(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012170
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】トナー、トナーの製造方法、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20230118BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/08 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115655
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】武井 章生
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 彰法
(72)【発明者】
【氏名】竹林 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】行川 真広
(72)【発明者】
【氏名】原島 朋美
(72)【発明者】
【氏名】山田 博
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA10
2H500AA11
2H500BA16
2H500BA32
2H500CA03
2H500CA12
2H500CA19
2H500CA22
2H500CB08
2H500EA52D
2H500EA57D
2H500EA60D
2H500EA61D
2H500EA62D
(57)【要約】
【課題】低温定着性及びクリーニング性に優れたトナーを提供すること。
【解決手段】母体粒子を有するトナーであって、前記母体粒子の表面に、複数の有機微粒子が凝集した凝集体が付着し、前記凝集体の長径が前記有機微粒子の長径の3倍以上であり、前記凝集体が前記母体粒子の表面に占める割合が10%以上であり、前記凝集体の平均円形度が0.9以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体粒子を有するトナーであって、
前記母体粒子の表面に、複数の有機微粒子が凝集した凝集体が付着し、
前記凝集体の長径が前記有機微粒子の長径の3倍以上であり、
前記凝集体が前記母体粒子の表面に占める割合が10%以上であり、
前記凝集体の平均円形度が0.9以上である、
トナー。
【請求項2】
前記有機微粒子が、
コア樹脂と、
前記コア樹脂の少なくとも一部の表面を被覆するシェル樹脂と、を有する
請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記シェル樹脂が、スチレン-アクリル樹脂を含有する、
請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記凝集体が前記母体粒子の表面に占める割合が60%以上80%以下である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項5】
前記凝集体の平均円形度が0.94以上0.98以下である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項6】
前記母体粒子の表面で隣り合う前記有機微粒子の間の距離の標準偏差が500nm以下である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項7】
前記凝集体の体積平均粒径が70nm以上200nm以下である、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトナー。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナーを製造するトナーの製造方法であって、
前記母体粒子の表面に前記有機微粒子を付着させて複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、
前記複合粒子から、前記有機微粒子の少なくとも一部を除去する除去工程と、を有する、
トナーの製造方法。
【請求項9】
前記除去工程が、塩基性の水溶液を用いて洗浄する工程である、
請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナーを収容した、トナー収容ユニット。
【請求項11】
請求項10のトナー収容ユニットを有する、画像形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナーを用いた画像形成方法であって、
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を媒体に転写する転写工程と、
前記媒体に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を有する、
画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー、トナーの製造方法、トナー収容ユニット、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーには、出力画像の高品質化のための小粒径化と耐高温オフセット性、省エネルギー化のための低温定着性、及び製造後の保管時や運搬時における高温高湿に耐え得る耐熱保存性が要求されている。特に、定着時における消費電力は画像形成工程における消費電力の多くを占めるため、低温定着性の向上は非常に重要である。
【0003】
トナーの低温定着性を向上させるためには、トナーに低融点の材料を使用する必要があるが、低融点の材料を用いて製造したトナーは、耐熱保存性が低下しやすくなる。そこで、低温定着性と耐熱保存性とを両立させるため、2種の樹脂を同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子を樹脂粒子の表面に付着させた後、樹脂微粒子の一部又は全部を除去する、複合樹脂粒子の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
また、従来のトナーでは、トナー母体粒子表面に添加される小粒径の外添剤(例えば、シリカ)がトナーから離脱し、感光体上に付着した後、それらが凝集、緻密化することで強固な固着シリカとなり、いわゆるフィルミングによる異常画像が発生する課題がある。これに対して、低温定着性を維持しつつ画質欠陥の発生を防止する目的で、シリコーンオイル処理されたシリカ粒子を含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0005】
更に、従来のトナーでは、高い耐熱保存性と長期使用によるトナー凝集を抑制することを目的として、コア層がスチレンアクリル変性ポリエステル樹脂を含有し、スチレンアクリル樹脂成分で覆われたシェル用球状粒子により被覆されたトナーが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のトナーは、低温定着性と耐熱保存性を両立できる一方で、低温定着性が向上すると、トナーの付着力が増加して、クリーニング不良が生じる問題がある。低温定着性は、このようなクリーニング性に対してもトレードオフの関係にあり、低温定着性の向上が求められるトナーには、付着力に起因するクリーニング性の向上が同時に求められる。
【0007】
本発明の課題は、低温定着性及びクリーニング性に優れたトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、母体粒子を有するトナーであって、前記母体粒子の表面に、複数の有機微粒子が凝集した凝集体が付着し、前記凝集体の長径が前記有機微粒子の長径の3倍以上であり、前記凝集体が前記母体粒子の表面に占める割合が10%以上であり、前記凝集体の平均円形度が0.9以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、低温定着性及びクリーニング性に優れたトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】トナー表面の状態の一例を示す概略図である。
【
図2】プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【0012】
<トナー>
本実施形態に係るトナーは、母体粒子を有し、母体粒子の表面に、複数の有機微粒子が凝集した凝集体が付着する。
【0013】
[母体粒子]
本実施形態に係るトナーにおいて、母体粒子は、トナーの母体を構成する粒子(以下、トナー母体粒子、トナー母粒子、又はトナー母体という場合がある)を示す。母体粒子は、必要に応じて、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含有する。
【0014】
結着樹脂は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0015】
これらの結着樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トナーに可撓性を与えることができる点で、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0016】
ポリエステル樹脂は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリエステル樹脂としては、例えば、非晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
このうち、非晶性ポリエステル樹脂(以下、非晶性ポリエステル、非結晶性ポリエステル、非晶質ポリエステル、非晶質ポリエステル樹脂、未変性ポリエステル樹脂、又はポリエステル樹脂成分Aという場合がある)は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる非晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0018】
なお、本明細書において、非晶性ポリエステル樹脂は、上述のように、ポリオールとポリカルボン酸とを反応させて得られるものを示す。なお、ポリエステル樹脂を変性したもの(例えば、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる変性ポリエステル樹脂)は、上述の非晶性ポリエステル樹脂には含めず、変性ポリエステル樹脂として扱う。
【0019】
非晶質ポリエステルは、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)に可溶なポリエステル樹脂成分である。非晶質ポリエステル(ポリエステル樹脂成分A)としては、線状のポリエステル樹脂が好ましい。
【0020】
ポリオールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。
【0021】
上述のジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。
【0022】
これらのジオールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルキレングリコールを40モル%以上含有するものが好ましい。
【0023】
上述のポリカルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
【0024】
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸などの炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、テレフタル酸を50モル%以上含有するものが好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂成分A(非晶性ポリエステル樹脂)は、酸価、水酸基価を調整するため、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸及び/又は3価以上のアルコール、3価以上のエポキシ化合物などを含んでもよい。
【0026】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、又はそれらの酸無水物などが挙げられる。
【0027】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0028】
ポリエステル樹脂成分Aとしては、これらの中でも、ムラが発生しにくく、十分な光沢や画像濃度が得られる観点から、3価以上の脂肪族アルコールを含有することが好ましい。
【0029】
ポリエステル樹脂成分Aの分子量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
ポリエステル樹脂成分Aの重量平均分子量(Mw)としては、3,000~10,000が好ましく、4,000~7,000がより好ましい。
【0031】
ポリエステル樹脂成分Aの数平均分子量(以下、Mnと略記する場合がある)としては、1,000~4,000が好ましく、1,500~3,000がより好ましい。
【0032】
ポリエステル樹脂成分Aの分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0~4.0が好ましく、1.0~3.5がより好ましい。
【0033】
ここで、重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)により測定できる。
【0034】
重量平均分子量及び数平均分子量が低すぎると、トナーの耐熱保存性、現像機内での撹拌などのストレスに対する耐久性に劣る場合があり、重量平均分子量及び数平均分子量が高すぎると、トナーの溶融時の粘弾性が高くなり低温定着性に劣る場合がある。
【0035】
また、分子量600以下の成分が多すぎると、トナーの耐熱保存性、現像機内での撹拌などのストレスに対する耐久性に劣る場合があり、分子量600以下の成分が少なすぎると、低温定着性に劣る場合がある。
【0036】
THF可溶分の分子量600以下の成分は2質量%~10質量%が好ましい。この成分の含有量を調節する方法としては、ポリエステル樹脂成分Aをメタノールにより抽出し、分子量600以下の成分を除去し、精製する方法が挙げられる。
【0037】
ポリエステル樹脂成分Aの酸価は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリエステル樹脂成分Aの酸価としては、1mgKOH/g~50mgKOH/gであることが好ましく、5mgKOH/g~30mgKOH/gであることがより好ましい。
【0038】
ポリエステル樹脂成分Aの酸価が1mgKOH/g以上であると、トナーが負帯電性となりやすく、更には、紙への定着時に紙とトナーの親和性がよくなり、低温定着性を向上させることができる。一方、ポリエステル樹脂成分Aの酸価が、50mgKOH/g以下であると、帯電安定性、特に環境変動に対する帯電安定性が低下するという不具合を防止できる。
【0039】
ポリエステル樹脂成分Aの水酸基価は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリエステル樹脂成分Aの水酸基価としては、5mgKOH/g以上であることが好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂成分Aのガラス転移温度(以下、Tgと略記する場合がある)としては、40℃~65℃が好ましく、45℃~65℃がより好ましく、50℃~60℃が更に好ましい。Tgが40℃以上であると、トナーの耐熱保存性、及び現像機内での撹拌などのストレスに対する耐久性が向上し、また、耐フィルミング性が向上する。一方、Tgが65℃以下であると、トナーの定着時における加熱及び加圧による変形が良好になり、低温定着性が向上する。
【0041】
ポリエステル樹脂成分Aの含有量は、トナー100質量部に対して、80質量部~90質量部であることが好ましい。
【0042】
上述の変性ポリエステル樹脂(以下、変性ポリエステル、ポリエステル樹脂成分Bという場合がある)は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。変性ポリエステル樹脂としては、例えば、活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂(以下、プレポリマー、ポリエステルプレポリマーという場合がある。)との反応生成物などが挙げられる。
【0043】
変性ポリエステルは、テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂である。テトラヒドロフラン(THF)に不溶なポリエステル樹脂成分は、Tgや溶融粘性を低下させ、低温定着性を担保しつつ、分子骨格中に分岐構造を有し、分子鎖が三次元的な網目構造となるため、低温で変形するが流動しないというゴム的な性質を有する。
【0044】
ポリエステル樹脂成分Bは、活性水素基含有化合物と、該活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するため、これらの部位が擬似架橋点のような挙動を示し、非晶質ポリエステル樹脂Aのゴム的性質が強くなる。そのため、ポリエステル樹脂成分Bを用いることで、耐熱保存性、耐高温オフセット性に優れたトナーを作製することができる。
【0045】
活性水素基含有化合物は、該活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂と反応する化合物である。
【0046】
活性水素基は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。活性水素基としては、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
活性水素基含有化合物は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。活性水素基含有化合物としては、これと反応可能な部位を有するポリエステル樹脂がイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂である場合には、該ポリエステル樹脂と伸長反応、架橋反応などによりポリエステル樹脂を高分子量化できる点で、アミン類が好ましい。
【0048】
アミン類は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。アミン類としては、例えば、ジアミン、3価以上のアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、これらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンとの混合物が好ましい。
【0049】
ジアミンは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0050】
芳香族ジアミンは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。芳香族ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0051】
脂環式ジアミンは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。脂環式ジアミンとしては、例えば、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0052】
脂肪族ジアミンは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0053】
3価以上のアミンは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。3価以上のアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0054】
アミノアルコールは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。アミノアルコールとしては、例えば、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0055】
アミノメルカプタンは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。アミノメルカプタンとしては、例えば、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
【0056】
アミノ酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。アミノ酸としては、例えば、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0057】
アミノ基をブロックしたものは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。アミノ基をブロックしたものとしては、例えば、アミノ基を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類でブロックすることにより得られるケチミン化合物、オキサゾリゾン化合物などが挙げられる。
【0058】
活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。このようなポリエステル樹脂としては、例えば、イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂(以下、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーという場合がある)などが挙げられる。
【0059】
イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、例えば、ポリオールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。
【0060】
ポリオールは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリオールとしては、例えば、ジオール、3価以上のアルコール、ジオールと3価以上のアルコールとの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオール、ジオールと少量の3価以上のアルコールとの混合物が好ましい。
【0061】
ジオールは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ジオールとしては、例えば、鎖状アルキレングリコール、オキシアルキレン基を有するジオール、脂環式ジオール、ビスフェノール類、脂環式ジオールのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0062】
鎖状アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0063】
オキシアルキレン基を有するジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0064】
脂環式ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0065】
ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
【0066】
アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが挙げられる。
【0067】
