(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123902
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】力センサ装置、力測定方法、ロードセル、ロボットハンドおよびロボットアーム
(51)【国際特許分類】
G01L 1/22 20060101AFI20230830BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01L1/22 E
B25J19/02
G01L1/22 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027370
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 一登
【テーマコード(参考)】
2F049
3C707
【Fターム(参考)】
2F049BA13
2F049BA15
2F049CA01
2F049DA01
3C707BS10
3C707CV08
3C707CW08
3C707ES03
3C707ET02
3C707HS06
3C707KS33
3C707KV06
3C707KW03
3C707KX08
(57)【要約】
【課題】測定範囲や感度が変更可能な力センサ装置および力測定方法、力センサ装置を用いたロードセル、ロボットハンドおよびロボットアームを提供する。
【解決手段】力センサ装置11は、外力W
1,W
2を受けて歪む被歪体21であり、一端部が固定された片持ち梁状の被歪体21と、被歪体21の変形量を測定する測定手段の一例である歪ゲージ30を備えている。被歪体21は、被歪体20から変形可能であり、変形した状態が維持される。力センサ装置11は、被歪体21が変形していることにより、被歪体21の歪εと外力W
1,W
2の関係を変更することができるので、測定範囲や感度が変更可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を受けて歪む被歪体と、前記被歪体の変形量を測定する測定手段を備え、
前記被歪体は、変形可能であり、変形した状態が維持される力センサ装置。
【請求項2】
前記被歪体は、形状記憶材料により形成された請求項1記載の力センサ装置。
【請求項3】
前記形状記憶材料は、形状記憶ポリマーで形成された請求項2記載の力センサ装置。
【請求項4】
前記被歪体には、その形状を変更および固定させる温度調整手段が設けられた請求項2または3記載の力センサ装置。
【請求項5】
前記被歪体は、板状に形成された請求項1から4のいずれかの項に記載の力センサ装置。
【請求項6】
前記被歪体は、棒状に形成された請求項1から4のいずれかの項に記載の力センサ装置。
【請求項7】
前記被歪体は、片持ち梁状に形成され、片持ち位置まで1回以上折り返され、固定された請求項1から6のいずれかの項に記載の力センサ装置。
【請求項8】
前記被歪体は、長さ方向と直交する幅方向の側部が折り曲げられ、板状に形成された請求項1から6のいずれかの項に記載の力センサ装置。
【請求項9】
前記被歪体は、長さ方向と直交する幅方向の側部が折り曲げられ、筒状に形成された請求項1から6のいずれかの項に記載の力センサ装置。
【請求項10】
前記被歪体の取付形態が、片持ち梁型、両端支持型、両端固定型、またはダイヤフラム型のいずれかで設定された請求項1から9のいずれかの項に記載の力センサ装置。
【請求項11】
外力を受けて歪む被歪体と、前記被歪体の変形量を測定する測定手段を備えた力センサ装置により前記被歪体の変形量を測定するときに、
前記被歪体を変形させる工程と、
前記被歪体を変形させた状態で、外力を付加させる工程と、
前記測定手段により前記被歪体の変形量を測定する工程を含む力測定方法。
【請求項12】
前記被歪体を変形させる前に、成形型を用いて前記被歪体を変形させる工程を含む請求項11記載の力測定方法。
【請求項13】
前記成形型を用いて前記被歪体を変形させるときに、前記測定手段が設置された長さ方向の位置を含む範囲を変形させる工程と、
前記成形型により変形された前記被歪体の変形量を本測定の前に予め前記測定手段により測定する工程を含む請求項12記載の力測定方法。
【請求項14】
前記被歪体は、形状記憶材料により形成された請求項11から13のいずれかの項に記載の力測定方法。
【請求項15】
前記形状記憶材料は、形状記憶ポリマーで形成された請求項14記載の力測定方法。
【請求項16】
前記被歪体の形状を変更および固定する温度調整手段を、前記被歪体または成形型のいずれかに設け、温度調整して前記被歪体を変形させる請求項14または15記載の力測定方法。
【請求項17】
外力が付加されるロッド部と、前記ロッド部と共に移動する可動部と、固定部を有し、前記可動部と前記固定部の間に、請求項1から10のいずれかの項に記載の力センサ装置が設けられたロードセル。
【請求項18】
アーム部と、前記アーム部に対象物を把持する把持部を有し、前記把持部に請求項1から10のいずれかの項に記載の力センサ装置が設けられたロボットハンド。
【請求項19】
前記力センサ装置は、着脱可能に設けられた請求項18記載のロボットハンド。
【請求項20】
肩部と、前記肩部から延びて設けられる腕部を有し、前記腕部に請求項1から10のいずれかの項に記載の力センサ装置が設けられたロボットアーム。
【請求項21】
前記力センサ装置を有するセンサ組立体が、着脱可能に設けられた請求項20記載のロボットアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力を受けて歪む被歪体と、被歪体の変形量を測定する測定手段を備えた力センサ装置および力測定方法並びに力センサ装置を用いたロードセル、ロボットハンドおよびロボットアームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歪を測定して加えられた力の量を測定する力センサ装置は、一端が固定され、他端が自由端である片持ち梁状の被歪体と、被歪体の変形量を測定する測定手段を備えたものが知られている。そして、測定手段の一例としては、歪ゲージが知られている。
このような片持ち梁状の力センサ装置においては、測定レンジ(測定範囲)や感度を変更できないが、変更可能な従来の力センサ装置が特許文献1にて知られている。
【0003】
特許文献1に記載のセンシング装置では、一端がスペーサにより支持された梁層と、梁層と接し、弾性体内に機能性流体が封入された機能性流体層と、機能性流体に電磁場を印加する印加部と、梁層の撓み量を検知する検知部を備え、電磁場は、機能性流体層のバネ定数を決定して、梁層に外力が加えられた場合に検知部が検知する撓み量に基づく外力の測定範囲を設定するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】向井 優,外1名,”六軸力覚センサの原理と構造”,精密工学会誌/Journal of the Japan Society for Precision Engineering,Vol.84,No.4,2018,pp.303-306
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のセンシング装置では、電磁場の印加により機能性流体のバネ定数を決定しており、このバネ定数を大きくしたり小さくしたりして、片持ち梁を撓み難くしたり、撓み易くしたりすることで、小さい力から大きな力まで測定範囲を広くしている。
しかし、特許文献1に記載のセンシング装置では、測定範囲や感度を変えることができても、機能性流体に電磁場を印加して、機能性流体が封入された機能性流体層のばね定数を変更するという特殊なものである。この特許文献1に記載のセンシング装置は、計測特性が予め設定された機能性流体の材料特性などに依存するため、変更できる計測範囲が限られたものとなる。また、機能性流体のバネ定数の変更には、電磁場を印加し続けることが必要であり、使用する電力等、消費するエネルギーや、または発生する電磁場による測定機器へのノイズ発生も考えられ、計測時には測定環境への影響を配慮する必要がある。
力センサ装置では、測定範囲が変更でき、感度も変更できれば、用途を広げることができ、測定環境の変化にも対応させることが可能となる。すなわち、1つのセンサで交換なく、さまざまな用途に使用できるので、省コストにつながる。
【0007】
