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特開2023-124128液体吐出装置、制御装置、液体吐出システム、液体吐出方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124128
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置、制御装置、液体吐出システム、液体吐出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20230830BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230830BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027727
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】若狭 凌生
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC93
4D075AC94
4D075CA48
4D075DB20
4D075DC01
4D075DC12
4D075DC21
4D075DC27
4D075DC30
4D075EA06
4D075EA07
4D075EA33
4D075EA45
4F041AA01
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA36
4F042AA01
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA12
4F042BA25
4F042CB08
4F042CB10
4F042DH09
4F042ED03
(57)【要約】
【課題】均一性に優れた膜を形成可能な液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体により対象物の表面に膜を形成する液体吐出装置であって、複数のノズルそれぞれから前記液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドと前記対象物とを少なくとも相対移動させる駆動機構と、前記ヘッドによる前記液体の吐出を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体により対象物の表面に膜を形成する液体吐出装置であって、
複数のノズルそれぞれから前記液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドと前記対象物とを少なくとも相対移動させる駆動機構と、
前記ヘッドによる前記液体の吐出を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する、液体吐出装置。
【請求項2】
前記制御部は、次式により前記飛翔角θでの前記液体吐出量Mを決定する、請求項1に記載の液体吐出装置。
M=M/cosθ
(Mは、前記飛翔角θが0度である場合の前記液体吐出量を表す。)
【請求項3】
前記駆動機構は、前記飛翔方向と、重力方向と、がなす角度であるヘッド角度を変化させ、
前記制御部は、前記飛翔角と、前記複数のノズルそれぞれにおける前記ノズルと前記対象物との間の距離である対象距離と、前記ヘッド角度と、に基づき、前記液体吐出量を決定する、請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれにおける前記ノズルと前記対象物との間の距離である対象距離に基づき、前記液体を吐出するタイミングである液体吐出タイミングを決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ノズルと前記対象物との相対移動軌跡を、前記ヘッドと前記対象物との相対移動方向に沿った吐出位置同士の間隔である吐出間隔により分割した分割点ごとにおいて、前記対象距離から前記液体吐出タイミングを決定する、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記対象距離と、前記ヘッドと前記対象物との相対移動速度と、に基づき、前記液体吐出タイミングを決定する、請求項4または請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記ヘッドは、前記複数のノズルを個別に開閉することにより、前記複数のノズルそれぞれから前記対象物に前記液体を吐出する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
複数のノズルそれぞれから吐出した液体により対象物の表面に膜を形成するヘッドによる前記液体の吐出を制御する制御装置であって、
前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する吐出量決定部を有する、制御装置。
【請求項9】
複数のノズルそれぞれから対象物に液体を吐出するヘッドを有する液体吐出装置と、
前記ヘッドと前記対象物とを少なくとも相対移動させる駆動機構と、
前記ヘッドによる前記液体の吐出を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する、液体吐出システム。
【請求項10】
液体により対象物の表面に膜を形成する液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、
ヘッドにより、複数のノズルそれぞれから前記液体を吐出し、
駆動機構により、前記ヘッドと前記対象物とを少なくとも相対移動させ、
制御部により、前記ヘッドによる前記液体の吐出を制御し、
前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する、液体吐出方法。
【請求項11】
液体により対象物の表面に膜を形成する液体吐出装置に実行させるプログラムであって、