なお、鎖状アルキレングリコールの炭素数は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、鎖状アルキレングリコールの炭素数としては、2~12が好ましい。
【0068】
鎖状アルキレングリコールの炭素数としては、これらの中でも、炭素数が2~12である鎖状アルキレングリコール、及びビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物の少なくともいずれかが好ましい。また、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2~12の鎖状アルキレングリコールとの混合物がより好ましい。
【0069】
3価以上のアルコールは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。3価以上のアルコールとしては、例えば、3価以上の脂肪族アルコール、3価以上のポリフェノール類、3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0070】
3価以上の脂肪族アルコールは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。3価以上の脂肪族アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0071】
3価以上のポリフェノール類は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。3価以上のポリフェノール類としては、例えば、トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどが挙げられる。
【0072】
3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物としては、例えば、3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加したものなどが挙げられる。
【0073】
ジオールと3価以上のアルコールを混合して用いる場合、ジオールに対する3価以上のアルコールの質量比(3価以上のアルコール/ジオール)は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、この場合のジオールに対する3価以上のアルコールの質量比としては、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましい。
【0074】
ポリカルボン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリカルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、ジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸、ジカルボン酸と少量の3価以上のポリカルボン酸との混合物が好ましい。
【0075】
ジカルボン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ジカルボン酸としては、例えば、2価のアルカン酸、2価のアルケン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0076】
2価のアルカン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。2価のアルカン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0077】
2価のアルケン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数4~20の2価のアルケン酸が好ましい。炭素数4~20の2価のアルケン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。炭素数4~20の2価のアルケン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0078】
芳香族ジカルボン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0079】
3価以上のカルボン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。3価以上のカルボン酸としては、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられる。
【0080】
3価以上の芳香族カルボン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。炭素数9~20の3価以上の芳香族カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。
【0081】
ポリカルボン酸として、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、及びジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物のいずれかの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。
【0082】
低級アルキルエステルは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。低級アルキルエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなどが挙げられる。
【0083】
ジカルボン酸と3価以上のカルボン酸とを混合して用いる場合、ジカルボン酸に対する3価以上のカルボン酸の質量比(3価以上のカルボン酸/ジカルボン酸)は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、この場合のジカルボン酸に対する3価以上のカルボン酸の質量比としては、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がより好ましい。
【0084】
ポリオールとポリカルボン酸とを重縮合させる際の、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比(ポリオールの水酸基/ポリカルボン酸のカルボキシル基)は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、この場合のポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリオールの水酸基の当量比としては、1~2が好ましく、1~1.5がより好ましく、1.02~1.3が更に好ましい。
【0085】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリオール由来の構成単位の含有量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、この場合の含有量としては、0.5質量%~40質量%が好ましく、1質量%~30質量%がより好ましく、2質量%~20質量%が更に好ましい。
【0086】
この場合の含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下し、トナーの耐熱保存性と低温定着性との両立が困難となることがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0087】
ポリイソシアネートは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、イソシアヌレート類、これらをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたものなどが挙げられる。
【0088】
脂肪族ジイソシアネートは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトカプロン酸メチル、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0089】
脂環式ジイソシアネートは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0090】
芳香族ジイソシアネートは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナトジフェニル、4,4'-ジイソシアナト-3,3'-ジメチルジフェニル、4,4'-ジイソシアナト-3-メチルジフェニルメタン、4,4'-ジイソシアナト-ジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0091】
芳香脂肪族ジイソシアネートは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、α,α,α',α'-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0092】
イソシアヌレート類は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。イソシアヌレート類としては、例えば、トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリス(イソシアナトシクロアルキル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
ポリイソシアネートと、水酸基を有するポリエステル樹脂を反応させる場合、ポリエステル樹脂の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0094】
なお、この場合のポリエステル樹脂の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比としては、1~5が好ましく、1.2~4がより好ましく、1.5~2.5が更に好ましい。該当量比が、1未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、5を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0095】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0096】
なお、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中のポリイソシアネート由来の構成単位の含有量としては、0.5質量%~40質量%が好ましく、1質量%~30質量%がより好ましく、2質量%~20質量%が更に好ましい。該含有量が、0.5質量%未満であると、耐ホットオフセット性が低下することがあり、40質量%を超えると、低温定着性が低下することがある。
【0097】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが一分子当たりに有するイソシアネート基の平均数は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、この場合の平均数としては、1以上が好ましく、1.5~3がより好ましく、1.8~2.5が更に好ましい。平均数が、1未満であると、変性ポリエステル樹脂の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が低下することがある。
【0098】
変性ポリエステル樹脂は、ワンショット法などにより製造することができる。一例として、ウレア変性ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
【0099】
まず、ポリオールとポリカルボン酸を、テトラブトキシチタネート、ジブチルスズオキサイドなどの触媒の存在下で、150℃~280℃に加熱し、必要に応じて、減圧しながら生成する水を除去して、水酸基を有するポリエステル樹脂を得る。
【0100】
次に、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを40℃~140℃で反応させ、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを得る。更に、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を0℃~140℃で反応させ、ウレア変性ポリエステル樹脂を得る。
【0101】
変性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、変性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)としては、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、1,000~10,000が好ましく、1,500~6,000がより好ましい。
【0102】
変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが。なお、変性ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定において、20,000以上1,000,000以下が好ましい。
【0103】
重量平均分子量が、20,000以上であると、トナーが低温で流動しやすくなり、耐熱保存性に劣るという不具合、溶融時の粘性が低くなり、高温オフセット性が低下する不具合を防止できる。
【0104】
なお、水酸基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートを反応させる場合及びイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミン類を反応させる場合には、必要に応じて、溶媒を用いることもできる。
【0105】
溶媒は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。溶媒としては、例えば、芳香族溶媒、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類などのイソシアネート基に対して不活性なものが挙げられる。
【0106】
芳香族溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。エステル類としては、例えば、酢酸エチルなどが挙げられる。アミド類としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0107】
変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度としては、-60℃以上0℃以下であることが好ましく、-40℃以上-20℃以下がより好ましい。
【0108】
ガラス転移温度が、-60℃以上であると、低温でのトナーの流動が抑制できずに、耐熱保存性が悪化し、また、耐フィルミング性が悪化するという不具合を防止できる。ガラス転移温度が、0℃以下であると、定着時の加熱及び加圧によるトナーが十分に変形できず、低温定着性が不十分となる不具合を防止できる。
【0109】
変性ポリエステルの含有量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、変性ポリエステルの含有量としては、トナー100質量部中、1質量部~15質量部が好ましく、5質量部~10質量部がより好ましい。
【0110】
ポリエステル樹脂成分A、Bの分子構造は、溶液又は固体による核磁気共鳴(Nuclear magnetic resonance、NMR)の測定の他、X線回折(X‐ray diffraction、XRD)、ガスクロマトグラフィー質量分析(Gas Chromatography - Mass spectrometry、GC/MS)、液体クロマトグラフ質量分析計(Liquid Chromatograph - Mass Spectrometry、LC/MS)、赤外分光法(Infrared spectroscopy、IR)などの測定により確認することができる。
【0111】
簡便には、赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1及び990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有しないものを非晶質ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0112】
上述の結晶性ポリエステル樹脂(以下、結晶性ポリエステル、ポリエステル樹脂成分Cという場合がある)は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0113】
結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度低下を示す熱溶融特性を示す。このような特性を有する結晶性ポリエステル樹脂を非晶質ポリエステル樹脂と共に用いることで、溶融開始温度直前までは結晶性による耐熱保存性がよく、溶融開始温度では結晶性ポリエステル樹脂の融解による急激な粘度低下(シャープメルト)を起こす。
【0114】
これに伴い非晶質ポリエステル樹脂と相溶し、共に急激に粘度低下することで定着することから、良好な耐熱保存性と低温定着性とを兼ね備えたトナーが得られる。また、離型幅(定着下限温度と耐高温オフセット発生温度との差)についても、良好な結果を示す。
【0115】
なお、本明細書において、結晶性ポリエステル樹脂とは、上述のように、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを示す。なお、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、プレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0116】
ポリオールは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリオールとしては、例えば、ジオール、3価以上のアルコールなどが挙げられる。
【0117】
ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、結晶性を向上させ、かつ融点の低下を防ぐことができる点から、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。
【0118】
飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンジオールなどが挙げられる。
【0119】
飽和脂肪族ジオールとしては、これらの中でも、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0120】
3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0121】
ポリカルボン酸は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ポリカルボン酸としては、例えば、2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸などが挙げられる。
【0122】
2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸などの二塩基酸などの芳香族ジカルボン酸;及びこれらの無水物又はこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
【0123】
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、及びこれらの無水物又はこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。
【0124】
ポリカルボン酸としては、飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、スルホン酸基を持つジカルボン酸が含まれていてもよい。更に、飽和脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸の他に、2重結合を持つジカルボン酸を含有してもよい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0125】
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2以上12以下の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。
【0126】
すなわち、結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位と、炭素数2以上12以下の飽和脂肪族ジオールに由来する構成単位とを有することが好ましい。そうすることにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れることから、優れた低温定着性を発揮できる点で好ましい。
【0127】
本実施形態での結晶性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂成分C)の結晶性の有無は、結晶解析X線回折装置(フィリップス社製、X'Pert Pro MRD)により確認することができる。以下、測定方法について説明する。
【0128】
まず、対象試料を乳鉢によりすり潰して試料粉体を作成し、得られた試料粉体を試料ホルダーに均一に塗布する。その後、回折装置内に試料ホルダーをセットし、測定を行い、回折スペクトルを得る。得られた回折ピークにおいて、20°<2θ<25°の範囲に得られたピークのうち最もピーク強度が大きいピークのピーク半値幅が2.0以下である場合に結晶性を有すると判断する。
【0129】
なお、本実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂に対し、上述の状態を示さないポリエステル樹脂を非晶質ポリエステル樹脂という。
【0130】
X線回折の測定条件は、以下の通りである。
・Tension kV: 45kV
・Current: 40mA
・MPSS
・Upper
・Gonio
・Scanmode: continuos
・Start angle : 3°
・End angle : 35°
・Angle Step:0.02°
・Lucident beam optics
・Divergence slit : Div slit 1/2
・Difflection beam optics
・Anti scatter slit: As Fixed 1/2
・Receiving slit : Prog rec slit
【0131】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下であることが好ましい。融点が、60℃以上であると、結晶性ポリエステル樹脂が低温で溶融しやすく、トナーの耐熱保存性が低下する不具合を防止でき、80℃以下であると、定着時の加熱による結晶性ポリエステル樹脂の溶融が不十分で、低温定着性が低下するという不具合を防止できる。
【0132】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0133】
結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、重量平均分子量(Mw)が3,000~30,000が好ましく、5,000~15,000がより好ましい。
【0134】
結晶性ポリエステル樹脂のオルトジクロロベンゼンの可溶分が、GPC測定において、数平均分子量(Mn)が1,000~10,000が好ましく、2,000~10,000がより好ましい。
