(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023121660
(43)【公開日】2023-08-31
(54)【発明の名称】粒状パスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20230824BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20230824BHJP
【FI】
A23L7/109 E
A23L7/10 B
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025122
(22)【出願日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 健太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 知之
(72)【発明者】
【氏名】野村 慧
【テーマコード(参考)】
4B023
4B046
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LC09
4B023LE30
4B023LG01
4B023LG06
4B023LK10
4B023LK20
4B023LP10
4B023LP20
4B046LA06
4B046LC06
4B046LG16
4B046LG21
4B046LG29
4B046LG30
4B046LG60
4B046LP01
4B046LP22
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】米食や麦食のような主食とともに喫食しやすく、栄養バランスを簡便に調節することができる粒状パスタを提供すること。
【解決手段】フスマ70~95質量%と、小麦蛋白質及びα化澱粉から選択される1種以上5~30質量%とを含有する原料粉から調製された生地を、押出し成形して粒状にすることを含む、粒状パスタの製造方法。押出し成形は、品温65℃以下で行われることが好ましい。得られた粒状パスタは、米とともに炊飯することに特に適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フスマ70~95質量%と、小麦蛋白質及びα化澱粉から選択される1種以上5~30質量%とを含有する原料粉から調製された生地を、押出し成形して粒状にすることを含む、粒状パスタの製造方法。
【請求項2】
前記押出し成形が品温65℃以下で行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記粒状が米粒状である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法によって製造された粒状パスタを、米とともに炊飯することを特徴とする調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フスマを含有する粒状パスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパゲティやマカロニに代表されるパスタは、その他の麺類に比べ、しまった構造を有し、滑らかな舌触りと硬めの食感を味わうことができる非常に人気がある食品である。パスタは、典型的には、小麦粉を主体とする原料粉を用いて調製された生地を、常圧で又は減圧した状態で所定形状に押出し成形して製造される。この押出し成形されたパスタは生パスタと呼ばれ、該生パスタを乾燥させたものは乾燥パスタと呼ばれる。乾燥パスタは、生パスタに比べて保存性に優れており、一般に流通しているパスタの多くは乾燥パスタである。
【0003】
パスタは押出し成形されて製造されるため、押出しの出口の形状や、押し出された後に切断される長さを変えることで、さまざまな種類のパスタを製造することができる。麺線の丸麺形状や平麺形状、マカロニのストロー形状が有名であるが、そのほかにも貝殻形状、リボン形状、車輪形状、粒状形状のような種々のものが知られている。これらの中でも粒状形状のものは、スープの具材としたり、リゾットやパエリアに用いられている。
【0004】
