IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-単結晶基板の製造方法 図1
  • 特開-単結晶基板の製造方法 図2
  • 特開-単結晶基板の製造方法 図3
  • 特開-単結晶基板の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124031
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】単結晶基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 33/00 20060101AFI20230830BHJP
   C30B 29/30 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C30B33/00
C30B29/30 B
C30B29/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027576
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100134441
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 由利
(72)【発明者】
【氏名】牧野 晃也
(72)【発明者】
【氏名】西生 秀峰
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB02
4G077AB10
4G077BC32
4G077BC37
4G077CF10
4G077FG12
4G077FG13
4G077HA11
4G077HA12
(57)【要約】
【課題】製造する基板の所望の方位と引き上げ方向の方位に差がある酸化物単結晶を酸化物単結晶基板に加工する際に、高い生産効率を得つつ、歩留まりを向上させること。
【解決手段】単結晶基板の製造方法は、育成された単結晶の引き上げ方向の結晶方位と単結晶基板の所望する方位が異なる酸化物単結晶より単結晶基板に加工する単結晶基板の製造方法であって、育成された単結晶を円柱形状のインゴットに加工する円筒加工工程を備え、円筒加工工程は、円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して5度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
育成された単結晶の引き上げ方向の結晶方位と単結晶基板の所望する方位が異なる酸化物単結晶より単結晶基板に加工する単結晶基板の製造方法であって、
育成された単結晶を円柱形状のインゴットに加工する円筒加工工程を備え、
前記円筒加工工程は、前記円柱形状のインゴットの中心軸が前記単結晶基板の所望の方位に対して5度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することを含む、単結晶基板の製造方法。
【請求項2】
前記円筒加工工程は、前記円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して1度以上3度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することを含む、請求項1記載の単結晶基板の製造方法。
【請求項3】
前記円筒加工工程後、前記円柱形状に加工されたインゴットの上面と下面が前記単結晶基板の所望する方位と平行になるように平面研削する平面面出し工程を含む、請求項1乃至請求項2記載の単結晶基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、CZ法と略記する場合がある)による酸化物単結晶から酸化物単結晶基板に加工する酸化物単結晶基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル酸リチウム(以下、LTと略記する場合がある)単結晶やニオブ酸リチウム(以下、LNと略記する場合があるもいう)単結晶の酸化物単結晶は圧電性を有しており、圧電性を利用したSAW(表面弾性波)デバイスの需要が大きく、市場は爆発的な成長をみせている。中でも、携帯電話に代表される移動体通信用途が大きい。
【0003】
SAWデバイスの元となるLT単結晶やLN単結晶は、CZ法と呼ばれる引き上げ法により育成される場合が多い。LT単結晶やLN単結晶からデバイス用基板を切り出し、研磨し、電極を形成し、チップに裁断され、パッケージングを経て、SAWデバイスは完成する。尚、特に記さない限り、本明細書でいう結晶は単結晶を意味する。以下、LT単結晶を事例に説明する。
【0004】
CZ法による単結晶育成法では、通常、高融点の貴金属ルツボを用い、電気炉中で単結晶は育成され、育成後に所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出される。
【0005】
育成された結晶は、歪除去のためのアニール処理、単一分極化処理を経て、加工工程へ引き渡される。加工工程では、育成された結晶が円筒研削にて最終製品であるウエハの直径よりもやや太めの円柱に加工され、マルチワイヤーソーにより基板状に切断される場合が多い。切断により形成された基板は、最終的に外周のべべリング加工により製品直径に仕上げられ、かつ、面取り仕上げが施される。なお、LT基板は、例えば直径4~6インチのサイズが流通している。
