(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012191
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】クリーンルーム間の搬送物梱包用の梱包材、梱包方法及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20230118BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
H01L21/68 T
B65D85/30 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115692
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖二
【テーマコード(参考)】
3E096
5F131
【Fターム(参考)】
3E096AA14
3E096BA16
3E096CB03
3E096DC02
3E096FA02
3E096FA03
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3E096FA22
3E096GA02
5F131AA02
5F131CA12
5F131CA32
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5F131DA23
5F131DA24
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5F131GA14
5F131GA15
5F131GA52
5F131GA53
5F131GA92
5F131JA04
5F131JA16
5F131JA26
5F131KA37
(57)【要約】
【課題】FOUP又はFOSBである搬送物の清浄度を高く保ったまま、クリーンルーム間において搬送物を搬送することを低コストで可能とする梱包材、梱包方法及び搬送方法を提供すること。
【解決手段】半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、FOUP又はFOSBである搬送物を搬送するにあたり、前記搬送物を梱包するための梱包材であって、防塵性及び防湿性を有する無塵布を含むものであることを特徴とするクリーンルーム間の搬送物梱包用の梱包材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、FOUP又はFOSBである搬送物を搬送するにあたり、前記搬送物を梱包するための梱包材であって、防塵性及び防湿性を有する無塵布を含むものであることを特徴とするクリーンルーム間の搬送物梱包用の梱包材。
【請求項2】
半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、FOUP又はFOSBである搬送物を搬送するにあたり、前記搬送物を防塵性及び防湿性を有する無塵布を含む梱包材を用いて梱包することを特徴とするクリーンルーム間の搬送物の梱包方法。
【請求項3】
半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、搬送物を搬送する搬送方法であって、
前記搬送物を請求項2に記載の梱包方法により梱包し、該梱包した搬送物を前記クリーンルーム間で搬送することを特徴とするクリーンルーム間の搬送物の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム間で搬送するFOUP又はFOSBを梱包する梱包材(カバー)、梱包方法及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工場において、例えば半導体ウェーハを製造する工程においては、パーティクルなどのごみ対策、また金属不純物の汚染については厳重な管理がなされている。これより最終的に検査や出荷する直前に行う包装、梱包工程は、パーティクルや金属汚染が厳重に管理されたクリーンルームで行う必要がある。
【0003】
