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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023123995
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】長尺ウェブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 26/02 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
B65H26/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027519
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆
【テーマコード(参考)】
3F105
【Fターム(参考)】
3F105AA01
3F105AA04
3F105AA11
3F105AB00
3F105BA13
3F105CA14
3F105DA23
3F105DA61
3F105DB11
3F105DC03
3F105DC13
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で回転ロールの回転方向の正誤判定を行うことが可能な長尺ウェブの製造方法。
【解決手段】複数の回転ロールに沿って、長尺ウェブを搬送する工程を有する、長尺ウェブの製造方法であって、前記長尺ウェブを搬送する工程は、前記回転ロールの回転方向を識別するためのマーキング部と、前記マーキング部を検知して、前記回転ロールの回転方向を識別する検知部と、前記検知部により検知された識別情報と、前記回転ロールの回転方向の正誤の判定を行う判定部と、を備える搬送装置を用いて、前記判定を行うことを含み、前記マーキング部は、第1サブマーキング部と、前記第1サブマーキング部とは前記検知部による検知量が異なる第2サブマーキング部とを有し、これらは、前記回転ロールの回転方向の違いにより、前記検知部により検知された識別情報が異なるように配置されている、長尺ウェブの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転ロールに沿って、長尺ウェブを搬送する工程を有する、長尺ウェブの製造方法であって、
前記長尺ウェブを搬送する工程は、
前記複数の回転ロールと、
少なくとも1つの回転ロールに配置され、前記回転ロールの回転方向を識別するためのマーキング部と、
前記マーキング部を検知して、前記回転ロールの回転方向を識別する検知部と、
前記検知部により検知された識別情報と、事前設定された前記回転ロールの正しい回転方向の参照情報とを照合することにより、前記回転ロールの回転方向の正誤の判定を行う判定部と、を備える搬送装置を用いて、前記判定を行うことを含み、
前記マーキング部は、第1サブマーキング部と、前記第1サブマーキング部とは前記検知部による検知量が異なる第2サブマーキング部とを有し、
前記第1サブマーキング部及び前記第2サブマーキング部は、前記回転ロールの回転方向の違いにより、前記検知部により検知された識別情報が異なるように配置されている、長尺ウェブの製造方法。
【請求項2】
前記回転ロールを側面から見たとき、前記第1サブマーキング部の中心及び前記回転ロールの中心を結ぶ直線と、前記第2サブマーキング部の中心及び前記回転ロールの中心を結ぶ直線とのなす角度が、0°より大きく、180°未満である、請求項1に記載の長尺ウェブの製造方法。
【請求項3】
前記マーキング部が前記回転ロールの側面に配置される、請求項1または2に記載の長尺ウェブの製造方法。
【請求項4】
前記マーキング部が、赤外線を吸収する特性を有し、前記検知部が赤外線センサである、請求項1~3のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
【請求項5】
前記第1サブマーキング部と、前記第サブ2マーキング部とは、前記回転ロールの回転円周方向における長さが異なる、請求項1~4のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
【請求項6】
前記検知部では、前記第1サブマーキング部の検知量と前記第2サブマーキング部の検知量とに基づく比率を、前記識別情報として得る、請求項1~5のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
【請求項7】
前記判定部が、前記回転ロールの回転方向の正誤の判定を複数回行った後、最終判定を行う、請求項1~6のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
【請求項8】
前記回転ロールがフリーロールである、請求項1~7のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
【請求項9】
前記長尺ウェブが、長尺フィルムである、請求項1~8のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺ウェブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、長尺のフィルム、紙、不織布等の長尺のウェブは、その製造時において、複数の回転ロールを用いて搬送される。
【0003】
個々の回転ロールは、通常、搬送装置の設計上の長尺ウェブの搬送方向と同じ向きに回転するが、何等かの理由により設計上の搬送方向と逆向きに回転する場合がある。この場合、搬送時に行われる他の工程に不都合が生じうることから、早期の発見及び修正が求められる。
【0004】
しかしながら、簡易な方法で回転ロールの回転方向を検出する方法として有効は方法が確立されておらず、回転ロールの意図しない回転方向への回転を早期に発見し修正することが難しい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされた発明であり、簡易な方法で回転ロールの回転方向を識別し、回転ロールの回転方向の正誤判定を行うことが可能な長尺ウェブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意研究を行った結果、回転ロールに対し、少なくとも2つの検知量の異なるマーキングを施すことにより、回転ロールの回転方向を識別しうることを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のものを含む。
【0007】
