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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122052
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】搬送装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230825BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025474
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】正路 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】石ヶ谷 康功
(72)【発明者】
【氏名】平野 大輔
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA08
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB02
2H033BB12
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033BE03
2H033CA09
2H033CA17
(57)【要約】
【課題】低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することを課題とする。
【解決手段】用紙Pを加熱するためのヒータ22と、ヒータ22の温度を検知する端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bと、用紙Pを検知する通紙検知センサ29と、を備えた、用紙Pを搬送する画像形成装置100であって、端部側サーミスタ25Aは、中央側サーミスタ25Bよりも、用紙Pの搬送方向に直交する方向である幅方向Xにおいて、ヒータ22の加熱領域Dの幅方向の中央位置D0に遠い位置に設けられ、中央位置D0から端部側サーミスタ25Aまでの幅方向の距離をL1、中央位置D0から通紙検知センサ29までの幅方向の距離をL2とすると、L1<L2であることを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を加熱するための加熱体と、
前記加熱体の温度を検知する第一温度検知部材および第二温度検知部材と、
記録媒体を検知する記録媒体検知部材と、を備えた、前記記録媒体を搬送する搬送装置であって、
前記記録媒体を搬送する方向に直交する方向であって、前記記録媒体の面に沿う方向を搬送直交方向とすると、
前記搬送直交方向において、前記第一温度検知部材は、前記第二温度検知部材よりも、前記加熱体の加熱領域の中央位置から遠い位置に設けられ、
前記搬送直交方向において、前記記録媒体検知部材は、前記第二温度検知部材に対して、前記第一温度検知部材とは反対側に設けられることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記加熱体の加熱領域の前記中央位置から前記第一温度検知部材までの前記搬送直交方向の距離をL1、前記搬送直交方向の前記加熱体の加熱領域の前記中央位置から前記記録媒体検知部材までの前記搬送直交方向の距離をL2とすると、
L1<L2である請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第一温度検知部材は温度検知素子を有するサーミスタであり、
前記距離L1は、前記加熱体の加熱領域の中央位置から前記第一温度検知部材の前記温度検知素子までの前記搬送直交方向の距離である請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記記録媒体検知部材は、前記記録媒体の搬送路上において、前記加熱体よりも上流側に設けられる請求項1から3いずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記記録媒体を積載して、前記搬送路上に前記記録媒体を供給する記録媒体供給部をさらに備えた請求項4記載の搬送装置であって、
前記記録媒体検知部材が前記記録媒体供給部に設けられる搬送装置。
【請求項6】
搬送装置が対応する記録媒体のうち前記搬送直交方向の長さが最大である記録媒体の前記搬送直交方向の通過領域を最大通過領域とすると、
前記記録媒体検知部材は、前記最大通過領域の内側で、前記搬送直交方向の長さが最大の記録媒体よりも前記搬送直交方向の長さが一つ小さい記録媒体の通過領域よりも前記搬送直交方向の外側に設けられる請求項1から5いずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記記録媒体検知部材の前記記録媒体検知領域は、前記最大通過領域端部から前記幅方向に1mm以上5mm以下の範囲に設けられる請求項6記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の搬送装置を備えた画像形成装置。
【請求項9】
前記加熱体によって加熱される回転部材と、前記第一温度検知部材および前記第二温度検知部材とを有する加熱装置を備えた請求項8記載の画像形成装置であって、
前記回転部材は弾性層を有していない画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送装置を備えた画像形成装置では、記録媒体を給紙トレイに使用者がセットする際に、サイズの異なる記録媒体がセットされ、この記録媒体に画像形成動作が行われてしまう場合がある。
【0003】
このような場合には、回転部材(定着ベルト)の過昇温が生じる。つまり、本来よりもサイズの小さい記録媒体に定着動作がなされることで、回転部材(定着ベルト)が記録媒体によって熱を奪われない領域が大きくなり、この領域で回転部材(定着ベルト)が過昇温し、ひいては回転部材(定着ベルト)の破損の原因となってしまう。またさらに、サイズの異なる記録媒体が配置された際に、記録媒体にその搬送方向と直交する方向である搬送直交方向のずれが生じる場合もあり、搬送直交方向のいずれの側でも上記端部温度上昇を検知できることが必要になる。
【0004】
例えば特許文献1(特許第5924867号公報)の像加熱装置では、記録媒体の幅方向両端部側に温度検知素子を設けた構成や両端部側に通紙検知手段を設けた構成が記載されている。
【0005】
特許文献1の温度検知素子により、定着ベルトの両端部側の温度を検知することで、上記の端部温度上昇による定着ベルトの破損を防止できる。しかし、温度検知部材を定着ベルトの両端部に設けると、装置全体のコストアップになるという問題があった。
【0006】
また特許文献1の定着ベルトの両端部側に通紙検知手段を設ける構成では、記録媒体のサイズ違いを検知することはできる。しかし、加熱装置内で温度を検知することができないため、例えば加熱装置の立ち上げ時などに定着ベルトの両端部側が中央側に比べて温度が上がらない温度だれの問題が生じた場合にそれを検知することができず、この温度だれによる定着不良を防止することもできない。このように、特許文献1のいずれの構成でも、定着ベルトの温度を適正に保つことと装置のコストダウンを両立できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、記録媒体を加熱するための加熱体と、前記加熱体の温度を検知する第一温度検知部材および第二温度検知部材と、記録媒体を検知する記録媒体検知部材と、を備えた、前記記録媒体を搬送する搬送装置であって、前記記録媒体を搬送する方向に直交する方向であって、前記記録媒体の面に沿う方向を搬送直交方向とすると、前記搬送直交方向において、前記第一温度検知部材は、前記第二温度検知部材よりも、前記加熱体の加熱領域の中央位置から遠い位置に設けられ、前記搬送直交方向において、前記記録媒体検知部材は、前記第二温度検知部材に対して、前記第一温度検知部材とは反対側に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図3】ヒータの平面図である。
図4】ヒータへの電力供給を示す図である。
図5図3と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
図6図3図5と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
図7】(a)図は幅方向の各部材の配置関係を示す図で、(b)~(e)図は各状態での用紙とヒータの幅方向の温度分布との位置関係を示す図である。
図8】サーミスタの構成を示す断面図である。
図9図8と異なるサーミスタの構成を示す断面図である。
図10】通紙検知センサを示す図で、(a)通紙検知センサ全体を示す正面図、(b)図が遮蔽部材の回転動作を示す側面図である。
図11】第1高熱伝導部材を有する定着装置の側面断面図である。
図12】定着ベルトの配列方向の温度分布を示す図で、(a)図がヒータの平面図、(b)図が定着ベルトの温度分布を示す図である。
図13図5のヒータの分割領域を示す図である。
図14図13と異なる形状の分割領域を示す図である。
図15図6のヒータの分割領域を示す図である。
図16】ヒータ、第1高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
図17】第1高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
図18】第1高熱伝導部材の配置の異なる例を示すヒータの平面図である。
図19】第1高熱伝導部材の配置のさらに異なる例を示すヒータの平面図である。
図20図2とは異なる実施形態の定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図21】ヒータ、第1高熱伝導部材、第2高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
図22】第1高熱伝導部材および第2高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
図23】第1高熱伝導部材および第2高熱伝導部材の異なる配置の例を示すヒータの平面図である。
図24】グラフェンの原子結晶構造を示す図である。
図25】グラファイトの原子結晶構造を示す図である。
図26図22と第2高熱伝導部材の配置が異なるヒータを示す平面図である。
図27図2図20とは異なる実施形態の定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図28】断熱部材とヒータとの間に第1高熱伝導部材を設けた定着装置の部分断面図である。
