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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122767
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】温度測定装置及び温度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/125 20210101AFI20230829BHJP
【FI】
G01K11/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026457
(22)【出願日】2022-02-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「大気圧プラズマジェットによる超高精度熱処理技術プラットフォームの構築」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】東 清一郎
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056VF15
2F056VF16
2F056VF17
2F056VF20
(57)【要約】
【課題】被測定試料の温度を高速で測定することができる温度測定装置及び温度測定方法を提供する。
【解決手段】温度測定装置1は、可干渉性を有するコリメート光である測定用レーザ光Lmを発生する光源11と、被測定試料31に照射された測定用レーザ光Lmの反射光を検出するハイスピードカメラ16と、ハイスピードカメラ16で検出された反射光の強度に基づいて、反射率変動波形の振動回数及び周期変動を反射率情報として取得する制御ユニット20と、異なる条件で予め取得された反射率情報及び被測定試料31の温度を含む複数の温度情報を記憶するデータベース50と、を備える。また、制御ユニット20は、データベース50に記憶された温度情報から、反射光の強度に基づいて取得された反射率情報に近似する反射率情報を含む温度情報を選択し、選択された温度情報に含まれる被測定試料31の温度を、被測定試料31の測定温度として算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可干渉性を有するコリメート光である測定用連続光を発生する光源と、
被測定試料に照射された前記測定用連続光の反射光を検出する検出装置と、
前記検出装置で検出された前記反射光の強度に基づいて、反射率変動波形の振動回数及び周期変動を反射率情報として取得する制御部と、
異なる条件で予め取得された前記反射率情報及び前記被測定試料の温度を含む複数の温度情報を記憶するデータベースと、を備え、
前記制御部は、前記データベースに記憶された前記温度情報から、前記反射光の強度に基づいて取得された前記反射率情報に近似する前記反射率情報を含む前記温度情報を選択し、選択された前記温度情報に含まれる前記被測定試料の温度を、前記被測定試料の測定温度として算出する、
ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
前記データベースに記憶される前記温度情報は、
3次元熱伝導シミュレーションの演算結果から取得される、
ことを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記データベースに記憶される前記温度情報は、
前記3次元熱伝導シミュレーションの演算結果である前記被測定試料の内部の温度分布を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記反射率情報は、
前記検出装置である撮像装置によって撮影された、反射率変動によって生じる干渉縞の画像の第1の方向で取得される第1の反射率情報と、前記第1の方向と直交する第2の方向で取得される第2の反射率情報とを含む、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記検出装置で検出された前記反射光の強度に基づいて取得された前記周期変動と、前記データベースに記憶されている前記温度情報に含まれる前記周期変動とに基づいて、各周期の差の二乗和が最小となる温度情報を、近似する前記反射率情報を含む温度情報として選択する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の温度測定装置。
【請求項6】
可干渉性を有するコリメート光である測定用連続光を発生する光源と、
被測定試料に照射された前記測定用連続光の反射光を検出する検出装置と、
前記検出装置で検出された前記反射光の強度に基づいて、反射率変動波形の振動回数及び周期変動を反射率情報として取得する制御部と、
異なる条件で予め取得された前記反射率情報及び前記被測定試料の温度を含む複数の温度情報を教師データとして、前記反射率情報から、前記被測定試料の温度を推定するように、機械学習により生成された推定モデルを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、
取得した前記反射率情報を前記推定モデルに入力し、前記推定モデルの出力結果に基づいて、前記被測定試料の温度を推定する、
