(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122195
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】園芸用トンネルの換気部材及び換気部材施工方法
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20230825BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
A01G13/02 K
A01G9/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025749
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】米田 有希
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 浩樹
【テーマコード(参考)】
2B024
2B029
【Fターム(参考)】
2B024EA02
2B024EA03
2B024EA07
2B024EA08
2B024EA10
2B029NA02
2B029NA07
2B029NA08
2B029NA09
2B029NA11
(57)【要約】
【課題】換気を容易に行える園芸用トンネルの換気部材を提供すること。
【解決手段】少なくとも園芸用トンネル3に配置される状態では被覆シート2に沿った円弧形状である主フレーム材11を有し、主フレーム材11として、第1主フレーム材11Xと第2主フレーム材11Yとを有し、第1主フレーム材11Xと第2主フレーム材11Yとの間に被覆材12を設け、第1主フレーム材11Xの一端側と第2主フレーム材11Yの一端側とを支持材13で接続し、園芸用トンネル3を保温状態とする時には支持材13を被覆シート2の一方側の裾に配置し、第1主フレーム材11Xの他端側と第2主フレーム材11Yの他端側とを、被覆シート2の他方側の裾に配置し、第1主フレーム材11Xの他端側と第2主フレーム材11Yの他端側とを支点として、支持材13を被覆シート2の一方側の裾から離間させることで園芸用トンネル3を換気状態とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で複数本の円弧状の支柱が畝に沿って立設され、複数本の前記支柱に被覆シートを被せて前記畝を覆う園芸用トンネルの一部に配置して用いる園芸用トンネルの換気部材であって、
少なくとも前記園芸用トンネルに配置される状態では前記被覆シートに沿った円弧形状である主フレーム材を有し、
前記主フレーム材として、第1主フレーム材と第2主フレーム材とを有し、
前記第1主フレーム材と前記第2主フレーム材との間に被覆材を設け、
前記第1主フレーム材の一端側と前記第2主フレーム材の一端側とを支持材で接続し、
前記園芸用トンネルを保温状態とする時には前記支持材を前記被覆シートの一方側の裾に配置し、
前記第1主フレーム材の他端側と前記第2主フレーム材の他端側とを、前記被覆シートの他方側の裾に配置し、
前記第1主フレーム材の前記他端側と前記第2主フレーム材の前記他端側とを支点として、前記支持材を前記被覆シートの前記一方側の前記裾から離間させることで前記園芸用トンネルを換気状態とする
ことを特徴とする園芸用トンネルの換気部材。
【請求項2】
前記主フレーム材の長手方向の中心部付近に把手部を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の園芸用トンネルの換気部材。
【請求項3】
前記第1主フレーム材の前記一端側と前記第2主フレーム材の前記一端側、前記第1主フレーム材の前記一端側と前記第2主フレーム材の前記一端側との間に位置する前記被覆材、又は前記支持材に、留め具を設け、
前記留め具を係止状態とすることで、前記被覆シートの前記一方側の裾での前記支持材の配置を維持し、
前記留め具を解除状態とすることで、前記支持材を前記被覆シートの前記一方側の前記裾から離間させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の園芸用トンネルの換気部材。
【請求項4】
前記留め具として面ファスナーを用いる
ことを特徴とする請求項3に記載の園芸用トンネルの換気部材。
【請求項5】
前記第1主フレーム材の前記一端側と前記第2主フレーム材の前記一端側とに係止部材を設け、
前記支持材を前記被覆シートの前記一方側の前記裾から離間させた状態では、前記係止部材によって前記第1主フレーム材、前記第2主フレーム材、前記被覆材、及び前記支持材を、前記園芸用トンネルに保持する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の園芸用トンネルの換気部材。
【請求項6】
