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特開2023-124563導電性高分子溶液及び導電性高分子膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124563
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】導電性高分子溶液及び導電性高分子膜
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20230830BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20230830BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20230830BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C08L65/00
C08K5/07
C08K5/3475
C08K5/3492
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028389
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】川上 淳一
(72)【発明者】
【氏名】箭野 裕一
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB03
4J002CE001
4J002EE036
4J002EU176
4J002EU186
4J002FD056
4J002GQ00
4J002GQ02
4J002HA01
(57)【要約】
【課題】塗膜を1層塗りするだけで帯電防止能及び紫外線吸収能の両方を有する層を形成し、製造工程を簡素化できる導電性高分子溶液を実現する。
【解決手段】一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、紫外線吸収剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含む導電性高分子溶液を用いる。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、
紫外線吸収剤(B)と、
有機溶媒(C)と、を含む導電性高分子溶液。
【化1】
[一般式(1)において、Mは、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
【請求項2】
前記紫外線吸収剤(B)は、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の導電性高分子溶液。
【請求項3】
前記有機溶媒(C)は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、及び芳香族系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1または2に記載の導電性高分子溶液。
【請求項4】
前記Mが、総炭素数が8~30のアミン化合物の共役酸、又は総炭素数が8~30の第4級アンモニウムイオンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性高分子溶液。
【請求項5】
前記Mが、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ペンタデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルオクチルアンモニウムイオン、ジメチルデシルアンモニウムイオン、ジメチルドデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性高分子溶液。
【請求項6】
前記ポリチオフェン(A)の含有量が、0.01~10質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性高分子溶液。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤(B)の含有量が、0.01~10質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性高分子溶液。
【請求項8】
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、
紫外線吸収剤(B)と、を含み、
単層膜である、導電性高分子膜。
【化2】
[一般式(1)において、Mは、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子溶液及び導電性高分子膜に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置では、当該装置及びこれを構成する各部材の表面を保護すること、及び/又は外光あるいは光源からの紫外線を吸収することにより、当該装置を構成する各部材の紫外線劣化を防止することが求められる。
【0003】
特許文献1には、基材フィルムと、基材フィルム上に設けられた帯電防止層と、を含む、タッチパネルに用いられる帯電防止フィルムが記載されている。特許文献2には、基材フィルムと表面保護層とを有する表面保護フィルムが記載されている。特許文献3には、脂環式構造を含有する重合体を含む熱可塑性樹脂からなる基材フィルム層と、前記基材フィルム層上に設けられ導電性を有する金属酸化物粒子を含む帯電防止層と、を備える、帯電防止フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/181070
【特許文献2】特開2016-107498
【特許文献3】国際公開第2016/208716
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、紫外線吸収剤が水に溶解することができないため、水系の導電性高分子にて帯電防止能を得ようとした場合、水系塗膜(帯電防止層)及び有機系塗膜(紫外線吸収層)の2層塗りをする必要がある。その結果、1層塗りに比べて製造工程が増えるため、従来技術は、製造工程を簡素化するという観点からさらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明の一態様は、1層塗りするだけで帯電防止能及び紫外線吸収能の両方を有する層を形成し、製造工程を簡素化できる導電性高分子溶液を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下に示す導電性高分子溶液及び導電性高分子膜に関する。
<1>
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、
紫外線吸収剤(B)と、
有機溶媒(C)と、を含む導電性高分子溶液。
【0008】
【化1】
【0009】
[一般式(1)において、Mは、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
<2>
前記紫外線吸収剤(B)は、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、<1>に記載の導電性高分子溶液。
<3>
