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特開2023-122154付加硬化型シリコーン樹脂組成物、シリコーン硬化物及び光学デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122154
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン樹脂組成物、シリコーン硬化物及び光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/08 20060101AFI20230825BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
C08L83/08
C08L83/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025654
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 之人
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP042
4J002CP093
4J002CP141
4J002DA116
4J002DD006
4J002EW136
4J002EX037
4J002EX078
4J002EZ006
4J002FD073
4J002FD078
4J002FD142
4J002FD147
4J002FD148
4J002FD156
4J002GP00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低屈折率の付加硬化型シリコーン樹脂組成物であって、硬化後に、高温条件での使用においても透明性が高く硬度変化及び質量減少の少ないシリコーン硬化物を与える付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基及びケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基を有するオルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ケイ素原子に結合した下記一般式(1)で表される基を有し、かつ、ケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基を有するオルガノポリシロキサン、(D)白金族金属系触媒を含有するものである付加硬化型シリコーン樹脂組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加硬化型シリコーン樹脂組成物であって、
(A)一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基及び1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有し、かつ、下記一般式(1)で表される基を有しないオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有し、かつ、下記一般式(1)で表される基を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)一分子中に1~10個のケイ素原子に結合した下記一般式(1)で表される基を有し、かつ、一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有するオルガノポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒
を含有し、
(A)成分および(C)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数に対して、(B)成分および(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の合計数が0.5~5.0倍となるものであることを特徴とする付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基である。破線はケイ素原子との結合手を示す。)
【請求項2】
前記aが、2であることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるRが、水素原子またはメチル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
23℃における前記(C)成分の粘度が、1,000mPa・s以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
25℃における波長589nmの光の屈折率が、1.40未満のものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物であることを特徴とするシリコーン硬化物。
【請求項7】
光路長2mmにおける波長400nmの光の透過率が80%以上であることを特徴とする請求項6に記載のシリコーン硬化物。
【請求項8】
200℃、200時間後の質量残存率が90%以上であり、かつ、タイプA硬度の変化率が40%以下であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のシリコーン硬化物。
【請求項9】
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のシリコーン硬化物を有するものであることを特徴とする光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン樹脂組成物、シリコーン硬化物及び光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素原子を導入したシリコーン樹脂は、低屈折率であり、耐溶剤性および撥水性に優れるため、発光ダイオード素子等の電子デバイスに適用されている(特許文献1、2)。
一方、フッ素シリコーン樹脂は通常、シロキサンの側鎖にフルオロアルキル基を有し、中でも、コスト面および製造面からトリフルオロプロピル基(CF(CH-)が主に導入されているが、これらのフルオロアルキル基は高温に曝されると酸化・脱離することにより、著しい重量減少を引き起こし、また、硬さ変化によるクラックを発生させる要因になる。
【0003】
シリコーン樹脂に耐熱性を付与する方法としては、酸化セリウムを添加する方法、ならびに、セリウム含有希土類のカルボン酸塩、チタンアルコキシド化合物およびフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを反応して得られるポリオルガノメタロシロキサンを添加する方法(特許文献3)などが知られている。
【0004】
しかし、粒子である酸化セリウムを添加するとシリコーン樹脂の透明性を損なう場合があり、オルガノメタロシロキサンを耐熱性付与剤として使用した場合は、フッ素シリコーン樹脂の耐熱性試験における光透過率および質量の変化の抑制に関しては優れた効果を示すものの、硬さ変化に対して改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-010881号公報
