(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023122892
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230829BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20230829BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230829BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14
B41J2/175
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026666
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 利浩
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056FD20
2C056KA00
2C056KB15
2C056KB16
2C056KB37
2C057AG30
2C057AG71
2C057AG99
4F041AA02
4F041AA05
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA34
4F042AA02
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA08
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB10
4F042CB20
(57)【要約】
【課題】ポンプにかかる負荷を低減することができる液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド504は、液体流路10を備えている。この液体流路内のチクソ性の液体としてのインクを、ノズルから吐出する。また、液体吐出ヘッド504は、液体流路10内のチクソ性のインクにせん断力を付与する供給側せん断力付与部材31aと、排出側せん断力付与部材31bとを有している。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流路内のチクソ性の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドにおいて、
前記液体流路内の前記液体にせん断力を付与するせん断力付与部材を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記せん断力付与部材は、前記液体流路内を移動可能に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記せん断力付与部材は、前記ノズルから液体を吐出する液体吐出動作中以外のタイミングで、前記液体流路内を移動することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項2または3に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記せん断力付与部材は、押し込み部材に押されることで、前記液体流路内を移動することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記押し込み部材は、当該液体吐出ヘッドが移動可能に搭載された装置の部材に、当該液体吐出ヘッドの移動で突き当たることで、前記せん断力付与部材を押し込むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項4または5に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記押し込み部材は、付勢手段により前記せん断力付与部材を押し込む方向とは、逆方向に付勢されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項2乃至6いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記液体流路内に、前記ノズルを開閉するノズル開閉部材を有し、
前記せん断力付与部材は、前記ノズル開閉部材を逃がす逃げ部が設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項2乃至7いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記液体流路内に、前記ノズルを開閉するノズル開閉部材を有し、
前記せん断力付与部材は、弾性体で構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項2乃至8いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記せん断力付与部材は、前記せん断力付与部材の移動方向に直交する方向に突出した複数の突起部を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項2乃至9いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記せん断力付与部材の移動方向と直交する方向に前記液体流路内を往復移動する可動壁部を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項10に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記可動壁部は、前記液体流路内の圧力の変動により前記液体流路内を往復移動することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項10に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記可動壁部は、前記せん断力付与部材との間の磁力によって、前記せん断力付与部材の移動に連動して移動させることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項10に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記可動壁部は、前記せん断力付与部材に接触する接触部を有し、
