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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123192
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】移載装置、研磨設備、及び移載方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230829BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230829BHJP
   H01L 21/463 20060101ALI20230829BHJP
   B24B 37/08 20120101ALI20230829BHJP
   B24B 37/28 20120101ALI20230829BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/304 621A
H01L21/463
B24B37/08
B24B37/28
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027114
(22)【出願日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】390004879
【氏名又は名称】三菱マテリアルテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貢
(72)【発明者】
【氏名】金井 隆一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅史
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】森田 優
(72)【発明者】
【氏名】江▲崎▼ 圭佑
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB75
3C034BB76
3C034BB93
3C034CA22
3C034CB11
3C034DD10
3C034DD20
3C158AB03
3C158AB08
3C158AC02
3C158CB03
3C158DA06
3C158DA09
3C158EA02
3C158EB02
5F057AA37
5F057BB03
5F057BB11
5F057FA32
5F057FA33
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA31
5F131CA18
5F131DA05
5F131DA32
5F131DA33
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5F131DB72
5F131DB76
5F131DB82
5F131EA05
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5F131EA17
5F131EA24
5F131EB75
5F131FA32
5F131FA33
5F131GA05
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5F131GA33
5F131GA52
5F131GA72
5F131KA05
5F131KA14
5F131KA72
5F131KB05
5F131KB09
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB54
5F131KB55
(57)【要約】
【課題】内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアをそれぞれ容易に嵌め合わせる移載装置を提供する。
【解決手段】定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有する研磨部に、平板状であって、外周縁に設けられ内歯車及び太陽歯車に嵌め合い可能な複数の歯部、及び基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを移載させる移載装置46であって、キャリアを移載させる移載部と、内歯車の複数の歯部の一部及び太陽歯車の複数の歯部の一部の像を取得する撮像部54と、移載部を制御する制御部と、を備え、制御部は、像に基づいて、移載部により、内歯車及び太陽歯車に対する、支持面に沿う沿面方向のキャリアの位置、及び支持面に直交する軸線O5周りのキャリアの向きを調整し、移載部により、内歯車の複数の歯部及び太陽歯車の複数の歯部にキャリアの複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有し、基板の厚さ方向を向く面を研磨する遊星歯車装置式の研磨部に、平板状であって、外周縁に設けられ前記内歯車及び前記太陽歯車にそれぞれ嵌め合い可能な複数の歯部、及び前記基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを移載させる移載装置であって、
前記キャリアを移載させる移載部と、
前記内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び前記太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像を取得する撮像部と、
前記移載部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記像に基づいて、前記移載部により、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記支持面に沿う沿面方向の前記キャリアの位置、及び前記支持面に直交する軸線周りの前記キャリアの向きを調整し、
前記移載部により、前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部に前記キャリアの前記複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせる、移載装置。
【請求項2】
前記移載部は、
連結軸に沿って並べて配置された複数のリンクと、
前記連結軸に沿って隣り合う前記複数のリンク同士を回転可能に連結する関節と、
前記複数のリンクのうち前記連結軸に沿った最も第1側の前記リンクである先端リンクに設けられ、前記キャリアを着脱可能に保持する保持部と、
を有し、
前記複数のリンクのうち前記連結軸に沿った最も第2側の前記リンクは、設置面により支持され、
前記関節により、前記保持部は、前記内歯車及び前記太陽歯車に対して、前記沿面方向、及び前記軸線周りに移載可能である、請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
前記撮像部は、
前記太陽歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像を取得する第1撮像部と、
前記内歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像を取得する第2撮像部と、
を有し、
前記第1撮像部及び前記第2撮像部は、前記先端リンクに設けられている、請求項2に記載の移載装置。
【請求項4】
前記キャリアの前記複数の歯部が前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部に嵌め合うときの、
前記第1撮像部が取得した前記太陽歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像を、第1基準像と規定し、
前記第2撮像部が取得した前記内歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像を、第2基準像と規定したときに、
前記制御部は、
前記第1撮像部が取得する前記太陽歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像が、前記第1基準像に一致するように、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記沿面方向に沿う前記キャリアの移動量、及び前記軸線周りの前記キャリアの回転量を含む第1移動量を算出し、
前記第1移動量移動及び回転したときの前記第2撮像部が取得する前記内歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像と、前記第2基準像との差に基づいて、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記沿面方向に沿う前記キャリアの移動量、及び前記軸線周りの前記キャリアの回転量を含む第2移動量を算出し、
前記移載部により、前記キャリアを前記第1移動量及び前記第2移動量移動及び回転させた後で、前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部に前記キャリアの前記複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせる、請求項3に記載の移載装置。
【請求項5】
定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有し、基板の厚さ方向を向く面を研磨する遊星歯車装置式の研磨部から、平板状であって、外周縁に設けられ前記内歯車及び前記太陽歯車にそれぞれ嵌め合う複数の歯部、及び前記基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを、前記研磨部の外部に移載させる移載装置であって、
前記キャリアを着脱可能に保持する保持部を有し、前記キャリアを移載させる移載部と、
前記内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び前記太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像を取得する撮像部と、
前記移載部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記像に基づいて、前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部にそれぞれ前記キャリアの前記複数の歯部が嵌め合っている状態の、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記支持面に沿う沿面方向の前記キャリアの位置、及び前記支持面に直交する軸線周りの前記キャリアの向きを検出し、
前記位置及び前記向きを調整した前記保持部により、前記キャリアを保持し、
前記移載部により、前記キャリアを前記研磨部の外部に移載する、移載装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の移載装置と、
前記研磨部と、
を備える、研磨設備。
【請求項7】