【特許文献2】特開2015-168698号公報
【特許文献3】特開2020-196772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、低屈折率の付加硬化型シリコーン樹脂組成物であって、硬化後に、高温条件での使用においても透明性が高く硬度変化及び質量減少の少ないシリコーン硬化物を与える付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基及び1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有し、かつ、下記一般式(1)で表される基を有しないオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有し、かつ、下記一般式(1)で表される基を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)一分子中に1~10個のケイ素原子に結合した下記一般式(1)で表される基を有し、かつ、一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有するオルガノポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒
を含有し、
(A)成分および(C)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数に対して、(B)成分および(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の合計数が0.5~5.0倍となるものである付加硬化型シリコーン樹脂組成物を提供する。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基である。破線はケイ素原子との結合手を示す。)
【0008】
この付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、低屈折率のものである。また、この付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、硬化することによって、高温条件での使用においても波長400nm付近の光透過性に優れ、かつ、硬度変化及び質量減少の少ないシリコーン硬化物を与えるものである。
【0009】
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物においては、前記aが、2であることが好ましい。
【0010】
上記(A)成分および上記(C)成分が特定の上記フルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンであると、この付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、低屈折率であり、硬化後に、高温条件での使用において波長400nm付近の光透過性により優れ、かつ、硬度変化及び質量減少のより少ないシリコーン硬化物を与えるものとなる。
【0011】
また、前記一般式(1)におけるRが、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0012】
上記(C)成分が特定の上記一般式(1)で表される基を有するオルガノポリシロキサンであると、この付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、低屈折率であり、硬化後に、高温条件での使用において、波長400nm付近の光透過性により優れ、かつ、硬度変化及び質量減少のより少ないシリコーン硬化物を与えるものとなる。
【0013】
また、23℃における前記(C)成分の粘度が、1,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0014】
このような(C)成分であれば、(A)成分および(B)成分への相溶性により優れる。
【0015】
また、本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物においては、25℃における波長589nmの光の屈折率が、1.40未満のものであることが好ましい。
【0016】
このように、付加硬化型シリコーン樹脂組成物が上記所定未満の屈折率を示すものであると、この付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、光取出し効率により優れたシリコーン硬化物を与えるものとなる。
【0017】
また、本発明は、上記の付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物であるシリコーン硬化物を提供する。
【0018】
このシリコーン硬化物は、高温条件での使用においても波長400nm付近の光透過性に優れ、かつ、硬度変化及び質量減少の少ないものである。
【0019】
また、本発明のシリコーン硬化物においては、光路長2mmにおける波長400nmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。
【0020】
上記所定以上の光透過率を示すシリコーン硬化物は、高温条件での使用においても波長400nm付近の光透過性により優れるものとなる。
【0021】
また、200℃、200時間後の質量残存率が90%以上であり、かつ、タイプA硬度の変化率が40%以下であることが好ましい。
【0022】
上記の質量残存率と硬度の変化率を満たすシリコーン硬化物は、高温条件での使用に適するものである。
【0023】
また、本発明では、上記のシリコーン硬化物を有するものである光学デバイスを提供する。
【0024】
このような光学デバイスは、上記シリコーン硬化物を用いているため、信頼性が高いものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、低屈折率であり、硬化後に高温条件での使用においても波長400nm付近の光透過性に優れ、かつ、硬度変化及び質量減少の少ない硬化物を与える。従って、本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、LED素子の保護・封止用材料、波長の変更・調整用材料、ダイボンディング材、あるいはレンズの構成材料や、その他の光学デバイス用又は光学部品用の材料として特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上述のように、低屈折率の付加硬化型シリコーン樹脂組成物であって、高温条件での使用において波長400nm付近の光透過性に優れ、硬度変化及び質量減少の少ない硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0027】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、下記(A)~(D)成分を含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物であれば、上記課題を達成でき、光学デバイス用材料等として好適なものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0028】
