IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大同メタル工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

<>
  • 特開-摩擦帯電発電機 図1
  • 特開-摩擦帯電発電機 図2
  • 特開-摩擦帯電発電機 図3
  • 特開-摩擦帯電発電機 図4
  • 特開-摩擦帯電発電機 図5
  • 特開-摩擦帯電発電機 図6
  • 特開-摩擦帯電発電機 図7
  • 特開-摩擦帯電発電機 図8
  • 特開-摩擦帯電発電機 図9
  • 特開-摩擦帯電発電機 図10
  • 特開-摩擦帯電発電機 図11
  • 特開-摩擦帯電発電機 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012284
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】摩擦帯電発電機
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/04 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
H02N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115825
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 豪男
(72)【発明者】
【氏名】城谷 友保
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲ジュン▼豪
(72)【発明者】
【氏名】ハレビル ラマスワミー シュリハシャ
(72)【発明者】
【氏名】高 莽
(57)【要約】
【課題】電極の構造を簡素化し活用範囲を広げることができる摩擦帯電発電機を提供する。
【解決手段】摩擦帯電発電機11は、グラウンドに接続されて、特定方向に連続する導電体で形成される電極面22aを有する電極22と、電極22から分離され、電極面22aに向き合わせられる位置で特定方向に変位自在に支持されて、第1素材で形成され特定方向に並べられる第1接触面16aを有する第1帯電体16と、特定方向に並べられながら電極面22aに固定され、第1素材に接触すると帯電する第2素材で形成されて、第1帯電体16の変位に応じて第1接触面16aに接触し第1接触面16aから離隔する第2接触面23aを有する第2帯電体23とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラウンドに接続されて、特定方向に連続する導電体で形成される電極面を有する電極と、
前記電極から分離され、前記電極面に向き合わせられる位置で前記特定方向に変位自在に支持されて、第1素材で形成され前記特定方向に並べられる第1接触面を有する第1帯電体と、
前記特定方向に並べられながら前記電極面に固定され、前記第1素材に接触すると帯電する第2素材で形成されて、前記第1帯電体の変位に応じて前記第1接触面に接触し前記第1接触面から離隔する第2接触面を有する第2帯電体と、
を備えることを特徴とする摩擦帯電発電機。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦帯電発電機において、前記第2接触面は、前記特定方向に等間隔で配置される前記第1接触面に同位相で配列されることを特徴とする摩擦帯電発電機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の摩擦帯電発電機において、前記第1帯電体は転がりながら前記電極面および前記第2帯電体に相次いで前記第1接触面を接触させる球体から構成されることを特徴とする摩擦帯電発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定方向に変位自在に支持されて、第1素材で形成され特定方向に並べられる第1接触面を有する第1帯電体と、特定方向に並べられ、第1素材に接触すると帯電する第2素材で形成されて、第1帯電体の変位に応じて第1接触面に接触し第1接触面から離隔する第2接触面を有する第2帯電体とを備える摩擦帯電発電機に関する。
【0002】
なお、摩擦帯電は、2つの物質が接触した際に発生する接触帯電と、2つの物質が接触状態から分離した際に発生する剥離帯電と、物質が導電体の場合に発生する誘導帯電とを含む。
【背景技術】
【0003】
