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特開2023-124548共重合体ゴム、ゴム組成物、ゴム架橋物、ホース材、およびシール材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124548
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】共重合体ゴム、ゴム組成物、ゴム架橋物、ホース材、およびシール材
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/00 20060101AFI20230830BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C08F220/00
C08L33/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028366
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂東 文明
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG041
4J002DA036
4J002EF059
4J002EN077
4J002ER028
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD158
4J002FD179
4J002GJ02
4J002GL00
4J100AA02Q
4J100AB02Q
4J100AJ08R
4J100AJ09R
4J100AJ10R
4J100AL03P
4J100AL04P
4J100AL05P
4J100AM02R
4J100BA04R
4J100BC04R
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA09
4J100DA25
4J100EA01
4J100FA03
4J100FA20
4J100GA18
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】スコーチ安定性に優れたゴム組成物を与えることができると共に、圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることができる共重合体ゴムを提供すること。
【解決手段】一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体と、ラジカル重合性単量体とを共重合してなる共重合体ゴムが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体と、ラジカル重合性単量体とを共重合してなる共重合体ゴム。
【化1】
(上記一般式(1)中、RおよびRのうち、いずれか一方は水素原子、他方はアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、nが0または1の整数である請求項1に記載の共重合体ゴム。
【請求項3】
ガラス転移温度が0℃以下である請求項1または2に記載の共重合体ゴム。
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体の単位の含有割合が0.1~10重量%である請求項1~3のいずれかに記載の共重合体ゴム。
【請求項5】
前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、共役ジエン、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、エチレンから選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の共重合体ゴム。
【請求項6】
前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸エステルである請求項5に記載の共重合体ゴム。
【請求項7】
ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が10~150である請求項1~6のいずれかに記載の共重合体ゴム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の共重合体ゴムと、架橋剤とを含有するゴム組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項10】
請求項8に記載のゴム組成物を含有するホース材またはシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スコーチ安定性に優れると共に、圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることができる共重合体ゴム、このような共重合体ゴムを用いて得られるゴム組成物、ゴム架橋物、ホース材、およびシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、用途に応じて様々な性能を付与されたゴム製品が開発されてきた。例えば、特許文献1には、シール部品の製造に用いられ、スコーチ安定性に優れたアクリルゴム組成物が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、高速での加硫が可能であるとともにスコーチ安定性に優れたアクリルゴム組成物が提供される。しかしながら、アクリルゴム組成物から得られる加硫成形品の耐圧縮永久歪特性に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/117849号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、スコーチ安定性に優れ、かつ、圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることができる共重合体ゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定のカルボキシル基含有単量体と、ラジカル重合性単量体とを共重合してなる共重合体ゴムは、スコーチ安定性に優れ、かつ、圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体と、ラジカル重合性単量体とを共重合してなる共重合体ゴムが提供される。
【化1】
(上記一般式(1)中、RおよびRのうち、いずれか一方は水素原子、他方はアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)
【0008】
本発明の共重ゴムでは、前記一般式(1)において、nが0または1の整数であることが好ましい。
本発明の共重合体ゴムでは、ガラス転移温度が0℃以下であることが好ましい。
本発明の共重合体ゴムでは、前記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体単位の含有割合が0.1~10重量%であることが好ましい。
本発明の共重合体ゴムでは、前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル、共役ジエン、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、エチレンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の共重合体ゴムでは、前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
本発明の共重合体ゴムでは、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が10~150であることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、上記の共重合体ゴムと、架橋剤とを含有するゴム組成物が提供される。
本発明によれば、上記のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
本発明によれば、上記のゴム組成物を含有するホース材またはシール材が提供される。
【発明の効果】
【0010】
スコーチ安定性に優れ、かつ、耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることができる共重合体ゴム、このような共重合体ゴムを用いて得られるゴム組成物、ゴム架橋物、並びに、当該ゴム組成物を用いて得られるホース材、およびシール材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の共重合体ゴムは、下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体と、ラジカル重合性単量体とを共重合してなる共重合体ゴムである。
【化2】
(上記一般式(1)中、RおよびRのうち、いずれか一方は水素原子、他方はアルキル基であり、nは、0~3の整数である。)
【0012】
<カルボキシル基含有単量体>
本発明で用いられるカルボキシル基含有単量体は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化3】