前記換気状態における前記主フレーム材を前記園芸用トンネルに保持するストッパーを有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の園芸用トンネルの換気部材。
【請求項7】
前記ストッパーを、前記主フレーム材と前記支柱とを接続する接続材とした
ことを特徴とする請求項6に記載の園芸用トンネルの換気部材。
【請求項8】
前記主フレーム材の長手方向の中心部付近に把手部を設け、
前記第1主フレーム材の前記一端側と前記第2主フレーム材の前記一端側とに係止部材を設け、
前記換気状態では、前記係止部材を前記把手部に係止する
ことを特徴とする請求項1に記載の園芸用トンネルの換気部材。
【請求項9】
前記把手部が、前記主フレーム材に取り付ける取付部と、前記取付部から立ち上がる立上部と、前記立上部の先端から角度を変えて延出する握り部と、前記握り部の先端から前記立上部に平行に延出する立下部と、前記立下部の先端から前記握り部に平行に演出する抜け止め部とからなり、
前記立上部が、前記主フレーム材の前記一端側となるように、前記主フレーム材に配置する
ことを特徴とする請求項8に記載の園芸用トンネルの換気部材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の園芸用トンネルの換気部材を用いた換気部材施工方法であって、
前記畝に沿って配置される前記被覆シートの一部の前記裾を地面から離間させて前記換気状態とし、
前記換気状態とした前記裾の位置を、前記被覆材で覆うように前記主フレーム材を配置する
ことを特徴とする換気部材施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆材を対象物に被せる園芸用トンネルの換気部材及び換気部材施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸用トンネルは、アーチ状の支柱にビニールなどの被覆材を被覆する構造で、夜間の低温環境でも保温効果が得られる。一方、日中は太陽光により、トンネル内は高温環境になってしまうため、裾部分を引き上げて換気を行う。この換気作業は、かがんで被覆資材を上げ下げする必要があり、作業者にとっての労働負荷が大きい。
これまでに、気温変化を利用した裾換気(特許文献1から特許文献3)の自動化や、トンネルの基本構造を変える方法(特許文献4から特許文献11)が考えられている。
特許文献4から特許文献6は蛇腹式開閉を提案し、特許文献7及び特許文献8は上部開閉式を提案し、特許文献9から特許文献11は穴あけ換気を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-254689号公報
【特許文献2】実願昭60-108748号(実開昭62-16254号)のマイクロフィルム
【特許文献3】実用新案登録3167867号公報
【特許文献4】特開2018-93855号公報
【特許文献5】特開2009-136293号公報
【特許文献6】特開2012-143165号公報
【特許文献7】特開平09-182531号公報
【特許文献8】実願平04-42822号(実開平06-3052号)のCD-ROM
【特許文献9】特開2006-14633号公報
【特許文献10】特開平10-215710号公報
【特許文献11】特開2001-112359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1から特許文献3に記載された裾換気方式では、急な天候の変化に対応できないという問題があり、特許文献4から特許文献10に記載された新たなトンネル構造や特許文献11に記載された新たなトンネル構造又は被覆材構造においても、複数箇所を同時に微調整できるものではない。
このように、園芸用トンネルの換気部材では、換気が重要な作業であるが、作業者の負担も大きく、農業従事者の高齢化を考慮すると、今後さらに換気作業の省力化は求められる。
【0005】
そこで本発明は、換気を容易に行える園芸用トンネルの換気部材及び換気部材施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の園芸用トンネル3の換気部材10は、所定間隔で複数本の円弧状の支柱が畝に沿って立設され、複数本の前記支柱に被覆シート2を被せて前記畝を覆う園芸用トンネル3の一部に配置して用いる園芸用トンネル3の換気部材10であって、少なくとも前記園芸用トンネル3に配置される状態では前記被覆シート2に沿った円弧形状である主フレーム材11を有し、前記主フレーム材11として、第1主フレーム材11Xと第2主フレーム材11Yとを有し、前記第1主フレーム材11Xと前記第2主フレーム材11Yとの間に被覆材12を設け、前記第1主フレーム材11Xの一端11a側と前記第2主フレーム材11Yの一端11a側とを支持材13で接続し、前記園