非特許文献1は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)で形成される第1帯電体と、FEPに接触すると帯電するアルミニウムで形成される第2帯電体とを有する摩擦帯電発電機を開示する。第1帯電体は1列に平行片を並べた格子形状に形作られる。第2帯電体は第1電極および第2電極に分割される。第1電極および第2電極は相互に噛み合う櫛歯形状に形作られる。第1電極の歯片と第2電極の歯片とは交互に一列に並ぶ。第1帯電体が平行片の列方向に移動すると、平行片は第1電極および第2電極に交互に接触する。第1電極および第2電極で交互に発電は実現される。非特許文献1では、第1電極および第2電極は相互に接続される。第1電極および第2電極の間に負荷は接続される。負荷には第1方向および第1方向に反対向きの第2方向から交互に電圧は作用する(電流は流通する)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yannan Xie外,「Grating-Structured Freestanding Triboelectric-Layer Nanogenerator for Harvesting Mechanical Energy at 85% Total Conversion Efficiency」,ADVANCED MATERIALS,ドイツ,Wiley Online Library,2014年8月25日,第26巻,p.6599-6607
【非特許文献2】Daehwan Choi外,「A Self-Powered Smart Roller-Bearing Based on a Triboelectri Nanogenerator for Measurement of Rotation Movement」,ADVANCED MATERIALS TECHNOLOGIES,ドイツ,Wiley Online Library,2018年12月14日,第3巻,1800219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、特定方向に連続する絶縁層の表面に第1電極および第2電極は形成される。第1電極および第2電極の配列にあたって絶縁層で第1電極および第2電極は絶縁される。どうしても絶縁層の形成が避けられない。
【0006】
本発明は、電極の構造を簡素化し活用範囲を広げることができる摩擦帯電発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態によれば、グラウンドに接続されて、特定方向に連続する導電体で形成される電極面を有する電極と、前記電極から分離され、前記電極面に向き合わせられる位置で前記特定方向に変位自在に支持されて、第1素材で形成され前記特定方向に並べられる第1接触面を有する第1帯電体と、前記特定方向に並べられながら前記電極面に固定され、前記第1素材に接触すると帯電する第2素材で形成されて、前記第1帯電体の変位に応じて前記第1接触面に接触し前記第1接触面から離隔する第2接触面を有する第2帯電体とを備える摩擦帯電発電機は提供される。
【0008】
第1接触面と第2接触面との相対変位に基づき摩擦帯電は実現される。電極およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の取り出しにあたって電極面に第2帯電体は固定される。連続する導電体はそのまま電極面に利用されることができる。第2帯電体の形成にあたって特定方向に連続する絶縁層の形成は省略されることができる。電極の構造は簡素化されることができる。摩擦帯電発電機の活用領域は広げられることができる。
【0009】
前記第2接触面は、前記特定方向に等間隔で配置される前記第1接触面に同位相で配列されてもよい。第2接触面で第1接触面との相対位置は同期することから、1電極から出力される電圧は増幅されることができる。
【0010】
前記第1帯電体は転がりながら前記電極面および前記第2帯電体に相次いで前記第1接触面を接触させる球体から構成されてもよい。第1接触面の周囲で球体は第2帯電体または電極面に向き合わせられる。こうした向き合わせに応じて第2帯電体または電極内で電荷が生じる。電荷の発生に応じて電極およびグラウンドの間で電圧が作用する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように発明によれば、電極の構造を簡素化し活用範囲を広げることができる摩擦帯電発電機は提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る摩擦帯電発電機の構成を示す概念図である。
図2】第2軌道盤の平面図である。
図3】摩擦帯電発電機の動作を示す概念図である。
図4】電極から出力されオシロスコープで確認された電圧波形を示すグラフである。
図5】第1実施形態の変形例に係る摩擦帯電発電機の構成を示す概念図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る摩擦帯電発電機の構成を示す概念図である。
