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特開2023-122682フライ調理用油脂組成物、フライ調理用油脂組成物の製造方法、フライ調理食品の製造方法、フライ調理食品のサクミ向上方法、及びフライ調理食品のサクミ向上剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122682
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】フライ調理用油脂組成物、フライ調理用油脂組成物の製造方法、フライ調理食品の製造方法、フライ調理食品のサクミ向上方法、及びフライ調理食品のサクミ向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230829BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20230829BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A21D13/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026326
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】清水 里奈
(72)【発明者】
【氏名】岡本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚二
(72)【発明者】
【氏名】片岡 久
(72)【発明者】
【氏名】井上 賀美
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG01
4B026DG02
4B026DH02
4B026DH05
4B026DX02
4B032DB01
4B032DK18
4B032DP47
(57)【要約】
【課題】 フライ調理することにより得られるフライ調理食品のサクミを向上させることができるフライ調理用油脂組成物を提供する。
【解決手段】 このフライ調理用油脂組成物は、構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂と、20℃における固体脂含量が5%以上30%以下であり、前記α-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂からなるベース油脂とを含むフライ調理用油脂組成物であって、前記α-リノレン酸系食用油脂を前記フライ調理用油脂組成物中に0.03質量%以上4質量%以下含有することを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂と、
20℃における固体脂含量が5%以上30%以下であり、前記α-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂からなるベース油脂とを含むフライ調理用油脂組成物であって、
前記α-リノレン酸系食用油脂を前記フライ調理用油脂組成物中に0.03質量%以上4質量%以下含有することを特徴とする、前記フライ調理用油脂組成物。
【請求項2】
前記α-リノレン酸系食用油脂は、えごま油およびあまに油からなる群から選ばれた1種又は2種である、請求項1に記載のフライ調理用油脂組成物。
【請求項3】
前記ベース油脂は、パーム油およびパーム分別油からなる群から選ばれた1種又は2種を含む、請求項1又は2に記載のフライ調理用油脂組成物。
【請求項4】
前記ベース油脂の30℃における固体脂含量が0%以上10%以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフライ調理用油脂組成物。
【請求項5】
構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂と、
20℃における固体脂含量が5%以上30%以下であり、前記α-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂からなるベース油脂とを混合する工程を含むフライ調理用油脂組成物の製造方法であって、
前記α-リノレン酸系食用油脂を前記フライ調理用油脂組成物中に0.03質量%以上4質量%以下含有させることを特徴とするフライ調理用油脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフライ調理用油脂組成物で食材をフライ調理する工程を含むことを特徴とするフライ調理食品の製造方法。
【請求項7】
構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂を0.03質量%以上4質量%以下含有するフライ調理用油脂組成物で食材をフライ調理する、フライ調理食品のサクミ向上方法。
【請求項8】
α-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂を有効成分とし、フライ調理用油脂組成物に対する前記α-リノレン酸系食用油脂の有効添加量が、該フライ調理用油脂組成物中濃度として0.03質量%以上4質量%以下となるように用いる、
