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特開2023-12356ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012356
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/08 20060101AFI20230118BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20230118BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20230118BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C08F283/08
C08F283/00 510
C08F290/06
C08G65/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115955
(22)【出願日】2021-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】関口 翔也
(72)【発明者】
【氏名】大城 康太
(72)【発明者】
【氏名】三島 翔子
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
【テーマコード(参考)】
4J005
4J026
4J127
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BB02
4J026AB24
4J026BA21
4J026BA22
4J026DA02
4J026DA08
4J026DA11
4J026DB05
4J026DB09
4J026DB13
4J026DB32
4J026GA07
4J026GA08
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB042
4J127BB071
4J127BB082
4J127BB191
4J127BB262
4J127BC032
4J127BC061
4J127BC132
4J127BC151
4J127BD231
4J127BD262
4J127BE231
4J127BE23Y
4J127BE461
4J127BE46Y
4J127BF231
4J127BF23Y
4J127BG141
4J127BG14Y
4J127CB251
4J127CC161
4J127DA12
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】 低誘電特性を有し、且つ加工性及びハンドリング性に優れたドライフィルムの形成に有用な硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 本発明のある形態は、ポリフェニレンエーテルと、不飽和炭素結合を有する官能基を含む化合物とを含む硬化性組成物である。
当該ポリフェニレンエーテルは、少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノールから得られ、コンフォメーションプロットで算出された傾ききが0.6未満である。また、不飽和炭素結合を有する官能基を含む当該化合物は、大気圧下において、20℃で液体であり、且つ、熱重量分析(30~110℃、昇温速度10℃/min.)における重量減少率が3質量%以下である。
(条件1)
オルト位及びパラ位に水素原子を有する
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られ、コンフォメーションプロットで算出された傾きが0.6未満であるポリフェニレンエーテルと、
大気圧下において、20℃で液体であり、且つ、熱重量分析(30~110℃、昇温速度10℃/min.)における重量減少率が3質量%以下である、不飽和炭素結合を有する官能基を含む化合物と、を含むことを特徴とする硬化性組成物。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
【請求項2】
前記化合物の不飽和炭素結合を有する官能基がアリル基である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテルが、不飽和炭素結合を有する官能基を含む、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の硬化性組成物からなる樹脂層を有するドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の硬化性組成物、又は、請求項4に記載の硬化性組成物からなる樹脂層の硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を有する電子部品。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信や自動車のADAS(先進運転システム)向けミリ波レーダー等の普及により、電子機器の信号の高周波化が進んでいる。
【0003】
このような電子機器に内蔵される配線板には、絶縁材料としてエポキシ樹脂等を主成分とした硬化性樹脂組成物が用いられていた。しかしながら、かかる組成物からなる硬化物は、比誘電率(Dk)や誘電正接(Df)が高く、高周波数帯の信号に対して伝送損失が増大し、信号の減衰や発熱等の問題が生じていた。そのため、低誘電特性に優れるポリフェニレンエーテルが注目されてきた。
【0004】
一方、配線板に用いられる絶縁材料では、膜厚の制御、異物混入の抑制や工程の簡便化といった観点から、硬化性樹脂組成物からなる乾燥塗膜をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の基材上に形成したドライフィルム状の製品が望まれている。
【0005】
特許文献1には、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物及びドライフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-15909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物からなる樹脂層を備えたドライフィルムは、低誘電特性を有するものの、ドライフィルムを所望のサイズにカットしたり又は取り扱う際に折り曲げたりすると割れや基材フィルムから剥れる等の不具合が生じやすく、加工性及びハンドリング性に乏しいという問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、低誘電特性を有し、且つ加工性及びハンドリング性に優れたドライフィルムの形成に有用な硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、硬化性組成物を、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを含み、さらに特定の化合物を含むものとすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られ、コンフォメーションプロットで算出された傾きが0.6未満であるポリフェニレンエーテルと、大気圧下において、20℃で液体であり、且つ、熱重量分析(30~110℃、昇温速度10℃/min.)における重量減少率が3質量%以下である、不飽和炭素結合を有する官能基を含む化合物と、を含むことを特徴とする硬化性組成物である。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
【0011】
本発明の前記化合物の不飽和炭素結合を有する官能基がアリル基であってもよい。
本発明の前記ポリフェニレンエーテルが、不飽和炭素結合を有する官能基を含んでもよい。
【0012】
