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特開2023-123903複素MPPT整合回路及びそれを用いた回路方式
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123903
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】複素MPPT整合回路及びそれを用いた回路方式
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20230830BHJP
   H03H 7/48 20060101ALI20230830BHJP
   H03H 7/38 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02J50/20
H03H7/48 Z
H03H7/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027372
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(72)【発明者】
【氏名】平山 裕
(57)【要約】
【課題】
90度ハイブリットとリアクタンス素子の代わりに、伝送線路を用いることで低価格・小型化・制御の高速化そして低損失化を可能とする、複素MPPT制御による整合回路を提供すること。
【解決手段】
高周波電力分配回路1と、高周波電力分配回路に接続された2系統の整流回路4A、4Bと、2系統のそれぞれの整流回路に接続されたDC-DCコンバータ5A、5Bを備え、高周波電力分配回路1は、2系統の整流回路4A、4Bそれぞれに接続する伝送線路3A、3Bを有し、DC-DCコンバータ5A、5Bは独立してMPPT制御されることを特徴とする複素MPPT整合回路1である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力分配回路と、前記高周波電力分配回路に接続された2系統の整流回路と、2系統のそれぞれの前記整流回路に接続されたDC-DCコンバータを備え、前記高周波電力分配回路は、2系統の前記整流回路それぞれに接続する伝送線路を有し、前記DC-DCコンバータは、独立してMPPT制御されることを特徴とする複素MPPT整合回路。
【請求項2】
前記伝送線路はそれぞれ特性インピーダンスZ01とZ02、長さlとlを有し、1Ω≦Z01、Z02≦10kΩ、かつ、lとlは式(7)と式(8)により与えられことを特徴とする複素MPPT整合回路である。
【数7】

【数8】


(λは伝送線路内における波長)
【請求項3】
高周波電力分配回路と、前記高周波電力分配回路に接続された2系統の整流回路と、2系統のそれぞれの前記整流回路に接続されたDC-DCコンバータを備え、前記高周波電力分配回路は、2系統の前記整流回路それぞれに接続する伝送線路を有し、前記DC-DCコンバータは独立してMPPT制御される複素MPPT整合回路によって複素共役整合を行う回路方式。
【請求項4】
前記伝送線路はそれぞれ特性インピーダンスZ01とZ02、長さlとlを有し、1Ω≦Z01、Z02≦10kΩ、かつ、lとlは式(7)と式(8)により与えられる請求項3に記載の複素MPPT整合回路によって複素共役整合を行うことを特徴とする回路方式。
【数7】

【数8】


(λは伝送線路内における波長)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複素MPPT整合回路及びそれを用いた回路方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線電力伝送の研究が盛んに行われている。無線電力伝送が実現されると、電気機器の電源の位置に依存することなく連続的に給電が可能であり、充電不足によるバッテリー切れといった心配がなくなる。そのため、スマートフォンをはじめとした携帯用電子機器への無線給電への応用が期待されている。携帯用電子機器では近距離においての無線給電も想定されるが、近距離における無線電力伝送においては送受電間距離によって受電アンテナの出力インピーダンスが変動する問題が生じる。
【0003】
すなわち近距離の無線電力伝送において、受電アンテナの出力インピーダンスが送受電間距離により変動するため、適応的に整合をとることが要求される。そこでDC-DCコンバータにMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を施し受電電力を最大化する方法が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
しかし、直流においては制御するための自由度が1に限られ複素共役整合が達成できないため、本発明の発明者は特許文献1において、MPPT制御技術及び90°ハイブリッドを組み合わせて利用することで複素共役整合を達成する技術を開示している。これは、高周波電力に対して2系統のDC-DCコンバータにMPPT制御を施すことで制御の自由度2を獲得し、複素共役整合を行う回路方式である(以下「複素MPPT制御」、又は「複素MPPT」と言う場合がある)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2021-018058号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y.Yang et al., 2017 IEEE APEC, pp. 3702-3707, July 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、90度ハイブリットとリアクタンス素子を用いるため、損失が大きくなる、コストがかかるという問題があった。そこで、本発明では、90度ハイブリットとリアクタンス素子の代わりに、伝送線路を用いることで低価格・小型化・制御の高速化そして低損失化を可能とする、複素MPPT制御による整合回路(以下「複素MPPT整合回路」と言う場合がある)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
[1]高周波電力分配回路と、高周波電力分配回路に接続された2系統の整流回路と、2系統のそれぞれの整流回路に接続されたDC-DCコンバータを備え、高周波電力分配回路は、2系統の整流回路それぞれに接続する伝送線路を有し、DC-DCコンバータは独立してMPPT制御されることを特徴とする複素MPPT整合回路である。
[2]伝送線路はそれぞれ特性インピーダンスZ01とZ02、長さlとlを有し、1Ω≦Z01、Z02≦10kΩ、かつ、lとlは式(7)と式(8)により与えられことを特徴とする複素MPPT整合回路である。


