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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012467
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】免疫グロブリン及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230118BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230118BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230118BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C12N1/12
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/08
A61P43/00 111
A61K38/17
A61K47/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022162413
(22)【出願日】2022-10-07
(62)【分割の表示】P 2019522246の分割
【原出願日】2017-10-26
(31)【優先権主張番号】62/413,586
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/413,613
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】マシーラグ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】パッチ,レイモンド,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ケース,マーティン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォール,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ユエ-メイ
(72)【発明者】
【氏名】ランワラ,シャミナ
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド,ジェームズ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】カマチョ,ラウル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,マイケル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ダクイノ,キャサリン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン,ロナルド ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ウェニング
(72)【発明者】
【氏名】チ,エレン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象における治療用ペプチドの半減期を延長するために治療用ペプチドに結合されるように設計されたモノクローナル抗体プラットフォーム、医薬組成物及びその使用方法を提供する。
【解決手段】特定のポリペプチド配列をそれぞれ有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列をそれぞれ有す
る、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決
定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離されたモノクローナ
ル抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記単離されたモノクローナル抗体が、配列番号12のポリペプチド配列を有する重鎖
可変ドメイン(VH)、及び配列番号14のポリペプチド配列を有する軽鎖可変ドメイン
(VL)を含む、請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラ
グメント。
【請求項3】
Fc部分を更に含む、請求項1又は2に記載の単離されたモノクローナル抗体。
【請求項4】
配列番号13のポリペプチド配列を有する重鎖(HC)と、配列番号15のポリペプチ
ド配列を有する軽鎖(LC)とを含む、請求項3に記載の単離されたモノクローナル抗体
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグ
メントをコードする、単離された核酸。
【請求項6】
請求項5に記載の前記単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の前記ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項8】
単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する方法であって
、該方法は、請求項7に記載の前記宿主細胞を、該モノクローナル抗体又はその抗原結合
フラグメントを産生する条件下で培養することと、該抗体又はその抗原結合フラグメント
を該細胞又は培養物から回収することとを含む、前記方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメン
トと、それにコンジュゲートされた少なくとも1つの薬理学的活性部分とを含む、コンジ
ュゲート。
【請求項10】
前記薬理学的活性部分が治療用ペプチドである、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記治療用ペプチドが、配列番号18のシステイン残基において、前記モノクローナル
抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる、請求項10に記載のコンジ
ュゲート。
【請求項12】
前記治療用ペプチドが、リンカーを介して前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フ
ラグメントにコンジュゲートされる、請求項10又は11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記リンカーが、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(P
EG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリ
エステルリンカー、又はPEG及び組み込み複素環からなるハイブリッドリンカーを含む
、請求項12に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)
、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺
激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプ
チドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagnoists)、神経ペプチドY受容体Y5(N
PY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボ
ンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン
、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群か
ら選択される、請求項10~13のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記治療用ペプチドが、配列番号24のポリペプチド配列を含むオキシントモジュリン
である、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記治療用ペプチドの側鎖上に導入された求電子物質(好ましくはブロモアセトアミド
又はマレイミド)を、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの配列番号1
8のシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、これにより、該治療用ペプチドと、
該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとの間に共有結合を形成することを
含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の前記コンジュゲートを製造する方法。
【請求項17】
請求項9~15のいずれか一項に記載の前記コンジュゲートと、薬学的に許容可能な担
体とを含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項9~15のいずれか一項に記載の前記コンジュゲートを含む医薬組成物の製造方
法であって、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、薬学的に許容可
能な担体と組み合わせることで、前記医薬組成物を得ることを含む、前記方法。
【請求項19】
対象における治療用ペプチドの半減期を延長する方法であって、該方法は、該治療用ペ
プチドを、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配
列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖
相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離モノクロー
ナル抗体又はその抗原結合フラグメントとコンジュゲートさせることを含み、該治療用ペ
プチドは、配列番号18のCys残基で、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグ
メントにコンジュゲートされる、前記方法。
【請求項20】
前記治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)
、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺
激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプ
チドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagnoists)、神経ペプチドY受容体Y5(N
PY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボ
ンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン
、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群か
ら選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年10月27日出願の米国仮特許出願第62/413,613号、
及び2016年10月27日出願の米国仮特許出願第62/413,586号に基づく優
先権を主張するものである。これらの開示はそれぞれその全体が参照により本明細書に組
み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、新規抗体又はそのフラグメント、及び、インビボでの治療用ペプチ
ドの半減期を増加させるために治療用ペプチドに結合される担体としてのその使用を目的
とする。本発明は更に、医薬組成物及びその使用方法に関する。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ファイル名「PRD3459 Sequence Listing」及び作
成日2017年10月23日、ファイルサイズ20kbのASCIIフォーマット配列表
として、EFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含む。EFS-Webを介
して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み
込まれる。本明細書に記載される情報と、ファイル名「PRD3459 Sequenc
e Listing」でEFS-Webを介して電子的に提出された配列表との間で、配
列番号1~27の構造に関して不一致がある場合は、本明細書の情報が優先される。
【背景技術】
【0004】
ペプチド系治療薬はしばしば、多くの承認されたペプチド系治療によって証明されてい
るように、特異性及び選択性を提供することができるよう研究開発されているが、それら
を使用することができる方法は、それらの比較的短いインビボ半減期によって制限され得
る。ペプチド系治療薬で評価及び利用されてきた数多くの半減期延長戦略が存在している
。薬理学的活性部分の半減期延長部分として抗体又は抗体フラグメントを使用することに
よって、薬理学的活性部分の急速なインビボ排出を防止又は軽減することが行われている
【0005】
薬理学的活性部分、好ましくはペプチド系治療薬のために、薬理学的に不活性な半減期
延長部分として使用することができる改善された免疫グロブリンの必要が存在する。
【0006】
前述の議論は、単に、当該技術分野が直面する問題の性質のより良い理解を提供するた
めに提示されているものであり、いかなる意味でも先行技術の容認として解釈されるべき
ではなく、本明細書における任意の参考文献の引用は、そのような参照が本出願の「先行
技術」を構成することを容認するものとして解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的な一態様では、本発明は、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及
び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2
、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3
を含む、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0008】
好ましい実施形態では、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラ
グメントは、配列番号12のポリペプチド配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、及び
配列番号14のポリペプチド配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。より好まし
くは、本発明の単離されたモノクローナル抗体は、配列番号13のポリペプチド配列を有
する重鎖(HC)と、配列番号15のポリペプチド配列を有する軽鎖(LC)とを含む。
【0009】
本発明は更に、本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント、ベクター
(好ましくは核酸を含む発現ベクター)、及びそのベクターを含む宿主細胞をコードする
、単離された核酸に関する。更に、本発明の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原
結合フラグメントを産生する方法も提供され、この方法は、本発明の宿主細胞を、そのモ
ノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する条件下で培養する工程と、そ
の抗体又はその抗原結合フラグメントを細胞又は培養物から回収する工程と、を含む。
【0010】
本発明の実施形態は、少なくとも1つの薬理学的活性部分、好ましくは治療用ペプチド
に直接又はリンカーを介してコンジュゲートされた、本発明のモノクローナル抗体又はそ
の抗原結合フラグメントを含む。本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメ
ントは、任意の治療用ペプチドにコンジュゲートされ得る。治療用ペプチドの例としては
、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、ペプチドチロシンチロ
シン(PYY)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-
メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CAR
T)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagnoists)、神経ペプチドY
受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW
、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK
)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピ
ンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0011】
更に、治療用ペプチドにコンジュゲートされた本発明のモノクローナル抗体又はその抗
原結合フラグメントを生成する方法が提供され、この方法は、治療用ペプチドの側鎖上に
導入された求電子物質(好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミド)を、スルフヒド
リル基(好ましくは、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの配列番号18
のシステイン残基のスルフヒドリル基)と反応させ、これにより、治療用ペプチドと、そ
のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとの間に共有結合を形成することを
含む。
【0012】
本発明は更に、少なくとも1つの薬理学的活性部分、好ましくは治療用ペプチドに、直
接又はリンカーを介してコンジュゲートされた、本発明のモノクローナル抗体又はその抗
原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物に関する。
【0013】
本発明の別の一般的態様は、対象における治療用ペプチドの半減期を延長する方法に関
し、この方法は、治療用ペプチドを、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、
及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR
2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR
3を含む、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとコンジュゲートさせ
ることを含み、この治療用ペプチドは、スルフヒドリル基、好ましくは配列番号18のC
ys残基のスルフヒドリル基で、そのモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント
にコンジュゲートされる。
【0014】
本発明の更なる態様、特徴、及び利点は、以下の「発明の詳細な説明」及び「特許請求
の範囲」を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せ
て読むことでより理解が深まるであろう。ただし、本出願は、図面に示される実施形態そ
のものに限定されないことを理解されたい。
図1】本発明の一実施形態による一般的なペプチド-mAbコンジュゲート戦略を示す。Xは、治療用ペプチド(例えばブロモアセトアミド又はマレイミドなど)の側鎖上に導入された求電子物質を表し、これは、半減期延長mAbのCDRに組み込まれたCys残基のスルフヒドリル基と特異的に反応し、治療用ペプチドとmAbとの間に共有結合を生成する。
図2】PH9H5_VH(配列番号4)及びPH9L3_VL(配列番号3)における置換のために選択されるCDR残基の概要。Cysで置換された残基は、太字で下線が引かれている。
図3】化合物1(配列番号2)の構造を示す。
図4】DIOマウスにおける化合物1の薬物動態。
図5】カニクイザルにおける化合物1の薬物動態。
図6】化合物1:急性投与で処置したDIOマウスにおける食物摂取。
図7】化合物1:急性投与で処理したDIOマウスにおける体重減少。
図8】化合物1:慢性投与で処置したDIOマウスにおける食物摂取。
図9】化合物1:慢性投与で処置したDIOマウスにおける体重減少。
図10】本発明の一実施形態によるモノクローナル抗体オキシントモジュリン(mAb-OXM)化合物を生成するための反応スキームを示す。上の反応は、mAb(例えば、MSCB97)のCys102におけるジスルフィドの還元である。下の反応は、還元mAbとOXMペプチド変異体とのコンジュゲートである。Rは、システイン又はグルタチオンである。MSCB97の重鎖上のCys102は、それらの単一の文字コードとして、フランキングアミノ酸と共に示されている。OXMは、ペプチド変異体のアミノ酸部分を指す。Aib2、Lys30、及びブロモアセチル化分散ポリエチレングリコール(dPEG)12スペーサーが示されている。mAbのHis1は、単一の文字コードとして示されている。
図11】化合物2(配列番号27)の構造を示す。
図12】168時間にわたるヒト血漿中の化合物2の機能的安定性を示すグラフを示す。OXMペプチドアナログmAbコンジュゲート化合物2▲、対照1(ヒト血漿エクスビボにおいて安定であることが予め実証されたもの)◆、対照2(ヒト血漿エクスビボにおいて不安定であることが予め実証されたもの)●及び〇、並びに、追加のOXMペプチドアナログmAbコンジュゲート化合物3(mAbと、H-Aib-QGTFTSDYSKYLDERRARDFVEWLLNK-(COCH22(OCHCH12NHCOCHBr)-NHとのコンジュゲート(配列番号25))
【0016】
及び化合物4(mAbと、H-Aib-QGTFTSDYSKYLDERRARDFV
EWLLNTK-(COCHCH(OCHCH12NHCOCHBr)-N
(配列番号26))とのコンジュゲート)▼を、X軸上の時間(hr)にわたって、
時間ゼロ(t=0)に対して正規化された残りパーセント。
図13】168時間にわたるサル血漿中の化合物2の機能的安定性を示すグラフを示す。化合物2▲、対照1(ヒト血漿エクスビボにおいて安定であることが予め実証されたもの)◆、対照2(ヒト血漿エクスビボにおいて不安定であることが予め実証されたもの)●及び〇、並びに、追加のOXMペプチドアナログmAbコンジュゲート化合物3
【0017】
及び化合物4▼を、X軸上の時間(hr)にわたって、時間ゼロ(t=0)に対して正
規化された残りパーセント。
図14】化合物2で処理したカニクイザルにおける食物摂取の%変化を示すグラフを示す。
図15】化合物2で処理したカニクイザルにおける体重の%変化を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の背景において、また、明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は
記載する。これら参照文献のそれぞれをその全容において参照により本明細書に援用する
ものである。本明細書に含まれる文書、操作、材料、装置、物品などの考察は、本発明の
コンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全
てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを
容認するものではない。
【0019】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が
属する分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明
細書で使用される特定の用語は、本明細書に示される意味を有するものである。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the
」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意しなければなら
ない。
【0021】
特に断らない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全
ての場合において、「約」なる語によって修飾されているものとして理解されるべきであ
る。したがって、数値は一般的に、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/m
Lの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v
)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合
、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及
び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含
む。
【0022】
特に指示がない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全て
の要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用す
るだけで、本明細書に記載した本発明の特定の手順に対して多くの同等物を認識するか、
又は確認することができよう。このような同等物は、本発明に包含されることが意図され
る。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」
、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(havi
ng}」、「含有する(contains)」、又は「含有する(containing)」あるいはこれらの
任意の他の変形形態は、述べられている整数又は整数群を含むことが意図されるが、これ
ら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であること
が意図されることが理解されよう。例えば、要素のリストを備える組成物、混合物、プロ
セス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、
明示的に列挙されない他の要素、あるいは、そのような組成物、混合物、プロセス、方法
、物品、又は装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記
されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指す
ものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在し)及びBが偽である
(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在せず)かつBが真である(又は存在す
る)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか一つによ
って充足される。
【0024】
好ましい発明の構成要素の寸法又は特性に言及するときに本明細書で使用される「約」
、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、記載された寸法/特性が厳密な境
界又はパラメータではなく、当業者には理解されるように、機能的に同じ又は類似の、そ
れらからのわずかな変化を除外しないことを示すことが理解されよう。最低限、数値パラ
メータを含むそのような参照は、当該技術分野で認められた数学的原理及び工業的原理(
例えば、四捨五入、測定誤差又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用して、最小有効
桁を変化させない変形形態を含む。
【0025】
「同一の」又は「同一性」という用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例え
ば、環状PYY3~36ポリペプチド配列、オキシントモジュリンポリペプチド配列、抗
体軽鎖又は重鎖配列)の文脈において、本開示の見地から当該技術分野において既知の方
法を使用して、配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して測定したとき、又は、目視
検査によって、最大限対応するよう比較及び整列させたときに、同一であるか、又は同一
であるアミノ酸残基又はヌクレオチドの指定された割合を有する、2つ以上の配列又は部
分配列を指す。
【0026】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列を比較する参照配列として機
能する。配列比較アルゴリズムを使用するとき、試験及び参照配列がコンピュータに入力
されると、必要に応じて、部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメ
ータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータ
に基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0027】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterma
n,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズム
、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(19
70)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Pro
c.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索
