(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122817
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】研磨終点検出方法、研磨終点検出システム、研磨装置、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
B24B 37/013 20120101AFI20230829BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230829BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B24B37/013
H01L21/304 622S
H01L21/304 622R
B24B49/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026546
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】清水 有子
(72)【発明者】
【氏名】三谷 隆一郎
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034BB92
3C034CA17
3C034CB03
3C158AA07
3C158AC02
3C158DA12
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED00
5F057AA20
5F057BA11
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057FA20
5F057GA12
5F057GA16
5F057GA27
5F057GB02
5F057GB03
5F057GB13
5F057GB20
5F057GB25
(57)【要約】
【課題】正確に研磨終点時間を予測することができる方法を提供する。
【解決手段】本方法は、ワークピースWの研磨時に、ワークピースWの研磨進捗を示す研磨モニタリング値を取得し、ワークピースWの研磨時間に沿った研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成し、時系列データに含まれる特徴データ点FP1,FP2を構成する研磨モニタリング値VF1,VF2および研磨時間TF1,TF2を学習済みモデル34に入力し、学習済みモデル34から研磨終点予測時間を出力する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの研磨時に、前記ワークピースの研磨進捗を示す研磨モニタリング値を取得し、
前記ワークピースの研磨時間に沿った前記研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成し、
前記時系列データに含まれる特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する、研磨終点検出方法。
【請求項2】
前記時系列データに含まれる研磨初期データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する、請求項1に記載の研磨終点検出方法。
【請求項3】
前記時系列データに含まれる、前記研磨初期データ点と前記特徴データ点との間の中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する、請求項2に記載の研磨終点検出方法。
【請求項4】
前記特徴データ点は、前記時系列データに含まれる複数の特徴データ点である、請求項1に記載の研磨終点検出方法。
【請求項5】
前記研磨終点予測装置は、前記時系列データに含まれる、前記複数の特徴データ点の間の中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する、請求項4に記載の研磨終点検出方法。
【請求項6】
研磨モジュールに使用されている研磨パッドの総使用時間、前記研磨パッドの種類、前記ワークピースの研磨に使用されている研磨液の種類、および前記ワークピースの種類のうち少なくとも1つの補助情報を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の研磨終点検出方法。
【請求項7】
前記特徴データ点は、前記時系列データの極大点、極小点、および変曲点のうちのいずれか1つである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の研磨終点検出方法。
【請求項8】
前記特徴データ点は、所定の研磨モニタリング値に達した時点のデータ点である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の研磨終点検出方法。
【請求項9】
前記研磨進捗測定器は、トルク電流検出器および膜厚測定センサのうちのいずれかである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の研磨終点検出方法。
【請求項10】
研磨モジュールに設けられた研磨進捗測定器と、
機械学習により構築された学習済みモデルを有する研磨終点予測装置を備え、
前記研磨終点予測装置は、
ワークピースの研磨時に前記研磨進捗測定器から出力された、前記ワークピースの研磨進捗を示す研磨モニタリング値を取得し、
前記ワークピースの研磨時間に沿った前記研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成し、
前記時系列データに含まれる特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている、研磨終点検出システム。
【請求項11】
前記研磨終点予測装置は、前記時系列データに含まれる研磨初期データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている、請求項10に記載の研磨終点検出システム。
【請求項12】
前記研磨終点予測装置は、前記時系列データに含まれる、前記研磨初期データ点と前記特徴データ点との間の中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている、請求項11に記載の研磨終点検出システム。