前記せん断力付与部材の前記接触部が接触する箇所は、前記せん断力付与部材の移動方向において、前記可動壁部の移動方向の位置が変化することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項14】
請求項10乃至13いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記可動壁部は、前記液体が通過する複数の開口部を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項15】
請求項1乃至14いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記せん断力付与部材は、前記液体が通過す複数の開口を備えたせん断流路部を有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項16】
請求項15に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記せん断流路部が前記液体流路内に複数設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項17】
請求項1乃至16いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項18】
チクソ性の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部とを備える液体吐出ユニットにおいて、
液体供給部内を移動して前記液体供給部内の液体にせん断力を付与するせん断力付与部材を備えることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項19】
請求項17または18に記載の液体吐出ユニットにおいて、
前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部は、液体を流動させるポンプを有し、
前記ポンプの駆動開始前に、前記せん断力付与部材により液体にせん断力を付与することを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項20】
液体を吐出する装置において、
請求項1乃至16いずれか一項に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項17乃至19いずれか一項に記載の液体吐出ユニットを有することを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からチクソ性(チキソ性ともいう)の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置が知られている。なお、チクソ性とは、せん断力を付与することで低粘度化し、せん断力の付与をやめると高粘度な状態に戻る性質のことである。
【0003】
特許文献1には、上記液体を吐出する装置として、液体たるインクを収容するインクタンクと液体吐出ヘッドとの間でインクを循環させることで、チクソ性インクにせん断力を付与し、チクソ性インクを低粘度化させるものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポンプの負荷が大きいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、液体流路内のチクソ性の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドにおいて、前記液体流路内の液体にせん断力を付与するせん断力付与部材を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ポンプにかかる負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図。
【
図2】本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部側面説明図。
【
図5】液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッド内の液体流路とを示す斜視図。
【
図7】ノズルからのインク吐出について説明する図。
【
図8】液体吐出ヘッドの液体流路内のインクの粘度と、圧力損失との関係を調べたグラフ。
【
図9】液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドの液体流路内のインクにせん断力を付与するせん断力付与機構とを示す斜視図。
【
図10】液体流路内のインクにせん断力の付与について説明する。
【
図11】(a)は、押圧プレートが側板から離間しているときのせん断力付与部材の液体流路内での位置を示す図であり、(b)は、
図11(a)のAの箇所の拡大図。
【
図12】押圧プレートが、側板により押圧されてせん断力付与部材が液体流路内を移動する様子を示す。
【
図16】同変形例3における平板を移動させる機構の一例について説明する図。
【
図17】液送ポンプによるインク循環を行わない構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
はじめに、本発明に係る液体吐出ヘッドを搭載した液体を吐出する装置の構成について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図であり、
図2は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部側面説明図である。
この液体を吐出する装置は、シリアル型装置であり、ヘッド移動手段としての主走査移動機構593によって、キャリッジ503は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構593は、ガイド部材501、主走査モータ505、及び、タイミングベルト508等で構成されている。ガイド部材501は、装置長手方向両側に設けられた側板591A,591Bに架け渡されており、キャリッジ503を移動可能に保持している。キャリッジ503は、主走査モータ505によって、駆動プーリ506と従動プーリ507との間に架け渡したタイミングベルト508を介して装置長手方向である主走査方向に往復移動される。
【0010】