ことを特徴とする温度測定装置。
【請求項7】
被測定試料に可干渉性を有するコリメート光である測定用連続光を照射し、
前記測定用連続光の反射光を検出し、
検出された前記反射光の強度に基づいて、反射率変動波形の振動回数及び周期変動を反射率情報として取得し、
異なる条件で予め取得され、データベースに記憶された前記反射率情報及び前記被測定試料の温度を含む複数の温度情報から、前記反射光の強度に基づいて取得された前記反射率情報に近似する前記反射率情報を含む前記温度情報を選択し、
選択された前記温度情報に含まれる前記被測定試料の温度を、前記被測定試料の測定温度として算出する、
ことを特徴とする温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置及び温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光等の可干渉光を被測定試料に照射して、被測定試料からの反射光を用いて被測定試料の温度を測定する温度測定装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-145811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、立ち上がりからの時間によって波長が異なるパルス状のレーザ光を測定対象に照射して、波長による干渉光の強度の差の情報と、干渉光の強度が増加しているか減少しているかの情報とに基づいて、測定対象の温度が上昇中であるか下降中であるかを判断することとしている。また、干渉光の強度変化の波の数によって温度を算出することとしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、パルス状のレーザ光によって波長が異なるレーザ光を発生させるため、レーザ発振器の電源制御、波長の変化を考慮した干渉光の強度の検出タイミングの制御等、複雑な制御が必要となり、高速に測定対象の温度を測定することは難しい。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、被測定試料の温度を高速で測定することができる温度測定装置及び温度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係る温度測定装置は、
可干渉性を有するコリメート光である測定用連続光を発生する光源と、
被測定試料に照射された前記測定用連続光の反射光を検出する検出装置と、
前記検出装置で検出された前記反射光の強度に基づいて、反射率変動波形の振動回数及び周期変動を反射率情報として取得する制御部と、
異なる条件で予め取得された前記反射率情報及び前記被測定試料の温度を含む複数の温度情報を記憶するデータベースと、を備え、
前記制御部は、前記データベースに記憶された前記温度情報から、前記反射光の強度に基づいて取得された前記反射率情報に近似する前記反射率情報を含む前記温度情報を選択し、選択された前記温度情報に含まれる前記被測定試料の温度を、前記被測定試料の測定温度として算出する。
【0008】
また、前記データベースに記憶される前記温度情報は、
3次元熱伝導シミュレーションの演算結果から取得される、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記データベースに記憶される前記温度情報は、
前記3次元熱伝導シミュレーションの演算結果である前記被測定試料の内部の温度分布を含む、
こととしてもよい。
【0010】
また、前記反射率情報は、
前記検出装置である撮像装置によって撮影された、反射率変動によって生じる干渉縞の画像の第1の方向で取得される第1の反射率情報と、前記第1の方向と直交する第2の方向で取得される第2の反射率情報とを含む、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記制御部は、
前記検出装置で検出された前記反射光の強度に基づいて取得された前記周期変動と、前記データベースに記憶されている前記温度情報に含まれる前記周期変動とに基づいて、各周期の差の二乗和が最小となる温度情報を、近似する前記反射率情報を含む温度情報として選択する、
こととしてもよい。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係る温度測定装置は、
可干渉性を有するコリメート光である測定用連続光を発生する光源と、
被測定試料に照射された前記測定用連続光の反射光を検出する検出装置と、
前記検出装置で検出された前記反射光の強度に基づいて、反射率変動波形の振動回数及び周期変動を反射率情報として取得する制御部と、
異なる条件で予め取得された前記反射率情報及び前記被測定試料の温度を含む複数の温度情報を教師データとして、前記反射率情報から、前記被測定試料の温度を推定するように、機械学習により生成された推定モデルを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、
取得した前記反射率情報を前記推定モデルに入力し、前記推定モデルの出力結果に基づいて、前記被測定試料の温度を推定する。
【0013】
また、本発明の第3の観点に係る温度測定方法では、