方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(Wisconsin Geneti
cs Software Package(Genetics Computer Gr
oup,575 Science Dr.,Madison,WI)中のGAP、BES
TFIT、FASTA、及びTFASTA)、視覚的検査(一般に、Current P
rotocols in Molecular Biology,F.M.Ausube
l et al.,eds.,Current Protocols(Greene P
ublishing Associates,Inc.とJohn Wiley & S
ons,Inc.のジョイントベンチャー(1995 Supplement)(Aus
ubel)を参照)によって、実施することができる。
【0028】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの例は、BL
AST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschu
l et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403~410及びAl
tschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:
3389~3402に記載されている。BLAST分析を行うソフトウェアは、国立バイ
オテクノロジー情報センターを介して公的に入手可能である。
【0029】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記
載されるように、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコー
ドされるポリペプチドと免疫学的に交差反応することである。したがって、ポリペプチド
は典型的には、例えば、第2のポリペプチドと実質的に同一であり、このとき、2つのペ
プチドが保存的置換のみで異なっている。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標
は、以下に記載されるように、厳密な条件下で2つの分子が互いにハイブリダイズするこ
とである。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ま
しくはヒトを意味する。本明細書で使用するところの「哺乳動物」なる用語は、あらゆる
哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、これらに限定されるものではないが、ウシ
、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒト
が挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0031】
本発明の方法に関する用語「投与」は、本発明のコンジュゲート、又はその形成物、組
成物若しくは薬剤を使用することにより、本明細書に記載しているような症候群、障害又
は疾患を、治療学的又は予防学的に予防、処置又は軽減するための方法を意味する。この
ような方法は、有効量の当該コンジュゲート、コンジュゲートの形成物、組成物若しくは
薬剤を、治療過程中の異なる時点で、又は併用形式で同時に、投与することを含む。本発
明の方法は、既知の治療的処置レジメンを全て包含するものとして理解されるものである
【0032】
用語「有効量」は、研究者、獣医、医師、又はその他の臨床医が探求している、組織系
、動物又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応(治療される症候群、障害又は疾患、あ
るいは、治療される症候群、障害又は疾患の症状を、予防する、治療する又は寛解させる
ことを含む)を引き出す活性コンジュゲート又は薬剤の量を意味する。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む生成物、
並びに、直接的又は間接的に特定の成分の特定の量の組み合わせから生じる任意の生成物
を包含するものとする。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「結合された」は、2つ以上の物体を合わせて接合又
は接続することを指す。化学化合物又は生物学的化合物を指す場合、結合とは、2つ以上
の化学化合物又は生物学的化合物間の共有結合を指すことができる。非限定的な例として
、本発明の抗体は、所望のペプチドと結合して、抗体結合ペプチドを形成することができ
る。抗体結合ペプチドは、抗体をペプチドにコンジュゲートするように設計された特定の
化学反応によって形成することができる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、リンカ
ーを介して本発明のペプチドと共有結合することができる。リンカーは、例えば、最初に
抗体又はペプチドに共有結合され、次いでペプチド又は抗体に共有結合され得る。
【0035】
本明細書で使用されるとき、用語「リンカー」は、ペプチドを抗体に共有結合させる共
有結合鎖又は原子鎖を含む化学モジュールを指す。リンカーとしては、例えば、ペプチド
リンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピ
レングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、PEG及
び組み込み複素環からなるハイブリッドリンカー、及び炭化水素鎖を挙げることができる
が、これらに限定されない。PEGリンカーは、例えば、2~24個のPEG単位を含む
ことができる。
【0036】
本明細書で使用されるとき、用語「コンジュゲート」は、薬学的活性部分に共有結合し
た抗体又はそのフラグメントを指す。「コンジュゲートされた」という用語は、本発明の
抗体又はそのフラグメントが、直接的に又はリンカーを介して間接的に、薬学的活性部分
(好ましくは治療用ペプチド)に共有結合で連結されている又は共有結合で接続されてい
ることを指す。非限定的な例として、この抗体は、本発明のモノクローナル抗体であって
もよく、この薬学的活性部分は、環状PYY、オキシントモジュリンペプチド、又は目的
の任意の他の治療用ペプチドなどの、治療用ペプチドであり得る。また、この薬学的活性
部分は、非ペプチド有機部分(すなわち、「小分子」)であってもよい。本開示では、本
発明の一実施形態による抗体又はその抗原結合フラグメントに関して、語句「抗体又はそ
の抗原結合フラグメントと、それにコンジュゲートされた薬学的活性部分(又は治療用ペ
プチド)とを含むコンジュゲート」は、薬学的活性部分(又は治療用ペプチド)にコンジ
ュゲートされた「抗体又はその抗原結合フラグメント」と互換的に使用される。
【0037】
本明細書に記載されるペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末
端領域は左にあり、C末端領域は右にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途
明示的に示されていない限り、L型アミノ酸である。
【0038】
抗体
一般的な一態様において、本発明は、非標的化されるように操作されており、かつ薬学
的活性部分(例えば治療用ペプチド(例えば、環状PYYペプチド、オキシントモジュリ
ン又は変異体ペプチドなど))を、部位特異的な方法で、化学的にコンジュゲート(すな
わち結合)するために使用することができるシステイン残基を含有する新規抗体に関し、
これによりこの抗体結合ペプチドは、ペプチド単独と比較して延長/増加した半減期を有
する。本明細書で使用されるとき、抗体の文脈における「非標的化」という用語は、イン
ビボで何らかの標的に特異的に結合しない抗体を指す。本明細書で使用されるとき、「標
的に特異的に結合する」抗体とは、標的抗原に対し、KDが1×10-7M以下、好まし
くは1×10-8M以下、より好ましくは5×10-9M以下、1×10-9M以下、5
×10-10M以下、又は1×10-10M以下で結合する抗体を指す。用語「KD」は
、解離定数を指し、これはKd対Kaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃
度(M)として表される。抗体のKD値は、本開示を考慮して当該技術分野における方法
を用いて測定することができる。例えば、抗体のKDは、例えばBiacore(登録商
標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによって、又はOctet
RED96システムなどのバイオレイヤー干渉法を使用することなどによって、表面プラ
ズモン共鳴を使用することによって測定することができる。抗体のKDの値が小さいほど
、抗体が標的抗原に結合する親和性が高い。
【0039】
モノクローナル抗体(完全又はそのフラグメント)は、半減期延長部分として使用する
ことができる。モノクローナル抗体は、インビボでの使用に利用され、特徴付けが行われ
ている、十分に研究されているタンパク質であり、したがって、インビボでの長期化した
半減期を実現するメカニズムと、インビボでの除去のためのメカニズムは、よく理解され
ている。更に、モノクローナル抗体の2つの「アーム」の空間的分離及び提示は、治療部
分(すなわち、治療用ペプチド)の有効な二価性提供に有利であり得る。毒素又は他の小
分子薬物がモノクローナル抗体に化学的に連結されている治療薬が開発されているが、典
型的には、特定の抗原に結合し、抗体-薬物コンジュゲートを対象の組織/細胞(これは
抗原を優先的に発現している)に標的化するモノクローナル抗体を利用し、典型的には、
この薬物/小分子は、抗体の抗原結合に影響を及ぼさない様式で抗体に結合される。
【0040】
治療用ペプチド-mAbコンジュゲートについては、半減期延長モノクローナル抗体に
よる抗原特異的結合は望ましくない。このため、何らかの標的に特異的に結合することが
期待されない重鎖(HC)及び軽鎖(LC)可変(V)ドメイン対が、本発明の結合可能
な非標的化モノクローナル抗体を調製するために使用される。結合可能な非標的化モノク
ローナル抗体を得るためには、選択された非標的化抗体の相補性決定領域(CDR)のう
ちの1つに、システイン残基を操作して組み入れる。薬学的活性部分(例えば、治療用ペ
プチド/化合物)は、適切な化学的部分を含有し、これにより、薬学的活性部分と、非標
的化モノクローナル抗体の操作されたシステイン残基とのコンジュゲートを可能にするこ
とができる。本発明の一実施形態によるペプチド-モノクローナル抗体の一般的なコンジ
ュゲート戦略を図1に示す。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、広義の意味を有し、非ヒト(例えばマウ
ス、ラット)モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、ヒト適合化されたモノクロ
ーナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、及びキメラモノクローナル抗体、抗体フラグメ
ント、二重特異性又は多重特異性抗体、二量体抗体、四量体抗体、又は多量体抗体、並び
に一本鎖抗体を包含する。
【0042】
いずれの脊椎動物種の抗体軽鎖も、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて2
つの明確に異なるタイプ、すなわちカッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当
てることができる。したがって、本発明の抗体は、κ又はλ軽鎖定常ドメインを含有する
ことができる。特定の実施形態によれば、本発明の抗体は、例えば、マウス又はヒト抗体
由来の重鎖及び/又は軽鎖定常領域を含む。重鎖及び軽鎖定常ドメインに加えて、抗体は
、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域からなる抗原結合領域を含み、これらの領域のそれぞれ
は3つのドメイン(すなわち、相補性決定領域1~3(CDR1、CDR2、及びCDR
3))を含む。軽鎖可変領域ドメインは、代替的にLCDR1、LCDR2、及びLCD
R3と称され、重鎖可変領域ドメインは、代替的にHCDR1、HCDR2、及びHCD
R3と称される。
【0043】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて5つの主なクラス、即ち
、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに分類することができる。IgGは、5種
類の免疫グロブリンの中で最も安定であり、ヒトにおいて約23日間の血清半減期を有す
る。IgA及びIgGは、アイソタイプIgA、IgA、IgG、IgG、Ig
、及びIgGに更に下位分類される。4つのIgG下位分類のそれぞれは、エフェ
クター機能として知られる異なる生物学的機能を有する。これらのエフェクター機能は、
一般に、Fc受容体(FcγR)との相互作用によって、又はC1qの結合及び補体の固
定によって、媒介される。FcγRへの結合は、抗体依存性細胞媒介性細胞溶解をもたら
し得る一方、補体因子への結合は、補体媒介性細胞溶解をもたらし得る。治療用ペプチド
の半減期を延長する能力に利用される本発明の抗体は、エフェクター機能を有さないか又
は最小限のエフェクター機能を有するが、FcRnに結合する能力を保持し、この結合は
、抗体がインビボ半減期の延長を有する主要な手段であり得る。
【0044】
一実施形態では、本発明は、完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有する軽鎖可変領域
と、配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR3を除く完全ヒトIg生殖系列V遺伝
子配列を有する重鎖可変領域とを含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントに
関し、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボで任意のヒト抗原に特異的に
結合しない。特定の実施形態では、本発明は、完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有す
る軽鎖可変領域と、配列番号18のアミノ酸配列を有するHCDR3を除く完全ヒトIg
生殖系列V遺伝子配列を有する重鎖可変領域とを含む、単離された抗体又はその抗原結合
フラグメントに関し、この抗体又はその抗原結合フラグメントは、インビボで任意のヒト
抗原に特異的に結合せず、この単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、薬学的
活性部分(例えば、環状PYYペプチド、オキシントモジュリンペプチド、及び/又は本
発明の治療用ペプチド)に結合される。
【0045】
本明細書で使用されるとき、用語「抗原結合フラグメント」は、例えば、二重特異性抗
体、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、ジスルフィド安定化Fvフラグメン
ト(dsFv)、(dsFv)、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジス
ルフィド安定化二重特異性抗体(ds二重特異性抗体)、単鎖抗体分子(scFv)、単
一ドメイン抗体(sdab)、scFv二量体(二価二重特異性抗体)、1つ又は2つ以
上のCDRを含む抗体の一部から形成される多重特異性抗体、ラクダ化(camelized)単
一ドメイン抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、あるいは、抗原に結合
するが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体フラグメントなどの、抗体フラグメント
を指す。抗原結合フラグメントは、親抗体又は親抗体フラグメントが結合する同じ抗原に
結合することができる。特定の実施形態によれば、抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領
域、軽鎖定常領域、及びFdセグメント(すなわち、Fabフラグメントに含まれる重鎖
の部分)を含む。他の特定の実施形態によれば、抗原結合フラグメントは、Fab及びF
(ab’)を含む。
【0046】
本明細書で使用されるとき、用語「単鎖抗体」は、約15~約20個のアミノ酸の短い
ペプチドで結合された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、この分野における従来の単
鎖抗体を指す。本明細書で使用されるとき、用語「単一ドメイン抗体」は、重鎖可変領域
及び重鎖定常領域を含む、又は重鎖可変領域のみを含む、この分野における従来の単一ド
メイン抗体を指す。
【0047】
「単離された抗体又は抗体フラグメント」というフレーズは、異なる抗原特異性を有す
る他の抗体を実質的に含まない抗体又は抗体フラグメントを指す(例えば、ある標的抗原
に特異的に結合する単離された抗体は、その標的抗原に特異的に結合しない抗体を実質的
に含まない)。更に、単離された抗体又は抗体フラグメントは、他の細胞物質及び/又は
化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0048】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」で隔てられた「フレームワーク」領域からな
る。抗原結合部位は、様々な用語を用いて定義されている。(i)相補性決定領域(CD
R)、これは、配列特異性に基づいてVH内に3個(HCDR1、HCDR2、HCDR
3)及びVL内に3個(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する(Wu an
d Kabat,J Exp Med 132:211~50,1970、Kabatら
、Sequences of Proteins of Immunological
Interest、第5版、Public Health Service,Natio
nal Institutes of Health,Bethesda,Md.,19
91)。(ii)「超可変領域」、「HVR」、又は「HV」、VH内の3つ(H1、H
2、H3)及びVL内の3つ(L1、L2、L3)は、Chothia and Les
k(Chothia and Lesk,Mol Biol 196:901~17,1
987)により定義される構造において超可変性である、抗体可変ドメインの領域を指す
。他の用語には、「IMGT-CDR」(Lefranc et al.,Dev Co
mparat Immunol 27:55~77,2003)及び「特異性決定残基使
用」(SDRU)(Almagro Mol Recognit 17:132~43,
2004)が含まれる。International ImMunoGeneTics(
IMGT)データベース(http://www_mgt_org)は、抗原結合部位に
ついての標準的番号及び定義を提供する。CDR、HV及びIMGTの記述間の対応につ
いては、Lefranc et al.,Dev.Comparat.Immunol.
27:55~77,2003に記述されている。
【0049】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、抗原結合部位として定義されたも
のを除く、可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は上記のような様々な用語によっ
て定義され得るため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は抗原結合部位がどのように
定義されたかによって決まる。
【0050】
本発明の一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントは、それぞれ
配列番号19、配列番号20及び配列番号21のアミノ酸配列のLCDR1、LCDR2
、及びLCDR3を有する軽鎖可変領域と、それぞれ配列番号16、配列番号17及び配
列番号18のアミノ酸配列のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を有する重鎖可変
領域とを含む。
【0051】
別の実施形態では、単離された抗体は、ヒトIgG4 Fc領域由来のFc領域を更に
含む。ヒトIgG4 Fc領域は、他のIgGサブタイプと比較して、FcγR及び補体
因子に結合する能力が低下している。好ましくは、Fc領域は、エフェクター機能を排除
する置換を有するヒトIgG4 Fc領域を含む。したがって、単離された抗体は、残基
233におけるグルタミン酸のプロリンでの置換、残基234におけるフェニルアラニン
のアラニン又はバリンでの置換、並びに残基235におけるロイシンのアラニン又はグル
タミン酸での置換のうち、1つ又は2つ以上を含む改変ヒトIgG4 Fc領域を有する
Fc領域を更に含む(EU numbering、Kabat、E.A.et al.(
1991)Sequences of Proteins of Immunologi
cal Interest、5th Ed.U.S.Dept.of Health a
nd Human Services、Bethesda、Md.、NIH Publi
cation no.91-3242)。残基297におけるAsnをAlaで置換する
ことによって、IgG4 Fc領域内のN結合型グリコシル化部位を除去することは、残
留エフェクター活性が排除されることを確実にするもう一つの方法である。
【0052】
好ましくは、本発明の抗体は、ジスルフィド結合及び様々な非共有相互作用によって一
緒に結合された二量体として存在する。したがって、本発明の抗体に有用なFc部分は、
位置228(EU番号)におけるセリンからプロリンへなどの置換を含有するヒトIgG
4 Fc領域であり得、これは重鎖二量体形成を安定させ、半IgG4 Fc鎖の形成を
防止する。
【0053】
別の一実施形態では、重鎖のC末端Lys残基は、組み換えにより産生されたモノクロ
ーナル抗体に一般的に見られるように、除去される。
【0054】
「ヒト抗体」とは、フレームワーク及び抗原結合部位の両方がヒト起源の配列に由来す
る重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。抗体が定常領域を含む場合、定常
領域もヒト起源の配列に由来する。
【0055】
ヒト抗体は、抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロ
ブリン遺伝子を使用する系から得られた場合のヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領
域又は軽鎖可変領域を含む。そのような系は、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリ
ン遺伝子ライブラリ、及び本明細書に記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有する
マウスなど、トランスジェニックの非ヒト動物を含む。「ヒト抗体」は、例えば天然に存
在する体細胞突然変異、又はフレームワーク若しくは抗原結合部位への意図的な置換の導
入により、ヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン配列と比較した場合に、アミノ
酸の相違を含み得る。典型的には、ヒト抗体は、アミノ酸配列において、ヒト生殖系列又
は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも約
80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、
90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、
又は100%同一である。一部の場合では、「ヒト抗体」は、例えばKnappikら(
J Mol Biol 296:57~86、2000年)に記載されるヒトフレームワ
ーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShiら(J
Mol Biol 397:385~96、2010年及び国際公開第2009/085
462号)に記載される、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ
に組み込まれた合成HCDR3を含有し得る。抗原結合部位が非ヒト種に由来する抗体は
、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0056】
本発明の実施形態による単離された抗体は、合成であり得る。この抗体は、ヒト免疫グ
ロブリン配列に由来するが、ファージ提示組み込み合成CDR及び/若しくは合成フレー
ムワークなどの系を用いて生成されることができ、又は抗体特性を改善するためにインビ
トロ突然変異誘発を受けることができ、インビボのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天
然に存在しない抗体をもたらす。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「組換え抗体」は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトラ
ンスジェニック若しくは染色体導入動物(例えばマウス)又はそれから調製されたハイブ
リドーマから単離された抗体、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離さ
れた抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、並びにヒト免疫
グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライスすることを伴う任意の他の手段によ
り調製、発現、作製、又は単離された抗体、あるいはFabアーム交換を用いてインビト
ロで生成される抗体など、組換え手段により調製、発現、作製、又は単離される全ての抗
体を含む。
【0058】
本明細書で使用されるとき、用語「モノクローナル抗体」は、単一分子組成物の抗体分
子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合
特異性及び親和性を示し、又は二重特異性モノクローナル抗体の場合には、2つの別個の
エピトープに対する二重結合特異性を示す。本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリド
ーマ法、ファージディスプレイ技術、単一リンパ球遺伝子クローニング技術、又は組換え
DNA法によって作製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入
遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニック非ヒト動物(例え
ば、トランスジェニックマウス又はラット)から得られたB細胞を含む、ハイブリドーマ
によって産生することができる。
【0059】
特定の実施形態では、用語「mAb」は、モノクローナル抗体を指す。一実施形態では
、mAbは、配列番号12を含む重鎖可変領域(VH)配列と、配列番号14を含む軽鎖
可変領域(VL)配列とを有する。特定の実施形態では、mAbは、配列番号13を含む
重鎖(HC)配列と、配列番号15を含む軽鎖(LC)配列とを有する完全ヒトモノクロ
ーナル抗体である。特定の実施形態では、配列番号13の位置446におけるリジン残基
は、任意選択的に欠落している。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配
列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、多くの場合
、所望の特異性、親和性、及び能力を有する哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ
など)の1種に由来する抗体の可変領域に相当し、その種における免疫反応の誘発を避け
るために、その定常領域は、別の種の哺乳動物(例えば、ヒト)に由来する抗体の配列に
対応している。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「多重特異性抗体」は、複数の免疫グロブリン可変ド
メイン配列を含む抗体を指し、この複数のうち第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は
、第1のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く
生殖細胞系列配列を含み、この複数のうち第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は、第
2のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖
系列配列を含み、この第1及び/又は第2の免疫グロブリン可変ドメインは、任意選択的
に、コンジュゲートされた薬学的活性部分(例えば、治療用ペプチド)を含む。一実施形
態では、第1及び第2のエピトープは、同じ抗原上、例えば、同じタンパク質(又は多量
体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは
、重複しているか、又は実質的に重複している。一実施形態では、第1及び第2のエピト
ープは、重複していないか、又は実質的に重複していない。一実施形態では、第1及び第
2のエピトープは、異なる抗原上、例えば、異なるタンパク質(又は多量体タンパク質の
異なるサブユニット)上にある。一実施形態では、第1及び第2の免疫グロブリン可変ド
メインは、同一のコンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1及
び第2の免疫グロブリン可変ドメインは、異なる薬学的活性部分を含む。一実施形態では
、第1の免疫グロブリン可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含