図29】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図30】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図31】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図32図1と異なる画像形成装置の概略構成図である。
図33】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図34図33の定着装置におけるヒータの平面図である。
図35】ヒータおよびヒータホルダの斜視図である。
図36】ヒータに対するコネクタの取付状態を示す斜視図である。
図37】サーミスタとサーモスタットの配置を示す図である。
図38】フランジの溝部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0013】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。これらの色の現像剤は、カラー画像の色分解成分に対応する。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、帯電装置3と、現像装置4と、クリーニング装置5とを備える 。帯電装置3は感光体2の表面を帯電する。現像装置4は、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する。クリーニング装置5は感光体2の表面をクリーニングする。
【0014】
また、画像形成装置100は、露光装置6と、記録媒体供給部としての給紙装置7と、転写装置8と、加熱装置としての定着装置9と、排紙装置10とを備える。露光装置6は、各感光体2の表面を露光し、その表面に静電潜像を形成する。給紙装置7は給紙トレイ16、給紙ローラ17および通紙検知センサ29を有する。給紙装置7は、記録媒体としての用紙Pを、記録媒体の搬送路としての用紙搬送路14に供給する。転写装置8は各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する。定着装置9は用紙Pに転写されたトナー画像を用紙P表面に定着させる。排紙装置10は用紙Pを装置外に排出する。各作像ユニット1、感光体2、帯電装置3、露光装置6、転写装置8などは、用紙に画像を形成するための画像形成手段を構成している。
【0015】
転写装置8は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有する。中間転写ベルト11は複数のローラによって張架される。一次転写ローラ12は各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する。二次転写ローラ13は中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成される。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0016】
また、用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。タイミングローラ15などの用紙搬送路14上に設けられるローラ対は、用紙Pを用紙搬送路14上で搬送するための搬送部材である。
【0017】
次に、図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0018】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0019】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って回転し、一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達する。そしてトナー画像は、図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送される。トナー画像は、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙トレイ16から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0020】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0021】
続いて、定着装置の構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、対向回転部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、加熱体としてのヒータ22と、保持部材としてのヒータホルダ23と、支持部材としてのステー24と、温度検知部材としてのサーミスタ25と、を備えている。定着ベルト20は無端状のベルトからなる。加圧ローラ21は定着ベルト20の外周面に接触して、定着ベルト20との間に定着ニップNを形成する。ヒータ22は定着ベルト20を加熱する。ヒータホルダ23はヒータ22を保持する。ステー24はヒータホルダ23を支持する。サーミスタ25は基材30の裏面に当接し、その温度を検知する。また定着装置に設けられる定着部材は、加熱装置に設けられる回転部材の一態様である。本実施形態の定着装置9には、この定着部材の具体例として定着ベルト20が設けられる。
【0023】
図2の紙面に直交する方向は定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24等の長手方向であり、以下、この方向を単に長手方向とも呼ぶ。なお、この長手方向は、定着ベルト20のベルト幅方向あるいは加圧ローラ21の軸方向でもあり、搬送される用紙の幅方向でもある。
【0024】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体で構成される基層を有する。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。本実施形態の定着ベルト20は、弾性層を有していないゴムレスベルトである。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0025】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0026】
加圧ローラ21が付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に、ニップ部としての定着ニップNが形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0027】
ヒータ22は、定着ベルト20の内周面に接触するように配置されている。本実施形態のヒータ22は、定着ベルト20を介して加圧ローラ21に接触し、加圧ローラ21との間に定着ニップNを形成するニップ形成部材の役割をする。また定着ベルト20は、ヒータ22に加熱される被加熱部材である。別の言い方をすると、ヒータ22は、定着ベルト20を介して、定着ニップNに通紙される用紙Pを加熱する。
【0028】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられた面状の加熱体である。ヒータ22は、板状の基材30と、基材30上に設けられた抵抗発熱体31と、抵抗発熱体31を被覆する絶縁層32等で構成されている。また、ヒータ22は、絶縁層32側で定着ベルト20の内周面に対して接触しており、抵抗発熱体31から発された熱は、絶縁層32を介して定着ベルト20へと伝達される。本実施形態では、抵抗発熱体31や絶縁層32が基材30の定着ベルト20側(定着ニップN側)に設けられているが、反対に、抵抗発熱体31や絶縁層32を基材30のヒータホルダ23側に設けてもよい。その場合、抵抗発熱体31の熱が基材30を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、基材30を熱伝導率の高い材料で構成することで、抵抗発熱体31を基材30の定着ベルト20側とは反対側に配置しても、定着ベルト20を十分に加熱することが可能である。
【0029】
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その長手方向の両端部分が定着装置9の両側板に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23およびヒータ22が支持されることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめることができる。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNを安定的に形成される。本実施形態では、ヒータホルダ23の熱伝導率は基材30よりも小さく設けられる。
【0030】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制される。これにより、ヒータ22が効率的に定着ベルト20を加熱できる。
【0031】
ヒータホルダ23は、ヒータ22を保持するための凹部23bを有する。
【0032】
また図2に示すように、ヒータホルダ23には、定着ベルト20をガイドするガイドリブ26が一体的に設けられる。ヒータホルダ23の用紙搬送方向上流側と下流側とにそれぞれ、長手方向に複数のガイドリブ26が設けられる。
【0033】
ガイドリブ26は略扇型に形成される。ガイドリブ26は、定着ベルト20の内周面に沿うようにして設けられ、ベルト周方向に延在する円弧状又は凸曲面状のガイド面260を有する。
【0034】
ヒータホルダ23は、厚み方向に貫通した開口部23aを有する。この開口部23aに、サーミスタ25や後述するサーモスタットが設けられる。これらのサーミスタ25やサーモスタットは、バネにより加圧されて基材30の裏面に押し当てられ、ヒータ22の温度を検知している。なお、定着装置9には後述するように端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bが設けられるが、これらをサーミスタ25と称している。
【0035】
本実施形態に係る定着装置9において、印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。このとき、定着ベルト20の内周面がガイドリブ26のガイド面260に接触してガイドされることで、定着ベルト20は安定かつ円滑に回転する。また、ヒータ22の抵抗発熱体31に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度である定着温度に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間の定着ニップNに搬送されることで、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。
【0036】