前記有機溶媒(C)は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、及び芳香族系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種である、<1>または<2>に記載の導電性高分子溶液。
<4>
前記Mが、総炭素数が8~30のアミン化合物の共役酸、又は総炭素数が8~30の第4級アンモニウムイオンである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の導電性高分子溶液。
<5>
前記Mが、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ペンタデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルオクチルアンモニウムイオン、ジメチルデシルアンモニウムイオン、ジメチルドデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の導電性高分子溶液。
<6>
前記ポリチオフェン(A)の含有量が、0.01~10質量%である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の導電性高分子溶液。
<7>
前記紫外線吸収剤(B)の含有量が、0.01~10質量%である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の導電性高分子溶液。
<8>
下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、
紫外線吸収剤(B)と、を含み、
単層膜である、導電性高分子膜。
【0010】
【化2】
【0011】
[一般式(1)において、Mは、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。]
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、上記塗膜を1層塗りするだけで帯電防止能及び紫外線吸収能の両方を有する層を形成でき、製造工程を簡素化できる導電性高分子溶液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその両端の数値を含む以上以下の数値範囲を意味する。
【0014】
〔1.導電性高分子溶液〕
本発明者が鋭意研究を行った結果、特定の式で表される構造単位を含むポリチオフェンと、紫外線吸収剤と、有機溶媒と、を含む導電性高分子溶液を用いることにより、当該導電性高分子溶液を1層塗りするだけで帯電防止能及び紫外線吸収能の両方を有する層を形成でき、製造工程を簡素化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液は、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、紫外線吸収剤(B)と、有機溶媒(C)と、を含む。
【0015】
【化3】
【0016】
〔1-1.ポリチオフェン(A)〕
一般式(1)において、Mは、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。一般式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はフッ素原子を表し、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。
【0017】
上記一般式(2)で表される構造単位は、上記一般式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表し、そのドーピング状態は、上記一般式(1)で表される構造単位中のスルホ基又はスルホナート基がp型ドーパントとして作用することにより発現する。
【0018】
上記一般式(1)及び(2)中のRで示される炭素数3~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0019】
については、成膜性に優れる点で、水素原子、メチル基、エチル基、又はフッ素原子であることが好ましく、水素原子、メチル基、又はフッ素原子であることがより好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0020】
上記一般式(1)中、Mは、アルカリ金属イオン、アミン化合物の共役酸、又は第4級アンモニウムイオンを表す。
【0021】
上記アルカリ金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、Liイオン、Naイオン、又はKイオンを挙げることができる。
【0022】
上記アミン化合物の共役酸は、アミン化合物にプロトンが付加したカチオン化合物を表す。当該アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、一般式NH(R)、NH(R)(R)、およびN(R)(R)(R)で表されるアミン化合物、ピリジン化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0023】
前記R~Rは、各々独立して、置換基を有していてもよい総炭素数1~40のアルキル基(このうち、炭素数3~40のアルキル基については、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい)を表す。このうち、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい総炭素数1~20のアルキル基(このうち、炭素数3~20のアルキル基については、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい)であることがより好ましく、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい総炭素数1~6のアルキル基(このうち、炭素数3~6のアルキル基については、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい)であることがさらに好ましい。
【0024】
また、R~Rが置換基を有するアルキル基である場合の当該置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~20のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、チオール基、アルキルスルフィド基、又はカルボキシル基等が挙げることができ、より好ましくは、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基等のヒドロキシ基を有するアルキル基が挙げられる。
【0025】
ここで、置換基を有していてもよい総炭素数1~40のアルキル基、又は置換基を有していてもよい総炭素数1~20のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエトキシエチル基、ベンジル基、フェネチル基、又はアミノエチル基等が挙げられる。
【0026】
上記の置換基を有していてもよい総炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、又はヒドロキシエトキシエトキシエチル基等が挙げられる。
【0027】