定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有し、基板の厚さ方向を向く面を研磨する遊星歯車装置式の研磨部に、平板状であって、外周縁に設けられ前記内歯車及び前記太陽歯車にそれぞれ嵌め合い可能な複数の歯部、及び前記基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを移載させる移載方法であって、
前記内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び前記太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像に基づいて、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記支持面に沿う沿面方向の前記キャリアの位置、及び前記支持面に直交する軸線周りの前記キャリアの向きを調整し、
前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部に前記キャリアの前記複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせる、移載方法。
【請求項8】
定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有し、基板の厚さ方向を向く面を研磨する遊星歯車装置式の研磨部から、平板状であって、外周縁に設けられ前記内歯車及び前記太陽歯車にそれぞれ嵌め合う複数の歯部、及び前記基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを、前記研磨部の外部に移載させる移載方法であって、
前記内歯車の複数の歯部及び前記太陽歯車の複数の歯部にそれぞれ前記キャリアの複数の歯部が嵌め合っている状態の、前記内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び前記太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像に基づいて、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記支持面に沿う沿面方向の前記キャリアの位置、及び前記支持面に直交する軸線周りの前記キャリアの向きを検出し、
前記位置及び前記向きを調整した保持部により、前記キャリアを保持し、
前記キャリアを前記研磨部の外部に移載する、移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移載装置、研磨設備、及び移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに合体されたキャリア及びワーク(基板)を、研磨部の回転定盤上に搬送する移載装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この移載装置では、キャリアは円形の外歯車である。キャリアが有する収容孔(貫通孔)内にワークが収容されることにより、キャリアにワークが合体する。
研磨部では、回転定盤の中心に太陽歯車、外周部に内歯車が設けられる。これらは回転定盤上に配置された複数のキャリアに噛み合い、それぞれの回転速度によってキャリアの自転、及び公転速度が決定される。
合体したキャリア及びワークは、第2ワーク搬送部(移載部)により搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4235313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、研磨部の大型化により、動作する太陽歯車及び内歯車が停止するときの、目標とする停止位置と実際の停止位置との差である停止誤差が大きくなっている。さらに、この停止誤差は、移載部にも生じる。
停止誤差が大きくなると、内歯車及び太陽歯車にキャリアをそれぞれ嵌め合わせ難くなったり、内歯車及び太陽歯車にキャリアがそれぞれ嵌め合っている状態から、キャリアを研磨部の外部に移載させ難くなる。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアをそれぞれ容易に嵌め合わせるか、内歯車及び太陽歯車にキャリアがそれぞれ嵌め合っている状態から、キャリアを研磨部の外部に容易に移載させる移載装置、この移載装置を備える研磨設備、及び移載方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
(1)この発明の第1態様は、定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有し、基板の厚さ方向を向く面を研磨する遊星歯車装置式の研磨部に、平板状であって、外周縁に設けられ前記内歯車及び前記太陽歯車にそれぞれ嵌め合い可能な複数の歯部、及び前記基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを移載させる移載装置であって、前記キャリアを移載させる移載部と、前記内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び前記太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像を取得する撮像部と、前記移載部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記像に基づいて、前記移載部により、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記支持面に沿う沿面方向の前記キャリアの位置、及び前記支持面に直交する軸線周りの前記キャリアの向きを調整し、前記移載部により、前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部に前記キャリアの前記複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせる。
【0007】
この発明では、撮像部が取得した像には、研磨部における、実際の内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び実際の太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像が含まれる。このため、例えば、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、制御部が、この像に基づいて、移載部により、内歯車及び太陽歯車に対する、沿面方向のキャリアの位置、及び軸線周りのキャリアの向きを調整することにより、内歯車の複数の歯部及び太陽歯車の複数の歯部にキャリアの複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせやすくなる。
従って、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアをそれぞれ容易に嵌め合わせることができる。
【0008】
(2)前記(1)に記載の移載装置では、前記移載部は、連結軸に沿って並べて配置された複数のリンクと、前記連結軸に沿って隣り合う前記複数のリンク同士を回転可能に連結する関節と、前記複数のリンクのうち前記連結軸に沿った最も第1側の前記リンクである先端リンクに設けられ、前記キャリアを着脱可能に保持する保持部と、を有し、前記複数のリンクのうち前記連結軸に沿った最も第2側の前記リンクは、設置面により支持され、前記関節により、前記保持部は、前記内歯車及び前記太陽歯車に対して、前記沿面方向、及び前記軸線周りに移載可能であってもよい。
この発明では、関節を駆動させて複数のリンクを移動させることにより、保持部に保持されたキャリアを設置面に対して移載させることができる。そして、関節により、保持部に保持されたキャリアを、内歯車及び太陽歯車に対して、沿面方向、及び軸線周りに移載させることができる。
【0009】
(3)前記(2)に記載の移載装置では、前記撮像部は、前記太陽歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像を取得する第1撮像部と、前記内歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像を取得する第2撮像部と、を有し、前記第1撮像部及び前記第2撮像部は、前記先端リンクに設けられていてもよい。
この発明では、太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像、内歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像を、第1撮像部、第2撮像部により別々に取得することができる。そして、移載部の関節を駆動させて複数のリンクを移動させることにより、第1撮像部及び第2撮像部を移動させて、第1撮像部及び第2撮像部が取得する像に写される対象を変化させることができる。
【0010】
(4)前記(3)に記載の移載装置では、前記キャリアの前記複数の歯部が前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部に嵌め合うときの、前記第1撮像部が取得した前記太陽歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像を、第1基準像と規定し、前記第2撮像部が取得した前記内歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像を、第2基準像と規定したときに、前記制御部は、前記第1撮像部が取得する前記太陽歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像が、前記第1基準像に一致するように、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記沿面方向に沿う前記キャリアの移動量、及び前記軸線周りの前記キャリアの回転量を含む第1移動量を算出し、前記第1移動量移動及び回転したときの前記第2撮像部が取得する前記内歯車の前記複数の歯部の少なくとも一部の前記像と、前記第2基準像との差に基づいて、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記沿面方向に沿う前記キャリアの移動量、及び前記軸線周りの前記キャリアの回転量を含む第2移動量を算出し、前記移載部により、前記キャリアを前記第1移動量及び前記第2移動量移動及び回転させた後で、前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部に前記キャリアの前記複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせてもよい。
【0011】
この発明では、移載部により、制御部が算出する第1移動量キャリアを移動させることにより、太陽歯車の複数の歯部に対してキャリアの複数の歯部が嵌め合う位置に、キャリアを移載させることができる。さらに、移載部により、制御部が算出する第2移動量キャリアを移動させることにより、内歯車の複数の歯部に対してキャリアの複数の歯部が嵌め合う位置に、キャリアを移載させることができる。
