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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123385
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】シリコン合金及びそれを用いた素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/851 20230101AFI20230829BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20230829BHJP
   C01B 33/06 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
H10N10/851
H10N10/01
C01B33/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023022130
(22)【出願日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2022027208
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022082511
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】幸田 陽一朗
(72)【発明者】
【氏名】秋池 良
(72)【発明者】
【氏名】召田 雅実
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA02
4G072BB05
4G072GG02
4G072HH01
4G072JJ09
4G072MM26
4G072MM36
4G072MM38
4G072RR13
4G072RR22
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】
低温における大きなゼーベック係数を有し、なおかつ、高密度を兼備する銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金、これを含む熱電材料、該熱電材料を含む熱電素子、及び、該熱電素子を含む熱電モジュールの少なくとも1つを提供する。
【解決手段】
ゲルマニウム、錫及び鉛から選ばれる少なくとも1種の第14族元素を含み、なおかつ、該第14族元素の含有量が9at%未満である、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウム、錫及び鉛から選ばれる少なくとも1種の第14族元素を含み、なおかつ、該第14族元素の含有量が9at%未満である、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金。
【請求項2】
前記シリコン合金に含まれる前記第14族元素、銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合に、第14族元素の原子割合が1at%以上9at%未満、銀の原子割合が9at%以上27at%以下、バリウムの原子割合が20at%以上53at%以下、及び、シリコンの原子割合が29at%以上64at%以下である、請求項1に記載のシリコン合金。
【請求項3】
相対密度が97%以上である請求項1又は2に記載のシリコン合金。
【請求項4】
前記第14族元素がゲルマニウム及び錫の少なくともいずれかである、請求項1又は2に記載のシリコン合金。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のシリコン合金を含む熱電変換素子。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のシリコン合金を含む熱電変換モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコン合金及びその用途、更には熱電材料として適したシリコン合金及びこれを使用する熱電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電材料は熱電変換素子に組み込まれ、熱電変換モジュールとして使用されている。近年、ウェアラブルデバイスへの適用などを目的とし、熱電変換モジュールの小型化に対する需要も高くなってきている。従来、ビスマス(Bi)とテルル(Te)からなるビスマスーテルル合金が熱電材料として使用されてきた。しかしながら、低環境負荷や、低コストなどの観点から、シリコン(Si)とシリコン以外の元素を含むシリコン合金が、熱電材料として検討されている。
【0003】
熱電材料として機能するシリコン合金として、MgSiのMgがAlに置換したn型の熱電材料(特許文献1)や、MgSi及びCaMgSiの2相からなるp型の熱電材料(特許文献2)などが報告されている。また、室温に対して高い熱電変換性能を得ることが可能なp型の熱電材料として機能するシリコン合金として、本発明者らは、銀、バリウム及びシリコンを主成分とするシリコン合金(珪化物系合金材料)を報告している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-368291号公報
