(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124131
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出システム、液体吐出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20230830BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20230830BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230830BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230830BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 301
B41J2/01 451
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022027732
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】有田 俊介
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056EB07
2C056EB30
2C056EB59
2C056EC08
2C056EC38
2C056FA04
2C056FB01
2C056HA38
2C057AF99
2C057AJ10
2C057AL25
2C057AM16
2C057AR08
2C057BA08
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA36
4F042AA09
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA21
4F042CB03
4F042CB08
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】吐出ヘッドの駆動回路規模が大きくなることを抑制しつつ、吐出ヘッドの駆動電圧を可変にすること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液体吐出装置は、駆動電圧に応じて変形する圧電部材を用いてノズル孔から液体を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出周期よりも短い変形周期で前記圧電部材を変形させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電圧に応じて変形する圧電部材を用いてノズル孔から液体を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出周期よりも短い変形周期で前記圧電部材を変形させる、液体吐出装置。
【請求項2】
前記駆動電圧は、第1電位と第2電位との間における中間電位と、前記第1電位と、の間の電位差である、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記駆動電圧の電位を前記第1電位側に変化させる第1可変部と、
前記駆動電圧の電位を前記第2電位側に変化させる第2可変部と、を有し、
前記制御部は、前記第2可変部により前記駆動電圧の電位を前記第1電位から前記第2電位側に変化させている際に、前記駆動電圧の電位が前記第2電位になる前に、前記第1可変部により前記駆動電圧の電位を前記第1電位側に変化させる、請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記吐出ヘッドは、前記圧電部材に接続する弁体の駆動により前記ノズル孔を開閉することによって、前記液体を前記ノズル孔から吐出し、
前記弁体は、前記圧電部材が前記駆動電圧に応じて変形することにより駆動される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記吐出ヘッドは、複数のノズル孔と、前記複数のノズルごとに設けられた前記圧電部材と、を有し、
前記制御部は、前記複数のノズル孔ごとに設けられた前記圧電部材のそれぞれを、前記吐出周期よりも短い周期により変形させる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記駆動電圧は、前記第1電位と前記第2電位との間における中間電位と、前記第1電位と、の間の電位差であり、
複数の前記ノズル孔それぞれを示すノズル孔情報と、前記駆動電圧の電位が前記第1電位から前記中間電位へ移行する移行時間と、の対応情報を格納する格納部を有し、
前記制御部は、前記ノズル孔情報に基づき前記格納部を参照して取得される前記移行時間に基づき、前記複数のノズル孔ごとに設けられた前記圧電部材を変形させる、請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記吐出ヘッドの温度および前記液体吐出装置の内部温度の少なくとも1つに基づいて前記圧電部材を変形させる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の液体吐出装置と、
前記液体吐出装置が有する前記吐出ヘッドを移動させる移動機構と、を有し、
前記制御部は、前記移動機構により移動される前記吐出ヘッドの位置に基づき、前記吐出ヘッドに前記液体を吐出させる、液体吐出システム。
