(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123057
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】カメラモジュール用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20230829BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230829BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230829BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20230829BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20230829BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L23/08
C08L63/00 A
C08K7/00
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026906
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】酒井 不二
(72)【発明者】
【氏名】中村 真奈
【テーマコード(参考)】
2H044
4J002
【Fターム(参考)】
2H044AJ05
4J002BB072
4J002CD192
4J002CF161
4J002CL081
4J002DA039
4J002DE186
4J002DG047
4J002DJ017
4J002DJ036
4J002DJ058
4J002FA018
4J002FA066
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】表面が起毛しにくく、摺動摩耗性と粒子の脱離と異方性とが抑制され、機械的強度及び耐熱性に優れるカメラモジュール用部品を製造するために用いられる、流動性が良好なカメラモジュール用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたカメラモジュールを提供する。
【解決手段】本発明に係るカメラモジュール用液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂、(B)ウィスカー、(C)粒状充填剤、(D)板状充填剤、及び(E)エポキシ基含有共重合体を含有し、前記(C)粒状充填剤のメディアン径は、0.3~8.0μmであり、前記(D)板状充填剤のメディアン径は、10~50μmであり、前記液晶性樹脂組成物全体に対して、(B)成分の含有量は10~30質量%、(C)成分の含有量は3~20質量%、(D)成分の含有量は3~20質量%、(B)~(D)成分の合計の含有量は25~45質量%、(E)成分の含有量は2~6質量%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶性樹脂、
(B)ウィスカー、
(C)粒状充填剤、
(D)板状充填剤、及び
(E)エポキシ基含有共重合体
を含有するカメラモジュール用液晶性樹脂組成物であって、
前記(C)粒状充填剤のメディアン径は、0.3~8.0μmであり、
前記(D)板状充填剤のメディアン径は、10~50μmであり、
前記液晶性樹脂組成物全体に対して、
前記(B)ウィスカーの含有量は、10~30質量%、
前記(C)粒状充填剤の含有量は、3~20質量%、
前記(D)板状充填剤の含有量は、3~20質量%、
前記(B)ウィスカー、前記(C)粒状充填剤、及び前記(D)板状充填剤の合計の含有量は、25~45質量%、
前記(E)エポキシ基含有共重合体の含有量は、2~6質量%
である液晶性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである請求項1に記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)ウィスカーは、ウォラストナイト及びチタン酸カリウムウィスカーからなる群より選択される1種以上である請求項1又は2に記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)粒状充填剤は、シリカ及び硫酸バリウムからなる群より選択される1種以上である請求項1から3のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)板状充填剤は、マイカ及びタルクからなる群より選択される1種以上である請求項1から4のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物からなるカメラモジュール用部品。
【請求項7】
請求項6に記載の部品を備えるカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュール用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリエステル樹脂に代表される液晶性樹脂は、優れた機械的強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有し、優れた寸法安定性も有するため高機能エンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。最近では、液晶性樹脂は、これらの特長を生かして、精密機器部品に使用されるようになっている。
【0003】
精密機器、特にレンズがあるような光学機器の場合、わずかなゴミ、埃等が機器性能に影響を与える。例えばカメラモジュールのような光学機器に用いられる部品においては、小さなゴミ、油分、埃がレンズに付着すると、カメラモジュールの光学特性が著しく低下する。このような光学特性の低下を防ぐ目的で、通常、カメラモジュールを構成する部品(以下、「カメラモジュール用部品」という場合がある。)は、組み立て前に超音波洗浄され、表面に付着している小さなゴミ、油分、埃等が除去される。
【0004】
上記のように、液晶性樹脂組成物を成形してなる成形体は、高分子の分子配向が表面部分で特に大きいため成形体表面が剥離しやすいので、この成形体を超音波洗浄すると表面が剥離して毛羽立ちという起毛現象が生じ、この毛羽立った起毛部分は小さなゴミが発生する原因となる。
【0005】
したがって、液晶性樹脂組成物をカメラモジュール用部品の原料として用いる場合には、成形体を超音波洗浄しても成形体表面が起毛しないような特殊な液晶性樹脂組成物を用いる。特殊な液晶性樹脂組成物としては、液晶性樹脂と特定のタルクとカーボンブラックとを含むカメラモジュール用液晶性樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らの検討では、特許文献1に記載されるカメラモジュール用液晶性樹脂組成物では成形体表面の起毛抑制が不十分であり、より一層、成形体表面が起毛しにくい成形体を製造するためのカメラモジュール用液晶性樹脂組成物が求められる。
【0008】