図7】第2軌道輪の斜視図である。
図8】第2実施形態の変形例に係る摩擦帯電発電機の構成を示す概念図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る摩擦帯電発電機の構成を示す概念図である。
図10】電極から出力されオシロスコープで確認された電圧波形を示すグラフである。
図11】本発明の第4実施形態に係る摩擦帯電発電機の構成を示す概念図である。
図12】軸受(第2半体)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の第1実施形態に係る摩擦帯電発電機の構成を概略的に示す。摩擦帯電発電機11はいわゆるスラストボールベアリングの構造を有する。すなわち、摩擦帯電発電機11は、回転体12に固定される環状の第1軌道盤13と、第1軌道盤13に同軸に第1軌道盤13に向き合わせられて、支持体14に固定される環状の第2軌道盤15と、第1軌道盤13および第2軌道盤15の間に挟まれる転動体としての複数のボール(球体)16と、回転体12の回転軸線12a回りに等間隔にボール16を保持する保持器17とを備える。回転体12は回転軸線12a回りに回転自在に支持体14に支持されることができる。回転軸線12aの軸方向に回転体12に作用する荷重は第1軌道盤13、ボール16および第2軌道盤15経由で支持体14に受け止められることができる。
【0015】
摩擦帯電発電機11は、回転軸線12a回りで回転体12に駆動力を付与する駆動源18を備える。駆動力に応じて回転軸線12a回りで回転体12は回転する。回転体12の回転に伴ってボール16は第2軌道盤15上を転がる。第2軌道盤15とボール16との間で相対変位は引き起こされる。
【0016】
第1軌道盤13には、上方からボール16に接してボール16の軌道を案内する軌道溝19が形成される。軌道溝19は回転軸線12aに同軸に環状に連続する。軌道溝19にボール16は受け入れられる。回転体12の回転時、ボール16は軌道溝19に沿って転がる。第1軌道盤13に対して個々のボール16の接触位置は変位する。
【0017】
図2に示されるように、第2軌道盤15には、下方からボール16を支持してボール16の軌道を案内する軌道溝21が形成される。軌道溝21は回転軸線12aに同軸に環状に連続する。軌道溝21にボール16は受け止められる。回転体12の回転時、ボール16は軌道溝21に沿って転がる。第2軌道盤15に対して個々のボール16の接触位置は変位する。
【0018】
第2軌道盤15は、グラウンドに接続されて、回転体12の回転軸線12a回りに連続する電極22を備える。第2軌道盤15の鋼本体は電極22として機能する。電極22は、回転軸線12a回りに連続する導電体で形成される電極面22aを提供する。電極面22aは回転軸線12aに同軸に環状に広がる。ボール16は電極面22a上を転がる。鋼本体は一般の軌道盤と同様に構成されることができる。
【0019】
ボール16は第1素材で形成される。ボール16は回転軸線12aに同軸に環状に並べられる。ボール16は、電極22から分離されながら、電極面22aに向き合わせられる位置で、回転軸線12aに同軸に周方向に変位自在に第2軌道盤15に支持される。個々のボール16は第1帯電体として機能する。第1素材には例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられる。ボール16には第2軌道盤15との接点で第1接触面が確立される。ボール16はPTFEといった絶縁体のほか導電体から形成されてもよい。
【0020】
電極22の電極面22aには第2帯電体23が固定される。第2帯電体23はボール16の転がりを受け止める第2接触面23aを形成する。第2接触面23aは回転軸線12aに同軸に環状に並べられる。第2接触面23aは回転軸線12a回りで等間隔に配置される。こうして第2軌道盤15の表面には回転軸線12a回りに電極面22aおよび第2接触面23aは交互に配列される。第2接触面23aは、回転軸線12a回りに等間隔で配置される第1接触面に同位相で配列される。
【0021】
第2帯電体23は、第1素材に接触すると帯電する第2素材で形成される。ここでは、第2素材にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)が用いられる。DLCは電極面22aに成膜される。DLCの膜厚は0.1~10.0[μm]に設定されればよい。個々の第2帯電体23は電極面22aを覆う。回転体12が回転すると、ボール16は第2軌道盤15上を転がり電極面22aおよび第2接触面23aに相次いで第1接触面を接触させる。
【0022】
摩擦帯電発電機11は、第2軌道盤15に接続されて、グラウンドに落とされる導電線24をさらに備える。導電線24には例えば電圧計25が接続されることができる。電圧計25はボール16の転がりで生じる電圧を計測することができる。