【0006】
ところで、育成された結晶に対するSAWデバイス用途での要求は、結晶の品質の要求は当然ながら、結晶の方位も重要な要求項目となる。LT単結晶の場合、図1に示すように結晶のa軸をX軸、c軸をZ軸、X軸とZ軸に直交する軸をY軸と呼んでおり、SAWデバイスの特性は、基板10の面方位、すなわち基板10の面(主面)からの垂線が向く方向により変化する。
【0007】
一般に、SAWデバイスに好適なLT基板の面方位は、図2に示すように、基板10の面がX軸と平行で、かつ、直交座標系のY軸をX軸の回りに右回り(時計回り)にα°(20°≦α°≦50°)回転させた範囲とされる。この基板10は、一般にRYカット(Rotated Y cut)基板と総称され、例えば、上記回転角(α°)が42°の場合は42°RYカット基板と呼ばれ、42°RYと表記される。なお、図2および図3において、Y軸をX軸周りに、α°で示す回転角11に回転させる方向をRY方向と呼ぶ。
【0008】
このようにLT単結晶は多様な基板が求められ、例えば上記の回転角(α°)を0.5°刻みで種々のカット方位の基板を作り分けることによって、微妙な特性差を狙うことも珍しくない。そのため、育成した結晶から円柱状のインゴットへ加工する際に、最終的に生産する基板の主面方位が所望の方位になるように研削している。しかし極端に言えば、36°RYで育成されたLT単結晶から、42°RYカット基板を作製しようとすれば、製品として使用できない部分が多くなるため、相応の加工ロスを生じることになってしまう。
【0009】
このため、従来から、最終的に生産する基板の面方位が所望とする面方位になるように結晶を引き上げている。例えば下記特許文献1においては、育成する単結晶が所望の方位を得るための種結晶の方位の選定方法が示されている。
【0010】
なお、CZ法は、種結晶12の結晶方位に倣って単結晶を成長させる方法であるため、所望とするRYカット基板の面方位に対応して種結晶12も方位毎に必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2018-145078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1では、最適な方位の結晶を得るための種結晶の作成方法が公開されているが、求める方位に応じた種結晶の作り分けが必要となる。また、顧客のニーズに柔軟に対応するためには、特定の方位に育成済みの結晶をインゴットに加工する際に、方位を調整できることが好ましい。
【0013】
しかしながら、前述したように既に育成された結晶より所望の方位に加工する場合、製造する基板の所望の方位と引き上げ方向の方位に差があるため、結晶を円筒研削する際に、製品として使用できない部分が多くなるため、相応の加工ロスが生じてしまい、歩留まりが低下してしまう。
【0014】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、製造する基板の所望の方位と引き上げ方向の方位に差がある酸化物単結晶を酸化物単結晶基板に加工する際に、高い生産効率を得つつ、歩留まりを向上させる酸化物単結晶基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様によれば、育成された単結晶の引き上げ方向の結晶方位と単結晶基板の所望する方位が異なる酸化物単結晶より単結晶基板に加工する単結晶基板の製造方法であって、育成された単結晶を円柱形状のインゴットに加工する円筒加工工程を備え、円筒加工工程は、円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して5度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することを含む、単結晶基板の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の態様の単結晶基板の製造方法において、円筒加工工程は、円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して1度以上3度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することを含むことが好ましい。また、円筒加工工程後、円柱形状に加工されたインゴットの上面と下面が単結晶基板の所望する方位と平行になるように平面研削する平面面出し工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円筒研削工程において、円筒加工工程は、円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して5度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することで、単結晶をインゴットに加工する際の歩留まりが向上するとともに、インゴットをスライスした後の基板の形状が楕円形となる程度も制限することができるため、上記べべリング工程での影響を許容範囲内とすることができ、効率よく基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】基本のYカット基板に係る概略斜視図である。
図2】基本のRYカット基板に係る概略斜視図である。