ヘッドにより、複数のノズルそれぞれから前記液体を吐出し、
駆動機構により、前記ヘッドと前記対象物とを少なくとも相対移動させ、
制御部により、前記ヘッドによる前記液体の吐出を制御し、
前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する、
処理を前記液体吐出装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、制御装置、液体吐出システム、液体吐出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体により対象物の表面に膜を形成する液体吐出装置が知られている。このような液体吐出装置は、対象物の表面に塗装を施す用途等に使用される。
【0003】
液体吐出装置として、曲面を有する対象物に液体を吐出するために、ヘッドと対象物との相対移動軌跡に沿った吐出位置同士の間隔と、相対移動速度と、に基づいて得られる印刷速度に対応したタイミングにより液体を吐出するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体吐出装置では、均一性に優れた膜を形成することが求められる。
【0005】
本発明は、均一性に優れた膜を形成可能な液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体により対象物の表面に膜を形成する液体吐出装置であって、複数のノズルそれぞれから前記液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドと前記対象物とを少なくとも相対移動させる駆動機構と、前記ヘッドによる前記液体の吐出を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、均一性に優れた膜を形成可能な液体吐出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を例示する図である。
図2】実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を例示するブロック図である。
図3】実施形態に係るヘッドの構成を例示する斜視図である。
図4図3の平面S1により切断したヘッドの断面図である。
図5】ヘッドを説明する図であり、図5(a)は圧電駆動方式ヘッドを示す図、図5(a)はバルブジェット方式ヘッドを示す図である。
図6】制御部のハードウェア構成例のブロック図である。
図7】第1実施形態に係る制御部の機能構成を例示するブロック図である。
図8】第1実施形態に係る液体吐出量の決定方法を示す図であり、図8(a)は飛翔角0度の場合を示す図、図8(b)は飛翔角θの場合を示す図である。
図9】第1実施形態に係る液体吐出タイミングの決定方法を示す図であり、図9(a)は相対移動軌跡の分割を示す図、図9(b)は対象距離を示す図である。
図10】第1実施形態に係る制御部による処理例を示すタイミング図であり、図10(a)は相対移動距離を示す図、図10(b)はパルス信号を示す図、図10(c)一のノズルと吐出タイミングを示す図、図10(d)は他のノズルの吐出タイミングを示す図である。
図11】第1実施形態に係る制御部による処理例を示すフロー図である。
図12】第2実施形態に係る制御部の機能構成を例示するブロック図である。
図13】第2実施形態に係る液体吐出量の決定方法を説明する図である。
図14】第2実施形態に係る液体吐出タイミングの決定方法を示す図であり、図14(a)は相対移動開始位置を示す図、図14(b)は理想着弾位置を示す図、図14(c)は開始着弾位置を示す図、図14(d)は相対移動終了位置を示す図である。
図15】第2実施形態に係る制御部による処理例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る液体吐出装置について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための液体吐出装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
[実施形態]
<液体吐出装置10の全体構成例>
図1および図2を参照して液体吐出装置10の全体構成を説明する。図1および図2は実施形態に係る液体吐出装置10の全体構成を例示する図であり、図1は概略図、図2はブロック図である。
【0011】
図1および図2に示すように、液体吐出装置10は、制御部1と、駆動機構2と、ヘッド3と、を有する。液体吐出装置10は、インクジェット方式によりヘッド3から吐出した液体を対象物200の表面に付与することにより、対象物200の表面を塗装する塗装装置である。液体は、塗料またはインク等である。
【0012】
対象物200は、例えば車やトラック、航空機のボディ等の非浸透性の面を有する物体である。ここで、非浸透性とは、表面に付与された液体が内部に浸透していかない性質をいう。但し、対象物200の面は、非浸透性を有する面に限らず、浸透性を有する面であってもよい。また本実施形態では、対象物200の面は、曲率を有する曲面であるが、平面状の面であってもよい。
【0013】
制御部1は、例えばPC(Personal Computer)等により構築され、ヘッド3による液体の吐出を制御する制御装置の一例である。制御部1は、駆動機構2およびヘッド3と有線または無線を介して相互に通信可能に接続している。制御部1は、形状情報Odと、塗装領域情報Pdと、に基づき、駆動機構2に駆動指令Rcを出力して駆動機構2にヘッド3を移動させるとともに、ヘッド3に駆動信号Hcを出力してヘッド3から液体を吐出させる。形状情報Odは、外部PC等の外部装置から送信される対象物200の形状情報である。塗装領域情報Pdは、対象物200表面のうち塗装する領域に対応する情報である。
【0014】