こうして、キャリアを第1移動量及び第2移動量移動及び回転させた後で、内歯車の複数の歯部及び太陽歯車の複数の歯部にキャリアの複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせることにより、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアをそれぞれさらに容易に嵌め合わせることができる。
【0012】
(5)この発明の第2態様は、定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有し、基板の厚さ方向を向く面を研磨する遊星歯車装置式の研磨部から、平板状であって、外周縁に設けられ前記内歯車及び前記太陽歯車にそれぞれ嵌め合う複数の歯部、及び前記基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを、前記研磨部の外部に移載させる移載装置であって、前記キャリアを着脱可能に保持する保持部を有し、前記キャリアを移載させる移載部と、前記内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び前記太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像を取得する撮像部と、前記移載部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記像に基づいて、前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部にそれぞれ前記キャリアの前記複数の歯部が嵌め合っている状態の、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記支持面に沿う沿面方向の前記キャリアの位置、及び前記支持面に直交する軸線周りの前記キャリアの向きを検出し、前記位置及び前記向きを調整した前記保持部により、前記キャリアを保持し、前記移載部により、前記キャリアを前記研磨部の外部に移載する。
【0013】
この発明では、撮像部が取得した像には、研磨部における、実際の内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び実際の太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像が含まれる。このため、例えば、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、制御部は、この像に基づいて、内歯車及び太陽歯車に対する、これら内歯車及び太陽歯車に嵌め合うキャリアの沿面方向の位置、及び軸線周りの向きを検出する。さらに制御部は、これらの位置及び向きに基づいて、保持部の沿面方向の位置、及び軸線周りの向きを調整することにより、キャリアを保持部により保持しやすくなる。そして、保持部を有する移載部により、キャリアを研磨部の外部に移載させることができる。
従って、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアがそれぞれ嵌め合っている状態から、キャリアを研磨部の外部に容易に移載させることができる。
なお、研磨部の外部に移載させたキャリアは、例えば、移載部によりセットテーブル等の台上に精度良く配置される。
【0014】
(6)この発明の第3態様は、前記(1)から(5)のいずれかに記載の移載装置と、前記研磨部と、を備える研磨設備である。
この発明では、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアをそれぞれ容易に嵌め合わせるか、内歯車及び太陽歯車にキャリアがそれぞれ嵌め合っている状態から、キャリアを研磨部の外部に容易に移載させることができる移載装置を用いて、研磨設備を構成することができる。
【0015】
(7)この発明の第4態様は、定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有し、基板の厚さ方向を向く面を研磨する遊星歯車装置式の研磨部に、平板状であって、外周縁に設けられ前記内歯車及び前記太陽歯車にそれぞれ嵌め合い可能な複数の歯部、及び前記基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを移載させる移載方法であって、前記内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び前記太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像に基づいて、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記支持面に沿う沿面方向の前記キャリアの位置、及び前記支持面に直交する軸線周りの前記キャリアの向きを調整し、前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部に前記キャリアの前記複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせる。
【0016】
この発明では、像には、研磨部における、実際の内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び実際の太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像が含まれる。このため、例えば、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、この像に基づいて、内歯車及び太陽歯車に対する、沿面方向のキャリアの位置、及び軸線周りのキャリアの向きを調整することにより、内歯車の複数の歯部及び太陽歯車の複数の歯部にキャリアの複数の歯部をそれぞれ嵌め合わせやすくなる。
従って、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアをそれぞれ容易に嵌め合わせることができる。
【0017】
(8)この発明の第5態様は、定盤の支持面上で回転する内歯車及び太陽歯車を有し、基板の厚さ方向を向く面を研磨する遊星歯車装置式の研磨部から、平板状であって、外周縁に設けられ前記内歯車及び前記太陽歯車にそれぞれ嵌め合う複数の歯部、及び前記基板を収容する貫通孔が形成されたキャリアを、前記研磨部の外部に移載させる移載方法であって、前記内歯車の前記複数の歯部及び前記太陽歯車の前記複数の歯部にそれぞれ前記キャリアの前記複数の歯部が嵌め合っている状態の、前記内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び前記太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像に基づいて、前記内歯車及び前記太陽歯車に対する、前記支持面に沿う沿面方向の前記キャリアの位置、及び前記支持面に直交する軸線周りの前記キャリアの向きを検出し、前記位置及び前記向きを調整した保持部により、前記キャリアを保持し、前記キャリアを前記研磨部の外部に移載する。
【0018】
この発明では、像には、研磨部における、実際の内歯車の複数の歯部の少なくとも一部及び実際の太陽歯車の複数の歯部の少なくとも一部の像が含まれる。このため、例えば、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、この像に基づいて、内歯車及び太陽歯車に対する、これら内歯車及び太陽歯車に嵌め合うキャリアの沿面方向の位置、及び軸線周りの向きを検出する。さらに、これらの位置及び向きに基づいて、保持部の沿面方向の位置、及び軸線周りの向きを調整することにより、キャリアを保持部により保持しやすくなる。そして、保持部を移載することにより、キャリアを研磨部の外部に移載させることができる。
従って、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアがそれぞれ嵌め合っている状態から、キャリアを研磨部の外部に容易に移載させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の移載装置、研磨設備、及び移載方法によれば、内歯車、太陽歯車、及び移載部に停止誤差がある場合でも、内歯車及び太陽歯車にキャリアをそれぞれ容易に嵌め合わせるか、内歯車及び太陽歯車にキャリアがそれぞれ嵌め合っている状態から、キャリアを研磨部の外部に容易に移載させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の研磨設備の概略構成を示す図である。
図2】同研磨設備における研磨部の拡大図である。
図3】同研磨設備における第2搬送装置の斜視図である。
図4】同研磨設備における保持部の斜視図である。
図5図4中の要部断面図である。
図6】吸着パッドが潰れる前後の状態を説明する図である。
図7】セットテーブル上にキャリア及び基板が配置された状態を示す断面図である。
図8】同保持部によりキャリア及び基板を保持した状態の断面図である。
図9】本発明の一実施形態の移載方法が用いられる研磨方法を示すフローチャートである。
図10】同研磨方法における準備工程を説明する図である。
図11】第1基準像の一例を示す図である。
図12】第2基準像の一例を示す図である。
図13】同研磨方法において移載工程を説明する図である。
図14】同研磨方法の第1移載方法において第1移動量算出工程を説明する図である。
図15】同第1移載方法において嵌め合わせ工程を説明する図である。
図16】基準位置における内歯車、太陽歯車、及びキャリアの位置の一例を示す図である。
図17】基準位置から内歯車及び太陽歯車が変位する一例を示す図である。
図18】基準位置から内歯車及び太陽歯車が変位する他の例を示す図である。
図19】太陽歯車を固定した場合の、キャリアの公転を説明する図である。
図20】太陽歯車を固定した場合の、キャリアの自転を説明する図である。
図21】各歯部に設定される座標等を説明する図である。
図22】保持部の中心から基準像における各歯部までの距離等を説明する図である。
図23】第1基準像の第1歯部37の像と実際の第1歯部の像とを一致させた状態を説明する図である。
図24】変換e’を行う前の、第1基準像における歯部の位置と実際の歯部の位置とを説明する図である。
図25】変換e’を行った後の、第1基準像における歯部の位置と実際の歯部の位置とを説明する図である。
図26】距離(ds1x-di1x,ds1y-di1y)を説明する図である。
図27】角度(△ψ-△ψ)を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る研磨設備及び移載方法の一実施形態を、図1から図27を参照しながら説明する。
【0022】
(1.研磨設備)
図1に示す研磨設備1は、基板200の厚さ方向を向く面を研磨するための設備である。例えば、図1及び図2に示すように、基板200は、基板200の厚さ方向から見たときに円形状を呈する平板状に形成される。例えば、基板200は、シリコン製である。
なお、図2中に、基板200、後述するキャリア205を保持する、第1保持部52及び第2保持部53を示す。基板は、ガラス製等でもよい。
以下では、研磨設備1により研磨される前の基板200を、基板200Aとも言う。研磨設備1により研磨された後の基板200を、基板200Bとも言う。例えば、基板200Aの厚さは、780μm(マイクロメートル)である。基板200Bの厚さは、770μmである。