【請求項13】
前記特徴データ点は、前記時系列データに含まれる複数の特徴データ点である、請求項10に記載の研磨終点検出システム。
【請求項14】
前記研磨終点予測装置は、前記時系列データに含まれる、前記複数の特徴データ点の間の中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている、請求項13に記載の研磨終点検出システム。
【請求項15】
前記研磨終点予測装置は、前記研磨モジュールに使用されている研磨パッドの総使用時間、前記研磨パッドの種類、前記ワークピースの研磨に使用されている研磨液の種類、および前記ワークピースの種類のうち少なくとも1つの補助情報を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている、請求項10乃至14のいずれか一項に記載の研磨終点検出システム。
【請求項16】
前記特徴データ点は、前記時系列データの極大点、極小点、および変曲点のうちのいずれか1つである、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の研磨終点検出システム。
【請求項17】
前記特徴データ点は、所定の研磨モニタリング値に達した時点のデータ点である、請求項10乃至15のいずれか一項に記載の研磨終点検出システム。
【請求項18】
前記研磨進捗測定器は、トルク電流検出器および膜厚測定センサのうちのいずれかである、請求項10乃至17のいずれか一項に記載の研磨終点検出システム。
【請求項19】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、
ワークピースを前記研磨パッドの研磨面に押し付けて前記ワークピースを研磨する研磨ヘッドと、
請求項10乃至18のいずれか一項に記載の研磨終点検出システムを備えた、研磨装置。
【請求項20】
ワークピースの研磨時に、前記ワークピースの研磨進捗を示す研磨モニタリング値を取得するステップと、
前記ワークピースの研磨時間に沿った前記研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成するステップと、
前記時系列データに含まれる特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するステップをコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ、基板、パネルなどの半導体デバイスの製造に用いられるワークピースの研磨終点を検出する方法およびシステムに関する。また、本発明は、そのような研磨終点検出システムを備えた研磨装置に関する。さらに、本発明は、研磨装置に研磨終点検出方法を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造には、CMP装置に代表される研磨モジュールが使用される。半導体デバイスの配線構造は、配線溝が形成された絶縁膜上に金属膜(銅膜など)を形成し、その後不要な金属膜を研磨モジュールにより除去することにより形成される。研磨モジュールは、研磨テーブル上の研磨パッドに研磨液(スラリー)を供給しながら、ワークピースと研磨パッドとを相対移動させることにより、ワークピースの表面を研磨する。
【0003】
研磨モジュールは、ワークピースの研磨終点を検出する研磨終点検出装置を備えている。この研磨終点検出装置は、研磨の進捗を示す研磨指標値(例えば、テーブルトルク電流、渦電流式膜厚センサの出力信号、光学式膜厚センサの出力信号)に基づいてワークピースの研磨を監視し、研磨対象膜(例えば、金属膜)が除去された時点である研磨終点を決定する。
【0004】
研磨指標値は、研磨の進捗に伴い、ワークピースの表面状態に依存して変化する。研磨終点は、例えば、研磨対象膜が除去されて下層が露出したことによる、研磨指標値の特徴的な変化点に基づいて検出される。研磨モジュールは、検出された研磨終点に基づいてワークピースの研磨を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-58197号公報
【特許文献2】特開2013-176828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、研磨指標値の実測値はノイズを含んでいるため、数秒間にわたって得られた実測値の平均、すなわち移動平均が研磨終点の検出に用いられる。この移動平均の算出により、研磨指標値の特徴的な変化点が実際に現れた時点から遅延して、研磨終点が検出されることがある。
【0007】
そこで、本発明は、正確に研磨終点時間を予測することができる方法およびシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、ワークピースの研磨時に、前記ワークピースの研磨進捗を示す研磨モニタリング値を取得し、前記ワークピースの研磨時間に沿った前記研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成し、前記時系列データに含まれる特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する、研磨終点検出方法が提供される。
一態様では、前記時系列データに含まれる研磨初期データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する。
一態様では、前記時系列データに含まれる、前記研磨初期データ点と前記特徴データ点との間の中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する。
【0009】
一態様では、前記特徴データ点は、前記時系列データに含まれる複数の特徴データ点である。
一態様では、前記研磨終点予測装置は、前記時系列データに含まれる、前記複数の特徴データ点の間の中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する。
一態様では、研磨モジュールに使用されている研磨パッドの総使用時間、前記研磨パッドの種類、前記ワークピースの研磨に使用されている研磨液の種類、および前記ワークピースの種類のうち少なくとも1つの補助情報を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力する。