む。一実施形態では、第2の免疫グロブリン可変ドメインのみが、コンジュゲートされた
薬学的活性部分を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、第3、第4、又は第5の免
疫グロブリン可変ドメインを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体
分子、三重特異性抗体、又は四重特異性抗体分子である。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「二重特異性抗体」は、2つ以下のエピトープ若しく
は2つ以下の抗原に結合する、及び/又は2つのコンジュゲートされた薬学的活性部分(
例えば、同じ又は異なる薬学的活性部分)を含む、多重特異性抗体を指す。二重特異性抗
体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を
欠く生殖細胞系列配列を含む、第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列と、第2のエピト
ープに対する結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖系列配列を
含む、第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列とによって特徴付けられ、この第1及び/
又は第2の免疫グロブリン可変ドメインは、任意選択的に、コンジュゲートされた薬学的
活性部分を含む。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、同じ抗原上、例えば、
同じタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第
1及び第2のエピトープは、重複しているか、又は実質的に重複している。一実施形態で
は、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原上、例えば、異なるタンパク質(又は多量
体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。一実施形態では、第1及び第2の免疫グ
ロブリン可変ドメインは、同一のコンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形
態では、第1及び第2の免疫グロブリン可変ドメインは、異なる薬学的活性部分を含む。
一実施形態では、第1の免疫グロブリン可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学
的活性部分を含む。一実施形態では、第2の免疫グロブリン可変ドメインのみが、コンジ
ュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、二重特異性抗体は、第1の重鎖
可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列(これらは第1のエピトープに対する結合特
異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖細胞系列配列を含む)と、第2
の重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列(これらは第2のエピトープに対する
結合特異性を有するか、又は任意の既知の結合特異性を欠く生殖細胞系列配列を含む)と
を含み、この第1及び/又は第2の重鎖可変ドメインは、任意選択的に、コンジュゲート
された薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1及び第2の重鎖可変ドメインは、同
一のコンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、第1及び第2の重鎖
可変ドメインは、異なるコンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形態では、
第1の重鎖可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。一実施形
態では、第2の重鎖可変ドメインのみが、コンジュゲートされた薬学的活性部分を含む。
【0063】
本明細書で使用されるとき、「完全長の抗体」は、2本の完全長の抗体重鎖と2本の完
全長の抗体軽鎖とを有する抗体を指す。完全長の抗体重鎖(HC)は、重鎖可変領域(V
H)及び定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)からなる。完全長の抗体軽鎖(L
C)は、軽鎖可変領域(VL)及び定常ドメイン(CL)からなる。完全長の抗体は、一
方又は両方の重鎖のいずれかにおいて、C末端リジン(K)を欠いていてもよい。
【0064】
「Fabアーム」又は「半分子」という用語は、一対の重鎖-軽鎖を意味する。
【0065】
完全長二重特異性抗体は、例えば、インビトロでの無細胞環境において又は共発現を使
用して、異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体形成に好都合になるよう
に各半分子における重鎖CH3界面に置換を導入することによって、2つの一特異性二価
抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して生成され得る。Fabアーム
交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-会合の結果である
。親単一特異性抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は減少する。親単一特異
性抗体のうち1つについて生じる遊離システインは、第2の親単一特異性抗体分子のシス
テイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解
離-会合により開放及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体形成
より好ましいヘテロ二量体形成をするよう操作されてもよい。得られた生成物は、それぞ
れ異なるエピトープに結合し得る、2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗
体である。
【0066】
本明細書で抗体に関して使用されるとき、「ホモ二量体形成」は、同一のCH3アミノ
酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を指す。本明細書で抗体に関して使用されるとき、
「ホモ二量体」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を指す。
【0067】
本明細書で抗体に関して使用されるとき、「ヘテロ二量体形成」は、同一でないCH3
アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を指す。本明細書で抗体に関して使用される
とき、「ヘテロ二量体」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する
抗体を指す。
【0068】
「ノブインホール(knob-in-hole)」戦略(例えば、国際公開第2006/02893
6号を参照のこと)を使用して、完全長の二重特異性抗体を生成することができる。簡潔
に、ヒトIgGにおけるCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロ
二量体形成を促進するために、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置において変異
され得る。小さな側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に特異的に結合する抗
体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に特異的に
結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホー
ル」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される
。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換の対は、T366Y/F405A、T3
66W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/
Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T3
66S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改
変位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける改変位置として表現)。
【0069】
他の戦略、例えば、あるCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面に
おける負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロ二量
体化の促進が、米国特許出願公開第2010/0015133号、同第2009/018
2127号、同第2010/028637号、又は同第2011/0123532号に記
載されたように使用されてもよい。他の戦略では、ヘテロ二量体化は、米国特許出願公開
第2012/0149876号又は同第2013/0195849号に記載されているよ
うに、以下の置換:L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K
392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W
/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L35
1Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又
はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K39
2L_T394W(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける改変位置/第2の重鎖の
第2のCH3ドメインにおける改変位置として表す)により促進することができる。
【0070】
上記された方法に加えて、二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に
記載された方法に従って、インビトロにおいて、無細胞環境下で、2つの単一特異性ホモ
二量体抗体のCH3領域中に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還
元条件下において、2つの親単一特異性ホモ二量体抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体
を形成することにより生成されてもよい。この方法においては、第1の単一特異性二価抗
体及び第2の単一特異性二価抗体は、ヘテロ二量体の安定性を促進する特定の置換をCH
3ドメインに有するように遺伝子操作され、これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステ
インがジスルフィド結合を異性化させるのに十分な還元条件下において共にインキュベー
トされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベ
ート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る例示的な還元剤は、2-
メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリス
リトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TC
EP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メル
カプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフ
ィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度において
、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイト
ールの存在下で、pH5~8、例えば、pH7.0又はpH7.4において、少なくとも
90分のインキュベートが使用されてもよい。
【0071】
本明細書全体を通して、抗体の定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、特に明示
的に指定しない限り、Kabat et al.,Sequences of Prot
eins of Immunological Interest,5th Ed.Pu
blic Health Service,National Institutes
of Health,Bethesda,Md.(1991)に記載されるEUインデッ
クスに従って実施される。
【0072】
コンジュゲート
別の一般的な一態様において、本発明は、薬学的活性部分(例えば合成治療用ペプチド
(例えば、環状PYYペプチド、又はオキシントモジュリン変異体ペプチド))に、部位
特異的な方法で、共有結合でコンジュゲートした本発明の抗体を含むコンジュゲートに関
し、これによりこの抗体結合ペプチドは、ペプチド単独と比較して延長/増加した半減期
を有する。このコンジュゲートは、本明細書に開示される疾患又は障害を予防、治療、又
は寛解させるために有用である。本発明は更に、医薬組成物、その調製方法、及びその使
用方法に関する。
【0073】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、薬学的活性部分にコンジュゲートされることが
できる少なくとも1つのシステイン残基置換を含むように修飾され、これにより、薬学的
活性部分の半減期を延長/増加させることができる。特定の実施形態では、この少なくと
も1つのシステイン残基置換は、抗体の相補性決定領域に含まれる。特定の実施形態では
、この少なくとも1つのシステイン残基置換は、重鎖相補性決定領域(HCDR)にある
。特定の実施形態では、この少なくとも1つのシステイン残基置換は、HCDR3にあり
、このHCDR3は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、配列番
号18のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む抗体は、薬学的活性部分にコンジュゲート
されることができる少なくとも1つの追加のシステイン置換を有する。
【0074】
特定の実施形態では、この薬学的活性部分は、リンカーを含み得る。リンカーは、薬学
的活性部分への抗体のコンジュゲートを可能にするように化学的に修飾され得る。リンカ
ーとしては、例えば、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(
PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポ
リエステルリンカー、PEG及び組み込み複素環からなるハイブリッドリンカー、及び炭
化水素鎖を挙げることができるが、これらに限定されない。PEGリンカーは、例えば、
2~24個のPEG単位を含むことができる。
【0075】
特定の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、対象とする1つ、2つ、3つ、
4つ、5つ、又は6つの薬学的活性部分(例えば、治療用ペプチド)にコンジュゲートさ
れる。好ましい実施形態では、非標的化モノクローナル抗体は、対象とする2つの薬学的
活性部分にコンジュゲートされる。対象とする少なくとも2つの薬学的活性部分にモノク
ローナル抗体がコンジュゲートされる特定の実施形態では、この対象とする薬学的活性部
分は、同じ薬学的活性部分であってもよく、又は異なる薬学的活性部分であってもよい。
【0076】
本発明の抗体を本発明の薬学的活性部分とコンジュゲートさせる方法は、当該技術分野
において既知である。簡潔に述べると、本発明の抗体を、還元剤(例えば、TCEP(ト
リス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を用いて還元し、精製し(例えば、タンパク
質A吸着又はゲル濾過によって)、薬学的活性部分とコンジュゲートさせることができる
(例えば、コンジュゲートを可能にする条件下で凍結乾燥ペプチドを還元抗体に提供する
ことによって)。コンジュゲート反応後、このコンジュゲートは、イオン交換クロマトグ
ラフィー又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって、タンパク質A吸着
の最終精製工程により精製することができる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、精
製してから、HIC法を利用して還元することができる。コンジュゲート方法のより詳細
な説明については、例えば、実施例3及び7、並びにDennler et al.,A
ntibodies 4:197~224(2015)を参照されたい。
【0077】
本明細書でコンジュゲートに関して使用されるとき、「ホモ二量体形成」は、2つの同
一の薬学的活性部分と抗体との相互作用を指す。本明細書でコンジュゲートに関して使用
されるとき、「ホモ二量体」は、2つの同一の薬学的活性部分に結合された抗体を指す。
【0078】
本明細書でコンジュゲートに関して使用されるとき、「ヘテロ二量体形成」は、2つの
異なる薬学的活性部分と抗体との相互作用を指す。本明細書でコンジュゲートに関して使
用されるとき、「ヘテロ二量体」は、2つの異なる薬学的活性部分に結合された抗体を指
す。
【0079】
環状PYYペプチド
PYY3~36は、Y2受容体のアゴニストとして作用し食物摂取を阻害する、遠位腸
内のL細胞によって分泌される内因性ホルモンである。食欲及び食物摂取の制御における
役割、並びに哺乳動物の胃腸管におけるその抗分泌性及び吸収促進効果の役割を考慮する
と、PYY3~36は、肥満及び関連する病態、並びに数多くの胃腸障害において有効で
あり得る。しかしながら、治療剤としてのPYY3~36自体の治療的有用性は、その迅
速な代謝及び短い循環半減期によって制限される。したがって、本発明の抗体は、PYY
3~36、好ましくは修飾PYY3~36の担体として使用することができ、PYY3~
36ペプチドの半減期を延長し、インビボでのペプチドの代謝を低減する。
【0080】
本発明の特定の実施形態では、修飾されたPYY3~36ペプチドは、環状PYYペプ
チドである。用語「環状PYYペプチド」、「環状PYY3~36類似体」、及び「環状
PYY3~36ペプチド類似体」は、互換的に使用することができる。コンジュゲートに
使用することができる環状PYYペプチドの例は、米国特許仮出願第62/413,61
3号(2016年10月27日出願)、及び米国特許出願第______号「Cycli
c peptide tyrosine tyrosine compounds as
modulators of neuropeptide receptors」(本
出願と同日に出願、代理人整理番号PRD3411)に記載されており、これら両方の出
願の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明の抗体と環状PYYペプチドとを含むコンジュゲートの例は、米国特許仮出願第
62/413,586号(2016年10月27日出願)、及び米国特許出願第____
__号「Antibody coupled cyclic peptide tyro
sine tyrosine compounds as modulators of
neuropeptide Y receptors」(本出願と同日に出願、代理人
整理番号PRD3436)に記載されており、これら両方の出願の内容はその全体が参照
により本明細書に組み込まれる。例えば、環状PYYペプチドでは、環のN末端アミノ酸
残基が、そのα-アミノ官能基を介して連結基に結合し、これが更に、NTSC-PYY
ペプチドの位置31におけるアミノ酸の側鎖残基に結合する。リジン残基は、更なる誘導
体化のための従来の官能基ハンドルを提供するために、hPYY3~36配列の様々な位
置に組み込むことができる。リジン残基は、直接的又は間接的に、モノクローナル抗体に
結合されるように修飾され得る。モノクローナル抗体への間接的結合において、リジン残
基は、環状PYYペプチドがモノクローナル抗体に結合することを可能にするリンカーを
含むように修飾され得る。当業者には、関連するオルソロガスもそのように効果的に使用
することができ、これが本明細書において想到されることが理解されよう。
【0082】
オキシントモジュリンペプチド
オキシントモジュリン(OXM)は、腸内の腸内分泌L細胞から分泌される37アミノ
酸長ペプチドである。GLP-1受容体(GLP1R)及びグルカゴン受容体(GCGR
)におけるアゴニスト活性を介して、OXMは、β-細胞機能を強化し、食物摂取を低減
し、エネルギー消費を強化する。これらの相補的機構を介して、OXM媒介型の体重減量
は、現在市販されているGLP1Rアゴニストと比較して優れている可能性がある。OX
Mは、血漿中のコレステロール及びトリグリセリドも低減することができる。ヒトにおけ
るOXMの半減期は、非常に短く、数分の単位である(Schjoldager et
al.,Eur.J.Clin.Invest.18(5):499~503(1988
))。したがって、本発明の一実施形態は、オキシントモジュリンに共有結合した本発明
の抗体を含むコンジュゲートに関し、これによって、オキシントモジュリンの二重アゴニ
スト特性と、1週間に1回の投与を達成するのに十分な延長された半減期とを提供する。
【0083】
ペプチド半減期を延長することは、タンパク質分解に対する感受性に対するOXMペプ
チドの安定化、及び、血漿クリアランスの低減によって達成される。例えば、DPP4に
よるタンパク質分解は、位置2のセリンをアミノイソ酪酸(Aib)に置き換えることに
よって軽減された。ペプチドの螺旋状トポロジーは、Q20R~S16E及びQ24Eの
分岐塩架橋を導入することによって安定化され、メチオニン27をロイシンに置換するこ
とにより、潜在的な酸化性が軽減された。ペプチドの循環寿命は、モノクローナル抗体(
mAb)の共有結合によって増加した。このような抗体-薬物コンジュゲートは、それら
の大きさのおかげで(糸球体濾過を低減し得る)、及び、胎児性Fc受容体を介した再利
用によって、延長された血漿半減期を呈することができる。短いオリゴエチレングリコー
ルスペーサーをmAbとペプチドとの間に介在させて、ペプチドがGCGR及びGLP1
Rへと、妨げられずにアクセスできるよう確保した。
【0084】
本発明の実施形態によると、本発明のオキシントモジュリンコンジュゲートは、4つの
特性を備える。(A)二重アゴニスト作用:このオキシントモジュリンコンジュゲートは
、GLP-1及びグルカゴン受容体において二重アゴニスト作用を有する。(B)受容体
バランス:GLP1Rへの過剰なバイアスは、GCGR標的係合前に、曝露増大時にGL
P-1媒介胃腸有害事象が発生するコンジュゲート体をもたらす可能性があり、GCGR
への過剰なバイアスは、血糖効果を軽減する可能性があるが、このオキシントモジュリン
コンジュゲートは、GLP1R又はGCGRのいずれにも過剰な効力バイアスを有さない
。(C)生体分布:このオキシントモジュリンコンジュゲートは、同様の曝露での、末梢
GCGRと、中心のエネルギー摂取調節GLP1Rの、標的係合を達成する目的で、GL
P-1受容体効力(オキシントモジュリン単独と比較して)に対する適度なバイアスを有
する。(D)週1回の投与:このオキシントモジュリンコンジュゲートは、毎週1回、そ
れを必要とする対象に投与可能であることによって、競争力を有する。
【0085】
他の治療用ペプチド
本明細書では、本明細書に記載されるモノクローナル抗体プラットフォームにコンジュ
ゲートすることができる他のペプチドを含むコンジュゲートも提供される。このペプチド
は、例えば、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、エキセンジン(エキセナチド)、ア
ミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及び
アンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬
、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB
、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシス
トキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並
びにストレスコピンからなる群から選択することができる。
【0086】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、プログルカゴン遺伝子の組織特異的翻訳
後プロセシングに由来する30アミノ酸長ペプチドホルモンである。GLP-1は、食物
摂取時に腸内分泌L細胞及び特定のニューロンによって産生及び分泌される。初期生成物
GLP-1(1~37)は、アミド化及びタンパク質分解開裂を受けやすく、これにより
、2つの切頭された等効力の生物学的活性形態GLP-1(7~36)アミド及びGLP
-1(7~37)を生じる。内因性GLP-1は、主にジペプチジルペプチダーゼ-4(
DPP-4又はDPP-IV)によって、また中性エンドペプチダーゼ24.11(NE
P 24.11)及び腎クリアランスを介して、複数の経路で急速に分解され、その結果
、半減期は約2分間である。GLP-1ベースの治療は、体重減少及び低血糖リスク低下
に関連しており、これらは2型糖尿病の治療において重要である。
【0087】
エキセンジン(エキセナチド)は、2型真性糖尿病(T2DM)の治療のために承認さ
れている、インクレチン模倣薬群に属するGLP-1アゴニストである。エキセナチドは
、エキセンジン-4の合成バージョンである39アミノ酸長ペプチドホルモンであり、グ
ルコース調節効果を有するインスリン分泌促進物質である。エキセンジン-4は、広範囲
の相同性と機能を哺乳類GLP-1と共有するが、DPP-4(DPP-IV)による分
解に抵抗することにより、より長い薬理学的半減期を可能にするため、治療的利点を有し
ている。エキセンジン-4のこの生物学的特性が、T2DMの治療に使用するための検討
につながった。
【0088】
アミリン(膵島アミロイドポリペプチド(IAPP))は、膵臓β細胞からインスリン
と共分泌される37アミノ酸長ペプチドホルモンである。アミリンは、胃内容物排出を緩
徐化し、満腹感を促進することによって、血糖調節の役割を果たす。アミリン(IAPP
)は、89アミノ酸長ペプチドからプロセシングされる。膵島アミロイドポリペプチド前
駆体(proIAPP)は、膵臓β細胞中で、89アミノ酸長ペプチドから、22アミノ
酸長シグナルペプチドが切断された後、67アミノ酸長ペプチドとして産生される。pr
oIAPPのプロセシングに障害があると、アミリン(IAPP)の産生の欠如が血糖制
御の欠如をもたらし得るため、2型糖尿病をもたらす条件につながり得ると考えられる。
プラムリンタイドは、アミリン模倣薬であり、少なくともヒトアミリンと同程度の効力を
有する。これは、37アミノ酸長ポリペプチドであり、位置25(アラニン)、位置28
(セリン)、及び位置29(セリン)でアミノ酸をプロリンに置換することによって、ヒ
トアミリンとはアミノ酸配列が異なっている。このプロリンは、ラットのアミリンに見ら
れる自然発生的な変動である。これらの置換の結果として、プラムリンタイドは、可溶性
、非接着性、及び非凝集性となり、これによって、天然のヒトアミリンの数多くの物理化
学的な欠点を克服する(Janes et al.,Diabetes 45(Supp
l 2):235A (1996);Young et al.,Drug Dev.R
es.37:231~48(1996b))。
【0089】
α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)は、メラノコルチン類の内因性ペプチド
ホルモン及び神経ペプチドである。α-MSHは、哺乳動物において毛髪及び皮膚の色素
沈着に関与するプロセスであるメラニン形成刺激において最も重要なメラニン細胞刺激ホ
ルモン(MSH)である。α-MSHはまた、摂食行動、エネルギーホメオスタシス、性
的活動、並びに虚血及び再灌流障害からの保護においても役割を果たす。
【0090】
コカイン及びアンフェタミン調節転写産物(CART)は、ヒトにおけるCARTPT
遺伝子によりコードされる神経ペプチドタンパク質である。CARTペプチド、特にCA
RT(55~102)は、CARTペプチドがいくつかの視床下部食欲回路と相互作用す
るため、エネルギーホメオスタシスの調節において重要な機能を有すると思われる。CA
RT発現は、レプチン、コレシストキニン、及びグレリンを含む、食欲調節に関与する末
梢ペプチドホルモンによって調節される。CART及びコレシストキニンは、食欲調節に
対する相乗効果を有する。CARTペプチドは、エタノール離脱によって誘発される不安
様挙動の一因となり;自発運動、条件付け場所嗜好性、及び精神刺激薬のコカイン自己投
与効果を調節し;食物摂取を抑制し;恐怖及び刺激行動に関与すると考えられている。視
床下部におけるCART低活性は、過食症及び体重増加に関連し、CARTは、自然な報
酬プロセスを調節するオピオイドの中脳辺縁系ドーパミン回路において役割を果たすと考
えられる。
【0091】
神経ペプチドY(NPY)は、例えば、摂食行動、大脳皮質神経活動、心臓活動、及び
情動調節の制御を含む、身体における多数の役割を有する。NPYはまた、肥満、アルコ
ール依存症、及びうつ病を含むいくつかのヒト疾患にも関与している。更に、抗NPY抗