被測定試料に可干渉性を有するコリメート光である測定用連続光を照射し、
前記測定用連続光の反射光を検出し、
検出された前記反射光の強度に基づいて、反射率変動波形の振動回数及び周期変動を反射率情報として取得し、
異なる条件で予め取得され、データベースに記憶された前記反射率情報及び前記被測定試料の温度を含む複数の温度情報から、前記反射光の強度に基づいて取得された前記反射率情報に近似する前記反射率情報を含む前記温度情報を選択し、
選択された前記温度情報に含まれる前記被測定試料の温度を、前記被測定試料の測定温度として算出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の温度測定装置及び温度測定方法によれば、被測定試料の温度変化によって生じる反射率変動における振動回数及び周期変動からなる反射率情報と、予め取得された反射率情報及び被測定試料の温度を含む温度情報に係るデータベース又は推定モデルとに基づいて被測定試料の温度を測定するので、簡素な構成で高速に温度を測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係る温度測定装置の概略構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る制御ユニットの機能ブロック図である。
図3】実施の形態1に係る温度測定の流れを示すフローチャートである。
図4】被測定試料内での測定用レーザ光の光路を示す概念図である。
図5】被測定試料の温度変化による反射率変動波形の例を示すグラフである。
図6】実施の形態1に係る温度情報の例を示す図である。
図7】実施の形態2に係る温度測定の流れを示すフローチャートである。
図8】3次元熱伝導シミュレーションの演算結果の例を示す図である。
図9】3次元熱伝導シミュレーションの演算結果から作成された干渉縞の例を示す図である。
図10】撮影された干渉縞画像の例を示す図である。
図11】(A)は図10の干渉縞画像を合成した図であり、(B)は(A)の図を画像処理した図である。
図12】実施の形態3に係る制御ユニットの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る温度測定装置1について説明する。本実施の形態では、被測定試料であるSiC(炭化ケイ素)ウエハに大気圧プラズマ装置で熱処理を行う際のSiCウエハの温度を測定する場合を例として説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係る温度測定装置1は、光源11、ビームスプリッタ14、バンドパスフィルタ15、ハイスピードカメラ16、制御ユニット20、データベース50を備える。また、光源11は、レーザ発振器11a、反射鏡11b、ビームエキスパンダ11cを備える。また、被測定試料31であるSiCウエハは、互いに平行な表面と裏面とを有する平板状の試料であり、大気圧熱プラズマジェット(TPJ:Thermal Plasma Jet)のプラズマサイズをミリメートル以下に高密度化したマイクロプラズマジェット(μ-TPJ)で、表面を加熱される。被測定試料31及び温度測定装置1は、μ-TPJを発生するプラズマ装置41との距離を一定に保ちつつ平行移動する。そして、温度測定装置1は、被測定試料31の裏面側で検出されるレーザ光の反射率の変化に基づいて被測定試料31の温度を測定する。
【0018】
光源11は、測定に用いる可干渉性を有するコリメート光である測定用連続光を発生する光学系の装置である。本実施の形態に係る光源11は、測定用連続光(以下、測定用レーザ光Lmという。)を発生するレーザ発振器11aを備える。測定用レーザ光Lmは、特に限定されないが、被測定試料31を透過可能な波長を有するものを選択する。例えば、無アルカリガラス、石英ガラス、炭化ケイ素、窒化ガリウム等を被測定試料31として用いる場合、可視光レーザを測定用レーザ光Lmとして用いることができる。本実施の形態に係る測定用レーザ光Lmは、ヘリウムネオン(He-Ne)レーザである。
【0019】
反射鏡11bは、レーザ発振器11aとビームエキスパンダ11cとの間の光路に配置され、レーザ発振器11aから発せられた測定用レーザ光Lmをビームエキスパンダ11cへ入射させる。
【0020】
ビームエキスパンダ11cは、レーザ発振器11aから発せられた測定用レーザ光Lmを入射し、温度の測定範囲に拡大させ、拡大されたコリメート光である測定用レーザ光Lmを出射する。測定範囲は、被測定試料31の温度変化に基づく反射率変動によって生じる干渉縞の測定領域である。ビームエキスパンダ11cで拡大される測定用レーザ光Lmの拡大率は特に限定されず、光源11で発生される測定用レーザ光Lmのパワーに基づいて、拡大時のパワーが小さくなり過ぎない範囲で設定すればよい。また、測定領域を熱入力範囲より広い範囲とすることにより、干渉縞の観察が容易となる。本実施の形態に係るビームエキスパンダ11cは、0.6mm径で入射された測定用レーザ光Lmを1.0mm径に拡大する。
【0021】
ビームスプリッタ14は、ビームエキスパンダ11cで拡大された測定用レーザ光Lmを反射して、被測定試料31の測定箇所に対して垂直に照射する。また、ビームスプリッタ14は、被測定試料31で反射された測定用レーザ光Lmを透過して、ハイスピードカメラ16へ入射させる。ビームエキスパンダ11cとハイスピードカメラ16のビームスプリッタ14に対する位置関係、すなわち、いずれを反射側に配置し、透過側に配置するかについては、特に限定されない。
