(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122710
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】立体造形用粉末材料、立体造形用キット、及び立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/105 20220101AFI20230829BHJP
B22F 10/14 20210101ALI20230829BHJP
B22F 10/64 20210101ALI20230829BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230829BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20230829BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20230829BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20230829BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230829BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230829BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B22F1/105
B22F10/14
B22F10/64
B22F1/00 N
B22F1/00 S
B22F1/00 L
B22F1/00 R
B22F1/05
B22F1/10
B29C64/165
B33Y10/00
B33Y70/00
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026363
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】宮田 新平
(72)【発明者】
【氏名】十亀 淳次郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】横山 拓海
(72)【発明者】
【氏名】山田 沙織
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AP16
4F213WA25
4F213WB01
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4K018AA03
4K018AA06
4K018AA14
4K018AA33
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA08
4K018BA17
4K018BB04
4K018BC28
(57)【要約】
【課題】高精度な造形が可能であり、高焼結密度かつ高精度な立体造形物を得ることができる立体造形用材料の提供。
【解決手段】無機材料を含み体積平均粒径が25μm以上70μm以下である基材に対し、体積平均粒径が120nm以下である無機酸化物が付着してなる立体造形用粉末材料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機材料を含み体積平均粒径が25μm以上70μm以下である基材に対し、体積平均粒径が120nm以下である無機酸化物が付着してなることを特徴とする立体造形用粉末材料。
【請求項2】
前記無機酸化物の体積平均粒径が7nm以上120nm以下である、請求項1に記載の立体造形用粉末材料。
【請求項3】
前記無機酸化物が前記基材に対して0.005質量%以上1質量%以下の割合で付着している、請求項1から2のいずれかに記載の立体造形用粉末材料。
【請求項4】
前記無機酸化物がSiO2を含む、請求項1から3のいずれかに記載の立体造形用粉末材料。
【請求項5】
前記無機酸化物が、ジメチルジクロロシラン(DDS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ポリジメチルシロキサン、及びアミノシランの少なくともいずれかを含む処理剤によって表面処理されている、請求項1から4のいずれかに記載の立体造形用粉末材料。
【請求項6】
前記無機材料が金属及びセラミックスの少なくともいずれかである、請求項1から5のいずれかに記載の立体造形用粉末材料。
【請求項7】
前記金属が、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、銅、及びこれらの合金の少なくとも1種を含有する、請求項6に記載の立体造形用粉末材料。
【請求項8】
前記金属が樹脂により表面が被覆されていない、請求項6から7のいずれかに記載の立体造形用粉末材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の立体造形用粉末材料と、樹脂及び有機溶剤を含有する造形液とを有することを特徴とする立体造形用キット。
【請求項10】
前記造形液の25℃での粘度が5mPa・s以上50mPa・s以下である、請求項9に記載の立体造形用キット。
【請求項11】
無機材料を含み体積平均粒径が25μm以上70μm以下である基材に対し、体積平均粒径が120nm以下である無機酸化物が付着してなる立体造形用粉末材料を用いて粉末材料層を形成する粉末材料層形成工程と、
前記粉末材料層に対して造形液を付与する造形液付与工程と、
前記粉末材料層形成工程及び前記造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する積層工程と、
を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項12】
前記造形液付与工程が、前記粉末材料層に対して前記造形液をインクジェット方式で吐出する、請求項11に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項13】
前記積層物を加熱することで固化物を形成する加熱工程と、
前記固化物に付着している余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程と、
を更に含む、請求項11から12のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
【請求項14】
前記グリーン体を加熱することで樹脂が除去された脱脂体を形成する脱脂工程と、
前記脱脂体を加熱することで焼結体を形成する焼結工程と、
を更に含む、請求項13に記載の立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形用粉末材料、立体造形用キット、及び立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、金属などからなる複雑で微細な造形物を生産するニーズが高まってきている。このニーズに対応するための技術として、特に高生産性の観点から、バインダージェッティング方式(以下、「BJ方式」と称することもある)で造形した焼結前駆体を粉末冶金法によって焼結し緻密化する方式がある。
【0003】
BJ方式による焼結前駆体等の造形物の製造方法としては、例えば、焼結可能なコアと、コアの少なくとも一部を被覆しており加熱等による分解により除去可能な樹脂とを有する粒子に対し、バインダーとしての樹脂を含有する液体を付与する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高精度な造形が可能であり、高焼結密度かつ高精度な立体造形物を得ることができる立体造形用粉末材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段としての本発明の立体造形用粉末材料は、無機材料を含み体積平均粒径が25μm以上70μm以下である基材に対し、体積平均粒径が120nm以下である無機酸化物が付着してなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、高精度な造形が可能であり、高焼結密度かつ高精度な立体造形物を得ることができる立体造形用粉末材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、立体造形物の製造装置の動作の一例を示す概略図である。
【
図1B】
図1Bは、立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。
【
図1C】
図1Cは、立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。
【
図1D】
図1Dは、立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。
【
図1E】
図1Eは、立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(立体造形用粉末材料)
本発明の立体造形用粉末材料は、無機材料を含み体積平均粒径が25μm以上70μm以下である基材に対し、体積平均粒径が120nm以下である無機酸化物が付着してなる。
立体造形用粉末材料は、無機材料を含む基材に対し、無機酸化物が付着してなる粉末材料である。「基材に対し無機酸化物が付着してなる」とは、基材及び無機酸化物は粉末乃至粒子の形態を有しており、基材粒子に対して無機酸化物粒子が付与されることにより、基材粒子表面に無機酸化物粒子が付着されていることを意味し、付着以外にも凝着、吸着、ファンデルワールス結合等の任意の相互作用によって保持されていてもよい。