【0023】
キャリア205は、キャリア205の厚さ方向から見たときに円形状を呈する平板状に形成される。キャリア205には、複数(本実施形態では3つ)の貫通孔206が設けられる。複数の貫通孔206は、キャリア205の中心軸回りに等角度ごとに形成される。複数の貫通孔206は、キャリア205を厚さ方向に貫通する。貫通孔206の径及び基板200の径は、互いに同等である。基板200は、貫通孔206内に収容される。このとき、キャリア205の厚さ方向と、基板200の厚さ方向とが一致する。
図2に示すように、キャリア205の外周縁には、複数の歯部207が設けられる。複数の歯部207は、外歯である。キャリア205の周方向に隣り合う歯部207の間には、半円状の窪み208が形成される。
【0024】
例えば、キャリア205の外径は720mm、厚さは770μmである。キャリア205は、ステンレス鋼等で形成される。
平坦な支持面等の上で、キャリア205の貫通孔206内に基板200を収容するときには、キャリア205及び基板200は撓んでいない。このとき、キャリア205の下面と基板200の下面とはほぼ面一であり、キャリア205の上面と基板200の上面とはほぼ面一である。
なお、キャリア205に設けられる貫通孔206の数に制限は無く、貫通孔206の数は1つでもよい。
【0025】
図1に示すように、この研磨設備1は、搬入バスケット10と、搬出バスケット15と、セットテーブル20と、第1搬送装置25と、研磨装置30と、主制御部80と、を備える。
搬入バスケット10は、基板200Aを収容した状態で、図示しない搬入装置により研磨設備1に搬入される。搬出バスケット15は、基板200Bを収容した状態で、図示しない搬出装置により研磨設備1から搬出される。
【0026】
セットテーブル20は、基板200及びキャリア205を置くための台である。図7に示すように、セットテーブル20の上面21は水平面に沿う。上面21は、平坦である。
図1に示すように、例えば、第1搬送装置25は、マニピュレータである。第1搬送装置25は、バスケット10,15とセットテーブル20との間で基板200を搬送する。
【0027】
研磨装置30は、研磨部31と、本実施形態の第2搬送装置(移載装置)46と、を有する。
本実施形態の研磨部31は、遊星歯車装置式である。図1及び図2に示すように、研磨部31は、第1定盤(定盤)32と、太陽歯車33と、内歯車34と、第2定盤(不図示)と、を有する。
例えば、第1定盤32の第1支持面(支持面)32aは、水平面に沿うように配置される。第1支持面32aは、平坦である。以下では、第1支持面32aに沿う方向を、沿面方向と言う。沿面方向には、第1支持面32aに沿う一方向である第1沿面方向と、第1支持面32aに沿うとともに第1沿面方向に直交する第2沿面方向とが含まれる。
第1定盤32は、上下方向に沿い、第1支持面32aに直交する第1軸線O1周りの第1の向きに回転する。
【0028】
太陽歯車33は、第1支持面32a上に第1軸線O1と同軸に配置される。図2に示すように、太陽歯車33の外周縁には、複数の歯部37が設けられる。例えば、複数の歯部37は、円柱状の外歯である。複数の歯部37は、太陽歯車33の周方向に互いに間隔を空けて配置される。太陽歯車33は、第1支持面32a上で回転する。複数の歯部37は、キャリア205の複数の歯部207に嵌め合う。太陽歯車33は、キャリア205に内接する。
内歯車34の内周縁には、複数の歯部39が設けられる。複数の歯部39は、円柱状の内歯である。複数の歯部39は、内歯車34の周方向に互いに間隔を空けて配置される。内歯車34は、第1支持面32a上で回転する。複数の歯部39は、キャリア205の複数の歯部207に嵌め合う。内歯車34は、キャリア205に外接する。
【0029】
第2定盤は、第1定盤32とともに太陽歯車33及び内歯車34を挟む挟み状態と、太陽歯車33及び内歯車34から離間した退避状態と、の間で切り替えできる。
挟み状態の第2定盤は、第1軸線O1と同軸に配置され、第1軸線O1周りの前記第1の向きとは反対の第2の向きに回転する。
【0030】
第2搬送装置46は、研磨部31にキャリア205を移載させる。図3及び図4に示すように、第2搬送装置46は、マニピュレータ(移載部)47と、撮像部54と、後述する第1制御部81(図1参照)と、を有する。
マニピュレータ47は、キャリア205及び複数の基板200を移載させる。マニピュレータ47は、複数のリンク48と、複数の関節49と、保持部50とを有する、いわゆる多関節ロボットである。
図3に示すように、複数のリンク48は、連結軸O3に沿って並べて配置されている。以下では、複数のリンク48のうち連結軸O3に沿った最も第1側のリンク48を、先端リンク48Aとも言う。複数のリンク48のうち連結軸O3に沿った最も第1側とは反対側の第2側のリンク48を、基端リンク48Bとも言う。
各関節49は、連結軸O3に沿って隣り合う複数のリンク48の端部同士を回転可能に連結する。先端リンク48Aには、保持部50が設けられている。基端リンク48Bは、設置面Fにより支持されている。
複数の関節49により、保持部50は、研磨部31の内歯車34及び太陽歯車33に対して、キャリア205及び複数の基板200を、沿面方向、及び後述する第2軸線O5周りに移載可能である。
なお、第2搬送装置が備える関節49の数に制限は無い。
【0031】
保持部50は、キャリア205及び複数の基板200を着脱可能に保持する。
図4及び図5に示すように、保持部50は、フレーム51と、第1保持部52と、第2保持部53と、吸引部(不図示)と、を有する。
フレーム51は、第2軸線(軸線)O5に対して複数回の回転対称(本実施形態では3回対称)に形成される。なお、第1保持部52及び複数の第2保持部53は、フレーム51の径方向に沿う同一直線上には配置されていないが、図5では、第1保持部52及び複数の第2保持部53の保持部50の周方向における位置を変えて示している。
図5に示すように、フレーム51は、天板57と、第1周壁58と、第2周壁59と、第1底板60と、第2底板61と、を有する。
天板57は、円板状に形成される。天板57は、複数のリンク48及び複数の関節49により、水平面に沿うように支持される。
【0032】
第1周壁58は、筒状に形成され、第2軸線O5と同軸に配置される。第1周壁58は、天板57の下面に固定される。
第2周壁59は、筒状に形成され、第2軸線O5と同軸に配置される。第2周壁59は、第1周壁58を外側から囲い、天板57の外周縁の下面に固定される。前記第1周壁58の下端は、第2周壁59の下端よりも下方に突出している。
第1底板60は、円板状に形成され、第1周壁58内に配置される。第1底板60は、第1周壁58における上下方向の中間部に固定される。
第2底板61は、環状に形成され、第1周壁58と第2周壁59との間に配置される。第2底板61は、第1周壁58の下端部及び第2周壁59の下端にそれぞれ固定される。第2底板61には、複数の連通孔61aが形成される。
【0033】
図4に示すように、保持部50は、第1保持部52を複数有する。複数の第1保持部52は、第2軸線O5回りに互いに間隔を空けて配置される。複数の第1保持部52は、キャリア205の外周部を厚さ方向から保持する。ここで言う外周部とは、円形状の保持対象の半径をrとしたときに、保持対象の外周縁から中心に向かって(0.4r)の範囲のことを意味する。このとき、キャリア205は、キャリア205の中心軸がフレーム51の第2軸線O5に一致するように、複数の第1保持部52に保持される。
図5に示すように、各第1保持部52は、第1本体64と、第1移動部65と、を有する。第1移動部65は、吸着パッド67と、可動管68と、を有する。
吸着パッド67は、合成ゴム等の弾性を有する材料でコーン状(円錐面状)に形成される。吸着パッド67は、下方に向かうに従い漸次、外径が大きくなるように配置される。
可動管68は、吸着パッド67から上方(厚さ方向の他方側)に向かって延びる。可動管68内の空間は、吸着パッド67の凹部に連なる。
例えば、可動管68の上端部における外周面には、第1係合部68aが固定される。可動管68における第1係合部68aよりも下方の部分は、第2底板61の連通孔61a内に配置される。
【0034】
第1本体64は、内径が可動管68の外径よりも大きい管状である。第1本体64は、L字状に折れている。第1本体64の第1端部64aは上下方向に沿って延びている。例えば、第1端部64aの下端の内周面には、第2係合部64bが固定される。第2係合部64bは、第1本体64の第1端部64aの全周にわたって形成される。第2係合部64bは、第1係合部68aを、第1係合部68aの下方から支持する。第2係合部64bと可動管68との間は、気密に封止される。可動管68は、第2係合部64b(第1本体64の第1端部64a)に対して上下方向に移動できる。
第1本体64は、フレーム51の第2底板61等に固定される。図5に示す状態から、第1本体64に対して可動管68が下方に移動することはできない。一方で、図5に示す状態から、第1本体64に対して可動管68が上方に移動できる。
【0035】
図6に示すように、第1保持部52の吸着パッド67の下端をキャリア205の外周部の上面に接触させる。
吸着パッド67の凹部内の空気を吸引すると、二点鎖線L1で示すように吸着パッド67が潰れるように変形し、吸着パッド67に接触していたキャリア205が吸着パッド67に保持される。
【0036】
図7に、セットテーブル20の上面21上に、キャリア205及び基板200が配置された状態を示す。基板200は、キャリア205の貫通孔206内に収容される。
この状態のキャリア205及び基板200に対して、上方から保持部50を近づけ、第1保持部52の吸着パッド67をキャリア205の外周部の上面に接触させる。
吸着パッド67の凹部内の空気を吸引すると、第1保持部52の潰れた吸着パッド67が、キャリア205の外周部を保持する。このとき、可動管68の第1係合部68aは、第1本体64の第2係合部64bから上方に離間する。
このときの、フレーム51に対する潰れた吸着パッド67の下端の位置を、基準位置P521と言う。基準位置P521は、フレーム51に対する、潰れた吸着パッド67の下端における、吸着パッド67の周方向の平均位置であることが好ましい。
【0037】
この状態から、マニピュレータ47により保持部50を上方に移動させると、図8に示すように、第1保持部52に保持されたキャリア205が、セットテーブル20の上面21から上方に離間する。キャリア205、吸着パッド67等に作用する重力により、第1保持部52の第1本体64に対してキャリア205、吸着パッド67等が下方に移動する。可動管68の第1係合部68aが第1本体64の第2係合部64bに、第2係合部64bの上方から係止すると、第1本体64(フレーム51)に対してキャリア205、吸着パッド67等が、これ以上下方に移動できなくなる。
キャリア205を保持して潰れ、フレーム51に対して下方に移動できなくなったときの、フレーム51に対する吸着パッド67の下端の位置を、下端位置P522と言う。下端位置P522は、第1保持部52の吸着パッド67の移動範囲における下方の端の位置である。