〔1〕 複数の回転ロールに沿って、長尺ウェブを搬送する工程を有する、長尺ウェブの製造方法であって、前記長尺ウェブを搬送する工程は、前記複数の回転ロールと、少なくとも1つの回転ロールに配置され、前記回転ロールの回転方向を識別するためのマーキング部と、前記マーキング部を検知して、前記回転ロールの回転方向を識別する検知部と、前記検知部により検知された識別情報と、事前設定された前記回転ロールの正しい回転方向の参照情報とを照合することにより、前記回転ロールの回転方向の正誤の判定を行う判定部と、を備える搬送装置を用いて、前記判定を行うことを含み、前記マーキング部は、第1サブマーキング部と、前記第1サブマーキング部とは前記検知部による検知量が異なる第2サブマーキング部とを有し、前記第1サブマーキング部及び前記第2サブマーキング部は、前記回転ロールの回転方向の違いにより、前記検知部により検知された識別情報が異なるように配置されている、長尺ウェブの製造方法。
〔2〕 前記回転ロールを側面から見たとき、前記第1サブマーキング部の中心及び前記回転ロールの中心を結ぶ直線と、前記第2サブマーキング部の中心及び前記回転ロールの中心を結ぶ直線とのなす角度が、0°より大きく、180°未満である、〔1〕に記載の長尺ウェブの製造方法。
〔3〕 前記マーキング部が前記回転ロールの側面に配置される、〔1〕または〔2〕に記載の長尺ウェブの製造方法。
〔4〕 前記マーキング部が、赤外線を吸収する特性を有し、前記検知部が赤外線センサである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
〔5〕 前記第1サブマーキング部と、前記第サブ2マーキング部とは、前記回転ロールの回転円周方向における長さが異なる、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
〔6〕 前記検知部では、前記第1サブマーキング部の検知量と前記第2サブマーキング部の検知量とに基づく比率を、前記識別情報として得る、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
〔7〕 前記判定部が、前記回転ロールの回転方向の正誤の判定を複数回行った後、最終判定を行う、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
〔8〕 前記回転ロールがフリーロールである、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
〔9〕 前記長尺ウェブが、長尺フィルムである、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の長尺ウェブの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な方法で回転ロールの回転方向を識別し、回転ロールの回転方向の正誤判定を行うことが可能な長尺ウェブの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法を模式的に示す側面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る回転ロールを模式的に示す斜視図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係るマーキング部の一例を示す模式図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態に係る回転ロールの回転方向の違いによる識別情報の一例を説明する説明図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法において生じうる不具合を模式的に示す側面図である。
図6図6は、第一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法における処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、本発明の第二実施形態に係る長尺ウェブの製造方法を模式的に示す側面図である。
図8図8は、本発明の第二実施形態に係る回転ロールの回転方向の違いによる識別情報の一例を説明する説明図である。
図9図9は、本発明の第二実施形態に係る回転ロールの回転方向の違いによる識別情報の他の例を説明する説明図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係るマーキング部及び検知部の位置関係の一例を説明する模式図である。
図11図11は、本発明の一実施形態に係るマーキング部及び検知部の位置関係の他の例を説明する模式図である。
図12図12は、本発明の一実施形態に係るマーキング部及び検知部の位置関係の他の例を説明する模式図である。
図13図13は、本発明の一実施形態に係るマーキング部の一例及び他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。また、図面について既出の符号についてはこれを省略する場合がある。
【0011】
以下の説明において、以下の説明において「長尺」のウェブとは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するウェブをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するウェブをいう。
【0012】
〔1.長尺ウェブの製造方法の概要〕
本発明の一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法は、複数の回転ロールに沿って、長尺ウェブを搬送する工程を有する。
【0013】
本実施形態に係る長尺ウェブの製造方法において、長尺ウェブを搬送する工程は、複数の回転ロールと、少なくとも1つの回転ロールに配置され、回転ロールの回転方向を識別するためのマーキング部と、マーキング部を検知して、回転ロールの回転方向を識別する検知部と、検知部により検知された識別情報と、事前設定された回転ロールの正しい回転方向の参照情報とを照合することにより、回転ロールの回転方向の正誤の判定を行う判定部と、を備える搬送装置を用いて、判定を行うことを含む。
【0014】
搬送装置において、複数の回転ロールは、長尺ウェブを搬送する。
【0015】
マーキング部は、回転ロールの回転方向を識別するために配置される。マーキング部は、第1サブマーキング部と、第1サブマーキング部とは検知部による検知量が異なる第2サブマーキング部とを有し、第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部は、回転ロールの回転方向の違いにより、検知部により検知された識別情報が異なるように配置されている。