【0022】
バンドパスフィルタ15は、被測定試料31とハイスピードカメラ16との間の光路に配置され、測定用レーザ光Lm以外の光である迷光を排除する。バンドパスフィルタ15を透過させることで、より鮮明に、被測定試料31での反射光の画像を得ることができる。
【0023】
本実施の形態に係るバンドパスフィルタ15は、図1に示すように、被測定試料31とビームスプリッタ14との間に配置されるが、これに限られない。例えば、反射光のロスを少なくするため、バンドパスフィルタ15を、ビームスプリッタ14とハイスピードカメラ16との間に配置することとしてもよい。
【0024】
ハイスピードカメラ16は、測定用レーザ光Lmの反射光を検出する検出装置であり、受光素子を有するカメラ本体16aと、対物レンズ16bとを備える撮像装置である。ハイスピードカメラ16は、測定用レーザ光Lmの波長に対して感度のあるものを使用し、被測定試料31からの反射光を対物レンズ16bで拡大して、カメラ本体16aで撮影する。また、ハイスピードカメラ16のフレームレートは、観察する被測定試料31の温度分布の時間変化に対して適当な時間分解能となるように設定され、例えば、3000fpsから10000fpsに設定される。
【0025】
制御ユニット20は、例えばコンピュータ装置であり、図2の機能ブロック図に示すように、制御部21、記憶部22、表示部23、入力部24を備える。
【0026】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、水晶発振器等から構成されており、温度測定装置1の動作を制御するとともに、ハイスピードカメラ16で撮影された干渉縞の画像に基づいて、被測定試料31の温度を算出する。
【0027】
制御部21は、制御部21のROM、記憶部22等に記憶されている各種動作プログラム及びデータをRAMに読み込んでCPUを動作させることにより、図2に示される制御部21の各機能を実現させる。これにより、制御部21は、光源制御部211、画像処理部212、演算部213として動作する。
【0028】
光源制御部211は、光源11を制御して、測定用レーザ光Lmを発生、停止させる。本実施の形態に係る測定用レーザ光Lmは連続光であるので、パルス状のレーザ光を発生させるための電源制御等の複雑な制御は不要である。
【0029】
画像処理部212は、ハイスピードカメラ16で撮影された画像データから反射率情報を取得する。反射率情報は、被測定試料31の温度を算出するための情報であり、本実施の形態に係る反射率情報は、レーザ光の反射率変動波形における振動回数及び周期変動を含む。
【0030】
演算部213は、画像処理部212で取得された反射率情報と、データベース50に予め記憶された反射率情報を含む温度情報とに基づいて、被測定試料31の温度を算出する。
【0031】
記憶部22は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、ハイスピードカメラ16で撮影された画像、被測定試料31の屈折率の温度依存性を表す熱光学係数等のデータ、温度情報から被測定試料31の温度を算出する演算アルゴリズム等を記憶する。
【0032】
表示部23は、コンピュータ装置である制御ユニット20に備えられた表示用デバイスであり、例えば液晶パネルである。表示部23は、ハイスピードカメラ16で撮影された反射率変動による干渉縞の画像、演算部213で算出された被測定試料31の温度等を表示する。
【0033】
入力部24は、温度測定装置1における測定の開始、終了指示、各種評価条件の変更等を入力するための入力デバイスである。入力部24は、制御ユニット20に備えられたキーボード、タッチパネル、マウス等である。
【0034】
データベース50は、制御ユニット20と接続されたハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。データベース50は、予め取得された種々の条件に係る温度情報、すなわち種々の条件で被測定試料31を加熱した場合の温度に関する情報を記憶する。温度情報の内容、取得方法等の詳細については後述する。
【0035】
続いて、上記の温度測定装置1を用いた温度測定方法について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。本実施の形態では、被測定試料31の熱処理のため、被測定試料31の表面に、プラズマ装置41で発生されるマイクロプラズマジェット(μ-TPJ)で熱入力を行う。そして、温度測定装置1は、被測定試料31の裏面に測定用レーザ光Lmを照射して、被測定試料31の温度、特に熱処理による最高到達温度を測定する。
【0036】
本実施の形態では、熱入力としてμ-TPJを用いることとしたがこれに限られず、パルスレーザ、フラッシュランプなどのパルス光、CW(Continuous Wave)レーザ、試料表面に設置した発熱体によるジュール加熱等を用いてもよい。
【0037】