そこで、本発明は、測定環境に影響を与えることなく、測定範囲や感度が変更可能な力センサ装置および力測定方法、力センサ装置を用いたロードセル、ロボットハンドおよびロボットアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の力センサ装置は、外力を受けて歪む被歪体と、前記被歪体の変形量を測定する測定手段を備え、前記被歪体は、変形可能であり、変形した状態が維持されることを特徴としたものである。
【0009】
本発明の力測定方法は、外力を受けて歪む被歪体と、前記被歪体の変形量を測定する測定手段を備えた力センサ装置により変形量を測定するときに、前記被歪体を変形させる工程と、前記被歪体を変形させた状態で、外力を付加させる工程と、前記測定手段により前記被歪体の前記変形量を測定する工程を含むことを特徴としたものである。
【0010】
本発明によれば、被歪体を変形させることにより、被歪体の変形量と外力の関係を変更することができる。
【0011】
本発明の力センサ装置および本発明の力測定方法においては、前記被歪体は、形状記憶材料により形成されたものとすることができる。また、形状記憶材料においては、形状記憶ポリマーにより形成されたものとすることができる。
【0012】
前記被歪体に、その形状を変更および固定させる温度調整手段を設けることができる。また、前記温度調整手段を、前記被歪体または成形型のいずれかに設ければ、温度調整して前記被歪体を変形させることができる。
被歪体が形状記憶材料により形成されていることで、形状を変形した後に、温度調整手段により被歪体を温度調整したり、温度調整手段が設けられた成形型により成形しながら温度調整したりすることで、その形状を変更および固定させることができる。
【0013】
前記被歪体は、板状に形成されたものとすることができる。このように被歪体が形成されていることで、長さ方向を板厚方向に角度自在に折り曲げたり、幅方向をおもて面側または裏面側に折り曲げたりして変形させることができる。
【0014】
また、前記被歪体は、棒状に形成されたものとすることができる。このように被歪体が形成されていることで、長さ方向を角度自在に折り曲げ、変形させることができる。
【0015】
前記被歪体は、片持ち梁状に形成され、片持ち位置まで1回以上折り返され、固定されたものとすることができる。このように被歪体が形成されていることで、被歪体の長さ方向の全長を短くすることができ、被歪体の厚みを増加させることができる。
【0016】
前記被歪体は、長さ方向と直交する幅方向の側部が折り曲げられ、板状に形成されたものとすることができる。このように被歪体が形成されていることで、被歪体の板厚を変えることができる。
【0017】
前記被歪体は、長さ方向と直交する幅方向の側部が折り曲げられ、筒状に形成されたものとすることができる。このように被歪体が形成されていることで、被歪体の剛性を高めることができる。
ここで、長さ方向とは、片持ち梁の場合では、固定された被歪体の一方の端部から自由端とした他方の端部へ向かう方向である。また、両端が固定された場合では、両端を結ぶ方向である。
【0018】
前記被歪体の取付形態が、片持ち梁型、両端支持型、両端固定型、またはダイヤフラム型のいずれかで設定されたものとすることができる。このように本発明の被歪体は様々なタイプの力センサ装置として応用することが可能である。
【0019】
本発明の力測定方法によれば、前記被歪体を変形させる前に、成形型を用いて前記被歪体を変形させる工程を含むことができる。
そうすることで、成形型の外形に沿って被歪体を正確に変形させることができる。
【0020】
前記成形型を用いて前記被歪体を変形させるときに、前記測定手段が設置された長さ方向の位置を含む範囲を変形させる工程と、前記成形型により変形された前記被歪体の変形量を本測定の前に前記測定手段により測定する工程を含むことができる。
測定の前に変形された被歪体の歪を測定することで無負荷時の変形量を測定することができる。従って、形状が近い成形型により変形された被歪体であっても、どの成形型により変形したものか判別できるので、形状変更後のキャリブレーションを不要とすることができる。
【0021】
本発明のロードセルは、外力が付加されるロッド部と、前記ロッド部と共に移動する可動部と、固定部を有し、前記可動部と前記固定部の間に、本発明の力センサ装置が設けられたものである。
【0022】
本発明のロボットハンドは、アーム部と、前記アーム部に対象物を把持する把持部を有し、前記把持部に本発明の力センサ装置が設けられたものである。
【0023】
本発明のロボットハンドにおいては、前記力センサ装置は、着脱可能に設けられたものとすることができる。
【0024】
本発明のロボットアームは、肩部と、前記肩部から延びて設けられる腕部を有し、本発明の力センサ装置が設けられたものである。
【0025】
本発明のロボットアームにおいては、前記力センサ装置を有するセンサ組立体を、着脱可能に設けられたものとすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、被歪体を変形させることにより、被歪体の変形量と外力の関係を変更することができるので、変形前と変形後とで、測定範囲を変更することができ、感度も変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態に係る力センサ装置を説明するための図であり、(A)は力センサ装置の被歪体の変形前の状態の図、(B)は被歪体の先端部を折り曲げた状態の図である。
【
図2】
図1の被歪体が形状記憶ポリマーにより形成されたときに、被歪体を加熱するヒーターの配置を示す図である。
【
図3】
図1に示す被歪体を二つ折りした状態の力センサ装置の図である。
【
図4】
図1に示す被歪体を長さ方向に向かって見た図であり、(A)は断面四角状に形成された被歪体の図、(B)は被歪体の両方の側部を裏面側に折り曲げ一体的にした状態の図である。
【
図5】
図1に示す被歪体を長さ方向に向かって見た図であり、(A)は断面四角筒状に形成された被歪体の図、(B)は被歪体の両側部を裏面側に折り曲げ、空洞部を有する四角筒状に形成した状態の図である。
【
図6】
図1に示す被歪体を長さ方向に向かって見た図であり、(A)は断面円筒状に形成された被歪体の図、(B)は被歪体の両側部を裏面側に折り曲げ、空洞部を有する円筒状に形成した状態の図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る力センサ装置の他の例を説明するための図である。
【
図8】本発明の力センサ装置を用いた加速度センサを説明するための図である。
【
図9】
図1に示す力センサ装置による力測定方法を説明するための図であり、(A)は変形前の初期状態を示す図、(B)は成形型を用いて被歪体を変形させる状態を説明するための図、(C)は変形後の被歪体を有する力センサ装置を示す図である。
【
図10】
図8に示す力センサ装置を自動的に変形させる自動成形装置を説明するための図であり、(A)は自動成形装置が被歪体を変形させる状態を説明するための図、(B)は変形後の被歪体の状態を説明するための図である。
【
図11】本発明の力センサ装置を用いたロードセルを説明するための図であり、(A)はロードセルの平面図、(B)は側面図である。
【
図12】本発明の力センサ装置を用いたロボットハンドを説明するための図である。
【
図13】本発明の力センサ装置を用いたロボットアームを説明するための図であり、(A)はロボットアームを示す図、(B)は触覚センサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<力センサ装置の説明>
本発明の実施の形態に係る力センサ装置を図面に基づいて説明する。なお、本発明の理解を容易にするため、一例として、片持ち梁状に構成される形態(以下、「片持ち梁型」と称することがある。)を中心に本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書では、図面において、左右方向(長さ方向)をX方向、奥行き方向(幅方向)をY方向、上下方向(高さ方向,厚み方向)をZ方向として説明する。また、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0029】
まず、変形前の力センサ装置を
図1(A)により説明する。
図1(A)に示す力センサ装置10は、外力を受けて歪む片持ち梁状の被歪体20と、被歪体20のZ方向(厚み方向)の変形量を測定する測定手段30を含み構成されている。
なお、
