(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124695
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ノズルヘッド、三次元造形装置及び三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20230830BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20230830BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/118
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028627
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522076147
【氏名又は名称】学校法人西大和学園 大和大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 正雄
(72)【発明者】
【氏名】大堀 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】江藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 哲也
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC02
4F213AD16
4F213AJ08
4F213AR07
4F213AR08
4F213AR12
4F213WA25
4F213WA63
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL16
4F213WL27
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】造形物を造形する繊維強化樹脂フィラメントが通過するノズルヘッドにおいて、造形過程で繊維強化樹脂フィラメントが破断するのを抑制する。
【解決手段】ノズルヘッドは、繊維強化樹脂フィラメントが通過するノズル孔が形成されており、前記ノズル孔は、出口にかけて孔径が拡がる拡径部を有する三次元造形装置のノズルヘッドであって、前記拡径部は、断面視で円弧状に湾曲する内側湾曲面によって構成されており、前記内側湾曲面の曲率半径が2mm以上である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂フィラメントが通過するノズル孔が形成されており、
前記ノズル孔は、出口にかけて孔径が拡がる拡径部を有する三次元造形装置のノズルヘッドであって、
前記拡径部は、断面視で円弧状に湾曲する内側湾曲面によって構成されており、
前記内側湾曲面の曲率半径が2mm以上である、ノズルヘッド。
【請求項2】
断面視で先端部外周が円弧状に湾曲している、請求項1に記載のノズルヘッド。
【請求項3】
前記拡径部の内側湾曲面からノズルヘッド先端にかけて、全面もしくは部分的に波線状の溝部がノズル孔を中心に放射状に形成されている、請求項1又は請求項2に記載のノズルヘッド。
【請求項4】
造形面を有する台と、
前記造形面に対して相対移動するとともに、前記造形面に向けて繊維強化樹脂フィラメントを吐出する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のノズルヘッドと、
前記ノズル孔への前記繊維強化樹脂フィラメントの案内と切断のための管状部材と、
を備える三次元造形装置。
【請求項5】
前記管状部材は、前記ノズルヘッドのノズル孔内を孔軸方向に移動する、請求項4に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の三次元造形装置を用いて造形物を造形する三次元造形方法であって、
ノズルヘッドのノズル孔から繊維強化樹脂フィラメントを吐出しながら前記ノズルヘッドを造形面に沿った方向に移動させて前記造形面上に前記繊維強化樹脂フィラメントを配置する、
三次元造形方法。
【請求項7】
前記造形面上の前記繊維強化樹脂フィラメントが前記造形物の端に達すると、前記ノズルヘッドを次の積層造形開始位置に移動させて繊維強化樹脂フィラメントを配置、もしくは繊維強化樹脂フィラメント同士を積み重ねる、請求項6に記載の三次元造形方法。
【請求項8】
前記造形面上の前記繊維強化樹脂フィラメントが前記造形物の端に達すると、繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて繊維強化樹脂フィラメントを切断する、請求項6に記載の三次元造形方法。
【請求項9】
前記繊維強化樹脂フィラメントの切断後、前記ノズルヘッドを所定距離移動させ、その後、前記ノズルヘッドを次の積層造形開始位置に移動させて繊維強化樹脂フィラメントを配置、もしくは繊維強化樹脂フィラメント同士を積み重ねる、請求項8に記載の三次元造形方法。
【請求項10】
前記ノズルヘッドの移動速度よりも前記繊維強化樹脂フィラメントの供給速度を遅くすることによって前記繊維強化樹脂フィラメントにテンションを付与しながら、前記繊維強化樹脂フィラメントを前記造形面上に配置する、請求項6~請求項9のいずれか1項に記載の三次元造形方法。
【請求項11】
前記繊維強化樹脂フィラメントを、前記ノズルヘッドによって前記造形面側に押圧しながら前記造形面上に配置する、請求項6~請求項10のいずれか1項に記載の三次元造形方法。
【請求項12】
前記繊維強化樹脂フィラメントは、連続したピッチ系炭素繊維を用いた繊維強化樹脂フィラメントである、請求項6~請求項11のいずれか1項に記載の三次元造形方法。
【請求項13】
造形物を造形する三次元造形方法であって、
造形面上に繊維強化樹脂フィラメントを配置し、前記造形面上の前記繊維強化樹脂フィラメントが前記造形物の端に達すると、繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて繊維強化樹脂フィラメントを切断する、
三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルヘッド、三次元造形装置及び三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から繊維強化樹脂フィラメントを積層して造形物を造形する三次元造形技術が知られている。この三次元造形技術を用いた装置として、繊維強化樹脂フィラメントを吐出するノズルヘッドが造形面に対して面方向に沿って相対移動することにより、造形面上に繊維強化樹脂フィラメントを配置する三次元造形装置がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-520459号公報
【特許文献2】特許第6511577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記三次元造形装置では、造形面上に繊維強化樹脂フィラメントを配置している過程、すなわち、造形過程で、繊維強化樹脂フィラメントに過剰な曲げが生じた場合、繊維強化樹脂フィラメントが破断する虞がある。
【0005】
本発明は、造形物を造形する繊維強化樹脂フィラメントが通過するノズルヘッドにおいて、造形過程で繊維強化樹脂フィラメントが破断するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のノズルヘッドは、繊維強化樹脂フィラメントが通過するノズル孔が形成されており、前記ノズル孔は、出口にかけて孔径が拡がる拡径部を有する三次元造形装置のノズルヘッドであって、前記拡径部は、断面視で円弧状に湾曲する内側湾曲面によって構成されており、前記内側湾曲面の曲率半径が2mm以上である。
