(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122825
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20230829BHJP
【FI】
G03G21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026562
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中井洋志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺一彦
【テーマコード(参考)】
2H134
【Fターム(参考)】
2H134GA01
2H134GA06
2H134GB02
2H134HD06
2H134HD17
2H134JA02
2H134KF03
2H134KH15
2H134LA01
(57)【要約】
【課題】像担持体のクリーニング性を大幅に向上させながら、中間転写体上のフィルミングを抑制し、長期にわたってクリーニング不良や画像濃度異常が抑制される画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体2、像担持体2の表面に潤滑剤21を塗布する潤滑剤塗布装置20、像担持体2に対向して配置された中間転写体3、を有する画像形成装置において、潤滑剤21は、少なくとも脂肪酸金属塩(A)、無機潤滑剤(B)及び無機微粒子(C)を含有し、潤滑剤21の長手方向端部における無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における無機微粒子(C)の含有量よりも多い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体、
前記像担持体の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置、
前記像担持体に対向して配置された中間転写体、を有する画像形成装置において、
前記潤滑剤は、少なくとも脂肪酸金属塩(A)、無機潤滑剤(B)及び無機微粒子(C)を含有し、
前記潤滑剤の長手方向端部における前記無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における前記無機微粒子(C)の含有量よりも多い、ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記潤滑剤の長手方向端部であって最大通紙幅より外側の非通紙領域における前記無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における前記無機微粒子(C)の含有量よりも多い、ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
最大通紙幅の外側の非通紙領域における前記潤滑剤の前記無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における前記無機微粒子(C)の含有量の1.2~2.0倍である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記無機微粒子(C)がアルミナを含有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記脂肪酸金属塩(A)がステアリン酸亜鉛を含有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記無機潤滑剤(B)が窒化ホウ素を含有する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等の像担持体上に静電荷による潜像を形成し、この静電潜像に対して帯電したトナー粒子を付着させ、可視像を形成している。トナーにより形成された可視像は、最終的に紙等の転写媒体に転写後、熱、圧力、溶剤気体等によって転写媒体に定着され、出力画像となる。
【0003】
これら電子写真方式による画像形成装置は、一般的にドラム形状やベルト形状の像担持体、一般には感光体を回転させつつ一様に帯電し、レーザー光等により像担持体上に潜像パターンを形成し、これを現像装置により可視像化して、転写媒体上に転写している。
【0004】
また、転写媒体へトナー像を転写した後の像担持体上には、転写されなかったトナー成分が残存する。これらの残存物がそのまま帯電工程に搬送されると、像担持体の均等な帯電を阻害することが有るため、一般的には、転写工程後に、像担持体上に残存するトナー成分等をクリーニング工程にて除去し、像担持体表面を十分に清浄な状態とした上で、像担持体の帯電が行われる。
【0005】
このように、像担持体表面は帯電、現像、転写、クリーニング等の各工程で、様々な物理的ストレスや電気的ストレスを受け、使用時間の経過に伴って表面状態が変化する。
これらのストレスのうちクリーニング工程での摩擦によるストレスは、像担持体を摩耗させるだけでなく、クリーニング部材の寿命をも低下させる。
【0006】