このうち、置換基R~Rとしては、より好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシエチル基が挙げられる。
【0028】
前記ピリジン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、ピコリン、又はルチジン等が挙げられる。これらのうち、ピリジン、ピコリン、又はルチジン等が好ましい。
【0029】
前記イミダゾール化合物としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、又は1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。これらのうち、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、又は1,2-ジメチルイミダゾール等が好ましい。
【0030】
上記アミン化合物の共役酸の総炭素数としては、特に限定されないが、例えば、総炭素数が1~30であってもよく、溶解性の観点から総炭素数が8~30であることが好ましい。
【0031】
アミン化合物の共役酸としては、より具体的には、例えば、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ノルマル-プロピルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、ノルマルブチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、2-ヒドロキシエチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N-メチル-N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、N,N,N-トリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、2,3-ジヒドロキシプロピルアンモニウムイオン、N-メチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウムイオン、N,N-ジメチル-N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)アンモニウムイオン、1,4-ブタンジアンモニウムイオン、トリイソブチルアンモニウムイオン、トリイソペンチルアンモニウムイオン、トリイソオクチルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ペンタデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルオクチルアンモニウムイオン、ジメチルデシルアンモニウムイオン、ジメチルドデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、又はフェニルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらのうち、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ペンタデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルオクチルアンモニウムイオン、ジメチルデシルアンモニウムイオン、ジメチルドデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、及びフェニルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0032】
上記ピリジン化合物の共役酸の総炭素数としては、総炭素数3~20であることが好ましい。ピリジン化合物の共役酸としては、特に限定されないが、例えば、ピリジニウムイオン、2-メチルピリジニウムイオン、3-メチルピリジニウムイオン、4-メチルピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、又はルチジニウムイオン等が挙げられる。これらのうち、ピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、又はルチジニウムイオン等が好ましい。
【0033】
上記イミダゾール化合物の共役酸の総炭素数としては、総炭素数3~20であることが好ましい。イミダゾール化合物の共役酸としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾリウムイオン、2-メチルイミダゾリウムイオン、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムイオン、2-フェニルイミダゾリウムイオン、2-フェニル-4-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチルイミダゾリウムイオン、又は1,2-ジメチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。これらのうち、イミダゾリウムイオン、1-メチルイミダゾリウムイオン、又は1,2-ジメチルイミダゾリウムイオン等が好ましい。
【0034】
上記第4級アンモニウムイオンの総炭素数としては、特に限定されないが、例えば、総炭素数が4~30であってもよく、総炭素数が8~30であることがより好ましい。
【0035】
第4級アンモニウムイオンとしては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラノルマルプロピルアンモニウムイオン、テトラノルマルブチルアンモニウムイオン、テトラノルマルヘキシルアンモニウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、又はテトラヘキシルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらのうち、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0036】
上記の第4級アンモニウムイオンは、第4級アンモニウム塩を本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液に含有させ、前記のポリチオフェン(A)と作用させることにより、得てもよい。前記の第4級アンモニウム塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化物、臭化物、水酸化物、硫酸水素塩等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルプロピルアンモニウムクロリド、テトラノルマルブチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルヘキシルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウム硫酸水素塩、又はテトラヘキシルアンモニウムブロミドが挙げられる。これらのうち、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウム硫酸水素塩、及びテトラヘキシルアンモニウムブロミドからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0037】