(λは伝送線路内における波長)
[3]高周波電力分配回路と、高周波電力分配回路に接続された2系統の整流回路と、2系統のそれぞれの整流回路に接続されたDC-DCコンバータを備え、高周波電力分配回路は、2系統の整流回路それぞれに接続する伝送線路を有し、DC-DCコンバータは独立してMPPT制御される複素MPPT整合回路によって複素共役整合を行う回路方式である。
[4]伝送線路はそれぞれ特性インピーダンスZ01とZ02、長さlとlを有し、1Ω≦Z01、Z02≦10kΩ、かつ、lとlは式(7)と式(8)により与えられる[3]に記載の複素MPPT整合回路によって複素共役整合を行うことを特徴とする回路方式である。



(λは伝送線路内における波長)
【発明の効果】
【0009】
本発明による伝送線路を用いた複素MPPT整合回路によれば、高周波回路部分で、可変コンデンサや可変インダクタとその駆動のためのモータを用いる方法に比べると、それらが不要になるため低価格・小型化・制御の高速化ができる。そして、直流回路部分でMPPT制御を用いる方法に比べると、インピーダンス可変の自由度が1から2になり、高周波での複素共役整合を実現できて電力変換効率が向上することがメリットである。さらに90度ハイブリッドとリアクタンス素子を使用しないため、低損失化、低価格化が実現できることが優位性である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)本発明の一つの実施形態である、伝送線路を用いた複数MPPT制御による整合回路の概観、(b)既存の複数MPPTによる整合回路の概観を、それぞれ示す図である。
図2】伝送線路を用いた複素MPPT制御による整合回路を示す図である。
図3】伝送線路の回路モデルを示す図である。
図4】伝送線路を用いた複素MPPT制御による整合回路(整流回路なし)を示す図である。
図5】伝送線路を用いた複数MPPT制御による整合回路を示す図である。
図6】A点での反射係数Γを示す図である。
図7】従来のMPPT制御による整合回路(整流回路なし)を示す図である。
図8】(a)従来のMPPT制御による整合回路、(b)伝送線路を用いたMPPT制御による整合回路のそれぞれのスミスチャート示す図である。
図9】(伝送線路を用いた複素MPPT制御の結果)-(従来のMPPT制御の結果)の出力インピーダンスの変化に対応した電力変換効率を示す図である。
図10】ZRF1、ZRF2変化時の電力変換効率について(a)ZRF1への電力変換効率P/Pinc、(b)ZRF2への電力変換効率P/Pinc、(c)(P+P)/Pincをそれぞれ示す図である。
図11】測定モデルについて(a)伝送線路の寸法、(b)作製した基板をそれぞれ示す図である。
図12】測定モデルについて電力変換効率の入力インピーダンス特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0012】
ここで改めて、複素共役整合の必要性、複素共役整合の追従の必要性、高周波で複素共役整合の追従を行う場合の問題点、そして直流でMPPT制御による追従を行う場合の問題点について記載すると次のようである。
【0013】
(複素共役整合の必要性)
高周波電源(無線電力伝送における受電アンテナなど)から、高周波電力を、整流回路を用いて直流電力に変換する場合、高周波電源と整流回路の間にインピーダンス不整合があると電力が反射して、受電電力が低下する。最大の受電電力を得るためには、高周波電源の出力インピーダンスと整流回路の入力インピーダンスが複素共役(即ち、インピーダンスの実部が等しく、かつ、インピーダンスの虚部が逆符号)の関係にある必要がある。この関係を満たすようにインピーダンスを変換する回路を「整合回路」と呼び、高周波電源と整流回路の間に設置する。
