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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122360
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】画像生成システム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20230825BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
H04Q9/00 361
E02F9/26 A
H04Q9/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026027
(22)【出願日】2022-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 正充
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大祐
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 誠弥
(72)【発明者】
【氏名】大畠 陽二郎
【テーマコード(参考)】
2D015
5K048
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB00
5K048BA21
5K048DA01
5K048DB01
5K048DC01
5K048EB02
5K048EB15
5K048FB15
5K048HA01
5K048HA02
5K048HA23
(57)【要約】
【課題】撮像対象の視認性を向上できる画像生成システムを提供する。
【解決手段】油圧ショベル100は、作業現場に存在する撮像対象を撮像するカメラ20を有している。画像生成システムは、表示装置50と、カメラ20によって撮像された撮像画像を記録する記録部270と、撮像画像を処理する画像処理部26とを備えている。画像取得部261は、最新の撮像画像である最新画像を取得する。視点変換部264は、記録部270に記録されている以前の撮像画像を、カメラ20が最新画像を撮像したときのカメラ20の向きに合わせて変換した、変換画像を生成する。画像出力部67は、最新画像内で撮像対象が遮蔽物により遮蔽されている死角領域を変換画像で補完した補完画像を、表示装置50に表示させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械を遠隔操作するための遠隔操作側の表示装置に表示する画像を生成する画像生成システムであって、
前記作業機械は、作業現場に存在する撮像対象を撮像する撮像装置を有し、
前記画像生成システムは、
前記表示装置と、
前記撮像装置によって撮像された撮像画像を記録する画像記録部と、
前記撮像画像を処理する画像処理コンピュータとを備え、
前記画像処理コンピュータは、最新の前記撮像画像である最新画像を取得し、前記画像記録部に記録されている以前の前記撮像画像を前記撮像装置が前記最新画像を撮像したときの前記撮像装置の向きに合わせて変換した変換画像を生成し、前記最新画像内で前記撮像対象が遮蔽物により遮蔽されている死角領域を前記変換画像で補完した補完画像を前記表示装置に表示させる、画像生成システム。
【請求項2】
前記画像処理コンピュータは、前記死角領域に前記変換画像を重ね合わせた合成画像を生成し、前記合成画像を前記表示装置に表示させる、請求項1に記載の画像生成システム。
【請求項3】
前記画像処理コンピュータは、前記最新画像を前記表示装置に表示させ、前記表示装置における前記死角領域に相当する領域に前記変換画像を表示させる、請求項1に記載の画像合成システム。
【請求項4】
前記画像処理コンピュータは、複数の以前の前記撮像画像から前記変換画像を生成する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像生成システム。
【請求項5】
前記作業機械は、旋回軸を中心に旋回する旋回体を有し、前記撮像装置は前記旋回体に搭載されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像生成システム。
【請求項6】
前記旋回体は、車室を有し、前記撮像装置は前記車室に収容されている、請求項5に記載の画像生成システム。
【請求項7】
前記撮像装置は、前記旋回体の旋回中に前記撮像対象を撮像し、
前記画像処理コンピュータは、以前の前記撮像画像を撮像したときから前記最新画像を撮像したときまでの前記旋回体の旋回角度を取得し、前記旋回角度に基づいて以前の前記撮像画像の位置をずらして前記変換画像を生成する、請求項5または請求項6に記載の画像生成システム。
【請求項8】
前記画像処理コンピュータは、前記旋回角度に基づいて、以前の前記撮像画像を変形させて前記変換画像を生成する、請求項7に記載の画像生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械を遠隔操作するための遠隔操作側の表示装置に表示する画像を生成する画像生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-207244号公報(特許文献1)には、旋回軸を中心に旋回する旋回体および旋回体に支持される作業機を有する作業機械に搭載され、画像を撮影する撮像装置と、作業機械の外部に存在する表示装置と、作業機械の外部に存在し、作業機械と通信可能な制御装置と、を備え、制御装置は、画像を撮像装置から取得する画像データ取得部と、画像データ取得部で取得された画像を表示装置に表示させる表示制御部と、を有する、遠隔操作システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-207244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械の車体に撮像装置を搭載する場合、車体を構成する構造物が撮像装置の画角内に存在することがある。この構造物が撮像画像中に写り込み、撮像対象の視認性を低下させることがある。
【0005】
本開示では、撮像対象の視認性を向上できる画像生成システムが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、作業機械を遠隔操作するための遠隔操作側の表示装置に表示する画像を生成する画像生成システムが提案される。作業機械は、作業現場に存在する撮像対象を撮像する撮像装置を有している。画像生成システムは、表示装置と、撮像装置によって撮像された撮像画像を記録する画像記録部と、撮像画像を処理する画像処理コンピュータとを備えている。画像処理コンピュータは、最新の撮像画像である最新画像を取得する。画像処理コンピュータは、画像記録部に記録されている以前の撮像画像を、撮像装置が最新画像を撮像したときの撮像装置の向きに合わせて変換した、変換画像を生成する。画像処理コンピュータは、最新画像内で撮像対象が遮蔽物により遮蔽されている死角領域を変換画像で補完した補完画像を、表示装置に表示させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る画像生成システムによれば、撮像対象の視認性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】油圧ショベルの外観図である。