上記Mは、塗膜塗工性に優れる点で、オクチルアンモニウムイオン、ジオクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオン、デシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、トリデシルアンモニウムイオン、ペンタデシルアンモニウムイオン、ヘキサデシルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、オレイルアンモニウムイオン、ジ-n-オクチルアンモニウムイオン、ビス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、ジメチルオクチルアンモニウムイオン、ジメチルデシルアンモニウムイオン、ジメチルドデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルアンモニウムイオン、トリヘキシルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピコリニウムイオン、ルチジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、1-メチルイミダゾリウムイオン、1,2-ジメチルイミダゾリウムイオン、デシルトリメチルアンモニウムイオン、ドデシルトリメチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0038】
上記一般式(1)及び(2)中、mは独立して1~10の整数を表し、nは独立して0又は1を表す。mについては、導電性高分子溶液の溶解性と塗布性の観点から、2~6の整数であることが好ましく、2、3、4、又は5であることがより好ましく、2、又は3であることがより好ましい。また、nについては、導電性高分子溶液の溶解性と塗布性の観点から、1であることが好ましい。
【0039】
上記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェンについては、高い導電率が得られる点で、ゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量が、3,500以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることが更に好ましい。なお、上記導電性高分子溶液の操作性の点で、上記ポリチオフェンのゲル浸透クロマトグラフィー測定におけるポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量は、30,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましく、15,000以下であることがより好ましい。そのため、前記ポリチオフェンのポリスチレンスルホン酸換算数平均分子量は、3,500~30,000であることが好ましく、4,000~20,000であることがより好ましく、5,000~15,000であることが更に好ましい。
【0040】
上記のポリチオフェンのゲル浸透クロマトグラフィー法による分子量測定の方法及び条件については、ISO 16014-3:2012(JIS K 7252-3:2016)に従う。
【0041】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液については、導電性向上の観点から、ポリチオフェン(A)の含有量が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましい。また、成膜性向上の観点から、ポリチオフェン(A)の含有量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。そのため、ポリチオフェン(A)の含有量は、0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることが更に好ましい。
【0042】
〔1-1-1.ポリチオフェンの製法〕
なお、上記の一般式(1)で表される構造単位及び一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を少なくとも2つ以上含むポリチオフェンについては、下記一般式(3)で表されるチオフェンモノマーを、水又はアルコール溶媒中、鉄塩及び/又は過硫酸等の酸化剤の存在下に重合させることによって製造することができる。なお、必要に応じて、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、イオン交換樹脂処理等の操作を組み合わせることもできる。
【0043】
【化4】
【0044】
上記式(3)中、R、m、nは、上記一般式(1)及び(2)のR、m、nと同じ定義である。上記式中、Mは、水素イオン又はアルカリ金属イオンを表す。
【0045】
上記一般式(3)で表されるチオフェンモノマーとしては、特に限定されないが、具体的には、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸カリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸ナトリウム、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-ブタンスルホン酸カリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸リチウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸カリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム、及び8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸カリウム等が例示される。
【0046】
前記のMで表されるアルカリ金属イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はセシウムイオンを挙げることができる。
【0047】
上記式(3)で表されるチオフェンモノマーの重合反応に用いる溶媒は、水、アルコール、又はアルコール水溶液であることが好ましい。水としては、例えば、純水が挙げられ、蒸留水、イオン交換水でもよい。アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類が挙げられる。これらのアルコール溶媒は、単独でも使用しても、水と併用してもよい。これらの溶媒のうち、好ましくは水又はメタノールであり、より好ましくは水である。また、溶媒を脱気や窒素等の不活性ガスで置換していてもよい。
【0048】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる溶媒量は、例えば、チオフェンモノマーが溶解する量であり、特に限定されないが、本発明の実施形態に係るチオフェンモノマーの仕込量に対して0.1~100重量倍の範囲が好ましく、1~20重量倍の範囲がより好ましい。
【0049】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤は、酸化的脱水素化反応による酸化重合を進行させる。当該酸化剤は、特に限定されないが、例えば、過硫酸類、鉄塩(II又はIII)、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、硫酸セリウム(IV)、酸素等が挙げられ、これらを単独で又は二種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