【0007】
第1態様のノズルヘッドでは、造形物の造形時に繊維強化樹脂フィラメントが通過するノズル孔が拡径部を有しており、この拡径部が断面視で円弧状に湾曲する内側湾曲面によって構成されている。また、内側湾曲面の曲率半径が2mm以上となっている。このため、上記ノズルヘッドでは、ノズル孔が入口から出口まで一定径のものや直線的な拡径部を有するノズルヘッドと比べて、造形物の造形時において繊維強化樹脂フィラメントに曲率の大きい曲げが生じるのが抑制される。したがって、上記ノズルヘッドによれば、造形過程で繊維強化樹脂フィラメントに曲率の大きい曲げが生じることに起因して繊維強化樹脂フィラメントが破断するのを抑制することができる。特に、内側湾曲面の曲率半径が2mm未満の場合、座屈しやすい強化繊維を用いた繊維強化樹脂フィラメントで三次元造形をすると、この繊維強化樹脂フィラメントが破断する虞がある。
【0008】
本発明の第2態様のノズルヘッドは、第1態様のノズルヘッドにおいて、断面視で先端部外周が円弧状に湾曲している。
【0009】
第2態様のノズルヘッドでは、断面視で先端部外周が円弧状に湾曲しているため、造形面上に配置した繊維強化樹脂フィラメントをあたかもローラーを用いたかのように造形面に向けて押圧でき、押圧された繊維強化樹脂フィラメントを均一に広げて密着させられる。また、ノズルヘッドの押圧にともなって巻き込んだ空気が外周から抜けやすくなる。これにより、上記ノズルヘッドによれば、例えば、繊維強化樹脂フィラメントをローラで押圧するものと同程度の造形物の表面品質を確保できる。
【0010】
本発明の第3態様のノズルヘッドは、第1態様又は第2態様のノズルヘッドにおいて、前記拡径部の内側湾曲面からノズルヘッド先端にかけて、全面もしくは部分的に波線状の溝部がノズル孔を中心に放射状に形成されている。
【0011】
第3態様のノズルヘッドでは、拡径部の内側湾曲面からノズルヘッド先端にかけて波線状の溝部がノズル孔を中心に放射状に形成されているため、造形装置で直線状の積層造形を行う場合に、繊維強化樹脂フィラメントの圧着跡がより直線の状態を保たれることになる。
【0012】
本発明の第4態様の三次元造形装置は、造形面を有する台と、前記造形面に対して相対移動するとともに、前記造形面に向けて繊維強化樹脂フィラメントを吐出する第1態様~第3態様のいずれか一態様のノズルヘッドと、前記ノズル孔への前記繊維強化樹脂フィラメントの案内と切断のための管状部材と、を備える。
【0013】
第4態様の三次元造形装置では、管状部材によって繊維強化樹脂フィラメントがノズルヘッドのノズル孔へ案内される。そして、案内された繊維強化樹脂フィラメントがノズル孔から造形面に対して吐出されながら、ノズルヘッドが造形面に対して相対移動する。これにより、造形面上に該造形面に沿った方向(面方向)に繊維強化樹脂フィラメントが配置される。このように繊維強化樹脂フィラメントを配置又は積層していくことにより、造形物が造形される。
ここで、上記三次元造形装置では、第1態様~第3態様のいずれか一態様のノズルヘッドを用いるため、造形過程において繊維強化樹脂フィラメントが破断するのが抑制される。このため、上記三次元造形装置によれば、一定品質の造形物を安定して造形することができる。
【0014】
本発明の第5態様の三次元造形装置は、第4態様の三次元造形装置において、前記管状部材は、前記ノズルヘッドのノズル孔内を孔軸方向に移動する。
【0015】
第5態様の三次元造形装置では、管状部材を造形面に向けて移動させ、繊維強化樹脂フィラメントに管状部材を接触させると、この接触部分において繊維強化樹脂フィラメントの曲率が大きくなり、繊維強化樹脂フィラメントが座屈現象により切断される。このように上記三次元造形装置によれば、管状部材を造形面に向けて移動させることで所望の位置のその場にて繊維樹脂フィラメントを切断することができる。
【0016】
本発明の第6態様の三次元造形方法は、第4態様又は第5態様の三次元造形装置を用いて造形物を造形する三次元造形方法であって、ノズルヘッドのノズル孔から繊維強化樹脂フィラメントを吐出しながら前記ノズルヘッドを造形面に沿った方向に移動させて前記造形面上に前記繊維強化樹脂フィラメントを配置する。
【0017】
第6態様の三次元造形方法では、第4態様又は第5態様の三次元造形装置を用い、ノズルヘッドのノズル孔から繊維強化樹脂フィラメントを吐出しながらノズルヘッドを造形面に沿った方向に移動させることで、造形面上に繊維強化樹脂フィラメントが配置される。このように繊維強化樹脂フィラメントを配置又は積層していくことにより、造形物が造形される。
ここで、上記三次元造形方法では、第1態様~第3態様のいずれか一態様のノズルヘッドを備える三次元造形装置を用いるため、造形過程において繊維強化樹脂フィラメントが破断するのが抑制される。このため、上記三次元造形方法によれば、一定品質の造形物を安定して造形することができる。
【0018】
本発明の第7態様の三次元造形方法は、第6態様の三次元造形方法において、前記造形面上の前記繊維強化樹脂フィラメントが前記造形物の端に達すると、前記ノズルヘッドを次の積層造形開始位置に移動させて繊維強化樹脂フィラメントを配置、もしくは繊維強化樹脂フィラメント同士を積み重ねる。
【0019】
第7態様の三次元造形方法では、第1態様~第3態様のいずれか一態様のノズルヘッドを備える三次元造形装置を用いるため、造形過程で造形方向が変化しても繊維強化樹脂フィラメントが破断するのが抑制される。このため、上記三次元造形方法によれば、造形面上の繊維強化樹脂フィラメントが造形物の端に達し、ノズルヘッドを次の積層造形開始位置に移動させて繊維強化樹脂フィラメントを配置、もしくは繊維強化樹脂フィラメント同士を積み重ねる場合でも、一定品質の造形物を安定して造形することができる。
【0020】
本発明の第8態様の三次元造形方法は、第6態様の三次元造形方法において、前記造形面上の前記繊維強化樹脂フィラメントが前記造形物の端に達すると、繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて繊維強化樹脂フィラメントを切断する。
【0021】
第8態様の三次元造形方法では、造形面上の繊維強化樹脂フィラメントが造形物の端に達すると、繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて繊維強化樹脂フィラメントを座屈現象により切断することができる。すなわち、上記三次元造形方法によれば、所望の位置のその場にて繊維強化樹脂フィラメントを切断することができる。
【0022】
本発明の第9態様の三次元造形方法は、第8態様の三次元造形方法において、前記繊維強化樹脂フィラメントの切断後、前記ノズルヘッドを所定距離移動させ、その後、前記ノズルヘッドを次の積層造形開始位置に移動させて繊維強化樹脂フィラメントを配置、もしくは繊維強化樹脂フィラメント同士を積み重ねる。
【0023】
第9態様の三次元造形方法では、繊維強化樹脂フィラメントの切断後、ノズルヘッドを所定距離移動させるため、造形端部まで繊維強化樹脂フィラメントの造形品質が良好である。その後、ノズルヘッドを次の積層造形開始位置に移動させて繊維強化樹脂フィラメントを配置、もしくは繊維強化樹脂フィラメント同士を積み重ねることで、一定品質の造形物を安定して造形することができる。
【0024】
本発明の第10態様の三次元造形方法は、第6態様~第9態様のいずれか一態様の三次元造形方法において、前記ノズルヘッドの移動速度よりも前記繊維強化樹脂フィラメントの供給速度を遅くすることによって前記繊維強化樹脂フィラメントにテンションを付与しながら、前記繊維強化樹脂フィラメントを前記造形面上に配置する。
【0025】