次に、上記の定着装置に設けられたヒータのより詳細な構成について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るヒータの平面図である。
【0037】
図3に示すように、板状の基材30の表面には、複数(4つ)の抵抗発熱体31と、導電体としての給電線33A、33Bと、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bとが設けられる。ただし、抵抗発熱体31の数は本実施形態に限らない。以下、給電線33A、33Bを給電線33、第1電極部34Aあるいは第2電極部34Bを電極部34とも称する。
【0038】
なお、図2の紙面に直交する方向であるヒータ22等の長手方向であり図3の左右方向Xは、複数の抵抗発熱体31の配列方向でもある。以下、この方向を単に配列方向とも呼ぶ。また、配列方向に交差する方向、特に本実施形態では垂直な方向で、基材30の厚み方向と異なる方向である図3の上下方向Yを複数の抵抗発熱体31の配列方向に交差する方向、あるいは、単に配列交差方向とも呼ぶ。配列交差方向Yは、基材30の抵抗発熱体31を設けた面に沿う方向であり、ヒータ22の短手方向、あるいは、定着装置9に通紙される用紙の搬送方向でもある。
【0039】
複数の抵抗発熱体31によって、配列方向に複数に分割された発熱部35が構成されている。各抵抗発熱体31は、一対の電極部34A、34Bに対して、給電線33A、33Bを介して電気的に並列に接続されている。一対の電極部34A、34Bは基材30の配列方向一方側端部である図3の左端に設けられる。給電線33A,33Bは、抵抗発熱体31よりも抵抗値の小さい導体で構成されている。互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、抵抗発熱体31間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。また、互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、大きすぎると、その隙間の部分で温度低下が生じやすくなる。このため、配列方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、上記隙間は5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0040】
抵抗発熱体31は、PTC(正の温度抵抗係数)特性を有する材料で構成されており、温度が上昇すると抵抗値が上昇してヒータ出力が低下する特徴がある。
【0041】
抵抗発熱体31がPTC特性を有すること、および、配列方向に分割された発熱部35の構成により、小サイズ用紙を通紙時の定着ベルト20の過昇温を防止できる。つまり、発熱部35の全体幅よりも幅の小さい用紙を通紙した場合、紙幅より外側の領域では用紙によって定着ベルト20の熱が奪われないため、その部分に相当する抵抗発熱体31の温度が上昇する。抵抗発熱体31にかかる電圧は一定なので、紙幅より外側の抵抗発熱体31の温度が上昇すると、その抵抗値が上昇する。これにより、ヒータの出力、つまり発熱量が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。また、複数の抵抗発熱体31が電気的に並列接続されることで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制できる。なお、発熱部35を構成する発熱体は、PTC特性を有する抵抗発熱体以外のものであってもよい。また、抵抗発熱体は、ヒータ22の配列交差方向に複数列に配置されていてもよい。
【0042】
抵抗発熱体31は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材30に塗工し、その後、当該基材30を焼成することによって形成できる。本実施形態では、抵抗発熱体31の抵抗値を常温で80Ωとしている。抵抗発熱体31の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)の抵抗材料を用いてもよい。給電線33や電極部34の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。給電線33は、抵抗発熱体31よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。
【0043】
基材30の材料としては、耐熱性および絶縁性に優れるアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの非金属材料が好ましい。本実施形態では、配列交差方向の幅8mm、配列方向の幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。他に、金属などの導電材料に絶縁性材料を積層したもので、基材30を構成してもよい。基材30の金属材料としては、アルミニウムやステンレスなどが低コストで好ましい。基材30をステンレス板により構成することで、熱応力による割れを抑制できる。また、ヒータ22の均熱性を向上し画像品位を高めるために、基材30を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。
【0044】
絶縁層32は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成される。絶縁層32によって抵抗発熱体31と給電線33とを被覆し、これらを絶縁・保護すると共に、定着ベルト20との摺動性を維持する。
【0045】
図4は、本実施形態に係るヒータへの電力供給回路を示す図である。
【0046】
図4に示すように、本実施形態では、各抵抗発熱体31に電力を供給するための電力供給回路が、交流電源200とヒータ22の電極部34A,34Bとを電気的に接続することで構成されている。また、電力供給回路には、供給電力量を制御するトライアック210が設けられている。各抵抗発熱体31への供給電力量は、サーミスタ25A,25Bの検知温度に基づいて制御部220がトライアック210を介して制御する。制御部220は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成される。なお、制御部220は定着装置に設けられていてもよいし、画像形成装置本体に設けられていてもよい。
【0047】
本実施形態では、ヒータ22の配列方向一端部側に、第一温度検知部材としての端部側サーミスタ25Aが、そして、最小通紙幅内であるヒータ22の配列方向中央領域に、第二温度検知部材としての中央側サーミスタ25Bが、それぞれ配置されている。さらに、ヒータ22の配列方向他端部側には、抵抗発熱体31の温度が所定温度以上となった場合に、抵抗発熱体31への電力供給を遮断する電力遮断手段としてのサーモスタット27が配置されている。サーミスタ25およびサーモスタット27は、ヒータの基材の裏面に接触してその温度を検知する。以下、端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bをサーミスタ25とも称する。
【0048】
本実施形態では、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bが配列方向の同じ側に設けられるが、それぞれ異なる側に設けられていてもよい。また抵抗発熱体31は、本実施形態の形状に限らない。例えば図5に示すように、抵抗発熱体31は長方形状であってもよいし、図6に示すように、抵抗発熱体31が線状部からなり、この線状部を折り返して略平行四辺形状をなす構成であってもよい。また図5に示すように、ブロック状の抵抗発熱体31の部分から給電線33の側に伸びる部分(配列交差方向に伸びる部分)は、抵抗発熱体31の一部であってもよいし、給電線33と同じ材料により構成されていてもよい。
【0049】
以上のような定着装置、あるいは、定着装置を備えた画像形成装置などの搬送装置では、以下の3つの課題が存在する。
【0050】
まず1つ目の課題として、画像形成装置の通紙モードと異なるサイズの用紙を通紙してしまった場合に、定着ベルト20の端部側の過昇温により定着ベルト20が破損するという課題がある。つまり、設定された通紙モードよりも小さいサイズの用紙が通紙された場合、通紙領域よりも抵抗発熱体31による幅方向の発熱領域が大きくなる。従って、非通紙領域かつ抵抗発熱体31による発熱領域では用紙によって定着ベルト20の熱が奪われないため、定着ベルト20が過昇温して破損の原因になる。以下、この課題を課題1と呼ぶ。なお本実施形態では、給紙トレイに設けられたサイドフェンスを、給紙トレイに載置された用紙の側端に当接させる。そして、このサイドフェンスの位置により、画像形成装置が給紙トレイ内の用紙サイズを認識している。しかし、作業者が給紙トレイにセットした用紙の側端位置に合わせてサイドフェンスの位置調整をしていない場合には、画像形成装置が用紙サイズを正しく認識できず、異なるサイズの用紙が給紙トレイにセットされていても画像形成動作が開始されてしまう。従って、上記のような異なるサイズの用紙が定着装置に通紙される場合がある。
【0051】
また2つ目の課題として、課題1に加えて、使用者が用紙を画像形成装置の給紙トレイにセットする際のセット位置のズレが生じる場合がある。つまり、給紙トレイの用紙の幅方向中央位置に対して、実際に積載される用紙の幅方向中央位置が異なる位置に配置され、用紙に転写される画像にも位置ズレが生じるという課題がある。以下、この課題を課題2と呼ぶ。そして、用紙に連続して画像形成動作が行われる場合には、以降の用紙にも同様の位置ズレが生じるため、より早期にこの位置ズレを検知して画像形成動作を停止させることが必要である。
【0052】
また、3つ目の課題として、定着装置では用紙端部における温度だれの問題がある。例えば、画像形成装置を冷えた状態から立ち上げた場合には、定着ベルト20の幅方向端部側は中央側に比べてその昇温が遅れる。このため、定着ニップNに通紙される用紙は、中央部に対して端部側が十分に加熱されず、端部側で定着不良が生じる場合がある。以下、この課題を課題3と呼ぶ。
【0053】
これらの課題に対して、本実施形態では、前述の端部側サーミスタおよび中央側サーミスタ、そして、記録媒体検知部材としての通紙検知センサを設ける。以下、これらの構成について図7を用いて説明する。
【0054】
図7(a)の左右方向Xは用紙の幅方向であり、前述した定着ベルトなどの長手方向あるいは抵抗発熱体の配列方向と同じ方向である。この幅方向Xは、用紙の搬送方向と直交する方向であって、用紙の面に沿う方向である搬送直交方向である。この用紙の面は図7(a)の紙面に平行な面である。以下、この左右方向Xを単に幅方向とも称する。
【0055】
図7(a)に示すように、ヒータ22の主たる発熱領域である加熱領域Dに対応する位置に、第一温度検知部材としての端部側サーミスタ25A、第二温度検知部材としての中央側サーミスタ25B、そして、記録媒体検知部材としての通紙検知センサ29が設けられる。加熱領域Dは、幅方向Xの抵抗発熱体31が設けられた領域のことであり、ヒータ22の幅方向の加熱領域でもある