ここで、過硫酸類としては、具体的には、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等が例示される。
【0051】
鉄塩としては、具体的には、FeCl、FeBr、Fe(SO、Fe(NO・9HO,過塩素酸鉄、パラ-トルエンスルホン酸鉄(III)等の3価の鉄塩、FeCl、FeBr、FeSO・7HO、酢酸鉄(II)等の2価の鉄塩が挙げられる。これらは無水物を使用しても、水和物を使用してもよい。
【0052】
また、過マンガン酸塩としては、具体的には、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸マグネシウム等が例示される。
【0053】
また、重クロム酸塩としては、具体的には、重クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム等が例示される。
【0054】
これらの酸化剤のうち、FeCl、Fe(SO、Fe(SO、又は過硫酸塩と鉄塩(II又はIII)との併用系が特に好ましい。
【0055】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤の量としては、特に限定されないが、チオフェンモノマーの仕込モル数に対して0.5~50倍モルが好ましい。より好ましくは、1~20倍モルである。更に好ましくは、1~10倍モルである。
【0056】
上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤が、例えば、鉄塩(III)単独系の場合、原料として用いられるチオフェンモノマーに仕込モル数に対して、鉄塩(III)が等倍モル以上であり、且つ溶媒に対する鉄濃度が10重量%以上になるように用いて重合させることが好ましい。より良好な導電性を発現させるためには、溶媒に対する鉄濃度が20重量%以上であることが更に好ましい。尚、ここでいう鉄濃度とは、鉄塩/(鉄塩+水)×100(重量%)で表される値であり、鉄塩は無水物として計算する。
【0057】
又、上記のチオフェンモノマーの重合反応に用いる酸化剤が、過硫酸塩と鉄塩(II又はIII)との併用系である場合には、チオフェンモノマーの仕込モル数に対して、過硫酸塩が0.5~20倍モルの範囲であり、且つ鉄塩(II又はIII)が0.01~10倍モルの範囲であることが好ましく、過硫酸塩が1.5~10倍モルの範囲であり、且つ、鉄塩(II又はIII)が0.05~5倍モルの範囲であることがより好ましい。
【0058】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれであってもよい。
【0059】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応雰囲気は、大気中であっても、窒素やアルゴン等の不活性ガス中であってもよい。より好ましくは不活性ガス中である。
【0060】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応温度は、特に限定されないが、-10~100℃の範囲が好ましく、0~50℃の範囲が更に好ましい。
【0061】
上記のチオフェンモノマーの重合反応の反応時間は、酸化重合が十分進行する時間であり、特に限定されないが、0.5~200時間の範囲が好ましく、0.5~80時間の範囲が更に好ましい。
【0062】
上記の重合反応の反応方法は、特に限定されないが、例えば、上記式(3)で表されるチオフェンモノマーをあらかじめ水に溶解させ、これに酸化剤を一度に又はゆっくりと滴下してもよく、逆に酸化剤の固体又は水溶液に上記式(3)で表されるチオフェンモノマーの水溶液を一度に又はゆっくりと滴下してもよい。また、2種以上の酸化剤を用いる場合には、各酸化剤を順次添加してもよい。
【0063】
尚、上記の重合反応は、酸化剤の添加に伴い液粘度が上昇する傾向があるため、液全体を均一に撹拌する必要がある。撹拌翼については、プロペラ翼、パドル翼、マックスブレンド(登録商標)翼(住友重機械プロセス機器社製)、フルゾーン(登録商標)翼(神鋼環境ソリューション社製)、ディスクタービンが使用でき、反応容器内をより均一に混合するためにはマックスブレンド翼やフルゾーン翼など大型翼が好ましい。その他として、乳化や分散に使用されるホモミキサー、ホモジナイザー等も組み合わせて使用してもよい。一般的な撹拌翼を使用する撹拌法を用いる場合は、反応液に反応容器の気相部のガスが多量に取り込まれて撹拌効率が低下することがない範囲で撹拌翼の回転速度をできるだけ速くすることが好ましい。
【0064】
上記のポリチオフェンの典型的な単離精製方法は、例えば、以下のとおりである。
【0065】
まず、重合反応後の水溶液を、そのまま限外ろ過、透析等の膜分離法を用いて脱塩精製し、その後、陽イオン及び陰イオン交換樹脂に通液することによりMが水素イオンである酸型のポリチオフェン水溶液を得ることができる。
【0066】
更に、必要に応じて、得られた水溶液を粗濃縮し、アセトン等の貧溶媒に添加して沈殿させることにより粉末としてポリチオフェンを得ることもできる。
【0067】
また、塩型ポリチオフェンを形成させる場合には、例えば、上記酸型のポリチオフェンの水溶液に、各種アミン化合物若しくはアンモニウム塩の原液、又はそれらの水溶液若しくはそれらをその他適当な溶媒で希釈した液を加える。特に限定されではないが、例えば、酸型のポリチオフェンの水溶液にアンモニアを添加することによって、MがNH であるアンモニウム塩型ポリチオフェンの水溶液を形成させることができる。必要に応じて、得られた上記水溶液をアセトン等の貧溶媒に添加して粉末状の各種アンモニウム塩型ポリチオフェンを得ることもできる。
【0068】
〔1-2.紫外線吸収剤(B)〕
本願明細書において、紫外線吸収剤とは、約400nm以下の波長において吸収を有する材料を指す。
【0069】
本発明の一実施形態において、紫外線吸収剤(B)としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0070】
ベンゾフェノン系化合物としては、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0071】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジン)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-6-(2-フェニルプロパン-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(2-プロペニル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-クロロ-2-ベンゾトリアゾリル)-6-tert-ブチル-p-クレゾール、2,2’-メチレンビス[6-(ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0072】