図6中に、吸着パッド67の基準位置P521を、二点鎖線L4で示す。以下では、潰れた吸着パッド67における、基準位置P521と下端位置P522との上下方向の距離を、伸長距離M52と言う。伸長距離M52は、第1保持部52がキャリア205を保持した状態から、第1保持部52が下方(厚さ方向の一方側)に伸びる長さである。
このように、第1保持部52は、キャリア205を保持した状態から下方に向かって伸びることができる。
【0038】
第2保持部53は、キャリア205の貫通孔206内の基板200を、上下方向から保持する。図4及び図5に示すように、保持部50は、第2保持部53として、第2保持部53A、第2保持部53B、第2保持部53Cを有する。
第2保持部53A,53Bは、伸長距離M52の設定以外は第1保持部52と同一の構成である。
図5に示すように、第2保持部53Aは、第1保持部52の第1本体64、第1移動部65、吸着パッド67、可動管68と略同一の構成の、第2本体71A、第2移動部72A、吸着パッド74A、可動管75Aを有する。
第2移動部72Aは、第2本体71Aに対して上下方向に移動できる。第2移動部72Aの吸着パッド74Aは、基板200を保持する。
第2保持部53Aの吸着パッド74Aに対しても、第1保持部52の吸着パッド67に対する基準位置P521、下端位置P522、伸長距離M52と同様に、基準位置P53A1、下端位置P53A2、伸長距離M53Aがそれぞれ規定される(図7及び図8参照)。
伸長距離M53Aは、第2保持部53Aが基板200を保持した状態から、第2保持部53Aが下方に伸びる長さである。
【0039】
第2保持部53Bは、第1保持部52の第1本体64、第1移動部65、吸着パッド67、可動管68と略同一の構成の、第2本体71B、第2移動部72B、吸着パッド74B、可動管75Bを有する。
第2移動部72Bは、第2本体71Bに対して上下方向に移動できる。第2移動部72Bの吸着パッド74Bは、基板200を保持する。
第2保持部53Bの吸着パッド74Bに対しても、第1保持部52の吸着パッド67に対する基準位置P521、下端位置P522、伸長距離M52と同様に、基準位置P53B1、下端位置P53B2、伸長距離M53Bがそれぞれ規定される(図7及び図8参照)。
伸長距離M53Bは、第2保持部53Bが基板200を保持した状態から、第2保持部53Bが下方に伸びる長さである。
【0040】
第2保持部53Cは、第1本体64の形状、伸長距離M52の設定以外は第1保持部52と同一の構成である。
図5に示すように、第2保持部53Cは、第1保持部52の第1移動部65、吸着パッド67、可動管68と略同一の構成の、第2移動部72C、吸着パッド74C、可動管75Cを有する。
第2保持部53Cが有する第2本体78Cは、真っすぐな管状である。第2本体78Cは、上下方向に沿って延び、フレーム51の第1底板60に固定される。
以上のように、フレーム51は、第1本体64及び第2本体71A,71B,78Cを互いに連結する。
第2保持部53Cの吸着パッド74Cに対しても、第1保持部52の吸着パッド67に対する基準位置P521、下端位置P522、伸長距離M52と同様に、基準位置P53C1、下端位置P53C2、伸長距離M53Cがそれぞれ規定される(図7及び図8参照)。
伸長距離M53Cは、第2保持部53Cが基板200を保持した状態から、第2保持部53Cが下方に伸びる長さである。
【0041】
このように、第2保持部53A,53B,53Cは、基板200を保持した状態からそれぞれ下方に向かって伸びることができる。
図8に示す二点鎖線L4上に、基準位置P53A1,P53B1,P53C1が配置される。
図2及び図4に示すように、第2保持部53A,53B,53Cは、各基板200に対して、基板200の軸線回りに等角度ごとに配置される。
本実施形態では、伸長距離M53A,M53B,M53Cは、互いに同等である。伸長距離M52は、伸長距離M53A,M53B,M53Cよりも、キャリア205の厚さ(厚さ方向の長さ)を超えて長い。伸長距離M52は、伸長距離M53A,M53B,M53Cよりも、キャリア205の厚さの2倍を超えて長いことが好ましい。
【0042】
吸引部は、図示はしないが、吸引ポンプと、複数の開閉弁と、を有する。
吸引ポンプは、図示しないチューブにより第1本体64、第2本体71A,71B,71Cにそれぞれ接続される。吸引ポンプは、チューブ、第1本体64、第2本体71A,71B,71C、可動管68,75A,75B,75Cを通して吸着パッド67,74A,74B,74Cの凹部内の空気を吸引できる。
複数の開閉弁は、複数のチューブを独立して開閉できる。
【0043】
図4に示すように、第2搬送装置46は、撮像部54として、第1撮像部54Aと、第2撮像部54Bと、を有する。撮像部54A,54Bは、フレーム51の第2周壁59に固定される。すなわち、撮像部54A,54Bは、マニピュレータ47の先端リンク48Aに設けられている。撮像部54A,54Bは、フレーム51を、フレーム51の径方向に挟むように配置される。
撮像部54A,54Bは、図示しない撮像素子をそれぞれ有する。撮像部54A,54Bは、撮像部54A,54Bに対して下方に配置された物の像を、前記撮像素子により取得する。具体的には、撮像部54A,54Bは、内歯車34の複数の歯部39の少なくとも一部及び太陽歯車33の複数の歯部37の少なくとも一部の像を取得する。撮像部54A,54Bが取得する像の詳細については、後述する研磨方法で詳しく説明する。
撮像部54A,54Bは、取得した像を主制御部80に送る。
【0044】
図1に示すように、第2搬送装置46及びセットテーブル20のそれぞれから近い位置には、複数のキャリア205が積み重ねられたストッカ85がある。ストッカ85にあるキャリア205には、基板200が収容されていない。
主制御部80は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を有する。メモリには、CPUを動作させるための制御プログラム等が記憶される。
主制御部80は、第1搬送装置25及び研磨装置30に接続され、第1搬送装置25及び研磨装置30を制御する。
主制御部80は、機能的に第1制御部(制御部)81と、第2制御部82と、を有する。
第1制御部81は、研磨装置30の第2搬送装置46を制御する。第2制御部82は、第1搬送装置25、及び研磨装置30の研磨部31を制御する。
【0045】
(2.研磨方法)
次に、以上のように構成された研磨設備1を用いた、研磨方法について説明する。この研磨方法では、本実施形態の第1移載方法(移載方法)を用いる。図9は、研磨方法Sを示すフローチャートである。
予め、準備工程(図9に示すステップS1)を行う。準備工程S1では、図10に示すように、キャリア205の複数の歯部207を内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37に嵌め合わせておく。なお、図10、及び後述する図13から図15では、キャリア205の複数の歯部207を示さず、内歯車34の複数の歯部39の一部、及び太陽歯車33の複数の歯部37の一部のみを示す。
太陽歯車33の複数の歯部37のピッチを、PSと規定する。内歯車34の複数の歯部39のピッチを、PIと規定する。ピッチPS及びピッチPIは、互いに同等である。
内歯車34及び太陽歯車33に対してキャリア205を第2軸線O5周りのこの向きに配置すると、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205を嵌め合わせやすく、また、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205が嵌め合っている状態から、キャリア205を研磨部31の外部に移載させやすい。
【0046】
本実施形態では、太陽歯車33の複数の歯部37の中で、研磨方法による制御で、周方向に隣り合う2本の歯部37A(太陽歯車33の複数の歯部37の少なくとも一部)が用いられる。内歯車34の複数の歯部39の中で、研磨方法による制御で、1本の歯部39A(内歯車34の複数の歯部39の少なくとも一部)が用いられる。
第1支持面32a上における第1撮像部54Aの撮像範囲RAには、2本の歯部37Aが含まれる。すなわち、第1撮像部54Aは、太陽歯車33の2本の歯部37Aの像を取得する。第1撮像部54Aが取得した太陽歯車33の2本の歯部37Aの像を、第1基準像ISと規定する。第1基準像ISの一例を、図11に示す。
図10に示すように、第1支持面32a上における第2撮像部54Bの撮像範囲RBには、1本の歯部39Aが含まれる。すなわち、第2撮像部54Bは、内歯車34の1本の歯部39Aの像を取得する。第2撮像部54Bが取得した内歯車34の1本の歯部39Aの像を、第2基準像IIと規定する。第2基準像IIの一例を、図12に示す。
以下では、基準像IS,IIが取得されたときの、沿面方向の内歯車34及び太陽歯車33の位置を、基準位置と言う。基準像IS,IIが取得されたときの、第2軸線O5周りの内歯車34及び太陽歯車33の向きを、基準向きと言う。
【0047】
なお、研磨方法における制御で用いられる太陽歯車33の複数の歯部37の少なくとも一部は、1本の歯部37でもよいし、3本以上の歯部37でもよい。
同様に、研磨方法における制御で用いられる内歯車34の複数の歯部39の少なくとも一部は、2本以上の歯部39でもよい。
【0048】
以下では、互いに嵌め合う内歯車34、太陽歯車33、キャリア205の位置、及び2本の歯部37Aが第1撮像部54Aの撮像範囲RAに含まれ、1本の歯部39Aが第2撮像部54Bの撮像範囲RBに含まれた撮像部54A,54Bの位置を、基準位置と言う。撮像部54A,54Bが基準位置にあるときには、撮像部54A,54Bは、2本の歯部37A、1本の歯部39Aに対向するように配置される。
図10に、2本の歯部37A、1本の歯部39Aに対応する基準位置P37A1,P39A1を示す。撮像部54A,54Bに対応する基準位置P54A1,P54B1を示す。
【0049】
基準像IS,IIが取得された後で、研磨装置30が適宜使用されるが、研磨部31の内歯車34、太陽歯車33、及び第2搬送装置46の撮像部54は、研磨部31にキャリア205を載置したり、研磨部31の外部にキャリア205を移載させる際に、基準位置に配置される。この際に、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に、基準像IS,IIを取得したときの位置に対して停止誤差が生じる場合がある。しかし、この停止誤差の合計は、例えば、歯部37のピッチPSの半分よりも小さい。
すなわち、制御対象となる2本の歯部37A、1本の歯部39Aは、撮像範囲RA,RB内で、ピッチPSの半分よりもずれない。
【0050】
搬入装置により、基板200Aを収容した搬入バスケット10を搬送しておく。研磨部31の第2定盤は、退避状態になっている。
第1制御部81は、マニピュレータ47の吸引部を駆動し、複数の開閉弁を閉じた状態にする。
【0051】
次に、前記第1移載方法(ステップS5)を行う。第1移載方法S5では、キャリア205と、キャリア205の貫通孔206内に収容される基板200Aとを、セットテーブル20から研磨部31に移載させる。
まず、第1収容工程(ステップS6)において、第2制御部82は、第1搬送装置25により、搬入バスケット10内の基板200Aを、セットテーブル20上のキャリア205の貫通孔206に収容する。
第1収容工程S6が終了すると、ステップS7に移行する。
【0052】