第10態様の三次元造形方法では、ノズルヘッドの移動速度よりも繊維強化樹脂フィラメントの供給速度を遅くすることによって繊維強化樹脂フィラメントにテンションを付与しながら、繊維強化樹脂フィラメントを造形面上に配置することから、簡単な方法で繊維強化樹脂フィラメントをノズルヘッドの移動方向に沿って撚れや蛇行することなく高い追従性をもって正確に配置することができる。
【0026】
本発明の第11態様の三次元造形方法は、第6態様~第10態様のいずれか一態様の三次元造形方法において、前記繊維強化樹脂フィラメントを、前記ノズルヘッドによって前記造形面側に押圧しながら前記造形面上に配置する。
【0027】
第11態様の三次元造形方法では、繊維強化樹脂フィラメントをノズルヘッドによって造形面側に押圧しながら造形面上に配置するため、繊維強化樹脂フィラメントの厚みが均一に近づく。これにより、上記三次元造形方法によれば、造形物の造形品質を向上させることができる。
【0028】
本発明の第12態様の三次元造形方法は、第6態様~第11態様のいずれか一態様の三次元造形方法において、前記繊維強化樹脂フィラメントは、連続したピッチ系炭素繊維を用いた連続繊維強化樹脂フィラメントである。
【0029】
第12態様の三次元造形方法では、繊維強化樹脂フィラメントとしてピッチ系炭素繊維の連続繊維を用いた連続繊維強化樹脂フィラメントを用いている。ピッチ系炭素繊維は、PAN系炭素繊維と比べて、破断しやすく取り扱いが難しい。しかし、上記三次元造形方法によれば、ピッチ系炭素繊維フィラメントを用いても造形過程で連続繊維強化樹脂フィラメントに破断が起きないため、安定的で連続的な三次元造形が可能となる。さらに、上記三次元造形方法によれば、連続繊維強化樹脂フィラメントメントの曲率を大きくすることで所望の位置その場にて連続繊維強化樹脂フィラメントの切断が可能であるため、造形物の造形品質を向上させることができる。
【0030】
本発明の第13態様の三次元造形方法は、造形物を造形する三次元造形方法であって、造形面上に繊維強化樹脂フィラメントを配置し、前記造形面上の前記繊維強化樹脂フィラメントが前記造形物の端に達すると、繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて繊維強化樹脂フィラメントを切断する。
【0031】
第13態様の三次元造形方法では、造形面上の繊維強化樹脂フィラメントが造形物の端に達すると、繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて繊維強化樹脂フィラメントを座屈現象により切断することができる。すなわち、上記三次元造形方法によれば、所望の位置のその場にて繊維強化樹脂フィラメントの切断が可能であるため、造形物の造形品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、造形物を造形する繊維強化樹脂フィラメントが通過するノズルヘッドにおいて、造形過程で繊維強化樹脂フィラメントが破断するのを抑制することができる。このため、特に破断しやすいピッチ系炭素繊維をもちいた連続繊維強化樹脂フィラメントを用いても安定して連続的な三次元造形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態に係るノズルヘッドの断面図である。
【
図2】
図1のノズルヘッドの下面図(矢印2の方向から見た図)である。
【
図3】
図1のノズルヘッドの上面図(矢印3の方向から見た図)である。
【
図4】第1実施形態に係る三次元造形装置の概略構成図である。
【
図5】
図4の三次元造形装置のノズルヘッド周りの拡大断面図であり、繊維強化樹脂フィラメントを造形面上に配置する動作を示している。
【
図6】
図5に示すノズルヘッド周りの拡大断面図であり、繊維強化樹脂フィラメントを折り曲げて切断する動作を示している。
【
図7】
図6に示すノズルヘッド周りの拡大断面図であり、繊維強化樹脂フィラメントを切断された端部に至るまでノズルヘッドで造形面側に押し付ける動作を示している。
【
図8】
図7に示すノズルヘッド周りの拡大断面図であり、ノズルヘッドが上方に移動し、繊維強化樹脂フィラメントがノズルヘッドから下方へ送り出される動作を示している。
【
図9】
図8に示すノズルヘッド周りの拡大断面図であり、ノズルヘッドが移動し、先に配置した繊維強化樹脂フィラメントの終端に次の繊維強化樹脂フィラメントの始端を重ねる動作を示している。
【
図10】
図9に示すノズルヘッド周りの拡大断面図であり、次の繊維強化樹脂フィラメントをノズルヘッドで次の繊維強化樹脂フィラメントに押し付けながらノズルヘッドが移動し、繊維強化樹脂フィラメント同士を重ねていく動作を示している。
【
図11】第1の変形例のノズルヘッドの断面図である。
【
図13A】第2の変形例のノズルヘッドの下面図である。
【
図14A】第3の変形例のノズルヘッドの下面図である。
【
図15】第2実施形態に係る三次元造形装置の概略構成図である。
【
図16】
図15に示す三次元造形装置の管状部材周りの拡大断面図であり、繊維強化樹脂フィラメントを折り曲げて切断する動作を示している。
【
図17】
図16に示す管状部材周りの拡大断面図であり、繊維強化樹脂フィラメントを切断された端部に至るまで押圧ローラーで造形面側に押し付ける動作を示している。
【
図18】
図17に示す管状部材周りの拡大断面図であり、管状部材及び押圧ローラーが移動し、先に配置した繊維強化樹脂フィラメントの終端と次の繊維強化樹脂フィラメントの始端を重ねる動作を示している。
【
図19】
図18に示す管状部材周りの拡大断面図であり、次の繊維強化樹脂フィラメントを押圧ローラーで次の繊維強化樹脂フィラメントに押し付けながら管状部材及び押圧ローラーが移動し、繊維強化樹脂フィラメント同士を重ねていく動作を示している。
【
図20】第2実施形態の管状部材の下端部周りの拡大図である。
【
図22】第1の変形例の管状部材の下面図(
図21に対応する向きで見た図)である。
【
図23】第2の変形例の管状部材の下面図(
図21に対応する向きで見た図)である。
【
図24】第3の変形例の管状部材の下面図(
図21に対応する向きで見た図)である。
【
図25】第4の変形例の管状部材の下面図(
図21に対応する向きで見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0035】
まず、本実施形態に係るノズルヘッド20について説明し、次に、本実施形態に係る三次元造形装置40(以下、単に「造形装置40」という)について説明し、その後に、本実施形態に係る三次元造形方法について説明する。
【0036】
<ノズルヘッド>
図4及び
図5に示すように、ノズルヘッド20は、造形装置40において造形面42に向けて繊維強化樹脂フィラメントを吐出する部分に設けられる部品である。具体的には、造形装置40が備えるノズル部44の繊維強化樹脂フィラメントの吐出口を構成する部品である。ノズルヘッド20の材質については金属又はセラミックスであり、加工性や熱伝導性の面から金属であることが好ましい。
【0037】
図1に示すように、ノズルヘッド20は、ヘッド本体22と、ノズル孔24と、を有している。
【0038】
ヘッド本体22には、厚み方向Tに貫通する貫通孔(本実施形態では丸孔)が形成されている。この貫通孔がノズル孔24である。ヘッド本体22は、ノズル孔24の出口24A側の部分を形成する幅広部26と、ノズル孔24の入口24B側の部分を形成する幅狭部28と、を有している。なお、ノズル孔24の出口24A側は、ノズルヘッド20(ノズル部44(
図4参照))における繊維強化樹脂フィラメントの吐出側を指す。ノズル孔24の入口24B側は、ノズルヘッド20(ノズル部44)における繊維強化樹脂フィラメントの導入側を指す。
【0039】
図1に示すように、幅狭部28の外周には、雄ねじ28Aが形成されている。この雄ねじ28Aを、ノズル部44の筒部45の雌ねじ45A(
