して外装材を重ね合わせてUV光により硬化させることで封止した。そして、分割された導電膜で構成された2つの取り出し電極より、光電変換素子からの集電を行い、光電変換効率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0137】
(サンプル2)
サンプル1の光電変換モジュールの構造体として、導電膜体と第一電荷輸送層体と発電層体を形成した後に、導電膜体、第一電荷輸送層体及び発電層体の一部を除去することで、複数の光電変換素子の導電膜、第一電荷輸送層及び発電層を形成した以外は、サンプル1と同様にして、光電変換モジュールを製造した。得られた光電変換モジュールにおける接続部の幅は、0.25mmであった。得られた光電変換モジュールを用いて、サンプル1と同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0138】
(サンプル3)
サンプル1の光電変換モジュールの多孔質膜として、複数の光電変換素子の多孔質膜を個別に製作して構造体に積層し、個別に接続材に接続した以外は、サンプル1と同様にして、光電変換モジュールを製造した。得られた光電変換モジュールにおける接続部の幅は、1.0mmであった。得られた光電変換モジュールを用いて、サンプル1と同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0139】
(サンプル4)
サンプル1の光電変換モジュールの構造体として、第2光電変換素子において導電膜における第1光電変換素子の側の端部が発電層よりも第1光電変換素子の側に突出するように発電層を形成した以外は、サンプル1と同様にして、光電変換モジュールを製造した。得られた光電変換モジュールにおける接続部の幅は、0.3mmであった。得られた光電変換モジュールを用いて、サンプル1と同様に測定を行った。結果を表1に示す。
【0140】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明によれば、優れた光電変換効率を実現し易い光電変換素子モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0142】
1 光電変換素子モジュール
2 光電変換モジュール
3 光電変換素子
3a 第1光電変換素子
3b 第2光電変換素子
4 接続部
5 導電膜
6 第一電荷輸送層
7 発電層
8 多孔質膜
9 第二電荷輸送層
10 導電性微粒子
11 透光性基板
12 取り出し電極
13 取り出し接続部
14 導電膜延長部
15 多孔質膜延長部
16 接着材
17 接続材
18 構造体
19 多孔質膜体
20 取り出し接続材
W 第1光電変換素子の導電膜延長部と第2光電変換素子の導電膜、第一電荷輸送層及び発電層との間隔
D 導電性微粒子の平均粒径
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C