図3】SAWデバイスに好適なLTやLN単結晶の方位を示す説明図である。
図4】本実施形態と従来法の円筒研削についての説明図である。B1~B4は本実施形態の方法を示し、A1~A4は従来法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更することができる。なお、各図面においては、適宜、一部又は全部が模式的に記載され、縮尺が変更されて記載される。また、以下の説明において、「A~B」との記載は、「A以上B以下」を意味する。
【0020】
本実施形態の単結晶基板の製造方法は、育成された単結晶の引き上げ方向の結晶方位と単結晶基板の所望する方位が異なる酸化物単結晶より単結晶基板に加工する単結晶基板の製造方法であって、育成された単結晶を円柱形状のインゴットに加工する円筒加工工程を備え、円筒加工工程は、円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して5度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することを含む。
【0021】
まず、本実施形態に関する酸化物単結晶基板は、酸化物単結晶より加工したものである。酸化物単結晶は、例えば、ニオブ酸リチウムLiNbO単結晶(LN)、タンタル酸リチウムLiTaO単結晶(LT)等の圧電性酸化物単結晶である。本実施形態における酸化物単結晶は、上記LN、LTのように、育成された単結晶の引き上げ方向の結晶方位と単結晶基板の所望する方位が異なるケースがある酸化物単結晶であるのが好ましい。以下、LT単結晶を酸化物単結晶の代表例として説明する。
【0022】
LT単結晶は、チョクラルスキー法(CZ法)などの単結晶育成方法により育成される。チョクラルスキー法とは、原料粉末を溶融して得られた融液に、種結晶を浸けて引き上げることにより単結晶を成長させる育成方法であり、例えば高周波の誘導加熱装置等を用いて行うことで、大型の単結晶を安定的に製造することができる。育成されたLT単結晶インゴットには、単一分極化の処理(ポーリング)が施される。このポーリング処理は、育成したLT単結晶をキュリー点以上の温度、例えば600~700℃に加熱し、Z軸方向に、例えば200~500Vの電圧を印加することで、約0.5~2時間かけて単結晶を分極化させるものである。
【0023】
次に、一般的な単結晶から単結晶基板に加工する、単結晶基板の製造方法について、簡単に説明する。この単結晶基板の製造方法は、円筒加工工程と、スライス工程と、べべリング工程と、ラップ工程と、ポリッシュ工程とを有している。以下、各工程について詳細に説明する。
【0024】
育成で得られた単結晶に対して、まずは、円筒加工工程が実施される。育成で得られた単結晶は、上面部に肩形状(肩部)、下面部に円錐状の突起があり、側面部は育成時に直径を制御しているものの凹凸形状となっている(図4のA1、B1参照)。円筒加工工程は、育成で得られた単結晶の上下面及び側面を研削し、円柱状の単結晶インゴット(インゴット)に加工する工程である。
【0025】
円筒加工工程の次は、スライス工程が実施される。インゴットをワイヤーソー等により円盤状の基板になるようにスライスする工程である。べべリング工程は、スライス工程で得られた円盤状の基板の外周部の端面の面取りを行う工程である。べべリング工程は、例えば回転可能な基板研削用ステージ上に保持させ、基板を回転させたままステージを回転砥石に接触させることにより、スライス工程で得られた基板の外周部の端面の面取りを行う。ラッピング工程は、基板の表裏両面を遊離砥粒を用いてラッピング加工を施す工程である。最後は、ポリッシュ工程である。基板の片面または両面を鏡面研磨する。これにより単結晶基板が得られる。
【0026】
次に、育成された単結晶の引き上げ方向の結晶方位と単結晶基板の所望する方位が異なる単結晶より単結晶基板に加工する工程について説明する。上述したように、特定の方位に育成済みの結晶をインゴットに加工する際に方位を調整できることが好ましく、このような方法として、既に育成された結晶から所望の方位の単結晶基板に加工する場合、製造する基板の所望の方位と引き上げ方向の方位に差があるため、結晶を円筒研削する際、製品として使用できない部分が多くなるため、相応の加工ロスが生じてしまい、歩留まりが低下してしまうという問題があった。
【0027】
育成された単結晶の引き上げ方向の結晶方位と単結晶基板の所望する方位が異なる単結晶より単結晶基板に加工する場合、まず、育成された単結晶の育成方向に対し、円筒加工工程において、円柱形状のインゴットの上下面が所望する方位となる様に加工する。ただし、図4のA1~A4等に示すように、単結晶から所定の径の基板を得る場合、単結晶より得られる円柱形状のインゴットの径が基板の径よりも大きい必要があり、その径を有しているインゴットの部分はインゴット全体の一部であり、インゴットの高さ全体に対して使用可能な部分の高さが限定されるため、製造したインゴットのロスが大きくなる。特に、単結晶の引き上げ方向の結晶方位と所望する基板の面方位とがなす角度が大きくなるとロスもより大きくなる。前記角度は、15°以下であるのが好ましい。前記角度が15°を超える結晶より単結晶基板を加工する場合、ロスが大きく生産性が劣化する。
【0028】
