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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012331
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】粉体供給装置および立体造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/321 20170101AFI20230118BHJP
   B29C 64/255 20170101ALI20230118BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230118BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20230118BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20230118BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20230118BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/255
B33Y30/00
B29C64/165
B22F3/16
B22F12/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115917
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小山内 洋平
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 巴樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 滉一郎
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 大都
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕一
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AL10
4F213WA25
4F213WB01
4F213WF23
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL96
4K018CA44
4K018EA51
(57)【要約】
【課題】粉体保持部から造形槽に対して振動ふるいで粉体を供給する際に、造形槽に対して均一に粉体を供給する。
【解決手段】粉体供給口を振動源で振動させる振動ふるい部を少なくとも備え、前記粉体供給口の形状は長方形であって、前記振動源は前記粉体供給口の短手部側に設置される。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体供給口を振動源で振動させる振動ふるい部を少なくとも備え、
前記粉体供給口の形状は長方形であって、
前記振動源は前記粉体供給口の短手部側に設置される、
ことを特徴とする粉体供給装置。
【請求項2】
前記振動ふるい部は、前記振動源を保持する振動源保持フレームと、前記粉体供給口に対向して設けられた媒体を保持する保持フレームと、を備え、
前記保持フレームを、前記振動源保持フレームから取り外し可能とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項3】
前記保持フレームと前記振動源保持フレームとは、前記振動源の振動面に接触している、
ことを特徴とする請求項2に記載の粉体供給装置。
【請求項4】
前記保持フレームは、前記振動源の振動面に加圧されながら当接されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の粉体供給装置。
【請求項5】
前記媒体は、前記保持フレームと前記振動源保持フレームとの間に配置されている、
ことを特徴とする請求項2ないし4の何れか一項に記載の粉体供給装置。
【請求項6】
前記媒体はメッシュである、
ことを特徴とする請求項2ないし5の何れか一項に記載の粉体供給装置。
【請求項7】
前記振動ふるい部の振動を粉体が保持される粉体保持部に伝達させないようにする制振部を備える、
ことを特徴とする請求項1ないし6の何れか一項に記載の粉体供給装置。
【請求項8】
前記振動源の振動の周波数は、20kHz以上である、
ことを特徴とする請求項1ないし7の何れか一項に記載の粉体供給装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の粉体供給装置と、
前記粉体供給装置から供給された粉体で造形する造形部と、