このキャリッジ503には、液体吐出ヘッド504を搭載した液体吐出ユニット540が設けられている。液体吐出ユニット540の液体吐出ヘッド504は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド504は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。液体吐出ヘッド504の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド504に供給するための供給循環機構594により、液体が液体吐出ヘッド504内に供給及び循環される。
【0011】
液体を吐出する装置は、用紙510を搬送するための搬送機構595を備えている。搬送機構595は、搬送手段である搬送ベルト512、搬送ベルト512を駆動するための副走査モータ516などで構成されている。搬送ベルト512は、用紙510を吸着して液体吐出ヘッド504に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト512は、無端状ベルトであり、搬送ローラ513とテンションローラ514との間に掛け渡されている。搬送ベルト512への用紙510の吸着は、静電吸着あるいはエアー吸引などで行うことができる。搬送ベルト512は、副走査モータ516によってタイミングベルト517及びタイミングプーリ518を介して搬送ローラ513が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0012】
キャリッジ503の主走査方向の一方側には、搬送ベルト512の側方に液体吐出ヘッド504の維持回復を行う維持回復機構520が配置されている。維持回復機構520は、例えば液体吐出ヘッド504のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材521や、ノズル面を払拭するワイパ部材522などで構成されている。
【0013】
主走査移動機構593、供給循環機構594、維持回復機構520、及び、搬送機構595は、側板591A,591B及び背板591Cなどで構成される筐体に取り付けられている。このように構成した、液体を吐出する装置においては、用紙510が搬送ベルト512上に給紙されて吸着され、搬送ベルト512の周回移動によって用紙510が副走査方向に搬送される。そして、キャリッジ503を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド504を駆動することにより、停止している用紙510に液体を吐出して画像を形成する。このように、液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッド504を備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0014】
次に、液体吐出ユニット540の他例について
図3を参照して説明する。
図3は同ユニットの要部平面説明図である。この液体吐出ユニット540は、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板591A,591B及び背板591Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構593と、キャリッジ503と、液体吐出ヘッド504とで構成されている。なお、この液体吐出ユニット540の例えば側板591Bに、前述した維持回復機構520及び供給循環機構594の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニット540を構成することもできる。
【0015】
本実施形態において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよい。具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0016】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0017】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、供給循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給循環機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。また、供給循環機構は、キャリッジに搭載され液体貯留源の液体を一時貯留し、液体吐出ヘッドへ供給するサブタンクを含むものとする。
【0018】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0019】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0020】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0021】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で、用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がある。また、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて、原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0022】
図4は、供給循環機構594について説明する図である。
液体供給部としての供給循環機構594は、インクタンク410、液送ポンプ438、供給チューブ556a(
図9参照)と循環チューブ556b(
図9参照)の2本のチューブが一体となったペアチューブ556等を備えている。インクタンク410内のインクは、液送ポンプ438により、ペアチューブ556の供給チューブを介して液体吐出ヘッド504へ供給される。また、液体吐出ヘッド504の液体流路内のインクがペアチューブ556の循環チューブを介して供給チューブへと戻される。なお、循環チューブを介してインクタンク410にインクを戻してもよい。
【0023】
また、キャリッジ503にサブタンクを設け、インクタンク410から供給チューブを通じて供給されるインクを一時的に貯留し、サブタンクから液体吐出ヘッドへインクを供給するようにしてもよい。また、サブタンクと液体吐出ヘッド504との間でインクを循環させるようにしてもよい。
【0024】