【特許文献2】特開2008-147261号公報
【特許文献3】特開2021-181397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3で開示されたAg-Ba-Si系のシリコン合金は、特許文献1及び2で開示されたシリコン合金と比べて、低温(50℃)における高い熱電変換性能を示す。しかしながら、当該シリコン合金のゼーベック係数の絶対値の増加には密度低下を伴うものであった。
【0006】
本開示は、低温における大きなゼーベック係数を有し、なおかつ、高密度を兼備する銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金、これを含む熱電材料、該熱電材料を含む熱電変換素子、及び、該熱電変換素子を含む熱電変換モジュールの少なくとも1つを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金のゼーベック係数及び緻密化について検討した。その結果、該シリコン合金に特定の元素をドープすることで、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金の密度低下を伴わずにゼーベック係数の絶対値を大きくできることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は特許請求の範囲に記載の通りであり、また、本開示の要旨は以下の通りである。
(1) ゲルマニウム、錫及び鉛から選ばれる少なくとも1種の第14族元素を含み、なおかつ、該第14族元素の含有量が9at%未満である、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金。
(2) 前記シリコン合金に含まれる前記第14族元素、銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合に、第14族元素の原子割合が1at%以上9at%未満、銀の原子割合が9at%以上27at%以下、バリウムの原子割合が20at%以上53at%以下、及び、シリコンの原子割合が29at%以上64at%以下である、上記(1)に記載のシリコン合金。
(3) 相対密度が97%以上である上記(1)又は(2)に記載のシリコン合金。
(4) 前記第14族元素がゲルマニウム及び錫の少なくともいずれかである、上記(1)乃至(3)のいずれかひとつに記載のシリコン合金。
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかひとつに記載のシリコン合金を含む熱電変換素子。
(6) 上記(1)乃至(4)のいずれかひとつに記載のシリコン合金を含む熱電変換モジュール。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、低温における大きなゼーベック係数を有し、なおかつ、高密度を兼備する銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金、これを含む熱電材料、該熱電材料を含む熱電変換素子及び該熱電変換素子を含む熱電変換モジュールの少なくとも1つを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示について実施形態の一例を示して説明する。
[シリコン合金]
本実施形態は、ゲルマニウム、錫及び鉛から選ばれる少なくとも1種の第14族元素を含み、なおかつ、該第14族元素の含有量が9at%未満である、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金、である。このようなシリコン合金は、低温における高い熱電変換性能を有し、なおかつ、従来の銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金とくらべ、より高い密度を有する。
【0011】
本実施形態おいて、「シリコン合金」はシリコン(Si)と、1種以上のシリコン以外の元素と、からなる金属である。更に、本実施形態のシリコン合金は、銀-バリウム-シリコン系のシリコン合金(以下、「Ag-Ba-Si系合金」ともいう。)であり、これは、シリコンと、少なくとも銀及びバリウムを含む金属、特にシリコンと、銀及びバリウムと、からなる金属であり、上記シリコン以外の元素として銀及びバリウムを含む。
【0012】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、ゲルマニウム(Ge)、錫(Sn)及び鉛(Pb)から選ばれる少なくとも1種の第14族元素(以下、単に「第14族元素」ともいう。)を含む。第14族元素はゲルマニウム及び錫の少なくともいずれかであることが好ましく、錫であることがより好ましい。