を少なくとも備えることを特徴とする立体造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体供給装置および立体造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パウダーベットを有する3Dプリンタ(立体造形装置の一例)において、造形槽の粉体層に対して粉体を供給する技術の一例として、粉体層上で、粉体保持部であるホッパーを移動させながら粉体を供給する粉体供給装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、粉体供給を制御する目的で、振動ふるいの振動のOn/Offを制御することで粉体供給を制御する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の粉体供給装置では、粉体保持部から造形槽に対して均一に粉体を供給できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、粉体保持部から造形槽に対して振動ふるいで粉体を供給する際に、造形槽に対して均一に粉体を供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、粉体供給口を振動源で振動させる振動ふるい部を少なくとも備え、前記粉体供給口の形状は長方形であって、前記振動源は前記粉体供給口の短手部側に設置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粉体保持部から造形槽に対して振動ふるいで粉体を供給する際に、造形槽に対して均一に粉体を供給することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態にかかる立体造形装置の概略構成の一例を示す図である。
図2A図2Aは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。
図2B図2Bは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。
図2C図2Cは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。
図2D図2Dは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。
図2E図2Eは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。
図2F図2Fは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。
図2G図2Gは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。
図2H図2Hは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。
図3A図3Aは、立体造形装置における造形に用いる粉体の一例を説明するための図である。
図3B図3Bは、立体造形装置における造形に用いる粉体の一例を説明するための図である。
図3C図3Cは、立体造形装置における造形に用いる粉体の一例を説明するための図である。
図4図4は、本実施の形態にかかる立体造形装置が備える粉体供給装置の一例を示す図である。
図5図5は、造形槽と粉体供給口との関係を示す図である。
図6図6は、従来の粉体供給口と振動源との関係を示す図である。
図7A図7Aは、振動ふるいユニットの一例を示す図である。
図7B図7Bは、振動ふるいユニットの一例のA-A断面を示す図である。
図7C図7Cは、振動ふるいユニットの一例のB-B断面を示す図である。
図7D図7Dは、保持フレームと振動源との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、粉体供給装置および立体造形装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施の形態にかかる立体造形装置の概略構成の一例を示す図である。まず、図1を用いて、立体造形装置の概略構成の一例について説明する。
【0011】
立体造形装置は、造形部1と、造形ユニット5と、を備える。造形部1は、粉体(粉末)20が結合された層状の造形物である造形層30が形成される。造形ユニット5は、造形部1の層状に敷き詰められた粉体層31に造形液10を塗布して三次元の造形物を造形する。
【0012】
造形部1は、粉体槽11と、積層ユニット16と、を有する。積層ユニット16は、平坦化手段(リコータ)である回転体としての平坦化ローラ12、粉体除去板13、粉体20のタップ手段でありかつZ(垂直、上下)方向に振動する振動ブレード14、および振動ブレード14のアクチュエータ15を有する。平坦化手段には、平坦化ローラ12等の回転体に代えて、例えば、板状部材(ブレード、バー)を用いることができる。振動ブレード14のアクチュエータ15としては、エアバイブレータや偏心モータ、積層ピエゾ等が使用できる。ここでは、振動ブレード14を用いて粉体20をタップすることを前提として説明するが、粉体層31の密度が元々高い場合には、必ずしも振動ブレード14を用いなくても良い。
【0013】