体(NPY及びNPY受容体拮抗薬に対するアンチセンス・オリゴデオキシリヌクレオチ
ド)を用いたNPYの中枢作用の遮断は、エネルギー欠乏動物において、食物摂取の減少
をもたらす。具体的には、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)及び神経ペプチドY受
容体Y1(NPY1)は、異なる摂食相を刺激することが示されている(Br J Ph
armacol.2003 Aug;139(8):1433~40)。したがって、N
PY5及びNPY1拮抗薬は、肥満及び他の関連する代謝疾患の治療において有効であり
得る。
【0092】
ニューロテンシンは、黄体形成ホルモン及びプロラクチン放出の調節に関与し、ドーパ
ミン作動系との顕著な相互作用を有する、13アミノ酸長神経ペプチドである。ニューロ
テンシンは、中枢神経系全体に分布し、最も高いレベルは視床下部、扁桃体、及び側坐核
にある。ニューロテンシンは、鎮痛、低体温、増加した運動活動を含む様々な効果を誘発
することができ、ドーパミン経路の調節に関与する。
【0093】
神経ペプチドB(NPB)は、短い生物学的活性ペプチドであり、その前駆体はNBP
遺伝子によりコードされる。NPBは、神経ペプチドB/W受容体1及び2(NPBWR
1及びNPBWR2)と呼ばれる2つのGタンパク質結合受容体を介して作用することが
できる。神経ペプチドBは、摂食、神経内分泌系、記憶、学習、及び求心性疼痛経路の調
節に関連すると考えられている。
【0094】
神経ペプチドW(NPW)は、23個(NPW23)又は30個(NPW30)のアミ
ノ酸からなる2つの形態で存在する。これらの神経ペプチドは、2つのGタンパク質結合
受容体であるNPBWR1(別名GPR7)及びNPBWR2(別名GPR8)に結合し
、これらを介して作用し得る。NPWは、食物摂取及び体重を抑制し、熱産生及び体温の
両方を増加させることが示されており、このことは、NPWが内因性異化作用信号伝達分
子として機能することを示唆している。
【0095】
グレリン(別名イエノモレリン(INN))は、胃腸管内のグレリン作動性細胞によっ
て産生されるペプチドホルモンであり、中枢神経系における神経ペプチドとして機能する
。グレリンは、食欲の調節、エネルギーの分配及び使用速度の調節、ドーパミンニューロ
ンにおける報酬知覚の調節において役割を果たす。グレリンは、GHRL遺伝子によりコ
ードされ、プログレリン前駆体の開裂により産生されると考えられ、このプログレリン前
駆体が開裂してプログレリンを生成し、これが更に開裂して28アミノ酸長のグレリンが
産生される。他の内因性ペプチドとは異なり、グレリンは、血液脳関門を横断することが
でき、このことは、グレリンを外因的に投与する、臨床面でのユニークな可能性をもたら
す。
【0096】
ボンベシン様受容体3(BRS3)は、既知の天然起源のボンベシン関連ペプチドとの
み低い親和性で相互作用するGタンパク質結合受容体であり、高親和性リガンドを有さな
いため、BRS3はオーファン受容体として分類される。
【0097】
ガラニンは、GAL遺伝子によりコードされる神経ペプチドである。ガラニンは、ヒト
並びに他の動物の脳、脊髄、及び腸において広く発現されている。ガラニンの機能は、ま
だ完全に分類されていない。しかしながら、ガラニンは、ニューロンにおける作用電位の
調節及び阻害に主に関与している。ガラニンは、侵害受容、覚醒及び睡眠調節、認知、摂
食、気分調節、及び血圧の調節が挙げられるがこれらに限定されない、数多くの生物学的
に多様な機能に関与している。ガラニンは、多くの場合、アセチルコリン、セロトニン、
及びノルエピネフリンなどの古典的な神経伝達物質と共局在し、また神経ペプチドY、物
質P、及び血管活性腸ペプチドなどの神経調節物質と共局在する。
【0098】
コレシストキニン(CCK)は、脂肪及びタンパク質の消化を刺激する役目をする胃腸
系のペプチドホルモンである。CCKは、小腸内の腸内分泌細胞によって合成及び分泌さ
れ、その存在により、消化酵素及び胆汁を膵臓及び胆嚢から放出させる。CCKは、消化
、満腹感、及び不安において役割を果たす。
【0099】
オレキシン(別名ヒポクレチン)は、覚醒、目覚め、及び食欲を調節する神経ペプチド
である。オレキシンA及びB(ヒポクレチン-1及び-2)の2種類が存在し、それぞれ
長さが33アミノ酸長及び28アミノ酸長である。オレキシン系は、主に食物摂取の刺激
に関与すると考えられ、上記の役割に加えて、オレキシンは、エネルギー消費の調節と内
臓機能の調節を行う。
【0100】
メラニン濃縮ホルモン(MCH)は、環状19アミノ酸長の食欲促進視床下部ペプチド
であり、これは、摂食行動、気分、睡眠覚醒サイクル、及びエネルギーバランスの調節に
関与すると考えられている。MCH発現ニューロンは、視床下部外側野及び不確帯内に位
置し、このような制限された分布にもかかわらず、MCHニューロンは脳全体に広く広が
っている。
【0101】
オキシトシンは、通常は視床下部の室傍核によって産生され、下垂体後葉によって放出
されるペプチドホルモン及び神経ペプチドである。オキシトシンは、社会的結合、性的生
殖、並びに出産時及び出産後に役割を果たすと考えられている。オキシトシン受容体は、
マグネシウム及びコレステロールを必要とするGタンパク質結合受容体であり、Gタンパ
ク質結合受容体のロドプシン型(クラスI)群に属する。
【0102】
40アミノ酸長ペプチドであるヒトストレスコピン(h-SCP)は、副腎皮質刺激ホ
ルモン放出ホルモン(CRH)ペプチド群に属する。CRHペプチド群の生物学的作用は
、2つの7回膜貫通型Gタンパク質結合受容体、CRH受容体1型(CRHR1)及びC
RH受容体2型(CRHR2)によって顕現される。これらの受容体は高い配列相同性を
有するが、CRHペプチド群の中の異なる要素は、相対的な結合親和力、受容体活性化の
度合、及びこれら2つの受容体の選択性において顕著な違いを示す。CRH群の多くのも
のとは異なり、h-SCPはCRHR2に対してより高い選択性を発現し、生理学的スト
レスの開始及び維持を減弱させるプロセスを補助するメディエーターとして機能する。生
理学的ストレスにおける明らかな役割に加え、h-SCPは他の数多くの生理学的作用を
顕現させることが報告されている。これは、内分泌系、中枢神経系、心臓血管系、肺系、
胃腸系、腎臓系、骨格筋系、及び炎症系に影響を及ぼす。CRHR2活性は更に、サルコ
ペニアなどの骨格筋消耗疾患、運動活動、及び食物摂取に関与しており、心臓保護的役割
に関与し、気管支弛緩及び抗炎症活性を発現する。更に、ストレスコピン模倣薬は、コル
チコトロピン放出ホルモン受容体2活性によって媒介される医学的適応症の治療に有用で
あることが特定されている(例えば、米国特許出願第20100130424号を参照さ
れたい)。
【0103】
半減期延長部分
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントに加えて、本発明のコンジュゲートは、例
えば共有結合相互作用を介して、薬学的活性部分の半減期を延長するための1つ又は2つ
以上の他の部分を組み込むことができる。代表的な他の半減期延長部分としては、アルブ
ミン、アルブミン変異体、アルブミン結合タンパク質及び/又はドメイン、トランスフェ
リン、並びにそのフラグメント及び類似体が挙げられるがこれらに限定されない。本発明
のコンジュゲートに組み込むことができる追加の半減期延長部分には、例えば、所望の特
性を得るための、PEG5000又はPEG20,000などのポリエチレングリコール
(PEG)分子、例えばラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ステアリン酸エス
テル、アラキジン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレイン酸エステル、アラキドン酸エ
ステル、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などの異な
る鎖長の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ポリリジン、オクタン、炭水化物(デキストラン、
セルロース、オリゴ糖又は多糖)が挙げられる。これらの部分は、タンパク質足場コード
配列との直接融合体であってもよく、標準的なクローニング及び発現技術によって作製し
てもよい。あるいは、周知の化学カップリング方法を用いて、組換え技術により及び化学
的に産生された本発明のコンジュゲートにその部分を結合させることができる。
【0104】
周知の方法を用いて、システイン残基を分子のC末端に組み入れて、PEG化した基を
システインに結合させることによって、PEG化部分を、例えば、本発明のペプチド分子
に付加することができる。
【0105】
更なる部分を組み込んだ本発明のペプチド分子を、いくつかの公知のアッセイによって
、官能性について比較することができる。例えば、単独での又は本発明によるコンジュゲ
ート中の、対象とする治療用ペプチドの生物学的又は薬物動態活性を、既知のインビトロ
又はインビボアッセイを用いてアッセイし、比較することができる。
【0106】
医薬組成物
別の一般的な態様において、本発明は、本発明のコンジュゲートと、薬学的に許容可能
な担体とを含む医薬組成物に関する。本明細書で使用されるとき、用語「医薬組成物」は
、薬学的に許容可能な担体と共に本発明のコンジュゲートを含む生成物を意味する。本発
明のコンジュゲート及びそれらを含む組成物は、本明細書で言及される治療用途のための
薬剤の製造にも有用である。
【0107】
本明細書で使用されるとき、用語「担体」は、あらゆる賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、
バッファー、安定剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有小胞、ミクロスフェア、リポソーム
封入体、又は医薬製剤で使用するための当該技術分野では周知の他の材料を指す。担体、
賦形剤又は希釈剤の特性は、特定の用途の投与経路によって決まる点は理解されよう。本
明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能な担体」は、本発明に基づく組成物の
効果又は本発明に基づく組成物の生物活性を妨げない無毒性材料を指す。特定の実施形態
によると、本開示を考慮すると、抗体医薬組成物での使用に適した任意の薬学的に許容可
能な担体を、本発明で使用することができる。
【0108】
本発明に使用するための薬学的に許容可能な酸性/アニオン性の塩としては、酢酸塩、
ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシ
ウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸
塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミ
ン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素
酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビ
オン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル臭化物、メチ
ル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩
、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基
性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩及
びトリエチオジドが挙げられるが、これらに限定されない。また、有機酸又は無機酸とし
ては、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、グリコール酸、メタンス
ルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、シュウ酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-ト
ルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サッカリン酸又はトリフルオロ酢酸
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
薬学的に許容可能な塩基性/カチオン性の塩としては、アルミニウム、2-アミノ-2
-ヒドロキシメチル-プロパン-1,3-ジオール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノ
メタン、トロメタン又は「TRIS」としても知られる)、アンモニア、ベンザチン、t
-ブチルアミン、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、シクロへキシルアミン、ジエ
タノールアミン、エチレンジアミン、リチウム、L-リジン、マグネシウム、メグルミン
、N-メチル-D-グルカミン、ピペリジン、カリウム、プロカイン、キニーネ、ナトリ
ウム、トリエタノールアミン、又は亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態では、約0.001mg/mL~約100mg/mL、約
0.01mg/mL~約50mg/mL、又は約0.1mg/mL~約25mg/mLの
量で本発明のコンジュゲートを含む医薬製剤が提供される。この医薬製剤は、約3.0~
約10、例えば約3~約7、又は約5~約9のpHを有し得る。この製剤は更に、緩衝系
、防腐剤(複数可)、等張剤(複数可)、キレート剤(複数可)、安定剤(複数可)及び
/又は界面活性剤(複数可)からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含み得る
【0111】
薬学的に許容可能な担体を有する薬学的活性成分の製剤は、例えば、Remingto
n:The Science and Practice of Pharmacy(例
えば21st edition(2005)及びそれ以降の任意の改訂版)にあるように
、当該技術分野において既知である。追加成分の非限定的な例としては、緩衝剤、希釈剤
、溶媒、張度調節剤、防腐剤、安定剤、及びキレート剤が挙げられる。1つ又は2つ以上
の薬学的に許容可能な担体は、本発明の医薬組成物を配合する際に使用され得る。
【0112】
本発明の一実施形態では、医薬組成物は液体製剤である。液体製剤の好ましい例は、水
性製剤、すなわち、水を含む製剤である。液体製剤は、溶液、懸濁液、エマルション、マ
イクロエマルション、ゲルなどを含み得る。水性製剤は、典型的には、少なくとも50%
w/wの水、又は少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、又は少
なくとも95% w/wの水を含む。
【0113】
一実施形態では、医薬組成物は、注射器又は輸液ポンプを介して注入することができる
注射用製剤として製剤化され得る。注入は、例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、又は静脈内
に送達され得る。
【0114】
別の一実施形態では、医薬組成物は、固体製剤、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥組成物
であり、これはそのまま使用してもよく、又は、医師若しくは患者が使用前に溶媒及び/
若しくは希釈剤を添加する。固体剤形としては、圧縮錠剤などの錠剤、及び/又はコーテ
ィングされた錠剤、並びにカプセル(例えば、ハード又はソフトゼラチンカプセル)を挙
げることができる。薬学的組成物はまた、例えば、サッシェ、糖衣錠、粉末、顆粒、トロ
ーチ剤、又は再構成用の粉末の形態であってもよい。
【0115】
剤形は、即時放出(この場合、水溶性若しくは分散性担体を含み得る)であってよく、
又は、遅延放出、持続放出、又は変性放出(これらの場合は、胃腸管における剤形の溶解
速度を調節する非水溶性ポリマーを含み得る)であってもよい。
【0116】
他の実施形態では、医薬組成物は、経鼻投与、頬内、又は舌下送達され得る。
【0117】
水性製剤のpHは、pH3~pH10の間であり得る。本発明の一実施形態では、製剤
のpHは約7.0~約9.5である。本発明の別の一実施形態では、製剤のpHは約3.
0~約7.0である。
【0118】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は緩衝剤を含む。緩衝剤の非限定的な例とし
ては、アルギニン、アスパラギン酸、ビシン、クエン酸塩、リン酸水素二ナトリウム、フ
マル酸、グリシン、グリシルグリシン、ヒスチジン、リジン、マレイン酸、リンゴ酸、酢
酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、コハク酸
塩、酒石酸、トリシン、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、並びにこれら
の混合物が挙げられる。緩衝剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50m
g/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これ
らの具体的な緩衝剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0119】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は防腐剤を含む。緩衝剤の非限定的な例とし
ては、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブロノポール、ブチル4-
ヒドロキシベンゾエート、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロヘキシジン、ク
ロルフェネシン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、エチル4-ヒドロ
キシベンゾエート、イミド尿素、メチル4-ヒドロキシベンゾエート、フェノール、2-
フェノキシエタノール、2-フェニルエタノール、プロピル4-ヒドロキシベンゾエート
、デヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサール、及びこれらの混合物が挙げられる。防腐剤は
、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/
mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的な防腐剤の各々を含む
医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0120】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は等張剤を含む。本実施形態の非限定的な例
としては、塩(塩化ナトリウムなど)、アミノ酸(グリシン、ヒスチジン、アルギニン、
リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、及びスレオニンなど)、アル
ジトール(グリセロール、1,2-プロパンジオールプロピレングリコール、1,3-プ
ロパンジオール、及び1,3-ブタンジオールなど)、ポリエチレングリコール(例えば
、PEG400)、並びにこれらの混合物が挙げられる。等張剤の別の例としては、糖が
挙げられる。糖の非限定的な例は、単糖類、二糖類、若しくは多糖類、又は水溶性グルカ
ンであり得、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、
マルトース、ラクトース、ショ糖、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリ
ン、シクロデキストリン、α-及びβ-HPCD、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデ
ンプン、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。等張剤の別の例は糖
アルコールであり、用語「糖アルコール」は、少なくとも1つの-OH基を有するC(4
~8)炭化水素として定義される。糖アルコールの非限定的な例としては、マンニトール
、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、及びア
ラビトールが挙げられる。本段落に列挙される各等張剤を含む医薬組成物は、本発明の代
替実施形態を構成する。等張剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50m
g/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これ
らの具体的な等張剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0121】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物はキレート剤を含む。キレート剤の非限定的
な例としては、クエン酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩、
及びこれらの混合物が挙げられる。キレート剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/
mL~約50mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在し
てもよい。これらの具体的なキレート剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施
形態を構成する。
【0122】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は安定剤を含む。安定剤の非限定的な例とし
ては、1つ又は2つ以上の凝集阻害剤、1つ又は2つ以上の酸化阻害剤、1つ又は2つ以
上の界面活性剤、及び/又は1つ又は2つ以上のプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。
【0123】
本発明の別の一実施形態では、医薬組成物は安定剤を含み、当該安定剤は、カルボキシ
/ヒドロキシセルロース及びその誘導体(HPC、HPC-SL、HPC-L及びHPM
C)、シクロデキストリン、2-メチルチオエタノール、ポリエチレングリコール(PE
G 3350など)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、塩(塩
化ナトリウムなど)、硫黄含有物質(モノチオグリセロールなど)、又はチオグリコール
酸である。安定剤は、個々に又は合計で、約0.01mg/mL~約50mg/mL、例
えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的な
安定剤の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0124】
本発明の更なる実施形態では、医薬組成物は、1つ又は2つ以上の界面活性剤、好まし
くは1つの界面活性剤、少なくとも1つの界面活性剤、又は2つの異なる界面活性剤を含
む。用語「界面活性剤」は、水溶性(親水性)部分と脂溶性(親油性)部分とからなる任
意の分子又はイオンを指す。界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性
界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び/又は双極性イオン界面活性剤からなる群から
選択することができる。界面活性剤は、個々に又は合計で、約0.1mg/mL~約20
mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的な界面活性剤の各々を含む医薬組成
物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0125】
本発明の更なる実施形態では、医薬組成物は、例えば、EDTA(エチレンジアミン四
酢酸)、及び/又はベンズアミジン塩酸(HCl)などの1つ又は2つ以上のプロテアー
ゼ阻害剤を含む。プロテアーゼ阻害剤は、個々に又は合計で、約0.1mg/mL~約2
0mg/mLの濃度で存在してもよい。これらの具体的なプロテアーゼ阻害剤の各々を含
む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0126】
本発明の医薬組成物は、組成物の保管中にポリペプチドの凝集体形成を減少させるのに
十分な量のアミノ酸塩基を含み得る。用語「アミノ酸塩基」は、1つ又は2つ以上のアミ
ノ酸(メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、ア
スパラギン酸、トリプトファン、スレオニンなど)、又はこれらの類似体を指す。任意の
アミノ酸は、その遊離塩基形態又はその塩形態のいずれで存在してもよい。アミノ酸塩基
の任意の立体異性体(すなわち、L、D、又はこれらの混合物)が存在してもよい。アミ
ノ酸塩基は、個々に又は他のアミノ酸塩基と組み合わせて、約0.01mg/mL~約5
0mg/mL、例えば約0.1mg/mL~約20mg/mLの濃度で存在してもよい。
これらの具体的なアミノ酸塩基の各々を含む医薬組成物は、本発明の代替の実施形態を構
成する。
【0127】
また、本発明のコンジュゲート又はその医薬組成物の治療的有効量が、所望の効果に応
じて変動することも当業者に自明である。したがって、最適投与量は、当業者が容易に決
定することができ、使用される具体的なコンジュゲート、投与方法、調製物の力価、及び
病状の進行度に応じて変動する。加えて、対象の年齢、体重、食事、及び投与時間を含む
、治療される具体的な対象に関連する要因は、投与量を適切な治療的濃度に調節する必要
性を生じさせるものである。
【0128】
全ての適応に関して、本発明のコンジュゲートは、好ましくは、1日当たり単回又は分
割用量で、約1μg~約5mgの用量で、末梢投与される(例えば、単回用量を2、3、
4、5、6、7、8、9、又は10回の小用量に分割することができる)、あるいは投与
当たり約0.01μg/kg~約500μg/kg、より好ましくは約0.05μg/k
g~約250μg/kg、最も好ましくは約50μg/kg未満の用量で末梢投与される
。これらの範囲内の用量は、当然ながら各アゴニストの効力によって変化し、当業者によ
って容易に決定される。したがって、上記の投与量は平均的な場合の例である。当然なが
ら、これよりも多いか又は少ない投与量範囲が有効である個々の例もあり得、かかる例も
本発明の範囲内である。
【0129】
特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、約1μg~約5mgの用量、又は約
0.01μg/kg~約500μg/kgの用量、より好ましくは約0.05μg/kg
~約250μg/kgの用量、最も好ましくは約50μg/kg未満の用量で投与され、
これに伴う第2の治療薬(例えばリラグルチド)の用量は、約1μg~約5mgの用量、
又は約0.01μg/kg~約500μg/kgの用量、より好ましくは約0.05μg
/kg~約250μg/kgの用量、最も好ましくは約50μg/kg未満の用量である
【0130】
本発明のコンジュゲートの薬学的に許容可能な塩としては、無機又は有機の酸類又は塩
基類から形成される、従来の非毒性塩類又は四級アンモニウム塩類が挙げられる。かかる
酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ク
エン酸塩、樟脳酸塩、ドデシル硫酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、
メタンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、
硫酸塩及び酒石酸塩が挙げられる。塩基性塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩及
びカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土
類金属塩、ジシクロヘキシルアミノ塩などの有機塩基との塩、並びにアルギニンなどのア
ミノ酸との塩が挙げられる。更に、塩基性の窒素含有基は、例えばハロゲン化アルキルに
よって四級化してもよい。
【0131】
本発明の医薬組成物は、それらの使用目的を実現する任意の手段によって投与すること
ができる。例としては、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、口内又は眼内
投与が挙げられる。経口経路により投与してもよい。非経口投与に適する製剤としては、
例えば、水溶性の塩、酸性溶液、アルカリ性溶液、デキストロース水溶液、等張炭水化物
溶液、及びシクロデキストリン包接錯体などの水溶性形態の活性コンジュゲートの水溶液
が挙げられる。
【0132】
本発明はまた、薬学的に許容可能な担体を本発明のコンジュゲートのいずれかと混合す
ることを含む、医薬組成物の製造方法も包含する。加えて、本発明は、1つ又は2つ以上
の薬学的に許容可能な担体を本発明のコンジュゲートのいずれかと混合することによって
製造される医薬組成物を包含する。
【0133】
更に、本発明のコンジュゲートは、1つ又は2つ以上の結晶多形又は非晶質結晶形を有
してよく、したがって、これらの形態も本発明の範囲に包含されるものとする。加えて、
このコンジュゲートは、例えば水(すなわち、水和物等)又は一般的な有機溶媒と溶媒和
物を形成してよい。本明細書で使用されるとき、用語「溶媒和物」は、本発明のコンジュ
ゲートと1つ又は2つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、水
素結合など、イオン結合及び共有結合の度合いの変化を伴う。特定の場合において、例え
ば1つ又は2つ以上の溶媒分子が結晶質固体の結晶格子に組み込まれているとき、この溶
媒和物は分離することができるようになる。用語「溶媒和物」は、溶液相溶媒和物と、分
離可能な溶媒和物の両方を包含するものとする。適切な溶媒和物の非限定的な例としては
、エタノラート、メタノラートなどが挙げられる。