次に、液体吐出ヘッド504内の液体流路10について説明する。
図5は、液体吐出ヘッド504と、液体吐出ヘッド内の液体流路10とを示す斜視図であり、
図6は、液体流路10の斜視図である。
液体吐出ヘッドの主走査方向一方側の側面には、液体流路10の供給口10dと、排出口10eとが設けられている。液体流路10は、供給口10dを有する液体供給路10aと、液体排出路10bとを有している。また、液体流路10は、液体供給路10aのインク流れ方向下流側端部と、液体排出路10bのインク流れ方向上流側端部とを連結する中継流路10fを有している。
【0025】
液体供給路10aには、所定の間隔を開けて複数の個別液室10cが設けられている。各個別液室の底面には、ノズル12が設けられている。また、各個別液室10cには、ノズル12を開閉するためのノズル開閉部材としての開閉ピン13が設けられている。
【0026】
図7は、ノズル12からのインク吐出について説明する図である。
本実施形態では、バルブジェット方式によりノズルからインクを吐出するものである。液体流路内のインクには、圧力がかけられており、この液体にかかった圧力によりインクをノズル12から吐出して画像を形成する。
図7(a)に示すように、インク非吐出時は、開閉ピン13は下がってノズル12を塞いでおり、ノズル12へインクが流れ込まないようにしている。
【0027】
インク吐出時は、
図7(b)に示すように、開閉ピン13を上昇させてノズル12を開放することで、液体流路内のインク圧力によりインクがノズル12から吐出する。この開閉ピン13によるノズル開閉を高速で制御することで、用紙510に画像を形成する。
【0028】
本実施形態では、インクとしてチクソ性(チキソ性ともいう)インクを用いている。チクソ性とは、せん断力を付与することで、低粘度化し、せん断力の付与をやめると高粘度な状態に戻る性質のことである。このようなチクソ性のインクを用いることで、ノズル12から吐出するときは、低粘度のインクを吐出でき、用紙に吐出後は高粘度化して滲みや液だれを防ぐことができる。
【0029】
本実施形態では、液送ポンプ438によりインクを循環させ、インクの流動によりチクソ性のインクにせん断力を付与してインクの粘度を100[mPa・s]以下にして、画像形成動作を実施する。これは、インク粘度が100[mPa・s]を超えると、ノズル12からインクが吐出されないおそれがあるためである。
【0030】
装置の電源OFF等、液送ポンプ438によりインクの循環が停止されると、インクにせん断力が付与されず、チクソ性のインクは高粘度化する。そのため、装置の起動直後などのインクの循環開始時のインクを流動させるための必要なエネルギーが増大し、液送ポンプ438に大きな負荷がかかる。
【0031】
図8は、液体吐出ヘッドの液体流路10内のインクの粘度と、圧力損失との関係を調べたグラフである。
図8に示すように、インクに十分なせん断力を付与して、インクの粘度が、50[mPa・s]のときの圧力損失(インクを流すのに必要なエネルギー)は、208[KPa]である。一方、せん断力が付与されていないインクの粘度は1000[mPa・s]ある。このときの圧力損失は、3498[KPa]であり、インクに十分なせん断力を付与されている(粘度50[mPa・s])の場合に比べて、16.8倍、インクを流すために必要なエネルギーが増加する。
【0032】
流路断面積を広くしたり、経路を増やしたりすることで圧力損失を下げることができ、インクの循環開始時の液送ポンプ438に大きな負荷を低減することができる。インクタンク410から液体吐出ヘッド504へインクを供給する供給経路や、液体吐出ヘッド504から排出されたインクを循環される循環経路については、次のような構成で、圧力損失を下げることができる。すなわち供給チューブや循環チューブとして管路径の大きなものを用いたり、供給チューブや循環チューブを複数本用いたりすることで、圧力損失を下げることが可能である。
【0033】
しかしながら、液体吐出ヘッド内の液体流路10については、経路を分割することができない。また、液体流路10の流路断面積を広くすると、液体吐出ヘッド504が大型化してしまう。さらに、液体流路10の流路断面積を広くすると、液体流路10の中央と外側とで流れに差が生じする。すなわち、中央のインクは流れ易いが、外側のインクは、液体流路10の内壁との流路抵抗で流れにくい。そのため、液体流路10の中央と外側とで流れに差が生じ、中央と外側とで付与されるせん断力に差が生じて、液体流路10の中央と外側とで粘度に差が生じるおそれがある。このように、液体流路10内でインクの粘度に差が生じると、高粘度のインクが吐出されるおそれがあり、良好な画像が形成されないおそれがある。
【0034】
このように、液体吐出ヘッド504の液体流路10については、形状で圧力損失の低減を図るのは困難である。そこで、本実施形態では、液体吐出ヘッド504の液体流路10内のインクにせん断力を付与するせん断力付与部材を設け、インクの循環開始前にこのせん断力付与部材により液体流路10内のインクにせん断力を付与してインク粘度を低下させるようにした。これにより、インクの循環開始時の液体流路10の圧力損失を低減でき、少ないエネルギーでインクの循環を開始できる。よって、液送ポンプ438に大きな負荷がかかるのを抑制することができる。以下、本実施形態の特徴部について、図面を用いて具体的に説明する。
【0035】
図9は、液体吐出ヘッド504と、液体吐出ヘッド504の液体流路内のインクにせん断力を付与するせん断力付与機構30とを示す斜視図である。
せん断力付与機構30は、供給側せん断力付与部材31aと、排出側せん断力付与部材31bとを有している。供給側せん断力付与部材31aは、液体流路10の液体供給路10a内を往復移動し、液体供給路10a内のインクにせん断力を付与する。排出側せん断力付与部材31bは、液体流路10の液体排出路10b内を往復移動し、液体排出路10b内のインクにせん断力を付与する。
【0036】
供給側せん断力付与部材31aと排出側せん断力付与部材31bは、一端が、押し込み部材としての押圧プレート33に取り付けられている。押圧プレート33の中央には、付勢手段たるバネ32が支持されるバネ支持軸35が貫通する貫通孔が設けられている。また、押圧プレート33が対向する側板591Aにも、バネ支持軸35が貫通する貫通孔41が設けられている。バネ支持軸35は、副走査方向において、供給側せん断力付与部材31aと排出側せん断力付与部材31bとの間に配置され、接続部材34に取り付けられている。このバネ支持軸35がバネ32に挿入されることで、バネ32が支持される。バネ32の一端は、押圧プレート33に接触しており、バネ32の他端は、接続部材34に接触している。