駆動機構2は、ヘッド3と対象物200とを相対移動させる、例えば多軸駆動可能なロボットアームである。駆動機構2は、保持したヘッド3を3次元空間における所望の位置に移動させる。液体吐出装置10は、駆動機構2を駆動させることにより、対象物200上の所望の位置にヘッド3から吐出した液体を付与できる。
【0015】
駆動機構はロボットアームに限定されず、3軸方向に直動可能なステージ等により構成することもできる。またヘッド3を移動させず、対象物200を移動させてもよいし、ヘッド3と対象物200の両方を移動させてもよい。
【0016】
<ヘッド3の構成例>
図3および図4は、ヘッド3の構成を例示する図である。図3は斜視図、図4図3の平面S1により切断したヘッド3の断面図である。
【0017】
ヘッド3は、ハウジング300内に1列または複数列に並べて配置した複数の吐出モジュール310を有する。
【0018】
ヘッド3は、供給ポート301および回収ポート302を有し、供給ポート301は吐出モジュール310に対して外部から加圧した液体を供給し、回収ポート302は吐出しなかった液体を外部に排出する。また、ハウジング300はコネクタ303を有する。
【0019】
吐出モジュール310は、液体を吐出するノズル321を備えたノズル板311と、ノズル321が連通し加圧した液体を供給する流路322と、ノズル321を開閉するニードル状の弁体を駆動する圧電部材324とを有する。
【0020】
ノズル板311はハウジング300と接合している。流路322はハウジング300に設けた複数の吐出モジュール310に共通の流路であり、供給ポート301から加圧インクを供給し、回収ポート302から液体を排出する。なお、対象物200に対して液体を吐出している期間は、ノズル321からの液体の吐出効率を低下させないようにするため、回収ポート302からの液体の排出を一時的に行わなくてもよい。
【0021】
ヘッド3は、複数のノズル321を個別に開閉することにより、複数のノズル321それぞれから対象物200に液体を吐出するバルブジェット方式のヘッドである。ここで、図5は、ヘッドを説明する図であり、図5(a)は圧電駆動方式のヘッド3xを示す図、図5(a)はバルブジェット方式のヘッド3を示す図である。図5は、液体が吐出される方向側から視た各ヘッドの平面図である。
【0022】
圧電駆動方式のヘッド3xは、圧電駆動方式のヘッド3xが有する液室内の液体を圧電部材により力学的に押し出すことにより、ノズル板311xに形成されたノズル321xから液体を吐出させる。圧電部材を用いて製作するため、多くのノズルを高密度に設けることができ、微細な画像パターンを高品質に描くことができる。
【0023】
バルブジェット方式のヘッド3は、ヘッド3が有する液室内の液体を高圧に保ち、各ノズル321の弁体を開閉することにより液体を吐出させる。ヘッド3は圧電駆動方式のヘッド3xと比べて1ヘッドあたりのノズル数が少なく、かつ1ノズルあたりの液体吐出量が多い。このため圧電駆動方式のヘッド3xと比べて、ノズルを個別に制御することが容易である。
【0024】
但し、本実施形態に係る液体吐出装置10は、バルブジェット方式のヘッド3に限定されるものではなく、圧電駆動方式のヘッド3xを用いてもよい。
【0025】
<制御部1の構成例>
(ハードウェア構成例)
図6は、制御部1のハードウェア構成を例示するブロック図である。制御部1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)14と、接続I/F(Interface)15と、通信I/F16と、を有する。これらは、システムバスBを介して相互に電気的に接続している。
【0026】
CPU11は、RAM13を作業領域として使用し、ROM12に格納されているプログラムを実行することにより、制御部1全体の動作を制御する。
【0027】
ROM12は、CPU11への記録動作等の制御を実行するためのプログラムおよびその他の固定データを格納する不揮発性のメモリである。RAM13は、各種のデータを一時格納する揮発性のメモリである。
【0028】
HDD/SSD14は、塗装領域情報Pdや対象物200のボディの形状情報Od等を格納可能な不揮発性のメモリである。HDD/SSD14に格納されている情報は、CPU11により読み出され、プログラム実行時に使用されることもある。
【0029】
接続I/F15は、外部機器に接続するためのインターフェースである。ここでの外部機器には、駆動機構2やヘッド3等が挙げられる。通信I/F16は、外部PC等の外部装置と通信可能に接続するためのインターフェースである。
【0030】
[第1実施形態]
(制御部1の機能構成例)
図7は、第1実施形態に係る制御部1の機能構成を例示するブロック図である。制御部1は、通信部101と、入出力部102と、駆動指令部103と、飛翔角取得部104と、吐出量決定部105と、パルス信号発生部106と、相対移動軌跡取得部107と、吐出タイミング決定部108と、吐出制御部109と、を有する。
【0031】
制御部1は、通信部101の機能を通信I/F16等により、入出力部102の機能を接続I/F15等により、それぞれ実現できる。また制御部1は、駆動指令部103、飛翔角取得部104、吐出量決定部105、パルス信号発生部106、相対移動軌跡取得部107、吐出タイミング決定部108および吐出制御部109の各機能を、CPU11がROM12に格納されたプログラムを実行すること等により実現できる。
【0032】
なお、制御部1は、上記以外の機能構成部を有してもよい。また制御部1以外の構成部が、制御部1が有する上記各機能のうちの一部を有してもよい。制御部1以外の構成部には、駆動機構2やヘッド3、外部PC等が挙げられる。制御部1および制御部1以外の構成部の分散処理により、制御部1が有する上記各機能のうちの一部を実現してもよい。また制御部1は、CPU11により実現される機能の少なくとも一部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の電気回路により実現することもできる。
【0033】