これらクリーンルームは、パーティクルや金属汚染が厳重に管理されており、クリーンルームで作業する作業者は、特別な無塵布で作製された、無塵衣(クリーンスーツ)を着用し、口、鼻をマスクで覆い、手には樹脂製の手袋を着用し、人体からの発塵を最小限に抑える対策を行い、最も厳しい作業エリアでは、クリーンルームに入る人数を制限、管理し、作業エリアについても、立ち入る人数を制限することで、パーティクル、金属汚染の管理を行っている。また、クリーンルームに持ち込む物品(ペンや紙)も専用のものを使用し、PCやプリンターについても発塵対策を行っている。
【0004】
半導体工場において、工程と工程とは必ずしもクリーンルームとして繋がっているとは限らず、エリアが異なることで部屋(クリーンルーム)間を跨いだり、階が異なることで階(クリーンルーム)間を跨いだり、建屋(クリーンルーム)間を跨いで、各種物品の搬送を行っている。例えば半導体ウェーハの場合には、工程間をFOUP(Front Opening Unified Pod)に収納して搬送を行っており、FOUPの寸法や材質はSEMI(Semiconductor Equipment and Material International)規格によって詳細に規定されている。また、半導体材料メーカーから半導体デバイスメーカーに材料となる半導体ウェーハを出荷、輸送する場合には、FOSB(Front Shipping Box)に収納して搬送、輸送を行っており、FOSBの詳細もSEMI(Semiconductor Equipment and Material International)規格によって詳細に規定されている。
【0005】
半導体工場内のクリーンルーム間でFOUPやFOSBを搬送する場合には、クリーントンネルやクリーンエレベーターがある場合には特に問題が無いが、クリーントンネルやクリーンエレベーターが無い場合や、建屋(クリーンルーム)間を移動する場合は、FOUPやFOSBを樹脂製の袋に包装する必要がある。
【0006】
特許文献1には、クリーンルーム内に搬入する搬入物、具体的には半導体デバイスの製造装置の梱包方法及び梱包材について記載されている。
【0007】
特許文献2には、クリーンルーム内で作業する際に着用する、無塵衣について記載されている。
【0008】
特許文献3には、クリーンルーム内にて配管、配線工事を行う際に使用する仮設防塵テント及び工事方法が記載されている。
【0009】
特許文献4には、クリーンルーム内に搬送物を搬送する際の2重クリーン搬送キャリアが記載されている。
【0010】
特許文献5には、クリーンルーム内で着用する無塵衣に使用する繊維及び無塵衣の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11-208708号公報
【特許文献2】特開2001-303314号公報
【特許文献3】特開2003-004274号公報
【特許文献4】特開2004-150674号公報
【特許文献5】特開2014-070305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
半導体工場におけるクリーンルーム間のFOUP又はFOSBである搬送物の搬送において、これまでは、樹脂製の袋などで包装し、クリーンルームから一般外気の環境を経由して、クリーンルーム内に搬送、輸送を行っていた。これら樹脂製の袋は、クリーンルーム内で発塵しない樹脂材料をシート状に加工し、袋型に成形したもので、袋の開口部を加熱シール機によって搬送物を密閉シールすることにより包装用の袋としている。クリーンルーム外の一般外気の環境でも、FOUP又はFOSBである搬送物は、樹脂製の袋に密閉包装されていることより、外気に含まれるパーティクル(粉塵)や金属不純物などの埃から保護された状態で搬送される。また、さらに厳密に管理を行う場合には、これら樹脂の袋を2重に包装し、クリーンルームに隣接する、クリーン(清浄)度がクリーンルームより低い部屋(クッションルーム)で、2重包装の1重(外側の包装)を破り、内側の1重の包装された搬送物をクリーンルームに持ち込み、このクリーンルーム内で搬送物を樹脂製の袋から取り出す方法を行っていた。この場合、搬送前のクリーンルームにおいて、1重以上の包装を行い、搬送後のクリーンルームにてこれら包装を破って搬送物を取り出す作業が必要である。また、包装材として1重以上の樹脂製の袋が必要であり、クリーンルームに持ち込むため、発塵量が低い材料や外気の湿度の影響を受けない透湿及び吸湿の両方を防ぐ防湿性の材料とするか、低発塵性及び防湿性を発揮するように塗付や積層などの特殊加工を行った材料を用いる必要があるが、これらは非常に高価な材料となっている。