本発明は、前記硬化性組成物からなる樹脂層を有するドライフィルムであってもよい。
本発明は、前記硬化性組成物または前記樹脂層の硬化物であってもよい。
本発明は、前記硬化物を有する電子部品であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低誘電特性を有し、且つ加工性及びハンドリング性に優れたドライフィルムの形成に有用な硬化性組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物について説明するが、本発明は以下には何ら限定されない。
【0015】
説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0016】
本発明において、「不飽和炭素結合」は、特に断らない限り、エチレン性またはアセチレン性の炭素間多重結合(二重結合または三重結合)を示す。
【0017】
本発明において、不飽和炭素結合を有する官能基としては、特に限定されないが、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基)、又は、(メタ)アクリルロイル基であることが好ましく、硬化性に優れる観点からビニル基、アリル基、(メタ)アクリルロイル基であることがより好ましく、低誘電特性に優れる観点からアリル基であることが更に好ましい。なお、これらの不飽和炭素結合を有する官能基は、炭素数を、例えば15以下、10以下、8以下、5以下、3以下等とすることができる。
【0018】
本発明において、ポリフェニレンエーテル(PPE)の原料として用いられ、ポリフェニレンエーテルの構成単位になり得るフェノール類を総称して、「原料フェノール類」とする。
【0019】
本発明において、原料フェノール類の説明を行う際に「オルト位」や「パラ位」等と表現した場合、特に断りがない限り、フェノール性水酸基の位置を基準(イプソ位)とする。
【0020】
本発明において、単に「オルト位」等と表現した場合、「オルト位の少なくとも一方」等を示す。従って、特に矛盾が生じない限り、単に「オルト位」とした場合、オルト位のどちらか一方を示すと解釈してもよいし、オルト位の両方を示すと解釈してもよい。
【0021】
本明細書において、原料フェノール類としては主に1価のフェノール類を開示しているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、原料フェノール類として多価のフェノール類を使用してもよい。
【0022】
本明細書において、「樹脂組成物」を「硬化性組成物」の意味で使用することがある。
【0023】
本明細書において、数値範囲の上限値と下限値とが別々に記載されている場合、矛盾しない範囲で、各下限値と各上限値との全ての組み合わせが実質的に記載されているものとする。
【0024】
<<<<硬化性組成物>>>>
本実施形態において、硬化性組成物は、ポリフェニレンエーテルと、不飽和炭素結合を含む官能基を有する化合物(以下、「不飽和炭素化合物」とも呼ぶ)と、を含む。また、硬化性組成物は、本実施形態の効果を阻害しない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。以下、それぞれの成分について説明する。
【0025】
<<<ポリフェニレンエーテル(所定ポリフェニレンエーテル)>>>
本実施形態のポリフェニレンエーテルは、少なくとも条件1を満たすフェノール類を含む原料フェノール類から得られる、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルである。このようなポリフェニレンエーテルを、所定ポリフェニレンエーテルとする。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
【0026】
条件1を満たすフェノール類{例えば、後述するフェノール類(A)およびフェノール類(B)}は、オルト位に水素原子を有するため、フェノール類と酸化重合される際に、イプソ位、パラ位のみならず、オルト位においてもエーテル結合が形成され得るため、分岐鎖状の構造を形成することが可能となる。
【0027】
このように、分岐構造を有するポリフェニレンエーテルを、所定ポリフェニレンエーテル分岐ポリフェニレンエーテルと表現する場合がある。
【0028】
このように、所定ポリフェニレンエーテルは、その構造の一部が、少なくともイプソ位、オルト位、パラ位の3か所がエーテル結合されたベンゼン環により分岐することとなる。この所定ポリフェニレンエーテルは、例えば、骨格中に少なくとも式(i)で示されるような分岐構造を有するポリフェニレンエーテル化合物であると考えられる。
【0029】
【化1】
【0030】
式(i)中、R~Rは、相互に独立に、水素原子、または炭素数1~15(好ましくは、炭素数1~12)の炭化水素基である。
【0031】
ここで、所定ポリフェニレンエーテルを構成する原料フェノール類は、本実施形態の効果を阻害しない範囲内で、条件1を満たさないその他のフェノール類を含んでいてもよい。
【0032】
このようなその他のフェノール類としては、例えば、後述するフェノール類(C)およびフェノール類(D)、パラ位に水素原子を有しないフェノール類が挙げられる。特に後述するフェノール類(C)およびフェノール類(D)は、酸化重合される際には、イプソ位およびパラ位においてエーテル結合が形成され、直鎖状に重合されていく。そのため、ポリフェニレンエーテルの高分子量化のためには、原料フェノール類として、フェノール類(C)およびフェノール類(D)をさらに含むことが好ましい。
【0033】
また、所定ポリフェニレンエーテルは、不飽和炭素結合を含む官能基を有していてもよい。かかる官能基を有することにより、架橋性を付与する効果と優れた反応性により、硬化物の諸特性がより良好となる。
【0034】
このような不飽和炭素結合を含む官能基を所定ポリフェニレンエーテルに導入する方法としては、特に限定されないが、例えば、
原料フェノール類として、
少なくとも下記条件1および下記条件2をいずれも満たすフェノール類(A)を含ませる(形態1)、または、少なくとも下記条件1を満たし下記条件2を満たさないフェノール類(B)と下記条件1を満たさず下記条件2を満たすフェノール類(C)の混合物を含ませる(形態2)方法である。
(条件1)
オルト位およびパラ位に水素原子を有する
(条件2)
パラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有する
【0035】
前記方法によって得られる所定ポリフェニレンエーテルは、条件2を満たすフェノール類{例えば、フェノール類(A)およびフェノール類(C)のいずれか}を少なくともフェノール原料として用いているので、少なくとも不飽和炭素結合を含む炭化水素基による架橋性を有することとなる。所定ポリフェニレンエーテルがこのような不飽和炭素結合を含む炭化水素基を有する場合、該炭化水素基と反応し、且つエポキシ基等の反応性官能基を有する化合物を用いてエポキシ化等の変性を実施することも可能である。
【0036】
すなわち、前記方法によって得られる所定ポリフェニレンエーテルは、例えば、骨格中に少なくとも式(i)で示されるような分岐構造を有するポリフェニレンエーテルであり、且つ少なくとも一つの不飽和炭素結合を含む炭化水素基を官能基として有する化合物と考えられる。具体的には、上記式(i)中のR~Rの少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である化合物と考えられる。
【0037】
特に、上記形態2において、工業的・経済的な観点から、フェノール類(B)が、o-クレゾール、2-フェニルフェノール、2-ドデシルフェノールおよびフェノールの少なくともいずれか1種であり、フェノール類(C)が、2-アリル-6-メチルフェノールであることが好ましい。
【0038】
以下、フェノール類(A)~(D)に関してより詳細に説明する。
【0039】