芸用トンネル3を保温状態とする時には前記支持材13を前記被覆シート2の一方側の裾に配置し、前記第1主フレーム材11Xの他端11b側と前記第2主フレーム材11Yの他端11b側とを、前記被覆シート2の他方側の裾に配置し、前記第1主フレーム材11Xの前記他端11b側と前記第2主フレーム材11Yの前記他端11b側とを支点として、前記支持材13を前記被覆シート2の前記一方側の前記裾から離間させることで前記園芸用トンネル3を換気状態とすることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の園芸用トンネル3の換気部材10において、前記主フレーム材11の長手方向の中心部付近に把手部14を設けたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の園芸用トンネル3の換気部材10において、前記第1主フレーム材11Xの前記一端11a側と前記第2主フレーム材11Yの前記一端11a側、前記第1主フレーム材11Xの前記一端11a側と前記第2主フレーム材11Yの前記一端11a側との間に位置する前記被覆材12、又は前記支持材13に、留め具15を設け、前記留め具15を係止状態とすることで、前記被覆シート2の前記一方側の裾での前記支持材13の配置を維持し、前記留め具15を解除状態とすることで、前記支持材13を前記被覆シート2の前記一方側の前記裾から離間させることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の園芸用トンネル3の換気部材10において、前記留め具15として面ファスナーを用いることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の園芸用トンネル3の換気部材10において、前記第1主フレーム材11Xの前記一端11a側と前記第2主フレーム材11Yの前記一端11a側とに係止部材16を設け、前記支持材13を前記被覆シート2の前記一方側の前記裾から離間させた状態では、前記係止部材16によって前記第1主フレーム材11X、前記第2主フレーム材11Y、前記被覆材12、及び前記支持材13を、前記園芸用トンネル3に保持することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の園芸用トンネル3の換気部材10において、前記換気状態における前記主フレーム材11を前記園芸用トンネル3に保持するストッパー17を有することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6に記載の園芸用トンネル3の換気部材10において、前記ストッパー17を、前記主フレーム材11と前記支柱とを接続する接続材としたことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1に記載の園芸用トンネル3の換気部材10において、前記主フレーム材11の長手方向の中心部付近に把手部14を設け、前記第1主フレーム材11Xの前記一端11a側と前記第2主フレーム材11Yの前記一端11a側とに係止部材16を設け、前記換気状態では、前記係止部材16を前記把手部14に係止することを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の園芸用トンネル3の換気部材10において、前記把手部14が、前記主フレーム材に取り付ける取付部14aと、前記取付部14aから立ち上がる立上部14bと、前記立上部14bの先端から角度を変えて延出する握り部14cと、前記握り部14cの先端から前記立上部14bに平行に延出する立下部14dと、前記立下部14dの先端から前記握り部14cに平行に演出する抜け止め部14eとからなり、前記立上部14bが、前記主フレーム材11の前記一端11a側となるように、前記主フレーム材11に配置することを特徴とする。
請求項10記載の本発明の換気部材施工方法は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の園芸用トンネル3の換気部材10を用いた換気部材施工方法であって、前記畝に沿って配置される前記被覆シート2の一部の前記裾を地面から離間させて前記換気状態とし、前記換気状態とした前記裾の位置を、前記被覆材12で覆うように前記主フレーム材11を配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の園芸用トンネルの換気部材によれば、支持材を被覆シートの一方側の裾から離間させることで保温状態から換気状態にすることができるため、被覆シートの裾を手作業で開閉する手間が無く、保温状態と換気状態とを容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の本実施例による園芸用トンネルの換気部材を示す概念図