【0135】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量の比(Mw/Mn)としては、1.0~10が好ましく、1.0~5.0がより好ましい。これは、分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、かつ分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が低下するためである。
【0136】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、紙と樹脂との親和性の観点から、所望の低温定着性を達成するためには、結晶性ポリエステル樹脂の酸価としては、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。一方、耐高温オフセット性を向上させるには、45mgKOH/g以下が好ましい。
【0137】
結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、所望の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには、結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価としては、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g~50mgKOH/gがより好ましい。
【0138】
結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液又は固体によるNMRの測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IRなどの測定により確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1又は990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを結晶性ポリエステル樹脂として検出する方法が挙げられる。
【0139】
結晶性ポリエステル樹脂(ポリエステル樹脂成分C)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、3質量部~20質量部が好ましく、5質量部~15質量部がより好ましい。
【0140】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量が3質量部以上であると、結晶性ポリエステル樹脂によるシャープメルト化が不十分なため低温定着性に劣るという不具合を防止できる。また、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が20質量部以下であると、耐熱保存性が低下し、画像のかぶりが生じやすくなるという不具合を防止できる。
【0141】
母体粒子に含まれる着色剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0142】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。
【0143】
着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、1質量部~15質量部が好ましく、3質量部~10質量部がより好ましい。
【0144】
着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。
【0145】
マスターバッチの製造又はマスターバッチとともに混練される樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂の他に、ポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン又はその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられる。
【0146】
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0147】
マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合し、混練して得ることができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。
【0148】
また、いわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法を用いて、マスターバッチを製造してもよい。このような方法は、着色剤のウェットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する必要がない点で、好ましい。なお、混合混練するには、3本ロールミルなどの高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0149】
母体粒子に含まれるワックスは、トナーにおいて離型剤として機能し得る。ワックスは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。ワックスとしては、例えば、天然ワックス、合成ワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0150】
天然ワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウライスワックスなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリンなどの動物系ワックス;オゾケライト、セルシンなどの鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタムなどの石油ワックス;などが挙げられる。
【0151】
合成ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素などの脂肪酸アミド系化合物;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレートなどのポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体など);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子などが挙げられる。
【0152】
ワックスとしては、これらの中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどの炭化水素系ワックスが好ましい。
【0153】
離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以上80℃以下が好ましい。融点が60℃以上であると、低温で離型剤が溶融しやすくなり、耐熱保存性が劣るという不具合を防止できる。融点が80℃以下であると、樹脂が溶融して定着温度領域にある場合でも、離型剤が充分溶融せずに定着オフセットを生じ、画像の欠損を生じるという不具合を防止できる。
【0154】
離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、2質量部~10質量部が好ましく、3質量部~8質量部がより好ましい。離型剤の含有量が2質量部以上であると、定着時の耐高温オフセット性、及び低温定着性に劣るという不具合を防止でき、10質量部以下であると、耐熱保存性が低下すること、及び画像のかぶりなどが生じやすくなるという不具合を防止できる。
【0155】
母体粒子は、通常のトナー母体粒子に用いられるものであれば、特に制限されず、目的に応じて、適宜選択したその他の成分を含有することができる。その他の成分の含有量は、トナーの性質を害することがない限り、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0156】
その他の成分は、通常のトナーに用いられるものであれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる、その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料などが挙げられる。
【0157】
帯電制御剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0158】
帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩などが挙げられる。
【0159】
帯電制御剤の市販品としては、例えば、ニグロシン系染料のBONTRON(登録商標)03、第四級アンモニウム塩のBONTRON P-51、含金属アゾ染料のBONTRON S-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のBONTRON E-82、サリチル酸系金属錯体のBONTRON E-84、フェノール系縮合物のBONTRON E-89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(以上、日本カーリット社製)などが挙げられる。
【0160】
帯電制御剤の含有量は、結着樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。なお、帯電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましく、0.2質量部~5質量部がより好ましい。
【0161】
帯電制御剤の含有量が10質量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。
【0162】
これらの帯電制御剤は、マスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させることもできるし、もちろん、有機溶媒に直接溶解乃至分散する際に加えてもよいし、トナー表面にトナー粒子作製後固定化させてもよい。
【0163】
外添剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0164】
外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなど)、金属酸化物(例えば、チタニア、アルミナ、酸化錫、酸化アンチモンなど)、フルオロポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。好適な外添剤としては、疎水化されたシリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナの微粒子が挙げられる。
【0165】
シリカ微粒子としては、例えば、R972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(いずれも、日本アエロジル社製)などが挙げられる。
【0166】
また、チタニア微粒子としては、例えばP-25(日本アエロジル社製)、STT-30、STT-65C-S(いずれも、チタン工業社製)、TAF-140(富士チタン工業社製)、MT-150W、MT-500B、MT-600B、MT-150A(いずれも、テイカ社製)などが挙げられる。
【0167】
疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、例えば、T-805(日本アエロジル社製)、STT-30A、STT-65S-S(いずれも、チタン工業社製)、TAF-500T、TAF-1500T(いずれも、富士チタン工業社製)、MT-100S、MT-100T(いずれも、テイカ社製)、IT-S(石原産業社製)などが挙げられる。
【0168】
疎水化処理された酸化物微粒子、疎水化処理されたシリカ微粒子、疎水化処理されたチタニア微粒子、疎水化処理されたアルミナ微粒子は、例えば、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で処理して得ることができる。
【0169】
また、シリコーンオイルを必要に応じて熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理酸化物微粒子、無機微粒子も好適である。
【0170】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0171】
外添剤の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100nm以下が好ましく、1nm~100nmがより好ましく、3nm~70nmが更に好ましく、5nm~70nmが特に好ましい。一次粒子の平均粒径がこの範囲であると、無機微粒子がトナー中に埋没し、その機能が有効に発揮されにくいという不具合、及び感光体表面を不均一に傷つけるという不具合を防止できる。
【0172】
外添剤としては、疎水化処理された一次粒子の平均粒径が20nm以下の無機微粒子を少なくとも1種類以上含み、かつ30nm以上の無機微粒子を少なくとも1種類含むことが好ましい。
【0173】
外添剤のBET法による比表面積としては、20m2/g~500m2/gが好ましい。
【0174】
外添剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー100質量部に対して、0.1質量部~5質量部が好ましく、0.3質量部~3質量部がより好ましい。
【0175】
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0176】
流動性向上剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0177】
なお、上述のシリカ、酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理を行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが好ましい。
【0178】
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナーに添加されるものであれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0179】
クリーニング性向上剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸などの脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0180】
磁性材料は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。磁性材料としては、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライトなどが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0181】
トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)としては、40℃~65℃が好ましい。トナーのテトラヒドロフラン(THF)に不溶な成分のDSCの昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)としては、-45℃~5℃が好ましい。
【0182】
トナーのTHFに可溶な成分のDSCの昇温2回目におけるガラス転移温度(Tg2nd)としては、20℃~65℃が好ましい。トナーの示差走査熱量測定(DSC)の昇温1回目におけるガラス転移温度(Tg1st)と2回目の昇温におけるガラス転移点(Tg2nd)が、Tg1st-Tg2nd≧10[℃]を満たすことで低温定着性と耐熱保存性が向上する点で、好ましい。
【0183】
ここで、トナーのガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量計(島津製作所社製、DSC-60)などを用いて測定することができる。
【0184】
例えば、上述の示差走査熱量計を用いてDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、解析プログラム中の吸熱ショルダー温度を用いて、昇温1回目におけるガラス転移温度Tg1stを求めることができる。2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、吸熱ショルダー温度を用いて、昇温2回目におけるガラス転移温度Tg2ndを求めることができる。
【0185】
[凝集体]
本実施形態に係るトナーにおいて、凝集体(以下、有機微粒子の凝集体という場合がある)は複数の有機微粒子が凝集して構成されている。本明細書において、凝集とは、1次粒子がその形状を維持したまま集まった状態ではなく、粒が集まり一部の形状が維持できていない状態を示す。
【0186】
有機微粒子の凝集のさせ方は、特に限定されるものではないが、例えば、溶解パラメーター(Solubility Parameter、SP値)を変える方法がある。
【0187】
溶解パラメータ(以下、SP値と略記する場合がある)は、親和性を示す指標であり、SP値が近い2つの成分は、親和性が高い(混ざりやすい)ことを示し、SP値が離れている2つの成分は、親和性が低い(混ざりにくい)ことを示す。本実施形態では、SP値を高くすれば有機微粒子の凝集が進むが、高くしすぎると有機微粒子が溶剤に溶ける傾向がある。
【0188】
有機微粒子の凝集体は、母体粒子の表面に付着している。ここで、
図1は、トナー表面の状態の一例を示す概略図である。トナー母体1の表面は、平らではなく若干丸みを帯びている(カーブしている)。トナー母体1の表面には、樹脂微粒子2が付着している。トナー母体1の表面に付着する樹脂微粒子2の一部は凝集体2´を構成する。
【0189】
凝集体の長径は、有機微粒子の長径の3倍以上である。すなわち、有機微粒子2の最小粒子の長径をRとしたとき、凝集体2´の長径R´は3R以上となる。樹脂微粒子の最小粒子の長径Rおよび凝集体の長径R´は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)により撮影した画像上で計測する。
【0190】
有機微粒子の最小粒子の長径は、特に限定されないが、例えば、10nm以上35nm以下であることが好ましく、より好ましくは15nm以上53nm以下、さらに好ましくは20nm以上25nm以下である。ここで、体積平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像観察によって測定することができる。
【0191】
本実施形態のトナーでは、凝集体が母体粒子の表面に占める割合が10%以上であり、好ましくは15%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。以下、凝集体が母体粒子の表面に占める割合は、占有率という場合がある。なお、占有率の上限は、特に限定されず、理論的には最大100%まで許容されるが、実際的には80%以下となる。
【0192】
凝集体の占有率は、超音波による外添剤の遊離処理で外添剤を極力除去し、トナー母体粒子に近い状態にして、以下のように求める。
【0193】
(1)外添剤の遊離方法として、100mlのスクリュー管に、界面活性剤を含有した5質量%水溶液(第一工業製薬社製、ノイゲンET-165)を50ml添加し、その混合液にトナー3gを加えて静かに上下左右に動かす。その後、トナーが分散溶液になじむようにボールミルで30min撹拌する。
(2)その後、超音波ホモジナイザー(SONICS&MATERIALS社製、homogenizer、形式VCX750、CV33)を用いて、出力40Wに設定し、60分間超音波エネルギーを付与する。
【0194】
超音波の条件は、以下のとおりである。
・振動時間:60分連続
・振幅:40W
・振動開始温度:23±1.5℃
・振動中温度:23±1.5℃
【0195】
(3)上記(1)(2)で得られた分散液をろ紙(アドバンテック東洋社製、定性ろ紙No.2、110mm)で吸引ろ過し、再度イオン交換水で2回洗浄しろ過し、遊離した添加剤を除去後、トナー粒子を乾燥させる。
(4)上記(3)で得られたトナーを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する。まず、反射電子像を観察することでSiを含有する外添剤やフィラーを検出する。
(5)上記(4)の画像を画像処理ソフト(ImageJ)で二値化し、外添剤とフィラーを排除する。
【0196】
次に、上記(4)と同じ位置で二次電子画像を観察する。樹脂微粒子(有機微粒子)は反射電子画像では観察されず、二次電子画像でのみ観察されるため、上記(4)で得られた画像と照合し、残存外添剤とフィラー以外の部分(上記(4)で排除した以外の部分)に存在する微粒子を樹脂微粒子とし画像処理ソフトを使用し、各凝集体が占める総面積およびトナー母体の面積および樹脂微粒子間距離(粒子の中心と中心を結ぶ距離)を測定する。
【0197】
各凝集体が占める総面積およびトナー母体の面積は、凝集体及びトナー母体粒子の円周を画像処理ソフト(ImageJ)で算出し、該円周と同じ円周となる円の面積を該凝集体および該母体粒子のそれぞれの面積とする。凝集体占有率は、下記の式(1)から算出する、
【0198】
【0199】
この測定を二値化画像100枚(画像1枚当たりトナー粒子1個)について行い、その平均値を凝集体占有率および樹脂微粒子間距離の平均値とする。
【0200】
本実施形態のトナーでは、凝集体の平均円形度が0.9以上であり、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.94以上である。平均円形度の上限は、特に限定されず、理論的には最大1まで許容されるが、実際的には0.98以下となる。
【0201】
凝集体の平均円形度は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像観察によって測定することができる。
【0202】
本実施形態のトナーでは、母体粒子の表面で隣り合う有機微粒子の間の距離の標準偏差が500nm以下であることが好ましい。ここで、隣り合う有機微粒子の間の距離(以下、有機微粒子間の距離という)は、
図1に示すように、有機微粒子21の中心C1と有機微粒子22の中心C2とを結んだ距離Lである。
【0203】
また、有機微粒子の中心は、有機微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、画像にし、その画像の中心点を示す。なお、トナー母体表面はカーブしているので、有機微粒子間の距離は、トナー母体表面の有機微粒子間の距離を測定したものではなく、トナー母体表面上の有機微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像上における、有機微粒子間の最短距離である。
【0204】
有機微粒子間距離の標準偏差は、粒子間距離をxとして、下記式(2)により算出する。
【数2】
【0205】
撮影条件は以下のとおりである。
・走査型電子顕微鏡:SU-8230(日立ハイテクノロジーズ社製)
・撮影倍率:35000倍
・撮影像:SE(L):二次電子、BSE(反射電子)
・加速電圧:2.0kV
・加速電流:1.0μA
・プローブ電流:Normal
・焦点モード:UHR
・WD:8.0mm
【0206】
本実施形態のトナーでは、凝集体の体積平均粒径が70nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以上200nm以下、さらに好ましくは140nm以上200nm以下である。ここで、体積平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像観察によって測定することができる。
