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特開2023-122556積層体、および積層体における樹脂層の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122556
(43)【公開日】2023-09-01
(54)【発明の名称】積層体、および積層体における樹脂層の検査方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230825BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20230825BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230825BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230825BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B7/06
C09J7/35
G03F7/004 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021819
(22)【出願日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2022025668
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大介
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 沙和子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勉
(72)【発明者】
【氏名】川田 早良
【テーマコード(参考)】
2H225
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC55
2H225AC72
2H225AD07
2H225AE03P
2H225AE12P
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AM70P
2H225AN22P
2H225AN33P
2H225AN36P
2H225AN42P
2H225AN61P
2H225AN62P
2H225AN85P
2H225AN86P
2H225AP11P
2H225BA01P
2H225BA05P
2H225BA09P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CC01
2H225CC13
2H225DA19
4F100AA20B
4F100AA20H
4F100AK03A
4F100AK07C
4F100AK17A
4F100AK25B
4F100AK33B
4F100AK42A
4F100AK49A
4F100AK53B
4F100BA03
4F100EJ381
4F100EJ38C
4F100JB12B
4F100JK06
4F100YY00
4J004AA11
4J004AA13
4J004AB05
4J004BA02
4J004FA04
(57)【要約】
【課題】保護フィルムを樹脂層から引き剥がした際に泣き別れが生じることのない積層体を提供する。
【解決手段】積層体は、引き剥がし角度60°および引き剥がし速度50mm/minの測定条件での前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Aと、引き剥がし角度120°および引き剥がし速度50mm/minの測定条件での前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Bとの比(A/Bの値)が4.0以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層とその樹脂層に接する保護フィルムとを備える積層体であって、
引き剥がし角度60°および引き剥がし速度50mm/minの測定条件での前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Aと、引き剥がし角度120°および引き剥がし速度50mm/minの測定条件での前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Bとの比(A/Bの値)が4.0以下であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
樹脂層とその樹脂層に接する保護フィルムとを備える積層体における樹脂層を検査する方法であって、
引き剥がし角度90°未満および所定の引き剥がし速度の測定条件で前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Aを測定する工程、
引き剥がし角度90°以上および前記剥離強度Aを測定する工程における引き剥がし速度と同じ引き剥がし速度の測定条件で前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Bを測定する工程、および
前記剥離強度Aと前記剥離強度Bとの比(A/Bの値)と所定の閾値とを比較して、前記樹脂層の状態を良否判定する工程、
を含むことを特徴とする、検査方法。
【請求項3】
前記剥離強度Aを測定する工程における引き剥がし角度が60°であり、
前記剥離強度Bを測定する工程における引き剥がし角度が120°であり、
前記良否判定する工程における閾値が4.0であることを特徴とする、請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記剥離強度Aを測定する工程における引き剥がし速度が50mm/minであることを特徴とする、請求項2または3に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、或る特定の測定条件での樹脂層と保護フィルムとの剥離強度と、その測定条件とは異なる或る特定の測定条件での樹脂層と保護フィルムとの剥離強度との比が所定の閾値以下であることを特徴とする積層体に関する。
また、本発明は、樹脂層およびその樹脂層に接する保護フィルムを備える積層体における樹脂層を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂組成物は、キャリアフィルム上に樹脂層を設けたドライフィルムの形態で主に使用される。この樹脂層において傷や汚れが付くことを防止するために、従来技術の発明(例えば、特許文献1に記載の発明)では、樹脂層におけるキャリアフィルムとは反対側の表面に保護フィルム(カバーフィルム)が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-128091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうしたドライフィルムでは、保護フィルムを樹脂層から引き剥がした際に、引き剥がされた保護フィルムに樹脂層の一部が付着した状態で残ってしまい、その結果、露出された樹脂層が破壊される現象(「泣き別れ」とも呼ばれる現象)が生じることがある。このように樹脂層が破壊されてしまうと、樹脂層が本来有すべき機能を有しないこととなり、すなわち、ドライフィルムが不良品となる。