フェノール類(A)は、上述のように、条件1および条件2のいずれも満たすフェノール類、即ち、オルト位およびパラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類であり、好ましくは下記式(1)で示されるフェノール類(a)である。
【0040】
【化2】
【0041】
式(1)中、R~Rは、相互に独立して、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~Rの少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
【0042】
式(1)で示されるフェノール類(a)としては、o-ビニルフェノール、m-ビニルフェノール、o-アリルフェノール、m-アリルフェノール、3-ビニル-6-メチルフェノール、3-ビニル-6-エチルフェノール、3-ビニル-5-メチルフェノール、3-ビニル-5-エチルフェノール、3-アリル-6-メチルフェノール、3-アリル-6-エチルフェノール、3-アリル-5-メチルフェノール、3-アリル-5-エチルフェノール等が例示できる。式(1)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0043】
フェノール類(B)は、上述のように、条件1を満たし、条件2を満たさないフェノール類、即ち、オルト位およびパラ位に水素原子を有し、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であり、好ましくは下記式(2)で示されるフェノール類(b)である。
【0044】
【化3】
【0045】
式(2)中、R~Rは、相互に独立して、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~Rは、不飽和炭素結合を有しない。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
【0046】
式(2)で示されるフェノール類(b)としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、o-tert-ブチルフェノール、m-tert-ブチルフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、2-ドデシルフェノール、等が例示できる。式(2)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0047】
フェノール類(C)は、上述のように、条件1を満たさず、条件2を満たすフェノール類、即ち、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有するフェノール類であり、好ましくは下記式(3)で示されるフェノール類(c)である。
【0048】
【化4】
【0049】
式(3)中、RおよびR10は、相互に独立に、炭素数1~15の炭化水素基であり、RおよびRは、相互に独立して、水素原子、または炭素数1~15の炭化水素基である。ただし、R~R10の少なくとも一つが、不飽和炭素結合を有する炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
【0050】
式(3)で示されるフェノール類(c)としては、2-アリル-6-メチルフェノール、2-アリル-6-エチルフェノール、2-アリル-6-フェニルフェノール、2-アリル-6-スチリルフェノール、2,6-ジビニルフェノール、2,6-ジアリルフェノール、2,6-ジイソプロペニルフェノール、2,6-ジブテニルフェノール、2,6-ジイソブテニルフェノール、2,6-ジイソペンテニルフェノール、2-メチル-6-スチリルフェノール、2-ビニル-6-メチルフェノール、2-ビニル-6-エチルフェノール等が例示できる。式(3)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0051】
フェノール類(D)は、上述のように、パラ位に水素原子を有し、オルト位に水素原子を有せず、不飽和炭素結合を含む官能基を有しないフェノール類であり、好ましくは下記式(4)で示されるフェノール類(d)である。
【0052】
【化5】
【0053】
式(4)中、R11およびR14は、相互に独立して、不飽和炭素結合を有しない炭素数1~15の炭化水素基であり、R12およびR13は、相互に独立して、水素原子、または不飽和炭素結合を有しない炭素数1~15の炭化水素基である。なお、酸化重合時に高分子化することが容易になるという観点から、炭化水素基は、炭素数1~12であることが好ましい。
【0054】
式(4)で示されるフェノール類(d)としては、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-エチルフェノール、2-エチル-6-n-プロピルフェノール、2-メチル-6-n-ブチルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、2,6-ジトリルフェノール等が例示できる。式(4)で示されるフェノール類は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0055】
ここで、本実施形態において、炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、アルケニル基である。不飽和炭素結合を有する炭化水素基としては、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。なお、これらの炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0056】
以上説明したような所定ポリフェニレンエーテルは、硬化性組成物の成分として用いる場合、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0057】
なお、所定ポリフェニレンエーテル合成時に用いられる原料フェノール類の合計に対する条件1を満たすフェノール類の割合は、1~50mol%であることが好ましい。
【0058】
また、上記条件2を満たすフェノール類を使用しなくてもよいが、使用する場合には、原料フェノール類の合計に対する条件2を満たすフェノール類の割合は、0.5~99mol%であることが好ましく、1~99mol%であることがより好ましい。
【0059】
<<所定ポリフェニレンエーテルの物性および性質>>
<分岐度>
所定ポリフェニレンエーテルの分岐構造(分岐の度合い)は、以下の分析手順に基づいて確認することができる。
【0060】
(分析手順)
ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液を、0.1、0.15、0.2、0.25mg/mLの間隔で調製後、0.5mL/min.で送液しながら屈折率差と濃度のグラフを作成し、傾きから屈折率増分dn/dcを計算する。次に、下記装置運転条件にて、絶対分子量を測定する。RI検出器のクロマトグラムとMALS検出器のクロマトグラムを参考に、分子量と回転半径の対数グラフ(コンフォメーションプロット)から、最小二乗法による回帰直線を求め、その傾きを算出する。
【0061】
(測定条件)
装置名 :HLC8320GPC
移動相 :クロロホルム
カラム :TOSOH TSKguardcolumnHHR-H
+TSKgelGMHHR-H(2本)
+TSKgelG2500HHR
流速 :0.6mL/min.
検出器 :DAWN HELEOS(MALS検出器)
+Optilab rEX(RI検出器、波長254nm)
試料濃度 :0.5mg/mL
試料溶媒 :移動相と同じ。試料5mgを移動相10mLで溶解
注入量 :200μL
フィルター :0.45μm
STD試薬 :標準ポリスチレン Mw 37,900
STD濃度 :1.5mg/mL
STD溶媒 :移動相と同じ。試料15mgを移動相10mLで溶解
分析時間 :100min.