【0207】
[有機微粒子]
本実施形態のトナーにおいて、凝集体を構成する有機微粒子(以下、樹脂微粒子、樹脂微粒子Dという場合がある)は、コア樹脂(芯部)と該コア樹脂の少なくとも一部の表面を被覆するシェル樹脂(外殻部)とを有することが好ましく、コア樹脂とシェル樹脂から構成されることがより好ましく、コア樹脂とシェル樹脂とから構成されたビニル系ユニットを含有することが更に好ましい。
【0208】
本実施形態では、
図1に示すように、有機微粒子2は、コア樹脂3とシェル樹脂4とで構成されている。有機微粒子2の粒径Mは、樹脂微粒子2の体積平均一次粒径を示す。ここで、体積平均一次粒径は、粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)又は走査型電子顕微鏡写真(SEM像)から求められる一次粒子径の平均値(個数基準の平均一次粒子径)を示す。
【0209】
有機微粒子を構成するビニル系ユニットとしては、例えば、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであることが好ましい。
【0210】
ビニルモノマーとしては、例えば、下記(1)~(10)が挙げられる。
【0211】
(1)ビニル炭化水素
ビニル炭化水素としては、例えば、(1-1)脂肪族ビニル炭化水素、(1-2)脂環式ビニル炭化水素及び(1-3)芳香族ビニル炭化水素などが挙げられる。
【0212】
(1-1)脂肪族ビニル炭化水素
脂肪族ビニル炭化水素としては、例えば、アルケン、アルカジエンなどが挙げられる。アルケンの具体例としては、エチレン、プロピレン、α-オレフィンなどが挙げられる。アルカジエンの具体例としては、ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、1,7-オクタジエンなどが挙げられる。
【0213】
(1-2)脂環式ビニル炭化水素
脂環式ビニル炭化水素としては、モノ-もしくはジ-シクロアルケン及びアルカジエンが挙げられ、具体的な例としてはジ-シクロペンタジエン、テルペンなどが挙げられる。
【0214】
(1-3)芳香族ビニル炭化水素
芳香族ビニル炭化水素としては、スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体などが挙げられ、具体的にはα-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン及びビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0215】
(2)カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩
カルボキシル基含有ビニルモノマー及びその塩としては、例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)、不飽和ジカルボン酸(塩)並びにその無水物(塩)及びそのモノアルキル(炭素数1~24)エステル又はその塩などが挙げられる。
【0216】
具体的には、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸などのカルボキシル基含有ビニルモノマー及びこれらの金属塩などが挙げられる。
【0217】
本明細書において「(塩)」とは、酸又はその塩を意味する。例えば、炭素数3~30の不飽和モノカルボン酸(塩)は、不飽和モノカルボン酸あるいはその塩を示す。
【0218】
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、メタクリル酸あるいはアクリル酸を意味する。
【0219】
(3)スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
スルホン基含有ビニルモノマー、ビニル硫酸モノエステル化物及びこれらの塩としては、例えば、炭素数2~14のアルケンスルホン酸(塩)、炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)、スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)、又は(メタ)アクリルアミド(塩)、アルキルアリルスルホコハク酸(塩)などが挙げられる。
【0220】
具体的には、炭素数2~14のアルケンスルホン酸としては、ビニルスルホン酸(塩)などが挙げられる。炭素数2~24のアルキルスルホン酸(塩)としては、α-メチルスチレンスルホン酸(塩)などが挙げられる。スルホ(ヒドロキシ)アルキル-(メタ)アクリレート(塩)、又は(メタ)アクリルアミド(塩)としては、スルホプロピル(メタ)アクリレート(塩)、硫酸エステル(塩)、又はスルホン酸基含有ビニルモノマー(塩)などが挙げられる。
【0221】
(4)リン酸基含有ビニルモノマー及びその塩
リン酸基含有ビニルモノマー及びその塩としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)リン酸モノエステル(塩)、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)などが挙げられる。
【0222】
(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)リン酸モノエステル(塩)の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート(塩)、フェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート(塩)などが挙げられる。(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数1~24)ホスホン酸(塩)の具体例としては、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸(塩)などが挙げられる。
【0223】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイルあるいはアクリロイルを意味する。
【0224】
なお、上記(2)~(4)の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、アミン塩、4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0225】
(5)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー
ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール、2-ブテン-1,4-ジオール、プロパルギルアルコール、2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、ショ糖アリルエーテルなどが挙げられる。
【0226】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートあるいはアクリレートを意味する。
【0227】
(6)含窒素ビニルモノマー
含窒素ビニルモノマーとしては、例えば、(6-1)アミノ基含有ビニルモノマー、(6-2)アミド基含有ビニルモノマー、(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマー、(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー、(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0228】
(6-1)アミノ基含有ビニルモノマー
アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0229】
(6-2)アミド基含有ビニルモノマー
アミド基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0230】
(6-3)ニトリル基含有ビニルモノマー
ニトリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレートなどが挙げられる。
【0231】
(6-4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー
4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジアリルアミンなどの3級アミン基含有ビニルモノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネートなどの4級化剤を用いて4級化したもの)などが挙げられる。
【0232】
(6-5)ニトロ基含有ビニルモノマー
ニトロ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、ニトロスチレンなどが挙げられる。
【0233】
(7)エポキシ基含有ビニルモノマー
エポキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びp-ビニルフェニルフェニルオキサイドなどが挙げられる。
【0234】
(8)ハロゲン元素含有ビニルモノマー
ハロゲン元素含有ビニルモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0235】
(9)ビニルエステル、ビニル(チオ)エーテル、ビニルケトン
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4-ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα-エトキシアクリレート、炭素数1~50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなど)]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2~8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタンなど]など、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニルモノマー[ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物(メタ)アクリレートなど]、ポリ(メタ)アクリレート[多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。
【0236】
ビニル(チオ)エーテルとしては、例えば、ビニルメチルエーテルなどが挙げられる。
【0237】
ビニルケトンとしては、例えば、ビニルメチルケトンなどが挙げられる。
【0238】
(10)その他のビニルモノマー
その他のビニルモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、フルオロアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート及びm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。
【0239】
有機微粒子2を構成するコア樹脂3の合成には、上記(1)~(10)のビニルモノマーを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0240】
コア樹脂としては、低温定着性の観点から、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
【0241】
シェル樹脂に用いられるビニルモノマーとしては、コア樹脂と同様のものが挙げられる。シェル樹脂の合成には、上記コア樹脂で挙げた(1)~(10)のビニルモノマーを1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0242】
シェル樹脂としては、低温定着性の観点から、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体がより好ましい。
【0243】
シェル樹脂がカルボン酸を有することで、樹脂に酸価を付与し、有機微粒子(樹脂微粒子D)がトナー粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすくなる。
【0244】
コア樹脂の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G"としては、0.01MPa~1.0MPaが好ましく、0.02MPa~0.5MPaがより好ましく、0.05MPa~0.3MPaが更に好ましい。
【0245】
シェル樹脂の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G"としては、1.5MPa~100MPaが好ましく、1.7MPa~30MPaがより好ましく、2.0MPa~10MPaが更に好ましい。
【0246】
粘弾性特性損失弾性率G"がこの範囲であれば、コア樹脂とシェル樹脂とを同一粒子内に構成成分として含む有機微粒子(樹脂微粒子D)がトナー粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすい。
【0247】
コア樹脂及びシェル樹脂の周波数1Hzでの100℃における粘弾性特性の損失弾性率G"は、構成モノマーの種類及びその構成比を変えることや、重合条件(開始剤、連鎖移動剤の種類及び使用量、並びに反応温度など)で調整することができる。具体的には、例えば、以下のような組成にすることで各々の損失弾性率G"を上述の範囲に調整することが可能となる。
【0248】
(1)コア樹脂の構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg1)は、好ましくは-30℃~100℃、より好ましくは0℃~80℃、更に好ましくは30℃~60℃とする。また、シェル樹脂の構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg2)は、好ましくは0℃~150℃、より好ましくは50℃~100℃とする。
【0249】
なお、構成単量体から計算されるガラス転移温度(Tg)とは、Fox法により計算することができる値である。ここで、Fox法[T.G.Fox,Phys.Rev.,86,652(1952)]とは、下記式で示される個々の単独重合体のTgから共重合体のTgを推算する方法である。
【0250】
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
[式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(絶対温度表示)、Tg1、Tg2・・・Tgnは各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度(絶対温度表示)、W1、W2・・・Wnは各単量体成分の重量分率を示す。]
【0251】
(2)コア樹脂の計算酸価(AV1)は、好ましくは0mgKOH/g~50mgKOH/g、より好ましくは0mgKOH/g~20mgKOH/g、更に好ましくは0mgKOH/gとする。また、シェル樹脂の計算酸価(AV2)は、好ましくは75mgKOH/g~400mgKOH/g、より好ましくは150mgKOH/g~300mgKOH/gとする。
【0252】
なお、計算酸価とは、構成単量体中に含有される酸性基のモル量と、構成モノマーの総重量から計算される理論酸価である。
【0253】
(1)及び(2)の条件を満たす構成単量体として、コア樹脂については、例えば、コア樹脂の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを好ましくは10質量%~100質量%、より好ましくは30質量%~90質量%含有し、メタクリル酸及び/又はアクリル酸をコア樹脂の合計質量に基づいて、好ましくは合計0質量%~7.5質量%、より好ましくは合計0質量%~2.5質量%含有する樹脂が挙げられる。
【0254】
また、シェル樹脂については、例えば、シェル樹脂の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを好ましくは10質量%~80質量%、より好ましくは30質量%~60質量%含有し、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を好ましくは合計10質量%~60質量%、より好ましくは合計30質量%~50質量%含有する樹脂が挙げられる。
【0255】
(3)重合条件(開始剤、連鎖移動剤の種類及び使用量、並びに反応温度など)を調整する。具体的には、コア樹脂の数平均分子量(Mn1)は、1,000~1,000,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。またシェル樹脂の数平均分子量(Mn2)は、2,000~2,000,000が好ましく、20,000~200,000がより好ましい。
【0256】
本実施形態における粘弾性特性の損失弾性率G"は、例えば、下記の粘弾性測定装置を用いて測定される。
・装置:ARES-24A(レオメトリック社製)
・治具:25mmパラレルプレート
・周波数:1Hz
・歪み率:10%
・昇温速度:5℃/min
【0257】
コア樹脂の酸価(AVd1)としては、低温定着性の観点から、0mgKOH/g~50mgKOH/gが好ましく、0mgKOH/g~20mgKOH/gがより好ましく、0mgKOH/gが更に好ましい。
【0258】
なお、酸価は、例えば、JIS K0070:1992の方法で測定することができる。
【0259】
酸価がこの範囲にあるコア樹脂は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸をコア樹脂の合計質量に基づいて、好ましくは合計0質量%~7.5質量%、より好ましくは合計0質量%~2.5質量%含有する樹脂である。
【0260】
シェル樹脂の酸価(AVd2)としては、75mgKOH/g~400mgKOH/gが好ましく、150mgKOH/g~300mgKOH/gがより好ましい。
【0261】
シェル樹脂の酸価がこの範囲であれば、コア樹脂とシェル樹脂とを同一粒子内に構成成分として含むビニル系ユニットを含有する有機微粒子(樹脂微粒子D)がトナーの表面に付着した粒子を形成しやすい。
【0262】
酸価がこの範囲にあるシェル樹脂は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸をシェル樹脂の合計質量に基づいて、好ましくは合計10質量%~60質量%、更に好ましくは合計30質量%~50質量%含有する樹脂である。
【0263】
シェル樹脂のガラス転移温度としては、コア樹脂のガラス転移温度より高いことが好ましく、10℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことが更に好ましい。この範囲であれば有機微粒子(樹脂微粒子D)がトナーの表面に付着したトナー粒子の形成しやすさと、本実施形態のトナー粒子の低温定着性のバランスに優れる。
【0264】
コア樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、-30℃~100℃が好ましく、0℃~80℃がより好ましく、30℃~60℃が更に好ましい。コア樹脂のガラス転移温度が、-30℃以上であれば、耐熱保存性を向上させることができ、100℃以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
【0265】
シェル樹脂のガラス転移温度としては、0℃~150℃が好ましく、50℃~100℃がより好ましい。シェル樹脂のガラス転移温度が、0℃以上であれば、耐熱保存性を向上させることができ、150℃以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
【0266】
本実施形態におけるTgは、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC20、SSC/580)を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC)で測定する。
【0267】
コア樹脂のSP値としては、トナー粒子の形成しやすさの観点から、8.5(cal/cm3)1/2~12.5(cal/cm3)1/2が好ましく、9(cal/cm3)1/2~12(cal/cm3)1/2がより好ましく、10(cal/cm3)1/2~11(cal/cm3)1/2が更に好ましい。コア樹脂のSP値は、構成するモノマーの種類及びその構成比を変えることで調整することができる。
【0268】
シェル樹脂のSP値としては、トナー粒子の形成しやすさの観点から、9(cal/cm3)1/2~13(cal/cm3)1/2が好ましく、9.5(cal/cm3)1/2~12.5(cal/cm3)1/2がより好ましく、10.5(cal/cm3)1/2~11.5(cal/cm3)1/2が更に好ましい。シェル樹脂のSP値は、構成するモノマーの種類及びその構成比を変えることで調整することができる。
【0269】
本実施形態におけるSP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算する。
【0270】
コア樹脂には、コア樹脂のTg及びその他ビニルモノマーとの共重合性の観点から、コア樹脂の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを10質量%~100質量%含有することが好ましく、30質量%~90質量%含有することがより好ましい。
【0271】
シェル樹脂には、シェル樹脂のTg及びその他モノマーとの共重合性の観点から、シェル樹脂の合計質量に基づいて、構成単量体としてスチレンを10質量%~80質量%含有することが好ましく、30質量%~60質量%含有することがより好ましい。
【0272】
コア樹脂の数平均分子量(Mn)としては、1,000~1,000,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。Mnが、1,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、1,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0273】
コア樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、10,000~10,000,000が好ましく、100,000~1,000,000がより好ましい。Mwが、10,000以上であれば、トナーの耐熱保存性が向上し、10,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0274】
シェル樹脂の数平均分子量(Mn)としては、2,000~2,000,000が好ましく、20,000~200,000がより好ましい。数平均分子量が2,000以上であれば、耐熱保存性が向上し、2,000,000以下であれば、トナーの低温定着性に対する阻害が少ない。
【0275】
シェル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、コア樹脂の重量平均分子量より大きいことが好ましく、コア樹脂の重量平均分子量より1.5倍以上大きいことがより好ましく、コア樹脂の重量平均分子量より2.0倍以上大きいことが更に好ましい。この範囲であれば、トナー粒子の形成しやすさと、低温定着性のバランスに優れる。
【0276】