図2】油圧ショベルの遠隔操作システムの一例を模式的に示す図である。
図3】遠隔操作装置の一例を模式的に示す図である。
図4】画像生成システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図5】画像生成方法の一例を示すフローチャートである。
図6】最新画像の一例を示す図である。
図7図6中の領域VIIの拡大図である。
図8】直前画像の一例を示す図である。
図9】視点を変換した画像を示す図である。
図10】画像を合成する処理を示す図である。
図11】合成画像の一例を示す図である。
図12】複数の過去画像と最新画像とを合成した図である。
図13】第2実施形態に係る画像生成システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図14】第3実施形態に係る画像生成システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図15】第3実施形態に係る画像生成方法の一例を示すフローチャートである。
図16】第4実施形態に係る、カメラによる撮像の状況を示す模式図である。
図17】第4実施形態に係る撮像画像の一例を示す図である。
図18】第4実施形態に係る合成画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、実施形態に基づく遠隔操作システムによって遠隔操作される作業機械の一例としての、油圧ショベル100の外観図である。図1に示されるように、作業機械として、本例においては、主に油圧ショベル100を例に挙げて説明する。
【0011】
油圧ショベル100は、作業現場に存在し、作業現場で作業する。油圧ショベル100は、土砂または鉱石などの対象物の掘削作業を実行し、掘削された対象物をダンプトラックなどの運搬機械に積み込む積込作業を実行する。実施形態の油圧ショベル100は、遠隔操作可能な仕様の作業機械である。油圧ショベル100の操縦は、遠隔操作システムを用いた遠隔地からの無線信号により行う。油圧ショベル100は、搭乗したオペレータによる操縦機能を搭載していない。
【0012】
油圧ショベル100は、本体1を備えている。本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。
【0013】
走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。油圧ショベル100は、履帯5Crの回転により走行可能である。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。なお、走行体5が車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0014】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能に、走行体5に搭載されている。旋回体3は、車室4を有している。車室4の前面は、透明な窓板4Wで覆われている。窓板4Wは、強化ガラスなどで構成されている。車室4内には、空間4Sが形成されている。
【0015】
車室4は、屋根部分を支持する複数のピラーを有している。複数のピラーは、左フロントピラー4FP1と、右フロントピラー4FP2とを有している。左フロントピラー4FP1は、車室4の左前の角部に配置されている。右フロントピラー4FP2は、車室4の右前の角部に配置されている。窓板4Wは、左フロントピラー4FP1と右フロントピラー4FP2との間に配置されている。窓板4Wの左縁が左フロントピラー4FP1に取り付けられ、窓板4Wの右縁が右フロントピラー4FP2に取り付けられている。
【0016】
旋回体3は、エンジンが収容されるエンジンルーム9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有している。エンジンルーム9には、後述するエンジン31および油圧ポンプ32などが配置されている。
【0017】
旋回体3において、エンジンルーム9の前方に手すり19が設けられている。手すり19には、アンテナ21が設けられている。アンテナ21は、たとえばGNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)用のアンテナである。アンテナ21は、車幅方向に互いに離れるように旋回体3に設けられた第1アンテナ21Aおよび第2アンテナ21Bを有している。
【0018】
油圧ショベル100は、油圧により作動する作業機2を備えている。作業機2は、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。ブーム6の基端部は、ブームフートピン13を介して旋回体3に回転可能に連結されている。アーム7の基端部は、ブーム先端ピン14を介してブーム6の先端部に回転可能に連結されている。バケット8は、アーム先端ピン15を介してアーム7の先端部に回転可能に連結されている。アーム7およびバケット8のそれぞれは、ブーム6の先端側で移動可能な可動部材である。
【0019】
バケット8は、複数の刃を有している。バケット8は、刃を有していなくてもよい。バケット8の先端部は、ストレート形状の鋼板で形成されていてもよい。バケット8は、作業機2の先端に取付可能なアタッチメントの一例である。作業の種類に応じて、アタッチメントが、ブレーカ、グラップル、またはリフティングマグネットなどに付け替えられる。
【0020】
なお本実施形態においては、作業機2を基準として、油圧ショベル100の各部の位置関係について説明する。
【0021】
作業機2のブーム6は、旋回体3に対して、ブームフートピン13を中心に回転する。旋回体3に対して回転するブーム6の特定の部分、たとえばブーム6の先端部が移動する軌跡は円弧状であり、その円弧を含む平面が特定される。油圧ショベル100を平面視した場合に、当該平面は直線として表される。この直線の延びる方向が、油圧ショベル100の本体1の前後方向、または旋回体3の前後方向であり、以下では単に前後方向ともいう。油圧ショベル100の本体1の左右方向(車幅方向)、または旋回体3の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向であり、以下では単に左右方向ともいう。車両本体の上下方向、または旋回体3の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向であり、以下では単に上下方向ともいう。
【0022】
前後方向において、油圧ショベル100の本体1から作業機2が突き出している側が前方向であり、前方向と反対方向が後方向である。前方向を視て左右方向の右側、左側がそれぞれ右方向、左方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0023】
作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有している。ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、およびバケットシリンダ12のそれぞれは、作動油によって駆動される油圧シリンダである。