【
図3】本発明の他の実施例による園芸用トンネルの換気部材を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による園芸用トンネルの換気部材は、少なくとも園芸用トンネルに配置される状態では被覆シートに沿った円弧形状である主フレーム材を有し、主フレーム材として、第1主フレーム材と第2主フレーム材とを有し、第1主フレーム材と第2主フレーム材との間に被覆材を設け、第1主フレーム材の一端側と第2主フレーム材の一端側とを支持材で接続し、園芸用トンネルを保温状態とする時には支持材を被覆シートの一方側の裾に配置し、第1主フレーム材の他端側と第2主フレーム材の他端側とを、被覆シートの他方側の裾に配置し、第1主フレーム材の他端側と第2主フレーム材の他端側とを支点として、支持材を被覆シートの一方側の裾から離間させることで園芸用トンネルを換気状態とするものである。本実施の形態によれば、支持材を被覆シートの一方側の裾から離間させることで保温状態から換気状態にすることができるため、被覆シートの裾を手作業で開閉する手間が無く、保温状態と換気状態とを容易に変更できる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による園芸用トンネルの換気部材において、主フレーム材の長手方向の中心部付近に把手部を設けたものである。本実施の形態によれば、支持材を被覆シートの一方側の裾から離間させる作業を立姿勢で行うことができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による園芸用トンネルの換気部材において、第1主フレーム材の一端側と第2主フレーム材の一端側、第1主フレーム材の一端側と第2主フレーム材の一端側との間に位置する被覆材、又は支持材に、留め具を設け、留め具を係止状態とすることで、被覆シートの一方側の裾での支持材の配置を維持し、留め具を解除状態とすることで、支持材を被覆シートの一方側の裾から離間させるものである。本実施の形態によれば、風によって主フレーム材や被覆材が浮き上がることを防止でき、保温状態を維持することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による園芸用トンネルの換気部材において、留め具として面ファスナーを用いるものである。本実施の形態によれば、留め具の係止と解除を容易に行うことができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による園芸用トンネルの換気部材において、第1主フレーム材の一端側と第2主フレーム材の一端側とに係止部材を設け、支持材を被覆シートの一方側の裾から離間させた状態では、係止部材によって第1主フレーム材、第2主フレーム材、被覆材、及び支持材を、園芸用トンネルに保持するものである。本実施の形態によれば、換気状態において、被覆材を地面から離間させた状態を維持でき、被覆材の汚れを防止できるとともに、畝に沿って移動する作業者の障害にもならない。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による園芸用トンネルの換気部材において、換気状態における主フレーム材を園芸用トンネルに保持するストッパーを有するものである。本実施の形態によれば、ストッパーによって換気状態にある主フレーム材を園芸用トンネルの上方位置で保持できるため、換気状態において、被覆材を地面から離間させた状態を維持でき、被覆材の汚れを防止できるとともに、畝に沿って移動する作業者の障害にもならない。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態による園芸用トンネルの換気部材において、ストッパーを、主フレーム材と支柱とを接続する接続材としたものである。本実施の形態によれば、風によって主フレーム材が園芸用トンネルから離脱して飛ばされ、損失してしまうことを防止できる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第1の実施の形態による園芸用トンネルの換気部材において、主フレーム材の長手方向の中心部付近に把手部を設け、第1主フレーム材の一端側と第2主フレーム材の一端側とに係止部材を設け、換気状態では、係止部材を把手部に係止するものである。本実施の形態によれば、支持材を被覆シートの一方側の裾から離間させる作業を立姿勢で行うことができるとともに、換気状態において、被覆材を地面から離間させた状態を維持でき、被覆材の汚れを防止できるとともに、畝に沿って移動する作業者の障害にもならない。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による園芸用トンネルの換気部材において、把手部が、主フレーム材に取り付ける取付部と、取付部から立ち上がる立上部と、立上部の先端から角度を変えて延出する握り部と、握り部の先端から立上部に平行に延出する立下部と、立下部の先端から握り部に平行に演出する抜け止め部とからなり、立上部が、主フレーム材の一端側となるように、主フレーム材に配置するものである。本実施の形態によれば、係止部材を把手部に係止する作業性を高めることができる。