図1(A)に示す力センサ装置10では、測定手段として歪ゲージを用いる例を示しているが、被歪体の変形量を測定する測定手段はこれに限定されず、後述する圧電体等、各種選択し、適宜用いることが可能である。
被歪体20は、細長の板状に形成されている。
図1(A)では、被歪体20は直線状に形成されている。
被歪体20は、片持ち梁状とするために、基端部20b(一端部)が基台部41に立設された固定部42に固定されている。被歪体20は、片持ち位置20pから先端部20f(他端部)へ延びるように形成されている。先端部20fは自由端に形成されている。
【0030】
<被歪体の構成>
被歪体20は、変形可能であり、また被歪体に用いられる材料の材料特性により変形した状態が維持されるものであれば使用することができる。例えば、被歪体20は、金属製としたり、樹脂製としたりすることができる。なお、この材料特性とは、例えば、材料力学や構造力学で示される、強度、剛性、硬さ、延性・靭性、降伏点等、その材料特有の機械的性質からなる特性である。力センサ装置では、被歪体の形状を変更した時に、その変形した形状が被歪体の材料特性により維持される状態で、付加される荷重の計測が行われる。
【0031】
被歪体20を金属製とするときには、鉄、アルミニウム、金、銀、銅などの各種の金属やステンレス鋼などの各種の合金など、様々なものが使用できる。樹脂製とするときには、ポリウレタン、PET(Polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、ポリノルボルネンなどが考えられる。また被歪体20は、単一の材質で構成する必要はなく、複数材質の板を貼り合わせたり、複合材料としたりすることもできる。
【0032】
また、被歪体20は、形状記憶材料とすることができる。形状記憶材料は、例えば、形状記憶ポリマー(SMP:Shape Memory Polymer)としたり、チタン・ニッケル合金などの形状記憶合金としたりすることができる。形状記憶ポリマーとするときは、例えば、SMPテクノロジーズ社のMP4510等を用いることができる。
【0033】
<温度調整手段の構成>
形状記憶材料により形成された被歪体20には、被歪体20の温度調整可能な温度調整手段を設けることができる。
図2に示す例では、温調ヒーターHが設けられ、本実施の形態では、被歪体20が形状記憶ポリマーにより形成されているため、被歪体20に温調ヒーターHが埋め込まれている。また、被歪体20を形状記憶合金とした場合には、温調ヒーターHは被歪体20に接触または隣接させる等、温調ヒーターHから加わる熱により被歪体の温度調整ができるようにして配置される。
【0034】
温度調整手段は、加熱するときには温調ヒーターHが使用でき、冷却するときには送風機器(図示せず)を用いることができる。
温調ヒーターHは、被歪体20をガラス転移温度Tgより高い温度に加熱し、変更した被歪体20の形状を固定するために送風機器を用いて低い温度に冷却する。例えば、形状記憶ポリマーを形成する被歪体20のガラス転移温度Tgが45℃のものを使用していれば、温度調整手段の温調ヒーターHにより45℃より高くなるように加熱でき、また45℃以下になるように送風機器により冷却できるようになっている。
【0035】
温調ヒーターHは、被歪体20の基端部20bから、2本の電熱線が平行を維持しながら、連続したクランク状に蛇行しながら先端部20fに向かって延びて、先端部20f側にて短絡している。温調ヒーターHが連続したクランク状に形成されていることで、温調ヒーターをX方向(長さ方向)に直線形状に形成して埋め込む場合と比較して、曲げや伸縮に対する変形抵抗を小さくすることができる。なお、温調ヒーターHの配置についてはこの形態に限定されるものではなく、上記のように被歪体へ付加される荷重の方向等、計測条件、または計測環境等に応じて設定することが可能である。
【0036】
このように温度調整手段により被歪体20を加熱、冷却することで、被歪体20を任意の形状に変更させることができる。具体的には、被歪体20をガラス転移温度Tg以上に加熱し軟化させ、被歪体20を任意の形状に変更、または変形前の状態に復帰させることができる。また、被歪体20をガラス転移温度Tg以下に冷却し、所定の形状に固定し、固定後、その形態が維持される。つまり、被歪体に形状記憶材料が用いられた場合は、被歪体はガラス転移温度Tgや後述する変態温度特性等の、形状記憶温度特性に基づいてその温度を調整し、変形により変更されたその形態が固定、維持され、力センサ装置では、この固定された形態が維持された状態で荷重の計測が行われる。
【0037】
上記では、温度調節手段として温調ヒーターHと送風機器を用いる例を示したが、被歪体20を加熱、冷却が可能なものであれば、この形態に限定されない。ペルチェ素子等を用いた電気的な加熱・冷却手段や例えば、チューブ状の管体内に液体や気体を流通させるなど、液体または気体を媒体としたヒートパイプ型の温度調整手段、またはシート状の温調ヒーターHを配置することも可能である。また、これら温度調整手段の加熱・冷却速度等、温度制御を行うことで、被歪体20の形状変更のタイミングを制御するように構成することも可能である。そのようにすることで、計測時に所定の形状になるように被歪体20を制御することができ、計測の作業効率を向上することができる。
【0038】
その他の例では、温度調整手段を、被歪体20の、加熱・冷却を必要とする部分の温度を調整するように配置したり、または異なる、複数の温度範囲を制御可能な温度調整手段を用いて、被歪体20の、各々加熱・冷却する部分の温度を制御し、被歪体20を様々な形状に変更・制御するように配置し構成したりすることも可能である。これについては、例えば、温度調整手段としてシート状の温度調整手段を用いる場合であれば、この温度調整手段を複数用いて、被歪体20の各部位に配置したり、または、それ自体の加熱・冷却領域およびその温度をそれぞれ設定・制御可能なものを用いたりして、被歪体20の1か所または複数の所定の部位を加熱・冷却可能に配置する等、を行うことができる。そうすることで、測定時に、計測に必要な測定範囲と感度に応じた形状に変更することができ、より最適な計測を行うことができる。更に、このような加熱・冷却領域や温度範囲を制御することで、被歪体20の形状制御を行い、自動化を図ることも可能である。
【0039】
被歪体が形状記憶合金である場合について、形状記憶合金には、金属組織(母相)の変態が開始する温度Ms(以下、「変態開始温度」とも言う。)と終了する温度Mf(以下、「変態終了温度」とも言う。)および、その逆変態として、その合金が元々持ち得る、つまり、その合金が記憶する母相へ金属組織の変態が開始する温度As(以下、「逆変態開始温度」とも言う。)と終了する温度Af(以下、「逆変態終了温度」とも言う。)という、その金属組織(母相)が変化する変態温度特性を有する。また変態温度特性による形状記憶効果を利用する場合、この変態温度特性に関しては、雰囲気温度等、使用環境の温度よりも高く設定する。例えば、本発明の発明者の鋭意研究によれば、逆変態開始温度Asが60℃の形状記憶合金が使用され、その変態温度特性が確認されている。
【0040】
形状記憶合金製の被歪体を用いる場合は、変態温度特性に基づき、Ms以下の被歪体に対し、その形状を変更、固定したものを力センサ装置に用いて、荷重の計測を行うことができる。更に、形状記憶合金はその温度が低い程、剛性が低いので、変形させる際、形状記憶ポリマーのように加熱等により、温度調整を必要とせず行うことも可能である。
【0041】
また、変更した被歪体の形状を元に戻す場合は、その被歪体の温度を逆変態開始温度As以上に高くすることで行うことができる。その際、被歪体の温度を上げる手段としては、例えば、被歪体に直接通電することによって加熱し行う方法が可能である。具体的には、被歪体に電極を設け通電させ、その通電により発生するジュール熱により被歪体を加熱し、元の形状に復帰させる方法である。
【0042】
このように、被歪体を形状記憶合金とした場合、被歪体は変態温度特性に基づいて、その形状が変更、固定され、または元の形状に復帰され、この固定された形態が維持された状態で荷重の計測が行われる。
【0043】
