(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122228
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】液体吐出装置および液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230825BHJP
B41J 2/15 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 305
B41J2/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022025806
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】升永 傑
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB13
2C056EB36
2C056EC07
2C056EC37
2C056HA22
2C056HA27
2C057AF30
2C057AG14
2C057AL23
2C057AM17
(57)【要約】
【課題】記録媒体の搬送方向と交差する方向にヘッドと記録媒体とを相対移動させて画像を形成する液体吐出装置において、画質を高く確保すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体により記録媒体に画像を形成する液体吐出装置であって、前記記録媒体に前記液体を吐出するヘッドと、前記記録媒体と前記ヘッドとを第1方向に相対移動させる第1移動機構と、前記記録媒体と前記ヘッドとを前記第1方向に交差する第2方向に相対移動させる第2移動機構と、前記記録媒体の表面情報に基づいて、少なくとも前記第1方向における前記記録媒体と前記ヘッドとの相対位置情報を出力するセンサと、前記センサから出力された前記相対位置情報に基づいて、前記ヘッドが前記第1方向に相対移動されながら前記液体を吐出するタイミングである吐出タイミングを決定する決定部と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体により記録媒体に画像を形成する液体吐出装置であって、
前記記録媒体に前記液体を吐出するヘッドと、
前記記録媒体と前記ヘッドとを第1方向に相対移動させる第1移動機構と、
前記記録媒体と前記ヘッドとを前記第1方向に交差する第2方向に相対移動させる第2移動機構と、
前記記録媒体の表面情報に基づいて、少なくとも前記第1方向における前記記録媒体と前記ヘッドとの相対位置情報を出力するセンサと、
前記センサから出力された前記相対位置情報に基づいて、前記ヘッドが前記第1方向に相対移動されながら前記液体を吐出するタイミングである吐出タイミングを決定する決定部と、を有する、液体吐出装置。
【請求項2】
開口を含み、前記記録媒体を載置する載置部材を有し、
前記開口は、前記載置部材の内側と前記ヘッドに向き合う外側とを連通させ、
前記センサは、前記載置部材の内側に設けられ、前記記録媒体における前記ヘッドに向き合う面とは反対側の面の前記表面情報を、前記開口を通して取得する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記開口を閉塞する透光性部材を有する、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記記録媒体を載置する載置部材を有し、
前記第2移動機構は、前記記録媒体を前記第1方向に搬送し、
前記センサは、前記載置部材の外側において、前記第1方向における前記載置部材の上流側に設けられ、前記記録媒体における前記ヘッドに向き合う側の面の表面情報を取得する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
少なくとも前記第2方向に並んだ複数の前記ヘッドを有し、
前記決定部は、複数の前記ヘッドが並ぶ方向の前記第2方向に対する傾きを調整する際に、前記センサから出力される前記相対位置情報と、前記記録媒体に前記画像を形成する際に、前記センサから出力される前記相対位置情報と、に基づき、複数の前記ヘッドごとに前記吐出タイミングを決定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
少なくとも前記第1方向に並んだ複数の前記ヘッドを有し、
複数の前記ヘッドのそれぞれは、前記液体が吐出される複数のノズルが前記第2方向に並んだノズル列を複数有し、
前記決定部は、前記ノズル列に含まれる前記複数のノズルごと、または前記ノズル列に含まれる所定数の前記ノズルにより構成される複数のノズル群ごと、に前記吐出タイミングを決定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
複数の前記センサを有し、
前記決定部は、複数の前記センサから出力される前記相対位置情報に基づき、前記吐出タイミングを決定する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
液体により記録媒体に画像を形成する液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、
ヘッドにより、前記記録媒体に前記液体を吐出し、
第1移動機構により、前記記録媒体と前記ヘッドとを第1方向に相対移動させ、
第2移動機構により、前記記録媒体と前記ヘッドとを前記第1方向に交差する第2方向に相対移動させ、
センサにより、前記記録媒体の表面情報に基づいて、少なくとも前記第1方向における前記記録媒体と前記ヘッドとの相対位置情報を出力し、