粉体槽11は、供給槽21、造形槽22、および余剰粉体受け槽25を有する。供給槽21は、粉体20を造形槽22に供給する槽である。造形槽22は、造形層30が積層されて三次元の造形物が造形される。余剰粉体受け槽25は、新たな粉体層31を形成する際に平坦化ローラ12によって供給される粉体20のうち、落下される余剰粉体20を溜める。供給槽21の底部は、供給ステージ23として鉛直方向(Z方向)に昇降自在に設けられている。同様に、造形槽22の底部は、造形ステージ24上に造形層30が積層された三次元の造形物が造形される。余剰粉体受け槽25の底面には、粉体20を吸引する機構が設けられた構成や、余剰粉体受け槽25が簡単に取り外せる構成となっている。
【0014】
供給ステージ23、造形ステージ24は、例えば、モータによってZ方向(高さ方向)に昇降される。平坦化ローラ12は、供給槽21の供給ステージ23上に供給された粉体20を造形槽22に供給し、平坦化部材である平坦化ローラ12によって均して平坦化して、粉体層31を形成する。
【0015】
この平坦化ローラ12は、造形ステージ24のステージ面(粉体20が積載される面)に沿ってY方向に、ステージ面に対して相対的に往復移動可能に配置される。また、平坦化ローラ12は、モータによって回転駆動される。
【0016】
一方、造形ユニット5は、キャリッジ51、および造形ステージ24上の粉体層31に造形液10を塗布する液体塗布ヘッド(以下、単に、ヘッドという)52を備えている。ヘッド52は、キャリッジ51に少なくとも1つ以上搭載されている。キャリッジ51は、モータおよびガイド部材等によって、X(主走査)、Y(副走査)、Z方向に往復移動可能である。
【0017】
ヘッド52は、例えば、インクジェットヘッドであり、液体を塗布する複数のノズルを配列したノズル列が配置されている。ヘッド52のノズル列は、造形液10を塗布する。ヘッドの構成は、これに限るものではないが、4つのヘッドを用意し、シアンの造形液、マゼンタの造形液、イエローの造形液、ブラックの造形液を塗布させることにより、カラーの造形物を作製できる。液体の塗布方式としては、インクジェット方式の利用が多いが、ディスペンサー方式などであってもよい。
【0018】
ここで、造形部1の詳細について説明する。
【0019】
粉体槽11は、箱型形状をなし、供給槽21、造形槽22、および余剰粉体受け槽25の3つの上面が開放された槽を備える。供給槽21の内部には、供給ステージ23が昇降可能に配置されている。また、造形槽22の内部には、造形ステージ24が昇降可能に配置される。
【0020】
供給ステージ23の側面は、供給槽21の内側面に接するように配置されている。造形ステージ24の側面は、造形槽22の内側面に接するように配置されている。これらの供給ステージ23および造形ステージ24の上面は水平に保たれている。
【0021】
造形槽22の隣には、余剰粉体受け槽25が設けられている。余剰粉体受け槽25には、粉体層31を形成する際に平坦化ローラ12によって供給される粉体20のうちの余剰の粉体20が落下する。余剰粉体受け槽25に落下した余剰の粉体20は、供給槽21に粉体20を供給する粉体供給装置に戻される。粉体供給装置は、供給槽21上部に配置され、造形の初期動作時や供給槽21の粉体量が減少した場合に、粉体供給装置内のタンク等に蓄えられた粉体20を供給槽21に供給する。粉体20の供給のための粉体搬送方法としては、スクリューを利用したスクリューコンベア方式や、エアーを利用した空気輸送方式等が挙げられる。
【0022】
平坦化ローラ12は、供給槽21から粉体20を造形槽22へと移送供給して、表面を均すことで平坦化して所定の厚みの層状の粉体である粉体層31を形成する。この平坦化ローラ12は、造形槽22および供給槽21の内寸(すなわち、粉体20が供される部分または仕込まれている部分の幅)よりも長い棒状の部材であり、往復移動機構によってステージ面に沿ってY方向に往復移動される。
【0023】
また、平坦化ローラ12は、モータによって回転されながら、供給槽21の外側から供給槽21および造形槽22の上方を通過するようにして水平移動する。これにより、粉体20が造形槽22上へと移送供給され、平坦化ローラ12が造形槽22上を通過しながら粉体20を平坦化することで粉体層31が形成される。
【0024】
積層ユニット16には、平坦化ローラ12の周面に接触して、平坦化ローラ12に付着した粉体20を除去するための粉体除去部材である粉体除去板13が配置されている。粉体除去板13は、平坦化ローラ12の周面に接触した状態で、平坦化ローラ12とともに移動する。また、粉体除去板13は、平坦化ローラ12が平坦化を行うときの回転方向に回転するときにカウンタ方向でも、順方向での配置可能である。
【0025】
本実施の形態では、造形部1の粉体槽11が供給槽21と造形槽22の2つの槽を有する構成としているが、造形槽22のみとして、造形槽22に粉体供給装置から粉体を供給して、平坦化手段で平坦化する構成とすることもできる。
【0026】
立体造形装置(三次元造形装置)の制御部は、CPU(Central Processing Unit)、三次元の造形動作の制御を実行させるためのプログラムその他の固定データを格納するROM(Read Only Memory)、造形データ等を一時格納するRAM(Random Access Memory)等から構成され、外部のパーソナルコンピュータ等の造形データ作成装置から造形データを受信する。造形データ作成装置は、最終形態の造形物を各造形層30にスライスした造形データを作成する。制御部は、造形層30毎に造形動作を行う。