シアノアクリレート系化合物としては、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、2,2-ビス{[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート)等が挙げられる。
【0073】
トリアジン系化合物としては、2-エチルヘキサン酸=2-[3-ヒドロキシ-4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェノキシ]エチル、2,2,2-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイル)トリス[5-(へキシルオキシ)-6-メチルフェノール]、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、4,4’,4’’-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイルトリイミノ)トリス安息香酸トリス(2-エチルヘキシル)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、N,N’,N’’-トリ(m-トリル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,2’-[6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル]ビス[5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノール]、2,4,6-トリス(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2,4-ジヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0074】
紫外線吸収剤(B)としては、紫外線吸収能の観点から、ベンゾフェノン系化合物、又はベンゾトリアゾール系化合物が好ましく、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、又は2-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-6-(2-フェニルプロパン-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノールがより好ましい。
【0075】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液については、紫外線吸収能の観点から、紫外線吸収剤(B)の含有量が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましい。また、溶媒への溶解性の観点から、紫外線吸収剤(B)の含有量が10質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。そのため、紫外線吸収剤(B)の含有量は、0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~7.5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが更に好ましい。
【0076】
〔1-3.有機溶媒(C)〕
本発明の一実施形態において、有機溶媒(C)としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、及び芳香族系溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0077】
アルコール系溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、エチレングリコール等が挙げられる。
【0078】
エーテル系溶媒としては、特に限定されないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0079】
ケトン系溶媒としては、特に限定されないが、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、メチルプロピルケトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
【0080】
芳香族系溶媒としては、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0081】
有機溶媒(C)としては、塗膜塗工性に優れる点で、1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、又はメチルイソブチルケトン(MIBK)が好ましい。
【0082】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液については、成膜性向上の観点から、溶媒(C)の含有量が80~99.9質量%であることが好ましく、90~99.9質量%であることがより好ましい。
【0083】
〔1-5.導電性高分子溶液の製法〕
本実施形態に係る導電性高分子溶液の製法としては、特に限定するものではないが、例えば、本実施形態のポリチオフェン(A)の溶液又は固体と、紫外線吸収剤(B)と、有機溶媒(C)と、を混合し、撹拌等によって均一化する方法が挙げられる。
【0084】
混合する際の温度は、特に限定するものではないが、例えば、室温~加温下で行うことができる。好ましくは0℃以上100℃以下が好ましい。混合する際の雰囲気は、特に限定するものではないが、大気中でも、不活性ガス中でもよい。
【0085】
さらに、本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液は、上記以外の成分(D)を含んでいてもよい。上記以外の成分(D)としては、特に限定されないが、例えば、バインダー、可視光吸収剤、及び界面活性剤等を挙げることができる。
【0086】
上記のバインダーとしては、特に限定するものではないが、例えば、セルロース系樹脂、ビニルピロリドン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メチルメタクリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド、ニトロセルロース若しくはその他のセルロース樹脂、又はポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。硬化方法としては、熱硬化やUV硬化が挙げられる。
【0087】
前記のバインダー樹脂については、成膜性に優れる点で、セルロース系樹脂、ビニルピロリドン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0088】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液が上記のバインダーを含有する場合、バインダーの含有量は導電性高分子溶液を100質量%として、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
【0089】
上記の可視光吸収剤としては、特に限定するものではないが、山田化学工業株式会社製のFDB-001、FDB-002、FDB-004、FDB-009、FDB-027、FDB-036等を使用することができる。可視光吸収剤を添加することで吸収波長を広げることが可能となる。