次に、移載工程(ステップS7)において、第2搬送装置46により、キャリア205の外周部及び基板200Aを、キャリア205及び基板200Aが互いに離間するようにそれぞれ保持する。
具体的には、第1制御部81はマニピュレータ47により、図7に示すように、セットテーブル20上のキャリア205及び基板200に対して、上方から保持部50を近づけ、第1保持部52の吸着パッド67を、キャリア205の外周部の上面に接触させる。第2保持部53A,53B,53Cの吸着パッド74A,74B,74Cを、基板200Aの上面に接触させる。
複数の開閉弁を開いた状態にすると、吸着パッド67,74A,74B,74Cの凹部内の空気がそれぞれ吸引され、吸着パッド67,74A,74B,74Cが潰れるように変形する。第1保持部52の潰れた吸着パッド67により、キャリア205の外周部が上方から保持され、第2保持部53A,53B,53Cの潰れた吸着パッド74A,74B,74Cにより、基板200Aの外周部が上方から保持される。
【0053】
そして、マニピュレータ47により保持部50を上方に移動させると、図8に示すように、保持部52,53A,53B,53Cに保持されたキャリア205、基板200Aが、セットテーブル20の上面21から上方に離間する。
このとき、伸長距離M52は、伸長距離M53A,M53B,M53Cよりもキャリア205の厚さを超えて長い。このため、第1保持部52により保持されたキャリア205が湾曲しない場合であっても、キャリア205は、基板200Aよりもキャリア205の厚さを超えて下方に移動し、キャリア205の上面が二点鎖線L5で示す位置に配置される。第1保持部52に保持されるキャリア205及び第2保持部53A,53B,53Cに保持される基板200Aが、互いに離間する。
【0054】
さらに、キャリア205の中央部(キャリア205における厚さ方向に見たときの中央部)は、キャリア205に作用する重力により下方に向かって凸となるように湾曲する。
この場合、湾曲するキャリア205の変位の最大値(図8中に示す最大撓み量M)は、シミュレーションにより2mm程度であることが分かっている。
キャリア205が下方に向かって凸となるように湾曲することにより、第1保持部52に保持されるキャリア205及び第2保持部53A,53B,53Cに保持される基板200Aが、互いにさらに離間する。
このように、本実施形態では、移載工程S7では、キャリア205よりも基板200Aが上方に位置するように保持する。
図13に示すように、撮像部54A,54Bを、2本の歯部37A、1本の歯部39Aに対向するようにそれぞれ配置し、内歯車34、太陽歯車33、キャリア205、及び撮像部54A,54Bを、基準位置に配置する。このとき、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差が生じているとする。停止誤差が生じているときの、撮像部54A,54Bに対応する位置を、初期位置P54A2,P54B2と言う。
移載工程S7が終了すると、ステップS10に移行する。
【0055】
次に、調節・嵌め合わせ工程(ステップS10)を行う。調節・嵌め合わせ工程S10では、第1制御部81は、撮像部54A,54Bが取得した像に基づいて、マニピュレータ47により、内歯車34及び太陽歯車33に対する沿面方向のキャリア205の位置、及び第2軸線O5周りのキャリア205の向きを調整する。そして、マニピュレータ47により、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37にキャリア205の複数の歯部207をそれぞれ嵌め合わせる。
具体的には、まず、第1移動量算出工程(ステップS11)において、第1撮像部54Aが、太陽歯車33の2本の歯部37Aの像を取得する。そして、第2撮像部54Bが、内歯車34の1本の歯部39Aの像を取得する。
第1制御部81は、第1撮像部54Aが取得した太陽歯車33の2本の歯部37Aの像が、第1基準像ISに一致するように、内歯車34及び太陽歯車33に対する、沿面方向に沿うキャリア205の移動量、及び第2軸線O5周りのキャリア205の回転量を含む第1移動量を算出する。
なお、第1移動量及び、後述する第2移動量を求める数式等の詳細については、後述する(5.)で説明する。
【0056】
本実施形態の第1移載方法S5では、第1移動量算出工程S11において、実際にはキャリア205を移動及び回転させず、後述する嵌め合わせ工程S13でまとめて移動させる。第1移動量算出工程S11で、仮にキャリア205を第1移動量移動させた場合には、図14に示すように、内歯車34及び太陽歯車33に対してキャリア205が、沿面方向、及び第2軸線O5周りに移動する。キャリア205を第1移動量移動させた後の撮像部54A,54Bに対応する位置を、第1移載位置P54A3,P54B3と言う。
調節・嵌め合わせ工程S10の詳細については、後述する(5.)で説明する。
なお、第1移動量算出工程S11において、キャリア205を第1移動量移動させてもよい。第2移動量算出工程S12で、第2撮像部54Bが内歯車34の1本の歯部39Aの像を取得してもよい。
第1移動量算出工程S11が終了すると、ステップS12に移行する。
【0057】
次に、第2移動量算出工程(ステップS12)において、第1移動量移動したときの第2撮像部54Bが取得する内歯車34の1本の歯部39Aの像と、第2基準像IIとの差に基づいて、内歯車34及び太陽歯車33に対する、沿面方向に沿うキャリア205の移動量、及び第2軸線O5周りのキャリア205の回転量を含む第2移動量を算出する。
なお、第2移動量算出工程S12では、実際にキャリア205を移動させずに、第2移動量の算出のみを行う。
第2移動量算出工程S12が終了すると、ステップS13に移行する。
【0058】
次に、嵌め合わせ工程(ステップS13)において、マニピュレータ47により、キャリア205を第1移動量及び第2移動量移動させる。このとき、図15に示すように、内歯車34及び太陽歯車33に対してキャリア205が沿面方向に移動し、第2軸線O5周りに回転する。キャリア205を第1移動量及び第2移動量移動させた後の撮像部54A,54Bに対応する位置を、第2移載位置P54A4,P54B4と言う。
そして、その後で、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部39にキャリア205の複数の歯部207をそれぞれ嵌め合わせる。
【0059】
このとき、第1定盤32の第1支持面32a上にキャリア205を配置してキャリア205を平坦にする。そして、キャリア205を平坦にしたときに、基板200Aをキャリア205よりも上方に離間させる。具体的には、第1制御部81はマニピュレータ47により、第1支持面32aの上方に保持部50を移動させる。そして、保持部50を下方に移動させることにより、第1支持面32a上に保持部50の保持部52,53A,53B,53Cが保持するキャリア205及び基板200Aを降ろしていく。
第1支持面32a上にキャリア205を配置したときには、図8中に二点鎖線L5で示すようにキャリア205が平坦になるため、基板200Aはキャリア205よりも上方に離間している。
【0060】
次に、第1支持面32a上において、キャリア205の貫通孔206内に、上方から基板200Aを収容させる。具体的には、第1制御部81は、マニピュレータ47により、保持部50を下方に移動させて、キャリア205の貫通孔206内に基板200Aを収容させる。
第2搬送装置46の複数の開閉弁を閉じ、保持部52,53A,53B,53Cによるキャリア205及び基板200Aの保持を解除する。マニピュレータ47により、保持部50を第1支持面32a上から退避させる。
嵌め合わせ工程S13が終了すると、調節・嵌め合わせ工程S10の全工程が終了し、さらに第1移載方法S5の全工程が終了する。第1制御部81は、ステップS15に移行する。
【0061】
第1移載方法S5が終了すると、第2制御部82は、研磨部31の第2定盤を挟み状態にし、第1定盤32及び第2定盤を第1軸線O1周りの所定の向きに回転させるとともに、太陽歯車33及び内歯車34の少なくとも一方を第1軸線O1周りに回転させる。
第1定盤32、第2定盤等を所定の時間回転させると、第1定盤32及び第2定盤により、基板200Aの厚さ方向を向く面が研磨され、基板200Aが、研磨された後の基板200Bとなる。
第2制御部82は、研磨部31の第2定盤を退避状態にする。
第1制御部81は、前記第1移載方法S5とはほぼ逆の工程である第2移載方法(移載方法。ステップS15)を行うことにより、研磨部31からキャリア205を、研磨部31の外部に移載させる。
予め、第1制御部81はマニピュレータ47により、撮像部54A,54Bを、2本の歯部37A、1本の歯部39Aにそれぞれ対向するように配置しておく。
【0062】
第2移載方法S15では、第1制御部81は、研磨部31の第1支持面32a上のキャリア205の位置及び向きに基づいて、マニピュレータ47の保持部50の位置及び向き(姿勢)を調整する。そして、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37にキャリア205の複数の歯部207がそれぞれ嵌め合っている状態から、マニピュレータ47により、キャリア205を研磨部31の外部に移載させる。
【0063】
具体的には、まず、第1移動量算出工程(ステップS17)、第2移動量算出工程(ステップS18)において、前記第1移動量算出工程S11、第2移動量算出工程S12と同様の工程を行い、第1移動量及び第2移動量を算出する。すなわち、第1移動量算出工程S17及び第2移動量算出工程S18では、後述する(5.)で説明される数式を用いて、第1移動量及び第2移動量が求められる。
次に、取り外し工程(ステップS19)において、第1制御部81は、第1基準像IS及び第2基準像IIに基づいて、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37にそれぞれキャリア205の複数の歯部207が嵌め合っている状態の、内歯車34及び太陽歯車33に対する、沿面方向のキャリア205の位置、及び第2軸線O5周りのキャリア205の向きを検出する。
ここで言う沿面方向のキャリア205の位置は、基準位置及び基準向きである内歯車34及び太陽歯車33に嵌まり合うキャリア205の位置に対する、沿面方向のキャリア205の位置のズレとも言える。ここで言う第2軸線O5周りのキャリア205の向きは、基準位置及び基準向きである内歯車34及び太陽歯車33に嵌まり合うキャリア205の向きに対する、第2軸線O5周りのキャリア205の向きのズレとも言える。
【0064】
第1制御部81は、位置及び向きを調整した保持部50により、キャリア205を保持する。具体的には、保持部50の保持部52,53A,53B,53Cによりキャリア205及び基板200Bを保持する。保持部50の位置及び向きを調整することにより、第1保持部52によりキャリア205を確実に保持するとともに、第2保持部53A,53B,53Cにより基板200Bを確実に保持することができる。
マニピュレータ47により、保持部50を第1移動量及び第2移動量移動させ、キャリア205及び基板200Bを研磨部31の外部であるセットテーブル20の上面21上に移載する。
取り外し工程S19が終了すると、第2移載方法S15の全工程が終了する。第2制御部8は、ステップS25に移行する。