【0037】
図10は、液体流路10内のインクにせん断力の付与について説明する。
例えば、装置の起動時等、液送ポンプ438の駆動開始前に、液体流路10内のインクへのせん断力の付与を実施する。
液体流路10内のインクへのせん断力の付与を実施するときは、主走査モータ505(
図1参照)を駆動してキャリッジ503を、側板591Aへ向けて移動させる。キャリッジ503が、用紙に画像を形成するときの主走査方向の移動範囲より外側に移動すると、押圧プレート33が、側板591Aに当接する。さらに、キャリッジ503を側板591Aへ向けて移動させると、バネ支持軸35が貫通孔41を貫通するとともの押圧プレート33が、側板591Aにより押圧されて、バネ32の付勢力に抗して接続部材34に向けて相対的に移動する。すると、供給側せん断力付与部材31aと排出側せん断力付与部材31bが液体吐出ヘッド504の液体流路10内を移動する。
【0038】
供給側せん断力付与部材31aが、液体流路10の液体供給路10a内を移動することで、液体供給路10a内のインクにせん断力が付与され、液体供給路10a内のインクの粘度が低下する。また、排出側せん断力付与部材31bが液体流路10の液体排出路10b内を移動することで、液体供給路10a内のインクにせん断力が付与され、インクの粘度が低下する。
【0039】
また、供給側せん断力付与部材31aおよび排出側せん断力付与部材31bがそれぞれ液体流路10内を移動することで、液体供給路10a内および液体排出路10b内のインクが、中継流路10fへ向けて押される。その結果、液体供給路10a内および液体排出路10b内のインクの一部がそれぞれ中継流路10fへ流れ込み、中継流路10fにインクの流れが生じる。その結果、中継流路10fのインクにもせん断力が付与され、中継流路10fのインクの粘度も低下させることができる。
【0040】
キャリッジ503が主走査方向の移動範囲の一端部まで移動したら、主走査モータ505の回転方向を切り替えて、キャリッジ503を主走査方向の中央側へ移動させる。すると、押圧プレート33がバネの付勢力により接続部材34から離れる方向へ相対的に移動する。これにより、液体流路内の各せん断力付与部材31a,31bが、接続部材34側へ移動し、液体供給路10aおよび液体排出路10b内のインクにせん断力が付与される。これにより、インク粘度をさらに低下させることができる。
【0041】
そして、キャリッジ503が、用紙に画像を形成するときの主走査方向の移動範囲内に移動すると、押圧プレート33が側板591Aから離間し、各せん断力付与部材31a,31bの移動が停止する。以上のせん断力の付与動作を実施したら、液送ポンプ438の駆動を開始してインクを循環させる。また、上記のせん断力の付与動作を複数回行ってもよい。
【0042】
図11(a)は、押圧プレート33が側板591Aから離間しているときのせん断力付与部材31a,31bの液体流路内での位置を示しており、
図11(b)は、
図11(a)のAの箇所の拡大図である。また、
図12は、押圧プレート33が、側板591Aにより押圧されてせん断力付与部材31a,31bが液体流路内を移動する様子を示すである。
【0043】
各せん断力付与部材31a,31bは、丸棒の中央部分が切り欠かれて、2又にわかれた形状をしている。供給側せん断力付与部材31aにおいては、この切り欠き部311が、開閉ピン13を逃がす逃げ部として機能する。そして、この切り欠き部311にインクを通過させる複数の開口が形成されたメッシュ状のせん断流路部としてのせん断流路板312が、所定の間隔を開けて複数(本実施形態では3個)設けられている。
【0044】
各せん断力付与部材31a,31bが液体流路10内を往復移動すると、インクがメッシュ状のせん断流路板312の開口を通過する。この開口を通過の際に、インクにせん断力が付与され、液体流路10内インクの粘度を低下することができる。
【0045】
本実施形態では、排出側せん断力付与部材31bを、供給側せん断力付与部材31aと同一のものを用いている。しかし、排出側せん断力付与部材31bについては、例えば、供給側せん断力付与部材31aよりもせん断流路板312の個数を増やすなど、排出側せん断力付与部材31bを供給側せん断力付与部材31aとは、異なる構成としてもよい。
【0046】
各せん断力付与部材31a,31bの移動量は、液体供給路の個別液室間距離となっている。そして、せん断流路板312が、液体供給路10aの個別液室10c間のインクの流れ方向上流側端部から、下流側端部までの間を移動するよう、せん断流路板312が供給側せん断力付与部材31aに設けられている。かかる構成とすることで、各せん断力付与部材31a,31bが、液体供給路10a、液体排出路10bの一端から他端まで移動させずとも、これらの流路内のインクに対して、偏りなくせん断流路板312によりせん断力を付与することができる。なお、個別液室10c内のインクは、供給側せん断力付与部材31aが液体供給路内を移動することで、液体供給路内にインクの流れが生じ、このインクの流れにより、せん断力を付与することができる。
【0047】
また、各せん断力付与部材31a,31bが、液体供給路10a、液体排出路10bの一端から他端まで移動させるものに比べて、
図9に示す状態における押圧プレート33と液体吐出ヘッドとの距離を短くすることができる。これにより、側板591Aと、用紙に画像を形成するときのキャリッジの主走査方向の移動範囲の一端との距離を狭めることができ、液体を吐出する装置の主走査方向の長さを短くすることが可能となり、装置の小型化を図ることができる。
【0048】
また、各せん断力付与部材31a,31bのせん断流路板312が、常に液体流路内に位置する。これにより、液送ポンプ438によりインクを循環させているときも、インクが、このせん断流路板312の開口を通過し、せん断力が付与され、液体流路内のインクの粘度を良好に低い状態に維持することができる。
【0049】
このように、本実施形態では、各せん断力付与部材31a,31bを、液体流路10内を往復移動させて、液体流路10内のインクの粘度を低下させることでインク流動時の圧力損失を低減することができる。これにより、液送ポンプ438の駆動開始時の負荷を低減することができる。よって、液送ポンプ438として、高負荷対応の大型で高価なポンプを用いる必要がなり、装置のコストダウンや装置の小型化を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態では、キャリッジ503が、用紙に画像を形成するときの主走査方向の移動範囲内にあるときは、押圧プレート33は、側板591Aから離間している。これにより、画像形成時は、各せん断力付与部材31a,31bが移動することがなく、画像形成時に液体流路内の圧力が変動するのを抑制でき、良好に液体を吐出することができる。