通常、力センサ装置を用いて計測を行う場合は、その計測対象物との配置、取得データに対して求められる条件等、計測環境や条件に基づいて力センサ装置を検討、その仕様が設定され、また計測時には求められる測定範囲や感度に応じて力センサ装置を適宜、交換する等が行われる。一方、被歪体に形状記憶材料を用いる場合は、上記のように被歪体の温度調整を行うことで、形状変更によって被歪体の材料特性が変わることなく、また、その材料特性を有した状態で被歪体を変更前の形状に復帰させることができる。そのため、例えば、計測作業において取得したデータに基づき、測定範囲やまたは感度の変更等、計測環境、条件の変更が必要となった場合、上記のようにセンサの交換を行うことなく、同じ被歪体を一旦、元の形状に復帰し、必要とする測定範囲や感度となる形状へ変更して計測作業を行うことが可能である。このように、被歪体に形状記憶材料を用いる場合は、被歪体の材料が本来保有する材料特性を維持しながら、同一の被歪体を用い計測状況に応じて測定範囲または感度を変更して計測を行うことが可能となる。
【0044】
<力センサ装置の原理>
次に力センサ装置の原理および動作特性について説明する。
図1(A)に示す状態の被歪体20では直線状に形成され、断面が長方形状に形成されている。なお、直線状ではなく曲がった形状を初期形状とすることも可能である。そのため外力Wによって一様な曲げモーメントMが加わる場合、曲げモーメントMは、以下の式(1)にて表すことができる。
但し、Eは被歪体20の弾性係数、εは測定手段30により検出できる被歪体20のX方向(長さ方向)の歪(被歪体20が元の状態から変化した比率を示す歪で伸長方向を正とする)、Zは、断面が長方形状に形成された被歪体20の断面係数である。
【0045】
【0046】
ここで、外力Wが加わる加圧点から測定手段30までの距離をxとすると、曲げモーメントMは式(2)により表すことができる。
【0047】
【0048】
従って、外力Wと歪εの関係は、式(3)により表すことができる。
【0049】
【数3】
また、断面が長方形形状(幅(被歪体20のY方向):b、厚み(被歪体20のZ方向):h)の被歪体20では、断面係数Zは、1/6×bh
2となるので、以下の式(4)に変形できる。
【0050】
【0051】
次に、
図1(A)に示す力センサ装置に対して変形させ、その変形した状態が維持される力センサ装置の一例を
図1(B)に示す。
図1(B)に示す力センサ装置11の被歪体21は、
図1(A)に示すX方向に延びる被歪体20の先端部20fをZ方向に折り曲げて、先端部20fを屈曲形状に形成したものである。具体的には、直線状の被歪体20の先端部20fを、Z方向(厚み方向)に90°下方に折り曲げて、
図1(B)に示すように屈曲部21cを形成したものである。この折り曲げられた先端21eに、片持ち位置21pへの-X方向(長さ方向)の外力W
1を加えた場合には、曲げモーメントMは式(5)により表すことができる。但し、x
1は、屈曲部21cの長さである。
【0052】
【0053】
従って、外力W1は、式(4)と式(5)から、式(6)により表すことができる。
【0054】
【0055】
また、屈曲部21cの先端21eに、X方向と直交する上方(Z方向(厚み方向))に向いた外力W2を加えた場合には、同様に、外力W2は、式(7)により表すことができる。但し、x2は、片持ち位置21pから屈曲位置までの長さである。なお、式(7)においては、外力W2による測定手段30のZ方向の変形を正としている。
【0056】
【0057】
図1(B)に示す力センサ装置11では、被歪体21が板状に形成されているため、片持ち位置21p(固定位置)から所定長さが確保された折り曲げ位置から先部の先端部21fをZ方向(厚み方向)に折り曲げることが可能なので、被歪体21のX方向(長さ方向)の全長を短く調整したり、また、被歪体21の先端部21fを、被歪体20の先端部20fとは異なる方向へ向けたりすることができる。このようにすることで、
図1(A)に示すような、ある特定方向のみの外力Wだけでなく、例えば、
図1(B)に示す外力W
1、W
2のように複数の異なる方向の外力Wを測定することができる。また、
図1(B)に示す力センサ装置11にて外力W
2を測定するときには、測定手段30からの距離が、x(
図1(A)参照)からx
2へと短くなるため、歪に対する外力の変化が大きくなる。よって、力センサ装置11の測定範囲を広げることができる。
【0058】
この点、付言すると、
図1(B)に示す距離x
1<距離x
2の場合、複数の異なる方向の外力W
1、W
2の計測においては、外力W
1の計測は距離x
1が短いことから外力W
2の計測よりその測定範囲が広く、一方、外力W
2の計測は、距離x
2が距離x
1より長いため外力W
1の計測より高い感度での計測が可能となる。このように、複数の異なる方向の外力W
1、W
2の計測が可能となることで、外力を加える方向により、測定範囲または感度を変更、または選択して計測することができる。
【0059】
図1(B)に示す例に引続き
図3に基づいて、別の一例としての力センサ装置12について説明する。
図3に示す力センサ装置12の被歪体22は、片持ち位置22pまで1回以上折り返され、固定される。本実施の形態では、先端部22fが被歪体22の片持ち位置22pまで1回折り返されることで、被歪体22が二つ折りされ、先端部22fが片持ち位置22pで固定されている。このように折り曲げ部分を一体化させることにより、梁部分となる被歪体22全体が太くなる。被歪体22では、二つ折りされているため、式(4)は式(8)のように表すことができる。
【0060】
【0061】
上記のように
図1(A)に示す片持ち梁状の被歪体20を
図3に示すように被歪体22を二つ折りや三つ折り等にして、片持ち位置にて固定されることで、被歪体22の厚みを増加させることができるので、被歪体22の剛性を高めることができ、被歪体22の長さを短くすることができる。
【0062】
このように、主に、被歪体22の剛性を変更させることでも力センサ装置の測定範囲または感度を調整することができる。また、
図3に示すように、同時に測定手段30から外力W
3までの距離x
3も変更することで、より広範囲な測定範囲の計測を行うことができる。
【0063】
なお、
図1(B)に示す力センサ装置11や
図3に示す力センサ装置12の被歪体21,22は、板状に形成されていたが、帯状または棒状に形成されていてもよい。この場合については、上記のように折り畳まれる形態以外にも、1回以上、X方向、Y方向やZ方向へ折り曲げる形態や、X方向を中心に捩られた形態も可能である。
【0064】
また、
図3に示すような被歪体の剛性を変更させる別の例として、
図1(A)に示す力センサ装置から、片持ち位置から先端部へ向かうX方向と直交するY方向の側部を折り曲げた力センサ装置について、
図4から
図6に基づいて説明する。
【0065】
例えば、
図4(A)に示すような断面が矩形状の被歪体では、断面係数Zは、1/6×bh
2となるが、
図4(B)に示す板状の被歪体23は、Y方向の両方の側部23sが、測定手段30が実装されたおもて面とは反対の裏面側に折り曲げられることで、板厚2倍に形成されている。そのため、厚みは2h、幅はb/2なので、断面係数Z
1は、以下の式(9)となる。
【0066】
【0067】
なお、
図4(B)では、被歪体23は板厚が2倍となるように両方の側部23sが折り曲げられているが、一方の側部23sだけを折り曲げることもできる。また、被歪体の側部全体を折り曲ることも、一部を折り曲げることもできる。
【0068】
また、
図5(A)に示すような断面が四角筒状の被歪体では、断面係数Zは、1/6×(b
1h
1
3-b
2h
2
3)/h
1となる。
図5(B)に示す被歪体24は、Y方向(幅方向)の両方の側部24sが裏面側に折り曲げられるときに、軸心部分に四角筒状の空洞部24cを形成することで、四角筒状に形成されている。そのため、厚みはb/4、幅はb/4なので、断面係数Z
2は、以下の式(10)となる。
【0069】
【0070】
なお、
図5(B)では、被歪体24は四角筒状に形成されているが、三角筒状、五角筒状のような多角形状、片側だけを曲げた横向きのJの字形状や、開口を下方に向けた横向きのコの字形状に形成することができる。
【0071】
更に、
図6(A)に示すような断面が円筒状の被歪体では、断面係数Zは、π/32×(d
1
4-d
2
4)/d
1となる。
図6(B)に示す被歪体25は、Y方向の両方の側部25sが裏面側に折り曲げられるときに、軸心部分に円筒状の空洞部25cを形成することで、円筒状に形成されている。そのため、円周bはπd
1であるため、断面係数Z
3は、以下の式(11)となる。
【0072】
【0073】
このように、
図1(A)に示す片持ち梁状の被歪体20を
図4(B)、
図5(B)、