画像形成装置やこれに使用される部材の長寿命化は、ランニングコストの低減や廃棄物の低減による地球環境保護の観点から、市場での関心が高い。このようなトレンドから、近年では像担持体だけでなく周辺部材の長寿命化も求められてきており、クリーニング工程でのストレス低減は大きな課題となっている。
【0007】
また、近年では装置の小型化、低コスト化を目的として、接触帯電方式や近接帯電方式がより多く用いられるようになってきた。このうち近接帯電方式では、帯電部材と像担持体表面との微少な接触ムラ、或いは非接触とした場合には帯電部材と像担持体表面とのギャップ変動等により、像担持体表面を均一に帯電させることが困難であるため、近年では直流(DC)成分に交流(AC)成分を重畳した、AC重畳帯電方式が多く用いられている。
【0008】
AC成分を重畳した近接帯電方式は、装置の小型化及び高画質化を実現できると同時に、帯電均一性を保ちながら帯電部材と像担持体とを非接触に維持できることから、帯電部材自身の劣化も抑制することができる。そのため、近接帯電方式は、装置の小型化、高画質化、高耐久化に対しては非常に優位な技術である。
【0009】
しかしながら、像担持体が有機感光体(OPC)である場合には、AC重畳帯電のエネルギーが像担持体表面の樹脂鎖を切断し、機械的強度を低下させることで、像担持体の摩耗が著しく加速してしまうことが明らかとなってきた。
【0010】
また、AC重畳帯電は像担持体表面を活性化させるため、像担持体表面とトナーとの間の付着力が増加することから、高いクリーニング性の確保が困難である。
更に、近年では高画質の観点からトナーの小径化、球形化が進められており、高いクリーニング性が求められている。
【0011】
これらの課題を解消すべく、像担持体とクリーニング部材間の摩擦力を低減し、像担持体とクリーニング部材の両方を保護すること、並びにクリーニング性を向上させることを目的として、これまでにも各種潤滑剤(保護剤)や、潤滑成分の供給・膜形成方法について多くの提案がなされている。
【0012】
例えば、特許文献1では、感光体やクリーニングブレードの寿命を延ばすため、感光体表面にステアリン酸亜鉛を主成分とする固体潤滑剤を供給し、感光体表面に潤滑皮膜を形成することが提案されている。
【0013】
また、特許文献2等では、像担持体表面に脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を含む保護剤(潤滑剤)を供給することが提案されている。この文献では、ステアリン酸亜鉛単独使用時と比較してクリーニング性が大幅に向上しており、クリーニング部をすり抜けるトナーの量が格段に減っている。
【0014】
ところで、電子写真方式の画像形成装置に用いられる画像濃度調整や色ずれ補正制御では、ドラム状の感光体上や中間転写ベルト上に作成された検知用のトナーパターンの濃度や位置を光学センサで読み取って補正している。
【0015】
例えば、画像濃度調整(プロセスコントロール)では、反射型の光学センサの発光素子から発した光を中間転写ベルト表面のトナーが付着していない地肌部で反射させ、その反射光を受光素子で受光し、反射光に応じた受光量を得て光学センサの校正が行われる。
【0016】
次に、予め定められた形状の基準トナー像(濃度調整用トナーパターン)を感光体の表面に形成し、その基準トナー像を中間転写ベルト上に転写して、発光素子から発した光を基準トナー像で反射させ、その反射光を受光素子で受光し、反射光に応じた受光量を得る。
【0017】
中間転写ベルト表面の地肌部における受光量を基準値として、この基準値と基準トナー像における受光量とを比較し、基準トナー像の単位面積当たりにおけるトナー付着量を把握する。
【0018】
把握したトナー付着量に基づいてトナー付着量が所望のものとなるように、感光体の帯電電位、現像バイアス、感光体に対する光書き込み強度及び現像剤のトナー濃度の制御目標値などの作像条件を調整する。
【0019】
色ずれ補正では、主走査方向に対して角度を有するトナーパターンを形成し、主走査方向と副走査方向の位置ずれを検知して補正するようになっている。
【0020】
濃度調整や色ずれ補正をする際には、中間転写ベルト表面の地肌部において、所定の受光量が得られるように光学センサの出力を調整している。即ち、発光素子の出力(電流値)を調整して所定の受光量が得られるように光学センサの校正を行っている。
【0021】
脂肪酸金属塩と無機潤滑剤を含む潤滑剤を感光体に塗布した場合は、帯電工程における放電の影響を受けても潤滑性の低下が生じにくく、長期にわたって安定したクリーニング性能を維持することができる。だが、無機潤滑剤が感光体を介して中間転写ベルト表面に転移し、フィルミングを発生させやすいという課題がある。
【0022】
フィルミングが発生すると、ベルトの光沢度が低下し、地肌部においてのセンサ受光量が低下する。そしてこのような場合、発光素子の出力(電流値)を調整して所定の受光量が得られるようにするため、センサの発光素子の出力を上昇させる校正が行われる。
【0023】
即ち、フィルミングによって反射光量が低下するため、所定の受光量が得られるようにするためには、LED等の発光素子に流す電流値(順電流If)を上げなければならない。発光素子に流す電流値がセンサの出力値となる。
【0024】