フライ調理食品のサクミ向上剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ調理に用いられる、フライ調理用油脂組成物の製造方法、フライ調理食品の製造方法、フライ調理食品のサクミ向上方法、及びフライ調理食品のサクミ向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にフライ、天ぷら、から揚げ等のフライ調理品は、魚、肉、野菜等に、小麦粉を主成分とするバッター等の衣材を付着させ180℃前後の油で揚げる。得られたフライ調理品は、外観、風味、食感などが優れたものが求められる。特に、フライ調理品のサクサク感、カラッと揚げた食感等は、油脂の選択やフライ時間、フライ温度、フライ操作などの条件を適宜選択するなどの熟練が必要であった。これらのフライ調理における課題を解決するために、特許文献1には乳化剤を配合した油脂を用いることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
一方、特許文献2には、あまに油、えごま油、しそ油等を利用して、加熱調理した食品に程よい風味・コク味が付与することができる、と記載されている(特許文献2の段落0011参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07-016052号公報
【特許文献2】特開2018-007572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では添加物である乳化剤を必須成分として含むため、乳化剤等の添加物を忌避する、最近の健康志向の高まりから乳化剤を含まなくてもフライ調理食品の食感を改良する手段が求められている。また、特許文献2に記載の技術の目的は、揚げ物に程よい風味・コク味を付与することであって、揚げ物の食感向上については些かの開示も示唆もされていない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、食用油脂をフライ調理に使用することによりフライ調理食品の食感、とりわけそのサクミを向上させることができるフライ調理用油脂組成物、及びそのための食用素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、α-リノレン酸系食用油脂を特定の油脂に特定量配合したフライ調理用油脂組成物にてフライ調理したフライ調理食品はサクミが向上できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂と、
20℃における固体脂含量が5%以上30%以下であり、前記α-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂からなるベース油脂とを含むフライ調理用油脂組成物であって、
前記α-リノレン酸系食用油脂を前記フライ調理用油脂組成物中に0.03質量%以上4質量%以下含有することを特徴とする、前記フライ調理用油脂組成物。
[2]
前記α-リノレン酸系食用油脂は、えごま油およびあまに油からなる群から選ばれた1種又は2種である、[1]に記載のフライ調理用油脂組成物。
[3]
前記ベース油脂は、パーム油およびパーム分別油からなる群から選ばれた1種又は2種を含む、[1]又は[2]に記載のフライ調理用油脂組成物。
[4]
前記ベース油脂の30℃における固体脂含量が0%以上10%以下である、請求項[1]乃至[3]のいずれか1項に記載のフライ調理用油脂組成物。
[5]
構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂と、
20℃における固体脂含量が5%以上30%以下であり、前記α-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂からなるベース油脂とを混合する工程を含むフライ調理用油脂組成物の製造方法であって、
前記α-リノレン酸系食用油脂を前記フライ調理用油脂組成物中に0.03質量%以上4質量%以下含有させることを特徴とするフライ調理用油脂組成物の製造方法。
[6]
[1]乃至[4]のいずれか1項に記載のフライ調理用油脂組成物で食材をフライ調理する工程を含むことを特徴とするフライ調理食品の製造方法。
[7]
構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂を0.03質量%以上4質量%以下含有するフライ調理用油脂組成物で食材をフライ調理する、フライ調理食品のサクミ向上方法。
[8]
α-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂を有効成分とし、フライ調理用油脂組成物に対する前記α-リノレン酸系食用油脂の有効添加量が、該フライ調理用油脂組成物中濃度として0.03質量%以上4質量%以下となるように用いる、