【0090】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液が上記の可視光吸収剤を含有する場合、可視光吸収剤の含有量は導電性高分子溶液を100質量%として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
【0091】
上記の界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン界面活性剤(例えば、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、カチオン界面活性剤(例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド等)、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤等が使用できるが、より好ましくは非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0092】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液が上記の界面活性剤等の成分を含有する場合、それらの含有量は、各々独立して、導電性高分子溶液を100質量%として、0.1~60質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましい。
【0093】
〔2.導電性高分子膜〕
本発明の一実施形態に係る導電性高分子膜は、特に限定されないが、例えば、本発明の一実施形態に係る導電性高分子溶液を、基材に塗布し、次いで乾燥することによって製造することができる。このように製造される導電性高分子膜は、下記一般式(1)で表される構造単位及び下記一般式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むポリチオフェン(A)と、紫外線吸収剤(B)と、を含み、単層膜である。
【0094】
【化5】
【0095】
上記の基材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、レジスト基板等が挙げられる。塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スクリーン印刷法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
【0096】
乾燥温度としては、均一な乾燥状態の導電性高分子膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定されないが、室温(15~25℃)~300℃の範囲が好ましく、より好ましくは室温~250℃の範囲であり、さらに好ましくは90~250℃の範囲である。
【0097】
乾燥雰囲気は、大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。導電性高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【0098】
本発明の一実施形態に係る導電性高分子膜の膜厚としては、特に限定されないが、1×10-2~1×10μmの範囲が好ましい。
【0099】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0100】
以下に本発明の導電性高分子溶液、及び導電性高分子膜に関する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されない。後述する各実施例、各比較例、及び参考例に係る導電性高分子溶液を用いて、以下の方法に従って導電性高分子膜を作製し、作製した導電性高分子膜の表面抵抗率、紫外線透過率、及びヘイズを測定した。
【0101】
〔導電性高分子膜の作製〕
導電性高分子膜を、卓上印刷試験機(松尾産業製K202コントロールコーター)を使用して以下の方法で作製した。塗装直後の膜厚(Wet膜厚)が12μmとなるワイヤーバーを用いて、導電性高分子溶液をPETフィルム基板(東洋紡製 コスモシャイン A4100)に対してスクリーン印刷した後、120℃に設定した恒温槽中で、大気下、2分間加熱し、導電性高分子膜を得た。
【0102】
〔導電性高分子膜の表面抵抗率の測定方法〕
導電性高分子膜の表面抵抗率を以下の方法で測定した。表面抵抗測定器(三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600又は三菱化学社製ハイレスタUX MCP-HT8000)を用いて、測定プローブをASPとして、導電性高分子膜の表面抵抗率を25℃、50%RH雰囲気で測定した。測定は、x方向に6.25mm、y方向に6.25mmの間隔で、9箇所で行い、9箇所での表面抵抗率の平均値を算出した。表面抵抗率が低い程、帯電防止能が高いと言える。
【0103】
〔導電性高分子膜の紫外線透過率の測定〕
導電性高分子膜の紫外線透過率を、紫外可視分光光度計(島津製UV-3100)を使用して測定した。測定は、325nm及び365nmの波長にて行った。紫外線透過率が低い程、紫外線吸収能が高いと言える。
【0104】
〔導電性高分子膜のヘイズ及び全光線透過率の測定方法〕
導電性高分子膜の曇り度(ヘイズ)及び全光線透過率を、曇り度計(日本電色工業製NDH4000)を使用して測定した。ヘイズの値が低い程、曇りが少ない、すなわち透明性が高いと言える。
【0105】
合成例1 ポリチオフェン(PT)の合成
従来公知の製造方法に従って、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ポリマー(下記式(4)及び下記式(5)で表される繰り返し構造を含む重合体、数平均分子量約7000)を製造した。
【0106】
【化6】
【0107】
前記の3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ポリマーを1重量%含む水溶液50.0gに、ジオクチルアミンを5重量%含むメタノール溶液7.4gを撹拌し、次いで得られた析出物を濾別し、乾燥させて、前記ポリマーのジオクチルアミン塩(以下「PT」とも称する)の固体0.6gを得た。すなわち、当該PTは、一般式(1)においてMとしてジオクチルアミンの共役酸(すなわちジオクチルアンモニウムイオン)を含む。
【0108】
実施例1 (導電性高分子溶液の調製と評価)
95.3gの1-ブタノールに、PT 0.2gと、エチルセルロース(東京化成工業製、製品コードG0478)2.5gと、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(富士フィルム和光純薬製、製品コード089-06911)2gと、を加え、撹拌を行って、実施例1に係る導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液から、上記の[導電性高分子膜の作製方法]に従って実施例1に係る導電性高分子膜を作製した。当該導電性高分子膜は、325nm及び365nmの波長において紫外線の透過率が低く、紫外線吸収能を有することが確認された。また、当該導電性高分子膜は、10Ω/□の表面抵抗率を示し、帯電防止能を有することが確認された。
【0109】
実施例2 (導電性高分子溶液の調製と評価)