また、液晶性樹脂組成物の成形体からなるカメラモジュール用部品は、機械的強度及び耐熱性に優れることが求められ、寸法安定性向上のため、異方性が低減していることも求められる。更に、当該カメラモジュール用部品は、2つ以上の部材が動的に接触するような形態で用いられる場合があるため、摺動摩耗性(即ち、2つ以上の部材が動的に接触したときの摩耗のしやすさ)が低減されていることも求められる。加えて、液晶性樹脂組成物を成形して、カメラモジュール用部品を構成する成形体を得る場合、該液晶性樹脂組成物には、良好な流動性が求められる。
【0009】
近年、カメラモジュール用部品が搭載される機器の小型化や薄型化が進んだ結果、落下等による当該機器の衝撃時に、カメラモジュール用部品を構成する成形体表面から粒子が脱離しやすくなり、脱離した粒子はレンズに付着して、カメラモジュールの光学特性が著しく低下しやすくなっている。よって、カメラモジュール用部品は、衝撃時に、当該カメラモジュール用部品を構成する成形体表面からの粒子の脱離が低減されていることも求められる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、表面が起毛しにくく、摺動摩耗性と粒子の脱離と異方性とが抑制され、機械的強度及び耐熱性に優れるカメラモジュール用部品を製造するために用いられる、流動性が良好なカメラモジュール用液晶性樹脂組成物及びそれを用いたカメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、液晶性樹脂とウィスカーと粒状充填剤と板状充填剤とエポキシ基含有共重合体とを、特定の割合で含有し、前記粒状充填剤のメディアン径及び前記板状充填剤のメディアン径がそれぞれ所定の範囲であるカメラモジュール用液晶性樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0012】
(1) (A)液晶性樹脂、
(B)ウィスカー、
(C)粒状充填剤、
(D)板状充填剤、及び
(E)エポキシ基含有共重合体
を含有するカメラモジュール用液晶性樹脂組成物であって、
前記(C)粒状充填剤のメディアン径は、0.3~8.0μmであり、
前記(D)板状充填剤のメディアン径は、10~50μmであり、
前記液晶性樹脂組成物全体に対して、
前記(B)ウィスカーの含有量は、10~30質量%、
前記(C)粒状充填剤の含有量は、3~20質量%、
前記(D)板状充填剤の含有量は、3~20質量%、
前記(B)ウィスカー、前記(C)粒状充填剤、及び前記(D)板状充填剤の合計の含有量は、25~45質量%、
前記(E)エポキシ基含有共重合体の含有量は、2~6質量%
である液晶性樹脂組成物。
【0013】
(2) 前記(A)液晶性樹脂は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである(1)に記載の液晶性樹脂組成物。
【0014】
(3) 前記(B)ウィスカーは、ウォラストナイト及びチタン酸カリウムウィスカーからなる群より選択される1種以上である(1)又は(2)に記載の液晶性樹脂組成物。
【0015】
(4) 前記(C)粒状充填剤は、シリカ及び硫酸バリウムからなる群より選択される1種以上である(1)から(3)のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
【0016】
(5) 前記(D)板状充填剤は、マイカ及びタルクからなる群より選択される1種以上である(1)から(4)のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
【0017】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物からなるカメラモジュール用部品。
【0018】
(7) (6)に記載の部品を備えるカメラモジュール。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物は流動性が良好であり、この液晶性樹脂組成物を原料として、カメラモジュール用部品を製造すれば、表面が起毛しにくく、摺動摩耗性と粒子の脱離と異方性とが抑制され、機械的強度及び耐熱性に優れるカメラモジュール用部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一般的なカメラモジュールを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、摺動摩耗量評価の方法を説明するための図である。
【
図3】
図3は、タンブリング試験に使用したカメラモジュール型成形体を示す図である。なお、図中の数値の単位はmmである。
【
図4】
図4は、実施例及び比較例において、成形収縮率を求める際に測定した試験片寸法の測定箇所を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0022】
<カメラモジュール用液晶性樹脂組成物>
本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物は、(A)液晶性樹脂、(B)ウィスカー、(C)粒状充填剤、(D)板状充填剤、及び(E)エポキシ基含有共重合体を含有する。
【0023】
[(A)液晶性樹脂]
本発明で使用する(A)液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0024】
上記のような(A)液晶性樹脂の種類としては特に限定されず、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。(A)液晶性樹脂としては、60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1質量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、更に好ましくは2.0~10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが好ましく使用される。
【0025】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドは、特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。
【0026】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位と、からなるポリエステルアミド等が挙げられる。更に上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0027】
本発明に適用できる(A)液晶性樹脂を構成する具体的化合物の好ましい例としては、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;1,4-フェニレンジカルボン酸、1,3-フェニレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p-アミノフェノール、p-フェニレンジアミン、N-アセチル-p-アミノフェノール等の芳香族アミン類が挙げられる。
【化1】
(X:アルキレン(C
1~C
4)、アルキリデン、-O-、-SO-、-SO
2-、-S-、及び-CO-より選ばれる基である)
【化2】
【化3】
(Y:-(CH