【0009】
従来技術では、基材を樹脂で被覆した立体造形用粉末材料を用いており、バインダージェッティング方式により立体造形物を製造すると、有機溶剤を含む造形液を乾燥させるプロセスにおいて発生した有機溶剤の蒸気が非造形部の樹脂を溶解し、非造形部まで固化してしまうという問題がある。
【0010】
本発明においては、基材に無機酸化物が付着してなる立体造形用粉末材料を用いることにより、造形液の乾燥プロセスにおいて非造形部を固化させずに立体造形物を得ることができる。
また、本発明者は、基材として、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の難焼結体の中でもアルミニウムは焼結が特に難しく、高焼結密度の焼結体を得るためには高かさ密度の立体造形用粉末材料を使用する必要があることを知見した。これは、高かさ密度の立体造形用粉末材料を用いることによって焼結前駆体である立体造形物の段階から高密度化できるためである。
【0011】
本発明の立体造形用粉末材料は、立体造形物の製造に用いられ、無機材料を含む基材に対し、無機酸化物が付着してなる粉末材料である。
立体造形物の製造は、本発明の立体造形用粉末材料を用いて粉末材料層を形成する粉末材料層形成工程と、前記粉末材料層に対して造形液を付与する造形液付与工程と、前記粉末材料層形成工程及び前記造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する積層工程と、を含む立体造形物の製造方法により実行される。
また、立体造形物の製造は、上記の積層工程に加えて、積層物を加熱することで固化物を形成する加熱工程、固化物に付着している粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程、グリーン体を乾燥させてグリーン体中に残存する液体成分を除去する乾燥工程、グリーン体を加熱して付与された造形液に由来する樹脂等を除去することで脱脂体を得る脱脂工程、脱脂体を加熱して焼結体を得る焼結工程、及び焼結体に対して後処理を行う後処理工程を含む造形物の製造方法により実行されることが好ましい。
【0012】
本発明において「立体造形物」とは、一定の立体形状が保たれている立体物の総称を表し、例えば、固化物又は固化物に由来する構造体であり、具体的には、固化物、グリーン体、脱脂体、及び焼結体などを表す概念である。
また、本発明においては、「粉体」は「粉末」又は「粉末材料」と称することもある。「造形液」は「硬化液」又は「反応液」と称することもある。また、「固化物」は「硬化物」と称することもある。また、固化物が積層した立体造形物を「グリーン体」、「焼結体」、「成形体」、又は「造形物」と称することもある。「グリーン体」を熱処理して脱脂したものを「脱脂体」と称することもある。「グリーン体」と「脱脂体」とを合わせて「焼結前駆体」と称することもある。
【0013】
<基材>
基材としては、粉末乃至粒子の形態を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、その材質としては、無機材料が好ましい。
無機材料としては、無機材料を含有する限り特に限定されず、無機材料以外の材料を含んでいてもよいが、主材料が無機材料であることが好ましい。主材料が無機材料であるとは、無機材料の質量が、基材の質量に対して50質量%以上であることを表し、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0014】
無機材料としては、例えば、金属、セラミックス、カーボン、砂、磁性材料などが挙げられる。これらの中でも、極めて高強度な立体造形物を得る観点から、最終的に焼結処理(工程)が可能な金属、セラミックスが好ましい。
【0015】
金属としては、例えば、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、鉛(Pd)、銀(Ag)、インジウム(In)、錫(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ネオジウム(Nd)、又はこれら金属の合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ステンレス(SUS)鋼、鉄(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、又はこれら金属の合金が好ましく、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、銅、又はこれらの金属の合金がより好ましく、アルミニウム合金が特に好ましい。
アルミニウム合金としては、例えば、AlSi10Mg、AlSi12、AlSi7Mg0.6、AlSi3Mg、AlSi9Cu3、Scalmalloy、ADC12、AlSi3などが挙げられる。
【0016】
セラミックスとしては、例えば、酸化物、炭化物、窒化物、水酸化物などが挙げられる。
酸化物としては、例えば、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)などが挙げられる。
【0017】
基材としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、純Al(東洋アルミニウム株式会社製、A1070-30BB)、純Ti(大阪チタニウムテクノロジーズ社製)、SUS316L(山陽特殊製鋼株式会社製、商品名:PSS316L);AlSi10Mg(東洋アルミニウム株式会社製、Si10Mg30BB);SiO2(株式会社トクヤマ製、商品名:エクセリカSE-15K)、AlO2(大明化学工業株式会社製、商品名:タイミクロンTM-5D)、ZrO2(東ソー株式会社製、商品名:TZ-B53)などが挙げられる。
【0018】
基材の体積平均粒径は、25μm以上70μm以下であり、26μm以上70μm以下がより好ましく、28μm以上60μm以下が更に好ましく、32μm以上50μm以下が特に好ましい。
基材の体積平均粒径が25μm以上70μm以下であると、高密度の焼結体を得ることができる。基材の体積平均粒径が25μm未満であると、高密度の焼結体を得ることが難しい。また、基材の体積平均粒径が70μmを超えると、前記粉体薄層の形成工程において粉体薄層に割れが発生し、均質な粉体薄層が得られない。
基材の粒度分布としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、粒度分布はよりシャープである方が好ましい。
基材の体積平均粒径及び粒度分布は、公知の粒径測定装置を用いて測定することができ、例えば、粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3000II、マイクロトラックベル社製)などが挙げられる。
【0019】
基材としての金属粒子は、特に制限はなく、従来公知の方法を用いて製造することができる。金属粒子を製造する方法としては、例えば、固体に圧縮、衝撃、摩擦等を加えて細分化する粉砕法、溶湯を噴霧して急冷粉体を得るアトマイズ法、液体に溶解した成分を沈殿させる析出法、気化させて晶出させる気相反応法などが挙げられる。これらの中でも、球状の形状が得られ、粒径のバラツキが少ない点からアトマイズ法が好ましい。アトマイズ法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、遠心アトマイズ法、プラズマアトマイズ法などが挙げられる。
【0020】
なお、金属の基材及び当該基材を被覆する被覆樹脂を有する金属粒子を用い、金属粒子に液体を付与することで被覆樹脂におけるバインダー機能を発揮させて造形物を製造する方法が従来から知られているが、本発明においては、造形液にバインダー機能を有する樹脂が含有されている。従って、金属粒子は、樹脂により表面が被覆されていなくてもよい。樹脂により表面が被覆されてない金属粒子を用いることで、例えば、造形液を付与されていない粉体の領域(言い換えると、非造形領域)であるにも関わらず、加熱工程を経ることで被覆樹脂が金属粒子同士を結着させ、意図しない固化物が形成されてしまうことを抑制することができる。
ここで、樹脂により表面が被覆されていないとは、例えば、金属粒子の表面積に対する樹脂の表面積の割合(表面被覆率)が15%未満であることを表し、表面被覆率は0%であってもよい。表面被覆率は、例えば、金属粒子の写真を取得し、二次元の写真に写る範囲において、金属粒子の表面の全面積に対する、樹脂で被覆された部分の面積の割合(%)を測定することで求めることができる。なお、樹脂で被覆された部分の判断においては、例えば、SEM-EDS等のエネルギー分散型X線分光法による元素マッピングの手法などを用いることができる。
【0021】
<無機酸化物>
無機酸化物としては、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、焼結体の密度低下の影響が少ない点から、SiO2が好ましい。
無機酸化物の体積平均粒径は120nm以下であり、7nm以上120nm以下が好ましく、7nm以上100nm以下がより好ましく、7nm以上50nm以下が更に好ましく、7nm以上20nm以下が特に好ましく、7nm以上12nm以下が最も好ましい。