硬化性樹脂組成物(具体的には、その組成物の成分およびその成分の量)が同じ場合であっても樹脂層が破壊される場合と破壊されない場合があり、こうした樹脂層表面が破壊される原因については、未だ解明されていない。すなわち、保護フィルムを樹脂層から引き剥がした際により確実に泣き別れが生じることのない積層体は未だ知られていない。また、保護フィルムを樹脂層から引き剥がす際に泣き別れが生じるか否かを判定する方法、および樹脂層が破壊されることを防ぐための手段については、いずれも未だ知られていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、保護フィルムを樹脂層から引き剥がした際に泣き別れが生じることのない積層体を提供することにある。
本発明の別の目的は、樹脂層およびその樹脂層に接する保護フィルムを備える積層体における樹脂層を検査する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、或る特定の測定条件での樹脂層と保護フィルムとの剥離強度とその或る特定の測定条件とは異なる特定の測定条件での樹脂層と保護フィルムとの剥離強度との比が、保護フィルムを樹脂層から引き剥がした際の泣き別れの有無と密接な関係があることを見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち、前記の目的は、本発明による、
樹脂層とその樹脂層に接する保護フィルムとを備える積層体であって、引き剥がし角度60°および引き剥がし速度50mm/minの測定条件での前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Aと、引き剥がし角度120°および引き剥がし速度50mm/minの測定条件での前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Bとの比(A/Bの値)が4.0以下であることを特徴とする、積層体によって達成することができる。
【0008】
また、本発明は、樹脂層とその樹脂層に接する保護フィルムとを備える積層体において樹脂層を検査する方法であって、
引き剥がし角度90°未満および所定の引き剥がし速度の測定条件で前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Aを測定する工程、
引き剥がし角度90°以上および前記剥離強度Aを測定する工程における引き剥がし速度と同じ引き剥がし速度の測定条件で前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Bを測定する工程、および
前記剥離強度Aと前記剥離強度Bとの比(A/Bの値)と所定の閾値とを比較して、前記樹脂層の状態を良否判定する工程、
を含むことを特徴とする、検査方法に関する。
【0009】
本発明による検査方法の好ましい態様によれば、前記剥離強度Aを測定する工程における引き剥がし角度が60°であり、前記剥離強度Bを測定する工程における引き剥がし角度が120°であり、前記良否判定する工程における閾値が4.0である。
【0010】
本発明による検査方法の好ましい態様によれば、前記剥離強度Aを測定する工程における引き剥がし速度が50mm/minである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層体によれば、保護フィルムを樹脂層から引き剥がすことによって露出される樹脂層の露出部分の状態が良好となる積層体を提供することができる。本発明の検査方法によれば、樹脂層と保護フィルムとを備える積層体における樹脂層を検査することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を十分に容易に理解させること目的として、本発明による検査方法、本発明による積層体の順に説明する。
【0013】
本発明の検査方法は、樹脂層とその樹脂層に接する保護フィルムとを備える積層体における樹脂層を検査する方法であって、
引き剥がし角度90°未満および所定の引き剥がし速度の測定条件において前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Aを測定する工程、
引き剥がし角度90°以上および前記剥離強度Aを測定する工程における引き剥がし速度と同じ引き剥がし速度の測定条件において前記樹脂層と前記保護フィルムとの剥離強度Bを測定する工程、および
前記剥離強度Aと前記剥離強度Bとの比(A/Bの値)と所定の閾値とを比較して、前記樹脂層の状態を良否判定する工程、
を含む。
最初に、本発明の検査方法に含まれる各工程を以下に説明する。
【0014】
[樹脂層と保護フィルムとの剥離強度Aを測定する工程]
樹脂層と保護フィルムとの剥離強度Aは、引き剥がし角度90°未満および所定の引き剥がし速度の測定条件で測定される。引き剥がし角度は、引き剥がし時において露出した樹脂層の表面と引き剥がされた保護フィルムにおける樹脂層側の表面とで形成される角度であり、90°未満であれば特に限定されずに任意の角度を選択することができる。この任意の角度としては、例えば60°が挙げられる。引き剥がし速度は、好ましくは10~3000mm/minの範囲、より好ましくは30~300mm/minの範囲のうちから任意に選択される速度、例えば50mm/minである。剥離強度Aの測定温度は、特に限定されないが、例えば室温、具体的には25℃(すなわち、樹脂層および保護フィルムの周囲温度が25℃)である。剥離強度Aは、好ましくは、標準大気圧(1013ヘクトパスカル)または、極端な加圧または極端な減圧が行われていない圧力状態において測定が行われる。剥離強度Aを測定する装置は、協和界面科学社製の粘着・皮膜剥離解析装置VPA-H100を使用することができる。
【0015】
[樹脂層と保護フィルムとの剥離強度Bを測定する工程]
樹脂層と保護フィルムとの剥離強度Bは、引き剥がし角度90°以上および所定の引き剥がし速度の測定条件で測定される。引き剥がし角度は、90°以上であれば特に限定されずに任意の角度を選択することができる。この任意の角度としては、例えば120°が挙げられる。引き剥がし速度は、剥離強度Aの測定が行われた引き剥がし速度と同じである。剥離強度Bの測定が行われる環境は、剥離強度Aの測定が行われた環境と実質的に同じ温度、圧力であることが好ましい。ここで実質的に同じ温度、圧力というときは、剥離強度の測定値に影響を与えない範囲での温度や圧力の変化は許容され、例えば、外気温や室温、大気圧の変化に起因する環境温度、圧力の差異は実質的に同じであるとして扱う。剥離強度Bを測定する装置は、剥離強度Aを測定する装置と同じ装置を使用する。