【0065】
次に、第2収容工程(ステップS25)において、第2制御部82は、第1搬送装置25により、セットテーブル20上の基板200Bを、搬出バスケット15内に収容する。基板200Bが収容された搬出バスケット15は、適宜搬出装置により研磨設備1から搬出される。
【0066】
以上の第1移載方法S5及び第2移載方法S15を繰り返すことにより、研磨設備1により基板200Aが連続的に研磨される。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の第2搬送装置46では、撮像部54が取得した像には、研磨部31における、実際の内歯車34の1本の歯部39A及び実際の太陽歯車33の2本の歯部37Aの像が含まれる。このため、例えば、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、第1制御部81が、この像に基づいて、マニピュレータ47により、内歯車34及び太陽歯車33に対する、沿面方向のキャリア205の位置、及び第2軸線O5周りのキャリア205の向きを調整することにより、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37にキャリア205の複数の歯部207をそれぞれ嵌め合わせやすくなる。
従って、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205をそれぞれ容易に嵌め合わせることができる。
【0068】
マニピュレータ47は、複数のリンク48と、複数の関節49と、複数の保持部50とを有する。このため、複数の関節49を駆動させて複数のリンク48を移動させることにより、保持部50に保持されたキャリア205を設置面Fに対して移載させることができる。そして、複数の関節49により、保持部50に保持されたキャリア205を、内歯車34及び太陽歯車33に対して、沿面方向、及び第2軸線O5周りに移載させることができる。
撮像部54が有する第1撮像部54A及び第2撮像部54Bは、先端リンク48Aに設けられている。従って、太陽歯車33の2本の歯部37Aの像、内歯車34の1本の歯部39Aの像を、第1撮像部54A、第2撮像部54Bにより別々に取得することができる。そして、マニピュレータ47の複数の関節49を駆動させて複数のリンク48を移動させることにより、第1撮像部54A及び第2撮像部54Bを移動させて、第1撮像部54A及び第2撮像部54Bが取得する像に写される対象を変化させることができる。
【0069】
第1制御部81は、第1移動量及び第2移動量を算出する。そして、マニピュレータ47により、キャリア205を第1移動量及び第2移動量移動及び回転させた後で、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37にキャリア205の複数の歯部207をそれぞれ嵌め合わせる。
マニピュレータ47により、第1制御部81が算出する第1移動量キャリア205を移動させることにより、太陽歯車33の複数の歯部37に対してキャリア205の複数の歯部207が嵌め合う位置に、キャリア205を移載させることができる。さらに、マニピュレータ47により、第1制御部81が算出する第2移動量キャリア205を移動させることにより、内歯車34の複数の歯部39に対してキャリア205の複数の歯部207が嵌め合う位置に、キャリア205を移載させることができる。
こうして、キャリア205を第1移動量及び第2移動量移動させた後で、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37にキャリア205の複数の歯部207をそれぞれ嵌め合わせることにより、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205をそれぞれさらに容易に嵌め合わせることができる。
【0070】
また、第2搬送装置46は、研磨部31からキャリア205を研磨部31の外部に移載させる。撮像部54が取得した像には、研磨部31における、実際の内歯車34の1本の歯部39A及び実際の太陽歯車33の2本の歯部37Aの像が含まれる。このため、例えば、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、第1制御部81は、この像に基づいて、内歯車34及び太陽歯車33に対する、これら内歯車34及び太陽歯車33に嵌め合うキャリア205の沿面方向の位置、及び第2軸線O5周りの向きを検出する。さらに第1制御部81は、これらの位置及び向きに基づいて、保持部50の沿面方向の位置、及び第2軸線O5周りの向きを調整することにより、キャリア205を保持部50により保持しやすくなる。そして、保持部50を有するマニピュレータ47により、キャリア205を研磨部31の外部に移載させることができる。
従って、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205がそれぞれ嵌め合っている状態から、キャリア205を研磨部31の外部に容易に移載させることができる。
なお、研磨部31の外部に移載させたキャリア205は、マニピュレータ47によりセットテーブル20上に精度良く配置される。
【0071】
また、本実施形態の研磨設備1では、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205をそれぞれ容易に嵌め合わせることができる第2搬送装置46を用いて、研磨設備1を構成することができる。
【0072】
また、本実施形態の第1移載方法S5では、前記像には、研磨部31における、実際の内歯車34の1本の歯部39A及び実際の太陽歯車33の2本の歯部37Aの像が含まれる。このため、例えば、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、この像に基づいて、内歯車34及び太陽歯車33に対する、沿面方向のキャリア205の位置、及び第2軸線O5周りのキャリア205の向きを調整することにより、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37にキャリア205の複数の歯部207をそれぞれ嵌め合わせやすくなる。
従って、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205をそれぞれ容易に嵌め合わせることができる。
【0073】
また、本実施形態の第2移載方法S15では、前記像には、研磨部31における、実際の内歯車34の1本の歯部39A及び実際の太陽歯車33の2本の歯部37Aの像が含まれる。このため、例えば、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、この像に基づいて、内歯車34及び太陽歯車33に対する、これら内歯車34及び太陽歯車33に嵌め合うキャリア205の沿面方向の位置、及び第2軸線O5周りの向きを検出する。さらに、これらの位置及び向きに基づいて、保持部50の沿面方向の位置、及び第2軸線O5周りの向きを調整することにより、キャリア205を保持部50により保持しやすくなる。そして、保持部50を移載することにより、キャリア205を研磨部31の外部に移載させることができる。
従って、内歯車34、太陽歯車33、及びマニピュレータ47に停止誤差がある場合でも、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205がそれぞれ嵌め合っている状態から、キャリア205を研磨部31の外部に容易に移載させることができる。
【0074】
なお、第2搬送装置46は、内歯車34及び太陽歯車33にキャリア205を嵌め合わせること、又は研磨部31からキャリア205を研磨部31の外部に移載させることができればよい。
【0075】
調節・嵌め合わせ工程では、まず、第2撮像部54Bが取得する内歯車34の複数の歯部39の少なくとも一部の像が、第2基準像IIに一致するように、内歯車34及び太陽歯車33に対する、沿面方向に沿うキャリア205の移動量、及び第2軸線O5周りのキャリア205の移動量を含む第2移動量を算出してもよい。そして、第2移動量移動したときの第1撮像部54Aが取得する太陽歯車33の複数の歯部37の少なくとも一部の像と、第1基準像との差に基づいて、内歯車34及び太陽歯車33に対する、沿面方向に沿うキャリア205の移動量、及び第2軸線O5周りのキャリア205の回転量を含む第1移動量を算出してもよい。
そのうえで、マニピュレータ47により、キャリア205を第2移動量及び第1移動量移動させた後で、内歯車34の複数の歯部39及び太陽歯車33の複数の歯部37にキャリア205の複数の歯部207をそれぞれ嵌め合わせてもよい。
【0076】
太陽歯車33の複数の歯部における第1軸線O1に直交する断面の外縁は、インボリュート曲線でもよい。内歯車34の複数の歯部も同様であり、キャリア205の複数の歯部は、太陽歯車33及び内歯車34の複数の歯部にそれぞれ嵌め合うように形成される。
第2搬送装置46は、2つの撮像部54A,54Bを有するとした。しかし、第2搬送装置が有する撮像部の数はこれに限定されず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0077】
(3.内歯車及び太陽歯車の停止誤差に対する、キャリアの位置及び向きの調整による対応)
例えば、マニピュレータ47の停止誤差が無い場合について説明する。基準位置における内歯車34、太陽歯車33、及びキャリア205の位置が、図16に示す位置であるとする。キャリア205の向きを、「C」の文字の向きで表す。
図16に示す基準位置に対して、例えば、図17に示すように、第1軸線O1に対して、内歯車34が時計周りに停止誤差があり、太陽歯車33が時計周りに停止誤差があるとする。キャリア205は、第1軸線O1に対して時計周りに公転するが、キャリア205の第2軸線O5周りの向きはほとんど変わらない(キャリア205はほとんど自転しない)。
この場合には、第1制御部81は、マニピュレータ47により、沿面方向のキャリア205の位置を調整する。
【0078】
一方で、図16に示す基準位置に対して、例えば、図18に示すように、第1軸線O1に対して、内歯車34が反時計周りに停止誤差があり、太陽歯車33が時計周りに停止誤差があるとする。キャリア205は、第1軸線O1周りにほとんど公転しないが、キャリア205の第2軸線O5周りの向きが変わる(キャリア205が自転する)。
この場合には、第1制御部81は、マニピュレータ47により、第2軸線O5周りのキャリア205の向きを調整する。
【0079】
内歯車34及び太陽歯車33の一般的な停止誤差は、図17に示す停止誤差と図18に示す停止誤差とを組み合わせた停止誤差になる。
第1制御部81が、マニピュレータ47により、沿面方向のキャリア205の位置を調整し、さらに第2軸線O5周りのキャリア205の向きを調整することにより、内歯車34及び太陽歯車33の一般的な停止誤差に対応することができる。
【0080】
(4.太陽歯車を固定した場合の計算方法)
本実施形態の第1移載方法S5では、太陽歯車33の2本の歯部37Aの像が第1基準像ISに一致するようにキャリア205を第1移動量移動した後で、第2移動量を算出する。