2)
n-(n=1~4)及び-O(CH
2)
nO-(n=1~4)より選ばれる基である。)
【0028】
本発明に用いられる(A)液晶性樹脂の調製は、上記のモノマー化合物(又はモノマーの混合物)から直接重合法やエステル交換法を用いて公知の方法で行うことができ、通常は溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。エステル形成能を有する上記化合物類はそのままの形で重合に用いてもよく、また、重合の前段階で前駆体から該エステル形成能を有する誘導体に変性されたものでもよい。これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、N-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒が挙げられる。触媒の使用量は一般にはモノマーの全質量に対して約0.001~1質量%、特に約0.01~0.2質量%が好ましい。これらの重合方法により製造されたポリマーは更に必要があれば、減圧又は不活性ガス中で加熱する固相重合法により分子量の増加を図ることができる。
【0029】
上記のような方法で得られた(A)液晶性樹脂の溶融粘度は特に限定されない。一般には成形温度での溶融粘度が剪断速度1000sec-1で3Pa・s以上500Pa・s以下のものが使用可能である。しかし、それ自体あまり高粘度のものは流動性が非常に悪化するため好ましくない。なお、上記(A)液晶性樹脂は2種以上の液晶性樹脂の混合物であってもよい。
【0030】
本発明の液晶性樹脂組成物において、(A)液晶性樹脂の含有量は、好ましくは44~73質量%であり、より好ましくは47.5~67.5質量%であり、更により好ましくは50.8~62.2質量%である。(A)成分の含有量が上記範囲内であると、流動性、耐熱性等の点で好ましい。
【0031】
[(B)ウィスカー]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、ウィスカーが含まれる。本発明に係る液晶性樹脂組成物にウィスカーが含まれることにより、成形体の耐熱性が向上しやすい。本明細書において、ウィスカーとは、鉱物繊維を指し、より具体的には、針状単結晶を指す。ウィスカーは、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
(B)ウィスカーの平均繊維長は、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは7~170μmであり、更により好ましくは9~150μmである。上記平均繊維長が上記範囲内であると、成形体の耐熱性がより向上しやすい。なお、本明細書において、(B)ウィスカーの平均繊維長としては、ウィスカーの実体顕微鏡画像10枚をCCDカメラからPCに取り込み、画像測定機によって画像処理手法により、実体顕微鏡画像1枚ごとに100本のウィスカー、即ち、合計1000本のウィスカーについて繊維長を測定した値の平均を採用する。液晶性樹脂組成物中の(B)ウィスカーの平均繊維長は、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存したウィスカーについて、上記方法を適用することで測定される。
【0033】
(B)ウィスカーの平均繊維径は、好ましくは0.2~15μm以下であり、より好ましくは0.25~10μmである。上記平均繊維径が上記範囲内であると、成形体の耐熱性がより向上しやすい。なお、本明細書において、(B)ウィスカーの繊維径としては、ウィスカーを走査型電子顕微鏡で観察し、30本のウィスカーについて繊維径を測定した値の平均を採用する。液晶性樹脂組成物中の(B)ウィスカーの繊維径は、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存したウィスカーについて、上記方法を適用することで測定される。
【0034】
(B)ウィスカーのアスペクト比、即ち、平均繊維長/繊維径の値は、本発明に係る液晶性樹脂組成物からなるカメラモジュール用部品等の成形体の耐熱性等の観点から、好ましくは8以上であり、より好ましくは10~100であり、更により好ましくは15~75である。
【0035】
(B)ウィスカーとしては、特に限定されず、例えば、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化珪素ウィスカー、三窒化珪素ウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、炭化珪素ウィスカー、ボロンウィスカーが挙げられ、入手性等の点で、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)、炭酸カルシウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等が好ましく、チタン酸カリウムウィスカー、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)等がより好ましい。
【0036】
(B)成分の含有量は、本発明の液晶性樹脂組成物において、10~30質量%である。(B)成分の含有量が10質量%以上であると、成形体の耐熱性が向上しやすい。(B)成分の含有量が30質量%以下であると、液晶性樹脂組成物は流動性が良好となりやすく、成形体は粒子の脱離が抑制されやすい。(B)成分の含有量は、好ましくは15~25質量%であり、より好ましくは18~22質量%である。
【0037】
[(C)粒状充填剤]
(C)成分は粒状充填剤であり、(C)成分のメディアン径は0.3~8.0μmである。上記メディアン径が0.3μm以上であると、成形体の機械的強度が維持されやすい。上記メディアン径が8.0μm以下であると、液晶性樹脂組成物は流動性が良好となりやすい。上記メディアン径は、好ましくは0.5~7.5μmであり、より好ましくは0.5~7.0μmである。なお、本明細書において、(C)成分のメディアン径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法で測定した体積基準の中央値をいう。液晶性樹脂組成物中の(C)成分のメディアン径は、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存した(C)成分について、上記方法を適用することで測定される。(C)成分は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(C)成分の粒状充填剤としては、例えば、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、硅酸カリウムアルミニウム、珪藻土、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;ピロリン酸カルシウム、無水リン酸二カルシウム等のリン酸塩;炭化硅素;窒化硅素;窒化硼素等が挙げられる。本発明においては、成形体の機械的強度及び成形体の低発塵性の観点から、(C)成分として、シリカ及び硫酸バリウムからなる群より選択される1種以上を使用することが好ましく、シリカを使用することがより好ましい。
【0039】