図5参照)に捩じ込むことで、ヘッド本体22(ノズルヘッド20)がノズル部44の筒部45に締結固定される。なお、本発明は、ノズルヘッド20がノズル部44に固定されれば、上記構成に限定されない。例えば、ノズルヘッド20に雌ねじが形成され、筒部45に雄ねじが形成されてもよいし、その他の固定構造を採用してもよい。
【0040】
図2及び
図3に示すように、幅広部26の外形は、平面視で六角形状とされている。なお、本発明は、この構成に限定されない。例えば、幅広部26の外形は、平面視で円形状、楕円形状、多角形状であってもよいし、その他の形状(対向する一対の平面を有する形状)であってもよい。ここで、幅広部26の外形が平面視で六角形状の場合、一般の工具で簡単にノズルヘッド20をノズル部44の筒部45に締結固定できる。
【0041】
図1及び
図5に示すように、ノズル孔24は、繊維強化樹脂フィラメントが通過する円形の貫通孔である。このノズル孔24は、出口24Aにかけて中心点を同一にして孔径Dが相似形状で拡がる拡径部30を有している。具体的には、ノズル孔24は、孔軸方向(厚み方向Tと同じ方向)の一方側(ここでは入口24B側)の部分が一定径部32を構成し、孔軸方向の他方側(ここでは出口側)の部分が拡径部30を構成している。なお、一定径部32は、ノズル孔24において孔径Dが一定の部分を指す。また、ここでいうノズル孔24の孔軸方向は、ノズル孔24の軸心に沿った方向を指し、
図1ではノズル孔24の軸心を一点鎖線CLで示している。
【0042】
図1に示すように、拡径部30は、孔軸方向に沿った断面視で円弧状に湾曲する内側湾曲面34によって構成されている。この内側湾曲面34は、ノズル孔24の軸心CL側で且つノズル孔24の出口24Aにかけて凸となる円弧状の湾曲面である。
【0043】
また、本実施形態のノズル孔24の孔壁面24Cは、一定径部32から拡径部30まで連続している。
【0044】
内側湾曲面34の曲率半径R1は、造形時において内側湾曲面34に接した繊維強化樹脂フィラメントに生じる曲げが、座屈現象による破断を生じない程度の曲率となるように設定しておくことが好ましい。曲率半径R1は、造形に用いられる繊維強化樹脂フィラメントの太さ(径)によるところはあるものの、具体的には、2mm以上であり、好ましくは3mm以上であり、より好ましくは4mm以上である。曲率半径R1が2mm未満であると座屈しやすい強化繊維を使用した繊維強化樹脂フィラメントを三次元造形しようとすると繊維強化樹脂フィラメントが破断する虞がある。繊維強化樹脂フィラメントが破断する場合、装置の汎用性が低下する。また、曲率半径R1の上限については特に制限はないものの、現状で使用されている連続繊維強化樹脂フィラメント(直径0.5mm~1.0mm)であると、曲率半径R1が10mmを超えるとノズル孔24の出口24Aの孔径が大きくなりすぎるためにノズル部44が大型化してしまうほか、ノズル部44内での繊維強化樹脂フィラメントの位置の安定性が低下して三次元造形時の描画性が悪化する虞があるが、直径が1mmを超えるような太い連続繊維強化樹脂フィラメントを用いる場合は、曲率半径R1が10mmを超える寸法とすることが適切になる可能性がある。なお、本実施形態の内側湾曲面34は、ノズル孔24の入口24B側の端から出口24A側の端までの円弧の角度が90度以下である。一例として本実施形態では、内側湾曲面34の円弧の角度が90度であるが、本発明はこれに限定されない。
【0045】
図1に示すように、ヘッド本体22は、断面視で先端部外周36が円弧状に湾曲している。具体的には、ヘッド本体22の先端部外周36は、ヘッド本体22の先端22Aにかけて外径dが縮んでいる。なお、本実施形態では、先端22Aは、内側湾曲面34におけるノズル孔24の出口24A側の端である。この先端部外周36は、孔軸方向に沿った断面視で円弧状に湾曲する外側湾曲面38によって構成されている。この外側湾曲面38は、ノズル孔24の軸心CLと反対側(言い換えると、ヘッド本体22の径方向外側)で且つノズル孔24の出口24Aにかけて凸となる円弧状の湾曲面である。なお、本実施形態では、先端部外周36の全体が外側湾曲面38によって構成されているが、本発明はこの構成に限定されない。内側湾曲面34に連続する先端部外周36が直線状に切り上がらなければよい。すなわち、先端22Aが尖った形状でなければよい。そのため、先端22Aを平面又は湾曲面とすることが好ましく、湾曲面とした場合が最も好ましい。なお、本実施形態の外側湾曲面38は、ノズル孔24の入口24B側の端から出口24A側の端までの円弧の角度が90度以下である。
【0046】
ヘッド本体22の先端22Aは、幅広部26のノズル孔24の出口24A側の端であり、ノズル孔24を中心として円環状に形成されている(
図2参照)。ノズルヘッド20は、ヘッド本体22の先端22A及びその周辺部によって、造形面42上に配置された繊維強化樹脂フィラメントを造形面42側に向けて押圧し均す機能を有する。
【0047】
図1に示すように、本実施形態では、一例として、外側湾曲面38の曲率半径R2が、内側湾曲面34の曲率半径R1よりも小さい。ここで、上記のように、内側湾曲面34の曲率半径R1は、造形時において内側湾曲面34に接した繊維強化樹脂フィラメントに生じる曲げが、座屈現象による破断を生じない程度の曲率となるように設定しておくことが好ましい。そのため、外側湾曲面38の曲率半径R2は、曲率半径R1を確保したうえで設定することが好ましい。
【0048】
ノズルヘッド20の大きさについては、連続繊維強化樹脂フィラメントの安定した連続的な造形が可能であれば特に制限はなく、例えば、第1実施形態のノズルヘッド20であれば、
図4又は
図5に示すようにノズル部44の筒部45よりもノズルヘッド20の幅広部26が小さくてもよいし、筒部45と幅広部26の大きさが同じでもよい。但し、造形装置40の小型化を考えた場合は、ノズルヘッド20は筒部45よりも小さいことが好ましい。
【0049】
<三次元造形装置>
次に本実施形態に係る造形装置40について説明する。
【0050】
図4に示すように、本実施形態の造形装置40は、形状データに基づいて繊維強化樹脂フィラメントを積層することで立体的な造形物を造形する装置である。なお、
図4~
図10では、造形装置40における上方を矢印UPで示している。また、
図4~
図10では、繊維強化樹脂フィラメントを符号CFRPF(Continuous Fiber Reinforced Plastic Filament)で示している。
【0051】
造形装置40は、台41と、供給装置43と、を備えている。
【0052】
台41は、造形物を造形する造形面42を有している。
【0053】
供給装置43は、ノズル部44と、供給部46とを備えている。
【0054】
ノズル部44は、供給装置43において、台41の造形面42に向けて繊維強化樹脂フィラメントを吐出する部分(言い換えると、繊維強化樹脂フィラメントを送り出す部分)である。
【0055】
供給部46は、供給装置43において、繊維強化樹脂フィラメントをノズル部44に供給する部分である。
【0056】
また、供給部46は、一例として、繊維強化樹脂フィラメントを供給する供給部48と、供給部48から引き出された繊維強化樹脂フィラメントを挟んでノズル部44に送り出す一対のローラー50を備えている。ローラー50は、回転駆動部52によって回転するように構成されている。
【0057】
繊維強化樹脂フィラメントは強化繊維の短繊維を配合した樹脂組成物をフィラメント状に加工したものや、一方向に引き揃えた複数本(一般的には1K~6K)の連続した強化繊維に樹脂組成物を含浸させたものが用いられる。この強化繊維には、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維、セラミック繊維等が挙げられるが、これらに限定されないし、複数の種類強化繊維を併用してもよい。
【0058】