ここで用いる包装材は、非常に高価であるにもかかわらず、上記の通り搬送物を取り出す際に破るので、使用後に廃棄することになる。また、これら樹脂製の袋に搬送物を入れた後に、袋の開口部を加熱シールする装置や、これらをシールする作業エリアの確保など、高コスト化が問題となっていた。さらに、クリーンルーム間をつなげるためにクリーントンネルやクリーンエレベーターを設けることもできるが、さらに多額の設備投資が掛かる問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、FOUP又はFOSBである搬送物の清浄度を高く保ったまま、クリーンルーム間において搬送物を搬送することを低コストで可能とする梱包材、梱包方法及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、FOUP又はFOSBである搬送物を搬送するにあたり、前記搬送物を梱包するための梱包材であって、防塵性及び防湿性を有する無塵布を含むものであることを特徴とするクリーンルーム間の搬送物梱包用の梱包材を提供する。
【0015】
防塵性及び防湿性を有する無塵布で作製された本発明の梱包材は、FOUP又はFOSBである搬送物を発塵や外気に含まれるパーティクル(粉塵)や金属汚染物の埃や水分から守る梱包材(カバー)となることができる。それにより、本発明の梱包材をクリーンルーム間の搬送物梱包用の梱包材として使用することにより、FOUP又はFOSBである搬送物の清浄度を高く保ったまま、クリーンルーム間でFOUP又はFOSBを搬送することが可能となる。
【0016】
また、無塵布で作製された本発明の梱包材は、洗浄可能であり、塵埃にて汚れた場合には洗浄を行い、繰り返し使用が可能である。これより、これまで使用後に廃棄する樹脂製の包装用の袋にて包装していた資材や作業のコストの削減が可能となり、場合によってはクッションルームやエアーシャワーの設備についても削減が可能となる。
【0017】
つまり、本発明の梱包材であれば、FOUP又はFOSBである搬送物の清浄度を高く保ったまま、クリーンルーム間において搬送物を搬送することを低コストで可能とすることができる。
【0018】
また、本発明では、半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、FOUP又はFOSBである搬送物を搬送するにあたり、前記搬送物を防塵性及び防湿性を有する無塵布を含む梱包材を用いて梱包することを特徴とするクリーンルーム間の搬送物の梱包方法を提供する。
【0019】
本発明の梱包方法では、防塵性及び防湿性を有する無塵布で作製された梱包材を用いてFOUP又はFOSBである搬送物を梱包することにより、FOUP又はFOSBである搬送物を発塵や金属汚染物の埃や水分から守ることができる。このように梱包した搬送物を搬送することにより、FOUP又はFOSBである搬送物の清浄度を高く保ったまま、クリーンルーム間でFOUP又はFOSBを搬送することが可能となる。更に、無塵布で作製された本発明の梱包材は、洗浄可能であり、塵埃にて汚れた場合には洗浄を行い、繰り返し使用が可能である。
【0020】
つまり、本発明の梱包方法により梱包して搬送物を搬送すれば、FOUP又はFOSBである搬送物の清浄度を高く保ったまま、クリーンルーム間において搬送物を搬送することを低コストで可能とすることができる。
【0021】
また、本発明では、半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、搬送物を搬送する搬送方法であって、
前記搬送物を本発明の梱包方法により梱包し、該梱包した搬送物を前記クリーンルーム間で搬送することを特徴とするクリーンルーム間の搬送物の搬送方法を提供する。
【0022】