まず、データベース作成工程として、コンピュータを用いた熱伝導シミュレーションを行い、試料への熱入力、被測定試料31の熱物性値(密度、比熱、熱伝導率)等種々の条件に係る温度分布を算出する(ステップS11)。尚、データベース作成工程に係る熱伝導シミュレーション等の処理は、温度測定装置1の制御ユニット20で行うこととしてもよいし、他のコンピュータ装置を用いて行うこととしてもよい。本実施の形態では、外部のコンピュータ装置を用いてデータベース作成を行うこととしている。
【0038】
ここで、測定用レーザ光Lmの反射光の反射率について説明する。測定用レーザ光Lmは、被測定試料31の裏面で反射するとともに、被測定試料31の内部へ透過する。被測定試料31の内部へと透過した測定用レーザ光Lmの一部は、被測定試料31の表面で反射し、さらに被測定試料31の裏面で反射する。
【0039】
被測定試料31の屈折率は温度依存性を有するので、被測定試料31各部の温度によって、多重反射した測定用レーザ光Lmの干渉状態が異なり、反射光の強度が変化する。より詳細には、図4の概念図に示すように、測定用レーザ光Lmは、被測定試料31内の表面と裏面とで多重反射し、反射光が互いに干渉する。したがって、被測定試料31の裏面側へ反射される測定用レーザ光Lmの反射率Rは、多重反射する測定用レーザ光Lmの位相の重ね合わせによって決まる。したがって、反射率Rは、被測定試料31の屈折率、厚さ、光の波長に基づいて決まり、温度勾配のない一様な温度分布の場合、反射率Rは平面方向に同一で縞は生じない。被測定試料31に温度分布がある場合、反射率Rの分布により干渉縞が観察される。すなわち、測定によって得られた反射率の変化は温度変化を表し、干渉縞の画像は温度分布の等高線を表す画像と考えることができる。
【0040】
干渉縞として現れる反射率変動の波形の山谷(極大値、極小値)に対応する被測定試料31の温度は、予め、被測定試料31の物性及び移動速度、μ-TPJで入力される熱量、測定用レーザ光Lmの波長等の条件に基づく熱伝導シミュレーションによって得ることができる。本実施の形態では、これらの条件を変化させてコンピュータによる3次元熱伝導シミュレーションを行い、各条件での測定箇所の温度の時間変化を得る。そして、得られた温度変化のデータから反射率変動を算出し、反射率変動波形における振動回数及び周期変動(反射率情報)を取得する。周期変動に係る周期は特に限定されず、連続する極大値間の時間間隔、連続する極小値間の時間間隔、変曲点の時間間隔等を用いることができる。本実施の形態では、連続する極大値と極小値との間の時間間隔を周期として用いる。
【0041】
図5は測定箇所における反射率変動の例である。図5に示すように、温度上昇中における反射率変動の周期は、測定開始時の周期P1から周期P2にかけて小さくなり、周期P2から最高到達温度を示す周期P3にかけて大きくなる。このように、反射率変動における振動回数及び周期変動によって、温度が上昇しているか下降しているかという温度変化の状態、温度変化の度合い等を把握することができるので、被測定試料31の最高到達温度を測定することができる。
【0042】
図6に示すように、本実施の形態では、3次元熱伝導シミュレーションの演算結果から得られる被測定試料31の温度と反射率との関係に基づいて、被測定試料31の測定面に係る反射率変動波形の振動回数、周期変動及び最高到達温度を含む一群のデータセットを温度情報としてデータベース50に記憶させる(ステップS12)。また、反射率情報に係る振動回数及び周期変動は、少なくとも温度上昇時のデータを含むものとする。
【0043】
続いて、測定工程として、プラズマ装置41による熱入力が行われ、測定が開始される。測定が開始されると、制御部21は、ハイスピードカメラ16を制御して撮影を開始する(ステップS13)。また、光源制御部211は光源11のレーザ発振器11aを制御して、測定用レーザ光Lmを出射させる。図1に示すように、測定用レーザ光Lmは、反射鏡11bを介してビームエキスパンダ11cに入射される。ビームエキスパンダ11cで拡大されたコリメート光である測定用レーザ光Lmは、ビームスプリッタ14で反射され、バンドパスフィルタ15を介して被測定試料31へ照射される。
【0044】
測定用レーザ光Lmは、被測定試料31の裏面で反射するとともに、被測定試料31の内部へ透過する。被測定試料31の内部へと透過した測定用レーザ光Lmの一部は、被測定試料31の表面で反射し、さらに被測定試料31の裏面で反射する。これにより、被測定試料31の表面と裏面とで多重反射した測定用レーザ光Lmは、バンドパスフィルタ15及びビームスプリッタ14を透過してハイスピードカメラ16に入射される。
【0045】
上述のように、被測定試料31の屈折率は温度依存性を有するので、被測定試料31各部の温度によって、多重反射した測定用レーザ光Lmの干渉状態が異なり、反射光の強度(反射率)が変動する。そして、反射率の変動により、被測定試料31の測定面では、干渉縞が観察される。すなわち、本実施の形態に係るハイスピードカメラ16は、干渉縞を撮影することにより、測定用レーザ光Lmの反射光を検出する。
【0046】
画像処理部212は、ハイスピードカメラ16で撮影された画像を取得して、干渉縞として現れる反射率変動の山谷から、反射率情報である振動回数及び周期変動を取得する(ステップS14)。画像処理部212は、ハイスピードカメラ16で撮影された画像を順次取得して、熱処理が終了するまでの振動回数及び周期変動を取得し、記憶部22に記憶させる。