無機酸化物の体積平均粒径が、7nm以上120nm以下であると、スペーサー効果で粒子(粉末)間の付着力を大幅に低下させ、流動性を大幅に向上させることができる。そのため、均一で高密度なパウダーベットを形成することができるため、製造される立体造形物(グリーン体)の密度を大幅に向上させることができる。更に、均一で高密度なパウダーベットは、造形液の浸透性も均一となり、均一で良好な硬度、精度を有する立体造形物を形成することができる。得られる立体造形物においては基材が高密度で存在するため、その立体造形物を焼結などして得られる焼結体は不要な空隙が少なく、外観の美麗なものとすることができる。
また、無機酸化物の体積平均粒径が12nm以下である場合、10μm以下の小粒径の立体造形用粉末材料に対してよりスペーサー効果がより効果的になり、流動性を改善する効果が大きい。そのため、より小粒径基材を使用することが可能となり、焼結性や造形物の面粗度を向上させることができる。
無機酸化物の体積平均粒径が7nm未満のものは作製が困難のため使用ができない。無機酸化物の体積平均粒径が、120nm超であると、焼結の際に粒子間距離が大きくなり、液相が隣接粒子同士で接合せず、焼結体の内部にポアの発生を引き起こすことによって焼結体密度が低下する。
無機酸化物の体積平均粒径は、例えば、ナノ粒子径測定装置(NANOTRAC FLEX、マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0022】
無機酸化物は、ジメチルジクロロシラン(DDS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ポリジメチルシロキサン、及びアミノシランの少なくともいずれかを含む処理剤によって表面処理されていることが好ましい。
【0023】
無機酸化物の基材に対する付与量は0.005質量%以上1質量%以下が好ましく、0.025質量%以上0.1質量以下がより好ましい。無機酸化物の付与量が0.005質量%未満であると、スペーサー効果が十分に発揮できず流動性が悪化する。それに伴い、造形品質が大幅に悪化することがある。無機酸化物の付与量が1質量%以上であると、基材の表面上に無機酸化物を均一に添加ができなくなるおそれがある。
【0024】
基材は、必要に応じてその他の成分を含むことができる。
その他の成分としては、例えば、焼結助剤などが挙げられる。
【0025】
焼結助剤は、造形物を焼結させる際、焼結効率を高める上で有効な材料である。焼結助剤を用いることで、例えば、造形物の強度を向上でき、焼結温度を低温化でき、焼結時間を短縮できる。
【0026】
(立体造形用キット)
本発明の立体造形用キットは、本発明の立体造形用粉末材料と、樹脂及び有機溶剤を含有する造形液とを有し、必要に応じて、粉体除去液等のその他の構成を有してもよい。また、立体造形用キットは、立体造形用粉末材料及び造形液がそれぞれ独立した状態で存在していればよく、造形液が収容されている造形液収容部及び立体造形用粉末材料が収容されている立体造形用粉末材料収容部が一体化している場合などに限られない。例えば、造形液及び立体造形用粉末材料がそれぞれ独立した収容部に収容されていたとしても、立体造形用粉末材料及び造形液が併用されることを前提としている場合、立体造形用粉末材料及び造形液が併用されることを実質的に誘導している場合などは立体造形用キットに含まれる。
【0027】
立体造形用キットにおける立体造形用粉末材料としては、上記の本発明の立体造形用粉末材料と同様のものを用いることができる。
【0028】
<造形液>
造形液は、樹脂を含有し、有機溶剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0029】
-樹脂-
樹脂は、基材との親和性が高く接着効果を持つものである。樹脂は基材と接着し、得られる立体造形物の強度をより一層高め、耐溶剤性を向上させることができる。
樹脂は、造形液に溶解する性質を有するものであればよいが、水に対しての溶解性が低く有機溶剤に可溶であることが好ましい。
樹脂としては、水への溶解性が0.5(g/100g-H2O)以下(25℃の水100gに対して0.5g以下の範囲で溶解する)であれば特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、パラフィン・オレフィン系樹脂、エチルセルロースなどが挙げられる。
また、造形液に対して溶解性を示す限り、特に制限はなく、ホモポリマー(単独重合体)であっても、ヘテロポリマー(共重合体)であってもよく、また、変性されていてもよいし、公知の官能基が導入されていてもよい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
樹脂としては、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製、BM-5)、酢酸ビニルと塩化ビニルの共重合体(日信化学工業株式会社製、ソルバインA)、ポリアクリルポリオール(DIC株式会社製:アクリディックWFU-580等)、ポリエステルポリオール(DIC株式会社製:ポリライトOD-X-668等、ADEKA社製:アデカニューエースYG-108等)、ポリブタジエンポリオール(日本曹達社製:GQ-1000等)、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール(積水化学工業社製:エスレック BM-2,KS-1等、クラレ社製:モビタールB20H等)、アクリルポリオール(大成ファインケミカル社製:6AN-6000)、エチルセルロース(日進化成社製:ETHOCEL)などが挙げられる。
【0031】
樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、造形液の全量に対して、1.0質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。樹脂の含有量が、1.0質量%以上50質量%以下であると、得られる立体造形物の強度が不足することを防止でき、硬化液の粘度の上昇、あるいはゲル化することを防止でき、液保存性や粘度安定性が低下することを防ぐことができる。
【0032】
-有機溶剤-
有機溶剤としては、樹脂を溶解することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
有機溶剤としては、例えば、脂肪族化合物、芳香族化合物、ケトン、エステル、スルホキシドなどが挙げられる。
脂肪族化合物としては、例えば、アルコール、エチレングリコールなどが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
エステルとしては、例えば、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸プロピレン、酢酸メチル、コハク酸ジエチルなどが挙げられる。
スルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0033】
有機溶剤の含有量は、造形液の全量に対して、30質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましい。有機溶剤の含有量が30質量%以上90質量%以下であると、樹脂の溶解性を向上させ、立体造形物の強度を向上させることができる。また、装置の不動作時(待機時)にノズルが乾燥することを防ぎ、液詰まりやノズル抜けを抑制できる。
【0034】
造形液において、水は実質的に含有されない。本発明において「水を実質的に含有しない」とは、水の含有量が造形液の全量に対して10質量%以下であることを表し、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、造形液が水を含有しないことが特に好ましい。造形液が水を実質的に含有しないことにより、上記樹脂の溶解性がより向上し、これに伴って造形液の粘度をより低下させることができる。また、樹脂の周囲に多くの水を包含したヒドロゲルの形成が抑制され、これに伴う造形液の粘度の増大が抑制される。このため、例えば、インクジェット方式で造形液を適切に吐出することができる。なお、「造形液が実質的に水を含有しない」とは、造形液の製造時における材料として積極的に水を用いていないこと又は造形液における水の含有量が公知かつ技術常識の手法を用いた場合において検出限界以下であることを表す。
また、造形液が水を実質的に含有しないことで、無機粒子を構成する材料が高活性金属、言い換えると禁水材料(例えば、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、又はこれらの合金など)であっても造形液を適用することができる。一例として、アルミニウムは、水と接触することで水酸化アルミニウムの皮膜を形成するため、造形液中における水の含有量が多いと焼結体の焼結密度が低下する課題があるが、造形液が水を含有しないことで本課題は抑制される。別の例として、アルミニウムは、水と接触することで水素を発生させるため取り扱いが困難な課題があるが、造形液が水を含有しないことで本課題も抑制される。
【0035】
-その他の成分-
その他の成分としては、造形液を付与する手段の種類、使用頻度、量などの諸条件を考慮して適宜選択することができ、例えば、インクジェット法によって造形液を付与する場合には、インクジェットプリンター等におけるノズルヘッドへの目詰り等の影響を考慮して選択することができる。
その他の成分としては、例えば、保存剤、防腐剤、安定化剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0036】