センサの発光素子の出力値が上限を超えると、発光量を強くしたにもかかわらず、十分な受光光量が得られず、濃度調整や色ずれ補正ができなくなる。
【0025】
特に、中間転写ベルトの端部に位置する通紙外領域(非通紙領域とも言う)においては、通紙された紙によって無機潤滑剤が除去されないため、よりフィルミングが発生、蓄積しやすく、中間転写ベルト端部が曇ってしまう。これにより、トナーパターンを適切に検知できなくなるという問題があった。
【0026】
特許文献3には、像担持体である感光体の磨耗及びフィルミング、帯電部材の汚染、トナーすり抜けを抑制するために、疎水性有機化合物と、無機微粒子と、無機潤滑剤とを含む像担持体保護剤を用いることが開示されている。しかし、中間転写ベルト端部でフィルミングが蓄積しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
そこで本発明は、像担持体のクリーニング性を向上させながら、中間転写体上のフィルミングを抑制し、長期にわたってクリーニング不良や画像濃度異常が抑制される画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この課題は、像担持体、前記像担持体の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置、前記像担持体に対向して配置された中間転写体、を有する画像形成装置において、前記潤滑剤は、少なくとも脂肪酸金属塩(A)、無機潤滑剤(B)及び無機微粒子(C)を含有し、前記潤滑剤の長手方向端部における前記無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における前記無機微粒子(C)の含有量よりも多い、ことを特徴とする画像形成装置により解決される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、像担持体のクリーニング性を向上させながら、中間転写体上のフィルミングを抑制し、長期にわたってクリーニング不良や画像濃度異常が抑制される画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタの概要構成図である。
【
図2】ベルトクリーニング装置60の近傍の拡大図である。
【
図3】実施形態に係る光学センサユニット30の概要構成図である。
【
図4】本実施形態の画像形成装置における各作像ユニット構成例の概略を説明するための断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る潤滑剤部21を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る潤滑剤部21を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタの概要構成図である。このカラープリンタは、装置本体1内にそれぞれ像担持体である感光体ドラム2Y、2C、2M、2Kを有する4つの作像ユニット(プロセスカートリッジ)が並置されたいわゆるタンデム構成を有している。
【0032】
各作像ユニットの感光体ドラムに対向して、無端ベルトより成る像担持体で且つ中間転写体としての中間転写ベルト3を有する中間転写ユニットUが配置されている。中間転写ベルト3は、複数の支持ローラ4、5、6、7に回転可能に巻き掛けられている。支持ローラ4が駆動ローラとして反時計回り方向に駆動されることによって、中間転写ベルト3は矢印L方向に回転駆動される。
【0033】
中間転写ベルト3は多層構造となっており、ベース層を例えば伸びの少ないフッ素樹脂やPVDシート、ポリイミド系樹脂で作製し、表面をフッ素系樹脂等の平滑性のよいコート層で被覆する。符号8は中間転写ベルト3の表面に圧接して中間転写ベルト3にテンションを付与するテンションローラを示している。以下、中間転写ベルト3を単にベルトと称することがある。
【0034】
本実施形態では感光体ドラムの数、すなわち作像ユニットの数を4としているが、これに限定されず、5以上であってもよい。中間転写ベルト3を支持する支持ローラの数も、中間転写ベルト3を回転駆動するに最低限必要な2つ以上設けるものであればよい。
【0035】
感光体ドラム2Y、2C、2M、2Kは、それぞれ中間転写ベルト3の表面に当接しながら、時計回り方向に回転駆動される。例えば、最上流に位置する第1の感光体ドラム2Yは、帯電ローラ9によって所定の極性に帯電され、その帯電面に光書き込みユニット10から出射し、光変調されたレーザビームが照射される。これによって第1の感光体ドラム2Yに静電潜像が形成され、この静電潜像は現像装置11によってイエロートナー像として可視像化される。静電潜像がトナーによって可視像化された像を可視像、トナー像などとも称する。
【0036】
一次転写ローラ12に転写電圧が印加され、これによって感光体ドラム2Y上のトナー像が矢印L方向に回転駆動される中間転写ベルト3の表面に一次転写される。トナー像転写後の感光体ドラム2Y上に付着する転写残トナーは、クリーニング装置13によって除去される。
【0037】
