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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124013
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ゴム発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/08 20060101AFI20230830BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20230830BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20230830BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20230830BHJP
   C08L 11/00 20060101ALI20230830BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230830BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C08J9/08 CEV
C08K5/098
C08K7/02
C08L1/00
C08L11/00
B29C44/00
B29C44/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027543
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北 泰成
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊裕
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA02
4F074AA35
4F074AA36
4F074AC13
4F074AE04
4F074AG20
4F074BA12
4F074BC03
4F074CA23
4F074CC06Y
4F074CC42Y
4F074DA08
4F074DA09
4F074DA24
4F074DA33
4F074DA36
4F074DA39
4F074DA40
4F214AA46
4F214AB02
4F214AB25
4F214UA07
4F214UB01
4F214UF02
4J002AB012
4J002AC091
4J002EG026
4J002FA042
4J002FD012
4J002FD14
4J002FD15
4J002GC00
4J002GM00
4J002GM01
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】 優れた硬さ、強度、伸びを有し、且つ、異方性の小さいクロロプレンゴム発泡体を提供する。
【解決手段】 クロロプレンゴム100重量部に対し、平均繊維径が40nm以下のセルロースナノファイバーを0.01~0.90重量部含むゴム組成物の加硫物からなる発泡体を用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴム100重量部に対し、平均繊維径が40nm以下のセルロースナノファイバーを0.01~0.90重量部含むゴム組成物の加硫物からなる発泡体。
【請求項2】
セルロースナノファイバーが未変性であり、且つ、機械的処理のみにより解繊された、請求項1に記載の発泡体。
【請求項3】
クロロプレンゴムが、カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を3~7重量%含む、請求項1又は2に記載の発泡体。
【請求項4】
縦、横の寸法が等しい金型で加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値が1±0.02以内となる、請求項1~3のいずれかに記載の発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴムを含むゴム発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムは、各種合成ゴムの中でも各物性のバランスが良好であるため幅広い用途に使用されており、例えば、ベルト、ホース、ブーツ、エアスプリング、引き布、防振ゴム、手袋、接着剤などに使用されている。またその発泡体も耐靭性、断熱性、非吸水性、難燃性、耐候性などに優れる特徴を持つことから、ウェットスーツ、靴底、パッキン、防振材、シール材、緩衝材等様々な用途に用いられている。
【0003】
発泡体は未発泡のものより、同体積で軽量であることが大きな特徴である。発泡体ではないクロロプレンゴムの比重は補強材を添加しない配合で1.2前後であるが、発泡させることにより1.0未満とすることが可能であり、発泡剤の添加量や加硫条件を変更することによって任意の比重に調整することができる。しかし、発泡させることによってゴム中に気泡が含まれるため、機械的物性が低下するという問題を有しており、軽量で機械的物性が高く、且つ、安価な発泡体が求められている。