【0024】
油圧ショベル100は、カメラ20を備えている。カメラ20は、油圧ショベル100の周辺の作業現場に存在する撮像対象を撮像して、撮像対象の画像を取得するための撮像装置である。カメラ20は、旋回体3に搭載されている。
【0025】
カメラ20によって撮像される撮像対象は、作業現場において施工される施工対象を含む。施工対象は、油圧ショベル100の作業機2によって掘削される掘削対象を含む。掘削対象は、掘削前の掘削対象(すなわち、現況地形)、掘削中の掘削対象、および掘削後の掘削対象を含む。カメラ20の撮像対象は、油圧ショベル100の周辺の障害物を含む。
【0026】
カメラ20の撮像対象は、油圧ショベル100の少なくとも一部を含む。カメラ20の撮像対象は、作業機2の少なくとも一部を含む。カメラ20の撮像対象は、油圧ショベル100の周辺に配置される他の作業機械を含む。他の作業機械は、油圧ショベル100の掘削対象を運搬する運搬機械を含む。他の作業機械は、ダンプトラックを含む。
【0027】
カメラ20は、光学系と、光学系を通過した光を受光するイメージセンサとを有している。イメージセンサは、CCD(Couple Charged Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含んでいる。
【0028】
カメラ20は、右前方カメラ20Aと、右側方カメラ20Bと、後方カメラ20Cと、左側方カメラ20Dと、前方カメラ20Eを含んでいる。
【0029】
右前方カメラ20Aと右側方カメラ20Bとは、旋回体3の上面の右側縁部に配置されている。右前方カメラ20Aは、右側方カメラ20Bよりも前方に配置されている。右前方カメラ20Aと右側方カメラ20Bとは、前後方向における旋回体3の中央部付近に、前後に並んで配置されている。右前方カメラ20Aは、旋回体3の右前方を撮像する。右前方カメラ20Aの光軸は、右前方カメラ20Aから右斜め前方向に延びている。右側方カメラ20Bは、旋回体3の右後方を撮像する。右側方カメラ20Bの光軸は、右側方カメラ20Bから右斜め後ろ方向に延びている。
【0030】
後方カメラ20Cは、前後方向において旋回体3の後端部に配置されており、左右方向において旋回体3の中央部に配置されている。旋回体3の後端部には、採掘時などにおいて車体のバランスをとるためのカウンタウェイトが設置されている。後方カメラ20Cは、カウンタウェイトの上面に配置されている。後方カメラ20Cは、旋回体3の後方を撮像する。後方カメラ20Cの光軸は、後方カメラ20Cから後方向に延びている。左側方カメラ20Dは、旋回体3の上面の左側縁部に配置されている。左側方カメラ20Dは、前後方向における旋回体3の中央部付近に配置されている。左側方カメラ20Dは、旋回体3の左方を撮像する。左側方カメラ20Dの光軸は、左側方カメラ20Dから左方向に延びている。
【0031】
前方カメラ20Eは、旋回体3の前部に配置されている。前方カメラ20Eは、作業機2の左側に配置されている。前方カメラ20Eは、車室4の内部に配置されている。前方カメラ20Eは、車室4に収容されている。前方カメラ20Eは、車室4内の空間4Sに配置されている。前方カメラ20Eは、車室4にオペレータが搭乗したならばオペレータの目の位置となる位置に、配置されている。前方カメラ20Eは、窓板4Wを通して旋回体3の前方を撮像する。前方カメラ20Eの光軸は、前方カメラ20Eから前方向に延びている。前方カメラ20Eによって撮像される撮像画像は、旋回体3の前方の地形と、作業機2の少なくとも一部とを含み得る。
【0032】
油圧ショベル100は、通信装置22と、車体コントローラ26とを備えている。通信装置22は、通信アンテナを含んでいる。通信アンテナは、たとえばエンジンルーム9の上方に配置されている。通信装置22は、遠隔地より送信された制御信号を受信する。車体コントローラ26は、受信した制御信号に基づいて、エンジン31、作業機2、および旋回体3などを制御する。通信装置22はまた、油圧ショベル100の情報を含む信号を、遠隔地に送信する。通信装置22は、カメラ20が撮像した撮像対象の撮像画像、油圧ショベル100の位置情報および姿勢情報などを、遠隔地に送信する。
【0033】
図2は、油圧ショベル100の遠隔操作システム200の一例を模式的に示す図である。遠隔操作システム200は、油圧ショベル100の外部に存在する。油圧ショベル100は、遠隔操作システム200によって遠隔操作される。遠隔操作システム200は、たとえば、遠隔操作施設に設けられる。遠隔操作施設は、油圧ショベル100の存在する作業現場に設置されていてもよく、作業現場から離れた遠隔地に設置されていてもよい。
【0034】
遠隔操作システム200は、遠隔操作装置40と、表示装置50と、遠隔コントローラ60と、通信装置72とを主に備えている。遠隔操作装置40、表示装置50、遠隔コントローラ60および通信装置72のそれぞれは、油圧ショベル100とは別体で設けられている。
【0035】
油圧ショベル100は、ネットワーク400を介して、遠隔操作システム200に接続されている。ネットワーク400は、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、携帯電話通信網、および衛星通信網の少なくとも一つを含んでいる。ネットワーク400は、通信されるデータを中継する中継局を含んでもよい。
【0036】
油圧ショベル100の通信装置22は、ネットワーク400を介して、遠隔操作システム200に、油圧ショベル100の情報を含む信号を送信する。遠隔操作システム200は、通信装置72で受信した、カメラ20が撮像した撮像対象の撮像画像を、遠隔コントローラ60で処理して、表示装置50に表示する。
【0037】
図3は、遠隔操作装置40の一例を模式的に示す図である。図3に示される遠隔操作装置40と表示装置50とは、遠隔操作施設に設けられている遠隔操作室に配置されている。遠隔操作装置40は、操縦シート45に着座したオペレータによって操作される。オペレータは、表示装置50の表示画面と正対するように、操縦シート45に着座する。オペレータは、表示装置50を介して作業現場の状況を視認する。オペレータは、表示装置50の表示画面を見ながら、遠隔操作装置40を操作する。
【0038】
遠隔操作装置40は、作業機2および旋回体3の動作のために操作される左作業レバー41および右作業レバー42と、走行体5の動作のために操作される左走行レバー43および右走行レバー44とを含んでいる。
【0039】
左作業レバー41は、操縦シート45の左方に配置されている。操縦シート45に着座したオペレータは、左手で左作業レバー41を把持して、左作業レバー41を操作する。左作業レバー41により、アーム7および旋回体3が操作される。左作業レバー41は、旋回体3の旋回方向と、アーム7の上下動とについてのオペレータの入力を受け付ける。左作業レバー41の前後方向の操作は、旋回体3の旋回に対応し、前後方向の操作に応じて旋回体3の右旋回動作および左旋回動作が実行される。左作業レバー41の左右方向の操作は、アーム7の操作に対応し、左右方向の操作に応じてアーム7の上方向への動作および下方向への動作が実行される。