上記と同様にして、第2~第4の感光体ドラム2C、2M、2K上にシアントナー像、マゼンタトナー像、ブラックトナー像がそれぞれ形成される。各トナー像がイエロートナー像の転写された中間転写ベルト3上に順次重ねて転写され、中間転写ベルト3上に4色の重ねトナー像が担持される。
【0038】
装置本体1の下部には給紙装置14が配置され、給紙装置14から送り出される記録媒体で且つ被転写体としての用紙Sは、画像形成装置内に設けられたレジストローラ対の回転によって、所定のタイミングで二次転写部へ向けて搬送される。
【0039】
中間転写ベルト3の支持ローラ4で支持される部分と、これに対向して配置された二次転写ローラ15との間が二次転写部となる。二次転写ローラ15に転写電圧が印加され、これによって中間転写ベルト3上の重ねトナー像が用紙Sに二次転写される。
【0040】
二次転写ローラ15は、中間転写ベルト3を介して支持ローラ4に対して押圧され、かつ中間転写ベルト3の表面に当接しながら、反時計回り方向に回転駆動される。
【0041】
トナー像を転写された用紙S(記録媒体)は、定着装置16に送られ、ここで熱と圧力の作用によってトナー像が用紙Sに定着される。定着装置16を出た用紙Sは、装置本体1の上面に形成された排紙トレイ17上に排出されてスタックされる。
【0042】
図1において、符号18は現像装置11にトナーを補給するためのトナーボトルを示している。トナーボトルは各色備えられる(18Y、18C、18M、18K)。
【0043】
二次転写後の中間転写ベルト3上には、転写しきれなかったトナーが残留する。この残留トナーを清掃するため、中間転写ユニットUにはクリーニング手段としてのベルトクリーニング装置60が設けられている。
【0044】
図2に示すように、ベルトクリーニング装置60は、中間転写ベルト3の表面に接するクリーニングブレード62と、クリーニングブレード62で掻き取ったトナーを外部へ搬送する搬送スクリュ64とを有している。クリーニングブレード62が中間転写ベルト3に接する部位の反対側にはバックアップローラ66が配置されている。
【0045】
二次転写部より中間転写ベルト3の回転方向下流側には、トナー像検知手段としての光学センサユニット30が配置されている。光学センサユニット30は、中間転写ベルト3における支持ローラ4への掛け回し箇所に対してそのおもて面側から所定の間隙を介して対向するように配置されている。
【0046】
図3に示すように、光学センサユニット30は、発光素子と受光素子とからなる光学センサ(以下、単に「センサ」ともいう)32を複数配置した構成となっている。すなわち、光学センサ32は各色の作像ユニットに対応して複数設けられている。
【0047】
Y、C、M、Kの各色の検知用トナー像(濃度調整用トナーパターン)の検出を極力短時間で実施可能なように、中間転写ベルト3のベルト幅方向(主走査方向)に沿って各色の光学センサ32Y、32C、32M、32Kが配設されている。
【0048】
発光素子としては、発光ダイオード(LED)を用いることができる。LEDの発光光量の調整は、LEDに流す順電流Ifで調整が可能であるが、発光光量の調整パラメータは順電流Ifに限らず、それ相当の調整パラメータであれば構わない。受光素子としては、フォトダイオード(PD)、フォトトランジスタ(PTr)及びフォトICなどを用いることができる。
【0049】
発光素子から照射された光が中間転写ベルト表面で反射し、受光素子はその反射光を受光して受光信号(受光量)を出力する。受光信号は電気信号に変換され、センサ測定値として画像形成装置内に設けられた制御手段に入力される。
【0050】
本実施形態に係るカラープリンタは、画像濃度調整モードと、色ずれ補正モードとを有している。
画像濃度調整モード(プロセスコントロール)時には、通常の画像形成動作とは別に、検知用トナー像としての濃度調整用トナーパターンYp、Cp、Mp、Kpが形成されて中間転写ベルト3上に転写される。濃度調整用トナーパターンは各センサによって検知され、検知結果に基づいて上述したような濃度調整が行われる。
【0051】
色ずれ補正モード時には、通常の画像形成動作とは別に、検知用トナー像としての色ずれ補正用トナーパターンが主走査方向に傾斜した状態で形成され、中間転写ベルト3上に転写される。色ずれ補正用トナーパターンは各センサによって検知され、検知結果に基づいて主走査方向及び副走査方向の位置ずれが補正される。センサ毎に、中間転写ベルトの移動方向に直列に連なるように形成された全色の色ずれ補正用トナーパターンを検知する方式としてもよい。
【0052】
一般的に、このようなトナーパターンは転写ベルトの両端部及び中央部に作成される場合が多い。本実施形態においては、このようなトナーパターンの少なくとも一つが中間転写ベルト端部の紙外領域(非通紙領域)に作成されることが好ましい。換言すると、本実施形態において、前記感光体の回転軸方向における記録媒体が搬送される最大領域を最大通紙幅とし、該最大通紙幅より外側の領域を非通紙領域としたとき、該非通紙領域において濃度調整用又は色ずれ補正用のトナーパターンを中間転写ベルト3に転写することが好ましい。この場合、記録媒体への画像形成を阻害することなく、画像濃度調整や色ずれ補正を行うことができる。
【0053】
図4は、本実施形態の画像形成装置における各作像ユニット構成例の概略を説明するための断面図である。