【0014】
(複素共役整合の追従の必要性)
受電アンテナの出力インピーダンスは、送電アンテナと受電アンテナの距離によって変動する。この距離が固定されている場合は、その距離において受電電力が最大になるように整合回路を設計すれば良い。しかし、距離が変動する場合はインピーダンスが変動するため、最大受電電力を維持するためにはインピーダンスの変動を何らかの方法により追従する必要がある。この際、インピーダンスの実部と虚部を調整する必要があるため、調整するパラメーターの数は2個必要となる。
【0015】
(高周波で複素共役整合の追従を行う場合の問題点)
通常、整合回路に可変コンデンサや可変インダクタなどの可変素子を2個用いることにより、インピーダンス整合を追従する方法は広く普及している。この場合、可変素子をモーターやスイッチにより機械的に切り替える必要があるため、大型化する、消費電力が大きい、制御に時間を要するという問題がある。また、周波数が高くなると(GHzオーダー)可変コンデンサや可変インダクタンスが実現困難という問題がある。
【0016】
(直流でMPPT制御による追従を行う場合の問題点)
整合回路の値は可変せず、整流回路により直流に変換した後にDC-DCコンバータを用いる方法が存在する。DC-DCコンバータを、太陽光発電の分野で広く用いられているMPPT制御(以下、「MPPT」と言う場合がある)することにより、受電電力が最大になるように直流のインピーダンスを調整する。この方法の場合、機械的な可変素子を用いる必要が無く、それ故小型化・省電力化・制御の高速化が可能となる。しかし、直流においてはインピーダンス調整の自由度が1(実部のみ)であり、複素共役整合を実現することができない。
【0017】
図1(a)に示すように、伝送線路を用いた複素MPPT整合回路1は、高周波電力分配回路2、高周波電力分配回路2に接続された2系統の整流回路4A、4B、それぞれの整流回路に接続された2系統のMPPT制御されるDC-DCコンバータ5A、5Bを備える。高周波電力分配回路2は、2系統の伝送線路3A、3Bを備える。すなわち伝送線路3A、3Bそれぞれに整流回路4A、4Bが接続されている。
【0018】
図1(b)に示すように、既存の複数MPPT制御による整合回路10は、高周波電力分配回路20が90°ハイブリッドとリアクタンス素子を備える。一方、複素MPPT整合回路1は、リアクタンス素子ではなく伝送線路を備えることで損失の低減を図ることができる。なお、高周波電力分配回路2には受電アンテナ6が接続されてもよく、DC-DCコンバータ5A、5Bには負荷7が接続されてもよい。
【0019】
(回路構造)
図2には、伝送線路を用いた複素MPPT整合回路11の構造を示す。2系統の直流MPPT制御により高周波複素インピーダンスを可変できるように、電力分配回路12で異なる電力を分配する。電力分配回路12は2本の異なる伝送線路13A、13Bで構成される。
【0020】
(伝送線路)
図3に伝送線路の回路モデルを示す。このように負荷インピーダンスZに対して直列に伝送線路を接続した場合、特性インピーダンスZの伝送線路を介して電気長l離れたところから観測したときの入力インピーダンスZinは、式(1)で与えられる
【数1】