上記一般式(1)において、RおよびRのうち、いずれか一方は水素原子、他方はアルキル基であり、nは、0~3の整数である。アルキル基としては、炭素数が1~10のアルキル基が好ましい。炭素数が1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基などが挙げられ、これらの中でも、炭素数が1~10の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数が1~8の直鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数が1~4の直鎖状のアルキル基がさらに好ましい。炭素数1~10の直鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基がより好ましく、ブチル基がさらに好ましい。アルキル基は、置換基を有するものであってもよく、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などの炭素数1~10のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2-クロロフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、炭素数6~10のアリール基;などが挙げられる。これら置換基は、任意の位置とすることができる。nは、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。すなわち、上記一般式(1)で表される化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】
(上記一般式(2)中、RおよびRは、上記一般式(1)と同様。)
【0013】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、アリルコハク酸モノメチル、アリルコハク酸モノエチル、アリルコハク酸モノプロピル、アリルコハク酸モノブチル、アリルコハク酸モノオクチル、アリルコハク酸モノシクロヘキシルなどが挙げられる。これらのなかでも、アリルコハク酸モノメチル、アリルコハク酸モノエチル、アリルコハク酸モノブチル、アリルコハク酸モノオクチルが好ましく、アリルコハク酸モノブチルがより好ましい。
【0014】
なお、上記一般式(1)および(2)中のRおよびRについて、Rが水素原子で、Rがアルキル基であってもよく、反対に、Rがアルキル基で、Rが水素原子であってもよい。また、上記一般式(1)、(2)で表される化合物としては、Rが水素原子でRがアルキル基であるものと、Rがアルキル基でRが水素原子であるものとが混在したものであってもよく、すなわち、この場合には、本発明の共重合体ゴムにおいて、Rが水素原子でRがアルキル基である単量体単位と、Rがアルキル基でRが水素原子である単量体単位が混在していてもよい。なお、この場合における、Rが水素原子でRがアルキル基である単量体単位と、Rがアルキル基でRが水素原子である単量体単位との割合は、任意であり、特に限定されない。
【0015】
上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体に由来の単位は、本発明の共重合体ゴム中において架橋性の単量体単位として作用するものであり、本発明の共重合体ゴムは、上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体に由来の単位を含有していることにより、スコーチ安定性に優れていると共に、圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることができる。
【0016】
本発明の共重合体ゴムにおける上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体の単位の含有割合は、好ましくは0.1~10重量%であり、より好ましくは0.5~7重量%であり、さらに好ましくは1~5重量%である。上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体の単位の含有量が上記範囲であることにより、スコーチ安定性と得られるゴム架橋物の圧縮永久歪み性とのバランスを、より優れたものとすることができる。特に、上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体の単位の含有量を上記下限以上とすることにより、架橋を十分に行うことができ、得られるゴム架橋物の圧縮永久歪率が小さくなる。一方、上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体の単位の含有量を上記上限以下とすることにより、本発明の共重合体ゴムのスコーチを抑制(スコーチ安定性を向上)したり、得られるゴム架橋物の伸びを大きくさせたりすることができる。
【0017】
本発明で用いられる上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体として、上記一般式(2)で表される化合物を用いる場合には、例えば、アリルコハク酸無水物と炭素数が1~10のアルコールを加熱還流によって反応させることで得ることができる。
【0018】
また、本発明の共重合体ゴムのカルボキシル基の含有量、すなわち、共重合体ゴム100g当たりのカルボキシル基のモル数(ephr)は、好ましくは4×10-4~4×10-1(ephr)、より好ましくは1×10-3~2×10-1(ephr)、さらに好ましくは5×10-3~1×10-1(ephr)である。カルボキシル基の含有量を上記下限以上とすることにより、架橋を十分に行うことができ、得られるゴム架橋物の圧縮永久歪率が小さくなる。一方、カルボキシル基の含有量を上記上限以下とすることにより、本発明の共重合体ゴムのスコーチを抑制したり、得られるゴム架橋物の伸びを大きくさせたりすることができる。
【0019】
本発明の共重合体ゴムは、上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体に由来の単位を含有するが、本発明の作用効果を損なわない範囲で、本発明の共重合体ゴムが、上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体に由来の単位以外のカルボキシル基含有単量体単位をさらに含有していてもよい。上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体に由来の単位以外のカルボキシル基含有単量体単位を形成する単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸、およびα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸とアルカノールとのモノエステルなどが挙げられる。
【0020】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、およびケイ皮酸などが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸;シトラコン酸;クロロマレイン酸;などが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸とアルカノールとのモノエステルの具体例としては、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノn-ブチルなどのブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘキセニル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘキセニルなどの脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノn-ブチル、イタコン酸モノシクロヘキシルなどのイタコン酸モノエステル;などが挙げられる。
これらの中でも、ブテンジオン酸モノ鎖状アルキルエステル、または脂環構造を有するブテンジオン酸モノエステルが好ましく、フマル酸モノn-ブチル、マレイン酸モノn-ブチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘキシルがより好ましく、フマル酸モノn-ブチルおよびフマル酸モノシクロヘキシルがさらに好ましい。上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体以外のこれらのカルボキシル基含有単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。なお、上記単量体のうち、ジカルボン酸には、無水物として存在しているものも含まれる。
【0021】
<ラジカル重合性単量体>
ラジカル重合性単量体としては、ラジカル重合性を有し、かつ、上記した一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体と共重合可能な単量体であればよく、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル単量体〔アクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体の意。以下、(メタ)アクリル酸メチルなど同様。〕、(メタ)アクリロニトリル単量体、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、(メタ)アクリルアミド単量体、酢酸ビニル単量体、エチレン単量体等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましく、特に、本発明の共重合体ゴムは、分子中に、主成分(たとえば、共重合体ゴム中の全単量体単位中50重量%以上)として、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含有するアクリルゴムであることが好ましい。
【0022】
本発明の共重合体ゴムがアクリルゴムである場合において、ゴム成分の主成分としての(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体などを挙げることができる。