通信部101は、制御部1と、外部PC等の外部装置と、の間における信号およびデータの通信を制御する。入出力部102は、制御部1と、駆動機構2およびヘッド3と、の間における信号およびデータの入出力を制御する。
【0034】
駆動指令部103は、駆動機構2に駆動指令Rcを出力し、駆動機構2にヘッド3を相対移動させる。
【0035】
飛翔角取得部104は、複数のノズル321それぞれから吐出された液体の飛翔方向と、対象物200の表面の法線方向と、のなす角である飛翔角θの情報を演算により取得する。例えば飛翔角取得部104は、曲面を有する対象物200の形状情報Odに基づき、対象物200表面の位置ごとでの法線方向の情報を演算により取得する。そして飛翔角取得部104は、液体の飛翔方向と、対象物200表面の法線方向と、のなす角を算出することにより飛翔角θの情報を取得できる。
【0036】
吐出量決定部105は、飛翔角取得部104により取得された飛翔角θに応じて、複数のノズル321それぞれからの液体吐出量Mを決定し、吐出制御部109に出力する。
【0037】
パルス信号発生部106は、複数のノズル321それぞれから液体を吐出するタイミングの基準となるパルス信号kを、駆動機構2によるヘッド3と対象物200との相対移動距離に応じて発生させ、吐出タイミング決定部108および吐出制御部109に出力する。
【0038】
例えば、パルス信号発生部106は、駆動機構2が有するロータリーエンコーダや加速度センサ等の検出部が駆動機構2の動作に応じて出力する検出信号に基づきパルス信号kを発生させる。駆動機構2の動作シミュレーションに基づいてパルス信号kを発生させるタイミングが予め定められていてもよい。
【0039】
相対移動軌跡取得部107は、塗装領域情報Pdに基づいて、対象物200とヘッド3との相対的な移動軌跡の情報を演算により取得する。
【0040】
吐出タイミング決定部108は、複数のノズル321それぞれにおけるノズル321と対象物200との間の距離である対象距離に基づき、液体吐出タイミングΔtを決定し、吐出制御部109に出力する。例えば、吐出タイミング決定部108は、複数のノズル321と対象物200との相対移動方向に沿った吐出位置同士の間隔である吐出間隔によって相対移動軌跡を分割した分割点ごとにおいて対象距離の情報を演算により取得する。吐出タイミング決定部108は、この対象距離に基づいて液体吐出タイミングΔtを決定できる。
【0041】
吐出制御部109は、塗装領域情報Pdと、パルス信号kと、液体吐出量Mと、液体吐出タイミングΔtと、に基づいてヘッド3に駆動信号Hcを出力し、複数のノズル321それぞれから液体を吐出させる。
【0042】
<第1実施形態に係る液体吐出量Mの決定方法>
図8は、第1実施形態に係る液体吐出量Mの決定方法を説明する図であり、図8(a)は飛翔角0度の場合を示す図、図8(b)は飛翔角θの場合を示す図である。図8は、ヘッド3における1つのノズル321から重力方向に液体が吐出される様子を示している。飛翔方向321aは、吐出された液体が飛翔する方向である飛翔方向を表し、法線方向200aは対象物200表面の法線方向を表している。図8の例では、飛翔方向321aは重力方向に沿っている。
【0043】
図8(a)では、法線方向200aは重力方向に沿っており、飛翔角θは0度である。一方、図8(b)では、法線方向200aは重力方向に対して飛翔角θ傾いている。法線方向200aが傾いていると、対象物200表面に着弾した液体は重力の作用によって移動する場合がある。移動する液体の量は、飛翔角θが大きいほど大きくなる。液体の移動により、対象物200表面に形成される膜厚が変化し、塗装ムラが生じる場合がある。本実施形態では、吐出量決定部105は次式により液体吐出量Mを決定することにより、液体の移動に伴って変化した膜厚を補正する。
M=M/cosθ ・・・(1)
は、飛翔角θが0度である場合の液体吐出量を表す。
【0044】
<第1実施形態に係る液体吐出タイミングΔtの決定方法>
図9は、第1実施形態に係る液体吐出タイミングΔtの決定方法を示す図であり、図9(a)は相対移動軌跡の分割を示す図、図9(b)は対象距離を示す図である。図9は、複数のノズル321のうちの2つのノズルの相対移動軌跡401および402を円弧状の曲線により示している。
【0045】
まず、図9(a)に示すように、吐出タイミング決定部108は、相対移動軌跡401および402のそれぞれを吐出間隔pにより分割する。
【0046】
次に、図9(b)に示すように、吐出タイミング決定部108は、分割した分割点403それぞれにノズルが位置する場合に、該ノズルの対象距離dを算出し、予め定められた液体吐出速度Vhにより除算する。これにより、吐出タイミング決定部108は、ノズルから吐出された後、対象物200表面に着弾するまでの時間である着弾時間を算出できる。
【0047】
次に、吐出タイミング決定部108は、分割した各点にノズルが位置する際の時間を着弾時間で減算した時刻を吐出開始時刻とする。吐出タイミング決定部108は、この吐出開始時刻と、パルス信号kと、を照らし合わせることにより、液体吐出タイミングΔtを決定する。
【0048】
以上により、制御部1は、対象距離dに応じて液体吐出タイミングΔtを決定できる。
【0049】
ここで、パルス信号kは、吐出間隔pよりも小さい量(例えば吐出間隔pの半分)移動するごとに発生される信号である。このパルス信号kが1回発生されるごとに、ノズル321は吐出を最大で1回行う。但し、パルス信号kが発生しても、ノズル321から吐出されないようにすることもできる。
【0050】
パルス信号kの発生を吐出間隔よりも小さい値に設定している理由は、ヘッド3が複数のノズル321を用いるためである。パルス信号kは、駆動機構2の中心の移動距離に基づき発生される。制御部1は、駆動機構2の相対移動距離をL_1[m]、吐出間隔をp[m]とした場合、L_1/p[回]のパルス信号kを発生させることにより、吐出間隔pを実現できる。
【0051】