(C)成分の含有量は、本発明の液晶性組成物において、3~20質量%である。(C)成分の含有量が3質量%以上であると、成形体の機械的強度が高くなりやすい。(C)成分の含有量が20質量%以下であると、液晶性樹脂組成物は流動性が良好となりやすく、成形体は粒子の脱離が抑制されやすい。(C)成分の含有量は、好ましくは6~15質量%であり、より好ましくは8~12質量%である。
【0040】
[(D)板状充填剤]
本発明に係る液晶性樹脂組成物には、板状充填剤が含まれる。本発明に係る液晶性樹脂組成物に板状充填剤が含まれることにより、異方性が抑制された成形体を得やすい。板状充填剤は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
(D)成分のメディアン径は10~50μmである。上記メディアン径が上記範囲内であると、得られる組成物からは、異方性が抑制された成形体を更に得やすい。上記メディアン径は、好ましくは15~40μmであり、より好ましくは20~30μmである。なお、本明細書において、(D)成分のメディアン径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法で測定した体積基準の中央値をいう。液晶性樹脂組成物中の(D)成分のメディアン径は、液晶性樹脂組成物を600℃で2時間の加熱により灰化して残存した(D)成分について、上記方法を適用することで測定される。
【0042】
本発明の液晶性樹脂組成物において、(D)板状充填剤の含有量は、3~20質量%である。(D)板状充填剤の含有量が上記範囲内であると、得られる組成物からは、異方性が抑制された成形体を更に得やすい。(D)板状充填剤の含有量は、好ましくは6~15質量%であり、より好ましくは8~12質量%である。
【0043】
本発明における板状充填剤としては、タルク、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。液晶性樹脂組成物の流動性を悪化させることなく、液晶性樹脂組成物から得られる成形体の異方性を抑制させるという点で、タルク及びマイカからなる群より選択される1種以上が好ましい。
【0044】
〔タルク〕
本発明において使用できるタルクとしては、当該タルクの全固形分量に対して、Fe2O3、Al2O3及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であり、Fe2O3及びAl2O3の合計含有量が1.0質量%超2.0質量%以下であり、かつCaOの含有量が0.5質量%未満であるものが好ましい。即ち、本発明において使用できるタルクは、その主成分たるSiO2及びMgOの他、Fe2O3、Al2O3及びCaOのうちの少なくとも1種を含有し、各成分が上記の含有量範囲で含有するものであってもよい。
【0045】
上記タルクにおいて、Fe2O3、Al2O3及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形された成形体の耐熱性が悪化しにくい。そのため、Fe2O3、Al2O3及びCaOの合計含有量は、1.0質量%以上2.0質量%以下が好ましい。
【0046】
また、上記タルクのうち、Fe2O3及びAl2O3の合計含有量が1.0質量%超のタルクは入手しやすい。また、上記タルクにおいて、Fe2O3及びAl2O3の合計含有量が2.0質量%以下であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形された成形体の耐熱性が悪化しにくい。そのため、Fe2O3及びAl2O3の合計含有量は、1.0質量%超1.7質量%以下が好ましい。
【0047】
また、上記タルクにおいて、CaOの含有量が0.5質量%未満であると、液晶性樹脂組成物の成形加工性及び当該液晶性樹脂組成物から成形された成形体の耐熱性が悪化しにくい。そのため、CaOの含有量は、0.01質量%以上0.4質量%以下が好ましい。
【0048】
〔マイカ〕
マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。本発明において使用できるマイカとしては、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等が挙げられるが、これらのうち色相が良好であり、低価格であるという点で白雲母が好ましい。
【0049】
また、マイカの製造において、鉱物を粉砕する方法としては、湿式粉砕法及び乾式粉砕法が知られている。湿式粉砕法とは、マイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕で本粉砕し、その後、脱水、乾燥を行う方法である。湿式粉砕法と比較して、乾式粉砕法は低コストで一般的な方法であるが、湿式粉砕法を用いると、鉱物を薄く細かく粉砕することがより容易である。上記のメディアン径と後述する好ましい厚みとを有するマイカが得られるという理由で、本発明においては薄く細かい粉砕物を使用することが好ましい。したがって、本発明においては、湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
【0050】
また、湿式粉砕法においては、被粉砕物を水に分散させる工程が必要であるため、被粉砕物の分散効率を高めるために、被粉砕物に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を加えることが一般的である。本発明において使用できる凝集沈降剤及び沈降助剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化第二鉄、鉄-シリカ無機高分子凝集剤、塩化第二鉄-シリカ無機高分子凝集剤、消石灰(Ca(OH)2)、苛性ソーダ(NaOH)、ソーダ灰(Na2CO3)等が挙げられる。これらの凝集沈降剤及び沈降助剤は、pHがアルカリ性又は酸性である。本発明で使用するマイカは、湿式粉砕する際に凝集沈降剤及び/又は沈降助剤を使用していないものが好ましい。凝集沈降剤及び/又は沈降助剤で処理されていないマイカを使用すると、液晶性樹脂組成物中のポリマーの分解が生じにくく、多量のガス発生やポリマーの分子量低下等が起きにくいため、得られる成形体の性能をより良好に維持するのが容易である。
【0051】
本発明において使用できるマイカの厚みは、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01~1μmであることが好ましく、0.03~0.3μmであることが特に好ましい。マイカの厚みが0.01μm以上であると、液晶性樹脂組成物の溶融加工の際にマイカが割れにくくなるため、成形体の剛性が向上しやすい可能性があるため好ましい。マイカの厚みが1μm以下であると、成形体の剛性に対する改良効果が十分となりやすいため好ましい。
【0052】
本発明において使用できるマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、かつ/又は、結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。
【0053】