【0004】
このような発泡体の機械的物性を向上させるために、補強材としてセルロースナノファイバーを活用する試みが検討されている。しかしながら、セルロースナノファイバーは親水性であることから疎水性のゴム中での分散性が悪く、ゴム中でセルロースが凝集してしまい補強効果を発揮させることが困難である。
【0005】
例えば、特許文献1ではジエン系ゴムに未変性のセルロースナノファイバーを添加することにより、形状安定性、耐摩耗性等の機械的物性の向上を報告している。しかしながら、引張強度の改善が不十分であった。また、特許文献2においても天然ゴムや各種合成ゴムに未変性のセルロースナノファイバーを添加することにより、長時間荷重を加えて変形させると荷重を除いても変形が維持され嵩が減少する、へたり現象の改善について報告している。しかしながら、こちらも引張強度は改善されていない。一方、特許文献3では、アルキル、若しくはアルケニル無水コハク酸でエステル化したミクロフィブリル化した植物繊維を含有する発泡体が提案されており、優れた曲げ強度を持つ発泡体を得ることができているが、セルロースナノファイバーを変性させる工程を追加することによる価格の上昇と、更に、得られる発泡体の縦、横の寸法が等しい金型で加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値が大きくなることで、機械的物性に大きな異方性が生じてしまう問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-191007号公報
【特許文献2】特開2018-188514号公報
【特許文献3】特開2013-185085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は優れた機械的物性を有し、且つ、安価で異方性の小さなクロロプレンゴム発泡体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、このような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、クロロプレンゴムとセルロースナノファイバーを含むゴム組成物を加硫発泡して得られた発泡体が優れた機械的物性を有し、且つ、安価で小さな異方性を示すことを見出した。即ち、本発明の各態様は、以下に示す[1]~[5]である。
[1] クロロプレンゴム100重量部に対し、平均繊維径が40nm以下のセルロースナノファイバーを0.01~0.90重量部含むゴム組成物の加硫物からなる発泡体。
[2] セルロースナノファイバーが未変性であり、且つ、機械的処理のみにより解繊された、上記[1]に記載の発泡体。
[3] クロロプレンゴムが、カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を3~7重量%含む、上記[1]又は[2]に記載の発泡体。
[4] 縦、横の寸法が等しい金型で加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値が1±0.02以内となる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の発泡体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた機械的物性を有し、異方性の小さなゴム発泡体を安価に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の一態様であるゴム発泡体は、クロロプレンゴム100重量部に対し、平均繊維径が40nm以下のセルロースナノファイバーを0.01~0.90重量部含むゴム組成物の加硫物からなる発泡体である。
【0012】
クロロプレンゴムは、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体を重合し得られたゴムである。クロロプレンゴムには、メルカプタン変性クロロプレンゴムと動特性に優れる硫黄変性クロロプレンゴム、機械的物性に優れるキサントゲン変性クロロプレンゴムがある。硫黄変性クロロプレンゴムは耐屈曲き裂性に優れる特徴を持つが、引張疲労にはメルカプタン変性の方が優れる特徴を持つ。本発明においては、何れの変性種でも同様の効果が期待できる。
【0013】
クロロプレンゴムは、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体を乳化重合することにより得ることができる。
【0014】
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、硫黄の他に、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられ、このうち1種類以上を併用して用いることが可能であり、要求物性に応じて適時使用する。
【0015】