【0016】
剥離強度Aの測定に使用された樹脂層を構成する硬化性樹脂組成物と剥離強度Bの測定に使用された樹脂層を構成する硬化性樹脂組成物は、同じ製造時期に製造されたもの(すなわち、ロットが同じであるもの)を使用する。
【0017】
[樹脂層の状態を良否判定する工程]
保護フィルムを樹脂層から引き剥がすことによって露出される樹脂層の状態は、剥離強度Aと剥離強度Bとの比(A/Bの値)と所定の閾値とを比較することによって良否判定される。この閾値は、A/Bの値と、後述する実施例に記載の「保護フィルムの剥離による樹脂層の表面についての破壊の有無」の評価方法に従って評価した樹脂層の表面の破壊の有無との実際の関係に基づいて決定する。すなわち、樹脂層の表面の破壊が生じていない状態と破壊が生じている状態とのA/Bの値の境界点(臨界点)を導くことによって決定される。この閾値は、剥離強度Aの測定における引き剥がし角度と剥離強度Bの測定における引き剥がし角度との組み合わせによって定まる値であり、すなわち、この閾値は、それぞれの引き剥がし角度の組み合わせに応じて上記方法に従って適宜決定することができる。例えば、剥離強度Aの測定における引き剥がし角度が60°、剥離強度Bの測定における引き剥がし角度が120°である場合には、閾値は4.0である。露出される樹脂層の状態は、例えば、剥離強度Aと剥離強度Bとの比が、閾値以下であれば樹脂層は良好な状態であり、閾値を超えると露出される樹脂層は不良な状態であると判定することができる。
【0018】
次に、本発明の検査方法で検査される積層体を以下に説明する。
[積層体]
検査される積層体は、樹脂層(例えば、感光性樹脂層または熱硬化性樹脂層)とその樹脂層に接する保護フィルムとを備える積層体、例えば、キャリアフィルムと樹脂層とその樹脂層に接する保護フィルムとを順に備える積層体(すなわち、樹脂層と、その樹脂層の一方の側に設けられたキャリアフィルムと、その樹脂層におけるキャリアフィルムとは反対側の面に設けられた保護フィルムとを備える積層体)である。また、樹脂層とキャリアフィルムとの間に更なる層が設けられた積層体も本発明の検査方法で検査することができる。
上記の積層体としては、例えば、ドライフィルムを挙げることができる。なお、ドライフィルムは、キャリアフィルムおよび保護フィルムの両方が剥がされた樹脂層の硬化物の形態で、電子部品の保護膜または絶縁層(特には、プリント配線板の永久保護膜)として好ましく使用することができる。
【0019】
[保護フィルム]
保護フィルムは、樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、樹脂層の表面に設けられている。積層体がキャリアフィルムと保護フィルムを共に備える場合には、保護フィルムは樹脂層のキャリアフィルムとは反対側の面に設けられている。保護フィルムとしては、公知の保護フィルム、例えばポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、表面処理した紙、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~100μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。保護フィルムにおける樹脂層側の面には、エンボス加工、コロナ処理、微粘着処理等の密着性を向上させる処理、および/または離型処理を施すことができる。
【0020】
[キャリアフィルム]
キャリアフィルムは、樹脂層を支持する役割を有するものであり、樹脂層を形成するための硬化性樹脂組成物が塗布されるフィルムである。キャリアフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート)、熱可塑性樹脂(例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、またはポリプロピレンフィルム)からなるフィルム、および、表面処理した紙等を使用することができる。キャリアフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。キャリアフィルムの樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていてもよい。また、キャリアフィルムの樹脂層を設ける面には、スパッタもしくは極薄銅箔が形成されていてもよい。
【0021】
[樹脂層]
樹脂層としては、例えば硬化性樹脂組成物から形成される樹脂層を使用することができる。硬化性樹脂組成物としては、感光性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
以下、硬化性樹脂組成物を構成することのできる成分の一例を説明する。以下の成分は、本発明の検査方法で検査される積層体において使用することのできる成分の一例であるので、以下の成分に関する各記載は、本発明の実施形態を何ら制限するものではない。なお、下記の成分は、適宜組み合わせて使用することができる。
【0022】
(カルボキシル基含有樹脂)
カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種カルボキシル基含有感光性樹脂を使用することができる。例えば、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂や、当該エチレン性不飽和二重結合がアクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体であるカルボキシル基含有樹脂が挙げられる。尚、エチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂および、エチレン性不飽和二重結合を有しないカルボキシル基含有非感光性樹脂いずれも用いることもできる。
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0023】
(1)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド)とを反応させて得られる反応生成物に対して不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に対して多塩基酸無水物を更に反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0024】
(2)後述するような2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂に対して(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に対して2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0025】