本発明の搬送方法では、本発明の梱包方法によりFOUP又はFOSBである搬送物を梱包し、この梱包した搬送物をクリーンルーム間で搬送するので、FOUP又はFOSBである搬送物の清浄度を高く保ったまま、クリーンルーム間でFOUP又はFOSBを搬送することが低コストで可能となる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、これまで使用していた、使い捨ての高価な樹脂製の包装材や包装装置、包装及び包装袋を破く作業者、作業エリアもしくは高価なクリーントンネルやクリーンエレベーターなどの設備を使用しなくとも、クリーンルーム間で、FOUP又はFOSBである搬送物を梱包し、外気に含まれるパーティクルや金属不純物を含む埃、水分などから保護して、搬送物の清浄度を高く保ったまま低コストで搬送できる梱包材(カバー)、このような梱包材を用いた梱包方法、さらに搬送方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の梱包材の一例及びその使用例を示す概略図である。
【
図2】本発明の搬送方法の一例を含む、ウェーハの出荷準備のフロー図である。
【
図3】本発明の搬送方法の一例の一部を説明する概略図である。
【
図4】梱包材無し搬送台車の一例を示す概略図である。
【
図5】実施例及び比較例における搬送前後のパーティクル個数の差分を示すグラフである。
【
図6】従来のウェーハの出荷準備のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述したように、FOUP又はFOSBである搬送物についてクリーンルーム間を搬送する場合には、搬送物を個別に包装するか、クリーントンネルやクリーンエレベーターなどのクリーンな空間を設置する必要があったが、多大なコストと作業員の手間が掛かっており、搬送物の高い清浄度を保ったまま簡易的に且つ低コストで搬送物を搬送できることが望まれている。
【0026】
そこで本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、FOUP又はFOSBである搬送物を梱包するための梱包材として、防塵性及び防湿性を有する無塵布を含むものを用いることにより、搬送物の高い清浄度を保ったまま、搬送物を簡易的に且つ低コストでクリーンルーム間を搬送できることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
即ち、本発明は、半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、FOUP又はFOSBである搬送物を搬送するにあたり、前記搬送物を梱包するための梱包材であって、防塵性及び防湿性を有する無塵布を含むものであることを特徴とするクリーンルーム間の搬送物梱包用の梱包材である。
【0028】
また、本発明は、半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、FOUP又はFOSBである搬送物を搬送するにあたり、前記搬送物を防塵性及び防湿性を有する無塵布を含む梱包材を用いて梱包することを特徴とするクリーンルーム間の搬送物の梱包方法である。
【0029】
また、本発明は、半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間において、搬送物を搬送する搬送方法であって、
前記搬送物を本発明の梱包方法により梱包し、該梱包した搬送物を前記クリーンルーム間で搬送することを特徴とするクリーンルーム間の搬送物の搬送方法である。
【0030】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[梱包材]
まず、
図1を参照しながら、本発明の梱包材の一例を説明する。
【0032】
図1では、FOSB3が、本発明の梱包材1で梱包された状態で、梱包材(カバー)付搬送台車4に載せられている。
【0033】
本発明の梱包材1は、防塵性及び防湿性を有する無塵布を含むものである。
図1に示す梱包材1は、主部の無塵布と、係止部材2とからなる。
【0034】
クリーンルーム内で人が作業する場合には、作業者は、発塵を極力まで低減した、無塵布によって作製した無塵作業衣を着用している。また、作業者が出した汗には塩化ナトリウムや塩化マグネシウムが含まれており、これらの汗が水蒸気となって無塵作業衣の外側に放出しないように、無塵作業衣に用いられる無塵布は、防塵布を透湿及び吸湿の両方を防ぐように防湿加工したものである。例えば、無塵作業衣は、防塵作業衣の内側に吸湿及び透湿を防ぐための防湿素材が塗付又は積層加工されている。これらの作用により、クリーンルーム内で人が作業しても、最低のパーティクル及び金属不純物の発塵に抑えることが出来る。