決定部により、前記センサから出力された前記相対位置情報に基づいて、前記ヘッドが前記第1方向に相対移動されながら前記液体を吐出するタイミングである吐出タイミングを決定する、液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置および液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に液体を吐出して画像を形成する液体吐出装置が知られている。
【0003】
また、搬送方向に搬送される記録媒体にヘッドから液体を吐出し、画像を形成する液体吐出装置において、画質を高く確保するために、搬送される記録媒体の表面情報の検出結果に基づいて、ヘッドから液体を吐出するタイミングを決定する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録媒体の搬送方向と交差する方向にヘッドと記録媒体とを相対移動させて画像を形成する液体吐出装置では、特許文献1の構成によってヘッドによる液体の吐出タイミングを決定できないため、画質を高く確保する点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、記録媒体の搬送方向と交差する方向にヘッドと記録媒体とを相対移動させて画像を形成する液体吐出装置において、画質を高く確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体により記録媒体に画像を形成する液体吐出装置であって、前記記録媒体に前記液体を吐出するヘッドと、前記記録媒体と前記ヘッドとを第1方向に相対移動させる第1移動機構と、前記記録媒体と前記ヘッドとを前記第1方向に交差する第2方向に相対移動させる第2移動機構と、前記記録媒体の表面情報に基づいて、少なくとも前記第1方向における前記記録媒体と前記ヘッドとの相対位置情報を出力するセンサと、前記センサから出力された前記相対位置情報に基づいて、前記ヘッドが前記第1方向に相対移動されながら前記液体を吐出するタイミングである吐出タイミングを決定する決定部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録媒体の搬送方向と交差する方向にヘッドと記録媒体とを相対移動させて画像を形成する液体吐出装置において、画質を高く確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る液体吐出装置の内部を透視して示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す上面図である。
【
図3】実施形態に係るキャリッジの構成例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る液体吐出装置の構成の一例を示す側面図である。
【
図5】実施形態に係るセンサ周辺の構成例を示す部分拡大斜視図である。
【
図6】実施形態に係る制御部のハードウェア構成例のブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係る制御部の機能構成例のブロック図である。
【
図8】第1実施形態に係る液体吐出装置の画像形成動作の第1例の図であり、
図8(a)は1回の間欠搬送前のライン画像の図、
図8(b)は1回の間欠搬送後の位置ずれの図、
図8(c)は位置ずれが補正されたライン画像の図である。
【
図9】第1実施形態に係る液体吐出装置の画像形成動作の第2例の図である。
【
図10】第2実施形態に係る液体吐出装置の画像形成動作の第1例の図であり、
図10(a)は傾き調整後のヘッドによるライン画像の図、
図10(b)は搬送方向の変化に応じて補正されたライン画像の図である。
【
図11】第2実施形態に係る液体吐出装置の画像形成動作の第2例の図である。
【
図12】第3実施形態に係る2つのセンサを例示する図であり、
図12(a)は第1例の図、
図12(b)は第2例の図、
図12(c)は第3例の図である。
【
図13】第3実施形態に係る制御部の機能構成例のブロック図である。
【
図14】第3実施形態に係る液体吐出装置の画像形成動作の第1例を示す図であり、
図14(a)は1回の間欠搬送後の位置ずれの図、
図14(b)は、位置ずれを補正されたライン画像の図である。
【
図15】第3実施形態に係る液体吐出装置の画像形成動作の第2例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
[実施形態]
<液体吐出装置100の構成例>
図1~
図5を参照して、実施形態に係る液体吐出装置100の構成について説明する。
図1は、液体吐出装置100の内部を透視して示す斜視図である。
図2は、液体吐出装置100の構成の一例を示す上面図である。
図3は、液体吐出装置100が備えるキャリッジ21の構成の一例を示す図である。
図4は、液体吐出装置100の構成の一例を示す側面図である。
図5は、液体吐出装置100が有するセンサ5周辺の構成の一例を示す部分拡大斜視図である。
【0011】
図1~
図5に示すように、液体吐出装置100は、ヘッド1と、第1移動機構2と、載置部材3と、第2移動機構4と、センサ5と、を有する。
【0012】
液体吐出装置100は、液体の一例であるインクにより、記録媒体の一例であるロール紙Mに画像を形成するシリアル型の画像形成装置である。液体吐出装置100は、第2移動機構4によりロール紙Mを第2方向Bに間欠的に搬送する。また、液体吐出装置100は、ロール紙Mの搬送が停止している間に、第1移動機構2によりヘッド1を第1方向Aに往復移動させつつ、ヘッド1から載置部材3上のロール紙Mにインクを吐出することにより、ロール紙M上に画像を形成する。
【0013】