ここで、λは伝送線路内における波長である。2本の伝送線路によって異なる電力を分配し、2系統のDC-DCコンバータに独立してMPPT制御を施すことで制御の自由度2の獲得を図る。
【0021】
(パラメータ設計)
2本の伝送線路13A、13Bの特性インピーダンスと電気長Z01、Z02を最適な値に設計するために、整流回路を用いない図4の回路によって検討した。整流回路を用いないのは、入力電力に依存せず反射係数が解析できるためである。回路の入力インピーダンスZinは、式(2)で表される。
【数2】
【0022】
DC-DCコンバータの入力インピーダンスR 、Rがそれぞれ(R,R)=(0,0)、(0,∞)、(∞,0)、(∞,∞)のときの回路の入力インピーダンスZinを表1に示す。
【表1】
【0023】
tanβl=1、tanβl=-1のとき、回路の入力インピーダンスZinの範囲はスミスチャート上で上下対称となり、整合可能な範囲を広くとることができる。以上からl=1/8λ、l=3/8λと決定した。図5には、その場合の伝送線路を用いた複素MPPT整合回路21を示す。
tanβl=1、tanβl=-1のときとは、すなわち、式(7)、(8)が成り立つことを意味する。一方、伝送線路をもちいることによる整合可能範囲を最大化することの観点から、Z01、Z02はそれぞれ1Ω≦Z01、Z02≦10kΩが好ましく、それぞれ25Ω~100Ωがより好ましく、それぞれ57Ω(Z01)、50Ω(Z02)が最も好ましい。
【数7】

【数8】


【0024】
(最適化条件)
伝送線路の特性インピーダンスを0Ω≦Z01、Z02≦100kΩの範囲でさまざまな組み合わせにし、DC-DCコンバータの入力インピーダンスを0.1Ω≦R、R≦100kΩの範囲で変化させた時のA点から見た入力インピーダンスZinを計算した。計算した中で、整合可能な範囲を最も広くとる特性インピーダンスの組み合わせを最適値として設計した。
【0025】
(最適化結果)
上記の解析の結果、最適な伝送線路の組み合わせはZ01=57Ω、Z02=50Ωとなった。図6に最適な伝送線路の特性インピーダンスと線路長におけるA点から見た入力インピーダンスZinを示す。50Ωに対する反射係数Γ=-10.31dB以下であれば位相によらず整合可能であることが確認された。
次に、ZRF1、ZRF2での電力変換効率をそれぞれP/Pinc、P/Pincとし、図10に示す。図10よりP、Pに対してそれぞれ独立にMPPT制御を施せば最大の電力変換効率が得られることが分かった。
以下には設計した回路の評価について記載する。
【0026】
<出力インピーダンスと電力変換効率>
(回路の評価)
設計した回路を評価するため、従来のMPPT制御による整合回路と比較を行った。電源の出力インピーダンスZantを変化させた時に、適応的に整合を行えるか電力変換効率を指標に比較する。また、上記と同様に入力電力によらず反射係数が解析できるため、整流回路を用いなかった。
【0027】
(解析条件)
図7に従来のMPPT制御による整合回路を示す。設計した回路の解析結果と比較を行うため、整流回路を用いなかった。図4および図7の電源の出力インピーダンスZantをΩ≦Re{Zant}≦100kΩ,-100kΩ≦Im{Zant}≦100kΩの範囲で変化させた時の電力変換効率を解析する。電力変換率は、従来のMPPT制御による整合回路では図7中の入射電力Pinc、負荷に供給される電力Pを用いて式(3)で定義する。
【数3】