【0013】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金の第14族元素の含有量は9at%未満であり、8at%以下又は7at%以下であることが好ましい。第14族元素の含有量がこれ以上のAg-Ba-Si系合金は、電気抵抗の上昇や、密度の著しい低下などが生じるため、低温の熱電変換性能が著しく低下する。第14族元素の含有量は0at%超であり、0.5at%以上又は1at%以上であればよい。好ましい第14族元素の含有量として、0at%超9at%未満、0.5at%以上8at%以下、又は、1at%以上7at%以下が例示できる。
【0014】
本実施形態における第14族元素の含有量は、第14族元素、銀、バリウム及びシリコンの合計原子量に対する第14族元素の原子量の割合[at%]である。
【0015】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、これに含まれる前記第14族元素、銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合に、第14族元素の原子割合が1at%以上9at%未満、銀の原子割合が9at%以上27at%以下、バリウムの原子割合が20at%以上53at%以下、及び、シリコンの原子割合が29at%以上64at%以下であることが好ましい。
【0016】
好ましくは、本実施形態のAg-Ba-Si系合金に含まれる前記第14族元素、銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合の、各元素の好ましい原子割合は以下のとおりである。
【0017】
第14族元素:1at%以上又は3at%以上、かつ、
8at%以下、又は5at%以下
銀 :9at%以上又は15at%以上、かつ、
27at%以下
バリウム :20at%以上又は30at%以上、かつ、
53at%以下又は45at%以下
シリコン :29at%以上又は32at%以上、かつ、
64at%以下又は52at%以下
本実施形態のAg-Ba-Si系合金に含まれる前記第14族元素、銀、バリウム及びシリコンの合計原子量を100at%とした場合の各元素の原子割合が、
第14族元素 : 1at%以上8at%以下、
銀 : 9at%以上27at%以下、
バリウム : 20at%以上45at%以下、及び、
シリコン : 32at%以上64at%以下
であることがより好ましく、
第14族元素 : 3at%以上5at%以下、
銀 : 15at%以上27at%以下
バリウム : 30at%以上45at%以下、及び、
シリコン : 32at%以上52at%以下
であることが更により好ましい。
【0018】
なお、本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、その効果を奏する範囲であれば、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物として、例えば、タングステン(W)、銅(Cu)、鉄(Fe)及びアルミニウム(Al)の群から選ばれる1以上の金属元素若しくはこれらの化合物、タングステン、銅、鉄及びアルミニウムの群から選ばれる1以上の酸化物が挙げられる。本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、金属不純物を含まないことが好ましく、例えば、タングステン、銅、鉄及びアルミニウムの合計含有量が100質量ppm以下、更には10ppm以下、また更には測定限界以下であることが好ましい。
【0019】
本実施形態おける組成は、一般的なICP-MS装置(例えば、Vista-PRO、セイコーインストゥルメンツ製)を使用し、ICP-MS質量分析法により測定すればよい。
【0020】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は相対密度が97%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。この様な相対密度を有することで、ゼーベック係数が高くなりやすく、なおかつ、電気抵抗率が低くなりやすくなると共に、本実施形態のAg-Ba-Si系合金を熱電変換材料として使用又は加工に適した強度を有しやすくなる。熱伝導率が低下しやすくなるため、相対密度は99.5%以下又は99.0%以下であればよい。好ましい相対密度の範囲として、97%以上99.5%以下、又は、98%以上99.5%以下が例示できる。
【0021】
本実施形態における相対密度は、理論密度[g/cm]に対する実測密度[g/cm]の割合[%]である。理論密度は、AgBaSiの理論密度4.78[g/cm]から組成変化を考慮した以下の(1)式から求まる値である。実測密度は、JIS R 1634に準じた方法で測定される値である。
【0022】
理論密度[g/cm] = 4.78×{M/MAgBa2Si3} (1)
上式において、Mは実測密度を測定したAg-Ba-Si系合金の物質量[g/mol]、及び、MAgBa2Si3はAgBaSiの物質量(=466.8[g/mol])である。Mの算出において、Ag-Ba-Si系合金の組成はICP-MS質量分析法により得られる組成を用いればよく、また、各元素の物質量は、Agが107.9[g/mol]、Baが137.3[g/mol]、Siが28.1[g/mol]、Geが72.6[g/mol]、Snが118.7[g/mol]、及び、Pbが207.2[g/mol]とすればよい。