【0016】
第1サブマーキング部と第2サブマーキング部との検知部による検知量が異なる、とは、検知部によりある物性値を検知する場合において、第1サブマーキング部における検知量と、第2サブマーキング部における検知量とが異なることをいう。検知部により検知される物性値としては、検知部により直接検知された物性値だけでなく、検知された物性値を電気信号等により変換することで得られる物性値も含む。物性値としては、例えば、円周方向の長さ、面積、特定の波長の光の反射率の差等を挙げられるが、これに限定されない。
【0017】
検知部は、マーキング部を検知して、回転ロールの回転方向を識別する。検知部は、通常、マーキング部の第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部の検知量、及びマーキング部における第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部の配置により、回転方向の識別情報を得る。この際、検知部は、マーキング部における検知量のみにより識別情報を得うるが、マーキング部における検知量のみならず、マーキング部が配置されていない領域において検知される情報をさらに用いて識別情報を得うる。検知部においては、識別情報として、通常、時計回りと反時計回りとの2つの回転方向の識別情報を得うる。
【0018】
判定部は、検知部により検知された識別情報と、事前設定された回転ロールの正しい回転方向の参照情報とを照合することにより、回転ロールの回転方向の正誤の判定を行う。回転ロールの正しい回転方向とは、搬送装置において長尺ウェブを、設計上、通過する搬送経路に沿って搬送しうる回転方向をいう。通常、回転ロールの正しい回転方向は、搬送装置の設計上の長尺ウェブの搬送方向と同じ向きとなる回転方向である。参照情報は、通常、検知部により検知された2つの識別情報のうち、いずれか一方が設定される。判定部においては、参照情報と、検知部による識別情報との照合を行いうる。
【0019】
本発明によれば、マーキング部、検知部及び判定部を備える搬送装置を用いて、回転ロールの回転方向の正誤の判定を行うことができるため、回転ロールの回転方向の不具合を早期に検知することができ、効率良く長尺ウェブを搬送することができる。また、本発明によれば、マーキング部における第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部の検知量及び配置の工夫により簡易な方法で回転ロールの回転方向を識別し、正誤判定を行うことができる。
【0020】
また、回転ロールの回転方向の不具合を早期に検知しうることから、不具合の是正を早期に行うるため、例えば、欠陥検知部による検知等の搬送中の処理を適切に行うことができる。
【0021】
また、長尺ウェブの用途によっては、長尺ウェブの搬送時において、長尺ウェブの一方の面のみが回転ロールと接触するようにして搬送を行いたい場合がある。このような場合に、回転ロールの回転方向の不具合を早期に検知することで、例えば、長尺ウェブの供給にミスを早期に是正することができるため、例えば他方の面と回転ロールとが接触するといった、回転ロールの回転方向の不具合に由来する長尺ウェブの傷、及びシワ等の欠陥の発生を抑制することができる。
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法について、具体例を挙げて説明する。
【0023】
〔2.第一実施形態の長尺ウェブの製造方法〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法を模式的に示す側面図である。図1に示すように、第一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法において、長尺ウェブ1を搬送する工程は、下記の搬送装置10を用いて、回転ロール11Bの回転方向の正誤の判定を行うことを含む。
【0024】
図1において、搬送装置10は、複数の回転ロール11A、11B及び11Cと、回転ロール11Bに配置され、回転ロール11Bの回転方向を識別するためのマーキング部20と、マーキング部20を検知して、回転ロール11Bの回転方向を識別する検知部30と、検知部により検知された識別情報と、事前設定された回転ロールの正しい回転方向の参照情報とを照合することにより、回転ロールの回転方向の正誤の判定を行う判定部(図示せず)と、を備える。第一実施形態においては、マーキング部20が赤外線を吸収する特性を有し、検知部30が赤外線センサである例を示す。また、搬送装置10は、必要に応じて、欠陥検知部40を有しうる。欠陥検知部40は、例えば、カメラ41と光源42とを備える。
【0025】
搬送装置10においては、検知部30と併用して、任意の構成として、例えば、時間を計測するための計時部(図示せず)を備えることにより、回転ロール11Bの1回転当たりにかかる時間を計測して、回転速度を検知しうる。
【0026】
図2は、図1における回転ロール11Bを模式的に示す斜視図である。図2に示すように、回転ロール11B(11)は、長尺ウェブの搬送面となりうるロール面11a、側面11b、及び回転軸11cを備える。図1及び2においては、マーキング部20が回転ロールの側面11bに配置されている例を示す。
【0027】
図3は、図1におけるマーキング部の模式図である。マーキング部20は、第1サブマーキング部21と、第1サブマーキング部21とは検知部による検知量が異なる第2サブマーキング部22とを有する。図3においては、第1サブマーキング部21と、第2サブマーキング部22との、回転ロールの回転円周方向における長さが異なる。図3においては、回転ロール11Bを側面方向から見たとき、第1サブマーキング部21の中心及び回転ロールの中心Cを結ぶ直線と、第2サブマーキング部22の中心及び回転ロールの中心Cを結ぶ直線とのなす角度θが、0°より大きく、180°未満である。角度θは、前記の2つの直線に挟まれる角度のうち小さい方の角度を指す。第1サブマーキング部21と第2サブマーキング部22とは、第1スペース部51及び第2スペース部52を設けて同一円周上に配置されている。ここで、第1スペース部51の回転円周方向の長さは、第2スペース部52の回転円周方向の長さよりも短い。以下、回転円周方向は単に円周方向と称する場合がある。
【0028】
図3に示すマーキング部を用いることにより、検知部では第1サブマーキング部の検知量と第2サブマーキング部の検知量とに基づく比率を、回転ロールの回転方向の違いを識別する識別情報として得ることができる。
