(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123413
(43)【公開日】2023-09-05
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ならびにこれを用いて製造された感光性樹脂膜およびカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230829BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230829BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20230829BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G02B5/20 101
H01L27/146 D
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027796
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0024685
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朴 憬 修
(72)【発明者】
【氏名】盧 遠 亞
(72)【発明者】
【氏名】金 泰 水
(72)【発明者】
【氏名】朴 秀 彬
(72)【発明者】
【氏名】李 貞 和
(72)【発明者】
【氏名】宋 ヘ ニ
(72)【発明者】
【氏名】朴 白 晟
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4M118
【Fターム(参考)】
2H148BE03
2H148BE09
2H148BE18
2H148BE23
2H148BE26
2H148BF02
2H148BF11
2H148BF16
2H148BF25
2H148BG11
2H148BH06
2H225AC36
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC72
2H225AD06
2H225AM22P
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2H225AN98P
2H225BA01P
2H225BA16P
2H225BA35P
2H225CA17
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA02
4M118GC07
4M118GC11
(57)【要約】
【課題】シリコン系フォトダイオード、赤外線カットフィルタなどの性能と関係なく、イメージセンサによる画像品質を一定の水準において実現するために、近赤外線に対する影響が少ない赤色感光性樹脂組成物、これを用いて製造された感光性樹脂膜およびカラーフィルタを提供する。
【解決手段】一実施形態による赤色感光性樹脂組成物は、(A)着色剤;(B)バインダー樹脂;(C)光重合性化合物;(D)光重合開始剤;および(E)溶媒を含み、前記着色剤は顔料分散液を含み、前記顔料分散液は顔料の総質量に対して、C.I.ピグメントレッド254を50質量%~79.9質量%含み、C.I.ピグメントイエロー139を20質量%~40質量%含み、C.I.ピグメントグリーン58を0.1質量%~10質量%含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)着色剤;
(B)バインダー樹脂;
(C)光重合性化合物;
(D)光重合開始剤;および
(E)溶媒;
を含み、
前記着色剤は顔料分散液を含み、
この際、前記顔料分散液は、顔料の総質量に対して、C.I.ピグメントレッド254を50質量%~79.9質量%含み、C.I.ピグメントイエロー139を20質量%~40質量%含み、C.I.ピグメントグリーン58を0.1質量%~10質量%含む、
赤色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
顔料の総質量に対して、C.I.ピグメントレッド254を57質量%~67質量%含み、C.I.ピグメントイエロー139を30質量%~35質量%含み、C.I.ピグメントグリーン58を1.5質量%~9質量%含む、請求項1に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記顔料分散液は、分散剤、分散樹脂、分散媒、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記分散剤は、アミン価が0mgKOH/g超、100mgKOH/g以下である、請求項3に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記顔料分散液は、下記数式1により算出される、前記顔料分散液中の全固形分に対する顔料の固形分の含有量が、40質量%~80質量%である、請求項3に記載の赤色感光性樹脂組成物:
【数1】
上記数式1中、
pは、前記顔料分散液中の顔料の固形分の総質量であり、
bは、前記顔料分散液中の全固形分の総質量である。
【請求項6】
前記分散媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記顔料分散液中の全固形分の含有量は、前記顔料分散液の総質量に対して、10質量%~40質量%である、請求項3に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記顔料分散液中の全固形分の体積基準の累積50%粒径(D50)は、15nm~70nmである、請求項3に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記顔料分散液は、前記顔料分散液の総質量に対して、
前記顔料を合計で10質量%~20質量%含み、
前記分散剤を0.1質量%~5質量%含み、
前記分散樹脂を0.1質量%~5質量%含み、
前記分散媒を残部量含む、
請求項3に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜を用いて、顕微分光測光法によって測定される、波長725nmにおける透過率をAとし、波長625nmにおける透過率をBとした際、下記数式2を満足する、請求項1に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【数2】
【請求項11】
前記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜を用いて、顕微分光測光法によって測定される、波長430nmにおける透過率が0%超、5%以下である、請求項10に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜を用いて、顕微分光測光法によって測定される、波長560nmにおける透過率が0%超、3.5%以下である、請求項10に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記バインダー樹脂は、アクリル系バインダー樹脂を含む、請求項1に記載の赤色感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物の総質量に対して、
前記(A)着色剤5質量%~70質量%;
前記(B)バインダー樹脂0.1質量%~20質量%;
前記(C)光重合性化合物0.1質量%~20質量%;
前記(D)光重合開始剤0.1質量%~5質量%;および
残部量の前記(E)溶媒;
を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の赤色感光性樹脂組成物を用いて製造される、赤色感光性樹脂膜。
【請求項16】
請求項15に記載の赤色感光性樹脂膜を含む、赤色カラーフィルタ。
【請求項17】
請求項16に記載の赤色カラーフィルタを含む、CMOSイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、感光性樹脂組成物、ならびにこれを用いて製造された感光性樹脂膜およびカラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサは、光子を電子に転換してディスプレイに表示するか保存装置に保存することができるようにする半導体に該当する。