ヘッド3が複数のノズル321を有する場合には、複数のノズル321ごとに相対移動距離は異なる。例えば複数のノズル321の中心から離れた端部のノズルの相対移動距離L_2[m]は、ヘッド3が曲線を描くように移動した場合に外輪差が発生し、L_2>L_1となる。これにより、L_1/p[回]のパルス信号kでは端部のノズルで吐出間隔pを実現することは不可能になる。例えば、端部のノズルにおける平均吐出間隔は、(L_2/L_1)×p>pとなる。このような場合には、制御部1は、例えば吐出間隔pの0.5倍の距離を相対移動するごとにパルス信号kを発生させることにより、L_2>2L_1とならない限りにおいて、吐出間隔pを実現できる。
【0052】
<制御部1による処理例>
図10は、制御部1による処理を例示するタイミングチャートである。図10(a)はヘッド3の相対移動距離Lを示す図、図10(b)はパルス信号kを示す図、図10(c)は複数のノズル321のうちのノズル321Aの吐出タイミングを示す図、図10(d)は複数のノズル321のうちのノズル321Bの吐出タイミングを示す図である。図10(a)~図10(d)の時間軸は、相互に対応している。
【0053】
図10(a)に示すようにヘッド3が相対移動した場合に、図10(b)に示すように、所定の時刻t1、t2、t3、t4およびt5においてパルス信号kが発生される。
【0054】
図10(c)に示すように、ノズル321Aでは、時刻t1のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt11が、時刻t2のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt12が、時刻t3のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt13が、時刻t4のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt14が、時刻t5のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt15が、それぞれ決定され、各タイミングを示すタイミング信号Tsが発生されている。
【0055】
また図10(c)における液体吐出期間Ts11~Ts14は、時刻t1、t2、t3、t4およびt5それぞれにおけるタイミング信号Tsに応じた液体吐出量に対応している。タイミング信号TsにおけるHigh状態の期間は吐出されている期間に対応し、High状態になっている期間が長いほど、液体吐出量が多いことに対応する。つまり、液体吐出期間Ts11に対応する液体吐出量MをM11、液体吐出期間Ts12に対応する液体吐出量MをM12、液体吐出期間Ts13に対応する液体吐出量MをM13、液体吐出期間Ts14に対応する液体吐出量MをM14とすると、M11<M12<M13<M14の関係にある。
【0056】
図10(d)に示すように、ノズル321Bでは、時刻t1のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt21が、時刻t2のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt22が、時刻t3のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt23が、時刻t4のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt24が、時刻t5のパルス信号kに対して液体吐出タイミングΔt25が、それぞれ決定され、各タイミングを示すタイミング信号Tsが発生されている。
【0057】
また図10(d)における液体吐出期間Ts21~Ts24は、時刻t1、t2、t3、t4およびt5それぞれにおけるタイミング信号Tsに応じた液体吐出量に対応している。液体吐出期間Ts21に対応する液体吐出量MをM21、液体吐出期間Ts22に対応する液体吐出量MをM22、液体吐出期間Ts23に対応する液体吐出量MをM23、液体吐出期間Ts24に対応する液体吐出量MをM24とすると、M21<M22<M23<M24の関係にある。
【0058】
パルス信号kはヘッド3の移動に合わせて発生されるため、その発生タイミングは、複数のノズル321の全てに共通である。本実施形態では、各ノズルにおいて、1つのパルス信号kに対する遅れ時間を液体吐出タイミングΔtとして決定する。複数のノズル321のそれぞれは、1つのパルス信号kが発生した後、決定された液体吐出タイミングΔtを待ってから液体を吐出できる。
【0059】
図11は、制御部1の動作を例示するフローチャートである。例えば、制御部1は、外部PC等から形状情報Odおよび塗装領域情報Pdを入力したタイミングに図11の処理を開始する。
【0060】
まず、ステップS111において、制御部1は、飛翔角取得部104により、対象物200の形状情報Odに基づき、法線方向200aの情報を演算により取得し、液体の飛翔方向321aと、法線方向200aと、のなす角を算出することにより飛翔角θを取得する。
【0061】
続いて、ステップS112において、制御部1は、吐出量決定部105により、飛翔角取得部104により取得された飛翔角θに応じて、複数のノズル321それぞれからの液体吐出量Mの情報を演算により取得することによって決定し、吐出制御部109に出力する。
【0062】
続いて、ステップS113において、制御部1は、パルス信号発生部106により、複数のノズル321それぞれから液体を吐出するタイミングの基準となるパルス信号kを、駆動機構2によるヘッド3と対象物200との相対移動距離Lに応じて発生させ、吐出タイミング決定部108および吐出制御部109に出力する。
【0063】
続いて、ステップS114において、制御部1は、相対移動軌跡取得部107により、塗装領域情報Pdに基づいて、対象物200とヘッド3との相対的な移動軌跡の情報を演算により取得する。
【0064】
続いて、ステップS115において、制御部1は、吐出タイミング決定部108により、複数のノズル321ごとの吐出間隔によって相対移動軌跡を分割した分割点ごとにおいて対象距離dの情報を演算により取得する。