一態様では、前記特徴データ点は、前記時系列データの極大点、極小点、および変曲点のうちのいずれか1つである。
一態様では、前記特徴データ点は、所定の研磨モニタリング値に達した時点のデータ点である。
一態様では、前記研磨進捗測定器は、トルク電流検出器および膜厚測定センサのうちのいずれかである。
【0010】
一態様では、研磨モジュールに設けられた研磨進捗測定器と、機械学習により構築された学習済みモデルを有する研磨終点予測装置を備え、前記研磨終点予測装置は、ワークピースの研磨時に前記研磨進捗測定器から出力された、前記ワークピースの研磨進捗を示す研磨モニタリング値を取得し、前記ワークピースの研磨時間に沿った前記研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成し、前記時系列データに含まれる特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている、研磨終点検出システムが提供される。
一態様では、前記研磨終点予測装置は、前記時系列データに含まれる研磨初期データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている。
一態様では、前記研磨終点予測装置は、前記時系列データに含まれる、前記研磨初期データ点と前記特徴データ点との間の中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている。
【0011】
一態様では、前記特徴データ点は、前記時系列データに含まれる複数の特徴データ点である。
【0012】
一態様では、前記研磨終点予測装置は、前記時系列データに含まれる、前記複数の特徴データ点の間の中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている。
一態様では、前記研磨終点予測装置は、前記研磨モジュールに使用されている研磨パッドの総使用時間、前記研磨パッドの種類、前記ワークピースの研磨に使用されている研磨液の種類、および前記ワークピースの種類のうち少なくとも1つの補助情報を前記学習済みモデルにさらに入力して、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するように構成されている。
一態様では、前記特徴データ点は、前記時系列データの極大点、極小点、および変曲点のうちのいずれか1つである。
一態様では、前記特徴データ点は、所定の研磨モニタリング値に達した時点のデータ点である。
一態様では、前記研磨進捗測定器は、トルク電流検出器および膜厚測定センサのうちのいずれかである。
【0013】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、ワークピースを前記研磨パッドの研磨面に押し付けて前記ワークピースを研磨する研磨ヘッドと、上記研磨終点検出システムを備えた、研磨装置が提供される。
一態様では、ワークピースの研磨時に、前記ワークピースの研磨進捗を示す研磨モニタリング値を取得するステップと、前記ワークピースの研磨時間に沿った前記研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成するステップと、前記時系列データに含まれる特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデルに入力し、前記学習済みモデルから研磨終点予測時間を出力するステップをコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、研磨終点よりも前に現れる特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデルに入力することで、研磨終点予測時間を学習済みモデルから出力する。これにより、目標とする研磨終点よりも前に正確に研磨終点時間を予測して、目標とする研磨終点でワークピースの研磨を終了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】研磨終点検出システムおよび研磨モジュールを備えた研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】ワークピースの研磨時間に伴う研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを示すグラフの一例を示す図である。
【
図3】ノイズを含む研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを示すグラフの一例を示す図である。
【
図4】学習用ワークピースの研磨時に生成された時系列データを示すグラフの一例である。
【
図5】ディープラーニングを用いて構築された学習済みモデルの一例を示す模式図である。
【
図6】所定の研磨モニタリング値に達した時点のデータ点を説明する図である。
【
図7】ワークピースの研磨時に生成された時系列データを示すグラフの一例である。
【
図8】学習済みモデルを用いてワークピースの研磨終点を予測する方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【
図9】時系列データに含まれる中間データ点を説明する図である。
【
図10】研磨終点検出システムの他の実施形態を示す模式図である。
【
図11】研磨終点検出システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図12】研磨終点検出システムのさらに他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨終点検出システム7および研磨モジュール1を備えた研磨装置の一実施形態を示す模式図である。研磨モジュール1は、ワークピースWを化学機械的に研磨する研磨装置(CMP装置)である。ワークピースWの例としては、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハ、基板、パネルなどが挙げられる。研磨終点検出システム7は、研磨モジュール1によって研磨されているワークピースWの研磨終点を検出するように構成されている。
【0017】