【0023】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数1~8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸n-ブチルが好ましく、アクリル酸エチルおよびアクリル酸n-ブチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0024】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、炭素数2~12のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルがより好ましく、炭素数2~8のアルコキシアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルがより好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、および(メタ)アクリル酸4-メトキシブチルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、および(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルが好ましく、アクリル酸2-エトキシエチル、およびアクリル酸2-メトキシエチルが特に好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0025】
本発明の共重合体ゴムがアクリルゴムである場合において、アクリルゴム中における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、50~100重量%であり、好ましくは50~99.9重量%、より好ましくは60~99.5重量%、さらに好ましくは70~99.5重量%、特に好ましくは70~99重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の耐候性、耐熱性、および耐油性を向上させることができる。
【0026】
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位30~100重量%、および(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位70~0重量%からなるものとすることが好ましい。
【0027】
なお、本発明の共重合体ゴムが、アクリルゴムである場合には、必要に応じて、その他の架橋性単量体単位を有していてもよい。その他の架橋性単量体単位を形成する架橋性単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。本発明の共重合体ゴム中における、その他の架橋性単量体単位の含有量は、好ましくは0~9.9重量%、より好ましくは0~6.5重量%、さらに好ましくは0~4.5重量%、特に好ましくは0~4重量%である(ただし、共重合体ゴム中における、全ての架橋性単量体単位の合計量としては、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7重量%、さらに好ましくは0.5~5重量%、特に好ましくは1~5重量%である。)。これらその他の架橋性単量体単位の含有量を上記上限以下とすることにより、本発明の共重合体ゴムのスコーチを抑制したり、得られるゴム架橋物の伸びを大きくさせたりすることができる。
【0028】
また、本発明の共重合体ゴムが、アクリルゴムである場合には、上記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体の単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、および架橋性単量体単位に加えて、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル単量体や、その他の架橋性単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を有していてもよい。
【0029】
共重合可能なその他の単量体としては、特に限定されないが、たとえば、芳香族ビニル単量体、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、アクリロイルオキシ基を2個以上有する単量体(以下、「多官能アクリル単量体」と言うことがある。)、オレフィン系単量体、共役ジエン単量体、アミド基を有する単量体、ビニルエステル系単量体およびビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0030】
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、およびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
多官能アクリル単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
オレフィン系単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、および1-オクテンなどが挙げられる。
共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどが挙げられる。
アミド基を有する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)ア
クリルアミドなどが挙げられる。
ビニルエステル系単量体の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどが挙げられる。
ビニルエーテル化合物の具体例としては、エチルビニルエーテル、およびn-ブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
これらの中でも、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレンおよび酢酸ビニルが好ましく、スチレン、アクリロニトリル、およびエチレンがより好ましい。
【0032】
共重合可能なその他の単量体は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
共重合体ゴム中における、その他の単量体の単位の含有量は、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~49.9重量%、さらに好ましくは0~39.5重量%、特に好ましくは0~29.5重量%である。
【0033】
本発明の共重合体ゴムは、上記単量体を重合することにより得ることができる。重合反応の形態としては、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、および溶液重合法のいずれも用いることができるが、重合反応の制御の容易性などの点から、乳化重合法によるのが好ましい。
【0034】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。重合は、通常、0~70℃、好ましくは5~50℃の温度範囲で行われる。
【0035】
本発明の共重合体ゴムの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは50,000~5,000,000、より好ましくは100,000~4,000,000、さらに好ましくは150,000~3,500,000である。アクリルゴムの重量平均分子量は、たとえば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって、ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0036】
本発明の共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)(ポリマームーニー)は、好ましくは10~150,より好ましくは10~80、さらに好ましくは20~70、特に好ましくは25~60である。
【0037】
本発明の共重合体ゴムのガラス転移温度は、好ましくは0℃以下、より好ましくは-70~-5℃、さらに好ましくは-50~-7℃である。
【0038】
本発明の共重合体ゴムを製造するための方法としては、特に限定されず、任意の方法を採用すればよいが、たとえば、次の方法が好適である。すなわち、共重合体ゴムを形成するカルボキシル基含有単量体とラジカル重合性単量体成分とを、重合触媒の存在下で乳化重合することにより製造する方法が好適である。
【0039】
乳化重合に用いる単量体成分としては、上記の各単量体を挙げることができ、好適な単量体も上記の通りである。また、各単量体の使用量は、上記の組成範囲となるように適宜選択すればよい。
【0040】
乳化剤としては、特に限定されず、たとえば、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤などを挙げることができる。
【0041】
ノニオン性乳化剤としては、特に限定されず、たとえば、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンドデシルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルがより好ましい。ノニオン性乳化剤の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン換算での重量平均分子量)は、特に限定されないが、通常300~50,000、好ましくは500~30,000、より好ましくは1,000~15,000の範囲である。これらのノニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