【0062】
絶対分子量が同じ樹脂において、高分子鎖の分岐が進行しているものほど重心から各セグメントまでの距離(回転半径)は小さくなる。そのため、GPC-MALSにより得られる絶対分子量と回転半径の対数プロットの傾きは、分岐の程度を示し、傾きが小さいほど分岐が進行していることを意味する。本実施形態においては、上記コンフォメーションプロットで算出された傾きが小さいほどポリフェニレンエーテルの分岐が多いことを示し、この傾きが大きいほどポリフェニレンエーテルの分岐が少ないことを示す。
【0063】
本実施形態の硬化性組成物を構成する所定ポリフェニレンエーテルにおいて、上記傾きは、0.6未満であり、0.55以下、0.50以下、0.45以下、0.40以下、又は、0.35以下であることが好ましい。上記傾きがこの範囲である場合、ポリフェニレンエーテルが十分な分岐を有していると考えられる。なお、上記傾きの下限としては特に限定されないが、例えば、0.05以上、0.10以上、0.15以上、又は、0.20以上である。
【0064】
なお、コンフォメーションプロットの傾きは、ポリフェニレンエーテルの合成の際の、温度、触媒量、攪拌速度、反応時間、酸素供給量、溶媒量を変更することで調整可能である。より具体的には、温度を高める、触媒量を増やす、攪拌速度を速める、反応時間を長くする、酸素供給量を増やす、及び/又は、溶媒量を少なくすることで、コンフォメーションプロットの傾きが低くなる(ポリフェニレンエーテルがより分岐し易くなる)傾向となる。
【0065】
<所定ポリフェニレンエーテルの分子量>
本実施形態の硬化性組成物を構成する所定ポリフェニレンエーテルは、数平均分子量が2,000~30,000であることが好ましく、5,000~30,000であることがより好ましく、8,000~30,000であることが更に好ましく、8,000~25,000であることが特に好ましい。分子量をこのような範囲とすることで、溶媒への溶解性を維持しつつ、硬化性組成物の製膜性を向上させることができる。さらに、本実施形態の硬化性組成物を構成する所定ポリフェニレンエーテルは、多分散指数(PDI:重量平均分子量/数平均分子量)が、1.5~20であることが好ましい。
【0066】
本実施形態において、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算したものである。
【0067】
<所定ポリフェニレンエーテルの水酸基価>
本実施形態の硬化性組成物を構成する所定ポリフェニレンエーテルの水酸基価は、数平均分子量(Mn)が2,000~30,000の範囲において、15.0以下であることが好ましく、より好ましくは2以上10以下、さらに好ましくは3以上8以下である。
【0068】
<所定ポリフェニレンエーテルの溶媒溶解性>
本実施形態の硬化性組成物を構成する所定ポリフェニレンエーテル1gは、25℃で、好ましくは100gのシクロヘキサノンに対して(より好ましくは、100gの、シクロヘキサノン、DMFおよびPMAに対して)可溶である。なお、ポリフェニレンエーテル1gが100gの溶媒(例えば、シクロヘキサノン)に対して可溶とは、ポリフェニレンエーテル1gと溶媒100gとを混合したときに、濁りおよび沈殿が目視で確認できないことを示す。この所定ポリフェニレンエーテルは、25℃で、100gのシクロヘキサノンに対して、1g以上可溶であることがより好ましい。
【0069】
本実施形態の硬化性組成物を構成する所定ポリフェニレンエーテルは、分岐構造を有することで種々の溶媒への溶解性、組成物中の成分(不飽和炭素化合物その他の成分)同士の分散性や相溶性が向上する。このため組成物の各成分が均一に溶解または分散し、均一な乾燥塗膜や硬化物を得ることが可能となる。この結果、ドライフィルムの加工性やハンドリング性、硬化物としての機械的特性等が極めて優れている。特に、所定ポリフェニレンエーテルが不飽和炭素結合を有する官能基を含む場合は、相互に架橋、または不飽和炭素化合物と架橋することができる。この結果、得られる硬化物の機械的特性や低熱膨張性等はより良好となる。
【0070】
<<所定ポリフェニレンエーテルの製造方法>>
本実施形態の硬化性組成物を構成する所定ポリフェニレンエーテルは、原料フェノール類として特定のものを使用すること以外は、従来公知のポリフェニレンエーテルの合成方法(重合条件、触媒の有無および触媒の種類等)を適用して製造することが可能である。
【0071】
次に、この所定ポリフェニレンエーテルの製造方法の一例について説明する。
【0072】
所定ポリフェニレンエーテルは、例えば、特定のフェノール類、触媒および溶媒を含む重合溶液を調製すること(重合溶液調製工程)、少なくとも前記溶媒に酸素を通気させること(酸素供給工程)、酸素を含む前記重合溶液内で、フェノール類を酸化重合させること(重合工程)で製造可能である。
【0073】
以下、重合溶液調製工程、酸素供給工程および重合工程について説明する。なお、各工程を連続的に実施してもよいし、ある工程の一部または全部と、別の工程の一部または全部と、を同時に実施してもよいし、ある工程を中断し、その間に別の工程を実施してもよい。例えば、重合溶液調製工程中や重合工程中に酸素供給工程を実施してもよい。また、本実施形態のポリフェニレンエーテルの製造方法は、必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、重合工程により得られるポリフェニレンエーテルを抽出する工程(例えば、再沈殿、ろ過および乾燥を行う工程)、上述した変性工程等が挙げられる。
【0074】
<重合溶液調製工程>
重合溶液調製工程は、後述する重合工程において重合されるフェノール類を含む各原料を混合し、重合溶液を調製する工程である。重合溶液の原料としては、原料フェノール類、触媒、溶媒が挙げられる。
【0075】
(触媒)
触媒は、特に限定されず、ポリフェニレンエーテルの酸化重合において使用される適宜の触媒とすればよい。
【0076】
触媒としては、例えば、アミン化合物や、銅、マンガン、コバルト等の重金属化合物とテトラメチルエチレンジアミンなどのアミン化合物とからなる金属アミン化合物が挙げられ、特に、十分な分子量の共重合体を得るためには、アミン化合物に銅化合物を配位させた銅-アミン化合物を用いることが好ましい。触媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0077】
触媒の含有量は、特に限定されないが、重合溶液中、原料フェノール類の合計に対し0.1~0.6mol%等とすればよい。
【0078】
このような触媒は、予め適宜の溶媒に溶解させてもよい。
【0079】
(溶媒)
溶媒は、特に限定されず、ポリフェニレンエーテルの酸化重合において使用される適宜の溶媒とすればよい。溶媒は、フェノール性化合物および触媒を溶解または分散可能なものを用いることが好ましい。
【0080】
溶媒としては、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ニトロベンゼン等のニトロ化合物、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CA)等が挙げられる。溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0081】