【0054】
感光体ドラム2の周りには、帯電ローラ9、現像装置11、クリーニング機構40、潤滑剤塗布装置20などが配置されており、これらが作像ユニット(感光体ユニット)を構成している。
【0055】
感光体ドラム2に対向して配設された潤滑剤塗布装置20は、感光体ドラム2の表面に潤滑剤を塗布する装置であり、潤滑剤としての潤滑剤部21、発泡体ローラからなる潤滑剤供給部材22、押圧力付与機構23、潤滑層形成機構24等から主に構成される。
【0056】
潤滑剤部21は、押圧力付与機構23からの押圧力により、潤滑剤供給部材22に接する。潤滑剤供給部材22は感光体ドラム2と線速差をもって回転して摺擦し、この際に潤滑剤供給部材22の表面に保持された潤滑剤を感光体表面に供給する。潤滑剤供給部材22の長手方向密度は均一で良いため、潤滑剤供給部材22の製造が簡単になり、低コスト化が可能である。
【0057】
クリーニング機構40は、クリーニング部材41、当該クリーニング部材を感光体ドラム2に対して押圧する押圧手段42等から主に構成される。感光体ドラム2の表面には、転写工程後に部分的に劣化した潤滑剤やトナー成分等が残存するため、クリーニング部材41により表面残存物が清掃される。
図4において、クリーニング部材41は、いわゆるカウンタータイプ(リーディングタイプ)に類する角度で当接されている。
【0058】
クリーニング機構40により表面の残留トナーや劣化した潤滑剤が取り除かれ、感光体表面へは潤滑剤供給部材22から潤滑剤が供給される。潤滑剤が感光体表面に供給され、潤滑層形成機構24により皮膜状の潤滑層が形成される。
【0059】
潤滑層が形成された感光体は、帯電後、レーザーLなどの露光によって静電潜像が形成される。次いで現像装置11により現像されて可視像化され、感光体ユニット外の一次転写ローラ12などにより中間転写ベルト3へ転写される。
【0060】
また
図4に示すように、現像装置11は、感光体ドラム2に近接対向して配設された現像ローラ51と、現像ローラ51上の現像剤を一定の高さに規制する現像剤規制部材であるドクターブレード54とを有している。また、現像装置11は、互いに対向するように配設され、現像剤を攪拌するとともに現像ローラ51に現像剤を供給するための第1搬送スクリュ52及び第2搬送スクリュ53と、第1搬送スクリュ52と第2搬送スクリュ53との間に設けられた仕切り壁55とを有している。また、現像装置11は、各色のトナーを収容したトナーボトル56と、直流成分の現像バイアスを現像ローラ51に印加するバイアス印加手段等とを有している。現像装置11は、感光体ドラム2の回転方向において潤滑剤塗布装置20と転写ニップ(一次転写ニップ)との間に配置されており、トナーとキャリアからなる二成分現像剤を担持する現像ローラ51を備えている。
【0061】
現像ローラ51は、その表面に現像剤を担持する現像剤担持体(現像スリーブ)を有している。バイアス印加手段は現像スリーブに、感光体ドラム2の、露光部と非露光部との間の適当な大きさの現像バイアスを印加する。
【0062】
次に、本実施形態における潤滑剤部21について説明する。本実施形態では、感光体表面のクリーニング性を向上させるための潤滑剤の使用を前提としている。本実施形態における潤滑剤部21は、潤滑剤からなる又は潤滑剤を含むものであり、形状はブロック状であり、感光体の回転軸方向に延在している。
【0063】
潤滑剤部21の材料としては、均一に素早く感光体表面に延展し、感光体表面を被覆すると同時に、ブレードを保護するために潤滑性を付与する働きを持つ材料が好ましい。具体的には無機潤滑剤、脂肪酸金属塩、ワックス類、オイル類、フッ素樹脂等が挙げられる。本実施形態において、潤滑剤部21は脂肪酸金属塩(A)と無機潤滑剤(B)を含み、脂肪酸金属塩(A)と無機潤滑剤(B)を混合して用いる。
【0064】
本実施形態において、潤滑剤部21の形態としては、供給量の調整が容易であること、装置の小型化が図れること等から、ブロック状に成形されたものを用いる。本実施形態における潤滑剤部21を潤滑剤バー、潤滑剤ブロックなどと称してもよい。なお、潤滑剤部21の形態の一例は、例えば
図4に示されている。
【0065】
潤滑剤部21の成形手段としては、材料を溶融して型に流し込んだ後に冷却固化させる溶融成形、粉体材料をそのまま圧縮して成形品を得る圧縮成形等、公知の方法を用いることができるが、本実施形態においては硬度の調整が容易であることからより弱い力で研削でき、感光体上に供給できる点で、好ましくは圧縮成形が用いられる。
【0066】