【0134】
本発明の範囲には、本発明のコンジュゲートの結晶多形及び溶媒和物が含まれるものと
する。ゆえに、本発明の治療方法における用語「投与」には、本発明のコンジュゲート、
あるいは具体的に開示されていなくとも、明らかに本発明の範囲内に含まれるであろう多
形体又はその溶媒和物を用いて、本明細書に記載の症候群、障害又は疾患を治療、寛解又
は予防する手段が含まれる。
【0135】
別の一実施形態では、本発明は、医薬品として使用するための本発明のコンジュゲート
に関する。
【0136】
本発明の範囲内には、本発明のコンジュゲートのプロドラッグが含まれる。一般に、か
かるプロドラッグは、インビボで目的のコンジュゲートに容易に変換可能な、当該コンジ
ュゲートの機能的誘導体である。したがって、本発明の治療方法における用語「投与」に
は、本明細書に記載される様々な障害の、具体的に開示されたコンジュゲートによる治療
か、又は具体的に開示されていなくとも、患者への投与後にインビボで特定のコンジュゲ
ートに変換される、コンジュゲートによる治療が含まれるものとする。好適なプロドラッ
グ誘導体の選択及び調製に関する従来の手順は、例えば、「Design of Pro
drugs」(Ed.H.Bundgaard、Elsevier,1985)に記載さ
れている。
【0137】
更に、本発明の範囲内で、いずれかの元素、特に、本発明のコンジュゲートに関して述
べるときのいずれかの元素は、天然に存在する、又は合成生産された、天然の存在度を有
する、又は同位体濃縮形態での、当該元素の全ての同位体及び同位体混合物を含むことに
なることを意図している。例えば、水素に関しては、その範囲内にH、H(D)、及
H(T)が含まれる。同様に、炭素及び酸素に関しては、それらの範囲内に12C、
13C及び14C、並びに16O及び18Oがそれぞれ含まれる。かかる同位体は、放射
性同位体であってもよく、又は非放射性同位体であってもよい。本発明の放射性標識コン
ジュゲートは、H、11C、18F、122I、123I、125I、131I、75
Br、76Br、77Br、及び82Brからなる群から選択される放射性同位体を含ん
でよい。好ましくは、放射性同位元素は、H、11C、及び18Fからなる群から選択
される。
【0138】
本発明のいくつかのコンジュゲートは、アトロプ異性体として存在してもよい。アトロ
プ異性体は、一重結合周りの回転が障害されることにより生じる立体異性体であり、回転
に対する立体歪みによる干渉が、配座異性体の単離を可能にする程度に十分高いものであ
る。かかる配座異性体及びその混合物は全て、本発明の範囲内に包含されると理解される
【0139】
本発明によるコンジュゲートが少なくとも1つの立体中心を有する場合、結果としてそ
れらはエナンチオマー又はジアステレオマーとして存在し得る。かかる異性体及びその混
合物は全て、本発明の範囲内に包含されると理解される。
【0140】
本発明によるコンジュゲートの調製プロセスにより立体異性体混合物が生じる場合、こ
れらの異性体は、分取クロマトグラフィーなどの従来法により分離することができる。コ
ンジュゲートはラセミ体として調製されてもよく、又は個々のエナンチオマーをエナンチ
オ選択的な合成、又は分割のいずれかにより調製することもできる。コンジュゲートは、
例えば(-)-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸及び/又は(+)-ジ-p-トルオイル
-L-酒石酸のような光学的に活性な酸と共に塩を形成させることでジアステレオマー対
を形成した後、分別結晶化させる及び遊離塩基を再生せるなどの標準的方法により、その
成分であるエナンチオマーに分割することができる。コンジュゲートはまた、ジアステレ
オマーのエステル又はアミドを形成した後、クロマトグラフィー分離を行い、キラル補助
基を除去することにより、分割することもできる。あるいは、コンジュゲートは、高速液
体クロマトグラフィー(HPLC)又はSFCを介してキラルカラムを使用して分割され
てもよい。場合によっては、1H NMRスペクトルにおいて、複雑なマルチプレット及
びピークの一体化をもたらす、1H NMRにより観察可能な、コンジュゲートの回転異
性体が存在し得る。
【0141】
本発明のコンジュゲートを調製するための任意のプロセスにおいて、関連する分子のい
ずれかにおける感受性基又は反応性基を保護することが必要及び/又は望ましい場合があ
る。これは、Protective Groups in Organic Chemi
stry,ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973及び
T.W.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Group
s in Organic Synthesis,John Wiley & Sons
,1991(これらはそれぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記述さ
れているような、従来型の保護基によって達成することができる。保護基は、その後の便
利な段階において、当該技術分野で周知の方法を用いて除去することができる。
【0142】
使用方法
本発明はまた、障害、疾患、若しくは病態を、あるいは当該障害、疾患、若しくは病態
の1つ若しくは2つ以上の症状を、必要とする対象において、予防、治療、発症遅延、又
は寛解させるための方法を提供し、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医
薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0143】
特定の実施形態では、この障害、疾患、又は病態は、本発明のモノクローナル抗体プラ
ットフォームに結合することができるペプチド又は化合物で治療され得る任意の障害、疾
患、又は病態であり得る。特定の実施形態では、この障害、疾患、又は病態は、肥満、1
型又は2型糖尿病、メタボリックシンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリ
ン抵抗性、耐糖能異常(例えば、グルコース不耐性)、高血糖症、高インスリン血症、高
トリグリセリド血症、先天性高インスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテ
ローム性動脈硬化症、糖尿病性ネフロパシー、及びその他の心臓血管危険因子(高血圧な
ど)、及び管理されていないコレステロール及び/又は脂質レベルに関連する心臓血管危
険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂
肪性肝炎(NASH)、腎疾患、及び/又は湿疹からなる群から選択される。
【0144】
特定の実施形態によれば、治療有効量は、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ
、又はそれ以上を達成するのに十分な治療の量を指す:(i)治療される疾患、障害若し
くは病態又はそれに関連する症状の重症度を低減又は改善すること、(ii)治療される
疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の期間を短縮すること、(iii)治
療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の進行を防止すること、(i
v)治療される疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状の退縮を生じること、
(v)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状の進展又は発症を予防す
ること、(vi)治療される疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状の再発を防止
すること、(vii)治療される疾患、障害、若しくは病態、又はそれに関連する症状を
有する対象の入院を減少させること、(viii)治療される疾患、障害若しくは病態、
又はそれに関連する症状を有する対象の入院期間を短縮させること、(ix)治療される
疾患、障害又は病態、又はそれに関連する症状を有する対象の生存率を高めること、(x
i)治療される対象の疾患、障害若しくは病態、又はそれに関連する症状を阻害又は軽減
すること、及び/又は(xii)別の治療の予防又は治療効果を強化又は改善すること。
【0145】
治療有効量又は用量は、治療される疾患、障害又は病態、投与手段、標的部位、対象の
生理学的状態(例えば、年齢、体重、健康状態を含む)、対象がヒトであるか動物である
か、投与される他の薬剤、及び、治療が予防的なものであるか治療的なものであるか、な
どの様々な因子によって異なり得る。治療用量は、安全性及び有効性を最適化するために
最適に滴定される。
【0146】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」
、及び「治療(treatment)」はいずれも、疾患、障害又は病態に関連した少なくとも1
つの測定可能な物理的パラメータの改善又は逆転を指すものであり、これは対象において
必ずしも認識されるとは限らないが、対象において認識可能な場合もある。用語「治療す
る(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」はまた、疾患、
障害、又は病態の退縮を生じる、その進行を防止する、又は少なくともその進行を遅らせ
ることを指す場合もある。特定の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(t
reating)」、及び「治療(treatment)」は、疾患、障害、若しくは病態に関連する1つ
又は2つ以上の症状の緩和、進展若しくは発症の予防、又はその期間の短縮を指す。特定
の実施形態では、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(tre
atment)」は、疾患、障害、又は病態の再発の防止を指す。特定の実施形態では、「治療
する(treat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、疾患、障
害、又は病態を有する対象の生存率の向上を指す。特定の実施形態では、「治療する(tr
eat)」、「治療する(treating)」、及び「治療(treatment)」は、対象における疾患
、障害、又は病態の消失を指す。
【0147】
一実施形態では、本発明は、必要とする対象において、肥満、又は肥満の任意の1つ若
しくは2つ以上の症状を、予防、治療、発症遅延、若しくは寛解させるための方法を提供
し、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする
対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象の体重は、本明細書に記載さ
れる本発明のコンジュゲート、医薬組成物、剤形、又は薬剤のうち任意のものを投与する
前の対象の体重に比べて、あるいは、本明細書に記載される本発明のコンジュゲート、医
薬組成物、剤形、又は薬剤のうち任意のものの投与を受けていない対照対象と比べて、例
えば、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1
%~約5%、約2%~約3%、約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約2
0%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約4
0%、約40%~約45%、又は約45%~約50%、減少する。
【0148】
いくつかの実施形態では、この体重の減少は、例えば、約1週間、約2週間、約3週間
、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、約6か月間、約7か
月間、約8か月間、約9か月間、約10か月間、約11か月間、約1年間、約1.5年間
、約2年間、約2.5年間、約3年間、約3.5年間、約4年間、約4.5年間、約5年
間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、又は約20年
間、維持される。
【0149】
本発明は、必要とする対象において、症候群、障害若しくは疾患、あるいは当該症候群
、障害若しくは疾患の1つ若しくは2つ以上の症状を、予防、治療、発症遅延、若しくは
寛解させるための方法を提供し、当該症候群、障害若しくは疾患は、肥満、1型又は2型
糖尿病、メタボリックシンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリン抵抗性、
耐糖能異常(例えば、グルコース不耐性)、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセ
リド血症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ネフロパシー、及びその他の
心臓血管危険因子(高血圧など)、及び管理されていないコレステロール及び/又は脂質
レベルに関連する心臓血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アルコール性脂肪性肝炎(NA
SH)、腎疾患、並びに湿疹からなる群から選択され、この方法は、有効量の本発明のコ
ンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0150】
本明細書で使用されるとき、メタボリックシンドロームは、高血糖(例えば、空腹時高
血糖)、高血圧、コレステロール値異常(例えば、HDL濃度が低い)、トリグリセリド
値異常(例えば、トリグリセリドが高い)、胴囲が大きい(すなわち、胴回りが大きい)
、腹部領域の脂肪増加、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、C反応性タンパク質値が
高い(すなわち、炎症誘発状態)、及び血漿プラスミノーゲン活性化抑制因子-1及びフ
ィブリノーゲン濃度が高い(すなわち、血栓促進状態)のうち1つ又は2つ以上を有する
対象を指す。
【0151】
本発明は、必要とする対象において、食物摂取を低減する方法を提供し、この方法は、
有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するこ
とを含む。いくつかの実施形態では、対象の食物摂取は、本明細書に記載される本発明の
コンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものを投与
する前の対象の食物摂取に比べて、あるいは、本明細書に記載される本発明のコンジュゲ
ート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものの投与を受けてい
ない対照対象と比べて、例えば、約0.01%~約0.1%、約0.1%~約0.5%、
約0.5%~約1%、約1%~約5%、約2%~約3%、約5%~約10%、約10%~
約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約30%~
約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、又は約45%~約50%、減少す
る。
【0152】
いくつかの実施形態では、この食物摂取の減少は、例えば、約1週間、約2週間、約3
週間、約1か月間、約2か月間、約3か月間、約4か月間、約5か月間、約6か月間、約
7か月間、約8か月間、約9か月間、約10か月間、約11か月間、約1年間、約1.5
年間、約2年間、約2.5年間、約3年間、約3.5年間、約4年間、約4.5年間、約
5年間、約6年間、約7年間、約8年間、約9年間、約10年間、約15年間、又は約2
0年間、維持される。
【0153】
本発明は、必要とする対象において、グリコヘモグロビン(A1C)を低減する方法を
提供し、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要と
する対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象のA1Cは、本明細書に
記載される本発明のコンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのう
ち任意のものを投与する前の対象のA1Cに比べて、あるいは、本明細書に記載される本
発明のコンジュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のもの
の投与を受けていない対照対象と比べて、例えば、約0.001%~約0.01%、約0
.01%~約0.1%、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約0.3%、約0.3%
~約0.4%、約0.4%~約0.5%、約0.5%~約1%、約1%~約1.5%、約
1.5%~約2%、約2%~約2.5%、約2.5%~約3%、約3%~約4%、約4%
~約5%、約5%~約6%、約6%~約7%、約7%~約8%、約8%~約9%、又は約
9%~約10%、減少する。
【0154】
他の実施形態では、必要とする対象において、空腹時血糖値を低減するための方法が提
供され、この方法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要と
する対象に投与することを含む。空腹時血糖値は、本明細書に記載される本発明のコンジ
ュゲート、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものを投与する前
の対象の空腹時血糖値に比べて、あるいは、本明細書に記載される本発明のコンジュゲー
ト、組成物、剤形、薬剤、又はこれらの組み合わせのうち任意のものの投与を受けていな
い対照対象と比べて、例えば、約140~約150mg/dL未満、約140~約130
mg/dL未満、約130~約120mg/dL未満、約120~約110mg/dL未
満、約110~約100mg/dL未満、約100~約90mg/dL未満、又は約90
~約80mg/dL未満、低減され得る。
【0155】
本発明は、必要とする対象において、Y2受容体活性を調節する方法を提供し、この方
法は、有効量の本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与
することを含む。本明細書で使用されるとき、「調節する」とは、受容体活性を増加又は
減少させることを指す。
【0156】
いくつかの実施形態では、有効量の本発明のコンジュゲート又はその剤形、組成物若し
くは薬剤は、それを必要とする対象に、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日
5回、1日6回、1日7回、又は1日8回投与される。他の実施形態では、有効量の本発
明のコンジュゲート又はその剤形、組成物若しくは薬剤は、それを必要とする対象に、1
日おきに1回、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、月に2
回、月に3回、又は月に4回投与される。
【0157】
本発明の別の実施形態は、必要とする対象において、疾患、障害若しくは症候群、ある
いは当該疾患、障害若しくは症候群の1つ若しくは2つ以上の症状を、予防、治療、発症
遅延、若しくは寛解させるための方法を含み、この方法は、必要とする対象に、有効量の
本発明のコンジュゲート又は医薬組成物を、併用療法で投与することを含む。特定の実施
形態では、この併用療法は、第2の治療薬である。特定の実施形態では、この併用療法は
、外科的療法である。
【0158】
本明細書で使用されるとき、用語「併用される」は、対象への2種以上の治療薬の投与
との関連において、複数の治療の使用を指す。
【0159】
本明細書で使用されるとき、併用療法は、必要とする対象に、有効量の本発明のコンジ
ュゲート又はその剤形、組成物若しくは薬剤と同時に、1つ若しくは2つ以上の追加の治
療薬を投与、又は1つ若しくは2つ以上の外科療法を適用することを指す。いくつかの実
施形態では、1つ又は2つ以上の追加の治療薬又は外科療法は、有効量の本発明のコンジ
ュゲートと同じ日に投与することができ、他の実施形態では、1つ又は2つ以上の追加の
治療薬又は外科療法は、有効量の本発明のコンジュゲートと同じ週又は同じ月に投与する
ことができる。
【0160】
特定の実施形態では、疾患又は障害は、肥満、2型糖尿病、メタボリックシンドローム
、インスリン抵抗性、及び脂質異常症からなる群から選択され、第2の治療薬は抗糖尿病
薬であり得る。特定の実施形態では、この抗糖尿病薬は、グルカゴン様ペプチド-1(G
LP-1)受容体調節因子であり得る。
【0161】
本発明は更に、必要とする対象における、本明細書に記述される疾患、障害、症候群、
又は症状のうちいずれかを、併用治療で予防、治療、発症遅延、若しくは寛解させること
を想到し、この併用治療は、必要とする対象に対し、本発明のコンジュゲート又は医薬組
成物の有効量を、以下の治療薬のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて投与することを含
む:ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤(例えば、シタグリプチン、サ
クサグリプチン、リナグリプチン、アログリプチンなど);GLP-1受容体アゴニスト
(例えば、エキセナチド及びリキシセナチドなどの短時間作用型GLP-1受容体アゴニ
スト;リラグルチドなどの中間作用型GLP-1受容体アゴニスト;エキセナチド延長放
出、アルビグルチド、デュラグルチドなどの長時間作用型GLP-1受容体アゴニスト)
;ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害剤(例えば、カナグリフロ
ジン(canaglifozin)、ダパグリフロジン(dapaglifozin)、エンパグリフロジン(empa
glifozin)など);胆汁酸隔離剤(例えば、コレセベラムなど);ドーパミン受容体アゴ
ニスト(例えば、ブロモクリプチン急速放出);ビグアニド(例えば、メトホルミンなど
);インスリン;オキシントモジュリン;スルホニル尿素(例えば、クロルプロパミド、
グリメピリド、グリピジド、グリブリド、グリベンクラミド、グリボルヌリド、グリソキ
セピド、グリクロピラミド、トラザミド、トルブタミド、アセトヘキサミド、カルブタミ
ドなど);及びチアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、ロベグ
リタゾン、シグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、ネトグリタゾン、リボグリ
タゾン、トログリタゾンなど)。いくつかの実施形態では、追加の治療薬(複数可)の用
量は、本発明のコンジュゲートと組み合わせて与えられる場合に低減される。いくつかの
実施形態では、本発明のコンジュゲートと組み合わせて使用される場合、追加の治療薬は
、それぞれが単独で使用される場合よりも低用量で使用されてもよい。
【0162】
特定の実施形態では、この疾患又は障害は、肥満、1型又は2型糖尿病、メタボリック
シンドローム(すなわち、シンドロームX)、インスリン抵抗性、耐糖能異常(例えば、
グルコース不耐性)、高血糖症、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、先天性高イ
ンスリン症(CHI)による低血糖、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性ネ
フロパシー、及びその他の心臓血管危険因子(高血圧など)、及び管理されていないコレ
ステロール及び/又は脂質レベルに関連する心臓血管危険因子、骨粗鬆症、炎症、非アル
コール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、腎疾患、
及び湿疹からなる群から選択され、第2の治療薬はリラグルチドであり得る。
【0163】
本発明は、それを必要とする対象における、本明細書に記述される疾患、障害、症候群
、又は症状のうちいずれかを、併用治療で予防、治療、発症遅延、若しくは寛解させるこ
とを想到し、この併用治療は、それを必要とする対象に対し、本発明のコンジュゲート又
は医薬組成物の有効量を、外科治療と組み合わせて投与することを含む。特定の実施形態
では、この外科治療は、肥満手術(例えば、Roux-en-Y胃バイパス手術などの胃
バイパス手術;スリーブ胃切除術;調節可能胃バンド手術;十二指腸スイッチによる胆膵
路変更術;胃内バルーン;胃縫縮術、及びこれらの組み合わせ)であり得る。
【0164】
1つ又は2つ以上の追加の治療薬が、有効量の本発明のコンジュゲートと同じ日に投与
される実施形態では、本発明のコンジュゲートは、追加の治療薬の前、後、又は同時に投
与され得る。「併用される」という用語の使用は、治療が対象に投与される順序を限定し
ない。例えば、第1の治療(例えば、本明細書に記載される組成物)を、対象への第2の
治療の投与前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6
時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間
、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、投与と同時に、又は投
与後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、1
2時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間
、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)投与することができる。
【0165】
実施形態
本発明は以下の非限定的な実施形態を更に提供する。
【0166】
実施形態1は、完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号
18のアミノ酸配列を有するHCDR3を除く完全ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を有す
る重鎖可変領域とを含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントであり、抗体又
はその抗原結合フラグメントは、インビボで任意のヒト抗原に特異的に結合しない。
【0167】
実施形態2は、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントが、それぞれ配列番号1
6、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領
域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1
)、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態1に記載の単離されたモノクローナル
抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0168】
実施形態3は、単離されたモノクローナル抗体が、配列番号12のポリペプチド配列を
有する重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号14のポリペプチド配列を有する軽鎖可
変ドメイン(VL)を含む、実施形態3は、実施形態2に記載の単離されたモノクローナ
ル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0169】
実施形態4は、Fc部分を更に含む、実施形態1~3のいずれか一つに記載の単離され
たモノクローナル抗体である。
【0170】
実施形態5は、Fc部分が、ヒトIgG4 Fc領域に由来するFc領域を更に含む、
実施形態4に記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0171】
実施形態6は、ヒトIgG4 Fc領域が、エフェクター機能を排除する置換を有する
、実施形態5に記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0172】
実施形態7は、モノクローナル抗体が、残基233におけるグルタミン酸のプロリンで
の置換、残基234におけるフェニルアラニンのアラニン又はバリンでの置換、残基23
5におけるロイシンのアラニン又はグルタミン酸での置換、並びに残基297におけるア
スパラギンのアラニンでの置換からなる群から選択される少なくとも1つの置換を含む、
修飾ヒトIgG4 Fc領域を更に含む、実施形態6に記載の単離されたモノクローナル
抗体である。
【0173】
実施形態8は、ヒトIgG4 Fc領域が、位置228におけるセリンのプロリンへの
置換を含む、実施形態6又は7に記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0174】
実施形態9は、配列番号13のポリペプチド配列を有する重鎖(HC)と、配列番号1
5のポリペプチド配列を有する軽鎖(LC)とを含む、実施形態4~8のいずれか一つに
記載の単離されたモノクローナル抗体である。
【0175】
実施形態10は、実施形態1~9のいずれか一つに記載のモノクローナル抗体又はその
抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸である。
【0176】
実施形態11は、実施形態10に記載の単離された核酸を含むベクターである。
【0177】
実施形態12は、実施形態11に記載のベクターを含む宿主細胞である。
【0178】
実施形態13は、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生
する方法であって、方法は、実施形態12に記載の宿主細胞を、モノクローナル抗体又は
その抗原結合フラグメントを産生する条件下で培養することと、抗体又はその抗原結合フ
ラグメントを細胞又は培養物から回収することと、を含む。
【0179】
実施形態14は、それにコンジュゲートされた少なくとも1つの薬理学的活性部分を更
に含む、実施形態1~9のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナル抗体又はその