(B)ウィスカー、(C)粒状充填剤、及び(D)板状充填剤の合計の含有量は、液晶性樹脂組成物全体に対して、25~45質量%であり、好ましくは30~43質量%であり、より好ましくは35~41質量%である。上記合計の含有量が上記範囲内であると、成形体の耐熱性、機械的強度、及び異方性抑制効果を確保しつつ、液晶性樹脂組成物は流動性が良好となりやすく、成形体は粒子の脱離が抑制されやすい。
【0054】
[(E)エポキシ基含有共重合体]
【0055】
本発明のカメラモジュール用液晶性組成物は、(E)エポキシ基含有共重合体を含有する。(E)エポキシ基含有共重合体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。(E)エポキシ基含有共重合体としては、特に限定されず、例えば、(E1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体及び(E2)エポキシ基含有スチレン系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。(E)エポキシ基含有共重合体は、本発明の液晶性樹脂組成物から得られる成形体の摺動摩耗性を低減させることに寄与する。
【0056】
(E1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体としては、例えば、α-オレフィンに由来する繰り返し単位とα,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位とから構成される共重合体が挙げられる。
【0057】
α-オレフィンは特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等が挙げられるが、中でもエチレンが好ましく用いられる。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルは下記一般式(IV)で示されるものである。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルは、例えばアクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル、イタコン酸グリシジルエステル等であるが、特にメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。
【化4】
【0058】
(E1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体において、α-オレフィンに由来する繰り返し単位の含有量は87~98質量%であり、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位の含有量は13~2質量%であることが好ましい。
【0059】
本発明で用いる(E1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、本発明を損なわない範囲で上記2成分以外に第3成分としてアクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、α-メチルスチレン、無水マレイン酸等のオレフィン系不飽和エステルの1種又は2種以上に由来する繰り返し単位を、上記2成分100質量部に対し0~48質量部含有してもよい。
【0060】
本発明の(E1)成分であるエポキシ基含有オレフィン系共重合体は、各成分に対応するモノマー及びラジカル重合触媒を用いて通常のラジカル重合法により容易に調製することができる。より具体的には、通常、α-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルとをラジカル発生剤の存在下、500~4000気圧、100~300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下又は不存在下に共重合させる方法により製造できる。また、α-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステル及びラジカル発生剤とを混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造できる。
【0061】
(E2)のエポキシ基含有スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン類に由来する繰り返し単位とα,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位とから構成される共重合体が挙げられる。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルについては、(E1)成分で説明したものと同様であるため説明を省略する。
【0062】
スチレン類としては、スチレン、α-メチルスチレン、ブロム化スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられるが、スチレンが好ましく用いられる。
【0063】
本発明で用いる(E2)エポキシ基含有スチレン系共重合体は、上記2成分以外に第3成分として他のビニルモノマーの1種又は2種以上に由来する繰り返し単位を含有する多元共重合体であってもよい。第3成分として好適なものは、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等のオレフィン系不飽和エステルの1種又は2種以上に由来する繰り返し単位である。これらの繰り返し単位を共重合体中に40質量%以下含有するエポキシ基含有スチレン系共重合体が(E2)成分として好ましい。
【0064】
(E2)エポキシ基含有スチレン系共重合体において、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位の含有量は2~20質量%であり、スチレン類に由来する繰り返し単位の含有量は80~98質量%であることが好ましい。
【0065】
(E2)エポキシ基含有スチレン系共重合体は、各成分に対応するモノマー及びラジカル重合触媒を用いて通常のラジカル重合法により調製することができる。より具体的には、通常、スチレン類とα,β-不飽和酸のグリシジルエステルとをラジカル発生剤の存在下、500~4000気圧、100~300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下又は不存在下に共重合させる方法により製造できる。また、スチレン類とα,β-不飽和酸のグリシジルエステル及びラジカル発生剤とを混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造できる。
【0066】
なお、(E)エポキシ基含有共重合体としては、(E1)エポキシ基含有オレフィン系共重合体が耐熱性の点で好ましい。(E1)成分と(E2)成分とを併用する場合、これら成分同士の割合は、適宜、要求される特性に沿って選択することができる。
【0067】
(E)エポキシ基含有共重合体の含有量は、本発明のカメラモジュール用樹脂組成物において、2~6質量%である。(E)成分の含有量が2質量%以上であると、摺動摩耗性が抑制された成形体を更に得やすい。(E)成分の含有量が6質量%以下であると、流動性を損なわず、良好な成形体を得やすい。より好ましい上記含有量は2.5~5.5質量%であり、更により好ましい上記含有量は2.8~5.2質量%である。