また、繊維強化樹脂フィラメントで使用される樹脂については、熱硬化系樹脂であっても熱可塑性樹脂のいずれであってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン及びその変性物、ポリアミド6やポリアミド66などのポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、フェノキシ樹脂など特に限定なく使用することができ、これらを2種類以上併用して使用してもよい。これら熱可塑性樹脂の中でもフェノキシ樹脂は、低温での加工が可能であり、かつ良接着性の熱可塑性樹脂であることから好ましく使用される。
【0059】
フェノキシ樹脂には予め重合された高分子量体として提供されるフェノキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル製 YP-50)や、現場重合型フェノキシ樹脂(例えば、日鉄ケミカル&マテリアル製 NS-TEPreg用マトリックス樹脂や、ナガセケムテックス製 熱可塑性エポキシ樹脂(主剤:DENATITE XNR6850Vと硬化剤:DENATITE XNH6850Vの重合物)がある。
【0060】
なお、本実施形態では、繊維強化樹脂フィラメントとして、連続繊維強化樹脂フィラメント(CFRPF)を使用している。具体的には、強化繊維として3Kのピッチ系炭素繊維束(日本グラファイトファイバー製 YS-80A)を、また強化繊維に含侵させる樹脂として現場重合型フェノキシ樹脂を用いた日鉄ケミカル&マテリアル製 NS-TEPreg連続繊維強化樹脂フィラメントを使用している。
【0061】
図4及び
図5に示すように、ノズル部44は、ノズルヘッド20と、筒部45と、パイプ54とを備えている。また、ノズルヘッド20は、ノズル孔24の出口24Aを下方に向けて筒部45に締結固定されている。
【0062】
筒部45は、金属部品であり、内側の中空部45Bがノズル孔24に連通している。また筒部45の端部(
図5では下端部)には、雌ねじ45Aが形成されている。この雌ねじ45Aに雄ねじ28Aが捩じ込まれることによってノズルヘッド20が筒部45に締結固定される。この筒部45には、ヒーター62(
図4参照)が備えられている。このヒーターの熱で連続繊維強化樹脂フィラメントが加熱される。
【0063】
また、筒部45は、軸方向が造形面42に対して垂直方向となるように供給装置43の本体(図示省略)に固定されている。具体的には、供給装置43の本体に供給部46及びノズル部44が固定されている。そして、造形装置40は、供給装置43を水平方向及び上下方向に移動させる移動装置64(
図4参照)を備えている。このように移動装置64によって供給装置43が移動することにともなってノズルヘッド20も移動する。ここでノズルヘッド20から繊維強化樹脂フィラメントを造形面42に対して吐出しながらノズルヘッド20を移動させることによって造形面42上に造形物が造形される。
【0064】
図4及び
図5に示すように、パイプ54は、金属部品であり、ノズル孔24へ連続繊維強化樹脂フィラメントを案内する断面形状が円形であり、内径が繊維強化樹脂フィラメントよりも大きい部材である。具体的には、パイプ54は、筒部45の中空部45Bを貫通し、一端部54A(
図5では下端部)がノズルヘッド20のノズル孔24に挿入されるように構成されている。なお、パイプ部材はアルミ製などでもよいが、連続繊維強化樹脂フィラメントに過剰な熱履歴が加わらないように、ステンレスやチタンなどの熱伝導性が低い金属部品が好ましい。
【0065】
図5及び
図6に示すように、パイプ54は、ノズルヘッド20のノズル孔24内を孔軸方向に移動するように構成されている。具体的には、パイプ54は、昇降装置66(
図4参照)によってノズル孔24の孔軸方向(ここでは上下方向)に移動する。なお、
図5で示すパイプ54の位置をパイプ54の待機位置としているが、筒部45の直上でも構わない。また、
図6で示すパイプ54の位置がパイプ54の切断位置である。ここでパイプ54が切断位置にある場合、パイプ54の一端部54Aによって連続繊維強化樹脂フィラメントに曲率が大きい曲げが付与される。
【0066】
また、造形装置40は、制御装置60を備えている。
図4に示すように、制御装置60は、造形装置40の各部位の動作を制御している。本実施形態の制御装置60は、一例として、回転駆動部52、ヒーター62、移動装置64及び昇降装置66を制御している。具体的には、制御装置60は、ローラー50の連続繊維強化樹脂フィラメントの送り出し速度、ヒーター62の温度、供給装置43の移動方向及び移動速度、及び、パイプ54の移動方向(昇降方向)及び移動速度(昇降速度)を制御している。なお、制御装置60による制御対象は、上記に限定されない。
【0067】
<三次元形成方法>
次に本実施形態に係る三次元造形方法(以下、単に「造形方法」という)について説明する。なお、本実施形態の三次元造形方法は、造形装置40を用いて造形面42に立体的な造形物を造形する方法である。
【0068】
図4に示すように、造形装置40では、制御装置60が造形物の形状データに基づいて供給装置43を制御する。具体的には、
図5に示すように、造形装置40は、ノズルヘッド20のノズル孔24から連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42に向けて吐出しながら(言い換えると、送り出しながら)ノズルヘッド20を造形面42に対して該造形面42に沿った造形方向M1に移動させて造形面42上に連続繊維強化樹脂フィラメントを配置する。
【0069】
ここで、本実施形態の造形方法では、連続繊維強化樹脂フィラメントにテンションを付与しながら、連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42上に配置する。具体的には、ノズルヘッド20(供給装置43)の造形面42に対する移動速度よりも連続繊維強化樹脂フィラメントの供給速度を遅くすること、すなわち、制御装置60によってローラー50による連続繊維強化樹脂フィラメントの送り出し速度を、移動装置64による供給装置43の移動速度よりも遅くすることによって連続繊維強化樹脂フィラメントにテンションが付与される。
【0070】
また、本実施形態の造形方法では、連続繊維強化樹脂フィラメントをノズルヘッド20によって造形面42側に押圧しながら造形面42上に配置している。これにより、造形面42上に配置された連続繊維強化樹脂フィラメントの表面がノズルヘッド20によって均される。
【0071】
次に、造形面42上の連続繊維強化樹脂フィラメントが造形物の端に達すると、連続繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて連続繊維強化樹脂フィラメントを切断する。具体的には、パイプ54を下方に移動させて一端部54Aで連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42側へ向けて押圧すると、パイプ54の一端部54Aで押圧された連続繊維強化樹脂フィラメントがノズルヘッド20の内側湾曲面34から離れる。このとき、連続繊維強化樹脂フィラメントのパイプ54に接した部分に曲率が大きい曲げが生じる。すなわち、連続繊維強化樹脂フィラメントのパイプ54に接した部分が折り曲げられ、連続繊維強化樹脂フィラメントの座屈現象により、繊維強化樹脂フィラメントがパイプ54に接した部分で切断される(
図6参照)。
【0072】
繊維強化樹脂フィラメントを切断した後は、
図7に示すように、ノズルヘッド20をM1方向にさらに所定距離移動させて連続繊維強化樹脂フィラメントを切断部(すなわち、終端)まで均していく。
【0073】
次に、