研磨モジュール1は、研磨パッド2を支持するための研磨テーブル3と、ヘッドシャフト5の下端に連結された研磨ヘッド6を備えている。ヘッドシャフト5は、ベルトおよびプーリ等のトルク伝達機構10を介して研磨ヘッド回転モータ12に連結されている。研磨ヘッド回転モータ12は、トルク伝達機構10を介してヘッドシャフト5を回転させ、このヘッドシャフト5の回転により、研磨ヘッド6がヘッドシャフト5を中心に矢印で示す方向に回転される。研磨ヘッド6は、その下面にワークピース(例えばウェーハ)Wを真空吸着により保持可能に構成されている。
【0018】
ヘッドシャフト5は、ヘッドアーム15に回転可能に保持されている。ヘッドアーム15は研磨パッド2の上方に配置され、研磨パッド2の研磨面2aと平行である。ヘッドアーム15の一端はヘッドシャフト5を保持し、ヘッドアーム15の他端はアーム揺動モータ16に連結されている。アーム揺動モータ16は、ヘッドアーム15を所定の角度だけ回転させることにより、研磨ヘッド6を研磨テーブル3上の研磨位置と、研磨テーブル3の外の搬送位置との間で移動させるように構成されている。
【0019】
研磨テーブル3は、テーブル軸3aを介してその下方に配置されるテーブル回転モータ18に連結されており、このテーブル回転モータ18により研磨テーブル3がテーブル軸3aを中心に矢印で示す方向に回転するようになっている。研磨パッド2の上面は、ワークピースWを研磨する研磨面2aを構成している。研磨テーブル3の上方には、研磨面2aに研磨液(スラリー)を供給するための研磨液供給ノズル20が配置されている。
【0020】
ワークピースWの研磨は次のようにして行われる。研磨テーブル3および研磨パッド2はテーブル回転モータ18により回転されながら、研磨液が研磨液供給ノズル20から研磨パッド2の研磨面2aに供給される。研磨ヘッド6は、研磨ヘッド回転モータ12により回転されながら、ワークピースWを研磨パッド2の研磨面2aに対して押し付ける。ワークピースWは、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッド2の機械的作用の組み合わせにより、研磨される。一実施形態では、ワークピースWの研磨中に、アーム揺動モータ16により、研磨ヘッド6を研磨パッド2の研磨面2a上で揺動(オシレーション)させてもよい。
【0021】
次に、研磨終点検出システム7について説明する。研磨終点検出システム7は、研磨モジュール1に配置された研磨進捗測定器30と、ワークピースWの研磨終点を予測する研磨終点予測装置33を備えている。本実施形態では、研磨進捗測定器30は、テーブル回転モータ18に接続されたトルク電流検出器(すなわち、テーブルトルク電流検出器)である。トルク電流検出器である研磨進捗測定器30は、テーブル回転モータ18に供給される電流(以下、トルク電流という)を測定するように構成されている。トルク電流は、テーブル回転モータ18が研磨テーブル3および研磨パッド2を一定速度で回転させるために必要な電流である。
【0022】
トルク電流の測定値は、ワークピースWの研磨進捗を示す研磨モニタリング値として機能する。すなわち、ワークピースWの研磨中は、ワークピースWの表面と研磨パッド2の研磨面2aとが摺接するため、ワークピースWと研磨パッド2との間には摩擦力が生じる。この摩擦力は抵抗トルクとしてテーブル回転モータ18に作用する。ワークピースWと研磨パッド2との間に発生する摩擦力は、ワークピースWの表面状態に依存して変わる。例えば、ワークピースWの表面が配線パターン構造を有している場合、配線パターン構造を構成する膜または金属配線の除去状態によって、上記摩擦力は変化する。この摩擦力の変化は、研磨テーブル3および研磨パッド2を予め設定された速度で回転させるためにテーブル回転モータ18に供給されるトルク電流の変化として検出することができる。研磨進捗測定器30は、研磨終点予測装置33に接続されており、トルク電流の測定値である研磨モニタリング値を生成し、研磨モニタリング値を研磨終点予測装置33に送るように構成されている。
【0023】
研磨終点予測装置33は、プログラムおよび後述する学習済みモデル34が格納された記憶装置33aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置33bを備えている。研磨終点予測装置33は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置33aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置33bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、研磨終点予測装置33の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0024】
研磨終点予測装置33は、研磨進捗測定器30に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットなどのネットワークによって研磨進捗測定器30に接続されたクラウドサーバであってもよい。研磨終点予測装置33は、複数のサーバの組み合わせであってもよい。例えば、研磨終点予測装置33は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークにより互いに接続されたエッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。ただし、研磨終点予測装置33の具体的構成はこれらの例に限定されない。一実施形態では、研磨終点予測装置33は、複数の装置で構成されており、それぞれに記憶装置と演算装置を備えていてもよい。
【0025】
研磨終点予測装置33は、研磨制御部40に接続されている。研磨終点予測装置33は、ワークピースWの研磨終点を予測して、研磨終点予測時間を含む研磨終了信号を研磨制御部40に送る。研磨制御部40は、受信した研磨終了信号に基づいて、研磨モジュール1に指令を発して、研磨終点予測時間でワークピースWの研磨を終了させる。
【0026】
図2は、ワークピースWの研磨時間に伴う研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを示すグラフの一例を示す図である。
図2において、縦軸は研磨モニタリング値(すなわちトルク電流の測定値)を表し、横軸はワークピースWの研磨時間を表している。ワークピースWが研磨されるにつれて、ワークピースWの表面状態は変化する。このワークピースWの表面状態の変化は、