【0035】
FOUP又はFOSBである搬送物3を半導体工場の清浄雰囲気とされたクリーンルーム間で搬送する際に、無塵作業衣で使用されている無塵布で作製した本発明の梱包材(カバー)1を、搬送物3を発塵や金属汚染物の埃や水分から守る梱包材(カバー)とすることにより、FOUP又はFOSBである搬送物3の清浄度を高く保ったまま、クリーンルーム間を搬送することが可能となる。
【0036】
無塵布として、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアクリル系繊維にて布に加工したものとすることができる。さらにこれら繊維に帯電防止効果を持つ物質を含む繊維を混ぜることにより、梱包材(カバー)1全体の帯電を防止し、静電気による塵埃の付着を防止することができる。
【0037】
梱包材(カバー)1を開閉する係止部材2は、特に限定されないが、ファスナーであれば、粘着力が低下するのを防ぐことができ且つ密閉性や防塵性に優れるので、粘着テープ及びマジックテープ(登録商標)よりも好適に使用できる。半導体製造工程の金属汚染の観点から、樹脂製のファスナーが最適である。
【0038】
[梱包方法及び搬送方法]
次に、本発明の梱包方法及び搬送方法の例を、
図2を参照しながらそれぞれ説明する。
【0039】
図2に示すように、出荷容器FOSBは、FOSB受入工程、FOSB洗浄工程、FOSB組立工程、FOSB検査工程及びFOSB出荷工程の順で処理される。これらFOSBの受け入れから出荷までがクリーンルームAで行われた後に、ウェーハ検査工程で合格となったウェーハをFOSBに収納する出荷編成工程へ搬送することとなる。出荷編成工程がクリーンルームA内にある場合には、クリーンルームA内でFOSB出荷工程から出荷編成工程までFOSBを搬送するので問題ない。しかし、出荷編成工程がクリーンルームAと異なるクリーンルームBである場合には、FOSBを一旦クリーンルームでない外気の環境を搬送する必要がある。
【0040】
従来は、クリーンルームAから出荷する前にFOSBを樹脂製の袋に1個ずつ包装し(FOSB包装工程)、搬送用台車に載せてクリーンルームBまで搬送した後に、クリーンルームBに入れる際に樹脂製の袋を破って、FOSBを取り出してクリーンルームBに入れていた(FOSB包装除去工程)。このフローを
図6に示す。
図6のフローでは、運ぶ距離に関係なく、FOSB1個に対して、樹脂製の袋が必ず1つ必要であり、クリーンルームBにて使用後は廃棄処分となっていた。これより、多額のコストと作業員の手間が必要であった。また、クリーンルームAとBとが近い場合や、上下の階などの場合には、クリーントンネルやクリーンエレベーターで繋ぐことが可能であるが、清浄度の高いクリーンな空間と発塵しないFOSB自動搬送設備などが必要であり、莫大な費用が掛かっていた。
【0041】
一方、
図2に示す本発明の梱包方法の例では、FOSB出荷工程において、FOSB検査工程に合格したFOSBを、防塵性及び防湿性を有する無塵布を含む梱包材を用いて梱包する。そして、
図2に示す本発明の搬送方法の例では、このようにして梱包したFOSBをクリーンルームA及びB間で搬送する。
【0042】
梱包材(カバー)による搬送方法は特に限定されないが、例えば
図1に示すような梱包材(カバー)付搬送台車4を用いてFOSB3をクリーンルーム間で搬送することができる。梱包材(カバー)付搬送台車4は、例えば、4本の支柱に天板、底板とその間に1枚以上の板を配置した棚状の台に、キャスターなどの移動手段を敷設した搬送台車である。
図1の例では、搬送台車4の上面下面と側面4面が梱包材(カバー)1で被包された状態で梱包されている。梱包材1は、長手方向の側面の周縁に係止可能なファスナー2が具備されている。このファスナー2を開けて、搬送台車4の棚にFOSB3を載置し、ファスナー2を閉めた状態でクリーンルームA及びB間を搬送する。
【0043】
このような本発明の梱包方法及び搬送方法では、防塵性及び防湿性を有する無塵布を含む梱包材1でFOSB3を梱包し、このようにして梱包したFOSB3をクリーンルーム間で搬送するので、作業エリアもしくは高価なクリーントンネルやクリーンエレベーターなどの高価な設備を使用しなくとも、清浄度を高く保ったまま、FOSB3をクリーンルームA及びB間で搬送することが可能となる。