アニオン性乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸などの脂肪酸の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウムなどの高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステルナトリウムなどのリン酸エステル塩、好ましくは疎水基の炭素数が6以上のアルコールのリン酸エステルナトリウムなどの高級アルコール燐酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸塩などを挙げることができる。これらのアニオン性乳化剤の中でも、リン酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩が好ましく、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩がより好ましく、高級アルコール燐酸エステル塩がさらに好ましい。これらのアニオン性乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
カチオン性乳化剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライドなどを挙げることができる。
【0044】
これら乳化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤が好ましく、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いることがより好ましい。ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いることにより、乳化重合時における重合装置(たとえば、重合槽)へのポリマーなどの付着による汚れの発生を有効に抑制しつつ、後述する凝固工程において用いる凝固剤の使用量を低減することが可能となり、結果として、最終的に得られる共重合体ゴム中における凝固剤量を低減することができ、これにより得られるゴム架橋物の耐水性を向上させることができる。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いることにより、乳化作用を高めることができるため、乳化剤自体の使用量をも低減することができ、結果として、最終的に得られる共重合体ゴム中に含まれる乳化剤の残留量を低減することができ、これにより、共重合体ゴムの耐水性をより高めることができる。
【0045】
乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体成分100重量部に対する、用いる乳化剤の総量で、通常0.01~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは1~3重量部の範囲である。また、ノニオン性乳化剤とアニオン性乳化剤とを組み合わせて用いる場合の使用割合は、ノニオン性乳化剤/アニオン性乳化剤の重量比で、通常1/99~99/1、好ましくは10/90~80/20、より好ましくは13/87~40/60、さらに好ましくは15/85~35/65の範囲である。
【0046】
カルボキシル基含有単量体およびラジカル重合性単量体を含む、重合に用いる単量体成分を、水と乳化剤とを用いて乳化させる方法としては、特に限定されないが、単量体成分と、水と、乳化剤とを混合する方法が好ましく、単量体成分と、水と、乳化剤とをホモジナイザーやディスクタービンなどの攪拌機などを用いて攪拌する方法がより好ましい。なお、単量体乳化液には、必要に応じて、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤などの重合副資材を含有させてもよい。
【0047】
重合開始剤としては、特に限定されず、乳化重合で通常使用されるものを制限なく用いることができる。重合開始剤としては、たとえば、過酸化物、アゾ化合物、過酸化物と還元剤とからなるレドックス系重合開始剤を用いることが好ましい。
【0048】
過酸化物としては、無機系過酸化物、有機系過酸化物のいずれを用いてもよい。
【0049】
無機系過酸化物としては、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、過硫酸カリウム、過酸化水素、過硫酸アンモニウムが好ましく、過硫酸カリウムが特に好ましい。
【0050】
有機系過酸化物としては、たとえば、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、1-ジ-(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)吉草酸n-ブチル、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラエチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソブチリルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンなどが挙げられる。これらの中でも、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
【0051】
アゾ化合物としては、たとえば、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン、2,2’-アゾビス(プロパン-2-カルボアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロパンアミド]、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロパンアミド}などが挙げられる。
【0052】
これらの過酸化物およびアゾ化合物は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。初期重合工程における過酸化物およびアゾ化合物の使用量は、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.001~0.020重量部、より好ましくは0.002~0.015重量部、さらに好ましくは0.003~0.010重量部である。
【0053】
過酸化物と組み合わせて用いられる還元剤としては、乳化重合のレドックス触媒として使用されるものであれば制限なく用いることができる。還元剤としては、少なくとも2種の還元剤を用いることが好ましく、中でも、還元状態にある金属イオン化合物と、それ以外の還元剤との組み合わせが好適である。
【0054】
還元状態にある金属イオン化合物としては、特に限定されないが、たとえば、硫酸第一鉄、ヘキサメチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、ナフテン酸第一銅などが挙げられる。これらの中でも、硫酸第一鉄が好ましい。
【0055】
還元状態にある金属イオン化合物は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。初期重合工程における還元状態にある金属イオン化合物の使用量は、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.0005~0.0030重量部、より好ましくは0.0007~0.0025重量部、さらに好ましくは0.0010~0.0020重量部である。
【0056】
還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤としては、特に限定されないが、たとえば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸またはその塩;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウムなどのエリソルビン酸またはその塩;ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムなどのスルフィン酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アルデヒド亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムの亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸水素カリウムなどのピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウムなどのチオ硫酸塩;亜燐酸、亜燐酸ナトリウム、亜燐酸カリウム、亜燐酸水素ナトリウム、亜燐酸水素カリウムの亜燐酸またはその塩;ピロ亜燐酸、ピロ亜燐酸ナトリウム、ピロ亜燐酸カリウム、ピロ亜燐酸水素ナトリウム、ピロ亜燐酸水素カリウムなどのピロ亜燐酸またはその塩;などが挙げられる。これらの中でも、アスコルビン酸またはその塩、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムが好ましい。
【0057】
還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。初期重合工程における還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤の使用量は、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.005~0.080重量部、より好ましくは0.010~0.060重量部、さらに好ましくは0.020~0.040重量部である。
【0058】