図8に示すように、ノズルヘッド20を造形面42から離れる方向、すなわち、上方に向けて移動させる。具体的には、連続繊維強化樹脂フィラメントの1層分の厚みよりも若干多い量移動させる。また、連続繊維強化樹脂フィラメントを下方に向けて吐出する(送り出す)。具体的には、ノズルヘッド20の造形方向M2の移動時に、先に配置した連続繊維強化樹脂フィラメントの終端にノズルヘッド20から吐出した次の連続繊維強化樹脂フィラメントの始端が当たるように連続繊維強化樹脂フィラメントを下方に向けて送り出す。
【0074】
次に、パイプ54を待機位置に移動させ、連続繊維強化樹脂フィラメントを吐出しながらノズルヘッド20を造形方向M2に移動させる。なお、ノズルヘッド20の造形方向M2は、造形方向M1と反対方向である。ノズルヘッド20を造形方向M2に移動させると、
図9に示す連続繊維強化樹脂フィラメントがノズルヘッド20の内側湾曲面34に接するような状態となる。この状態でノズルヘッド20を下方へ移動させてノズルヘッド20で先の連続繊維強化樹脂フィラメントの終端と次の連続繊維強化樹脂フィラメントの始端とを押圧する。そして、ノズルヘッド20を造形方向M2に移動させることによって、先の連続繊維強化樹脂フィラメントの上に次の連続繊維強化樹脂フィラメントが積層される(
図10)。このように連続繊維強化樹脂フィラメントを積層していくことで、造形面42上に立体的な造形物が造形される。
【0075】
本実施形態の製造方法では、ノズル部44が
図8に示す位置にあるときはパイプ54を下げたままの状態で、連続繊維強化樹脂フィラメントをノズルヘッド20から送り出しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図8に示す位置でパイプ54を待機位置に移動させつつ、連続繊維強化樹脂フィラメントをノズルヘッド20から送り出し、次いで、ノズル部44を造形方向M2に移動させて、先に配置した連続繊維強化樹脂フィラメントの終端に押し当ててもよい。
【0076】
なお、本実施形態の造形方法では、連続繊維強化樹脂フィラメントが造形面42上の端に達すると、連続繊維強化樹脂フィラメントを切断し、次の連続繊維強化樹脂フィラメントの始端を先の連続繊維強化樹脂フィラメントの終端に重ねているが本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図8においてノズルヘッド20を造形面42から離れる方向には動かさずに、造形した連続繊維強化樹脂フィラメントの幅分だけ動かして次の造形を開始することもできる。このように連続繊維強化樹脂フィラメントを造形していくことで平面的な造形物が造形される。さらに、連続繊維強化樹脂フィラメントの切断を行わずにそのまま一筆書き状の連続造形を行うことも可能である。
【0077】
次に本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のノズルヘッド20は、拡径部30が断面視で円弧状に湾曲する内側湾曲面34によって構成されている。そして、内側湾曲面34の曲率半径R1が2mm以上10mm以下の範囲内にあるように加工されている。したがって、ノズルヘッド20によれば、造形過程で連続繊維強化樹脂フィラメントに座屈を引き起こしかねない曲率の大きい曲げが生じることを防止し、座屈しやすいピッチ系の炭素繊維を使用した連続繊維強化樹脂フィラメントであっても造形過程で破断することを抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態のノズルヘッド20では、先端部外周36が断面視で円弧状に湾曲する外側湾曲面38によって構成されている。このため、ノズルヘッド20では、造形面42に配置された連続繊維樹脂フィラメントをいわばロール加圧されるような状態で押し付け、かつ均すことによって均一な造形と確実な密着がなされる。
【0079】
本実施形態の造形装置40では、パイプ54によって連続繊維強化樹脂フィラメントがノズルヘッド20のノズル孔24へ案内される。そして、案内された連続繊維強化樹脂フィラメントがノズル孔24から造形面42に対して吐出されながら、ノズルヘッド20が造形面42に対して相対移動する。これにより、造形面42上に連続繊維強化樹脂フィラメントが配置される。このようにして連続繊維強化樹脂フィラメントを配置又は積層していくことにより、造形物が造形される。
ここで、造形装置40では、内側湾曲面34によって構成される拡径部30を有するノズルヘッド20を用いるため、造形過程で造形方向を変化させても連続繊維強化樹脂フィラメントが破断するのを抑制することができる。このため、造形装置40によれば、一定品質の造形物を安定して造形することができる。
【0080】
また、本実施形態の造形装置40では、パイプ54を造形面42に向けて移動させ、連続繊維強化樹脂フィラメントにパイプ54を接触させると、この接触部分において連続繊維強化樹脂フィラメントの曲率が大きくなり、連続繊維強化樹脂フィラメントが座屈現象により切断される。このように造形装置40によれば、パイプ54を造形面42に向けて移動させることで所望の位置のその場にて連続繊維強化樹脂フィラメントを切断することができる。
【0081】
本実施形態の造形方法では、上記のノズルヘッド20を備える造形装置40を用いるため、造形過程で連続繊維強化樹脂フィラメントが破断するのを抑制することができる。このため、造形装置40によれば、ピッチ系炭素繊維を用いた連続繊維強化樹脂フィラメントを用いても安定して連続的な三次元造形加工を行うことができる。
【0082】
また、本実施形態の造形方法では、造形面42上の連続繊維強化樹脂フィラメントが造形物の端に達すると、連続繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて連続繊維強化樹脂フィラメントを座屈現象により切断することができる。すなわち、造形方法によれば、所望の位置のその場にて連続繊維強化樹脂フィラメントを切断することができる。
【0083】
また、本実施形態の造形方法では、連続繊維強化樹脂フィラメントを所定の位置のその場にて切断した後、ノズルヘッド20を所定距離移動させるため、造形端部まで連続繊維強化樹脂フィラメントの造形品位が良好である。
【0084】
また、本実施形態の造形方法では、ノズルヘッド20の移動速度よりもローラー50による連続繊維強化樹脂フィラメントの供給速度を遅くすることによって、繊維強化樹脂フィラメントをローラー50のところで敢えて滑らせ、その摩擦力でテンションを付与しながら、連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42上に配置することから、簡単な方法で連続繊維強化樹脂フィラメントをノズルヘッド20の移動方向(造形方向)に沿って正確に配置することができる。特にノズルヘッド20に拡径部30を設けることで発生しやすくなる連続繊維強化樹脂フィラメントの撚れや蛇行を抑制できる。
【0085】
また、本実施形態の造形方法では、連続繊維強化樹脂フィラメントとしてピッチ系炭素繊維フィラメントを用いている。ピッチ系炭素繊維は、PAN系炭素繊維よりも折れやすいために取り扱いが難しく、特に曲率を大きくすると容易に破断してしまう。言い換えると、ピッチ系炭素繊維フィラメントは、曲率を変化させるだけで容易に切断することができる。このため、本実施形態の造形方法によれば、ピッチ系炭素繊維フィラメントを用いても安定して連続的な三次元造形加工が可能であるほか、簡便な機構で連続繊維強化樹脂フィラメントを所望の位置のその場にて確実に切断できるため、造形終端部まで良好な造形品質が得られる。
【0086】
第1実施形態のノズルヘッド20では、ヘッド本体22の先端22Aがノズル孔24の出口24A側の端であり、湾曲面であるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図11及び