【0040】
右作業レバー42は、操縦シート45の右方に配置されている。操縦シート45に着座したオペレータは、右手で右作業レバー42を把持して、右作業レバー42を操作する。右作業レバー42により、ブーム6およびバケット8が操作される。右作業レバー42は、ブーム6の上下動およびバケット8の上下動についてのオペレータの入力を受け付ける。右作業レバー42の前後方向の操作は、ブーム6の操作に対応し、前後方向の操作に応じてブーム6が上昇する動作および下降する動作が実行される。右作業レバー42の左右方向の操作は、バケット8の操作に対応し、左右方向の操作に応じてバケット8の下方向への動作および上方向への動作が実行される。
【0041】
操縦シート45の左方にはまた、左コンソール48が配置されている。操縦シート45の右方にはまた、右コンソール49が配置されている。
【0042】
左走行レバー43および右走行レバー44は、操縦シート45の前方に配置されている。左走行レバー43および右走行レバー44は、左右に並んで、左走行レバー43が左側に、右走行レバー44が右側に配置されている。左走行レバー43および右走行レバー44は、走行体5の走行についてのオペレータの入力を受け付ける。左走行レバー43の前後方向の操作に応じて、走行体5の左側の履帯5Crの前進動作および後進動作が実行される。右走行レバー44の前後方向の操作に応じて、走行体5の右側の履帯5Crの前進動作および後進動作が実行される。
【0043】
表示装置50は、操縦シート45の前方に配置されている。表示装置50は、左走行レバー43および右走行レバー44よりも操縦シート45から離れて配置されている。表示装置50は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイのような、フラットパネルディスプレイを含んでいる。表示装置50は、画像を表示する。表示装置50は、カメラ20によって撮像されネットワーク400を介して取得した撮像画像を表示可能である。表示装置50はまた、撮像画像を遠隔コントローラ60で処理した後の画像を表示可能である。具体的には表示装置50は、カメラ20によって撮像された撮像画像を複数組み合わせることで死角を補完した画像を表示可能である。
【0044】
図3では、1つの表示画面が表示装置50を構成する例が示されているが、表示装置50は複数の表示画面を含んでもよい。表示装置50は、中央の表示画面の上下左右に各1つずつの表示画面が隣り合って並べられた計5つの表示画面を含んでもよく、縦3段横3列に互いに隣り合って並べられた計9つの表示画面を含んでもよく、他の任意の態様で配列された任意の数の表示画面を含んでもよい。表示装置50は、操縦シート45の前方に配置された表示画面に加えて、操縦シート45の左方、操縦シートの右方、および/または操縦シート45の上方に配置された表示画面を含んでもよい。
【0045】
表示装置50は、遠隔操作室に常設されたモニタでもよいし、ヘッドマウントディスプレイまたはヘッドアップディスプレイでもよい。表示装置50は、パーソナルコンピュータのモニタでもよいし、タブレットコンピュータ、スマートフォンなどのモバイル端末でもよい。
【0046】
図4は、実施形態に基づく、遠隔操作側の表示装置50に表示する画像を生成する画像生成システムの構成例を示す機能ブロック図である。遠隔操作システム200は、油圧ショベル100の外部の遠隔操作施設に配置されている。遠隔操作システム200は、ネットワーク400を介して、油圧ショベル100に接続されている。
【0047】
油圧ショベル100は、油圧ポンプ32がエンジン31によって駆動され、油圧ポンプ32から吐出された作動油が方向制御弁33を介して各種の油圧アクチュエータ34に供給されるように、構成されている。油圧アクチュエータ34への油圧の供給および排出が制御されることにより、作業機2の動作、旋回体3の旋回、および走行体5の走行動作が制御される。油圧アクチュエータ34は、図1に示されるブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12および走行モータ5Mと、旋回モータとを含んでいる。
【0048】
エンジン31は、たとえばディーゼルエンジンである。車体コントローラ26からの制御信号の出力に従ってエンジン31への燃料の噴射量が調整されることにより、エンジン31の出力が制御される。エンジン31は、油圧ポンプ32に連結するための駆動軸を有している。
【0049】
油圧ポンプ32は、エンジン31の駆動軸に連結されている。エンジン31の回転駆動力が油圧ポンプ32に伝達されることにより、油圧ポンプ32が駆動される。油圧ポンプ32は、斜板を有し、斜板の傾転角が変更されることにより吐出容量を変化させる可変容量型の油圧ポンプである。油圧ポンプ32は、作業機2の駆動、走行体5の走行、および旋回体3の旋回に用いる作動油を供給する。油圧ポンプ32から吐出された作動油は、減圧弁によって一定の圧力に減圧されて、方向制御弁33に供給される。
【0050】
方向制御弁33は、ロッド状のスプールを動かして作動油が流れる方向を切り換えるスプール方式の弁である。方向制御弁33は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、走行モータ5M、および旋回モータのそれぞれの作動油の供給量を調整するそれぞれのスプールを有している。車体コントローラ26からの制御信号の出力に従って各スプールが軸方向に移動することにより、油圧アクチュエータ34に対する作動油の供給量が調整される。
【0051】
遠隔コントローラ60は、制御信号生成部69を有している。制御信号生成部69は、オペレータによる遠隔操作装置40の操作に基づいて油圧ショベル100を動作させる制御信号を生成する。通信装置72は、制御信号生成部69の生成した制御信号を、ネットワーク400を介して、油圧ショベル100に送信する。
【0052】
図1に示されるカメラ20で撮像された撮像画像は、車体コントローラ26に入力される。車体コントローラ26は、画像処理部260を有している。画像処理部260は、車体コントローラ26に入力された撮像画像を処理する。通信装置22は、画像処理された後の画像を、ネットワーク400を介して、遠隔操作システム200に送信する。
【0053】
遠隔コントローラ60は、画像出力部67を有している。画像出力部67は、画像処理部260によって画像処理された画像を表示装置50に出力して、表示装置50に画像を表示させる。
【0054】
図5は、実施形態に基づく画像生成方法の一例を示すフローチャートである。図4図5および後続の図を参照して、実施形態の油圧ショベル100を遠隔操作するための遠隔操作側の表示装置50に表示する画像を生成する方法について、以下に説明する。以下では、旋回体3の旋回中に撮像対象を撮像する場合の例を説明する。
【0055】
図5に示されるように、まずステップS1において、最新画像を取得する。画像処理部260は、画像取得部261を有している。画像取得部261は、油圧ショベル100のカメラ20によって撮像された最新の撮像画像である、最新画像を取得する。
【0056】