共重合可能な単量体量は特に限定するものではないが、クロロプレン重合体の特性を損なわない程度としてクロロプレンゴム100重量部に対し一般的に30重量部以下が用いられる。特に硫黄に関しては耐熱性と物性のバランスが良好となるよう、クロロプレン単量体100重量部に対し3重量部以下が好ましく、さらには1重量部以下が好ましい。
【0016】
クロロプレンゴムは、カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を3~7重量%含むことが好ましい。3重量%以上とすることで、クロロプレン重合時の乳化安定性に優れ、7重量%以下とすることで、加工性に優れ、品質が安定なゴム製品となる。
【0017】
クロロプレンゴムの乳化重合では、例えば、上記の単量体を乳化剤、水、重合開始剤、連鎖移動剤、その他安定剤等を混合し、所定温度にて重合を行い、所定の重合転化率で重合停止剤を添加し重合を停止する方法があげられる。
【0018】
乳化剤としては、カルボン酸のアルカリ金属塩やスルホン酸のアルカリ金属塩を等が挙げられ、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩、ポリカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系乳化剤、水溶性高分子化合物等があげられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等があげられる。これらは、1種類でも良く、2種類以上を含んでいても良いが、重合安定性、乾燥時の凝集性、及びゴムの性能の観点からカルボン酸のアルカリ金属塩を含む事が好ましく、なかでもロジン酸のアルカリ金属塩、更にはロジン酸のカリウム塩を含むことが好ましい。
【0019】
乳化剤の量は特に限定するものではないが、重合後に得られるクロロプレンゴムラテックスの安定性を考慮するとクロロプレンゴム100重量部に対し、3~10重量部が好ましい。また、そのうちカルボン酸のアルカリ金属塩は3~8重量部が好ましく、更には5~7重量部含むことが好ましい。
【0020】
重合液の安定性を維持するために、pH調節剤により、pHを11以上とすることが好ましい。これ以下ではカルボン酸のアルカリ金属塩が酸性化し、ラテックスの安定性が低下する。pH調節剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、アンモニア等の塩基性化合物等が挙げられ、ずれか1種類以上を単独または併用して用いることができる。
【0021】
乳化重合の開始剤としては、公知のフリーラジカル性物質、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、過酸化水素、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド等の無機又は有機過酸化物等を用いることができる。また、これらは単独又は還元性物質、例えば、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、有機アミン等との併用レドックス系で用いても良い。
【0022】
連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン、ハロゲン炭化水素、アルキルキサントゲンジスルフィド、アルキルキサントゲンポリスルフィド、硫黄等の分子量調節剤等があげられ、メルカプタン変性とするためには作業性の面からn-ドデシルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の量としては、分子量調整のため一般のラジカル重合で使用される量であれば特に限定するものではないが、得られる重合体の分子量やトルエン不溶分量を目的通りにし、さらに、浸漬成型により得られる加硫ゴムの柔軟性と良好な力学物性のため、連鎖移動剤以外の単量体混合物100重量%に対して0.01~1.0重量%であることが好ましい。
【0023】
重合温度は特に限定するものではないが、10~50℃の範囲が好ましい。
【0024】
重合終了時期は特に限定するものでは無いが、単量体の転化率を60%以上とすることで生産量が確保でき、また、95%以下とすることで、重合時間が長くなり過ぎないため、60~95%の範囲が生産性の面で好ましい。
【0025】
重合停止剤としては、通常用いられる停止剤であれば特に限定するものでなく、例えば、フェノチアジン、2,6-t-ブチル-4-メチルフェノール、ヒドロキシルアミン等が使用できる。
【0026】
硫黄を共重合した硫黄変性クロロプレンの場合は、続いて重合停止したラテックスに解膠剤及び解膠助剤を添加し適当なムーニー粘度になるまで解膠を行うことが可能である。解膠剤にはテトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド等のチウラム化合物が挙げられ、前記の乳化剤等を用いて乳化した状態で添加することができる。解膠反応開始剤としてはジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸アンモニウム等のチオカルバミン酸化合物等が挙げられる。