フライ調理食品のサクミ向上剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食用油脂をフライ調理に使用することによりフライ調理食品の食感を改良することができるフライ調理用油脂組成物を提供することができる。より具体的にはフライ調理食品のサクミを向上できるフライ調理用油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いるα-リノレン酸系食用油脂とは、構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下である食用油脂のことをいう。より具体的には、構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が、好ましくは35質量%以上75質量%以下であり、より好ましくは40質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上60質量%以下である。α-リノレン酸の含有量が上記範囲内であると効果的にフライ調理食品のサクミを向上させることができる。
【0010】
なお、本発明における「サクミ」とは、一般に消費者や当業者に理解される用語の意味と異なるところはなく、より具体的には、フライ調理食品を食べたときにサクサクとして、心地よく感じられる食感を意味するものである。フライ調理食品の「サクミ」は、フライ調理食品の咀嚼開始時に感じるサクサク感の強度と、咀嚼中のサクサク感の持続の程度とにより、専門パネラーが官能的に評価することができる
【0011】
上記のようなα-リノレン酸系食用油脂としては、構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が上述する範囲にあれば油脂の種類は問わないが、例えば、あまに油、えごま油、しそ油、及びそれらの加工油脂等が挙げられる。なかでも、α-リノレン酸系食用油脂として、えごま油、あまに油およびしそ油からなる群から選ばれた1種又は2種以上を用いることが好ましく、えごま油およびあまに油からなる群から選ばれた1種又は2種を用いることがより好ましい。構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量は、日本油化学協会、「基準油脂分析試験法2.4.1.4-2013」によりメチルエステル化した後、後述する実施例の[2.α-リノレン酸含量]に記載の方法で測定することができる。
【0012】
本発明に用いる、α-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂としては、20℃における固体脂含量が5%以上30%以下であれば、食用として用いられている油脂を特に制限なく用いることができる。前記α-リノレン酸系以外の食用油脂に用いられる原料油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、魚油、豚脂、牛脂、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、及びこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂等が挙げられる。前記植物油脂は、オレイン酸含量を高めたハイオレイン酸品種の油糧原料由来の油脂、例えばハイオレイン酸大豆油、ハイオレイン酸菜種油、ハイオレイン酸ヒマワリ油、ハイオレイン酸サフラワー油等であってもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合は、混合後の食用油脂の20℃における固体脂含量が5%以上30%以下であればよい。
なかでも、本発明で用いるα-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂としては、パーム油およびパーム分別油からなる群から選ばれた1種又は2種含むことが好ましく、パーム油およびパームオレインからなる群から選ばれた1種又は2種含むことがより好ましく、パーム油およびパームオレインからなる群から選ばれた1種又は2種であることがさらに好ましい。
【0013】
食用油脂の固体脂含量は、AOCS Official Method Cd 16-81に準じた後述する実施例の[3.固体脂含量]に記載の方法により測定することができる。α-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂の20℃における固体脂含量は5%以上30%以下であり、6%以上27%以下であることが好ましく、8%以上25%以下であることがより好ましい。また、α-リノレン酸系以外の食用油脂の30℃における固体脂含量は0%以上10%以下であることが好ましく、1%以上9%以下であることがより好ましく、2%以上8%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明のフライ調理用油脂組成物は、上記したα-リノレン酸系食用油脂を、上記したα-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂からなるベース油脂に混合することにより製造することができる。ここで、α-リノレン酸系食用油脂の含有量は、油脂組成物中に0.03質量%以上4質量%以下であり、好ましくは0.04質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以上2質量%以下、さらにより好ましくは0.1質量%以上2質量%以下、殊更好ましくは0.2質量%以上0.9質量%以下である。その含有量が上記範囲にあるとフライ調理食品のサクミを効果的に向上させることができる。