一方、米食や麦食のように穀粒を食する場合、脱穀した穀粒を茹でて又は蒸して調理し、これをそのまま、又は他の食品と混ぜ合わせる等して食されている。これらの穀物食は主食として多くの地域で食されているが、穀粒はその大半が澱粉で構成されているため、栄養学的には問題点が多い。そのため、不足する栄養素は、栄養学的なバランスを考慮して副食やおかずとして別途準備する必要がある。
【0005】
フスマは穀物の外皮部分であり、通常は穀物を喫食する際に除去される部分であるが、食物繊維を多く含んでいることから、糖質制限食やダイエット食の素材として注目されている成分である。特許文献1には、糖尿病患者食やダイエット食として、メトキシル基含有量7重量%未満の低メトキシルペクチン、麦類の外皮粉及びグルテンを必須成分として含有する糖質摂取制限食用素材が記載されている。しかしながらフスマは硬く、またフスマ臭と呼ばれる独特のえぐみや臭気を有しており、舌触りや風味に関して課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、米食や麦食のような主食とともに喫食しやすく、栄養バランスを簡便に調節することができる粒状パスタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フスマ70~95質量%と、小麦蛋白質及びα化澱粉から選択される1種以上5~30質量%とを含有する原料粉から調製された生地を、押出し成形して粒状にすることを含む、粒状パスタの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、米食や麦食のような主食とともに喫食しやすく、栄養バランスを簡便に調節することができる粒状パスタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の粒状パスタの製造方法は、原料粉から調製された生地を押出し成形して粒状にする工程を有する。本発明でいう「原料粉」は、生地の調製に用いられる生地原料のうち、常温常圧下で粉状の穀粉類を指し、穀粉類以外の原料は、液体原料はもちろん、粉状の原料であっても、「原料粉」には包含されない。
【0011】
本発明で用いる原料粉は、主成分としてフスマを含む。フスマとしては、食用にできる穀物の外皮部分を粉砕したものであればいずれも使用することができる。具体的には、小麦フスマ、大麦フスマ、米糠等を例示でき、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも小麦フスマは、栄養機能性成分であるアラビノキシランやレゾルシノール類を多く含むため好ましい。原料粉中のフスマの含有量は、該原料粉の全質量に対して、70~95質量%、好ましくは73~92質量%、さらに好ましくは76~90質量%である。70質量%未満ではパスタが硬くなり、粒子感を伴うざらつきが強くなる場合があり、95質量%を超えるとふすまのえぐみ、臭気が強くなり、乾いたざらつきが強くなる場合がある。
【0012】
本発明で用いる原料粉は、フスマに加えて、小麦蛋白質及びα化澱粉から選択される1種以上を含む。小麦蛋白質としては、小麦に含まれる蛋白質であるグルテニン、グリアジン、グルテンのいずれも用いることができるが、これらの中でもグルテンが好ましい。またα化澱粉としては、食用にできる澱粉をα化したものであればよく、具体例としては、α化小麦澱粉、α化タピオカ澱粉、α化馬鈴薯澱粉等を例示できる。本発明では、これらの小麦蛋白質及びα化澱粉の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、後述の比較例に示すように、小麦蛋白質及びα化澱粉から選択される1種以上に代えて、例えば、小麦粉、又は小麦澱粉といったα化されていない澱粉を用いると、得られるパスタは、風味が良くなるものの、保形性が低下し調理後の茹で溶けが増えてしまうため、舌触りが悪くなる。
【0013】
原料粉中の小麦蛋白質及びα化澱粉から選択される1種以上の含有量は、該原料粉の全質量に対して、5~30質量%、好ましくは8~27質量%、さらに好ましくは10~24質量%である。5質量%未満ではふすまのえぐみ、臭気が強くなり、乾いたざらつきが強くなる場合があり、30質量%を超えるとパスタが硬くなり、粒子感を伴うざらつきが強くなる場合がある。
【0014】