図12に示すノズルヘッド120のように、ヘッド本体22の先端22Aが平面に形成されてもよい。ここでノズルヘッド120のヘッド本体22の先端22Aは、内側湾曲面34と外側湾曲面38との間に位置しており、ノズル孔24を中心として円環状に形成されている。この先端22Aを構成する平面は、ノズル孔24の孔軸方向と直交する方向に沿う平面である。ノズルヘッド120は、ヘッド本体22の先端22Aによって、造形面42上に配置された連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42側に向けて押圧する。このため先端22Aが平面であることで連続繊維強化樹脂フィラメントを均しやすくなる。なお、ノズルヘッド120では、外側湾曲面38の曲率半径R2が、内側湾曲面34の曲率半径R1よりも小さい。
【0087】
第1実施形態のノズルヘッド20では、ヘッド本体22が幅広部26と幅狭部28を有しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ヘッド本体22のノズル孔24の出口24A側が幅狭部とされ、ヘッド本体22のノズル孔24の入口24B側が幅広部とされてもよいし、ヘッド本体22の外径がノズル孔24の入口から出口まで同じ大きさであってもよい。
【0088】
また、第1実施形態のノズルヘッド20では、拡径部30の内側湾曲面34及びノズル先端22Aは平滑面となっているが、例えば、
図13Aに示すノズルヘッド130のように、拡径部30の内側湾曲面34から先端22Aにかけて、ノズル孔24を中心にして放射状に延びる溝部132が内側湾曲面34全面に設けられ(言い換えると、一周に亘って設けられ)てもよい。上述の三次元造形装置40では、ノズル孔24から供給された連続繊維強化樹脂フィラメントがノズルヘッド20の先端22Aで加熱されながら圧着されて周辺部に向かって積層造形が行われるが、直線状の積層造形を行う場合、
図13Aで示されるような溝部132を設けておくことにより、連続繊維強化樹脂フィラメントの圧着跡がより直線の状態を保たれることになる。
【0089】
溝部132の形状は
図13A中のA-A線における断面図にて示す形状のピッチwと高さhをもった波線状であり、ピッチw及び高さhのいずれも0.1mm以上0.5mm以下の範囲である。一方、溝部132の長さはノズルヘッド20の先端22Aから内側湾曲面34の長さの1/2未満とする。
【0090】
さらに、
図14Aに示すノズルヘッド140のように、拡径部30の内側湾曲面34から先端22Aにかけて、ノズル孔24を中心にして放射状に延びる溝部142が内側湾曲面34に部分的に設けられてもよい。本変形例の場合では、溝部142のサイズは
図13Aの変形例(ノズルヘッド130)より若干浅め(
図14B参照)に形成されており、積層造形の方向が直線から異なる方向に変わるときにも十分に圧着されながらスムーズに造形方向を変えることができる。なおこの図では4方向の例を示しているが、造形方向のバリエーションに応じた方向の溝の方向数を採用しておくことにより、より細かい制御が可能となる。
【0091】
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について図面に基づいて説明する。まず、本実施に係る三次元造形装置80について説明し、次に本実施形態に係る三次元造形方法について説明する。
【0092】
<三次元造形装置>
図15~
図21に示すように、本実施形態の造形装置80は、
図4に示した造形装置40と同様に、形状データに基づいて連続繊維強化樹脂フィラメントを積層することで立体的な造形物を造形する装置である。なお、
図15~
図20では、造形装置80における上方を矢印UPで示している。
【0093】
図15に示すように、造形装置80は、台41と、供給装置83と、を備えている。
【0094】
供給装置83は、供給部46と、押圧ローラー84と、パイプ86とを備えている。
【0095】
押圧ローラー84は、供給装置83において、台41の造形面42に向けて送り出された連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42上に押圧しながら配置する部品である。なお、押圧ローラー84の半径は2mm以上であり、好ましくは3mm以上であり、より好ましくは5mm以上であればよく、上限については装置設計上支障のないレベルであればよい。また、本実施形態の押圧ローラー84は、回転駆動部93によって回転するように構成されている。
【0096】
パイプ86は、金属部品であり、造形面42側へ連続繊維強化樹脂フィラメントを案内する部材である。このパイプ86は、断面形状が円形とされている(
図21参照)。また、パイプ86の下端側(造形面42側)には、切断板87が取り付けられている。この切断板87は、パイプ86の下端よりも下方に張り出している。ここで、パイプ86の下端と切断板87の先端(
図20では、下端)との間の距離Lは、連続繊維強化樹脂フィラメントの直径以上である。なお、切断板87の先端は、連続繊維強化樹脂フィラメントに曲げを付与できれば、平面でも、尖っていても、丸くなっていてもよい。
【0097】
図15及び
図16に示すように、パイプ86は、軸方向(本実施形態では、上下方向)に移動するように構成されている。具体的には、パイプ86は、昇降装置96によって上下方向に移動する。なお、
図15で示すパイプ86の位置がパイプ86の待機位置である。また、
図16で示すパイプ86の位置がパイプ86の切断位置である。ここでパイプ86が切断位置にある場合、パイプ86に取り付けられた切断板87によって連続繊維強化樹脂フィラメントに曲率が大きい曲げが付与される。
【0098】
また、押圧ローラー84の内部には、ヒーター92(
図15参照)が備えられている。このヒーター92の熱で連続繊維強化樹脂フィラメントが押圧ローラー84によって押圧されながら加熱される。
【0099】
また、パイプ86は、軸方向が造形面42に対して垂直方向となるように供給装置83の本体(図示省略)に固定されている。具体的には、供給装置83の本体に供給部46、パイプ86の昇降装置96が固定されている。そして、造形装置80は、供給装置83を水平方向及び上下方向に移動させ、かつ、上下方向を回転軸方向として回転させる移動装置94(
図15参照)を備えている。このように移動装置94によって供給装置83が移動及び/又は回転することにともないパイプ86及び押圧ローラー84も移動及び/又は回転する。このようにノズルヘッド20が造形面42に対して移動及び/又は回転することにより造形面42上に造形物が造形される。
【0100】
また、造形装置80は、制御装置90を備えている。
図15に示すように、制御装置90は、造形装置80の各部位の動作を制御している。本実施形態の制御装置90は、一例として、回転駆動部52、ヒーター92、回転駆動部93、移動装置94及び昇降装置96を制御している。具体的には、制御装置90は、ローラー50の連続繊維強化樹脂フィラメントの送り出し速度、ヒーター92の温度、押圧ローラー84の回転速度、供給装置83の移動方向及び移動速度、及び、パイプ54の移動方向(昇降方向)及び移動速度(昇降速度)を制御している。なお、制御装置90による制御対象は、上記に限定されない。
【0101】
<三次元造形方法>
次に本実施形態に係る三次元造形方法(以下、単に「造形方法」という)について説明する。なお、本実施形態の三次元造形方法は、造形装置80を用いて造形面42に立体的な造形物を造形する方法である。
【0102】
図15に示すように、造形装置80では、制御装置90が造形物の形状データに基づいて供給装置83を制御する。具体的には、造形装置80は、パイプ86から連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42に向けて送り出し、押圧ローラー84で造形面42上に連続繊維強化樹脂フィラメントを押し付けながら供給装置83を造形方向M1に移動させて造形面42上に連続繊維強化樹脂フィラメントを配置する。