(3)後述するような2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に対して(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に対して2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0026】
(4)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物と環状カーボネート化合物(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート)とを反応させて得られる反応生成物に対して不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に対して多塩基酸無水物を更に反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0027】
(5)ジイソシアネートと、2官能エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂)の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0028】
(6)不飽和カルボン酸(例えば、(メタ)アクリル酸)と、不飽和基含有化合物(例えば、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン)との共重合により得られるカルボキシル基含有非感光性樹脂。
【0029】
(7)ジイソシアネート(例えば、脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート)と、カルボキシル基含有ジアルコール化合物(例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸)およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、ジオール化合物(例えば、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物)の重付加反応によるカルボキシル基含有非感光性ウレタン樹脂。
【0030】
(8)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸(例えば、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸)を反応させ、生じた1級の水酸基に対して、2塩基酸無水物(例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸)を付加させたカルボキシル基含有非感光性ポリエステル樹脂。
【0031】
(9)前記(5)または(7)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0032】
(10)前記(5)または(7)の樹脂の合成中に、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(例えば、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物)を加えて、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0033】
(11)上記(1)~(10)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0034】
また、前記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、例えば40~200mgKOH/gの範囲である。
【0035】
上記のカルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物を構成する各成分の配合量に応じて適宜決定することができる。
【0036】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することができる。
【0037】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のIrgacure OXE01、Irgacure OXE02、アデカ社製N-1919、NCI-831などが挙げられる。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も用いることができ、具体的には、下記一般式で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【化1】
(式中、Xは、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、または、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、または、ベンゾチエニル基を表し、Arは、結合か、炭素数1~10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5-ピロール-ジイル、4,4’-スチルベン-ジイル、または、4,2’-スチルベン-ジイルを表し、nは0か1の整数である。)
【0038】
また、カルバゾールオキシムエステル化合物として、下記一般式で表すことができる化合物を挙げることもできる。
【化2】
(式中、Rは、炭素原子数1~4のアルキル基、または、ニトロ基、ハロゲン原子もしくは炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
は、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、または、炭素原子数1~4のアルキル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表す。
は、酸素原子または硫黄原子で連結されていてもよく、フェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基を表す。
は、ニトロ基、または、X-C(=O)-で表されるアシル基を表す。
Xは、炭素原子数1~4のアルキル基で置換されていてもよいアリール基、チエニル基、モルホリノ基、チオフェニル基、または、下記式で示される構造を表す。)
【化3】
【0039】
その他、特開2004-359639号公報、特開2005-097141号公報、特開2005-220097号公報、特開2006-160634号公報、特開2008-094770号公報、特表2008-509967号公報、特表2009-040762号公報、特開2011-80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0040】