【0015】
上記のようにして得られたフライ調理用油脂組成物は、これを用いて食材をフライ調理することでフライ調理食品を製造することができる。このようなフライ調理によって得られるフライ調理食品としては、特に限定されないが、例えば、トンカツ、唐揚げ、魚フライ、天ぷら、コロッケ、ポテトフライ、チキンナゲット、ドーナッツ、ハッシュドポテト、アメリカンドッグ、カレーパンなどの揚げパン、クルトン、かりんとう、揚げ米菓、スナック菓子等のフライ調理される食品が挙げられる。
【0016】
本発明のフライ調理理食品のサクミ向上方法に用いるフライ調理用油脂組成物は、構成脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が30質量%以上80質量%以下であるα-リノレン酸系食用油脂を含み、前記α-リノレン酸系食用油脂を前記フライ調理用油脂組成物中に0.03質量%以上4質量%以下含有する。フライ調理用油脂組成物が含有するα-リノレン酸系食用油脂以外のベース油脂には、特に制限はないが、上述した「α-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂」を用いることが好ましい。このようにして得られたフライ調理用油脂組成物は、これを用いて食材をフライ調理することにより、フライ調理食品のサクミを向上させることができる。すなわち、当該フライ調理用油脂組成物は、フライ調理理食品のサクミ向上方法に用いることができる。
【0017】
また、上記したα-リノレン酸系食用油脂は前段落に記載したベース油脂と配合し、フライ調理する際に調理食品のサクミ向上効果を発揮する。すなわち、上記したα-リノレン酸系食用油脂は、前段落に記載したベース油脂と配合することにより、フライ調理食品のサクミ向上剤の有効成分として用いることができる。
【0018】
上記したサクミ向上剤中におけるα-リノレン酸系食用油脂の含有量は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、さらにより好ましくは50質量%以上である。該含有量の上限は、特に限定するものではなく、100質量%以下である。この範囲内であれば、本向上剤の効果を得ることができる。
【0019】
また、上記したサクミ向上剤には、上述したα-リノレン酸系食用油脂以外の食用油脂が含まれていてもよく、好ましくはパーム油およびパーム分別油から選ばれる1種又は2種であり、より好ましくはパーム油およびパームオレインから選ばれる1種又は2種以上である。サクミ向上剤中における該食用油脂の含有量は、特に限定するものではないが、α-リノレン酸系食用油脂とこれ以外の食用油脂とを合わせて100質量%以下であればよい。
【0020】
上記した上記したフライ調理用油脂組成物、及びサクミ向上剤をフライ調理に用いる態様に特に制限はなく、適用するフライ調理食品に適した方法にて、適宜所望の態様で調理を行なえばよい。例えば、本発明によって得られるフライ調理用油脂組成物を用いてフライ調理を行う際は、典型的には100℃乃至200℃、より典型的には150℃乃至190℃に加熱した状態で、食材についてフライ調理を行なえばよい。
【0021】
上記したフライ調理用油脂組成物、及びサクミ向上剤には、本発明による作用効果を害しない範囲であれば、適宜、抗酸化剤、乳化剤、香料、香辛料抽出物、消泡剤等の添加素材を、更に配合していてもよい。具体的には、例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ-オリザノール、トコフェロール、シリコーン、色素、脂肪酸等が挙げられる。
【実施例0022】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0023】
〔1.食用油脂とベース油脂〕
まず、本実施例で用いた食用油脂を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1に記載のパーム油とパームオレインを用いて、ベース油脂を調製した。ベース油脂の配合を表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
〔2.α-リノレン酸含量〕
表1に示す食用油脂について、各油脂のα-リノレン酸含量を測定した。具体的には、基準油脂分析試験法2.4.1.4-2013に従いメチルエステル化を行い、油脂の構成脂肪酸中のα-リノレン酸含量(質量%)を測定した。測定条件は、以下のとおりとし、測定結果を表1に示した。
【0028】
(測定条件)
機器名:GC-2010 plus(株式会社島津製作所製)
カラム:TC-70(長さ30m、内径0.25mm、液相膜厚0.25μm)ジーエルサイエンス株式会社製
カラム昇温条件:表3参照
【0029】
【表3】