【0023】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金の形状は用途に応じた形状であればよく、例えば、不定形状及び粉末状以外の形状、更には円板状、円柱状、錐体状、略球状及び多角形状の群から選ばれる1以上であること、また更には円板状及び円柱状の少なくともいずれかであることが挙げられる。
【0024】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金のゼーベック係数は、絶対値が120μV/Kを超え、130μV/K以上又は200μV/K以上であることが好ましく、また、500μV/K以下又は300μV/K以下であることが挙げられる。ゼーベック係数は、120μV/Kを超え500μV/K以下、130μV/K以上500μV/K以下、又は、200μV/K以上300μV/K以下であればよい。この様なゼーベック係数を有し、なおかつ、上述の相対密度を兼備することで、小型の熱電変換モジュールとしてより適用しやすくなる。
【0025】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金の電気抵抗率は1.00×10-3Ω・cm以上であることが好ましく、また、1.00×10-1Ω・cm以下又は1.00×10-2Ω・cm以下であることが好ましい。好ましい電気抵抗率の範囲は、1.00×10-3Ω・cm以上1.00×10-1Ω・cm以下、又は、1.00×10-3Ω・cm以上1.00×10-2Ω・cm以下が例示できる。
【0026】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金の熱伝導率は0.1W/mK以上又は0.5W/mK以上であることが好ましく、また、20W/mK以下又は5W/mK以下であることが好ましい。好ましい熱伝導率の範囲は、0.1W/mK以上20W/mK以下、又は、0.5W/mK以上5W/mK以下が例示できる。
【0027】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、Ag-Ba-Si系のシリコン合金が有する高い熱電変換性能を示すことが好ましい。本実施形態における熱電変換性能は、以下の(2)式により求めることができる。
【0028】
ZT=ST/ρκ (2)
(2)式において、Zは性能指数、Tは絶対温度[K]、Sはゼーベック係数[V/K]、ρは電気抵抗率[Ω・m]及びκは熱伝導率[W/K・m]である。さらに、S/ρはパワーファクター[W/K・m]である。
【0029】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、低温における熱電変換性能が高いことが好ましく、T=323[K](=50℃)における熱電変換性能(ZT)が0.04以上、0.05以上又は0.10以上であることが挙げられる。T=323[K]における熱電変換性能(ZT)は、例えば、0.30以下、0.25以下、0.20以下又は0.18以下であることが挙げられる。熱電変換性能(ZT)は、0.04以上0.30以下であることがより好ましく、0.05以上0.25以下が更に好ましく、0.10以上0.23が更により好ましい。
【0030】
モジュールとして使用した際の振動やヒートショックへの耐性が向上しやすいため、本実施形態のAg-Ba-Si系合金は機械強度が高いことが好ましく、特にビッカース硬度が高いことがより好ましく、ビッカース硬度及び破壊靭性が高いことがより好ましい。
【0031】
例えば、熱電材料として使用されているビスマス-テルル合金のビッカース硬度は100HV程度である。これに対し、本実施形態のAg-Ba-Si系合金のビッカース硬度は250HV以上又は300HV以上であることが好ましく、これにより実用的な熱電材料として使用することが可能となる。また、ビッカース硬度は1000HV以下又は500HV以下であることが例示できる。本実施形態のAg-Ba-Si系合金のビッカース硬度は250HV以上1000HV以下、又は、300HV以上500HV以下であることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態のAg-Ba-Si系合金の破壊靭性値は1.0MPa・m1/2以上又は1.2MPa・m1/2以上であることが好ましく、また、3.0以下又は2.0以下であることが例示できる。本実施形態のAg-Ba-Si系合金の破壊靭性値は1.0以上3.0以下、又は、1.2以上2.0以下であればよい。
【0033】
ビッカース硬度はJIS B7725に準じた方法により測定される値である。1kgfの力で合金材料に角錐形圧子を押し付け、形成された圧痕を顕微鏡により観察し、対角線の水平距離から圧痕の表面積を算出して、ビッカース硬度を計算すればよい。
【0034】
圧痕の頂点部分に形成された亀裂の長さを測定し、以下の式を用いて破壊靭性Kcを算出する。
【0035】
Kc=0.026×E1/2×P1/2×C-3/2×a
E:弾性率(JIS R1602に記載の方法で測定)