シェル樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、20,000~20,000,000が好ましく、200,000~2,000,000がより好ましい。重量平均分子量が、20,000以上であれば、耐熱保存性が向上し、20,000,000以下であれば、低温定着性に対する阻害が少ない。
【0277】
これらの中でも、コア樹脂のMwが100,000~500,000で、シェル樹脂のMwが200,000~2,000,000で、かつ「コア樹脂のMw」<「シェル樹脂のMw」であることが好ましい。
【0278】
本実施形態におけるMn及びMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
【0279】
・装置(一例):HLC-8120(東ソー社製)
・カラム(一例):TSK GEL GMH6(東ソー社製)2本
・測定温度:40℃
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
・溶液注入量:100μL
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー社製]
【0280】
有機微粒子(樹脂微粒子D)中のコア樹脂とシェル樹脂との質量比率は、5/95~95/5が好ましく、25/75~75/25がより好ましく、40/60~60/40が更に好ましい。
【0281】
コア樹脂とシェル樹脂との質量比率が5/95以上であれば、樹脂微粒子Dがトナー樹脂粒子の表面に付着したトナー粒子を形成しやすい。また、コア樹脂とシェル樹脂との質量比率が95/5以下であれば、耐熱保存性に優れたトナーが得られる。
【0282】
また、有機微粒子(樹脂微粒子D)は、単独で用いることもできるが、2種類のスチレン-アクリル樹脂(樹脂e1、e2)からなる有機微粒子Eと1種類のスチレン-アクリル樹脂から成る有機微粒子Fを併用することでも、本実施形態のトナーが得られる。例えば、本実施形態のトナーとして、有機微粒子をスチレン-アクリル樹脂で構成し、有機微粒子を構成するシェル樹脂がスチレン-アクリル樹脂を含有するトナーを得る。
【0283】
乳化中に予め混合した有機微粒子E及びFがトナー表面に均一に付着し、後述する洗浄工程により上述のトナー表面に付着した有機微粒子Fと有機微粒子E中の樹脂e1の全てまたは一部が取り除かれることで有機微粒子Eを隙間を空けて均一に付着させることができる。
【0284】
有機微粒子(樹脂微粒子D)を製造する方法としては公知の製造方法が挙げられるが、例えば、次のような製造方法(I)~(V)などが挙げられる。
【0285】
(I)水性分散液中のコア樹脂を構成する樹脂(以下、樹脂(d1)という)微粒子をシードとして、シェル樹脂を構成する樹脂(以下、樹脂(d2)という)の構成モノマーをシード重合する方法。
(II)水性分散液中の樹脂(d2)の微粒子をシードとして、樹脂(d1)の構成モノマーをシード重合する方法。
(III)樹脂(d1)及び樹脂(d2)の混合物を水性媒体に乳化して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
(IV)樹脂(d1)と樹脂(d2)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、樹脂(d1)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
(V)樹脂(d1)と樹脂(d2)の構成モノマーの混合物とを水性媒体に乳化した後に、樹脂(d2)の構成モノマーを重合して樹脂微粒子の水性分散液として得る方法。
【0286】
樹脂微粒子Dが、コア樹脂(d1)とシェル樹脂(d2)とを同一粒子内に構成成分として含むことは、樹脂微粒子(B)の切断面における元素マッピング画像の観察、及び電子顕微鏡観察画像の観察を行うことにより確認することができる。
【0287】
なお、元素マッピング画像の観察では、例えば、公知の表面元素分析装置(TOF-SIMSEDX-SEMなど)を用いる。また、電子顕微鏡観察画像の観察では、例えば、樹脂(d1)と樹脂(d2)に含まれる官能基に応じた染色剤で樹脂微粒子(B)の切断面を染色する。
【0288】
この方法で得られる樹脂微粒子は、樹脂(d1)と樹脂(d2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子Dの他に、樹脂(d1)のみを構成樹脂成分とする樹脂微粒子と樹脂(d2)のみを構成樹脂成分とする樹脂微粒子とを含む混合物として得られる場合がある。なお、後述する複合化工程においては、このような混合物のまま用いてもよく、樹脂微粒子Dだけを単離して用いてもよい。
【0289】
(I)の具体例としては、樹脂(d1)の構成モノマーを滴下重合して樹脂(d1)を含む樹脂微粒子の水性分散液を製造した後、これをシードとして樹脂(d2)の構成モノマーをシード重合する方法及びあらかじめ溶液重合などで製造した樹脂(d1)を水に乳化分散した後、これをシードとして樹脂(d2)の構成モノマーをシード重合する方法などが挙げられる。
【0290】
(II)の具体例としては、樹脂(d2)の構成モノマーを滴下重合して樹脂(d2)を含む樹脂微粒子の水性分散液を製造した後、これをシードとして樹脂(d1)の構成モノマーをシード重合する方法及びあらかじめ溶液重合などで製造した樹脂(d2)を水に乳化分散した後、これをシードとして樹脂(d1)の構成モノマーをシード重合する方法などが挙げられる。
【0291】
(III)の具体例としては、あらかじめ溶液重合などで製造した樹脂(d1)及び樹脂(d2)の溶液又は溶融物を混合した後、これを水性媒体に乳化分散する方法などが挙げられる。
【0292】
(IV)の具体例としては、あらかじめ溶液重合などで製造した樹脂(d1)を(樹脂d2)の構成モノマーと混合し、これを水性媒体に乳化分散した後、樹脂(d1)の構成モノマーを重合する方法及び樹脂(d1)の構成モノマー中で樹脂(d2)を製造した後、その混合物を水性媒体に乳化分散した後、樹脂(d1)の構成モノマーを重合する方法などが挙げられる。
【0293】
(V)の具体例としては、あらかじめ溶液重合などで製造した樹脂(d1)を樹脂(d2)の構成モノマーと混合し、これを水性媒体に乳化分散した後、(d2)の構成モノマーを重合する方法及び樹脂(d2)の構成モノマー中で樹脂(d1)を製造した後、その混合物を水性媒体に乳化分散した後、樹脂(d2)の構成モノマーを重合する方法などが挙げられる。
【0294】
本実施形態においては、上記(I)~(V)のいずれの製造方法も好適に用いられる。
【0295】
樹脂微粒子(B)は水性分散液として用いることが好ましい。
【0296】
水性分散液に用いられるもの(以下、水性媒体という)は、水に溶解するものであれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。水性媒体としては、例えば、界面活性剤G、緩衝剤、保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0297】
水性分散液に用いられる水性媒体としては、水を必須とする液体であれば、特に制限されることなく用いることができ、例えば、水を含有させた水溶液などが挙げられる。
【0298】
界面活性剤Gとしては、例えば、ノニオン性界面活性剤G1、アニオン性界面活性剤G2、カチオン性界面活性剤G3、両性界面活性剤G4、その他の乳化分散剤G5などが挙げられる。
【0299】
ノニオン性界面活性剤G1(以下、G1と略記する)としては、例えば、AO(アルキレンオキサイド)付加型ノニオン性界面活性剤、多価アルコール型ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0300】
AO付加型ノニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数10~20の脂肪族アルコールのEO付加物、フェノールのEO付加物、ノニルフェノールのEO(エチレンオキサイド)付加物、炭素数8~22のアルキルアミンのEO付加物、ポリ(オキシプロピレン)グリコールのEO付加物などが挙げられる。
【0301】
多価アルコール型ノニオン性界面活性剤としては、例えば、多価(3~8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2~30)の脂肪酸(炭素数8~24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエートなど)、アルキル(炭素数4~24)ポリ(重合度1~10)グリコシドなどが挙げられる。
【0302】
アニオン性界面活性剤G2(以下、G2と略記する)としては、例えば、炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩、炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩、炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩、炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩などが挙げられる。
【0303】
炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩としては、例えば、ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0304】
炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0305】
炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0306】
炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩としては、例えば、ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0307】
炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0308】
炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩としては、例えば、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウムなどが挙げられる。
【0309】
カチオン性界面活性剤G3(以下、G3と略記する)としては、例えば、第4級アンモニウム塩型、アミン塩型などが挙げられる。
【0310】
第4級アンモニウム塩型としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0311】
アミン塩型としては、例えば、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩、オレイルアミン乳酸塩などが挙げられる。
【0312】
両性界面活性剤G4(以下、G4と略記する)としては、例えば、ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0313】
ベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
【0314】
アミノ酸型両性界面活性剤としては、例えば、β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0315】
その他の乳化分散剤G5(以下、G5と略記する)としては、例えば、反応性活性剤が挙げられる。反応性活性剤は、ラジカル反応性を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0316】
反応性活性剤としては、例えば、アデカリアソープ(登録商標)SE-10N、SR-10、SR-20、SR-30、ER-20、ER-30(以上、ADEKA社製)、アクアロン(登録商標)、HS-10、KH-05、KH-10、KH-1025(以上、第一工業製薬社製)、エレミノール(登録商標)JS-20(三洋化成工業社製)、ラテムル(登録商標)D-104、PD-420、PD-430(以上、花王社製)、イオネット(登録商標)MO-200(三洋化成工業社製)、ポリビニルアルコール、デンプン又はその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダなどのカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤(例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの)などが挙げられる。
【0317】
界面活性剤Gとしては、乳化及び分散させる際に、油滴を安定化させ、所望の形状を得ながら、粒度分布をシャープにする観点から、G1、G2、G5、及びこれらの併用好ましく、G1とG5との併用、及びG2とG5との併用がより好ましい。
【0318】
緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウなどが挙げられる。
【0319】
保護コロイドとしては、例えば、水溶性セルロース化合物、ポリメタクリル酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0320】
樹脂微粒子Dは、コア樹脂(d1)及びシェル樹脂(d2)に加え、その他の樹脂成分、開始剤(及びその残渣)、連鎖移動剤、酸化防止剤、可塑剤、防腐剤、還元剤、有機溶剤などを含有していてもよい。
【0321】
その他の樹脂成分としては、コア樹脂(d1)及びシェル樹脂(d2)に用いた樹脂以外のビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0322】
開始剤(及びその残渣)としては、公知のラジカル重合開始剤などが挙げられ、具体的には、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩開始剤;アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ開始剤;過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキサイド、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物;過酸化水素などが挙げられる。
【0323】
連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0324】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール化合物、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、有機硫黄化合物、有機リン化合物などが挙げられる。
【0325】
フェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2′-メチレン-ビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-チオビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4′-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3′-ビス(4′-ヒドロキシ-3′-t-ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ-ルエステル、トコフェロールなどが挙げられる。
【0326】
パラフェニレンジアミンとしては、例えば、N-フェニル-N′-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジメチル-N,N′-ジ-t-ブチル-p-フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0327】
ハイドロキノンとしては、例えば、2,5-ジ-t-オクチルハイドロキノン、2,6-ジドデシルハイドロキノン、2-ドデシルハイドロキノン、2-ドデシル-5-クロロハイドロキノン、2-t-オクチル-5-メチルハイドロキノン、2-(2-オクタデセニル)-5-メチルハイドロキノンなどが挙げられる。
【0328】
有機硫黄化合物としては、例えば、ジラウリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3′-チオジプロピオネート、ジテトラデシル-3,3′-チオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0329】
有機リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4-ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
【0330】
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、脂肪族2塩基酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0331】
フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソデシルなどが挙げられる。
【0332】
脂肪族2塩基酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸-2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0333】
トリメリット酸エステルとしては、例えば、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどが挙げられる。
【0334】
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジールなどが挙げられる。
【0335】
脂肪酸エステルとしては、例えば、オレイン酸ブチルなどが挙げられる。
【0336】
防腐剤としては、例えば、有機窒素硫黄化合物、有機硫黄ハロゲン化物などが挙げられる。
【0337】
還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩などの還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元性無機化合物;などが挙げられる。
【0338】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン溶媒;酢酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル溶媒;THF(テトラヒドロフラン)などのエーテル溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタムなどのアミド溶媒;イソプロピルアルコールなどのアルコール溶媒;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;などが挙げられる。
【0339】
樹脂微粒子の含有量としては、トナーに対して、樹脂(d1)と樹脂(d2)の和が0.2質量%~5質量%が好ましい。樹脂(d1)と樹脂(d2)の和が、上記範囲にあることで、低温定着性と耐熱保存性とが向上する。トナーに対して、樹脂(d1)と樹脂(d2)の和が、0.2質量%以上であると耐熱保存性が悪化するという不具合を防止でき、5質量%以下であると、低温定着性が低下するという不具合を防止できる。
【0340】
本実施形態のトナーは、現像剤に用いられる。具体的には、現像剤が、少なくとも上述のトナーを含み、必要に応じてキャリアなどの適宜選択されるその他の成分を含む。なお、現像剤は、一成分現像剤であっても二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタなどに使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0341】
キャリアは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
【0342】
芯材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50emu/g~90emu/gのマンガン-ストロンチウム系材料、50emu/g~90emu/gのマンガン-マグネシウム系材料などが挙げられる。
【0343】
また、画像濃度を確保するためには、100emu/g以上の鉄粉、75emu/g~120emu/gのマグネタイトなどの高磁化材料を用いることが好ましい。また、穂立ち状態となっている現像剤の感光体に対する衝撃を緩和でき、高画質化に有利であることから、30emu/g~80emu/gの銅-亜鉛系などの低磁化材料を用いることが好ましい。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0344】
芯材の体積平均粒子径は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm~150μmが好ましく、40μm~100μmがより好ましい。
【0345】
芯材の体積平均粒子径が10μm未満では、キャリア中に微粉が多くなり、一粒子当たりの磁化が低下してキャリアの飛散が生じることがある。一方、芯材の体積平均粒子径が150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0346】
本実施形態のトナーは、キャリアと混合して二成分系現像剤に用いることができる。二成分現像剤中のキャリアの含有量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分現像剤100質量部に対して、90質量部~98質量部が好ましく、93質量部~97質量部がより好ましい。
【0347】
本実施形態の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法などの公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0348】
本実施形態のトナーは、上述のように、複数の有機微粒子が凝集した凝集体が、母体粒子の表面に付着し、該凝集体の長径が有機微粒子の長径の3倍以上であり、該凝集体が母体粒子の表面に占める割合(占有率)が10%以上である。これにより、母体粒子の表面に隙間が生じやすくなり、隣接するトナー間やトナーと機材の接触面積が小さくなる。そのため、定着時のトナーに熱が伝わりやすくなり、優れた低温定着性を得ることができる。
【0349】
また、本実施形態では、有機微粒子の長径の3倍以上の長径を有する凝集体が母体粒子の表面に10%以上の占有率で存在することで、母体粒子の表面に付着した凝集体がスペーサの働きをするため、機材に対するトナーの付着力を低下させることができる。これにより、本実施形態では、フィルミングの発生を抑制することができ、トナーのクリーニング性を向上させることができる。
【0350】
さらに、本実施形態では、母体粒子の表面に付着する凝集体の平均円形度が0.9以上であることで、凝集体が球形に近いものとなる。このような観点からも、母体粒子の表面に隙間が生じやすくなり、隣接するトナー間やトナーと機材の接触面積が小さくなる。そのため、定着時のトナーに熱がさらに伝わりやすくなり、トナーの低温定着性を向上させることができる。
【0351】
本実施形態のトナーでは、上述のように、母体粒子の表面に付着した凝集体を構成する有機微粒子が、コア樹脂と該コア樹脂の少なくとも一部の表面を被覆するシェル樹脂とを有することで、低温定着性とクリーニング性のいずれも向上させることができる。また、本実施形態では、低温定着性を向上させながら維持耐熱保存性を向上させることができる。
【0352】