【0023】
次に本実施形態の動作を説明する。回転体12が回転すると、第2軌道盤15上でボール16は転がる。第2軌道盤15に対して個々のボール16の接触位置は変位する。図3(a)に示されるように、ボール16の第1接触面16aが第2帯電体23の第2接触面23aに接触すると、第2接触面23aに沿って第2帯電体23内にプラスの電荷が生じる。このとき、第1接触面16aの周囲でボール16は第2接触面23aに向き合わせられる。向き合わせに応じて第2帯電体23内でプラスの電荷は生じる。第2帯電体23の電荷に応じて電極22およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の大きさは第2接触面23aに投影されるボール16の面積に応じて変化する。
【0024】
図3(b)に示されるように、ボール16の第1接触面16aが第2帯電体23の第2接触面23aから離隔し電極面22aに接触すると、電極面22aに沿って電極22内にプラスの電荷が生じる。このとき、第1接触面16aの周囲でボール16は電極面22aに向き合わせられる。向き合わせに応じて電極22内でプラスの電荷は生じる。電荷の確立に応じて電極22およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の大きさは電極面22aに投影されるボール16の面積に応じて変化する。
【0025】
本実施形態では、第1接触面16aと第2接触面23aとの相対変位に基づき摩擦帯電は実現される。電極22およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の取り出しにあたって電極面22aに第2帯電体23は固定される。連続する導電体はそのまま電極面22aに利用されることができる。第2帯電体23の形成にあたって特定方向に連続する絶縁層の形成は省略されることができる。電極22の構造は簡素化されることができる。摩擦帯電発電機11の活用領域は広げられることができる。
【0026】
摩擦帯電発電機11では、第2接触面23aは、回転軸線12a回りに等間隔で配置される第1接触面16aに同位相で配列される。第2接触面23aで第1接触面16aとの相対位置は同期することから、1電極22から出力される電圧は増幅されることができる。
【0027】
本実施形態に係る摩擦帯電発電機11では、第1帯電体は転がりながら電極面22aおよび第2接触面23aに相次いで第1接触面16aを接触させるボール16(球体)から構成される。第1接触面16aの周囲でボール16は第2接触面23aまたは電極面22aに向き合わせられる。こうした向き合わせに応じて第2帯電体23または電極22内で電荷が生じる。電荷の発生に応じて電極22およびグラウンドの間で電圧が作用する。
【0028】
DLCの成膜にあたってPVD(PBII法)が用いられる。DLCは第2軌道盤15上で全体に均一に成膜されればよい。DLCの均一膜上には第2帯電体23を象ったマスクが形成される。続いてサンドブラストが実施される。マスク以外の領域でDLCは除去される。DLCの除去に応じて電極面22aは露出する。こうして第2帯電体23は形成されることができる。その他、DLCの成膜に先立って第2軌道盤15上で第2帯電体23を象った空間を区画するマスクが形成されてもよい。マスク以外の領域でDLCは成膜されることができる。DLCともどもマスクが除去されると、電極面22aは露出する。こうして第2帯電体23は形成されることができる。
【0029】
本発明者は摩擦帯電発電機11で発電を検証した。検証にあたって摩擦帯電発電機11は製造された。摩擦帯電発電機11には20個のボール16が組み込まれた。電極22とグラウンドとの間にオシロスコープは接続された。回転軸線12a回りに一定の速度で回転体12は駆動された。回転体12の速度は毎分60回転に設定された。図4に示されるように、オシロスコープの電圧波形には周期的な山および谷が確認された。第2接触面23aとボール16との相対変位が良好に観察された。
【0030】
図5に示されるように、摩擦帯電発電機11aはいわゆるスラストローラーベアリングの構造を有してもよい。ここでは、前述のボール16に代えて第1軌道盤13および第2軌道盤15の間に転動体としてのローラー26が挟まれればよい。ローラー26は第1素材で形成される。ローラー26は回転軸線12aに同軸に環状に並べられる。ローラー26は、電極22から分離されながら、電極面22aに向き合わせられる位置で、回転軸線12aに同軸に周方向に変位自在に第2軌道盤15に支持される。個々のローラー26は第1帯電体として機能する。ここでは、ローラー26はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成される。ローラー26にはボール16と同様に第2軌道盤15との接点で線形の第1接触面が確立される。その他、ローラー26には絶縁体のほか導電体が用いられてもよい。