【0029】
図1~3に示すマーキング部及び検知部により得られる回転ロールの回転方向の識別情報について、図4(a)及び(b)を用いて説明する。
図4(a)及び(b)に示すように、回転ロール11Bの側面には、マーキング部20が配置されており、円の回転方向において、第1サブマーキング部21を起点として、時計回りに、第1サブマーキング部21、第1スペース部51、第2サブマーキング部22及び第2スペース部52がこの順で配置されている。回転ロール11Bにおいては、第1サブマーキング部21及び第2サブマーキング部22が配置された部分は赤外線を吸収し、第1スペース部51及び第2スペース部52が設けられた部分は赤外線が反射される。そのため、検知部30においては、マーキング部及びスペース部における赤外線の反射率の違いを検知することで、第1サブマーキング部21、スペース部51、第2サブマーキング部22及びスペース部52のそれぞれの回転円周方向の長さ(距離)を検知しうる。第1サブマーキング部21、及び第2サブマーキング部22は、それぞれ検知量としての距離が異なり、第1スペース部51及び第2スペース部52も検知量としての距離が異なることから、検知部30は、回転ロール11Bを時計回りで回転させた場合における、第1サブマーキング部21の始点から第2サブマーキング部22の始点までの円周方向の距離d1と、第2サブマーキング部22の始点から第1サブマーキング部21の始点までの円周方向の距離d2との比率(d1:d2)と、回転ロール11Bを反時計回りで回転させた場合における、第1サブマーキング部21の始点から第2サブマーキング部22の始点までの円周方向の距離d3と、第2サブマーキング部22の始点から第1サブマーキング部21の始点までの円周方向の距離d4との比率(d3:d4)とを異なる識別情報として検知しうる。
【0030】
具体的に、図4(a)に示すように、回転ロール11Bを時計回りの回転方向R1で回転させた場合、回転方向R1における第1サブマーキング部21の始点から第2サブマーキング部22の始点までの円周方向の距離d1(図4(a)中、p11からp21までの時計回りの円周方向の距離)は、第1サブマーキング部21の距離xと、第1スペース部51の距離xとの和となる(x+x)。また、回転方向R1における第2サブマーキング部22の始点から第1サブマーキング部21の始点までの距離(図4(a)中、P21からP11までの時計回りの円周方向の距離)は、第2サブマーキング部22の距離x及び第2スペース部52の距離xの和となる(x+x)。したがって、d1:d2は、(x+x):(x+x)となる。
【0031】
一方、図4(b)に示すように、回転ロール11Bを反時計回りの回転方向R2で回転させた場合、回転方向R2における第1サブマーキング部21の始点から第2サブマーキング部22の始点までの円周方向の距離d3(図4(b)中、P12からP22までの反時計回りの円周方向の距離)は、第1サブマーキング部21の距離xと、第2スペース部52の距離xとの和となる(x+x)。また、回転方向R2における第2サブマーキング部22の始点から第1サブマーキング部21の始点までの距離(図4(b)中、P22からP12までの反時計回りの円周方向の距離)は、第2サブマーキング部22の距離x及び1スペース部51の距離xの和となる(x+x)。したがって、d3:d4は、(x+x):(x+x)となる。
【0032】
したがって、回転ロール11Bの回転方向が時計回りである場合の識別情報としてd1:d2=(x+x):(x+x)を、反時計回りである場合の識別情報としてd3:d4=(x+x):(x+x)を、互いに異なる比率として得ることができる。上記の説明においては、第1サブマーキング部21及び第2サブマーキング部22をこの順で検知した場合の比率として、識別情報(d1:d2)及び(d3:d4)を説明したが、第2サブマーキング部22及び第1サブマーキング部21をこの順で検知した場合の比率(d2:d1)及び(d4:d3)についても回転方向の違いを識別しうる。したがって、この例においては、(d1:d2)及び(d2:d1)を時計回りの識別情報として同視しうる。同様に、(d3:d4)及び(d4:d3)を反時計回りの識別情報として同視しうる。
【0033】
上記の説明においては、回転方向における第1サブマーキング部の始点から第2サブマーキング部の始点までの円周方向の距離、及び回転方向における第2サブマーキング部の始点から第1サブマーキング部の始点までの円周方向の距離を検知し、その比率の算出する例について説明したが、原理上、回転方向における第1サブマーキング部の終点から第2サブマーキング部の終点までの円周方向の距離、及び回転方向における第2サブマーキング部の終点から第1サブマーキング部の終点までの円周方向の距離を検知し、その比率の算出することも可能である。
【0034】
次に、検知部により検知された識別情報と、事前設定された回転ロール11Bの正しい回転方向の参照情報とを照合することにより、回転ロール11Bの回転方向の正誤の判定を行う。図1に示す搬送装置10においては、回転ロール11Bの回転方向としては、設計上のウェブの搬送方向Mと同じ向きである時計回りの回転方向R1が正しい回転方向となる。そのため、参照情報としては、(d1:d2)または(d2:d1)が正しい回転方向の情報となる。識別情報と前記の参照情報とを照合することにより、回転ロール11Bの回転方向の正誤判定を行いうる。
【0035】
回転ロール11Bの回転方向が、「正」の判定である場合は、例えば、図1に示すように、搬送装置10において、長尺ウェブ1が正しく、設計上の搬送方向Mに沿って回転ロール11Bの搬送面へ正しく供給されたことを確認することができる。一方、回転方向が「誤」の判定である場合は、例えば、図5に示すように、長尺ウェブ1が設計上の搬送方向Mに沿った回転ロールの搬送面とは反対側の面に供給され、設計から外れた意図しない搬送方向Nに搬送されることにより、回転ロール11Bが誤った回転方向に回転していることを確認することができる。このような長尺ウェブの供給ミス(通紙ミスオペレーション)が生じている場合、欠陥検知部40におけるカメラ41、長尺ウェブ1及び光源42の距離が予め設定された距離と異なることにより欠陥の検知も正しく行われない可能性がある。第一実施形態においては、回転ロール11Bの回転方向の正誤判定を容易に行うことができることから、例えば、図5に示すように長尺ウェブ1の供給ミスが生じている場合、早期に発見、是正することができるため、長尺ウェブ1を効率良く搬送することができる。
【0036】