なお、溶媒として、水や水と相溶可能な溶媒等を含んでいてもよい。
【0082】
重合溶液中の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調整すればよい。
【0083】
(その他の原料)
重合溶液は、本実施形態の効果を阻害しない範囲でその他の原料を含んでいてもよい。
【0084】
<酸素供給工程>
酸素供給工程は、重合溶液中に酸素含有ガスを通気させる工程である。
【0085】
酸素ガスの通気時間や使用する酸素含有ガス中の酸素濃度は、気圧や気温等に応じて適宜変更可能である。
【0086】
<重合工程>
重合工程は、重合溶液中に酸素が供給された状況下、重合溶液中のフェノール類を酸化重合させる工程である。
【0087】
具体的な重合の条件としては、特に限定されないが、例えば、25~100℃、2~24時間の条件で攪拌すればよい。
【0088】
以上説明したような工程を経る所定ポリフェニレンエーテルの製造に際しては、上述した方法を参照することで、分岐ポリフェニレンエーテルに不飽和炭素結合を含む官能基を導入する具体的な方法を理解できる。即ち、原料フェノール類の種類を特定のものとすること等で、不飽和炭素結合を含む官能基を有する所定ポリフェニレンエーテルを得ることができる。
【0089】
<<<不飽和炭素化合物>>>
本実施形態の不飽和炭素化合物は、大気圧下において、20℃で液体である。ここで、20℃で液体とは、具体的には、底部から2cmの位置に標線を設けた、内径1.0cm、高さ3.2cmのバイアル瓶に、不飽和炭素化合物0.2mlを入れたサンプルを用意し、次いで、当該バイアル瓶を直立させた状態で、-20℃にて3時間静置し、20℃にて30分静置後、速やかに当該バイアル瓶を水平に倒し、不飽和炭素化合物が流動して、化合物液面の先端が標線に達するまでの時間が60秒未満となるものを指す。
【0090】
本実施形態の不飽和炭素化合物は、熱重量分析(30~110℃、昇温速度10℃/min.)における重量減少率が3質量%以下であり、好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。当該重量減少率は、大気雰囲気下、流量10mL/min.で測定できる。尚、熱重量分析には、例えば、ティー・エイ・インスツルメント製の熱質量分析装置TGA5500等を用いることができる。
【0091】
不飽和炭素化合物における不飽和炭素結合を有する官能基の数は、特に限定されないが、ポリフェニレンエーテルと反応し、硬化物の機械特性の観点から、複数であることが好ましく、また、末端にあることが好ましい。
【0092】
また、不飽和炭素化合物の構造は、特に限定されないが、環状構造(例えば、芳香族環、脂肪族環、及び複素環等)を含むことが、耐熱性の観点から好ましく、芳香族環を含むことがさらに好ましい。
【0093】
不飽和炭素化合物の分子量は、特に限定されないが、150~300であることが好ましく、180~280であることがより好ましい。
【0094】
不飽和炭素化合物としては、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル等が挙げられる。なかでもジアリルフタレート、ジアリルイソフタレートは、ポリフェニレンエーテルとの相溶性に優れるので好ましい。不飽和炭素化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0095】
所定ポリフェニレンエーテルを含む硬化性組成物の成分が、不飽和炭素結合を有する炭化水素基を含む場合、特に不飽和炭素化合物と硬化させることにより機械強度に優れた硬化物を得ることができる。
【0096】
硬化性組成物中、不飽和炭素化合物(例えば、ジアリルフタレート)との配合比率は、組成物中の有機成分(シリカ等の無機充填材を除く)全量に対して、10~50質量%とすることがドライフィルムとしての屈曲性や硬化物としての低誘電特性の観点から好ましく、15~35質量%とすることが基材フィルムの剥離性やドライフィルムを熱圧着(ラミネート)した際の染み出しを抑制する観点からより好ましい。
【0097】
<<<その他の成分>>>
その他の成分としては、硬化性組成物に配合可能な従来公知の添加剤が挙げられる。より具体的には、シリカ、過酸化物、マレイミド化合物、エラストマー、等を含むことが好ましい。
【0098】
また、その他の成分には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、難燃性向上剤(リン系化合物等)、セルロースナノファイバー、ポリマー成分(シアネートエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノ-ルノボラック樹脂等の樹脂成分、非分岐型ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミド等の有機ポリマー)、分散剤、熱硬化触媒、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、防錆剤、密着性付与剤、溶媒等の成分を含んでもよい。
これらは、1種のみが使用されてもよいし、2種以上が使用されてもよい。
【0099】
<<シリカ>>
硬化性組成物は、シリカを含んでもよい。組成物がシリカを含有することで、組成物の製膜性を向上させることができる。さらには得られる硬化物に難燃性を付与することができる。より詳細には、組成物にシリカを配合することで、硬化物の自己消火性と低誘電正接化を高いレベルで実現することができる。
【0100】
シリカの平均粒径は、好ましくは0.01~10μm、より好ましくは0.1~3μmである。ここで平均粒径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折・散乱法による粒度分布の測定値から、累積分布によるメディアン径(d50、体積基準)として求めることができる。
【0101】
異なる平均粒径のシリカを併用することも可能である。シリカの高充填化を図りたい場合には、例えば平均粒径1μm以上のシリカとともに、平均粒径1μm未満のナノオーダーの微小のシリカを併用してもよい。
【0102】
シリカはカップリング剤により表面処理が施されていてもよい。表面をシランカップリング剤で処理することで、ポリフェニレンエーテルとの分散性を向上させることができる。また有機溶媒との親和性も向上させることができる。
【0103】
シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤などを用いることができる。エポキシシランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどを用いることができる。メルカプトシランカップリング剤としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどを用いることができる。ビニルシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシランなどを用いることができる。
【0104】