図6(B)に示すように被歪体23~25の側部23s~25sを裏面側に折り曲げる等、被歪体の断面係数、すなわち剛性を変更し、被歪体23~25の、その全体の長さを変更することなく、剛性を高めることができる。またこの場合においては、外力を付加する位置が変形後も変わらない利点があり、
図4(B)、
図5(B)、
図6(B)に示すように、適宜、被歪体23~25に変形させることにより、測定環境に応じて計測を行うことができる。
【0074】
また上記では1つの被歪体の形状を一様に変形させ、剛性や測定手段から外力までの距離を変更する例を示したが、これに限らず、1つの被歪体を部分的に変形させることでも可能である。一例として、
図1(B)の例で説明すると、
図1(B)の被歪体21は、その片持ち位置21pから屈曲部21cまでの形状と、屈曲部21cから先端部21fまでの形状は同じ板状の断面形状である。ここで被歪体21の片持ち位置21pから屈曲部21cまでの部分の形状、または屈曲部21cから先端部21fまでの部分の形状を、例えば、
図4(B)から
図6(B)等に示されるように、Y方向の側面の、一方または両方を折り曲げ、L字やコの字状、または円弧状等の任意の形状に変更し、部分的に剛性を変更することも可能である。このようにすることで、例えば、計測状況、条件に応じて適宜、測定範囲または感度の変更を必要とする場合、柔軟に測定特性を調整することができる。もちろん、被歪体21の片持ち位置21pから屈曲部21cまでの部分の形状、または屈曲部21cから先端部21fまでの部分の形状をそれぞれ、異なる形状にすることも可能である。このとき、あらかじめ屈曲部21cにY方向に切れ目を入れておくことによって、断面形状を変更しやすくすることもできる。
【0075】
測定範囲や感度の調整は、上記のように、測定手段から外力までの距離または被歪体の剛性をそれぞれ変更することや、または、距離および剛性の変更を組み合わせて変更することが可能である。
【0076】
力センサ装置における被歪体の固定形態について上記では、片持ち梁状に構成される形態を中心に説明したが、次にその他の形態についても以下に説明する。
図7に示す力センサ装置16は、直線状の被歪体26の一端部26aと他端部26bの両方が固定部42に固定されている。そして、その被歪体26の一端部26aと他端部26bの間(
図7の例では中央部26c)に集中的に荷重が加わる荷重負荷点(外力を受ける点)を設けている。
【0077】
このように、
図7に示す、両端部(一端部26a、他端部26b)が固定された、直線はり受感形の力センサ装置16の被歪体26においても、
図1(B)、
図3および
図4(B)~
図6(B)に示す片持ち梁の被歪体21~25と同様に、曲げモーメントMは式(1)のように表すことができる。
【0078】
ここで、
図7に示す力センサ装置16では、中央部26cに荷重負荷点があることを考慮すると、曲げモーメントMは以下の式(12)のように表すことができる。但し、lは被歪体26の長さ(固定部同士の間の距離)、x’は一端部26aから測定手段30までの距離である。
【0079】
【0080】
従って、式(1)および式(12)から、外力Wは、次の式(13)によって表すことができる。
【0081】
【0082】
式(13)からも判るように、断面係数Zを変更することにより、歪εと外力Wの関係を変更することができる。
従って、
図7に示す被歪体26を、
図4(B)~
図6(B)に示す被歪体23~25のように折り曲げ、折り畳み、または断面形状を変更し、変形させて置き換えることで、測定範囲や感度が変更可能な力センサ装置とすることができる。なお、片持ち梁、両端固定梁以外にも、両方の端部を固定せず支持する形態の両端支持梁、被歪体を湾曲させた状態の曲がり梁などの他の構造にも同様の手法を応用することが可能である。更に、その他には、シート状の被歪体の周辺を固定する膜構造、いわゆるダイヤフラム型の力センサ装置とすることも可能である。具体的には、円形、四角形、および多角形形状のシート状の被歪体の周辺をこの被歪体を取り囲むように固定部により固定し、更にその固定部の間(例えば中央部)に荷重付加部を設け、荷重付加点(外力を受ける点)とするように構成される。
【0083】
なお、直線はり受感形およびダイヤフラム型の力センサ装置に関し、上記では1つの被歪体で形成したものを示しているが、1つ以上の複数の被歪体を上下方向に配置する形態とすることも可能である。
【0084】
次に、力センサ装置で計測可能な力の方向について説明する。
複数の方向の力を測定する場合は、被歪体に複数の測定手段をそれぞれの感度軸方向の向きを変えて装着することによって対応が可能である。また、例えば、応力測定のように単一の方向からのみ外力を受けて計測するような場合には、その力が入力される方向に測定手段をその感度軸方向を合わせて接着することが行われているが、力センサ装置によっては、一方向の荷重を測定する場合では、その形状や構造形態によって荷重の方向が変化する可能性がある。そのため、多軸測定用ゲージなど複数のゲージでキャリブレーションされた測定手段を用い、あらかじめ被歪体に設けるなど、状況に応じて測定手段を使い分けることも可能である。
【0085】
また、力センサ装置では、1つの本装置につき、X、Y、Z軸方向の並進3方向の力とこの3つの各軸周りのモーメントの方向の、最大6軸方向の力を検出するように形成することも可能である。例えば、非特許文献1に、クロスビーム型と呼ばれる一般的な6軸(3方向の力とモーメント)力覚センサ内部の被歪体(起歪体)の構造が記載されている。このようなクロスビーム型被歪体の場合、基本構造として4本の梁の上下・左右の面に歪ゲージを装着して、梁の曲げ歪を検出し、力変換している。力センサ装置により6軸方向の荷重測定を行う場合、例えば、このクロスビーム型被歪体の基本構造の形態を力センサ装置の被歪体に応用することで可能となり、その場合、更にその梁の形状や断面構造を同様に変更することによって(剛性を変更することによって)、測定範囲・感度を変更することができる。このように、一般的に知られている各種センサを応用し、力センサ装置として構成することが可能である。
【0086】
なお、被歪体に発生した歪と被歪体に加えられたトルクとは比例するため、棒の軸線から傾いた方向に測定手段を貼り付けることによって、測定された変形量からトルクを計測することが可能である。力センサ装置を用いる場合、軸表面の変形量と軸に加えられたトルクの関係は断面形状に依存するので、被歪体の形状や断面構造を変更し、同様の手法で測定すると、測定範囲や感度が変更可能なトルク測定を行うことができるので、トルクセンサとしても応用可能である。
【0087】
更に、力センサ装置は、例えば、
図8に示す加速度センサ55とすることで、加速度を測定することも可能である。加速度センサは、重錘に変形自在な弾性体を接続し加速度が加わった際に、重錘の振動を弾性体の変形量により検出して加速度を測定する。加速度センサ55を、重錘56と、弾性体として被歪体57と、更にその変形量を測定する測定手段30を使用して構成し、被歪体57の変形量を測定手段30で検出することにより加速度を測定することができる。その際、被歪体57の形状や断面構造を同様に変更することによって(剛性を変更することによって)、加速度を測定する際の測定範囲・感度を変更することが可能である。なお、加速度センサ55の測定手段30としては、歪ゲージを使用しているが、圧電素子等、各種センサを計測条件等に応じて適宜用いることができる。
【0088】
次に、本発明の実施の形態に係る力センサ装置を用いた力測定方法を説明する。
本実施の形態では、
図1(A)に示す力センサ装置10の被歪体20から
図1(B)に示す力センサ装置11の被歪体21へ変形して測定する方法を説明する。
【0089】
まず、
図9(A)に示すように、力センサ装置10を準備する。次に、
図9(B)に示す成形型50を準備する。成形型50は、被歪体20に押し当てられ各計測条件に応じて必要とする変形形状に変形するためのものであり、力センサ装置10での計測時に、計測条件毎に各種形状の成形型を用いて被歪体の変形に使用される。
【0090】
本実施の形態に係る成形型50は、被歪体20の先端部20fを変形させて成形する第1面51と、測定手段30が設置されたX方向の位置から先端部20fまでを変形させて成形する第2面52と、固定部42に当てて成形型50の長さ位置が被歪体20の折り曲げ位置20mに位置決めする基準面53を備えている。
本実施の形態では、成形型50の第2面52は、測定手段30が設置されたX方向の位置に突起部52pが形成され、突起部52pから第1面51と基準面53に向かってなだらかに傾斜している。