【0044】
また、無塵布で作製された本発明の梱包材1は、洗浄可能であり、塵埃にて汚れた場合には洗浄を行い、繰り返し使用が可能である。つまり、梱包材1を使い捨てる必要がなく、従来廃棄にかかっていたコストや作業員の手間を省き、低コストでFOSB3を搬送することが可能である。
【0045】
また、
図1では、搬送台車4に1つのFOSB3を載置しているが、複数のFOSB3を載置することもできる。本発明では、従来のようにFOSB3を個別包装せずとも、各FOSB3の高い清浄度を保ったまま搬送することができるので、更に低コスト化が可能である。
【0046】
クリーンルームBに搬送されたFOSB3は、このクリーンルーム内で、先に説明した出荷編成工程に搬送され、次いで、出荷包装工程及び出荷工程へと順に搬送される。
【0047】
出荷包装工程は、前段の出荷編成工程にて編成されたFOSB3に対し、顧客包装仕様に基づき、FOSB付属部品の貼付、ラベル貼付、包装を行い、最終的に、ラベルの枚数及び位置等、並びに包装の状態、例えば1重、2重、材質等の確認検査を行う工程である。
【0048】
出荷工程は、出荷包装工程で包装、検査したFOSB3を、顧客出荷仕様に基づき、梱包形態(段ボール、コンテナ、梱包FOSB個数等)を元に梱包し、梱包したFOSB3をトラックに移載し、ウェーハを収容しているFOSB3を出荷する工程である。
【実施例0049】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
(実施例)
図2のフローに基づき工程が進められる。
図3に本発明の梱包材(カバー)を使用した搬送方法の一例の一部を示す。
【0051】
図3には、クリーンルームA10と、クッションルーム20と、一般作業ルーム30とを示している。クリーンルームA10とクッションルーム20とは、第1エアーシャワールーム40を間に挟んで繋がっている。また、クッションルーム20と一般作業ルーム30とは、第2エアーシャワールーム50を間に挟んで繋がっている。
【0052】
図2のフローに従い、FOSB洗浄工程にて洗浄を行い、FOSB組み立て工程にて組み立てを行い、FOSB検査工程にて検査が終了したFOSBが、クリーンルームA10内に準備されている。
【0053】
これらFOSBをクリーンルームA10内搬送台車(
図4に示す梱包材無し搬送台車5と同様)に載置する。第1エアーシャワールーム40のクリーンルーム側ドア11及び12が開き、クリーンルームA10から、第1エアーシャワールーム40へとクリーンルーム内搬送台車5が移動する。第1エアーシャワールーム40のドアにはクリーンルームA10側のドア11及び12とクッションルーム20側のドア21及び22とがあるが、これらは同時には開かないように設定されている。また、クリーンルームA10側のドア11及び12が開いた場合は、第1エアーシャワールーム40のエアーシャワーは動作せず、クッションルーム側のドア21及び22が開いた場合に、エアーシャワーが作動する設定となっている。
【0054】
次に、クリーンルームA10に繋がる一般作業ルーム30に、
図1に示すポリエステル製の無塵布から作られた梱包材1が取り付けられた梱包材(カバー)付搬送台車4を準備する。梱包材1は、長手方向の側面の周縁に係止可能なファスナー2を具備している。準備された梱包材(カバー)付搬送台車4は、中に何も載置されていない。第2エアーシャワールーム50の一般作業ルーム30側のドア31及び32が開いた状態で、梱包材(カバー)付搬送台車4を第2エアーシャワールーム50の一般作業ルーム30側のドア31及び32から第2エアーシャワールーム50に移動する。一般作業ルーム30側のドア31及び32が閉まると、第2エアーシャワールーム50のエアーシャワーが作動する。エアーシャワーの動作が終了すると、第2エアーシャワールーム50のクッションルーム側ドア23及び24が開く。次に梱包材(カバー)付搬送台車4を第2エアーシャワールーム50からクッションルーム20へ移動する。次に、移動が終了すると第2エアーシャワールーム50のクッションルーム側ドア23及び24が閉まる。次にクッションルーム20側から、第1エアーシャワールーム40のクッションルーム20側のドア21及び22を開く。クッションルーム20に移動した梱包材(カバー)付搬送台車4を、