抗原結合フラグメントである。
【0180】
実施形態15は、薬理学的活性部分が治療用ペプチドである、実施形態14に記載の単
離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0181】
実施形態16は、治療用ペプチドが配列番号18のシステイン残基にコンジュゲートし
ている、実施形態15に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメ
ントである。
【0182】
実施形態17は、治療用ペプチドが、リンカーを介して抗体又はその抗原結合フラグメ
ントにコンジュゲートしている、実施形態15又は16に記載の単離されたモノクローナ
ル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0183】
実施形態18は、リンカーが、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレング
リコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リ
ンカー、ポリエステルリンカー、又はPEG及び組み込み複素環からなるハイブリッドリ
ンカーを含む、実施形態17に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フ
ラグメントである。
【0184】
実施形態19は、治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1
(GLP1)、ペプチドチロシンチロシン(PYY)、エキセンジン(エキセナチド)、
アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及
びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗
薬、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチド
B、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシ
ストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、
並びにストレスコピンからなる群から選択される、実施形態15~18のいずれか一つに
記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0185】
実施形態20は、治療用ペプチドが、配列番号24のポリペプチド配列を含むオキシン
トモジュリンである、実施形態19に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原
結合フラグメントである。
【0186】
実施形態21は、オキシントモジュリン治療用ペプチドに結合されたモノクローナル抗
体又はその抗原結合フラグメントを含むコンジュゲートであり、コンジュゲートは、図1
1に示される配列番号27の構造を有し、図中、mAbは、実施形態1~9のいずれか一
つに記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを表し、]は、オキシン
トモジュリン治療用ペプチドがmAbに共有結合でコンジュゲートしていることを表す。
【0187】
実施形態22は、実施形態15~21のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナ
ル抗体又はその抗原結合フラグメントを生成する方法であり、方法は、治療用ペプチドの
側鎖上に導入された求電子物質(好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミド)を、モ
ノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの配列番号18のシステイン残基のスル
フヒドリル基と反応させ、これにより、治療用ペプチドと、モノクローナル抗体又はその
抗原結合フラグメントとの間に共有結合を形成することを含む。
【0188】
実施形態23は、実施形態14~21のいずれか一つに記載の単離されたモノクローナ
ル抗体又はその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物
である。
【0189】
実施形態24は、実施形態14~21のいずれか一つに記載のモノクローナル抗体又は
その抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を製造する方法であって、方法は、モノクロ
ーナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて、
医薬組成物を得ることを含む。
【0190】
実施形態25は、実施形態1~9及び14~21のいずれか一つに記載のモノクローナ
ル抗体又はその抗原結合フラグメントを含むキットである。
【0191】
実施形態26は、対象における治療用ペプチドの半減期を延長する方法であって、方法
は、治療用ペプチドを、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポ
リペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR
3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単
離モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとコンジュゲートさせることを含み
、治療用ペプチドは、配列番号18のCys残基で、モノクローナル抗体又はその抗原結
合フラグメントにコンジュゲートされる。
【0192】
実施形態27は、治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1
(GLP1)、ペプチドチロシンチロシン(PYY)、エキセンジン(エキセナチド)、
アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及
びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗
薬(antagnoists)、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシン
S、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、
ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)
、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、実施形態26に記載
の方法である。
【0193】
実施形態28は、治療用ペプチドがオキシントモジュリンである、実施形態27に記載
の方法である。
【0194】
実施形態29は、オキシントモジュリンが、配列番号24のポリペプチド配列を有する
、実施形態28に記載の方法である。
【0195】
実施形態30は、モノクローナル抗体が、配列番号12のポリペプチド配列を有する重
鎖可変ドメイン(VH)を含む、実施形態25~29のいずれか一つに記載の方法である
【0196】
実施形態31は、モノクローナル抗体が、配列番号13のポリペプチド配列を有する重
鎖(HC)を含む、実施形態25~30のいずれか一つに記載の方法である。
【0197】
実施形態32は、モノクローナル抗体が、配列番号14のポリペプチド配列を有する軽
鎖可変ドメイン(VL)を含む、実施形態25~31のいずれか一つに記載の方法である
【0198】
実施形態33は、モノクローナル抗体が、配列番号15のポリペプチド配列を有する軽
鎖(LC)を含む、実施形態25~32のいずれか一つに記載の方法である。
【0199】
実施形態34は、配列番号18を含む重鎖相補性決定領域3を含む、単離されたモノク
ローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであり、単離されたモノクローナル抗体又は
その抗原結合フラグメントは、治療用ペプチドに結合することができる。
【実施例0200】
実施例1:mAb MSCB97の同定及び産生
操作のための出発V領域としてPH9L3 VL及びPH9H5 VHを選択
PH9L3と命名された抗体軽鎖可変領域(VL)(配列番号3)(Teplyako
v et al.,「Structural diversity in a huma
n antibody germline library,」mAbs Aug-Se
p 8(6):1045~63(2016))、及びPH9H5と命名された抗体重鎖可
変領域(VH)(配列番号4)(Teplyakov et al.,「Structu
ral diversity in a human antibody germli
ne library,」mAbs Aug-Sep 8(6):1045~63(20
16))が、ペプチドコンジュゲートを可能にするmAbを操作する出発可変領域として
選択された。PH9L3は、ヒトIg生殖系列V遺伝子配列を完全に含み、これにより、
高い親和性の抗原特異的結合をもたらし得るインビボ親和性成熟プロセスによる配列突然
変異は含有しない。PH9H5のCDR3は、そのVHにヒト生殖系列V遺伝子配列を含
まない唯一のセグメントである。PH9H5のCDR3(配列番号5)は、抗ヒトCCL
2抗体、CNTO 888、中和CCL2抗体のCDR3と同一であり、例えば、米国特
許出願公開第20100074886(A1)号を参照されたい(CNTO 888につ
いての関連開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。PH9H5/PH9
L3 VH/VL対を含むFabが生成された。
【0201】
PH9L3、PH9H5と、これらが最も類似するヒトIg生殖系列V領域及びJ領域
配列を整列させて、生殖系列配列に対する配列同一性又は類似性を決定した。PH9H5
は、ヒトIg生殖系列遺伝子IGHV3-2301(PubMed ID:M9966
0)(配列番号7)及びヒトIGHJ101(PubMed ID:J00256)(
配列番号8)の連結(配列番号6)に整列させ、PH9H5アミノ酸配列と、連結された
ヒトIGHV3-2301-IGHJ101配列との間の差異のみがVH CDR3
であり、これがPH9H5の配列番号5となった。
【0202】
PH9L3は、ヒトIg生殖系列遺伝子IGKV3-1101(PubMed ID
:X01668)(配列番号10)及びIGKJ101(PubMed ID:J00
242)(配列番号11)の連結(配列番号9)に整列させ、その差異のみが、V遺伝子
/J遺伝子結合における唯一の偏差となった。
【0203】
PH9H5及びPH9L3のCys置換変異体の設計及び生成
V領域の3つ全てのCDRにわたって選択されたCDR残基に単一のCys置換を含有
するPH9H5 VHの変異体を設計し、生成し、ヒトIgG1定常領域を有する完全な
重鎖として哺乳類宿主発現ベクターにクローニングした。PH9H5/PH9L3 Fa
b構造を利用して、コンジュゲートのためによりアクセスしやすくなるよう、置換のため
のCDR残基の選択を補助した。またいくつかの変異体において、追加のグリシン(Gl
y)残基を、導入されたCys残基のいずれかの側に挿入して、コンジュゲートのための
Cysのアクセスしやすさを潜在的に高めた。PH9L3 VLの同様の変異体を設計し
、生成した。ただしこれらは、ヒトκ定常領域を有する完全軽鎖として発現ベクターにク
ローニングされた。PH9H5の単一Cys変異体の24の発現構築物及びPH9L3の
単一Cys変異体の22の発現構築物が生成された。PH9H5_VH(配列番号4)内
及びPH9L3_VL(配列番号3)内の置換のために選択された残基を図2にまとめる
【0204】
生成された発現構築物を使用して、野生型PH9L3 LC構築物を有する各PH9H
5ベースのHC Cys変異体構築物を一過性共トランスフェクションすることにより、
又は、野生型PH9H5 HC構築物を有する各PH9L3ベースのLC Cys変異体
構築物を共トランスフェクションすることによって、Cys変異体を発現させた。初期試
験トランスフェクションは、HEK由来のExpi293を発現宿主として使用し、20
mLのスケールで行った。HC及びLC Cysの両方の変異体の大部分は、培養上清か
らの変異タンパク質定量に基づき、良好に発現した。
【0205】
5つの初期HC Cys変異体、MSCB33-MSCB37を、750mLのスケー
ルでExpi293で発現させ、変異体タンパク質を精製した。精製された変異体の精製
収率及び品質特性は非常に類似しており、初期ペプチドコンジュゲート反応において精製
タンパク質を使用するのに十分であった。
【0206】
PH9H5ベースのHC Cys変異体に対するペプチドコンジュゲートの評価
MSCB33タンパク質及び他の変異体タンパク質の分析質量決定は、mAb当たり2
つの、コンジュゲートのために操作されたCysにおけるシステイン付加物の存在を示し
、並びに、組み換えにより産生されたmAbに一般的に見られるHC C末端Lys残基
の除去を示した。コンジュゲートのための変異体mAbを調製するために、mAb内の天
然ジスルフィド結合を維持するために開発された還元プロセスによって付加物を除去した
(実施例3を参照)。ヒトオキシントモジュリン(OXM)ペプチド類似体(GCG A
ib2、Gly16,24、Arg20、Leu27、Lys30(PEG12)-NH
)との初期試験コンジュゲートは、5つ全てのHC Cys変異体mAb上でマレイミ
ド化学を利用して行った。コンジュゲート効率はmAb変異体の間で異なっており、これ
は、コンジュゲート反応生成物及びそれぞれの相対的パーセンテージによって定性的に推
定された。最も高い効率は(ホモ二量体生成物の最大割合によって測定)、フランキング
Gly残基を含有する他のI102C変異体に比べ、MSCB33で観察された。Y10
3C変異体MSCB35又はMSCB37では、コンジュゲートはほとんど又は全く観察
されなかった。
【0207】
様々なCDR(PH9H5_VH(配列番号129)におけるT28C、S30C,及
びS54C置換、並びにPHpL3_VL(配列番号128)におけるS30C及びS9
2C置換)における改変システイン置換を有する、他のいくつかのHC及びLC Cys
変異体を、Expi293において大きなスケールで発現させた。還元によるこれらの精
製タンパク質からのCys付加物の除去は困難であり、これらの変異体はこれ以上追求さ
れなかった。最も多くのCys変異体で観察された課題と、I102C PH9H5変異
体mAb、MSCB33で観察された良好なコンジュゲート初期効率により、この特定の
変異体に焦点を合わせたプロセス開発、及び更なる操作努力が行われた。
【0208】
MSCB33のFc操作
MSCB33は、インビボでのFc機能を低減するために、サイレントのヒトIgG4
_PAA Fcを含有するように再操作した。ヒトIgG4_PAAは、ヒトIgG4ア
ロタイプnG4m(a)上に突然変異S228P/F234A/L235Aを有する(I
MGTに定義されるIGHG401対立遺伝子に基づく)。IgG4_PAA Fcに
融合したMSCB33のVHを有する発現構築物を生成し、MSCB33発現に使用した
同じLC発現構築物と共に使用して、MSCB33のIgG4_PAA変異体を産生した
。これをMSCB97と命名する。MSCB97 VH、HC、VL、及びLCのアミノ
酸配列は、それぞれ配列番号12、13、14、及び15により提供される。
【0209】
MSCB97の試験発現は、Expi293細胞において20mLのスケールで一過性
に行われ、このmAb変異体は良好に発現した。MSCB97を大きなスケールのExp
i293発現実験から精製した。MSCB97の精製収率は264.53mg/Lであり
、品質はモノマー種85%と測定された。その後のより大きなスケールの発現実験及び精
製は、収率及び品質が同様又はより良好であり、このmAbが産生され得る一貫性を示し
た。
【0210】
MSCB97に対するペプチドコンジュゲートの評価とコンジュゲート反応のスケーラ
ビリティ
LC-HCジスルフィド結合は、IgG1とIgG4のアイソタイプとの間で異なるた
め、還元及びマレイミドコンジュゲートを試験し、上記のOXM-マレイミド試験ペプチ
ドのTCEP還元及びコンジュゲートを使用して、IgG1 mAb MSCB33から
IgG4_PAA mAb MSCB97へ移動可能であることが確認された。マレイミ
ドコンジュゲートから生じる結合は、潜在的に可逆性であることが知られており、したが
って、より安定した結合をもたらすブロモアセトアミドコンジュゲート化学を採用し、出
発MSCB97に基づいて10mgスケールで成功裏に実施された。
【0211】
ブロモアセトアミド化学により生成されたOXM類似体GCG Aib2、Glu16
、24、Arg20、Leu27、Lys30-ε-(PEG12)-NHのMSCB
97コンジュゲート(化合物2-「化合物2」及び「コンジュゲート2」は、本明細書で
は互換的に使用することができる)(MSCB97は、H-Aib-QGTFTSDYS
KYLDERRARDFVEWLLNTK-(COCHCH(OCHCH12
NHCOCHBr)-NH(配列番号24)とコンジュゲートして化合物2(図11
、配列番号27)を形成する)をアッセイして、インビトロのGLP-1R及びGCGR
の効力を決定した。参照ペプチド及び参照非構造化ペプチドコンジュゲートと比較した効
力は妥当であり、MSCB33(IgG1)と同じペプチドで生成されたコンジュゲート
のものと同様であった。このことによって、アイソタイプであるMSCB97(IgG4
_PAA)とMSCB33(IgG1)との間の単一の差は、同じペプチドを含有するコ
ンジュゲートの効力に影響を与えないことが実証された。加えて、これらのデータは、望
ましいインビトロ効力が、インビボで安定である結合を生成するブロモアセトアミド化学
により生成されたペプチド-mAbコンジュゲートに保持され得ることを示した。他のO
XM類似体もMSCB97にコンジュゲートし、これらのコンジュゲートのインビトロ効
力のアッセイを行った。これらのコンジュゲートは、ペプチド効力を保持しながら、様々
なペプチドをMSCB97にコンジュゲートさせる能力を備え、化合物2と同様のGLP
-1R及びGCGRの効力を有した。
【0212】
ヒトCCL2に結合するペプチド-MSCB97コンジュゲートの評価
MSCB97は、特定の抗原結合の欠如のために選択及び操作されたが、このmAbが
結合する可能性が最も高い抗原は、もしあれば、VH CDR3の起源に基づきヒトCC
L2である。2つのペプチド-MSCB97コンジュゲート体を、OXMペプチド類似体
(化合物2)、又はPYYペプチド類似体(化合物1-「化合物1」及び「コンジュゲー
ト体1」は、本明細書では互換的に使用することができる)と共に用いて、MSCB97
が任意の特定のCCL2結合を示すかどうかを評価した。
【0213】
潜在的なCCL2結合は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって直接測定され、この
表面プラズモン共鳴(SPR)では、抗Fc捕捉法を用いてコンジュゲートが表面固定化
された。市販の抗CCL2マウスmAbを陽性対照とし、2つの非特異的ヒト抗体CNT
O 9412及びHH3B33を陰性対照とした。全ての対照は同様に表面固定化され、
組換えヒトCCL2を固定化コンジュゲート上に流し、最大400nMの濃度で制御した
。事前確立されたアッセイ基準に基づいて、特定の抗原結合を示すCCL2蓄積は、陽性
対照では観察されたが陰性対照では観察されず、いずれのペプチド-MSCB97コンジ
ュゲート(化合物1又は2)にも観察されなかった。これにより、ペプチド-mAbコン
ジュゲートの関連する治療形態において、MSCB97がヒトCCL2結合を欠くことが
確認された。
【0214】
SPR結合法:ProteOn XPR36システム(BioRad)を使用して、表
面プラズモン共鳴(SPR)を用いた結合測定を実施した。アミンカップリング化学反応
についての製造元の使用説明書を使用し、抗ヒトIgG Fc(Jacksonカタログ
番号109-005-098)と抗マウスIgG Fc(Jacksonカタログ番号3
15-005-046)との混合物を、GLCチップ(BioRad,カタログ番号17
6-5011)の加工アルギン酸ポリマー層にカップリングさせて、バイオセンサ表面を
調製した。約5700RU(応答単位)のmAbを固定化した。結合実験を、ランニング
緩衝液中、25℃で実施した(DPBS;0.01%P20;100μg/mL BSA
)。結合動態実験を実施するために、サンプル(化合物2、化合物1、及び対照mAb陽
性及び陰性)を捕捉し、続いて、5つの濃度(4倍連続希釈)で、組換えヒトCCL2(
Thermo、カタログ番号RMCP120)を注入した。50μL/分で3分間会合段
階をモニターした後、5分間緩衝液を流した(解離段階)。100μL/分で100mM
PO(Sigma、カタログ番号7961)を18秒間ずつ2回流してチップ表
面を再生した。
【0215】
回収したデータをProteOn Managerソフトウェアを用いて処理した。ま
ず、インタースポットを用いてバックグラウンドについてデータを補正した。次いで、分
析物注入用の緩衝液注入を使用して、データのダブルリファレンスサブトラクション(do
uble reference subtraction)を行った。化合物2、化合物1、及び陽性対照の、CCL
2に対する特定の検出可能結合を決定するための事前確立されたアッセイ基準には、最高
濃度での>10 RU信号での用量比例応答、及び陰性対照応答信号<10 RUを必要
とした。アッセイ基準に基づいて、各サンプルについての結果を、ヒトCCL2への用量
応答結合について「あり」又は「なし」として報告した。
【0216】
実施例2:mAbの発現及び精製
完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)は、哺乳類発現宿主において組換え的に発現さ
れ、当該技術分野において既知の標準的な方法を用いて細胞培養上清から精製することが
できる。例えば、mAbの軽鎖(LC)及び重鎖(HC)(分泌を可能にする適切なシグ
ナルペプチドをそれぞれ含む)をコードするcDNA配列を、標準的な分子生物学的方法
を使用して、別個の哺乳類発現ベクター又は単一の発現ベクターにクローニングすること
ができる。使用される発現ベクターは、pEE12.4、pcDNA(商標)3.1(+
)、又はpIRESpuro3などの市販のもの、又は類似の機能を有する任意のカスタ
ム発現ベクターであり得る。かかるベクターでは、mAbの重鎖及び軽鎖の転写はそれぞ
れ、hCMV-MIEプロモーターなどの既知の有効プロモーターのいずれかによって駆
動される。トランスフェクション等級のプラスミドDNAは、QiagenプラスミドM
idi Kitなどの標準的な方法を用いて、別個のLC及びHC発現構築物、又はLC
及びHCの両方を発現する単一の構築物のために調製される。
【0217】
精製プラスミドDNAは、Freestyle(商標)Maxトランスフェクション試
薬などの脂質ベースのトランスフェクション試薬でのトランスフェクションのために調製
され(製造業者の指示に従う)、次いで、CHO-S又はHEK 293-Fなどの標準
的な哺乳類発現宿主細胞株にトランスフェクトする。mAb LC及びHCが別個の発現
構築物によってコードされる場合、2つの構築物は同時にトランスフェクトされる。トラ
ンスフェクションの前及び後に、哺乳類細胞を、維持のために、又はmAb発現のために
、標準的な細胞培養法に従って培養し、それにより、細胞密度は維持のための範囲であり
、使用する培養培地、及びその後の他の細胞培養条件は、利用される具体的な哺乳類宿主
細胞株によって決定される。これらのパラメータは、典型的には、細胞株を入手した業者
により文書化され、又は科学文献に記載されている。例えば、CHO-S細胞は、懸濁液
中CHO Freestyle(商標)培地に維持し、37℃及び8%COに設定され
た加湿インキュベータ内で125RPMで振盪し、細胞濃度が1.5~2.0×10
/mLであるときに分割する。
【0218】
mAbを発現する一過性トランスフェクションされた哺乳類細胞からの細胞培養上清を
、トランスフェクションの数日後に採取し、遠心分離により清澄化し、濾過する。CHO
-S細胞の発現持続時間は、典型的には4日間であるが、調節することができ、異なる哺
乳類宿主細胞株に関して異なり得る。大きなスケールのトランスフェクション(>10リ
ットル)は、Centramateなどの濃縮装置を使用して10倍濃縮される。mAb
は、タンパク質A親和性カラム(HiTrap MabSelect Sureなど)を
用い、mAbをタンパク質A樹脂に結合させ、樹脂を洗浄し、低pH緩衝液を使用してタ
ンパク質を溶出させる標準的な方法を利用して、清澄化された上清から精製される。タン
パク質画分は、pH7緩衝液を含有する試験管に溶出させることによって直ちに中和され
、ピーク画分をプールし、濾過し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2で一晩
、4℃で透析する。透析後、mAbを再度濾過し(0.2μmフィルター)、タンパク質
濃度を280nmでの吸光度によって測定する。精製されたmAbタンパク質の品質は、
SDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)及び分析用サイズ排除HPLCに
よって評価され、エンドトキシン濃度は、リムルスアメーバサイトライセート(LAL)
アッセイを使用して測定される。精製したmAbを4℃で保存する。
【0219】
一過性トランスフェクションされたCHO細胞からのMSCB97の発現及び精製
MSCB97は、ExpiCHO-S(商標)細胞(ThermoFisher Sc
ientific(Waltham,MA)、カタログ番号A29127)中で、MSC
B97発現構築物の精製プラスミドDNAを用い、製造者の推奨に従って、一過性トラン
スフェクションにより、発現させた。簡潔に述べると、ExpiCHO-S(商標)細胞
を、37℃、8%CO及び125RPMに設定した振盪インキュベータ内で、Expi
CHO(商標)発現培地(ThermoFisher Scientific、カタログ
番号A29100)中の懸濁液中に維持した。細胞を継代し、これによりトランスフェク
ションの日に、1mL当たり6.0×10個に希釈することができ、細胞生存率を98
%以上に維持することができた。一過性トランスフェクションは、ExpiFectam
ine(商標)CHOトランスフェクションキット(ThermoFisher Sci
entificカタログ番号A29131)を使用して行った。トランスフェクトされる
希釈細胞の1mLごとに、1マイクログラムのプラスミドDNAを使用し、OptiPR
O(商標)SFM錯体化培地に希釈する。ExpiFectamine(商標)CHO試
薬は、1:3の比(v/v、DNA:試薬)で使用され、これもOptiPRO(商標)
に希釈される。希釈したDNA及びトランスフェクション試薬を合わせて1分間おき、D
NA/脂質錯体形成を行わせ、次いで細胞に添加した。一晩インキュベートした後、Ex
piCHO(商標)フィード及びExpiFectamine(商標)CHOエンハンサ
を細胞に添加した。細胞を32℃で5日間振盪しながら培養し、培養上清を回収した。
【0220】
一過性トランスフェクションされたExpiCHO-S(商標)細胞からの培養上清を
、遠心分離(30分間、6000rpm)によって清澄化した後、濾過(0.2μm P
ES膜、Corning)を行って採取した。最初に、Pall Centramate
Tangential Flow Filtrationシステムを使用して、大きな
スケールのトランスフェクション(5~20リットル)を10倍濃縮した。10xダルベ
ッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、pH7.2)をこの上清に加えて1x最終濃度に
してから、AKTA FPLCクロマトグラフィーシステムを使用して、樹脂1mL当た
り約20mgのタンパク質の相対濃度で、平衡化した(DPBS、pH7.2)HiTr
ap MabSelect Sureタンパク質Aカラム(GE Healthcare
;Little Chalfont,United Kingdom)に通した。カラム
に通した後、カラムをカラム体積の10倍のDPBS(pH7.2)で洗浄した。タンパ
ク質を、カラム体積の10倍の0.1M酢酸ナトリウム(pH3.5)で溶出させた。タ
ンパク質画分は、画分体積の20%で、2.0Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタ
ン(TRIS)(pH7)を入れた試験管に溶出させることにより、直ちに中和した。ピ
ーク画分をプールし、必要に応じて、追加のTRISを用いてpHを約5.5に調整した
。精製したタンパク質を濾過し(0.2μm)、その濃度を、BioTek Syner
gyHT(商標)分光光度計で、280nmでの吸光度によって測定した。精製したタン
パク質の量を、SDS-PAGE、及び分析用サイズ排除HPLC(Dionex HP
LCシステム)によって評価した。エンドトキシンレベルは、LALアッセイ(Pyro
tell(登録商標)-T、Associates of Cape Cod)を用いて
測定した。
【0221】
実施例3:mAb及び環状PYYペプチドのコンジュゲート
方法A:TCEPによるmAbの部分的還元
TRIS酢酸塩緩衝液(20mL、EDTA中1mM)中の10mg/mLのmAb溶
液を、3当量のTCEPで処理した。溶液をpH6に調整し、室温(室温)で1時間置い
た後、質量分析計付き高圧液体クロマトグラフィー(LCMS)により、位置C102の
ジスルフィド付加物が完全に還元されていることが示された。還元されたmAbを、タン
パク質A吸着及び溶出(4 CV 100mM酢酸)により精製し、180mgの還元m
Abを得た。
【0222】
還元mAbと環状PYYペプチドのコンジュゲート
凍結乾燥したペプチド(mAbに対して5当量)を上記の還元mAbに添加した。ED
TAを加えて最終濃度1mMとし、pHを7に調整した。濃度を8mg/mLに調整し、
穏やかに振盪しながら室温で16時間反応を進行させた。TCEP(mAbに対して0.