第1移動機構2は、キャリッジ21と、駆動プーリ22と、従動プーリ23と、タイミングベルト24と、を有し、ロール紙Mとヘッド1とを第1方向Aに相対移動させる。
【0014】
キャリッジ21は、ロール紙Mと、ヘッド1と、を第1方向Aに相対移動させる。
図1に示すように、キャリッジ21は、第1方向Aに延設された主ガイドロッド6により支持され、第1方向Aに往復移動する。また、キャリッジ21には連結片21aが設けられている。連結片21aは、主ガイドロッド6と平行に設けられた副ガイド部材7に係合し、キャリッジ21の姿勢を安定化させる。
【0015】
キャリッジ21は、駆動プーリ22と従動プーリ23との間に張架されたタイミングベルト24に連結している。駆動プーリ22は、第1モータ8の駆動により回転する。従動プーリ23は、駆動プーリ22との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト24に対して所定のテンションを与える機能を有する。
【0016】
キャリッジ21は、第1モータ8の駆動によりタイミングベルト24が送り動作を行うことにより、第1方向Aに往復移動できる。キャリッジ21の移動量や移動速度は、例えば
図2に示すように、キャリッジ21に設けられた第1エンコーダセンサ10がエンコーダシート11のマークを検知して出力するエンコーダ値に基づいて制御される。
【0017】
図3に示すように、キャリッジ21は、ヘッド1A、1Bおよび1Cを含む3つのヘッド1を搭載している。
図3は、キャリッジ21に向き合うロール紙M側から視たキャリッジ21を示している。ヘッド1は、ロール紙Mにインクを吐出する。
【0018】
ヘッド1Aは、イエロー(Y)インクを吐出する複数のノズルを並べたノズル列1Ay、シアン(C)インクを吐出する複数のノズルを並べたノズル列1Ac、マゼンタ(M)インクを吐出する複数のノズルを並べたノズル列1Am、およびブラック(K)インクを吐出する複数のノズルを並べたノズル列1Akを、一列ずつ有する。同様に、ヘッド1Bは、ノズル列1By、ノズル列1Bc、ノズル列1Bm、およびノズル列1Bkを、一列ずつ有し、ヘッド1Cは、ノズル列1Cy、ノズル列1Cc、ノズル列1Cm、およびノズル列1Ckを、一列ずつ有する。3つのヘッド1は、各ノズルがロール紙M側に向くように、キャリッジ21に支持されている。
【0019】
ヘッド1A、1B、1Cは、第1方向Aおよび第2方向Bのそれぞれに並んで配置されている。このような配置により、液体吐出装置100は、キャリッジ21の第1方向Aへの1回の移動において、ロール紙Mの広い領域に画像を形成できる。
【0020】
図1において、ヘッド1にインクを供給するためのインク供給体であるカートリッジ9は、キャリッジ21には搭載されず、液体吐出装置100内の所定の位置に配置されている。カートリッジ9と3つのヘッド1のそれぞれはパイプで連結されており、このパイプを介して、カートリッジ9からヘッド1に対してインクが供給される。
【0021】
第1方向Aにおけるキャリッジ21を挟んでカートリッジ9の反対側には、ヘッド1の信頼性を維持するための維持機構12が設けられている。維持機構12は、3つのヘッド1の吐出面の清掃やキャッピング、3つのヘッド1からの不要なインクの排出等を行う。
【0022】
図4に示すように、載置部材3は、ロール紙Mを載置する載置部材の一例である。載置部材3は箱状部材であり、3つのヘッド1に向き合う載置面31上にロール紙Mを載置する。載置部材3は、載置面31に略直交する方向に貫通する貫通孔が複数形成されている。液体吐出装置100は、載置部材3の内側に設けられた吸引ファン13を作動させて載置面31にロール紙Mを吸着することにより、載置部材3上からロール紙Mが脱落することを抑制できる。
【0023】
第2移動機構4は、巻出部41と、駆動ローラ42と、従動ローラ43と、巻取部44と、を有し、ロール紙Mと3つのヘッド1とを第1方向Aに交差する第2方向Bに相対移動させる。第2移動機構4は、駆動ローラ42および従動ローラ43を用いて、巻出部41から巻き出されるロール紙Mを、載置部材3を介して巻取部44へ間欠的に搬送することにより、ロール紙Mと3つのヘッド1とを相対移動させる。
【0024】
巻出部41は、芯部材である紙管などの中空軸部にロール紙Mをロール状に巻き付けたロール体を含み、ロール体の回転によりロールからロール紙Mを巻き出す。
【0025】
駆動ローラ42は、第2モータにより回転駆動される。従動ローラ43は、駆動ローラ42の回転に従って従動回転する。液体吐出装置100は、駆動ローラ42と従動ローラ43との間にロール紙Mを挟んで挟持搬送できる。
【0026】
巻取部44は、芯部材である紙管などの中空軸を備え、ロール紙Mの先端が中空軸にテープ等の接着部材等により接着されており、この中空軸にロール紙Mを巻き取ることができる。
【0027】
液体吐出装置100は、第2方向Bにおける載置部材3の上流側および下流側に設けられた給紙ガイド部材14および排紙ガイド部材15によって、第2移動機構4によるロール紙Mの搬送をガイドする。
【0028】
センサ5は、ロール紙Mの表面情報に基づいて、第1方向Aにおけるロール紙Mと3つのヘッド1との相対位置に対応する相対位置情報を出力する。センサ5は、例えば、レーザ光源と撮像素子とを有し、レーザ光源から照射され、ロール紙Mの表面で拡散反射されたレーザ光同士が干渉することによって生じるスペックルパターンを、撮像素子によって撮像する。センサ5は、ロール紙Mと3つのヘッド1とが第2方向Bに相対移動している際に、異なるタイミングで撮像した2フレーム分のスペックルパターン同士の間で相関演算を実行することにより、相対位置情報を取得して出力できる。
【0029】