造形液の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤に、樹脂、必要に応じて前記その他の成分を添加し混合して溶解させる方法などが挙げられる。
【0037】
造形液の25℃における粘度は、5mPa・s以上50mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
造形液の粘度が、上記範囲であると、インクジェットヘッド等の造形液付与手段からの吐出が安定化し、立体造形物の寸法精度が向上する。
【0038】
(立体造形物の製造方法)
本発明の立体造形物の製造方法は、本発明の立体造形用粉末材料を用いて粉末材料層を形成する粉末材料層形成工程と、前記粉末材料層に対して造形液を付与する造形液付与工程と、前記粉末材料層形成工程及び前記造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する積層工程と、を含む。
また、造形物の製造方法は、積層物を加熱することで固化物を形成する加熱工程、固化物に付着している粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程、グリーン体を乾燥させてグリーン体中に残存する液体成分を除去する乾燥工程、グリーン体を加熱して付与された造形液に由来する樹脂等を除去することで脱脂体を得る脱脂工程、脱脂体を加熱して焼結体を得る焼結工程、及び焼結体に対して後処理を行う後処理工程などを更に含んでもよい。
【0039】
<粉末材料層形成工程>
粉末材料層形成工程は、無機材料を含み体積平均粒径が25μm以上70μm以下である基材に対し、体積平均粒径が120nm以下である無機酸化物が付着してなる立体造形用粉末材料を用いて粉末材料層を形成する工程であり、粉体層形成手段により実施される。
粉末材料層は、支持体上(造形ステージ上)に形成される。粉体を支持体上に配置させて粉体の薄層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特許第3607300号公報に記載の選択的レーザー焼結方法に用いられる公知のカウンター回転機構(カウンターローラー)などを用いる方法、粉体をブラシ、ローラ、ブレード等の部材を用いて拡げる方法、粉体の表面を押圧部材により押圧して拡げる方法、及び公知の積層造形装置を用いる方法などが挙げられる。
【0040】
カウンター回転機構(カウンターローラー)、ブラシ、ブレード、押圧部材などの粉体層形成手段を用いて、粉体の層を形成する場合、例えば、以下のよう方法で実行できる。
即ち、外枠(「型」、「中空シリンダー」、「筒状構造体」などと称されることもある)の内壁に摺動しながら昇降可能に配置された支持体上にカウンター回転機構(カウンターローラー)、ブラシ、ローラ、ブレード、又は押圧部材を用いて粉体を載置する。このとき、支持体として外枠内を昇降可能なものを用いる場合、支持体を外枠の上端開口部よりも少し下方の位置に配し(言い換えると、粉体の層の一層分の厚みだけ下方に位置させておき)、支持体上に粉体を載置する。以上により、支持体上に粉体の薄層を載置させることができる。
【0041】
粉末材料層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一層当たりの平均厚みで、30μm以上500μm以下が好ましく、60μm以上300μm以下がより好ましい。
平均厚みが、30μm以上であると、粉体に造形液を付与することで形成される固化物の強度が向上し、焼結工程等のその後の工程において生じ得る型崩れ等を抑制することができる。また、平均厚みが、500μm以下であると、粉体に造形液を付与することで形成される固化物に由来する造形物の寸法精度が向上する。
なお、平均厚みは、特に制限はなく、公知の方法に従って測定することができる。
【0042】
なお、粉体層形成手段で供給される粉体は、粉体収容部に収容されていてもよい。粉体収容部は粉体が収容されている容器等の部材であり、例えば、貯留槽、袋、カートリッジ、タンクなどが挙げられる。
【0043】
<造形液付与工程>
造形液付与工程は、粉末材料層形成工程で形成した粉末材料層に対して造形液を付与する工程であり、造形液付与手段により実施される。
粉末材料層に造形液を付与する方法としては、造形液を吐出する方法が好ましい。造形液を吐出する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディスペンサ方式、スプレー方式、インクジェット方式などが挙げられる。これらの中でも、ディスペンサ方式は、液滴の定量性に優れるが、塗布面積が狭くなる。また、スプレー方式は、簡便に微細な吐出物を形成でき、塗布面積が広く、塗布性に優れるが、液滴の定量性が悪く、スプレー流による造形液の飛散が発生する。このため、インクジェット方式であることが好ましい。インクジェット方式は、スプレー方式に比べ、液滴の定量性が良く、ディスペンサ方式に比べ、塗布面積が広くできる利点があり、複雑な造形物を精度良くかつ効率的に形成し得る点で好ましい。
【0044】
インクジェット法を用いる場合、造形液を吐出することで付与する造形液付与手段は、造形液を吐出するノズルを有するインクジェットヘッドである。インクジェットヘッドとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるインクジェットヘッドを好適に使用することができる。なお、インクジェットプリンターにおけるインクジェットヘッドとしては、例えば、株式会社リコー製の産業用インクジェットRICOH MH/GH SERIESなどが挙げられる。また、インクジェットプリンターとしては、例えば、株式会社リコー製のSG7100などが挙げられる。
【0045】
なお、造形液付与手段に供給される造形液は、造形液収容部に収容されていてもよい。造形液収容部は造形液が収容されている容器等の部材であり、例えば、貯留槽、袋、カートリッジ、タンクなどが挙げられる。
【0046】
<積層工程>
積層工程は、粉末材料層形成工程及び造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する工程であり、積層手段により実施される。
「積層物」とは、造形液が付与された領域を有する粉末材料層が複数積層された構造体である。このとき、構造体は、内部に一定の立体的形状が保たれている立体物を含まないものであってもよいし、内部に一定の立体的形状が保たれている立体物が含まれているものであってもよい。
【0047】
積層工程は、粉体を薄層に載置させる工程(粉末材料層形成工程)と、薄層上に造形液を付与する工程(造形液付与工程)と、を含む。これにより粉末材料層のうち造形液が付与された領域を形成させる。更に、積層工程は、造形液が付与された領域を有する粉体の層である薄層上に、上記と同様にして、粉体を薄層に載置(積層)させる工程(粉末材料層形成工程)と、薄層上に造形液を付与する工程(造形液付与工程)と、を含む。これにより新たに積層させた粉末材料層において造形液が付与された領域を形成させる。なお、このとき、最上部の積層した粉体の薄層において生じる造形液が付与された領域は、その下に存在する粉体の薄層における造形液が付与された領域と連続する。その結果、粉体の層の二層分の厚みを有する造形液が付与された領域が得られる。
【0048】
<加熱工程>
加熱工程は、積層工程で形成された積層物を加熱することで固化物を形成する工程であり、加熱手段により実施される。
「固化」とは、一定の形状が保たれるようになることを表す。「固化物」とは、一定の立体形状が保たれている立体物を有する構造体である。また、固化物は、立体物を構成しない粉体である余剰粉体を除去する余剰粉体除去工程を経ていないものを表す。
【0049】
加熱工程における加熱温度は、樹脂の軟化点より高いことが好ましい。これにより、上記樹脂は、造形液が付与された領域における無機粒子同士を結着させるバインダーとして機能し、固化物及び固化物に由来するグリーン体等の焼結前の造形物を形成できる。
加熱手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥機、恒温恒湿槽などが挙げられる。
【0050】
<余剰粉体除去工程>
余剰粉体除去工程は、固化物に付着している粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る工程であり、余剰粉体除去手段により実施される。
「グリーン体」とは、一定の立体形状が保たれている立体物であって、固化物を構成しない粉体である余剰粉体を除去する余剰粉体除去工程を経たものを表し、好ましくは余剰粉体が実質的に付着していない立体物を表す。
また、余剰粉体除去工程は、エアーブローにより固化物から余剰粉体を除去する工程、及び除去液に浸漬させることにより固化物から余剰粉体を除去する工程から選ばれる少なくとも1つの工程を含むことが好ましく、両方の工程を含むことがより好ましい。
【0051】
加熱工程後の固化物は、造形液が付与されていない粉体である余剰粉体に埋没した状態である。この埋没した状態から固化物を取り出すと、固化物の表面や内部には余剰粉体が付着しており、簡便にこれらを除去することは困難である。また、固化物の表面形状が複雑な場合や、固化物の内部構造が流路のようなものである場合は一層困難である。一般的なバインダージェッティング方式で造形された焼結前の造形物は強度が高くないため、送風手段によるエアーブローの圧力を高くすると、当該造形物が崩壊する恐れがある。