5当量)を加え、穏やかに振盪しながら室温で4時間反応を更に進行させ、この時間の経
過後、高分子量(MW)種が3%未満に低下した。
【0223】
反応混合物をpH5.5に調整し、CaptoSP樹脂のイオン交換クロマトグラフィ
ーにより精製した(勾配:100% A(100mM TRIS酢酸塩、pH5.5)~
100% B(100mM TRIS酢酸塩、pH5.5、0.5M NaCl)、20
CV)。所望のコンジュゲートを含有する画分をプールし、少量の未反応ペプチドと共に
溶出された140mgのコンジュゲートを回収した。最終精製は、タンパク質A吸着及び
溶出(4CV 100mM酢酸)によって行った。生成物のpHを6に調整して、120
mgのコンジュゲート(収率60%)を、純度>90%、高MW種<3%で得た。
【0224】
方法B:
mAbの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)精製
TRIS酢酸塩緩衝液中の20mg/mLのmAb溶液を、疎水性相互作用カラム(T
OSOH TSKgelフェニル7.5×21cm)に充填し、線形勾配で溶出させた(
0~70%B/A、溶媒A:5% iPrOH、1M(NHSO、100mMリ
ン酸緩衝液、pH6.0;溶媒B:20% iPrOH、100mMリン酸緩衝液)。m
Abモノマーピークをプールし、濃縮し(5~10mg/mL)、3-(N-モルホリノ
)プロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(100mM、pH5.5)に対して透析した
【0225】
TCEPによる部分的還元と、還元mAbとペプチド類似体とのコンジュゲート
精製したmAb(27mL、9.28mg/mL)に4当量のTCEP、続いてEDT
A(1mM)を添加した。室温で2時間後、LCMSは、位置C102のジスルフィド付
加物が完全に還元されたことを示した。還元されたmAbを、Zebra脱塩スピンカラ
ム(7×10mL、7K MWCO、MOPS 100mM pH5.5で予備平衡)で
処理し、遊離システイン/GSHを除去した。還元したmAbの合わせた画分(28mL
)に、Milli Qグレードの水中の環状PYYペプチド溶液(mAbに対して6.5
当量、15~20mg/mL)、続いてEDTA(1mM)を添加した。1N NaOH
を滴下で添加して、反応物のpHを7.2~7.4に調整した。反応物を、穏やかに振盪
しながら室温で18時間反応を進行させた。更に0.5当量のTCEPを添加した後、更
に12時間反応を継続させて、反応の過程中に形成されたmAb-mAb二量体を減少さ
せ、所望のmAbホモ二量体へ変換させた。2M酢酸を添加することにより、反応物のp
HをpH5.5に下げ、コンジュゲート粗生成物を、疎水性相互作用クロマトグラフィー
により精製し、線形勾配で溶出させた(0~100% B/A、溶媒A:5% iPrO
H、1M(NH4)2SO4、100mMリン酸緩衝液、pH6.0;溶媒B:20%
iPrOH、100mMリン酸緩衝液)。最終精製は、タンパク質A吸着(PBS)及び
溶出(NaOAc、pH3.5)によって行った。生成物のpHを6に調整し、PBSに
対して透析して最終サンプルを得た(56%)。
【0226】
あるいは、mAbをGSH及び/又はCysで還元した。タンジェンシャルフロー濾過
(TFF)による還元剤の除去後、任意選択的に0.2~0.5当量のTCEPの存在下
で、過剰量のペプチドを、還元されたmAbに添加した。
【0227】
実施例4:インビトロ試験
化合物1(配列番号2)の、環状PYYペプチドに結合するモノクローナル抗体(図3
)を、ヒト、ラット、マウス、及びアカゲザルのY2受容体、並びにヒトY1、Y4及び
Y5受容体を発現するクローン細胞(HEK又はCHO)において、インビトロで、NP
Y受容体を活性化する能力について評価した。PYY3~36、NPY、及びPPが、試
験対照としてこれらのアッセイに含まれた。
【0228】
細胞株
cAMPアッセイで使用するために、NPY受容体を発現している安定なトランスフェ
クトされたクローン細胞株を開発した。簡潔に言えば、HEK293細胞株を、Lipo
fectamine 2000キット(Invitrogen)を用いて、そのプロトコ
ルに従って、ヒトY2受容体(アクセッション番号:NM_000910.2)、ヒトY
5受容体(アクセッション番号:NM_006174.2)、マウスY2受容体(アクセ
ッション番号:NM_008731)、及びアカゲザルY2受容体(アクセッション番号
:NM_001032832)のコーディング配列を有する発現プラスミドを用いて、ト
ランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、細胞を選択培地(DMEM
高グルコースに、10%ウシ胎児血清(FBS)、50I.U.ペニシリン、50μg/
mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、及び
600μg/mL G418を添加)で再播種した。細胞を選択培地に2週間保持した後
、限定希釈法を用いて単一のクローンを採取した。続いて、トランスフェクトした細胞を
、10%ウシ胎児血清、1%L-グルタミン、1%ピルビン酸ナトリウム、1%ペニシリ
ン/ストレプトマイシン及び600μg/mL G418を添加したDMEM高グルコー
ス培地(Cellgro)で培養することによって維持した。
【0229】
加えて、ヒトY1受容体(カタログ番号93-0397C2)及びヒトY4受容体(カ
タログ番号95-0087C2)を発現しているCHO-K1細胞株が、Discove
rX Corporationから得られた。DiscoverX細胞は、10% FB
Sを添加したF12培地(Gibco)中で、G418選択下(800μg/mL)で培
養した。ラットY2受容体は、Promega Corporationから入手したG
lo-Sensor CHO-K1細胞株で発現させた。これらの細胞を、発光系cAM
PアッセイのためにpGloSensor(商標)-23F cAMPプラスミドでトラ
ンスフェクトしたが、Perkin-Elmer LANCE cAMPアッセイでの使
用について試験及び検証した。ラットY2細胞を、10% FBS及び800μg/mL
G418を添加したF12培地(Gibco)中で培養した。
【0230】
全ての細胞株をバイアル(細胞4×10個/バイアル)に保管し、使用するまで液体
窒素中に保存した。アッセイの前の日に、バイアルを解凍し、15mLの適切な培地に添
加した。細胞を450×gで5分間遠心分離し、上清を吸引し、細胞を、0.2×10
個/mLの密度で、G418なしの培地に再懸濁させた。細胞を、Biocoatコラー
ゲンコーティングされた白色384ウェルプレートに分配し(25μL/ウェル)、最終
密度は細胞5000個/ウェルとした。細胞プレートを、5%CO/90%O雰囲気
下で37℃加湿組織培養インキュベータ内で一晩インキュベートした。
【0231】
実験プロトコル
cAMPアッセイは、様々な受容体アッセイと同じであった。LANCE cAMPキ
ット(Perkin Elmer Corporation;Waltham,MA)を
全ての実験で使用して、細胞内cAMPレベルを定量した。アッセイの日に、細胞培地を
細胞からデカントし、6μLのペプチド(2倍濃度)をウェルに添加した。ペプチドは、
刺激緩衝液中の11ポイント用量反応(1:3連続希釈を用いて100nM又は10μM
から開始)として作製した。刺激緩衝液は、HBSS(ハンクス平衡塩溶液)中に、5m
M HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、
500μM IBMX、及び0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)からなる。次に、フ
ォルスコリン(2倍、5μM最終濃度)及びLANCE cAMP抗体(1:100)を
含有する刺激緩衝液6μLを細胞に添加した。室温で25分間インキュベートした後、1
2μLのアッセイ検出混合物を各ウェルに添加した。検出混合物は、LANCE cAM
Pキットで提供されるように、ビオチン-cAMP(1:750)及びユーロピウム-W
8044(1:2250)を検出緩衝液で希釈することによって調製した。プレートを室
温で2時間インキュベートした後、Envisionプレートリーダー(励起320nm
、発光615nm及び665nm)でTR-FRETアッセイとして読み取った。チャネ
ル1蛍光(615nmでの相対蛍光単位)及びチャネル2蛍光(665nmでの相対蛍光
単位)を、それらの比と共に、Excelファイルにエクスポートした。
【0232】
データ解析
Envisionプレートリーダーからのデータは、(615nm/665nm)×1
0,000として計算された相対蛍光単位(RFU)として表した。全てのサンプルに対
して3回測定した。Eudean Shawによって設計された、内製のCrucabl
eデータ分析ソフトウェアを使用してデータを分析した。各ウェル内の未知のcAMP濃
度は、各プレート内に含まれる既知のcAMP濃度の参照標準から内挿された。EC50
、Log(EC50)、HillSlope(nH)、最大値、最小値などのパラメータ
は、Janssen R&DのNon-Clinical Statistics &
Computing部門によって実施された、R環境内の非線形加重最小二乗法適用を使
用して、4-Pモデルでフィットさせたlog化合物濃度に対するcAMP濃度値をプロ
ットすることによって得られた(オープンソースhttp://cran.us.r-p
roject.org/)。
【0233】
【表1】
【0234】
実施例5:薬物動態(PK)
DIOマウスPK
オスDIO C57BL/6Nマウス(20週齢、高脂肪食で14週)をTaconi
c Laboratoryから得た。マウスは、AlphaDriベッディングを備えた
ケージ当たり1匹を収容し、12時間の明暗サイクルを有する温度制御された部屋に入れ
た。マウスは、水への自由なアクセスを可能にし、高脂肪食(D12492、Resea
rch Diet)で維持した。
【0235】
マウスに、1mg/kgの化合物1を皮下(s.c.)投与し、3匹を各時点で屠殺し
、t=4、8、24、48、72、120、及び168時間で血液を採取した。無投与の
動物3匹の血液も採取した。70% CO及び30% Oの混合物により誘導された
ガス麻酔下で断頭した後、それぞれの動物から約300μLの血液を頸静脈から採取した
。血液サンプル(約300μL)は、12μL(比率4%)の全プロテアーゼ阻害剤溶液
と3μL(比率1%)のDPP-IV阻害剤を含有する、K3E(EDTA)コーティン
グされたSarstedt Microvette(登録商標)試験管に採取した。血液
サンプルは氷水上に置き、各時点で採取してから30分以内に細胞を除去するために、冷
蔵条件下(約5℃)で約4分間、10,000rpmで遠心分離し、利用可能な全ての血
漿を96ウェルプレートに移した。このウェルプレートを-80℃の冷凍庫に入れるまで
の間、ドライアイス上に保管した。データを表2及び図4に示す。
【0236】
ラットPK
化合物1を、オスのSprague-Dawleyラット(Charles Rive
r Laboratories,Wilmington,MA)に、PBS中1.0mg
/kg(pH7.0~7.6)の用量レベルで、皮下及び静脈内投与した。約500μL
の血液を、1回の時点当たり3匹の動物から、伏在静脈から採取した(投与後t=1、4
、24、48、72、96、168、及び240時間)。投与から336時間後の血液サ
ンプルは、70% CO及び30% Oの混合物により誘導されたガス麻酔下で断頭
した後、頸静脈から採取した。血液サンプルは、20μL(比率4%)の全プロテアーゼ
阻害剤溶液と5μL(比率1%)のDPPIV阻害剤を含有する、K3E(EDTA)コ
ーティングされたSarstedt Microvette(登録商標)試験管に採取し
た。血液サンプルは氷水上に置き、各時点で採取してから60分以内に細胞を除去するた
めに、冷蔵条件下(約5℃)で約4分間、10,000rpmで遠心分離し、利用可能な
全ての血漿を96ウェルプレートに移した。化合物1の濃度は、以下に記載のLCMS法
を用いて測定した。データを表3に示す。
【0237】
カニクイザル(Cyno)PK
全ての動物を、投与前に少なくとも8時間絶食させ、最初の4時間の血液サンプル採取
を行った。3匹の動物が1mg/kgの化合物1の単回IV投与を受け、3匹の動物が1
mg/kgの化合物1の単回SC用量を受けた。投与前及び投与後1、6、10、24、
36、48、72、120、168、240、336、432、及び504時間後に血液
を採取した。追加のサンプルを、IV群の投与後0.5時間で採取した。各動物から約1
mLの血液を、比率4%の全プロテアーゼ阻害剤溶液と比率1%のDPPIV阻害剤を含
有する、K3E(EDTA)コーティングされたSarstedt Microvett
e(登録商標)試験管に採取した。血液サンプルは氷水上に置き、各時点で採取してから
30分以内に遠心分離し、得られた血漿を3分割し、96ウェルプレートに3つ組複製で
移した。このウェルプレートを-80℃の冷凍庫に入れるまでの間、ドライアイス上に保
管した。データを表4及び図5に示す。
【0238】
血漿レベルの測定のための完全物質量分析アッセイ
血漿サンプルは、抗ヒトFc抗体を使用した免疫親和性捕捉によって処理した後、三重
TOF(飛行時間)質量分析計で逆相LC高分解能フルスキャンMS分析を行った。生の
MSスペクトルをデコンボリューションして、注入サンプル中の成分の分子量を解明した
。完全物コンジュゲートの分子イオンのピークを定量に使用した。標準曲線及び品質管理
サンプルは、血漿中の参照標準のスパイクにより調製され、適用したサンプルと同時に同
じ手順を使用して処理した。DIOマウス、ラット、及びカニクイザルのPKデータをそ
れぞれ表2~4に示す。DIOマウス及びカニクイザルのPKデータは、それぞれ図4
び5にも示されている。
【0239】
【表2】
【0240】
【表3】
【0241】
【表4】
【0242】
実施例6:インビボでの効能試験
食事性肥満(DIO)マウスにおける体重減少:急性投与
化合物1を、単回投与後にオスDIO C57B1/6マウスの食物摂取量と体重を低
下させる能力について評価した。オスDIO C57BL/6Nマウス(20週齢、高脂
肪食で14週)をTaconic Laboratoryから得た。マウスは、Alph
aDriベッディングを備えたケージ当たり1匹を収容し、12時間の明暗サイクルを有
する温度制御された部屋に入れた。マウスは、水への自由なアクセスを可能にし、高脂肪
食(D12492、Research Diet)で維持した。実験開始前に、動物を施
設に少なくとも1週間順応させた。
【0243】
投与の前日、マウスを、個々の体重に基づいて8匹の動物のコホートにグループ化した
。翌日3:00~4:00pmに、動物を秤量し、皮下(s.c.)投与を介して、溶媒
(dPBS、pH7.2)で処理し、0.1、0.3、1.0、3.0、又は7.5nm
ol/kgの用量の化合物1、又は0.3nmol/kgの用量のデュラグルチドで処理
した。体重及び食物摂取量を、投与から24時間後、48時間後及び72時間後に測定し
、体重減少率及び食物摂取量の減少を計算した。統計分析は、Prismにおけるテュー
キーの事後検定を用いて、二元配置反復測定分散分析を使用して実施した。全てのデータ
を平均±SEMとして示す(図6及び図7)。
【0244】
食事性肥満マウスにおける体重減少:慢性投与
化合物1を、8日間にわたってオスDIO C57B1/6マウスに反復投与し、食物
摂取量及び体重を低下させ、グルコースホメオスタシスを改善する能力について評価した
。オスDIO C57BL/6Nマウス(20週齢、高脂肪食で14週)をTaconi
c Laboratoryから得た。マウスは、AlphaDriベッディングを備えた
ケージ当たり1匹を収容し、12時間の明暗サイクルを有する温度制御された部屋に入れ
た。マウスは、水への自由なアクセスを可能にし、高脂肪食(D12492、Resea
rch Diet)で維持した。実験開始前に、動物を施設に少なくとも1週間順応させ
た。
【0245】
投与の前日、マウスを、個々の体重に基づいてグループ化した。次の8日間、それぞれ
について3:00-4:00pmに、動物及び食物摂取量を計量した。動物は、毎日皮下
投与により0.3nmol/kgで溶媒(dPBS、pH7.2)又はデュラグルチドで
、又は3日ごとに皮下投与により0.1、0.3、1.0、3.0nmol/kgの用量
の化合物1で処理した。8日後、マウスを5時間絶食させ、次いで、t=0に2g/kg
のグルコースボーラスを経口投与する。グルコース負荷後、t=0、30、60、90、
及び120分後に血糖を測定し、t=0、30、及び90分後の血液では血漿インスリン
を測定するために採血される。統計分析は、Prismにおけるテューキーの事後検定を
用いて、一元配置分散分析又は二元配置反復測定分散分析を使用して実施した。全てのデ
ータを平均±SEMとして示す(図8及び9、並びに表5~8)。
【0246】
【表5】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
溶媒に対してp<0.05;二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定
【0247】
【表6】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
溶媒に対してp<0.05;血糖値については、二元配置分散分析反復測定、テュー
キーの多重比較検定;AUCについては、一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
【0248】
【表7】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
溶媒に対してp<0.05;血糖値については、二元配置分散分析反復測定、テュー
キーの多重比較検定;AUCについては、一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
【0249】
【表8】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
溶媒に対してp<0.05;一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
【0250】
実施例7:mAb-オキシントモジュリン(mAb-OXM)化合物の調製の合成戦略
ヒトオキシントモジュリン(OXM)は、2型真性糖尿病患者において有益な薬理学を
有することが示されている37アミノ酸長の内因性ペプチド(配列番号23)である。薬
理作用は、GLP1R及びGCGRの両方におけるアゴニスト作用の結果である。OXM
類似体の研究により、げっ歯類モデルにおいて良好な血糖制御及び体重減少を実証したペ
プチド変異体が明らかになった。インビボでのOXMの半減期は、ヒトにおいて数分の単
位である。したがって、OXMの更なる設計は、週1回の投与に相応した半減期を付与す
るために行われた。半減期の増加は、タンパク質分解に対するOXMペプチドの安定性を
増加させることによって、及びモノクローナル抗体(mAb)の共有結合によるペプチド
の循環半減期を増加させることによって、達成された。DPP4によるペプチド搭載のタ
ンパク質分解は、位置2のセリンをアミノイソ酪酸(Aib)で置換することによって軽
減された。ペプチドの螺旋状トポロジーは、Q20R~S16E及びQ24Eの分岐塩架
橋を導入することによって安定化され、M27L変異により、潜在的な酸化性が軽減され
た。親mAbのMSCB97(上記)は、低い内因性抗原結合性を有するよう、及び、重
鎖(I102C)のHCDR3(配列番号18)領域におけるイソロイシンからシステイ
ンへの点変異(合成ペプチド搭載のための結合点として作用する)を有するように、選択
された。エフェクター機能は、IgG4 PAAアイソタイプを使用することによってサ
イレンシングされた。短いオリゴエチレングリコールスペーサーをmAbとペプチドとの
間に組み込んで、ペプチドがGLP1R及びGCGRへと、妨げられずにアクセスできる
よう確保した。このスペーサーは更に、コンジュゲート化学を促進する良好な水溶性を付
与する。ペプチドスペーサーのmAbへの結合は、グリコールスペーサーの遠位端に反応
性ブロモアセトアミド基を導入することによって達成された。スペーサーの近位端は、K
30の側鎖を介してOXM変異体に取り付けられた。グルカゴン及びOXMペプチド変異
体のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号22及び24により提供される。コンジュゲート
は、mAb重鎖におけるシステイン点変異のチオール官能基との反応によって達成された
。mAb重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13及び15により提供され
る。
【0251】
mAb-OXM化合物の化学合成
mAb-OXM化合物の産生のための全体的な合成スキーム全体を図10に示す。
【0252】
オキシントモジュリン(OXM)ペプチド変異体の調製:樹脂結合保護ペプチドを、標
準的な9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸(N末端His、
Nα-Boc-His(Boc)-OH及びLys30、Nα-Fmoc Lys(iv
DDE)-OHを除く)を用いて、PAL-PEG-ポリスチレン樹脂上で、合成した。
標準的なアミノ酸活性化及びFmoc脱保護戦略を全体にわたって使用した。配列が完了
した後、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の希無水ヒドラジンで処理すること
により、C末端リジンの側鎖を選択的に脱保護した。Fmoc-dPEG12-CO
は、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)/エチル(ヒドロキシイミノ)-シアノア
セテート活性化を使用して、遊離アミンに結合させた。Fmoc基を除去し、得られたア
ミンをブロモ酢酸無水物のDMF溶液を用いてブロモアセチル化した。
【0253】
フェノール、水、及びトリイソプロピルシランをスカベンジャーとして含有するトリフ
ルオロ酢酸(TFA)による処理によって、全ての保護基を同時に脱保護することで、ペ
プチドを樹脂から除去した。粗ペプチドを、エーテルでの冷却沈殿によって単離し、溶離
液としてアセトニトリル/水を0.1% v/v TFAで使用して、逆相高速液体クロ
マトグラフィー(RP-HPLC)により精製した。凍結乾燥後に、純粋なペプチドが、
毛羽立った白色固体として回収された。これを-80℃で保存した。
【0254】
モノクローナル抗体MSCB97の還元:モノクローナル抗体は、細胞質基質又は増殖
培地のいずれかから回収された偶発的なシステイン又はグルタチオン残基にジスルフィド
結合した、操作されたCys102残基で単離される。したがって、これらのジスルフィ
ドの予備的還元と、それに続く望ましくないシステインの除去が、OXMペプチド変異体
のコンジュゲートの前に必要とされる。還元は、タンパク質A樹脂ビーズ上に固定化され
たmAbにより達成された。還元剤(トリカルボキシエチルホスフィン、TCEP)を、