図2に示すように、研磨モニタリング値の変化として現れる。
【0027】
ワークピースWの研磨終点は、ワークピースWの研磨進捗を表す研磨モニタリング値に基づいて検出される。
図2に示す時系列データは、研磨モニタリング値の極大点MPを含む。この極大点MPは、例えば、研磨対象膜が除去されて下層が露出したことによって現れる、特徴データ点である。本実施形態では、目標とする研磨終点は、極大点MPが現れた時点である。したがって、研磨モジュール1は、極大点MPに対応する研磨終点時間TEでワークピースWの研磨を終了させることを目標とする。
【0028】
しかしながら、極大点MPが現れてから研磨終点を検出すると、研磨制御部40が研磨モジュール1に指令を発して、研磨モジュール1がワークピースWの研磨を終了する時点は、研磨終点時間TEを過ぎてしまうことがある。また、研磨モニタリング値の実測値はノイズを含んでいるため、
図3に示すように時系列データの波形が不安定であり、研磨終点を正確に検出することができない。そのため、研磨終点の検出には、研磨モニタリング値の移動平均を算出して、
図2に示すようにノイズを低減させた時系列データを用いる。この移動平均の算出により、研磨終点の検出が遅延することがある。
【0029】
そこで、本実施形態の研磨終点予測装置33は、学習用ワークピースを研磨したときに得られた時系列データに基づいて、機械学習により構築された学習済みモデル34を用いて、研磨終点を予測する。研磨終点予測装置33は、
図1に示すように、記憶装置33aに格納された学習済みモデル34を有している。
【0030】
学習済みモデル34の構築に使用される学習用ワークピースは、研磨対象のワークピースWと同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。ワークピースの種類は、ワークピースの表面構造、ワークピースを構成する材料、ワークピースのサイズなどのワークピースが有する構造的特徴によって区別される。ワークピースの表面構造は、ワークピース表面に形成された配線パターンや配線パターンを構成する材料によって異なる。
【0031】
図4は、学習用ワークピースの研磨時に生成された時系列データを示すグラフの一例である。学習用ワークピースは、上述したワークピースWの研磨と同様に、研磨モジュール1により研磨される。学習用ワークピースは、ワークピースWと同じ研磨条件で研磨される。研磨条件には、研磨テーブル3の回転速度、研磨ヘッド6の回転速度、研磨ヘッド6のワークピースWに対する押付力、研磨液の流量が挙げられる。
【0032】
研磨進捗測定器30は、トルク電流を学習用ワークピースの研磨中に測定する。研磨終点予測装置33は、学習用ワークピースの研磨進捗を示すトルク電流の測定値、すなわち研磨モニタリング値を研磨進捗測定器30から取得し、学習用ワークピースの研磨時間に沿った研磨モニタリング値の変化(すなわちトルク電流の測定値の変化)を表す時系列データを生成する。この時系列データは、研磨終点予測装置33の記憶装置33a内に格納される。
【0033】
一実施形態では、研磨終点予測装置33は、トルク電流の測定値の1次微分値、2次微分値、あるいはそれ以上の次数の微分値を算出して、学習用ワークピースの研磨時間に沿ったトルク電流の測定値の1次微分値、2次微分値、あるいはそれ以上の次数の微分値である研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成してもよい。
【0034】
図4に示す時系列データは、研磨初期データ点IP、2つの特徴データ点FP1,FP2、および目標終点データ点EPを含む。各データ点は、研磨モニタリング値と、対応する研磨時間から構成される時系列データ上の点である。
【0035】
研磨初期データ点IPは、学習用ワークピースの研磨を開始したときのデータ点である。研磨初期データ点IPは、研磨モニタリング値VIおよび研磨時間TIにより構成されている。研磨開始時の研磨モニタリング値は不安定であるため、研磨初期データ点IPは、研磨開始時(すなわち、研磨時間TI=0のとき)のデータ点であってもよいし、研磨開始から所定の初期研磨時間が経過したときのデータ点であってもよい。
【0036】
特徴データ点FP1,FP2は、時系列データに含まれる予め定められた特徴を有するデータ点であり、目標とする研磨終点(すなわち、目標終点データ点EP)よりも前に現れる。予め定められた特徴を有するデータ点は、極大点、極小点、または変曲点などの特徴的な変化を示すデータ点、あるいは、所定の研磨モニタリング値に達した時点のデータ点である。
図4に示す時系列データにおける特徴データ点は2つであるが、異なる種類のワークピースの時系列データでは、研磨終点(すなわち、目標終点データ点EP)よりも前に現れる特徴データ点は1つのみ、あるいは3つ以上である場合もある。
【0037】
図4に示す時系列データでは、特徴データ点FP1は極大点であり、特徴データ点FP2は極小点である。特徴データ点FP1は、研磨モニタリング値VF1および研磨時間TF1により構成されている。特徴データ点FP2は、研磨モニタリング値VF2および研磨時間TF2により構成されている。目標終点データ点EPは、目標とする研磨終点におけるデータ点である。目標終点データ点EPは、研磨モニタリング値VEおよび研磨時間(研磨終点時間)TEにより構成されている。
【0038】
本実施形態では、学習済みモデル34の構築に用いられる訓練データは、研磨初期データ点IP、および特徴データ点FP1,FP2を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を含み、さらに正解ラベルである、目標終点データ点EPを構成する研磨時間(研磨終点時間)TEを含む。学習済みモデル34は、機械学習により構築される。機械学習の例としては、SVR法(サポートベクター回帰法)、PLS法(部分最小二乗法:Partial Least Squares)、ディープラーニング法(深層学習法)、ランダムフォレスト法、および決定木法などが挙げられる。一例では、学習済みモデル34は、ディープラーニング法によって構築されたニューラルネットワークから構成されている。
【0039】
図5は、ディープラーニング法を用いて構築された学習済みモデル34の一例を示す模式図である。学習済みモデル34は、入力層101と、複数の隠れ層(中間層ともいう)102と、出力層103を有している。
図5に示す学習済みモデル34は、4つの隠れ層102を有しているが、学習済みモデル34の構成は