本実施形態では、センサ5は、第2移動機構4によりロール紙Mが第2方向Bに間欠的に搬送されている際に、間欠搬送に合わせ、所定の取得時間隔によりスペックルパターンの画像を撮影する。センサ5は、間欠搬送前後の2フレーム分のスペックルパターンの相関演算を行うことにより相対位置情報を取得して出力する。液体吐出装置100は、この相対位置情報から、ロール紙Mと3つのヘッド1との相対位置が、第2方向Bへの間欠搬送前後で第1方向Aにずれる画像位置ずれを検出できる。
【0030】
上記のスペックルパターンは、ロール紙Mの表面情報の一例である。但し、ロール紙Mの表面情報は、ロール紙Mの表面における紙繊維のパターン情報であってもよいし、ロール紙M上に形成された所定の画像パターンであってもよい。またセンサ5からロール紙Mに照射される光は、レーザ光に限らず、発光ダイオード等から発せられるインコヒーレント光であってもよい。
【0031】
本実施形態では、センサ5は、載置部材3の内側に設けられており、ロール紙Mにおける3つのヘッド1に向き合う面の表面情報を取得する。
図5に示すように、載置部材3は、載置部材3の内側と、3つのヘッド1に向き合う外側と、を連通させる開口32を含む。センサ5は、この開口32を通して、ロール紙Mにおける3つのヘッド1に向き合う面とは反対側の面の表面情報を取得する。
【0032】
また、液体吐出装置100は、開口32を閉塞する透光性部材35を有する。液体吐出装置100は、載置面31上のロール紙Mが開口32の部分で凹むことに伴う画像の乱れを、透光性部材35で開口32を閉塞することにより防止できる。
【0033】
図5において、貫通孔33は、載置面31に形成された吸引用の貫通孔である。ブラケット36は、センサ5を支持する部材である。センサ5は、ブラケット36を介して載置部材3のフレーム34に取り付けられることにより、載置部材3の内側に固定される。
【0034】
なお、液体吐出装置100において、センサ5が設けられる位置は、載置部材3の内側に限定されず、載置部材3の外側であってもよい。液体吐出装置100では、ロール紙Mに付与されたインクを乾燥させるためのヒータを載置部材3の内側に設ける場合があり、このような場合等に載置部材3の外側にセンサ5を設けると、センサ5の設置スペースが制限されなくなるため好適である。
【0035】
また、センサ5は、第1方向における載置部材3の上流側に設けられることが好ましい。液体吐出装置100は、載置部材3の上流側にセンサ5を設けることにより、3つのヘッド1からロール紙Mにインクを吐出する前に、センサ5からの出力に基づいて3つのヘッド1からのインクの吐出タイミングを決定できる。
【0036】
本実施形態では、センサ5が第1方向Aにおける3つのヘッド1とロール紙Mとの相対位置情報を出力する例を示すが、センサ5は、第2方向Bにおける3つのヘッド1とロール紙Mとの相対位置情報をさらに出力してもよい。
【0037】
<制御部50の構成例>
(ハードウェア構成)
図6は、液体吐出装置100が有する制御部50のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【0038】
制御部50は、例えばコンピュータによって構築されており、CPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、HDD/SSD(Hard Disk Drive/Solid State Drive)54と、接続I/F(Interface)55と、通信I/F56と、を有する。これらは、システムバスCを介して相互に通信可能に接続している。
【0039】
CPU51は、各種の演算処理を含む制御処理を実行する。ROM52は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU51の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM53は、CPU51のワークエリアとして使用される。HDD/SSD54は、プログラム等の各種情報や、センサ5により取得されたロール紙Mの表面生体情報等を記憶する。
【0040】
接続I/F55は、制御部50を各種の機器と接続するためのインターフェースである。ここでの機器は、センサ5等である。
【0041】
通信I/F56は、通信ネットワーク等を介して、外部装置との間で通信するためのインターフェースである。例えば、制御部50は、ロール紙Mに形成する画像の元となる画像データを通信I/F56を介して外部PC(Personal Computer)等から受信できる。
【0042】
なお、CPU51により実現される機能の少なくとも一部は、電気回路または電子回路により実現されてもよい。
【0043】
(第1実施形態に係る機能構成)
図7は、液体吐出装置100が有する制御部50の機能構成を例示するブロック図である。制御部50は、第1駆動制御部501と、第2駆動制御部502と、決定部503と、吐出制御部504と、を有する。制御部50は、CPU51がROM52に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの各機能を実現できる。なお、上記の各機能の一部は、ヘッド1等の制御部50以外の構成部により実現されてもよいし、ヘッド1と、制御部50以外の構成部と、の分散処理により実現されてもよい。また、制御部50は、上記以外の機能を有してもよい。
【0044】
第1駆動制御部501は、第1制御信号D1を出力し、第1移動機構2による3つのヘッド1と、ロール紙Mと、の第1方向Aへの相対移動を制御する。
【0045】
第2駆動制御部502は、第2制御信号D2を出力し、第2移動機構4による3つのヘッド1と、ロール紙Mと、の第2方向Bへの相対移動を制御する。
【0046】