即ち、本発明は、
(A)一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基及び1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有し、かつ、下記一般式(1)で表される基を有しないオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有し、かつ、下記一般式(1)で表される基を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)一分子中に1~10個のケイ素原子に結合した下記一般式(1)で表される基を有し、かつ、一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有するオルガノポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒
を含有し、
(A)成分および(C)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数に対して、(B)成分および(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の合計数が0.5~5.0倍となるものである付加硬化型シリコーン樹脂組成物である。
【化2】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基である。破線はケイ素原子との結合手を示す。)
【0029】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
[付加硬化型シリコーン組成物]
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、後述する(A)~(D)成分を含有するものである。
(A)一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基及び1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有し、かつ、下記一般式(1)で表される基を有しないオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有し、かつ、下記一般式(1)で表される基を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)一分子中に1~10個のケイ素原子に結合した下記一般式(1)で表される基を有し、かつ、一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有するオルガノポリシロキサン、
(D)白金族金属系触媒
【化3】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基である。破線はケイ素原子との結合手を示す。)
【0031】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0032】
<(A)成分>
(A)成分は、一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基及び1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有し、かつ、上記一般式(1)で表される基を有しないオルガノポリシロキサンである点で後述する(C)成分とは区別されるものである。
【0033】
ケイ素原子に結合したアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が例示され、炭素原子数2~10、特に2~6のアルケニル基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
【0034】
ケイ素原子に結合したアルケニル基は、一分子中に1個以上あればよいが、硬化性および得られる硬化物の硬度の点から2個以上が好ましい。
【0035】
ケイ素原子に結合したCF(CH-基において、aは、2以上の整数であり、好ましくは2~10であり、屈折率および原料の入手の観点からより好ましくは2である。
【0036】
ケイ素原子に結合したCF(CH-基は、一分子中に1個以上あればよいが、屈折率の点から好ましくは(A)成分中のケイ素原子に結合した全置換基の数のうち20%以上であることが好ましい。
【0037】
(A)成分には、上記のCF(CH-基以外にも、ケイ素原子に結合したCF-(CF-(CH-(ただし、bは1以上の整数、cは0以上の整数である)で表されるフルオロアルキル基を有することができ、bは好ましくは1≦b≦9を満たす整数であり、cは好ましくは1≦c≦5を満たす整数であり、原料の入手や製造の観点から、CF-(CF-(CH-、CF-(CF-(CH-で表される基であることがより好ましい。
【0038】
(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基及びフルオロアルキル基以外の置換基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~8の置換又は非置換の一価炭化水素基が好ましい。この一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、クロロシクロヘキシル基等のクロロアルキル基等が例示される。好ましくはアルキル基であり、より好ましいのはメチル基である。
【0039】
(A)成分は直鎖状または分岐状であってもよく、また液状、蝋状および固体であってもよく、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0040】
直鎖状の(A)成分としては、23℃における粘度が好ましくは1~100,000mPa・s以下であり、より好ましくは1~10,000mPa・s以下の範囲にあるものが好適である。粘度がこの範囲内であればより作業性に優れ、また、得られる硬化物の硬度がより高いものとなる。なお、以下において特に断らない限り、粘度は23℃におけるB型回転粘度計による測定値である。
【0041】
直鎖状の(A)成分の具体例としては、例えば、以下のもの等が挙げられる。
[(CH=CH)(CHSiO1/2[(CF-CH-CH)(CH) SiO]30
[(CH=CH)(CHSiO1/2][(CHSiO1/2][(CF-CH-CH)(CH)SiO]35
[(CH=CH)(CHSiO1/2[(CF-CH-CH)(CH) SiO]50[(CHSiO]20
[(CH=CH)(CHSiO1/2[(CF-CH-CH)(CH) SiO]30[(C-CH-CH)(CH)SiO]
(上記式中、シロキサン単位の配列順は任意である。)
【0042】
分岐状の(A)成分としては、単離のしやすさの点から重量平均分子量が500~100,000の範囲であるものが好適である。
【0043】
分岐状の(A)成分の具体例としては、例えば、以下の平均単位式で表されるもの等が挙げられる。
[(CHSiO1/21.8[(CH=CH)(CHSiO1/23.2[SiO4/24.3[(CF-CH-CH)SiO3/210.0