図5に示す実施形態に限られない。
【0040】
ディープラーニングを用いた学習済みモデル34の構築は、次のようにして行われる。
図5に示す入力層101に、研磨初期データ点IPおよび特徴データ点FP1,FP2を構成する研磨モニタリング値および研磨時間が入力される。より具体的には、研磨初期データ点IPを構成する研磨モニタリング値VIおよび研磨時間TIと、特徴データ点FP1を構成する研磨モニタリング値VF1および研磨時間TF1と、特徴データ点FP2を構成する研磨モニタリング値VF2および研磨時間TF2が入力層101に入力される。
【0041】
学習済みモデル34は、入力層101に研磨初期データ点IPおよび特徴データ点FP1,FP2を構成する研磨モニタリング値および研磨時間が入力されると、出力層103から研磨終点予測時間が出力されるように構成されている。研磨終点予測装置33は、出力層103から出力された研磨終点予測時間と、正解ラベルである目標終点データ点EPを構成する研磨時間(研磨終点時間)TEとを比較し、その誤差を最小とするように各ノード(ニューロン)のパラメータ(重みやしきい値など)を調整する。これにより、学習済みモデル34は、入力層101に入力されたデータに基づいて、出力層103から適切な研磨終点予測時間を出力するように学習される。
【0042】
複数の学習用ワークピースを研磨したときの複数の時系列データを用いて上記学習を繰り返すことにより、学習済みモデル34が構築される。機械学習による学習済みモデル34は、基本的に経験したことのない入力データに対する予測精度が低くなる。したがって、異なる態様で研磨モニタリング値が変化する多数の学習用ワークピースを用いることにより、学習済みモデル34から出力される研磨終点予測時間の精度を高めることができる。
【0043】
上述した実施形態では、研磨初期データ点IPおよび2つの特徴データ点FP1,FP2が訓練データに含まれるが、一実施形態では、研磨初期データ点IPを用いずに、2つの特徴データ点FP1,FP2のみを用いてもよい。訓練データは、研磨終点までに現れるすべての特徴データ点を含んでよい。例えば、研磨終点までに現れる特徴データ点が3つの場合は、訓練データは、3つの特徴データ点のすべてを含んでもよい。
【0044】
他の実施形態では、特徴データ点は、所定の研磨モニタリング値に達した時点のデータ点であってもよい。例えば、
図6に示すように、特徴データ点FPは、所定の研磨モニタリング値VFに達した時点のデータ点であり、特徴データ点FPは、所定の研磨モニタリング値VFおよび研磨時間TFにより構成されている。この場合、学習済みモデル34の構築に用いられる訓練データは、研磨初期データ点IPおよび特徴データ点FPを構成する研磨モニタリング値および研磨時間を含み、さらに正解ラベルである、目標終点データ点EPを構成する研磨時間(研磨終点時間)TEを含む。
【0045】
さらに他の実施形態では、研磨開始から研磨終点までの時系列データ自体を学習済みモデル34の入力層101に入力することにより、学習済みモデル34が構築されてもよい。すなわち、訓練データは、研磨開始から研磨終点までの時系列データ自体を含み、訓練データに含まれる正解ラベルは、目標終点データ点EPを構成する研磨時間(研磨終点時間)TEであってもよい。
【0046】
次に、学習済みモデル34を用いて研磨対象のワークピースWの研磨終点を予測する方法について説明する。
図7は、ワークピースWの研磨時に生成された時系列データを示すグラフの一例である。研磨進捗測定器30は、トルク電流をワークピースWの研磨中に測定する。研磨終点予測装置33は、ワークピースWの研磨進捗を示すトルク電流の測定値、すなわち研磨モニタリング値を研磨進捗測定器30から取得し、ワークピースWの研磨時間に沿った研磨モニタリング値の変化(すなわちトルク電流の測定値の変化)を表す時系列データを生成する。この時系列データは、研磨終点予測装置33の記憶装置33a内に格納される。
【0047】
一実施形態では、研磨終点予測装置33は、トルク電流の測定値の1次微分値、2次微分値、あるいはそれ以上の次数の微分値を算出して、ワークピースWの研磨時間に沿ったトルク電流の測定値の1次微分値、2次微分値、あるいはそれ以上の次数の微分値である研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成してもよい。
【0048】
図7に示す時系列データは、研磨初期データ点IPおよび2つの特徴データ点FP1,FP2を含む。これら研磨初期データ点IPおよび2つの特徴データ点FP1,FP2は、
図4に示す学習用ワークピースの時系列データにおける研磨初期データ点IPおよび2つの特徴データ点FP1,FP2に対応しているため、その重複する説明を省略する。
図7に示す例では、研磨終点予測装置33により、研磨初期データ点IPから、特徴データ点FP2が現れた時点を経過した、実線で示す部分までの時系列データが生成されている。
【0049】
研磨終点予測装置33は、ワークピースWの研磨時に生成された時系列データから研磨初期データ点IP、特徴データ点FP1,FP2を検出し、各データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデル34の入力層101(
図5参照)に入力する。より具体的には、研磨終点予測装置33は、研磨初期データ点IPを構成する研磨モニタリング値VIおよび研磨時間TIと、特徴データ点FP1を構成する研磨モニタリング値VF1および研磨時間TF1と、FP2を構成する研磨モニタリング値VF2および研磨時間TF2を入力層101に入力する。
【0050】
研磨終点予測装置33は、学習済みモデル34の入力層101に入力されたデータを用いて、学習済みモデル34によって規定されるアルゴリズムに従って演算を実行し、学習済みモデル34の出力層103(
図5参照)から研磨終点予測時間を出力する。研磨終点予測装置33は、出力された研磨終点予測時間を含む研磨終了信号を研磨制御部40に送る。研磨制御部40は、受信した研磨終了信号に基づいて、研磨モジュール1に指令を発して、研磨終点予測時間でワークピースWの研磨を終了させる。
【0051】
上述した実施形態では、ワークピースWの研磨時に学習済みモデル34に入力されるデータ点は、研磨初期データ点IPおよび2つの特徴データ点FP1,FP2であるが、一実施形態では、研磨初期データ点IPを用いずに、2つの特徴データ点FP1,FP2のみを用いてもよい。