【0031】
ローラー26は転がりながら電極面22aおよび第2接触面23aに相次いで第1接触面を接触させる。第1接触面と第2接触面23aとの相対変位に基づき摩擦帯電は実現される。電極22およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の取り出しにあたって電極面22aに第2帯電体23は固定される。連続する導電体はそのまま電極面22aに利用されることができる。第2帯電体23の形成にあたって特定方向に連続する絶縁層の形成は省略されることができる。電極22の構造は簡素化されることができる。摩擦帯電発電機11aの活用領域は広げられることができる。
【0032】
図6は本発明の第2実施形態に係る摩擦帯電発電機の構成を概略的に示す。摩擦帯電発電機31はいわゆるラジアルボールベアリングの構造を有する。すなわち、摩擦帯電発電機31は、回転体32に固定される環状の第1軌道輪(内輪)33と、第1軌道輪33に同軸に第1軌道輪33に向き合わせられて、支持体34に固定される環状の第2軌道輪(外輪)35と、第1軌道輪33および第2軌道輪35の間に挟まれる転動体としての複数のボール36と、回転体32の回転軸線32a回りに等間隔にボール36を保持する保持器37とを備える。回転体32は回転軸線32a回りに回転自在に支持体34に支持されることができる。径方向に回転体32に作用する荷重は第1軌道輪33、ボール36および第2軌道輪35経由で支持体34に受け止められることができる。
【0033】
摩擦帯電発電機31は、回転軸線32a回りで回転体32に駆動力を付与する駆動源38を備える。駆動力に応じて回転軸線32a回りで回転体32は回転する。回転体32の回転に伴ってボール36は第2軌道輪35上を転がる。第2軌道輪35とボール36との間で相対変位は引き起こされる。
【0034】
第1軌道輪33には、内側からボール36に接してボール36の軌道を案内する軌道溝39が形成される。軌道溝39は回転軸線32aに同軸に環状に連続する。軌道溝39にボール36は受け入れられる。回転体32の回転時、ボール36は軌道溝39に沿って転がる。第1軌道輪33に対して個々のボール36の接触位置は変位する。
【0035】
第2軌道輪35には、外側からボール36を支持してボール36の軌道を案内する軌道溝41が形成される。軌道溝41は回転軸線32aに同軸に環状に連続する。軌道溝41にボール36は受け止められる。回転体32の回転時、ボール36は軌道溝41に沿って転がる。第2軌道輪35に対して個々のボール36の接触位置は変位する。
【0036】
第2軌道輪35は、グラウンドに接続されて、回転体32の回転軸線32a回りに連続する電極42を備える。第2軌道輪35の鋼本体は電極42として機能する。図7に示されるように、電極42は、回転軸線32a回りに連続する導電体で形成される電極面42aを提供する。電極面42aは回転軸線32aに同軸に環状に広がる。ボール36は電極面42a上を転がる。鋼本体は一般の軌道輪と同様に構成されることができる。
【0037】
ボール36は第1素材で形成される。ボール36は回転軸線32aに同軸に環状に並べられる。ボール36は、電極42から分離されながら、電極面42aに向き合わせられる位置で、回転軸線32aに同軸に周方向に変位自在に第2軌道輪35に支持される。個々のボール36は第1帯電体として機能する。第1素材には例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられる。ボール36には第2軌道輪35との接点で第1接触面が確立される。ボール36はPTFEといった絶縁体のほか導電体から形成されてもよい。
【0038】
電極42の電極面42aには第2帯電体43が固定される。第2帯電体43はボール36の転がりを受け止める第2接触面43aを形成する。第2接触面43aは回転軸線32aに同軸に環状に並べられる。第2接触面43aは回転軸線32a回りで等間隔に配置される。こうして第2軌道輪35の表面には回転軸線32a回りに電極面42aおよび第2接触面43aは交互に配列される。第2接触面43aは、回転軸線32a回りに等間隔で配置される第1接触面に同位相で配列される。
【0039】
第2帯電体43は、第1素材に接触すると帯電する第2素材で形成される。ここでは、第2素材にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)が用いられる。DLCは電極面42aに成膜される。DLCの膜厚は0.1~10.0[μm]に設定されればよい。個々の第2帯電体43は電極面42aを覆う。回転体32が回転すると、ボール36は第2軌道輪35上を転がり電極面42aおよび第2接触面43aに相次いで第1接触面を接触させる。