【請求項9】
前記移動機構は、所定の周期信号に基づいて前記吐出ヘッドを移動させ、
前記制御部は、前記周期信号に基づいて取得される前記吐出周期よりも短い前記変形周期により前記圧電部材を変形させる、請求項8に記載の液体吐出システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記移動機構による前記吐出ヘッドの移動方向と、前記周期信号と、に基づいて取得される前記吐出周期よりも短い前記変形周期により前記圧電部材を変形させる、請求項9に記載の液体吐出システム。
【請求項11】
液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、
吐出ヘッドにより、駆動電圧に応じて変形する圧電部材を用いてノズル孔から液体を吐出し、
制御部により、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御し、
前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出周期よりも短い変形周期で前記圧電部材を変形させる、液体吐出方法。
【請求項12】
吐出ヘッドにより、駆動電圧に応じて変形する圧電部材を用いてノズル孔から液体を吐出し、
制御部により、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御し、
前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出周期よりも短い変形周期で前記圧電部材を変形させる、
処理を液体吐出装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出システム、液体吐出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動電圧に応じて変形する圧電部材を用いてノズル孔から液体を吐出する吐出ヘッドを有する液体吐出装置が知られている。このような液体吐出装置は、対象物表面の塗装や、記録媒体への画像形成等の様々な用途において使用される。
【0003】
また、吐出ヘッドが有する圧電部材の駆動電圧を可変にするために、駆動電圧に応じて変形する圧電部材に電圧を印加するための一対の電極の一方の電極に、正の極性を持った電圧を印加する駆動電圧印加手段と、一対の電極の他方の電極に所定の電圧を印加する電源制御手段と、を有する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、一対の電極のそれぞれに電圧を印加するため、吐出ヘッドの駆動回路規模が大きくなる場合がある。
【0005】
本発明は、吐出ヘッドの駆動回路規模が大きくなることを抑制しつつ、吐出ヘッドの駆動電圧を可変にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、駆動電圧に応じて変形する圧電部材を用いてノズル孔から液体を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出周期よりも短い変形周期で前記圧電部材を変形させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出ヘッドの駆動回路規模が大きくなることを抑制しつつ、吐出ヘッドの駆動電圧を可変にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る液体吐出システムの全体構成を例示する図である。
【
図2】第1実施形態に係る液体吐出装置の構成を例示するブロック図である。
【
図4】
図3の平面Uにより切断した圧電部材変形前の断面図である。
【
図5】
図3の平面Uにより切断した圧電部材変形後の断面図である。
【
図6】制御部のハードウェア構成例のブロック図である。
【
図7】駆動波形生成回路の構成を例示する図である。
【
図8】制御部の機能構成を例示するブロック図である。
【
図9】格納部に格納される対応情報を例示する図である。
【
図10】駆動波形を例示するタイミングチャートである。
【
図11】制御部による処理を例示するフローチャートである。
【
図12】第2実施形態に係る液体吐出装置の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る液体吐出装置について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための液体吐出装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
以下に示す図においてX軸、Y軸およびZ軸により方向を示す場合があるが、Z軸に沿うZ方向は鉛直方向を示し、X軸に沿うX方向はZ方向に交差する方向を示し、Y軸に沿うY方向は、X方向およびZ方向の両方に交差する方向を示すものとする。但し、これらのことは、液体吐出装置の使用時における向きを制限するものではなく、液体吐出装置の向きは任意である。
【0011】
[第1実施形態]
<液体吐出システム100の全体構成例>
図1および
図2を参照して液体吐出システム100の全体構成を説明する。
図1は、実施形態に係る液体吐出システム100の全体構成を例示する図である。
図2は、第1実施形態に係る液体吐出装置10の構成を例示するブロック図である。
【0012】
図1および