還元状態にある金属イオン化合物と、還元状態にある金属イオン化合物以外の還元剤との好ましい組み合わせとしては、硫酸第一鉄と、アスコルビン酸もしくはその塩および/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムとの組み合わせが挙げられ、硫酸第一鉄と、アスコルビン酸塩および/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムとの組み合わせがより好ましく、硫酸第一鉄と、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムとの組み合わせが特に好ましい。
【0059】
乳化重合における水の使用量は、水の使用量は、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、好ましくは5~500重量部、より好ましくは10~300重量部、さらに好ましくは20~200重量部である。
【0060】
また、乳化重合に際しては、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素補足剤などの重合副資材を使用することができる。
【0061】
乳化重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法で行ってもよいが、半回分式が好ましい。
【0062】
重合温度や重合時間は、特に限定されず、使用する重合触媒の種類等に応じて適宜選択すればよいが、重合温度は、好ましくは0~100℃、より好ましくは5~80℃、さらに好ましくは10~50℃である。また、重合時間は、好ましくは0.5~100時間、より好ましくは1~10時間である。また、重合転化率は、特に限定されないが、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
【0063】
また、重合反応を停止する際には、重合停止剤を用いることができる。重合停止剤としては、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノンなどが挙げられる。重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、重合に用いる単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.1~2重量部である。
【0064】
次いで、得られた乳化重合液に凝固剤を接触させることで、凝固を行い、含水クラムを生成させる。
【0065】
凝固剤としては、特に限定されないが、たとえば、1~3価の金属塩が挙げられる。1~3価の金属塩は、水に溶解させた場合に1~3価の金属イオンとなる金属を含む塩であり、特に限定されないが、たとえば、塩酸、硝酸および硫酸等から選ばれる無機酸や酢酸等の有機酸と、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウムおよびスズ等から選ばれる金属との塩が挙げられる。また、これらの金属の水酸化物なども用いることもできる。
【0066】
1~3価の金属塩の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化マンガン、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化スズなどの金属塩化物;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、硝酸チタン、硝酸マンガン、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸アルミニウム、硝酸スズなどの硝酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸チタン、硫酸マンガン、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸アルミニウム、硫酸スズなどの硫酸塩;等が挙げられる。これらのなかでも、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸ナトリウムが好ましい。その中でも1価または2価の金属塩が好ましく、2価の金属塩がより好ましく、マグネシウム塩がより好ましく、無機マグネシウム塩がさらに好ましく、硫酸マグネシウムが特に好ましい。また、これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0067】
凝固剤の使用量は、重合に用いた単量体成分100重量部に対し、好ましくは0.01~100重量部、より好ましくは0.1~50重量部、さらに好ましくは1~30重量部である。凝固剤の使用量を上記範囲とすることにより、共重合体ゴムの凝固を十分なものとしながら、得られる共重合体ゴムを耐水性に優れたものとすることができる。
【0068】
なお、乳化重合液と、凝固剤とを接触させる方法としては、特に限定されないが、たとえば、凝固剤を含有する水溶液を攪拌しながら、攪拌されている凝固剤を含有する水溶液中に、乳化重合液を添加する方法や、乳化重合液を攪拌しながら、攪拌されている乳化重合液中に、凝固剤を含有する水溶液を添加する方法などが挙げられる。あるいは、攪拌を行わずに、単に、乳化重合液を、凝固剤を含有する水溶液に添加する方法や、凝固剤を含有する水溶液を、乳化重合液に添加する方法を採用してもよい。これらの中でも、凝固剤を含有する水溶液を攪拌しながら、攪拌されている凝固剤を含有する水溶液中に、乳化重合液を添加する方法が好ましく、このような方法を採用して凝固操作を行うことで、凝固により生成する含水クラムの粒径を、比較的均一な範囲に制御することができ、これにより、生成した含水クラムの洗浄効率を高めることができる。
【0069】
凝固剤を含有する水溶液中のマグネシウム塩の濃度は、特に限定されないが、凝固により生成する含水クラムの粒径をより好適に制御するという観点より、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~10重量%、さらに好ましくは1~5重量%である。
【0070】
凝固剤を含有する水溶液の温度(すなわち、凝固温度)は、特に限定されないが、凝固により生成する含水クラムの粒径をより好適に制御するという観点より、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは40~90℃、さらに好ましくは50~85℃である。
【0071】
なお、凝固剤を含有する水溶液を攪拌する際における攪拌方法としては、特に限定されないが、攪拌翼により攪拌を行う攪拌装置を用いる方法が挙げられ、この場合には、攪拌槽中に凝固剤を含有する水溶液を含有させて、攪拌槽中にて、攪拌翼によって、凝固剤を含有する水溶液を攪拌しながら、乳化重合液を添加する方法を採用することが好ましい。
【0072】
さらに、凝固に用いる乳化重合液の固形分濃度は、特に限定されず、乳化重合により得られた状態のまま用いてもよいが、凝固により生成する含水クラムの粒径をより好適に制御するという観点より、固形分濃度を5~50重量%の範囲に調整することが好ましく、10~45重量%の範囲に調整することがより好ましく、20~40重量%の範囲に調整することが特に好ましい。
【0073】
次いで、凝固操作により得られた含水クラムに対して、洗浄を行うことが好ましい。洗浄方法としては、特に限定されないが、たとえば、凝固操作により得られた含水クラムを、水で水洗する方法が挙げられ、好適には、凝固操作により得られた含水クラムを、水と混合する方法などが挙げられる。水洗時の温度としては、特に限定されないが、好ましくは5~60℃、より好ましくは10~50℃であり、混合時間は1~60分、より好ましくは2~30分である。
【0074】
また、水洗を行う際に、含水クラムと混合する、水の量は、特に限定されないが、水洗効率をより高めるという観点より、重合に用いた単量体成分100重量部に対して、50重量部以上となる量とすることが好ましく、より好ましくは50~15000重量部となる量、さらに好ましくは100~10000重量部となる量、特に好ましくは500~5000重量部となる量である。
【0075】
水洗時間は、特に限定されないが、好ましくは1~120分であり、より好ましくは2~60分、さらに好ましくは3~30分である。
【0076】
また、水洗回数は、特に限定されず、好ましくは1~10回であり、より好ましくは1~5回、さらに好ましくは1~3回である。なお、本発明において、水洗回数とは、含水クラムに対し水を添加し、次いで、所定時間混合を行った後、含水クラムと、水洗に使用した水とを分離する操作を、1回の水洗とした場合における回数である。すなわち、たとえば、水洗回数2回とは、含水クラムに対し水を添加し、次いで、所定時間混合を行った後、含水クラムと、水洗に使用した水とを分離する操作を行い、これに続いて、さらに、含水クラムに対し水を添加し、次いで、所定時間混合を行った後、含水クラムと、水洗に使用した水とを分離する操作を行うことを意味する。なお、水洗回数を2回以上とする場合における、水洗に使用する水の温度、水の量、および水洗時間は、同じとしてもよいし、あるいは、異なるものとしてもよい。
【0077】
また、本発明においては、水洗を行った後、さらに洗浄液として酸を使用した酸洗浄を行ってもよい。酸洗浄を行った後には、さらに水洗を行うことが好ましく、水洗の条件としては上述した条件と同様とすればよい。
【0078】
また、洗浄を行った含水クラムに対し、乾燥を行ってもよい。含水クラムの乾燥方法は、特に限定されず、定法に従えばよいが、たとえば、熱風乾燥機、減圧乾燥機、エキスパンダー乾燥機、ニーダー型乾燥機、スクリュー型押出機などの乾燥機を用いて乾燥する方法などが挙げられる。
【0079】