P:押込み加重=1kgf
C:圧痕の対角線長さの半分
a:き裂の長さの半分
[シリコン合金の製造方法]
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、上述の特性を有するシリコン合金であればその製造方法は任意である。本実施形態のAg-Ba-Si系合金の好ましい製造方法として、ゲルマニウム、錫及び鉛の群から選ばれる1以上の元素を含む第14族元素、銀、バリウム、並びにシリコンを含む溶融物を、650℃以上950℃以下で処理する工程、を含む製造方法が挙げられる。
【0036】
本実施形態の製造方法は、ゲルマニウム、錫及び鉛の群から選ばれる1以上の元素を含む第14族元素、銀、バリウム、並びにシリコンを含む溶融物を、650℃以上950℃以下で処理する工程(以下、「焼成工程」ともいう。)を有する。焼成工程を経ることにより、本実施形態のAg-Ba-Si系合金が得られる。
【0037】
焼成工程にはゲルマニウム、錫及び鉛の群から選ばれる1以上の元素を含む第14族元素、銀、バリウム、並びにシリコンを含む溶融物(以下、「原料溶融物」ともいう。)を供する。
【0038】
原料溶融物は、目的とするAg-Ba-Si系合金と同様な第14族元素、銀、バリウム及びシリコンを含む組成を有していればよく、上述の本実施形態のAg-Ba-Si系合金と同様な組成を有していればよい。
【0039】
焼成工程に供する原料溶融物の形状は任意であり、不定形状及び粉末状の少なくともいいずれかが挙げられる。具体的な原料溶融物の形状として、粒径200μm以下又は150μm以下の粉末状であることが例示できる。操作性(ハンドリング性)が向上するため、原料溶融物の粒径は10μm以上又は50μm以上であればよい。好ましい原料溶融物の粒径の範囲は、10μm以上200μm以下、又は、50μm以上150μm以下が例示できる。
【0040】
焼成工程では、原料溶融物を650℃以上950℃以下で処理する。焼成工程の処理温度は650℃以上であり、700℃以上又は750℃以上であることが好ましい。650℃未満では、原料溶融物の緻密化が進行しない。また、該処理温度は950℃以下であり、900℃以下であることが好ましい。処理温度が950℃を超えると、処理に供する焼成装置の部材(例えば、ホットプレスの型)と原料溶融物が融着し、本実施形態のAg-Ba-Si系合金の歩留まりが著しく低下する、又は、本実施形態のAg-Ba-Si系合金が得られなくなる。好ましい処理温度は700℃以上950℃以下、又は、750℃以上900℃以下であることが例示できる。
【0041】
焼成工程における処理は、原料溶融物が焼成される処理であればよく、加圧焼成であることが好ましく、ホットプレス処理、熱間静水圧プレス処理及び放電プラズマ焼成処理の少なくともいずれかであることがより好ましく、放電プラズマ焼成処理であることが更に好ましい。
【0042】
以下、放電プラズマ焼成(以下、「SPS」ともいう。)処理を一例として示して焼成工程について説明する。
【0043】
SPS処理は原料溶融物を加圧しながら、該原料溶融物に直接通電することで、これを焼成する処理である。加圧しながら焼成することにより、短時間で高温加熱できる。これにより、粒径の粗大化を伴うことなく、緻密なAg-Ba-Si系合金が得られる。
【0044】
SPS処理において原料溶融物に印加する圧力は10MPa以上又は25MPa以上であり、また、100MPa以下又は75MPa以下であることが好ましい。印加する圧力の好ましい範囲は10MPa以上100MPa以下、又は、25MPa以上75MPa以下でればよい。
【0045】
SPS処理における雰囲気は真空雰囲気であればよく、真空度が5.0×10-3Pa以下の真空雰囲気、更には真空度が1.0×10-3Pa以上5.0×10-3Pa以下の真空雰囲気であることが好ましい。
【0046】
SPS処理における処理温度は、650℃以上であり、700℃以上又は750℃以上であることが好ましく、また、950℃以下又は900℃以下であることが好ましい。処理温度の好ましい範囲は、650℃以上950℃以下、又は、750℃以上900℃以下であればよい。
【0047】
処理温度への昇温速度は任意であるが、例えば、50℃/min以上、300℃/min以下であることが挙げられる。
【0048】
上述の処理温度における保持時間は処理に供する原料溶融物の量や、使用するSPS炉の性能により適宜調整すればよいが、例えば、15分以下又は12分以下が挙げられる。
原料溶融物の内部まで均一に加熱するため、該保持時間は1分以上又は5分以上であることが挙げられる。該保持時間は1分以上15分以下、又は、5分以上12分以下であればよい。
【0049】
焼成工程に供する原料溶融物の製造方法は任意であるが、例えば、ゲルマニウム、錫及び鉛の群から選ばれる1以上の元素を含む第14族元素源(以下、単に「第14族元素源」ともいい、第14族元素がゲルマニウム等である場合、それぞれ「ゲルマニウム源」等ともいう。)、銀源、バリウム源、並びにシリコン源を含む組成物を溶融する工程(以下、「溶融工程」ともいう。)、を含む製造方法、が挙げられる。
【0050】