図2に示すように、液体吐出システム100は、液体吐出装置10と、ロボット20と、を有する。また、液体吐出装置10は、吐出ヘッド1と、制御部2と、を有する。
図1では、ロボット20、制御部2および対象物200は、載置台300上に載置され、液体吐出装置10は、吐出ヘッド1が対象物200の面に向き合うように配置されている。
【0013】
液体吐出システム100は、液体吐出装置10により吐出ヘッド1から液体を対象物200に吐出するシステムである。本実施形態では特に、液体吐出システム100は、インクジェット方式により吐出ヘッド1から吐出した液体を対象物200の表面に付与することにより、対象物200の表面を塗装する塗装システムである。液体は、塗料またはインク等である。但し、液体吐出システム100および液体吐出装置10は、塗装用途に限らず、用紙やフィルム等の記録媒体に液体により画像形成(印刷)する用途等にも適用できる。
【0014】
対象物200は、例えば車やトラック、航空機のボディ等の非浸透性の面を有する物体である。ここで、非浸透性とは、表面に付与された液体が内部に浸透していかない性質をいう。但し、対象物200の面は、非浸透性を有する面に限らず、浸透性を有する面であってもよい。また対象物200の面は、平面状に限らず、曲率を有する面であってもよい。
【0015】
ロボット20は、多軸駆動可能なロボットアームであり、液体吐出装置10が有する吐出ヘッド1を移動させる移動機構の一例である。ロボット20は、吐出ヘッド1を保持し、XYZ空間における所望の位置に移動させる。液体吐出システム100は、ロボット20を駆動させることにより、対象物200上の所望の位置に吐出ヘッド1から吐出した液体を付与できる。
【0016】
制御部2は、例えばPC(Personal Computer)等により構築される制御装置である。制御部2は、吐出ヘッド1およびロボット20と有線または無線を介して相互に通信可能に接続している。制御部2は、ロボット20に搬送指令Cmを与え、ロボット20に吐出ヘッド1を移動させる。また制御部2は、ロボット20から送信される吐出ヘッド1の位置情報Psに基づき、駆動電圧Eを含む駆動波形Drを吐出ヘッド1に印加して、吐出ヘッド1に含まれる複数のノズル孔12のそれぞれから液体を吐出させる。
【0017】
<吐出ヘッド1の構成例>
図3から
図5を参照して、吐出ヘッド1の構成を説明する。
図3は、吐出ヘッド1を例示する斜視図である。
図4および
図5は、
図3のYZ平面である平面Uにより切断した吐出ヘッド1の断面図である。
図4は、吐出ヘッド1が有する圧電部材の変形前における状態、
図5は、圧電部材の変形後における状態をそれぞれ示している。
【0018】
図3から
図5に示すように、吐出ヘッド1は、ノズル板11と、ノズル板11に形成された複数のノズル孔12と、液室13と、圧電部材14と、弁体15と、封止部材16と、を有する。圧電部材14、弁体15および封止部材16は、液室13の内部に設けられている。
【0019】
図4および
図5は、吐出ヘッド1が有する1つのノズル孔12に対応する断面構成を示しているが、複数のノズル孔12それぞれの構成はいずれも同じである。
【0020】
吐出ヘッド1は、圧電部材14に接続する弁体15の駆動によりノズル孔12を開閉させることによって、ノズル孔12から液体を吐出する、いわゆるバルブジェット方式の吐出ヘッドである。
【0021】
圧電部材14は、駆動電圧Eに応じて変形する部材である。圧電部材14は、チタン酸バリウムやジルコン酸バリウムのような強誘電性セラミックスを含んで構成される。
図4および
図5では、圧電部材14は、駆動電圧Eの電位が高い場合には充電することによりZ方向に伸長し、駆動電圧Eの電位が低い場合には放電することによりZ方向に収縮するように伸縮変形する。
【0022】
弁体15は、Z方向に延伸するニードル状部材であり、金属材料等を含んで構成される。弁体15の一端は圧電部材14に接続し、他端はノズル孔12に向き合っている。弁体15は、圧電部材14が駆動電圧Eに応じて変形することにより駆動され、例えば圧電部材14の伸縮変形に応じてZ方向に進退移動する。圧電部材14が伸長した場合には、弁体15は正のZ方向に移動し、弁体15の他端は、ノズル孔12を閉塞する。圧電部材14が収縮した場合には、弁体15は負のZ方向(矢印51の方向)に移動し、弁体15の他端はノズル孔12を開放する。
【0023】
封止部材16は、液室13の内部に供給される液体を封止する部材である。液室13内におけるノズル板11と封止部材16との間の空間には、加圧された液体である加圧液体Pが供給される。
【0024】
図4のようにノズル孔12が閉塞されていると、液体は吐出ヘッド1から吐出されない状態になる。一方、
図5のようにノズル孔12が開放されると、加圧液体Pの一部がノズル孔12を通って液室13の内部から外部に吐出される。
【0025】
吐出ヘッド1は、例えば2kHz程度の周波数によりノズル孔12を開閉させることにより、ノズル孔12から吐出された液体が滴化した液滴Qを吐出する。但し、吐出ヘッド1は、滴化した液体だけでなく、液体を連続吐出することもできる。
【0026】
<制御部2の構成例>
(ハードウェア構成例)
図6は、制御部2のハードウェア構成を例示するブロック図である。制御部2は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)22と、RAM(Random Access Memory)23と、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)24と、接続I/F(Interface)25と、吐出周期信号生成回路26と、変形周期信号生成回路27と、駆動波形生成回路28と、を有する。これらは、システムバスBを介して相互に電気的に接続している。