一方で、本発明の造形液を用いて形成された固化物は、上記樹脂により形成されるため、曲げ強度が向上し、エアーブローの圧力に耐えうる強度を有する。このとき、固化物の曲げ強度は3点曲げ応力で3MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましい。
【0052】
-除去液-
除去液は、有機溶剤を含有し、更に必要に応じてその他成分を含有する。なお、造形液に含まれる有機溶剤と除去液に含まれる有機溶剤を区別するために、造形液に含まれる有機溶剤を第一の有機溶剤と称し、除去液に含まれる有機溶剤を第二の有機溶剤と称してもよい。
【0053】
有機溶剤としては、例えば、ケトン、ハロゲン、アルコール、エステル、エーテル、炭化水素、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、ピロリドン、アミド、アミン、炭酸エステルなどが挙げられる。
【0054】
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン、ダイアセトンアルコールなどが挙げられる。
【0055】
ハロゲンとしては、例えば、メチレンクロライド、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、HCFC141-b、HCFC-225、1-ブロモプロパン、クロロホルム、オルトジクロロベンゼンなどが挙げられる。
【0056】
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ターシャリーブタノール、セカンダリーブタノール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0057】
エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸secブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸3-メトキシブチル、3-メトキシ-3メチルブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、3-エトキシプロピオン酸エチル、二塩基酸エステル(DBE)などが挙げられる。
【0058】
エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、フラン、ベンゾフラン、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0059】
炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、シクロペンタン、ヘプタン、ペンタメチルベンゼン、ペンタン、メチルシクロペンタン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ミネラルスピリット、ジメチルスルホキシド、リニアアルキルベンゼンなどが挙げられる。
【0060】
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジメトキシテトラエチレングリコールなどが挙げられる。
【0061】
グリコールエステルとしては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0062】
グリコールエーテルとしては、例えば、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルトリグリコールなどが挙げられる。
【0063】
ピロリドンとしては、例えば、2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
【0064】
アミドとしては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ホルムアミドなどが挙げられる。
【0065】
アミンとしては、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、アニリン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、ピリジン、ピリダジン、オキサゾール、チアゾール、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0066】
炭酸エステルとしては、例えば、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチルなどが挙げられる。
【0067】
除去液におけるその他の成分としては、例えば、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート剤、防錆剤などが挙げられる。
【0068】
<乾燥工程>
乾燥工程は、グリーン体を乾燥させてグリーン体中に残存する除去液等の液体成分を除去する工程であり、乾燥手段により実施される。
乾燥工程は、グリーン体中に含まれる除去液等の液体成分のみならず、有機物を除去してもよい。
乾燥手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の乾燥機、恒温恒湿槽などが挙げられる。
【0069】
<脱脂工程>
脱脂工程は、グリーン体を加熱することで樹脂が除去された脱脂体を形成する工程であり、脱脂手段により実施される。
「脱脂体」とは、グリーン体から上記樹脂等の有機成分を脱脂することにより得られる立体物である。
脱脂工程は、脱脂手段を用い、上記樹脂等の有機成分の熱分解温度以上であって且つ金属粒子を構成する材料(金属)の融点又は固相線温度(例えば、AlSi10Mgの粒子を用いる場合であれば約570℃)より低い温度でグリーン体を一定時間(例えば、1~10時間)加熱することで有機成分を分解して除去する。
脱脂手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の焼結炉、電気炉などが挙げられる。
【0070】
<焼結工程>
焼結工程は、脱脂工程で形成された脱脂体を加熱することで焼結体を形成する工程であり、焼結手段により実施される。
「焼結体」とは、無機粒子としての金属粒子を構成する金属材料が一体化して形成される立体物であって、脱脂体を焼結することにより形成されるものである。
焼結工程は、焼結手段を用い、無機粒子としての金属粒子を構成する金属材料の固相線温度(例えば、AlSi10Mgの粒子を用いる場合であれば約570℃)以上であって且つ液相線温度(例えば、AlSi10Mgの粒子を用いる場合であれば約600℃)以下の温度で脱脂体を一定時間(例えば、1~10時間)加熱することで金属粒子を構成する金属材料を一体化させる。
焼結手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の焼結炉などが挙げられる、なお、焼結手段は上記の脱脂手段と同一の手段であってもよい。また、脱脂工程と焼結工程は、連続して実行されてもよい。
【0071】
<後処理工程>
造形物の製造方法は、焼結体に対して後処理を行う後処理工程を含むことが好ましい。後処理工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面保護処理工程及び塗装工程などが挙げられる。
【0072】
表面保護処理工程は、固化物形成工程において形成した固化物が積層した立体造形物(グリーン体)に保護層を形成する工程である。この表面保護処理工程を行うことにより、固化物を例えばそのまま使用等することができる耐久性等を固化物の表面に与えることができる。保護層の具体例としては、耐水性層、耐候性層、耐光性層、断熱性層、光沢層などが挙げられる。
表面保護処理手段としては、公知の表面保護処理装置、例えば、スプレー装置、コーティング装置などが挙げられる。
【0073】
塗装工程は、固化物形成工程において形成した固化物が積層した立体造形物(グリーン体)に塗装を行う工程である。塗装工程を行うことにより、グリーン体を所望の色に着色させることができる。
塗装手段としては、公知の塗装装置、例えば、スプレー、ローラ、刷毛等による塗装装置などが挙げられる。
【0074】
<造形の流れ>
ここで、本発明の造形物の製造方法における造形の流れについて
図1A~
図1Eを参照して説明する。
図1A~
図1Eは、造形物の製造装置の動作の一例を示す概略図である。
【0075】
造形物の製造装置は、供給槽21と造形槽22と余剰粉体受け槽29とを有し、供給槽21と造形槽22は、それぞれ上下に移動可能な供給ステージ23、造形ステージ24を有する。造形槽22に設けられた造形ステージ24上に立体造形用の粉体20を載置し、粉体20からなる粉体層31を形成する。
【0076】
まず、造形槽22の造形ステージ24上に、1層目の造形液被付与層30が形成されている状態から説明する。1層目の造形液被付与層30上に次の無機粒子を含む粉体の層を形成するときには、
図1Aに示すように、供給槽21の供給ステージ23を上昇させ、造形槽22の造形ステージ24を下降させる。このとき、造形槽22における粉体の層の上面と平坦化ローラ12の下部(下方接線部)との間隔(積層ピッチ)がΔt1となるように造形ステージ24の下降距離を設定する。間隔Δt1は、特に制限されるものではないが、数十μm~100μm程度であることが好ましい。
【0077】