シランカップリング剤の使用量は、例えば、シリカ100質量部に対して0.1~5質量部、0.5~3質量部としてもよい。
【0105】
シリカの含有量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して50~400質量部または100~400質量部としてもよい。あるいは、シリカの含有量は、組成物の固形分全量基準で、10~30質量%としてもよい。
【0106】
<<過酸化物>>
上述した硬化性組成物は過酸化物を含むことが好ましい。
【0107】
過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ブテン、アセチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチレンパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、等があげられる。過酸化物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0108】
過酸化物としては、これらの中でも、取り扱いの容易さと反応性の観点から、1分間半減期温度が130℃から180℃のものが望ましい。このような過酸化物は、反応開始温度が比較的に高いため、乾燥時など硬化が必要でない時点での硬化を促進し難く、ポリフェニレンエーテルを含有した硬化性組成物の保存性を貶めず、また、揮発性が低いため乾燥時や保存時に揮発せず、安定性が良好である。
【0109】
過酸化物の硬化性組成物中の含有量は、過酸化物の総量で、硬化性組成物中の全固形分に対し、0.01~20質量%とするのが好ましく、0.05~10質量%とするのがより好ましく、0.1~10質量%とするのが特に好ましい。過酸化物の総量をこの範囲とすることで、低温での効果を十分なものとしつつ、塗膜化した際の膜質の劣化を防止することができる。
【0110】
また、必要に応じてアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物やジクミル、2,3-ジフェニルブタン等のラジカル開始剤を含有してもよい。
【0111】
<<マレイミド化合物>>
マレイミド化合物は、1分子中に少なくとも1つのマレイミド基を含有する限り特に限定されない。
【0112】
マレイミド化合物としては、
(1)単官能脂肪族/脂環族マレイミド、
(2)単官能芳香族マレイミド、
(3)多官能脂肪族/脂環族マレイミド、
(4)多官能芳香族マレイミド、
を挙げることができる。
【0113】
<(1)単官能脂肪族/脂環族マレイミド>
単官能脂肪族/脂環族マレイミド(1)としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、特開平11-302278号に開示されているマレイミドカルボン酸とテトラヒドロフルフリルアルコールとの反応物等を挙げることができる。
【0114】
<<(2)単官能芳香族マレイミド>>
単官能芳香族マレイミド(2)としては、例えば、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド等を挙げることができる。
【0115】
<(3)多官能脂肪族/脂環族マレイミド>
多官能脂肪族/脂環族マレイミド(3)としては、例えば、N,N’-メチレンビスマレイミド、N,N’-エチレンビスマレイミド、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸とを脱水エステル化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物、トリス(カーバメートヘキシル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドアルコールとをウレタン化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドウレタン化合物等のイソシアヌル骨格ポリマレイミド類、イソホロンビスウレタンビス(N-エチルマレイミド)、トリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリオールとを脱水エステル化し、又は脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸エステルと各種脂肪族/脂環族ポリオールとをエステル交換反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類、脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類、脂肪族/脂環族マレイミドアルコールと各種脂肪族/脂環族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドウレタン化合物類等を挙げることができる。
【0116】
具体的には、炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは直鎖状アルキル基を有するマレイミドアルキルカルボン酸又はマレイミドアルキルカルボン酸エステルと、数平均分子量100~1000のポリエチレングリコール及び/又は数平均分子量100~1000のポリプロピレングリコール及び/又は数平均分子量100~1000のポリテトラメチレングリコールとを、脱水エステル化反応又はエステル交換反応して得られる下記一般式(X1)及び一般式(X2)で表される脂肪族ビスマレイミド化合物等を挙げることができる。
【0117】
【化6】
(式中、mは1~6の整数、nは2~23の値、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【0118】
【化7】
(式中、mは1~6の整数、pは2~14の値を表す。)
【0119】
<(4)多官能芳香族マレイミド>
多官能芳香族マレイミド(4)としては、例えば、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2’-ビス-(4-(4-マレイミドフェノキシ)プロパン、N,N’-(4,4’-ジフェニルオキシ)ビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-2,4-トリレンビスマレイミド、N,N’-2,6-トリレンビスマレイミド、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリオールとを脱水エステル化し、又はマレイミドカルボン酸エステルと各種芳香族ポリオールとをエステル交換反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類、マレイミドアルコールと各種芳香族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる芳香族ポリマレイミドウレタン化合物類等を挙げることができる。
【0120】
これらの中でも、マレイミド化合物は、多官能であることが好ましい。マレイミド化合物は、ビスマレイミド骨格を有することが好ましい。マレイミド化合物は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0121】