第14族元素源は、ゲルマニウム、錫及び鉛、並びに、これらの化合物の少なくともいずれかであればよい。第14元素源は、第14族元素の純度が3N以上(99.9%以上)又は4N以上(99.99%以上)であることが好ましい。第14族元素の純度の上限は、6N以下(99.9999%以下)又は5N以下(99.999%以下)が挙げられる。好ましい第14元素源として、ゲルマニウム、錫及び鉛の群から選ばれる1以上の元素が挙げられる。また、好ましいゲルマニウム源として金属ゲルマニウム(純ゲルマニウム)が、好ましい錫源として金属錫(純錫)が、及び、好ましい鉛源として金属鉛(純鉛)が、それぞれ、挙げられる。
【0051】
銀源は、銀及び銀含有化合物の少なくともいずれかであればよい。銀源は、銀の純度が3N以上又は4N以上であることが好ましい。銀の純度の上限は、6N以下又は5N以下が挙げられる。好ましい銀源として、金属銀(純銀)が挙げられる。
【0052】
バリウム源は、バリウム及びバリウム含有化合物の少なくともいずれかであればよい。バリウム源は、バリウムの純度が3N以上又は4N以上であることが好ましい。バリウムの純度の上限は、6N以下又は5N以下が挙げられる。好ましいバリウム源として、金属バリウム(純バリウム)が挙げられる。
【0053】
シリコン源は、シリコン及びシリコン含有化合物の少なくともいずれかであればよい。シリコン源は、シリコンの純度が3N以上又は4N以上であることが好ましい。シリコンの純度の上限は、6N以下又は5N以下が挙げられる。好ましいシリコン源として、金属シリコン(純シリコン)、更には不定形シリコンが挙げられる。
【0054】
第14族元素源等の出発原料の形状は任意であり、例えば、不定形、粉末及び顆粒の群から選ばれる1以上であることが挙げられる。
【0055】
溶融工程に供する組成物は、目的とするAg-Ba-Si系合金の第14族元素、銀、バリウム及びシリコンの原子量比となるように、第14族源等の出発原料を含んでいればよく、必要に応じ、任意の方法で出発原料を混合してもよい。
【0056】
混合方法は任意であり、湿式混合及び乾式混合の少なくともいずれかが例示できる。
【0057】
溶融工程では、該組成物を溶融する。これにより原料溶融物が得られる。溶融方法はアーク溶融法、大気溶融法、高周波溶融法、プラズマ溶融法、スカル溶融法、ゾーンメルティング法、及び、電子ビーム溶融法の群から選ばれる1以上の方法であればよい。短時間で溶融が可能、雰囲気制御が可能、るつぼ(銅の鋳型)からの汚染が少ないため、溶融方法はアーク溶融であることが好ましい。
【0058】
アーク溶融は、処理に供する組成物の単位質量当たりの電流値(以下、単に「電流値」ともいう。)が30A/g以上又は50A/g以上であることが好ましい。これにより、短時間で溶融処理することができる。アーク溶融中の組成物の組成変動を抑制するため、電流値は150A/g以下又は120A/g以下であることが好ましい。好ましい電流値の範囲は、30A/g以上150A/g以下、又は、50A/g以上120A/g以下が例示できる。
【0059】
上述の電流値での保持時間は、処理に供する組成物の量や、使用するアーク溶融炉の性能に合わせて適宜調整すればよいが、例えば、0.5分以上又は1分以上であり、かつ5分以下又は3分以下であることが挙げられる。好ましい保持時間は、0.5分以上5分以下、又は、1分以上3分以下が例示できる。
【0060】
組成物を効率よく溶融させるため、上述の電流値及び保持時間による処理を複数回施してもよく、該処理を2回以上又は3回以上行ってもよい。該処理は必要以上に行う必要はなく5回以下又は4回以下であればよい。好ましい処理回数は、2回以上5回以下、又は、3回以上4回以下が例示できる。
【0061】
アーク溶融後の原料溶融物は任意の方法で降温し、これを回収すればよく、急冷により降温してもよい。急冷は、流動性を有する状態(いわゆる溶融状態)の原料溶融物を瞬間的に凝固させる処理である。これにより、溶融混合物が急冷薄帯として得られる。急冷方法は公知の方法を使用することができ、例えば、冷却速度が1×10K/s以上1×10K/s以下となるような冷却方法が挙げられる。具体的な冷却方法として、流動性を有する状態の原料溶融物と水冷ローラーとを接触させることが例示できる。
【0062】
必要に応じて、原料溶融物は粉砕や造粒をしてもよい。これにより、原料溶融物の形状及びサイズを任意のものにすることができる。
【0063】
粉砕は、湿式粉砕及び乾式粉砕の少なくともいずれかであればよく、乳鉢粉砕、ボールミル、ジェットミル及びビーズミルの群から選ばれる1以上の粉砕方法が挙げられる。また、造粒はスプレードライ及びガスアトマイズの少なくともいずれかの造粒方法が挙げられる。粉砕及び造粒は酸素(O)の混入が生じない方法で行うことが好ましく、不活性雰囲気での粉砕が好ましい。これにより、溶融物の表面酸化が抑制され、その結果、酸素含有量が増加しにくくなる。
【0064】
本実施形態の製造方法は、Ag-Ba-Si系合金を加工する工程(以下、「加工工程」ともいう。)を含んでいてもよい。加工工程では、熱電変換素子など、Ag-Ba-Si系合金を目的に応じた形状に加工する。加工方法は合金の加工に適用される公知の方法が適用でき、例えば、平面研削法、ロータリー研削法及び円筒研削法の群から選ばれる1以上の研削加工方法が挙げられる。