本発明で用いる原料粉は、上記のフスマ並びに小麦蛋白質及びα化澱粉以外に、通常のパスタ類製造の原料粉として用いることができるその他の穀粉類を含有してもよい。その他の穀粉類としては、例えば、小麦粉等の穀粉;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉等の澱粉(未加工澱粉);これら澱粉にアセチル化、ヒドロキシプロピル化、エーテル化、架橋、酸化等、α化以外の化工処理の1つ以上を施した加工澱粉等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。原料粉中のその他の穀粉類の含有量は、該原料粉の全質量に対して、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がより一層好ましい。その他の穀粉類は用いないことが最も好ましい。
【0015】
本発明において、生地の調製は常法に従えばよく、典型的には、生地は、上記の原料粉に練水を添加して混捏することによって調製される。練水としては、麺の製造に通常用い得るものを特に制限なく用いることができ、例えば、清水、酸性水、アルカリ水及びかん水等が挙げられる。練水の添加量は、パスタの製造で通常採用される量でよく、一般的に原料粉100質量部に対して20~40質量部である。
【0016】
生地を調製する際には、原料粉及び練水に加えてさらに、糖類、増粘剤、蛋白質(小麦蛋白質以外のもの)、乳化剤、油脂、調味料等のその他の成分を添加してもよい。その他の成分の添加量は、例えばパスタの製造で通常採用される量でよいが、本発明の効果を損なわないようにする観点から、原料粉100質量部に対して、全てのその他の成分の合計で10質量部以下の範囲が望ましく、その他の成分は用いないことがより好ましい。
【0017】
本発明における押出し成形では、上記の原料粉から調製された生地を、所定の圧力で細孔から押出し、押し出された部分を順次切断することで粒状パスタを得る。生地の押出し成形は、この種のパスタの製造に通常使用される成形機(パスタ製造機)を用いて常法に従って行うことができる。成形機は、典型的には、シリンダと、該シリンダ内を該シリンダの軸方向に沿って移動可能に配されたスクリューと、該シリンダの軸方向の一端に配されたダイス(押出し型)とを備える。斯かる構成の成形機において、シリンダ内でスクリューをその軸周りに回転させた状態下に、該シリンダ内に生地を供給すると、該生地は、該シリンダの内壁と該スクリューとの間で高圧の圧縮を受けつつ、該スクリューの回転に伴い該シリンダ内をダイスに向かって前進し、該ダイスの孔から連続的に押し出される。このダイスの孔から押し出されたものを出口のカッターで所定の長さごとに切断することにより、生の粒状パスタが得られる。
【0018】
本発明では、押し出されるパスタの形状を粒状とする点にも特徴がある。本発明において「粒状」とは、好ましくは、最大差し渡し長さが10mm以下で且つ最大差し渡し長さと最小差し渡し長さの比(アスペクト比、最大差し渡し長さ/最小差し渡し長さ)が4以下である形状を指す。食感や製造しやすさ等の観点から、最大差し渡し長さは好ましくは3mm以上、アスペクト比は好ましくは1.2以上である。例えば、メローネ、セメチコリアのような米粒状、ステリーネのような星形状、クオレッティのようなハート形状といった、公知の粒状パスタの形状とすることができる。これらの中でも米粒状とすると、穀粒とともに喫食する際に異物感がなく、食感を良好なものにすることができるため好ましい。米粒状とは、好ましくは、最大差し渡し長さが4~8mmで且つアスペクト比が1.8~3.5を満たす場合を指す。パスタの形状、最大差し渡し長さ及び最小差し渡し長さは、成形機におけるダイス等の押出し型を適宜選択し、カッターの切断速度を適宜調節することで調整することができる。尚、後述の乾燥を行う場合は、乾燥後の粒状パスタが、上述の最大差し渡し長さ及びアスペクト比を満たすことが望ましい。
【0019】
本発明における押出し成形では、装置内の減圧度-80kPa~-101.3kPa、圧力(押出圧)60~160kgf/cm2で生地を押出し成形することが好ましい。減圧度は、成形機内の気体の量を、ポンプ等の脱気手段を用いて調整することで調整可能である。また、減圧度及び押出圧は、成形機に取り付けられている圧力計によって計測することができる。
【0020】
また押出し工程では、品温を低温にすることが好ましく、具体的には、65℃以下、特に30~60℃とすることがさらに好ましい。品温が高くなると、成形後にパスタが過度に膨化することがあり、ざらついた食感になる場合があるためである。