【0052】
他の実施形態では、学習済みモデル34の構築に用いられる訓練データとして、
図6に示すように、所定の研磨モニタリング値に達した時点の特徴データ点FPを用いた場合は、ワークピースWの研磨時に学習済みモデル34に入力されるデータ点として、所定の研磨モニタリング値に達した時点の特徴データ点を用いてもよい。
【0053】
さらに他の実施形態では、学習済みモデル34の構築に用いられる訓練データとして、研磨開始から研磨終点までの時系列データ自体を用いた場合は、ワークピースWの研磨時に、研磨開始からの時系列データ自体を学習済みモデル34に入力して、研磨終点予測時間を出力してもよい。
【0054】
上述した実施形態によれば、機械学習により構築された学習済みモデル34に、研磨終点よりも前に現れる特徴データ点を含むデータ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を入力することで、研磨終点予測時間を学習済みモデル34から出力する。これにより、目標とする研磨終点よりも前に正確に研磨終点時間を予測して、目標とする研磨終点でワークピースの研磨を終了することができる。
【0055】
図8は、学習済みモデル34を用いてワークピースWの研磨終点を予測する方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
ステップ1では、学習用ワークピースが研磨モジュール1により研磨される。学習用ワークピースは、ワークピースWと同じ研磨条件で研磨される。研磨進捗測定器30は、トルク電流を学習用ワークピースの研磨中に測定する。
ステップ2では、研磨終点予測装置33は、学習用ワークピースの研磨進捗を示すトルク電流の測定値、すなわち研磨モニタリング値を研磨進捗測定器30から取得する。
【0056】
ステップ3では、研磨終点予測装置33は、学習用ワークピースの研磨時間に沿った研磨モニタリング値の変化(すなわちトルク電流の測定値の変化)を表す時系列データを生成する。
ステップ4では、研磨終点予測装置33は、時系列データに含まれるデータ点を用いて、適切な研磨終点予測時間が出力されるように機械学習する。より具体的には、研磨終点予測装置33は、研磨終点よりも前に現れる特徴データ点を含むデータ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間と、正解ラベルとしての研磨終点時間を含む訓練データを用いて機械学習する。複数の学習用ワークピースを研磨したときの複数の時系列データを用いて上記ステップ1~4を繰り返すことにより、学習済みモデル34が構築される(ステップ5)。
【0057】
ステップ6では、研磨対象のワークピースWが研磨モジュール1により研磨される。
ステップ7では、研磨終点予測装置33は、ワークピースWの研磨進捗を示すトルク電流の測定値、すなわち研磨モニタリング値を研磨進捗測定器30から取得する。
ステップ8では、研磨終点予測装置33は、ワークピースWの研磨時間に沿った研磨モニタリング値の変化(すなわちトルク電流の測定値の変化)を表す時系列データを生成する。
【0058】
ステップ9では、研磨終点予測装置33は、ワークピースWの研磨時に生成された時系列データに含まれるデータ点を学習済みモデル34に入力する。より具体的には、研磨終点予測装置33は、研磨終点よりも前に現れる特徴データ点を含むデータ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデル34に入力する。
ステップ10では、研磨終点予測装置33は、学習済みモデル34から研磨終点予測時間を出力する。
ステップ11では、研磨終点予測装置33は、出力された研磨終点予測時間を含む研磨終了信号を研磨制御部40に送る。
ステップ12では、研磨制御部40は、受信した研磨終了信号に基づいて、研磨モジュール1に指令を発して、研磨終点予測時間でワークピースWの研磨を終了させる。
【0059】
研磨終点予測装置33は、記憶装置33aに電気的に格納されたプログラムに含まれる命令に従って動作する。すなわち、研磨終点予測装置33は、ワークピースWの研磨時に、ワークピースWの研磨進捗を示す研磨モニタリング値を取得するステップと、ワークピースWの研磨時間に沿った研磨モニタリング値の変化を表す時系列データを生成するステップと、時系列データに含まれる特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデル34に入力し、学習済みモデル34から研磨終点予測時間を出力するステップを実行する。
【0060】
これらステップを研磨終点予測装置33に実行させるためのプログラムは、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、記録媒体を介して研磨終点予測装置33に提供される。または、プログラムは、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークを介して研磨終点予測装置33に入力されてもよい。
【0061】
上述した実施形態では、学習済みモデル34に構築に用いられる訓練データのデータ点、および研磨終点予測時間を出力するために学習済みモデル34に入力されるデータ点として、時系列データ上の研磨初期データ点IP、および特徴データ点FP1,FP2を用いているが、他の実施形態では、これらのデータ点に加えて、以下に説明する中間データ点を用いてもよい。
【0062】
図9に示すように、中間データ点は、時系列データに含まれる4つのデータ点DP1,DP2,DP3,DP4である。中間データ点DP1,DP2は、研磨初期データ点IPと特徴データ点FP1との間のデータ点である。中間データ点DP3,DP4は、2つの特徴データ点FP1,FP2の間のデータ点である。中間データ点DP1~DP4は、例えば、所定の時間間隔Bで分布する複数の研磨時間に対応する時系列データ上のデータ点である。
図9に示す中間データ点の数は4つであるが、中間データ点の数はこれに限られず、3つ以下、あるいは5つ以上であってもよい。
【0063】
この場合、学習済みモデル34の構築に使用される訓練データは、学習用ワークピースの研磨により生成された時系列データに含まれる、研磨終点までに現れる特徴データ点および中間データ点DP1~DP4を構成する研磨モニタリング値および研磨時間と、正解ラベルとしての研磨終点時間を含む。訓練データは、学習用ワークピースの初期研磨データ点IPを構成する研磨モニタリング値および研磨時間をさらに含んでもよい。