そこで、本実施形態に係る単結晶基板の製造方法では、図4のB1に示すように、円筒加工工程において、単結晶基板の所望する方位に対し、引き上げ方向に5度以下引き上げ軸方向に傾けて加工することを特徴としている。
【0029】
以下詳細に説明する。図4のA1~A4は、従来の所望する方位に合わせ上下面を加工した例を示す図である。上下面の垂直方向が所望する方位となる。図4のB1~B4は、本実施形態において、所望の方向に対して引き上げ軸方向に傾けて上下面を加工した例を示す図である。従来の図4のA1では、単結晶より所望の方位に合わせて加工しているため、加工された上下の面には、いずれも、単結晶基板の所望の方位が露出する。これに対し、本実施形態を示す図4のB1では、単結晶基板の所望の方位に対して引き上げ軸方向に傾けて加工しているため、上下面は、所望の方位が出ていない。
【0030】
次に、上下面が加工された結晶の側面を円筒加工する。図4のA2~A3は、従来の所望する方位に合わせた結晶において、側面を加工した図である。図4のB2~B3は、本実施形態における、基板の所望の方位に対して引き上げ軸方向に傾けて加工した結晶において、側面を加工した例を示す図である。従来の図4のA2~A3では、図に示すように、単結晶より所望する方位に傾けているため、有効な径を得られる部分は小さくなり径が不足する部分が多くロスが大きい。これに対し、本実施形態を示す図4のB2~B3では、上述のように引き上げ軸方向に傾けて側面加工しているため、図4のA2に比べ、有効な径を得られる部分は多くなる。更に、本実施形態の場合、単結晶の側面の円筒加工では、引き上げ軸方向に対しての側面の傾き量が、図4のA1、B1に示すように従来に対して、小さくなるため、側面の段差が小さくなり側面を加工する量が少なくなるため、加工時間を短縮することが可能である。
【0031】
本実施形態では、円筒加工工程後、上下面の方位を出す、平面面出し工程を行う。平面面出し工程では、図4のB3~B4に示すように、引き上げ軸方向に対しての傾いた部分の上下面を全面が所望の方位になるように表面加工するのが好ましい。これにより、上下面が所望の方位になる斜円柱状のインゴットが作製される。
【0032】
その後の工程は、従来の工程と同様となる。上述のスライス工程において、この図4のB4に示すようなインゴットをワイヤーソー等で円盤状の基板になるようにスライスする。スライス工程の際の加工方向は、上下面と平行になるように設定し行う。なお、インゴットは、斜円柱形状を有しており、上下面と平行になるように加工して得られ円盤状基板は、従来の円柱形状のインゴットを切断した際の形状に比べ、楕円形上なる。この際、引き上げ軸方向に対して傾きが大きいほど、楕円形状になりやすい。
【0033】
次は、べべリング工程である。べべリング工程では、スライス工程で得られた円盤状の基板の外周部の端面の面取りを行う。べべリング工程は、スライス工程で得られた円盤状の基板を回転させ砥石に接触させることにより、基板の外周部の端面の面取りを行う。この時、スライスされた円盤状の基板形状は楕円形状である。楕円形状の基板をベベリング加工で円形にするには、べべリング加工での負荷が増大し、加工時間を長大化させ、基板に割れや欠け等の不良を誘発する。特に、引き上げ軸方向に対して傾きが6°以上の場合、スライス工程で得られた基板の楕円形状(楕円の程度)が大きくなるため、ベベリング加工での加工時間が増加し、基板の欠け不良も多発する。このため、引き上げ軸方向に対して傾きは、5°以下が好ましく、1°~3°の範囲であれば、べべリング加工において、ほぼ、従来の真円形状の加工と同一の生産性で加工することが可能でありより好ましい。
【0034】
べべリング加工の後は、ラッピング工程で表裏両面を遊離砥粒を用いてラッピング加工し、ポリッシュ工程で片面または両面を鏡面研磨する。これにより単結晶基板が得られる。
【0035】
以上のように、本実施形態の単結晶基板の製造方法は、育成された単結晶の引き上げ方向の結晶方位と単結晶基板の所望する方位が異なる酸化物単結晶より単結晶基板に加工する単結晶基板の製造方法であって、育成された単結晶を円柱形状のインゴットに加工する円筒加工工程を備え、円筒加工工程は、円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して5度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することを含む。本実施形態の単結晶基板の製造方法によれば、所望する方位に対し、引き上げ方向に5度以下引き上げ軸方向に傾けて加工することで、所望する方位にて加工する方法に比べ、歩留まりを向上させることができ、例えば、基板となる数量が約5%~8%向上することが可能となる。更に、本製造方法では、円筒加工工程について研削加工の角度を変えるなど容易に実施することができ、効率よく生産することが可能となる。このように、本実施形態の単結晶基板の製造方法よれば、円筒研削工程において、円筒加工工程は、円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して5度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することで、単結晶をインゴットに加工する際の歩留まりが向上するとともに、上記べべリング工程での影響を許容範囲内とすることができ、効率よく基板を製造することができる。
【実施例0036】