【0051】
次に、変形例について説明する
【0052】
[変形例1]
図13は変形例1の要部拡大図である。
この変形例1の供給側せん断力付与部材31aは、弾性を持つ2本の弾性軸313で構成し、各弾性軸313の先端に半円形状のせん断流路板312を設けたものである。
【0053】
この変形例1では、供給側せん断力付与部材31aを移動させ、各弾性軸313先端に設けられたせん断流路板312が、開閉ピン13の円弧状の側面に突き当たる。すると、弾性軸313が弾性変形して、せん断流路板312が、開閉ピン13の円弧状の側面に沿って移動する。これにより、せん断流路板312が開閉ピン13を避けながら液体供給路10aを移動することができる。よって、個別液室10cのインクに対してもせん断流路板312によりせん断力を付与することができ、個別液室内のインクの粘度も良好に低下させることができる。なお、排出側せん断力付与部材31bも供給側せん断力付与部材31aと同一の構成としてもよい。
【0054】
[変形例2]
図14は、変形例2の要部拡大図である。
この変形例2は、弾性軸313に弾性を持った弾性突起部313aを複数設けたものである。弾性突起部313aを含めた供給側せん断力付与部材の直径は、液体供給路10aの直径よりも大きくなっている。そのため、個別液室10c間では、弾性突起部313aは、弾性変形して寝た状態となっている。
【0055】
供給側せん断力付与部材31aを移動させて、弾性突起部313aが個別液室10cにくると、弾性突起部313aが立ち上がって、個別液室10cのノズル側の空間やノズル側と反対側の空間を移動する。これにより、これらの空間に溜まっているインクに対してせん断力を付与することができ、個別液室10cのインクの粘度の低下を良好に図ることができる。
【0056】
また、変形例2では、弾性軸313を回転させながら移動させることで、弾性突起部313aでよりインクにせん断力を付与することができ、好ましい。
【0057】
[変形例3]
図15は、変形例3の要部拡大図である。
図15に示すように、変形例3では、個別液室10cに開閉ピンの移動方向と同方向に往復移動する可動壁部としての平板314を配置したものである。平板314は、供給側せん断力付与部材31aを挟んで対向するように、ノズル側と、ノズル側と反対側とに設けられている。これら平板314の中央には、開閉ピン13が貫通する貫通孔が形成されている。
【0058】
各平板314は、通常時は、個別液室10cの図中上面および下面に当接しており、供給側せん断力付与部材31aを往復移動させる際に、図中矢印方向へ移動させる。これにより、供給側せん断力付与部材31aを往復移動させる際に、個別液室10cを狭めることができ、液体流路内のインクに対して良好にせん断力を付与することができる。
【0059】
また、平板314を、インクが通過する複数の開口を有するメッシュ状としてもよい。平板314をメッシュ状とすることで、図中矢印方向へ平板314を移動させると、個別液室内のインクが平板の開口を通過する際に、インクにせん断力が付与される。これにより、個別液室10c内のインク粘度を良好に低下させることができる。
【0060】
平板314の個別液室内での移動は、液体流路内の圧力を制御することで行うことができる。すなわち、供給側せん断力付与部材31aを往復移動させる際に、液体流路内の圧力を負圧にすることで、平板314を図中矢印方向へ移動させる。
【0061】
上述したように、液体流路内の圧力により開閉ピンを開いたときにインクをノズル12から吐出させているため、通常時は、液体流路10は加圧されている。この加圧により、平板314が図中矢印方向とは逆方向へ移動し、通常時は、平板314を個別液室10cの図中上面および下面に当接させておくことができる。
【0062】
また、磁力を用いて平板314を移動させるようにしてもよい。例えば、平板314を金属など磁性体で構成し、平板314をバネの付勢力により個別液室10cの図中上面および下面に当接させる。そして、供給側せん断力付与部材31aの所定の箇所に磁力発生手段たる磁石を設ける。供給側せん断力付与部材31aを移動させると、供給側せん断力付与部材31aの磁石が平板314に近づいていき、平板314に磁石の磁力が作用する。これにより、平板314が、磁石の磁力によりバネの付勢力に抗して、図中矢印方向へ移動させることができる。なお、平板314に磁石を設け、供給側せん断力付与部材31aの所定の箇所に金属などの磁性体を設けてもよい。
【0063】
また、供給側せん断力付与部材31aが、非弾性部材の場合は、供給側せん断力付与部材31aに傾斜部313cを設けて、平板314を移動させるようにしてもよい。具体的には、
図16に示すように、供給側せん断力付与部材31aに大径部313bと小径部313dと傾斜部313cとを設ける。平板314には、供給側せん断力付与部材31aに当接する接触部などの脚部314aが設けられており、平板314は、バネ315により供給側せん断力付与部材31aに向けて付勢されている。
【0064】
図16(a)に示すように、通常時は、供給側せん断力付与部材31aの大径部313bが個別液室10cに位置しており、このとき、各平板314は、個別液室10cの図中上面および下面に当接している。
【0065】
供給側せん断力付与部材31aが押し込まれて図中左側へ移動すると、平板314は、供給側せん断力付与部材31aの傾斜部313cに案内されて、
図16(b)の矢印方向に移動することができる。
【0066】
画像形成動作前に各せん断力付与部材31a,31bを往復移動させて液体流路内のインク粘度を低下させるようにし、液送ポンプによるインク循環を行わないようにしてもよい。この場合は、
図17に示すように、インクタンク410との水頭差やインクタンク内を加圧して、インクタンク410から供給チューブ556aを通じて液体吐出ヘッドにインクを供給する。また、このインクタンク410との水頭差やインクタンク内の加圧により、液体吐出ヘッドの液体流路を加圧する。また、インクの循環を行わない構成とした場合は、液体吐出ヘッドの液体流路は、液体供給路のみにする。
【0067】