【0056】
本実施形態では、端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bは定着装置9に設けられ、通紙検知センサ29は給紙装置7の給紙トレイ16内(図1参照)に設けられる。つまり、図7(a)に示す端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25B、そして通紙検知センサ29の幅方向位置は、それぞれの装置における用紙の幅方向の基準位置である中央位置D0からの位置を示している。各サイズの用紙は、その幅方向中央位置が中央位置D0に合うように給紙トレイにセットされる。つまり、この中央位置D0は、給紙装置や画像形成装置内の搬送路上で位置ズレなく配置された用紙の幅方向中央位置である。またこの中央位置D0は加熱領域Dの幅方向の中央位置でもある。用紙の幅方向中央位置あるいはヒータ22の加熱領域Dの中央位置である中央位置D0を、以下、単に中央位置D0とも称する。
【0057】
端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bを有する定着装置と、通紙検知センサ29を有する給紙装置と、を備えた画像形成装置が、本実施形態における搬送装置である。ただし、本発明の搬送装置はこれに限らない。例えば、加熱体を備えた加熱装置が本発明の搬送装置であってもよい。つまり、第一温度検知部材、第二温度検知部材、および、記録媒体検知部材を備えた搬送装置としての加熱装置の構成であってもよい。本実施形態の定着装置9は加熱装置の一態様である。その他、記録媒体検知部材は、記録媒体が画像形成装置に積載されてから装置外に排出されるまでの適宜の位置に設けることができる。その他、画像形成装置内の定着装置と記録媒体検知部材を有する他の装置とを合わせて本発明の搬送装置としてもよい。
【0058】
図8を用いてサーミスタ25のより詳細な構成について説明する。なお、端部側サーミスタ25Aと中央側サーミスタ25Bについては、その幅方向の配置が異なる以外はその構成は同じである。ただし、必ずしも同じ構成である必要はない。
【0059】
図8に示すように、サーミスタ25は、ホルダ251と、弾性部材252と、温度検知部としての温度検知素子253と、付勢部材としてのバネ254と、絶縁シート255と、を有している。
【0060】
ホルダ251は、LCPなどの樹脂材料で構成されている。ホルダ251のヒータの基材側の面に、弾性部材252を介して温度検知素子253が設けられている。弾性部材252は、ホルダ251よりも熱伝導率及び剛性の低い材料で構成されており、弾性を有すると共に断熱性も有する。絶縁シート255は、PI(ポリイミド)などの絶縁材料で構成され、ホルダ251、弾性部材252、及び温度検知素子253を覆うように設けられている。ホルダ251はバネ254によってヒータ22側に付勢されており、これによって、温度検知素子253が絶縁シート255を介してヒータ22に接触している。また、ホルダ251からは、温度検知素子253に接続されている配線256が2本伸びており、各配線256は絶縁性の被膜で被覆されている。配線256の被膜は、耐熱性を考慮し、厚さが例えば0.4mm以上であることが望ましい。また、被膜の厚さが0.4mm以下の場合は、被膜を複数枚重ねてもよい。
【0061】
またサーミスタ25は非接触式の温度検知部材であってもよい。例えば図9に示すように、非接触式のサーミスタ25は、ホルダ251と、温度検知素子253と、絶縁シート255と、を有している。一例として、サーミスタ25は、定着ニップNよりも図2の下側である用紙搬送方向の上流側に配置される。ただし、サーミスタ25を定着ニップNよりも下流側に配置してもよい。
【0062】
温度検知素子253はホルダ251に設けられ、絶縁シート255を介して定着ベルト20の外周面に対向する。またホルダ251に保持された二本の配線256が、その一方で温度検知素子253に接続され、他方でサーミスタ25の外側へ延在している。このサーミスタ25では、接触式のサーミスタよりも耐熱性を必要としないため、ホルダ251をより耐熱性の低い材料で形成したり、弾性部材を省略することができる。また、温度検知素子253を付勢する付勢部材も必要としない。
【0063】
この他、第一温度検知部材および第二温度検知部材は、ヒータ22に接触する他の部材の温度を検知するものであってもよい。例えば、ヒータ22とサーミスタ25の間に、後述する第1高熱伝導部材28(図11参照)が設けられ、サーミスタ25が第1高熱伝導部材28の温度を検知してもよい。「サーミスタ25がヒータ22の温度を検知する」とは、このように、サーミスタ25が他の部材を介してヒータ22の温度を検知する場合であってもよい。
【0064】
また、通紙検知センサ29の一例を図10(a)および図10(b)に示す。図10(a) に示すように、通紙検知センサ29は、遮光部材291と、軸部292と、発光部293と、受光部294とを有する。
【0065】
図10(b)に示すように、遮光部材291は軸部292を中心に回転する。遮光部材291の一端部である被当接部291aは、画像形成装置内の通紙経路上、特に本実施形態では給紙トレイ16内の通紙経路上に配置される。用紙が図10(b)の矢印方向に搬送されると、被当接部291aが用紙に当接されて遮光部材291が回転する。
【0066】
遮光部材291が用紙に押されていない図10(b)の実線の姿勢と用紙に押されて回転する図10(b)の点線の姿勢とを切り換えることにより、図10(a)に示す遮光部材291の他端部291bが発光部293からの光を遮光する状態と遮光しない状態とを切り換える。つまり、用紙が通紙されている状態か否かにより、その検知状態を切り換えることができる。この発光部293,他端部291b、受光部294により、フォトカプラ部299を構成している。また幅方向の被当接部291aが設けられる範囲Hが、通紙検知センサ29の通紙検知領域Hである。図10(a)の点線H0は通紙検知領域Hの幅方向中央位置を示している。
【0067】
なお、図10では通紙検知センサ29として透過型の光学センサを例示したが、反射型の光学センサであってもよい。その他、搬送路上を搬送される用紙によってボタンを押下する押しボタン式の検知センサ、搬送路上を搬送される用紙によって押される回転部材の回転動作により検知状態を変化させる磁気センサ等、記録媒体検知部材として適宜の機構を用いることができる。
【0068】
図7(a)および図7(b)に示すように、定着装置に通紙される最大幅の用紙P1の通紙領域Eに対して、加熱領域Dが大きく設けられる。これにより、通紙領域Eの端部側における前述の温度だれを緩和できる。以下、最大幅の用紙P1の通紙領域Eを、最大通過領域としての最大通紙領域Eと称する。また、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、そして通紙検知センサ29は、最大通紙領域E内に設けられる。本実施形態では特に、通紙検知センサ29は、最大通紙領域Eの内側であって、最大幅の用紙P1の次に幅の大きい用紙の通紙領域よりも外側に設けられる。
【0069】
端部側サーミスタ25Aは、中央側サーミスタ25Bよりも中央位置D0から遠い位置に設けられる。つまり、中央側サーミスタ25Bは加熱領域Dの中央側の領域を検知するサーミスタである。例えば加熱領域Dを幅方向に三分割した際に、その中央側の領域に対応する位置に中央側サーミスタ25Bの温度検知素子253が配置される。本実施形態では特に、中央側サーミスタ25Bの温度検知素子253が、中央位置D0と同じ位置に設けられる。例えば端部側サーミスタ25Aの温度検知素子253は、加熱領域Dを幅方向に三分割した際の一方の端部側の領域に対応する位置に配置される。本実施形態では、端部側サーミスタ25Aの温度検知素子253は、中央位置D0から幅方向に距離L1の位置に配置される。言い換えると、端部側サーミスタ25Aの温度検知素子253は中央側サーミスタ25Bの温度検知素子253から幅方向に距離L1の位置に配置される。
【0070】
通紙検知センサ29は、中央位置D0に対して端部側サーミスタ25Aとは反対側に設けられる。つまり、中央位置D0に対して一方側にはサーミスタは設けられておらず、通紙検知センサ29のみが設けられている。本実施形態では、通紙検知センサ29の被当接部291aの幅方向中央位置が、中央位置D0から幅方向に距離L2の位置に配置される。つまり、通紙検知センサ29の通紙検知領域Hの中央位置H0(図10a参照)が、中央位置D0から幅方向に距離L2の位置に配置される。
【0071】
ここで、距離L2は距離L1よりも大きく設定される。つまり、通紙検知センサ29が端部側サーミスタ25Aよりも最大通紙領域Eのより端部側の位置に設けられる。
【0072】
本実施形態では、以上で説明した端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、そして通紙検知センサ29により、前述の課題1~3を解決できる。この課題を解決する方法について、図7を用いて説明する。なお、図7(b)~図7(e)に一点鎖線で示す曲線は、幅方向の各位置におけるヒータ22の基材の温度を示している。つまり、各一点鎖線の幅方向の端部側サーミスタ25Aあるいは中央側サーミスタ25Bの位置が、それぞれのサーミスタが検知する温度である。また、ヒータや定着ベルトも同様の温度の傾向を示す。
【0073】
まず図7(b)は、課題1および課題2が生じない場合である。つまり、最大幅の用紙の通紙モード時に、給紙装置に最大幅の用紙P1が位置ズレなくセットされて通紙された場合である。この場合、図7(b)に示すように、幅方向の端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bの位置で共に、用紙によってヒータ22や定着ベルトの熱が奪われるため、端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bの検知する温度は同じような温度になる。また、通紙検知センサ29は用紙P1が通紙されたことを検知する。これにより、前述の制御部が、装置側で正常に用紙が通紙されて画像形成動作が行われたと判断できる。
【0074】
次に、図7(c)は課題1が生じた場合である。つまり、最大幅の用紙の通紙モード時に、定着装置に対して、誤って最大幅の用紙よりも幅の小さい用紙P2が通紙された場合である。この場合、図7(c)に示すように、幅方向の中央側サーミスタ25Bの位置で、用紙P2によってヒータ22や定着ベルトの熱が奪われる。一方、幅方向の端部側サーミスタ25Aの位置には用紙P2が配置されず、ヒータ22や定着ベルトの熱が奪われない。結果として、端部側サーミスタ25Aが検知する温度が、中央側サーミスタ25Bが検知する温度と比較して高くなる。これにより、制御部が端部側での異常を検知できる。つまり、課題1の紙サイズの間違いなどにより、ヒータ22の端部側の温度が中央側に比べて大きくなっていることを制御部が認識できる。具体的には、端部側サーミスタ25Aの検知する温度が中央側サーミスタ25Bの検知する温度と比較して所定の数値以上大きくなった時に、課題1などによる異常であると制御部に認識させることができる。また、通紙検知センサ29の位置でも用紙が通過せず、通紙検知センサ29が検知状態にならない。このため、この検知結果によっても、制御部が課題1などの異常が生じたことを認識できる。