図6は、最新画像の一例を示す図である。図6には、前方カメラ20Eで撮像された画像IMGが図示されている。画像IMGには、作業機2の一部が含まれている。画像IMGには、車室4の左フロントピラー4FP1の画像IFP1と、右フロントピラー4FP2の画像IFP2とが含まれている。画像IMGには、風景LSが含まれている。図6中の丸印、×印、三角形および四角形などの図形は、単純化した風景LSの一部を示す。風景LSは、画像IFP1,IFP2により遮蔽されている。左フロントピラー4FP1および右フロントピラー4FP2は、撮像対象を遮蔽する実施形態の遮蔽物に相当する。
【0057】
図6中に曲線矢印で示される旋回方向RDは、旋回体3の旋回方向を示す。本実施形態では、旋回体3は右旋回している。
【0058】
図7は、図6中の領域VIIの拡大図である。領域VIIは、遮蔽物である左フロントピラー4FP1の画像IFP1を含み、かつ、遮蔽物で遮蔽されていない風景LSを含むように、設定される。図7に示される例では、画像IMG1中において、画像IFP1の左右両側に、遮蔽されていない風景LSが存在している。
【0059】
ステップS2において、最新画像よりも前に撮像された以前の撮像画像である過去画像を読み出す。油圧ショベル100は、記録部270を有している。記録部270には、過去画像データ278が記録されている。記録部270は、カメラ20で撮像され画像取得部261によって取得された画像を、過去画像として記録する。画像処理部260は、移動情報取得部262を有している。移動情報取得部262は、記録部270から過去画像を読み出す。典型的には、移動情報取得部262は、最新画像の直前に撮像された過去画像である直前画像を読み出す。
【0060】
図8は、直前画像の一例を示す図である。図8に示される画像IMG2は、直前画像のうち、図6に示される領域VIIに相当する領域を拡大したものである。図7の画像IMG1と同様に、画像IMG2中においては、左フロントピラー4FP1の画像IFP1の左右両側に、遮蔽されていない風景LSが存在している。遮蔽物である左フロントピラー4FP1は前方カメラ20Eに対して位置が変わらないので、画像IMG1と画像IMG2とにおいて、左フロントピラー4FP1の画像IFP1の位置は不変である。一方、旋回体3の旋回中に撮像されているので、画像IMG1と画像IMG2とに含まれる風景LSが変化している。風景LSのうち、画像IMG1では見えなかった部分が、画像IMG2では見えている。
【0061】
具体的に、図7の画像IMG1では左フロントピラー4FP1の画像IFP1に丸印の左半分が遮蔽されている。これに対し、図8の画像IMG2では、丸印は遮蔽されておらず、丸印の全体が示されている。画像IMG1には×印の一部分のみが含まれているのに対し、画像IMG2には×印の全体が示されている。
【0062】
ステップS3において、オプティカルフローを算出する。移動情報取得部262は、最新画像と直前画像との画像処理を行う。移動情報取得部262は、時間的に連続する2つの画像、具体的には画像IMG1(図7)および画像IMG2(図8)、に含まれる同じ特徴点に対応する画素の移動ベクトルを算出する。本実施形態では旋回体3は右旋回しているので、直前画像の一部の画像IMG2と比較して、最新画像の一部の画像IMG1では、風景LSが左方向に移動している。移動情報取得部262は、画像IMG1と画像IMG2とを比較して、画像IMG1および画像IMG2の差分から、直前画像を撮像した時刻から最新画像を撮像した時刻までの時間における風景LSの移動量を算出する。
【0063】
ステップS4において、変換画像を生成する。画像処理部260は、視点変換部264を有している。視点変換部264は、カメラ20が最新画像を撮像したときのカメラ20の向きに合わせて、直前画像を変換する。視点変換部264は、ステップS3で算出した風景LSの移動量の分だけ、直前画像をずらして、直前画像に含まれる風景LSが最新画像に含まれる風景LSとぴったり重なるようにする。
【0064】
図9は、オプティカルフローに基づき視点を変換した画像を示す図である。図9に示される画像IMG3のうち、破線で囲まれた部分は、図8に示される画像IMG2を図中の左方向に位置をずらしたものに相当する。画像IMG3に含まれる丸印および×印と、図7に示される最新画像の一部である画像IMG1に含まれる丸印および×印とは、互いに重なり合う位置にある。
【0065】
旋回体3の旋回に伴って、前方カメラ20Eには並進と回転とが生じる。前方カメラ20Eは旋回軸RXの近傍に置かれるため、最新画像と直前画像とにおける風景LSの変化は、前方カメラ20Eの回転によるものが支配的となる。そのため、前方カメラ20Eの回転を利用することが可能になる。前方カメラ20Eの旋回量から一意に定まる単純な変形によって、変換画像を生成可能となる。また、画像を単純に一方向に移動させることによって、変換画像を近似できる。
【0066】
ステップS5において、死角領域を検出する。画像処理部260は、領域取得部263を有している。領域取得部263は、最新画像と直前画像との画像処理を行う。領域取得部263は、車室4の構造に起因する死角領域を判定する。領域取得部263は、最新画像の一部の画像IMG1と直前画像の一部のIMG2とを比較して、変化が少なく変化量が閾値以下である部分を、左フロントピラー4FP1の画像IFP1が存在しており左フロントピラー4FP1によって風景LSが遮蔽されている死角領域であると認識してもよい。領域取得部263は、風景LSを遮蔽する遮蔽物の境界を検出してもよい。領域取得部263は、死角領域を、ビットマップとして検出してもよい。
【0067】
左フロントピラー4FP1は前方カメラ20Eに対して位置が変わらないので、旋回体3が旋回しても、左フロントピラー4FP1は画像中の同じ位置に写る。換言すると、旋回しても同じ位置に写る物体が遮蔽物である。これによって、死角領域の決定が容易である。
【0068】
ステップS6において、マスキングを行う。ステップS7において、画像を合成する。画像処理部260は、画像合成部265を有している。画像合成部265は、最新画像における死角領域をマスキングして、死角領域を画像の合成に使用しないようにする。図10は、画像を合成する処理を示す図である。図10に示される画像IMG41は、図7に示される画像IMG1のうち、左フロントピラー4FP1の画像IFP1よりも左側の部分に相当する。画像IMG42は、図7に示される画像IMG1のうち、左フロントピラー4FP1の画像IFP1よりも右側の部分に相当する。
【0069】
画像合成部265は、最新画像である画像IMG41,IMG42と、直前画像を視点変換した変換画像である画像IMG3とを重ね合わせるように、画像を合成して合成画像を生成する。図11は、合成画像の一例を示す図である。図11に示される画像IMG5において、左フロントピラー4FP1の画像IFP1よりも左側に画像IMG51が存在し、IFP1よりも右側に画像IMG52と画像IMG52とが存在している。画像IMG51と、図10に示される画像IMG41とは同じである。画像IMG52と、図10に示される画像IMG42とは同じである。画像IMG53は、図9,10に示される画像IMG3の一部分である。具体的には、画像IMG53は、画像IMG3のうち左フロントピラー4FP1の画像IFP1の直ぐ右側の部分に相当する。
【0070】