決定部503は、センサ5から出力された相対位置情報Sに基づいて、3つのヘッド1が第1方向Aに相対移動されながらインクを吐出するタイミングである吐出タイミングtを決定し、吐出制御部504を介してヘッド1に出力する。なお、吐出タイミングtは相対位置情報Sに基づいて決定されるため、
図7では、決定部503から吐出制御部504に出力される情報をt(S)として示している。
【0047】
吐出制御部504は、3つのヘッド1それぞれによるインクの吐出を制御する。本実施形態では、吐出制御部504は、決定部503により決定された吐出タイミングtに、3つのヘッド1からインクを吐出させることができる。
【0048】
<第1実施形態に係る液体吐出装置100による画像形成動作例>
図8は、第1実施形態に係る液体吐出装置100による画像形成動作の第1例を説明する図であり、
図8(a)は1回の間欠搬送前に形成されたライン画像を示す図、
図8(b)は1回の間欠搬送後における位置ずれを示す図、
図8(c)は1回の間欠搬送における位置ずれが補正されたライン画像を示す図である。
図9は、液体吐出装置100による画像形成動作の第2例を説明する図である。
【0049】
図8(a)および
図8(b)において、第2方向Bに直線状に延伸するライン画像をロール紙Mに形成する場合に、第2移動機構4による1回の間欠搬送で第1方向Aに搬送位置ずれNが生じたとする。破線により示したロール紙M0は、1回の間欠搬送前のロール紙Mを示し、実線により示したロール紙M1は、1回の間欠搬送後のロール紙Mを示している。
【0050】
ライン画像71は、1回の間欠搬送前に形成されたライン画像を示し、ライン画像72'は、1回の間欠搬送後に補正されずに形成されるライン画像を示している。搬送位置ずれNによって、ライン画像72'は、搬送位置ずれNに略等しい画像位置ずれP分、ライン画像71に対してずれる位置に形成される。このため、液体吐出装置100は、第2方向Bに延伸するライン画像を適切に形成できなくなる。
【0051】
図8(c)に示すように本実施形態では、液体吐出装置100は、第1方向Aへの搬送位置ずれNを相対位置情報Sとしてセンサ5により取得し、相対位置情報Sに基づいて決定部503により吐出タイミングtを決定する。液体吐出装置100は、第1移動機構2によりキャリッジ21を移動させながら、吐出タイミングtに応じて3つのヘッド1からインクを吐出する。これにより、液体吐出装置100は、画像位置ずれPを補正してライン画像72を形成でき、第2方向Bに延伸するライン画像を適切に形成できる。
【0052】
図9において、破線により示したライン画像70'は、4回の間欠搬送ごとで画像位置ずれPを補正しない場合に、ロール紙Mに形成されるライン画像を示している。実線により示したライン画像70は、4回の間欠搬送ごとで画像位置ずれを補正した場合にロール紙Mに形成されたライン画像を示している。
【0053】
液体吐出装置100は、画像位置ずれPの補正を、予め定められた位置を基準とした相対位置情報Sに基づいて行ってもよいし、間欠搬送前のロール紙Mの位置を基準とした相対位置情報Sに基づいて行ってもよい。予め定められた位置を基準にすると、相対位置情報Sに含まれる演算誤差が累積されない点において好適である。
【0054】
<第1実施形態に係る液体吐出装置100の作用効果>
以上説明したように、液体吐出装置100は、ヘッド1と、第1移動機構2と、第2移動機構4と、センサ5と、決定部503と、を有する。液体吐出装置100は、センサ5から出力された相対位置情報Sに基づいて吐出タイミングtを決定することにより、ロール紙Mを第2方向Bに搬送する際に第1方向Aへ位置ずれした場合にも第1方向Aへの画像位置ずれPを補正でき、画質を高く確保できる。
【0055】
また、液体吐出装置100は、開口32を含む載置部材3を有する。センサ5は、載置部材3の内側に設けられ、ロール紙Mにおけるヘッド1に向き合う面とは反対側の面の表面情報を、開口32を通して取得する。ロール紙Mを支持する載置部材3の内側にセンサ5を設けることにより、装置構成が簡略化される。
【0056】
また、液体吐出装置100は、開口32を閉塞する透光性部材35を有する。液体吐出装置100は、開口32上を通るロール紙Mが開口32によって凹むことを透光性部材35により防止できるため、ロール紙Mの凹みによる画像の乱れを防ぎ、画質を高く確保できる。
【0057】
センサ5は、載置部材3の外側において、第1方向Aにおける載置部材3の上流側に設けられ、ロール紙Mにおけるヘッド1に向き合う側の面の表面情報を取得してもよい。載置部材3の内側にヒータ等を設けると、載置部材3内側におけるスペースの大きさが制限される場合があるが、センサ5を載置部材3の外側に設けることで、このような制限を受けずにセンサ5を設置可能になる。
【0058】
また、液体吐出装置100は、第1方向Aにおける載置部材3の上流側にセンサ5を設けることにより、決定部503によって決定された吐出タイミングtにヘッド1からインクを吐出できるため、画像位置ずれPを適切に補正できる。
【0059】
なお、本実施形態では3つのヘッド1を有する構成を例示したが、ヘッド1の数がいくつであっても上述した効果は得られる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る液体吐出装置100について説明する。本実施形態に係る液体吐出装置100は、第1実施形態と同様の構成を有する。なお、第1実施形態と同一の構成部には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。この点は、以降に示す他の実施形態においても同様とする。
【0061】
ヘッド1A、1Bおよび1Cが、少なくとも第2方向Bに並ぶ場合には、ヘッド1A、1B、1Cの並ぶ方向が第2方向Bと略平行になるように、3つのヘッド1の傾きを予め調整しておくことが好ましい。