本実施形態における脂肪酸金属塩(A)の例としては、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸鉄、オレイン酸コバルト、オレイン酸銅、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸コバルト、パルミチン酸鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、カプリル酸鉛、カプリン酸鉛、リノレン酸亜鉛、リノレン酸コバルト、リノレン酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸カドミウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸リチウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等があるが、これに限るものではない。また、これらの混合物を使用してもよい。本実施形態においては、中でもステアリン酸亜鉛が特に感光体への成膜性に優れることから、潤滑剤の主成分として使用することが好ましい。すなわち、潤滑剤中の脂肪酸金属塩(A)がステアリン酸亜鉛を含有すると好ましく、これにより、ベルトフィルミング抑制効果が増大される。なお、本実施形態でいう主成分とは、潤滑剤全体に占める重量比が50%よりも多い成分を意味する。
【0067】
ただし、ステアリン酸亜鉛は均一成膜性に優れる反面、帯電のストレスによって変質しやすい。通常の作像プロセスでは転写後の残トナーを感光体上から除去する手段としてブレードクリーニング方式が採用されているが、ステアリン酸亜鉛を使用すると、帯電ハザードが加わった際にステアリン酸亜鉛が変質して潤滑性が低下し、ブレードからトナーがすり抜けやすくなる傾向にある。クリーニングブレード62をトナーがすり抜けると、そのトナーが直接画像に現れたり、帯電ローラ9の汚染をさらに加速したりしてしまう。このトナーすり抜けは、トナーの粒径が小さいほど、帯電ハザードが強くなるほど顕著に表れる。同時に、トナーなどのすり抜けが多いとクリーニングブレード62を摩耗させてしまい、作像ユニットが短寿命になってしまう。
【0068】
以上のことから、本実施形態では脂肪酸金属塩(A)と無機潤滑剤(B)を混合して用いる。
【0069】
本実施形態における無機潤滑剤(B)とは、自身が劈開して潤滑する、或いは内部滑りを起こす無機化合物のことを指す。具体的な物質例としては、タルク・マイカ・窒化ホウ素・二硫化モリブデン・二硫化タングステン・カオリン・スメクタイト・ハイドロタルサイト化合物・フッ化カルシウム・グラファイト・板状アルミナ・セリサイト・合成マイカ等があるがこれに限るものではない。中でも窒化ホウ素は、原子がしっかりと組み合った六角網面が広い間隔で重なり、層間に働く力は弱いファンデルワールス力のみであるため、容易に劈開、潤滑することから、本実施形態において最も好ましい。すなわち、潤滑剤中の無機潤滑剤(B)が窒化ホウ素を含有すると好ましく、これにより感光体クリーニング性が向上する。
なお、これらの無機潤滑剤は疎水性付与等の目的で、必要に応じて表面処理がなされていても良い。
【0070】
こうした潤滑剤は感光体表面に塗布されるが、作像プロセスを経て感光体表面から中間転写ベルト3上に少量ずつ転移してしまうことが分かっている。また、脂肪酸金属塩(A)と無機潤滑剤(B)を含む潤滑剤を感光体表面に塗布した場合、帯電工程における放電の影響を受けても潤滑性の低下が生じにくく、長期にわたって安定したクリーニング性能を維持できる。だが、特に無機潤滑剤(B)が感光体ドラム2を介して中間転写ベルト3上に転移しやすく、かつ除去されにくいため、経時でベルトフィルミングが増長する。
【0071】
また、この現象は中間転写ベルト3の両端部にあたる非通紙領域で特に顕著となる。その理由は、通紙領域では用紙Sが無機潤滑剤を除去する効果をもたらすが、非通紙領域ではその効果が得られないためである。
このようなフィルミングが悪化した場合、中間転写ベルト3の光沢度が低下してトナーパターンを適切に検知できず、濃度調整や色ずれ補正ができなくなってしまう。
【0072】
そこで本発明の実施形態に係る画像形成装置では、潤滑剤は、脂肪酸金属塩(A)と無機潤滑剤(B)に加えて更に無機微粒子(C)を含有している。そして、潤滑剤の長手方向端部における無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における無機微粒子(C)の含有量よりも多い。無機潤滑剤(B)は感光体ドラム2を経由して中間転写ベルト3に移行しやすいが、無機微粒子(C)は無機潤滑剤(B)を研磨する作用があるため、その含有量が多いほど無機潤滑剤(B)のベルトへの堆積が抑制される。よって、感光体ドラム2のクリーニング性を向上させながら、ベルトの長手方向端部におけるフィルミングを抑制し、長期にわたってクリーニング不良やトナーパターン(プロコンパターン)の誤検知を抑制することができる。
【0073】
また、潤滑剤の長手方向端部であって最大通紙幅より外側の非通紙領域における無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における無機微粒子(C)の含有量よりも多い(
図5参照)。無機微粒子(C)の含有量を非通紙領域においてのみ中央部よりも多くすることで、フィルミングの抑制及びトナーパターンの誤検知抑制に加えて、帯電ローラ9の端部汚れを軽減することができる。
【0074】
本実施形態における無機微粒子(C)とは、物体と物体の間に挟まってコロの役割はするものの、その物質自身での内部滑りや、劈開を起こさない粒子を指す。無機微粒子(C)の具体的な物質例としては、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム等があるが、これらに限られない。中でもアルミナは特に良好な研磨作用を有するため、本実施形態では特に好ましく用いられ、無機微粒子(C)はアルミナを含有する。潤滑剤中の無機微粒子(C)としてアルミナを用いることで、ベルトフィルミング抑制効果が増大される。なお、本実施形態においてはこれら物質を適宜複数混合して使用してもよい。