【0003】
上記イメージセンサは、製作工程と応用方式によって、固体撮像素子(charge coupled device;CCD)イメージセンサと、相補性金属酸化物半導体(complementary metal oxide semiconductor;CMOS)イメージセンサに分類される。
【0004】
上記相補性金属酸化物半導体イメージセンサ(CIS)とは、カメラが受け取ったイメージをデジタル信号に転換する非メモリ半導体であって、カラーフィルタ、フォトダイオード、増幅器などのピクセルの集合体である。
【0005】
上述のイメージセンサに使用されるシリコン系フォトダイオードは近赤外線に対する感度を有している。そのため、上記イメージセンサに近赤外線カットフィルタを追加して画像品質を補正することもある。ただし、上記シリコン系フォトダイオード、上記赤外線カットフィルタなどの性能によって、これらを含むイメージセンサが実現する画像品質に偏差が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、シリコン系フォトダイオード、赤外線カットフィルタなどの性能と関係なく、イメージセンサによる画像品質を一定の水準において実現するために、近赤外線に対する影響が少ない赤色感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、上記赤色感光性樹脂組成物を用いて製造された赤色感光性樹脂膜を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記赤色感光性樹脂膜を用いて製造されたカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(A)着色剤;(B)バインダー樹脂;(C)光重合性化合物;(D)光重合開始剤;および(E)溶媒を含み、上記着色剤は顔料分散液を含み、この際、上記顔料分散液は、顔料の総質量に対して、C.I.ピグメントレッド254を50質量%~79.9質量%含み、C.I.ピグメントイエロー139を20質量%~40質量%含み、C.I.ピグメントグリーン58を0.1質量%~10質量%含む、赤色感光性樹脂組成物を提供する。
【0011】
上記顔料の総質量に対して、C.I.ピグメントレッド254を57質量%~67質量%含み、C.I.ピグメントイエロー139を30質量%~35質量%含み、C.I.ピグメントグリーン58を1.5質量%~9質量%含むことができる。
【0012】
上記顔料分散液は、分散剤、分散樹脂、分散媒、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0013】
上記分散剤は、アミン価が0mgKOH/g超、100mgKOH/g以下であってもよい。
【0014】
上記顔料分散液は、下記数式1から算出される全顔料の含有量が40質量%~80質量%であってもよい:
【0015】
【0016】
上記数式1中、pは上記顔料分散液中の全顔料の固形分の総質量であり、bは上記顔料分散液中の全固形分の総質量である。
【0017】
上記分散媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0018】
上記顔料分散液中の全固形分の含有量は、10質量%~40質量%であってもよい。
【0019】
上記顔料分散液中の全固形分の体積基準の累積50%粒径(D50)は、15nm~70nmであってもよい。
【0020】
上記顔料分散液は、上記顔料分散液の総質量に対して、上記顔料を合計で10質量%~20質量%含み、上記分散剤を0.1質量%~5質量%含み、上記分散樹脂を0.1質量%~5質量%含み、上記分散媒を残部量で含むことができる。
【0021】
上記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜を用いて、顕微分光測光法によって測定される、波長725nmにおける透過率をAとし、波長625nmにおける透過率をBとした際、下記数式2を満足することができる:
【0022】
【0023】
上記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜を用いて、顕微分光測光法によって測定される、波長430nmにおける透過率が、0%超、5%以下であってもよい。
【0024】
上記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜を用いて、顕微分光測光法によって測定される、波長560nmにおける透過率が、0%超、3.5%以下であってもよい。
【0025】
上記バインダー樹脂は、アクリル系バインダー樹脂を含むことができる。
【0026】
上記感光性樹脂組成物は、上記感光性樹脂組成物の総質量に対して、上記(A)着色剤5質量%~70質量%;上記(B)バインダー樹脂0.1質量%~20質量%;上記(C)光重合性化合物0.1質量%~20質量%;上記(D)光重合開始剤0.1質量%~5質量%;および残部量の上記(E)溶媒を含むことができる。
【0027】
上記感光性樹脂組成物は、マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;ビニル基または(メタ)アクリルオキシ基を含むカップリング剤;レベリング剤;およびフッ素系界面活性剤;およびラジカル重合開始剤より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。
【0028】
また、本発明は、上記赤色感光性樹脂組成物を用いて製造された赤色感光性樹脂膜を提供する。
【0029】
また、本発明は、上記赤色感光性樹脂膜を含む赤色カラーフィルタを提供する。
【0030】
また、本発明は、上記赤色カラーフィルタを含むCMOSイメージセンサを提供する。
【0031】
本発明の他の態様の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0032】
一実施形態による赤色感光性樹脂組成物は、近赤外線に対する影響が少なく、シリコン系フォトダイオード、赤外線カットフィルタなどの性能と関係なく、イメージセンサによる画像品質を一定の水準において実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0034】
本明細書において特段の言及がない限り、“置換”とは、化合物中の少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバモイル基、チオール基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、リン酸基もしくはその塩、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキニル基、またはこれらの組み合わせの置換基で置換されたことを意味する。
【0035】
本明細書において特段の言及がない限り、“ヘテロシクロアルキル基”、“ヘテロシクロアルケニル基”、“ヘテロシクロアルキニル基”、および“ヘテロシクロアルキレン基”とはそれぞれ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、およびシクロアルキレンの環化合物内に少なくとも1つのN、O、SまたはPのヘテロ原子が存在することを意味する。
【0036】
本明細書において特段の言及がない限り、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”および“メタクリレート”のいずれか一方であり得ることを意味する。
【0037】
本明細書における化学式で別途の定義がない限り、化学結合が描かれなければならない位置に化学結合が描かれていない場合は、上記位置に水素原子が結合されていることを意味する。
【0038】
本明細書においてカルド系樹脂とは、下記化学式4-1~化学式4-11からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が樹脂内主骨格に含まれる樹脂を意味する。
【0039】