【0062】
また、3つのヘッド1に含まれる各ノズルは、ノズル吐出曲がりや吐出速度等のインクの吐出特性が異なる場合がある。このため、3つのヘッド1の傾き調整は、3つのヘッド1自体の傾きの測定結果ではなく、各ノズルから吐出されてロール紙Mに付着したインクの位置測定結果に基づいて行われることが好ましい。
【0063】
インク位置の測定は、例えば、第2方向Bにおける3つのヘッド1の下流側に設けられたスキャナー等の読取手段によって、ロール紙M上に形成された所定の画像を読み取った結果に基づいて行える。また、3つのヘッド1の傾きの調整は、3つのヘッド1が液体吐出装置100に取り付けられる姿勢を調整することにより行える。この調整は、3つのヘッド1が搭載された回転ステージを用いて行われてもよい。また、調整作業者により手動で行われてもよいし、回転ステージを駆動させるモータ等を用いて自動で行われてもよい。
【0064】
一方、一般的な液体吐出装置では、液体吐出装置を購入した客先等において、床等の設置面に対して液体吐出装置を水平にするための調整が行われると、第1方向におけるロール紙の両端において第2方向への搬送量に差が生じ、ロール紙の搬送方向が変化する場合がある。また、第1方向における長さが異なるものにロール紙を変更する場合にも、テンションバランス等に応じてロール紙Mの搬送方向が変化する場合がある。搬送方向の変化に応じて、第2方向に並ぶ複数のヘッドごとでロール紙へのインクの付着位置がずれ、画像の周期的な濃度変動であるバンディング等の画像障害が発生する場合がある。
【0065】
本実施形態では、第2方向Bに対するヘッド1A、1Bおよび1Cが並ぶ方向の傾きを調整する際に、センサ5から出力される相対位置情報Saと、ロール紙Mに画像を形成する際にセンサ5から出力される相対位置情報Sbと、に基づき、ヘッド1A、1Bおよび1Cごとに吐出タイミングtを決定する。これにより、ヘッド1A、1Bおよび1C間での画像の位置ずれを抑制し、ロール紙Mの搬送方向がずれた場合にも、バンディング等の画像障害の発生を抑制する。
【0066】
図10は、本実施形態に係る液体吐出装置100による画像形成動作の第1例を説明する図である。
図10(a)は傾き調整後の3つのヘッド1を用いてロール紙Mに形成されたライン画像73~75を示す図、
図10(b)は搬送方向が変化に応じて補正されたライン画像76~78を示す図である。
図11は、本実施形態に係る液体吐出装置100による画像形成動作の第2例を説明する図である。
【0067】
図10および
図11において、ライン画像73a、74aおよび75aのそれぞれは、ヘッド1Aによりロール紙Mに形成されたライン画像を示している。ライン画像73b、74bおよび75bのそれぞれは、ヘッド1Bによりロール紙Mに形成されたライン画像を示している。ライン画像73c、74cおよび75cのそれぞれは、ヘッド1Cによりロール紙Mに形成されたライン画像を示している。
【0068】
図10(a)では、ロール紙Mは、第2方向B1に搬送されている。3つのヘッド1の傾きは第2方向B1に合わせて調整されているため、ライン画像73a、73bおよび73cは、第2方向B1に直線状に延伸している。本実施形態では、3つのヘッド1の傾き調整時に相対位置情報Saを取得し、HDD/SSD54や外部の記憶装置または記憶媒体等のメモリに格納しておく。
【0069】
図10(b)では、搬送方向がすれたことにより、ロール紙Mは、第2方向B1に対してやや方向が異なる第2方向B2に搬送されている。この場合に、相対位置情報Sbのみに基づいて吐出タイミングtを決定すると、ライン画像74a、74bおよび74cは、3つのヘッド1の傾き調整時の第2方向B1に並ぶ。このため、ライン画像74a、74bおよび74cを含むライン画像の直線からのずれが大きくなる。
【0070】
本実施形態では、決定部503は、相対位置情報Sbに基づき間欠搬送に伴う第1方向Aへの画像位置ずれを補正するとともに、メモリを参照して取得した相対位置情報Saに基づき、ヘッド1A、1Bおよび1Cごとの画像位置ずれが略均等になるように、吐出タイミングtを決定する。
【0071】
例えば、相対位置情報Sbのみに基づくと、第2方向B2に沿った直線に対するライン画像の位置ずれが最大60μmとなる場合に、決定部503は、相対位置情報Saに基づいて、ヘッド1Bでは20μm、ヘッド1Cでは40μm、インク付着位置がそれぞれずれるように吐出タイミングtを決定する。これによりライン画像74a、74bおよび74cそれぞれの、第2方向B2に沿った直線に対する位置ずれが略均等に20μmとなる。
【0072】
以上のようにして、液体吐出装置100は、ロール紙Mの搬送方向がずれた場合にも、ヘッド1A、1Bおよび1C間での画像の位置ずれを抑制できるため、バンディング等の画像障害の発生を抑制でき、画質を高く確保できる。
【0073】
また、決定部503は、ヘッド1A、1Bおよび1Cの各ノズル列に含まれる複数のノズルごと、または各ノズル列に含まれる所定数のノズルにより構成される複数のノズル群ごと、に吐出タイミングtを決定してもよい。所定数のノズルは例えば50個のノズルである。
【0074】
ノズルごとに吐出タイミングtを決定すると、
図11に示すように、ライン画像75a、75bおよび75cにより形成されるライン画像の、第2方向B2に沿った直線からのずれは理論上0となる。従って、液体吐出装置100は、画質をさらに高く確保できる。
【0075】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る液体吐出装置100について説明する。
【0076】