図6は、第一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法における処理の一例を示すフローチャートである。
まず、長尺ウェブ1を搬送する工程において、回転ロール11Bに長尺ウェブが供給されることにより、回転ロール11Bが回転する(ステップS1)。
検知部30は、回転ロール11Bに配置されたマーキング部20を検知することにより、回転方向の識別情報を取得する(ステップS2)。
判定部は、検知部30により得られた識別情報と、事前設定された正しい回転方向の参照情報とを照合し(ステップS3)、回転方向の正誤判定を行う(ステップS4)。
回転方向が「正」である場合(ステップS4:OK)、長尺ウェブ1の搬送が継続される(ステップ5)。
回転方向が「誤」である場合(ステップS4:NG)、長尺ウェブ1の搬送を中断し、長尺ウェブの供給ミスを是正した後(ステップ6)、ステップS1へ戻る。
【0037】
〔3.第二実施形態の長尺ウェブの製造方法〕
上述した第一実施形態においては、複数の回転ロール11A、11B及び11Cの内、1つの回転ロール11Bにマーキング部20及び検知部30が配置された例を説明したが、これに限定されず、マーキング部及び検知部は、複数の回転ロールに配置しうる。
【0038】
図7は、本発明の第二実施形態に係る長尺ウェブの製造方法を模式的に示す側面図である。図7に示すように、第二実施形態に係る長尺ウェブの製造方法において、長尺ウェブ1を搬送する工程は、下記の搬送装置110を用いて、回転ロール111B、111C、及び111Dの回転方向の正誤の判定を行うことを含む。
【0039】
図7に示すように、搬送装置110は、複数の回転ロール111A、111B、111C、111D及び111Eと、マーキング部201、202、及び203と、検知部301、302及び303と、判定部(図示せず)を備える。マーキング部201は回転ロール111Bに配置され、検知部301はマーキング部201を検知して、回転ロール111Bの回転方向を識別する。マーキング部202は、回転ロール111Cに配置され、検知部302はマーキング部202を検知して回転ロール111Cの回転方向を識別する。マーキング部203は、回転ロール111Dに配置され、検知部303はマーキング部203を検知して、回転ロール111Dの回転方向を識別する。判定部は、回転ロール111B、111C及び111Dのそれぞれの回転方向の正誤判定を行う。
【0040】
図7においては、回転ロール111B、111C、及び111Dは、それぞれの回転方向が、長尺ウェブ1の設計上の搬送方向Mと同じ向きとなるように回転することで、正しく搬送を行うことができる。そのため、判定部の参照情報としての正しい回転方向は、回転ロール111Bが時計回り(R1)、回転ロール111Cが反時計回り(R2)、回転ロール111Dが時計回り(R1)となる。
【0041】
搬送装置110を用いた場合、識別情報と参照情報とは、下記のように照合しうる。
図8に示すように、マーキング部201、202及び203として、第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部のパターンが図4(a)及び(b)において説明したものを用いた場合、すなわち、複数の回転ロール111B、111C及び111Dに対し、同一のパターンを有するマーキング部201、202及び203を配置した場合、時計回り(R1)の識別情報としては、(d1:d2)または(d2:d1)を得ることができ、反時計回り(R2)の識別情報としては、(d3:d4)または(d4:d3)を得ることができる。そのため、判定部においては、回転ロール111B及び回転ロール111Dの参照情報を(d1:d2)または(d2:d1)とし、回転ロール111Cの参照情報を(d3:d4)または(d4:d3)に設定することで、検知部により得られた識別情報と参照情報と照合して、各回転ロールの回転方向の正誤を図ることができる。
【0042】
また、図9に示すように、マーキング部201、202及び203の第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部のパターンを回転方向に併せて変えたマーキング部を用いて識別情報を得ることもできる。図9においては、回転ロール111B及び111Dに配置されたマーキング部201及び203は、図4(a)及び(b)において説明したパターンと同様である。一方、回転ロール111Cに配置されたマーキング部202は、第1サブマーキング部21を起点として、時計回りに第1サブマーキング部21、第1スペース部51、第2サブマーキング部22及び第2スペース部52がこの順で配置されており、第1サブマーキング部21の距離がxであり、第2サブマーキング部の距離がxである点以外は、図4(a)及び(b)で説明したマーキング部20と同様である。このようなマーキング部202を用いた場合、回転ロール111Cを時計回りの回転方向R1で回転させた場合における、第1サブマーキング部21の始点から第2サブマーキング部22の始点までの距離d5と、第2サブマーキング部22の始点から第1サブマーキング部21の始点までの距離d6との比率(d5:d6)は(x+x):(x+x)となり、回転ロール111Cを反時計回りの回転方向R2で回転させた場合における、第1サブマーキング部21の始点から第2サブマーキング部22の始点までの距離d7と、第2サブマーキング部22の始点から第1サブマーキング部21の始点までの距離d8との比率(d7:d8)は(x+x):(x+x)となる。そのため、マーキング部202を用いた場合は、回転ロール111Cの回転方向が時計回りである場合、マーキング部201及び203を用いた場合における回転ロール111B及び回転ロール111Dの回転方向が反時計回りである場合と同様の識別情報を取得しうる。また、マーキング部202を用いた場合は、回転ロール111Cの回転方向が反時計回りである場合、マーキング部201及び203を用いた場合における回転ロール111B及び回転ロール111Dの回転方向が時計回りである場合と同様の識別情報を取得しうる。そのため、判定部の参照情報としての正しい回転方向は、回転ロール111Bが時計回り、回転ロール111Cが反時計回り、回転ロール111Dが時計回りとなることから、各回転ロールの参照情報としては、(d1:d2)=(d8:d7)または(d2:d1)=(d7:d8)を採用しうる。したがって、判定部による参照情報を回転ロールの回転方向によらず同一の値とすることができるため、各ロールに対する判定部の設定を共通の設定としうる。
【0043】
第二実施形態において上記の点以外は、第一実施形態の項目で説明した内容と同様としうる。