【0027】
CPU21は、RAM23を作業領域として使用し、ROM22に格納されているプログラムを実行することにより、制御部2全体の動作を制御する。
【0028】
ROM22は、CPU21への記録動作等の制御を実行するためのプログラムおよびその他の固定データを格納する不揮発性のメモリである。RAM23は、各種のデータを一時格納する揮発性のメモリである。
【0029】
HDD/SSD24は、対象物200の表面に塗装する塗装データや対象物200のボディの形状情報等を格納する不揮発性のメモリである。HDD/SSD24に格納されている情報は、CPU21により読み出され、プログラム実行時に使用されることもある。
【0030】
接続I/F25は、外部機器に接続するためのインターフェースである。ここでの外部機器には、ロボット20や吐出ヘッド1等が挙げられる。
【0031】
吐出周期信号生成回路26は、ロボット20の動作に同期した吐出周期で吐出ヘッド1に液体を吐出させるための吐出周期信号を生成する電気回路である。吐出周期信号生成回路26は、ロボット20の動作に対応した周期信号に基づいて吐出周期信号を生成できる。
【0032】
変形周期信号生成回路27は、吐出周期よりも短い変形周期により圧電部材14を変形させるための変形周期信号を生成する電気回路である。変形周期は吐出周期よりも十分に短い周期であることが好ましく、例えば吐出周期の1/10の周期等が好ましい。
【0033】
駆動波形生成回路28は、吐出ヘッド1に液体を吐出させるための駆動電圧Eを含む駆動波形Drを生成するための電気回路である。
【0034】
(駆動波形生成回路28の構成例)
図7は、駆動波形生成回路28の構成を例示する図である。駆動波形生成回路28は、デジタル駆動波形生成回路280と、Pch-MOSFET281と、Nch-MOSFET282と、を有する。Pch-MOSFET281およびNch-MOSFET282は、それぞれゲートG、ソースSおよびドレインDを有する。
【0035】
デジタル駆動波形生成回路280は、塗装データと、変形周期信号生成回路27により生成された変形周期信号と、に基づいて、アナログ信号である駆動波形Drの元となるデジタル駆動波形を生成する電気回路である。
【0036】
デジタル駆動波形生成回路280は、変形周期信号に同期してデジタル駆動波形を生成し、生成したデジタル駆動波形をPch-MOSFET281およびNch-MOSFET282の各ゲートGに出力する。この際、Pch-MOSFET281およびNch-MOSFET282が同時にオンとならないように、Pch-MOSFET281およびNch-MOSFET282の各ゲートGにデジタル駆動波形を出力するタイミングに200ns以上800ns以下程度の時間差を与えることが好ましい。
【0037】
Pch-MOSFET281は、駆動電圧Eの電位を第1電位H側に変化させる第1可変部に対応し、Nch-MOSFET282は、駆動電圧Eの電位を第2電位L側に変化させる第2可変部に対応する。
【0038】
Pch-MOSFET281がオン(ゲートGへの入力電圧がHigh)となり、Nch-MOSFET282がオフ(ゲートGへの入力電圧がLow)となると、最大電圧端子VHから吐出ヘッド1の圧電部材14へ電流が流れる。これにより、圧電部材14は充電して伸長する。
【0039】
逆に、Pch-MOSFET281がオフ(ゲートGへの入力電圧がLow)となり、Nch-MOSFET282がオン(ゲートGへの入力電圧がHigh)となると、吐出ヘッド1の圧電部材14から最小電圧端子VLへ電流が流れる。これにより、圧電部材14は放電して収縮する。
【0040】
(機能構成例)
図8は、制御部2の機能構成を例示するブロック図である。制御部2は、塗装データ生成部201と、搬送指令部202と、入出力部203と、格納部204と、同期制御部205と、駆動波形生成部206と、を有する。
【0041】
制御部2は、塗装データ生成部201および搬送指令部202の各機能をCPU21がROM22に格納されたプログラムを実行すること等により実現し、入出力部203の機能を接続I/F25等により実現できる。また制御部2は、格納部204の機能をRAM23およびHDD/SSD24等により実現し、同期制御部205の機能を吐出周期信号生成回路26および変形周期信号生成回路27等により実現し、駆動波形生成部206の機能を駆動波形生成回路28等により実現できる。
【0042】
なお、制御部2は、上記以外の機能構成部を有してもよい。また制御部2以外の構成部が、制御部2が有する上記各機能のうちの一部を有してもよい。制御部2以外の構成部には、ロボット20や吐出ヘッド1、外部PC等が挙げられる。制御部2と、制御部2以外の構成部と、の分散処理により、制御部2が有する上記各機能のうちの一部を実現してもよい。また制御部2は、CPU21により実現される機能の少なくとも一部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の電気回路により実現することもできる。
【0043】
