(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124113
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】洗浄用治具、及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230830BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20230830BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01L21/304 622P
H01L21/304 643C
H01L21/304 622H
B24B55/06
B23Q11/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027707
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】楊 云峰
【テーマコード(参考)】
3C047
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
3C047FF04
3C047FF19
5F057AA21
5F057DA01
5F057DA38
5F057FA13
5F057FA36
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB13
5F157BB23
5F157BB32
5F157BB35
5F157BB37
5F157CC11
5F157DC90
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高強度で実効的、かつ、短時間で低コストにチャックテーブルを洗浄する洗浄用治具及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】上面が平坦な多孔質部材4と、多孔質部材4を上方に露出させつつ収容する枠体と、を含むチャックテーブル2を洗浄する洗浄用治具1であって、表側に形成された流入口から裏側に形成された噴出口5bに至る流体供給路5が形成された本体3を有し、本体3の裏側に多孔質部材4の上面と対面する面を有し、本体3の裏側の噴出口5bの周囲には溝が形成されており、本体3には、溝に通じた流体排出路7が形成されている。また、チャックテーブル2を洗浄する洗浄方法であって、噴出口を有する洗浄用治具1を噴出口5bが多孔質部材4に対面するように配設し、噴出口5bから高圧の流体を噴出させ、多孔質部材4を通して高圧の流体を多孔質部材4の底部に到達させて該チャックテーブル2を洗浄する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が平坦な多孔質部材と、該多孔質部材を上方に露出させつつ収容する枠体と、を含むチャックテーブルを洗浄する洗浄用治具であって、
表側に形成された流入口から裏側に形成された噴出口に至る流体供給路が形成された本体を有し、
該本体の該裏側に該多孔質部材の上面と対面する面を有し、
該本体の該裏側の該噴出口の周囲には溝が形成されており、
該本体には、該溝に通じた流体排出路が形成されていることを特徴とする洗浄用治具。
【請求項2】
該裏側の該面を該多孔質部材に対面させ該噴出口から高圧の流体を噴出させたとき、一部の高圧の該流体が該多孔質部材の底部に到達するとともに、他の一部の該流体が該本体及び該多孔質部材の間を進行して該溝に至り該流体排出路から排出されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄用治具。
【請求項3】
上面が平坦な多孔質部材と、該多孔質部材を上方に露出させつつ収容する枠体と、を含むチャックテーブルを洗浄する洗浄方法であって、
噴出口を有する洗浄用治具を該噴出口が該チャックテーブルの該多孔質部材に対面するように配設する配設ステップと、
該噴出口から高圧の流体を噴出させる噴出ステップと、
該多孔質部材を通して高圧の該流体を該多孔質部材の底部に到達させて該チャックテーブルを洗浄する洗浄ステップと、を備えることを特徴とする洗浄方法。
【請求項4】
該流体は、水及びエアーの一方もしくは両方であることを特徴とする請求項3記載の洗浄方法。
【請求項5】
該洗浄ステップでは、該噴出口から高圧の該流体を噴出しながら、該チャックテーブルは該流体を吸引することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を加工する加工装置に設置される多孔質部材を備えたチャックテーブルの洗浄に使用される洗浄用治具、及びチャックテーブルを洗浄する洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造工程では、まず、半導体ウェーハの表面にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等の複数のデバイスを形成する。次に、ウェーハを裏面側から研削して所定の厚みに薄化し、裏面側を研磨して平坦化し、ウェーハをデバイス毎に分割して個々のデバイスチップを形成する。