チタノセン系光重合開始剤としては、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-フェニル-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-クロロ-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、3、4、5、6ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、6-ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)784などが挙げられる。
【0041】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、例えば0.01~5質量部とすることができる。
【0042】
アルキルフェノン系光重合開始剤の市販品としてはIGM Resins社製Omnirad(オムニラッド)184、ダロキュアー1173、Irgacure2959、Omnirad(オムニラッド)127(2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)などのα-ヒドロキシアルキルフェノンタイプが挙げられる。
【0043】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)907、Omnirad(オムニラッド)369、Omnirad(オムニラッド)379などが挙げられる。
【0044】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、2,4,6―トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)819などが挙げられる。
【0045】
これらα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、の配合量は、固形分換算で、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、例えば0.1~25質量部である。
【0046】
(熱硬化成分)
硬化性樹脂組成物には、熱硬化成分を含むことができる。熱硬化成分としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体等のアミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂等の公知の熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0047】
上記の分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物は、分子中に3、4または5員環の環状(チオ)エーテル基のいずれか1種類または2種類以上の基を複数有する化合物であり、例えば、分子内に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ樹脂、分子内に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン樹脂、分子内に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0048】
前記多官能エポキシ樹脂としては、ADEKA製のアデカサイザーO-130P、アデカサイザーO-180A、アデカサイザーD-32、アデカサイザーD-55等のエポキシ化植物油;三菱ケミカル社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、ダイセル社製のEHPE3150、DIC社製のEPICLON840、EPICLON850、EPICLON1050、EPICLON2055、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、HUNTSMAN社製のアラルダイト6071、アラルダイト6084、アラルダイトGY250、アラルダイトGY260、住友化学社製のスミ-エポキシESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128、等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;YDC-1312、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、YSLV-80XYビスフェノール型エポキシ樹脂、YSLV-120TEチオエーテル型エポキシ樹脂(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製);三菱ケミカル社製のjERYL903、DIC社製のEPICLON152、EPICLON165、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDB-400、YDB-500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、BASFジャパン社製のアラルダイト8011、住友化学社製のスミ-エポキシESB-400、ESB-700、等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のEPICLON N-730、EPICLON N-770、EPICLON N-865、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、HUNTSMAN社製のアラルダイトECN1235、アラルダイトECN1273、アラルダイトECN1299、アラルダイトXPY307、日本化薬社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、住友化学社製のスミ-エポキシESCN-195X、ESCN-220等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のN-730A、N-740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;日本化薬社製のNC-3000、NC-3000H、NC-3100等のビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のEPICLON830、三菱ケミカル社製jER807、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004、BASFジャパン社製のアラルダイトXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER604、