マレイミド化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、100以上、200以上、500以上、750以上、1,000以上、2000以上、または、100,000以下、50,000以下、10,000以下、5,000以下、4,000以下、3,500以下とすることができる。
【0122】
マレイミド化合物の含有量は、典型的には、硬化性組成物中、固形分全量基準で、0.5~50質量%、1~40質量%または1.5~30質量%とすることができる。
また、別の観点では、硬化性組成物中、所定ポリフェニレンエーテルとマレイミド化合物との配合比率は、固形分比として、9:91~99:1、17:83~:95:5、または、25:75~90:10とすることができる。
また、硬化性組成物がマレイミド化合物と不飽和炭素化合物とを含む場合、マレイミド化合物と不飽和炭素化合物との配合比率は、固形分比(マレイミド化合物:不飽和炭素化合物)として、80:20~10:90とすることが好ましく、70:30~20:80とすることがより好ましい。このような範囲とすることで、誘電特性と耐熱性に優れる硬化物が得られる。
【0123】
<<エラストマー>>
エラストマーは、例えばポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-プロピレンゴム等のジエン系合成ゴム、エチレン-プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム等の非ジエン系合成ゴム、天然ゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が挙げられる。
【0124】
ポリフェニレンエーテルとの相溶性および誘電特性の観点から、エラストマーの少なくとも一部はスチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-ブタジエン共重合体;スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-イソプレン共重合体;スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、等が挙げられる。得られる硬化物の誘電特性が特に良好であることから、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー等の不飽和炭素結合を有しないスチレン系エラストマーが好ましい。
【0125】
スチレン系エラストマーにおけるスチレンブロックの含有比率は、10~70質量%、30~60質量%、または40~50質量%であることが好ましい。スチレンブロックの含有比率は、H-NMRにより測定されたスペクトルの積分比から求めることができる。
【0126】
ここでスチレン系エラストマーの原料モノマーとしては、スチレンだけでなく、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体が含まれる。
【0127】
エラストマー100質量%に占めるスチレン系エラストマーの含有割合は、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、100質量%としてもよい。
【0128】
エラストマーは他の成分と反応する官能基(結合を含む)を有していても良い。
【0129】
例えば、反応性官能基として不飽和炭素結合を有していても良い。エラストマーをこのように構成することで、不飽和炭素結合(例えば、分岐ポリフェニレンエーテルが有する不飽和炭素結合)に架橋することができ、ブリードアウトのリスクを低減するなどの効果がある。
【0130】
エラストマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、これらの無水物もしくはエステルなどを使用して変性されていてもよい。また、さらにジエン系エラストマーの残存不飽和結合に水添加して得られたものであってもよい。
【0131】
エラストマーの数平均分子量は、1,000~150,000としてもよい。数平均分子量が前記下限値以上であると低熱膨張性に優れ、前記上限値以下であると他の成分との相溶性に優れる。
【0132】
エラストマーの含有量は、硬化性組成物中、所定ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10~300質量部としてもよい。あるいは、エラストマーの含有量は、硬化性組成物中の固形分全量基準で、3~65質量%としてもよい。上記範囲内の場合、良好な引張特性、密着性、耐熱性をバランスよく実現できる。
【0133】
<<<<ドライフィルム>>>>
本実施形態のドライフィルムは、上述した硬化性組成物を基材に塗布、乾燥して得られるものである。
【0134】
ドライフィルムの製造方法は、例えば、基材フィルム上に上述した硬化性組成物の溶液をアプリケーター等により塗工、乾燥させる方法が挙げられ、乾燥した後に、必要に応じてその他の層(例えば、カバーフィルム)を設ける工程を実施してもよい。
【0135】
硬化性組成物の塗工及び乾燥は、公知の方法及び条件によって実施することができる。例えば、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等の公知の塗工方法により、均一な厚さの硬化性組成物を得る。
【0136】
その後、塗工によって得られた硬化性組成物を、50~130℃の温度で1~30分間加熱乾燥することで、樹脂層を形成することができる。加熱乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等の公知の加熱手段によって実施することができる。
【0137】
塗工条件や硬化性組成物の粘度を変更することで、樹脂層の厚さを調整することができる。
【0138】
ここで基材とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のフィルムが挙げられる。
【0139】
ドライフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に硬化性組成物を塗布乾燥させ、必要に応じてポリプロピレンフィルムを保護フィルムとして積層することにより得られる。
【0140】
本実施形態のドライフィルムは、低誘電特性を有し、且つ屈曲性に優れる。すなわち、本実施形態によれば、加工性及びハンドリング性が向上したドライフィルムを得ることができる。
【0141】
<<<<硬化物>>>>
本実施形態の硬化物は、上述したドライフィルムを硬化することで得られる。
【0142】
上述したドライフィルムから硬化物を得るための方法は、特に限定されるものではなく、一例としては、ドライフィルムの保護フィルムを剥離し、プレス装置、真空ラミネーターやロールラミネーター等を用いて、硬化性組成物からなる乾燥塗膜側を銅張積層板やガラス基板等に熱圧着し、次いでPETフィルムを剥離した後、加熱(例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、真空オーブン、真空プレス機等による加熱)によりポリフェニレンエーテルを熱架橋させる熱硬化工程を実施すればよい。なお、各工程における実施の条件(例えば、塗工厚、乾燥温度および時間、加熱温度および時間等)は、硬化性組成物の組成や用途等に応じて適宜変更すればよい。