【0003】
ウェーハ等の被加工物を研削する研削装置、研磨する研磨装置、及び分割する分割装置等の加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工ユニットと、を備える。チャックテーブルは、例えば、被加工物と同様の平面形状を有する平板状の多孔質部材と、この多孔質部材を上方に露出させつつ収容する枠体と、を含む。枠体の内部には一端が多孔質部材に接続される吸引路が形成されており、吸引路の他端には吸引ポンプ等の吸引源が接続される。
【0004】
加工装置で被加工物を加工する際、被加工物及び加工ユニットに純水等の加工液が供給され、加工で生じる加工屑が加工液に取り込まれて除去される。しかしながら、加工装置で次々に被加工物を加工すると、加工屑を取り込んだ加工液がチャックテーブルに付着する。そこで、従来、ブラシ等の洗浄具をモーターにより回転させつつ回転するチャックテーブルに当接させることによりチャックテーブルの表面から加工屑を取り除いていた。
【0005】
しかしながら、チャックテーブルの多孔質部材に加工屑が入り込む場合がある。また、チャックテーブルの製造工程において被加工物が載る上面を所定の形状に整えるためにチャックテーブル自体が上面から研削されるが、この工程で生じる加工屑も多孔質部材に入り込む。
【0006】
多孔質部材に入り込んだ加工屑は、ブラシでは容易に取り除くことができない。多孔質部材に加工屑が入り込んでいると吸引路が塞がれるため、チャックテーブルによる被加工物の吸引が不十分となるおそれがある。また、加工後の被加工物をチャックテーブルから取り外す際にチャックテーブルの吸引路を逆流させて多孔質部材から水またはエアーを噴出させるが、これにより多孔質部材に入り込んでいた加工屑の一部が噴き出て被加工物に付着してしまう。
【0007】
また、次に加工する被加工物をチャックテーブルに載せる際、多孔質部材の上面に噴き出た加工屑が被加工物とチャックテーブルで挟まれてしまい、被加工物とチャックテーブルの間に隙間が生じてしまう。この状態で被加工物を加工すると、隙間から加工水が入り込んでチャックテーブルの汚染がさらに進行する。その上、加工水の供給を一時停止したときに研削水の進入が終わり空気のみが吸引されるようになり、チャックテーブルの吸引圧が大きく変化するため、加工装置で吸引圧エラーが検出されるようになる。
【0008】
そこで、チャックテーブルに進入した加工屑を除去するために、高圧エアー及び液体が混合された混合流体をチャックテーブルの上面に噴射する洗浄装置が開発された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、高圧エアー及び液体で構成される混合流体をチャックテーブルに噴射しただけでは、多孔質部材の上部に衝突したときに混合流体の勢いが失われたため、多孔質部材の内部や多孔質部材よりも下方に入り込んだ加工屑を除去しきれなかった。すなわち、混合流体の作用領域が小さかった。また、混合流体を噴射させるための構成を加工装置等に組み込む必要があり、コストがかかっていた。
【0011】
そこで、チャックテーブルの吸引路に水を逆流させて多孔質部材から水を噴出させ、その後、吸引路を吸引するとの工程を繰り返して50時間程度実施し、その後にブラシを使用して5日間洗浄するとの洗浄方法が実施されていた。ただし、この方法をもってしても、そして、この時間をかけたとしても、チャックテーブルに入り込んだ屑を完全には除去できなかった。
【0012】
そのため、加工装置においてチャックテーブルの吸引圧エラーが頻繁に検出される問題は十分に解消されていなかった。また、加工装置から搬出された被加工物に加工屑の付着が確認された問題も十分には改善されなかった。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高強度で実効的かつ短時間で低コストのチャックテーブルの洗浄を実現する洗浄用治具、及び洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によると、上面が平坦な多孔質部材と、該多孔質部材を上方に露出させつつ収容する枠体と、を含むチャックテーブルを洗浄する洗浄用治具であって、表側に形成された流入口から裏側に形成された噴出口に至る流体供給路が形成された本体を有し、該本体の該裏側に該多孔質部材の上面と対面する面を有し、該本体の該裏側の該噴出口の周囲には溝が形成されており、該本体には、該溝に通じた流体排出路が形成されていることを特徴とする洗浄用治具が提供される。
【0015】
好ましくは、該裏側の該面を該多孔質部材に対面させ該噴出口から高圧の流体を噴出させたとき、一部の高圧の該流体が該多孔質部材の底部に到達するとともに、他の一部の該流体が該本体及び該多孔質部材の間を進行して該溝に至り該流体排出路から排出される。
【0016】