図11に示される画像IMG5において、画像IMG51と画像IMG52との間に、画像IMG53が存在する。図7に示される最新画像においては左フロントピラー4FP1の画像IFP1が存在している箇所に、画像IMG53が重ね合わされている。最新画像(画像IMG1、図7)内で風景LSが左フロントピラー4FP1により遮蔽されている死角領域が、直前画像(画像IMG2、図8)を変換した変換画像(画像IMG3、図9,10)の一部である画像IMG53によって、補完されている。
【0071】
図12は、複数の過去画像と最新画像とを合成した図である。図12に示される画像IMG6において、画像IMG61,IMG62は、図7にも示される最新画像の一部分である。画像IMG63は、図9にも示される、直前画像を変換した変換画像の一部分である。画像IMG64,IMG65は、直前画像よりも前に撮像した過去画像を、その過去画像を撮像した時刻から最新画像を撮像した時刻までの時間における風景LSの移動量に基づいて同様に変換した、変換画像の一部分である。
【0072】
画像IMG61,IMG62は、最新の画像である。画像IMG63は、最新画像の1つ前に撮像した画像を変換した変換画像である。画像IMG64は、最新画像の2つ前に撮像した画像を変換した変換画像である。画像IMG65は、最新画像の3つ前に撮像した画像を変換した変換画像である。最新画像内の死角領域の全部が、以前の撮像画像を変換した変換画像で補完される。最新画像内の死角領域に変換画像を重ね合わせることで、死角領域を過去画像で補完した合成画像である画像IMG6が生成される。画像合成部265は、最新画像の一部である画像IMG61,IMG62と、以前の撮像画像である画像IMG63,IMG64,IMG65とを合成して、合成画像である画像IMG6を生成する。
【0073】
ステップS8において、画像を出力する。通信装置22は、画像合成部265が生成した画像IMG6を、ネットワーク400を介して、遠隔コントローラ60に送信する。遠隔コントローラ60の画像出力部67は、通信装置72が車体コントローラ26から受信した画像IMG6を表示装置50に出力して、表示装置50に画像IMG6を表示させる。
【0074】
ステップS8の処理の後、処理はリターンされ、より新しい撮像画像を用いた合成画像が生成されて表示装置50に表示される処理が繰り返される。
【0075】
以上説明した実施形態の画像生成システムは、図4に示されるように、遠隔操作側の表示装置50と、カメラ20によって撮像された撮像画像を記録する記録部270と、撮像画像を処理する画像処理部260とを備えている。図5~7に示されるように、画像取得部261は、最新の撮像画像である最新画像(画像IMG1)を取得する。図5,8~10に示されるように、視点変換部264は、記録部270に記録されている以前の撮像画像(画像IMG2)を、カメラ20が最新画像を撮像したときのカメラ20の向きに合わせて変換した変換画像(画像IMG3)を生成する。図5,10~12に示されるように、画像出力部67は、最新画像内で撮像対象が左フロントピラー4FP1により遮蔽されている死角領域である画像IFP1を変換画像で補完した補完画像(画像IMG6)を、表示装置50に表示させる。
【0076】
最新の画像IMG1において遮蔽物により遮蔽されている風景LSが、以前に撮像した画像においては遮蔽物により遮蔽されておらず、撮像された画像中に含まれている。以前に撮像された画像IMG2を、最新の画像IMG1を撮像したときのカメラ20の向きに合わせて変換した画像IMG3を生成しておき、最新の画像IMG1と変換した画像IMG3とを重ね合わせる。このとき、最新の画像IMG1における死角領域である画像IFP1をマスキングして、画像IMG1と画像IMG3との重ね合わせに使用しないようにする。これにより、死角領域が以前の撮像画像によって補完された補完画像が得られる。
【0077】
補完画像を表示装置50に表示することで、あたかも左フロントピラー4FP1を透明化したかのような画像をオペレータに提示できる。撮像対象を遮蔽する遮蔽物を見かけ上無くした画像をオペレータに提供できるので、撮像対象の視認性を向上することができる。
【0078】
前方カメラ20Eにより、オペレータが車室4に搭乗して油圧ショベル100を操作する場合と近い視点からの撮像画像が撮像される。前方カメラ20Eの撮像画像に基づいて、遠隔操作用の画像を表示装置50に表示することにより、油圧ショベル100を遠隔操作するオペレータに、より直感的で鮮明な画像を提示することができる。
【0079】
図5,11~12に示されるように、画像処理部260は、最新画像内の死角領域である画像IFP1に変換した画像IMG3を重ね合わせた合成画像である画像IMG6を生成し、画像IMG6を表示装置50に表示させる。複数の画像を合成した合成画像を画像処理部260で生成して、その合成画像を表示装置50に表示させることで、撮像対象を遮蔽する遮蔽物を見かけ上無くした画像を確実にオペレータに提供でき、撮像対象の視認性を向上することができる。
【0080】
図12に示されるように、画像処理部260は、複数の以前の撮像画像から変換画像を生成する。最新画像内の死角領域を完全に補完できるまで変換画像を生成し、これらの変換画像で死角領域を補完することにより、撮像対象を遮蔽する遮蔽物を見かけ上無くした画像を確実にオペレータに提供でき、撮像対象の視認性を向上することができる。
【0081】
図1に示されるように、油圧ショベル100は、旋回軸RXを中心に回転する旋回体3を有している。図1,4に示されるように、カメラ20が旋回体3に搭載されている。旋回体3の旋回中に撮像された以前の撮像画像を利用して、最新画像内の死角領域を補完することで、撮像対象を遮蔽する遮蔽物を見かけ上無くした画像を確実にオペレータに提供でき、撮像対象の視認性を向上することができる。
【0082】
図1に示されるように、旋回体3は、車室4を有している。前方カメラ20Eは、車室4に収容されている。図6,7に示されるように、前方カメラ20Eによる撮像画像内には、左フロントピラー4FP1の画像IFP1が含まれ、画像IFP1は撮像対象である風景LSを遮蔽している。実施形態の画像生成システムによって、最新画像内の死角領域を補完することで、撮像対象を遮蔽する遮蔽物を見かけ上無くした画像を確実にオペレータに提供でき、撮像対象の視認性を向上することができる。
【0083】
図5,8~9に示されるように、画像処理部260は、以前の撮像画像を撮像したときから最新画像を撮像したときまでの旋回体3の旋回角度に基づいて、以前の撮像画像の位置をずらして、変換画像を生成する。油圧ショベル100において、旋回体3が旋回する方向は特定されているので、旋回角度に基づいて撮像画像の位置をずらして変換画像を生成する処理は容易であり、より高精度な変換画像を生成することができる。
【0084】
[第2実施形態]
図13は、第2実施形態に係る画像生成システムの構成例を示す機能ブロック図である。図4と比較して、図13に示される第2実施形態の画像形成システムは、画像処理部260が画像合成部265に替えて補完画像生成部266を有する点で異なっている。第1実施形態では、最新画像内の死角領域に以前の撮像画像を変換した変換画像を重ね合わせることで、合成画像を生成し、その合成画像を表示装置50に表示させたが、この例に限られるものではない。