【0027】
図2A図2Gは、立体造形装置における造形物の造形処理の流れの一例を説明するための図である。図2Hは、立体造形装置により造形される三次元形状の造形物の一例の模式図である。次に、図2A図2Hを用いて、立体造形装置による造形物の造形処理の流れの一例について説明する。
【0028】
ここでは、造形槽22の造形ステージ24上に、1層目の造形層30が形成されている状態から説明する。この造形層30上に次の造形層30を形成する際、図2Aに示すように、造形ユニット5は、造形部1からY方向に遠ざかった初期位置にある。次に、立体造形装置は、造形部1を動作させ、供給槽21の供給ステージ23をZ1方向に上昇させ、かつ造形槽22の造形ステージ24をZ2方向に下降させる。
【0029】
このとき、立体造形装置は、造形槽22の上面(粉体層表面)と平坦化ローラ12の下部(下方接線部)との間隔が所定値となるように造形ステージ24の下降距離を設定する。造形槽22の上面と平坦化ローラ12の下部との間隔が、次に形成する粉体層31の厚さ(t)に相当する。この間隔は、数十~100μm程度であることが好ましい。
【0030】
次いで、立体造形装置は、図2Bに示すように、供給槽21の上面レベルよりも上方に位置する粉体20を、平坦化ローラ12を順方向(矢印方向)に回転させながら平坦化ローラ12をY2方向(造形槽22側)に移動させることで、粉体20を造形槽22へと移送供給する(粉体供給)。その際、立体造形装置は、振動ブレード14を振動させる。
【0031】
さらに、立体造形装置は、図2Cに示すように、平坦化ローラ12を造形槽22の造形ステージ24のステージ面と平行に移動させる。平坦化ローラ12を造形槽22の造形ステージ24のステージ面と平行に移動させる際も、立体造形装置は、振動ブレードを振動させた状態で、移動を実施する。そして、立体造形装置は、平坦化ローラ12を造形槽22上で移動させ切ったところで、振動ブレード14の振動を停止させる。
【0032】
ここで、平坦化ローラ12は、造形槽22および供給槽21の上面との距離を一定に保って移動できるようになっている。平坦化ローラ12が、造形槽22および供給槽21の上面と一定に保って移動できることで、平坦化ローラ12によって粉体20を造形槽22の上へと搬送させつつ、図2Dに示すように、造形槽22上または既に形成された造形層30の上に均一厚さの粉体層31を形成できる。振動ブレード14を振動させていることにより、粉体20はタッピングされ、高密度な状態にされた後に平坦化ローラ12により余剰な粉体20が削り取られるので、高密度かつ平坦な粉体層31を形成できる。粉体層31を形成後、平坦化ローラ12は、図2Dに示すように、Y1方向に移動されて初期位置に戻される。
【0033】
次に、立体造形装置は、図2Eに示すように、造形ユニット5をY1方向へ動かす。続いて、立体造形装置は、図2Fに示すように、造形ユニット5のヘッド52から造形液10の液滴を塗布して、次の粉体層31の所定部分に造形層30を積層形成(造形)する。立体造形装置は、ヘッド52を、X(主走査)方向、Y(副走査)方向に動かして造形を行う。例えば、造形液10には架橋剤が含まれており、ヘッド50から塗布された造形液10が粉体20と混合されることで、粉体20に含まれる結合剤が溶解し、溶解した結合剤が架橋結合した結果、粉体20が結合されることで造形層30が形成される。造形ステージ24上部に積みあがっていく造形物は、上層の造形層30の下面と、下層の造形層30の上面とが、上層の造形層30へ供給された造形液の浸透により同様に結合剤が架橋結合され、上層の造形層30とその下層の造形層30とが一体化して三次元形状の造形物となる。
【0034】
次に、立体造形装置は、図2Gに示すように、造形ユニット5をY2方向に動かして初期位置に戻した後、1層分の造形動作が終了する。すなわち、立体造形装置は、図2Aの状態に戻る。以後、立体造形装置は、粉体20を供給する工程、平坦化よる粉体層31を形成する工程、ヘッド52による造形液塗布工程等を、必要な回数繰り返すことによって、図2Hに示すような三次元形状の造形物(立体造形物)を完成させる。
【0035】
図3A図3Cは、立体造形装置における造形に用いる粉体の一例を説明するための図である。次に、図3A図3Cを用いて、立体造形装置において造形に用いる粉体20の一例について説明する。
【0036】
図3Aに示すように、粉体20は、金属または非金属の芯材(基材)20aに有機樹脂の結合剤(接着剤、バインダー)20bが被覆(コーティング)されている。芯材20aとしては、例えば、ステンレス粉やガラス粉が適用可能である。後述するように、芯材20aは、脱脂焼結を経て焼結体(最終的な三次元の造形物)となる。有機樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールや、ポリアクリル酸等が適用可能である。また、図3Bに示すように、結合剤は20b、芯材20aにコーティングするのではなく、芯材20aと混合させて使うことも可能である。これまでの説明では、結合剤20bは、粉体20中に存在し、結合剤20bを架橋結合させる造形液10を塗布することで造形物を形成するとしたが、図3Cに示すように、粉体20を芯材20aのみで構成し、結合剤を造形液10に含ませて塗布して造形物を形成してもよい。