【0030】
カラム圧力:79.7kPa/分
キャリアガス:N2
気化室温度:230℃
FID温度:240℃
スプリット比:1:50
注入量:1μL
【0031】
〔3.固体脂含量〕
表1に示す食用油脂及び表2に示すベース油脂について、20℃及び30℃の固体脂含量を測定した。具体的には、下記に記載の対照サンプル、測定機器を使用し、下記の温度履歴を経たサンプルについて測定したことを除き、AOCS Official Method Cd 16-81 に則り測定した。測定結果を表1及び表2に示した。
対照サンプル:日本薬局方 オリブ油
測定機器:SFC-3000(ASTECH社製)
温度履歴:60℃に30分、0℃に30分、26℃に30分、0℃に30分、測定温度に30分
【0032】
〔4.フライ調理食品の食材及び調理法〕
フライ調理食品(カレーパン)の食材や調理法は、以下のとおりとした。
【0033】
〔4-1.カレーパンの調理法〕
鍋に試験するフライ調理用油脂組成物を600g入れ、180℃に加熱した。冷凍カレーパン(製品名:カレーパン、日本食研株式会社製)を5℃の冷蔵庫に入れてから15時間かけて解凍させた後、加熱したフライ調理用油脂組成物に入れ、片面1分間ずつ計2分間油調した。油調したカレーパンは、網の上で1時間静置して油切りを行った後、袋詰めして24℃に設定した恒温槽に入れ、4時間保管後、官能評価を行った。
【0034】
[試験例1](パーム油をベース油脂とした検討)
下記表4に示す含有量(質量%)となるようにα-リノレン酸系油脂を添加し又は添加せずに、各実施例、比較例又は対照例のフライ調理用油脂組成物を調製又は準備した。次いで、各実施例、比較例又は対照例のフライ調理用油脂組成物を使用して、上記した調理法によりカレーパンを調理した。
【0035】
調理後に24℃4時間保管したカレーパンを専門パネラー3名にて試食し、サクミについて官能評価を行った。官能評価では、αーリノレン酸系食用油脂を添加しない場合を「対照」として、下記に示す5段階の評価基準で採点して、その平均点を算出した。
なお、官能評価においてはサクミを評価するために、咀嚼開始時に感じるサクサク感の強度を評価する「サクミ強度」、咀嚼中のサクサクした食感の持続の程度を評価する「サクミ維持」の項目を設けた。
【0036】
(サクミ強度の評価基準)
5 :咀嚼開始時に対照よりサクミをきわめて強く感じる
4.5:咀嚼開始時に対照よりサクミをかなり強く感じる
4 :咀嚼開始時に対照よりサクミを強く感じる
3.5:咀嚼開始時に対照よりサクミをやや強く感じる
3 :咀嚼開始時に対照と同じか対照よりサクミを感じない
【0037】
(サクミ維持の評価基準)
5 :対照よりもサクミをきわめて持続して感じる
4.5:対照よりもサクミをかなり持続して感じる
4 :対照よりもサクミを持続して感じる
3.5:対照よりもサクミをやや持続して感じる
3 :対照と同じか対照よりサクミを持続して感じない
【0038】
【表4】
【0039】
その結果、表4に示したように、あまに油を0.05乃至2質量%の含有量となるように添加したもの(実施例1-1乃至1-6)では、あまに油を添加しないもの(対照例1)に比べ、サクミ向上の点において、良好な評価となり、あまに油を0.1乃至2質量%の含有量となるように添加したもの(実施例1-2乃至1-6)は、より良好な評価となり、あまに油を0.3乃至0.8量%の含有量となるように添加したもの(実施例1-3乃至1-4)は、さらに良好な評価となった。
また、えごま油を0.8質量%の含有量となるように添加したもの(実施例1-7)では、えごま油を添加しないもの(対照例1)に比べ、サクミ向上の点において、良好な評価となった。
一方、あまに油を0.01質量%の含有量となるように添加したもの(比較例1)では、あまに油を添加しないもの(対照例1)に比べてサクミは向上しなかった。
【0040】
以上から、パーム油をベース油脂とし、α-リノレン酸系油脂としてあまに油を特定量で用いることにより、フライ調理食品のサクミを向上できることが明らかとなった。また、α-リノレン酸系油脂としてえごま油を用いた場合も、同じ効果があることが明らかとなった。
【0041】
[試験例2](ベース油脂の種類の検討)
表5に示す各種のベース油脂を使用し、これにα-リノレン酸系油脂であるあまに油を下記表5に示す含有量(質量%)となるように添加又は添加せずに、各実施例又は対照例のフライ調理用油脂組成物を調製又は準備し、それを使用したこと及び専門パネラーが4名であること以外は試験例1と同じ方法にて、カレーパンを調理したときのサクミに関する官能評価を行った。
【0042】
【表5】
【0043】
その結果、表5に示したように、ベース油脂として、固体脂含量が異なるパーム油とパームオレインの配合油脂3種類を用い、あまに油を添加したもの(実施例2-1又は実施例3-1又は実施例4-1)では、あまに油を添加していないもの(対照例2又は対照例3又は対照例4)に比べ、それぞれいずれも、サクミの向上の点において、より良好な評価となった。
【0044】
以上から、あまに油によるサクミの向上効果は、一定範囲の固体脂含量を有するベース油脂と配合することにより得られることが明らかとなった。