平坦化ローラ12は供給槽21及び造形槽22の上端面に対してギャップが生じるように配置している。したがって、造形槽22に無機粒子を含む粉体20を移送供給して平坦化するとき、無機粒子を含む粉体の層の上面は供給槽21及び造形槽22の上端面よりも高い位置になる。これにより、平坦化ローラ12が供給槽21及び造形槽22の上端面に接触することを確実に防止できて、平坦化ローラ12の損傷が低減する。平坦化ローラ12の表面が損傷すると、造形槽22に供給した粉体の層31(
図1D参照)の表面にスジが発生して平坦性が低下しやすくなる。平坦化ローラ12には、平坦化ローラ12の周面に接触して、平坦化ローラ12に付着した粉体20を除去するための粉体除去部材である粉体除去板13が配置されている。
【0078】
次いで、
図1Bに示すように、供給槽21の上端面よりも高い位置に配置した無機粒子を含む粉体20を、平坦化ローラ12を矢印方向に回転しながら造形槽22側に移動することで、金属粒子を含む粉体20を造形槽22へと移送供給する(粉体供給)。更に、
図1Cに示すように、平坦化ローラ12を造形槽22の造形ステージ24のステージ面と平行に移動させ、造形ステージ24の造形槽22上で所定の厚さΔt1になる粉体の層31を形成する(平坦化)。このとき、粉体の層31の形成に使用されなかった余剰の無機粒子を含む粉体20は余剰粉体受け槽29に落下する。粉体の層31を形成後、平坦化ローラ12は、
図1Dに示すように、供給槽21側に移動されて初期位置(原点位置)に戻される(復帰される)。
【0079】
ここで、平坦化ローラ12は、造形槽22及び供給槽21の上端面との距離を一定に保って移動できるようになっている。一定に保って移動できることで、平坦化ローラ12で粉体20を造形槽22の上へと搬送させつつ、造形槽22上又は既に形成された造形液被付与層30の上に均一厚さh(積層ピッチΔt1に相当)の粉体の層31を形成できる。なお、以下、粉体の層31の厚みhと積層ピッチΔt1とを区別せずに説明することがあるが、特に断りのない限り、同じ厚みであり、同じ意味である。また、粉体の層31の厚みhを実際に測定して求めてもよく、この場合、複数箇所の平均値とすることが好ましい。
【0080】
その後、
図1Eに示すように、液体吐出ユニットのヘッド52から造形液の液滴10を吐出して、次の粉体の層31に所望の形状の造形液被付与層30を積層形成する。次いで、上述した粉体層形成工程及び造形液付与工程を繰り返して新たな造形液被付与層30を形成して積層する。このとき、新たな造形液被付与層30とその下層の造形液被付与層30は一体化する。以後、更に粉体層形成工程及び造形液付与工程を繰り返し行い、積層物を完成させる。
【実施例0081】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、基材の体積平均粒径、及び無機酸化物の体積平均粒径は、下記のようにして測定した。
【0082】
<基材の体積平均粒径>
基材の体積平均粒径は、粒子径分布測定装置(マイクロトラックMT3000II、マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定した。
【0083】
<無機酸化物の体積平均粒径>
無機酸化物の体積平均粒径は、ナノ粒子径測定装置(NANOTRAC FLEX、マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定した。
【0084】
(実施例1)
<立体造形用粉末材料の作製>
市販のブレンダー(コールマンジャパン株式会社製、Oster Core 16速ブレンダー)を用いて、表1に示すように、基材としてAlSi10Mg(東洋アルミニウム株式会社製、Si10Mg30BB、体積平均粒径33μm)100質量部に対し、無機酸化物としてSiO2(日本アエロジル株式会社製、H-2000、体積平均粒径12nm、ヘキサメチルジシラザンで表面処理)を0.025質量部添加し混合した。その後、SiO2が付与された基材を、振動篩(ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製、AS200)を用いて篩掛けを実施した。以上により、立体造形用粉末材料1を得た。
得られた立体造形用粉末材料1について、粒径測定装置(マイクロトラックベル株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて、体積平均粒径を測定したところ、34μmであった。
次に、得られた立体造形用粉末材料1について、以下のようにして、「ゆるみかさ密度」及び「熱安定性」を評価した。結果を表2に示した。
【0085】
<ゆるみかさ密度>
市販のパウダテスタ(ホソカワミクロン株式会社製、PT-S)を用いて、立体造形用粉末材料1のゆるみかさ密度を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表2に示した。
[評価基準]
〇:ゆるみかさ密度が55%以上
△:ゆるみかさ密度が50%以上55%未満
×:ゆるみかさ密度が50%未満
【0086】
<熱安定性>
市販の恒温乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DKN402)を用いて、立体造形用粉末材料1に140℃の熱処理を4時間行った。熱処理の前後での立体造形用粉末材料1のゆるみかさ密度を上記の方法で測定し、以下の評価基準に基づいて熱安定性を評価した。
[評価基準]
〇:熱処理の前後で立体造形用粉末材料のゆるみかさ密度の変動値が1%未満
△:熱処理の前後で立体造形用粉末材料のゆるみかさ密度の変動値が1%以上3%未満
×:熱処理の前後で立体造形用粉末材料のゆるみかさ密度の変動値が3%以上
【0087】
<立体造形物及び焼結体の作製>
ジメチルスルホキシド97質量部、及びアクリル樹脂(共栄社化学株式会社製、商品名:KC1700P)3質量部を、ホモミキサーを用いて10分間分散し、造形液を調製した。
得られた造形液と立体造形用粉末材料1を用い、サイズ(長さ70mm×巾12mm)の形状印刷パターンにより、立体造形物1を以下のようにして製造した。
(1)まず、
図1Aに示したような立体造形物の製造装置を用いて、供給槽から造形槽に立体造形用粉末材料1を移送させ、支持体上に平均厚みが100μmの立体造形用粉末材料1による薄層を形成した。
(2)次に、形成した立体造形用粉末材料1による薄層の表面に、前記造形液を、公知のインクジェット吐出ヘッドのノズルから付与(吐出)し、粉末材料層を硬化させた。
(3)次に、前記(1)及び前記(2)の操作を所定の3mmの総平均厚みになるまで繰返し、硬化した立体造形用粉末材料1による薄層を順次積層していき、乾燥機を用いて、50℃で4時間、次いで100℃にて10時間維持し、乾燥工程を行い、立体造形物1を得た。
乾燥後の立体造形物1に対し、エアーブローにより余分な立体造形用粉末材料1を除去した。
【0088】
<立体造形物(焼結前)の形状の精度>
次に、立体造形物1(焼結前)の寸法をノギスで測定し、その形状の精度を以下の評価基準にて評価した。結果を表2に示した。
[評価基準]
〇:立体造形物の上面と底面の平行ずれが1mm未満
×:立体造形物の上面と底面の平行ずれが1mm以上
【0089】
<立体造形物(焼結前)の密度>
次に、立体造形物1(焼結前)に防水処理を施した後、アルキメデス法により密度を測定し、以下の評価基準にて評価した。結果を表2に示した。
[評価基準]
〇:密度が55%以上
△:密度が50%以上55%未満
×:密度が50%未満
【0090】
(4)上記(3)で得られた立体造形物1について、乾燥機を用いて、窒素雰囲気下、450℃まで2時間をかけて昇温し、次いで450℃に2時間維持して脱脂工程を行い、更に焼結炉内で真空条件、600℃で焼結処理を行った。その結果、表面が美麗な焼結体1が得られた。得られた焼結体1は完全に一体化されたアルミニウム構造物(金属塊)であり、硬質の床(コンクリート)に叩きつけても全く破損等が生じなかった。
【0091】
<焼結体の密度>
得られた焼結体1を真空下で油含浸処理を施した後、アルキメデス法により密度を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表2に示した。
[評価基準]
〇:密度が95%以上
△:密度が90%以上95%未満
×:密度が90%未満
【0092】
(実施例2)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を28μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料2、立体造形物2、及び焼結体2を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0093】
(実施例3)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料3、立体造形物3、及び焼結体3を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0094】
(実施例4)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料4、立体造形物4、及び焼結体4を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0095】
(実施例5)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料5、立体造形物5、及び焼結体5を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0096】