【0027】
セルロースナノファイバーは木材に含まれるセルロースの繊維を平均繊維径数ナノ~数十ナノレベルまで解繊したものである。本発明において、平均繊維径が40nm以下、好ましくは32nm以下のセルロースナノファイバーを使用する。平均繊維径を40nm以下とすることで、得られたゴム組成物の加硫からなる発泡体の、縦、横の寸法が等しい金型で加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値を、セルロースナノファイバーを添加しないゴム組成物の加硫からなる発泡体と同等レベルである、1±0.02以内とすることができる。
【0028】
また、化学変性によって疎水化されたセルロースナノファイバーは未変性のものに対して非常に高額になるため、未変性のものであることが好ましい。更に化学処理により、セルロースのヒドロキシメチル基がカルボン酸及びカルボン酸塩で変性されると、ゴム中でのセルロースナノファイバーの分散状態が悪化するため、セルロースナノファイバーはカルボン酸及びカルボン酸塩を有さないものが好ましい。
【0029】
本発明では、ゴム中でのセルロースナノファイバーの分散状態を向上させるため、化学処理を実施せず機械的処理のみにより解繊したセルロースナノファイバーが好ましい。
【0030】
さらにセルロースナノファイバーの1重量%の水分散液の表面張力が60mN/m以下であるセルロースナノファイバーを用いることが好ましい。このようなセルロースナノファイバーとしては、両親媒性を有するセルロースナノファイバーが挙げられる。両親媒性とは、セルロースナノファイバーが水との親和性が大きい親水部と水との親和性が小さい疎水部の両方を持ち合せていることで、特許第5419120号公報などに記載されているように、水懸濁試料を高速で対向衝突させることにより得ることが可能である。両親媒性を有することで、疎水性であるゴムとセルロースの親和性が高くなり、より少ない混合量で機械的物性に大きな向上効果が得られる。一般的に純水の表面張力は約72mN/mであるが、疎水性が大きくなるほど表面張力は小さくなる。セルロースナノファイバーの水分散液は1重量%濃度で表面張力が60mN/m以下であれば、両親媒性を有しゴムとの親和性が高くなる。
【0031】
セルロースナノファイバーの原料である木材等にはリグニンが含まれるが、リグニン量を多く含むセルロースナノファイバーはクロロプレンラテックスの安定性を損なう恐れがあることから、含まれるリグニン量は20重量%以下が好ましい。好ましくは10重量%以下であって、更に好ましくは5重量%以下である。セルロースの解繊処理は主に機械的処理によるものと、化学処理により各種官能基を付与し、機械処理を併用することで、より細いシングルナノレベルまで実施するものがある。
【0032】
ゴム組成物は、クロロプレンゴム100重量部に対し、セルロースナノファイバーを0.01~0.90重量部、好ましくは0.01~0.40重量部含む。セルロースナノファイバーの含有量が0.01重量部未満であると、得られる加硫発泡体の機械的物性に改善効果は無く、0.90重量部を超えると加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値が大きくなり、機械的物性に大きな異方性が生じてしまう。
【0033】
ゴム組成物は、クロロプレンラテックスにセルロースナノファイバーの水分散体を混合し、セルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液を作成し、セルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液から水を除去することにより得ることができる。
【0034】
クロロプレンラテックスは、クロロプレンゴムが乳化剤により水中に乳化分散しているものであれば特に制限されるものではなく、クロロプレンモノマーと共重合可能な不飽和単量体を乳化重合した乳化液や、クロロプレンゴムをトルエンなどの有機溶媒に溶解した後に水および乳化剤と混合することで乳化したものなどが挙げられる。
【0035】
クロロプレンゴムラテックスとセルロースナノファイバーの水分散体を混合する方法としては、特に制限はなく、プロペラ型の攪拌装置や、ホモミキサー、高圧ホモジナイザーなどを用い、クロロプレンラテックスとセルロースナノファイバーの水分散体が外観上均一(塊等が無いこと)になるまで混合とすることで得ることができる。
【0036】
セルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液からの水の除去方法(乾燥方法)としては、加熱乾燥や、酸や塩による凝集および凍結乾燥があるが、凝集させると乳化剤や凝固液や水分がゴムの内部に残存してしまうため、凍結によりゴムを析出(凍結凝固)させ、余分な乳化剤等を水洗除去してから熱風乾燥する方法が最も効率的で乾燥も容易であり好ましい。更には、ゴムが析出しやすくなるよう、セルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液のpHを10以下として凍結乾燥することが更に好ましい。