【0040】
摩擦帯電発電機31は、第2軌道輪35に接続されて、グラウンドに落とされる導電線44をさらに備える。導電線44には例えば電圧計45が接続されることができる。電圧計45はボール36の転がりで生じる電圧を計測することができる。
【0041】
次に本実施形態の動作を説明する。回転体32が回転すると、第2軌道輪35上でボール36は転がる。第2軌道輪35に対して個々のボール36の接触位置は変位する。前述と同様に、ボール36の第1接触面が第2帯電体43の第2接触面43aに接触すると、第2接触面43aに沿って第2帯電体43内にプラスの電荷が生じる。このとき、第1接触面の周囲でボール36は第2接触面43aに向き合わせられる。向き合わせに応じて第2帯電体43内でプラスの電荷は生じる。第2帯電体43の電荷に応じて電極42およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の大きさは第2接触面43aに投影されるボール36の面積に応じて変化する。
【0042】
ボール36の第1接触面が第2帯電体43の第2接触面43aから離隔し電極面42aに接触すると、電極面42aに沿って電極42内にプラスの電荷が生じる。このとき、第1接触面の周囲でボール36は電極面42aに向き合わせられる。向き合わせに応じて電極42内でプラスの電荷は生じる。電荷の確立に応じて電極42およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の大きさは電極面42aに投影されるボール36の面積に応じて変化する。
【0043】
本実施形態では、第1接触面と第2接触面43aとの相対変位に基づき摩擦帯電は実現される。電極42およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の取り出しにあたって電極面42aに第2帯電体43は固定される。連続する導電体はそのまま電極面42aに利用されることができる。第2帯電体43の形成にあたって特定方向に連続する絶縁層の形成は省略されることができる。電極42の構造は簡素化されることができる。摩擦帯電発電機31の活用領域は広げられることができる。
【0044】
摩擦帯電発電機31では、第2接触面43aは、回転軸線32a回りに等間隔で配置される第1接触面に同位相で配列される。第2接触面43aで第1接触面との相対位置は同期することから、1電極42から出力される電圧は増幅されることができる。
【0045】
本実施形態に係る摩擦帯電発電機31では、第1帯電体は転がりながら電極面42aおよび第2接触面43aに相次いで第1接触面を接触させるボール36(球体)から構成される。第1接触面の周囲でボール36は第2接触面43aまたは電極面42aに向き合わせられる。こうした向き合わせに応じて第2帯電体43または電極42内で電荷が生じる。電荷の発生に応じて電極42およびグラウンドの間で電圧が作用する。
【0046】
図8に示されるように、摩擦帯電発電機31aはいわゆるラジアルローラーベアリングの構造を有してもよい。ここでは、前述のボール36に代えて第1軌道輪33および第2軌道輪35の間に転動体としてのローラー46が挟まれればよい。ローラー46は第1素材で形成される。ローラー46は回転軸線32aに同軸に環状に並べられる。ローラー46は、電極42から分離されながら、電極面42aに向き合わせられる位置で、回転軸線32aに同軸に周方向に変位自在に第2軌道輪35に支持される。個々のローラー46は第1帯電体として機能する。ここでは、ローラー46はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成される。ローラー46にはボール36と同様に第2軌道輪35との接点で線形の第1接触面が確立される。その他、ローラー46には絶縁体のほか導電体で用いられてもよい。
【0047】
ローラー46は転がりながら電極面42aおよび第2接触面43aに相次いで第1接触面を接触させる。第1接触面と第2接触面43aとの相対変位に基づき摩擦帯電は実現される。電極42およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の取り出しにあたって電極面42aに第2帯電体43は固定される。連続する導電体はそのまま電極面42aに利用されることができる。第2帯電体43の形成にあたって特定方向に連続する絶縁層の形成は省略されることができる。電極42の構造は簡素化されることができる。摩擦帯電発電機31aの活用領域は広げられることができる。
【0048】