(実施例6)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料6、立体造形物6、及び焼結体6を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0097】
(実施例7)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料7、立体造形物7、及び焼結体7を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0098】
(実施例8)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料8、立体造形物8、及び焼結体8を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0099】
(実施例9)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.004質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料9、立体造形物9、及び焼結体9を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0100】
(実施例10)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1.1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料10、立体造形物10、及び焼結体10を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0101】
(実施例11)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2をTiO2(日本アエロジル株式会社製、NKT90、体積平均粒径14nm、アルキルシランで表面処理)に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料11、立体造形物11、及び焼結体11を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0102】
(実施例12)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2をAl2O3(日本アエロジル株式会社製、VP Alu C RK、体積平均粒径13nm、アルキルシランで表面処理)に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料12、立体造形物12、及び焼結体12を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0103】
(実施例13)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の表面処理剤をポリジメチルシロキサンに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料13、立体造形物13、及び焼結体13を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0104】
(実施例14)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の表面処理剤をジメチルジクロロシランに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料14、立体造形物14、及び焼結体14を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0105】
(実施例15)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の表面処理剤をアミノシランとヘキサメチルジシラザンの混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料15、立体造形物15、及び焼結体15を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0106】
(実施例16)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の表面処理剤をアミノシランとポリジメチルシロキサンの混合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料16、立体造形物16、及び焼結体16を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0107】
(実施例17)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の表面処理剤をアルキルシランに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料17、立体造形物17、及び焼結体17を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0108】
(実施例18)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料18、立体造形物18、及び焼結体18を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0109】
(実施例19)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料19、立体造形物19、及び焼結体19を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0110】
(実施例20)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料20、立体造形物20、及び焼結体20を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0111】
(実施例21)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料21、立体造形物21、及び焼結体21を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0112】
(実施例22)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料22、立体造形物22、及び焼結体22を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0113】
(実施例23)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料23、立体造形物23、及び焼結体23を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0114】
(実施例24)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料24、立体造形物24、及び焼結体24を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0115】
(実施例25)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料25、立体造形物25、及び焼結体25を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0116】
(実施例26)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料26、立体造形物26、及び焼結体26を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0117】
(実施例27)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料27、立体造形物27、及び焼結体27を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0118】
(実施例28)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料28、立体造形物28、及び焼結体28を製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0119】
(実施例29)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料29、立体造形物29、及び焼結体29を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0120】
(実施例30)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料30、立体造形物30、及び焼結体30を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0121】