また、液体供給部たる供給循環機構がインクタンク410から供給されたインクを一時貯留するサブタンクを有する構成においては、サブタンクにせん断力付与部材を設けてもよい。サブタンク内でせん断力付与部材を移動させることで、サブタンク内のインクに対してせん断力を付与して、サブタンク内のインク粘度を低下させる。これにより、液送ポンプ438でインクを循環させる装置においては、液送ポンプの駆動開始時の負荷を低減することができる。また、液送ポンプによるインク循環を行わない装置においては、画像形成動作時に、サブタンクから画像形成に適した粘度(100[mPa・s]以下)のインクを、液体吐出ヘッド504の液体流路10へ供給することができ、良好に画像を形成することができる。なお、サブタンク内のせん断力付与部材の移動には、往復移動や回転移動を含む。
【0068】
また、供給循環機構594の供給チューブ556aや循環チューブ556b内を、弾性部材からなるせん断力付与部材を移動させ、これらチューブ内のインクにせん断力を付与し、これらチューブ内のインクの粘度を低下させてもよい。また、インクタンク410にせん断力付与部材を設けてもよい。
【0069】
また、上述ではインクを吐出する方式として、バルブジェット方式を用いた例について説明したが、インクを吐出する方式としては、これに限られるものではない。例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)を用いたピエゾ方式、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマル方式、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータを用いるコンティニュアス方式等を用いることができる。
【0070】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
液体流路10内のチクソ性の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドにおいて、液体流路内の液体にせん断力を付与するせん断力付与部材31a,31bを備える。
特許文献1では、インクなどの液体の循環開始時は、チクソ性の液体は高粘度化しており、この高粘度の液体を循環させるには、ポンプに大きな負荷がかかってしまう。特に、液体吐出ヘッドの液体流路は狭いため、液体の循環経路の中で最も流路抵抗が高く、この液体吐出ヘッドの液体流路内の高粘度化した液体を流すには、ポンプに大きな負荷がかかる。
これに対し、態様1では、液体吐出ヘッドの液体流路内に備えたせん断力付与部材によって、液体吐出ヘッドの液体流路内のチクソ性の液体にせん断力を付与して、低粘度化することができる。よって、せん断力付与部材により液体吐出ヘッドの液体流路内の液体を低粘度化させてから、ポンプの駆動を開始することが可能となり、ポンプにかかる負荷を低減することができる。
【0071】
(態様2)
態様1において、せん断力付与部材31a,31bは、液体流路10内を移動可能に設けられている。
これによれば、実施形態で説明したように、せん断力付与部材が液体流路10内を移動することで、液体流路内の液体にせん断力を付与することができる。
【0072】
(態様3)
態様2において、せん断力付与部材は、ノズルから液体を吐出する液体吐出動作中以外のタイミングで、液体流路内を移動する。
これによれば、実施形態で説明したように、液体吐出動作時の液体流路内の圧力変動を抑制でき、液体の吐出に影響が出るのを抑制することができる。
【0073】
(態様4)
態様2または3において、せん断力付与部材31a,31bは、押圧プレート33などの押し込み部材に押されることで、液体流路10内を移動する。
これによれば、押圧プレート33などの押し込み部材を押し込むことで、せん断力付与部材31a,31bを液体流路10内で移動させることができる。
【0074】
(態様5)
態様4において、押圧プレート33などの押し込み部材は、側板591Aなどの当該液体吐出ヘッドが移動可能に搭載された装置の部材に、液体吐出ヘッドの移動で突き当たることで、せん断力付与部材31a,31bを押し込む。
これによれば、液体吐出ヘッドを移動させる主走査移動機構593などの移動手段を用いて、押圧プレート33などの押し込み部材を押し込んでせん断力付与部材31a,31bを移動させることができる。これにより、押し込み部材の押し込み専用の駆動源を用いる場合に比べて、部品点数を削減できコストアップを抑制できる。
【0075】
(態様6)
態様4または5において、押圧プレート33などの押し込み部材は、バネ32などの付勢手段によりせん断力付与部材31a,31bを押し込む方向とは、逆方向に付勢されている。
これによれば、押圧プレート33などの押し込み部材が押し込まれていないときは、バネ32などの付勢力によりせん断力付与部材31a,31bを所定の位置に留めておくことができる。これにより、液体吐出時にせん断力付与部材31a,31bが移動して液体流路内に圧力変動が発生するのを抑制でき、液体の吐出に影響が出るのを抑制することができる。
また、押圧プレート33などの押し込み部材の押し込みを解除すると、付勢手段の付勢力によりせん断力付与部材31a,31bを押し込み方向とは逆方向に移動させることができる。これにより、簡素な構成で、せん断力付与部材31a,31bの往復移動を行うことができる。
【0076】
(態様7)
態様2乃至6いずれかにおいて、液体流路内に、ノズルを開閉する開閉ピン13などのノズル開閉部材を有し、供給側せん断力付与部材31aなどのせん断力付与部材は、ノズル開閉部材を逃がす切り欠き部311などの逃げ部が設けられている。
これによれば、実施形態で説明したように、開閉ピン13などのノズル開閉部材に妨げられることなく、供給側せん断力付与部材31aなどのせん断力付与部材を移動させることができる。
【0077】
(態様8)
態様2乃至7いずれかにおいて、液体流路内に、ノズルを開閉する開閉ピン13などのノズル開閉部材を有し、供給側せん断力付与部材31aなどのせん断力付与部材は、弾性体で構成されている。
これによれば、変形例1で説明したように、供給側せん断力付与部材31aなどのせん断力付与部材が、弾性変形することで、開閉ピン13などのノズル開閉部材を逃げることができる。これにより、せん断力付与部材が、開閉ピン13などのノズル開閉部材に妨げられることなく液体流路内を移動することができる。
【0078】
(態様9)