【0091】
このように形成された成形型50を、
図9(B)に示すように被歪体20に押し当て変形させる。そうすることで、
図9(A)に示す被歪体20を、
図9(C)に示すように、正確に成形型50の形状に成形して被歪体27を形成することができる。
そして、測定手段30により、力センサ装置17による測定の前に、特に、突起部52pにより変形された被歪体の変形量を測定することで無負荷時の歪を測定する。そうすることで、形状が近い成形型により変形された被歪体であっても、どの成形型により変形したものか判別できるので、形状変更後のキャリブレーションを不要とすることができる。
【0092】
このようにして変形された被歪体27を有する力センサ装置17に外力を付加することで、測定手段30により変形量を測定する。力センサ装置17により測定することで、被歪体の変形量と外力の関係を変更することができるので、変形前と変更後で、測定範囲を変更することができ、感度も変更することができる。
【0093】
なお、上記では、力センサ装置の被歪体を変形して測定する方法として、突起部52pを有する成形型50を用いて行う方法を示したが、本発明はこの方法には限らない。例えば、突起部52pが設けられない成形型を用いる場合は、被歪体を変更する形状に対応し、かつID番号等の識別番号が付与された各種成形型を準備し、成形型毎にキャリブレーションを行い、結果を取得し管理しておく。このような成形型を用いると、成形型毎に予めキャリブレーションの結果が取得、管理されているため、被歪体の形状変更後にキャリブレーションを不要とすることができる。または、成形型を用いることなく一般的な成形加工等、適宜選択される方法に基づき、計測条件等に応じて任意の形状、形態に変形させ、計測前にキャリブレーションを行い計測することも可能である。
【0094】
上記被歪体20に形状記憶材料を用いる場合は、被歪体20を所定の温度に加熱、冷却することで必要とする形状に変更しその形状に固定、または元の形状に復帰することができる。具体的には、成形型50が、
図9(B)に示すように被歪体20に押し当てられることで、被歪体20が、所定の温度に加熱され、加熱後または加熱されながら変形される。そうすることで、上記と同様に、
図9(C)に示すように、成形型50の形状により成形された被歪体27が得られる。そして、所定の温度に冷却され被歪体27の形状が固定され測定手段30により、力センサ装置17による測定の前に変形された被歪体の変形量が測定されることで無負荷時の歪が得られる。なお、この被歪体に形状記憶材料を用いた場合でも、上記で例示した、突起部52pが設けられない成形型を用いる場合や成形型を用いない場合における対応を適宜、同様に行うことが可能である。
【0095】
上記の被歪体20の加熱、冷却に関しては、被歪体20に温度調整手段を設けて行う方法以外に、成形型に温度調整手段を設けて行う方法も可能である。
具体的には、例えば、成形型に設けた温度調整手段により成形型の温度を調整・制御し、被歪体を加熱・冷却し、その形状を変形・固定することができる。
【0096】
これにより、被歪体に温度調整手段を設ける必要がなく、被歪体の構成の簡素化または小型化が可能となる。また、被歪体をシンプルな構成とすることにより、様々な計測環境、条件等に、より柔軟に対応することができる。
加熱・冷却時間を速くしようとすると温度調整手段を大型化する必要があるが、成形型に温度調整手段を設けることにより、被歪体のサイズが大型化することを抑えることができる。また、数多く力センサ装置を使用する場合には、治具である成形型だけで温度調整することができるため、数多くの力センサ装置を使用してもコストを抑制することができる。
【0097】
温度調整手段が被歪体に内蔵されていると、温度調整手段が故障した場合、例えば、被歪体とも全て交換する必要が生じる可能性があり、そのような状況を回避することができる。また、被歪体に温度調整手段を内蔵する場合、この温度調整手段を含んだ被歪体の変形形態またはその時の荷重特性等、力学的特性の検討、設計を省くことができる。
このように温度調整手段が成形体側にあると、被歪体をシンプルな構成とすることができ、力センサ装置の各種取り扱いが容易である。
【0098】
また成形型の温度制御において、例えば、被歪体の一部分のみの変形を必要とする場合、成形型の各々の部位の温度を制御可能に設定するようにしてもよい。これにより、力センサ装置の計測において、より計測条件等に対応した計測が可能となる。
【0099】
上記での成形型50を用いた被歪体20の変形方法以外に成形型を自動的に作動させて被歪体を変形させる、いわゆる自動化も可能である。一例として、
図1(A)に示す力センサ装置10の被歪体20から
図1(B)に示す力センサ装置11の被歪体21へ変形する自動成形装置60を
図10(A)に示す。
図10(A)では、
図1(A)に示す力センサ装置10の被歪体20の底面(測定手段30が装着されている被歪体20の面とは反対側の面)が自動成形装置60に当接されて配置される状態を示す。
【0100】
自動成形装置60は、成形型である型本体61と、駆動部62と、温調部63と、挟持部64を備えている。
型本体61は、挟持部64と共に被歪体20を挟み込み、折り曲げる位置で分割されている。本実施の形態では、被歪体20の先端部をZ方向に折り曲げるため、型本体61は、第1型本体61aと第2型本体61bの2つのパーツから構成される。
駆動部62は、折り曲げ位置に配置され、型本体61の折り曲げ部位を駆動させ移動させる。本実施の形態では、駆動部62は第1型本体61aの、被歪体20の片持ち位置20pが配置される側と反対側となる先端部に設けられ、折り曲げる部位となる第2型本体61bが移動するように接続されている。なお、駆動部62を、第1型本体61aまたは第2型本体61bのどちらに設けてもよい。
【0101】
温調部63は、型本体61に沿って配置されている。温調部63は、型本体61を加熱したり冷却したりすることで被歪体20の形状を元の状態へ復帰させることができる。また、この場合、温調部63が型本体61に配置されていることで、被歪体20に、例えば、
図2に示すような温調ヒーターHを設ける必要がない。なお、被歪体20の変形に対し、温調部63を設けず、被歪体20に温度調整手段が配置可能であることは言うまでもない。
挟持部64は、型本体61と対向して設けられている。挟持部64は、型本体61と共に被歪体20を挟み込むことで、所定の折り曲げ形状に設定すると共に、駆動部62による折り曲げ時に、被歪体20が動いてしまうことを防止する。
【0102】
上記の例では、型本体61は力センサ装置11の被歪体21への折り曲げに対応するものとして示したが、例えば、
図4(B)に示す形状に対応させる場合には、側面が駆動して折れ曲がるコの字形状を型本体とする成形型を用いて行うことができる。具体的には、平板状の被歪体が、挟持部により押さえられながら成形型に当接され、その側部が一旦、折り曲げられ、その後、更に成形型の側面が駆動し被歪体の側部が折り畳まれる。
また、
図5および
図6の形状に関し、
図5(B)に対しては挟持部の、押さえ方向(Z方向)の厚みを大きくしたものを用い、
図6(B)では、成形型および挟持部の形状を円筒状にしたものを用い、
図4と同様の方法により行うことが可能である。なお、
図5、6の形状に対応する場合には、要すれば、測定手段との干渉を避けるために、例えば成形型に、測定手段が干渉するおそれのある部位に開口部を設ける等、適宜、対処できることは言うまでもない。
【0103】
このように、計測条件等に対応する形状に被歪体を変形させる成形型と、被歪体を変形させるために成形型を駆動する駆動部と、被歪体を押さえる挟持部を有する自動成形装置により、成形型の形状に応じて、被歪体を任意の形状に自動的に変形させることができる(
図10(B)参照)。また、被歪体が形状記憶材料である場合、自動成形装置に温調部を設けると、被歪体に温度調整手段を設けることなく、被歪体を自動的に加熱して変形させ、冷却によりその形状に固定、または元の形状に復帰させることができる。
【0104】
上記では力センサ装置における主な構成について説明したが、力センサ装置には、計測対象や条件等に応じて各種機能を備えることができる。図示はないがその一例として次に説明する。力センサ装置には、測定手段による測定結果を演算、処理する処理手段や、測定結果に基づき、設定した測定範囲や感度に対する適正や変更の要否等を評価する評価手段、または、後述する各種適用例の作動を支援する制御支援手段等、を設けることができる。処理手段では、測定手段により測定された被歪体の変形量に基づいて荷重が算出、出力される。