【0065】
続いて、ステップS116において、制御部1は、対象距離dに基づいて液体吐出タイミングΔtを決定する。
【0066】
続いて、ステップS117において、制御部1は、吐出制御部109により、塗装領域情報Pdと、パルス信号kと、液体吐出量Mと、液体吐出タイミングΔtと、に基づいてヘッド3に駆動信号Hcを出力し、複数のノズル321それぞれから液体を吐出させる。
【0067】
続いて、ステップS118において、制御部1は、処理を終了するか否かを判定する。例えば制御部1は、形状情報Odまたは塗装領域情報Pdにおける全情報に基づき処理を行ったか否かに応じて処理の終了を判定できる。
【0068】
制御部1は、ステップS118において終了すると判定した場合には(ステップS118、YES)、処理を終了し、終了しないと判定した場合には(ステップS118、NO)、ステップS111以降の処理を再度行う。
【0069】
このようにして、制御部1は形状情報Odおよび塗装領域情報Pdに応じて液体の吐出を制御できる。
【0070】
<液体吐出装置10の作用効果>
以上説明したように、液体吐出装置10は、ヘッド3と、駆動機構2と、制御部1と、を有し、制御部1は、複数のノズル321それぞれから吐出された液体の飛翔方向321aと、対象物200表面の法線方向200aと、のなす角である飛翔角θに基づき、液体吐出量Mを決定する。例えば、制御部1は、上述した(1)式により飛翔角θでの液体吐出量Mを決定する。
【0071】
対象物200が曲面を有する場合等において対象物200表面が傾いていると、対象物200表面に着弾した液体は重力の作用によって移動する。このような液体の移動により、対象物200表面に形成される膜厚が変化し、塗装ムラが生じる場合がある。本実施形態では、飛翔角θに基づいて液体吐出量Mを決定することにより、例えば液体の移動で膜厚が薄くなる領域への液体吐出量を増やすことができる。この結果、対象物200表面に形成される膜厚を補正できるため、均一性に優れた膜を形成可能な液体吐出装置10を提供できる。
【0072】
また本実施形態では、制御部1は、対象距離dに基づき、液体吐出タイミングΔtを決定する。例えば、制御部1は、ノズル321と対象物200との相対移動軌跡を吐出間隔pにより分割した分割点ごとにおいて、対象距離dから液体吐出タイミングΔtを決定する。
【0073】
対象物200が曲面を有する場合には、複数のノズル321ごとで対象距離dが異なる。ヘッド3と対象物200とは相対移動しているため、対象距離dの相違に伴って対象物200表面への液体の着弾位置に、所望の位置に対するずれが生じる。本実施形態では、液体吐出タイミングΔtを決定することによって、複数のノズル321それぞれの着弾位置を対象距離dに応じて異ならせることができ、上記の着弾位置のずれを補正できる。これにより、液体を対象物200表面の所望の位置に着弾させることができ、均一性に優れた所望の膜を対象物200表面に形成できる。
【0074】
また本実施形態では、ヘッド3は、複数のノズル321を個別に開閉することにより、複数のノズル321それぞれから対象物200に液体を吐出する。圧電駆動方式のヘッド等と比較して、1ヘッドあたりのノズル数を少なくし、かつ1ノズルあたりの液体吐出量Mを多くすることができる。これにより、複数のノズル321を個別に制御しやすくするとともに、膜の形成を効率的に行うことができる。
【0075】
なお、本実施形態では、液体吐出装置10を例示したが、制御部1の機能を有する制御装置と、駆動機構2と、ヘッド3を有する液体吐出装置と、を有する液体吐出システムにおいても、液体吐出装置10と同様の効果が得られる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る制御部1aについて説明する。なお、第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0077】
図12は、制御部1aの機能構成を例示するブロック図である。制御部1aは、ヘッド角度取得部110と、格納部111と、吐出量決定部105aと、相対移動速度取得部112と、吐出タイミング決定部108aと、を有する。
【0078】
制御部1aは、格納部111の機能をHDD/SSD14により実現できる。また制御部1aは、ヘッド角度取得部110、吐出量決定部105a、相対移動速度取得部112および吐出タイミング決定部108aの各機能を、CPU11がROM12に格納されたプログラムを実行すること等により実現できる。
【0079】
なお、制御部1a以外の構成部が、制御部1aが有する上記各機能のうちの一部を有してもよいし、制御部1aと、制御部1a以外の構成部と、の分散処理により、上記各機能のうちの一部を実現してもよい。また制御部1aは、CPU11により実現される機能の少なくとも一部をASICまたはFPGA等の電気回路により実現することもできる。
【0080】
ヘッド角度取得部110は、駆動機構2により変化されるノズル321の飛翔方向321aと重力方向とがなす角度であるヘッド角度φの情報を演算により取得する。例えばヘッド角度取得部110は、駆動機構2が有するロータリーエンコーダ等の検出部から出力される検出信号に基づき、ヘッド角度φの情報を取得できる。
【0081】
格納部111は、飛翔角θと、対象距離dと、ヘッド角度φと、の対応関係を示す情報または対応関係に関連する情報である対応情報113を格納する。対応情報113は、予備実験等により予め定めることができる。
【0082】
吐出量決定部105aは、飛翔角θと、複数のノズル321の対象距離dと、ヘッド角度φと、に基づき、液体吐出量Mを決定し、吐出制御部109に出力する。例えば吐出量決定部105aは、格納部111に格納された対応情報113を参照して液体吐出量Mを決定できる。
【0083】