【0075】
また、図7(d)は課題1に加えて課題2が生じた場合である。つまり、図7(c)の用紙サイズの間違いに加えて、給紙トレイへの用紙のセット位置の間違いにより用紙P2が図の左方向へ位置ズレした場合である。この場合、図7(d)に示すように、幅方向の端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bの位置で共に、用紙によってヒータ22や定着ベルトの熱が奪われるため、端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bの検知する温度は同じような温度になる。つまり、端部側サーミスタ25Aの検知結果によっては、制御部が異常を認識することはできない。しかし一方で、幅方向の通紙検知センサ29の位置に用紙P2が通紙されないため、通紙検知センサ29が検知状態にならない。これにより、制御部が課題1あるいは課題2の異常が生じたことを認識できる。
【0076】
最後に、図7(e)は、図7(d)と同じく課題1および課題2が生じた場合で、図7(e)とは逆方向へ用紙P2のセット位置の間違いが生じた場合である。この場合、図7(e)に示すように、幅方向の中央側サーミスタ25Bの位置で、用紙P2によってヒータ22や定着ベルトの熱が奪われる。一方、幅方向の端部側サーミスタ25Aの位置には用紙P2が配置されず、ヒータ22や定着ベルトの熱が奪われない。結果として、端部側サーミスタ25Aが検知する温度が、中央側サーミスタ25Bが検知する温度と比較して高くなる。これにより、制御部が課題1あるいは課題2の異常が生じたことを認識できる。なお、通紙検知センサ29の位置では用紙P2が通紙され、通紙検知センサ29は検知状態になる。つまり、制御部は通紙検知センサ29の検知結果によっては異常を認識することはできない。
【0077】
このように、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、そして通紙検知センサ29を設けることにより、用紙のセット位置がいずれの側へずれた場合でも、制御部がその異常を認識できる。
【0078】
また、端部側サーミスタ25Aの検知結果により、課題3のような温度だれを検知できる。この場合には、ヒータ22による加熱時間を余分に設ける等することで、定着不良を防止できる。
【0079】
以上のように、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、そして通紙検知センサ29の検知結果により、制御部が課題1~3の異常を認識することができる。従って、課題1や課題2が生じた場合にはより早期に画像形成動作を停止することができ、定着ベルト20の破損を防止できる。また、課題3の温度だれによる定着不良も防止できる。また、例えば定着ベルト20の幅方向両側にサーミスタを配置する構成と比較すると、本実施形態では、片側にサーミスタよりも安価な通紙検知センサを配置するため、その分、搬送装置や画像形成装置のコストを低く抑えることができる。従って、本実施形態の構成により、低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することができる。
【0080】
また本実施形態では、前述のように、通紙検知センサ29は端部側サーミスタ25Aよりも中央位置D0から遠い位置に配置する。つまり、距離L2を距離L1よりも大きく設定する。通紙検知センサ29は、用紙のセット位置の間違いにより用紙が図7の左方向へ位置ズレした時に非検知状態になる位置に配置すればよい。このため、最大通紙領域E1の端部のより近くに配置することができる。一方で、端部側サーミスタ25Aは、非通紙領域が通紙領域よりも温度が高くなることを利用して非通紙状態を判別する。このため、最大通紙領域E1の端部からある程度の距離を設ける必要がある。つまり、最大通紙領域E1の端部近くでは、用紙サイズや用紙のセット位置に異常がない図7(b)の場合であっても、非通紙領域からの伝熱により中央側と比較してヒータ22温度が高くなる。このため、最大通紙領域E1の端部に近い位置に端部側サーミスタ25Aを配置すると、図7(b)のような異常がない場合でも端部側サーミスタ25Aの検知温度が高くなってしまい、異常であると認識するおそれがある。つまり、制御部が非通紙状態か否かを正しく判別できなくなってしまう。このように本実施形態では、端部側サーミスタ25Aおよび通紙検知センサ29を、それぞれの特性に応じて幅方向の適切な位置に配置している。これにより、端部側サーミスタ25Aおよび通紙検知センサ29が、通紙の有無をより正常に検知できる。
【0081】
このように本実施形態では、幅方向一方側に端部側サーミスタ25Aを配置し、他方側に通紙検知センサ29を配置することで、課題2を解決できる。つまり本実施形態では、図7の左方向への用紙の位置ズレは通紙検知センサ29により、幅方向他方側への用紙の位置ズレは端部側サーミスタ25Aおよび中央側サーミスタ25Bにより検知できる。従って、課題2によりいずれかの方向へ用紙が位置ズレした場合には、その異常を検知して、以降の用紙への画像形成動作を停止することが可能になる。これにより、無駄な画像形成動作をなくすことができる。
【0082】
特に、通紙検知センサ29は端部側サーミスタ25Aと比較してより早期に異常を検知できる。つまり、端部側サーミスタ25Aがその検知温度の上昇により異常を検知するため、端部温度上昇が生じるまで異常を検知できないのと比較すると、通紙検知センサ29は一枚目の用紙からその異常を検知できる。つまり、図7(c)や図7(d)のような場合に一枚目の用紙からその異常を検知できる。
【0083】
通紙検知センサ29は、前述のように、最大通紙領域Eのより端部側に配置することが好ましい。しかし、その配置が最大通紙領域Eの端部に近すぎると、例えば用紙搬送時に位置ズレがわずかに生じたような場合でも、用紙が通紙検知センサ29から外れた位置に配置されて検知結果が非通紙状態となってしまう。このようなことを考慮して、通紙検知センサ29の通紙検知領域Hは、通紙領域Eの端部の位置から1mm~5mmの位置に配置することが好ましい。また、用紙に生じる搬送時の誤差よりも大きな距離をとって配置することが好ましい。例えば用紙の搬送時の誤差が最大で2mmである場合には、通紙検知センサ29の通紙検知領域Hを例えば通紙領域Eの端部の位置から3mm以上の位置に配置することができる。
【0084】
通紙検知センサ29は、用紙搬送方向において、定着装置9よりも上流側に配置することが好ましい。これにより、定着装置9によって用紙上のトナーに対する画像の定着動作が行われる前に、課題1あるいは2の異常を検知できる。このように、通紙検知センサ29は用紙搬送方向のより上流側に配置することで早期に異常を検知でき好ましい。特に本実施形態のように、給紙装置に通紙検知センサ29を設けることでより早期に異常を検知でき、より好ましい。
【0085】
また本実施形態の構成は、特に弾性層を有していない定着ベルトを備えた定着装置に適用するのが好適である。つまり、このような定着装置では定着ベルトの長手方向の伝熱量が小さくなり、非通紙部における温度上昇が大きくなる。従って、特に課題1による定着ベルトの破損の問題が顕著になる。このため、本実施形態の上記構成により、定着ベルトの過昇温による破損を効果的に防止できる。
【0086】
また通紙検知センサ29を定着装置9の外部に設けることにより、定着装置9を交換時に通紙検知センサ29が交換されることがない。従って、定着装置9交換時のコストダウンを図ることができる。
【0087】
次に、図2の定着装置と異なる実施形態として、ヒータホルダ23とヒータ22の間に高熱伝導部材を配置した実施形態について、図11を用いて説明する。
【0088】
第1高熱伝導部材28は基材30よりも熱伝導率の高い部材により構成される。本実施形態では、第1高熱伝導部材28は板状のアルミニウムにより構成される。その他、例えば銅や銀、グラフェン、グラファイトにより第1高熱伝導部材28を構成してもよい。第1高熱伝導部材28を板状とすることにより、ヒータホルダ23や第1高熱伝導部材28に対するヒータ22の位置精度を向上させることができる。
【0089】
次に、上記の熱伝導率の算出方法について説明する。熱伝導率を算出する際には、まず、対象の物体の熱拡散率を測定し、この熱拡散率を用いて熱伝導率を算出する。
【0090】
熱拡散率の計測は、熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名:ai-Phase Mobile 1u、株式会社アイフェイズ性)を用いた。
【0091】
上記熱拡散率を熱伝導率に換算するためには、密度と比熱容量の値が必要である。 密度の計測には、乾式自動密度計(商品名:Accupyc 1330、株式会社島津製作所製)を用いた。 また、比熱容量の計は、示差走査型熱量測定装置(商品名:DSC-60 株式会社島津製作所製)を用い、比熱容量が既知の基準物質としてサファイアを用いて測定した。本実施例では比熱容量測定を5回行い、50℃における平均値を用いた。密度および比熱容量をそれぞれρ、Cとすると、上記熱拡散率測定で得られた熱拡散率αとから、熱伝導率λは、以下の式(1)により得ることができる。
【0092】
【数1】
【0093】
本実施形態でも、前述の実施形態と同様、課題1~3が生じる。そこで、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25Bを配置して第1高熱伝導部材28に接触させることにより、また通紙検知センサ29を配置することにより、課題1~3による異常を検知して解決できる。つまり、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、通紙検知センサ29により、用紙のサイズ間違いやセット位置の間違いを検知して定着ベルト20の端部温度上昇を防止できる。また端部側サーミスタ25Aにより端部の温度だれを検知できる。従って、低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することができる。
【0094】
ただし、第1高熱伝導部材28および後述する第2高熱伝導部材にも同様に開口部を設け、サーミスタ25やサーモスタットが基材30の裏面に押し当てられる構成としてもよい。第1高熱伝導部材28を設けることにより、ヒータ22の長手方向の温度ムラを抑制できる。従って、サーミスタ25に、安価で耐熱性の低いサーミスタを用いることができる。