また、本明細書において別途の定義がない限り、“*”は同一または異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0040】
また、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0041】
また、平均粒径は、当業者に広く公知された方法で測定でき、例えば、粒度分析器で測定するか、または、透過電子顕微鏡の写真または走査電子顕微鏡の写真で測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法を利用して測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウントした後、これから計算して平均粒径値を得ることができる。別途の定義がない限り、平均粒径は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味し得る。
【0042】
また、近赤外線は一般に、750~3000nmの波長領域の電磁波と定義される。
また、本明細書において、PWC(pigment weight concentration)は、数式1と関係なく、溶媒を除く感光性樹脂組成物の構成成分の総質量中の染料含量+顔料含量を意味する。
【0043】
(感光性樹脂組成物)
本発明は、(A)着色剤;(B)バインダー樹脂;(C)光重合性化合物;(D)光重合開始剤;および(E)溶媒を含み、上記着色剤は顔料分散液を含み、上記顔料分散液は、顔料の総質量に対して、C.I.ピグメントレッド254を50質量%~79.9質量%含み、C.I.ピグメントイエロー139を20質量%~40質量%含み、C.I.ピグメントグリーン58を0.1質量%~10質量%含む、赤色感光性樹脂組成物を提供する。
【0044】
一実施形態の赤色感光性樹脂組成物は、近赤外線に対する影響が少なく、シリコン系フォトダイオード、赤外線カットフィルタなどの性能と関係なく、イメージセンサによる画像品質を一定の水準において実現することができる。
【0045】
以下、本発明による赤色感光性樹脂組成物に含まれている各成分を具体的に説明する。
【0046】
(A)着色剤
一実施形態の赤色感光性樹脂組成物は、顔料型感光性樹脂組成物として顔料分散液を含む。上記顔料分散液は、赤色を実現するために赤色顔料(R)を含むと共に、近赤外線領域の波長の光を遮断するために、黄色顔料(Y)および緑色顔料(G)をさらに含む。
【0047】
特に、上記赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254(以下、単にR254とも称する)を使用し、上記黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー139(以下、単にY139とも称する)を使用し、上記緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン58(以下、単にG58とも称する)を使用して;かつ、上記顔料の総質量に対して、各顔料の含有量を50質量%~79.9質量%(R254)、20質量%~40質量%(Y139)および0.1質量%~10質量%(G58)に限定する場合、赤色の実現と併せて、近赤外線領域の波長の光を遮断する効果を同時に実現することができる。
【0048】
具体的には、上記赤色顔料としてC.I.ピグメントレッド254(R254)は、下記化学式Aで表される化合物に該当し、ジケトピロロピロール(DPP)構造を有することによって、他の赤色顔料と対比して470nm~570nmの波長範囲での高い吸光度を示しながら優れた着色力を発現する。
【0049】
【0050】
上記C.I.ピグメントレッド254は、感光性樹脂組成物およびこれを使用して製造された樹脂膜の色を赤色とするために、上記顔料の総質量に対して、50質量%以上、53質量%以上、55質量%以上、または57質量%以上の範囲内で、他の色の顔料と対比して過剰量で使用することができる。
【0051】
ただし、上記C.I.ピグメントレッド254は、その含有量が増加するほど、相対的に近赤外線領域の波長の光を遮断する効果を付与する顔料の含有量が減少するため、上記顔料の総質量に対して、79.9質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、または67質量%以下である範囲内で使用することができる。
【0052】
上記黄色顔料としてC.I.ピグメントイエロー139(Y139)は、下記化学式Bで表される化合物に該当し、イソインドリン構造を有することによって、他の黄色顔料と対比して400nm~500nmの波長範囲での高い吸光度を示しながら優れた着色力を発現する。
【0053】
【0054】
上記C.I.ピグメントイエロー139(Y139)は、感光性樹脂組成物およびこれを使用して製造された樹脂膜に近赤外線領域の波長の光を遮断する効果を付与するために、上記顔料の総質量に対して、20質量%以上、25質量%以上、27質量%以上、または30質量%以上の範囲内で使用することができる。
【0055】
ただし、上記C.I.ピグメントイエロー139(Y139)は、その含有量が増加するほど、相対的に赤色を実現する顔料の含有量が減少するため、上記顔料の総質量に対して、40質量%以下、38質量%以下、36質量%以下、または35質量%以下である範囲内で使用することができる。
【0056】
上記緑色顔料としてC.I.ピグメントグリーン58(G58)は、下記化学式Cで表される化合物に該当し、フタロシアニン構造を有することによって、他の緑色顔料と対比して650nm~680nmの波長範囲での高い吸光度を示しながら優れた着色力を発現する。
【0057】
【0058】
上記化学式C中、aおよびbは、それぞれ独立して、0~4の整数である(ただし、同一ベンゼン環上において、bは4-a以下である。)。
【0059】
上記C.I.ピグメントグリーン58(G58)は、感光性樹脂組成物およびこれを使用して製造された樹脂膜に近赤外線領域の波長の光を遮断する効果を付与するために、上記顔料の総質量に対して、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、または1.5質量%以上の範囲内で使用することができる。
【0060】
ただし、上記C.I.ピグメントグリーン58(G58)は、その含有量が増加するほど、相対的に赤色を実現する顔料の含有量が減少するため、上記顔料の総質量に対して、10質量%以下、9.5質量%以下、9.3質量%以下、または9質量%以下である範囲内で使用することができる。
【0061】
上記顔料は、分散液の形態でカラーフィルタ用感光性樹脂組成物に含まれてもよい。このような顔料分散液は上記顔料と共に、分散剤、分散樹脂、分散媒、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0062】
上記分散剤は上記顔料を分散液中に均一に分散させる役割を有するものであり、非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性の分散剤を制限なく使用することができる。具体的には、ポリアルキレングリコールもしくはそのエステル、ポリオキシアルキレン、多価アルコールエステルアルキレンオキシド付加物、アルコールアルキレンオキシド付加物、スルホン酸エステル、スルホン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アルキルアミドアルキレンオキシド付加物、またはアルキルアミンなどを使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0063】
なお、上記分散剤は、重量平均分子量が10,000g/mol未満である。
【0064】
具体的には、上記分散剤は、アミン価が0mgKOH/g超、100mgKOH/g以下である分散剤を含むことができ、これによって高明度のカラーフィルタを実現することができる。
【0065】