【0105】
評価手段に関しては、予め、計測環境や条件等に基づき設定した測定範囲または感度の有効性に関する閾値等の評価値を設定し、得られた測定結果との比較により、設定した測定範囲や感度に対する測定結果の適正を判断し、適正である場合にはその結果を出力する。また、測定結果が設定した測定範囲や感度を超えたものであったり、測定範囲や感度との関係で当初想定していた測定結果と異なり再調整を要するものであったりする等、測定データが不十分である場合には、測定範囲や感度の変更が必要である等を出力する。なお、評価手段には閾値設定のための入力手段や、または上記の処理手段を含み構成してもよい。
【0106】
制御支援手段に関しては、測定された結果に基づき、計測対象や条件に応じた最適な測定範囲または感度を解析する解析部が設けられ、その解析結果に基づいて測定範囲や感度の変更または追加を行う。更にこの制御支援手段が、力センサ装置が搭載される、各種機器の制御部と接続され、この変更または追加された測定範囲または感度に基づいてそれら機器の作動範囲が制御される。なお、制御支援手段は、上記の評価手段または、処理手段の機能として組み合わせて構成してもよい。
【0107】
このような各種手段を備えることにより、力センサ装置が測定範囲や感度を変更することができる機能をより発揮できる装置とすることができる。
【0108】
本発明の実施の形態に係る力センサ装置は、その変形量により振動や荷重を測定する機器や、力覚センサや触覚センサ等、各種様々な形態として応用が可能である。次にその主な適用例について説明する。
【0109】
<ロードセル>
本発明の実施の形態に係る力センサ装置を適用した一例としてロードセルを
図11(A)および同図(B)に示す。なお、以下ではロードセルのロッド部側を前、反対側を後ろとして説明する。
ロードセル100は、基台110と、本体部120と、ロッド部130と、被歪体140と、測定手段30を含んで構成されている。なお、測定手段30からの配線等は図示していない。
【0110】
基台110は、矩形状の金属板により形成されている。
本体部120は、基台110上に設けられている。本体部120は、固定部121と、前壁部122と、可動部123を備えている。
【0111】
固定部121は、基台110上に立設された側壁部121aと、側壁部121aの後部に固定されたブロック状のベース部121bを備えている。前壁部122は、側壁部121aに固定され、側壁部121aの前部から反対側の側部に向かって延びるように形成されている。可動部123は、矩形板状に形成され、前壁部122とベース部121bの間に配置され、ロッド部130が貫通して固定されると共に、ロッド部130に接続されて一緒に移動する。ロッド部130は、棒状に形成されている。ロッド部130は、前壁部122に移動自在に貫通している。また、ロッド部130の基端部が、ベース部121bにより支持されている。被歪体140は、H状の板部材により形成され、変形自在に可動部123と固定部121に跨るように、可動部123と固定部121の天面側と底面側の2箇所に配置されている。被歪体140は、一方の端部がねじ止めされた取り付け板124により可動部123に取り付けられ、他方の端部がねじ止めされた取り付け板125により固定部121のベース部121bに取り付けられている。測定手段30は、被歪体140上に配置されている。
【0112】
このようにロードセル100が形成されていることで、ロッド部130に付加された外力(
図11(B)の上下方向)によりロッド部130と共に可動部123が移動するので、可動部123に接続された被歪体140の一端部が可動部123と共に移動する。この移動により、可動部123と固定部121の天面側と底面側の2箇所の被歪体140が変形し、この時の変形量を測定手段30により測定することができる。
【0113】
更に、このロードセル100の被歪体140における可動部123と固定部121に跨る部分の形状を、例えば、
図4(B)に示す被歪体23の形状としたり、
図5(B)に示す被歪体24の形状としたり、
図6(B)と示す被歪体25の形状とする等、各種形状に変更することにより、荷重の測定範囲または感度を調整することができる。
【0114】
通常、広範囲に及ぶ測定範囲や感度での計測を行う場合、例えば、測定範囲や感度等の計測仕様が異なる複数種類のロードセルを準備して、計測する荷重の範囲または大きさに応じたロードセルにより測定する等が行われている。しかしながら、このロードセル100においては、被歪体140の形状を変更することにより荷重の測定範囲または感度を調整することができるため、1つのロードセル100でも対応可能である。
【0115】
また、本発明に係る力センサ装置を適用したロードセルの他の実施形態としては、測定範囲や感度を満足する被歪体の各種形状を複数準備し、ロードセル100内に設け、その複数の被歪体のうち計測条件に対応するものに切り替えて計測できる機構を有するロードセルや、または上記のように計測仕様が異なるロードセルによらず、被歪体を各種形状に変更した複数のロードセル等での対応が可能であり、効率的かつ低コストで計測を行うことができる。
【0116】
なお、上記の例では、棒状のロッド部130を介して被歪体140に荷重が付加され、検出される形態を示したが、力センサ装置を適用したロードセルとしては、この形態に限定されず、その他の片持ち梁型、両端支持または固定型、ダイヤフラム型の被歪体を用いて構成することも可能である。その一例として、片持ち梁型の被歪体を用いる場合については、ロードセル100に対して可動部123を省き、ロッド部130と被歪体140を一体化した被歪体(例えば、
図1(B)の被歪体の形状等)を用い、この被歪体に直接、荷重を付加させるロードセルが例示される。なおこの場合、被歪体の形状についても、棒状に限らず、
図1に示す板状のもの等、各種形状を用いることができる。
【0117】
両端支持または両端固定型の被歪体を用いる場合については、
図7に示すような、直線状の被歪体26の両端部を支持または固定し、その被歪体26の両端部の間に集中的に荷重が加わる荷重付加点(外力を受ける点)を設けた被歪体26を用いるロードセルが例示される。なお、この場合の被歪体26の形状についても棒状、板状等、適宜選択して用いることができる。また、ダイヤフラム型の被歪体を用いる場合についても、膜状の被歪体に対してその端部を固定すると共に、膜部位に荷重付加点を設けた被歪体を用いたロードセルが例示される。それぞれの形態については、上記以外にも計測条件等に応じて各種形態を設定することができる。
【0118】
<ロボットハンド>
他の実施の形態として、本発明の実施の形態に係る力センサ装置をロボットハンドの把持部に適用する例を
図12に示す。
図12に示すロボットハンド200は、アーム部210が旋回台220に搭載され、アーム部210の先端部に、このロボットハンド200の把持部となる把持装置230が設けられた、シリアルリンク型のロボットである。
【0119】
アーム部210は、下腕部211と旋回台220が第1関節212により連結され、下腕部211と上腕部213が第2関節214により連結されている。上腕部213は、把持装置230と、把持装置230を旋回させる手首部215により連結されている。
把持装置230は、各種対象物の把持部として第1指部231と第2指部232が設けられ、その把持部が向き合うように配置され、基端部同士がジョイント233により第1指部231と第2指部232が開閉自在に連結されている。
【0120】
第1指部231と第2指部232の先端部には、力センサ装置234が設けられている。力センサ装置234は、被歪体の端部が固定され、また、その端部の間に突起部234a(
図12の例では中央部)と被歪体の変形量を測定する測定手段を設けたものであり、この突起部234a同士の間で対象物Tが把持される。このとき、力センサ装置234の情報を基に第1指部231と第2指部232による把持力がジョイント233により調整される。
このようにロボットハンド200が構成されることで、把持装置230による対象物Tへの把持力が力センサ装置234から情報に基づいて適切に行うことができる。
【0121】
更に、把持装置230には力センサ装置234が設けられており、計測条件や把持する対象物を考慮しながら被歪体の形状を変更し測定範囲または感度を調整し、より最適な把持力を設定することができる。
【0122】