【0085】
第2実施形態の画像形成システムでは、領域取得部263は、最新画像内の死角領域を取得する。視点変換部264は、カメラ20が最新画像を撮像したときのカメラ20の向きに合わせて、直前画像を含む過去画像を変換して、変換画像を生成する。補完画像生成部266は、最新画像と変換画像とを比較して、変換画像のうち、死角領域に重なり合う一部分を抽出し、その抽出した部分を補完画像とする。補完画像生成部266は、死角領域を完全に補完できるまで、以前の撮像画像である過去画像を変換し、死角領域に重なり合う部分を補完画像として抽出する。補完画像生成部266は、複数の補完画像を生成できる。
【0086】
通信装置22は、最新画像と補完画像とを、ネットワーク400を介して遠隔コントローラ60に送信する。遠隔コントローラ60の画像出力部67は、最新画像を表示装置50に表示させ、表示装置50における最新画像の死角領域に相当する領域に補完画像を表示させる。
【0087】
このように、非死角領域の画像と死角領域を補完する画像とを各々表示装置50に出力することで、第1実施形態で説明した合成画像を合成する場合と同様に、見かけ上死角領域を無くした画像を、表示装置50に表示させることができる。表示装置50に表示される画像に、撮像対象を遮蔽する遮蔽物が存在しないので、撮像対象の視認性を向上することができる。
【0088】
変換画像は、過去画像の全部を変換したものでなくてもよい。過去画像のうち、最新画像内で撮像対象が遮蔽物に遮蔽されている死角領域に相当する一部分のみを変換して、変換画像を生成してもよい。過去画像のうち死角領域に相当する部分を、ピクセル毎に逐次変換して、ピクセル単位の複数の変換画像を生成してもよい。そのピクセル単位の複数の変換画像を、ピクセル単位の複数の補完画像として用いることができる。ピクセル単位の複数の補完画像を、遠隔コントローラ60に順にまたは同時に送信して、画像出力部67がそれら複数の補完画像を表示装置50に表示することで、遮蔽物を見かけ上無くした画像を確実にオペレータに提供することができる。
【0089】
[第3実施形態]
図14は、第3実施形態に係る画像生成システムの構成例を示す機能ブロック図である。第1および第2実施形態では、油圧ショベル100に搭載されている車体コントローラ26が画像処理部260を有している。これに対し、第3実施形態の画像生成システムでは、遠隔操作側の遠隔コントローラ60が画像処理部600を有している。
【0090】
油圧ショベル100は、旋回角度センサ27を備えている。旋回角度センサ27は、走行体5に対する旋回体3の旋回角度を検出する。旋回角度センサ27はたとえば、旋回モータの回転軸に設けられたレゾルバであってもよく、旋回体3に搭載されているIMU(Inertial Measurement Unit)であってもよい。
【0091】
車体コントローラ26は、図4にも示される画像取得部261と、旋回角度取得部267とを有している。旋回角度取得部267は、旋回角度センサ27の検出値から、所定時間内に旋回体3が旋回した角度を取得する。
【0092】
遠隔操作システム200は、記録部610を備えている。記録部610には、過去画像データ618が記録されている。記録部610は、ネットワーク400を介して遠隔操作システム200に送信された撮像画像を、過去画像として記録する。
【0093】
記録部610にはまた、カメラ方向データ611が記録されている。カメラ方向データ611は、前方カメラ20Eが画像を撮像するときの前方カメラ20Eの向きを示す。たとえば、カメラ方向データ611は、ITRF(International Terrestrial Reference Frame)座標系における前方カメラ20Eの光軸の方向を示すものであってもよい。カメラ方向データ611は、遠隔操作システム200に入力されて、記録部610に記録される。
【0094】
記録部610にはまた、死角領域データ612が記録されている。以下の手順によって、死角領域データ612が記録部610に記録される。車室4の形状および車室4への前方カメラ20Eの取付位置の設計値が、事前に遠隔操作システム200に入力される。これらの設計値から、撮像画像の中でどの領域に車室4を構成する構造物が存在するのかを、予め求めておく。たとえば、図6に示される画像IMG中の、左フロントピラー4FP1の画像IFP1および右フロントピラー4FP2の画像IFP2の位置が求められる。撮像画像中の、車室4を構成する構造物の位置を死角領域と認定して、記録部610に記録する。左フロントピラー4FP1および右フロントピラー4FP2は前方カメラ20Eに対して位置が変わらないので、死角領域の決定が容易である。
【0095】
図15は、第3実施形態に係る画像生成方法の一例を示すフローチャートである。図14および図15を参照して、第3実施形態に係る画像生成方法について説明する。第1実施形態と同様に、旋回体3の旋回中に撮像対象を撮像する場合の例を説明する。
【0096】
図15に示されるように、まずステップS11において、最新画像を取得する。画像取得部261は、油圧ショベル100のカメラ20によって撮像された最新の撮像画像である、最新画像を取得する。
【0097】
ステップS12において、旋回角度を取得する。旋回角度取得部267は、旋回角度センサ27の検出値から、旋回体3の旋回角度を取得する。旋回角度取得部267は、最新画像の直前の直前画像を撮像した時刻から最新画像を撮像した時刻までの時間における、旋回体3の旋回角度を取得する。
【0098】
通信装置22は、カメラ20で撮像され画像取得部261が取得した撮像画像と、旋回角度取得部267が取得した旋回体3の旋回角度とを、ネットワーク400を介して、遠隔操作システム200に送信する。
【0099】
ステップS13において、最新画像よりも前に撮像された以前の撮像画像である過去画像を読み出す。画像処理部600は、視点変換部604を有している。視点変換部604は、記録部610から過去画像を読み出す。典型的には、視点変換部604は、最新画像の直前に撮像された過去画像である直前画像を読み出す。
【0100】
ステップS14において、カメラ方向を取得する。画像処理部600は、方向取得部601を有している。方向取得部601は、カメラ20が過去画像を撮像したときのカメラ20の向きを示すカメラ方向データ611を、記録部610から読み出す。方向取得部601は、前方カメラ20Eの向きを示すデータを、記録部610から読み出す。
【0101】
ステップS15において、変換画像を生成する。視点変換部604は、旋回体3の旋回角度と、前方カメラ20Eの向きとに基づき、前方カメラ20Eが最新画像を撮像したときの前方カメラ20Eの向きに合わせて、直前画像を含む過去画像を変換する。視点変換部604は、過去画像を撮像した時刻から最新画像を撮像した時刻までの旋回体3の旋回角度の分だけ、過去画像をずらして、過去画像に含まれる風景が最新画像に含まれる風景とぴったり重なるようにする。
【0102】
ステップS16において、死角領域を取得する。画像処理部600は、領域取得部603を有している。領域取得部603は、記録部610から死角領域データ612を読み出す。領域取得部603は、前方カメラ20Eによる撮像画像内の死角領域、典型的には左フロントピラー4FP1の画像IFP1および右フロントピラー4FP2の画像IFP2の位置を取得する。