本発明の他の一態様によると、上面が平坦な多孔質部材と、該多孔質部材を上方に露出させつつ収容する枠体と、を含むチャックテーブルを洗浄する洗浄方法であって、噴出口を有する洗浄用治具を該噴出口が該チャックテーブルの該多孔質部材に対面するように配設する配設ステップと、該噴出口から高圧の流体を噴出させる噴出ステップと、該多孔質部材を通して高圧の該流体を該多孔質部材の底部に到達させて該チャックテーブルを洗浄する洗浄ステップと、を備えることを特徴とする洗浄方法が提供される。
【0017】
好ましくは、該流体は、水及びエアーの一方もしくは両方である。
【0018】
より好ましくは、該洗浄ステップでは、該噴出口から高圧の該流体を噴出しながら、該チャックテーブルは該流体を吸引する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係る洗浄用治具、及び洗浄方法によるチャックテーブルの洗浄工程では、高圧の流体を多孔質部材の底部にまで到達させる。高圧の流体が多孔質部材の底部に到達すると、多孔質部材の下面から枠体の収容凹部の底に高圧の流体が噴出する。そのため、枠体に溜まる屑に高圧の流体が作用して屑が十分に除去される。また、高圧の流体が多孔質部材の下面に到達する過程において、多孔質部材の内部に溜まる屑も除去される。
【0020】
このように、本発明の一態様に係る洗浄用治具、及び洗浄方法によるチャックテーブルの洗浄工程では、チャックテーブルを高強度で実効的に洗浄できる。そして、高圧の流体をチャックテーブルの隅々まで作用できると、短時間の洗浄で屑を十分に除去でき、洗浄にかかるコストも低くなる。
【0021】
したがって、本発明の一態様によると、高強度で実効的かつ短時間で低コストのチャックテーブルの洗浄を実現する洗浄用治具、及び洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(A)は、チャックテーブルを模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、チャックテーブルを模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(A)は、洗浄用治具の表側を模式的に示す斜視図であり、
図2(B)は、洗浄用治具の裏側を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、洗浄用治具の裏側を模式的に示す平面図であり、
図3(B)は、洗浄用治具の断面を模式的に示す断面図であり、
図3(C)は、洗浄用治具の他の断面を模式的に示す断面図である。
【
図5】従来の洗浄方法を模式的に示す断面図である。
【
図6】噴出ステップ及び洗浄ステップを模式的に示す断面図である。
【
図7】多孔質部材の底部及び枠体を拡大して模式的に示す断面図である。
【
図8】実施形態に係るチャックテーブルの洗浄方法の各ステップのフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係る洗浄用治具及び、洗浄方法で洗浄の対象となるチャックテーブルの使用態様について説明する。
図1(A)は、チャックテーブル2を模式的に示す斜視図である。
【0024】
チャックテーブル2は、半導体ウェーハ等の被加工物を加工する加工装置に設置される。チャックテーブル2は、被加工物の吸引保持に使用される。加工装置は、チャックテーブル2に吸引保持された被加工物を加工する。
【0025】
被加工物は、例えば、シリコン、SiC(シリコンカーバイド)、若しくは、その他の半導体等の材料で形成されたウェーハ、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板である。被加工物の表面は格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)により複数の領域に区画されており、該複数の領域のそれぞれにはICやLSI等のデバイスが形成されている。最終的に、被加工物が分割予定ラインに沿って分割されることで、個々のデバイスチップが形成される。
【0026】
被加工物は、裏面が研削されることで薄化される。研削された被加工物の裏面には、研削痕と呼ばれる微小な凹凸形状が形成される。このまま被加工物が分割予定ラインに沿って分割されてデバイスチップが製造されると、該デバイスチップに微小な凹凸形状が残り、該デバイスチップの抗折強度を低下させる要因となる。そこで、裏面が研削された被加工物の裏面側を研磨し、該裏面の微小な凹凸を除去して平坦化する。すると、デバイスチップに該微小な凹凸形状が残らない。
【0027】
チャックテーブル2は、被加工物を分割する分割装置、被加工物を研削する研削装置、または、被加工物を研磨する研磨装置等の加工装置に組み込まれて使用される。各種の加工装置は、チャックテーブル2で被加工物を吸引保持し、チャックテーブル2に保持された被加工物を加工する。
【0028】
次に、チャックテーブル2について説明する。