[(CHSiO1/21.3[(CH=CH)(CHSiO1/22.3[SiO4/23.9[(CF-CH-CH)SiO3/25.9
[(CH=CH)(CH)SiO2/22.1[(CF-CH-CH)SiO3/210.1[(CHSiO2/20.7
[(CH=CH)(CH)SiO2/22.1[(CF-CH-CH)SiO3/210.1[(CF-(CF-CH-CH)(CH)SiO2/20.7
(上記式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0044】
<(B)成分>
(B)成分は、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有し、かつ、上記一般式(1)で表される基を有しないオルガノポリシロキサンである点で後述する(C)成分とは区別されるものである。(B)成分は、(A)成分に含まれるアルケニル基とヒドロシリル化反応により架橋する架橋剤として作用する。
【0045】
(B)成分としては、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有し、上記一般式(1)で表される基を有しない有機ケイ素化合物であれば特に限定されず、オルガノハイドロジェンシラン類、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられるが、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造に特に制限はなく、例えば、直鎖状、環状、分岐状のものを使用することができる。
【0046】
(B)成分中のケイ素に結合した有機基は、アルケニル基を含まないことが好ましく、非置換の一価炭化水素基、又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、エポキシ基含有基(例えば、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)等で置換された一価炭化水素基を例示することができる。このような置換又は非置換の一価炭化水素基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、より好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられ、あるいはこれらの基が上記例示の置換基によって置換された基を挙げることができる。また、上記一価炭化水素基の置換基としてエポキシ基含有基及び/又はアルコキシ基を有する場合、本発明のシリコーン組成物の硬化物に接着性を付与することができる。
【0047】
さらなる低屈折率化や(A)成分との相溶性を図る観点から、(B)成分中のケイ素に結合した有機基は、CF(CH-基(ただし、aは2以上の整数である)を含んでもよい。
【0048】
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個有し、好ましくは2~200個、より好ましくは3~100個である。(B)成分の有機ケイ素化合物が直鎖状構造又は分岐状構造を有する場合、これらのSiH基は、分子鎖末端及び分子鎖非末端部分のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0049】
(B)成分の有機ケイ素化合物の一分子中のケイ素原子の数(重合度)は、好ましくは2~1,000、より好ましくは3~200、更により好ましくは4~100である。更に、(B)成分の有機ケイ素化合物は23℃で液状であることが好ましく、回転粘度計により測定された23℃における粘度は、好ましくは1~1,000mPa・s、より好ましくは10~100mPa・sである。
【0050】
(B)成分の有機ケイ素化合物としては、例えば、下記平均組成式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
【0051】
SiO(4-f-g)/2 (2)
(式中、Rは、それぞれ同一又は異なっていてもよい、アルケニル基を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基であり、f及びgは、0.7≦f≦2.1、0.001≦g≦1.0、かつ0.8≦f+g≦3.0、好ましくは1.0≦f≦2.0、0.01≦g≦1.0、かつ1.5≦f+g≦2.5を満たす数である。)
【0052】
のアルケニル基を含まない置換又は非置換の一価炭化水素基としては、非置換の一価炭化水素基として、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、より好ましくはメチル基又はエチル基が挙げられ、あるいはこれらの基が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、エポキシ基含有基(例えば、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)等で置換された一価炭化水素基を例示することができる。このような置換又は非置換の一価炭化水素基としては、置換の一価炭化水素基として、上記例示の置換基によって置換された基を挙げることができる。また、上記一価炭化水素基の置換基としてエポキシ基含有基及び/又はアルコキシ基を有する場合、本発明のシリコーン組成物の硬化物に接着性を付与することができる。また、さらなる低屈折率化や(A)成分との相溶性を図る観点から、Rとして、CF(CH-基(ただし、aは2以上の整数である)を含んでもよい。
【0053】
上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば下記式で表されるものが挙げられる。
【0054】
(RHSiO)
(R SiO1/2(RHSiO)
(R SiO1/2(RHSiO)14((CF-CH-CH)RSiO)14
(HR SiO1/2((CF-CH-CH)RSiO)(R SiO)
(上記式中、Rは上記の通りであり、各シロキサン単位の配列順は任意である。)
【0055】
また、上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、式:HSiO1/2で示されるシロキサン単位、式:RHSiOで示されるシロキサン単位及び/又は式:R HSiO1/2で示されるシロキサン単位を含むものであってもよい。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、SiH基を含まないトリオルガノシロキサン単位(M単位)、ジオルガノシロキサン単位(D単位)、モノオルガノシロキサン単位(T単位)及び/又はSiO4/2単位(Q単位)を含んでいてもよい。上記式中のRは上記の通りである。
【0056】
(B)成分の具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、これらの各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、式:R SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:RHSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位及び式:HSiO1/2で示されるシロキサン単位のどちらか一方又は両方とからなるオルガノシロキサン共重合体、及び、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。上記式中のRは、上記と同様の意味を有する。