ここで、アミン価とは、‘油脂1g中のアミンを中和するのに要する塩酸と当量の水酸化カリウムのmg数’であって、1級(RNH2)、2級(R2NH)および3級(RN(CH3)2、R2NCH3、R3N等)のアミン構造の総量を意味する。一方、本明細書において、酸価とは、‘油脂1g中の酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数’であって、カルボキシ基の総量を意味する。上記アミン価は、テトラヒドロフラン、アセトンなどの中性溶媒に試料を溶解させた後、ブロモフェノールブルー、クリスタルバイオレットなどを指示薬として、エタノール性塩酸溶液または過塩素酸溶液で中和滴定するか、あるいは電位差を測定することによって求めることができる。
【0066】
上記分散剤は、アミン価が100mgKOH/g以下、90mgKOH/g以下、80mgKOH/g以下、70mgKOH/g以下、65mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、または55mgKOH/g以下であり、かつ、0mgKOH/g超、5mgKOH/g以上、または10mgKOH/g以上であるものであってもよい。
【0067】
これに該当する分散剤は、DISPERBYK(登録商標、以下同じ)-161(アミン価:11mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-162(アミン価:13mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-163(アミン価:10mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-164(アミン価:18mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-166(アミン価:20mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-167(アミン価:13mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-182(アミン価:13mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-184(アミン価:15mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-185(アミン価:17mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2000(アミン価:4mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2001(アミン価:29mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2008(アミン価:66mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2009(アミン価:4mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2022(アミン価:61mgKOH/、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2050(アミン価:30mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2055(アミン価:40mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2061(アミン価:3mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2150(アミン価:57mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2155(アミン価:48mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2163(アミン価:10mgKOH/g、製造会社:BYK社)、DISPERBYK-2164(アミン価:14mgKOH/g、製造会社:BYK社)、BYK-9077(アミン価:48mgKOH/g、製造会社:BYK社)、BYKLPN-21116(アミン価:29mgKOH/g、製造会社:BYK社)などが挙げられる。
【0068】
上記分散樹脂としては、アクリル系樹脂を使用することができ、これは顔料分散液の安定性を向上させることができるだけでなく、ピクセルのパターン性も改善させることができる。
【0069】
具体的には、上記分散樹脂は、下記化学式1-1で表される繰り返し単位、下記化学式1-2で表される繰り返し単位、および下記化学式1-3で表される繰り返し単位を含む、共重合体であってもよい:
【0070】
【0071】
上記化学式1-1および1-3中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である。
【0072】
上記分散樹脂は重量平均分子量が10,000g/mol~20,000g/molであり、酸価が80~200mgKOH/gであってもよい。
【0073】
また、上記分散樹脂はランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよく、後者の場合、下記化学式1で表すことができる:
【0074】
【0075】
上記化学式1中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基であり;a~cは、それぞれ独立して、1~100の整数である。
【0076】
上記顔料分散液において、下記数式1により、上記顔料分散液中の全固形分に対する、顔料の含有量を算出することができる。下記数式1により算出される顔料の含有量が、40質量%~80質量%を満足する範囲内において、樹脂膜の外観を向上させることができるが、これを満足しない場合、樹脂膜の外観が低下することがある:
【0077】
【0078】
上記数式1中、pは上記顔料分散液中の全顔料の固形分の質量であり、bは上記顔料分散液中の全固形分の質量である。
【0079】
具体的には、上記顔料分散液中の分散媒を除いた全固形分(例えば、全顔料、分散剤、分散樹脂など)100質量%に対して、上記顔料固形分(全顔料の固形分)の含有量が40質量%~80質量%、より具体的には、45質量%~80質量%、さらに具体的には、50質量%~80質量%、例えば60質量%~78質量%であってもよい。
【0080】
上記分散媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、エチルラクテート(EL)、エチレングリコールエチルアセテート(EGA)、シクロヘキサノン、3-メトキシ-1-ブタノール、またはこれらの組み合わせを使用することができる。具体的には、上記分散媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0081】
上記顔料分散液中の分散媒を除いた全固形分(例えば、全顔料、分散剤、分散樹脂など)のD50が、15nm~70nm、具体的には、20nm~65nm、より具体的には、25nm~60nm、例えば35nm~55nmであってもよい。この範囲において、上記顔料分散液は、半導体、ディスプレイ装置などに適切に使用することができる。
【0082】
上記顔料分散液中の分散媒を除いた全固形分(例えば、全顔料、分散剤、分散樹脂など)の含有量は、上記顔料分散液100質量%中、10質量%~40質量%、具体的には、12質量%~30質量%、より具体的には、15質量%~25質量%であってもよい。
【0083】
また、上記顔料分散液は、上記顔料分散液の総質量に対して、上記顔料固形分(全顔料)を10質量%~20質量%、具体的には、12質量%~18質量%含み;上記分散剤を0.1質量%~5質量%、具体的には、1質量%~4質量%含み;上記分散樹脂を0.1質量%~5質量%、具体的には、1質量%~4質量%含み;上記分散媒を残部量含むことができる。
【0084】
この範囲を満足することによって、本発明による赤色感光性樹脂組成物は、優れた着色力を発現することができる。
【0085】
上記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜を用いて、顕微分光測光法によって測定される、波長725nmにおける透過率をAとし、波長625nmにおける透過率をBとした際、下記数式2を満足することができる:
【0086】
【0087】
具体的には、上記数式2中の下限は70、71、72、74、または75であってもよく、上限は100、99、98、97、96、または95であってもよい。
【0088】
また、上記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜に対して、顕微分光測光法によって測定される、波長430nmにおける透過率が、0%超、5%以下であってもよく、波長560nmにおける透過率が0%超、3.5%以下であってもよい。
【0089】
上記赤色感光性樹脂組成物から得られる、厚さ5500Å~6000Åの赤色感光性樹脂膜を用いて、顕微分光測光法によって得られる測定結果が、上記説明を満足する時、近赤外線に対する影響が少なく、シリコン系フォトダイオード、赤外線カットフィルタなどの性能と関係なく、イメージセンサによる画像品質を一定の水準において実現することができる。
【0090】
(B)バインダー樹脂
上記感光性樹脂組成物は、バインダー樹脂をさらに含むことができ、上記バインダー樹脂はアクリル系バインダー樹脂を含むことができる。
【0091】
具体的には、上記アクリル系バインダー樹脂は、下記化学式2-1で表される繰り返し単位、下記化学式2-2で表される繰り返し単位、および下記化学式2-3で表される繰り返し単位を含む共重合体であってもよい:
【0092】
【0093】
上記化学式2-1および化学式2-3中、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基である。
【0094】
上記アクリル系バインダー樹脂は、重量平均分子量が6,000g/mol~10,000g/molであり、酸価が30~50mgKOH/gであり、二重結合当量が300~400g/molであってもよい。
【0095】
また、上記アクリル系バインダー樹脂は、ランダム共重合体またはブロック共重合体であってもよく、後者の場合、下記化学式2で表すことができる:
【0096】
【0097】
上記化学式2中、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基であり;d~fは、それぞれ独立して、1~100の整数である。
【0098】
本発明による赤色感光性樹脂組成物は、上記化学式2で表されるアクリル系バインダー樹脂を第1のアクリル系バインダー樹脂として含みながら、第2のアクリル系バインダー樹脂、エポキシ系バインダー樹脂、カルド系バインダー樹脂、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0099】
上記第2のアクリル系バインダー樹脂は、第1のエチレン性不飽和単量体およびこれと共重合可能な第2のエチレン性不飽和単量体の共重合体であって、少なくとも1種のアクリル系繰り返し単位を含む樹脂である(ただし、上記第1のアクリル系バインダー樹脂を除く)。
【0100】
上記第1のエチレン性不飽和単量体は、少なくとも1つのカルボキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体であり、その具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
上記第1エチレン性不飽和単量体は、上記アクリル系バインダー樹脂の総質量に対して5質量%~50質量%、例えば10質量%~40質量%で含まれていてもよい。
【0102】
上記第2のエチレン性不飽和単量体は、上記第1エチレン性不飽和単量体を除く、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルメチルエーテルなどの芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル化合物;2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル化合物;酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物;グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド化合物;などが挙げられ、これらを単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0103】
上記第2のアクリル系バインダー樹脂の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを単独または2種以上を配合して使用することもできる。
【0104】
上記バインダー樹脂は、エポキシ系バインダー樹脂をさらに含むことができる。
【0105】
上記バインダー樹脂は、エポキシ系バインダー樹脂をさらに含むことによって、耐熱性を向上させることができる。上記エポキシ系バインダー樹脂は、例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂、テトラメチルビフェニルエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、またはこれらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
さらに、上記エポキシ系バインダー樹脂を含むバインダー樹脂は、後述の顔料などの着色剤の分散安定性を確保すると同時に、現像過程で所望の解像度のピクセルが形成されるように補助する。
【0107】
上記エポキシ系バインダー樹脂は、上記バインダー樹脂の総質量に対して1質量%~10質量%、例えば5質量%~10質量%で含まれてもよい。上記エポキシ系バインダー樹脂が上記範囲で含まれる場合、残膜率および耐薬品性が大きく改善できる。
【0108】
上記エポキシ系バインダー樹脂のエポキシ当量(epoxy equivalent weight)は150g/eq~200g/eqであってもよい。上記の範囲内のエポキシ当量を有するエポキシ系バインダー樹脂がバインダー樹脂内に含まれる場合、形成されたパターンの硬化度の向上、およびパターンが形成された構造内での着色剤の固着に有利な効果がある。
【0109】
上記バインダー樹脂は、カルド系バインダー樹脂をさらに含むことができる。
【0110】
上記カルド系バインダー樹脂は、下記化学式3で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0111】
【0112】
上記化学式3中、
R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であり、
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、
Z1は、下記化学式4-1~化学式4-11で表される連結基のうちの少なくとも1種であり、
【0113】
【0114】
(上記化学式4-5中、
Raは、水素原子、エチル基、-C2H4Cl、-C2H4OH、-CH2CH=CH2またはフェニル基である。)
【0115】
【0116】
Z2は、酸二無水物残基であり、
m1およびm2は、それぞれ独立して、0~4の整数である。
【0117】
上記カルド系バインダー樹脂は、両末端のうちの少なくとも一方に下記化学式5で表される官能基を含むことができる。
【0118】
【0119】
上記化学式5中、
Z3は、下記化学式5-1~化学式5-7のうちの少なくとも1種で表すことができる。
【0120】
【0121】
(上記化学式5-1中、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、エステル基(-O-(C=O)-R、または-(C=O)-O-R、この際、Rは炭素数1~10のアルキル基である)、もしくはエーテル基(-O-R、この際、Rは炭素数1~10のアルキル基である)である。)
【0122】
【0123】
(上記化学式5-5中、Rdは、O、S、NH、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、または炭素数2~20のアルケニルアミノ基である。)
【0124】
【0125】