図1(B)は、チャックテーブル2を模式的に示す断面図である。チャックテーブル2は、上面4aが平坦な多孔質部材4と、多孔質部材4を上方に露出させつつ収容する枠体6と、を含む。多孔質部材4は、セラミックス等の材料で形成された多孔質な板状の部材である。多孔質部材4の平面形状及び大きさは、加工装置で加工される被加工物の平面形状及び大きさに合わせて適宜設計される。被加工物の形状が円板状であれば、多孔質部材4も円板状の形状とされる。
【0029】
枠体6の上面6a側には、多孔質部材4を収容できる収容凹部6cが形成されている。収容凹部6cの底部には、多孔質部材4を支持する台金部材12が配設されている。収容凹部6cの形状及び大きさは多孔質部材4と概略一致している。多孔質部材4は、枠体6の収容凹部6cに収容され台金部材12に支持された状態で枠体6に固定される。多孔質部材4が枠体6に収容されると、多孔質部材4の上面4aが上方に露出される。この多孔質部材4の上面4aがチャックテーブル2の保持面となる。
【0030】
枠体6の内部には、下面6bと、収容凹部6cと、を連通する吸引路8が形成されている。吸引路8は、収容凹部6cの下方で複数の支路14に分岐しており、各支路14が収容凹部6cの底部の各所に通じている。吸引路8及び支路14は、台金部材12により囲まれている。
【0031】
枠体6の下面6bに通じた吸引路8には、チャックテーブル2が設置される加工装置や加工装置が設置される工場等に設けられた吸引源10aが接続される。吸引源10aは、例えば、真空ポンプやエジェクター等で構成される。被加工物を多孔質部材4の上面4aに載せ、吸引源10aを作動させると、吸引路8、各支路14、及び多孔質部材4を通じて吸引源10aで生じた負圧が被加工物に作用する。すると、被加工物がチャックテーブル2で吸引保持される。
【0032】
また、枠体6の下面6bに露出した吸引路8には、チャックテーブル2が設置される加工装置や加工装置が設置される工場等に設けられた流体供給源10bが接続されてもよい。チャックテーブル2で保持した被加工物を加工した後、被加工物がチャックテーブル2に貼り付き、被加工物を搬出しにくい場合がある。そこで、流体供給源10bを作動させて水等の流体を吸引路8等から逆流させ、多孔質部材4の上面4aから噴出させる。これにより被加工物が浮き上がり、チャックテーブル2からの被加工物の搬出が容易となる。
【0033】
また、流体供給源10bは、被加工物のチャックテーブル2からの搬出以外の目的で使用されてもよい。例えば、被加工物が載せられていないときに流体供給源10bを作動させると、多孔質部材4に入り込んだ塵の一部を上面4a側に噴出できる。ただし、この方法では、すべての塵等を多孔質部材4の外側に排出させることは困難である。
【0034】
多孔質部材4を収容凹部6cに収容してチャックテーブル2を製造するとき、多孔質部材4は接着材16により台金部材12に固定される。そして、多孔質部材4の上面4a及び枠体6の上面6aが研削されて均一な高さに平坦化される。このときに加工屑が発生し、多孔質部材4の内部に入り込む。
【0035】
また、加工装置で被加工物を加工する際、被加工物及び加工ユニットに純水等の加工液が供給され、加工で生じる加工屑が加工液に取り込まれて除去される。しかしながら、加工装置で次々に被加工物を加工すると、加工屑を取り込んだ加工液がチャックテーブル2に付着して、一部の加工屑が多孔質部材4に入り込む。
【0036】
そこで、本実施形態の一態様に係る洗浄用治具、及び洗浄方法によりチャックテーブル2を洗浄することで、チャックテーブル2の内部に入り込んだ屑を除去する。次に、本実施形態の一態様に係る洗浄用治具について説明する。
【0037】
図2(A)は、洗浄用治具1の本体3の表側3aを模式的に示す斜視図であり、
図2(B)は、洗浄用治具1の本体3の裏側3bを模式的に示す斜視図である。
図3(A)は、洗浄用治具1の本体3の裏側3bを模式的に示す平面図であり、
図3(B)及び
図3(C)は、洗浄用治具1の本体3の断面を模式的に示す断面図である。洗浄用治具1は、表側3aに形成された流入口5aから裏側3bに形成された噴出口5bに至る流体供給路5が形成された本体3を有する。
【0038】
本体3は、例えば、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)樹脂、ASA(アクリレート、スチレン、アクリロニトリル)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル樹脂等の材料により形成される。ただし、本体3の材料はこれに限定されない。本体3は、3Dプリンターや射出成型機等により製造される。または、樹脂材料で形成されたブロック体から不要部分を除去することにより製造されてもよい。ただし、本体3の製造方法はこれに限定されない。
【0039】
本体3には、表側3aに形成された流入口5aから裏側3bに形成された噴出口5bに至る流体供給路5が形成されている。本体3には、単数または複数の流体供給路5と、各流体供給路5に対応した単数または複数の流入口5a及び噴出口5bと、が形成される。各図には、6本の流体供給路5が形成される場合を例に本体3が模式的に示されている。しかしながら、流体供給路5の数はこれに限定されない。