本実施形態のトナーでは、上述のように、有機微粒子を構成するシェル樹脂が、スチレン-アクリル樹脂を含有することで、定着時のトナーに熱がさらに伝わりやすくなり、また付着力をさらに低下させることができる。そのため、優れた低温定着性を維持しながら、クリーニング性をさらに向上させることができる。
【0353】
本実施形態のトナーでは、上述のように、有機微粒子で構成された凝集体が母体粒子の表面に占める割合が60%以上80%以下となることで、トナーの付着力をさらに低下させることができる。そのため、優れた低温定着性を維持しながらクリーニング性をさらに向上させることができる。
【0354】
本実施形態のトナーでは、上述のように、凝集体の平均円形度が0.94以上0.98以下となることで、凝集体がより球形に近いものとなる。これにより、母体粒子の表面に隙間がより生じやすくなり、隣接するトナー間やトナーと機材の接触面積がさらに小さくなるため、トナーの低温定着性をさらに向上させることができる。
【0355】
本実施形態のトナーでは、上述のように、母体粒子の表面で隣り合う有機微粒子の間の距離の標準偏差が500nm以下となることで、有機微粒子間の距離のバラツキを小さくなり、樹脂微粒子が母体粒子の表面に局所的に付着することが抑制される。これにより、定着時のトナーに熱が均一に伝わりやすきなり、低温定着性をさらに向上させることができる。トナーの付着力がさらに低下し、クリーニング性をさらに向上させることができる。
【0356】
本実施形態のトナーでは、上述のように、有機微粒子で構成された凝集体の体積平均粒径が70nm以上200nm以下となることで、母体粒子の表面に付着した凝集体によるスペーサの働きを高めることできる。そのため、トナーの付着力をさらに低下させることができ、クリーニング性をさらに向上させることができる。
【0357】
<トナーの製造方法>
本実施形態のトナーの製造方法は、前述のトナーを製造する方法である。
トナーの製造方法は、複合粒子形成工程と、除去工程と、を有する。トナーの製造方法は、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0358】
[複合粒子形成工程]
複合粒子形成工程は、トナー母体粒子の表面に有機微粒子(樹脂微粒子)を付着させて、複合粒子を形成する工程である。
【0359】
複合粒子の形成方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤、ワックスなどのトナー母体粒子の成分を含む油相を、樹脂微粒子を含む水系媒体中で分散させることにより造粒する公知の溶解懸濁法などが挙げられる。
【0360】
溶解懸濁法の一例として、プレポリマーと硬化剤との伸長反応及び/又は架橋反応によりポリエステル樹脂を生成させながら、複合粒子を形成する方法を示す。この方法では、水系媒体(水相)の調製、トナー母体粒子材料を含有する油相の調製、トナー母体粒子材料の乳化乃至分散、有機溶媒の除去を行う。
【0361】
水系媒体(水相)の調製は、例えば、樹脂微粒子を水系媒体に分散させることにより行うことができる。樹脂微粒子の水系媒体中の添加量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、水系媒体100質量部に対して、0.5質量部~10質量部が好ましい。
【0362】
水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0363】
水と混和可能な溶媒は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。水と混和可能な溶媒としては、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類などが挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0364】
油相の調製は、結着樹脂、着色剤、及びワックスを含有し、更に必要に応じて硬化剤などを含むトナー母体粒子材料を、有機溶媒中に溶解乃至分散させることにより行うことができる。
【0365】
有機溶媒は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
【0366】
沸点が150℃未満の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0367】
これらの沸点が150℃未満の有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などが好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0368】
トナー母体粒子材料の乳化乃至分散は、トナー母体粒子材料を含有する油相を、水系媒体中に分散させることにより行うことができる。そして、トナー母体粒子材料を乳化乃至分散させる際に、硬化剤とプレポリマーとを伸長反応及び/又は架橋反応させることができる。
【0369】
プレポリマーを生成させるための反応条件(反応時間、反応温度)は、特に制限されず、硬化剤とプレポリマーとの組み合わせに応じて、適宜選択することができる。反応時間は10分間~40時間が好ましく、2時間~24時間がより好ましい。反応温度は、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。
【0370】
水系媒体中において、プレポリマーを含有する分散液を安定に形成する方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、水系媒体相中に、トナー母体粒子材料を溶媒に溶解乃至分散させて調製した油相を添加し、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
【0371】
分散のための分散機は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。このような分散機としては、例えば、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機などが挙げられる。これらの中でも分散体(油滴)の粒子径を2μm~20μmに制御することができる点で、高速せん断式分散機が好ましい。
【0372】
高速せん断式分散機を用いた場合、回転数、分散時間、分散温度などの条件は、目的に応じて適宜選択することができる。回転数は、1,000rpm~30,000rpmが好ましく、5,000rpm~20,000rpmがより好ましい。
【0373】
分散時間は、バッチ方式の場合、0.1分間~5分間が好ましい。分散温度は、加圧下において、0℃~150℃が好ましく、40℃~98℃がより好ましい。なお、一般に、分散温度が高温である方が分散は容易である。
【0374】
トナー母体粒子材料を乳化乃至分散させる際の水系媒体の使用量は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー母体粒子材料100質量部に対して、50質量部~2,000質量部が好ましく、100質量部~1,000質量部がより好ましい。
【0375】
水系媒体の使用量が50質量部未満であると、トナー母体粒子材料の分散状態が悪くなって、所定の粒子径のトナー母体粒子が得られないことがあり、2,000質量部を超えると、生産コストが高くなることがある。
【0376】
トナー母体粒子材料を含有する油相を乳化乃至分散する際には、油滴などの分散体を安定化させ、所望の形状にするとともに粒度分布をシャープにする観点から、分散剤を用いることが好ましい。
【0377】
分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、難水溶性の無機化合物分散剤、高分子系保護コロイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面活性剤が好ましい。
【0378】
界面活性剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0379】
有機溶媒の除去は、乳化スラリーなどの分散液から有機溶媒を除去することにより行うことができる。有機溶媒の除去する方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、反応系全体を徐々に昇温させて油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して油滴中の有機溶媒を除去する方法などが挙げられる。有機溶媒が除去されると、複合粒子が形成される。
【0380】
[除去工程]
除去工程は、複合粒子から、上述の有機微粒子(樹脂微粒子)の少なくとも一部を除去する工程である。除去工程では、樹脂微粒子におけるシェル樹脂(樹脂(d2))の一部又は全部を除去することが好ましい。
【0381】
樹脂微粒子の少なくとも一部を除去する工程としては、例えば、複合粒子を洗浄する洗浄工程が挙げられる。このことから、除去工程は、洗浄工程とも言える。
【0382】
除去工程(以下、洗浄工程という場合がある)において、樹脂(d2)の一部又は全部を除去する方法としては、化学的方法で樹脂(d2)の一部又は全部を除去する方法が挙げられる。
【0383】
化学的方法としては、例えば、塩基性の水溶液を用いて、複合粒子を洗浄する工程が挙げられる。塩基性の水溶液を用いて、複合粒子を洗浄することで、シェル樹脂(d2)の一部又は全部を溶解することができる。
【0384】
洗浄工程を行うことで、上述のトナーが得られる。
【0385】
塩基性の水溶液は、塩基性であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。塩基性の水溶液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などの水溶液、アンモニアなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シェル樹脂(d2)を溶解させやすいという観点から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0386】
塩基性の水溶液のpHとしては、8~14が好ましく、10~12がより好ましい。
【0387】
洗浄工程における複合粒子とアルカリ水溶液との混合は、撹拌下において複合スラリーに塩基性の水溶液を滴下する方法などで行うことができる。なお、塩基性の水溶液を滴下した後に、酸水溶液を滴下して中和してもよい。
【0388】
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥工程、分級工程などが挙げられる。
【0389】
乾燥工程は、複合粒子から溶媒を除去することができれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。
【0390】
分級工程としては、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離などにより、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0391】
得られた複合粒子は、外添剤、帯電制御剤などの粒子と混合してもよい。このとき、機械的衝撃力を印加することにより、トナー母体粒子の表面から外添剤などの粒子が脱離するのを抑制することができる。
【0392】
機械的衝撃力を印加する方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、高速で回転する羽根を用いて混合物に衝撃力を印加する方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させて粒子同士又は粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などが挙げられる。
【0393】
この機械的衝撃力を印加する方法に用いる装置は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、オングミル(登録商標)(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して粉砕エアー圧力を下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0394】
本実施形態に係るトナーの製造方法は、上述のように、母体粒子の表面に有機微粒子を付着させて複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、複合粒子から、有機微粒子の少なくとも一部を除去する除去工程と、を有することで、上述のトナーが得られる。また、得られたトナーは、上述のように、優れた低温定着性とクリーニング性を両立することができる。
【0395】
本実施形態に係るトナーの製造方法は、上述のように、除去工程が塩基性の水溶液を用いて洗浄する工程であることで、シェル樹脂の一部又は全部を溶解することができ、有機微粒子の一部又は全部を高い精度で除去することができる。
【0396】
<トナー収容ユニット>
本実施形態に係るトナー収容ユニットは、上述のトナーを収容する。本明細書において、トナー収容ユニットは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものを示す。トナー収容ユニットの態様としては、例えば、トナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジなどで構成されたものが挙げられる。
【0397】
トナー収容容器は、トナーを収容した容器である。
【0398】
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものである。
【0399】
プロセスカートリッジは、少なくとも像担持体と現像手段とを一体とし、トナーを収容し、画像形成装置に対して着脱可能であるものである。プロセスカートリッジは、更に帯電手段、露光手段、クリーニング手段のから選ばれる少なくとも一つを備えてもよい。
【0400】
本実施形態に係るトナー収容容器の一例としてプロセスカートリッジの実施形態を
図2に示す。本実施形態のプロセスカートリッジは、
図2に示すように、潜像担持体101を内蔵し、帯電装置102、現像装置104、クリーニング部106を含み、更に必要に応じてその他の手段を有する。
図2中、符号103は露光装置からの露光光、符号105は記録紙をそれぞれ示す。
【0401】
潜像担持体101としては、後述する画像形成装置における静電潜像担持体と同様なものを用いることができる。また帯電装置102には、任意の帯電部材が用いられる。
【0402】
図2に示すプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについては、潜像担持体101は、矢印方向に回転しながら、帯電装置102による帯電、露光手段(図示せず)からの露光光103による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
【0403】
この静電潜像は、現像装置104でトナー現像され、該トナー現像は転写ローラ107により、記録紙105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の潜像担持体表面は、クリーニング部106によりクリーニングされ、更に除電手段(図示せず)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0404】
本実施形態に係るトナー収容ユニットでは、上述のトナーが用いられることで、上述のトナーで得られる効果が得られる。具体的には、本実施形態のトナー収容ユニットを画像形成装置に装着して画像形成することで、上述のトナーを用いて画像形成が行われるため、優れた低温定着性とクリーニング性を両立することができる。
【0405】
<画像形成装置及び画像形成方法>
本実施形態の画像形成装置は、前述のトナー収容ユニットを有し、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段とを少なくとも有する。本実施形態の画像形成装置は、更に必要に応じて、その他の手段を有することが好ましい。
【0406】
本実施形態に係る画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0407】
静電潜像担持体の材質、構造、大きさは、特に制限されず、公知のものの中から適宜選択することができる。静電潜像担持体の材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレンなどの無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチンなどの有機感光体などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコンが好ましい。
【0408】
静電潜像担持体の線速としては、300mm/s以上であることが好ましい。
【0409】
静電潜像形成手段は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。静電潜像形成手段としては、例えば、静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
【0410】
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。静電潜像形成工程としては、例えば、静電潜像担持体の表面を帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、上述の画像形成装置を構成する静電潜像形成手段を用いて行うことができる。
【0411】
帯電部材は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。帯電部材として、例えば、導電性又は半導電性のローラ、ブラシ、フィルム、ゴムブレードなどを備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロンなどのコロナ放電を利用した非接触帯電器などが挙げられる。
【0412】
帯電は、例えば、帯電部材を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
【0413】
帯電部材の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシなど、どのような形態であってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
【0414】
帯電部材としては、接触式の帯電部材に限定されるものではないが、帯電部材から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られるので、接触式の帯電部材を用いることが好ましい。
【0415】
露光部材は、帯電部材により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。露光部材としては、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系などの各種露光部材などが挙げられる。
【0416】
露光部材に用いられる光源は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。露光部材に用いられる光源としては、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般などが挙げられる。
【0417】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0418】
露光は、例えば、露光部材を用いて静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
【0419】
なお、本実施形態においては、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0420】
現像手段は、静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像して可視像であるトナー像を形成する、トナーを備える現像手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0421】
現像工程は、静電潜像担持体に形成された静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像であるトナー像を形成する工程であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の画像形成装置を構成する現像手段により行うことができる。
【0422】
現像手段としては、トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、内部に固定された磁界発生手段を有し、かつ表面にトナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0423】
上述の画像形成装置におけるその他の手段としては、例えば、転写手段、定着手段、クリーニング手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
【0424】
上述の画像形成方法におけるその他の工程としては、例えば、転写工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程、リサイクル工程、制御工程などが挙げられる。
【0425】
転写手段は、可視像を記録媒体に転写する手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、該複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。
【0426】
転写工程としては、可視像を記録媒体に転写する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。
【0427】
転写工程は、例えば、可視像を、転写帯電器を用いて感光体を帯電することにより行うことができ、上述の画像形成設置を構成する転写手段により行うことができる。
【0428】
ここで、記録媒体上に二次転写される画像が複数色のトナーからなるカラー画像である場合に、転写手段により、中間転写体上に各色のトナーを順次重ね合わせて当該中間転写体上に画像を形成し、中間転写手段により、当該中間転写体上の画像を記録媒体上に一括で二次転写する構成とすることができる。
【0429】
なお、中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルトなどが好適に挙げられる。
【0430】
転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、感光体上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。転写器としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器などが挙げられる。
【0431】
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベースなども用いることができる。
【0432】
定着手段は、記録媒体に転写された転写像を定着させる手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。定着手段としては、例えば、公知の加熱加圧部材が好ましい。加熱加圧部材としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせなどが挙げられる。
【0433】