【0057】
(B)成分の好ましい具体例としては、下記単位式で表されるもの等が挙げられる。
【0058】
[(CHSiO1/2[H(CH)SiO]
[(CHSiO1/2[(CF-CH-CH)(CH)SiO]14[H(CH)SiO2/214
(上記式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0059】
(B)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0060】
<(C)成分>
(C)成分は、一分子中に1~10個のケイ素原子に結合した下記式(1)で表される基を有し、かつ、一分子中に1個以上のケイ素原子に結合したCF(CH-で表される基(ただし、aは2以上の整数である)を有するオルガノポリシロキサンであり、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の耐熱性を向上させる成分である。(C)成分に含まれるテトラメチルピペリジニル基は酸素ラジカルをトラップする機能を果たし、(A)成分や(B)成分中のフルオロアルキル基が酸化および脱離することによる劣化を抑制し、シリコーン硬化物の硬さ上昇および質量減少を効果的に抑制する事ができる。また、(C)成分はCF-(CH-基を有し、(A)成分との相溶性に優れ、組成物中への分散性が高くなることにより耐熱性付与効果も高くなる。
【化4】
(式中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基である。破線はケイ素原子との結合手を示す。)
【0061】
上記一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基であり、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0062】
(C)成分は、ケイ素原子に結合した上記一般式(1)で表される基を一分子中に1~10個有し、(C)成分中のケイ素原子に結合した全置換基の数の50%以下であることが好ましい。この数が10個を超えると、(A)成分および(B)成分への相溶性が低下し、組成物の相分離や透明性の低下を引き起こす場合がある。
【0063】
上記一般式(1)で表される基をオルガノポリシロキサンに導入する方法としては、例えば、ヒドロキシ基を有する、もしくは塩素等のハロゲン置換されたテトラメチルピペリジン誘導体を原料とし、塩基の存在下で、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基もしくはハロゲン原子を有するオルガノポリシロキサンと反応させる方法、ヒドロキシ基を有するテトラメチルピペリジン誘導体とクロロジメチルビニルシランとを反応させた後、該反応物のビニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基とのヒドロシリル化反応により付加する方法等が挙げられる。
【0064】
ケイ素原子に結合したCF(CH-基において、aは、2以上の整数であり、好ましくは2~10であり、屈折率および原料の入手の観点からより好ましくは2である。
【0065】
ケイ素原子に結合したCF(CH-基は、一分子中に1個以上あればよいが、相溶性および屈折率の点から、好ましくは(C)成分中のケイ素原子に結合した全置換基の数のうち5%以上であることが好ましい。
【0066】
(C)成分には、上記のCF(CH-基以外にも、ケイ素原子に結合したCF-(CF-(CH-(ただし、bは1以上の整数、cは0以上の整数である)で表されるフルオロアルキル基を有することができ、bは好ましくは1≦b≦9を満たす整数であり、cは好ましくは1≦c≦5を満たす整数であり、原料の入手や製造の観点から、CF-(CF-(CH-、CF-(CF-(CH-で表される基であることがより好ましい。
【0067】
また、(C)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を含んでもよく、この場合、(A)成分と同様に(B)成分とヒドロシリル化反応し、(C)成分の分散度が良好な硬化物を得ることができる。アルケニル基としては(A)成分で例示されたものと同じものが挙げられ、ビニル基が好ましい。
【0068】
さらに、(C)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を含んでもよい。ケイ素原子に結合した水素原子を含むことで、(B)成分と同様に(A)成分とヒドロシリル化反応し、(C)成分の分散度が良好な硬化物を得ることができる。
【0069】
(C)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基及びフルオロアルキル基以外の置換基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~8の置換又は非置換の一価炭化水素基が好ましい。この一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、クロロシクロヘキシル基等のクロロアルキル基等が例示される。好ましくはアルキル基であり、より好ましいのはメチル基である。
【0070】
(C)成分は直鎖状または分岐状であってもよく、23℃におけるB型回転粘度計による粘度が1,000mPa・s以下であることが好ましく、300mPa・s以下であることがより好ましい。このような範囲であれば、(A)成分および(B)成分への相溶性により優れる。
【0071】
(C)成分の具体的例としては、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0072】
【化5】
【0073】
【化6】
【0074】
【化7】
【0075】
【化8】
【0076】
【化9】
【0077】
【化10】
【0078】
【化11】
(式中、Meはメチル基であり、括弧内のシロキサン単位の配列順は任意である。)
【0079】
(C)成分は一種単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0080】
(B)成分および(C)成分の配合量は、(A)成分および(C)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基の合計数に対して、(B)成分および(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)の合計数が0.5~5.0倍となる量であり、架橋のバランスの観点から、好ましくは0.7~3.0倍となる量である。0.5倍未満、又は、5.0倍を超えると、架橋が不十分又は過剰に進行し、硬度に優れた硬化物が得られない場合がある。
【0081】
また、(C)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲であることが好ましい。このような範囲であると、硬度および耐熱効果に優れた硬化物が得られる。