(実施例31)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料31、立体造形物31、及び焼結体31を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0122】
(実施例32)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料32、立体造形物32、及び焼結体32を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0123】
(実施例33)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を25μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料33、立体造形物33、及び焼結体33を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0124】
(実施例34)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料34、立体造形物34、及び焼結体34を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0125】
(実施例35)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を7nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料35、立体造形物35、及び焼結体35を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0126】
(実施例36)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を0.005質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料36、立体造形物36、及び焼結体36を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0127】
(実施例37)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を70μmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の体積平均粒径を120nmに変更し、無機酸化物としてのSiO2の付与量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料37、立体造形物37、及び焼結体37を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0128】
(実施例38)
実施例1において、基材をαアルミナ(住友化学株式会社製、A-21、体積平均粒径50μm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料38、立体造形物38、及び焼結体38を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0129】
(比較例1)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を20μmに変更した以外は、実施例1と同様にして立体造形用粉末材料39、立体造形物39、及び焼結体39を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0130】
(比較例2)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を80μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料40、立体造形物40、及び焼結体40を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0131】
(比較例3)
実施例1において、基材としてのAlSi10Mgの体積平均粒径を130nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料41、立体造形物41、及び焼結体41を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0132】
(比較例4)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2の付与を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料42、立体造形物42、及び焼結体42を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0133】
(比較例5)
実施例1において、無機酸化物としてのSiO2をアクリル樹脂(日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、FS-102、体積平均粒径:80nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、立体造形用粉末材料43、立体造形物43、及び焼結体43を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。
【0134】
【0135】
【0136】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 無機材料を含み体積平均粒径が25μm以上70μm以下である基材に対し、体積平均粒径が120nm以下である無機酸化物が付着してなることを特徴とする立体造形用粉末材料である。
<2> 前記無機酸化物の体積平均粒径が7nm以上120nm以下である、前記<1>に記載の立体造形用粉末材料である。
<3> 前記無機酸化物が前記基材に対して0.005質量%以上1質量%以下の割合で付着している、前記<1>から<2>のいずれかに記載の立体造形用粉末材料である。
<4> 前記無機酸化物がSiO2を含む、前記<1>から<3>のいずれかに記載の立体造形用粉末材料である。
<5> 前記無機酸化物が、ジメチルジクロロシラン(DDS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ポリジメチルシロキサン、及びアミノシランの少なくともいずれかを含む処理剤によって表面処理されている、前記<1>から<4>のいずれかに記載の立体造形用粉末材料である。
<6> 前記無機材料が金属及びセラミックスの少なくともいずれかである、前記<1>から<5>のいずれかに記載の立体造形用粉末材料である。
<7> 前記金属が、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、銅、及びこれらの合金の少なくとも1種を含有する、前記<6>に記載の立体造形用粉末材料である。
<8> 前記金属が樹脂により表面が被覆されていない、前記<6>から<7>のいずれかに記載の立体造形用粉末材料である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の立体造形用粉末材料と、樹脂及び有機溶剤を含有する造形液とを有することを特徴とする立体造形用キットである。
<10> 前記造形液の25℃での粘度が5mPa・s以上50mPa・s以下である、前記<9>に記載の立体造形用キットである。
<11> 無機材料を含み体積平均粒径が25μm以上70μm以下である基材に対し、体積平均粒径が120nm以下である無機酸化物が付着してなる立体造形用粉末材料を用いて粉末材料層を形成する粉末材料層形成工程と、
前記粉末材料層に対して造形液を付与する造形液付与工程と、
前記粉末材料層形成工程及び前記造形液付与工程を順次繰り返すことで積層物を形成する積層工程と、
を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<12> 前記造形液付与工程が、前記粉末材料層に対して前記造形液をインクジェット方式で吐出する、前記<11>に記載の立体造形物の製造方法である。
<13> 前記積層物を加熱することで固化物を形成する加熱工程と、
前記固化物に付着している余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程と、
を更に含む、前記<11>から<12>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<14> 前記グリーン体を加熱することで樹脂が除去された脱脂体を形成する脱脂工程と、
前記脱脂体を加熱することで焼結体を形成する焼結工程と、
を更に含む、前記<13>に記載の立体造形物の製造方法である。
【0137】
前記<1>から<8>のいずれかに記載の立体造形用粉末材料、前記<9>から<10>のいずれかに記載の立体造形用キット、及び前記<11>から<14>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
無機酸化物の基材に対する付与量は0.005質量%以上1質量%以下が好ましく、0.025質量%以上0.1質量以下がより好ましい。無機酸化物の付与量が0.005質量%未満であると、スペーサー効果が十分に発揮できず流動性が悪化する。それに伴い、造形品質が大幅に悪化することがある。無機酸化物の付与量が1質量%を超えると、基材の表面上に無機酸化物を均一に添加ができなくなるおそれがある。