また、含水クラムの乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは80~250℃、より好ましくは100~200℃、さらに好ましくは110~180℃である。
【0080】
本発明の共重合体ゴムは、以上のようにして製造することができる。なお、本発明において、共重合体ゴムは、クラムの状態で得てもよいし、ベール化されたゴム、すなわち、ゴムベール(所定の形状の塊とされた共重合体ゴム)として得てもよい。
【0081】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記の共重合体ゴムと、架橋剤とを含む。
ゴム成分中における、本発明の共重合体ゴム成分の含有割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは100重量%(すなわち、ゴム成分として、実質的に本発明の共重合体ゴム成分のみからなるものを用いた態様)である。
【0082】
ゴム成分を構成する本発明の共重合体ゴム以外のゴムとしては、特に限定されないが、本発明の共重合体ゴム以外のアクリルゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマーなどが挙げられる。
【0083】
本発明の共重合体ゴム以外のゴムは、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。本発明の共重合体ゴムの形状、および、本発明の共重合体ゴム以外のゴムの形状は、特に限定されないが、ベール状、シート状、粉体状等のいずれの形状であってもよい。
【0084】
架橋剤としては、特に限定されないが、たとえば、ジアミン化合物などの多価アミン化合物、およびその炭酸塩;硫黄;硫黄供与体;トリアジンチオール化合物;多価エポキシ化合物;有機カルボン酸アンモニウム塩;有機過酸化物;ジチオカルバミン酸金属塩;多価カルボン酸;四級オニウム塩;イミダゾール化合物;イソシアヌル酸化合物;などの従来公知の架橋剤を用いることができる。これらの架橋剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。これらの中でも、多価アミン化合物、およびその炭酸塩を用いることが好ましい。
【0085】
多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、炭素数4~30の多価アミン化合物、およびその炭酸塩が好ましい。このような多価アミン化合物、およびその炭酸塩の例としては、脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩、ならびに芳香族多価アミン化合物などが挙げられる。
【0086】
脂肪族多価アミン化合物、およびその炭酸塩としては、特に限定されないが、たとえば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、およびN,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミンカーバメートが好ましい。
【0087】
芳香族多価アミン化合物としては、特に限定されないが、たとえば、4,4’-メチレンジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、および1,3,5-ベンゼントリアミンなどが挙げられる。これらの中でも、2,2’-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンが好ましい。
【0088】
また、本発明のゴム組成物は、さらに架橋促進剤を含有していることが好ましい。架橋促進剤としては、特に限定されないが、本発明の共重合体ゴムが、架橋性基としてのカルボキシル基を有するものであり、かつ、架橋剤が多価アミン化合物、またはその炭酸塩である場合には、グアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、脂肪族一価二級アミン化合物、および脂肪族一価三級アミン化合物などを用いることができる。これらのなかでも、グアニジン化合物、ジアザビシクロアルケン化合物、および脂肪族一価二級アミン化合物が好ましく、グアニジン化合物およびジアザビシクロアルケン化合物が特に好ましい。これらの塩基性架橋促進剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。
【0089】
グアニジン化合物の具体例としては、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジンなどが挙げられる。ジアザビシクロアルケン化合物の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ-7-セン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノ-5-ネンなどが挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩の具体例としては、テトラn-ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリn-ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。第三級ホスフィン化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィンなどが挙げられる。
【0090】
脂肪族一価二級アミン化合物は、アンモニアの水素原子の二つを脂肪族炭化水素基で置換した化合物である。水素原子と置換する脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1~30のものである。脂肪族一価二級アミン化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジセチルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、およびジオクタデシルアミンなどが挙げられる。
【0091】
脂肪族一価三級アミン化合物は、アンモニアの三つの水素原子全てを脂肪族炭化水素基で置換した化合物である。水素原子と置換する脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1~30のものである。脂肪族一価三級アミン化合物の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-t-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、およびトリドデシルアミンなどが挙げられる。
【0092】
本発明のゴム組成物中における、架橋促進剤の含有量は、本発明の共重合体ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部であり、より好ましくは0.5~7.5重量部、特に好ましくは1~5重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の引張強度および耐圧縮永久歪み性をより向上させることができる。
【0093】
また、本発明のゴム組成物は、さらに充填剤を含有していてもよい。充填剤としては、特に限定されないが、補強性充填剤、非補強性充填剤などが挙げられ、これらの中でも、補強性充填剤が好ましい。
【0094】
補強性充填剤としては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどのカーボンブラック;湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどのシリカ;などが挙げられる。また、非補強性充填剤としては、石英粉末、ケイソウ土などのクレイ、亜鉛華、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0095】
これら充填剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。本発明のゴム組成物中における、充填剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の共重合体ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは1~200重量部、より好ましくは10~150重量部、さらに好ましくは20~100重量部である。
【0096】
また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて老化防止剤を配合してもよい。老化防止剤としては、特に限定されないが、上述したフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)-ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;2-メルカプトベンズイミダゾールなどのイミダゾール系老化防止剤;6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5-ジ-(t-アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。
【0097】
老化防止剤は、1種単独で、または2種以上を併せて使用することができる。本発明のゴム組成物中における、老化防止剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の共重合体ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.01~15重量部、より好ましくは0.05~10重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部である。