【0047】
演算部213は、データベース50に記憶された温度情報を検索し、ステップS14で取得された反射率情報と最も近似する反射率情報を含む温度情報を近似データとして選択する(ステップS15)。近似データの選択方法は特に限定されないが、例えば、測定データに係る周期変動とデータベース50に記憶された温度情報の周期変動とに基づいて、各周期の差の二乗和が最小となる温度情報を選択する方法を用いることができる。
【0048】
演算部213は、近似データとして選択された温度情報に含まれる最高到達温度を、被測定試料31の測定温度である最高到達温度として表示部23へ表示させるとともに記憶部22に記憶させる(ステップS16)。
【0049】
以上、説明したように、本実施の形態に係る温度測定装置及び温度測定方法によれば、
被測定試料31の温度変化によって生じる反射率変動の波形における振動回数及び周期変動を含む反射率情報と、データベース50に記憶された温度情報中の反射率情報とを比較して近似データを選択する。そして、近似データとして選択された温度情報に基づいて被測定試料の温度を測定する。したがって、複数の波長のレーザ光を用いる場合と比較して、簡素な構成で温度を測定することが可能である。また、反射率変動の周期を特徴量として用いることにより、反射率情報のみに基づいて近似データを選択できるので、少ない演算量で高速に温度を測定することが可能である。
【0050】
本実施の形態に係る演算部213は、熱処理の開始から終了までの反射率情報に基づいて近似データを選択することとしたが、これに限られず、温度上昇時のデータのみに基づいて近似データを選択することとしてもよい。これにより、例えば最高到達温度のみを測定したい場合、少ない演算量で高速に温度測定を行うことができる。
【0051】
また、本実施の形態に係る温度測定装置1では、検出装置としてハイスピードカメラ16を用い、反射光の干渉縞を撮影して、反射率情報を取得することとしたがこれに限られない。例えば、カメラにかえてフォトダイオード等の光強度測定器を検出装置として用い、測定箇所の反射率の時系列データを取得することとしてもよい。この場合、演算部213は、取得した反射率の時系列データから、反射率情報を取得し、データベース50に記憶されている温度情報に含まれる反射率情報と比較することにより、測定箇所の温度変化、最高到達温度等を算出することができる。これにより、ハイスピードカメラ16で撮影した画像を解析することなく、被測定試料31の温度を測定することができるので、より簡素な構成で、高速に温度測定を行うことができる。
【0052】
また、本実施の形態に係る温度測定装置1は、SiCウエハの熱処理に係る温度を測定することとしたが、これに限られない。温度測定の対象は、温度変化による反射光の強度を検出可能なものであればよい。
【0053】
また、本実施の形態に係る光源11は、レーザ発振器11aで発生された測定用レーザ光Lmをビームエキスパンダ11cで拡大することとしたが、これに限られず、測定領域の大きさに対応したコリメート光を発生する構成であればよい。例えば、測定領域に対応したコリメート光を発生するレーザ発振器11aを光源11として用いることとしてもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、バンドパスフィルタ15とハイスピードカメラ16の対物レンズ16bとの間にビームスプリッタ14を配置することとしたが、これに限られない。ビームスプリッタ14は、被測定試料31と対物レンズ16bとの間に配置されていればよい。
【0055】
本実施の形態では、温度測定装置1及び被測定試料31を、プラズマ装置41に対して移動させることとしたが、これに限られない。例えば、温度測定装置1及び被測定試料31を固定させ、プラズマ装置41等の熱入力装置を移動させながら、温度測定を行うこととしてもよい。また、温度測定装置1、被測定試料31及びプラズマ装置41を固定した状態で温度測定を行うこととしてもよい。また、被測定試料31及びプラズマ装置41を固定させ、温度測定装置1を移動させながら、定常的な加熱状態における温度分布を測定することとしてもよい。
【0056】
また、本実施の形態に係るデータベース50に記憶された温度情報は、3次元熱伝導シミュレーションの演算結果に基づいて予め取得されたデータであることとしたがこれに限られず、実測結果に基づく温度情報を用いることとしてもよい。
【0057】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、ハイスピードカメラ16で撮影した画像から、反射率変動波形の振動回数及び周期変動を反射率情報として取得し、予め各種条件に基づく熱伝導シミュレーションの演算結果から取得された温度情報に含まれる反射率情報と比較して被測定試料31の温度を測定することとしたが、反射率情報及び温度情報として他の情報を用いることもできる。本実施の形態では、反射率情報として、測定箇所の時系列画像に基づいて作成された干渉縞の画像から取得された複数の反射率情報を用いる温度測定装置及び温度測定方法について説明する。
【0058】