上記カルド系バインダー樹脂は、例えば、9,9-ビス(4-オキシラニルメトキシフェニル)フルオレンなどのフルオレン含有化合物;ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフタル酸無水物などの無水物化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどのアルコール化合物;プロピレングリコールメチルエチルアセテート、N-メチルピロリドンなどの溶媒類化合物;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物;およびテトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、ベンジルジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドなどのアミンまたはアンモニウム塩化合物、のうちの2つ以上を混合して製造することができる。
【0126】
上記カルド系バインダー樹脂を上述のアクリル系バインダー樹脂と共に使用する場合、密着力に優れ、高解像度、および高輝度特性を有する感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0127】
上記カルド系バインダー樹脂の重量平均分子量は、500g/mol~50,000g/mol、例えば3,000g/mol~30,000g/molであってもよい。上記カルド系バインダー樹脂の重量平均分子量が上記の範囲内である場合、カラーフィルタ製造時、残渣なくパターン形成が行われ、現像時、膜の厚さの損失がなく、良好なパターンを得ることができる。
【0128】
上記カルド系バインダー樹脂は、100mgKOH/g~140mgKOH/gの酸価を有することができる。
【0129】
上記バインダー樹脂は固体の形態で後述の溶媒に溶解されて、感光性樹脂組成物を構成することができる。この場合、上記固体の形態のバインダー樹脂は、溶媒に溶解されたバインダー樹脂溶液の総質量に対して10質量%~50質量%、例えば20質量%~40質量%であってもよい。
【0130】
上記バインダー樹脂は、上記感光性樹脂組成物の総質量に対して、0.1質量%~5質量%、具体的には、1質量%~4質量%、例えば1質量%~3質量%で含まれてもよい。バインダー樹脂が上記の範囲内に含まれる場合、カラーフィルタ製造時、現像性に優れ、架橋性が改善されて優れた表面平滑性を得ることができる。
【0131】
(C)光重合性化合物
上記光重合性化合物として、少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル酸の一官能または多官能エステルをさらに使用することができる。
【0132】
上記光重合性化合物は上記エチレン性不飽和二重結合を有することによって、パターン形成工程で露光時に十分な重合反応が進行し、耐熱性、耐光性、および耐薬品性に優れたパターンを形成することができる。
【0133】
上記光重合性化合物の具体的な例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ノボラックエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0134】
上記光重合性化合物の市販される製品の例としては以下の通りである。上記(メタ)アクリル酸の一官能エステルの例としては、東亞合成株式会社製のアロニックス(登録商標、以下同じ)M-101、M-111、M-114など;日本化薬株式会社製のKAYARAD(登録商標、以下同じ) TC-110S、同TC-120Sなど;大阪有機化学工業株式会社製のV-158、V-2311などが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸の二官能エステルの例としては、東亞合成株式会社製のアロニックスM-210、M-240、M-6200など;日本化薬株式会社製のKAYARAD HDDA、HX-220、R-604など;大阪有機化学工業株式会社製のV-260、V-312、V-335 HPなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸の三官能エステルの例としては、東亞合成株式会社製のアロニックスM-309、M-400、M-405、M-450、M-710、M-8030、M-8060など;日本化薬株式会社製のKAYARAD TMPTA、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120など;大阪有機化学工業株式会社製のV-295、V-300、V-360、V-GPT、V-3PA、V-400などが挙げられる。上記製品を単独で使用することができ、または2種以上共に使用することができる。
【0135】
上記光重合性化合物は、より優れた現像性を付与するために、酸無水物で処理するか、またはエチレンオキシド変性化合物を使用することもできる。
【0136】
上記光重合性化合物は、上記感光性樹脂組成物の総質量に対して0.1質量%~5質量%、具体的には、1質量%~4質量%、例えば1質量%~3質量%で含まれてもよい。光重合性化合物が上記の範囲内に含まれる場合、パターン形成工程で露光時、重合反応が十分に進行して、硬化性に優れ、アルカリ現像液への現像性に優れた感光性樹脂膜が得られる。
【0137】
(D)光重合開始剤
上記光重合開始剤は、感光性樹脂組成物に一般に使用される開始剤であって、例えばアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0138】
上記アセトフェノン系化合物の例としては、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0139】
上記ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0140】
上記チオキサントン系化合物の例としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0141】
上記ベンゾイン系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0142】
上記トリアジン系化合物の例としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ビフェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-s-トリアジンなどが挙げられる。
【0143】
上記オキシム系化合物の例としては、O-アシルオキシム系化合物、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、O-エトキシカルボニル-α-オキシアミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどを使用することができる。上記O-アシルオキシム系化合物の具体的な例としては、1,2-オクタンジオン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1,2-ジオン2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1,2-ジオン2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、および1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1-オンオキシム-O-アセテートなどが挙げられる。
【0144】
上記光重合開始剤は、上記化合物以外にも、カルバゾール系化合物、ジケトン類化合物、スルホニウムボレート系化合物、ジアゾ系化合物、イミダゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物、フルオレン系化合物などを使用することができる。
【0145】
上記光重合開始剤は、光を吸収して励起状態になった後、そのエネルギーを伝達することによって化学反応を起こす光増感剤と共に使用することもできる。
【0146】
上記光増感剤の例としては、テトラエチレングリコールビス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート、ジペンタエリトリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネートなどが挙げられる。