[熱電変換材料及び熱電変換素子]
本実施形態のAg-Ba-Si系合金は、これを含む熱電変換材料として使用することができ、更にはn型の熱電変換材料として使用することが好ましい。さらに、本実施形態のAg-Ba-Si系合金を備えた熱電変換素子として使用することができる。本実施形態において「熱電変換材料」とは、熱エネルギーの電気エネルギーへの直接変換を可能とする材料であり、「熱電変換素子」とはp型の熱電変換材料とn型の熱電変換材料を備え、一方の熱電変換材料に高温の物質を接触させ、なおかつ、他方の熱電変換材料に低温の物質を接触させた場合に起電力が生じる素子である。
【0065】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金を備えた熱電変換素子は、本実施形態のAg-Ba-Si系合金と、これと対になるp型又はn型の熱電変換材料とが接触しないように平行に設置され、それぞれの熱電変換材料を電極で繋いだ構造を有していればよい。
【0066】
本実施形態のAg-Ba-Si系合金を備えた熱電変換素子は、これを集積した熱電変換モジュールとして使用することができる。熱電変換モジュールは、目的に応じて、任意の形式のモジュールであればよく、例えば、一段型熱電変換モジュール、カスケード式モジュール及びセグメント型モジュールの群から選ばれる1以上、更には一段型熱電変換モジュールであることが挙げられる。なお、「熱電変換モジュール」とは、2以上の熱電変換素子を集積したモジュールである。
【実施例0067】
以下、本開示を実施例により説明する。しかしながら、本開示はこれに限定されるものではない。
(平均結晶粒径)
後方散乱電子回折(EBSD)を備えたショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(装置名:JSM-IT800SHL、日本電子社製)を使用し、以下の条件で合金試料内部のSEM観察図を得た。
【0068】
加速電圧 : 15kV
観察倍率 : 300倍又は1000倍
試料傾斜 : 70°
得られたSEM観察図において、結晶界面における結晶方位の差が5°以上となる部分を結晶粒界とみなして結晶粒子を確認した。各結晶粒子の最長径を測定し、これを結晶粒径とした。5000±100個の結晶粒径を測定し、その平均をもって平均結晶粒径を求めた。SEM観察に先立ち、合金試料は乾式研磨とアルゴンイオンミリング加工により前処理を行った。
(結晶相)
一般的な粉末X線回折装置(装置名:RINT UltimaIII、RIGAKU社製)を使用し、合金試料のXRD測定をした。測定条件は以下のとおりである。
【0069】
加速電流・電圧 : 40mA・40kV
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : 連続スキャン
スキャン条件 : 5°/分
測定範囲 : 2θ=20°から50°
発散縦制限スリット: 10mm
発散/入射スリット: 1°
受光スリット : open
検出器 : D/teX Ultra
Niフィルター使用
得られたX線回折パターンを、X線回折装置付属の解析プログラム(ソフト名:PDLX2、RIGAKU製)を使用し、X線回折パターンを平滑化処理及びバックグラウンド除去し、これらの処理後のX線回折パターンを、分割擬Voigt関数によりプロファイルフィッティングした。該フィッティング後のX線回折パターンと、PDFカード(01-086-0810)のX線回折パターンとを対比することにより、合金試料の結晶相の同定を行った。
(組成)
一般的なICP-MS装置(装置名:Vista-PRO、セイコーインストゥルメンツ製)を使用し、ICP-MS質量分析法により試料の組成を測定した。前処理として、合金試料をフッ酸及び硫酸で溶解し、得られた酸溶液を測定に供した。
(相対密度)
理論密度[g/cm]に対する実測密度[g/cm]の割合[%]から、合金試料の理論密度を求めた。理論密度は、上述の方法で測定された組成を使用し、上述の(1)式から求めた。実測密度はJIS R 1634に準じた方法で測定された嵩密度の値を使用した。なお、実測密度に先立ち、合金試料は溶媒にケロシンを使用した真空法で前処理を行った。
(電気抵抗)
比抵抗/ホール測定システム(装置名:ResiTest8400、東陽テクニカ製)を使用し、以下の条件で電気抵抗を測定した。
【0070】
サンプル形状 :直径10mm×厚み1mmの円板状
電極 :白金電極
測定雰囲気 :真空雰囲気
測定温度 :50℃
(ゼーベック係数)
ゼーベック係数測定オプションを備えた比抵抗/ホール測定システム(装置名:ResiTest8400、東陽テクニカ製)を使用して、以下の条件でゼーベック係数を測定した。
【0071】
サンプル形状 :直径10mm×厚み1mmの円板状
測定雰囲気 :真空雰囲気
測定温度 :50℃
(熱伝導率)
レーザーフラッシュ法熱伝導測定装置(装置名:TC-1200RH、アドバンス理工製)を使用し、以下の条件で熱伝導率を測定した。
【0072】
サンプル形状 :直径10mm×厚み1mmの円板状
測定雰囲気 :真空雰囲気
測定温度 :50℃
(ビッカース硬度試験、破壊靭性)