【0103】
ここで、本実施形態の造形方法では、連続繊維強化樹脂フィラメントにテンションを付与しながら、連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42上に配置する。具体的には、移動装置94による供給装置83の造形面42に対する移動速度よりも連続繊維強化樹脂フィラメントの供給速度を遅くすることによって連続繊維強化樹脂フィラメントにテンションを付与している。すなわち、制御装置90によってローラー50による連続繊維強化樹脂フィラメントの送り出し速度を、移動装置94による供給装置83の移動速度よりも遅くすることによって連続繊維強化樹脂フィラメントにテンションが付与される。
【0104】
また、本実施形態の造形方法では、連続繊維強化樹脂フィラメントを押圧ローラー84で造形面42側に押圧しながら造形面42上に配置している。これにより、造形面42上に配置された連続繊維強化樹脂フィラメントの表面が押圧ローラー84によって均される。
【0105】
次に、造形面42上の連続繊維強化樹脂フィラメントが造形物の端に達すると、連続繊維強化樹脂フィラメントの曲率を大きくすることにより、その場にて連続繊維強化樹脂フィラメントを切断する。具体的には、
図16に示すように、パイプ86を下方に移動させて切断板87で連続繊維強化樹脂フィラメントを造形面42側へ向けて押圧する。切断板87で押圧された連続繊維強化樹脂フィラメントは押圧ローラー84の外周面から離れる。このとき、連続繊維強化樹脂フィラメントの切断板87に接した部分に曲率が大きい曲げが生じる。すなわち、連続繊維強化樹脂フィラメントの切断板87に接した部分が折り曲げられ、連続繊維強化樹脂フィラメントの座屈現象により、繊維強化樹脂フィラメントが切断板87に接した部分で切断される。
【0106】
繊維強化樹脂フィラメントを切断した後は、
図17に示すように、押圧ローラー84を所定距離移動させて連続繊維強化樹脂フィラメントを切断部(すなわち、終端)に至るまで均す。
【0107】
次に、押圧ローラー84を造形面42から離れる方向、すなわち、上方に向けて移動させる。具体的には、連続繊維強化樹脂フィラメントの1層分の厚みよりも若干多い量移動させる。また、連続繊維強化樹脂フィラメントを下方に向けて吐出する(送り出す)。具体的には、供給装置83の造形方向M2の移動時に、先に配置した連続繊維強化樹脂フィラメントの終端にパイプ86から吐出した次の連続繊維強化樹脂フィラメントの始端が当たるように連続繊維強化樹脂フィラメントを下方に向けて送り出す。また、このとき、供給装置83を180度回転させる。
【0108】
次に、
図18に示すように、供給装置83を造形方向M2に移動させる。なお、供給装置83の造形方向M2は、造形方向M1と反対方向である。供給装置83を造形方向M2に移動させると、次の連続繊維強化樹脂フィラメントの始端が先の連続繊維強化樹脂フィラメントの終端に当たる。そして、さらに供給装置83を造形方向M2に移動させると、次の連続繊維強化樹脂フィラメントが押圧ローラー84に接する。この状態で押圧ローラー84を下方へ移動させて押圧ローラー84で先の連続繊維強化樹脂フィラメントの終端と次の連続繊維強化樹脂フィラメントの始端とを押圧する(
図19参照)。そして、供給装置83を造形方向M2に移動させることによって、先の連続繊維強化樹脂フィラメントの上に次の連続繊維強化樹脂フィラメントが積層される。このように連続繊維強化樹脂フィラメントを積層していくことで、造形面42上に立体的な造形物が造形される。
【0109】
第2実施形態の造形装置80では、ノズルヘッド20の代わりに、押圧ローラー84を用いているが、第1実施形態と同様の作用を得ることができる。すなわち、造形装置80は、造形装置40と同様の効果を奏することができる。
【0110】
第2実施形態では、パイプ86を断面形状が円形のパイプとしているが、本発明はこの構成に限定されない。パイプ86の断面形状は、連続繊維強化樹脂フィラメントを案内できれば、楕円でも多角形状でもその他の形状でもよい。
図22~
図25には、変形例のパイプ100、102、104、106が示されている。
図22に示すパイプ100は、断面形状が楕円形のパイプであり、所定の位置に切断板101が取り付けらえている。また、
図23に示すパイプ102は、断面形状が円形の一部を直線状としたパイプであり、この直線状部分で連続繊維強化樹脂フィラメントに接して、連続繊維強化樹脂フィラメントに曲率が大きな曲げを付与してもよい。また、
図23に二点鎖線で示すように、パイプ102の直線状部分の所定位置に切断板103を取り付けてもよい。この場合、パイプ102の直線部分により平板状の切断板103をパイプ102に取り付けやすい。
図24に示すパイプ104は、断面形状が矩形状のパイプであり、直線状の一辺で連続繊維強化樹脂フィラメントに接して、連続繊維強化樹脂フィラメントに曲率が大きな曲げを付与してもよい。また、
図24に二点鎖線で示すように、パイプ104の直線状部分の所定位置に平板状の切断板105を取り付けてもよい。この場合、パイプ104の断面形状が矩形状のため、いずれの面にも切断板105を取り付けられるため、パイプ104への切断板105の取り付けが容易になる。また、
図25に示すパイプ106は、断面形状が長方形のパイプであり、直線状の一辺で連続繊維強化樹脂フィラメントに接して、連続繊維強化樹脂フィラメントに曲率が大きな曲げを付与してもよい。また、
図25に二点鎖線で示すように、パイプ106の直線状部分の所定位置に平板状の切断板107を取り付けてもよい。ここで、パイプ106のように断面形状を長方形とすることで、テープ又はリボン状の連続繊維強化樹脂フィラメントを用いて造形物を造形することができる。
【0111】
〔その他の実施形態〕
第1実施形態では、供給装置43が移動装置64によって移動する構成であるが、本発明はこの構成に限定されない。供給装置43が移動装置64によって移動及び/又は回転する構成としてもよい。また、供給装置43が造形装置40に固定され、台41が移動装置(図示省略)によって移動及び/又は回転する構成としてもよい。この場合も制御装置60によって台41の移動装置を制御することができる。なお、ノズルヘッド20が造形面42に対して相対移動できれば、その移動機構については特に限定されない。なお、第2実施形態も同様に、供給装置83の代わりに台41を移動及び/又は回転させる構成としてもよい。
【0112】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0113】
20 ノズルヘッド
22 ヘッド本体
22A 先端
24 ノズル孔
24A 出口
24B 入口
24C 孔壁面
26 幅広部
28 幅狭部
28A 雄ねじ部
30 拡径部
32 一定径部
34 内側湾曲面
36 先端部外周
38 外側湾曲面
40 三次元造形装置
41 台
42 造形面
43 供給装置
44 ノズル部
45 筒部
45A 雌ねじ部
45B 中空部
46 供給部
48 供給部
50 ローラー
52 回転駆動部
54 パイプ(管状部材)
54A 一端部
60 制御装置
62 ヒーター
64 移動装置
66 昇降装置
80 三次元造形装置
83 供給装置
84 押圧ローラー
86 パイプ(管状部材)
87 切断板
90 制御装置
92 ヒーター
93 回転駆動部
94 移動装置
96 昇降装置
100 パイプ
101 切断板
102 パイプ
103 切断板
104 パイプ
105 切断板
106 パイプ
107 切断板
120 ノズルヘッド
130 ノズルヘッド
132 溝部
140 ノズルヘッド
142 溝部
CFRPF 連続繊維強化樹脂フィラメント(繊維強化樹脂フィラメント)
CL 軸心
D 孔径
L 距離
M1 造形方向
M2 造形方向
R1 曲率半径
R2 曲率半径
T 厚み方向
UP 上方
d 外径