【0068】
[(F)カーボンブラック]
【0069】
本発明に任意成分として用いる(F)カーボンブラックは、樹脂着色に用いられる一般的に入手可能なものであれば、特に限定されるものではない。通常、(F)カーボンブラックには一次粒子が凝集して出来上がる塊状物が含まれているが、50μm以上の大きさの塊状物が著しく多く含まれていない限り、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体の表面に多くのブツ(カーボンブラックが凝集した細かいブツブツ状突起物(細かい凹凸))は発生しにくい。上記塊状物粒子径が50μm以上の粒子の含有率が20ppm以下であると、成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすい。好ましい含有率は5ppm以下である。
【0070】
(F)カーボンブラックの含有量としては、カメラモジュール用液晶性樹脂組成物において、0.5~5質量%の範囲が好ましい。カーボンブラックの含有量が0.5質量%以上であると、得られる樹脂組成物の漆黒性が低下しにくく、遮光性に不安が出にくい。カーボンブラックの含有量が5質量%以下であると不経済となりにくく、またブツが発生しにくい。(F)カーボンブラックの含有量は、より好ましくは1~4質量%であり、更により好ましくは2~3質量%である。
【0071】
[その他の成分]
【0072】
本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲で、その他の重合体、その他の充填剤、一般に合成樹脂に添加される公知の物質、即ち、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。
【0073】
その他の充填剤とは、(B)ウィスカー、(C)粒状充填剤、(D)板状充填剤、及び(E)カーボンブラック以外の充填剤をいい、例えば、ガラス繊維等の、(B)ウィスカー以外の繊維状充填剤が挙げられる。成形体表面の起毛抑制効果が高くなりやすいことから、本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物は、(B)ウィスカー以外の繊維状充填剤、例えば、ガラス繊維を含有しないことが好ましい。
【0074】
[カメラモジュール用液晶性樹脂組成物の調製]
【0075】
本発明のカメラモジュール用樹脂組成物の調製は特に限定されない。例えば、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、任意に(F)成分、及び任意にその他の成分を配合して、これらを1軸又は2軸押出機を用いて溶融混練処理することで、カメラモジュール用液晶性樹脂組成物の調製が行われる。
【0076】
[カメラモジュール用液晶性樹脂組成物]
上記のようにして得られた本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物は、溶融粘度が80Pa・sec未満であることが好ましい。溶融時の流動性が高く、成形性に優れる点も本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物の特徴の一つである。本明細書において、溶融粘度としては、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高いシリンダー温度、剪断速度1000sec-1の条件で、ISO 11443に準拠した測定方法で得られた値を採用する。
【0077】
<カメラモジュール用部品及びカメラモジュール>
【0078】
上記カメラモジュール用液晶性樹脂組成物を用いて、カメラモジュール用部品を製造する。本発明の樹脂組成物を原料として用いれば、カメラモジュール用部品の表面が起毛しにくくなる。カメラモジュール用部品は、超音波洗浄されるため、超音波洗浄されても表面が起毛しにくいことが求められる。本発明の樹脂組成物を用いれば、カメラモジュール用部品の超音波洗浄をより強い条件で行っても、ゴミ等の原因となる脱落物が生じないか、ほとんど生じない。したがって、カメラモジュール用部品が完成品に組み込まれた後に、このカメラモジュール用部品の表面が起毛することにより生じるゴミで、完成品の品質に影響を与えることはほとんど無い。
【0079】
本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物を成形してなるカメラモジュール用部品について説明する。一般的なカメラモジュールの断面を
図1に模式的に示した。
図1に示す通り、カメラモジュール1は、基板10と、撮像素子11と、リード配線12と、レンズホルダー13と、バレル14と、レンズ15と、IRフィルター16と、ガイド17と、ベース18と、コイル19と、永久磁石20と、ヨーク21と、カバー22とを備える。
【0080】
撮像素子11は基板10上に配置されており、撮像素子11と基板10との間はリード配線12で電気的に接続されている。
【0081】
ガイド17は、基板10上に配置され、ベース18は、ガイド17上に配置され、レンズホルダー13は、ベース18上に上下可能に配置されており、レンズホルダー13には、コイル19が巻かれている。レンズホルダー13は頂部に開口が形成されており、この開口壁面には螺旋状の溝部が形成されている。ガイド17は、頂部に開口が形成されており、この開口を閉じるように、IRフィルター16が、ガイド17上に配置される。ガイド17及びIRフィルター16は、撮像素子11を覆う。ベース18上には、ヨーク21が配置され、ヨーク21の内側には永久磁石20が接し、ヨーク21上には、頂部に開口が形成されているカバー22が配置される。永久磁石20は、コイル19の周囲に配置される。
【0082】
バレル14は円筒状であり、円筒状の内部にレンズ15が略水平になるように保持されている。また、円筒の一端の側壁には螺旋状の凸部が形成されており、この螺旋状の凸部と、レンズホルダー13の開口壁面に形成された螺旋状の溝部とが螺合することで、バレル14はレンズホルダー13と連結する。
図1に示すように、IRフィルター16とレンズ15は略平行に並ぶ。なお、レンズホルダー13の頂部とヨーク21の頂部との間、及び、レンズホルダー13の底部とベース18の頂部との間には、板バネ(図示せず)が連結されており、これにより、レンズホルダー13並びにレンズホルダー13を介してバレル14、レンズ15、及びコイル19がカメラモジュール1内に保持される。
【0083】
図1に示すようなカメラモジュール1においては、レンズホルダー13が、レンズホルダー13に巻かれたコイル19が発生する磁力とコイル19の周囲に配置された永久磁石20との作用によってベース18上を上下することで、レンズ15と撮像素子11との間の距離が変化する。この距離を調整することでカメラのフォーカス調整を行うことができる。
【0084】
上記のようなカメラモジュール1において、カメラモジュール用部品であるレンズホルダー13、ガイド17、及び/又はベース18を、本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物を原料として製造することができる。一般的な液晶性樹脂組成物はこれらの部品を製造するための原料として適さない。一般的な液晶性樹脂組成物を原料としてレンズホルダー13、ガイド17、及び/又はベース18を製造すると以下の問題を生じる。