【0018】
本発明の第10の実施による換気部材施工方法は、第1から第9のいずれかの実施の形態による園芸用トンネルの換気部材を用い、畝に沿って配置される被覆シートの一部の裾を地面から離間させて換気状態とし、換気状態とした裾の位置を、被覆材で覆うように主フレーム材を配置するものである。本実施の形態によれば、被覆材によって園芸用トンネルを覆うことで保温状態とすることができ、支持材を被覆シートの一方側の裾から離間させることで保温状態から換気状態にすることができる。
【実施例0019】
以下本発明の一実施例による園芸用トンネルの換気部材について説明する。
図1は本実施例による園芸用トンネルの換気部材を示す概念図であり、
図1(a)は同換気部材の動作状態を示す概念斜視図、
図1(b)は同換気部材によって園芸用トンネルを保温した状態を示す側面図、
図1(c)は同換気部材の動作途中を示す側面図、
図1(d)は同換気部材によって園芸用トンネルを換気した状態を示す側面図である。
本実施例による園芸用トンネル3の換気部材10は、所定間隔で複数本の円弧状の支柱1が畝に沿って立設され、複数本の支柱1に被覆シート2を被せて畝を覆う園芸用トンネル3の一部に配置して用いるものである。
なお、
図1(a)に示す換気部材10Aは
図1(b)に示す状態にある換気部材10を、
図1(a)に示す換気部材10Bは
図1(c)に示す状態にある換気部材10を、
図1(a)に示す換気部材10Cは
図1(d)に示す状態にある換気部材10であり、
図1(a)では、3つの状態にある換気部材10を示している。
【0020】
本実施例による園芸用トンネル3の換気部材10は、少なくとも園芸用トンネル3に配置される状態では被覆シート2に沿った円弧形状である主フレーム材11を有し、主フレーム材11として、第1主フレーム材11Xと第2主フレーム材11Yとを有している。
換気部材10は、第1主フレーム材11Xと第2主フレーム材11Yとの間に被覆材12を設け、第1主フレーム材11Xの一端11a側と第2主フレーム材11Yの一端11a側とを支持材13で接続している。
園芸用トンネル3を保温状態とする時には、支持材13を被覆シート2の一方側の裾に配置し、第1主フレーム材11Xの他端11b側と第2主フレーム材11Yの他端11b側とを、被覆シート2の他方側の裾に配置する。
第1主フレーム材11Xの他端11b側と第2主フレーム材11Yの他端11b側とを支点として、支持材13を被覆シート2の一方側の裾から離間させることで園芸用トンネル3を換気状態とする。
このように、支持材13を被覆シート2の一方側の裾から離間させることで園芸用トンネル3を保温状態から換気状態にすることができるため、被覆シート2の裾を手作業で開閉する手間が無く、保温状態と換気状態とを容易に変更できる。
【0021】
換気部材10は、主フレーム材11の長手方向の中心部付近に把手部14を設けている。主フレーム材11に把手部14を設けることで、支持材13を被覆シート2の一方側の裾から離間させる作業を立姿勢で行うことができる。なお、把手部14は、主フレーム材11の長手方向の中心部、又は主フレーム材11の長手方向の中心部より、主フレーム材11の一端11a側に若干ずらした位置に設けることが好ましい。
また、換気部材10は、第1主フレーム材11Xの一端11a側と第2主フレーム材11Yの一端11a側との間に位置する被覆材12に、留め具15を設けている。留め具15には、例えば面ファスナーが適している。留め具15として面ファスナーを用いることで、留め具15の係止と解除を容易に行うことができる。なお、留め具15には、磁石を用いることもできる。
換気部材10は、留め具15を係止状態とすることで、被覆シート2の一方側の裾での支持材13の配置を維持し、留め具15を解除状態とすることで、支持材13を被覆シート2の一方側の裾から離間させることができる。
このような留め具15を設けることで、風によって主フレーム材11や被覆材12が浮き上がることを防止でき、園芸用トンネル3を保温状態に維持することができる。
【0022】
また、換気部材10は、第1主フレーム材11Xの一端11a側と第2主フレーム材11Yの一端11a側とに係止部材16を設けている。
なお、本実施例においては、第1主フレーム材11Xの一端11a側と第2主フレーム材11Yの一端11a側とを接続する支持材13を説明したが、第1主フレーム材11Xの他端11b側と第2主フレーム材11Yの他端11b側とを支持材13で接続することが好ましく、また第1主フレーム材11Xの把手部14の位置と第2主フレーム材11Yの把手部14の位置とを更に支持材13で接続することで換気部材10の構造強度を高めることができ、換気部材10の動作を安定して行うことができる。