本実施形態では、液体吐出装置100は、複数のセンサ5と、決定部503bと、を有する。決定部503bは、複数のセンサ5から出力される相対位置情報Sに基づき、吐出タイミングtを決定する。液体吐出装置100は、吐出タイミングtの決定により、センサ5が配置されていないロール紙M上の領域における第1方向Aへの位置ずれを、複数のセンサ5の出力を用いた補間演算により検出可能にする。またこれとともに、ロール紙Mのスキューと斜行とを切り分けて補正可能とする。なお、実施形態の用語において、スキューは第1方向Aおよび第2方向Bに沿う面内でロール紙Mが回転することをいい、斜行は所望の方向に対してロール紙Mが斜めに進むことをいう。
【0077】
ここで、
図12は、2つのセンサ5を例示する図であり、
図12(a)は第1例の図、
図12(b)は第2例の図、
図12(c)は第3例の図である。
図13および
図14は、本実施形態に係る液体吐出装置100による画像形成動作を説明する図であり、
図13は第1例を示す図、
図14は第2例を示す図である。
【0078】
図12(a)では、2つのセンサ5に含まれるセンサ5aとセンサ5bは、第1方向Aに並んで配置されている。
図12(b)では、センサ5aとセンサ5bは、第2方向Bに並んで配置されている。
図12(c)では、センサ5aとセンサ5bは、第1方向Aおよび第2方向Bのそれぞれに対して斜め方向に並んで配置されている。2つのセンサ5は、
図12(a)~
図12(c)のいずれの配置であってもよい。
【0079】
本実施形態では、
図12(a)のように、2つのセンサ5が第1方向Aに並んで配置されている例を説明する。但し、これに限らず、液体吐出装置100は、3以上のセンサ5を備えてもよい。
【0080】
図13は、第3実施形態に係る制御部50bの機能構成例のブロック図である。制御部50bは決定部503bを有する。決定部503bは、センサ5aから出力される相対位置情報Saと、センサ5bから出力される相対位置情報Sbと、に基づき、吐出タイミングtを決定する。なお、吐出タイミングtは相対位置情報Sa、SbおよびScに基づいて決定されるため、
図13では、決定部503bから吐出制御部504に出力される情報を、t(Sa、Sb、Sc)として示している。
【0081】
図14は、本実施形態に係る液体吐出装置100による画像形成動作の第1例を説明する図である。
図14(a)は、1回の間欠搬送後の画像の位置ずれを示す図、
図14(b)は、1回の間欠搬送における位置ずれが補正されたライン画像を示す図である。
図15は、本実施形態に係る液体吐出装置100による画像形成動作の第2例を説明する図である。
【0082】
図14(a)において、第2方向Bに直線状に延伸するライン画像をロール紙Mに形成する場合に、第2移動機構4による1回の間欠搬送においてスキューθが生じたとする。破線により示したロール紙M0は、1回の間欠搬送前のロール紙Mを示し、実線により示したロール紙M1は、スキューθが生じた1回の間欠搬送後のロール紙Mを示している。
【0083】
ライン画像76a、76bおよび76cは、1回の間欠搬送前に形成されたライン画像を示している。第1方向Aにおいて、ライン画像76aおよび76bはロール紙Mの端部に形成され、ライン画像76cはロール紙Mの中央に形成されている。ライン画像77a'、77b'および77c'は、1回の間欠搬送後に補正されずに形成されるライン画像を示している。スキューθにより、ライン画像77a'はライン画像76aに対して画像位置ずれPa分、ライン画像77b'はライン画像76bに対して画像位置ずれPb分、ライン画像77c'はライン画像76cに対して画像位置ずれPc分、それぞれずれた位置に形成される。
【0084】
決定部503bは、画像位置ずれPaに応じた相対位置情報Saをセンサ5aから取得でき、画像位置ずれPbに応じた相対位置情報Sbをセンサ5bから取得できる。また、ライン画像77a'とライン画像77b'との距離をaとし、ライン画像77b'とライン画像77c'との距離をbとすると、決定部503bは、画像位置ずれPcに応じた相対位置情報Scを、以下の(1)式を用いた線形補間により取得できる。
Sc=(Sa+Sb)×b/(a+b)+Sb ・・・(1)
【0085】
液体吐出装置100は、相対位置情報Sa、SbおよびScに基づき吐出タイミングtを決定することにより、画像位置ずれPa、PbおよびPcを補正したライン画像77a、77bおよび77cをロール紙M上に形成できる。
【0086】
以上のように、本実施形態では、センサ5が配置されていないロール紙M上の領域におけるロール紙Mの第1方向Aへの位置ずれを、センサ5aおよび5bの出力を用いた補間演算により取得でき、ロール紙M上の複数の領域ごとで、位置ずれを補正するように吐出タイミングtを決定できる。この結果、液体吐出装置100による画質を高く確保できる。
【0087】
また、決定部503bは、ロール紙Mのスキューθに伴う回転位置ずれを補正するように、吐出タイミングtを決定することもできる。
【0088】
図15に示すように、スキューθによって、第2方向Bにおける下流側では、画像位置ずれPa1、画像位置ずれPb1および画像位置ずれPc1が生じる。
【0089】
ここで、ライン画像77a'、77b'および77c'それぞれの第2方向Bに沿った長さをLとする。また、画像位置ずれPa1に対応する相対位置情報をSa1、画像位置ずれPb1に対応する相対位置情報をSb1、画像位置ずれPc1に対応する相対位置情報をSc1とする。
【0090】
決定部503bは、相対位置情報Sa1、Sb1およびSc1を以下の(2)、(3)及び(4)式により算出できる。
Sa1=Sa-L×θ ・・・(2)
Sb1=Sb-L×θ ・・・(3)
Sc1=Sc-L×θ ・・・(4)
【0091】