【0085】
一般的な液晶性樹脂組成物を成形してなる成形体は、高分子の分子配向が表面部分で特に大きいため成形体表面が起毛しやすく、この起毛は小さなゴミが発生する原因となる。この小さなゴミがレンズ15等に付着するとカメラモジュールの性能が低下する。
【0086】
レンズホルダー13、ガイド17、ベース18等のカメラモジュール用部品は、表面の埃や小さなゴミを除去する目的で、カメラモジュール1に組み込まれる前に超音波洗浄される。しかし、一般的な液晶性樹脂組成物を成形してなる成形体の表面は起毛しやすいため、超音波洗浄すると表面が毛羽立つ。このような問題が生じることから、通常、液晶性樹脂組成物を成形してなる成形体を超音波洗浄することはできない。
【0087】
上記のフォーカス調整は、レンズホルダー13が、レンズホルダー13に巻かれたコイル19が発生する磁力とコイルの周囲に配置された永久磁石20との作用によってベース18上を上下することで行われる。このとき、一般的な液晶性樹脂組成物を成形してなる成形体は、上記の通り、表面が起毛しやすいため、表面が剥離して剥離物が生じる可能性がある。この剥離物は小さなゴミとなりレンズ15等に付着してカメラモジュールの性能を低下させる可能性が高い。
【0088】
以上の通り、通常、液晶性樹脂組成物をレンズホルダー13、ガイド17、及び/又はベース18の原料として用いると不具合が生じやすいが、本発明のカメラモジュール用液晶性樹脂組成物は、成形体としたときに、この成形体を超音波洗浄しても起毛の問題がほとんど生じないほど成形体の表面状態が改良されているため、レンズホルダー13、ガイド17、及び/又はベース18の原料として好ましく用いることができる。
【実施例0089】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0090】
<液晶性樹脂>
・液晶性ポリエステルアミド樹脂
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレットを得た。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で2時間の熱処理を行って、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの融点は336℃、350℃における溶融粘度は19.0Pa・sであった。なお、上記ポリマーの溶融粘度は、後述する溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);1380g(60モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸(HNA);157g(5モル%)
1,4-フェニレンジカルボン酸(TA);484g(17.5モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP);388g(12.5モル%)
N-アセチル-p-アミノフェノール(APAP);126g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
【0091】
・液晶性ポリエステル樹脂
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に360℃まで5.5時間かけて昇温し、そこから30分かけて5Torr(即ち、667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で3時間の熱処理を行い、全芳香族ポリエステル1のペレットを得た。ペレットの融点は348℃、溶融粘度は9Pa・sであった。なお、全芳香族ポリエステル1の融点は、後述する融点の測定方法の通りに測定し、全芳香族ポリエステル1の溶融粘度は、後述する溶融粘度の測定方法と同様にして測定した。
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA);1218g(48モル%)
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA);37g(2モル%)
1,4-フェニレンジカルボン酸:560g(TA);(25モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP);628g(25モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1432g
【0092】
[融点の測定方法]
TAインスツルメント社製DSCにて、液晶性樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の測定後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温条件で加熱した際に観測される吸熱ピークの温度を測定した。
【0093】
<液晶性樹脂以外の材料>
・ウォラストナイト:NYGLOS 8(NYCO Materials社製、ケイ酸カルシウムウィスカー(ウォラストナイト)、平均繊維長136μm、繊維径8μm)
・チタン酸カリウム:ティスモN-102(大塚化学(株)製、チタン酸カリウムウィスカー(チタン酸カリウム繊維)、繊維径0.3~0.6μm、平均繊維長10~20μm)
・ガラス繊維:ECS03T-786H(日本電気硝子(株)製、チョップドストランド、繊維径10μm、長さ3mm)
・シリカ1:アドマファインSO-C2((株)アドマテックス製、シリカ、メディアン径0.5μm)
・シリカ2:デンカ溶融シリカFB-5D(デンカ(株)製、シリカ、メディアン径6.5μm)
・硫酸バリウム:硫酸バリウム(堺化学工業(株)製、メディアン径2.0μm)
・ガラスビーズ:EGB731(ポッターズ・バロティーニ(株)製、メディアン径20.0μm)
・マイカ:AB-25S((株)ヤマグチマイカ製、マイカ、メディアン径25.0μm)
・カーボンブラック:VULCAN XC305(キャボットジャパン(株)製、平均粒子径20nm、粒子径50μm以上の粒子の割合が20ppm以下)
・エポキシ基含有オレフィン系共重合体:ボンドファースト2C(住友化学(株)製、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレートの含有量6質量%)
【0094】
<カメラモジュール用液晶性樹脂組成物の製造>
上記成分を、表1又は2に示す割合(質量%)で二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α型)を用いて、下記のシリンダー温度で溶融混練し、カメラモジュール用液晶性樹脂組成物ペレットを得た。
〔製造条件〕
シリンダー温度:
350℃:上記液晶性ポリエステルアミド樹脂を含有する液晶性樹脂組成物の場合
370℃:上記液晶性ポリエステル樹脂を含有する液晶性樹脂組成物の場合
【0095】
<溶融粘度>