【0103】
ステップS17において、マスキングを行う。ステップS18において、画像を合成する。画像処理部600は、画像合成部265を有している。画像合成部605は、最新画像における死角領域をマスキングして、死角領域を画像の合成に使用しないようにする。画像合成部605は、最新画像の一部と変換画像の一部とを重ね合わせるように画像を合成する。必要に応じて、画像合成部605は、複数の過去画像を変換した複数の変換画像と最新画像とを合成して、合成画像を生成する。
【0104】
ステップS19において、画像を出力する。画像出力部67は、ステップS18で生成した合成画像を表示装置50に出力して、表示装置50に合成画像を表示させる。
【0105】
ステップS19の処理の後、処理はリターンされ、より新しい撮像画像を用いた合成画像が生成されて表示装置50に表示される処理が繰り返される。
【0106】
第3実施形態の画像生成システムによっても、第1実施形態と同様に、見かけ上死角領域を無くした画像を、表示装置50に表示させることができる。表示装置50に表示される画像に、撮像対象を遮蔽する遮蔽物が存在しないので、撮像対象の視認性を向上することができる。
【0107】
表示装置50に表示する画像を生成する画像生成システムは、作業機械側の車体コントローラ26に搭載されていてもよく、遠隔操作側の遠隔コントローラ60に搭載されていてもよく、管制用コンピュータなどのその他のコンピュータに搭載されていてもよい。
【0108】
[第4実施形態]
図16は、第4実施形態に係る、カメラによる撮像の状況を示す模式図である。第4実施形態では、模式的に同一平面上に横並びに配置されている風景LSA,LSB,LSCを、旋回方向RDに旋回するカメラ20で順に撮像する例について説明する。
【0109】
図17は、第4実施形態に係る撮像画像の一例を示す図である。画像IMG101には、風景LSA,LSBが含まれている。画像IMG101は、風景LSA,LSBを斜めから撮像した撮像画像である。画像IMG102には、風景LSBと、風景LSA,LSCの一部とが含まれている。画像IMG102は、風景LSBを正面から撮像した撮像画像である。画像IMG103には、風景LSB,LSCが含まれている。画像IMG103は、風景LSB,LSCを斜めから撮像した撮像画像である。
【0110】
図18は、第4実施形態に係る合成画像の一例を示す図である。図16に示されるようにカメラ20をその場で旋回させて、図17に示される複数の画像IMG101,IMG102,IMG103を連続的に撮像し、画像IMG101,IMG102,IMG103の共通部分を重ねるようにつなげることで、1つの画像に合成することができる。図18に示される画像IMG111は、図17に示される画像IMG101を変形させたものである。画像IMG112は、画像IMG102を変形させたものである。
【0111】
直前に撮像された画像IMG103を基準に合成画像を生成する場合、カメラ20の旋回角度に基づいて以前に撮像された画像IMG101,IMG102の位置をずらすとともに変形させることで、より精密な合成画像を生成することができる。これにより、撮像対象の視認性をさらに向上することができる。
【0112】
上記の実施形態では、表示装置50に表示させる画像から左フロントピラー4FP1の画像IFP1を見かけ上除去する例を説明した。画像から除去できるのは、ピラー、サイドミラーなどの車室4を構成する構造物に限られない。画像から、作業機2の一部または全部を除去してもよい。ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12を除去して作業機2の本体部分を構成するブーム6、アーム7およびバケット8を表示装置50に表示させてもよい。作業機2の先端に配置された掘削・積込用の作業具であるバケット8のみを表示装置50に表示させてもよく、バケット8の刃先のみを表示装置50に表示させてもよい。
【0113】
実施形態では、旋回体3の旋回中に撮像対象を撮像する場合の例を説明したが、旋回体3の旋回中に撮像した撮像画像の画像処理に限られるものではない。旋回体3は走行体5に対して旋回しておらず、旋回体3に対して作業機2が動作している場合において、作業機2を表示装置50に表示させなくすることも可能である。この場合、複数の撮像画像と、複数の撮像画像を撮像した時刻および作業機2の移動速度とに基づいて、表示装置50に表示させる画像から作業機2の一部または全部を除去することができる。作業機2の移動速度は、作業機2を駆動する各油圧シリンダに取り付けられたストロークセンサの検出値、作業機2の各要素の回転軸となる各ピンに設けられた回転角度センサの検出値、作業機2を撮像した撮像画像の画像解析、などによって取得することができる。
【0114】
実施形態では、作業機械の一例として油圧ショベル100を挙げているが、ローディングショベル、機械式のロープショベル、バケットクレーンなどの他の種類の作業機械にも適用可能である。
【0115】
実施形態では、油圧ショベル100が、油圧アクチュエータ34である旋回モータを備え、旋回モータに作動油が供給されることにより旋回体3が旋回する例について説明した。この例に限られず、ショベルは、電気モータを備えてもよい。ショベルは、作業機2の動作および走行の駆動源であるエンジンと、電気エネルギーで旋回体3を駆動する電気モータとを備える、ハイブリッドショベルであってもよい。ショベルは、旋回体3の旋回、走行体5による走行、および作業機2の動作の駆動源がいずれも電動機であり、当該電動機はバッテリに蓄えられた電気エネルギーにより駆動される、電動ショベルであってもよい。
【0116】
以上のように実施形態について説明を行ったが、各実施形態において互いに組み合わせ可能な構成を適宜組み合わせてもよい。また、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
1 本体、2 作業機、3 旋回体、4 車室、4FP1 左フロントピラー、4FP2 右フロントピラー、4S 空間、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、10 ブームシリンダ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、20 カメラ、20A 右前方カメラ、20B 右側方カメラ、20C 後方カメラ、20D 左側方カメラ、20E 前方カメラ、22,72 通信装置、26 車体コントローラ、27 旋回角度センサ、40 遠隔操作装置、45 操縦シート、50 表示装置、60 遠隔コントローラ、67 画像出力部、69 制御信号生成部、100 油圧ショベル、200 遠隔操作システム、260,600 画像処理部、261 画像取得部、262 移動情報取得部、263,603 領域取得部、264,604 視点変換部、265,605 画像合成部、266 補完画像生成部、267 旋回角度取得部、270,610 記録部、278,618 過去画像データ、400 ネットワーク、601 方向取得部、611 カメラ方向データ、612 死角領域データ、RD 旋回方向、RX 旋回軸。
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