【0075】
また、無機微粒子(C)の含有量の好ましい範囲は、無機微粒子(C)の種類や画像形成装置のプロセス条件によって若干変化するが、一般的には無機微粒子(C)添加前の潤滑剤100重量部に対して、1~10重量部程度が好ましく、特に2~8重量部程度が好ましい。本実施形態においては、潤滑剤の長手方向中央部及び端部における無機微粒子(C)の含有量がこの範囲内であることが好ましい。1重量部以下であると無機微粒子(C)の研磨作用が不十分となる場合があり、また10重量部以上であると感光体表面に傷を発生させる場合があり、感光体のクリーニング性がやや悪化する。
【0076】
更に本実施形態においては、最大通紙幅の外側の非通紙領域におけるブロック状の潤滑剤の無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における無機微粒子(C)の含有量の1.2~2.0倍、特に1.4~1.8倍である。これにより、トナーパターン(プロコンパターン)が書き込まれる非通紙領域のフィルミングが大幅に抑制される。同時に、通紙領域でも無機潤滑剤(B)及び無機微粒子(C)が適正な範囲で含まれることで、感光体上のクリーニング性が十分に確保され、感光体損傷などの副作用なく帯電ローラ9の汚れやクリーニング不良に伴う異常画像を防止することが可能となる。すなわち、ベルトフィルミング、感光体クリーニング性、帯電ローラ端部汚れの全てを改善することができ、副作用も少ない。
【0077】
上記した範囲外でも本発明の効果は得られるが、2.0倍より多い場合は長手方向端部の潤滑剤消費量が長手方向中央部よりも多くなり、帯電ローラ9の端部汚れがやや悪くなる。また1.2倍未満であると、中間転写ベルト3の長手方向端部のフィルミング抑制効果がやや弱く、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
【0078】
図5及び
図6は、本発明の実施形態に係る潤滑剤部21を示す概略図である。
図5に示すように、二次転写ベルト3の幅が347mmであるのに対して、最大通紙幅は329mm(A3ノビ)である。このため、感光体ドラム2に塗布される潤滑剤の幅348mmのうち、少なくとも最大通紙幅よりも外側の非通紙領域である両側9.5mm部分で無機微粒子(C)の含有量を変化させている。また、
図6の実施形態では、感光体ドラム2に塗布される潤滑剤の幅348mmのうち、潤滑剤の長手方向端部の両側12.5mm部分で無機微粒子(C)の含有量を変化させている。すなわち、潤滑剤の長手方向端部における無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における無機微粒子(C)の含有量よりも多い。
【0079】
また、トナーパターン(プロコンパターン)は、最大通紙幅外側の非通紙領域であるベルト両端部から9mmの領域に書き込まれており、このパターンをセンサで読み取ることにより濃度調整及び色ずれ補正を行っている。
【0080】
<潤滑剤処方例>
表1は、脂肪酸金属塩(A)、無機潤滑剤(B)及び無機微粒子(C)を有する潤滑剤の様々な組成を示す。
処方1~14に示される組成物を表中の混合比(重量基準)に従って混合した。混合のために、ワンダーブレンダー WB-1(大阪ケミカル株式会社製)を用い、25000rpmの回転速度で10秒間の混合を2度行い、試料の粉体混合物を得た。なお、画像形成装置として、リコー製複写機MPC5503を使用した。
【0081】
【0082】
<実施例1~11及び比較例1~3>
次に、表2に示す潤滑剤処方の組合せを用いて混合物を深さ20mm×幅9mm×長さ348mmのアルミニウム製の金型に投入した。このとき、実施例1~9では長手方向両端からそれぞれ9.5mmの領域(
図5参照)を長手方向中央部と区切り、実施例10及び11では長手方向両端からそれぞれ12.5mmの領域(
図6参照)を長手方向中央部と区切れるために、仕切り部材を用い、表2に示すように中央部と両端部とで異なる処方の組成物を金型に投入した。例えば実施例1では、中央部のために処方1を用い、両端のために処方2を用いたため、無機微粒子(C)の含有量は中央部で5重量部、端部で9重量部であり、無機微粒子(C)の含有量(両端部/中央部)は1.8である。これら組成物を投入した後仕切り部材を取り除き、充填物の高さが8mmとなるように押し型で圧縮して、粉末圧密体を成形した。また、比較例1では仕切り部材を用いず長手方向で全て同じ処方を用いた。
【0083】
なお、このとき粉末圧密体の充填率が90%となるよう、金型に投入する粉体の重量を調整した。即ち、投入する粉体の重量=金型の体積×粉体の真比重×0.9である。
【0084】
【0085】
成形後、固形物を型から外して金属製支持体に両面テープで貼り付け、実施例1~11及び比較例1~3の潤滑剤バーを作製した。