【0044】
〔4.搬送装置〕
搬送装置は、複数の回転ロール、マーキング部、検知部及び判定部を備える。
【0045】
回転ロールの数は、少なくとも2つ以上であり、長尺ウェブの材質、幅及び長さに応じて、適宜選択しうる。また、回転ロールの径、及び幅についても長尺ウェブの材質、幅及び長さに応じて、適宜選択しうる。回転ロールとしては、例えば、駆動ロールやフリーロールを挙げることができる。
【0046】
マーキング部が配置される回転ロールは、駆動ロールであってもよく、フリーロールであってもよいが、フリーロールであることが好ましい。フリーロールは長尺ウェブの搬送方向に応じて回転することから、例えば、長尺ウェブの供給ミスによる回転方向の誤りが生じやすいためである。
【0047】
マーキング部が配置される回転ロールの数としては、少なくとも1つ以上であれば限定されず、具体的な数については、搬送装置に用いられる回転ロールの数、装置上の回転ロールの位置及び長尺ウェブの搬送経路等に応じて適宜選択しうる。
【0048】
マーキング部は、回転ロールの回転方向を識別するために配置される。回転ロールにおけるマーキング部の配置としては、検知部によりマーキング部を検知しうる位置であれば特に限定されず、回転ロールの大きさ、及び検知部の検知感度等に応じて適宜選択しうる。例えば、図10に示すように、マーキング部20は回転ロールの回転軸11cに配置しうる。また、例えば、図11に示すように、マーキング部20は回転ロールの側面11bに配置しうる。また、例えば、図12に示すように、マーキング部20は回転ロールのロール面(長尺ウェブの搬送面)11aに配置しうる。中でも、マーキング部20は回転ロールの側面11bに配置することが好ましい。マーキング部の配置面を比較的広くすることができるため、第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部の検知量の差をつけやすくしうる。また、検知部を回転ロールの駆動部60とともに配置することができることから、搬送装置の構成を長尺ウェブの搬送を妨げにくく取り扱いやすくしうる。
【0049】
マーキング部は、第1サブマーキング部と、検知部による検知量が異なる第2サブマーキング部とを有する。検知部により検知される物性値としては、検知部により直接検知された物性値だけでなく、検知された物性値を電気信号等により変換することで得られる物性値も含む。物性値としては、例えば、回転ロールの円周方向の長さ、面積、特定の波長の光の反射率の差等を挙げられるが、これに限定されない。中でも、物性値としては、回転ロールの円周方向の長さであることが好ましい。
【0050】
すなわち、マーキング部は、前記第1サブマーキング部と、前記第2サブマーキング部との、前記回転ロールの回転円周方向における長さが異なることが好ましい。第一実施形態及び第二実施形態で説明したように、回転ロールの回転円周方向の長さを異ならせることにより、検知部による識別情報の取得、および判定部による回転方向の正誤判定を行いやすいからである。第1サブマーキング部と第2サブマーキング部とが、回転ロールの回転円周方向における長さが異なる場合、第1サブマーキング部と第2サブマーキング部とは、通常、図3に示すように、略同一円周上に配置される。略同一円周上とは、完全な同一円周上だけではなく、検知部により各サブマーキング部の検知量の違いを検知しうる程度の位置の誤差を含む。
【0051】
マーキング部は、第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部が、回転ロールの回転方向の違いにより、検知部により検知された識別情報が異なるように配置される。このような配置としては、例えば、回転ロールを側面から見たとき、第1サブマーキング部の中心及び前記回転ロールの中心を結ぶ直線と、第2サブマーキング部の中心及び前記回転ロールの中心を結ぶ直線とのなす角度が、0°より大きく、180°未満でありうる。具体的な前記の角度については、マーキング部の大きさ及び検知部の感度等に応じて適宜選択しうるが、通常、0°より大きく、15°以上でありえ、30°以上でありえる。また、前記の角度は、通常、180°未満であり、150°以下でありえ、120°以下でありえる。
【0052】
検知部は、通常、マーキング部の第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部の検知量、及びマーキング部における第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部の配置により、回転方向の識別情報を得る。この際、検知部は、マーキング部における検知量のみにより識別情報を得うるが、マーキング部における検知量のみならず、マーキング部が配置されていない領域において検知される情報をさらに用いて識別情報を得うる。
【0053】
検知部では、第1サブマーキング部の検知量と前記第2サブマーキング部の検知量とに基づく比率を、識別情報として得ることが好ましい。第1サブマーキング部の検知量と前記第2サブマーキング部の検知量とに基づく比率とは、単純な第1サブマーキング部の検知量と前記第2サブマーキング部の検知量との比率だけではなく、第1サブマーキング部の検知量と前記第2サブマーキング部の検知量の違いにより生じる比率をいう。後者の例としては、第一実施態様及び第二実施態様の項目で説明した、回転方向の違いによる、第1サブマーキング部から第2サブマーキング部までの距離と、第2サブマーキング部から第1サブマーキング部までの距離との比率を挙げることができる。
【0054】
識別情報を得るための、第1サブマーキング部の検知量と、第2サブマーキング部の検知量は、回転ロールを1回転させることにより得られた検知量でありえるが、回転ロールを複数回回転させることにより得られた検知量の平均値であってもよい。
【0055】
マーキング部の形態としては、第1サブマーキング部と第2サブマーキング部とは、互いに異なる検知量を検知部により検知しうる形態であれば特に限定されず、例えば、図3に示すように、第1サブマーキング部21と第2サブマーキング部22とは別体であってもよく、図13(a)及び(b)に示すように、第1サブマーキング部21及び第2サブマーキング部22とは一体であってもよい。この場合、図13(a)に示すようにマーキング部20は第1サブマーキング部21と第2サブマーキング部22と、第1サブマーキング部21及び第2サブマーキング部22を連結させる連結部20Cとを有していてもよい。マーキング部20が連結部20Cを有する場合、連結部20Cは検知部により検知されない位置に配置されることが好ましい。
【0056】