硬度試験機(装置名:HV-115、ミツトヨ製)を用いて、1kgfの力で合金材料に角錐形圧子を押し付け、形成された圧痕を顕微鏡により観察し、顕微鏡で見た圧痕における対角線の水平距離から圧痕の表面積を算出して、ビッカース硬度を計算した。さらに、圧痕の頂点部分に形成された亀裂の長さを測定し、以下の式を用いて破壊靭性Kcを算出した。
【0073】
Kc=0.026×E1/2×P1/2×C-3/2×a
E:弾性率(JIS R1602に記載の方法で測定)
P:押込み加重=1kgf
C:圧痕の対角線長さの半分
a:き裂の長さの半分
実施例1
以下の組成となるように、金属シリコン(不定形シリコン;純度5N、平均サイズ2~5mm、製品名:SIE01GB、高純度化学社製)、金属銀(純銀;純度3N、平均顆粒径1~3mm、製品名:AGE01GB、高純度化学社製)、金属バリウム(バリウム;純度3N、平均サイズ10mm、フルウチ化学社製)、及び、金属錫(錫顆粒;純度4N、平均顆粒径2~3mm、製品名:SNE01GB、高純度化学社製)を原子量比でAg:Ba:Si:Sn=1:2:2.9:0.1となるように秤量した。秤量した原料を水冷鋳型に充填した後、アーク溶融炉(装置名:ACM-S01、大亜真空製)を使用し、以下の条件でアーク溶融して原料溶融物を得た。
【0074】
アーク溶融時間:2分間×4回
出力 :100A/g
得られた原料溶融物を瑪瑙乳鉢に移し、乳鉢を用いてこれを乾式粉砕後、目開き150μmの篩を通過させ、粒径150μm未満の粉末状にした。粉砕後の原料溶融物1.00gを直径10mmの円形カーボン型に充填し、放電プラズマ焼成炉(製品名:LABOX-315R-AH、シンターランド製)を使用し、以下の条件でSPS処理して合金を得、これを本実施形態のAg-Ba-Si系合金とした。放電プラズマ焼成における温度放射温度計(製品名:IR-AHS、株式会社チノー製)を使用して測定した。
【0075】
昇温速度 :150℃/min(~600℃)
100℃/min(600℃~保持温度)
真空度 :5.0×10-3Pa
保持温度 :800℃
保持時間 :10分
保持圧力 :75MPa
得られたAg-Ba-Si系合金は、平均結晶粒径が11μmであり、相対密度が99.4%であった。
【0076】
実施例2乃至7
表1に示す組成となるように金属シリコン、金属銀、金属バリウム及び金属錫を秤量及び混合して組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ、合金を得、これを各実施例のAg-Ba-Si系合金とした。
【0077】
実施例8
金属錫の代わりに金属ゲルマニウム(純ゲルマニウム;純度4N、製品名:GE001、高純度化学製)を使用したこと、及び、それぞれ、表1に示す組成となるように金属シリコン、金属銀、金属バリウム及び金属ゲルマニウムを秤量及び混合して組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ、合金を得、これを、各実施例のAg-Ba-Si系合金とした。
【0078】
比較例1乃至5
表2に示す組成となるように金属シリコン、金属銀及び金属錫を秤量及び混合して組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ、合金を得、これを各比較例のシリコン系合金とした。
【0079】
比較例6
表2に示す組成となるように金属シリコン、金属銀、金属バリウム及び金属錫を秤量及び混合して組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ、合金を得、これを各比較例のシリコン系合金とした。
【0080】
比較例7
表2に示す組成となるように不定形シリコン、銀顆粒、バリウム、及び、ゲルマニウム粉末を秤量及び混合して組成物を得たこと以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ、合金を得、これを各比較例のシリコン系合金とした。
【0081】
実施例及び比較例の結果を表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
表中「-」は未測定を意味する。実施例のAg-Ba-Si系合金は、いずれも相対密度が97%を超え、なおかつ、ゼーベック係数の絶対値が140μV/K超であり、密度及びゼーベック係数を兼備することが確認できた。熱電変換性能(ZT)は、いずれの実施例も0.05以上であり、比較例の熱電変換性能よりも高いことが確認できる。特に、比較例3のシリコン系合金は電気抵抗が高いため、ゼーベック係数が高いにも関わらず、熱電変換性能が著しく低くなることが確認できた。
【0084】
測定例(機械強度の測定)
実施例1、2、4、及び8,並びに、比較例5で得られたシリコン系合金のビッカース硬度試験を実施し、破壊靭性を計算した。結果を下表に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例のいずれのビッカース硬度も250HV以上であり、ビスマス-テルル合金より高い強度であることが確認できた。また、破壊靭性は1.1MPa・m1/2以上であり、比較例よりも機械強度が高いことが確認できる。