また、留め具15は、第1主フレーム材11Xの一端11a側と第2主フレーム材11Yの一端11a側との間に位置する被覆材12とともに、又は第1主フレーム材11Xの一端11a側と第2主フレーム材11Yの一端11a側との間に位置する被覆材12に代えて、第1主フレーム材11Xの一端11a側と第2主フレーム材11Yの一端11a側、又は支持材13に設けてもよい。
【0023】
図2は同換気部材の他の動作状態を示す側面図である。
なお、
図2に示す換気部材10Bは
図1(a)に示す換気部材10Bと同じ状態を示し、
図2に示す換気部材10Dは
図1(a)に示す換気部材10とは異なる状態を示している。
図2に示す換気部材10Dは、支持材13を被覆シート2の一方側の裾から離間させた状態で、係止部材16によって主フレーム材11、被覆材12、及び支持材13を、園芸用トンネル3に保持している。
従って、換気状態において、被覆材12を地面から離間させた状態を維持でき、被覆材12の汚れを防止できるとともに、畝に沿って移動する作業者の障害にもならない。
また、図示のように、換気部材10は、換気状態における主フレーム材11を園芸用トンネル3に保持するストッパー17を有することが好ましい。
このように、ストッパー17によって換気状態にある主フレーム材11を園芸用トンネル3の上方位置で保持できるため、換気状態において、被覆材12を地面から離間させた状態を維持でき、被覆材12の汚れを防止できるとともに、畝に沿って移動する作業者の障害にもならない。
【0024】
図3は本発明の他の実施例による園芸用トンネルの換気部材を示す概念図である。
図示のように、ストッパー17は、主フレーム材11と支柱1とを接続する接続材とすることが好ましい。このようなストッパー17を設けることで、風によって主フレーム材11が園芸用トンネル3から離脱して飛ばされ、損失してしまうことを防止できる。
換気部材10は、主フレーム材11の長手方向の中心部付近に把手部14を設け、主フレーム材11の一端11a側に係止部材16を設けてあり、換気状態では、係止部材16を把手部14に係止する。
このように、換気状態では、係止部材16を把手部14に係止することで、支持材13を被覆シート2の一方側の裾から離間させる作業を立姿勢で行うことができるとともに、換気状態において、被覆材12を地面から離間させた状態を維持でき、被覆材12の汚れを防止できるとともに、畝に沿って移動する作業者の障害にもならない。
把手部14は、フレーム材11に取り付ける取付部14aと、取付部14aから立ち上がる立上部14bと、立上部14bの先端から角度を変えて延出する握り部14cと、握り部14cの先端から立上部14bに平行に延出する立下部14dと、立下部14dの先端から握り部14cに平行に演出する抜け止め部14eとから構成され、抜け止め部14eと取付部14aとの間には空間を形成している。
そして、把手部14は、立上部14bが、主フレーム材11の一端11a側となるように、主フレーム材11に配置する。
このような把手部14を用いることで、係止部材16を把手部14に係止する作業性を高めることができる。
【0025】
図4は本実施例による換気部材の施工を示す図である。
図4に示すように、本実施例による園芸用トンネル3の換気部材10は、被覆シート2の一部の裾を地面から離間させた位置に施工する。
このように、一部の裾を地面から離間させた位置に換気部材10を用いることで、畝に沿って配置される被覆シート2の一部の裾を地面から離間させて換気状態とし、換気状態とした裾の位置を、被覆材12で覆うように主フレーム材11を配置するように施工し、被覆材12によって園芸用トンネル3を覆うことで、保温状態とすることができ、支持材13を被覆シート2の一方側の裾から離間させることで保温状態から換気状態にすることができる。
【0026】
なお、上記実施例で説明した主フレーム材11は、アーチ状に形状が保持されているものであっても、弾力性を有することで使用時に変形できるものであってもよい。
また、被覆シート2及び被覆材12は、保温を目的とする場合には、一般的にはポリエチレンシート、塩化ビニールシート、又はポリオレフィン系特殊シートのような透光性フィルムを用いるが、遮光、防虫、防寒、又は防霜を目的とする場合には、寒冷紗や、着色フィルム、紫外線制御フィルム、赤外線制御フィルムなどの光選択性被覆資材を用い、その他として、防虫ネット、遮光ネット、不織布などの被覆材12を用いることもできる。
本発明は、施設園芸において利用でき、露地に設定して利用できるだけでなく、温室や屋内にも設置して利用でき、畝栽培だけでなく、ポット栽培や水耕栽培にも利用でき、作業者の労働負担を軽減できる。