決定部503bは、相対位置情報Sa、Sb、Sc、Sa1、Sb1およびSc1に基づいて、ロール紙Mのスキューθに伴う回転位置ずれを補正するように、吐出タイミングtを決定できる。この結果、液体吐出装置100による画質をさらに高く確保できる。
【0092】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0093】
例えば、上述した実施形態では、第1方向Aにヘッド1を移動させ、第2方向Bにロール紙Mを搬送する例を示したが、これらに限定されない。ヘッド1とロール紙Mとを第1方向Aに相対移動できればよいため、ヘッド1を移動させずに、ロール紙Mを第1方向Aに移動させてもよいし、ヘッド1とロール紙Mの両方を第1方向Aに移動させてもよい。同様に、ヘッド1とロール紙Mとを第2方向Bに相対移動できればよいため、ロール紙Mを移動させずに、ヘッド1を第2方向Bに移動させてもよいし、ヘッド1とロール紙Mの両方を第2方向Bに移動させてもよい。
【0094】
上述した実施形態では、液体吐出装置として主としてインクジェットプリンタを例示したが、これに限られるものではない。この液体吐出装置は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
【0095】
液体吐出装置として、例えば、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0096】
また、液体吐出装置は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0097】
液体が付着可能なものとは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0098】
液体が付着可能なものの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0099】
また、液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を備えるものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0100】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子および薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0101】
液体吐出装置としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0102】
実施形態の用語において、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0103】
実施形態は、液体吐出方法を含む。例えば、液体吐出方法は、液体により記録媒体に画像を形成する液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、ヘッドにより、前記記録媒体に前記液体を吐出し、第1移動機構により、前記記録媒体と前記ヘッドとを第1方向に相対移動させ、第2移動機構により、前記記録媒体と前記ヘッドとを前記第1方向に交差する第2方向に相対移動させ、センサにより、前記記録媒体の表面情報に基づいて、少なくとも前記第1方向における前記記録媒体と前記ヘッドとの相対位置情報を出力し、決定部により、前記センサから出力された前記相対位置情報に基づいて、前記ヘッドが前記第1方向に相対移動されながら前記液体を吐出するタイミングである吐出タイミングを決定する。このような液体吐出方法により、上述した液体吐出装置100と同様の効果を得ることができる。
【0104】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0105】
実施形態の各機能は、一または複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0106】
1 3つのヘッド
1A、1B、1C ヘッド
1Ak、1Am、1Ac、1Ay、1Bk、1Bm、1Bc、1By、1Ck、1Cm、1Cc、1Cy ノズル列
2 第1移動機構
3 載置部材
4 第2移動機構
5、5a、5b センサ
6 主ガイドロッド
7 副ガイド部材
8 第1モータ
9 カートリッジ
10 第1エンコーダセンサ
11 エンコーダシート
12 維持機構
13 吸引ファン
14 給紙ガイド部材
15 排紙ガイド部材
21 キャリッジ
21a 連結片
22 駆動プーリ
23 従動プーリ
24 タイミングベルト
31 載置面
32 開口
33 貫通孔
34 フレーム
35 透光性部材
36 ブラケット
41 巻出部
42 駆動ローラ
43 従動ローラ
44 巻取部
50 制御部
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 HDD/SSD
55 接続I/F
56 通信I/F
70、70'、71、72、72'、73a、73b、73c、74a、74b、74c、75a、75b、75c、76a、76b、76c、77a、77b、77c、77a'、77b'、77c'、78a、78b、78c ライン画像
100 液体吐出装置
501 第1駆動制御部
502 第2駆動制御部
503、503b 決定部
504 吐出制御部
A 第1方向
B、B1、B2 第2方向
D1 第1制御信号
D2 第2制御信号
S、Sa、Sb 相対位置情報
t 吐出タイミング
M、M0、M1 ロール紙(記録媒体の一例)
N 搬送位置ずれ
P、Pa、Pa1、Pb、Pb1、Pc、Pc1 画像位置ずれ
θ スキュー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】