本実施の形態では、測定データ及びデータベース50に記憶されたデータに係る温度情報が、実施の形態1と異なる。その他、測定用レーザ光Lmを被測定試料31に照射し、干渉縞を撮影する光学系の構成は、実施の形態1と同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
以下、本実施の形態に係る温度測定方法について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0060】
まず、データベース作成工程として、実施の形態1と同様にコンピュータによる3次元熱伝導シミュレーションを用いて、種々の条件に係る温度分布を算出する(ステップS21)。図8は、3次元熱伝導シミュレーションの演算結果の例を示す図であり、時間の経過とともに被測定試料31の温度分布が変化する様子がわかる。
【0061】
3次元熱伝導シミュレーションの演算結果である温度分布と被測定試料31の材料特性とに基づいて、反射率変動を表す干渉縞の画像を作成する(ステップS22)。
【0062】
作成された干渉縞の画像に基づいて、反射率情報が取得される。具体的には、図9に示すように、作成された干渉縞の画像において、最高温度となる点を中心として、被測定試料31の移動方向(図9中のx軸方向。以下、第1の方向ともいう。)の反射率情報(以下、第1の反射率情報ともいう。)が算出される。また、最高温度となる点を通り、第1の方向と直交する方向(図9中のy軸方向。以下、第2の方向ともいう。)の反射率情報(以下、第2の反射率情報ともいう。)が算出される。そして、算出された第1の反射率情報及び第2の反射率情報を含む反射率情報、最高到達温度を含む3次元熱伝導シミュレーションの結果等を含む温度情報がデータベース50に記憶される(ステップS23)。
【0063】
続いて、測定工程として、実施の形態1と同様に、プラズマ装置41による加熱が開始されるとともに、被測定試料31及び光学系が移動し、測定が開始される。測定が開始されると、制御部21は、ハイスピードカメラ16を制御して、所定のサンプリング周波数で被測定試料31の測定面に現れる干渉縞の画像を取得し、記憶部22に記憶させる(ステップS24)。
【0064】
画像処理部212は、ステップS24で撮影された画像について、干渉縞を強調するための画像処理を行う(ステップS25)。具体的には、画像処理部212は、撮影画像について背景除去処理とコントラスト調整処理を行う(図10)。
【0065】
画像処理部212は、ステップS25で調整された各フレームの画像をつなぎ合わせる合成処理を行う(図11(A))。さらに、画像処理部212は、干渉縞の情報を適切に取得するため、合成された画像についてノイズ除去を行った後、二値化処理を行う(図11(B))。画像処理部212は、ノイズ除去された合成画像から、温度情報に含まれる反射率情報、すなわち反射率変動波形の振動回数及び周期変動を取得する(ステップS26)。
【0066】
反射率情報の取得は、まず、測定箇所の中心であり、プラズマ装置41による加熱箇所を通り、被測定試料31の移動方向(図11(B)中のx軸方向)である第1の方向について行われる。画像処理部212は、第1の方向について取得された第1の反射率情報から、最高到達温度となる部分(以下、温度中心点ともいう。)を推定し、温度中心点を通り、第1の方向と直交する第2の方向(図11(B)中のy軸方向)について第2の反射率情報を取得する。
【0067】
演算部213は、画像処理部212で取得された第1の反射率情報及び第2の反射率情報を含む反射率情報に対して、データベース50に記憶されている温度情報を検索してパターンマッチングによって最も類似度の高い反射率情報を含む温度情報を近似データとして選択する(ステップS27)。より具体的には、反射率情報である反射率変動波形の振動回数及び周期変動について類似度を演算して、最も近似するデータを選択する。類似度の算出方法として、例えば、演算部213は、温度中心点から+x方向、-x方向、+y方向、-y方向の各方向に、測定によって取得された各周期とデータベース50に記憶された温度情報に係る各周期との二乗和を誤差として演算する。そして、演算部213は、最も誤差の小さい温度情報を類似度の高い温度情報、すなわち近似データとして選択する。
【0068】
制御部21は、選択された近似データである温度情報に含まれる最高到達温度及び温度分布のデータをデータベース50から読み出し、表示部23へ表示させる(ステップS28)。
【0069】
以上、説明したように、本実施の形態に係る温度測定装置及び温度測定方法によれば、測定箇所の時系列画像に基づいて作成された干渉縞の画像から取得された複数の反射率情報を用いて近似データを選択するので、高速でより精度よく被測定試料31の温度を測定することができる。
【0070】
本実施の形態では、データベース50に記憶される温度情報は、3次元熱伝導シミュレーションの演算結果を含むこととしている。すなわち、シミュレーションごとの被測定試料31の温度分布と、これに対応する反射率情報とがデータベース50に記憶されることとしている。これにより、被測定試料31の測定面における反射率変動波形の振動回数及び周期変動のマッチングに基づいて、被測定試料31内部の温度分布(図8)を容易に推定することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、第1の方向は被測定試料31の移動方向であり、第2の方向は第1の方向と直交する方向であることとしたが、これに限られない。干渉縞の数、周期等の特徴を把握し易い方向を第1の方向、第2の方向として選択すればよい。