【0037】
図4は、本実施の形態にかかる立体造形装置が備える粉体供給装置の一例を示す図である。本実施の形態にかかる立体造形装置の造形槽22に粉体20を供給する機構が、図1に示す立体造形装置と異なるが、その他の構成は同様であるため適宜説明を省略する。
【0038】
粉体供給装置100は、造形槽22の粉体層31に粉体を供給する粉体供給装置の一例である。また、粉体供給装置100は、図4のY1方向およびY2方向に移動可能に設けられ、造形槽22の上方を走査して、造形槽22に対して粉体20を供給する。
【0039】
本実施の形態では、粉体供給装置100は、粉体保持部としてのホッパー101と、振動ふるい部107と、を備える。ホッパー101は、紛体20を保持する。振動ふるい部107は、振動源103(図7A参照)により振動する。これにより、ホッパー101で保持されていた粉体20が造形槽22に供給される。
【0040】
本実施の形態では、振動ふるい部107から造形槽22へ供給される粉体供給口のX方向への長さ(幅)が、造形槽22のX方向への長さ(幅)と同じであることが好ましい。本実施の形態では、粉体供給装置100は、Y1方向およびY2方向に移動して造形槽22に対して粉体20を供給する。
【0041】
また、粉体供給装置100は、粉体供給装置100を造形槽22の上方で走査させる駆動部を有する。本実施の形態では、駆動部は、造形槽22の上方で、Y1方向およびY2方向に粉体供給装置100を移動させる。
【0042】
ホッパー101を含む粉体供給装置100は、供給槽21が不要となるため、立体造形装置のマシンサイズを小さくすることができる。また、事前に造形槽22に略均一に粉体20を供給できるため平坦化する時の造形槽22の粉面への圧力を均一化することができる。また、図1等で示したような供給槽21および造形槽22を設ける2槽方式では、造形槽22の上流側と下流側で振動ブレード14や平坦化ローラ12で搬送している粉体20の量が変化し、造形槽22の粉面への圧力が変化し、パッキング密度のばらつきの原因となる。
【0043】
ここで、図5は造形槽22と粉体供給口102との関係を示す図である。造形槽22のα(粉体供給装置100の移動方向(図4に示すY1方向およびY2方向))とβ(図4に示すX方向)との寸法比は、βが大きい長方形の方が、正方形やαが大きい長方形と比較すると生産性に優れる。これは、粉体供給装置100の移動距離がαに依存するため、αが小さい方が粉体供給装置100の移動距離が小さくなるためである。
【0044】
そこで、粉体供給口102の形状は、長手方向サイズが略βである長方形であることが望ましい。この構成により、粉体供給口102から一度に造形槽22に対して長手方向βに略均一に粉体を供給することが可能である。なお、粉体供給口102のサイズがβより小さい場合は、粉体供給装置100をβ方向に移動させる必要が生じる。
【0045】
一方、供給口が円形の粉体供給装置を用いる場合、供給口直径がβ以上あれば供給装置をβ方向に移動させずとも供給は可能であるが、β方向の粉体供給ばらつきが大きい。具体的には、供給口中央部の供給量が多く、供給口端部の供給量が少なくなり、後工程のパッキング密度ばらつきの原因となる。
【0046】
以上により、造形槽22は、粉体供給装置100の移動方向(図4に示すY1方向およびY2方向)が短手となる長方形が望ましく、粉体供給装置100の粉体供給口102は造形槽22の長手方向と略同じ長さであることが望ましい。
【0047】
ここで、図6は従来の粉体供給口と振動源との関係を示す図である。従来は、振動ふるいユニット207の振動源203が、粉体供給口202の短手方向に縦波を発生させるように、粉体供給口202の長手方向の略中央の振動面203aに取り付けられている。この場合、粉体供給口202に取り付けられている振動ふるいユニット207の強度変化に影響を受けることになるので、粉体供給口202の長手方向の振動ばらつきの原因となる。このように振動がばらつくと、粉体供給口202からの粉体供給量もばらつくことになる。
【0048】
ここで、図7を用いて振動ふるい部107と振動源103について説明する。図7Aは振動ふるい部107の一例を示す図、図7Bは振動ふるい部107の一例のA-A断面を示す図、図7Cは振動ふるい部107の一例のB-B断面を示す図、図7Dは保持フレーム105と振動源103との関係を示す図である。なお、図7B(b)は図7B(a)に示す振動ふるい部107の分解図である。
【0049】
図7Aないし図7Dに示すように、振動ふるい部107は、振動源103と、粉体供給口102と、粉体供給口102を保持する保持フレーム105と、振動源103を保持する振動源保持フレーム106と、を備える。振動源103は、粉体供給口102に振動を与える。一例として粉体供給口102は、メッシュを用いる例を説明するがメッシュに限定されず、網、パンチングメタル、エッチングメタルなど適宜、媒体を選択できる。
【0050】
図7Bの粉体供給口102は、保持フレーム105と振動源保持フレーム106との間に設けられる。
【0051】