【0064】
また、研磨終点予測装置33は、研磨対象のワークピースWの研磨時に生成された研磨モニタリング値の時系列データに含まれる、研磨終点までに現れる特徴データ点および中間データ点DP1~DP4を構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデル34に入力して、学習済みモデル34から研磨終点予測時間を出力する。訓練データに研磨初期データ点IPが含まれる場合には、研磨終点予測装置33は、特徴データ点および中間データ点に加えて、ワークピースWの研磨時に生成された研磨モニタリング値の時系列データに含まれる研磨初期データ点IPを構成する研磨モニタリング値および研磨時間を学習済みモデル34に入力する。
【0065】
学習済みモデル34に構築に用いられる訓練データのデータ点、および研磨終点予測時間を出力するために学習済みモデル34に入力されるデータ点として、中間データ点DP1~DP4を用いることにより、時系列データの波形をより正確に特定することができる。したがって、研磨終点予測装置33は、学習済みモデル34から出力される研磨終点予測時間の精度を高めることができる。
【0066】
さらに他の実施形態では、学習済みモデル34の構築に使用される訓練データは、研磨モジュール1に使用されている研磨パッド2の総使用時間、研磨パッド2の種類、学習用ワークピースの研磨に使用されている研磨液の種類、および学習用ワークピースの種類のうち少なくとも1つの補助情報をさらに含んでもよい。研磨終点予測装置33は、特徴データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間と、上記補助情報と、正解ラベルとしての研磨終点時間を含む訓練データを用いて機械学習を実行し、学習済みモデル34を構築する。上述したように、訓練データは、初期研磨データ点および/または中間データ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間をさらに含んでもよい。
【0067】
この場合、研磨終点予測装置33は、研磨対象のワークピースWの研磨時に生成された研磨モニタリング値の時系列データに含まれる、少なくとも研磨終点までに現れる特徴データ点を含むデータ点を構成する研磨モニタリング値および研磨時間に加えて、上記補助情報を学習済みモデル34にさらに入力して、学習済みモデル34から研磨終点予測時間を出力する。より具体的には、研磨終点予測装置33は、研磨モジュール1に使用されている研磨パッド2の総使用時間、研磨パッド2の種類、ワークピースWの研磨に使用されている研磨液の種類、およびワークピースWの種類のうち少なくとも1つの補助情報をさらに学習済みモデル34に入力して、学習済みモデル34から研磨終点予測時間を出力する。
【0068】
補助情報である研磨モジュール1に使用されている研磨パッド2の総使用時間、研磨パッド2の種類、ワークピースの研磨に使用されている研磨液の種類、およびワークピースの種類は、いずれも時系列データ(すなわち、研磨モニタリング値の変化)に影響を及ぼすパラメータである。これらの補助情報を入力することにより、研磨終点予測装置33は、学習済みモデル34から出力される研磨終点予測時間の精度を高めることができる。特に、ワークピースの種類は、時系列データ上の特徴データ点の出現パターンとの関連性が高いため、ワークピースの種類を補助情報として用いることにより、学習用ワークピースが少数であっても、精度よく研磨終点時間を予測することができる。
【0069】
今まで説明した実施形態では、研磨モニタリング値は、ワークピースWと研磨パッド2との摩擦に起因して変化するトルク電流の測定値である。ワークピースWと研磨パッド2との間に発生する摩擦力は、ワークピースWと研磨パッド2との相対移動に伴って発生する。テーブル回転モータ18は、ワークピースWと研磨パッド2とを相対移動させるモータの一例である。ワークピースWと研磨パッド2との間に発生する摩擦力は、研磨ヘッド6がワークピースWを研磨パッド2に押し付けているときに研磨ヘッド6を回転させる研磨ヘッド回転モータ12に供給されるトルク電流にも変化を生じさせる。したがって、一実施形態では、
図10に示すように、研磨進捗測定器30は、研磨ヘッド回転モータ12に供給されるトルク電流を測定するトルク電流検出器(すなわち、研磨ヘッド回転トルク電流検出器)であってもよい。さらに、ワークピースWの研磨中に研磨ヘッド6をアーム揺動モータ16により揺動させる場合には、
図11に示すように、研磨進捗測定器30は、アーム揺動モータ16に供給されるトルク電流を測定するトルク電流検出器(すなわち、研磨ヘッド揺動トルク電流検出器)であってもよい。
【0070】
今まで説明した研磨終点検出システム7は、研磨モニタリング値としてトルク電流の測定値を使用しているが、研磨モニタリング値はトルク電流の測定値に限定されない。一実施形態では、
図12に示すように、研磨進捗測定器30は、ワークピースWの膜厚を測定する膜厚測定センサであり、研磨モニタリング値はワークピースWの膜厚指標値であってよい。
図12に示す実施形態では、膜厚測定センサは研磨テーブル3内に配置されており、研磨テーブル3とともに回転する。膜厚測定センサは、研磨パッド2上のワークピースWを横切りながら、ワークピースWの膜厚を測定するように構成される。膜厚測定センサの例としては、渦電流センサや光学式センサが挙げられる。このような膜厚測定センサを用いて膜厚を測定する構成は、公知のものを採用することができる。
【0071】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0072】
W ワークピース
1 研磨モジュール
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
3a テーブル軸
5 ヘッドシャフト
6 研磨ヘッド
7 研磨終点検出システム
10 トルク伝達機構
12 研磨ヘッド回転モータ
15 ヘッドアーム
16 アーム揺動モータ
18 テーブル回転モータ
20 研磨液供給ノズル
30 研磨進捗測定器
33 研磨終点予測装置
33a 記憶装置
33b 演算装置
34 学習済みモデル
40 研磨制御部
101 入力層
102 隠れ層
103 出力層