【0082】
<(D)成分>
(D)成分の白金族金属系触媒は、上記(A)成分および(C)成分中のアルケニル基と(B)成分及び(C)成分中のとのヒドロシリル化反応を進行及び促進させるための成分である。
【0083】
白金族金属系触媒は、特に限定されず、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンまたはアセチレン化合物との配位化合物等の白金化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物等が挙げられるが、(A)~(B)成分との相溶性が良好であり、クロル不純物をほとんど含有しないので、好ましくは塩化白金酸をシリコーン変性したものである。
【0084】
(D)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0085】
(D)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよいが、(A)~(B)成分の合計に対して、好ましくは白金族金属元素の質量換算で1~500ppm、好ましくは3~100ppm、より好ましくは5~40ppmである。この配合量を適切なものとすると、ヒドロシリル化反応をより効果的に促進させることができる。
【0086】
<その他の成分>
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、上記(A)~(D)成分以外にも、以下に例示するその他の成分を配合してもよい。
【0087】
(反応抑制剤)
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物には、必要に応じて(D)成分の付加反応触媒に対して硬化抑制効果を持つ化合物とされている従来公知の反応抑制剤(反応制御剤)を使用することができる。この反応抑制剤としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレン系化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体等が例示される。
【0088】
反応抑制剤による硬化抑制効果の度合いは、反応抑制剤の化学構造によって大きく異なるため、反応抑制剤の配合量は、使用する反応抑制剤ごとに最適な量に調整することが好ましい。通常は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して0.001~5質量部が好ましい。
【0089】
(接着性付与剤)
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、その接着性を向上させるための接着性付与剤を含有してもよい。この接着性付与剤としては、シランカップリング剤やその加水分解縮合物等が例示される。シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等公知のものが例示され、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計100質量部に対して好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.3~10質量部用いることができる。また、接着性付与剤は上述した接着性官能基を有しつつ、ケイ素原子に結合したアルケニル基もしくは水素原子を含んでいてもよい。この場合、(A)成分、(B)成分および(C)成分とヒドロシリル化反応を起こし、反応系内に取り込まれる。
【0090】
(充填剤)
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物には、結晶性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン等の無機質充填剤、及びこれらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を充填することができる。本成分としては、特にチクソ性を付与できる充填剤を使用することが好ましく、チクソ性を付与することによって作業性、機械特性に優れるシリコーン硬化物を得ることができる。
【0091】
<組成物の屈折率>
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、25℃における波長589nmの光の屈折率が、1.40未満のものであることが好ましい。屈折計(アタゴ社製、RX-5000)を用いて25℃における波長589nmの光の屈折率(nD25)を測定することができる。
【0092】
[硬化物]
さらに、本発明は、付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物(シリコーン硬化物)を提供する。
【0093】
このシリコーン硬化物は、高温条件での使用においても高透明であり、硬度変化及び質量減少が小さく、LED素子の封止材等の光学デバイス用材料として特に有用なものである。特に、本発明の付加硬化型シリコーン組成物が、(A)成分、(C)成分、場合により(B)成分中にフルオロアルキル基等を有するため、低屈折率で、光透過率を高めることができると共に光取出し効率も優れたシリコーン硬化物を得ることができる。
【0094】
本発明のシリコーン硬化物は、光路長2mmにおける波長400nmの光の透過率が80%以上であることが好ましい。
【0095】
光の透過率は、25℃における波長400nmの直進光の光透過率を分光光度計U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定することができる。
【0096】
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化は、公知の条件で行えばよく、一例としては100~180℃において10分~5時間の条件で硬化させることが出来る。
【0097】
また、本発明のシリコーン硬化物においては、200℃、200時間の熱処理が行われた後の質量残存率が90%以上であり、かつ、タイプA硬度(硬さ)の変化率が40%以下であることが好ましい。また、硬度の変化率は40%以下であることがより好ましい。なお、硬度は25℃におけるシリコーン硬化物のTypeA硬度をJIS-K6249:2003に準じ測定することができる。
【0098】
なお、硬度(硬さ)の変化率は以下の式により求められる。
(変化率%)=((200℃、200時間後の硬さ)÷(作製直後の硬さ)×100)-100
【0099】
[光学デバイス]
さらに、本発明は、上記シリコーン硬化物を有する光学デバイスを提供する。
【0100】
本発明の付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、高温条件での使用においても高透明であり、硬度変化及び質量減少が小さいシリコーン硬化物を与えることができる。このため、このシリコーン硬化物を用いた光学デバイスは信頼性が高いものとなる。
【実施例0101】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、粘度はB型回転粘度計を用いて測定した23℃における値である。また、各シロキサン単位の略号の意味は下記のとおりである。