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYH-434、HUNTSMAN社製のアラルダイトMY720、住友化学社製のスミ-エポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;HUNTSMAN社製のアラルダイトCY-350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル社製のセロキサイド2021、HUNTSMAN社製のアラルダイトCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、ADEKA社製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL-931、HUNTSMAN社製のアラルダイト163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;HUNTSMAN社製のアラルダイトPT810、日産化学社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製ESN-190、ESN-360、DIC社製HP-4032、EXA-4750、EXA-4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP-7200、HP-7200L、HP-7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル製PB-3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば日鉄ケミカル&マテリアル製のYR-102、YR-450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0049】
多官能オキセタン樹脂としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂とのエーテル化物等が挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等も挙げられる。
【0050】
エピスルフィド樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂 YL7000等が挙げられる。また、公知の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0051】
熱硬化成分の配合量は、硬化性樹脂組成物を構成する各成分の配合量に応じて適宜決定することができる。
【0052】
硬化性樹脂組成物には、熱硬化成分の硬化剤として、例えばフェノール樹脂、活性エステル樹脂、アミノ樹脂、シアネートエステル樹脂を含むことができる。硬化剤の配合量は、固形分換算で、熱硬化成分100質量部に対して、例えば20~100質量部とすることができる。
【0053】
硬化性樹脂組成物には、熱可塑性樹脂として、例えばフェノキシ樹脂やポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂を含むことができる。熱可塑性樹脂の配合量は、固形分換算で、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、例えば0.5~20質量部とすることができる。
【0054】
(熱硬化触媒)
硬化性樹脂組成物には、熱硬化触媒を含むことができる。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物;ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2E4MZ、2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT(登録商標)3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)等が挙げられる。これらに限られるものではなく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0055】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、固形分換算で、前記カルボキシル基含有樹脂または分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化成分100質量部に対して、例えば0.1~20質量部とすることができる。
【0056】
(無機フィラー)
硬化性樹脂組成物には、無機フィラーを含むことができる。無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、ノイブルグ珪土、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、等が挙げられる。
【0057】
上記無機フィラーの体積平均粒子径D50は、例えば5μm以下とすることができる。配合割合は、上記硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として、例えば20質量%以上75質量%以下とすることができる。
【0058】
(その他成分)
【0059】
硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、公知の熱重合禁止剤、密着促進剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤、難燃剤、溶剤等のような公知の添加剤類を配合することができる。
【0060】
ドライフィルムとして用いられる積層体の樹脂層の厚さは特に限定されず、例えば、厚さが1~200μmであればよい。なお、ドライフィルムの樹脂層を複数重ねあわせて樹脂層を形成してもよい。その場合、ロールラミネーターや真空ラミネーターを用いればよい。
ドライフィルムとして用いられる積層体の樹脂層は、一般にBステージ状態と言われる半硬化状態であり、硬化性樹脂組成物から得られるものである。具体的には、ドライフィルムとして用いられる積層体の樹脂層は、キャリアフィルムに硬化性樹脂組成物を塗布後、乾燥工程を経て得られる。
【0061】
[積層体の形成方法]
積層体を形成する際には、まず、樹脂層を形成するための硬化性樹脂組成物を、コンマコーター、ブレードコーター等によりキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された硬化性樹脂組成物を、通常、40~130℃の温度で1~30分間乾燥することで、樹脂層を形成する。
樹脂層のキャリアフィルムとは反対側の表面に保護フィルムを貼り合わせて、積層体を形成する。なお、保護フィルム上に樹脂層を形成して、その後、キャリアフィルムを貼り合わせてもよい。また、積層体が長尺状である場合、ロール状に巻き取ってロール状積層体としてもよい。ロール状積層体は、必要に応じて所定の幅に切断してもよい。