塗装データ生成部201は、対象物200に合わせて生成した塗装データPtを搬送指令部202および駆動波形生成部206に出力する。塗装データPtは、液体吐出装置10により対象物200に塗装するための元となるデジタルデータである。塗装データPtは、1色の液体により対象物200に塗装するためのものであってもよいし、多色の液体により対象物200に塗装するためのものであってもよい。また塗装データPtは、絵柄や文字等を含む画像を形成する元データとなる画像データであってもよい。
【0044】
搬送指令部202は、ロボット20に搬送を行わせるために生成した搬送指令Cmを、入出力部203を介してロボット20に出力する。なお、搬送は移動の一例である。ロボット20は、搬送指令Cmに応答して、自身が有する各種モータを駆動させ、吐出ヘッド1を搬送する。またロボット20は、自身が有するロータリーエンコーダ等のセンサにより検出した吐出ヘッド1の位置情報Psを制御部2に送信する。
【0045】
入出力部203は、制御部2と、ロボット20および吐出ヘッド1と、の間において信号およびデータの入出力を行う機能を有する。
【0046】
格納部204は、ロボット20から制御部2に送信される吐出ヘッド1の位置情報Psをタイムスタンプとともに一時保持する。位置情報Psおよびタイムスタンプは、同期制御部205等により参照される。
【0047】
また格納部204は、複数のノズル孔12それぞれを示すノズル孔情報と、駆動波形における駆動電圧Eの電位が第1電位Hから中間電位Mへ移行する移行時間としての第1移行時間と、の対応関係を示す対応情報207を格納する。第1電位Hは、例えば駆動電圧EがHigh状態となる電位である。中間電位Mは、基準になる電位であり、例えば液体吐出装置10の電源投入後最も長く維持されている電位である。対応情報207は駆動波形生成部206等により参照される。
【0048】
同期制御部205は、ロボット20の動作と、吐出ヘッド1による吐出と、を同期させるための制御を行う。例えば、同期制御部205は、ロボット20から送信される吐出ヘッド1の位置情報Psを、入出力部203を介して入力する。また、同期制御部205は、位置情報Psに基づいて、吐出ヘッド1による吐出開始位置および終了位置を決定し、また吐出ヘッド1が吐出開始位置まで搬送された際に、吐出ヘッド1の搬送速度を算出する。さらに同期制御部205は、搬送速度に基づいて、吐出周期信号と、吐出周期信号に同期した変形周期信号と、を生成し、駆動波形生成部206に出力する。本実施形態では、同期制御部205の機能は、吐出周期信号生成回路26および変形周期信号生成回路27により実現されるが、これに限らずCPU21により実現されてもよい。
【0049】
駆動波形生成部206は、同期制御部205により生成された変形周期信号と、塗装データ生成部201により生成された塗装データPtと、に基づいて生成した駆動波形Drを吐出ヘッド1に出力する。駆動波形Drは、吐出ヘッド1が有する複数のノズル孔12と対をなす圧電部材14に対して個別に入力され、複数のノズル孔12それぞれから液滴Qが吐出される。
【0050】
(対応情報207の一例)
ここで、吐出ヘッド1は、製造誤差等により、複数のノズル孔12それぞれからの液体吐出特性にばらつきが生じる場合がある。液体吐出特性には、液体の吐出速度、吐出される液体量等が挙げられる。複数のノズル孔12ごとの液体吐出特性のばらつきにより、複数のノズル孔12それぞれに対して同じ駆動波形Drを印加して液体を吐出させると、塗装品質や画像形成品質が低下する場合がある。
【0051】
上記液体吐出特性のばらつきは、駆動波形Drにおける駆動電圧Eを調整することにより補償できる。このため、本実施形態では、複数のノズル孔12ごとの液体吐出特性を予め吐出実験等によって把握し、実験結果に基づいて該液体吐出特性のばらつきを抑制するための情報を複数のノズル孔12それぞれに対応づけ、対応情報207として格納部204に格納しておく。液体吐出装置10は、吐出ヘッド1から液滴Qを吐出させる際に、対応情報207を参照して複数のノズル孔12に対をなす圧電部材14への駆動電圧Eを変化させて異ならせる。これにより、複数のノズル孔12の液体吐出特性のばらつきを補償し、塗装品質や画像形成品質の低下を抑制する。
【0052】
図9は、格納部204により格納される対応情報207を例示する図である。制御部2は、ノズル孔情報に基づき対応情報207を参照して取得される第1移行時間に基づいて、複数のノズル孔12ごとに設けられた圧電部材14を変形させることができる。
【0053】
図9において、ノズル孔情報N1、N2、N3、・・・、Nnは、複数のノズル孔12を示す情報、例えば複数のノズル孔12の識別情報である。ノズル孔情報N1、N2、N3、・・・、Nnのそれぞれに対応して、駆動電圧可変フラグ、中間電位M、第1電位Hから中間電位Mへの第1移行時間、および中間電位Mから第1電位Hへの第2移行時間が規定される。
【0054】
駆動電圧可変フラグは、駆動電圧Eを変化させない場合には0となり、駆動電圧Eを変化させる場合には1となる。
【0055】
中間電位Mは、第1電位Hと第2電位Lとの間の電位である。本実施形態では、第1移行時間を規定し、変形周期に応じて中間電位Mを略中心にして電位を変化させることにより、駆動電圧Eを可変とする。この中間電位Mについては、別途
図10においても詳述する。
【0056】
第1電位Hから中間電位Mへの第1移行時間、および中間電位Mから第1電位Hへの第2移行時間は、例えば変形周期信号におけるパルス数を用いて規定される。例えば3つのパルス数により第1移行時間を規定した場合には、第1移行時間は、変形周期の3倍に対応する時間となる。
【0057】
対応情報207は、例えば生産工場における液体吐出装置10の製造時に取得され、格納部204に格納される。