図3に示すように、第1エアーシャワールーム40のクッションルーム側ドア21及び22の開放部に横付けして密着させる。この状態で第1エアーシャワールーム40のクッションルーム20側のドア21及び22が解放した面は、梱包材(カバー)付搬送台車4の梱包材1のファスナー2がある面と密着した状態となる。この状態で、梱包材(カバー)付搬送台車4のファスナー2を開け、準備しておいたFOSB出荷工程の、クリーンルーム内搬送台車5に載置されたFOSBを梱包材(カバー)付搬送台車4に移載する。
【0055】
移載が終了した後に、梱包材(カバー)付搬送台車4のファスナー2を閉めて、梱包材(カバー)付搬送台車4を第1エアーシャワールーム40のクッションルーム側ドア21及び22付近からクッションルーム20の中央付近に退避させる。
【0056】
次に、第1エアーシャワールーム40のクッションルーム20側の解放したドア21及び22を閉める。第1エアーシャワールーム40には、移載後のクリーンルーム内搬送台車5のみが存在し、ドア21及び22が閉まると同時にエアーシャワーが作動し、第1エアーシャワールーム40内がクリーンルームA10と同等の清浄度の空気に置換される。
【0057】
エアーシャワーの動作が終了後、第1エアーシャワールーム40のクリーンルーム側ドア11及び12が開くので、第1エアーシャワールーム40からクリーンルーム内搬送台車5をクリーンルームA10内へ移動し、第1エアーシャワールーム40のクリーンルーム側ドア11及び12が閉まる。
【0058】
これにより、梱包材(カバー)付搬送台車4へのFOSBの移載作業が終了する。クッションルーム20には、
図1に示すようにFOSB3が載置収納された梱包材(カバー)付搬送台車4がある。
【0059】
次に、第2エアーシャワールーム50及び一般作業ルーム30へとこれまでの逆の順序でFOSB3が載置収納された梱包材(カバー)付搬送台車4を移動する。
【0060】
一般作業ルーム30からは廊下を経て、出荷編成工程を有するクリーンルームBへと繋がる一般作業ルーム及びクッションルームへと搬送する。実施例では、クリーンルームB、並びにこれに繋がる一般作業ルーム及びクッションルームは、
図3に示すのと同じ配置とする。以下では、
図3を再度参照しながら説明する。
【0061】
クリーンルームB10において、空のクリーンルーム内搬送台車(
図4の梱包材無し搬送台車5と同様)を準備し、第1エアーシャワールーム40のクリーンルーム側ドア11及び12が開き、クリーンルームB10から第1エアーシャワールーム40へとクリーンルーム内搬送台車5が移動し、第1エアーシャワールーム40に空のクリーンルーム内搬送台車5が待機し、第1エアーシャワールーム40のクリーンルーム側ドア11及び12が閉まる。
【0062】
次に、クリーンルームAからのFOSBを搬送するため、クリーンルームB側の第2エアーシャワールーム50の一般作業ルーム30側のドア31及び32が開いた状態で、クリーンルームAからのFOSB3が載置収納された梱包材(カバー)付搬送台車4を、一般作業ルーム側のドア31及び32から第2エアーシャワールーム50に移動する。一般作業ルーム側のドア31及びドア32が閉まると、第2エアーシャワールーム50のエアーシャワーが作動する。エアーシャワーの動作が終了すると、第2エアーシャワールーム50のクッションルーム側ドア23及び24が開く。次に梱包材(カバー)付搬送台車4を第2エアーシャワールーム50からクッションルーム20へ移動する。次に、移動が終了すると第2エアーシャワールーム50のクッションルーム側ドア23及び24が閉まる。
【0063】
次に、クッションルーム20側から、第1エアーシャワールーム40のクッションルーム20側のドア21及び22を開く。クッションルーム20に移動した梱包材(カバー)付搬送台車4を、
図3に示すように、第1エアーシャワールーム40のクッションルーム側ドア21及び22の開放部に横付けして密着させる。この状態で第1エアーシャワールーム40のクッションルーム20側のドア21及び22が解放した面は、梱包材(カバー)付搬送台車4の梱包材1のファスナー2がある面と密着した状態となる。この状態で、梱包材(カバー)付搬送台車4のファスナー2を開け、クリーンルームB10内に準備しておいたクリーンルーム内搬送台車5にFOSB3を移載する。これらFOSB3の移載が終了したら梱包材(カバー)付搬送台車4のファスナー2を閉め、第1エアーシャワールーム40のクッションルーム側ドア21及び22付近からクッションルーム20の中央付近に退避させる。