【0037】
セルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液から凍結凝固させ乾燥する方法において、セルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液の粘度は1000mPa・s以下であることが好ましく、更には600mPa以下が好ましい。粘度が1000mPa・sを超える場合、現行の製造設備における適合性が著しく低下し、ゴム組成物を得ることが困難となる。
【0038】
また、セルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液の固形分は20重量%以上とすることで、ゴムの強度が増大し、連続生産におけるハンドリングが向上し、粘度とのバランスから20重量%以上40重量%以下、更には25重量%以上35重量%以下が好ましい。
【0039】
本発明の一態様であるゴム発泡体は、通常のクロロプレンゴム同様の各種配合剤に加え、発泡剤を混練することによりゴム組成物を作製し、得られたゴム組成物を適切な加硫温度、加硫時間で加熱成形し、加硫発泡することにより得られる。得られたゴム発泡体は、同一配合でセルロースナノファイバーを含有しないクロロプレンゴム発泡体と比較して優れた機械的物性を示す。また、同一配合で平均繊維径が40nm以上のセルロースナノファイバーを含有するクロロプレンゴム発泡体と比較して同等の機械的物性を示し、且つ、縦、横の寸法が等しい金型で加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値を小さくすることが出来る。即ち、優れた機械的物性を示し、且つ、異方性もセルロースナノファイバーを含有しないクロロプレンゴム発泡体と同等であることから、従来配合処方より更に発泡倍率を上昇させ軽量化したゴム発泡体として使用することが可能で、そのゴム発泡体はウェットスーツ、靴底、パッキン、防振材、シール材、緩衝材等様々な用途により好適に用いることができる。
【実施例0040】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
<クロロプレンラテックスの作成>
単量体混合物としてクロロプレン100重量部に対して硫黄0.3重量部を加え、ロジン酸のカリウム塩4.0重量部、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物のナトリウム塩0.5重量部、水酸化ナトリウム0.05重量部及び正燐酸ナトリウム1.0重量部、水100重量部を含む乳化水溶液と混合攪拌し乳化させ、これに過硫酸カリウム1.0重量部、アントラキノン-β-スルホン酸ナトリウム0.01重量部、水30重量部からなる重合触媒をポンプにより一定速度で添加し重合を行なった。重合は重合転化率70%になるまで重合触媒を添加して行ない、ここにチオジフェニルアミン0.01重量部、4-t-ブチルカテコール、2,2’-メチレンビス-4-メチル-6-t-ブチルフェノール0.05重量部、ジエチルヒドロキシルアミン0.1重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05重量部、クロロプレン5.0重量部、水1.0重量部からなる重合停止剤を添加して重合を停止させた。続いて、これにテトラエチルチウラムジスルフィド2重量部のトルエン溶液をロジン酸カリウムで乳化した物、及びジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.3重量部を添加し、ムーニー粘度が60になるまで40℃で解膠を行った後、減圧下でスチームストリッピングにより未反応のクロロプレンを除去回収し、クロロプレンゴムラテックスを得た。
【0042】
<セルロースナノファイバー平均繊維径の測定>
セルロースナノファイバーを純水で0.1wt%濃度に薄めた後、ろ過・乾燥を実施した。こののち、オスミウムコートを施し、日本電子(株)製FE―SEM JSM―7100Fで倍率2万倍のSEM観察を実施した。得られた観察画像から繊維をランダムに100本選び出し、繊維径を測定してその平均値を平均繊維径とした。
【0043】
<セルロースナノファイバーを含むクロロプレンゴムの作成>
硫黄変性クロロプレンゴムラテックスに、セルロースナノファイバーの水分散体を所定量添加し、オートホモミキサー(プライミックス社製:PRIMIX)にて2,000rpmで10分間混合した後、凍結凝固によりポリマーを析出させ、乾燥させた。
【0044】
<ゴム組成物の作製>