95.3gのPGMEに、PT 0.2gと、エチルセルロース(東京化成工業製、製品コードG0478)2.5gと、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(富士フィルム和光純薬製、製品コード089-06911)2gと、を加え、撹拌を行って、実施例2に係る導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液から、上記の[導電性高分子膜の作製方法]に従って実施例2に係る導電性高分子膜を作製した。当該導電性高分子膜は、325nm及び365nmの波長において紫外線の透過率が低く、紫外線吸収能を有することが確認された。また、当該導電性高分子膜は、10Ω/□の表面抵抗率を示し、帯電防止能を有することが確認された。
【0110】
実施例3 (導電性高分子溶液の調製と評価)
95.3gのMIBKに、PT 0.2gと、エチルセルロース(東京化成工業製、製品コードG0478)2.5gと、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(富士フィルム和光純薬製、製品コード089-06911)2gと、を加え、撹拌を行って、実施例3に係る導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液から、上記の[導電性高分子膜の作製方法]に従って実施例3に係る導電性高分子膜を作製した。当該導電性高分子膜は、325nm及び365nmの波長において紫外線の透過率が低く、紫外線吸収能を有することが確認された。また、当該導電性高分子膜は、10Ω/□の表面抵抗率を示し、帯電防止能を有することが確認された。
【0111】
比較例1 (導電性高分子溶液の調製と評価)
95.3gの水に、PT 0.2gと、エチルセルロース(東京化成工業製、製品コードG0478)2.5gと、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(富士フィルム和光純薬製、製品コード089-06911)2gと、を加えた。次いで、攪拌を行ったが、前記水に加えた化合物は溶解しなかった。
【0112】
実施例4 (導電性高分子溶液の調製と評価)
94.6gの1-ブタノールに、PT 0.2gと、エチルセルロース(東京化成工業製、製品コードG0478)2.5gと、2-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-6-(2-フェニルプロパン-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール(BASF製、製品名Tinuvin928)2.7gと、を加え、撹拌を行って、実施例4に係る導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液から、上記の[導電性高分子膜の作製方法]に従って実施例4に係る導電性高分子膜を作製した。当該導電性高分子膜は、325nm及び365nmの波長において紫外線の透過率が低く、紫外線吸収能を有することが確認された。また、当該導電性高分子膜は、10Ω/□の表面抵抗率を示し、帯電防止能を有することが確認された。
【0113】
実施例5 (導電性高分子溶液の調製と評価)
94.6gのPGMEに、PT 0.2gと、エチルセルロース(東京化成工業製、製品コードG0478)2.5gと、2-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-6-(2-フェニルプロパン-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール(BASF製、製品名Tinuvin928)2.7gと、を加え、撹拌を行って、実施例5に係る導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液から、上記の[導電性高分子膜の作製方法]に従って実施例5に係る導電性高分子膜を作製した。当該導電性高分子膜は、325nm及び365nmの波長において紫外線の透過率が低く、紫外線吸収能を有することが確認された。また、当該導電性高分子膜は、10Ω/□の表面抵抗率を示し、帯電防止能を有することが確認された。
【0114】
実施例6 (導電性高分子溶液の調製と評価)
94.6gのMIBKに、PT 0.2gと、エチルセルロース(東京化成工業製、製品コードG0478)2.5gと、2-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-6-(2-フェニルプロパン-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール(BASF製、製品名Tinuvin928)2.7gと、を加え、撹拌を行って、実施例6に係る導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液から、上記の[導電性高分子膜の作製方法]に従って実施例6に係る導電性高分子膜を作製した。当該導電性高分子膜は、325nm及び365nmの波長において紫外線の透過率が低く、紫外線吸収能を有することが確認された。また、当該導電性高分子膜は、10Ω/□の表面抵抗率を示し、帯電防止能を有することが確認された。
【0115】
比較例2 (導電性高分子溶液の調製と評価)
94.6gの水に、PT 0.2gと、エチルセルロース(東京化成工業製、製品コードG0478)2.5gと、2-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)-6-(2-フェニルプロパン-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール(BASF製、製品名Tinuvin928)2.7gと、を加えた。次いで、攪拌を行ったが、前記水に加えた化合物は溶解しなかった。
【0116】
参考例1 (導電性高分子溶液の調製と評価)
97.3gのPGMEに、PT 0.2gと、エチルセルロース2.5gと、を加え、撹拌を行って、参考例1に係る導電性高分子溶液を調製した。当該導電性高分子溶液から、上記の[導電性高分子膜の作製方法]に従って参考例1に係る導電性高分子膜を作製した。当該導電性高分子膜は、325nm及び365nmの波長において紫外線の透過率が高く、紫外線吸収能を有さないことが確認された。一方で、当該導電性高分子膜は、10Ω/□の表面抵抗率を示し、帯電防止能は有することが確認された。
【0117】
各実施例、比較例、及び参考例の要約について、紫外線透過率、表面抵抗率、全光線透過率及びヘイズの測定結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
実施例と、比較例1及び2との比較から、溶媒として有機溶媒を用いることにより、溶媒に加えた化合物(ポリチオフェン及び紫外線吸収剤等)が溶解することが確認できた。
【0120】
また、実施例及び比較例と、参考例との比較から、導電性高分子溶液が紫外線吸収剤を含むことにより、325nm及び365nmの波長における紫外線透過率が低く、紫外線吸収能を有することが確認できた。
【0121】
すなわち、本発明に係る導電性高分子溶液を用いることにより、1層塗りするだけで帯電防止能及び紫外線吸収能の両方を有する層が形成されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、例えば帯電防止材、LCD、有機EL、又は透明電極等に利用することができる。