ここで、内歯車34の歯数(複数の歯部39の全数)を、ziと規定する。太陽歯車33の歯数を、zと規定する。キャリア205の歯数を、zと規定する。例えば、歯数ziが360であるとする。歯数zが120であり、歯数zが120であるとする。
【0081】
図19に示すように、太陽歯車33が固定され、内歯車34が第1軸線O1に対して反時計周りに回転する場合で説明する。
この場合、キャリア205が公転する回数は、(1)式により3/4回転となる。
i/(z+zi
=360/(120+360)
=3/4 ・・(1)
【0082】
この時のキャリア205の向き(自転角)は、図20に示すように、正回転(反時計周り)で1.5(3/2)回転自転する。
以上のように、内歯車34がθ回転すると、キャリア205は(3/4)θ公転し、(3/2)θ自転する。
【0083】
(5.調節・嵌め合わせ工程の詳細)
以下では、第1軸線O1に見たときの状態で、第1軸線O1に沿う方向の距離は考慮せずに説明する。
【0084】
(5.1.制御式のまとめ)
図21に示すように、太陽歯車33の2本の歯部37Aのうち、反時計回り側(内側)の歯部37Aを、以下では第1歯部37A1と言う。太陽歯車33の2本の歯部37Aのうち、時計回り側(外側)の歯部37Aを、以下では第2歯部37A2と言う。
以下の例では、内歯車34の歯部39Aとして、1本の歯部39A1を制御対象とする。
第1支持面32aに沿い、互いに直交する軸を、x軸、y軸と言う。
マニュピレータ47の保持部50の中心の座標を(x,y)、第2軸線O5周りの回転角をψと規定する。x軸及びy軸は、第1支持面32aに沿う(沿面方向に沿う)。
【0085】
表1及び表2に示すように、各項目に対する記号、設定値、歯数を規定する。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表1に示すように、キャリア205の公転円の半径の記号を、ri-cと規定する。例えば、キャリア205の公転円の半径の設計値を、720mmとする。第1基準像ISにおける第1歯部37A1の座標を、(xs1,ys1)と規定する。第2基準像IIにおける第1歯部39A1の座標を、(xi1,yi1)と規定する。
表2に示すように、例えば、キャリア205の歯数zを、120とする。
【0089】
座標(x,y)及び回転角ψの制御は、(4)式に基づいて行われる。なお、(x,y,ψ)は、第1移動量及び第2移動量を統合した移動量である。
【0090】
【数1】
【0091】
ただし、rは、キャリア205のピッチ円の半径である。△xは、x軸方向のキャリア205の移動量であり、△yは、y軸方向のキャリア205の移動量である。△ψは、第2軸線O5周りのキャリア205の回転量である。前記第2移動量は、移動量△x,△y,△ψを含む。
移動量△xs1は、第1撮像部54Aが取得する実際の第1歯部37A1の像と、第1基準像ISにおける第1歯部37A1の像との、x軸方向の距離である。移動量△ys1は、第1撮像部54Aが取得する実際の第1歯部37A1の像と、第1基準像ISにおける第1歯部37A1の像との、y軸方向の距離である。
【0092】
△xs2は、第1撮像部54Aが取得する実際の第2歯部37A2の像と、第1基準像ISにおける第2歯部37A2の像との、x軸方向の距離である。△ys2は、第1撮像部54Aが取得する実際の第2歯部37A2の像と、第1基準像ISにおける第2歯部37A2の像との、y軸方向の距離である。
△xi1は、第2撮像部54Bが取得する実際の第1歯部39A1の像と、第2基準像IIにおける第1歯部39A1の像との、x軸方向の距離である。△yi1は、第2撮像部54Bが取得する実際の第1歯部39A1の像と、第2基準像IIにおける第1歯部39A1の像との、y軸方向の距離である。
【0093】
保持部50の中心(マニュピレータ47の第1側の端)から基準像IS,IIにおける各歯部までの距離(ベクトル)は、以下のような定数になる。
・保持部50の中心から第1基準像ISにおける第1歯部37A1までの距離は、(7)式で表される。
・保持部50の中心から第1基準像ISにおける第2歯部37A2までの距離は、(8)式で表される。
・保持部50の中心から第2基準像IIにおける第1歯部39A1までの距離は、(9)式で表される。
【0094】
【数2】
【0095】
第1撮像部54Aが取得する実際の第1歯部37A1の像と、第1基準像ISにおける第1歯部37A1の像との位相差α(rad)は、(12)式で表される。
【0096】
【数3】
【0097】
なお、atan2(x,y)は、0以上2π未満の値で定義される、tanの逆関数を意味する。
第1撮像部54Aが取得した太陽歯車33の2本の歯部37Aの像が、第1基準像ISの2本の歯部37Aの像に一致した場合の、第2撮像部54Bが取得した第1歯部39A1の像と、第2基準像IIにおける第1歯部39A1の像との距離は、(15)式で表される。
【0098】
【数4】
【0099】
前記の場合における、第2撮像部54Bが取得した第1歯部39A1の像と、第2基準像IIにおける第1歯部39A1の像との位相差(rad)は、(16)式で表される。
【0100】
【数5】
【0101】
ただし、(△ψ,△ψ)は、第1移動量移動後のキャリア205と内歯車34との位相差である。
iyが正のとき、(△ψ-△ψ)は正であり、piyが負のとき、(△ψ-△ψ)は負である。
移動量△x,△y,△ψは、(17)式及び(18)式で表される。
【0102】
【数6】
【0103】
保持部50の中心から各歯部までの距離の誤差は、以下の式で表される。
・保持部50の中心から第1歯部37A1までの距離の誤差は、(26)式で表される。
・保持部50の中心から第2歯部37A2までの距離の誤差は、(27)式で表される。
・保持部50の中心から第1歯部39A1までの距離の誤差は、(28)式で表される。
【0104】
【数7】
【0105】
マニュピレータ47の保持部50が、研磨部31に対するキャリア205の搬入及び搬出位置に移動した後で、最初に(26)式から(28)式による誤差を検出する。
【0106】
(5.2.制御内容の詳細)
第1基準像ISにおける太陽歯車33の第1歯部37A1の像と、第1撮像部54Aが取得する実際の第1歯部37A1の像とを一致させる変換は、(31)式で表される。(31)式による変換は、マニュピレータ47への制御として行われる。
【0107】
【数8】
【0108】
前記一致をさせた後における、第1基準像ISにおける第2歯部37A2の像と、第2撮像部54Bが取得する実際の第2歯部37A2の像との距離は、(32)式で表される。
【0109】
【数9】
【0110】
第1歯部37A1から第2歯部37A2までの距離は、(33)式で表される。
【0111】
【数10】
【0112】
この時点では、図23に示すように、第1撮像部54Aが取得する実際の第1歯部37A1の像と、第1基準像ISにおける第1歯部37A1の像とは、座標(xs1,ys1)で一致している。
第1基準像ISにおける第2歯部37A2の像の座標は、(xs2,ys2)である。
実際の第2歯部37A2の座標は、(xs2+(△xs2-△xs1),ys2+(△ys2-△ys1))である。
【0113】
図23に示す、第1基準像ISにおける歯部37A1,37A2の像を結ぶ線と、実際の歯部37A1,37A2の像を結ぶ線とのなす角度αは、前記(12)式で表される。
【0114】
マニュピレータ47を制御して、第1基準像ISにおける歯部37A1,37A2の像と、第1撮像部54Aが取得する実際の歯部37A1,37A2の像とを一致させる変換は、(37)式で表される。ただし、マニュピレータ47の保持部50の中心の座標(x,y)を、基準とする。
なお、(37)式は、第1移動量を表す。
【0115】
【数11】
【0116】
変換e’を行う前は、図24に示すように、第1基準像ISにおける歯部37A1,37A2の位置P37A11,P37A21と、実際の歯部37A1,37A2の位置P37A12,P37A22とが、それぞれ異なっている。
図24に示す状態から、変換e’を行うことにより、図25に示すように、第1基準像ISにおける歯部37A1,37A2の位置P37A11,P37A21と、実際の歯部37A1,37A2の位置P37A12,P37A22とが、それぞれ一致する。
【0117】
実際には保持部50(キャリア205)を移動させないが、第1基準像ISにおける歯部37A1,37A2の像と、実際の歯部37A1,37A2とをそれぞれ一致させた後での、第2基準像IIにおける第1歯部39A1の像と実際の第1歯部39A1との距離pを求める。
第2撮像部54Bの座標の移動(第1歯部39A1の座標の移動)は、(40)式で表される。
ただし、距離(ds1x-di1x,ds1y-di1y)は、図26に示すように、第1歯部39A1から第1歯部37A1に向かう距離となる。
【0118】
【数12】
【0119】
従って、前記距離pのxy座標における距離(pix,piy)は、前記(15)式で表される。
【0120】
ここで、図27に示すように、第2基準像IIにおける第1歯部39A1の位置を、P39A11と規定する。実際の第1歯部39A1の位置を、P39A12と規定する。
このとき、太陽歯車33の中心(第2軸線O5)と位置P39A11とを結ぶ線と、太陽歯車33の中心と位置P39A12とを結ぶ線とのなす角度(△ψ-△ψ)は、前記(16)式で表される。
この時点で、太陽歯車33の2本の歯部37Aは、実物と第1基準像ISとの位置が一致した状態である。このため、内歯車34の歯部39A1の実物と第2基準像IIとの位置に誤差がある状態は、ソーラ型の遊星歯車(太陽歯車固定・内歯車が(△ψ-△ψ)回転)のように回転されているとみなすことができる。
したがって、ソーラ型遊星歯車の回転比率から、キャリア205の自転・公転角度が求められる。
それに応じて、マニピュレータ47を制御すればよい。
【0121】
なお、太陽歯車33を固定したソーラ型における内歯車34等の回転角度の比率は、表3に示すようである。
【0122】
【表3】
【0123】
例えば、内歯車34がθi回転した場合、キャリア205は((zi+z)/(zi+z))θi自転し、(zi/(zi+z))θi公転する。
【0124】
以上のように、最初に撮像部54A,54Bにより歯部37A1,37A2,39A1の位置を検出した後で行われる、マニュピレータ47に対する変換行列(第1移動量及び第2移動量の和)は、(44)式で表される。
なお、(44)式において、「C」は「cos」を表し、「S」は「sin」を表す。
【0125】
【数13】
【0126】
マニュピレータ47についての、前記座標(x,y)、前記回転角ψは、前記(4)式で表される。
【符号の説明】
【0127】
1 研磨設備
31 研磨部
32 第1定盤(定盤)
32a 第1支持面(支持面)
33 太陽歯車
34 内歯車
37,39,207 歯部
46 第2搬送装置(移載装置)
47 マニピュレータ(移載部)
48 リンク
49 関節
50 保持部
54 撮像部
54A 第1撮像部
54B 第2撮像部
200 基板
205 キャリア
206 貫通孔
F 設置面
II 第2基準像
IS 第1基準像
O5 第2軸線(軸線)
S5 第1移載方法(移載方法)
S15 第2移載方法(移載方法)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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