【0058】
<液体吐出システム100の動作例>
(駆動波形例)
図10は、駆動波形Drを例示するタイミングチャートである。
図10は、吐出周期信号Ss、変形周期信号Fs、Nch-MOSFET282のゲートに入力されるNchゲート信号Ng、Pch-MOSFET281のゲートに入力されるPchゲート信号Pgおよび駆動波形Drを示している。
【0059】
図10において、横軸は時間軸であり、各信号の時間軸は対応している。期間T1では、駆動電圧Eを変化させない駆動波形Drが生成されており、期間T2では、駆動電圧Eを変化させた駆動波形Drが生成されている。
【0060】
期間T1より前の期間では、Pchゲート信号Pgはオン(H)、Nchゲート信号Ngはオフ(L)である。圧電部材14は充電して伸長し、ノズル孔12は弁体15により閉塞されており、液滴Qは吐出されない状態である。
【0061】
期間T1では、吐出周期信号Ssの立ち上がり時に、Pchゲート信号Pgはオフ(L)、Nchゲート信号Ngはオン(H)となる。これにより、圧電部材14は放電して収縮し、ノズル孔12は弁体15により開放され、ノズル孔12から液滴Qが吐出される。
【0062】
一方、期間T2では、吐出周期信号Ssの立ち上がり時に、Pchゲート信号Pgはオフ(L)、Nchゲート信号Ngはオン(H)となる。これにより、圧電部材14は放電して収縮し、ノズル孔12は弁体15により開放され、ノズル孔12から液滴Qが吐出される。駆動波形生成部206は、対応情報207に規定された第1移行時間の間、放電状態を維持する。第1移行時間の間に、電位は第1電位Hと第2電位Lとの間の中間電位M近傍になる。その後、変形周期信号Fsに応じてPchゲート信号Pgはオン(H)、Nchゲート信号Ngはオフ(L)となることにより、圧電部材14は充電して伸長する。さらに次の変形周期信号Fsの立ち上がり時に、Pchゲート信号Pgはオフ(L)、Nchゲート信号Ngはオン(H)となることにより、圧電部材14は放電して収縮する。
【0063】
変形周期は吐出周期に応じて十分に短いため、駆動電圧Eの電位は、第2電位Lまで低下する前に第1電位H側に変化し、変形周期に応じて中間電位Mを略中心に振動するように変化する。この結果、第1電位Hと中間電位Mとの間の電位差に対応する駆動電圧E2が得られる。駆動電圧E1は、第1電位Hと第2電位Lとの間の電位差に対応する駆動電圧E1と比較して小さい。
【0064】
以上のように、液体吐出装置10では、第1移行時間を規定し、駆動電圧Eの電位を変形周期に応じて変化させることにより、圧電部材14に印加される駆動電圧Eを可変にすることができる。複数のノズル孔12ごとの第1移行時間の適正値は、液体吐出装置10の製造時における吐出実験等によって取得できる。なお、本実施形態では、第2電位Lを中間電位Mに変化させる場合を例示したが、第1電位Hを中間電位Mに変化させる場合にも、Pchゲート信号PgおよびNchゲート信号Ngを制御することにより同様に行うことができる。
【0065】
(制御部2による処理例)
図11は、液体吐出システム100に塗装動作を行わせるための制御部2による処理を例示するフローチャートである。制御部2は、例えば液体吐出装置10の操作部を介して、ユーザによる塗装開始操作入力を受け付けたタイミングに
図11の処理を開始する。
【0066】
まず、ステップS111において、制御部2は、ロボット20から送信された吐出ヘッド1の位置情報Psを、入出力部203を介して入力する。
【0067】
続いて、ステップS112において、制御部2は、位置情報Psをタイムスタンプとともに格納部204により一時保持する。タイムスタンプは、CPU21の外部に設けたインターバルタイマ回路により生成してもよいし、CPU21に内蔵されたタイマを使用して生成してもよい。
【0068】
続いて、ステップS113において、制御部2は、予め定められた位置情報Psの取得周期に対応する時間を経過したか否かを判定する。
【0069】
ステップS113において経過していないと判定した場合には(ステップS113、NO)、制御部2は、ステップS113の処理を再度行う。一方、経過したと判定した場合には(ステップS113、YES)、制御部2は、ステップS114において、ロボット20から送信された吐出ヘッド1の位置情報Psを、入出力部203を介して入力する。
【0070】
続いて、ステップS115において、制御部2は、位置情報Psに基づいて、吐出ヘッド1が塗装開始位置まで搬送されたか否かを判定する。
【0071】
ステップS115において搬送されていないと判定した場合には(ステップS115、NO)、制御部2は、ステップS119に処理を移行する。一方、搬送されたと判定した場合には(ステップS115、YES)、制御部2は、ステップS116において、位置情報Psが格納部204により一時保持した位置情報Psに等しいか否かを判定する。
【0072】
ステップS116において等しくないと判定した場合には(ステップS116、NO)、制御部2は、ステップS119に処理を移行する。一方、等しいと判定した場合には(ステップS116、YES)、制御部2は、ステップS117において、同期制御部205により、吐出ヘッド1の搬送速度、吐出周期および変形周期を算出する。
【0073】
続いて、ステップS118において、制御部2は、吐出周期に基づき吐出周期信号Ssを生成し、変形周期に基づき変形周期信号Fsを生成する。
【0074】
続いて、ステップS119において、制御部2は、位置情報Psをタイムスタンプとともに格納部204により一時保持する。