【0062】
積層体の樹脂層についての露光、加熱、現像、および硬化の方法は、公知の方法を使用することができる。樹脂層の硬化物は、公知の電子部品(例えば、プリント配線板)において絶縁性硬化膜として使用することができる。
【0063】
次に、本発明による積層体(すなわち、剥離強度Aと剥離強度Bとの比(A/B)が所定の値以下である積層体)を以下に説明する。
本発明は、引き剥がし角度60°および引き剥がし速度50mm/minの測定条件における樹脂層と保護フィルムとの剥離強度Aと引き剥がし角度120°および引き剥がし速度50mm/minの測定条件における樹脂層と保護フィルムとの剥離強度Bとの比(A/B)が4.0以下であることを特徴とする、樹脂層とその樹脂層に接する保護フィルムとを備える積層体に関する。A/Bが4.0以下であることによって、保護フィルムの剥離時の泣き別れを防止し、樹脂層の露出部が良好となる積層体を得ることができる。樹脂層、保護フィルムとしては、上記本発明の検査方法で検査される積層体として説明した積層体と同様の各種材料を用いることができる。
【0064】
剥離強度Aおよび剥離強度Bは、前述した[樹脂層と保護フィルムとの剥離強度Aを測定する工程]および[樹脂層と保護フィルムとの剥離強度Bを測定する工程]に従って測定することができる。
具体的には、FR4基板上に積層体を貼り合わせた後に、具体的にはその積層体の樹脂層における保護フィルムとは反対側の面とFR4基板とが対向するようにその間に挟んだ粘着テープを介してそれらを貼り合わせた後に、保護フィルムにおける樹脂層とは反対側の面から、長さ100mmおよび幅10mmの保護フィルムの大きさが得られるように切れ込みを入れる。その保護フィルム(長さ100mmおよび幅10mm)における一方の短辺(幅10mm)を含む端部のみを樹脂層から引き剥がし、その引き剥がされた端部を掴み治具で挟んで固定し、室温下(25℃)にて協和界面科学社製の粘着・皮膜剥離解析装置VPA-H100および最大測定荷重1N/cmの計測ユニットを使用し、引き剥がし速度50mm/minで剥離強度の測定を行う。なお、剥離強度Aは引き剥がし角度60°、剥離強度Bは引き剥がし角度120°で測定した値である。
【0065】
上記A/Bの値は、主として積層体形成時に、塗布した硬化性樹脂組成物を乾燥する際の風速によって制御することができる。例えば、乾燥時の炉内の最大風速が小さいとA/Bは大きくなり、炉内の最大風速が大きいとA/Bは小さくなる傾向がある。これらの条件を適宜調整することにより、A/Bが4.0以下となる本発明の積層体を得ることができる。この風速は、炉内を循環させる際の風速でも良いし、積層体に直接空気を吹き付ける時の風速でも良い。例えば、炉内を循環させる際の最大風速が3m/分以上であると好ましく本発明の積層体を得ることができる。
【実施例0066】
以下、本発明の実施例等により具体的に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
<硬化性樹脂組成物の調製>
硬化性樹脂組成物は、表1に示される各成分をその表に示される割合(質量部)で配合し、攪拌機で予備混合し、その後ビーズミルで混練することによって調製した。表1に示される各成分の配合量は、固形分質量で示されている。また、撹拌機の攪拌条件は、回転数800rpm、撹拌時間10min.であり、撹拌機羽は12cmであった。ビーズミルはコニカル型K-8(ビューラ社製)を使用し、混練条件はジルコニアビーズ、回転数1000rpm、吐出量20%、ビーズ粒子径0.65mm、充填率88%とした。
【0068】
<ドライフィルムの作製>
上記で調製された硬化性樹脂組成物を、その粘度が0.5~20dPa・s(回転粘度計5rpm、25℃)となるように溶剤(メチルエチルケトン)の量によって調整した。粘度が調整された硬化性樹脂組成物を、樹脂層の膜厚が乾燥後に25μmとなるように、ヒラノテクシード製スタンダードラボコーターを用いてキャリアフィルム(PETフィルム;東洋紡社製TN-100、厚さ38μm)上に塗布した。次いで、80℃~100℃の温度勾配を有する乾燥炉において、炉内を循環させる際の最大風速を表2に示す条件として、樹脂層の残留溶剤が0.5~2.0質量%となるように乾燥し、キャリアフィルム上に樹脂層を形成した。ニップロール表面温度60℃および圧力0.1kgf/cmの作製条件で、樹脂層におけるキャリアフィルムとは反対側の表面に保護フィルム(王子エフテックス社製のOPPフィルムMA-411)を貼り合わせた。これによって、実施例1~7および比較例1~6に使用される三層構造のロール状ドライフィルム(長さ:50m;幅:495mm)を作製した。
【0069】
【表1】
【0070】
<カルボキシル基含有樹脂1の合成例>
温度計、窒素導入装置、アルキレンオキサイド導入装置、および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショウノールCRG951」、アイカ工業株式会社製、OH当量:119.4)119.4質量部、水酸化カリウム1.19質量部、およびトルエン119.4質量部を導入し、撹拌しながら系内を窒素置換し、昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8質量部を徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56質量部を添加および混合しながら水酸化カリウムを中和して、ノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液[固形分:62.1%;水酸基価:182.2mgKOH/g(307.9g/eq.)]を得た。このプロピレンオキサイド反応溶液は、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキサイドが平均1.08モル付加したものであった。得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液293.0質量部、アクリル酸43.2質量部、メタンスルホン酸11.53質量部、メチルハイドロキノン0.18質量部およびトルエン252.9質量部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら110℃で12時間反応させた。反応により生成した水12.6質量部を、トルエンとの共沸混合物として留出させた。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35質量部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1質量部でトルエンを置換しながら留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5質量部およびトリフェニルフォスフィン1.22質量部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部を徐々に加え、95~101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。このようにして、カルボキシル基含有樹脂1の溶液(固形分:70.6%;固形分の酸価:87.7mgKOH/g)を得た。