【0095】
図12は定着ベルト20の配列方向の温度分布を示す図である。(a)図がヒータ22の配置を示す図である。(b)図は縦軸が定着ベルト20の温度Tを示し、横軸が定着ベルト20の配列方向の各位置を表している。
【0096】
図12(a)および図12(b)に示すように、ヒータ22に設けられる複数の抵抗発熱体31は配列方向に分割されており、抵抗発熱体31同士の分割領域Bが形成される。別の言い方をすると、ヒータ22に設けられる複数の抵抗発熱体31は間隔Bを設けて配置される。以下、分割領域としての範囲Bを間隔Bと呼ぶ。間隔Bでは、抵抗発熱体31が占める面積がその他の部分よりも小さくなり、発熱量が小さくなる。これにより、間隔Bにおける定着ベルト20の温度がその他の部分よりも小さくなり、定着ベルト20の配列方向の温度ムラの原因となる。また、分割領域である間隔Bの周辺の領域を含む拡大分割領域C(以下、単に領域Cと呼ぶ)においても、ヒータ22や定着ベルト20の温度が小さくなる。なお、ヒータ22の温度も、同様に間隔Bでの温度が小さくなる。ここで、図12(a)の拡大図に示すように、間隔Bは、ヒータ22の主たる発熱部分である抵抗発熱体31が配列方向に分割された部分全体を含む配列方向領域を意味する。また、間隔Bに加えて、抵抗発熱体31の接続部311に対応する範囲を含む領域を領域Cとする。この接続部311は、抵抗発熱体31のうち、配列交差方向に延在し、各給電線33A、33Bに接続される部分を指す。
【0097】
図13に示すように、図5に示した長方形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。また図14に示す形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。さらに、図15に示すように、図6に示す形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。ただし、図12図14図15のように、隣り合う抵抗発熱体31同士を配列方向にオーバーラップさせることで、間隔Bのその他の部分に対する温度落ち込みを抑制できる。
【0098】
本実施形態では、上記の間隔における温度落ち込みを抑制して、定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制するために、前述した第1高熱伝導部材28を設けている。以下、第1高熱伝導部材28についてより詳細に説明する。
【0099】
図11に示すように、第1高熱伝導部材28は、図11の左右方向において、ヒータ22とステー24との間に配置され、特にヒータ22とヒータホルダ23との間に挟まれる。つまり第1高熱伝導部材28は、一方の面を基材30の裏面に当接させ、他方の面をヒータホルダ23に当接させる。
【0100】
ステー24は、ヒータ22などの厚み方向に延在する二つの垂直部24aの当接面を直接ヒータホルダ23に当接させ、ヒータホルダ23、第1高熱伝導部材28、ヒータ22を支持する。配列交差方向(図11の上下方向)において、当接面は抵抗発熱体31が設けられる範囲よりも外側に設けられる。これにより、ヒータ22からステー24への伝熱を抑制でき、ヒータ22が定着ベルト20を効率よく加熱できる。
【0101】
図16に示すように、第1高熱伝導部材28は、その厚みが0.3mm、配列方向の長さが222mm、配列交差方向の幅が10mmの板材により構成される。本実施形態では第1高熱伝導部材28は単一の板材により構成されるが、複数の部材からなってもよい。なお、図16では図11のガイドリブ26の記載を省略している。
【0102】
第1高熱伝導部材28は、ヒータホルダ23の凹部23bに嵌め込まれ、その上からヒータ22が取り付けられることで、ヒータホルダ23とヒータ22とに挟み込まれて保持される。本実施形態では、第1高熱伝導部材28の配列方向の幅がヒータ22の配列方向の幅と略同じに設けられる。第1高熱伝導部材28およびヒータ22は、凹部23bを形成する配列方向の両側壁(配列方向規制部)23b1により、配列方向の移動を規制される。このように、第1高熱伝導部材28の定着装置9内での配列方向の位置ズレを規制することで、配列方向の狙いの範囲に対して熱伝導効率を向上させることができる。また、第1高熱伝導部材28およびヒータ22は、凹部23bを形成する配列交差方向の両側壁(配列交差方向規制部)23b2により、配列交差方向の移動を規制される。
【0103】
第1高熱伝導部材28を設ける配列方向の範囲は上記に限らない。例えば図17に示すように、配列方向の発熱部35に対応する範囲のみに第1高熱伝導部材28を設けてもよい(図17のハッチング部参照)。また、図18に示すように、配列方向の間隔Bに対応する位置で、その全域のみに第1高熱伝導部材28を設けることもできる。なお、図18では便宜上、抵抗発熱体31と第1高熱伝導部材28を図18の上下方向にずらして示しているが、両者は配列交差方向のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材28が抵抗発熱体31の配列交差方向の一部に設けられていたり、後述の図19のように配列交差方向の全体を覆うようにして設けられていてもよい。
【0104】
さらに、図19に示すように、第1高熱伝導部材28を、配列方向の間隔Bに対応する位置に加えて、その間隔Bを間にはさむ両側の抵抗発熱体31にまたがって設けることもできる。この、両側の抵抗発熱体31にまたがって設ける、とは、第1高熱伝導部材28が両側の抵抗発熱体31と配列方向の位置が少なくとも一部重なることを言う。なお、ヒータ22の全ての間隔Bに対応して第1高熱伝導部材28を設けてもよいし、例えば図19のように間隔Bの1箇所に対応する位置にだけ第1高熱伝導部材28を設けるように、一部の間隔Bに対応する位置にだけ第1高熱伝導部材28を設けてもよい。ここで、配列方向の間隔Bに対応する位置に設ける、とは、間隔Bと配列方向に少なくともその一部が重なることを言う。
【0105】
加圧ローラ21の加圧力により、第1高熱伝導部材28はヒータ22とヒータホルダ23との間に挟み込まれてこれらの部材に密着する。第1高熱伝導部材28がヒータ22に接触することにより、ヒータ22の配列方向の熱伝導効率が向上する。そして、第1高熱伝導部材28が、配列方向において、ヒータ22の間隔Bに対応する位置に設けられることで、間隔Bにおける熱伝導効率を向上させることができる。これにより、配列方向の間隔Bの領域へ伝達される熱量を増やし、配列方向の間隔Bの領域における温度を上昇させることができる。従って、ヒータ22の配列方向の温度ムラを抑制できる。これにより、定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制できる。従って、用紙に定着される画像の定着ムラや光沢ムラを抑制できる。あるいは、間隔Bの領域において十分な定着性能を確保するために、ヒータ22による余分な加熱をする必要が無くなり、定着装置9の省エネ化を実現できる。また、配列方向の発熱部35全域にわたって第1高熱伝導部材28を設けることにより、ヒータ22による主な加熱領域、つまり、通紙される用紙の画像形成領域の全域において、ヒータ22の伝熱効率を向上させ、ヒータ22ひいては定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制できる。
【0106】
特に本実施形態では、上記の第1高熱伝導部材28の構成と前述したPTC特性を有する抵抗発熱体31との組み合わせにより、小サイズ用紙通紙時の非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。つまり、PTC特性により非通紙領域における抵抗発熱体31の発熱量を抑制すると共に、温度が上昇した非通紙部の熱量を通紙部の側へ効率的に伝達することができ、非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。
【0107】
また間隔Bの周辺においても、間隔Bの発熱量が小さいことによりその温度が小さくなるため、第1高熱伝導部材28を配置することが好ましい。例えば本実施形態では、領域C(図13参照)に対応する位置に第1高熱伝導部材28を設けることにより、間隔Bおよびその周辺における配列方向の熱伝達効率を特に向上させ、ヒータ22の配列方向の温度ムラをより抑制できる。特に本実施形態では、配列方向において、発熱部35の全域にわたって第1高熱伝導部材28が設けられる。これにより、ヒータ22(定着ベルト20)の配列方向の温度ムラをより抑制できる。
【0108】
次に、定着装置の異なる実施形態について説明する。
【0109】
図20に示すように、本実施形態の定着装置9は、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材28との間に第2高熱伝導部材36を有する。第2高熱伝導部材36は、ヒータホルダ23やステー24、第1高熱伝導部材28等の部材の積層方向である図20の左右方向において、第1高熱伝導部材28と異なる位置に設けられる。より詳しくは、第2高熱伝導部材36は第1高熱伝導部材28に重ね合わせされて設けられる。なお、図20図11とは異なり、配列方向のサーミスタ25が配置されていない断面を示している。つまり、図20では第2高熱伝導部材36が配置された断面を示している。
【0110】
第2高熱伝導部材36は基材30よりも熱伝導率の高い部材、例えばグラフェンやグラファイトにより構成される。本実施形態では、第2高熱伝導部材36は厚み1mmのグラファイトシートにより形成される。ただし、第2高熱伝導部材36をアルミニウムや銅、銀などの板材により形成してもよい。
【0111】
図21に示すように、配列方向に部分的に設けられた各第2高熱伝導部材36が、配列方向に複数配置される。ヒータホルダ23の凹部23bの第2高熱伝導部材36が設けられる部分は、その他の部分よりもその深さが一段深く設けられている。第2高熱伝導部材36は、その配列方向の両側で、ヒータホルダ23との間に隙間が設けられる。これにより、第2高熱伝導部材36の配列方向両端からのヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、図21では図11のガイドリブ26の記載を省略している。
【0112】
図22に示すように、第2高熱伝導部材36(ハッチング部参照)は、配列方向において、間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられ、特に本実施形態では、間隔B全域にわたって設けられる。ただし図22および後述の図26では、第1高熱伝導部材28が、配列方向の発熱部35に対応する領域のみに設けられる場合を示しているが、前述のようにこれに限らない。
【0113】