この構成により、振動源103からの振動を保持フレーム105と振動源保持フレーム106との2つのフレームから加えることができるため、効率的な振動伝達が可能となる。また、粉体供給口102を保持フレーム105と振動源保持フレーム106とで挟み込むことで、例えば、メッシュなどの媒体が粉体供給口102から剥がれることを防止することができる。
【0052】
加えて、振動ふるい部107は一定期間使用すると、粉体供給口102の摩耗や目詰まりなどでメッシュなどの媒体を交換する必要がある。そこで、保持フレーム105は、交換時のコスト低減や交換時の操作性を向上させるために、振動源保持フレーム106から取り外し可能となっている。例えば、図7Aに示すように、粉体供給装置100は、振動源103として、ボルト締めランジュバン型振動源(BLT)を用いる。図7Aは、振動源保持フレーム106とBLTである振動源103が、ネジや溶接で固定される。図7Bは、振動源保持フレーム106と保持フレーム105が、ネジ110により固定される。
【0053】
この構成により、交換時に保持フレーム105を振動源保持フレーム106から取り外し、新たなメッシュなどの媒体を保持する保持フレーム105を振動源保持フレーム106に取り付けるだけで、交換が可能である。
【0054】
また、図7Aないし図7Dに示すように、振動源103は、粉体供給装置100の粉体供給口102の短手部側に設置される。この構成により、粉体供給口102の長手方向の振動を一定に保つことが可能であり、粉体供給口102からの粉体供給量も一定にすることが可能である。
【0055】
ところで、粉体供給装置100は、粉体供給のために造形槽22上をY1方向およびY2方向に移動する。粉体供給口102の長手部側に振動源103を設置すると、最も粉塵濃度が高い造形槽22上を粉塵爆発の着火源となりうる振動源103が通過する構成となる。一方、本実施形態のように、粉体供給口102の短手部側に振動源103を設置すると、最も粉塵濃度が高い造形槽22上を振動源103が通過しないため、立体造形装置の安全性を高めることができる。
【0056】
また、図7Dに示すように、保持フレーム105と振動源保持フレーム106とを別体化する場合、保持フレーム105と振動源保持フレーム106との両フレームとも、振動源103の振動面103aに接触させる構成にする。こうすることで、振動源103から保持フレーム105と振動源保持フレーム106との両フレームおよび粉体供給口102へと効率的に振動を伝達することが可能となる。より詳細には、接触するフレームが増えることで振動伝達経路が増える。さらに、振動源103、保持フレーム105、粉体供給口102の順番で、最も効率的な経路で振動を伝達できる。
【0057】
加えて、振動源103、保持フレーム105、粉体供給口102の順番で、最も効率的経路の振動伝達をさらに向上させる必要がある。従って、保持フレーム105は、振動源103の振動面103aに加圧させながら当接させている。このように保持フレーム105を振動源103の振動面103aに加圧させながら当接させることで、振動を効率的に伝達することが可能である。
【0058】
また、図7Bに示すように、振動ふるい部107は、振動源103の振動を粉体供給口102に効率的に伝達させるために、振動ふるい部107とホッパー101との接続部などには、制振材や軟質素材などの制振部を設ける。例えば、図7Bは、ホッパー101と振動源保持フレーム106との接続部には防振ブッシュ108を制振部として設ける。また、図7Bに示すように、振動ふるい部107とホッパー101との接合部の粉漏れを防止する封止材109には軟質素材を使用して制振部としてもよい。このようにすることで、振動ふるい部107からホッパー101への不要な振動漏洩を防ぎ、振動源103に必要とされる出力を低減させることができる。
【0059】
加えて、振動源103から発生させる振動の周波数を20kHz以上の超音波領域にすることが好ましい。こうすることにより、50μm以下の微粒子を振動ふるい部107から通過させることができる。また、メッシュ104の目詰まりが少なくなる。さらに、ブラシやタッピングボールが不要なため、異物混入のリスクが低下する。特に、立体造形装置では、20μmから10μmの微粒子を扱う場合、超音波領域でメッシュ104を振動させることは有効である。
【0060】
このように本実施形態によれば、ホッパーから造形槽に対して振動ふるいで粉体を供給する際に、造形槽に対して均一に粉体を供給することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、長方形形状の粉体供給口の短手部側に振動源を設置すると、最も粉塵濃度が高い造形槽上を振動源が通過しないため、立体造形装置の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 造形部
100 粉体供給装置
101 粉体保持部
102 粉体供給口
103 振動源
105 保持フレーム
106 振動源保持フレーム
107 振動ふるい部
108,109 制振部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2015-15921号公報
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D