【0040】
流体供給路5の数は、例えば、洗浄用治具1が使用される加工装置等に設けられた高圧の流体の供給系統の数に合わせて決定されるとよい。そして、各流体供給路5の流入口5aには、それぞれ、高圧の流体の各供給系統が配管により接続されるとよい。チャックテーブル2をより実効的に洗浄したい場合、洗浄用治具1に可能な限り多くの供給系統を接続することが望まれる。そこで、洗浄用治具1には、高圧の流体の接続可能な供給系統の数で流体供給路5が形成されることが好ましい。
【0041】
ここで、本体3の表側3aにおける複数の流入口5aの配置には特に制限はないが、可能な限り互いの距離が近くなる配置であることが望ましい。ただし、一つの流入口5aに高圧の流体の供給系統に繋がる配管を接続したときに、他の流入口5aへの他の配管の接続が妨げられないことが必要である。そのため、互いに隣接する流入口5aは、配管の接続に必要な距離以上に離れていることが必要である。
【0042】
本体3は、裏側3bに平坦な面を有する。洗浄用治具1を使用してチャックテーブル2を洗浄する際に洗浄用治具1をチャックテーブル2に載せたとき、本体3の裏側3bのこの平坦な面が多孔質部材4の上面4aと対面する。本体3の裏側3bには、流体供給路5の数だけ噴出口5bが形成される。表側3aから裏側3bまで最短距離で流体供給路5を形成する場合、裏側3bにおける噴出口5bの配置は、表側3aにおける流入口5aの配置の反転配置となる。ただし、噴出口5bの配置はこれに限定されない。
【0043】
なお、本体3を貫く流体供給路5は直線状でなくてもよく、流入口5aから噴出口5bに至る途中で湾曲していてもよい。すなわち、噴出口5bの配置は、流入口5aの配置に対応していなくてもよく、流入口5aの配置とは無関係に決定されてもよい。
【0044】
本体3の裏側3bの噴出口5bの周囲には、溝9が形成されている。例えば、溝9は、本体3の裏側3bの外周に沿って形成されており、本体3の裏側3bにおいて噴出口5bを取り囲む。ここで、本体3の裏側3bにおいて、各噴出口5bは溝9に接しない。溝9の幅及び深さには制限はなく、溝9が後述の機能を発揮できる限りにおいて適宜決定される。
【0045】
本体3には、溝9に通じた流体排出路7が形成されている。流体排出路7の一端は溝9に通じ、他端は本体3の表側3aに通じる。本体3に形成される流体排出路7の数には特に限定はない。
【0046】
例えば、本体3が箱状または矩形状である場合、本体3の裏側3bが略長方形となる。この場合、溝9が裏側3bの外周に沿った長方形状に形成される。そして、流体排出路7は、溝9の角部に形成される。ただし、溝9の形状及び流体排出路7の位置はこれに限定されない。
【0047】
洗浄用治具1を加工装置等で使用する場合、
図4に示す通り流体供給路5の流入口5aには配管26が接続される。その一方で、本体3の表側3aにおいて流体排出路7には何も接続されず、流体排出路7が大気開放される。ただし、流体排出路7に図示しない吸引源が接続されてもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係る洗浄方法について説明する。本実施形態に係る洗浄方法は、チャックテーブル2を洗浄して屑を除去する方法であり、例えば、各図に示す洗浄用治具1が使用されて実施される。すなわち、下記の説明は、本実施形態に係る洗浄用治具1の使用方法の説明である。
【0049】
図8は、本実施形態に係る洗浄方法の各ステップの流れを説明するフローチャートである。本実施形態に係る洗浄方法では、まず、噴出口5bを有する洗浄用治具1を噴出口5bがチャックテーブル2の多孔質部材4に対面するように配設する配設ステップS10を実施する。
図4は、配設ステップS10を模式的に示す斜視図である。
【0050】
配設ステップS10が実施される際、
図4に示す通り予め各流入口5aに配管26を接続しておく。配管26の一端には、水及びエアーの一方または両方を高圧で供給できる高圧の流体の供給系統(不図示)が接続される。好ましくは、該高圧の流体の供給系統は、洗浄流体として高圧の水を供給できる。
【0051】
配設ステップS10では、洗浄用治具1の本体3の裏側3bの平坦な面を多孔質部材4の上面4aに対面させつつ、多孔質部材4に洗浄用治具1を載せる。例えば、作業者は、洗浄用治具1を手で持ち、多孔質部材4の上に洗浄用治具1を位置付ける。このとき、洗浄用治具1が多孔質部材4に接してもよく、または、洗浄用治具1がわずかに多孔質部材4から浮いていてもよい。
【0052】
次に、噴出口5bから高圧の流体を噴出させる噴出ステップS20を実施する。すなわち、高圧の流体の供給系統を作動させ、配管26を通して流体供給路5の流入口5aに高圧の流体を供給する。すると、高圧の流体が流体供給路5を進み、噴出口5bに達し、噴出口5bから本体3の下方に向けて高圧の流体が噴出する。
【0053】
なお、本実施形態に係る洗浄方法では、配設ステップS10が噴出ステップS20よりも後に実施されてもよい。この場合、噴出口5bから高圧の流体を噴出する洗浄用治具1がチャックテーブル2の多孔質部材4に載せられる。このときに高圧の流体が多孔質部材4に衝突して周囲に飛散するため、配設ステップS10の後に噴出ステップS20が実施されることが好ましい。