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1B型を使用し、液晶性樹脂の融点よりも10~30℃高い温度で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、液晶性樹脂組成物の溶融粘度を測定した。なお、具体的な測定温度は、上記液晶性ポリエステルアミド樹脂を含有する液晶性樹脂組成物については350℃、上記液晶性ポリエステル樹脂を含有する液晶性樹脂組成物については370℃であった。液晶性樹脂組成物の流動性を下記の基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
○(良好):溶融粘度が80Pa・sec未満であった。
×(不良):溶融粘度が80Pa・sec以上であった。
【0096】
<荷重たわみ温度>
下記成形条件で、液晶性樹脂組成物を射出成形し、ISO試験片A形を得た。この試験片を80mm×10mm×4mmに切り出し、試験片を作製した。この試験片を用いて、ISO75-1,2に準拠して荷重たわみ温度を測定した。荷重たわみ温度を成形体の耐熱性を表す指標として用いた。成形体の耐熱性を下記の基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
○(良好):荷重たわみ温度が225℃超であった。
×(不良):荷重たわみ温度が225℃以下であった。
[成形条件]
成形機:住友重機械工業(株)、SE100DU
シリンダー温度:
350℃(実施例1及び3~6並びに比較例1~10)
370℃(実施例2)
金型温度:90℃
射出速度:33mm/sec
【0097】
<摺動摩耗量>
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、測定用ピン(直径10mm、長さ10mm)及び測定用試験片(80mm×80mm×1mm)を得た。
図2に示す通り、測定用試験片上で測定用ピンに荷重をかけ、下記の往復摺動条件で往復摺動試験を行った後、測定用ピンと測定用試験片との合計の質量減少量を算出して、摺動摩耗量とした。成形体の摺動摩耗性を下記の基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
○(良好):摺動摩耗量が0.2mg以下であった。
×(不良):摺動摩耗量が0.2mg超であった。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1及び3~6並びに比較例1~10)
370℃(実施例2)
金型温度: 80℃
射出速度: 33mm/sec
〔往復摺動条件〕
すべり速度:5cm/sec
ストローク:30mm
荷重:9.8N(1kg重)
往復回数:1000回
【0098】
<タンブリング試験>
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE30DUZ」)を用いて、以下の成形条件で成形し、
図3に示すような、10.0mm×10.0mm×1.0mmのカメラモジュール型成形体を得た。得られたカメラモジュール型成形体20個を一日静置した後、金属缶(直径55mm×高さ75mm)に封入し、振盪機を用いて300rpmで1時間震盪した(タンブリング試験)。震盪前後で、エアー洗浄した成形体の重量を秤量し、成形体20個の合計の重量減少を算出した。タンブリング試験による重量減少を下記の基準で評価した。重量減少は、成形体表面からの粒子の脱離に起因するので、重量減少が小さいほど、成形体表面からの粒子の脱離はより低減されている。結果を表1及び2に示す。
○(良好):重量減少が1.5mg以下であった。
×(不良):重量減少が1.5mg超であった。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1及び3~6並びに比較例1~10)
370℃(実施例2)
金型温度: 80℃
射出速度: 100mm/sec
保圧: 50MPa
【0099】
<成形収縮率>
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE-100DU」)を用いて、以下の成形条件で成形し、測定用試験片(80mm×80mm×1mmt)を得た。1日静置したこの試験片の寸法を、
図4に示す流動方向測定箇所及び直角方向測定箇所で測定した。測定された試験片寸法と、上記測定箇所に対応する金型上の箇所における金型寸法とから、式:(金型寸法-試験片寸法)/金型寸法×100に従い、流動方向の成形収縮率及び直角方向の成形収縮率を求めた。なお、金型寸法は、流動方向で79.981mm、直角方向で79.994mmであった。直角方向の成形収縮率と流動方向の成形収縮率との差を算出して、成形体の異方性とした。成形体の異方性を下記の基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
○(良好):成形体の異方性が1.0%未満であった。
×(不良):成形体の異方性が1.0%以上であった。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1及び3~6並びに比較例1~10)
370℃(実施例2)
金型温度: 80℃
射出速度: 33mm/sec
保圧: 50MPa
【0100】
<落下ウェルド強度>
実施例及び比較例のペレットを、成形機((株)ソディック製 「TR100EH」)を用いて、以下の成形条件で成形し、長さ方向の中央にウェルド部を有する短冊型の測定用試験片(50mm×5mm×0.8mm)を得た。得られた試験片10本を高さ1.2mから落下させ、ウェルド部が破断した試験片の数をカウントした。落下ウェルド強度を下記の基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
○(良好):試験片10本中、ウェルド部が破断した試験片の数が5本以下であった。
×(不良):試験片10本中、ウェルド部が破断した試験片の数が6本以上であった。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1及び3~6並びに比較例1~10)
370℃(実施例2)
金型温度: 80℃
射出速度: 100mm/sec
保圧: 50MPa
【0101】
<ダスト発生数>
実施例及び比較例のペレットを、成形機(住友重機械工業(株)製 「SE30DUZ」)を用いて、以下の成形条件で成形し、12.5mm×120mm×0.8mmの成形体を得た。この成形体を試験片として使用した。
〔成形条件〕
シリンダー温度:
350℃(実施例1及び3~6並びに比較例1~10)
370℃(実施例2)
金型温度: 90℃
射出速度: 80mm/sec
〔評価〕
【0102】
上記試験片を3分間、室温の水中で超音波洗浄機(出力300W、周波数45kHz)にかけた。その後、パーティクルカウンター(RION(株)製 液中微粒子計数器KL-11A(PARTICLECOUNTER))にて、上記水中に存在する2μm以上の粒子数を測定し、ダスト発生数として下記の基準で評価した。結果を表1及び2に示す。
○(良好):ダスト発生数が60000個/80ml以下であった。
×(不良):ダスト発生数が60000個/80ml超であった。
【0103】
【0104】
【0105】
表1及び2に記載の結果から明らかなように、実施例の液晶性樹脂組成物は、表面が起毛しにくく、摺動摩耗性と粒子の脱離と異方性とが抑制され、機械的強度及び耐熱性に優れるカメラモジュール用部品の製造を実現でき、流動性が良好であることが確認された。