また、例えば、マーキング部が特定の波長の光を反射する特性を有する場合、図13(b)に示すように、マーキング部20は、第1サブマーキング部21と第2サブマーキング部22と、第1サブマーキング部21及び第2サブマーキング部22の間に配置されたダミースペース部23及び24を有していてもよい。図13(b)においては、第1サブマーキング部21及び第2サブマーキング部22が特定の波長の光を反射する特性を有し、ダミースペース部23及び24が特定の光を吸収する特性を有する例を示しているが、これに限定されず、例えば、第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部が特定の波長を吸収する特性を有し、ダミースペース部が特定の光を反射する特性を有していてもよい。
【0057】
マーキング部におけるサブマーキング部の数としては、通常、2以上であり、さらに多くのサブマーキング部を有していてもよい。
【0058】
マーキング部の特性は、検知部の種類に応じて適宜選択しうる。例えば、検知部が特定の波長の光を用いた光センサである場合、マーキング部は、前記の特定の波長の光を反射または吸収する特性を有し得る。本実施形態においては、中でも、マーキング部が赤外線を反射または吸収する特性を有し、検知部が赤外線センサであることが好ましく、マーキング部が赤外線を吸収する特性を有し、検知部が赤外線センサであることが好ましい。検知部によるマーキング部の検知を良好に行うことができるからである。マーキング部の具体的な赤外線反射率及び赤外線吸収率は、赤外線センサの感度に応じて適宜調整しうる。
【0059】
マーキング部の材料としては、マーキング部の特性に応じて適宜選択しうるが、例えば、マーキング部が赤外線を吸収する特性を有する場合は、黒色シール材を用いうる。製品としては、例えば、株式会社ニトムズ製の「アルミテープブラック」を挙げることができる。また、マーキング部が赤外線を反射する特性を有する場合は、白色シール材を用いうる。
【0060】
検知部は、マーキング部を検知して、回転ロールの回転方向を識別する。検知部の種類としては、マーキング部の特性に応じて適宜選択しうるが、例えば、特定の光の波長を用いた光センサを用いうる。検知部としては、好ましくは、赤外線センサを用いうる。赤外線センサとしては、例えば、赤外線を測定対象へ照射する発光素子と、測定対象からの赤外視線反射を受光する受光素子とを備える反射型赤外線センサを用いうる。反射型赤外線センサとしては、例えば、フォトリフレクタを用いうる。フォトリフレクタは赤外線反射の受光の有無を電気信号に変換しうることから、例えば、第一実施形態及び第二実施形態に係る長尺ウェブの製造方法の項目で説明したように、第1サブマーキング部、第1スペース部、第2サブマーキング部及び第2スペース部の円周方向の距離をパルス幅に変換しうる。また、フォトリフレクタを用いる場合、コンパレータを併用しうる。フォトリフレクタによる検知情報がアナログ値である場合、コンパレータを併用することで、アナログ値を、0V及び基準電圧(V)のOFF及びONに変換しうることから、検知部において情報処理を高速で行いうる。検知部における情報処理は、かかる処理を電子的な計算により実行しうる任意のコンピューターを用いて行いうる。例えば、マイコン基板を用いうる。マイコン基板としては、例えば、「Arduino」を用いうる。
【0061】
検知部において、回転方向の違いによる、第1サブマーキング部から第2サブマーキング部までの距離と、第2サブマーキング部から第1サブマーキング部までの距離との比率(又はその逆比)を識別情報として得る場合、例えば、下記の情報処理を行いうる。
【0062】
下記の情報処理は、回転ロールを複数回、回転させて得られた長短2つのパルス幅について、長短のそれぞれの平均値を求め、その平均値に基づいて識別を行うための情報処理である。
まず、検知部から受信したパルス値をパルス用キューに入れるとの操作を繰り返すことにより、2個以上のパルス値を揃える。次に、パルス用キュー内の平均値を求める。次に、得られた平均値を基準に、パルス用キューの値を長短の2つのキューに振り分ける。振り分けられた長パルスキューと、短パルスキューとのそれぞれの平均値を求め、長パルス平均値を短パルス平均値で割ることで、対照用の値(長パルス平均値/短パルス平均値)を求める。次に、対照用の値と閾値とを比較することにより、時計回りであるか、反時計回りであるかを識別しうる。
【0063】
ここで、閾値は、時計回りにおける第1サブマーキング部から第2サブマーキング部までの距離と、第2サブマーキング部から第1サブマーキング部までの距離との比率(又はその逆比)と、反時計回りにおける第1サブマーキング部から第2サブマーキング部までの距離と、第2サブマーキング部から第1サブマーキング部までの距離との比率(又はその逆比)との中間値となりうる値である。閾値は、例えば、(1)マーキング部の設計時における第1サブマーキング部及び第2サブマーキング部の配置の角度(設計値)から理論上求めうる。また、閾値は、例えば、(2)長尺ウェブの搬送工程前において回転ロールに実際にマーキング部を配置した際の、時計回りにおける前記の距離の実測値と、反時計回りにおける前記距離の実測値に基づいても求めうる。また、中間値は、厳密な意味での時計回りにおける前記の距離の比率と、反時計回りにおける前記距離の比率との中間値だけではなく、対照用の値と閾値とを比較しうる程度に中間値に対し一定の範囲内(例えば、±5%の範囲内)の値である場合を含む。閾値は、通常、長尺ウェブを搬送する工程前に予め求められる値である。
【0064】
閾値の算出方法について、前記(1)の方法を用いた算出方法を具体例を挙げて説明する。
例えば、図4(a)及び(b)に示すマーキング部において、設計上の第1サブマーキング部21の円弧の中心角が30°、第2サブマーキング部22の円弧の中心角が60°、第1スペース部の円弧の中心角が30°、及び第2スペース部の円弧の中心角が240°である場合を考える。この場合、回転ロールを時計回りで回転させた場合における、第1サブマーキング部21の始点から第2サブマーキング部22の始点までの円周方向の距離d1と、第2サブマーキング部22の始点から第1サブマーキング部21の始点までの円周方向の距離d2との比率(d1:d2)は、理論上、(60(°):300(°))となる。一方、回転ロールを反時計回りで回転させた場合における、第1サブマーキング部21の始点から第2サブマーキング部22の始点までの円周方向の距離d3と、第2サブマーキング部22の始点から第1サブマーキング部21の始点までの円周方向の距離d4との比率(d3:d4)は、理論上、(90(°):270(°))となる。計算の容易の為、両者の逆比をとり、d2/d1及びd4/d3で表すと、時計回りにおける前記比率は(d2/d1)=(300(°)/60(°))=5となり、反時計回りにおける前記比率は(d4/d3)=(270(°)/90(°))=3となることから、これらの比の中間値である閾値は4となる。閾値を求める際には、通常、閾値よりも大きい比率が時計回りまたは反時計回りのどちらに該当するかも併せて求める。これにより、対照用の値と閾値とを比較した際、対照用の値が時計回りまたは反時計回りのどちらに該当するかを識別しうる。