【0102】
M:(CHSiO1/2
Vi:(CH=CH)(CHSiO1/2
D:(CHSiO2/2
:H(CH)SiO2/2
Vi:(CH=CH)(CH)SiO
:(CF-(CH)(CH)SiO
T:(CH)SiO3/2
:(CF-(CH)SiO3/2
【0103】
[合成例1]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、4-ヒドロキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン171g、トルエン60g、トリエチルアミン101.2gを入れ、均一溶液になるよう撹拌した。さらにビニルジメチルクロロシラン59.3gを滴下し、25℃で3時間撹拌した。得られた溶液に10%芒硝水200gを加え、15分撹拌し芒硝水とトルエンを分離した後、芒硝水を除去した。次いで、この水洗工程をさらに3回行ったのち、芒硝2gを添加し脱水を行った。芒硝を濾紙濾過によって取り除いた後、溶液を80℃で1時間減圧留去することでトルエンを取り除き、無色透明の液体を得た。NMR測定およびガスクロマトグラフィーにより、下記式で表される化合物が得られたことを確認した。
【0104】
【化12】
【0105】
[合成例2]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、4-ヒドロキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン42.7g、トルエン28g、トリエチルアミン25.3gを入れ、均一溶液になるよう撹拌した。さらにジメチルクロロシラン23.6gを滴下し、25℃で3時間撹拌した。得られた溶液に10%芒硝水200gを加え、15分撹拌し芒硝水とトルエンを分離した後、芒硝水を除去した。次いで、この水洗工程をさらに3回行ったのち、芒硝2gを添加し脱水を行った。芒硝を濾紙濾過によって取り除いた後、溶液を80℃で1時間減圧留去することでトルエンを取り除き、無色透明の液体を得た。NMR測定およびガスクロマトグラフィーにより、下記式で表される化合物が得られたことを確認した。
【0106】
【化13】
【0107】
[合成例3]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン157g、テトラヒドロフラン60g、トリエチルアミン101.2gを入れ、均一溶液になるよう撹拌した。さらにビニルジメチルクロロシラン59.3gを滴下し、25℃で3時間撹拌した。得られた溶液に10%芒硝水200gを加え、15分撹拌し芒硝水とトルエンを分離した後、芒硝水を除去した。次いで、この水洗工程をさらに3回行ったのち、芒硝2gを添加し脱水を行った。芒硝を濾紙濾過によって取り除いた後、溶液を80℃で1時間減圧留去することでトルエンを取り除き、無色透明の液体を得た。NMR測定およびガスクロマトグラフィーにより、下記式で表される化合物が得られたことを確認した。
【0108】
【化14】
【0109】
[合成例4]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、構成単位M で表される直鎖状オルガノポリシロキサン6.7gとヘキサフルオロメタキシレン1.7gを入れ、均一に溶解させた後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5%)0.013gを添加した。80℃まで加温し、合成例1で得られた化合物1.3gを滴下した後、80℃×5時間の条件で反応させた。25℃まで冷却後、活性炭0.04gを加えて1時間攪拌し、濾過して下記式で表されるオルガノポリシロキサン(C-1、淡黄色透明液体、粘度67mPa・s)を得た。
【0110】
【化15】
(式中、括弧内の各シロキサン単位の配列順は不定である。)
【0111】
[合成例5]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、構成単位M Vi で表される直鎖状オルガノポリシロキサン5.5gとヘキサフルオロメタキシレン1.5gを入れ、均一に溶解させた後、0.5%白金原子含有のトルエン溶液0.012gを添加した。80℃まで加温した後、合成例2で得られた化合物0.8gを滴下した後、80℃×5時間の条件で反応させた。25℃まで冷却後、活性炭0.04gを加えて1時間攪拌し、濾過して下記式で表されるオルガノポリシロキサン(C-2、淡黄色透明液体、粘度79mPa・s)を得た。
【0112】
【化16】
(式中、括弧内の各シロキサン単位の配列順は不定である。)
【0113】
[合成例6]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、構成単位M で表される直鎖状オルガノポリシロキサン6.7gとヘキサフルオロメタキシレン1.7gを入れ、均一に溶解させた後、0.5%白金原子含有のトルエン溶液0.013gを添加した。80℃まで加温した後、合成例3で得られた化合物1.4gを滴下した後、80℃×5時間の条件で反応させた。25℃まで冷却後、活性炭0.04gを加えて1時間攪拌し、濾過して下記式で表されるオルガノポリシロキサン(C-3、淡黄色透明液体、粘度85mPa・s)を得た。
【0114】
【化17】
(式中、括弧内の各シロキサン単位の配列順は不定である。)
【0115】
[合成例7]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、構成単位D で表される環状オルガノポリシロキサン46.8gおよびノナフルオロヘキシルジクロロシラン36.1g、ヘキサメチルリン酸トリアミド0.58gを入れ、25℃で5時間反応させ、中間体を得た。
【0116】
次いで、4-ヒドロキシ1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン34.1g、トリエチルアミン20.2g、トルエン29g、ヘキサフルオロメタキシレン29.3gを均一に混合した溶液に、上記中間体を滴下し、25℃で4時間反応させた。得られた溶液に10%芒硝水200gを加え、15分撹拌し芒硝水とトルエンを分離した後、芒硝水を除去した。次いで、この水洗工程をさらに3回行ったのち、芒硝2gを添加し脱水を行った。芒硝を濾紙濾過によって取り除いた後、溶液を120℃で1時間減圧留去することでトルエンを取り除き、下記式で表されるオルガノポリシロキサン(C-4、無色透明液体、粘度190mPa・s)を得た。
【0117】
【化18】
【0118】
[合成例8]
粘度100mPa・sの両末端トリメチルキロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100質量部に、セリウムを主成分とする希土類元素の2-エチルヘキサン酸塩のターペン溶液(希土類元素含有量6質量%)10質量部(セリウムとして0.55部)とテトラn-ブチルチタネート2.1質量部(チタン質量が上記2-エチルヘキサン酸塩中のセリウム質量の0.3倍)とを予め混合したものを攪拌しながら添加し、黄白色の分散液を得た。これを窒素ガスを少量流通させながら加熱してターペンを流出させ、次いで300℃で1時間加熱し、濃赤褐色透明のオルガノメタロシロキサン組成物(C-5)を得た。