本実施形態のように、第1高熱伝導部材28に加えて、配列方向の間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に第2高熱伝導部材36を設けることで、間隔Bにおける配列方向の熱伝達効率を特に向上させ、ヒータ22の配列方向の温度ムラをより抑制できる。また、最も好ましくは、図23に示すように、間隔Bに対応する位置でその全域にのみ第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36を設ける。これにより、間隔Bに対応する位置で、その他の領域と比較して特に熱伝達効率を向上させることができる。なお、図23では便宜上、抵抗発熱体31と第1高熱伝導部材28そして第2高熱伝導部材36を、図23の上下方向にそれぞれずらして示しているが、これらは配列交差方向のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材28や第2高熱伝導部材36が、抵抗発熱体31の配列交差方向の一部に設けられていてもよい。
【0114】
上記と異なる本発明の一実施形態では、第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36が上記グラフェンシートにより構成される。これにより、グラフェンの面に沿う所定の方向、つまり、厚み方向ではなく配列方向に熱伝導率の高い第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36を形成できる。従って、ヒータ22や定着ベルト20の配列方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0115】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、図24に示すように、炭素原子の平面状の六角形格子構造からなる。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。炭素の単一層に不純物を含んでいてもよい。またグラフェンはフラーレン構造を有したものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成してなる化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0116】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法で作製されうる。
【0117】
グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0118】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、図25に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。つまり、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36をグラファイトにより構成することで、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36における配列方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ23への伝熱を抑制できる。従って、ヒータ22の配列方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ23側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36をグラファイトにより構成することで、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に持たせることができる。
【0119】
グラファイトシートの物性や寸法は、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることで、その熱伝導の異方性を高めることができる。また、定着装置9を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置9の熱容量を小さくしてもよい。また、定着ニップNやヒータ22の幅が大きい場合には、それに合わせて第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36の配列方向の幅を大きくしてもよい。
【0120】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。またグラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0121】
第2高熱伝導部材36は、配列方向において、間隔B(さらに領域C)に対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられればよく、図22の配置に限らない。例えば、図26に示すように、第2高熱伝導部材36Aは、配列交差方向において、基材30よりも配列交差方向の両側へ飛び出して設けられる。また第2高熱伝導部材36Bは、配列交差方向において、抵抗発熱体31が設けられる範囲に設けられる。第2高熱伝導部材36Cは、間隔Bの一部に設けられる。
【0122】
また、図27に示すように、本実施形態では、第1高熱伝導部材28とヒータホルダ23との間に、厚み方向である図27の左右方向の隙間を設ける。つまり、ヒータホルダ23のヒータ22、第1高熱伝導部材28、そして第2高熱伝導部材36を配置するための凹部23b(図21参照)の一部領域に、凹部23bの深さをその他の第1高熱伝導部材28を受ける部分よりも深くする断熱層としての逃げ部23cを設ける。この一部領域は、配列方向の第2高熱伝導部材36が設けられた部分以外の部分の一部または全部で、配列交差方向の一部領域である。これにより、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材28との接触面積を最小限にとどめることができる。従って、第1高熱伝導部材28からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、配列方向の第2高熱伝導部材36が設けられる断面では、前述の実施形態の図20のように、第2高熱伝導部材36がヒータホルダ23に当接する。
【0123】
また、特に本実施形態では、配列交差方向である図27の上下方向において、抵抗発熱体31が設けられた範囲全域にわたって逃げ部23cが設けられる。これにより、特に第1高熱伝導部材28からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、断熱層として、逃げ部23cのように空間を設ける構成の他、ヒータホルダ23よりも熱伝導率の低い断熱部材を設ける構成であってもよい。
【0124】
さらに、以上の説明では、第2高熱伝導部材36を第1高熱伝導部材28とは異なる部材として設けたが、これに限らない。例えば、第1高熱伝導部材28の間隔Bに対応する部分を、その他の部分よりも厚みを設けてもよい。
【0125】
また、図28に示すように、第1高熱伝導部材28とヒータホルダ23との間に断熱部材39を設ける構成であってもよい。図28では、ヒータホルダ23の開口部23aおよび断熱部材39の開口部39aを介して、第1高熱伝導部材28にサーミスタ25が接触する。
【0126】
以上の図20図27あるいは図28の実施形態においても、前述の実施形態と同様、部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25Bを配置して第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に接触させることにより、また通紙検知センサ29を配置することにより、課題1~3による異常を検知して解決できる。つまり、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、通紙検知センサ29により、用紙のサイズ間違いやセット位置の間違いを検知して定着ベルト20の端部温度上昇を防止できる。また端部側サーミスタ25Aにより端部の温度だれを検知できる。従って、低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することができる。
【0127】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0128】
また、本発明は、前述の定着装置のほか、図29図31に示すような定着装置にも適用可能である。以下、図29図31に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0129】
まず、図29に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ84が配置されている。押圧ローラ84は、回転部材としての定着ベルト20に対向して回転する対向回転部材である。この押圧ローラ84とヒータ22とが定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材45が配置されている。ニップ形成部材45は、ステー24によって支持されている。ニップ形成部材45と加圧ローラ21とによって、定着ベルト20を挟んで定着ニップNを形成している。
【0130】
次に、図30に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ84が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図29に示す定着装置9と同じ構成である。
【0131】
最後に、図31に示す定着装置9について説明する。定着装置9は、加熱アセンブリ92、定着部材である定着ローラ93、対向部材である加圧アセンブリ94からなる。加熱アセンブリ92は、先の実施形態で説明したヒータ22、第1高熱伝導部材28、ヒータホルダ23、ステー24、回転部材としての加熱ベルト120等を有する。定着ローラ93は、回転部材としての加熱ベルト120に対向して回転する対向回転部材である。また、定着ローラ93は、中実の鉄製芯金93aと、この芯金93aの表面に形成された弾性層93bと、弾性層93bの外側に形成された離型層93cとで構成されている。また、定着ローラ93に対して加熱アセンブリ92側とは反対側に、加圧アセンブリ94が設けられている。加圧アセンブリ94は、ニップ形成部材95とステー96とを配置し、これらニップ形成部材95とステー96を内包するように加圧ベルト97を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト97と定着ローラ93との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。図31の矢印Jは加圧ベルトの回転方向である。
【0132】