【0075】
続いて、ステップS120において、制御部2は、吐出ヘッド1が塗装終了位置まで搬送されたか否かを判定する。
【0076】
ステップS120において搬送されていないと判定した場合には(ステップS120、NO)、制御部2は、ステップS113以降の処理を再度行う。一方、搬送されたと判定した場合には(ステップS120、YES)、制御部2は処理を終了する。
【0077】
以上のようにして、制御部2は、液体吐出システム100に塗装動作を行わせることができる。
【0078】
<液体吐出装置10および液体吐出システム100の作用効果>
以上説明したように、液体吐出装置10は、駆動電圧Eに応じて変形する圧電部材14を用いてノズル孔12から液滴Q(液体)を吐出する吐出ヘッド1と、吐出ヘッド1による液滴Qの吐出を制御する制御部2と、を有する。制御部2は、吐出ヘッド1による液滴Qの吐出周期よりも短い変形周期で圧電部材14を変形させる。吐出周期よりも短い変形周期で圧電部材14を変形させることにより、駆動電圧Eの電位は、第2電位Lまで低下する前に第1電位H側に変化し、変形周期に応じて中間電位Mを略中心に振動するように変化する。これにより、第1電位Hと第2電位Lとの間の電位差に対応する駆動電圧E1とは異なる駆動電圧であって、第1電位Hと中間電位Mとの間の電位差に対応する駆動電圧E2を得ることができる。液体吐出装置10では、駆動電圧Eを可変にするための電気回路を新たに設けないため、吐出ヘッド1の駆動回路規模が大きくなることを抑制しつつ、吐出ヘッド1の駆動電圧を可変にすることができる。
【0079】
また液体吐出装置10は、駆動電圧Eの電位を第1電位H側に変化させるPch-MOSFET281(第1可変部)と、駆動電圧Eの電位を第2電位L側に変化させるNch-MOSFET282(第2可変部)と、を有する。制御部2は、Nch-MOSFET282により駆動電圧Eの電位を第1電位Hから第2電位L側に変化させている際に、駆動電圧Eの電位が第2電位Lになる前に、Pch-MOSFET281により駆動電圧Eの電位を第1電位H側に変化させる。これにより、液体吐出装置10は、第2電位Lまで低下する前に、駆動電圧Eの電位を第1電位H側に変化させることができ、駆動電圧E1よりも小さい駆動電圧E2を得ることができる。
【0080】
また本実施形態では、吐出ヘッド1は、圧電部材14に接続する弁体15の駆動によりノズル孔12を開閉することによって、液滴Qをノズル孔12から吐出し、弁体15は、圧電部材14が駆動電圧Eに応じて変形することにより駆動される。この構成により、液滴Qを長い距離飛翔させること等が可能なバルブジェット方式の吐出ヘッド1において、吐出ヘッド1の駆動回路規模が大きくなることを抑制しつつ、吐出ヘッド1の駆動電圧を可変にすることができる。但し、本実施形態は、バルブジェット方式の吐出ヘッド1に限定されず、各種の吐出方式の吐出ヘッドに対しても適用可能である。
【0081】
また本実施形態では、吐出ヘッド1は、複数のノズル孔12と、複数のノズル孔12ごとに設けられた圧電部材14と、を有し、制御部2は、複数のノズル孔12ごとに設けられた圧電部材14のそれぞれを、吐出周期よりも短い周期により変形させる。複数のノズル孔12を有する吐出ヘッド1では、製造誤差等によって複数のノズル孔12ごとで液体吐出特性がばらつく場合があり、このようなばらつきは、液体吐出装置10による塗装品質や画像形成品質等を低下させる。複数のノズル孔12ごとに設けられた圧電部材14のそれぞれを、吐出周期よりも短い周期で変形させることにより、複数のノズル孔12それぞれに対応する圧電部材14に印加する駆動電圧Eを異ならせることができる。この結果、複数のノズル孔12ごとでの液体吐出特性のばらつきを補償し、液体吐出装置10による塗装品質や画像形成品質等の低下を抑制することができる。
【0082】
また本実施形態では、駆動電圧Eは、第1電位Hと第2電位Lとの間における中間電位Mと、第1電位Hと、の間の電位差であり、複数のノズル孔12それぞれを示すノズル孔情報と、駆動電圧Eの電位が第1電位Hから中間電位Mへ移行する第1移行時間(移行時間)と、の対応情報207を格納する格納部204を有する。制御部2は、ノズル孔情報に基づき格納部204を参照して取得される第1移行時間に基づき、複数のノズル孔12ごとに設けられた圧電部材14を変形させる。これにより、複数のノズル孔12ごとでの液体吐出特性のばらつきを補償し、液体吐出装置10による塗装品質や画像形成品質等の低下を抑制することができる。
【0083】
また本実施形態では、液体吐出システム100は、液体吐出装置10と、吐出ヘッド1を移動させるロボット20(移動機構)と、を有する。制御部2は、ロボット20により移動される吐出ヘッド1の位置に基づき、吐出ヘッド1に液滴Qを吐出させる。液体吐出システム100は、ロボット20を駆動させることにより吐出ヘッド1のXYZ空間内の所望の位置に移動させることができるため、様々な形状を有する対象物200の表面に液滴Qを付与し、塗装や画像形成を行うことができる。
【0084】
また本実施形態では、ロボット20は、所定の周期信号に基づいて吐出ヘッド1を移動させ、制御部は、この周期信号に基づいて取得される吐出周期よりも短い変形周期により圧電部材14を変形させる。これにより、液体吐出システム100は、ロボット20の動作に同期させつつ、吐出ヘッド1の駆動電圧Eを可変にすることができる。
【0085】