【0071】
<カルボキシル基含有樹脂2の合成例>
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製のEPICLON N-695;軟化点95℃;エポキシ当量214;平均官能基数7.6;グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)1070部、アクリル酸360部(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5部をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート650部に添加し、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。次いで、トリフェニルフォスフィン4.3部を添加し、110℃に昇温して、その温度で2時間反応させた。その2時間の反応後に、トリフェニルフォスフィン1.6部を更に追加し、120℃に昇温して、12時間反応を行った。芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)525部、テトラヒドロ無水フタル酸608部(4.0モル)を得られた反応液に添加し、110℃で4時間反応を行った。さらに、グリシジルメタクリレート142.0部(1.0モル)を上記4時間反応後の反応液に添加し、115℃で4時間反応を行い、カルボキシル基含有樹脂2の溶液(固形分酸価77mgKOH/g;固形分65%)を得た。
【0072】
表1に示される硬化性樹脂組成物における上記カルボキシル基含有樹脂1および上記カルボキシル基含有樹脂2以外の各成分についての詳細を下記に示す。
光重合開始剤:ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキサイド
エポキシ樹脂1:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂 HP-7200L(DIC株式会社製)
エポキシ樹脂2:フェノールノボラック型エポキシ樹脂 N-730A(DIC株式会社製)
エポキシ樹脂3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂 JER828(三菱ケミカル株式会社製)
エポキシ樹脂4:フェノールノボラック型エポキシ樹脂 N-740(DIC株式会社製)
エポキシ樹脂5:ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂 NC-3000H (日本化薬株式会社製)
フェノール樹脂:フェノールノボラック樹脂 HF-1M(明和化成株式会社製)
活性エステル:活性エステル樹脂 HPC-8000(DIC株式会社製)
熱可塑性樹脂:フェノキシ樹脂 YL7213(三菱ケミカル株式会社製)
シリカスラリー:シクロヘキサノン分散シリカ 固形分濃度70質量% SC2050-HNP (アドマテックス株式会社製)
シリカ:球状シリカ SO-C2(アドマテックス株式会社製)
添加剤:エポキシシランカップリング剤 KBM-403(信越化学工業株式会社製)
熱硬化触媒1:メラミン
熱硬化触媒2:ジシアンジアミド(DICY)
熱硬化触媒3:2-エチル-4-メチルイミダゾール 2E4MZ(四国化成工業株式会社製)
熱硬化触媒4:ジメチルアミノピリジン(DMAP)
光重合性モノマー(アクリレートモノマー):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬株式会社製)
【0073】
<異なる引き剥がし角度での剥離強度の測定>
得られた三層構造のドライフィルムについて、樹脂層と保護フィルムとの剥離強度を測定した。FR4基板(長さ120mm×幅30mm×厚み1.6mm)とそのドライフィルムのキャリアフィルムとをその間に挟んだ粘着テープを使用して貼り合わせることによって、得られたドライフィルム(長さ110mm×幅20mm)をFR4基板上に固定した。保護フィルムにおける樹脂層とは反対側の面から、長さ100mmおよび幅10mmの保護フィルムの大きさが得られるように切れ込みを入れた。その保護フィルム(長さ100mmおよび幅10mm)における一方の短辺(幅10mm)を含む端部のみを引き剥がした。その後、その引き剥がされた端部を掴み治具で挟んで固定し、協和界面科学社製の粘着・皮膜解析装置VPA-H100および最大測定荷重1N/cmの計測ユニットを使用し、剥離強度の測定を実施した。樹脂層と保護フィルムとの剥離強度は、環境温度25℃、引き剥がし速度50mm/min、並びに、引き剥がし角度60°(剥離強度A)および引き剥がし角度120°(剥離強度B)のそれぞれの角度で別個に測定を行った。測定結果を表2に示す。
なお、剥離強度Aの測定に使用された樹脂層を構成する硬化性樹脂組成物と剥離強度Bの測定に使用された樹脂層を構成する硬化性樹脂組成物は、同じ製造時期に製造されたもの(すなわち、ロットが同じであるもの)を使用した。
【0074】
<ドライフィルムにおける樹脂層の残溶剤量の割合>
保護フィルムを剥離したドライフィルムの樹脂層を、ニッコー・マテリアル社製CVP-300を使用して、厚さ35μmの銅箔上にラミネートした。次にキャリアフィルムを剥離し、100℃、30分乾燥させて溶剤を完全に除去した。
以下の残溶剤量の割合の計算式に基づき、樹脂層の残溶剤量の割合を算出した。
(残溶剤量の割合の計算式)
残溶剤量の割合(%)=((2)の質量-(3)の質量)/((2)の質量-(1)の質量)×100
(1)の質量:銅箔の重さ
(2)の質量:銅箔と乾燥前の樹脂層を合わせた重さ
(3)の質量:銅箔と乾燥後の樹脂層を合わせた重さ
なお、残溶剤量の割合は、実施例1、4~7および比較例1、3~5では0.5質量%であり、実施例2では1.0質量%であり、実施例3および比較例2では2.0質量%であった。
【0075】
<保護フィルムの剥離による樹脂層の表面についての破壊の有無>
作製した3層構造のドライフィルム(厚み25um、幅495mm、長さ50mのロール製品)を、日立プラントメカニクス社製ドライフィルム仮付装置TDL-6500Lにセットし、巻き取りロールで保護フィルムを速度3000mm/minで剥がした。その後、長さ500×幅500mm×厚み0.8mmの銅張板に連続して20枚ラミネートした。
保護フィルムを剥離することによって、樹脂層が破壊されているのか否か(泣き別れの有無)を確認した。
〇:すべての樹脂層において表面の破壊が無かった
×:樹脂層の表面の破壊が有った
【0076】
【表2】