以上の図29図31の定着装置においても、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、通紙検知センサ29を配置することにより、課題1~3による異常を検知して解決できる。つまり、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、通紙検知センサ29により、用紙のサイズ間違いやセット位置の間違いを検知して定着ベルト20の端部温度上昇を防止できる。また端部側サーミスタ25Aにより端部の温度だれを検知できる。従って、低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することができる。
【0133】
また、本発明の搬送装置に設けられ、第一温度検知部材および第二温度検知部材を有する加熱装置は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らない。つまり、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置のような加熱装置であってもよい。このような加熱装置を備えた搬送装置にも本発明を適用することで、低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することができる。
【0134】
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0135】
例えば図32に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、感光体ドラムなどからなる画像形成手段50と、一対のタイミングローラ15等からなる用紙搬送部と、給紙装置7と、定着装置9と、排紙装置10と、読取部51と、を備える。給紙装置7は複数の給紙トレイ16とそれに対応する通紙検知センサ29および給紙ローラ17をそれぞれ備え、それぞれの給紙トレイ16が異なるサイズの用紙を収容する。
【0136】
本実施形態では通紙検知センサ29は給紙トレイ16内に設けられるが、搬送路上のタイミングローラ15の上流側近傍に設けてもよい。
【0137】
読取部51は原稿Qの画像を読み取る。読取部51は、読み取った画像から画像データを生成する。給紙装置7は、複数の用紙Pを収容し、搬送路へ用紙Pを送り出す。タイミングローラ15は搬送路上の用紙Pを画像形成手段50へ搬送する。
【0138】
画像形成手段50は、用紙Pにトナー像を形成する。具体的には、画像形成手段50は、感光体ドラムと、帯電ローラと、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写ローラと、クリーニング装置と、除電装置とを含む。トナー像は、例えば、原稿Qの画像を示す。定着装置9は、トナー像を加熱および加圧して、用紙Pにトナー像を定着させる。トナー像の定着された用紙Pは、搬送ローラなどにより排紙装置10へ搬送される。排紙装置10は、画像形成装置100の外部に用紙Pを排出する。
【0139】
次に、本実施形態の定着装置9について説明する。前述の実施形態の定着装置と共通する構成については、適宜その記載を省略する。
【0140】
図33に示すように、定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、サーミスタ25と、第1高熱伝導部材28等を備える。
【0141】
定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。定着ニップNのニップ幅は10mm、定着装置9の線速は240mm/sである。
【0142】
定着ベルト20はポリイミドの基体と離型層とを備え、弾性層を有していない。離型層は、例えばフッ素樹脂からなる耐熱性のフィルム材からなる。定着ベルト20の外径は約24mmである。
【0143】
加圧ローラ21は、芯金21aと弾性層21bと離型層21cとを含む。加圧ローラ21の外径は24~30mmで形成され、弾性層21bの厚みは3~4mmで形成される。
【0144】
ヒータ22は、基材と、断熱層と、抵抗発熱体などを含む導体層と、絶縁層とを含み、全体の厚みが1mmで形成される。また、ヒータ22の配列交差方向の幅Yは13mmである。
【0145】
図34に示すように、ヒータ22の導体層は、複数の抵抗発熱体31と、給電線33と、電極部34A~34Cとを備える。本実施形態においても、図34の拡大図に示すように、複数の抵抗発熱体31が配列方向に分割された分割領域としての間隔Bが形成される(ただし、図34では拡大図の範囲のみで間隔Bを図示しているが、実際は全ての抵抗発熱体31同士の間に間隔Bが設けられる)。抵抗発熱体31により、三つの発熱部35A~35Cが構成される。電極部34A,34Bに通電することにより、発熱部35A,35Cが発熱する。電極部34A,34Cに通電することにより、発熱部35Bが発熱する。例えば、小サイズ用紙に定着動作を行う場合には発熱部35Bを発熱させ、大サイズ用紙に定着動作を行う場合には全ての発熱部に発熱させることができる。
【0146】
図35に示すように、ヒータホルダ23は、その凹部23dにヒータ22および第1高熱伝導部材28を保持する。凹部23dは、ヒータホルダ23のヒータ22側に設けられる。凹部23dは、ヒータ22のその他の面よりもステー24側に凹となった基材30に略平行な面23d1と、ヒータホルダ23の配列方向両側(一方側でもよい)でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23d2と、配列交差方向両側でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23d3とにより構成される。ヒータホルダ23はガイドリブ26を有する。ヒータホルダ23はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0147】
図36に示すように、コネクタ60は、樹脂製(例えばLCP)のハウジングと、ハウジング内に設けられた複数のコンタクト端子等を備える。
【0148】
コネクタ60は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、各コンタクト端子が、ヒータ22の各電極部に接触(圧接)することで、コネクタ60を介して発熱部35と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部35へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部34は、コネクタ60との接続を確保するため、少なくとも一部が絶縁層に被覆されておらず露出した状態となっている。
【0149】
フランジ53は、定着ベルト20の配列方向の両側に設けられ、定着ベルト20の両端をベルトの内側から保持する。フランジ53は定着装置9の筐体に固定される。フランジ53はステー24の両端に挿入される(図36のフランジ53からの矢印方向参照)。
【0150】
コネクタ60のヒータ22およびヒータホルダ23に対する取り付け方向はヒータの配列交差方向である(図36のコネクタ60からの矢印方向参照)。コネクタ60のヒータホルダ23に対する取り付け時に、コネクタ60とヒータホルダ23との一方に設けた凸部が、他方に設けた凹部に係合し、凸部が凹部内を相対移動する構成としてもよい。またコネクタ60は、配列方向のいずれか一方側であって、加圧ローラ21の駆動モータが設けられる側とは反対側で、ヒータ22およびヒータホルダ23に取り付けられる。
【0151】
図37に示すように、定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーミスタ25が設けられる。サーミスタ25により検知された定着ベルト20の配列方向中央側と端部側のそれぞれの温度に基づいて、ヒータ22を制御する。
【0152】
定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーモスタット27が設けられる。サーモスタット27により検知された定着ベルト20の温度が定められた閾値を超えた場合には、ヒータ22への通電を停止する。
【0153】
定着ベルト20の配列方向両端には、定着ベルト20の各端部を保持するフランジ53が設けられる。フランジ53はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0154】
図38に示すように、フランジ53にはスライド溝53aが設けられる。スライド溝53aは、定着ベルト20の加圧ローラ21に対する接離方向に延在する。スライド溝53aには定着装置9の筐体の係合部が係合する。この係合部がスライド溝53a内を相対移動することにより、定着ベルト20は加圧ローラ21に対する接離方向へ移動できる。
【0155】
以上の定着装置9においても、前述の実施形態と同様、部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25Bを配置して第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に接触させることにより、また通紙検知センサ29を配置することにより、課題1~3による異常を検知して解決できる。つまり、端部側サーミスタ25A、中央側サーミスタ25B、通紙検知センサ29により、用紙のサイズ間違いやセット位置の間違いを検知して定着ベルト20の端部温度上昇を防止できる。また端部側サーミスタ25Aにより端部の温度だれを検知できる。従って、低コストで端部温度上昇による回転部材の破損を防止するとともに、回転部材の端部温度だれを抑制することができる。
【0156】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0157】
なお、本願の用語における、検知および検出は同義語とする。
【符号の説明】
【0158】
7 給紙装置(記録媒体供給部)
9 定着装置(加熱装置)
14 用紙搬送路(記録媒体の搬送路)
16 給紙トレイ
20 定着ベルト(回転部材あるいは定着部材)
21 加圧ローラ(対向回転部材あるいは加圧部材)
22 ヒータ(加熱体)
25A 端部側サーミスタ(第一温度検知部材)
25B 中央側サーミスタ(第二温度検知部材)
253 温度検知素子(温度検知部)
29 通紙検知センサ(記録媒体検知部材)
100 画像形成装置(搬送装置)
D 定着装置の加熱領域(加熱装置の加熱領域)
D0 加熱領域の中央位置
E 最大通紙領域(最大通過領域)
H 通紙検知センサの通紙検知領域(記録媒体検知部材の記録媒体検知領域)
N 定着ニップ(ニップ部)
P 用紙(記録媒体)
X 用紙の幅方向(記録媒体の搬送直交方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0159】
【特許文献1】特許第5924867号公報
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