定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着させる工程であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。定着工程としては、例えば、各色のトナーに対し記録媒体に転写するごとに行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0434】
定着工程は、上述の画像形成装置を構成する定着手段により行うことができる。
【0435】
加熱加圧部材における加熱は、80℃~200℃が好ましい。
【0436】
なお、本実施形態においては、目的に応じて、定着手段とともにあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0437】
定着工程における面圧は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm2~80N/cm2であることが好ましい。
【0438】
クリーニング手段は、感光体上に残留するトナーを除去できる手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。クリーニング手段としては、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
【0439】
クリーニング工程は、感光体上に残留するトナーを除去できる工程であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。クリーニング工程としては、例えば、上述の画像形成装置を構成するクリーニング手段により行うことができる。
【0440】
除電手段としては、感光体に対し除電バイアスを印加して除電する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除電ランプなどが挙げられる。
【0441】
除電工程は、感光体に対し除電バイアスを印加して除電する工程であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。除電工程としては、例えば、上述の画像形成装置を構成する除電手段により行うことができる。
【0442】
リサイクル手段としては、クリーニング工程により除去したトナーを現像装置にリサイクルさせる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の搬送手段などが挙げられる。
【0443】
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像装置にリサイクルさせる工程であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の画像形成装置を構成するリサイクル手段により行うことができる。
【0444】
本実施形態の画像形成装置の一例として本実施形態の画像形成方法を実施する装置を
図3に示す。本実施形態の画像形成装置としては、プリンタが例として示されているが、画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、複合機などのトナーを用いて画像を形成することが可能であれば、特に限定されない。
【0445】
本実施形態の画像形成装置は、給紙部210と、搬送部220と、作像部230と、転写部240と、定着器250とを備えている。
【0446】
給紙部210は、給紙される紙Pが積載された給紙カセット211と、給紙カセット211に積載された紙Pを一枚ずつ給紙する給紙ローラ212を備えている。
【0447】
搬送部220は、ローラ221と、一対のタイミングローラ222と、排紙ローラ223とを備えている。ローラ221は、給紙ローラ212により給紙された紙Pを転写部240の方向へ搬送する。一対のタイミングローラ222は、ローラ221により搬送された紙Pの先端部を挟み込んで待機し、紙を所定のタイミングで転写部240に送り出す。排紙ローラ223、カラートナー像が定着した紙Pを排紙トレイ224に排出する。
【0448】
作像部230は、
図3に示すように、所定の間隔をおいて、左方から右方に向かって順に、画像形成ユニットYと、画像形成ユニットCと、画像形成ユニットMと、画像形成ユニットKと、露光器233を備えている。
【0449】
画像形成ユニットYは、イエロートナーを有した現像剤を用いて画像を形成する。画像形成ユニットCは、シアントナーを有した現像剤を用いる。画像形成ユニットMは、マゼンタトナーを有した現像剤を用い。画像形成ユニットKは、ブラックトナーを有した現像剤を用いる。
【0450】
なお、画像形成ユニット(Y,C,M,K)のうち、任意の画像形成ユニットを示す場合には、画像形成ユニットという。
【0451】
また、現像剤は、トナーとキャリアを有する。4つの画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、それぞれに用いられる現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同一である。
【0452】
画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、
図3中、時計回りに回転可能に設けられている。画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)と、帯電器(232Y,232C,232M,232K)と、現像器(180Y,180C,180M,180K)と、清掃器(236Y,236C,236M,236K)とを備えている。
【0453】
感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)は、静電潜像及びトナー像が形成される。帯電器(232Y,232C,232M,232K)は、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)の表面を一様に帯電させる。
【0454】
現像器(180Y,180C,180M,180K)は、露光器233により感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)の表面に形成された静電潜像を各色のトナーを用いてトナー像に現像する。清掃器(236Y,236C,236M,236K)は、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)の表面に残ったトナーを除去する。
【0455】
また、画像形成ユニット(Y,C,M,K)は、トナーカートリッジ(234Y,234C,234M,234K)と、サブホッパ(160Y,160C,160M,160K)と、を備えている。
【0456】
トナーカートリッジ(234Y,234C,234M,234K)は、各色のトナーを収容する。サブホッパ(160Y,160C,160M,160K)は、トナーカートリッジ(234Y,234C,234M,234K)から供給されたトナーを補給するためのものである。
【0457】
トナーカートリッジ234に収容されたトナーは、吸引ポンプ(図示せず)により排出され、供給管(図示せず)を経由してサブホッパ160に供給される。サブホッパ160は、トナーカートリッジ234から供給されたトナーを搬送して、現像器180に補給する。現像器180は、サブホッパ160により補給されたトナーを用いて、感光体ドラム231上に形成された静電潜像を現像する。
【0458】
なお、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)のうち、任意の感光体ドラムを示す場合には、感光体ドラム231という。
【0459】
また、帯電器(232Y,232C,232M,232K)のうち、任意の帯電器を示す場合には帯電器232という。
【0460】
さらに、トナーカートリッジ(234Y,234C,234M,234K)のうち、任意のトナーカートリッジを示す場合にはトナーカートリッジ234という。
【0461】
また、サブホッパ(160Y,160C,160M,160K)のうち、任意のサブホッパを示す場合にはサブホッパ160という。
【0462】
さらに、現像器(180Y,180C,180M,180K)のうち、任意の現像器を示す場合には現像器180という。
【0463】
また、清掃器(236Y,236C,236M,236K)のうち、任意の清掃器を示す場合には清掃器236という。
【0464】
感光体ドラム231としては、特に限定されないが、アモルファスシリコン感光体ドラム、セレン感光体ドラムなどの無機感光体ドラム、ポリシラン感光体ドラム、フタロポリメチン感光体ドラムなどの有機感光体ドラムなどが挙げられる。中でも、長寿命の点で、アモルファスシリコン感光体ドラムが好ましい。
【0465】
帯電器232は、前述も静電潜像形成手段として静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材の一例であり、上述の接触帯電器、非接触帯電器などを用いることができる。
【0466】
帯電器232は、感光体ドラム231に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することにより、感光体ドラム231の表面を帯電することが好ましい。
【0467】
また、帯電器232は、ギャップテープを介して感光体ドラム231に非接触に近接配置された帯電ローラであり、直流電圧及び交流電圧を帯電ローラに重畳印加することにより、感光体ドラム231の表面を帯電させることが好ましい。
【0468】
露光器233は、画像情報に基づいて光源233aから発せられたレーザ光Lを、モータにより回転駆動されるポリゴンミラー233b(233bY,233bC,233bM,233bK)により反射させて感光体ドラム231に照射する。
【0469】
露光器233は、帯電器232により帯電した感光体ドラム231の表面に、形成すべき像様に露光することが可能であれば、特に限定されない。露光器233としては、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系などの各種露光器が挙げられる。
【0470】
なお、感光体ドラム231の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0471】
現像器180は、現像剤を用いて現像することが可能であれば、特に限定されない。現像器180としては、現像剤を収容し、静電潜像に現像剤を接触又は非接触的に付与する現像器が好ましく、現像剤入り容器を備えた現像器がさらに好ましい。
【0472】
現像器180は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。
【0473】
清掃器236は、感光体ドラム231の表面に残留したトナーを除去することが可能であれば、特に限定されない。清掃器236としては、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどの清掃部材を備えた清掃器が好ましい。
【0474】
清掃器236によりトナーが除去された感光体ドラム231は、除電されて、残存電位が除去されることにより、感光体ドラム231上で行われる一連の作像プロセスが終了する。
【0475】
転写部240は、駆動ローラ241、従動ローラ242、中間転写ベルト243、一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)、二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246を備えている。
【0476】
駆動ローラ241は、画像形成ユニット(Y)のトナーカートリッジ234Y側に設けれている。従動ローラ242は、画像形成ユニット(K)のトナーカートリッジ234K側に設けれている。
【0477】
中間転写ベルト243は、駆動ローラ241の駆動に伴い、
図3中、反時計回りに回転することが可能に構成されている。一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)は、中間転写ベルト243を挟んで、感光体ドラム231に対向して設けられている。二次対向ローラ245及び二次転写ローラ246は、トナー像の紙への転写位置において中間転写ベルト243を挟んで対向して設けられている。
【0478】
なお、一次転写ローラ(244Y,244C,244M,244K)のうち、任意の一次転写ローラを示す場合には、一次転写ローラ244という。
【0479】
一次転写ローラ244には、トナーの極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される。一方、中間転写ベルト243は、一次転写ローラ244及び感光体ドラム231の間に挟まれて一次転写ニップが形成される。
【0480】
これにより、感光体ドラム231の表面に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト243上に転写(一次転写)される。この場合、中間転写ベルト243が、図中、矢印方向に回転することにより、感光体ドラム(231Y,231C,231M,231K)上に形成された各色のトナー像が、中間転写ベルト243上に順次転写されてカラートナー像が形成される。
【0481】
転写部240の二次転写ローラ246には、二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写ニップで、二次転写ローラ246及び二次対向ローラ245の間に挟まれた用紙Pに、中間転写ベルト243上に形成されたカラートナー像が転写(二次転写)される。
【0482】
定着器250は、ヒータが内部に設けられ、紙Pを加熱する定着ベルト251と、定着ベルト251に対して、回転可能に加圧することによりニップを形成する加圧ローラ252と、を備えている。これにより、紙P上のカラートナー像に熱と圧力が印加されて、カラートナー像が定着する。カラートナー像が定着した紙Pは、排紙ローラ223により排紙トレイ224に排紙され、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0483】
本実施形態に係る画像形成装置では、上述のように、トナー収容ユニットを有することで、上述のトナー収容ユニットで得られる効果が得られる。具体的には、本実施形態の画像形成装置を用いることで、上述のトナーが収容されたトナー収容ユニットが画像形成装置に装着され、上述のトナーを用いて画像形成が行われるため、優れた低温定着性とクリーニング性を両立することができる。
【0484】
また、本実施形態に係る画像形成方法では、上述のように、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、静電潜像担持体上に形成されたトナー像を媒体に転写する転写工程と、媒体に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を有する。
【0485】
これにより、本実施形態に係る画像形成方法では、上述のトナーを用いて画像形成が行われるため、優れた低温定着性とクリーニング性を両立することができる。
【実施例0486】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。また、各種の試験及び評価は、下記の方法に従う。
【0487】
(製造例1)
〔非結晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)樹脂の合成〕
窒素導入管、脱水管、撹拌器、及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物529質量部、テレフタル酸208質量部、アジピン酸46質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧下、230℃で7時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧下で4時間反応させた後、反応容器に無水トリメリット酸44質量部を入れ、常圧下、180℃で2時間反応させて、[非結晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)樹脂]を得た。
【0488】
(製造例2)
〔結晶性ポリエステル樹脂の合成〕
窒素導入管、脱水管、撹拌器、及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,6-ヘキサンジオール2,300質量部、フマル酸2,530質量部、無水トリメリット酸291質量部、及びハイドロキノン4.9質量部を入れ、160℃で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させ、更に8.3kPaにて1時間反応させて、[結晶性ポリエステル樹脂]を得た。
【0489】
(製造例3)
〔ポリエステルプレポリマーの合成〕
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81質量部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応し、更に10mmHg~15mmHgの減圧で5時間反応させて、[中間体ポリエステル]を得た。
【0490】
[中間体ポリエステル]は、数平均分子量Mnが2,100、重量平均分子量Mwが9,500、ガラス転移温度Tgが55℃、酸価が0.5KOHmg/g、水酸基価が51KOHmg/gであった。次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル]410質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を入れ、100℃で5時間反応させて[プレポリマー]を得た。
【0491】
(製造例4)
〔樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W0-1)の製造〕
撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水3710質量部、及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロン(登録商標)KH-1025)200質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。
【0492】
均一化したものを加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン450質量部、ブチルアクリレート250質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
【0493】
滴下後、75℃で4時間熟成させることでモノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a1)を含む樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W0-1)を得た。
【0494】
樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W0-1)中の微粒子の体積平均粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(LB)で測定したところ、15nmであった。樹脂微粒子(A-1)の水性分散液(W0-1)の一部を乾燥して樹脂(a1-1)を単離した。該樹脂分のガラス転移温度(Tg)は53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0495】
(製造例5)
〔樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W0-2)の製造〕
撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水3760質量部、ポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)150質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。
【0496】
均一化したものを加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン430質量部、ブチルアクリレート270質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
【0497】
滴下後、75℃で4時間熟成させることでモノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a2)を含む樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W0-2)を得た。樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W0-2)中の微粒子の体積平均粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、30nmであった。
【0498】
樹脂微粒子(A-2)の水性分散液(W0-2)の一部を乾燥して樹脂(a2)を単離した。該樹脂分のガラス転移温度(Tg)は53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0499】
(製造例6)
〔樹脂微粒子(A-3)の水性分散液(W0-3)の製造〕
撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水3810質量部、及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム(第一工業製薬社製、アクアロンKH-1025)100質量部を仕込み、200回転/分で撹拌して均一化した。
【0500】
均一化したものを加熱して系内温度75℃まで昇温させた後、10%過硫酸アンモニウム水溶液90質量部を加えてから、スチレン400質量部、ブチルアクリレート300質量部、及びメタクリル酸300質量部からなる混合液を4時間かけて滴下した。
【0501】
滴下後、75℃で4時間熟成させることでモノマー及びポリオキシエチレン-1-(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウムが共重合したポリマーである樹脂(a3)を含む樹脂微粒子(A-3)の水性分散液(W0-3)を得た。樹脂微粒子(A-3)の水性分散液(W0-3)中の微粒子の体積平均粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、45nmであった。
【0502】
樹脂微粒子(A-3)の水性分散液(W0-3)の一部を乾燥して樹脂(a3)を単離した。該樹脂分のガラス転移温度(Tg)は53℃、酸価は195mgKOH/gであった。
【0503】
(製造例7)
〔樹脂微粒子(B-1)の水性分散液(W-1)の製造〕
次に、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水性分散液(W0-1)を667質量部、及び水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油社製、パーブチル(登録商標)H)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート17.5質量部、2エチルへキシルアクリレート5.8質量部及び1%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
【0504】