【0064】
次に、第1エアーシャワールーム40のクッションルーム20側の解放したドア21及び22を閉める。第1エアーシャワールーム40には、移載後のクリーンルーム内搬送台車5のみが存在し、ドア21及び22が閉まると同時にエアーシャワーが作動し、第1エアーシャワールーム40内がクリーンルームB10と同等の清浄度の空気に置換される。
【0065】
エアーシャワーの動作が終了後、第1エアーシャワールーム40のクリーンルーム側ドア11及び12が開くので、第1エアーシャワールーム40からクリーンルーム内搬送台車5をクリーンルームB10内へ移動し、第1シャワールーム40のクリーンルーム側ドア11及び12が閉まる。
【0066】
これにより、クリーンルーム内搬送台車5へのFOSB3の移載作業が終了する。クッションルーム20にはFOSBを移送し空になった梱包材(カバー)付搬送台車4があり、この梱包材(カバー)付搬送台車4を、再びFOSBを搬送するため、クリーンルームAへと移動する。
【0067】
(比較例)
図6のフローに基づき工程が進められる。
図6のFOSB包装工程にて、
図4に示すようにポリエチレン製の袋6でFOSB3を2重に包装し、FOSB包装除去工程として、
図3のクッションルーム20で外側の包装を破って除去し、クリーンルームB10内で、内側の包装を破って除去し、クリーンルームA及びB間の搬送も
図4の梱包材(カバー)が無い搬送台車5を使用すること以外は実施例と同じフローで搬送を行った。
【0068】
(結果)
以上に説明した実施例と比較例との搬送方法に基づいて、搬送評価用にそれぞれ300mmφポリッシュドウェーハを25枚準備し、搬送前後のパーティクルレベルを、KLA製パーティクルカウンターS2を用いて、46nmサイズ以上の個数のウェーハ1枚当たりの平均値を算出した後に、搬送前後のパーティクル個数の差分を規格化して、実施例と比較例とで比較した。
図5に、比較例でのパーティクル増加個数を1とした場合の、実施例及び比較例でのパーティクル増加個数を示す。
図5のように実施例は比較例と比較して同等の結果であり問題無いレベルであった。また、以下の表1のようにウェーハ表面についてシミ、くもり、カスミについて面検査を行ったが、実施例と比較例共に外気環境の温度、湿度の変化に伴うウェーハ表面のシミ、くもりやカスミなどの異常は確認されなかった。
【0069】
【0070】
以上の結果から、本発明の梱包材を用いて梱包及び搬送を行った実施例では、クリーンルームA及びB間をつなげるための高清浄空間を更に設けなくとも、従来の梱包及び搬送方法である比較例と同様に高い清浄度を保ったままFOSBを搬送することができたことが分かる。また、比較例では、2重のポリエチレン製の袋を用いてFOSBを搬送し、搬送後に袋を破いて廃棄する必要があるため、実施例よりもコストがかかった。
【0071】
また、搬送物をFOSBに替えてFOUPに替えたこと以外は上記実施例と同様に梱包及び搬送を行った。その結果、搬送物がFOUPであっても、本発明の梱包材を用いて梱包及び搬送を行うことにより、高い清浄度を保ったままFOUPを搬送することができた。
【0072】
これらの事実から、本発明の梱包材を用いてFOUP又はFOSBを梱包及び搬送することにより、FOUP又はFOSBの高い清浄度を保ったまま、FOUP又はFOSBを簡易的に且つ低コストでクリーンルーム間を搬送できることが分かる。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…梱包材、 2…係止部材(ファスナー)、 3…搬送物(FOSB)、 4…梱包材(カバー)付搬送台車、 5…梱包材無し搬送台車(クリーンルーム内搬送台車)、 6…樹脂製の袋、 10…クリーンルーム(クリーンルームA及びB)、 11及び12…クリーンルーム側ドア、 20…クッションルーム、 21及び22…第1エアーシャワールームのクッションルーム側ドア、 23及び24…第2エアーシャワールームのクッションルーム側ドア、 30…一般作業ルーム、 31及び32…一般作業ルーム側ドア、 40…第1エアーシャワールーム、 50…第2エアーシャワールーム。