【0098】
また、本発明のゴム組成物は、上記各成分以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤を配合することができる。このような配合剤としては、たとえば、光安定剤;スコーチ防止剤;可塑剤;加工助剤;粘着剤;滑剤;潤滑剤;難燃剤;防黴剤;帯電防止剤;着色剤;架橋遅延剤;などが挙げられる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0099】
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の共重合体ゴムを含むゴム成分に、架橋剤、およびその他必要に応じて用いられる各種配合剤を配合し、オープンロール、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどで混合、混練し、次いで、混練ロールを用いて、さらに混練することなどにより調製される。
【0100】
各成分の配合順序は、特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応や分解しやすい成分である架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合することが好ましい。
【0101】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述の本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明の共重合体ゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、およびロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、130~220℃、好ましくは150~190℃であり、架橋時間は、通常、2分~10時間、好ましくは3分~5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、および熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。
【0102】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、本発明のゴム架橋物は、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。二次架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1~48時間行う。加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
【0103】
そして、このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、O-リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシース、メカニカルシール、ウエルヘッドシール、電気・電子機器用シール、空気圧縮機器用シールなどのシール材;シリンダブロックとシリンダヘッドとの連結部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連結部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダヘッドあるいはトランスミッションケースとの連結部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着された燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;緩衝材、防振材;電線被覆材;工業用ベルト類;チューブ・ホース類;シート類;等として好適に用いられる。
【0104】
また、本発明のゴム架橋物は、自動車用途に用いられる押し出し成形型品および架橋製品として、たとえば、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ベーパーホース、オイルホース等の燃料タンクなどの燃料油系ホース、ターボエアーホース、ミッションコントロールホース等のエアー系ホース、ラジエターホース、ヒーターホース、ブレーキホース、エアコンホースなどの各種ホース類に好適に用いられる。
【実施例0105】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定した。
【0106】
<共重合体ゴムの単量体組成>
共重合体ゴムの単量体組成は、重合反応に用いた各単量体の使用量および重合転化率から算出した。具体的には、各実施例、比較例における乳化重合反応においては、未反応の単量体がいずれも確認できず、重合転化率が略100%であったことから、重合反応に用いた各単量体の使用量を、共重合体ゴムを構成する各単量体単位の含有割合と同一であるとした。
【0107】
<ガラス転移温度>
共重合体ゴムについて、示差走査熱量測定装置(Differential scanning calorimetry;DSC)を用いて、-80℃~30℃までを昇温速度10℃/分にて測定し、微分曲線のピークトップからガラス転移温度の測定を行った。
【0108】
<ムーニー粘度>
共重合体ゴム、およびゴム組成物について、JIS K6300-1:2013に従い、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)の測定を行った。
【0109】
<スコーチ安定性(ムーニースコーチ時間t5、t35)>
ゴム組成物について、JIS K6300に従い、125℃の測定条件下でムーニースコーチの測定を行い、ムーニースコーチ時間t5およびt35(分)を測定した。本測定においては、ムーニー粘度が、ムーニー粘度の最低値Vminから5ポイント上昇した時間をムーニースコーチ時間t5とし、ムーニー粘度の最低値Vminから35ポイント上昇した時間をムーニースコーチ時間t35とした。ムーニースコーチ時間t5、t35が大きいほど、スコーチ安定性に優れると判断できる。
【0110】
<架橋性試験(流動性)>
ゴム組成物について、ゴム加硫試験機(商品名「ムービングダイレオメーターMDR」、αテクノロジーズ社製)を用い、JIS K6300-2に準拠して、170℃、20分の条件で架橋性試験を行った。架橋性試験の結果から、トルクの最小値(ML)(単位はdN・m)、トルクの最大値(MH)(単位はdN・m)、およびトルクの最大値(MH)-トルクの最小値(ML)を求めた。同一組成のゴムであればMH-MLの値が大きいほど一般に架橋反応が効率的に進行したことを表し、圧縮永久歪率に優れる傾向となる。
【0111】
<常態物性(引張強度、破断時伸び、100%伸長時の応力、硬さ)>
ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状のゴム架橋物を得た。次いで、得られたゴム架橋物をギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋し、得られたシート状のゴム架橋物をJIS3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6251:2017に従い、ゴム架橋物の引張強度、破断時の伸び、および100%伸長時の応力をそれぞれ測定した。また、また、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いて、JIS K6253-3に従い、ゴム架橋物の硬さを測定した。
【0112】
<圧縮永久歪み試験>
ゴム組成物を170℃、20分間のプレスによって成型、架橋して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱型試験片を作製し、さらに、170℃にて4時間加熱して二次架橋させた。JISK6262に準じて、上記にて得られた二次架橋後の試験片を25%圧縮させたまま、175℃の環境下で72時間放置した後、圧縮を解放して圧縮永久歪率(%)を測定した。圧縮永久歪率(%)の値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れることを示す。
【0113】
<製造例1>
(アリルコハク酸モノブチルの製造)
窒素雰囲気下で、還流管をつけた容量1000mlの三口フラスコにジクロロメタン(富士フィルム和光純薬製品)350mLとnブタノール25.9g(350mmol)を加え、ジメチルエチルアミン(東京化成工業製品)30.7g(420mmol)を添加し、室温で5分間撹拌した。続いて、アリルコハク酸無水物(東京化成工業製品)49.1g(350mmol)を加え、55℃で還流させ、1時間撹拌し、室温まで冷却した。続いて1.2M希塩酸(富士フィルム和光純薬製品)250mL×3回による抽出、水による洗浄を行った。有機相を分離し、無水硫酸マグネシウム(富士フィルム和光純薬製品)を加えて残った水分を乾燥させ、減圧下で溶媒を除去することで、アリルコハク酸モノブチルの黄色液体69gを得た。
【0114】
<製造例2>
(アリルコハク酸モノメチルの製造)
窒素雰囲気下で、還流管をつけた容量1000mlの三口フラスコにジクロロメタン(富士フィルム和光純薬製品)436mLとメタノール13.9g(435mmol)を加え、ジメチルエチルアミン(東京化成工業製品)38.2g(522mmol)を添加し、室温で5分間撹拌した。続いて、アリルコハク酸無水物(東京化成工業製品)61.1g(435mmol)を加え、55℃で還流させ、1時間撹拌し、室温まで冷却した。続いて1.2M希塩酸(富士フィルム和光純薬製品)250mL×3回による抽出、水による洗浄を行った。有機相を分離し、無水硫酸マグネシウム(富士フィルム和光純薬製品)を加えて残った水分を乾燥させ、減圧下で溶媒を除去することで、アリルコハク酸モノメチルの黄色液体68gを得た。