【0065】
上述した(1)の方法により理論上の閾値を算出した場合、搬送装置における検知部の検知条件によっては、実測される比率(d1:d2)及び比率(d3:d4)が理論上想定される値とは異なる値となる場合がありえる。この場合は、例えば、前記(2)の方法により、実測値に基づいた閾値を採用したり、理論上の閾値に近い比率となるように、検知部の検知条件を調整したりすることにより対処しうる。
【0066】
前記の情報処理は、識別情報を得るための情報処理の一例であり、本発明における識別情報を得るための情報処理は、これに限定されない。
【0067】
判定部は、検知部により検知された識別情報と、事前設定された回転ロールの正しい回転方向の参照情報とを照合することにより、回転ロールの回転方向の正誤の判定を行う。
【0068】
判定部による判定の具体例は下記の通りである。
(1)まず、検知部が、回転ロールの回転方向を識別することにより、識別情報を得る。この際、識別情報としては、回転方向が「時計回り」であるか、「反時計回り」であるかのいずれか一方である。
(2)次に、事前設定された回転ロールの正しい方向の参照情報と、検知部による識別情報とを照合する。参照情報は、その回転ロールに固有の情報である。例えば、参照情報が「時計回り」である場合、識別情報が「時計回り」の場合は判定としては「正(正転)」となる。一方、参照情報が「時計回り」である場合、識別情報が「反時計回り」の場合は判定としては「誤(逆転)」となる。
【0069】
判定部は、上述した(1)及び(2)の回転ロールの回転方向の正誤判定を少なくとも1回以上行いうる。中でも、判定部は、回転ロールの回転方向の正誤の判定を複数回行った後、最終判定を行うことが好ましい。例えば、何等かの理由により判定部において誤判定が生じた場合も、複数回判定を行った後、最終判定を行うことで、長尺ウェブの搬送時における不具合を正確に特定しうるからである。この場合、最終判定は、複数回の判定のうち、過半数が「正(正転)」となる場合、「正(正転)」と判定することが好ましく、複数回の判定のうち、全てが「誤(逆転)」となる場合、「誤(逆転)」と判定することが好ましい。例えば、図5に示すように、回転ロールに対する長尺ウェブの供給ミスが生じている場合、通常、回転ロールは常時逆転することから、全てが「誤(逆転)」となる場合、「誤(逆転)」と判定することで長尺ウェブの供給ミスを正確に把握しうる。
【0070】
回転ロールの回転方向の正誤の判定を複数回行う場合、判定回数は、例えば2回以上、好ましくは3回以上であり、好ましくは10回以下、より好ましくは7回以下、さらに好ましくは5回以下である。
【0071】
判定部における情報処理は、かかる処理を電子的な計算により実行しうる任意のコンピューターを用いて行いうる。例えば、「Raspberry Pi」を用いて処理しうる。
【0072】
搬送装置は、複数の回転ロール、マーキング部、検知部及び判定部を備えており、必要に応じて、任意の構成をさらに備えうる。
【0073】
搬送装置は、任意の構成として、例えば、計時部を備えることが好ましい。検知部とともに併用することにより、回転ロールの回転速度を検知しうるからである。例えば、検知部において、マーキング部において第1サブマーキング部が1回転する距離を検知し、計時部において、計時パルスを検知し、1回転の間の計時パルスのカウント数を図ることにより、回転速度を検知しうる。計時部としては、例えば、クリスタル発信機及びバイナリカウンタを含む高精度クロックを用いうる。
【0074】
また、搬送装置は、任意の構成として、例えば、長尺ウェブの搬送経路に配置され、長尺ウェブの欠陥を検知する検知部、搬送装置における駆動ロールの駆動を制御する制御部、時間基板等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0075】
〔5.長尺ウェブ〕
本実施形態におけるウェブとは、柔軟性を有するシート状の物品であり、具体例としては、樹脂フィルム、紙、布(不織布を含む)、金属箔等を挙げることができるが、特にこれに限定されない。本実施形態においては、ウェブとしては、中でも樹脂フィルムであることが好ましく、光学フィルムであることが好ましい。光学フィルムは、シワ、欠点、傷等の低減が高い精度で求められることから、搬送時における不具合の影響を受けやすいためである。
【0076】
光学フィルムとしては、光学フィルムとしては、例えば、位相差フィルム、偏光板の保護フィルム、偏光フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、集光フィルム、反射フィルム等が挙げられる。
【0077】
〔6.長尺ウェブの製造方法に係る各工程〕
本発明の一実施形態に係る長尺ウェブの製造方法は、長尺ウェブを搬送する工程を有し、長尺ウェブを搬送する工程は、上述した搬送装置を用いて、検知部により検知された識別情報と、事前設定された回転ロールの正しい回転方向の参照情報とを照合することにより、回転ロールの回転方向の正誤の判定を行うことを含む。
【0078】
本発明の一実施形態に係るにおいては、前記判定による回転方向に誤りが生じた場合、これを是正する工程をさらに有しうる。特に、回転方向の誤りは、長尺ウェブの供給不具合により生じやすことから、本実施形態の長尺ウェブの製造方法を用いることにより、長尺ウェブの供給不具合を早期発見することができ、効率良く長尺ウェブの搬送を効率良く行いうる。
【符号の説明】
【0079】
1 長尺ウェブ
10、110 搬送装置
11A~11C、111A~111E 回転ロール
20、201~203 マーキング部
21 第1サブマーキング部
22 第2サブマーキング部
23、24 ダミースペース部
30、301~303 検知部
40 欠陥検知部
41 カメラ
42 光源
51 第1スペース部
52 第2スペース部
R1 時計回り(の回転方向)
R2 反時計回り(の回転方向)
M 設計上の長尺ウェブの搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13