潤滑剤部21であるこれらの潤滑剤バーをリコー製複写機MPC5503の全ステーションの感光体ユニットに搭載し、かつ加速評価のため潤滑剤部21の消費量が標準条件の2倍となるように押圧力付与機構23の押圧力を調整した後、以下のような評価を実施した。
なお、この複写機の感光体ユニットの構成は
図4と略同等である。
【0086】
<評価>
1.中間転写ベルトフィルミング
上記のように構成した複写機を用いて、常温常湿環境下にてA4版、フルカラーモードにて各色画像面積率5%チャートを用いて12万枚連続通紙を行い、6万枚と12万枚時点での中間転写ベルト3の非通紙領域での光沢度(20°)を測定した。中間転写ベルト3上にフィルミングが発生するとベルトが曇り、光沢度の値が低下する。当初のベルトの光沢度は約160であり、凡そ80以下の値になるとプロセスコントロールに支障をきたす。なお、光沢度計としては日本電色社製PG-1を用いた。
【0087】
2.帯電ローラ汚れ
12万枚連続通紙後の感光体ユニットを取り出して帯電ローラ9の端部汚れを目視にて観察し、端部汚れが少ない順(良い順)に5→1として5段階のランク付けを行った。表2から分かるように、実施例1~11では端部汚れランクは3~5に分類され、いずれにおいても帯電ローラ9の端部汚れに起因する画像上の不具合は発生しなかった。
【0088】
3.感光体クリーニング性
1の中間転写ベルトフィルミング評価を実施した後に、潤滑剤部21の消費量が標準条件となるように押圧力付与機構23の押圧力を戻し、複写機を10℃、15%RHの低温低湿環境下に設置し、転写電流を切った状態でA4版、縦帯チャートを連続100枚入力して、感光体上クリーニング不良の有無を確認した。クリーニング不良が発生した場合は画像上に縦スジが発生するため、目視にて最初に縦スジ画像が確認できた時点の枚数を記録した。
【0089】
表3は、実施例1~11及び比較例1~3の結果を示している。
【0090】
【0091】
表3から分かるように、実施例1~11では、中間転写ベルト3の非通紙領域においてもフィルミングが悪化せず、かつ感光体クリーニング性と帯電ローラの端部汚れも良好なレベルを維持できた。
【0092】
特に実施例1~2と実施例10~11の比較から、無機微粒子(C)の含有量を最大通紙幅より外側の非通紙領域でのみ長手方向中央部よりも多くすることで、ベルトフィルミングと帯電ローラ端部汚れの両方を特に改善できることが分かった。
【0093】
また、実施例1~3と実施例4~6の比較から、最大通紙幅より外側の非通紙領域における潤滑剤の無機微粒子(C)の含有量を、長手方向中央部における無機微粒子(C)の含有量の1.2~2.0倍とすることで、ベルトフィルミング、感光体クリーニング性、帯電ローラ端部汚れの全てを良好なレベルに維持できることが分かった。
【0094】
さらに、実施例1と実施例7~9の比較から、潤滑剤中の脂肪酸金属塩(A)としてステアリン酸亜鉛を、無機潤滑剤(B)として窒化ホウ素を、無機微粒子(C)としてアルミナを用いることで、本発明の効果が増大されることが分かった。
【0095】
比較例1では、潤滑剤長手方向における無機微粒子(C)の含有量が同じであり、比較例2では両端部における無機微粒子(C)の含有量が中央部における無機微粒子(C)の含有量よりも少ないため、非通紙領域でのベルトフィルミング抑制効果が得られなかった。
【0096】
比較例3では、潤滑剤長手方向の全ての領域で無機潤滑剤(B)を含まないため、ベルトフィルミング抑制効果は良好だが、感光体クリーニング性と帯電ローラ端部汚れランクが悪かった。
【0097】
なお、実施例5と実施例6の比較では、潤滑剤の無機微粒子(C)の含有量が異なっていても、ベルトフィルミング抑制効果は両端部/中央部の含有比率によって決まっている。これは、無機微粒子(C)の含有量を変えることで潤滑剤の消費量自体が変化するためであり、実施例5と実施例6では潤滑剤の消費量を揃えるために押圧力が異なっている。そのため本発明では、無機微粒子(C)の含有量の絶対値ではなく、潤滑剤長手方向の中央部と端部における無機微粒子(C)の含有量の割合が重要である。
【0098】
以上のように、本発明の実施形態では、感光体ドラム2、感光体ドラム2の表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置20、感光体ドラム2に対向して配置された中間転写ベルト3、を有する画像形成装置において、潤滑剤は、少なくとも脂肪酸金属塩(A)、無機潤滑剤(B)及び無機微粒子(C)を含有し、潤滑剤の長手方向端部における無機微粒子(C)の含有量が、長手方向中央部における前記無機微粒子(C)の含有量よりも多い。これにより、感光体ドラム2のクリーニング性を大幅に向上させながら、中間転写ベルト3上のフィルミングを抑制し、長期にわたってクリーニング不良や画像濃度異常が抑制される画像形成装置が得られる。
【符号の説明】
【0099】
2Y、2C、2M、2K 感光体ドラム(像担持体)
3 中間転写ベルト(中間転写体)
20 潤滑剤塗布装置
21 潤滑剤部(潤滑剤)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特公昭51-22380号公報
【特許文献2】特開2009-282160号公報
【特許文献3】特開2009-186610号公報