態様2乃至8いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、せん断力付与部材は、せん断力付与部材の移動方向に直交する方向に突出した複数の突起部を有する。
これによれば、変形例2で説明したように、これら突起部により液体流路内の液体に対してせん断力を付与することができる。
【0079】
(態様10)
態様2乃至9いずれかにおいて、せん断力付与部材の移動方向と直交する方向に液体流路内を往復移動する平板314などの可動壁部を備える。
これによれば、変形例3で説明したように、平板314などの可動壁部を移動させることで、液体流路を狭めることができる。よって、せん断力付与部材の移動時に、可動壁部を移動させて液体流路を狭めることで、せん断力付与部材によってせん断力が付与されず粘度が低下していない液体を低減することができる。これにより、液体流路内の液体の粘度を良好に下げることができる。
【0080】
(態様11)
態様10において、平板314などの可動壁部は、液体流路内の圧力の変動により液体流路内を往復移動する。
これによれば、変形例3で説明したように、液体流路内の圧力を負圧にすることで、平板314などの可動壁部を液体流路の内側へ移動させることができ、液体流路内の圧力を正圧にすることで、可動壁部を液体流路の外側へ移動させることができる。
【0081】
(態様12)
態様10において、平板314などの可動壁部は、供給側せん断力付与部材31aなどのせん断力付与部材との間の磁力によって、せん断力付与部材の移動に連動して移動させる。
これによれば、変形例3で説明したように、例えば、供給側せん断力付与部材31aなどのせん断力付与部材の所定の箇所に磁石を設け、せん断力付与部材の移動で上記磁石と可動壁部との距離を近づけることで、可動壁部を磁力で液体流路の内側へ移動させることができる。
【0082】
(態様13)
態様10において、平板314などの可動壁部は、供給側せん断力付与部材31aなどのせん断力付与部材に接触する脚部314aなどの接触部を有し、せん断力付与部材の接触部が接触する箇所は、せん断力付与部材の移動方向において、可動壁部の移動方向の位置が変化する。
これによれば、
図16を用いて説明したように、せん断力付与部材の移動に連動して、平板314などの可動壁部を移動させることができる。
【0083】
(態様14)
態様10乃至13いずれかにおいて、平板314などの可動壁部は、液体が通過する複数の開口部を有する。
これによれば、変形例3で説明したように、平板314などの可動壁部が移動することで、液体流路内の液体が、可動壁部の開口部を通過する。液体がこの開口部を通過する際に、液体にせん断力が付与される。これにより、せん断力付与部材と可動壁部とで、液体流路内の液体に対してせん断力を付与することができ、液体流路内のチクソ性の液体の粘度を良好に低下させることができる。
【0084】
(態様15)
態様1乃至14いずれかにおいて、せん断力付与部材31a,31bは、液体が通過す複数の開口を備えたせん断流路板312などのせん断流路部を有する。
これによれば、実施形態で説明したように、液体がせん断流路板312などのせん断流路部の開口を通過する際に、液体にせん断力を付与することができる。これにより、液体流路内のチクソ性の液体の粘度を良好に低下させることができる。
【0085】
(態様16)
態様15において、せん断流路板312などのせん断流路部が前記液体流路内に複数設けられている。
これによれば、液体流路内全体のインクの粘度をすばやく低下させることができる。また、せん断力付与部材31a,31bが、液体流路内を移動する構成の場合は、少ないせん断力付与部材31a,31bの移動量で、液体流路内全体のインクの粘度を低下させることが可能となる。
【0086】
(態様17)
液体吐出ユニットは、態様1乃至16いずれかの液体吐出ヘッドを備える。
これによれば、チクソ性液体の粘度を下げることができ、液送ポンプにかかる負荷を低減することができる。
【0087】
(態様18)
チクソ性の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドと、液体吐出ヘッドに液体を供給する供給循環機構594などの液体供給部とを備える液体吐出ユニットにおいて、液体供給部内を移動して液体供給部内の液体にせん断力を付与するせん断力付与部材を備える。
これによれば、せん断力付与部材によって、液体供給部内のチクソ性の液体にせん断力を付与して、低粘度化することができる。よって、せん断力付与部材により液体供給部内の液体を低粘度化させてから、液送ポンプ438などのポンプの駆動を開始することが可能となり、ポンプにかかる負荷を低減することができる。
【0088】
(態様19)
態様17または18において、液体吐出ヘッドに液体を供給する液体供給部は、液体を流動させるポンプを有し、ポンプの駆動開始前に、せん断力付与部材により液体にせん断力を付与する。
これによれば、実施形態で説明したようにチクソ性の液体の粘度を低下させて、圧力損失を低減させてから、ポンプの駆動を行うことができ、ポンプ駆動開始時のポンプにかかる負荷を低減することができる。
【0089】
(態様20)
液体を吐出する装置において、態様1乃至16いずれか一項に記載の液体吐出ヘッド、又は、態様17乃至19いずれかの液体吐出ユニットを有する。
これによれば、チクソ性液体の粘度を下げることができ、液送ポンプにかかる負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 :液体流路
10a :液体供給路
10b :液体排出路
10c :個別液室
10d :供給口
10e :排出口
10f :中継流路
12 :ノズル
13 :開閉ピン
30 :せん断力付与機構
31a :供給側せん断力付与部材
31b :排出側せん断力付与部材
32 :バネ
33 :押圧プレート
34 :接続部材
35 :バネ支持軸
41 :貫通孔
311 :切り欠き部
312 :せん断流路板
313 :弾性軸
313a :弾性突起部
313b :大径部
313c :傾斜部
313d :小径部
314 :平板
314a :脚部
315 :バネ
410 :インクタンク
438 :液送ポンプ
503 :キャリッジ
504 :液体吐出ヘッド
505 :主走査モータ
510 :用紙
540 :液体吐出ユニット
556 :ペアチューブ
556a :供給チューブ
556b :循環チューブ
591A :側板
593 :主走査移動機構
594 :供給循環機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】