【0147】
上記光重合開始剤は、上記感光性樹脂組成物の総質量に対して0.1質量%~5質量%、具体的には、0.5質量%~4質量%、例えば0.1質量%~3質量%で含まれてもよい。光重合開始剤が上記の範囲内に含まれる場合、パターン形成工程で露光時、重合反応が十分に進行して、硬化性に優れ、パターンの耐熱性、耐光性および耐薬品性に優れ、解像度および密着性にも優れた赤色感光性樹脂膜を得ることができ、また、未反応の開始剤による上記赤色感光性樹脂膜の透過率の低下を防止することができる。
【0148】
(E)溶媒
上記溶媒は、上記着色剤、上記バインダー樹脂、上記光重合性化合物、および上記光重合開始剤との相溶性を有するが、反応性を有しない物質を使用することができる。
【0149】
上記溶媒の例としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロエチルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチルアセテート、ブチルアセテートなどのアルキルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸メチル、乳酸エチルなどの乳酸エステル類;オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチルなどのオキシ酢酸アルキルエステル類;メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなどのアルコキシ酢酸アルキルエステル類;3-オキシプロピオン酸メチル、3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチルなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピルなどの2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸メチルなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなどの2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エステル類;2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなどの2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキル類のモノオキシモノカルボン酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチルなどのエステル類;ピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類などが挙げられ、また、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセチルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどの高沸点溶媒、が挙げられる。
【0150】
これらのうち、好ましくは相溶性および反応性を考慮して、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、シクロヘキサノンなどのケトン類、を使用することができる。
【0151】
上記溶媒は、上記感光性樹脂組成物の総質量に対して残部量、例えば60質量%~80質量%、例えば65質量%~75質量%で含まれてもよい。上記溶媒が上記の範囲内に含まれる場合、感光性樹脂組成物の塗布性に優れ、平坦性に優れた塗膜を得ることができる。
【0152】
(F)その他の添加剤
上記感光性樹脂組成物は、塗布時に染みや斑点を防止し、レベリング性能を改善するために、また未現像の残渣の生成を防止するために、マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;ビニル基または(メタ)アクリルオキシ基を含むカップリング剤;レベリング剤;および界面活性剤;およびラジカル重合開始剤より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。
【0153】
上記添加剤は、所望の物性によって容易に調節することができる。
【0154】
上記カップリング剤は、シラン系カップリング剤であってもよく、上記シラン系カップリング剤の例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。
【0155】
上記シラン系カップリング剤は、具体的には、上記感光性樹脂組成物100質量部に対して0.01質量部~1質量部で使用することができる。
【0156】
また、上記カラーフィルタ用感光性樹脂組成物は必要によって、界面活性剤、例えばフッ素系界面活性剤をさらに含むことができる。
【0157】
上記フッ素系界面活性剤の例としてはDIC社製のF-556、F-482、F-484、F-478などがあり、これらに限定されるものではない。
【0158】
上記界面活性剤は、感光性樹脂組成物の総質量に対して0.01質量%~5質量%で含まれるのが好ましく、0.01質量%~2質量%で含まれるのがより好ましい。上記範囲を逸脱する場合、現像後に異物が発生する場合がある。
【0159】
また、上記感光性樹脂組成物は、物性を阻害しない範囲内で、酸化防止剤、安定剤などのその他の添加剤を一定量添加することもできる。
【0160】
上記感光性樹脂組成物は、CMOSイメージセンサのカラーフィルタ用感光性樹脂組成物、具体的にはCMOSイメージセンサの赤色カラーフィルタ用感光性樹脂組成物に適用することができる。
【0161】
(赤色感光性樹脂膜、赤色カラーフィルタおよびCMOSイメージセンサ)
本発明の他の実施形態によれば、一実施形態による赤色感光性樹脂組成物を用いて製造された赤色感光性樹脂膜を提供する。
【0162】
また、本発明の他の実施形態によれば、上述の赤色感光性樹脂組成物を用いて製造された赤色カラーフィルタを提供する。
【0163】
上記カラーフィルタの製造方法は次の通りである。
【0164】
ガラス基板の上にスピンコート、ローラーコート、スプレーコートなどの適当な方法を使用して、例えば、適切な厚さで上述の感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂組成物層を形成する。
【0165】
次に、上記感光性樹脂組成物層が形成された基板に、カラーフィルタに必要なパターンを形成するように光を照射する。照射に使用される光源としてはUV、電子線またはX線を使用することができ、例えば、190nm~450nm、具体的には、200nm~400nm領域のUVを照射することができる。上記照射する工程で、フォトレジストマスクをさらに使用して実施することもできる。このように照射する工程を実施した後、上記光源が照射された感光性樹脂組成物層を現像液で処理する。この時、感光性樹脂組成物層で非露光部分は溶解されることによって、カラーフィルタに必要なパターンが形成される。このような工程を必要な色の数によって繰り返すことによって、所望のパターンを有するカラーフィルタを得ることができる。また、上記工程で現像によって得られた画像パターンを再び加熱するか化学線照射などによって硬化させると、耐クラック性、耐溶剤性などを向上させることができる。
【0166】
また、本発明の他の実施形態によれば、上記赤色カラーフィルタを含むCMOSイメージセンサを提供する。
【実施例0167】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明するが、下記の実施例は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0168】
(顔料分散液の製造)
(製造例1:R254顔料分散液)