【0054】
ここで、噴出口5bから噴出する高圧の流体の圧力は、大気圧よりも高い。高圧の流体の圧力は、例えば、2気圧以上5気圧以下とされるとよい。所定の目的で加工装置等に高圧の流体の供給系統が設けられているとき、当該目的のために調圧された流体がそのまま洗浄用治具1に供給されてもよい。好ましくは、洗浄用治具1に供給され噴出口5bから噴出する流体の圧力は、3気圧程度である。ただし、流体の圧力はこれに限定されない。
【0055】
また、噴出口5bから噴出する流体の流量は、例えば、10L/min以上30L/min以下とされるとよい。所定の目的で加工装置等に高圧の流体の供給系統が設けられているとき、この供給系統から供給できる最大の流量で流体が供給されることが好ましい。噴出口5bから噴出する流体の量が多いほどチャックテーブル2を実効的に洗浄できる。好ましくは、高圧の流体の流量は、20L/min程度とされる。
【0056】
配設ステップS10及び噴出ステップS20を実施すると、噴出口5bから噴出した高圧の流体が多孔質部材4に進入し、チャックテーブル2が洗浄される。次に、多孔質部材4を通して高圧の流体を多孔質部材4の底部に到達させてチャックテーブル2を洗浄する洗浄ステップS30について説明する。
【0057】
まず、比較のため、従来実施されていたチャックテーブル2の洗浄の一例について説明する。
図5は、従来実施されていたチャックテーブル2の洗浄の様子を模式的に示す断面図である。従来、例えば、チャックテーブル2の多孔質部材4の上方に噴射ノズル18を位置付け、水及びエアーが混合された高圧の混合流体20を噴射ノズル18から多孔質部材4の上面4aに向けて噴射してチャックテーブル2を洗浄していた。
【0058】
噴射ノズル18から噴射された混合流体20は、大気中を進行して多孔質部材4の上面4aに衝突する。このとき、多孔質部材4は強い衝撃を受けるが、一部の混合流体20は多孔質部材4に入り込まずに周囲に飛散する。
図5には、飛散した流体22が模式的に示されている。また、多孔質部材4に入り込んだ一部の混合流体20は、その勢いを急速に失って大気圧の単なる水となる。
【0059】
そのため、高圧の混合流体20がその状態で作用する範囲は、多孔質部材4の上面4a近傍の極めて限定された範囲のみとなる。
図5では、高圧の混合流体20が多孔質部材4を実効的に洗浄する領域24aが斜線により模式的に示されている。多孔質部材4の上面4aから離れた領域は実効的に洗浄されないため、屑等が残りやすくなる。
【0060】
そして、従来の方法では、多孔質部材4の下面4bからは大気圧の水が流れ落ちるだけとなっていた。そのため、チャックテーブル2の枠体6の収容凹部6cの底に配された
図1に示す台金部材12や吸引路8、支路14等には高圧の混合流体20が届かず、これらが十分には洗浄されなかった。
【0061】
チャックテーブル2を洗浄する際に吸引路8に接続された吸引源10aを作動させても、多孔質部材4の噴射ノズル18から噴射された混合流体20が衝突する領域の外で負圧が漏れていた。そのため、吸引源10aで生じた負圧が勢いを失った水に実効的な洗浄力を取り戻させることはなかった。
【0062】
特に、台金部材12及び多孔質部材4を接着する接着材16の周囲には屑が留まりやすく、この屑が除去されにくかった。そして、被加工物をチャックテーブル2から搬出する際、流体供給源10bを作動させて水等の流体を多孔質部材4の上面4aから噴き出させるときに、接着材16の周囲や多孔質部材4に滞留した屑の一部が流体に取り込まれていた。そして、流体が多孔質部材4の上面4aから噴き出されたときに被加工物に屑が付着していた。
【0063】
これに対して、本実施形態に係る洗浄方法における洗浄ステップS30では、高圧の流体を多孔質部材4の底部に到達させ、多孔質部材4の下面4bから枠体6の収容凹部6cの底に高圧の流体を噴出させる。
図6は、洗浄ステップS30を模式的に示す断面図である。次に、本実施形態に係る洗浄方法における洗浄ステップS30について詳述する。
【0064】
洗浄ステップS30では、洗浄用治具1の噴出口5bから噴出した高圧の流体20aが、洗浄用治具1の本体3及び多孔質部材4の上面4aの僅かな隙間に供給される。そして、高圧の流体20aの一部が該隙間を多孔質部材4の上面4aに沿って、噴出口5bから離れる方向に進行するとともに、高圧の流体20aの他の一部が多孔質部材4の内部に進む。このとき、高圧の流体20aは、洗浄用治具1の本体3に押さえられており大気に接しないため、圧力の低下が生じにくい。
【0065】
そのため、多孔質部材4に進む高圧の流体20aは圧力を概ね維持しつつ下面4bに向けて進行する。この過程において多孔質部材4に含まれていた屑等に高圧の流体20aが作用し、屑等が除去される。
図6では、高圧の流体20aが多孔質部材4を実効的に洗浄する領域24bが斜線により模式的に示されている。そして、実効的な圧力を保ちつつ高圧の流体20aは多孔質部材4の下面4bに到達する。