還元が完了するまでpH5でカラムを通して循環させた(1時間)。これらの条件下での
還元剤としてのTCEPの利点は、還元が有効である一方で、低pHでのジスルフィド結
合の再形成は無視できることである。副生成物を洗い流した後、酸性緩衝液(pH3.5
の酢酸ナトリウム)を用いて吸着タンパク質をカラムから溶出させた。還元されたmAb
を、pH5.5で50mM 3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)に
対して2回透析した。
【0255】
mAbに対して2.5当量のTCEPを用いて、pH5の溶液中で還元することによっ
て、より小さな探索試験バッチを調製した。室温で2時間、還元反応を行わせた。ゲル濾
過(PD10カラム)によって小分子副生成物を除去し、還元されたMSCB97を10
mM MOPS、pH5.5で溶出させた。
【0256】
mAb-OXM化合物の調製:還元MSCB97の溶液を、凍結乾燥OXMペプチド変
異体の7.6倍過剰量に添加した。1mMのEDTA溶液を添加して反応性チオールを金
属触媒酸化から保護し、MOPS緩衝液(1M、pH8.1)を添加することにより、反
応溶液のpHを7.3に上昇させた。反応物を、穏やかに振盪しながら室温で18時間反
応を進行させた。2M酢酸の添加でpH5.5に調節することにより、反応をクエンチし
、粗コンジュゲートを、タンパク質A上に吸着させ、過剰なペプチド、折り畳まれていな
い生成物及び副生成物を洗浄により除去して、精製した。生成物を溶出させ(酢酸ナトリ
ウム、pH3.6)、続いて酢酸緩衝液pH5で透析した。
【0257】
250mg、500mg及び500mgのMSCB97から出発して3つの独立した合
成を行い、生成物を単一バッチに合わせた。
【0258】
mAb-OXM化合物の分析
調製したmAb-OXM化合物の特性を、(i)分析用疎水性相互作用クロマトグラフ
ィー(HIC)、(ii)液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析
法(LC-ESIMS)によるインタクト質量測定、(iii)分析用サイズ排除クロマ
トグラフィー(SEC)、及び(iv)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、を用
いて分析した。
【0259】
ヒト及びサル血漿における安定性
OXMは、血漿ペプチダーゼにより急速に代謝される。ヒト及びサル血漿中の酵素分解
に対するmAb-OXM化合物(「化合物2」)(図11)の抵抗性を決定するために、
化合物2のエクスビボ安定性を評価した。化合物2を、20mMで、新鮮な(凍結してい
ない)ヘパリン化血漿と共に、37℃で最長168時間インキュベートした。生物学的分
析は、ヒトGLP-1受容体トランスフェクトされたHEK細胞におけるcAMP産生を
測定する機能性細胞系バイオアッセイを用いて行った。生成されたcAMPの量は、活性
OXM類似体の濃度に正比例し、安定性サンプル中の活性OXM類似体の濃度を、既知の
濃度の参照標準から内挿することによって決定した。このアッセイを、以前に決定したよ
り安定した対照(対照1)、及び以前に決定したより安定していない対照(対照2)のラ
ンク付けに使用した。データを使用して相対的安定性をランク付けし、これを図12及び
13に示す。
【0260】
実施例8:インビトロ試験:ヒト、マウス、ラット、及びカニクイザルのGLP1及び
グルカゴン受容体における化合物2のインビトロ効力。
化合物2を含む対象化合物の効力及び種特異性は、ヒト、カニクイザル、ラット又はマ
ウスのGLP1又はGCG受容体のいずれかを安定的に発現するようにトランスフェクト
されたHEK293細胞を用いたアッセイにおいて特徴付けられた。各受容体アッセイで
は、クローン細胞を、細胞2000~5000個/ウェルの適切な密度で、384ウェル
プレートに播種した。5mM HEPES、0.1% BSA及び0.5mM IBMX
を添加したHBSSで化合物を希釈し、細胞に添加した。細胞プレートを、細胞クローン
に応じて5分又は10分間室温でインキュベートし、次いでcAMP測定のために溶解さ
せた。cAMP濃度は、EnVisionプレートリーダーを備えたLANCE cAM
Pキットを使用して定量した。標準曲線は、cAMP濃度の逆算のために各アッセイプレ
ートに含まれた。用量反応曲線を分析し、化合物EC50値をGraphpad Pri
sm又はCrucibleで計算した。EC50データを表9~10にまとめる。
【0261】
【表9】
値は、3~7回の実験の平均±SEMを表す。
【0262】
【表10】
値は、3~8回の実験の平均±SEMを表す。
【0263】
実施例9:他の関連GPCRの効力
いくつかのクラスB GPCRを発現する細胞を使用したアッセイで、化合物2の効力
を評価した。化合物2を、CALCR、PTHR1、PTHR2、CRHR1、CRHR
2、及びVIPR1を発現する細胞を使用して、6つのインビトロcAMPアッセイのパ
ネルで試験した。このアッセイは、試験した各受容体に含まれる陽性対照と共に、業者の
標準操作手順に従って実施した。
【0264】
加えて、ヒトGIP受容体を発現する安定した細胞株で化合物2を試験した。細胞を3
84ウェルプレートに播種し、24時間処理した後、室温で5分間化合物で処理した。c
AMP濃度をCisBio HTRF cAMPキットを使用して測定し、結果をGra
phPad Prismを用いて分析した。結果を表11~12に示す。
【0265】
【表11】
【0266】
【表12】
【0267】
実施例10:インビボ試験:DIOマウスにおける単回用量有効性
食物摂取、体重、耐糖能、及び血漿FGF21レベルを、DIOマウスにおいて、単一
用量の化合物2、又はGLP1Rアゴニストであるデュラグルチドの投与の後、評価した
。投与の1日前に動物の体重を測定し、BW別にグループ分けした。指示に従い、皮下注
射によりマウスに投与した。翌朝、食物を除去し、6時間の絶食を開始した。BW及び食
物重量(FW)を記録した。空腹時血糖を測定し、12:00pmにインスリン測定のた
めに血液を採取した。1時間後、マウスにグルコース(1g/kg、20%グルコース、
5mL/kg)を腹腔内投与した。血漿インスリンについて、10分後時点の尾部採血に
より、追加の20μLの血液を採取した。グルコース負荷の10、30、60及び90分
後に、血糖計により用い血糖値を測定した。次にマウスをCOで安楽死させ、最終血液
試料を心臓穿刺により採取した。データを表13~19に示す。
【0268】
【表13】
溶媒に対してp<0.01(投与の18時間後);^それぞれの投与の24時間前に
対してp<0.001;#投与の18時間後のデュラグルチド(0.3nmol/kg)
に対してp<0.0001
二元配置分散分析、シダックの多重比較検定
値は、溶媒の投与24時間前(n=7)を除き、各時点で1群あたり8匹の動物からの
データの平均±SEMを表す
【0269】
【表14】
溶媒に対してp<0.01;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp
<0.05
二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定。18時間後の時点のデータの
みを示す
体重変化率は、0日目(投与前)の体重に対して計算される。
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0270】
【表15】
各値は、8匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
【0271】
【表16】
溶媒に対してp<0.05;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)及びJNJ
-64151789(4.0及び8.0nmol/kg)に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0272】
【表17】
溶媒に対してp<0.05;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp
<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0273】
【表18】
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0274】
【表19】
全ての群に対してp<0.0001;^化合物2(2.0nmol/kg)を除く全
ての群に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、8匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0275】
実施例11:インビボ試験:DIOマウスにおける繰り返し投与
GLP1R/GCGR二重アゴニスト(化合物2)、及びGLP1Rアゴニスト(デュ
ラグルチド)の、DIOマウスにおける効果を、9日間にわたる繰り返し投与中にモニタ
ーした。投与頻度を制御するために、全ての動物に毎日投与した。投与頻度は、化合物2
及びデュラグルチドのDIOマウスPKデータに基づいて決定した。デュラグルチド群の
動物には、この薬物を毎日投与した。溶媒処理動物には、溶媒を毎日投与した。化合物2
を1.0、2.0又は4.0nmol/kgで与える動物には、この化合物を3日ごとに
投与し、化合物を注射しなかった日には溶媒を投与した。投与開始の1日前に動物の体重
を測定し、体重別にグループ分けした。1~3pmの間に、指示に従い、皮下注射によっ
て全てのマウスに投与した。これらの処理群において、1~3pmの間に、食物摂取及び
体重を毎日モニターした。
【0276】
最初の投与から24時間後を初回として、3群のマウスを、1.0、2.0,又は4.
0nmol/kgの化合物2処理動物とペアフィード(PF)した。ペアフィードマウス
のホッパー中の食物の量は、マッチされている化合物処理群のマウスによってそれまでの
24時間で消費された平均食物と一致するように調整した。全てのPF群は、溶媒と共に
毎日投与された。9日目(又は、ペアフィード群については10日目)に、動物を6時間
絶食させ、体重及び空腹時血糖を測定した。インスリン、FGF21、及び血漿脂質の測
定のために血液を採取した。食物摂取、体重、身体組成、空腹時血糖、空腹時インスリン
、空腹時FGF21、及び空腹時血漿脂質データを表20~26に示す。
【0277】
【表20】
溶媒に対してp<0.05;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp
<0.05;#化合物2(4.0nmol/kg)に対してp<0.05
二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定
全てのPF群は、それぞれの処理群からの平均食物摂取量(データは図示せず)を与え
られた。
各値は、6~10匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表
す。
【0278】
【表21】
T:処理;V:溶媒;1:デュラグルチド(0.3nmol/kg);2~3:化合物
2(1.0nmol/kg);4~5:化合物2(2.0nmol/kg);6~7:化
合物2(4.0nmol/kg)
全ての他の処理に対してp<0.01;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)
に対してp<0.05;#それぞれのPF群に対してp<0.05;$JNJ-6415
1789(1.0及び2.0nmol/kg)に対してp<0.05;&JNJ-641
51789(2.0nmol/kg)に対してp<0.05
二元配置分散分析反復測定、テューキーの多重比較検定。
体重変化%は、0日目(投与前)の体重に対して計算される。
各値は、10匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
【0279】
【表22】
溶媒に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、5匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0280】
【表23】
溶媒に対してp<0.05;^デュラグルチド(0.3nmol/kg)に対してp
<0.05;#JNJ-64151789(4.0nmol/kg)PFに対してp<0
.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、10匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0281】
【表24】
溶媒に対してp<0.05;^化合物2(2.0nmol/kg)PFに対してp<
0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
各値は、10匹の動物からのデータについて、群当たりの平均±SEMを表す。
【0282】
【表25】
全ての群に対してp<0.05;^化合物2(4.0nmol/kg)PFに対して
p<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
値は、群当たり10匹の動物からのデータの平均±SEMを表す。ただし化合物2(1
.0nmol/kg)及び化合物2(4.0nmol/kg)PFは、N=9である
【0283】
【表26】
化合物2(4.0nmol/kg)PFに対してp<0.05;^全ての群に対して
p<0.05;#化合物2(1.0nmol/kg)及び化合物2(2.0nmol/k
g)PFに対してp<0.05;$ジュラグルチド(0.3nmol/kg)を除く全て
の群に対してp<0.05
一元配置分散分析、テューキーの多重比較検定
値は、遊離脂肪酸については群当たり10匹の動物からのデータ、遊離グリセロールに
ついては群当たり8~10匹の動物からのデータ、トリグリセリド及び総コレステロール
については群当たり9~10匹の動物からのデータの平均±SEMを表す
【0284】
実施例12:インビトロ試験:カニクイザルにおける単回用量の有効性
生物学的に無処置のカニクイザルを、処理前3週間の間に食物摂取に関して毎日モニタ
ーした。処理の開始時に、動物を4つの群に分け、同様の平均体重(n=8~9、各群平
均体重7.4~7.9kg)を得た。各群の動物は、1、3、5,又は7.5nmol/
kgの化合物2に対応する単回皮下投与を受けた。食物消費量を、更に14日間毎日モニ
ターした。体重を投与日に測定し、投与後4、7、10、14日及び21日後に測定した
。食物摂取の割合変化は、その日の食物摂取量を、投与前の7日間の平均の1日食物摂取
量と比較することによって、毎日決定した。結果を図14及び図15に示す。
【0285】
実施例13:薬物動態(PK)、薬物動態(PK)/薬力学(PD)分析
DIOマウスPK
化合物2の時間経過をDIOマウスで評価した(表27)。動物(各時点でn=3)に
10nmol/kgを皮下投与した。
【0286】
【表27】
各値は、3匹の動物からのデータについて各時点、群当たりの平均±SEMを表す。
【0287】
ラットPK
化合物2の薬物動態パラメータを、Sprague-Dawleyラットで評価した。
薬物動態パラメータ(表28)の決定のために、投与から0、24、48、72、144
、216、312、408、及び504時間後に採取したサンプルから、バイオアッセイ
測定曝露を使用した。
【0288】
【表28】
データは平均+/-標準偏差、曝露バイオアッセイ
【0289】
カニクイザルPK
化合物2の薬物動態パラメータを、カニクイザルで評価した。動物に6.45nmol
/kgで静脈内投与又は皮下投与した。薬物動態パラメータ(表29)の決定のために、
投与から0、1、6、24、48、72、120、240、336、432、及び528
時間後に採取したサンプルから、バイオアッセイ測定曝露を使用した。
【0290】
【表29】
値は平均±標準偏差を表す
【0291】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができ
ることを理解されたい。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず
、本明細書によって定義されるような本発明の趣旨及び範囲内の修正をも包含することを
意図するものと理解される。
【0292】
引用した全ての文献は、参照により本明細書に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2023012467000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0292
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0292】
引用した全ての文献は、参照により本明細書に援用される。

以下に、当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列をそれぞれ有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント。
[発明2]
前記単離されたモノクローナル抗体が、配列番号12のポリペプチド配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)、及び配列番号14のポリペプチド配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、発明1に記載の単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント。
[発明3]
Fc部分を更に含む、発明1又は2に記載の単離されたモノクローナル抗体。
[発明4]
配列番号13のポリペプチド配列を有する重鎖(HC)と、配列番号15のポリペプチド配列を有する軽鎖(LC)とを含む、発明3に記載の単離されたモノクローナル抗体。
[発明5]
発明1~4のいずれか一つに記載の前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする、単離された核酸。
[発明6]
発明5に記載の前記単離された核酸を含む、ベクター。
[発明7]
発明6に記載の前記ベクターを含む、宿主細胞。
[発明8]
単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、該方法は、発明7に記載の前記宿主細胞を、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを産生する条件下で培養することと、該抗体又はその抗原結合フラグメントを該細胞又は培養物から回収することとを含む、前記方法。
[発明9]
発明1~4のいずれか一つに記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、それにコンジュゲートされた少なくとも1つの薬理学的活性部分とを含む、コンジュゲート。
[発明10]
前記薬理学的活性部分が治療用ペプチドである、発明9に記載のコンジュゲート。
[発明11]
前記治療用ペプチドが、配列番号18のシステイン残基において、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる、発明10に記載のコンジュゲート。
[発明12]
前記治療用ペプチドが、リンカーを介して前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる、発明10又は11に記載のコンジュゲート。
[発明13]
前記リンカーが、ペプチドリンカー、炭化水素リンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、ポリプロピレングリコール(PPG)リンカー、多糖類リンカー、ポリエステルリンカー、又はPEG及び組み込み複素環からなるハイブリッドリンカーを含む、発明12に記載のコンジュゲート。
[発明14]
前記治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagonists)、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、発明10~13のいずれか一つに記載のコンジュゲート。
[発明15]
前記治療用ペプチドが、配列番号24のポリペプチド配列を含むオキシントモジュリンである、発明14に記載のコンジュゲート。
[発明16]
前記治療用ペプチドの側鎖上に導入された求電子物質(好ましくはブロモアセトアミド又はマレイミド)を、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの配列番号18のシステイン残基のスルフヒドリル基と反応させ、これにより、該治療用ペプチドと、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとの間に共有結合を形成することを含む、発明10~15のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートを製造する方法。
[発明17]
発明9~15のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートと、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
[発明18]
発明9~15のいずれか一つに記載の前記コンジュゲートを含む医薬組成物の製造方法であって、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを、薬学的に許容可能な担体と組み合わせることで、前記医薬組成物を得ることを含む、前記方法。
[発明19]
対象における治療用ペプチドの半減期を延長する方法であって、該方法は、該治療用ペプチドを、それぞれ配列番号16、17、18、19、20、及び21のポリペプチド配列を有する、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、及び軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとコンジュゲートさせることを含み、該治療用ペプチドは、配列番号18のCys残基で、該モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにコンジュゲートされる、前記方法。
[発明20]
前記治療用ペプチドが、オキシントモジュリン、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)、エキセンジン(エキセナチド)、アミリン(プラムリンタイド)、α-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、コカイン及びアンフェタミン調節転写物(CART)、神経ペプチドY受容体Y1(NPY1)拮抗薬(antagonists)、神経ペプチドY受容体Y5(NPY5)拮抗薬、ニューロテンシンS、神経ペプチドB、神経ペプチドW、グレリン、ボンベシン様受容体3(BRS3)、ガラニン、コレシストキニン(CCK)、オレキシン、メラニン濃縮ホルモン(MCH)、オキシトシン、並びにストレスコピンからなる群から選択される、発明19に記載の方法。
【外国語明細書】