図9は本発明の第3実施形態に係る摩擦帯電発電機の構成を概略的に示す。摩擦帯電発電機51はいわゆるスラスト滑り軸受の構造を有する。すなわち、摩擦帯電発電機51は、回転軸線52a回りで回転自在に回転体(軸体)52を支持する軸受53を備える。軸受53は、回転軸線52aに直交する平面で回転体52を受け止める。回転体52と平面との間には潤滑流体(例えば潤滑油)が供給されることができる。軸受53は特定の支持体(図示されず)に組み込まれて利用されることができる。回転軸線52aの軸方向に回転体52に作用する荷重は軸受53で受け止められることができる。
【0049】
摩擦帯電発電機51は、回転軸線52回りで回転体52に駆動力を付与する駆動源54を備える。駆動力に応じて回転軸線52a回りで回転体52は回転する。回転体52の端面と軸受53の平面との間で相対変位は引き起こされる。
【0050】
軸受53は、グラウンドに接続されて、回転体52の回転軸線52a回りに連続する電極55を備える。軸受53の鋼本体は電極55として機能する。電極55は、回転軸線52a回りに連続する導電体で形成される電極面55aを提供する。
【0051】
回転体52の先端には、第1素材で形成され回転軸線52a回りに並べられる第1帯電体56が固定される。第1帯電体56は、電極55から分離されながら、電極面55aに向き合わせられる位置で、回転軸線52aに同軸に周方向に変位自在に支持される。第1素材には例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられる。第1帯電体56は回転体52の端面を形成する第1接触面56aを有する。第1帯電体56はPTFEといった絶縁体のほか導電体から形成されてもよい。
【0052】
電極55の電極面55aには回転軸線52a回りに並べられる第2帯電体57が固定される。第2帯電体57は第1帯電体56の第1接触面56aを受け止める第2接触面57aを形成する。第2接触面57aは回転軸線52aに同軸に環状に並べられる。第2接触面57aは回転軸線52a回りで等間隔に配置される。第2帯電体57同士の間には空間が形成される。第2接触面57aは、回転軸線52a回りに等間隔で配置される第1接触面56aに同位相で配列される。
【0053】
第2帯電体57は、第1素材に接触すると帯電する第2素材で形成される。ここでは、第2素材にはアルミニウムが用いられる。第2帯電体57は電極55に一体化されてもよく電極面55aから連続してもよい。個々の第2帯電体57は電極面55aから突出する。回転体52が回転すると、回転体52は空間および第2接触面57aに相次いで第1接触面56aを接触させる。
【0054】
摩擦帯電発電機51は、軸受53に接続されて、グラウンドに落とされる導電線58をさらに備える。導電線58には例えば電圧計59が接続されることができる。電圧計59は第1接触面56aおよび第2接触面57aの相対変位で生じる電圧を計測することができる。
【0055】
本実施形態では、第1接触面56aと第2接触面57aとの相対変位に基づき摩擦帯電は実現される。電極55およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の取り出しにあたって電極面55aに第2帯電体57は固定される。連続する導電体はそのまま電極面55aに利用されることができる。第2帯電体57の形成にあたって特定方向に連続する絶縁層の形成は省略されることができる。電極55の構造は簡素化されることができる。摩擦帯電発電機51の活用領域は広げられることができる。
【0056】
摩擦帯電発電機51では、第2接触面57aは、回転軸線52a回りに等間隔で配置される第1接触面56aに同位相で配列される。第2接触面57aで第1接触面56aとの相対位置は同期することから、1電極55から出力される電圧は増幅されることができる。
【0057】
本発明者は摩擦帯電発電機51で発電を検証した。検証にあたって摩擦帯電発電機51は製造された。摩擦帯電発電機51では回転軸線52aに同軸の環状に4つの第1帯電体56および第2帯電体57は並べられた。電極55とグラウンドとの間にオシロスコープは接続された。回転軸線52a回りに一定の速度で回転体52は駆動された。回転体52の速度は毎分60回転に設定された。図10に示されるように、オシロスコープの電圧波形には周期的な山および谷が確認された。第1接触面56aと第2接触面57aとの相対変位が良好に観察された。
【0058】
図11は本発明の第4実施形態に係る摩擦帯電発電機の構成を概略的に示す。摩擦帯電発電機61はいわゆるジャーナル(滑り)軸受の構造を有する。すなわち、摩擦帯電発電機61は、回転軸線62a回りで回転自在に回転体(軸体)62を支持する軸受63を備える。軸受63は、回転体62周りで連続する円筒面64を形成する。回転体62と円筒面64との間には潤滑流体(例えば潤滑油)が供給されることができる。ここでは、軸受63は、回転軸線62a回りで円筒面64の一部分を形成する第1半体63aと、第1半体63aに結合されて、回転軸線62a回りで円筒面64の残りを形成する第2半体63bとを有する。軸受63は特定の支持体(図示されず)に組み込まれて利用されることができる。径方向に回転体62に作用する荷重は軸受63で受け止められることができる。