【0066】
別の観点から説明すると、洗浄用治具1は、高圧の流体20aの圧力の低下を本体3で押さえ込む。そして、多孔質部材4に含まれる無数の細孔それ自体が高圧の流体20aの伝達路として機能するようになり、下面4bに高圧の流体20aを伝達させる。そのため、多孔質部材4の下面4bから下方に向けて、高圧の流体20aが噴出する。
【0067】
ただし、多孔質部材4の底部に到達する高圧の流体20aの圧力は、噴出口5bから噴出されたときの圧力を完全に維持している必要はない。多孔質部材4の底部に到達する高圧の流体20aの圧力が大気圧を超えていれば、従来の方法よりも強くチャックテーブル2を洗浄できる。もちろん、高圧の流体20aの圧力損失が少ないほどチャックテーブル2がより実効的に洗浄される。
【0068】
このように、本体3の裏側3bを多孔質部材4に対面させ噴出口5bから高圧の流体20aを噴出させたとき、一部の高圧の流体20aが多孔質部材4の底部に到達する。その一方で、噴出口5bから噴出した後に多孔質部材4に進入しなかった高圧の流体20aの他の一部は、本体3の裏側3bの面及び多孔質部材4の上面4aの間を進行して溝9に至る。そして、溝9の中を進行して流体排出路7に進み、流体排出路7から本体3の表側3aに排出される。
【0069】
また、多孔質部材4に進入しなかった高圧の流体20aのさらに他の一部は、溝9にも入らずにそのまま多孔質部材4の上面4aの上を進行し、本体3と多孔質部材4の隙間から外に噴出する。
【0070】
図6には、本体3の外側に噴出した高圧の流体28,30が模式的に示されている。高圧の流体28,30は、このときに初めて大気に触れ、圧力が急速に低下していく。なお、多孔質部材4に進入しなかった高圧の流体20aは、本体3及び多孔質部材4の間を適度な間隔に保つ。そのため、本体3が多孔質部材4に接触して本体3が損耗することはなく、本体3の損耗に起因する屑の発生等もない。
【0071】
例えば、噴出口5bから噴出した高圧の流体20aのすべてを多孔質部材4に進入させようとすると、高圧の流体20aの噴出口5bからの噴出に伴う反発力が大きくなり、これにより本体3が不安定に大きく浮き上がる。この場合、本体3及び多孔質部材4が大きく離間され、多孔質部材4に進む高圧の流体20aの圧力が低下しやすくなる。これに対して、高圧の流体20aのすべてが多孔質部材4に進入せず、一部の高圧の流体20aが適度に抜けると、本体3及び多孔質部材4の間の隙間が適度に維持される。
【0072】
なお、洗浄用治具1の本体3に溝9及び流体排出路7が形成されていない場合、本体3及び多孔質部材4の間の隙間から大気中に極めて強い勢いで流体28が噴出する。すると、チャックテーブル2の周囲に流体が飛散し周囲を汚染してしまう上、作業者にも流体が噴射されてしまい作業性が悪くなる。これに対して、洗浄用治具1の本体3に溝9及び流体排出路7が形成されていると、流体排出路7から適度に高圧の流体20aが排出されるため、本体3及び多孔質部材4の間の隙間から外側に飛散する流体の勢いを抑制できる。
【0073】
図7には、枠体6の収容凹部6cの底部において、多孔質部材4の下面4bから下方に噴出した高圧の流体20aが模式的に示されている。下面4bから下方に噴出された高圧の流体20aは、多孔質部材4の下方に滞留する屑32を強力に除去する。
【0074】
特に、接着材16の周囲には屑32が滞留しやすくこれが諸問題の原因の一つとなっていた。そして、洗浄ステップS30ではこの屑32に高圧の流体20aが作用して屑32が洗い流され、屑32を含む高圧の流体20aは支路14及び吸引路8を通じて吸引源10aに吸引される。そのため、チャックテーブル2は、極めて強力に洗浄される。
【0075】
洗浄ステップS30では、作業者は洗浄用治具1を手で持ちつつ、洗浄用治具1を多孔質部材4の上面4a上を移動させる。このとき、噴出口5bからの高圧の流体20aの噴出により洗浄用治具1の本体3が僅かに浮き上がるため、洗浄用治具1は多孔質部材4の上面4aに接触せず滑るように移動する。すなわち、洗浄用治具1の移動がスムーズである上、本体3が多孔質部材4に接触して削られ屑が生じるとの問題が回避される。
【0076】
作業者は、多孔質部材4の上面4aの全域に繰り返し洗浄用治具1を移動させる。これにより、多孔質部材4の各所に高圧の流体20aが供給され、チャックテーブル2の各所が洗浄される。洗浄用治具1を使用してチャックテーブル2を洗浄すると、極めて短時間かつ容易にチャックテーブル2を洗浄できる。
【0077】
従来、例えば、チャックテーブル2の吸引路8に水を逆流させて多孔質部材4の上面4aから水を噴出させ、その後、吸引路8を吸引するとの工程を繰り返して50時間程度実施し、その後にブラシを使用して5日間洗浄するとの洗浄方法が実施されていた。しかしながら、この方法でこの時間をかけても、チャックテーブル2に入り込んだ屑を完全には除去できなかった。
【0078】