【0021】
本発明の製造方法では、押出し成形により得られた生の粒状パスタを乾燥してもよい。乾燥することで、一般的な乾燥パスタと同様に、長期保存することが可能になる。パスタの乾燥方法としては、この種の乾燥パスタの製造において通常採用される乾燥方法を適宜採用できる。尚、乾燥させた粒状パスタは、乾燥前の生の粒状パスタに比べて収縮しているが、収縮の程度は極僅かであるため、乾燥前の生の粒状パスタが前述の最大差し渡し長さ及びアスペクト比を満たしていれば、乾燥させた粒状パスタも概ね前述の最大差し渡し長さ及びアスペクト比を満たすと考えてよい。
【0022】
本発明の製造方法により製造された粒状パスタは、そのまま単独で調理してもよく、そのほかの食材とともに調理してもよい。調理方法としては、例えば、米や麦等の穀粒とともに炊飯する方法、スープやソースとともに炊き上げてリゾットにする方法等を例示できる。本発明における粒状パスタは、原料粉のフスマに由来する食物繊維や栄養機能性成分を豊富に含んでおり、種々の食品に添加して食品の食物繊維含有量を増大させたり栄養バランスを向上させることができる。
【0023】
特に、本発明における粒状パスタを米とともに炊飯する、すなわち、通常の炊飯の際に米の一部を本発明における粒状パスタに置き換えると、得られる炊飯物の食物繊維含有量の増大及び栄養バランスの向上といった効果を手軽に得ることができる。その際の炊飯方法は、通常の米の炊飯方法に従えばよく、例えば一般的な電気炊飯器を用いて炊飯することができる。炊飯の際の水加減は、粒状パスタが生のままか乾燥されているかにかかわらず、本発明における粒状パスタを米とみなし、粒状パスタと米の合計の量(合数)にみあった水を加えればよい。また本発明における粒状パスタと米との混合比は、所望する効果レベル及び食味等に応じて任意の比であってよいが、舌触りと風味のバランスの観点からは、質量比(粒状パスタ:米)で1:1~1:5の範囲が好ましい。
【実施例0024】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1~7及び比較例1~6〕
小麦フスマと小麦グルテン又はα化小麦澱粉を下記表1及び表2の配合量で混合して原料粉とし、各原料粉100質量部に対して水28質量部を混合し、混捏して生地とした。次に、この生地を、米粒形状の押し出し孔のダイスを備えた成形機(パスタ製造機)を用いて、高さ6mm、幅3mmに押出し、長さ3mmごとに切断して、米粒形状の生パスタを製造した。押出しの際、パスタ製造機に冷熱ジャケットを用い、品温が55℃を維持するようにした。次に、この生の粒状パスタを常法で乾燥し、乾燥粒状パスタを製造した。
【0026】
〔試験例1〕
各実施例及び比較例の乾燥粒状パスタを生米(コシヒカリ)と50:50の質量比で混合した。これを3合計量し、電気炊飯器を用いて、通常の炊飯コースで炊飯した。この炊飯物を10名の専門パネラーに喫食してもらい、その際の舌触りと風味を、下記評価基準に従って評価してもらった。その結果を、10名の評価点の平均値として、下記表1及び表2に示す。
【0027】
(舌触りの評価基準)
5点:ツルツルした感触が強く感じられ、極めて良好。
4点:ツルツルした感触が感じられ、良好。
3点:わずかにざらついた感じがあるが、ツルツルした感触も感じられ、普通。
2点:ざらつきが感じられ、不良。
1点:ざらつきが強く感じられ、極めて不良。
(風味の評価基準)
5点:フスマのえぐみ、臭気が全く感じられず、極めて良好。
4点:フスマのえぐみ、臭気が感じられず、良好。
3点:わずかにフスマのえぐみ、臭気があるが、許容可能なレベルであり、普通。
2点:フスマのえぐみ、臭気が感じられ、不良。
1点:フスマのえぐみ、臭気が強く感じられ、極めて不良。
【0028】
【0029】
【0030】
〔実施例15~20〕
押出しの際の冷熱ジャケットの温度を、品温が表3に記載のようになるよう変更した以外は、実施例3と同様にして乾燥粒状パスタを製造した。これを試験例1と同様にして炊飯し、評価した。その結果を表3に示す。
【0031】
【0032】
〔試験例2~9及び参考例〕
実施例4で得られた乾燥粒状パスタについて、乾燥粒状パスタと生米の質量比を表4に記載のように変更した以外は、試験例1と同様に炊飯し、評価した。その結果を表4に示す。
【0033】