以下、本発明の実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
チョクラルスキー法により直径6インチ、38°RYのLT単結晶の育成を行った。直動部の長さは75mmであった。
【0038】
次に、上記単結晶より、直径6インチの50°RYのLT単結晶基板を作製した。
【0039】
まず、円筒加工工程を行った。育成された単結晶の上面部に肩形状、下面部に円錐状の突起を切断した。この時、単結晶の上下面の結晶方向が単結晶の引き上げ方向が38°RYに対し、10°傾けた方向(製造する単結晶基板の方位(基板の所望の方位)50°RYより2°引き上げ軸方向に傾けた方向)とした。次に、円筒加工工程により得られた結晶の側面を円筒状に研削した。円筒加工により得られる円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶の引き上げ方向38°RYに対し、10°傾けた方向になるように加工した。
【0040】
次に、円筒加工工程により、円柱状に加工されてインゴットに対して、平面面出し工程を行った。円柱状に加工されてインゴットの上下面の結晶方向が50°RYになるように平面研削を行いインゴット上下面の面出しをした。加工されたインゴットは、斜円柱形状となった。
【0041】
次は、スライス工程でインゴットをワイヤーソーで遊離砥粒を用いて円盤状の基板になるようにスライスした。べべリング工程では、スライス工程で得られた円盤状の基板を、回転可能な基板研削用ステージ上に保持させ、基板を回転させたままステージを回転砥石に接触させて基板の外周部の端面の面取りを行った。ラッピング工程では、基板の表裏両面を遊離砥粒を用いてラッピング加工した。ラッピング工程の後は、ポリッシュ工程を行い、基板の片面を鏡面研磨した。これにより鏡面研磨面を有する単結晶基板を得た。べべリング工程では、スライスされた基板が楕円形状になっていたが加工時不具合の発生はなかった。なお、実施例1では、上記と同様の操作による試験を5本の単結晶にて行った。結晶方向が50°RYの基板が得られる結晶の有効長は、平均で約58mmであった。
【0042】
(比較例1)
チョクラルスキー法により直径6インチ、38°RYのLT単結晶の育成を行った。直動部の長さは75mmであった。次に、上記単結晶より、直径6インチの50°RYのLT単結晶基板を作製した。
【0043】
まず、円筒加工工程を行った。育成された単結晶の上面部に肩形状、下面部に円錐状の突起を切断した。この時、単結晶の上下面の結晶方向が単結晶の引き上げ方向が38°RYに対し、12°傾けた方向(単結晶基板の方向(基板の所望の方位)である50°RYと同一方向)とした。次に、円筒加工工程により得られた結晶の側面を円筒研削した。円筒加工により得られる円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶の引き上げ方向38°RYに対し、12°傾けた方向になるように加工した。
【0044】
次は、スライス工程でインゴットをワイヤーソーで遊離砥粒を用いて円盤状の基板になるようにスライスした。べべリング工程では、スライス工程で得られた円盤状の基板を、回転可能な基板研削用ステージ上に保持させ、基板を回転させたままステージを回転砥石に接触させて基板の外周部の端面の面取りを行った。ラッピング工程では、基板の表裏両面を遊離砥粒を用いてラッピング加工した。ラッピング工程の後は、ポリッシュ工程で、基板の片面を鏡面研磨した。これにより鏡面研磨面を有する単結晶基板を得た。べべリング工程では、スライスされた基板が真円形状で加工時不具合の発生はなかった。なお、比較例1では、上記と同様の操作による試験を5本の単結晶にて行った。結晶方向が50°RYの基板が得られる結晶の有効長は、平均で約54.5mmであり、実施例1より少なかった。
【0045】
(比較例2)
比較例2では、実施例1に対し、単結晶の上下面の結晶方向が単結晶の引き上げ方向38°RYに対し、4°傾けた方向(単結晶基板の方向50°RYより8°引き上げ軸方向に傾けた方向)とした。その他は、実施例1と同様とした。比較例2では、スライスされた基板が楕円形状になっていて、べべリング工程でチッピング不具合が多数発生した。
【0046】
(まとめ)
このように、比較例1に対して、本実施例1では、歩留まり(有効長)を6%向上させることができることが確認された。
【0047】
また、比較例2に示すように、上記傾ける角度が6°を超える場合、べべリング工程でチッピング不具合が多数発生している。
【0048】
以上、実施例及び比較例の結果から、本実施形態の単結晶基板の製造方法よれば、円筒研削工程において、円筒加工工程は、円柱形状のインゴットの中心軸が単結晶基板の所望の方位に対して5度以下の角度で引き上げ軸方向に傾けて加工することで、単結晶をインゴットに加工する際の歩留まりが向上するとともに、上記べべリング工程での影響を許容範囲内とすることができ、効率よく基板を製造することができることが確認される。
【0049】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態等で説明した態様に限定されない。上述の実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態等で引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
図1
図2
図3
図4