【0059】
摩擦帯電発電機61は、回転軸線62a回りで回転体62に駆動力を付与する駆動源65を備える。駆動力に応じて回転軸線62a回りで回転体62は回転する。回転体62の外周面と軸受63の円筒面64との間で相対変位は引き起こされる。
【0060】
軸受63は、グラウンドに接続されて、回転体62の回転軸線62a回りに連続する電極66を備える。軸受63の鋼本体は電極66として機能する。電極66は、回転軸線62a回りに連続する導電体で形成される電極面66aを提供する。電極面66aは回転軸線62a回りに同軸に環状に広がる。鋼本体は一般の滑り軸受と同様に構成されることができる。
【0061】
回転体62の外周面には、第1素材で形成され回転軸線62a回りに並べられる第1帯電体67が固定される。第1帯電体67は、電極66から分離されながら、電極面66aに向き合わせられる位置で、回転軸線62aに同軸に周方向に変位自在に支持される。第1素材には例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が用いられる。第1帯電体67は回転体62の外周面を形成する第1接触面67aを有する。第1帯電体67はPTFEといった絶縁体のほか導電体から形成されてもよい。
【0062】
図12を併せて参照し、電極66の電極面66aには第2帯電体68が固定される。第2帯電体68は第1帯電体67の第1接触面67aを受け止める第2接触面68aを形成する。第2接触面68aは回転軸線62aに同軸に環状に並べられる。第2接触面68aは回転軸線62a回りで等間隔に配置される。こうして軸受63の円筒面64には回転軸線62a回りに電極面66aおよび第2接触面68aは交互に配列される。第2接触面68aは、回転軸線62a回りに等間隔で配置される第1接触面67aに同位相で配列される。
【0063】
第2帯電体68は、第1素材に接触すると帯電する第2素材で形成される。ここでは、第2素材にはDLC(ダイヤモンドライクカーボン)が用いられる。DLCは電極面66aに成膜される。DLCの膜厚は0.1~10.0[μm]に設定されればよい。個々の第2帯電体68は電極面66aを覆う。回転体62が回転すると、回転体62は電極面66aおよび第2接触面68aに相次いで第1接触面67aを接触させる。
【0064】
摩擦帯電発電機61は、軸受63に接続されて、グラウンドに落とされる導電線71をさらに備える。導電線71には例えば電圧計72が接続されることができる。電圧計72は第1接触面67aおよび第2接触面68aの相対変位で生じる電圧を計測することができる。
【0065】
本実施形態では、第1接触面67aと第2接触面68aとの相対変位に基づき摩擦帯電は実現される。電極66およびグラウンドの間で電圧は作用する。電圧の取り出しにあたって電極面66aに第2帯電体68は固定される。連続する導電体はそのまま電極面66aに利用されることができる。第2帯電体68の形成にあたって特定方向に連続する絶縁層の形成は省略されることができる。電極66の構造は簡素化されることができる。摩擦帯電発電機61の活用領域は広げられることができる。
【0066】
摩擦帯電発電機61では、第2接触面68aは、回転軸線62a回りに等間隔で配置される第1接触面67aに同位相で配列される。第2接触面68aで第1接触面67aとの相対位置は同期することから、1電極66から出力される電圧は増幅されることができる。
【0067】
第1半体63aおよび第2半体63bは相互に絶縁されてもよい。例えば、第1半体63aおよび第2半体63bの結合にあたって第1半体63aおよび第2半体63bの間に絶縁体が挟み込まれればよい。グラウンドに接続される第2帯電体68は減少するものの、第1接触面67aと第2接触面68aとの相対変位に基づき摩擦帯電は実現されることができる。
【符号の説明】
【0068】
11…摩擦帯電発電機、11a…摩擦帯電発電機、16…第1帯電体(ボール)、16a…第1接触面、22…電極、22a…電極面、23…第2帯電体、23a…第2接触面、26…第1帯電体(ローラー)、31…摩擦帯電発電機、31a…摩擦帯電発電機、36…第1帯電体(ボール)、42…電極、42a…電極面、43…第2帯電体、43a…第2接触面、46…転動体(ローラー)、51…摩擦帯電発電機、56…電極、56a…電極面、57…第1帯電体、57a…第1接触面、58…第2帯電体、58a…第2接触面、61…摩擦帯電発電機、66…電極、66a…電極面、67…第1帯電体、67a…第1接触面、68…第2帯電体、68a…第2接触面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12