本例の力センサ装置234の、被歪体の端部を固定する形態としては、両端支持型、両端固定型、またはダイヤフラム型等、各種形態を採用することができ、両端支持型や両端固定型の場合における被歪体の形状としては、板状、棒状、帯状等、適宜選択して用いることが可能である。
【0123】
また、力センサ装置234の被歪体としては、その片側のみを固定する片持ち梁型としてもよい。この場合においては、一例として、力センサ装置に被歪体を固定する固定部を設け、
図1(A)のような梁状の被歪体20を固定部に取付け、更にこの被歪体に、対象物Tを当接させる突起部を設け形成することができる。なお、この突起部については、様々な形状としてもよく、例えば、
図1(B)に示すように、被歪体を折り曲げて形成した被歪体21のような形態でもよい。
【0124】
本例での把持部(把持装置230)は、第1指部231および第2指部232の2つの部位により構成されているが複数の指部で形成してもよい。この場合において力センサ装置は、全ての指部、または目的に応じてある特定の指部にのみ設ける形態も可能である。特に、全ての指部に力センサ装置を設ける場合は、対象物の立体的な形状を考慮して把持力を調整することができ、食品や、果物等の農作物、または人等、触れる際に力の程度を十分考慮する必要のある対象物の場合に有用である。また、力センサ装置を適用した把持部によれば被歪体の形状を変更し測定範囲または感度を調整することで、把持部の形態や把持する対象物に対してより的確な把持力を得ることが可能である。
【0125】
<ロボットアーム>
他の実施の形態として、本発明の実施の形態に係る力センサ装置を適用したロボットアームを説明する。本例では、ロボットアームの腕部に力センサ装置を設けたものを示す。
【0126】
図13(A)に示すように、ロボットアーム300は、固定部に接続された肩部310と、肩部310に接続された肩関節部320と、肩関節部320から延びる上腕部330と、上腕部330に接続された肘関節部340と、肘関節部340から延びる前腕部350を備えている。
この形態において、上腕部330、肘関節部340および前腕部350はロボットアームの腕部を形成し、この腕部の、上腕部330と前腕部350には、例えば、力センサ装置を有するシート状の触覚センサ360が巻き付けられている、または被せられている。
ここで、触覚センサ360について
図13(B)に基づいて詳細に説明する。
【0127】
触覚センサ360は、まず、
図13(B)に示すように、板状部材361に多数の力センサ装置362がマトリックス状に配置され、配線363が接続された格子状の電極364が、力センサ装置362が配置された板状部材361に貼り合わされている。
なお、図示はないが、力センサ装置362は被歪体と測定手段を有しており、また触覚センサ360には力センサ装置362により計測される荷重に基づき、ロボットアーム300により対象物に付加される荷重を制御する制御手段を有している。
【0128】
触覚センサ360は、対象物がロボットアーム300の腕部により持ち上げられる時、または対象物を保持しながら、腕部を上下、左右、または移動させる等、腕部が動作する場合、対象物に付加される荷重が力センサ装置により計測され、この取得された計測データに基づき、ロボットアーム300は位置、姿勢を制御する。
【0129】
力センサ装置362は、例えば、
図1に示す片持ち梁型や、両端支持型、両端固定型、またはダイヤフラム型等、各種形態を採用することができ、両端支持型や両端固定型の場合における被歪体の形状としては、板状、棒状、帯状等、適宜選択して用いることが可能である。
【0130】
触覚センサ360が力センサ装置362を有しながらシート状に形成されているため、上腕部330や前腕部350等の腕部の周囲面に容易に巻き付けたり被せたりすることができ、ロボットアーム300に容易に装着することができる。
【0131】
また、力センサ装置362の被歪体に形状記憶材料を用いた場合、ロボットアーム300の腕部の形状に、より合わせた状態で力センサ装置362を変形させて装着することが可能となるため、装着性を向上させることができる。更にその際、被歪体の温度調整を行うことにより計測環境や条件に対し必要とする測定範囲や感度を柔軟に調整することができ、計測作業を効率的に行うことが可能となると共に、触覚センサ360を、より計測環境、条件に対する適用性、汎用性を高めたものとすることができる。
【0132】
図13では、触覚センサ360を上腕部330と前腕部350に設ける形態を示しているがこの形態に限定されない。触覚センサ360の配置については、対象物の形態や形状、または計測環境、条件等に応じて、上腕部330または前腕部350のどちらか一方に設けてもよい。また、本例の触覚センサ360等の、力センサ装置を有するセンサ組立体を取付、取外し可能に形成してもよい。この場合、計測を必要とするロボットアームに対応することができ、計測作業の効率化を図ることができる。更に、被歪体を形状記憶材料とすることにより、測定範囲や感度を柔軟に調整可能となることと相俟って、より効率的な計測を行うことができる。
【0133】
なお、上記の触覚センサ360の取付、取外し可能とすることについては、先に示したロボットハンドにも応用可能であることは言うまでもない。具体的には、ロボットハンドの把持装置230に設けられる力センサ装置234を取付、取外し可能に形成したもの等が例示される。
【0134】
図13の触覚センサ360の板状部材361の材料については、金属材料、またはゴム材料や樹脂材料等の非金属材料を用いることができる。なお、対象物と接触時の衝撃緩衝、触覚センサの空間分解能向上、ロボットアームへの装着性(フィット性等)を考慮した場合、例えば、ゴム材料や軟質の樹脂材料等、柔らかい材料が好ましい。また
図13では、力センサ装置を触覚センサとして組み込んで構成しているが、力センサ装置単体で設けることも可能である。
【0135】
力センサ装置をロボットアームに適用する例を示したが、その他として、例えば、リフト装置等、対象物を持ち上げ、保持または搬送する昇降装置への適用も可能である。具体的には、昇降装置の、対象物を載置し昇降する荷載部に設け、対象物が受ける荷重をモニタしながら制御する形態が例示される。
【0136】
このように力センサ装置362をロボットアーム等に配置することで、力センサ装置362からの情報に基づいて、例えば、腕部(上腕部330、前腕部350)や荷載部の動き等を、細やかに制御することができる。これにより、一例として、介護ロボットの腕にロボットアーム300を適用すれば、測定範囲や感度を調整し介護者にとって最適な力での抱き上げ、抱きかかえ等に好適である。また昇降装置に関しても対象物の形態、状況に応じて荷重を調整しながら持ち上げ等を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、外力が測定できるため、各種工場の生産設備、研究施設における測定装置、ロードセル、ロボットハンド、ロボットアーム等に用いられる力覚センサ、触覚センサに好適である。
【符号の説明】
【0138】
10,11,12,16,17 力センサ装置
20,21,22,23,24,25,26,27 被歪体
20b 基端部
20f 先端部
20m 折り曲げ位置
20p,21p,22p 片持ち位置
21c 屈曲部
21e 先端
22f 先端部
23s,24s,25s 側部
24c,25c 空洞部
26a 一端部
26b 他端部
26c 中央部
30 測定手段
41 基台部
42 固定部
50 成形型
51 第1面
52 第2面
52p 突起部
53 基準面
55 加速度センサ
56 重錘
57 被歪体
60 自動成形装置
61 型本体
61a 第1型本体
61b 第2型本体
62 駆動部
63 温調部
64 挟持部
100 ロードセル
110 基台
120 本体部
121 固定部
121a 側壁部
121b ベース部
122 前壁部
123 可動部
124,125 取り付け板
130 ロッド部
200 ロボットハンド
210 アーム部
211 下腕部
212 第1関節
213 上腕部
214 第2関節
215 手首部
220 旋回台
230 把持装置
231 第1指部
232 第2指部
233 ジョイント
234 力センサ装置
300 ロボットアーム
310 肩部
320 肩関節部
330 上腕部
340 肘関節部
350 前腕部
360 触覚センサ
361 板状部材
362 力センサ装置
363 配線
364 電極
H 温調ヒーター
W,W1,W2,W3 外力
T 対象物