セルロースナノファイバー含有硫黄変性クロロプレンゴム100.2重量部、或いは、硫黄変性クロロプレンゴム100重量部に対し、表1に示す重量部の酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製)3重量部、ステアリン酸(新日本理科(株)製)1重量部、サンタイトS(精工化学(株)製、Microcrystaline wax)2重量部、ノクラックAD-F(大内新興化学(株)製、老化防止剤)0.5重量部、ノクラック6C(大内新興化学(株)製、老化防止剤)0.5重量部、シーストS(東海カーボン(株)製、カーボンブラック)、白艶華CC(白石工業(株)製、炭酸カルシウム)15重量部、ネオN(天満サブ化工(株)製、ネオファチクス)18重量部、JSO aroma790(日本サン石油(株)製、アロマ油)25重量部、サンセン415(日本サン石油(株)製、ナフテン油)、酸化亜鉛(堺化学(株)製)5重量部、をオープンロール混練機にて混合した。それらを冷却後に硫黄(細井化学工業(株)製)1.0重量部、ノクセラーTS(大内新興化学(株)製、加硫促進剤)1重量部、ノクセラーD(大内新興化学(株)製、加硫促進剤)2重量部、セルマイクS(三協化成(株)製、発泡剤)6重量部をオープンロール混練機にて混合し、ゴム組成物を得た。
【0045】
<発泡体の作製>
得られたゴム組成物を縦、横の寸法が等しく、高さが3mmの四角推台形状の金型を用いて、140℃で13分のプレス条件にて加硫発泡させ、発泡体を作製した。
<発泡体の硬さ測定>
得られた発泡体の硬さをJIS K7312(1996)に従い、評価した。デュロメータにはタイプCを選択した。
【0046】
<発泡体の引張強度、伸び測定>
得られた発泡体の引張強度、伸びをJIS K7312(1996)に従い、評価した。ダンベル状試験片には3号形を選択し、引張速度500mm/分、23℃の条件にて評価した。試験片が切断した時の強度、伸びをそれぞれ記録した。
【0047】
<発泡体の比重測定>
得られた発泡体の密度をJIS K6268(1998)に従い評価し、得られた密度を水の密度で除することで比重を求めた。
【0048】
<発泡体の寸法測定>
上面87mm×87mm、底面76mm×76mm、高さ7mmの四角推台形状の金型を用い、加硫発泡終了後の1日後、及び7日後の上面、及び底面の縦、横寸法をそれぞれ測定した。次に、測定した横寸法を縦寸法で除することで、縦寸法を1とした時の横寸法の値を求めた。
【0049】
実施例1
硫黄変性クロロプレンゴム100部重量に対して、機械的解繊手段によって製造されたセルロースナノファイバーの水分散体(中越パルプ(株)製、グレード:C、固形分濃度:3重量%、平均繊維経:約32nm、リグニン含有量1%以下、未変性、両親媒性)を混合して10分間、上記の方法で攪拌しセルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液を得た。なお、セルロースナノファイバーの混合量は、固形分のゴム成分100重量部に対してセルロースの含有量0.2重量部となる量とした。
【0050】
このセルロースナノファイバーを含むクロロプレンゴムを上記方法に従ってセルロースナノファイバー含有硫黄変性クロロプレンゴム組成物及び加硫発泡体、寸法測定用加硫発泡体を得て、硬さ、及び引張強度、伸び、比重、寸法測定を実施した。結果を表1に示す。表1より、硬さは22、引張強度は2.8MPa、伸びは680%となり、後述するセルロースナノファイバーを含まない比較例1と比較して改善しており、良好な結果を示した。また、得られた発泡体の縦、横の寸法が等しい金型で加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値は1±0.02以内であり、比較例と大きな差は無かった。
【0051】
比較例1
セルロースナノファイバーを混合しなかったこと以外は実施例1と同様に硫黄変性クロロプレンゴムを上記方法に従って硫黄変性クロロプレンゴム組成物及び加硫発泡体、寸法測定用加硫発泡体を得て、硬さ、及び引張強度、伸び、比重、寸法測定を実施した。結果を表1に示す。硬さは18、引張強度は2.2MPa、伸びは600%であり、得られた発泡体の縦、横の寸法が等しい金型で加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値は1±0.02以内であった。
【0052】
比較例2
硫黄変性クロロプレンゴム100部重量に対して、機械的解繊手段によって製造されたセルロースナノファイバーの水分散体(中越パルプ(株)製、グレード:S1、固形分濃度:3重量%、平均繊維経:約50nm、リグニン含有量1%以下、未変性、両親媒性)を混合して10分間、上記の方法で攪拌しセルロースナノファイバー分散ゴムラテックス混合液を得た。なお、セルロースナノファイバーの混合量は、固形分のゴム成分100重量部に対してセルロースの含有量0.2重量部となる量とした。
【0053】
このセルロースナノファイバーを含むクロロプレンゴムを上記方法に従ってセルロースナノファイバー含有硫黄変性クロロプレンゴム組成物及び加硫発泡体、寸法測定用加硫発泡体を得て、硬さ、及び引張強度、伸び、比重、寸法測定を実施した。結果を表1に示す。表1より、硬さは21、引張強度は2.9MPa、伸びは690%であり、比較例1と比較して改善しており、良好な結果を示した。しかしながら、得られた発泡体の縦、横の寸法が等しい金型で加硫発泡させた発泡体の縦辺を1とした時の横辺の値は1±0.02を超えており、実施例1、比較例1より横方向に伸長したサンプルが得られた。
【0054】
【表1】