これに対して、洗浄用治具1を利用した洗浄方法では、洗浄用治具1を移動させつつ洗浄ステップS30を10分間程度実施しただけでチャックテーブル2に入り込んだ屑をほぼ完全に除去できた。そのため、加工装置において、屑に起因するチャックテーブル2の吸引圧エラーの発生頻度が激減した。また、チャックテーブル2で保持された被加工物を加工した後、吸引路8を逆流させて水を多孔質部材4の上面4aから噴出させたときに被加工物へ付着する屑の量も激減した。
【0079】
以上に説明する通り、本実施形態に係る洗浄用治具1及び洗浄方法によると、チャックテーブル2を高強度で実効的に洗浄できる。そのため、チャックテーブル2に屑がほぼ残らず、屑の残留に起因する不具合を抑制できる。その上、チャックテーブル2の洗浄に要する時間が大幅に短縮され、節約された時間の分だけ洗浄に使用される高圧の流体20aの量も低減されるため、洗浄コストも極めて低くなる。
【0080】
ここで、洗浄用治具1は、洗浄効果及び作用機構が全く異なるものの、チャックテーブル2の洗浄に従来使用されていたブラシと同様に多孔質部材4の上面4aを移動しながらチャックテーブル2を洗浄する。そこで、洗浄用治具1をウォーターブラシと名付けることも可能である。ただし、洗浄用治具1の構成及び使用態様は、この名称に基づいて限定されることはない。
【0081】
なお、本発明は、上記の実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、配管26を通して洗浄用治具1に提供され噴出口5bから噴出する高圧の流体20aが水である場合を例に説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0082】
高圧の流体20aは、エアーでもよい。また、水及びエアーが混合された混合流体でもよい。高圧の流体20aにエアーが含まれると、高圧の流体20aの圧力をより高くできる。その一方で、高圧の流体20aにエアーが含まれない場合、多孔質部材4を進行中に高圧の流体20aの圧力が低下しにくくなる。
【0083】
また、上記の実施形態では、加工装置や工場設備に設けられた他の目的に使用される供給系統から配管26を通して高圧の流体20aを洗浄用治具1に供給する場合について説明した。また、洗浄用治具1を利用したチャックテーブル2の洗浄を主に作業員の手作業により実施される場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0084】
すなわち、加工装置は、チャックテーブル2を任意のタイミングですぐに洗浄できるように、洗浄用治具1及び専用の供給系統を含む専用の洗浄機構を備えてもよい。そして、この洗浄機構は多孔質部材4の上面4aの上で洗浄用治具1を移動させる移動機構を備えてもよく、加工装置はこの洗浄機構によりチャックテーブル2の洗浄を自動的に実施してもよい。
【0085】
この場合、流体の供給系統の接続を手作業で切り替える必要もなく、作業員が加工装置の加工室を開ける必要もない。そのため、チャックテーブル2の洗浄作業を少ない手間でより短時間に実施でき、外部から汚染物質が加工室に進入することもなく、加工室から外部に屑や洗浄に使用された流体が拡散することもない。
【0086】
なお、上記実施形態では、6本の流体供給路5が洗浄用治具1の本体3に形成され、洗浄用治具1に6本の配管26が接続される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、洗浄用治具1には1本の流体供給路5が形成され1本の配管26が接続されてもよい。この場合においても、本体3の裏側3bの噴出口5bの周囲を本体3が覆っていれば、高圧の流体20aを多孔質部材4の底部に進行できる。
【0087】
また、上記実施形態では、洗浄用治具1の本体3の裏側3bが平坦な面となっている場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、本体3の裏側3bは厳密に平坦でなくてもよく、本体3が裏側3bに凹凸形状を有していてもよい。例えば、多孔質部材4の上面4aの上に洗浄用治具が配置されたとき、裏側3bの溝9よりも外側の領域においてその他の領域よりも本体3が多孔質部材4に近くなる態様であれば、高圧の流体20aが大気に触れにくくなり、圧力低下を抑制できる。
【0088】
なお、チャックテーブル2の洗浄は、加工装置にチャックテーブル2が装着されているときに実施されてもよい。また、チャックテーブル2の洗浄は、加工装置の外部で加工装置から搬出されたチャックテーブル2に対して実施されてもよい。
【0089】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0090】
1 洗浄用治具
3 本体
3a 表側
3b 裏側
5 流体供給路
5a 流入口
5b 噴出口
7 流体排出路
9 溝
2 チャックテーブル
4 多孔質部材
4a,6a 上面
4b,6b 下面
6 枠体
6c 収容凹部
8 吸引路
10a 吸引源
10b 流体供給源
12 台金部材
14 支路
16 接着材
18 噴射ノズル
20 混合流体
20a,22,28,30 流体
24a,24b 領域
26 配管
32 屑