【0143】
<<<<電子部品>>>>
本実施形態の電子部品は、上述した本実施形態の硬化物を有するものであり、優れた誘電特性や耐熱性を有することから、種々の用途に使用可能である。
【0144】
その用途は特に限定されないが、好ましくは、第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信や自動車のADAS(先進運転システム)向けミリ波レーダー等が挙げられる。
【実施例0145】
以下、実施例及び比較例により、本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下には何ら限定されない。
【0146】
<<<分岐PPEの合成>>>
3Lの二つ口ナスフラスコに、ジ-μ-ヒドロキソ-ビス[(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]クロリド(Cu/TMEDA)2.6gと、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)3.18mLを加えて十分に溶解させ、10ml/min.にて酸素を供給した。原料フェノール類である2,6-ジメチルフェノール105gと2-アリルフェノール13gとをトルエン1.5Lに溶解させ原料溶液を調製した。この原料溶液をフラスコに滴下し、600rpmの回転速度で攪拌しながら40℃で6時間反応させた。反応終了後、メタノール20L:濃塩酸22mLの混合液で再沈殿させてろ過にて取り出し、80℃で24時間乾燥させ、分岐PPEを得た。
【0147】
分岐PPEの数平均分子量は20,000、重量平均分子量は60,000であった。また、当該分岐PPEのコンフォメーションプロットの傾きは0.31であった。
【0148】
なお、分岐PPEの数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた。GPCにおいては、Shodex K-805Lをカラムとして使用し、カラム温度を40℃、流量を1mL/min.、溶離液をクロロホルム、標準物質をポリスチレンとした。
【0149】
<<<不飽和炭素化合物の液体判定及び重量減少率測定>>>
<<液体判定>>
底部から2cmの位置に標線を設けた、内径1.0cm、高さ3.2cmのバイアル瓶に、表1に示す各不飽和炭素化合物0.2mlを入れて評価用サンプルとした。次いで、評価用サンプルを直立させた状態で、-20℃にて3時間静置し、20℃にて30分静置後、速やかに評価用サンプルを水平に倒し、不飽和炭素化合物が流動して、化合物液面の先端が標線に達するまでの時間を測定し、到達時間が60秒未満となるもの液体、到達時間が60秒以上となるものと固体と評価した。評価結果を表1に示す。
【0150】
<<重量減少率測定>>
表1に示す各不飽和炭素化合物の重量減少率を以下の条件にて測定した。測定結果を表1に示す。
装置:ティー・エイ・インスツルメント製 熱質量分析装置TGA5500
サンプル量:10g
測定雰囲気:大気雰囲気
流量:10mL/min.
測定温度範囲:30~110℃
昇温速度:10℃/min.
【0151】
<<<硬化性組成物の調製/ドライフィルムの作製>>>
以下のようにして、各実施例及び各比較例に係る硬化性組成物のワニス及びドライフィルムを得た。
【0152】
<<硬化性組成物の調製>>
<実施例1>
分岐PPE:100質量部およびスチレン系エラストマー(旭化成 株式会社:商品名「タフテックH1051」):49質量部に、溶剤を加えて40℃にて30分混合、攪拌して完全に溶解させた。これによって得たPPE樹脂溶液に、ジアリルフタレート(東京化成工業社製):60質量部、球状シリカフィラー(アドマテックス株式会社製:商品名「SC2050-HNF」):560質量部、マレイミド樹脂(Designer Molecules社製:商品名「BMI-3000J」、Mw=3,000):16質量部をそれぞれ添加してこれを混合した後、三本ロールミルで分散させた。最後に、過酸化物であるα,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(日本油脂株式会社製:商品名「パーブチルP-40」)を4質量部それぞれ配合し、マグネチックスターラーにて攪拌した。以上のようにして、実施例1の硬化性組成物のワニスを得た。
【0153】
<実施例2及び3、比較例1-4>
表1に示すように、使用する不飽和炭素化合物(いずれも東京化成工業社製)を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び3、並びに比較例1-4に係る硬化性組成物のワニスを得た。
【0154】
<<ドライフィルムの作製>>
厚さ38μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製:商品名「TN-200」)上に、実施例及び比較例の硬化性組成物のワニスをそれぞれ、乾燥後の樹脂層の厚さが表1に示す値となるように、アプリケーターにて塗布、90℃で5分間乾燥し、実施例及び比較例の各ドライフィルムを得た。
【0155】
<<硬化物の作製>>
実施例及び比較例の各ドライフィルムを、低粗度銅箔(FV-WS(古河電機社製):Rz=1.2μm)の光沢面にドライフィルムの樹脂組成物が接するように配置し、真空ラミネーターにてラミネートした。その後、イナートオーブンを用いて窒素を完全に充満させて200℃まで昇温後、60分硬化後、銅箔を剥離して実施例及び比較例の各硬化膜を得た。
【0156】
<<<評価>>>
前述した硬化性組成物、ドライフィルム及び硬化膜について、以下の評価を行った。
【0157】
<屈曲性>
ドライフィルムをアクリル棒に巻き付けて、ドライフィルムに割れが発生するか確認した。具体的には、外径(φ)がそれぞれ3mm、6mm及び9mmのアクリル棒に、ドライフィルムの樹脂組成物が外向きになるように巻き付けて、ドライフィルムの割れを観察し、下記の基準にて評価した。
(評価基準)
◎:いずれの外径においてもドライフィルムの割れが見られない
〇:φ3mmのときにドライフィルムの割れが見られる
△:φ3mm及び6mmのときにドライフィルムの割れが見られる
×:いずれの外径においてもドライフィルムの割れが見られる
【0158】
<成膜性>
硬化膜作製時の、硬化膜の割れを観察し、下記の基準にて評価した。
(評価基準)
〇:硬化膜の割れが見られない
×:硬化膜の割れが見られる
【0159】
<誘電率>
比誘電率Dkおよび誘電正接Dfは、以下の方法に従って測定した。
硬化膜を長さ80mm、幅45mmに切断したものを試験片としてSPDR(Split Post Dielectric Resonator)共振器法により測定した。測定器には、キーサイトテクノロジー合同会社製のベクトル型ネットワークアナライザE5071C、SPDR共振器、計算プログラムはQWED社製のものを用いた。条件は、周波数10GHz、測定温度25℃とした。尚、割れが見られた硬化膜は上記試験片を得られないため、測定不可とした。
【0160】
【表1】