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-1)中の樹脂微粒子をシードとしてモノマーが共重合したポリマーである樹脂(a1-1)と樹脂(a1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-1)の水性分散液(W-1)を得た。水性分散液(W-1)中の微粒子の体積平均粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、17nmであった。
【0505】
水性分散液(W-1)が樹脂(a1-1)と樹脂(a1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-1)を含むことは以下のようにして確認した。
【0506】
具体的には、ゼラチン(森永乳業社製、クックゼラチン(登録商標))2質量部を95℃~100℃に温めた水15質量部に加えて溶解させ、空冷して40℃となったゼラチン水溶液に水性分散液(W-1)を1:1の質量比率で混合し、よく撹拌した後、10℃で1時間冷やすことで硬化させたゲルを作製した。
【0507】
このゲルをウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムス社製、ウルトラミクロトームUC7、FC7)において、-80℃に温調しながら厚さ80nmの切片を作製した。その後、得られた切片を2%四酸化ルテニウム水溶液で5分間気相染色を行ってから透過型電子顕微鏡(日立テクノロジーズ社製、H-7100)で観察を行うことにより確認した。
【0508】
(製造例8)
〔樹脂微粒子(B-2)の水性分散液(W-2)の製造〕
次に、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水性分散液(W0-3)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油社製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
【0509】
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-3)中の樹脂微粒子をシードとしてモノマーが共重合したポリマーである樹脂(a3-1)と樹脂(a3)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-2)の微粒子分散液(W-2)を得た。水性分散液(W-2)中の微粒子の体積平均粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、52nmであった。
【0510】
水性分散液(W-4)が樹脂(a3-1)と樹脂(a3)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-5)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0511】
(製造例9)
〔樹脂微粒子(B-3)の水性分散液(W-3)の製造〕
次に、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水性分散液(W0-1)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油社製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、2エチルへキシルアクリレート23.3質量部、及び1%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
【0512】
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-1)中の樹脂微粒子をシードとしてモノマーが共重合したポリマーである樹脂(a1-3)と樹脂(a1)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-3)の微粒子分散液(W-3)を得た。水性分散液(W-3)中の微粒子の体積平均粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、17nmであった。
【0513】
水性分散液(W-3)が樹脂(a1)と樹脂(a1-3)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-3)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0514】
(製造例10)
〔樹脂微粒子(B-4)の水性分散液(W-4)の製造〕
次に、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水性分散液(W0-2)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油社製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート17.5質量部、2エチルへキシルアクリレート5.8質量部、及び1%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
【0515】
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-2)中の樹脂微粒子をシードとしてモノマーが共重合したポリマーである樹脂(a2-1)と樹脂(a2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-4)の微粒子分散液(W-4)を得た。水性分散液(W-4)中の微粒子の体積平均粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、34nmであった。
【0516】
水性分散液(W-4)が樹脂(a2-1)と樹脂(a2)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-4)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0517】
(製造例11)
〔樹脂微粒子(B-5)の水性分散液(W-5)の製造〕
次に、撹拌機、加熱冷却装置、及び温度計を備えた反応容器に、水性分散液(W0-3)を667質量部、水248質量部を仕込み、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド(日油社製、パーブチルH)0.267質量部を加えてから加熱して系内温度を70℃まで昇温させた後、スチレン43.3質量部、ブチルアクリレート23.3質量部、及び1%アスコルビン酸水溶液18.0質量部を2時間かけて滴下した。
【0518】
滴下後、70℃で4時間熟成させることで(W0-3)中の樹脂微粒子をシードとしてモノマーが共重合したポリマーである樹脂(a3-1)と樹脂(a3)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-5)の微粒子分散液(W-5)を得た。水性分散液(W-5)中の微粒子の体積平均粒径は、製造例4と同様にして測定したところ、52nmであった。
【0519】
水性分散液(W-4)が樹脂(a3-1)と樹脂(a3)とを同一粒子内に構成成分として含む樹脂微粒子(B-5)を含むことを製造例7と同様の方法により確認した。
【0520】
(製造例12)
〔結晶性を有するポリエステル樹脂微粒子分散液(ポリエステル粒子分散液)の作製〕
ビーカー内にポリエステル樹脂Aを20質量部、酢酸エチル70質量部、及びメチルエチルケトン30質量部を入れ、TKホモミキサー(プライミクス社製)を用いて10000rpmで撹拌し、均一に溶解させてポリエステル樹脂溶液(ポリエステル粒子分散液)を調製した。
【0521】
一方、イオン交換水450質量部に分散剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.5%とポリビニルアルコール0.5%を溶解し水系媒体を調製し、ポリエステル樹脂溶液を、TKホモミキサーを用いて上記水系媒体中に懸濁させてO/W型エマルジョンを形成した。
【0522】
このとき、TKホモミキサーの回転数は12000rpmで30分間撹拌を行った。その後、TKホモミキサーの回転数200rpmで撹拌しながら加熱して混合溶剤を除去し、体積平均粒径110nmの[ポリエステル粒子分散液]を得た。
【0523】
(製造例13)
〔樹脂微粒子B´の水性分散液の製造〕
撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(三洋化成工業社製、エレミノール(登録商標)RS-30)11質量部、スチレン138質量部、メタクリル酸138質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分間で15分間撹拌し、白色の乳濁液を調製した。これを加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。
【0524】
更に、1%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[水性分散液B´]を得た。
【0525】
(実施例1)
〔マスターバッチ(MB)の調製〕
水1,200質量部、カーボンブラック(エボニックデクサ社製、PRINTEX(登録商標)35、DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5)540質量部、及び[非結晶性ポリエステル樹脂]1,200質量部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)で混合し、2本ロールを用いて混合物を150℃で30分間混練後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕して、[マスターバッチ1]を得た。
【0526】
〔ワックス分散液の作製〕
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に離型剤1としてパラフィンワックス(日本精鑞社製、HNP-9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8)50質量部、及び酢酸エチル450質量部を仕込み、撹拌下、80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(アイメックス社製、ウルトラビスコミル)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒で、直径0.5mmジルコニアビーズ80体積%を充填し、3パスの条件で、分散を行い[ワックス分散液1]を得た。
【0527】
〔結晶性ポリエステル樹脂分散液の作製〕
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に、製造例1の[非結晶性ポリエステル樹脂]50質量部、及び酢酸エチル450質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(アイメックス社製、ウルトラビスコミル)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]を得た。
【0528】
〔油相の調製〕
温度計、及び撹拌機を装備した別の容器に、製造例1の[非結晶性ポリエステル樹脂]78質量部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液1]70質量部、[ワックス分散液1]25質量部、及び[マスターバッチ1]16質量部を入れ、固形分濃度が30%になるように酢酸エチルを加え、撹拌して十分に溶解させた。
【0529】
次に、TK式ホモミキサー(プライミクス社製)を用いて回転数8,000rpmで撹拌し、均一に溶解、分散させた。更に、イソホロンジアミン(IPDA)を、IPDAのアミノ基と製造例3の[中間体ポリエステル]のイソシアネート基のモル比(NH2/NCO)が、0.98となる量を入れ、TK式ホモミキサーを用いて回転数8,000rpmで15秒間撹拌し、次いで、50%酢酸エチル溶液に調製した[反応性前駆体a]30質量部を加え、TK式ホモミキサーを用いて回転数8,000rpmで30秒間撹拌し、[油相1]を得た。
【0530】
〔水相の調製〕
撹拌機、及び温度計をセットした容器内で、イオン交換水75質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム1質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(三洋化成工業社製、エレミノール(登録商標)MON-7)16質量部、及び酢酸エチル5質量部を混合、撹拌し、更に[水性分散液(W0-1)]の固形分1.2質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分1.2質量部相当量を加えて水相溶液を作製した。これを[水相1]とした。
【0531】
〔乳化及び脱溶剤〕
[油相1]が入った容器に、[水相1]50質量部を加え、TKホモミキサーで、回転数8,000rpmで2分間混合撹拌し、その後、20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。次に、撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0532】
〔洗浄及び乾燥〕
[分散スラリー1]100質量部を減圧濾過した後、以下の操作を行った。
【0533】
(1)濾過ケーキにイオン交換水100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2)(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3)(2)の濾過ケーキに10%塩酸100質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4)(3)の濾過ケーキにイオン交換水300質量部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(5)(1)~(4)の操作を2回行い[濾過ケーキ]を得た。
【0534】
[濾過ケーキ]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩い[トナー母体粒子1]を得た。
【0535】
〔外添処理〕
得られた[トナー母体粒子1]100質量部に対して、外添剤としてコロイダルシリカ(日本アエロジル製、アエロジルR972)1重量部をサンプルミルにて混合して、外添処理後の[トナー1]を得た。
【0536】
(実施例2)
実施例1の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W0-1)]の固形分1.2質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分1.2質量部相当量を[水性分散液(W0-1)]の固形分0.8質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分1.6質量部相当量に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子2]を得た。得られた[トナー母体粒子2]を用い、実施例1と同様にして、[トナー2]を作製した。
【0537】
(実施例3)
実施例1の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を[水性分散液(W-2)]の固形分2.4質量部相当量に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子3]を得た。得られた[トナー母体粒子3]を用い、実施例1と同様にして、[トナー3]を作製した。
【0538】
(実施例4)
実施例1の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W0-1)]の固形分1.2質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分1.2質量部相当量を[水性分散液(W-3)]の固形分2.4質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子4]を得た。得られた[トナー母体粒子4]を用い、実施例1と同様にして、[トナー4]を作製した。
【0539】
(実施例5)
実施例1の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W0-1)]の固形分1.2質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分1.2質量部相当量を[水性分散液(W-4)]の固形分2.4質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子5]を得た。得られた[トナー母体粒子5]を用い、実施例1と同様にして、[トナー5]を作製した。
【0540】
(実施例6)
実施例1の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を[ポリエステル粒子分散液]の固形分2.4質量部相当量に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子6]を得た。得られた[トナー母体粒子6]を用い、実施例1と同様にして、[トナー6]を作製した。
【0541】
(実施例7)
実施例1の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を[水性分散液B´]の固形分2.4質量部相当量に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子7]を得た。得られた[トナー母体粒子7]を用い、実施例1と同様にして、[トナー7]を作製した。
【0542】
(比較例1)
実施例1の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を[水性分散液(W-5)]の固形分2.4質量部相当量に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子10]を得た。得られた[トナー母体粒子8]を用い、実施例1と同様にして、[トナー8]を作製した。
【0543】
(比較例2)
実施例1の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W0-1)]の固形分1.6質量部および[水性分散液(W-1)]の固形分0.8質量部相当量を[水性分散液(W0-1)]の固形分1.9質量部および[水性分散液(W-2)]の固形分0.5質量部相当量に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子9]を得た。得られた[トナー母体粒子9]を用い、実施例1と同様にして、[トナー9]を作製した。
【0544】
(比較例3)
実施例4の〔水相の調製〕において、[水性分散液(W-3)]の固形分2.4質量部相当量を[水性分散液(W-3)]の固形分4.8質量部相当量に変えた以外は、実施例1と同様にして、[トナー母体粒子10]を得た。得られた[トナー母体粒子10]を用い、実施例1と同様にして、[トナー10]を作製した。
【0545】
〔キャリアの作製〕
トルエン100質量部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100質量部、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5質量部、及びカーボンブラック10質量部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。
【0546】
流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000質量部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、[キャリア]を作製した。
【0547】
〔現像剤の作製〕
ボールミルを用いて、各[トナー]5質量部と[キャリア]95質量部とを混合し、各[現像剤]を作製した。
【0548】
次に、得られた各トナー及び各現像剤を用い、以下のようにして諸特性を評価した。結果を表1に示した。
【0549】
〔凝集体の占有率〕
凝集体の占有率は、上述の式(1)を用いる方法により、算出した。
【0550】
〔樹脂微粒子間距離の標準偏差〕
樹脂微粒子(有機微粒子)間距離の標準偏差は、上述の式(2)を用いる方法により、算出した。
【0551】
〔低温定着性〕
複合樹脂粒子を紙面上に0.8mg/cm2となるように均一に載せる。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンタを用いる。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるものであれば、他の方法を用いてもよい。この紙を加圧ローラに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
【0552】
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
【0553】
[コールドオフセット評価基準]
A:定着下限温度が130℃以下
B:定着下限温度が130℃より大きく135℃以下
C:定着下限温度が135℃より大きく140℃以下
D:定着下限温度が140℃より大きい
【0554】
〔低付着力〕
各トナーの160kN/m2圧縮時の二粒子間力(Fp)は、粉体層の圧縮・引張特性計測装置(ホソカワミクロン社製、アグロボット(登録商標))を用いて低付着力を測定する。
【0555】
低付着力は、下記条件下で上下2分割の円筒セル内に一定量の各トナーを充填し、各トナーを160kN/m2の圧力下で保持した後、上部セルを持ち上げて粉体層が破断されたときの最大引張破断力、圧縮時の粉体層高さ、セル内径、トナー平均粒径、トナー真密度、及びトナー量から算出される。
【0556】
具体的には、トナー量:8.00g±0.02g、環境温度:25±2℃、湿度:30±5%RH、セル内径:25mm、セル温度:25℃、バネ線径:1.0mm、圧縮速度:0.1mm/sec、圧縮荷重:8kg(加圧力:160kN/m2)、圧縮保持時間:60sec、引張速度:0.6mm/sec、引張サンプリング開始時間:0sec、引張サンプリング時間:25secの条件にて測定を行い、付属のアプリケーションソフトにより算出された二粒子間力(Fp)を、トナーの160kN/m2圧縮時の二粒子間力(Fp)とし、下記の基準で評価した。
【0557】
なお、測定は、トナーを、23℃、53%RHで24時間調湿して行った。
【0558】
[評価基準]
A:優 Fp≦180
B:良 180<Fp≦250
C:可 250<Fp
D:不良 破断
【0559】
【0560】
表1の結果から、実施例1~7は、低温定着性、低付着力のいずれも優れた性能を示すことがわかった。
【0561】
一方で、比較例1は、トナー母体表面上の凝集体量が少なく、低付着力が劣るものであり、凝集体過多により外添剤の遊離量を適正化できないため、クリーニング性は不良であった。
【0562】
また、比較例2は、トナー母体表面上の凝集体量が少なく、スペーサー効果は弱いため、付着力が劣るものであった。さらに、比較例2は、標準偏差が大きすぎるため、トナー母体が不均一に露出し、低付着力が劣るものであった。
【0563】
また、比較例3は、凝集体の平均円形度が小さすぎて、低温定着性が劣るものであった。さらに、比較例3は、凝集体の体積平均粒径が大きすぎて、低付着力が劣るものであった。
【0564】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。