相対移動速度取得部112は、ヘッド3と対象物200との相対移動速度vの情報を演算により取得する。相対移動速度取得部112は、駆動機構2が有するロータリーエンコーダ等の検出部から出力される検出信号に基づき、相対移動速度vの情報を取得できる。
【0084】
吐出タイミング決定部108aは、対象距離dと、ヘッド3と対象物200との相対移動速度vと、に基づき、液体吐出タイミングΔtを決定し、吐出制御部109に出力する。
【0085】
<第2実施形態に係る液体吐出量Mの決定方法>
図13は、第2実施形態に係る液体吐出量Mの決定方法を説明する図であり、対応情報113を例示する図である。
【0086】
図13では、ヘッド角度φを行とし、対象距離dおよび飛翔角θを列として示しいる。A1_1、A2_1、・・・、C4_13およびC5_13は、それぞれ液体吐出量Mを表している。
【0087】
吐出量決定部105aは、入力したヘッド角度φ、対象距離dおよび飛翔角θに基づいて、対応情報113を参照して液体吐出量Mを決定できる。この場合、ヘッド角度φ、対象距離dおよび飛翔角θそれぞれの分解能が小さいほど、液体吐出量Mを精密に決定できるが、その反面、対応情報113のデータ量が多くなる。このため、吐出量決定部105aは、ヘッド角度φ、対象距離dおよび飛翔角θそれぞれの分解能以下における液体吐出量Mを内挿演算等により補間することが好ましい。以下にその演算方法を例示する。
【0088】
例えば、対象距離dが13[mm]、飛翔角θが35[度]、およびヘッド角度φが50[度]における液体吐出量Mを取得する場合を一例として説明する。
【0089】
まず、吐出量決定部105aは、対象距離dが10[mm]、飛翔角θが30[度]、ヘッド角度φが50[度]の場合における液体吐出量M11を次式により算出する。
M11={1-(60-50)/(60-45)}×A3_4+(60-50)/(60-45)×A3_5
【0090】
次に、吐出量決定部105aは、対象距離dが10[mm]、飛翔角θが45[度]、ヘッド角度φが50[度]の場合における液体吐出量M12を次式により算出する。
M12={1-(60-50)/(60-45)}×A4_4+(60-50)/(60-45)×A4_5
【0091】
次に、吐出量決定部105aは、対象距離dが20[mm]、飛翔角θが30[度]、ヘッド角度φが50[度]の場合における液体吐出量M13を次式により算出する。
M13={1-(60-50)/(60-45)}×B3_4+(60-50)/(60-45)×B3_5
【0092】
次に、吐出量決定部105aは、対象距離dが20[mm]、飛翔角θが45[度]、ヘッド角度φが50[度]の場合における液体吐出量M13を次式により算出する。
M14={1-(60-50)/(60-45)}×B4_4+(60-50)/(60-45)×B4_5
【0093】
次に、吐出量決定部105aは、対象距離dが10[mm]、飛翔角θが35[度]、ヘッド角度φが50[度]の場合における液体吐出量M21を次式により算出する。
M21={1-(35-30)/(45-30)}×M11+(35-30)/(45-30)×M12
【0094】
次に、吐出量決定部105aは、対象距離dが20[mm]、飛翔角θが35[度]、ヘッド角度φが50[度]の場合における液体吐出量M22を次式により算出する。
M22={1-(35-30)/(45-30)}M13+(35-30)/(45-30)×M14
【0095】
最後に、吐出量決定部105aは、対象距離dが13[mm]、飛翔角θが35[度]、ヘッド角度φが50[度]の場合における液体吐出量M22を次式により算出する。
V={1-(13-10)/(20-10)}×V21+(13-10)/(20-10)×V22
【0096】
以上のようにして、吐出量決定部105aは、ヘッド角度φ、対象距離dおよび飛翔角θそれぞれの分解能以下における液体吐出量Mを補間演算により決定できる。
【0097】
<第2実施形態に係る液体吐出タイミングΔtの決定方法>
図14は、第2実施形態に係る液体吐出タイミングΔtの決定方法を説明する図である。図14(a)は相対移動開始位置を示す図、図14(b)は理想着弾位置を示す図、図14(c)は開始着弾位置を示す図、図14(d)は相対移動終了位置を示す図である。
【0098】
ここで、ヘッド3と対象物200との相対移動速度vが大きいと、液体吐出タイミングΔtの決定誤差が大きくなる場合がある。このため、吐出タイミング決定部108aは、対象距離dと、相対移動速度vと、に基づき、液体吐出タイミングΔtを決定する。
【0099】
相対移動速度vが大きい場合には、吐出される液体の速度ベクトルは、吐出液滴速度ベクトルと相対移動速度ベクトルの合成ベクトルにより表される。また、相対移動速度vだけでなく、ヘッド角度φも算出式に入れることにより、重力の作用による着弾位置ずれも補正できる。
【0100】
まず、図14(a)に示すように、ノズル321の相対移動軌跡において、相対移動開始位置404と相対移動終了位置405を決定する。
【0101】
次に、相対移動開始位置404における対象物200表面への液体の開始着弾位置406を算出する。
【0102】
次に、図14(b)に示すように、相対移動方向に吐出間隔pだけずらした理想着弾位置407を算出する。
【0103】
次に、図14(c)に示すように、理想着弾位置407で吐出が行われる理想ノズル408を特定し、該ノズルから吐出される液体の着弾位置を算出する。この場合には、相対移動速度も合成した液体の飛翔軌跡も考慮する。この着弾位置における時間とパルス信号を対応させて液体吐出タイミングΔtを決定できる。
【0104】
<制御部1aによる処理例>
図15は、制御部1aによる処理を例示するフローチャートである。例えば、制御部1aは、外部PC等から形状情報Odおよび塗装領域情報Pdを入力したタイミングに図15の処理を開始する。なお、図11と同じ処理を行うステップについては重複する説明を適宜省略する。
【0105】
まず、ステップS151の処理は、図11のステップS111の処理と同様である。
【0106】