また、複素MPPTを用いた整合回路では図4中の入射電力Pinc、負荷に供給される電力P、Pを用いて式(4)で定義する。
【数4】
【0028】
この時、負荷の入力インピーダンスはそれぞれの出力インピーダンスZantに対して0Ω≦R,R,R≦100kΩの範囲で変化させ、電力変換効率を最大に保つ値をとり解析を行った。
【0029】
(解析結果)
電力変換効率の等高図を図8(a)、(b)、図9の50Ω中心のスミスチャート上に示す。出力インピーダンスZantの変動に対して、式(3)、(4)により電力変換効率の最大値を示した。図8(a)には、従来のMPPT制御による整合回路の結果を、図8(b)には、伝送線路を用いた複素MPPTを用いた整合回路の結果を、図9には伝送線路を用いた複素MPPTの結果と従来のMPPTの結果の差を示し、設計した回路の有効性を評価した。
図8(b)より、図6に示した反射係数の領域で最大の電力変換効率を得られることが確認された。図9より、従来のMPPT制御による整合回路と比較すると出力インピーダンスZantが虚部を持つ領域で広く電力変換効率の向上が確認できる。
【0030】
<整流回路を含む複素MPPTの解析>
(解析結果)
図2の複素MPPTによる整合回路において、DC-DCコンバータの入力インピーダンスを0.1Ω≦R,R≦100kΩの範囲で変化させた時のA点から見た入力インピーダンスZinと、電源の出力インピーダンスZantを1Ω≦Re{Zant}≦2500Ω,-1500Ω≦Im{Zant}≦1500の範囲で変化させた時の電力変換効率を解析した。電力変換率は式(4)のηを使用する。負荷の入力インピーダンスはそれぞれの出力インピーダンスZantに対して0Ω≦R,R,R≦100kΩの範囲で変化させ、電力変換効率を最大に保つ値をとり解析を行う。ダイオードはSMS3923を使用した。
【0031】
(測定モデル)
図5に示した伝送線路により図2の電力分配回路および整流回路を作製し、図11に示す。想定周波数は920MHz、導体材質は銅、導体厚さは0.018mm、基板の比誘電率は2.6、誘電正接は0.00083、基板の厚さは0.8mmである。整流回路のダイオードはSMS3923を使用した。。
【0032】
(電力変換効率のDC-DCコンバータの入力インピーダンス依存性)
電力変換効率とDC-DCコンバータの入力インピーダンスの変化との関係について確認した。実験は電源の周波数920MHz、入射電力はPinc=250mWで行い、方向性結合器で進行波と反射波を取り出してネットワークアナライザにて測定した。この時、DC-DCコンバータの入力インピーダンスR,Rに相当する電子負荷を10Ω≦R≦10kΩ,10Ω≦R≦10kΩの範囲で変化させた。なお、電源の出力インピーダンスはZant=50Ωとし、電力変換効率は式(4)、(5)、(6)で求めた。
【数5】

【数6】
【0033】
電力変換効率の入力インピーダンス特性を図12に等高図に示す。図12(a)、(b)をそれぞれR、Rの軸方向に見ると、電力変換効率がピークを1つだけ持つことが確認でき、山登り法による制御が有効であることが明らかとなる。また、図12(a)、(b)と図12(c)を比較するとP/Pincがピークとなる点において、(P+P)/Pincもピークをとることが確認できる。一方で、P/Pincがピークとなる点において、(P+P)/Pincはピークとなっていない。よって、P、Pに対してそれぞれ独立してMPPT制御を施しても最大の電力変換効率は得られない。しかし、整合回路全体の電力変換効率(P+P)/Pincをもとに2系統MPPT制御を交互に施せば、最大の電力変換効率が得られる。この時、図12(c)における最大の電力変換効率は40.9%であった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
近距離で、大電力の高周波電力を送り、かつ、伝送距離が変化する用途で本発明が生かされる。自動車用充電装置への応用の可能性がある。
【符号の説明】
【0035】
1、11、21:伝送線路を用いた複素MPPT整合回路
2、12:高周波電力分配回路(伝送線路を備える)
3A、3B、13A、13B:伝送線路
4A、4B:整流回路
5A、5B:DC-DCコンバータ
6:受電アンテナ
7:負荷
10:複素MPPT整合回路(従来技術)
20:高周波電力分配回路(従来技術)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12