下記化学式Aで表される赤色顔料としてR254 15質量部、分散剤としてDISPERBYK-2022(アミン価:61mgKOH/g、製造会社:BYK)3質量部、分散樹脂としてRY-117(アクリル系樹脂、製造会社:昭和電工、分子量:10,000g/mol、酸価130mgKOH/g)1.5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、製造会社:Sigma-Aldrich)72.5質量部、およびプロピレングリコールメチルエーテル(PGME、製造会社:Sigma-Aldrich)8質量部を混合してジルコニアビーズとシェーカー(製造会社:skandex)を用いてR254顔料分散液を得た。上記R254顔料分散液中の固形分のD50は51nmである。
【0169】
【0170】
(製造例2:Y139顔料分散液)
下記化学式Bで表される黄色顔料としてY139 12質量部、分散剤としてDISPERBYK-2022(アミン価:61mgKOH/g、製造会社:BYK)4質量部、分散樹脂としてRY-117(アクリル系樹脂、製造会社:昭和電工、分子量:10,000g/mol、酸価130mgKOH/g)4質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、製造会社:Sigma-Aldrich)72質量部、およびプロピレングリコールメチルエーテル(PGME、製造会社:Sigma-Aldrich)8質量部を混合してジルコニアビーズとシェーカー(製造会社:skandex)を用いてY139顔料分散液を得た。上記Y139顔料分散液中の固形分のD50は35nmである。
【0171】
【0172】
(製造例3:R254およびG58顔料分散液)
上記化学式Aで表される赤色顔料としてR254 13質量部、下記化学式Cで表される緑色顔料としてG58 2質量部、分散剤としてDISPERBYK-2022(アミン価:61mgKOH/g、製造会社:BYK)3質量部、分散樹脂としてRY-117(アクリル系樹脂、製造会社:昭和電工、分子量:10,000g/mol、酸価130mgKOH/g)1.5質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、製造会社:Sigma-Aldrich)72.5質量部、およびプロピレングリコールメチルエーテル(PGME、製造会社:Sigma-Aldrich)8質量部を混合してジルコニアビーズとシェーカー(製造会社:skandex)を用いてR254およびG58顔料分散液を得た。上記R254およびG58顔料分散液中の固形分のD50は49nmである。
【0173】
【0174】
上記化学式C中、aおよびbはそれぞれ独立して、0~4の整数である(ただし、同一ベンゼン環上において、bは4-a以下である。)。
【0175】
(感光性樹脂組成物の製造)
実施例1~8および比較例1~4
表1~3に示す組成で混合して感光性樹脂組成物を製造した。
【0176】
具体的には、溶媒に光重合開始剤を溶かした後、常温で30分間攪拌した後、ここに光重合性化合物を添加して常温で60分間攪拌した。次に、得られた反応物に着色剤として顔料分散液、およびバインダー樹脂を入れて常温で30分間攪拌した。さらに、添加剤を入れて常温で30分間攪拌した。次に生成物を2回ろ過して不純物を除去することによって、感光性樹脂組成物を製造した。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
上記表1~3で使用された各成分は次の通りである。
【0181】
(A)着色剤
(A-1)R254顔料分散液(製造例1)
(A-2)Y139顔料分散液(製造例2)
(A-3)R254およびG58顔料分散液(製造例3)
(B)バインダー樹脂
(B-1)アクリル系バインダー樹脂としてRY-92(製造会社:昭和電工、分子量:6,000g/mol、酸価:35mgKOH/g、二重結合当量:350g/mol)およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、製造会社:Sigma-Aldrich)を含む分散液(固形分:38.5重量%)
(C)光重合性化合物
(C-1)ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA、製造会社:日本化薬)
(D)光重合開始剤
(D-1)オキシム系開始剤(製品名:SPI-03、製造会社:三養社)
(E)溶媒
(E-1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、製造会社:Sigma-Aldrich)
(F)添加剤
(F-1)フッ素系界面活性剤(F-556、製造会社:DIC)
参考として、実施例1~8および比較例1~4に対して、PWC(pigment weight concentration)を、溶媒を除く感光性樹脂組成物の構成成分の総質量中の染料含量+顔料含量として、下記表4~6に整理した。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
(評価:透過率および低露光リフティング評価)
(1)カラーフィルタ試験片の製造
実施例1~8および比較例1~4による感光性樹脂組成物を8インチのガラス基板上にスピンコーター(ミカサ株式会社製、Opticoat MS-A150)を使用してコーティングした後、ホットプレートを用いて100℃で180秒間ソフトベーク(soft-baking)し、i線ステッパー(株式会社ニコン製、NSR-2005i10C)で1000m秒間光を照射して露光した。露光された基板を室温で0.19質量%TMAH水溶液でスプレー方式およびパドル方式で現像した後、ホットプレートで200℃において5分間ハード-ベーク(Hard-baking)を行った。これにより、ガラス基板上に厚さ5800Åの感光性樹脂膜が形成されたカラーフィルタ試験片を得た。
【0186】
(2)透過率評価
上記で得られたカラーフィルタ試験片を用いて、顕微分光光度計(モデル名Lvmicro-Z、製造会社:株式会社ラムダビジョン製、日本)を使用して可視光領域での光透過スペクトルを測定した。波長430nm、560nm、625nm、および725nmでの透過率を得て、下記表7にその結果を記載した。
【0187】
(3)低露光リフティングの有無の評価
低い露光エネルギーにおいてもピクセルパターンが基板に付着されないことを「低露光リフティング」という。本評価ではi線ステッパー(株式会社ニコン製、NSR-2005i10C)で100m秒間光を照射して大きさ0.8umのパターンに対して評価し、下記表7にその結果を記載した。
【0188】
【0189】
近赤外線に近い2つの領域における透過率の比であるA/B(725nmの透過率/625nmの透過率)の結果は、近赤外線の影響が少ないことと関連する。上記表7によれば、実施例1~8の感光性樹脂組成物を使用して製造された感光性樹脂膜を含むカラーフィルタ試験片は、(725nm透過率)/(625nm透過率)が70~100、具体的には、85~95であって、上述の数式2を満足する。
【0190】
それに対し、比較例1~4の感光性樹脂組成物を使用して製造された感光性樹脂膜を含むカラーフィルタ試験片は、(725nm透過率)/(625nm透過率)が70未満であるか100超であり、上述の数式2を満足しない。
【0191】
さらに、実施例1~8の感光性樹脂組成物を使用して製造された感光性樹脂膜を含むカラーフィルタ試験片は、波長430nmにおける透過率が5%以下であり、波長560nmにおける透過率が3.5%以下である。
【0192】
それに対し、比較例1~4の感光性樹脂組成物を使用して製造された感光性樹脂膜を含むカラーフィルタ試験片は、比較例3を除き、波長430nmにおける透過率が5%超であるか、あるいは波長560nmにおける透過率が3.5%超である。
【0193】
総合的に、実施例1~8の感光性樹脂組成物に代表される、本発明による赤色感光性樹脂組成物は、近赤外線に対する影響性が少なく、シリコン系フォトダイオード、赤外線カットフィルタなどの性能と関係なく、イメージセンサによる画像品質を一定の水準において実現することができる。
【0194】
また、実施例1~8に基づいて、顔料分散液など、本発明による赤色感光性樹脂組成物を構成する成分の配合比などを調節して、目的とする範囲で透過率を制御することができる。
【0195】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。