【0119】
[合成例9]
[(CHSiO1/2[(CF-(CH)(CH)SiO]13で表されるポリシロキサン(屈折率1.38、粘度450mPa・s)100質量部に、セリウムを主成分とする希土類元素の2-エチルヘキサン酸塩のターペン溶液(希土類元素含有量6質量%)10質量部(セリウムとして0.55部)とテトラn-ブチルチタネート2.1質量部(チタン質量が上記2-エチルヘキサン酸塩中のセリウム質量の0.3倍)とを予め混合したものを攪拌しながら添加し、黄白色の分散液を得た。これを窒素ガスを少量流通させながら、加熱してターペンを流出させ、次いで300℃で1時間加熱し、赤褐色透明のオルガノメタロシロキサン組成物(C-6)を得た。
【0120】
[合成例10]
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、構成単位Dで表される環状オルガノポリシロキサン22.2g、ジメチルジクロロシラン12.9gおよびヘキサメチルリン酸トリアミド0.58gを入れ、25℃で5時間反応させ、中間体を得た。
【0121】
次いで、4-ヒドロキシ1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン34.1g、トリエチルアミン20.2g、トルエン29g、ヘキサフルオロメタキシレン29.3gを均一に混合した溶液に、上記中間体を滴下し、25℃で4時間反応させた。得られた溶液に10%芒硝水200gを加え、15分撹拌し芒硝水とトルエンを分離した後、芒硝水を除去した。次いで、この水洗工程をさらに3回行った後、芒硝2gを添加し脱水を行った。芒硝を濾紙濾過によって取り除いた後、溶液を120℃で1時間減圧留去することでトルエンを取り除き、下記式で表されるオルガノポリシロキサン(C-7、無色透明液体、粘度37mPa・s)を得た。
【0122】
【化19】
【0123】
[実施例1~5、比較例1~6]
表1に示す配合量(質量部)で下記の各成分を混合し、付加硬化型シリコーン組成物を調製した。
【0124】
(A)成分:
(A-1)MVi 27で表される、粘度2,000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサン
(A-2)構成単位比T/DVi=7/3で表される、重量平均分子量1,900の分岐状オルガノポリシロキサン
(A-3)MVi 16170で表される、粘度5,000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサン
(A-4)M 7030Vi 10で表される、粘度2,200mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサン
【0125】
(B)成分:
(B-1)M で表される、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B-2)M 14 14で表される、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0126】
(C)成分:
(C-1)合成例4で得られたオルガノポリシロキサン
(C-2)合成例5で得られたオルガノポリシロキサン
(C-3)合成例6で得られたオルガノポリシロキサン
(C-4)合成例7で得られたオルガノポリシロキサン
(C-5)合成例8で得られたオルガノメタロシロキサン組成物
(C-6)合成例9で得られたオルガノメタロシロキサン組成物
(C-7)合成例10で得られたオルガノポリシロキサン
【0127】
(D)成分:
六塩化白金酸と1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)
【0128】
(E)成分:
エチニルシクロヘキサノール
【0129】
実施例1~5および比較例1~6において得られた付加硬化型シリコーン樹脂組成物について、下記の評価を行い、結果を表2に示した。
【0130】
[外観]
各組成物の外観を目視で観察した。
【0131】
[屈折率]
各組成物について、屈折計(アタゴ社製、RX-5000)を用いて25℃における波長589nmの光の屈折率(nD25)を測定した。
【0132】
[硬さ]
付加硬化型シリコーン樹脂組成物を150℃で2時間加熱硬化させて得たシリコーン硬化物について、シリコーン硬化物の作製直後、及び、シリコーン硬化物を200℃(実施例1~4、比較例1~5)または230℃(実施例5、比較例6)の環境下に200時間保管後、25℃におけるシリコーン硬化物のTypeA硬度(硬さ)をJIS-K6249:2003に準じ測定した。硬さの変化率は下記の式に従って求めた。
【0133】
(変化率%)=((200℃または230℃、200時間後の硬さ)÷(作製直後の硬さ)×100)-100
【0134】
[光透過率]
付加硬化型シリコーン樹脂組成物を2mm厚になるよう型に流し込み、150℃で2時間加熱硬化させて得たシリコーン硬化物について、シリコーン硬化物の作製直後、及び、シリコーン硬化物を200℃(実施例1~4、比較例1~5)または230℃(実施例5、比較例6)の環境に200時間保管後、25℃における波長400nmの直進光の光透過率を分光光度計U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を用いてそれぞれ測定した。
【0135】
[耐熱性試験後の質量残存率]
上記光透過率の測定に用いたシリコーン硬化物の初期質量を100としたときの、200℃(実施例1~4、比較例1~5)または230℃(実施例5、比較例6)の環境に200時間保管後の質量を測定し、耐熱試験後の質量%を算出した。
【0136】
【表1】
【0137】
SiH基/アルケニル基:(A)成分及び(C)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個に対する(B)成分及び(C)成分中のSiH基の個数
【表2】
【0138】
1)クラック発生のため測定不能
【0139】
表2に示されるように、実施例1~5の付加硬化型シリコーン組成物を用いた硬化物は、高い光透過率を示し、加えて、耐熱試験後においても硬さ、光透過率および質量の変化が小さく、耐熱性に優れていた。
【0140】
一方、比較例1、2および6は耐熱付与剤を含まないため、初期の光透過率は高いものの、熱による硬さおよび質量の変化が非常に大きく、全体にクラックが発生するなど耐熱性に劣る硬化物となった。
【0141】
実施例4における(C-4)成分に代えて、セリウムおよびチタンを含みフルオロアルキル基を有しないオルガノメタロシロキサンを用いた比較例3は、(A)成分および(B)成分との相溶性に劣り透明性が低下したほか、熱による硬さの変化が大きいものであった。また、セリウムおよびチタンを含みフルオロアルキル基を有するオルガノメタロシロキサンを用いた比較例4は、光透過率は良好なものの、熱による硬さの変化が大きい結果となった。更に、ピペリジン骨格を有するがフルオロアルキル基を有しないオルガノポリシロキサンを用いた比較例5は、(A)成分および(B)成分との相溶性に劣り透明性が低下したほか、硬化物の耐熱性に劣る結果となった。
【0142】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。