【0115】
<製造例3>
(アリルコハク酸モノオクチルの製造)
窒素雰囲気下で、還流管をつけた容量1000mlの三口フラスコにジクロロメタン(富士フィルム和光純薬製品)277mLとnオクタノール36.1g(277mmol)を加え、ジメチルエチルアミン(東京化成工業製品)24.3g(333mmol)を添加し、室温で5分間撹拌した。続いて、アリルコハク酸無水物(東京化成工業製品)38.9g(277mmol)を加え、55℃で還流させ、1時間撹拌し、室温まで冷却した。続いて1.2M希塩酸(富士フィルム和光純薬製品)250mL×3回による抽出、水による洗浄を行った。有機相を分離し、無水硫酸マグネシウム(富士フィルム和光純薬製品)を加えて残った水分を乾燥させ、減圧下で溶媒を除去することで、アリルコハク酸モノオクチルの黄色液体67gを得た。
【0116】
<実施例1>
(共重合体ゴム(A-1)の製造)
ホモミキサーを備えた混合容器に、イオン交換水46.294部、単量体成分としてアクリル酸エチル98.5部、製造例1で得られたアリルコハク酸モノブチル1.5部、および、乳化剤としてトリデシルオキシヘキサ(オキシエチレン)リン酸エステルナトリウム塩(アニオン性乳化剤)1.8部を仕込み、攪拌することで単量体乳化液を得た。
【0117】
次いで、温度計、攪拌装置を備えた重合反応槽に、純水170.853部および上記で得られた単量体乳化液2.962部を投入し、窒素気流下で12℃まで冷却した。次いで、重合反応槽中に、上記で得られた単量体乳化液145.132部、硫酸第一鉄(還元剤)0.00033部、アスコルビン酸ナトリウム(還元剤)0.264部、および2.85重量%の過硫酸カリウム水溶液(重合開始剤)7.72部(過硫酸カリウムの量として0.22部)を、温度12℃に保った状態で3時間かけて連続的に滴下した。その後、重合反応槽内の温度を23℃に保った状態にて、1時間反応を継続し、重合転化率が略100%に達したことを確認し、重合停止剤としてのハイドロキノンを添加して重合反応を停止することで、乳化重合液を得た。
【0118】
次いで、温度計と攪拌装置を備えた凝固槽に、85℃に調整した30重量%の硫酸マグネシウム水溶液60部を投入し、85℃に加温した状態で攪拌翼にて攪拌した。そして、攪拌下、上記にて調製した、乳化重合液100部を、硫酸マグネシウム水溶液中に、連続的に添加することで、重合体を凝固させ濾別することで、含水クラムを得た。
【0119】
次いで、上記にて得られた含水クラムの固形分100部に対し、工業用水388部を添加し、凝固槽内で、室温、5分間撹拌した後、凝固槽から水分を排出させることで、含水クラムの水洗を行った。そして、水洗後の含水クラムを110℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させることにより、固形状の共重合体ゴム(A-1)を回収率100%にて得た。得られた共重合体ゴム(A-1)のムーニー粘度を上記した方法にしたがって測定した。この結果を表2に示す。
【0120】
(ゴム組成物の調製)
ニーダーを用いて、共重合体ゴム(A-1)100部に、カーボンブラック(商品名「シーストSO」、東海カーボン社製)60部、ステアリン酸2部、エステル系ワックス(商品名「グレッグG-8205」、DIC社製)1部、および4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラック CD」、大内新興化学工業社製、老化防止剤)2部を添加して、50℃で7分間混合した。得られた混合物を50℃のロールに移して、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名「Diak No.1」、デュポンダウエラストマー社製、架橋剤)0.6部、および、1,3-ジ-o-トリルグアニジン(商品名「ノクセラー DT」、大内新興化学工業社製、架橋促進剤)2部を配合して、ロールにて混練することにより、ゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物を用いて、ムーニー粘度、スコーチ安定性(ムーニースコーチ時間t5、t35)、および流動性の測定、ならびに、ゴム架橋物の常態物性(引張強度、伸び、100%伸長時の応力、硬さ)および圧縮永久歪みの測定を行った。結果を表2に示す。
【0121】
<実施例2>
ヘキサメチレンジアミンカルバメートの使用量を0.6部から0.9部に変更した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得て、実施例1と同様に測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
<実施例3>
アクリル酸エチルの使用量を98.5部から96.5部に変更し、アリルコハク酸モノブチルの使用量を1.5部から3.5部に変更した以外は、共重合体ゴム(A-1)と同様にして共重合体ゴム(A-2)を製造した。そして、共重合体ゴム(A-1)に代えて共重合体ゴム(A-2)を使用した以外は、実施例2と同様にしてゴム組成物を得て、測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0123】
<実施例4>
アリルコハク酸モノブチル1.5部に代えて、製造例2で得られたアリルコハク酸モノメチル1.5部を使用した以外は、共重合体ゴム(A-1)と同様にして共重合体ゴム(A-3)を製造した。そして、共重合体ゴム(A-1)に代えて共重合体ゴム(A-3)を使用した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得て、測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0124】
<実施例5>
アリルコハク酸モノブチル1.5部に代えて、製造例3で得られたアリルコハク酸モノオクチル1.5部を使用した以外は、共重合体ゴム(A-1)と同様にして共重合体ゴム(A-4)を製造した。そして、共重合体ゴム(A-1)に代えて共重合体ゴム(A-4)を使用した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得て、測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】
<実施例6~12>
(共重合体ゴム(A-5)~(A-11)の製造)
アクリル酸エチル98.5部に代えて、表1に記載の単量体とその重量%とした以外は、共重合体ゴム(A-1)と同様にして共重合体ゴム(A-5)~(A-11)を製造した。なお、実施例12においては、3MPaの加圧下において、重合を行った。
【0126】
(ゴム組成物の調製)
共重合体ゴム(A-1)に代えて、表1に記載の共重合体ゴム(A-5)~(A-11)を使用した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得て、それぞれ測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
<比較例1>
アリルコハク酸モノブチル1.5部に代えて、フマル酸モノブチル1.5部を使用した以外は、共重合体ゴム(A-1)と同様にして共重合体ゴム(A-12)を製造した。そして、共重合体ゴム(A-1)に代えて共重合体ゴム(A-12)を使用した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得て、測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
<比較例2>
アリルコハク酸モノブチル1.5部に代えて、マレイン酸モノブチル1.5部を使用した以外は、共重合体ゴム(A-1)と同様にして共重合体ゴム(A-13)を製造した。そして、共重合体ゴム(A-1)に代えて共重合体ゴム(A-13)を使用した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得て、測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
<比較例3>
アリルコハク酸モノブチル1.5部に代えて、イタコン酸モノブチル1.5部を使用した以外は、共重合体ゴム(A-1)と同様にして共重合体ゴム(A-14)を製造した。そして、共重合体ゴム(A-1)に代えて共重合体ゴム(A-14)を使用した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得て、測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
<比較例4>
アリルコハク酸モノブチル1.5部に代えて、フマル酸モノシクロヘキシル1.5部を使用した以外は、共重合体ゴム(A-1)と同様にして共重合体ゴム(A-15)を製造した。そして、共重合体ゴム(A-1)に代えて共重合体ゴム(A-15)を使用した以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を得て、測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
<実施例1~12、比較例1~4の評価>
表2より、一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体と、ラジカル重合性単量体とを共重合してなる共重合体ゴムは、スコーチ安定性に優れ、かつ、得られたゴム架橋物を圧縮永久歪み性に優れたものとすることができた(実施例1~12)。
一方、一般式(1)で表されるカルボキシル基含有単量体を用いず、他のカルボキシル基含有単量体を共重合してなる共重合体ゴムでは、得られたゴム架橋物の圧縮永久歪み性には優れるものの、共重合体ゴムのスコーチ時間が短く、スコーチ安定性に劣る結果となった(比較例1~4)。