また本実施形態では、制御部2は、ロボット20による吐出ヘッド1の移動方向と、周期信号と、に基づいて取得される吐出周期よりも短い変形周期により圧電部材14を変形させる。これにより、液体吐出システム100は、ロボット20の動作に対する同期精度を向上させつつ、吐出ヘッド1の駆動電圧Eを可変にすることができる。
【0086】
[第2実施形態]
次に第2実施形態に係る液体吐出装置について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成部には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0087】
図12は、第2実施形態に係る液体吐出装置10aの構成を例示するブロック図である。液体吐出装置10aは、吐出ヘッド1aを有する。吐出ヘッド1aは、温度センサ17を有する。
【0088】
ここで、吐出ヘッド1aは、圧電部材14を駆動させること等によって温度上昇し、液体の粘度特性等を変化させる場合がある。液体の粘度特性等が変化すると、駆動波形Drが適正でなくなり、吐出ヘッド1による所望の液体吐出特性が得られなくなる。
【0089】
本実施形態では、温度センサ17は、吐出ヘッド1aの温度を検出し、温度情報Thを制御部2に出力する。制御部2は、温度情報Thに応じて圧電部材14を変形させることにより、駆動波形Drにおける駆動電圧Eを変化させる。これにより、吐出ヘッド1aの温度上昇等によって液体の粘度特性等が変化した場合にも、駆動波形Drを適正化できるため、液体吐出装置10aは、吐出ヘッド1による所望の液体吐出特性を得ることができる。
【0090】
温度センサ17が設けられる位置に特段の制限はないが、吐出ヘッド1aにおいて発熱しやすい圧電部材14の近傍に設置されることが好ましい。また液体吐出装置内の温度変化によっても液体の粘度特性等が変化する場合がある。このため、温度センサ17を吐出ヘッド1a以外の場所に設け、液体吐出装置10aは、液体吐出装置10aの内部温度に応じて圧電部材14を変形させることもできる。これにより、液体吐出装置10a内の温度上昇等によって液体の粘度特性等が変化した場合にも、駆動波形Drを適正化でき、液体吐出装置10aは、吐出ヘッド1による所望の液体吐出特性を得ることができる。
【0091】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。すなわち、本発明の範囲内で種々の変形および改良が可能である。
【0092】
実施形態において、吐出ヘッド1から吐出される液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0093】
対象物200は、液体が付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては,車体、建材、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0094】
また実施形態は、液体吐出方法も含む。例えば液体吐出方法は、液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、吐出ヘッドにより、駆動電圧に応じて変形する圧電部材を用いてノズル孔から液体を吐出し、制御部により、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御し、前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出周期よりも短い変形周期で前記圧電部材を変形させる。このような液体吐出方法により、上述した液体吐出装置と同様の効果を得ることができる。
【0095】
また実施形態は、プログラムも含む。例えばプログラムは、吐出ヘッドにより、駆動電圧に応じて変形する圧電部材を用いてノズル孔から液体を吐出し、制御部により、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御し、前記制御部は、前記吐出ヘッドによる前記液体の吐出周期よりも短い変形周期で前記圧電部材を変形させる、処理を液体吐出装置に実行させる。このようなプログラムにより、上述した液体吐出装置と同様の効果を得ることができる。
【0096】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0097】
1 吐出ヘッド
11 ノズル板
12 ノズル孔
13 液室
14 圧電部材
15 弁体
16 封止部材
17 温度センサ
2 制御部
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 HDD/SSD
25 接続I/F
26 吐出周期信号生成回路
27 変形周期信号生成回路
28 駆動波形生成回路
280 デジタル駆動波形生成回路
281 Pch-MOSFET(第1可変部)
282 Nch-MOSFET(第2可変部)
201 塗装データ生成部
202 搬送指令部
203 入出力部
204 格納部
205 同期制御部
206 駆動波形生成部
207 対応情報
10 液体吐出装置
100 液体吐出システム
200 対象物
300 載置台
Cm 搬送指令
P 加圧液体
Q 液滴
Ps 位置情報
Dr 駆動波形
E、E1、E2 駆動電圧
Ss 吐出周期信号
Fs 変形周期信号
Ng Nchゲート信号
Pg Pchゲート信号
Pt 塗装データ
T1、T2 期間
Th 温度情報
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】