【0072】
上記各実施の形態では、制御ユニット20と別にデータベース50を設けることとしたが、これに限られない。例えば、制御ユニット20の記憶部22がデータベース50を兼ね、温度情報を記憶することとしてもよい。また、データベース50は、ネットワークを介して制御ユニット20と接続されることとしてもよい。これにより、複数の温度測定装置1でデータベース50を共用することができる。
【0073】
(実施の形態3)
実施の形態2では、反射率情報に基づくパターンマッチングによって近似データを選択し、被測定試料31の温度を計測することとしたが、機械学習による学習済みモデルを用いて温度を計測することもできる。本実施の形態では、制御部21の演算部213が、機械学習による学習済みモデルTMを用いて、取得された反射率情報から、被測定試料31の温度を測定する点で、実施の形態2と異なる。また、温度測定装置1がデータベース50を備えない点で、実施の形態2と異なる。その他、温度測定装置1の構成等については、実施の形態2と同様であるので、同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0074】
図12に示すように、記憶部22は、実施の形態2と同様に3次元熱伝導シミュレーションを用いて、種々の条件で算出された温度分布に係る反射率変動を教師データとして学習された学習済みモデルTMを備える。学習済みモデルTMは、干渉縞画像に表れる反射率変動の周期等の反射率情報から、被測定試料31の温度を推定するように、機械学習により生成された推定モデルである。例えば、試料への熱入力、被測定試料31の熱物性値(密度、比熱、熱伝導率)等種々の条件に係る3次元熱伝導シミュレーションの演算結果である温度分布に基づいて算出された反射率情報を教師データとして、機械学習が行われる。
【0075】
機械学習のアルゴリズムは、特に限定されないが、例えばニューラルネットワークを用いた機械学習アルゴリズムである。本実施の形態では、上述のように干渉縞画像として表れる反射率変動の周期を特徴量として、学習済みモデルTMを予め生成する。そして、生成された学習済みモデルTMを記憶部22へ記憶しておく。
【0076】
本実施の形態では、図7のフローチャートに示すデータベース作成工程(ステップS21~S23)にかえて、上記の学習済みモデルTMの作成を行う。また、温度測定装置1は、図7のフローチャートのステップS27、S28にかえて、学習済みモデルTMを用いた温度測定を行う。具体的には、演算部213は、記憶部22に保存された学習済みモデルTMを読み出すとともに、ステップS26で取得された反射率情報を学習済みモデルTMへ入力する。そして、得られた出力結果、すなわち推定された被測定試料31の温度を、被測定試料31の測定温度として表示部23へ表示させる。
【0077】
以上、説明したように、本実施の形態に係る温度測定装置1は、予め取得された反射率情報に基づく学習済みモデルTMを備え、演算部213は、学習済みモデルTMによって被測定試料31の温度を測定する。したがって、実施の形態2に係るパターンマッチングのように、干渉縞画像の反射率情報をデータベース50に記憶された反射率情報と逐次比較する必要がないので、被測定試料31の温度を容易に測定することができる。
【0078】
また、学習済みモデルTMの作成に用いる反射率情報を含む温度情報のデータ数は、実施の形態2に係る反射率情報に基づくパターンマッチングに用いるデータベースのデータ数より大幅に少なくてよい。例えば、パターンマッチングのための各種条件に係るデータ数の10分の1程度のデータ数で、学習済みモデルTMを作成することができる。したがって、データベース作成工程等の測定準備のための時間、コストを削減することが可能となる。
【0079】
本実施の形態に係る教師データは、3次元熱伝導シミュレーションの演算結果に基づいて予め取得されたデータであることとしたがこれに限られず、実測結果に基づく温度情報を用いることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、高速で被測定試料の温度分布を測定する温度測定装置に好適である。特に、短時間で急速に温度変化が生じる半導体ウエハの熱処理時の温度変化を測定する温度測定装置に好適である。
【符号の説明】
【0081】
1 温度測定装置、11 光源、11a レーザ発振器、11b 反射鏡、11c ビームエキスパンダ、14 ビームスプリッタ、15 バンドパスフィルタ、16 ハイスピードカメラ、16a カメラ本体、16b 対物レンズ、20 制御ユニット、21 制御部、211 光源制御部、212 画像処理部、213 演算部、22 記憶部、23 表示部、24 入力部、31 被測定試料、41 プラズマ装置、50 データベース、Lm 測定用レーザ光、TM 学習済みモデル
図1
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図12