続いて、ステップS152において、制御部1aは、ヘッド角度取得部110により、駆動機構2により変化されるノズル321の飛翔方向321aと重力方向とがなすヘッド角度φの情報を演算により取得する。
【0107】
続いて、ステップS153において、制御部1aは、吐出量決定部105aにより、飛翔角θと、複数のノズル321それぞれの対象距離dと、ヘッド角度φと、に基づき、対応情報113を参照して液体吐出量Mを決定する。
【0108】
続いて、ステップS154からステップS156までの各処理は、図11のステップS113からステップS115までの各処理と同様である。
【0109】
続いて、ステップS157において、制御部1aは、相対移動速度取得部112により、ヘッド3と対象物200との相対移動速度vの情報を演算により取得する。
【0110】
続いて、ステップS158において、制御部1aは、吐出タイミング決定部108aにより、対象距離dと、ヘッド3と対象物200との相対移動速度vと、に基づき、液体吐出タイミングΔtを決定する。
【0111】
続いて、ステップS159からステップS160までの各処理は、図11のステップ117からステップS118までの各処理と同様である。
【0112】
このようにして、制御部1aは形状情報Odおよび塗装領域情報Pdに応じた液体の吐出制御を行うことができる。
【0113】
<制御部1aの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、駆動機構2は、ノズル321の飛翔方向お321aと、重力方向と、がなすヘッド角度φを変化させ、制御部1aは、飛翔角θと、複数のノズル321それぞれの対象距離dと、ヘッド角度φと、に基づき、液体吐出量Mを決定する。これにより、ヘッド3のヘッド角度φが駆動機構2により変化する場合にも、液体吐出量Mを正確に決定できる。
【0114】
また本実施形態では、対象距離dと、ヘッド3と対象物200との相対移動速度vと、に基づき、液体吐出タイミングΔtを決定する。これにより、相対移動速度vが大きい場合にも、液体吐出タイミングΔtを正確に決定できる。
【0115】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。すなわち、本発明の範囲内で種々の変形および改良が可能である。
【0116】
実施形態において、ヘッド3から吐出される液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0117】
対象物200は、液体が付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては,車体、建材、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0118】
また実施形態は、液体吐出方法も含む。例えば液体吐出方法は、液体により対象物の表面に膜を形成する液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、ヘッドにより、複数のノズルそれぞれから前記液体を吐出し、駆動機構により、前記ヘッドと前記対象物とを少なくとも相対移動させ、制御部により、前記ヘッドによる前記液体の吐出を制御し、前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する。このような液体吐出方法により、上述した液体吐出装置と同様の効果を得ることができる。
【0119】
また実施形態は、プログラムも含む。例えばプログラムは、液体により対象物の表面に膜を形成する液体吐出装置に実行させるプログラムであって、ヘッドにより、複数のノズルそれぞれから前記液体を吐出し、駆動機構により、前記ヘッドと前記対象物とを少なくとも相対移動させ、制御部により、前記ヘッドによる前記液体の吐出を制御し、前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出された前記液体の飛翔方向と、前記対象物表面の法線方向と、のなす角である飛翔角に基づき、前記液体を吐出する量である液体吐出量を決定する、処理を前記液体吐出装置に実行させる。このようなプログラムにより、上述した液体吐出装置と同様の効果を得ることができる。
【0120】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0121】
1 制御部(制御装置の一例)
10 液体吐出装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 HDD/SSD
15 接続I/F
16 通信I/F
101 通信部
102 入出力部
103 駆動指令部
104 飛翔角取得部
105、105a 吐出量決定部
106 パルス信号発生部
107 相対移動軌跡取得部
108、108a 吐出タイミング決定部
109 吐出制御部
110 ヘッド角度取得部
111 格納部
112 相対移動速度取得部
113 対応情報
2 駆動機構
200 対象物
200a 法線方向
3 ヘッド
300 ハウジング
301 供給ポート
302 回収ポート
303 コネクタ
310 吐出モジュール
311 ノズル板
321 ノズル
321a 飛翔方向
322 流路
324 圧電部材
401、402 相対移動軌跡
403 分割点
404 相対移動開始位置
405 相対移動終了位置
406 開始着弾位置
407 理想着弾位置
408 理想ノズル
B システムバス
Od 形状情報
Pd 塗装領域情報
Rc 駆動指令
Hc 駆動信号
θ 飛翔角
M、M 液体吐出量
k パルス信号
L 相対移動距離
Δt 液体吐出タイミング
p 吐出間隔
d 対象距離
t1、t2、t3、t4、t5 時刻
Ts タイミング信号
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】
【特許文献1】特開2021‐088109号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15